JP6137053B2 - 狭開先ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents
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Description
本発明において、「狭開先」とは、開先角度が25°以下で、かつ被溶接材となる鋼材間の最小開先幅が当該鋼材の板厚の50%以下であることを意味する。
この溶接方法では、イナートガスを用いた1層当たり1パスの積層溶接を行っている。しかしながら、このような1層当たり1パスの溶接では、熱が開先の中央部に集中するので、鋼材の開先面は溶融が不足して溶融深さが小さくなる。これを補うため、溶接ワイヤのウイービング方向を常に一定の方向とすることにより、開先面における溶融深さを確保し、溶け込み不良等による溶接欠陥を少なくしている。
このサブマージ溶接用チップは、溶接ワイヤの巻きぐせを利用し、チップから溶接ワイヤを屈曲した状態で送給することにより、開先面に近い位置でアークを発生させ、開先面における溶融深さを確保して、溶け込み不良等による溶接欠陥を少なくしている。
一方、高付加価値の鋼構造物を除く、建築、橋梁および造船等の一般構造物では、コスト等の面から、ガス切断やプラズマ切断等による開先加工を行い、それをそのまま溶接に供するのが通常である。ガス切断やプラズマ切断等による開先加工は、低コストで施工も容易である。しかしながら、ガス切断やプラズマ切断等による開先加工は、開先面の表面が粗くなる、つまり表面の凹凸が大きくなる傾向にあり、機械加工のような高精度の加工を行うことは難しい。
このため、建築、橋梁および造船等の一般構造物については、特許文献1および2に記載の技術を適用することが困難であった。
しかし、特許文献3の技術では、溶接パス数が多く、溶接施工能率が低くなる傾向にあるため、この点の改善が望まれていた。
しかし、単に、初層溶接を多電極溶接とするだけでは、アーク同士の干渉により溶け込みが不安定になる他、熱が開先中央に集中し易くなり、結果的に、厚鋼材の底部における開先面の十分な溶融が得られなかった。
その結果、狭開先ガスシールドアーク溶接における開先条件については、
(a)底部開先角度:25°以下
(b)底部開先ギャップ:7mm以上18mm以下
とすること、
加えて、溶接条件については、
(c)初層溶接を2電極以上の多電極溶接とし、第1電極と第2電極を予め定めた平行な溶接線に沿う配置にするとともに、
(d)第1電極および第2電極の溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤについて、一方をワイヤマイナス(正極性)、他方をワイヤプラス(逆極性)とし、
(e)溶接施工時における第1電極および第2電極の相対配置を適正に制御することが、
厚鋼材の底部における溶融深さ:1.5mm以上を安定して達成し、高い溶接施工能率で溶接するのに極めて重要であるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.底部開先角度を25°以下、底部開先ギャップを7mm以上18mm以下とし、板厚が22mm以上である厚鋼材を、狭開先の多層溶接により接合するガスシールドアーク溶接方法において、
初層溶接を2電極以上の多電極溶接とし、第1電極と第2電極を予め定めた平行な溶接線に沿う配置にするとともに、
該第1電極および該第2電極の一方をワイヤマイナス(正極性)、他方をワイヤプラス(逆極性)とし、
さらに、該第1電極と該第2電極の各溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤ先端間の距離を5mm以上16mm以下の範囲に、また溶接線の直角方向に対する、該第1電極と該第2電極の溶接ワイヤ先端間を結ぶ直線の角度を45°以下の範囲にそれぞれ制御することにより、
上記厚鋼材の底部における溶融深さを1.5mm以上とする狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
そして、このようにして得られた狭開先ガスシールドアーク溶接継手は、従来の溶接継手と比較して製造コストが大幅に低減するので、特に建築、橋梁および造船等の一般構造物に適用して極めて有用である。
図1(a)〜(c)は、本発明の溶接方法で対象とする各種開先形状を示すものである。図中、符号1が厚鋼材、2が厚鋼材の開先面、3が底部開先であり、記号θで底部開先角度を、Gで底部開先ギャップを、hで底部開先高さを、tで板厚を示す。
同図で示したように、本発明の溶接方法における開先形状はV形開先(I形開先を含む)およびY形開先のいずれとすることも可能であり、また図1(c)に示すように多数段のY形開先とすることも可能である。
底部開先を上記のように定義したことに関連して、底部開先角度をθで、底部開先ギャップをGで、底部開先高さをhで示すものとしたのである。なお、V形開先の場合には、底部開先高さhを板厚tの20%として定義する。
図中、符号4が第1電極、5が第2電極、4a、5aが溶接トーチの給電チップ、4bおよび5bが溶接ワイヤ、6が裏当て材、7が溶接線、8が溶接ビード、9が溶融池である。また、記号aで第1電極と第2電極の各溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤ先端間の距離を、αで溶接線の直角方向に対する第1電極と第2電極の溶接ワイヤ先端間を結ぶ直線の角度を、φで溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤの供給角度を、dで底部開先における溶接ワイヤの先端の側端部と厚鋼材の開先面との距離を示す。
なお、図2(a)では溶融池の図示を省略している。また、図2(b)中における第1電極および第2電極については、それぞれ溶接ワイヤ先端位置のみを示し、その他の構成ついては図示を省略している。
また、ここでは、V形の開先形状を例にして示したが、他の開先形状でもa、α、φおよびdは同様である。
ここでは、V形の開先形状を例にして示したが、他の開先形状でもPおよびHは同様である。
鋼材の開先部は小さいほどより早く高能率な溶接を可能とする反面、融合不良等の欠陥が生じやすい。また、底部開先角度が25°を超える場合の溶接は、従来の施工方法でも実施可能である。このため、本発明では、従来の施工方法では施工が困難であり、かつ一層の高能率化が見込まれる底部開先角度:25°以下を対象とする。
なお、V形開先において、底部開先角度が0°の場合はいわゆるI形開先と呼ばれ、溶着量の面からはこの0°の場合が最も効率的であるが、溶接熱ひずみにより溶接中に開先が閉じてくるため、これを見込んで、板厚t(ただし、Y形開先の場合には底部開先高さh)に応じた底部開先角度を設定することが好ましい。
具体的には、底部開先角度は(0.5×t/20)〜(2.0×t/20)°の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは(0.8×t/20)〜(1.2×t/20)°の範囲である。例えば、板厚tが100mの場合、底部開先角度は2.5〜10°の範囲が好ましく、さらに好ましくは4〜6°の範囲である。
ただし、板厚tが100mmを超えると、好適範囲の上限は10°を超えるようになるが、この場合の好適範囲の上限は10°とする。
鋼材の開先部は小さいほどより早く高能率な溶接を可能とする反面、融合不良等の欠陥が生じやすい。また、底部開先ギャップが18mmを超える溶接は、従来の施工方法でも実施可能である。このため、本発明では、従来の施工方法では施工が困難であり、かつ一層の高能率化が見込まれる底部開先ギャップ:18mm以下を対象とする。一方、底部開先ギャップが7mm未満では、後述する初層溶接を2電極以上の多電極溶接とすることが困難となる。このため、底部開先ギャップは7mm以上18mm以下の範囲とする。好ましくは8mm以上12mm以下の範囲である。
鋼材の板厚は22mm以上とする。というのは、鋼材の板厚が22mm未満であれば、従来のレ形開先において開先角度を大きくする一方、開先ギャップを小さくすることで、場合によっては本発明で対象とする開先よりも開先断面積が小さくなるからである。
例えば、板厚tが20mmの場合、本発明で対象とする底部開先角度:0°、底部開先ギャップ:7mmのI形開先では開先断面積が140mm2であるのに対して、開先角度:25°、開先ギャップ:2mmのレ形開先では開先断面積が133mm2であり、レ形開先の方が溶着量の小さい高能率な溶接となる。
なお、一般の圧延鋼材を対象とする場合、板厚は一般に100mmが上限である。よって、本発明で対象とする鋼材の板厚の上限は100mm以下とすることが好ましい。
本発明における鋼材の開先加工では、ガス切断やプラズマ切断、レーザ切断等による加工を行う。ただし、機械加工を排除するものではない。一方、狭開先ガスシールドアーク溶接における開先面に必要な溶融深さは、開先面の表面性状(特に、凹部深さや清浄度)によって主に決定される。
最も一般的なガス切断による開先加工では、特殊鋼やステンレス鋼等を除き、ガス切断時のガス流量や火口の選択により、切断面の仕上がりに大きな差が生じる。例えば、ガス流量や火口の調整が良好な場合における開先面表面の凹部深さは0.2mm程度以下となるが、特殊な場合、例えば、火口の摩耗などにより火炎流速が通常より落ちた場合などには、1mmを超える凹部深さが生じるおそれがある。しかしながら、このような凹部が生じても、一般構造物等では手入れなしにそのまま溶接に供されることとなる。従って、高温割れや融合不良等による欠陥を有効に防止するには、溶接施工の際に開先面、特に溶接時の温度が低く、溶融深さが小さくなる傾向にある厚鋼材の底部を、より深く溶融する必要がある。また、切断面は加工熱により生じた厚い酸化膜で覆われているため、溶接施工の際にはやはり開先面をより深く溶融する必要がある。
以上のことから、本発明では、厚鋼材の底部における溶融深さは1.5mm以上としたのである。好ましくは2.0mm以上である。ただし、溶融深さが4mmを超えると、開先面の溶接ビード上部にアンダーカットが生じ、溶接欠陥の要因となるので、溶融深さは4mm以下とすることが好ましい。
以下、この初層の溶接条件について詳しく説明する。
狭開先の多層溶接では、1層当たり1パスとする場合、1電極では熱が開先中央に集中し易いため、鋼材の開先面における溶融が不足し、融合不良(コールドラップ)、開先面に付着したスパッタおよびスラグ巻き込みによる欠陥が生じ易い。特に、初層溶接は鋼材の温度が低く、溶融深さが小さくなるため、融合不良による欠陥が生じ易い。また、溶接施工能率向上の観点からは、2電極以上の多電極溶接とすることが有利である。
従って、初層溶接は、2電極以上の多電極溶接とし、電極のうち、少なくとも第1電極と第2電極を予め定めた平行な溶接線に沿うように配置するものとする。なお、電極数としては、2乃至4電極とすることが好ましい。
第1電極および第2電極を同極性(例えば、第1電極および第2電極ともワイヤプラス)とすると、図4(a)に示すように、互いのアークが内向きとなり、熱が開先中央に集中することになって、開先面において十分な溶融が得られなくなる。なお、図4(a)中、符号10がアーク、11が溶滴である。
ここで、第1電極および第2電極を同極性とした場合に、互いのアークが内向きとなる理由は、以下のように考えられる。
すなわち、第1電極および第2電極を同極性、つまり電流を同じ向きとする場合には、図5に示すように、フレミングの左手の法則に従い、互いの溶接電流による磁場(磁界)と溶接電流の向きから、第1電極および第2電極にはそれぞれ電磁力が内向きに働く。更に、開先内を流れる(広がっていく)電流は電極内を流れる電流とは逆向きとなるために、開先内を流れる電流によって生じる磁場と電極内を流れる電流よって生じる磁場が引き合い内向きの電磁力を生じる。結果としてこれらがそれぞれのアークに作用して、結果的に、互いのアークが強い内向きとなる。
一方、第1電極および第2電極のうち、一方をワイヤマイナス(正極性)、他方をワイヤプラス(逆極性)とし、第1電極と第2電極の配置を適正に制御すると、互いの溶接電流による磁場が強い外向きの電磁力を生じ(図5参照)、開先面内を流れる電流による磁場による内向きの電磁力に打ち勝ち、これにより、図4(b)に示すようにアークが互いに反発することとなる。その結果、開先面において十分な溶融深さを得ることが可能となる。
従って、第1電極および第2電極の溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤについては、一方をワイヤマイナス(正極性)、他方をワイヤプラス(逆極性)とする。
第1電極と第2電極の各溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤ先端間の距離a(以下、単に第1−2電極間距離ともいう、図2(b)参照)は、5mm以上16mm以下の範囲に制御する必要がある。なお、ここで言う溶接ワイヤ先端間の距離とは、各電極における溶接ワイヤ先端の中心間の距離を指すものとする。
というのは、第1−2電極間距離が5mm未満では、電極間に電流(電子)が流れることで、アークそのものの持つ熱が減少してしまい、開先面の十分な溶融が得られなくなる。一方、第1−2電極間距離が16mmを超えると、電極間の外向きの電磁力は距離に反比例し小さくなり、開先面を流れる電流によって生じる内向きの電磁力に打ち勝つためのアーク反発力が得られず、互いのアークが内向きとなって、熱が開先中央に集中し、結果的に、開先面における十分な溶融が得られなくなる。
また、狭開先溶接では、スパッタの開先面への付着による溶接欠陥の抑制が課題となるが、第1電極と第2電極を予め定めた平行な溶接線に沿うように配置し、その一方をワイヤマイナス(正極性)、他方をワイヤプラス(逆極性)とするとともに、第1−2電極間距離を5mm以上16mm以下の範囲に制御することで、スパッタはそれぞれの溶融金属に吸収される。これにより、開先面へのスパッタの付着が抑制されるので、健全な溶接部を得ることが可能となる。
従って、第1電極と第2電極の各溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤ先端間の距離は、5mm以上16mm以下の範囲に制御するものとする。より強いアークの反発により、より深く安定した開先面の溶融を得るには、第1−2電極間距離を5mm以上8mm以下の範囲に制御することが好ましい。
上記したように、本発明の狭開先ガスシールドアーク溶接方法では、アークの反発を利用して開先面の溶融を確保しているが、溶接線の直角方向に対する、第1電極と第2電極の溶接ワイヤ先端間を結ぶ直線の角度α(以下、単に第1-2電極配置角度ともいう、図2(b)参照)が45°を超えると、十分なアークの反発力が得られず、開先面において十分な溶融を得ることができなくなる。
従って、溶接線の直角方向に対する、第1電極と第2電極の溶接ワイヤ先端間を結ぶ直線の角度は45°以下に範囲に制御するものとする。より好ましくは30°以下である。なお、第1-2電極配置角度は0°であってもよい。
アークには指向性があり、電極(溶接ワイヤ)先端が指す方向に向きやすい性質がある。このアークの指向性を開先面の溶融に有効に活かすためには、電極先端が指す方向を開先面に向けることが有利であり、この電極先端が指す方向は溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤの供給角度により大きく変化する。
ここに、溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤの底部開先に対する供給角度が垂線に対して5°未満では、電流がより抵抗の小さい経路に流れてしまう。その結果、アークが電極であるワイヤを這い上がり(アークの這い上がり)、狙いとする開先面、特に底部での溶融を維持することが困難となる。一方、溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤの底部開先に対する供給角度が垂線に対して15°を超えると、アークが開先面に向き過ぎるために溶接ビード形状が凸となり、初層以降の溶接におけるアークでの溶融が不十分となって溶接欠陥を生じ易くなる。このため、第1電極および第2電極の溶接ワイヤの各底部開先に対する供給角度は、垂線に対して5°以上15°以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは6°以上12°以下である。
なお、第1電極および第2電極の溶接ワイヤの各底部開先に対する供給角度は、給電チップ、特に給電チップ先端の傾きと同じになるため、この給電チップ先端の傾きによりこの溶接ワイヤの供給角度を制御することができる。
厚鋼材の底部における溶融深さをより深く安定して得るには、底部開先における第1電極および第2電極の溶接ワイヤの先端の側端部と厚鋼材の開先面との距離を0.5mm以上3.0mm以下とすることが好ましい。
というのは、底部開先における溶接ワイヤの先端の側端部と厚鋼材の開先面との距離が0.5mm未満では、アークがワイヤ上部と開先面との間で発生し、厚鋼材底部の開先面を効率良く溶融できない。一方、3.0mmを超えるとアークが開先面から離れてしまい、開先面を効率良く溶融できないからである。より好ましくは0.5〜2.0mmの範囲、さらに好ましくは0.5〜1.0mmの範囲である。
なお、ここで言う溶接ワイヤの先端の側端部とは、各電極で溶融させようとする厚鋼材の開先面に近い側の側端部を指すものとする。
本発明では、第1電極および第2電極の溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤの供給角度を制御するため、先端を曲げた給電チップを使用する。このとき、溶接ワイヤが先端を曲げた給電チップを通ることになるが、よりスムーズに通過させるためには、いわゆる3点ローラー等を用いて溶接ワイヤを予め湾曲させておくことが好ましい。
ここに、溶接ワイヤの曲率半径が150mm未満ではワイヤの送給抵抗が大きくなって、安定して溶接ワイヤを送給することができず、アークを維持することが困難となる。一方、溶接ワイヤの曲率半径が300mmを超えると、給電チップ先端が曲がった状態でのワイヤの送給抵抗軽減に効果がないため、やはり安定して溶接ワイヤを送給することができず、アークを維持することが困難となる。
従って、第1電極および第2電極の給電チップに送給する溶接ワイヤの曲率半径は150mm以上300mm以下とすることが好ましい。より好ましくは175mm以上275mm以下である。
溶接盛り高さが底部開先ギャップを超えると、高温割れのリスクが高くなる。これを回避するには、第3電極以降の電極を、第1電極および第2電極の後方の開先中央に配置することが有効である。また、これにより積層数の低減が更に可能となり、多層溶接における積層欠陥のリスクを大きく低減できる。
なお、第3電極以降の極性は特に限定されず、ワイヤマイナス(正極性)、ワイヤプラス(逆極性)のいずれであってもよい。
ここで、1層当りの溶接盛り高さが底部開先ギャップGの0.4倍未満では、入熱が不足し、開先面の深い溶融が困難になるだけでなく、溶着量が不足して各層での溶接ビード形状が変化してしまう。一方、1層当りの溶接盛り高さが底部開先ギャップGの1.0倍を超えると、溶着量が多くなりすぎ、両側の開先面を均等に溶融することができなくなる。
従って、初層溶接を2電極溶接とする場合における溶接盛り高さは底部開先ギャップGの0.4倍以上1.0倍以下とすることが好ましい。より好ましくは底部開先ギャップGの0.5倍以上0.8倍以下である。
溶接部の溶け込みは、アークそのものによるガウジング効果と高温状態にある溶接金属の対流によって支配されている。溶接金属の対流が内向きとなる場合、高温の溶接金属が上から下方向に対流するのでアーク直下の溶け込みが増す。一方、溶接金属の対流が外向きとなる場合、高温の溶接金属が中央から左右方向に対流し、溶接ビードが広がりを持つとともに開先面の溶け込みが増す。従って、本発明で目標とする厚鋼材の底部における溶融深さ:1.5mm以上を達成するには、溶接金属の対流を外向きとすることが好ましい。
そのためには、溶接金属の湯流れを支配する酸素(O)と硫黄(S)の濃度を好ましくは400質量ppm以上(ただし、1000質量ppmを超えると溶接金属の靭性確保が困難となるため、1000質量ppm以下)にする必要がある。
ここに、溶接金属中の酸素量は、シールドガス組成にも大きく影響を受けることから、シールドガス組成としては、CO2ガスを60体積%以上、残りをAr等の不活性ガスとして含有する混合ガスを使用することが好ましい。特に好ましくはCO2ガス:100体積%である。
なお、鋼材の開先加工には、ガス切断を用い、開先面には研削等の手入れは行わなかった。また、開先面の最大凹部深さはレーザ変位計を用いて測定した。
すなわち、図6に示すように、測定点の最も高い凸部と最も低い凹部をそれぞれ通り、全ての測定点をその間に含む2本の平行線とその中間線を引く。ここで、凹部とはこの中間線より低い部分であり、開先面の凹部深さとは、凹部と中間線との距離とした。開先面の最大凹部深さとは、この凹部深さの最大値である。
測定結果を表1に併せて示す。
◎:検出欠陥なし
○:欠陥長さが3mm以下の合格欠陥のみを検出
×:欠陥長さが3mmを超える欠陥を検出
これらの結果も併せて表3に示す。
一方、比較例であるNo.17〜21はいずれも、鋼材の底部における溶融深さが1.5mmに満たず、また超音波探傷検査においては、欠陥長さが3mm超の欠陥が検出された。
2:厚鋼材の開先面
3:底部開先
4:第1電極
5:第2電極
4a、5a:溶接トーチの給電チップ
4b、5b:溶接ワイヤ
6:裏当て材
7:溶接線
8:溶接ビード
9:溶融池
10:アーク
11:溶滴
θ:底部開先角度
G:底部開先ギャップ
h:底部開先高さ
t:板厚
a:第1電極と第2電極の各溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤ先端間の距離
α:溶接線の直角方向に対する、第1電極と第2電極の溶接ワイヤ先端間を結ぶ直線の角度
φ:溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤの供給角度
d:底部開先における溶接ワイヤの先端の側端部と厚鋼材の開先面との距離
P:厚鋼材の底部における溶融深さ
H:溶接平均盛り高さ
Claims (6)
- 底部開先角度を25°以下、底部開先ギャップを7mm以上18mm以下とし、板厚が22mm以上である厚鋼材を、狭開先の多層溶接により接合するガスシールドアーク溶接方法において、
初層溶接を2電極以上の多電極溶接とし、第1電極と第2電極を予め定めた平行な溶接線に沿う配置にするとともに、
該第1電極および該第2電極の一方をワイヤマイナス(正極性)、他方をワイヤプラス(逆極性)とし、
さらに、該第1電極と該第2電極の各溶接トーチ先端の給電チップから供給する溶接ワイヤ先端間の距離を5mm以上16mm以下の範囲に、また溶接線の直角方向に対する、該第1電極と該第2電極の溶接ワイヤ先端間を結ぶ直線の角度を45°以下の範囲にそれぞれ制御することにより、
上記厚鋼材の底部における溶接線の直角方向の溶融深さを1.5mm以上とする狭開先ガスシールドアーク溶接方法。 - 前記初層溶接において、前記第1電極および前記第2電極の溶接ワイヤの各底部開先に対する供給角度を垂線に対して5°以上15°以下とする請求項1に記載の狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
- 前記初層溶接において、底部開先における前記第1電極および前記第2電極の溶接ワイヤ先端の側端部と前記厚鋼材の開先面との距離を0.5mm以上3.0mm以下とする請求項1または2に記載の狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
- 前記初層溶接において、前記第1電極および前記第2電極の給電チップに送給する溶接ワイヤとして、曲率半径が150mm以上300mm以下となる範囲で湾曲させたワイヤを用いる請求項1〜3に記載の狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
- 前記初層溶接において、第3電極以降の電極を、前記第1電極および前記第2電極の後方の開先中央に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
- 前記狭開先ガスシールドアーク溶接におけるシールドガスとして60体積%以上のCO2ガスを含有した混合ガスを用いる請求項1〜5いずれかに記載の狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
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