本発明の耐汚染性に優れたプレコート金属板は、金属板表面に有機樹脂塗装を施した一般的なプレコート金属板表面に、耐汚染性を発現する更なる皮膜の層を1層以上設けたプレコート金属板である。耐汚染性の発現は、更なる皮膜層が、表面の汚染物質の分解、除去に対して優れた効果を示す光触媒活性を有する物質(光触媒物質)を含有していることに起因する。特に、本発明における可視光型光触媒物質は、紫外光領域のみならず可視光領域において光触媒作用を発現するものであり、室内の蛍光灯やLED光のもとでも耐汚染効果を発現できるプレコート金属板であり、屋内壁面、間仕切り部材、家電製品の筐体などに適用することができる。
一方で、可視光型光触媒を利用したプレコート金属板では、従来の紫外光励起型の光触媒と比較して吸収する波長領域(紫外光〜可視光)が広いことから、紫外光型光触媒を利用したプレコート金属板よりも高い光触媒活性が発現し、特に屋外での使用において、前者のプレコート金属板の方が後者のプレコート金属板に対して高い光触媒活性を呈する場合が多い。この性質は、可視光型光触媒を利用したプレコート金属板表面では汚れがさらに付着しにくいことを意味しており、耐汚染性の観点からは望ましいといえるが、同時に、高い光触媒活性によって塗膜を構成する有機樹脂も分解されるため、特に屋外での使用において皮膜の劣化が起こりやすく、短い時間で皮膜のチョーキングが生じることを意味している。このため、光触媒を利用した耐汚染性プレコート金属板では、屋外で使用する耐汚染金属板と屋内で使用する耐汚染プレコート金属板とでは、全く異なる構成を有していた。特に、光触媒種、皮膜の樹脂組成、塗膜構成は、屋内使用と屋外使用とでは、それぞれ全く異なっており、屋内、屋外ともに使用できる耐汚染性のプレコート金属板は存在していなかった。
これらの問題点に対し、本発明は、光触媒を用いた耐汚染性プレコート金属板であって、室内、屋外を問わず使用可能なプレコート金属板を得ることを目的として、最外層皮膜に酸化ケイ素、またはシロキサンポリマーを適用し、可視光型光触媒に対する耐性を著しく高めている。これは、上記した通り、可視光型光触媒を屋外で使用した場合には皮膜が顕著に劣化するが、本発明で用いる最外層皮膜には酸化ケイ素、またはシロキサンポリマーを使用していることから、優れた光触媒耐性が発現する。また、使用目的によっては最外層の下に積層する皮膜にも可視光型の光触媒を配合することで、最外層と下層皮膜との接着性を高めるとともに、最外層皮膜が消失した後も光触媒による耐汚染効果が発現することとなる。これらの複合的な効果によって、室内、屋外を問わず使用可能であり、かつ、皮膜の劣化が極めて少なく、長期にわたって耐汚染効果を発現する光触媒を用いた耐汚染性を有するプレコート金属板が得られる。
また、一般的なプレコート金属板に対しては、屋内壁面、間仕切り部材、家電製品の筐体や屋外の屋根、壁材として使用できるだけの加工性が必要とされるが、この課題に対しては、最外層の下に位置する皮膜組成物中に含まれる有機官能基量を増やし、さらに可視光型の光触媒の配合量を減らすことにより軟質皮膜を形成し、かつ皮膜を所定の厚さ以下で形成することでプレコート金属板に要求される加工性等のその他特性をも満足するものである。
本願発明の第1の態様は、金属板の少なくとも片側表面に少なくとも1層の有機樹脂層を有し、前記有機樹脂層の上に2層以上の可視光領域において光触媒活性を有する皮膜を有するプレコート金属板であって、最外層に位置する皮膜は、シロキサンポリマーと、可視光領域において光触媒作用を発現する光触媒物質を含む。
更に最外層皮膜の下に位置する皮膜が、シロキサンポリマーを主成分とし、最外層皮膜よりも少ない量の光触媒物質を含む。
第1の態様における最外層皮膜組成物の具体的な成分としては炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン、エポキシ基を有するアルコキシシラン、及びこれらのアルコキシシランの縮合物からなるシロキサン骨格を有する無機ポリマーまたはテトラアルコキシシラン及びこれらのアルコキシシランの縮合物からなる無機ポリマーのいずれかを使用する。これにより可視光型の光触媒による皮膜の分解を最低限に留めている。
最外層皮膜の下に位置する皮膜を構成する組成物については、炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン、炭素数1以上12以下のアルキル基を有するアルコキシシラン、アリール基を有するアルコキシシラン、及び炭素数1以上12以下のアルキル基とアリール基の双方を有するアルコキシシランからなる群から選択される、少なくとも1種のアルコキシシラン、エポキシ基を有するアルコキシシラン、アミノ基を有するアルコキシシラン、並びにこれらのアルコキシシランの縮合物からなる無機−有機複合ポリマーとすることで、最外層皮膜組成物と比較してアルキル基、アリール基を有するアルコキシシランの配合量を多くし、皮膜を軟質化させ、最外層皮膜の下に位置する皮膜の伸び特性を確保する。
そして、このように硬質で耐久性に優れる最外層皮膜と延性に優れる内側皮膜を積層するとともに、前記光触媒活性を有する光触媒物質の含有量が、最外層皮膜が最も多く、内側の皮膜ほど少なくなるようにすることで、室内、屋外のいずれの使用に対しても可視光型光触媒の作用の効率的な発現と皮膜耐久性とのバランスを確保した。
そして更に、内側皮膜と最外層皮膜を合わせた光触媒皮膜全体の厚さを5μm以下に限定することで、皮膜全体としての加工性、皮膜密着性を確保した。このような構成とすることで、本願発明のプレコート金属板は、光触媒に対する高い耐性と優れた曲げ加工性、加工部の密着性を確保している。
この結果、加工をほとんど必要としない部材は言うに及ばず、家電筐体のような複雑な成形加工が必要とされる部材まで、屋内、屋外を問わず幅広い用途への展開を可能としている。
また、皮膜中における光触媒物質の分散状態に変化を持たせ、最外層の皮膜中では分散粒子径を大きくすることで初期段階から十分な耐汚染性を発現させ、有機樹脂層と接触する内側の皮膜(最内側皮膜)では分散粒子径を小さくすることで光触媒機能を有する塗膜の下層に接する有機樹脂層の劣化を抑制することが可能となるため、光触媒に対する皮膜の安定性が格段に優れ、長期間にわたって優れた耐汚染性効果を発揮することができるため、より好ましい。
この結果、加工をほとんど必要としない部材は言うに及ばず、適度な加工性が必要とされる金属製家具やパーティション、家電筐体のような複雑な成形加工が必要とされる部材まで、屋内、屋外を問わず幅広い用途への展開を可能としている。
以下に本発明のプレコート金属板を詳しく説明する。
本発明のプレコート金属板は、表面の皮膜に大きな特徴があり、可視光型の光触媒物質を含有している場合であっても、皮膜組成物が劣化しにくい成分、構造を有している。特に最外層に位置する皮膜組成物は、酸化ケイ素、またはシロキサンポリマーである。前記酸化ケイ素としては非晶質シリカが好適である。また、前記シロキサンポリマーとして具体的には炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン、エポキシ基を有するアルコキシシランの加水分解反応及びその後の縮合反応により得られる脱水縮合物からなる樹脂が挙げられる。
炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシランなどが挙げられる。エポキシ基を有するアルコキシシランとしては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどが好適に用いられ、取扱いの容易さ、反応性等の点でγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが特に好適に用いられる。
上記のアルコキシシランとアルコキシシランの縮合物からなる樹脂は、無機成分であるシロキサンを主体とし、エポキシ基が少量配合された無機成分を主体とした光触媒に対する高い安定性を有する樹脂である。このうち、エポキシ基を有するアルコキシシランは皮膜の焼付け温度を低下させる効果を有しており、プレコート金属板を得るために望ましい成分である。一般にケイ素のアルコキシドのみを出発原料としてポリシロキサン系の皮膜を形成する場合、脱水縮合から硬化まで一連の工程を効率的に行うためには400〜500℃で数時間単位の熱処理が必要とされている。本発明の皮膜用樹脂では、エポキシ基を導入することで150〜200℃程度の処理温度の低減と熱処理時間の短縮を図り、コイルコーティングが可能な熱処理条件とし、プレコート金属板としての製造を可能にしている。
一方で、本発明のプレコート金属板を、屋根材など太陽光が十分に照射し、高い光触媒活性が得られるとともに光触媒皮膜の劣化が著しいときには、最外層皮膜を構成する樹脂は、テトラアルコキシシラン及びこれらのアルコキシシランの縮合物のみからなる無機ポリマーとすることが好ましい。テトラアルコキシシランは、加水分解と脱水縮合により水酸基を含んだシロキサン結合が生成し、さらにエージングや加熱処理を行うことでシロキサン結合のみとすることができ、さらに光触媒耐性の高い無機樹脂を得ることができる。
最外層の皮膜組成物に含まれるエポキシ基の割合は、Si−Oの結合1に対して0〜0.25の割合であることが好ましく、より好ましくはSi−Oの結合1に対して0〜0.22の割合である。エポキシ基の含有量がこの値を超えて多すぎる場合、光触媒耐性に劣る皮膜となる。上記の割合でエポキシ基を含有する無機ポリマー、またはシロキサンからなる無機ポリマーとすることで、光触媒活性が極めて高い窒素ドープ型の可視光型の光触媒を分散する皮膜組成物として好適に用いることができる。
これに対し、最外層以外の内側に位置する皮膜組成物の成分は、酸化ケイ素、またはシロキサンポリマーを主成分とする。前記酸化ケイ素としては非晶質シリカが好適である。また、前記シロキサンポリマーとしては、炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン、炭素数1以上12以下のアルキル基を有するアルコキシシラン、アリール基を有するアルコキシシラン及び炭素数1以上12以下のアルキル基とアリール基の双方を有するアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のアルコキシシランと、エポキシ基を有するアルコキシシランまたはアミノ基を有するアルコキシシランとの加水分解反応及びその後の縮合反応により得られる脱水縮合物である。繰り返しになるが、アルコキシシランの縮合物とは、原料として用いたアルコキシシランが加水分解し、一旦加水分解物を生成した後、乾燥焼付け(熱処理)工程で縮合して生成したものが好適である。
このように、最外層を除いた内側の皮膜は、それを構成する組成物が、酸化ケイ素、またはシロキサンポリマーのうちの、特に非晶質シリカまたはケイ素を主成分としたポリシロキサン系の無機ポリマーにアルキル基、アリール基を多く配合した無機-有機複合ポリマーが主成分であることから、光触媒に対する適度な安定性、耐候性に加えて、加工性にも優れた皮膜となっている。
ここで、炭素数1以上12以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基など、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。
この内、本発明の有機基として特に好適に用いられるのはメチル基、またはフェニル基であり、メチル基を有するアルコキシシラン、フェニル基を有するアルコキシシラン、メチル基とフェニル基を有するアルコキシシランが特に好適に用いられ、中でもフェニル基を有するアルコキシシランが特に望ましい。
また、本発明で用いる有機基は2種類以上のものを同時に使用することができ、異なる有機基を有する2種以上のアルコキシシラン、異なる2種以上の有機基を含有するアルコキシシランを好適に使用することができる。
これら内側の皮膜を構成するケイ素酸化物の骨格中に有機成分を配合した無機−有機複合ポリマーは、Si−Oの結合1に対して0.05〜1.5の割合で、メチル基、及び/またはフェニル基が結合していることが望ましい。より好ましくは、Si−Oの結合1に対して0.05〜1.2の割合でメチル基、及び/またはフェニル基が結合していることが望ましい。このポリマーが、これらの範囲を超えて多くのメチル基、及び/またはフェニル基を含有している場合、皮膜の柔軟性が高くなり、十分な加工性を付与することができるものの、光触媒耐性が低下することとなり好ましくない。一方、このポリマーにおけるメチル基、及び/またはフェニル基の含有量がこれらの範囲を超えて少ない場合、皮膜に十分な柔軟性を付与することができず、加工時の密着性が低下することとなり好ましくない。
また、外層側から内側に向けてアルキル基、アリール基を有するアルコキシシランの配合量を増やすことで、段階的に皮膜の柔らかさ、伸び特性を変え、より成形加工性や加工部密着性に優れた皮膜を実現している。
本発明のプレコート金属板に用いる基材金属板の有機樹脂層を形成する有機樹脂として、例えば、ポリエステル、ウレタン、アクリル、エポキシ等の有機ポリマーを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート 、ポリトリメチレンテレフタレート 、ポリブチレンテレフタレート 、ポリエチレンナフタレート 、ポリブチレンナフタレート等を挙げることができる。
ウレタン樹脂は、通常イソシアネート基とアルコール基が縮合してできるウレタン結合でモノマーを共重合させた高分子化合物である。
アクリル樹脂は、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体で、透明性の高い非晶質の合成樹脂である。
エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物の総称であり、具体的には、ビスフェノール型とノボラック型のエポキシ樹脂を挙げることができる。
有機樹脂層の厚みは、通常5μm〜50μmとなることができる。
本発明で用いる光触媒活性を有する皮膜中には、可視光領域において活性を有する可視光型光触媒物質を含んでいる。光触媒物質の代表例は光触媒粒子であるが、本発明のプレコート金属板上の皮膜に含まれる光触媒物質は、粒子状態であるものはもちろんのこと、粒子とはいえないようなゾル状物質、金属錯体を加熱して生成した物質なども必要に応じて用いることができる。
可視光領域型光触媒物質としては、アナターゼ型の酸化チタンに窒素やイオウなどの陰イオンをドーピングしたもの、同じくアナターゼ型の酸化チタンにPt粒子を担持させたもの、AgNbO3とSrTiO3の固溶体などが良く知られており、本発明の光触媒物質として好適に用いることができる。しかしながら、本発明の可視光型光触媒物質としては、光触媒性能が優れており、安価に製造できることから酸化チタン結晶に窒素をドーピングしたものが特に好適に用いられる。
酸化チタン結晶に窒素をドーピングして作製した光触媒は、ドープした窒素の存在状態によって、(i)酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素原子で置換し、Ti−O−N構成を有するもの、(ii)酸化チタン結晶の格子間に窒素原子が存在するもの、及び(iii)酸化チタン結晶の多結晶集合体の粒界に窒素原子が存在しているものなどがあり得る。このうち、(i)の光触媒物質は、酸化チタンの結晶格子中でチタン原子と窒素原子との間で化学結合を形成すること、たとえば、酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素で置換したTi−O−N構造を形成することにより、結晶構造はより安定し、可視光領域(波長約360nm〜約830nm)、紫外光領域(波長約10nm〜約400nm)のいずれにおいても優れた光触媒性能と経時変化が少ない長期にわたって安定した光触媒性能が得られるため、本発明の光触媒としては特に好適に用いることができる。
本発明で用いる可視光型の光触媒物質は、粉末であっても、水に分散した水系のゾルもしくはコロイド、あるいはアルコールなどの極性溶媒やトルエンなどの非極性溶媒中に分散した有機溶媒系のゾルもしくはコロイドなどの形態であってもよい。光触媒物質が有機溶媒系のゾルもしくはコロイドである場合、その分散性に応じて、さらに水や有機溶媒を用いて希釈してもよく、また分散性を向上させるために光触媒物質の表面を処理して用いてもよい。
多くの場合、光触媒としては粉末状の光触媒粒子を用いるのが一般的であるが、本発明で用いる光触媒粒子の性状は特に限定を受けるものではない。しかしながら、高い触媒活性を得るためにはできるだけ細かい粒子を用いるのが好ましい。好ましい光触媒粒子の大きさとしては一次粒子径で0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下、さらに好ましくは0.05μm以下である。粒子サイズの下限は特に限定を受けないが、細かすぎても扱いにくくなるため、通常は一次粒子径で5nm以上のものが好適に用いられる。
粒子径が細かく、活性の高い粒子を光触媒として使用した場合、優れた光触媒効果、すなわち汚染物質の除去効果が得られるが、通常は同時に光触媒を保持している皮膜それ自体が劣化するため、長期間にわたって耐汚染性、セルフクリーニング性を発現させることはできない。本発明で用いる皮膜組成物は、これまでに用いられてきた有機樹脂成分と比較して、光触媒粒子による劣化を大幅に抑制しているため、粒子径が細かく、活性が高い光触媒粒子を特に支障なく用いることができる。
なかでも、最外層皮膜はシロキサン骨格の骨格中に有機成分を配合したポリマーであることから、光触媒耐性が極めて高く、活性の高い光触媒を最大限に添加することができる。屋外での使用など特に高い光触媒耐性を必要とする場合には、非晶質シリカに代表される酸化ケイ素やテトラアルコキシシラン及びそのアルコキシシランの縮合物であるケイ素酸化物の骨格を主体とした無機ポリマーを使用することが好ましいい。
内側皮膜では、有機官能基の含有量を高めて無機成分比率を低減し、併せて光触媒濃度も下げ皮膜の耐久性を確保するとともに、無機成分含有量と光触媒添加量が少ないことから、皮膜の伸びや十分な加工性を付与している。
この結果、最外層皮膜によって高い耐汚染性を維持しつつ、無機成分を主体とした最外層皮膜の硬さや加工性の低さを補い、最外層皮膜と内側皮膜とが一体となり皮膜全体として光触媒に対する耐久性、安定性を高め、かつ加工部においても剥離を生じない優れた密着性と耐久性に優れた皮膜としている。
さらには、最外層、内側皮膜を合わせた全体の皮膜厚さが5μm以下であるため、最外層に無機成分を主体とした硬い皮膜を配置しているデメリットを打ち消し、特に皮膜の加工性や加工部の密着性において上記の効果をより顕著なものとしている。
また、微細な光触媒粒子を用いた場合、分散が困難であることにより、皮膜中で凝集体を形成する可能性もある。しかしながら、通常、これらの凝集体の間隙には皮膜を構成する樹脂成分が存在しない場合が多いため、汚染物質が触媒表面に到達しやすくなるという利点も考えられる。
この点について、皮膜中における光触媒物質は均一に分散していることが望ましいが、必ずしも完全に均一である必要はない。均一に分散していない例としては、上述したように凝集体を形成している場合や光触媒物質の含有濃度が最表面部と内部とで異なっている場合、光触媒物質の含有濃度が段階的に変化している場合などが挙げられ、これらの状態であっても好適に用いることができる。
本発明では、光触媒活性を有する皮膜中の光触媒物質の分散状態に変化を持たせ、初期段階から長期間にわたって耐汚染性効果を発現させ、皮膜樹脂の劣化を抑制することを1つの態様としている。これは、皮膜中に含まれる光触媒物質に粒径分布の極大値が存在し、最外層に位置する皮膜中の光触媒物質の粒径分布の極大値の1つが0.5μm〜5μmの範囲にあり、かつ有機樹脂層に接する内側皮膜中の光触媒物質の粒径分布の極大値の1つが0.2μm以下としたものである。このうち、最外層皮膜中の光触媒は、汚染物質に直接接触することから活性が高いことが好ましく、微細な光触媒粒子が凝集した結果、粒径分布の極大値の1つが0.5μm〜5μmの範囲にあることが望ましい。最外層に位置する皮膜中の光触媒物質の粒径分布のより好ましい極大値の範囲としては0.5μm〜3μmであり、さらに好ましくは0.6μm〜2μmである。また、最内側皮膜中の光触媒物質の粒径分布のより好ましい極大値の範囲は0.15μm以下である。
粒径分布の極大値がこれらの範囲を超え、最外層に位置する皮膜中の光触媒物質の粒径分布の極大値の1つが大きすぎる場合には、分散粒子径が大きすぎて凹凸の激しい粗な皮膜となり、美麗な外観が得られないだけでなく皮膜から光触媒物質が脱落しやすくなるなどの不都合が生じる。一方で、極大値の1つがこれらの範囲を超えて小さすぎる場合には、光触媒物質が皮膜中に微細分散されるため、ごく初期の段階で耐汚染性が発現しにくくなる可能性がある。このため、粒径分布の極大値については、合計の皮膜厚さの2倍である20μmを超えるようなものが存在しないのが好ましく、より好ましくは10μmを超えるような極大値が存在しないことである。また、最外層皮膜中では0.2μmに満たない極大値が存在しないことが好ましい。
また、最内側皮膜中の光触媒物質の粒径分布の極大値の1つがこれらの範囲を超えて大きすぎる場合には、上記最外層皮膜同様、外観の不具合や粒子の脱落といった不都合に加えて光触媒物質と光触媒皮膜との下層にある樹脂層とが直接接触する頻度が高くなることから、樹脂層の劣化が早くなる可能性がある。
本発明で用いる可視光型光触媒は、酸化チタンをベースとした光触媒物質を例に挙げれば、以下のいずれかの方法により製造することができる。
(I)酸化チタンまたは含水酸化チタンを、アンモニアガス、窒素ガス、及び窒素ガスと水素ガスとの混合ガスからなる群から選択される少なくとも1種のガスを含む雰囲気中で熱処理する方法。
(II)チタンアルコキシド溶液を、アンモニアガス、窒素ガス、及び窒素ガスと水素ガスとの混合ガスからなる群から選択される少なくとも1種のガスを含む雰囲気中で熱処理する方法。
(III)エマルジョン燃焼法において、(1)エマルジョン中の水相であるチタン塩水溶液中またはサスペンジョン中に、硝酸イオン以外の窒素元素を含むイオンまたは分子、たとえばアンモニア、ヒドラジンが存在し、かつ(2)エマルジョン中に含まれる油及び界面活性剤を含む燃焼成分が完全に燃焼し、かつ水溶液中に含まれる金属イオンまたは金属化合物が大気中で最も安定な酸化物を形成するために必要な酸素量(以下、必要酸素量という)以下の酸素が反応装置内に導入された雰囲気中で、エマルジョンを噴霧燃焼させる方法。
(IV)エマルジョン燃焼法において、
(1)エマルジョン中の水相であるチタン塩水溶液またはサスペンジョン中に、硝酸イオン以外の窒素原子を含むイオンあるいは分子、たとえばアンモニア、ヒドラジンが存在せず、(2)窒素ガス以外の窒素含有ガス、たとえばアンモニアを含み、かつ反応装置内に導入された酸素量が必要酸素量よりも少ない雰囲気中で、エマルジョンを噴霧燃焼させる方法。
(V)窒化チタン結晶または窒酸化チタン結晶を、酸素、オゾン、水分子、またはヒドロキシル基を含む化合物を含む酸化雰囲気中で熱処理あるいはプラズマ処理する方法。
(VI)酸化チタンと、常温で酸化チタンに吸着する窒素化合物との混合物を加熱する方法。
本発明の光触媒皮膜の厚さは合計で5μm以下であり、より好ましくは4μm以下、成形加工性の点からさらに膜厚の制約が厳しい場合には、3μm以下とすることが好ましい。皮膜厚さの下限には制約がなく、光触媒皮膜が形成されていれば効果を発揮するが、ほぼ全面にわたって欠陥のない皮膜を形成しようとした場合、それぞれの皮膜が0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.3μm以上である。
上記範囲を超えて皮膜が厚すぎる場合には、必要な成型加工性が得られない、あるいは加工時の密着性が十分でない可能性があり、一方で、皮膜厚さがこれらの範囲を超えて薄い場合、均一な皮膜を形成して所定の特性を発現することが困難となることが多い。
また、それぞれの皮膜ごとの厚さは、必要とされる特性あるいは用途によっても異なるが、1層の皮膜あたり0.1μm以上3μm以下であることが望ましく、より好ましくは0.1μm以上2.5μm以下である。さらに膜厚の制約が厳しい場合には、0.3μm以上2μm以下とすることが好ましい。
皮膜厚さがこれらの範囲を超えて薄い場合、均一な皮膜を形成して所定の特性を発現することが困難であり、一方で、皮膜が上記範囲を超えて厚すぎる場合には、必要な成型加工性が得られない、あるいは加工時の密着性が十分でない可能性がある。
皮膜厚さに関してさらに述べれば、現在のところ、最も落ちにくい汚れとして認識されているのはシリコン系シーリング剤であり、発明者らの検討によれば、表面にこの汚れを付着させることなく、例えば5年間良好な状態を維持しようとした場合、最外層の皮膜厚さは1μm以上であることが好ましく、1μm〜3μmの範囲で皮膜を形成することが望ましい。
また、この場合、内側皮膜の望ましい皮膜厚さは、必要とされる加工性によっても異なるため、一概に決定することはできないが、最外層皮膜の半分程度から1.5倍程度までの範囲とすることが好ましく、最外層の皮膜厚さを上記と仮定すれば0.5μm〜5μmの範囲とすることが好ましい。具体的な膜厚の例としては、(1)最外層皮膜2μm/内側皮膜2μm、(2)最外層皮膜2μm/内側皮膜1μm、(3)最外層皮膜3μm/内側皮膜6μm、(4)最外層皮膜2μm/中間皮膜1μm/最内側皮膜1μm、(5)最外層皮膜2μm/中間皮膜2μm/最内側皮膜2μm、などである。中間皮膜は複数存在することができるが、上述したように光触媒皮膜の厚さは合計で5μm以下である。
本発明のプレコート金属板の態様は、光触媒による耐汚染性の効果に加えて、従来知られている(1)単一の光触媒皮膜、(2)光触媒皮膜及び光触媒を含有しない保護皮膜、という皮膜構成と比較してセルフクリーニング効果を長期間に亘って維持することを企図したものである。従来の光触媒皮膜では、光触媒皮膜の劣化、あるいは剥離等によって基材金属板の有機樹脂層または光触媒機能を有しない保護層が露出した段階で、著しくかつ急激にセルフクリーニング性が低下する。これに対して、本発明のプレコート金属板の態様の1つは、少なくとも2層の光触媒皮膜を形成し、その両者に光触媒物質を含有されているため、単一の光触媒皮膜の場合と比較して光触媒によるセルフクリーニング性を少なくとも2倍以上の長期に亘って持続させることができる。さらには、最外層皮膜と内側皮膜の光触媒粒子の結合により、これらの皮膜の密着性が向上し耐久性を向上させることができる。
また、少なくとも2層の光触媒皮膜のうち、基材金属板に近い内側の皮膜ほど光触媒含有量を少なくなるようにすることによって、内側皮膜の柔軟性をさらに高くするとともに、光触媒含有量の多い外側の光触媒皮膜が失われても、初期状態ほど顕著な効果は持続しないものの、引き続き所定のセルフクリーニング性が得られることを意図している。内側の皮膜中に適切な量の光触媒を添加しておくことで、必要十分なセルフクリーニング性とセルフクリーニング寿命、さらには皮膜全体として加工部における変形追従性や加工部密着性を得ることができる。
この結果、本発明のプレコート金属板は、屋内、屋外のいずれにも適用できるセルフクリーニング性のみならず皮膜の加工性、密着性等の観点でも長期に亘って安定した汚れのないプレコート金属板を実現することができる。
本発明における態様の1つとして、少なくとも2層の光触媒活性を有する皮膜中に含まれる光触媒量は、最外層皮膜で最も多く、内側皮膜となるほど少なくする。この結果、最外層皮膜が劣化、チョーキングを起こして消失し、第2層目の皮膜が露出した場合であっても、それまでの最外層皮膜によって得られたセルフクリーニング性よりは若干劣るものの、継続して耐汚染効果を得ることができ、基材プレコート金属表面が露出するまで、長期間に亘って優れた耐汚染性、セルフクリーニング効果を得ることができる。また、最外層皮膜から内側に向かって段階的に光触媒含有量を少なくしているため、内側の皮膜ほど光触媒による劣化が抑制され、長期間に亘って優れたセルフクリーニング性が維持されることになる。
これらの各皮膜中における光触媒物質の含有量は、合計皮膜全体に対する質量割合で50%以下、好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下とするのが良い。添加量の下限については、光触媒物質の効果が得られる範囲内で決定すれば良く、通常は合計皮膜全体に対する質量割合で0.05%以上、より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.5%以上である。
また、最外層から内側に向かって光触媒物質の含有量を変化させる場合の光触媒の含有量は、上記した光触媒量の範囲で適宜決定することができる。例えば、第2層皮膜を形成する場合、最外層皮膜とその下に位置する第2層皮膜の光触媒量の組合せとして、皮膜全体に対する質量割合で50%/20%、35%/10%あるいは20%/5%などに設定することができる。また、更にその下に位置する第3層皮膜を形成する場合には、合計皮膜全体に対する質量割合で50%/30%/10%、35%/20%/10%あるいは20%/15%/1%などに設定することができる。
最外層から内側に向かって光触媒物質の含有量を変化させる場合の含有量の例は、上記で示した通りであるが、望ましくは最内側皮膜中の光触媒の含有量を、合計皮膜全体に対する質量割合で0.05%〜30%にすると良い。最内側皮膜は基材金属板のポリエステル、ウレタン、アクリル、エポキシ等の有機樹脂を主成分とする有機樹脂層と接しているため、また皮膜の柔軟性を確保する観点からも必要以上に光触媒を含有しないことが望ましい。最内側皮膜におけるより好ましい光触媒量は、合計皮膜全体に対する質量割合で0.05%〜20%であり、さらに好ましくは合計皮膜全体に対する質量割合で0.1%〜15%である。
光触媒物質は、そのままの状態で皮膜中に添加し、用いることも可能であるが、触媒担体表面に担持させた状態で使用することも可能である。触媒担体を用いることで、光触媒物質と皮膜のポリマー成分が直接接触する面積を減らすことができるため、光触媒による皮膜の減耗、劣化を抑制することができる。また、分散が困難であるような塗料(樹脂)と光触媒物質との組合せであるような場合、担体として適当な材質を選択することによって、より分散状態に優れた光触媒皮膜を得ることができる。担体には、光触媒に対して安定な無機系の酸化物、特に酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化カルシウムなどが好適に用いられる。
本発明における光触媒皮膜は、実質的に酸化ケイ素、またはシロキサンポリマーと光触媒物質とからなり、光触媒含有量が約10%であれば残りは酸化ケイ素、またはシロキサンポリマーとなることができる。しかしながら、皮膜の意匠性、耐食性、耐摩耗性、触媒機能等を向上させることを目的として、さらに、着色顔料、体質顔料、光触媒以外の触媒、防錆顔料、金属粉末、高周波損失剤、骨材等を添加することも可能である。顔料としては、例えば、SiO2、TiO2、Al2O3に代表される酸化物、2種以上の金属元素を構成成分とする複酸化物やZn粉末、Al粉末等の金属粉末などが挙げられる。防錆顔料を添加する場合には、環境汚染物質を含まないモリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム等の非クロム酸顔料を用いることが好ましい。また、高周波損失剤としてはZn−Niフェライトが、骨材としてはチタン酸カリウム繊維等が挙げられる。
これらの添加物の添加量は、必要とする性能に応じて適宜決定することができるが、本発明における皮膜の特性を最大限に生かすためには、あまり多くの添加物を用いないことが好ましい。好ましい添加量としては、各皮膜に対する質量割合で30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%である。
本発明の皮膜中には、主たる元素としてSiが含まれているが、これ以外の元素としてB、Al、Ge、Ti、Y、Zr、Nb、Ta等から選ばれる少なくとも1種の金属元素を添加することができる。このうち、Al、Ti、Nb、Taは酸を触媒として系に添加しているときに、皮膜の固化を低温あるいは短時間で完了させるための触媒的な働きを示すものである。酸を触媒としてこれらの金属含有アルコキシドを添加したときにはエポキシの開環速度が速くなり、低温短時間での皮膜硬化が可能となる。特にしばしば用いられるのはTiであり、Ti−エトキシド、Ti−イソプロポキシド等のTiのアルコキシドが好適に用いられる。また、Zrを添加した系では、皮膜の耐アルカリ性が顕著に改善されるため、特に耐アルカリ性が必要とされる用途で好適に用いられる。
本発明で用いる基材金属板を構成する金属板については、いかなる材質の金属板も好適に使用することができる。例えば、鋼板、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、アルミニウム合金あるいはこれらにめっき処理を行ったものなどを用いることができる。中でも特に好ましい金属板としては、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、アルミニウム合金板またはこれらにめっき処理を行っためっき金属板があげられる。
このうち、めっき金属板としては亜鉛めっき鋼板、亜鉛−鉄合金めっき鋼板、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、亜鉛−クロム合金めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板、アルミめっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコン合金めっき鋼板、アルミニウム−シリコン合金めっき鋼板、亜鉛めっきステンレス鋼板、アルミニウムめっきステンレス鋼板等があげられる。
ステンレス鋼板としてはフェライト系ステンレス鋼板、マルテンサイト系ステンレス鋼板、オーステナイト系ステンレス鋼板等があげられる。ステンレス鋼板の厚さとしては、十mm程度の厚いものから、圧延により10μm程度まで薄くした、いわゆるステンレス箔までがあげられる。ステンレス鋼板及びステンレス箔の表面は、ブライトアニール、バフ研磨などの表面処理を施してあってもよい。
アルミニウム合金板としてはJIS1000番系(純Al系)、JIS2000番系(Al−Cu系)、JIS3000番系(Al−Mn系)、JIS4000番系(Al−Si系)、JIS5000番系(Al−Mg系)、JIS6000番系(Al−Mg−Si系)、JIS7000番系(Al−Zn系)等があげられる。
本発明のプレコート金属板は、最外層皮膜として、可視光領域においても光触媒作用を発現できる皮膜を有している。ここまでは、本発明のプレコート金属板の特長について、耐汚染性機能を中心に述べてきたが、本発明のプレコート金属板は、有害ガスの分解・浄化、空気清浄機能や抗菌、抗ウィルス、抗かびの機能を有している。この機能は、紫外光の照射下においてはもちろんのこと、蛍光灯やLEDなどの可視光照射によっても発現させることができる。
本発明のプレコート金属板が分解・浄化することができる有害ガスは、基本的にはその種類を問わないが、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、メチルメルカプタン、アンモニアに代表される有害ガス・悪臭を発するガスを分解・浄化することができる。抗菌作用については黄色ぶどう球菌、肺炎桿菌など、抗カビ性はペニシリウムピノフィルムに対する効果を確認しており、抗ウィルス効果についても確認している。
本発明のプレコート金属板は、蛍光灯やLEDなどの可視光において有害ガスの分解・浄化機能を有していることから、本発明のプレコート金属板を使用して金属製家具を製造することが可能である。金属製家具の全面に本発明のプレコート金属板を使用し、蛍光灯、LEDの光が当たる状態にしておくことにより、空気浄化機能を得ることができる。金属製家具としては、オフィスのキャビネット、机(サイドデスクを含む)、本棚などが挙げられる。また、金属製パーティションにも本発明のプレコート金属板を適用することができる。
本発明のプレコート金属板は、蛍光灯やLEDなどの可視光でも十分にその効果を発揮することができるが、上記の金属製家具やパーティションとして使用する場合には、できるだけ窓の近くに設置し、太陽光もあたる状態にしておくことでさらに顕著な効果を得ることができる。
本発明のプレコート金属板の第一の好適な製造方法は、有機樹脂層を有する金属板(基材金属板)上に、最外層の下に位置する内側の皮膜を形成するための皮膜成分溶液、具体的な成分としては、上述した炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン、炭素数1以上12以下のアルキル基を有するアルコキシシラン、アリール基を有するアルコキシシラン、及び炭素数1以上12以下のアルキル基とアリール基の双方を有するアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のアルコキシシランと、エポキシ基を有するアルコキシシランまたはアミノ基を有するアルコキシシランとを含む原料成分と、光触媒活性を有する物質とを含有してなる皮膜成分溶液を塗布し、加熱硬化を行い、この塗布工程と加熱硬化工程を所定回数繰り返して複数層の皮膜を形成した後、さらに最外層の皮膜を形成するための皮膜成分溶液、具体的な成分としては、上述した炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン、エポキシ基を有するアルコキシシランを含む原料成分と可視光領域において光触媒作用を有する光触媒物質とを含有する皮膜成分溶液を塗布し、加熱硬化を行い、積層された皮膜構造を形成することを特徴としている。
皮膜成分溶液の塗布は、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法などによって行われる。
本発明のプレコート金属板の第二の好適な製造方法は、有機樹脂層を有する金属板に最外層の下に位置する内側の皮膜を形成するための皮膜成分溶液、具体的な成分としては、上述した炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン、炭素数1以上12以下のアルキル基を有するアルコキシシラン、アリール基を有するアルコキシシラン、及び炭素数1以上12以下のアルキル基とアリール基の双方を有するアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のアルコキシシランと、エポキシ基を有するアルコキシシランまたはアミノ基を有するアルコキシシランとを含む原料成分と、光触媒活性を有する物質とを含有してなる皮膜成分溶液と、最外層の皮膜を形成するための皮膜成分溶液、具体的な成分としては、上述した炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン、エポキシ基を有するアルコキシシランを含む原料成分と可視光領域において光触媒作用を有する光触媒物質とを含有する皮膜成分溶液とを用いて各1層ずつ、または内側皮膜用の成分溶液を2層以上、最外層皮膜用の成分溶液を1層同時塗布するか或いは遂次塗布することにより未硬化の積層塗膜を形成した後、同時に加熱硬化することを特徴としている。
本発明の製造方法で用いる処理液中には光触媒物質を含有している。繰り返しになるが、本発明で用いる光触媒物質の形態は特に限定を受けるものではなく、前記の光触媒粒子を始めとして、粒子とはいえないようなゾル状物質、金属錯体のような物質も含めて使用することができる。
ここで、ゾル状物質とは、処理液中においてアルコキシドの加水分解によって生成した析出物や、水または有機溶媒中に分散、安定化された極めて微細なコロイドのことをいう。
皮膜の加熱硬化における標準的な加熱条件は、150℃以上400℃程度までの温度域で、1時間から数秒程度の熱処理を行うことが好ましい。一般に、熱処理温度が高い場合は短い熱処理時間で皮膜の硬化が可能であり、熱処理温度が低い場合には長時間の処理が必要である。この加熱条件は第一の製造方法である塗布工程と加熱硬化工程を繰り返す方法においても、また第二の製造方法である複数回の塗布によって未硬化の積層塗膜を形成した後、同時に加熱硬化する方法においても支障なく用いることができる。
また、乾燥あるいは熱処理に十分な温度、時間をかけられないような場合には、一旦加熱硬化を行った後に、必要に応じて室温で1〜5日放置することができる。この工程を経ることで、塗膜形成直後より塗膜の硬度を高くすることができる。また、この皮膜は、塗布後に室温で放置することによって硬化させることも可能である。ただし、その場合には、実用的な硬度となるまでには長時間を必要とする場合が多い。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明する。実施例、比較例では、金属板の片側にのみ有機樹脂層、光触媒皮膜を有する態様について説明するが、金属板の両側に有機樹脂層、光触媒皮膜を有する態様においても、本発明の効果が得られることは容易に理解できると考える。
(参考例1〜13、比較例1〜3)
表1に示した割合で配合したγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)にチタニウムテトラエトキシド8.2質量部を加えて十分に撹拌した後、エタノールで希釈した蒸留水を用いて酢酸酸性下で加水分解を行った。ここにアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を加え、さらに蒸留水及びエタノールの混合溶液を用いて加水分解を行い、内側皮膜用、最外層皮膜用それぞれの光触媒を含んでいない皮膜成分溶液を調製した。
加水分解には十分な量の水を添加し、皮膜成分溶液は150℃で乾燥させたときの固形分(ポリマー分)濃度がいずれも20質量%となるようにした。この溶液に、表1に示した可視光型光触媒物質を添加し、塗布用の皮膜成分溶液を作製した。表1に示す光触媒添加量は、光触媒を含んでいない皮膜成分溶液に含まれる固形分(150℃で乾燥させたときの固形分濃度)全体に対する質量割合である。用いた光触媒粒子の一次粒子径は約20nmである。
参考例1〜13のプレコート金属板は、亜鉛めっき鋼板表面にメラミン架橋のポリエステル皮膜を約15μmの厚さで塗装した0.6mm厚の鋼板を基材金属板として作製した。
光触媒皮膜は、まず基材金属板表面に内側皮膜用成分溶液をバーコーターで塗布し、50秒後に板温が210℃となるような昇温条件を用いて最高温度210℃で熱処理を行うことによって形成した。形成した皮膜の厚さは約1.5μmであった。
続いてこの表面に、最外層皮膜用成分液をバーコーターで塗布後、260℃に加熱して最外層の光触媒皮膜を形成した。形成した皮膜の厚さは約1μmであった。
比較例としては、同じ基材金属板を用い、内側皮膜の光触媒量が最外層皮膜と比較して多い例(比較例1)、最外層皮膜に可視光型の光触媒を添加しているものの内側皮膜には可視光型でない(紫外光型)光触媒を添加した例(比較例2)、比較例2とは逆に最外層皮膜に可視光型でない光触媒を添加し、内側皮膜に可視光型の光触媒を添加した例(比較例3)を準備した。比較例も実施例1と同様に内側皮膜の膜厚を約1.5μm、最外層皮膜の膜厚を約1μmとした。
プレコート金属板の評価試験は、以下の方法によって行った。
(1)水接触角の低下幅:サンプルのプレコート金属板を、太陽光に24時間曝露し、または蛍光灯(波長400nm〜760nm)を48時間照射した後に、表面の水接触角を測定し、水接触角の低下幅を評価した。太陽光曝露はサンプルを南向き、水平面から30°傾けて設置し、蛍光灯照射は照度5000luxとした。
(2)マジックインキの退色状況:黒、青、赤の3色のマジックインキ(寺西化学工業製、マジックインキ(登録商標))を塗り、蛍光灯168時間照射後のマジックインキの退色の程度を目視で評価した。
(3)最外層皮膜除去後の水接触角:最外層皮膜を除去、内側皮膜を露出させた状態で太陽光に24時間曝露し、または蛍光灯を5000luxで48時間照射し、水接触角の低下幅を評価した。
(4)皮膜の劣化:太陽光を96時間、または蛍光灯5000luxで168時間照射後のサンプル表面を軽く指でこすり、皮膜の劣化の状況を判断した。
(5)紫外光及び蛍光灯照射時のアセトアルデヒドガス分解性能:
(i)紫外光照射時のアセトアルデヒド分解性能の測定方法
5cm×10cmサイズのサンプルに1mW/cm2のブラックライト(BL)を40時間プレ照射した後、JIS規格の流通試験装置内(図1)に設置した。濃度5ppmのアセトアルデヒド(AA)ガスを1リットル/分で流通させ、容器上方からBLを照射しつつ出口のガスを自動採取し、ガスクロマトグラフで濃度を測定した(JIS R1701−2に準拠)。
紫外光照射時の1時間あたりのアセトアルデヒドの除去量(単位:μmol/時間)を、以下の計算式Iによって求めた。
1時間あたりのアセトアルデヒドの除去量=(紫外光消灯時の平均出口ガス濃度−紫外光点灯時の平均出口ガス濃度)×流量×1.016×60/22.4/2 I
(ii)蛍光灯照射時のアセトアルデヒド分解性能は以下の方法で測定した。5cm×10cmサイズのサンプルを各水準ごとに2枚準備し(有効表面積:100cm2)、紫外光照射の場合と同様、1mW/cm2のブラックライト(BL)を40時間プレ照射した後、5リットルのテドラー(ポリフッ化ビニル)製サンプリングバッグ内に設置した。このバッグ内に濃度50ppmのAAガスを2,500ml注入し、8,000luxの蛍光灯を照射しながらAAガスの分解に伴う濃度の減少率を24時間連続測定した。
蛍光灯照射時の24時間経過後のアセトアルデヒド除去率(単位:%)を、以下の計算式IIによって求めた。
24時間経過後のAAガス除去率=(空(サンプルなし)の24時間後のAAガス濃度−サンプルありの24時間後のAAガス濃度)×100/空(サンプルなし)の24時間後のAAガス濃 II
(6)抗菌活性:
5cm×10cmサイズのサンプルに1mW/cm2のブラックライト(BL)を24時間プレ照射した後、黄色ブドウ球菌またはペニシリウムピノフィルムを表面に接種した。接種量は、黄色ブドウ球菌が2.0〜2.5×105個、ペニシリウムピノフィルムが5.0〜5.5×104個である。接種後のサンプルに照度1000luxの蛍光灯を照射し、24時間後の生菌数を測定した(JIS R1702を準用)。
抗菌活性値は、無加工試験片(光触媒活性を有していないガラス板)の生菌数に対するサンプル表面の生菌数で評価した。
抗菌活性値=log(サンプル表面の生菌数/無加工試験片の生菌数)
試験結果の評価は、良い方から順に◎、○、△、×の4段階とし、総合評価の結果が◎もしくは○を合格とした。それぞれの評価の基準は、表3に示した。
試験結果を表2に示した。第2表の結果から、最外層に窒素をドープした可視光型TiO2による光触媒皮膜を形成したプレコート金属板では、太陽光への曝露後、または蛍光灯の照射後にいずれも水接触角の低下が認められ、マジックインキの退色も認められた。光触媒添加量の少ない実施例(参考例1)では、水接触角の低下、及びマジックインキの退色の程度がやや小さくなっており、また光触媒添加量の多い実施例(参考例7〜10)では、皮膜の劣化がやや大きくなっているものの、いずれも十分な性能を示している。
また、最外層皮膜を除去、内側皮膜を露出させた状態で測定した水接触角は、内側皮膜の光触媒添加量が少ない実施例(参考例1、2)を除いて、顕著な低下が起こっている。したがって、参考例1〜10に示したプレコート金属板は、使用開始直後の初期状態から最外層皮膜が消失し、内側皮膜が露出した後であっても、長期間にわたって耐汚染性の効果が得られることがわかる。
窒素ドープ型TiO2以外の可視光型光触媒を用いたプレコート金属板の場合(参考例11〜13)、イオウドープ型の可視光型光触媒では最外層皮膜除去後の水接触角の低下幅がやや不十分であること、AgNbO3−SrTiO3固溶体の可視光型光触媒を用いた場合には、蛍光灯を照射したときの最外層の光触媒皮膜による水接触角の低下幅と最外層皮膜除去後の水接触角の低下幅がやや不十分であることから、いずれも総合評価が「○」であった。
Pt担持TiO2粒子の可視光型光触媒を用いた場合には、性能面ではいずれも良好で評価はすべて「◎」であったが、光触媒の価格が極めて高価で、使用できる範囲が限定されてしまう。
また、参考例1〜13におけるアセトアルデヒドガスの除去性能、抗菌活性は、抗菌活性のうち、特にペニシリウムピノフィルムの抗菌活性について、いくつかの実施例が「○」となっているものの、多くの実施例で「◎」となっており、ガス分解・除去性能、抗菌性ともに良好であることがわかる。
以上をまとめると、窒素ドープ型TiO2以外の可視光型光触媒は、本発明のプレコート金属板に使用することはできるものの、性能、価格等の点から、特に窒素ドープ型TiO2触媒が適しているといえる。
また、表2には記載していないが、2T曲げ試験(サンプルサイズ50×50mm、同じ厚さの板を2枚挟んだ180°曲げ試験)を行って曲げ加工性を試験したところ、参考例1〜13のプレコート金属板では、皮膜の割れ、剥離とも認められず、優れた曲げ加工性を有していた。
一方で、内側皮膜に可視光型でない光触媒皮膜を形成した比較例2では、内側皮膜が露出した後は蛍光灯照射後の水接触角の低下が認められないことから、耐汚染効果は最外層皮膜が存在している間だけにとどまるため、長期間にわたる耐汚染効果を期待することができない。
また、最外層皮膜に可視光型でない光触媒皮膜を形成した比較例3では、太陽光に曝露したときは良好な性状を示すものの、蛍光灯照射の場合は最外層皮膜が存在している状態では水接触角の低下及びマジックインキの退色共に認められず、光触媒としての機能が発現していない。
内側皮膜の光触媒添加量を最外層皮膜の光触媒添加量より多く添加している比較例1では、最外層皮膜にも耐汚染効果があり、また内側皮膜が露出した状態でも水接触角の低下が起こっており、実施例と同様、長期間にわたって耐汚染効果が得られることが期待できる。しかしながら、この比較例1では、2T曲げ試験において、基材金属板と内側皮膜と
の界面及び内側皮膜と最外層皮膜との界面で剥離が認められ、実用上問題があることがわかった。
以上をまとめると、参考例1〜13のプレコート金属板は、太陽光に曝露した場合に優れた光触媒性能が発現し、また太陽光があたらない室内においても、蛍光灯の照射によって、優れた光触媒性能が発現し、内側皮膜が露出した後であっても、長期間にわたって耐汚染効果が持続できる可能性が高いことがわかった。また、本実施例の塗装鋼板をスチール製家具、パーティションとして使用した場合に、アセトアルデヒドガスに代表される有害ガスを分解し、空気を浄化する機能や優れた抗菌・抗かび性能を示す可能性が高いことがわかった。これに対し、比較例1〜3ではそれぞれ、内側皮膜の光触媒添加量を最外層皮膜より多くした場合には、皮膜の密着性に問題がある、最外層皮膜が消失した後は光触媒機能が発現しない、そして初期状態から光触媒性能が発現しない、という問題があることがわかった。
(参考例14〜19、比較例4〜7)
表4に示した割合で配合したγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)にチタニウムテトラエトキシド8.2質量部を加えて十分に撹拌した後、エタノールで希釈した蒸留水を用いて酢酸酸性下で加水分解を行った。ここにアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を加え、さらに蒸留水及びエタノール混合溶液を用いて加水分解を行い、内側皮膜用、最外層皮膜用それぞれの光触媒を含んでいない皮膜成分溶液を調製した。
加水分解には十分な量の水を添加し、皮膜成分溶液は150℃で乾燥させたときの固形分(ポリマー分)濃度がいずれも20質量%となるようにした。この溶液に、表4に示した可視光型光触媒物質を添加し、塗布用の皮膜成分溶液を作製した。表4に示す光触媒添加量は、光触媒を含んでいない皮膜成分溶液に含まれる固形分(150℃で乾燥させたときの固形分濃度)全体に対する質量割合である。用いた光触媒粒子の一次粒子径は約20nmである。
参考例14〜19のプレコート金属板は、亜鉛めっき鋼板表面にメラミン架橋のポリエステル皮膜を約15μmの厚さで塗装した0.6mm厚の鋼板を基材金属板として作製した。
光触媒皮膜は、まず基材金属板表面に内側皮膜用成分溶液を加熱硬化後の厚さが異なるようにバーコーターで塗布し、50秒後に板温が210℃となるような昇温条件を用いて最高温度210℃で熱処理を行うことによって形成した。
続いてこの表面に、最外層用皮膜の厚さにも変化をつけられるよう最外層皮膜用の成分溶液をバーコーターで塗布後、260℃に加熱して最外層の光触媒皮膜を形成した。形成した皮膜の厚さは、それぞれ表4に示した通りである。
比較例としては、内側皮膜、最外層皮膜ともに望ましい膜厚範囲を超え、合計膜厚が5μmを超える厚い皮膜を形成した例(比較例4、6)、最外層皮膜は望ましい膜厚範囲にあるものの内側皮膜が望ましい膜厚範囲を超えているため、合計の皮膜厚さが5μmを超えている例(比較例5、7)を準備した。
参考例14〜19、比較例4〜7におけるプレコート金属板の評価試験は、以下の項目についてJIS K5600に準拠して行った。
(1)外観:目視、あるいは拡大して外観を観察し、ひび割れの有無を評価した。
(2)密着性:碁盤目テープ剥離試験を行い、剥離状況を評価した。
(3)加工部密着性:2T〜4T曲げ試験を行い、加工部の密着性(剥離状況)を評価した。
試験結果の評価は、良い方から順に◎、○、△、×の4段階とし、総合評価の結果が◎もしくは○を合格とした。それぞれの評価の基準は、表6に示した。
試験結果を表5に示した。表5の結果から、内側皮膜と最外層の膜厚の合計が5μm以下であり、内側皮膜、最外層それぞれの膜厚の範囲が所定の範囲内であるプレコート金属板では、ひび割れは認められず、密着性、加工部の密着性のいずれも良好であった(参考例14〜19)。
これに対し、各層の皮膜厚さの合計が5μmを超えている例(比較例4〜7)は、特に加工部密着性が不十分であり、総合評価で不合格であった。このうち、最外層皮膜は望ましい膜厚範囲であっても内側皮膜が望ましい膜厚範囲を超えていることによって合計の皮膜厚さが5μmを超えている例(比較例5、7)も加工部密着性が不十分であった。
以上をまとめると、参考例14〜19に示したプレコート金属板は、所定の皮膜厚さで各層の皮膜を形成されており、合計が5μm以下であるため、ひび割れがなく、密着性、加工部密着性ともに良好なプレコート金属板が得られていることが分かる。一方で、合計が5μmを超えて皮膜厚さが厚い比較例では、特に加工部密着性が不十分であり実用上問題があることがわかった。
(実施例20〜31)
表7に示した割合で配合したγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)にチタニウムテトラエトキシド8.2質量部を加えて十分に撹拌した後、エタノールで希釈した蒸留水を用いて酢酸酸性下で加水分解を行った。ここにアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を加え、さらに蒸留水及びエタノール混合溶液を用いて加水分解を行い、内側皮膜用、最外層皮膜用それぞれの光触媒を含んでいない皮膜成分溶液を調製した。
加水分解には十分な量の水を添加し、皮膜成分溶液は150℃で乾燥させたときの固形分(ポリマー分)濃度がいずれも20質量%となるようにした。この溶液に、表7に示した可視光型光触媒物質を添加し、塗布用の皮膜成分溶液を作製した。表7に示す光触媒添加量は、光触媒を含んでいない皮膜成分溶液に含まれる固形分(150℃で乾燥させたときの固形分濃度)全体に対する質量割合である。用いた光触媒粒子の一次粒子径は約20nmである。
実施例20〜23が、最外層に位置する皮膜を構成する脱水縮合物が、Si−Oの結合1に対して0〜0.25の割合でエポキシ基を含有するように調整した皮膜成分溶液、参考例24が、上記の範囲を超えてSi−Oの結合1に対して0.25以上の割合でエポキシ基を含有するように調整した皮膜成分溶液から形成した皮膜である。また、実施例26〜30が、最外層の下に位置する皮膜を構成する脱水縮合物が、Si−Oの結合1に対して0.05〜1.5の割合でメチル基および/またはフェニル基を含有するように調整した皮膜成分溶液、実施例25、31が、上記の範囲を超えてSi−Oの結合1に対して0.05〜2.0から外れた割合でメチル基および/またはフェニル基を含有するように調整した皮膜成分溶液から形成した皮膜である。
実施例20〜31のプレコート金属板は、55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板表面に約5μm厚さのエポキシ樹脂皮膜と約15μm厚さのメラミン架橋のポリエステル皮膜を塗装した0.4mm厚の鋼板を基材金属板として作製した。
光触媒皮膜は、まず基材金属板表面に内側皮膜用成分溶液をバーコーターで塗布し、50秒後に板温が210℃となるような昇温条件を用いて最高温度210℃で熱処理を行うことによって形成した。形成した皮膜の厚さは約1.5μmであった。
続いてこの表面に、最外層皮膜用の成分溶液をバーコーターで塗布後、260℃に加熱して最外層の光触媒皮膜を形成した。形成した皮膜の厚さは約1.5μmであった。
実施例20〜31におけるプレコート金属板の評価試験は、参考例1〜13に示した(1)水接触角の低下幅、(2)マジックインキの退色状況、(3)最外層皮膜除去後の水接触角、(4)皮膜の劣化、(5)アセトアルデヒドガス除去性能、(6)抗菌活性、および参考例14〜19に示した(7)外観、(8)平面部の密着性、(9)加工部密着性の3項目についてJIS K5600に準拠して行った。試験結果の評価は参考例1〜13、参考例14〜19と同じである。
試験結果を表8と表9に示した。表8、表9の結果から、最外層に位置する皮膜を構成する脱水縮合物が、Si−Oの結合1に対してエポキシ基を0〜0.25の範囲で含有している実施例20〜23では、水接触角の低下幅、マジックインキの退色状況、最外層皮膜除去後の水接触角と皮膜の劣化状況で評価した光触媒性能、および平面部の密着性と加工部密着性ともに良好であることがわかる。これに対し、最外層に位置する皮膜を構成する脱水縮合物が、Si−Oの結合1に対してエポキシ基を0.25以上の範囲で含有する参考例24では、水接触角の低下幅、マジックインキの退色状況、最外層皮膜除去後の水接触角と平面部、加工部の密着性は良好であったものの、皮膜の劣化がやや進みやすいという結果であった。
また、最外層の下に位置する皮膜を構成する脱水縮合物が、Si−Oの結合1に対して0.05〜1.5の範囲で含有する実施例26〜30では、水接触角の低下幅、マジックインキの退色状況、最外層皮膜除去後の水接触角と皮膜の劣化状況で評価した光触媒性能、および平面部の密着性と加工部密着性ともに良好であることがわかる。これに対し、最外層の下に位置する皮膜を構成する脱水縮合物が、上記から外れた割合でメチル基および/またはフェニル基を含有する実施例25、31では、水接触角の低下幅、マジックインキの退色状況、最外層皮膜除去後の水接触角と皮膜の劣化状況で評価した光触媒性能は良好であったものの、平面部ないしは加工部の密着性にやや劣っていることがわかった。
また、実施例20〜31のいずれにおいても紫外光照射、蛍光灯照射におけるアセトアルデヒドガス除去性能、抗菌活性ともに極めて良好であることがわかった。
以上をまとめると、実施例20〜31に示したプレコート金属板は、いずれも実用上は問題ないものの、最外層に位置する皮膜を構成する脱水縮合物が、Si−Oの結合1に対してエポキシ基を0〜0.25の範囲で含有している皮膜、および最外層の下に位置する皮膜を構成する脱水縮合物が、Si−Oの結合1に対して0.05〜1.5の範囲で含有している皮膜では、光触媒性能に加えて平面部、加工部の密着性に特に優れていることがわかる。
(参考例32〜37)
表10に示した割合で配合したγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)にチタニウムテトラエトキシド8.2質量部を加えて十分に撹拌した後、エタノールで希釈した蒸留水を用いて酢酸酸性下で加水分解を行った。
ここにアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を加え、さらに蒸留水及びエタノール混合溶液を用いて加水分解を行い、最内側皮膜用、最内側皮膜と最外層皮膜の間に位置する中間皮膜用、最外層皮膜用の3種類の光触媒を含んでいない皮膜成分溶液を調製した。
加水分解には十分な量の水を添加し、皮膜成分溶液は150℃で乾燥させたときの固形分(ポリマー分)濃度がいずれも15質量%となるようにした。これらの溶液に、実施例1〜10で使用したものと同じ可視光型光触媒物質を添加し、塗布用の皮膜成分溶液を作製した。表10に示す光触媒添加量は、光触媒を含んでいない皮膜成分溶液に含まれる固形分(150℃で乾燥させたときの固形分濃度)全体に対する質量割合である。
参考例32〜37のプレコート金属板は、0.5mm厚のステンレス鋼板(SUS430)を基材金属とし、シリコンアクリル皮膜を形成したプレコートステンレス鋼板を基材として作製した。
光触媒皮膜は、まず基材金属板表面に最内側皮膜用成分溶液をバーコーターで塗布し、50秒後に板温が210℃となるような昇温条件で最高温度210℃の熱処理を行うことによって形成した。形成した皮膜の厚さは約1μmであった。
続いてこの表面に、中間皮膜用成分溶液をバーコーターで塗布後、最内側皮膜と同じ条件で加熱して中間の光触媒皮膜を形成した。形成した皮膜の厚さは約0.7μmであった。続いて、最外層皮膜用成分溶液をバーコーターで塗布後、260℃に加熱して最外層の光触媒皮膜を形成した。形成した皮膜の厚さは約1μmであった。この結果、基材のプレコートステンレス鋼板上に、光触媒含有量が異なる3層の光触媒皮膜が形成されているプレコート金属板を得た。
プレコート金属板の性能評価試験は、参考例1〜13と同じく、水接触角の低下幅、マジックインキの退色状況、外層皮膜除去後の水接触角、皮膜の劣化状況、アセトアルデヒド除去性能、抗菌活性で評価した。なお、外層皮膜除去後の水接触角は、最外層皮膜除去後、中間皮膜除去後のそれぞれについて行った。評価基準を表12に示した。
試験結果を表11に示した。表11の結果から、いずれの実施例とも太陽光曝露後、蛍光灯の照射後に水接触角の低下が認められ、マジックインキ汚染の退色も認められた。
また、最外層皮膜を除去して中間皮膜を露出させた状態、さらに中間皮膜も除去して最内側皮膜を露出した状態で測定した水接触角は、いずれの実施例とも顕著な低下が起こっており、光触媒効果が発現していることがわかる。
また、参考例32〜37のいずれの実施例においても、アセトアルデヒド除去性能、抗菌活性ともに良好であることが認められた。
この結果から、参考例32〜37に示したプレコート金属板は、使用開始直後の初期状態から、最外層皮膜が消失し中間皮膜が最外層となった状態、中間皮膜が消失し最内側皮膜が最外層となった状態であっても光触媒効果が発現し、最内側皮膜がなくなるまでの長期間にわたって耐汚染性の効果が得られることがわかる。
また、表11には記載していないが、2T曲げ試験を行って曲げ加工性を試験したところ、参考例32〜37で示したプレコート金属板は、皮膜の割れ、剥離とも認められず、優れた曲げ加工性を有していた。
以上をまとめると、参考例32〜37で示した3層の皮膜を形成したプレコート金属板は、太陽光に曝露した場合に優れた光触媒性能が発現し、また太陽光があたらない室内においても、蛍光灯の照射によって、優れた光触媒性能が発現し、最内側皮膜が消失するまで長期間にわたって耐汚染効果が持続できる可能性が高いことがわかった。
(参考例38〜45)
表13に示した割合で配合したγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)にチタニウムテトラエトキシド8.2質量部を加えて十分に撹拌した後、エタノールで希釈した蒸留水を用いて酢酸酸性下で加水分解を行った。ここにアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を加え、さらに蒸留水及びエタノール混合溶液を用いて加水分解を行い、内側皮膜用、最外層皮膜用の光触媒を含んでいない皮膜成分溶液を調製した。
加水分解には十分な量の水を添加し、皮膜成分溶液は150℃で乾燥させたときの固形分(ポリマー分)濃度がいずれも18質量%となるようにした。この溶液に、表13に示す様に、可視光型光触媒物質として粉末状もしくはゾル状のN−ドープ型のTiO2粒子を添加し、異なる粒径分布の光触媒物質を含有する塗布用皮膜成分溶液を作製した。光触媒添加量は、光触媒を含んでいない皮膜成分溶液に含まれる固形分(150℃で乾燥させたときの固形分濃度)全体に対する質量割合である。
参考例38〜45のプレコート金属板は、55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板の表面にポリエステル皮膜を約15μmの厚さで塗装した0.8mm厚の鋼板を基材金属板として作製した。
光触媒皮膜は、まず基材金属板表面に内側皮膜用成分溶液をバーコーターで塗布し、50秒後に板温が210℃となるような昇温条件を用いて最高温度210℃で熱処理を行うことによって形成した。形成した皮膜の厚さは約1μmであった。
続いてこの表面に、最外層皮膜用成分溶液をバーコーターで塗布後、260℃に加熱して最外層の光触媒皮膜を形成した。形成した皮膜の厚さは約1μmであった。
プレコート金属板の性能評価試験は、参考例1〜13、参考例32〜37と同じく、水接触角の低下幅、マジックインキの退色状況、最外層皮膜除去後の水接触角、皮膜の劣化状況、アセトアルデヒド除去性能、抗菌活性で評価した。評価基準を表15に示した。
試験結果を表14に示した。参考例38は参考例1と同じ樹脂組成、光触媒量を有する例である。表2で示した通り、参考例1は、最外層皮膜の光触媒量が少ないことから蛍光灯照射後の水接触角の低下幅、マジックインキの退色状況等にやや不十分さが認められた。一方、参考例38では、光触媒物質の粒径分布を特定の範囲とすることによって、これらの性能に改善が認められている。また、参考例39は、参考例1と樹脂組成は異なるものの、同じ光触媒量である。参考例39においても、参考例38と同様、少ない光触媒量であっても十分な水接触角の低下幅、マジックインキ退色性が得られている。参考例40〜42は、十分な性能が得られる樹脂組成、光触媒量であるが、これらの組成であっても問題なく良好な性能を維持している。
これに対し、参考例43は最外層皮膜の粒径分布の極大値が大きいことから、特に最外層皮膜の光触媒含有量が多い場合に、太陽光曝露、蛍光灯照射のいずれの場合にも塗膜の劣化が進行する傾向が認められた。参考例44は、内側皮膜、最外層皮膜ともに粒径分布の極大値が小さい場合であるが、最外層皮膜の光触媒量が少ない場合に蛍光灯照射後の水接触角の低下幅が小さくなる傾向が認められた。参考例45は、内側皮膜の粒径分布の極大値が大きすぎる場合であるが、この場合には顕著な不具合は認められないものの、内側皮膜の劣化がやや促進される傾向が認められた。
参考例38〜42におけるアセトアルデヒドガス除去性能、抗菌活性は極めて良好であった。これに対し、参考例43〜45では、最外層皮膜または内側皮膜、あるいはその両方の皮膜中に含まれる光触媒物質の粒径分布が望ましい範囲から外れていることから、アセトアルデヒドガス除去性能と抗菌活性がやや低下する傾向が認められた。ただし、これらの低下幅は小さく、参考例43〜45も、本発明の範囲内に含まれるものである。
以上をまとめると、皮膜に含まれる光触媒物質の粒径分布の極大値を所定の範囲とすることで、水接触角の低下幅、マジックインキ退色性などの性能を向上できることが分かった。一方で、これらの構成要件を満たさない場合でも、十分に良好な性能が得られることは明らかであり、参考例43〜45も本発明の範囲に属するものである。
(参考例46、47)
参考例5に記載した配合割合の皮膜成分溶液を、0.6mm厚の亜鉛めっき鋼板の表面上にメラミン架橋のポリエステル層を約15μmの厚さで塗装した基材金属板上に、下記の方法によって塗布し、2層からなる光触媒皮膜を形成した(参考例46)。また、参考例7に記載した配合割合の皮膜成分溶液を上記と同じ基材金属板上に同様の方法によって塗布し、2層の光触媒皮膜を形成した(参考例47)。
参考例46、47ともに2種類の皮膜成分溶液をスリットカーテンコーターによって塗布し、2層の皮膜を同時に塗布した後、引き続き250℃で加熱し、硬化させて形成した。作成したプレコート金属板の外観は全く問題なく良好であった。形成した皮膜の厚さは、参考例46、47ともに内側皮膜が約1.5μm、最外層皮膜が約1.5μmでほぼ同じであった。
作製したプレコート金属板に対して、参考例5、7と同じく、水接触角の低下幅、マジックインキの退色状況、最外層皮膜除去後の水接触角、皮膜の劣化状況、アセトアルデヒド分解性能、抗菌活性について試験を行い、併せて総合評価を行った。
その結果、参考例46、47ともに水接触角は大きく低下し、マジックインキが退色し、最外層皮膜を除去し内側皮膜を露出させた状態でも水接触角は大きく低下した。皮膜の劣化は少なく、十分なアセトアルデヒド分解性能と抗菌活性を示し、結果として総合評価も極めて良好であった。また、2T曲げ試験を行って曲げ加工性を試験したところ、参考例46、47のプレコート金属板ともに皮膜の割れ、剥離とも認められず、優れた曲げ加工性を有していた。
以上の結果より、参考例46、47に記載した多層同時塗布法によっても、本発明のプレコート金属板を問題なく製造できることがわかった。また、その性能は、各層の皮膜を独立に形成した場合と何ら変わりがないことがわかった。この製造方法によっても、太陽光に暴露した場合、室内での蛍光灯による照射の場合のいずれにおいても、優れた光触媒性能が発現し、最内側皮膜が消失するまで長期間にわたって耐汚染効果が持続し、有害ガス分解効果、抗菌抗かび効果が得られる可能性が高いことがわかった。