[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態として多層膜反射鏡の実施形態を説明する。ここでは、本実施形態の多層膜反射鏡をEUV露光装置の投影光学系へ適用することを想定する。
先ず、EUV露光装置の投影光学系へ適用される多層膜反射鏡には、高い反射率が望まれる。なぜなら、EUV露光装置のスループットを向上させるためには、投影光学系の透過率を高める必要があるからである。因みに、従来のMo/Si等周期多層膜反射鏡は、EUV波長域において高い反射率を有するとはいえ反射率は65%〜70%程度であるため、その多層膜反射鏡を10枚構成の投影光学系に適用した場合、投影光学系の全系の透過率は1〜2%程度であった。このため、多層膜反射鏡の反射率がたとえ1%でも向上すれば、投影光学系の透過率は10%も向上する。
次に、EUV露光装置の投影光学系へ適用される多層膜反射鏡には、広い角度範囲の入射光を均一な反射率で反射することが望まれる。なぜなら、解像度向上のために投影光学系の開口数(NA)を大きくすると、個々の多層膜反射鏡が反射すべき光の角度範囲が広がるからである。因みに、従来のMo/Si等周期多層膜反射鏡が波長13.5nm付近の光に対して広角度範囲で均一な反射率を得ることは難しかった。
但し、EUV露光装置の投影光学系へ適用される多層膜反射鏡であっても、膜設計のパラメータはなるべく抑えるべきである。因みに、従来の不等周期多層膜は、全ての層の膜厚を任意に決められるので、高反射率でEUV光を反射できる角度範囲を広げることが可能であるが、不等周期多層膜は設計パラメータが多い分だけ成膜時の調整パラメータも多くなるので、設計通りの反射特性を出すまでに膨大な時間と労力を要していた。
そこで、本実施形態の多層膜反射鏡の反射膜には、等周期多層膜を基本としたシンプルな膜構成が採用される。
図1に示すとおり本実施形態の多層膜反射鏡100には、基本的に、反射鏡基板である光学基板P上に、等周期多層膜からなる複数のブロックA、B、…を順に形成したものであり、互いに隣接するブロックの間にはスペーサ層SA、SB、…が介在している。
本実施形態では、図1に示すとおりブロックの数を「3」とする。つまり、基板P上には、等周期多層膜からなるブロックAと、等周期多層膜からなるブロックBと、等周期多層膜からなるブロックCとが順に形成され、互いに隣接するブロックA、Bの間にはスペーサ層SAが介在し、互いに隣接するブロックB、Cの間にはスペーサ層SBが介在している。
この多層膜反射鏡100は、ブロックCの反基板側(表面側)からの入射光を反射する。本実施形態では、この入射光として波長11nm〜14nm程度(軟X線領域)のEUV光を仮定する。つまり、本実施形態では、多層膜反射鏡100の使用波長を11nm〜14nm程度と仮定する。
なお、多層膜反射鏡100の使用波長は、これに限定されることはなく、5〜50nm程度でもよいし、5〜20nm程度でもよいし、193nm以下でもよいし、ArFエキシマレーザの波長193nmやF2レーザの波長157nmなどの真空紫外光(VUV光)の波長でもよい。
以下、各ブロック及び各スペーサ層を詳しく説明する。
先ず、多層膜反射鏡100の基板Pは、例えば超低膨張ガラスで形成される。このような基板Pとしては例えばコーニング社製ULE、ショット社製Zerodur(登録商標)等を適用することが可能である。
次に、ブロックAは、屈折率の異なる膜厚比ΓAの層対が周期長dAでNA回積層された等周期多層膜ブロックである。ブロックAの単位構造(すなわち層対)を構成する一方の層は、入射光に対する屈折率と真空の屈折率との差が大きい物質で形成され、その層対を構成する他方の層は、入射光に対する屈折率と真空の屈折率との差が小さい物質で形成される。ここでは、その層対の一方の層(重原子層)をモリブデン層(Mo層)とし、他方の層(軽原子層)をシリコン層(Si層)とする。
因みに、真空の屈折率nは1であり、波長13.5nmのEUV光に対するMo層の屈折率nMoは0.92であり、波長13.5nmのEUV光に対するSi層の屈折率nSi=0.998である。
なお、ブロックAにおける層対の周期長dAは、その層対を構成するMo層の膜厚とSi層の膜厚との和で表され、ブロックAにおける層対の膜厚比ΓAは、周期長dAにおけるMo層の膜厚の割合のことであり、ブロックAにおける層対の積層回数NAは、ブロックAにおける層対の総数のことである。以下、ブロックAにおける層対の周期長dAを「ペア周期長dA」と称し、ブロックAにおける層対の膜厚比ΓAを「ペア比ΓA」と称し、ブロックAにおける層対の積層回数NAを「ペア数NA」と称す。
次に、スペーサ層SAは、入射光に対するブロックAの寄与を調整する膜厚dSAの調整層である。
また、入射光に対するスペーサ層SAの消衰係数は、入射光に対するブロックAの消衰係数(具体的にはブロックAのうち消衰係数が最も大きな物質の消衰係数)より小さい。このようなスペーサ層SAは、例えば、C、B、Si、Zr、Nb、Ru、Moの何れかの物質からなる層であってもよいし、C、B、Si、Zr、Nb、Ru、Moのうち少なくとも1つの物質を含んだ混合物層であってもよい。但し、スペーサ層SAの材料は、入射光に対する消衰係数のなるべく小さな材料であることが望ましい。以下、スペーサ層SAはSi層であると仮定する。スペーサ層SAをSi層とすれば、スペーサ層SAの成膜に、ブロックAの材料の一部を共用できるので効率的である。
次に、ブロックBは、屈折率の異なる膜厚比ΓBの層対が周期長dBでNB回積層された等周期多層膜ブロックである。ブロックBの単位構造(すなわち層対)は、ブロックAの層対と同じ(ここではMo層、Si層)である。
なお、ブロックBにおける層対の周期長dBは、その層対を構成するMo層の膜厚とSi層の膜厚との和で表され、ブロックBにおける層対の膜厚比ΓBは、周期長dBにおけるMo層の膜厚の割合のことであり、ブロックBにおける層対の積層回数NBは、ブロックBにおける層対の総数のことである。以下、ブロックBにおける層対の周期長dBを「ペア周期長dB」と称し、ブロックBにおける層対の膜厚比ΓBを「ペア比ΓB」と称し、ブロックBにおける層対の積層回数NBを「ペア数NB」と称す。
次に、スペーサ層SBは、入射光に対するブロックBの寄与を調整する膜厚dSBの調整層である。
また、入射光に対するスペーサ層SBの消衰係数は、入射光に対するブロックBの消衰係数(具体的にはブロックBのうち消衰係数が最も大きな物質の消衰係数)より小さい。このようなスペーサ層SBは、例えば、C、B、Si、Zr、Nb、Ru、Moのうち何れか1つの物質からなる層であってもよいし、C、B、Si、Zr、Nb、Ru、Moのうち少なくとも1つの物質を含んだ混合物層であってもよい。但し、スペーサ層SBの材料は、入射光に対する消衰係数のなるべく小さな材料であることが望ましい。以下、スペーサ層SBはSi層であると仮定する。スペーサ層SBをSi層とすれば、スペーサ層SBの成膜に、ブロックBの材料の一部を共用できるので効率的である。
次に、ブロックCは、屈折率の異なる膜厚比ΓCの層対が周期長dCでNC回積層された等周期多層膜ブロックである。ブロックCの単位構造(すなわち層対)は、ブロックAの層対と同じ(ここではMo層、Si層)である。
また、ブロックCにおける層対の周期長dCは、その層対を構成するMo層の膜厚とSi層の膜厚との和で表され、ブロックCにおける層対の膜厚比ΓCは、周期長dCにおけるMo層の膜厚の割合のことであり、ブロックCにおける層対の積層回数NCは、ブロックCにおける層対の総数のことである。以下、ブロックCにおける層対の周期長dCを「ペア周期長dC」と称し、ブロックCにおける層対の膜厚比ΓCを「ペア比ΓC」と称し、ブロックCにおける層対の積層回数NCを「ペア数NC」と称す(後述する実施形態の各ブロックについても同様。)。
以下、多層膜反射鏡100の基本的機能を説明する。
先ず、入射光に対する多層膜反射鏡100の反射特性には、反基板側(表面側)に位置するブロックCの単体の反射特性が強く反映される。
但し、多層膜反射鏡100の反射特性には、ブロックCの基板側に位置するブロックBの単体の反射特性も反映され、ブロックBの基板側に位置するブロックAの単体の反射特性も反映される。
しかも、多層膜反射鏡100の反射特性に対するブロックBの寄与は、ブロックBの単体の反射特性だけでなく、ブロックBの反基板側に位置するスペーサ層SBによっても変化する。また、多層膜反射鏡100の反射特性に対するブロックAの寄与は、ブロックAの単体の反射特性だけでなく、ブロックAの反基板側に位置するスペーサ層SAによっても変化する。
なぜなら、スペーサ層SA、SBの厚さが変化すると、ブロックAにおける反射光、ブロックBにおける反射光、ブロックCにおける反射光が互いに重ね合わさる際の位相関係も変化するからである。
したがって、本実施形態では、ブロックCの単体の反射特性と、ブロックAの単体の反射特性と、ブロックBの単体の反射特性と、スペーサ層SAの厚さと、スペーサ層SBの厚さとの組み合わせを調整するだけで、多層膜反射鏡100に所望の反射特性を付与することができる。
例えば、ブロックCの単体には、反射角度範囲が狭く、かつピーク反射率の高い反射特性を付与しておく。反射角度範囲とは、ピーク反射率の90%以上の反射率を示す角度範囲のことである。
これに対して、ブロックA、B、スペーサ層SA、SBを付加することにより、多層膜反射鏡100の反射特性におけるピーク反射率を抑え、かつ、そのピーク角度周辺の反射率を引き上げるような調整、すなわち反射率ピーク形状の調整を行なう。
このようにすれば、多層膜反射鏡100は、ブロックCの単体よりも広い範囲でほぼ均一な反射率を得ること(つまり反射率ピーク形状をなだらかにすること)ができる。反射角度範囲の広い多層膜反射鏡100は、EUV露光装置の投影光学系に好適である。
ところで、EUV露光装置の投影光学系へ適用される多層膜反射鏡には、反射面内の位置毎に個別の反射特性が付与されることが望まれる。なぜなら、投影光学系の反射鏡が反射すべき入射光の角度範囲は、反射鏡の配置先によって異なるだけでなく、1枚の反射鏡内の反射位置によっても異なるからである。
そこで、本実施形態では、パラメータdA、ΓA、NA、dSA、dB、ΓB、NB、dSB、dC、ΓC、NCの組み合わせを、多層膜反射鏡100の反射面内の位置毎に設定し、その組み合わせの反射面内の分布を、滑らかな分布に設定する。
なお、多層膜反射鏡100の「反射面」とは、多層膜反射鏡100のうち有効な光束の反射に寄与する有効な反射面のことであって、「滑らかな分布」とは、「勾配が連続的な分布」のことである。
図2は、本実施形態の多層膜反射鏡100の反射面内における5つの代表反射点A−1、A−2、A−3、A−4、A−5を模式的に示す図である。
これら代表反射点A−1、A−2、A−3、A−4、A−5の間では、パラメータdA、ΓA、NA、dSA、dB、ΓB、NB、dSB、dC、ΓC、NCの組み合わせが互いに異なる。
また、多層膜反射鏡100の反射面内における他の反射点の膜構成は、その反射点に近接する少なくとも2つの代表反射点の膜構成の中間的な膜構成に設定されている。つまり、その反射点のパラメータdA、ΓA、NA、dSA、dB、ΓB、NB、dSB、dC、ΓC、NCは、近接する少なくとも2つの代表反射点のパラメータdA、ΓA、NA、dSA、dB、ΓB、NB、dSB、dC、ΓC、NCの中間的な値に設定される。
以下、代表反射点A−1、A−2、A−3、A−4、A−5を詳しく説明する。
図3は、代表反射点A−1、A−2、A−3、A−4、A−5の膜構成を示す表である。図3における数値は、膜厚(nm)であり、各ブロックの層対の数は「ペア数」のことである。
図3に示すとおり、代表反射点A−1のパラメータは、以下のとおり設定されている。
dA=7.571、ΓA=0.445、NA=4、
dSA=3.670、
dB=7.571、ΓB=0.445、NB=9、
dSB=3.670、
dC=7.571、ΓC=0.445、NC=20
また、代表反射点A−2のパラメータは、以下のとおり設定されている。
dA=7.4、ΓA=0.2432、NA=4、
dSA=3.3、
dB=7.49、ΓB=0.332、NB=9、
dSB=3.25、
dC=7.571、ΓC=0.445、NC=20
また、代表反射点A−3のパラメータは、以下のとおり設定されている。
dA=7.4、ΓA=0.0810、NA=4、
dSA=3、
dB=7.43、ΓB=0.219、NB=9、
dSB=2.8、
dC=7.571、ΓC=0.445、NC=20
また、代表反射点A−4のパラメータは、以下のとおり設定されている。
dA=7.4、ΓA=0.0135、NA=4、
dSA=2.7、
dB=7.39、ΓB=0.1069、NB=9、
dSB=2.3、
dC=7.571、ΓC=0.445、NC=20
また、代表反射点A−5のパラメータは、以下のとおり設定されている。
dA=7.4、ΓA=0.0135、NA=4、
dSA=2.4、
dB=7.4、ΓB=0.0135、NB=9、
dSB=1.8、
dC=7.571、ΓC=0.445、NC=20
したがって、本実施形態の多層膜反射鏡100では、代表反射点A−1から代表反射点A−5にかけては、ブロックA、Bのペア比ΓA、ΓBが徐々に小さくなっており、また、スペーサ層SA、SBの膜厚dSA、dSBが徐々に薄くなっている。
その一方で、本実施形態の多層膜反射鏡100では、代表反射点A−1から代表反射点A−5の間で、その他のパラメータは共通又は近い値に設定されており、少なくともブロックCのペア周期長dC、ペア比ΓC、ペア数NCは共通に設定されている。よって、多層膜反射鏡100の反射面内では、ΓA、ΓB、dSA、dSB以外のパラメータは一様又はほぼ一様に設定されている。
図4は、反射率の角度特性を代表反射点ごとに示したグラフである。なお、図4に示す角度特性は、波長13.5nmの無偏光のEUV光に関する角度特性である。
図4に示すとおり角度特性カーブの形状は、代表反射点A−1から代表反射点A−5にかけて徐々に変化している。代表反射点A−1の角度特性カーブは、比較的広い角度範囲で均一な反射率を示しているのに対して、代表反射点A−5の角度特性カーブは、比較的狭い角度範囲で比較的高い反射率を示している。つまり、代表反射点A−1から代表反射点A−5にかけては、ピーク反射率が徐々に高くなり、かつ、入射光の反射角度範囲の幅(ピーク反射率の90%以上の反射率を示す角度範囲の幅)が徐々に狭まる。また、代表反射点A−1から代表反射点A−5にかけては、カーブ形状が偏ったり歪んだりせずに連続的に変化している。
なお、図5は、代表反射点A−1〜A−5の間における各膜厚の変化をグラフにしたものである。図5における「スペーサA」は、スペーサ層SAの膜厚を示しており、「スペーサB」は、スペーサ層SBの膜厚を示している。
ここで、以上の説明では、図4に示すとおり波長13.5nmのEUV光に対するピーク角度(=反射率がピークとなる入射光の角度)を、代表反射点A−1〜A−5の間で共通(22deg付近)に設定したが、少なくとも1つの代表反射点のピーク角度を他の値にシフトさせてもよい。
ここで、代表反射点のピーク角度をシフトさせるには、その代表反射点のペア周期長dA、dB、dCに対して共通の値を乗算し、その代表反射点の膜厚dSA、dSBに対して共通の値を乗算すればよい。
例えば、代表反射点のペア周期長dA、dB、dCの各々を0.958倍とし、その代表反射点の膜厚dSA、dSBの各々を0.967倍とすれば、その代表反射点のピーク角度を、22deg付近から15deg付近へとシフトさせることができる。
因みに、図6、図7に示す例は、図3、図4に示した例において、ペア周期長dA、dB、dCの各々を0.958倍化し、膜厚dSA、dSBの各々を0.967倍化したものである。図6、図7に示す例では、代表反射点A−1〜A−5の各々のピーク角度が15deg付近に設定されている。
以上、本実施形態の多層膜反射鏡100では、反射率の角度特性(反射角度範囲とピーク角度との組み合わせ)が反射面内の位置毎に設定されている。
したがって、本実施形態の多層膜反射鏡100は、反射率の角度特性(反射角度範囲とピーク角度との組み合わせ)の目標値が反射面の位置によって異なる光学系、例えば、EUV露光装置の投影光学系に好適である。
しかも、本実施形態の多層膜反射鏡100では、「基板側ブロックのペア比とスペーサ層の膜厚との組み合わせ」以外のパラメータは、反射面内の各位置の間で共通又はほぼ共通である。なお、「基板側ブロック」とは、反基板側から数えて2番目以降のブロックの何れかのことであり、「反基板側ブロック」とは、反基板側から数えて1番目のブロックのことである。
したがって、本実施形態の多層膜反射鏡100によれば、膜設計時の設計パラメータの数、ひいては成膜時の調整パラメータの数を抑えることができる。
しかも、反射面内の各位置の間では、全ての層の材料が共通しているので、全ての層の成膜工程を共通化することができる(後述する第4実施形態〜第9実施形態を参照)。
しかも、反射面内の各位置の間では、膜構成及び反射特性が連続的に変化しているので、その成膜工程では、一部の成膜パラメータを連続的に変化させるだけで、反射面内の各位置の反射特性を適正にすることができる(後述する第4実施形態〜第9実施形態を参照)。
なお、本実施形態では、多層膜反射鏡100の反射面内の位置毎に設定される主なパラメータを、「基板側ブロックのペア比ΓA、ΓB及びスペーサ層の膜厚dSA、dSB」としたが、他のパラメータを加えてもよいことは言うまでもない。
例えば、本実施形態では、反基板側ブロック(ブロックC)のパラメータ(ペア周期長dC、ペア比ΓC、ペア数NC)を反射面内の各位置の間で共通としたが、非共通としてもよい。
また、本実施形態では、多層膜反射鏡100の反射特性に対するブロックの寄与を反射面内の各位置の間で調整するために、反射面内の各位置の間でペア比Γを調整したが、ブロックの寄与を調整する方法は、ペア比Γを調整する方法に限定されることはなく、例えば、ペア比Γを調整する方法に加えて、以下の方法(a)〜(d)の少なくとも1つを採用してもよい。
(a)ブロックの成膜後に基板Pを加熱し界面拡散を進めることで、そのブロックの表面に熱拡散層を形成し、その熱拡散層によりブロックの寄与を調整する方法。
(b)ブロックの成膜先である基板Pの表面粗さにより、そのブロックの寄与を調整する方法。
(c)ブロックの成膜後にイオンビーム照射などにより表面を平坦化することで、そのブロックの表面粗さを調整し、そのブロックの寄与を調整する方法。但し、そのブロックの成膜をイオンビームスパッタリングで行った場合など、成膜時の平坦化効果により表面粗さが改善される場合には、改めて平坦化を行う必要が無いので、そのブロックの寄与の調整には、他の方法が採用される。
(d)ブロックの表面に、吸収の大きな物質とSiとから成る層を成膜し、成膜された層によりブロックの寄与を調整する方法。但し、その吸収物質とSi層を合わせた光学的厚さは、入射光の波長の約1/4に設定される。
また、本実施形態の多層膜反射鏡100では、等周期多層膜ブロックの総数を3としたが、これに限定されることはなく、2又は4以上の何れかの数であってもよい。例えば、本実施形態の多層膜反射鏡100においてブロックA(及びスペーサ層SA)を省略しても、一定の効果は得られるはずである。
また、本実施形態では、パラメータの組み合わせを反射面内の位置毎に設定したが、パラメータの組み合わせの一様な領域が反射面内に部分的に存在していてもよいことは言うまでもない。その場合であっても、多層膜反射鏡100の反射面内では、パラメータの組み合わせ分布は滑らかな分布に設定される。
また、本実施形態では、パラメータの組み合わせを反射面内の位置毎に設定したが、パラメータの組み合わせを領域毎に設定してもよいことは言うまでもない。その場合であっても、多層膜反射鏡100の反射面内では、パラメータの組み合わせ分布は滑らかな分布に設定される。
また、何れの場合であっても、多層膜反射鏡100の外形、反射面の形状、反射面におけるパラメータの組み合わせ分布などは、投影光学系の仕様と、投影光学系における多層膜反射鏡100の配置先とに応じて適切に設定される(例えば後述する第3実施形態を参照。)。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態として多層膜反射鏡の実施形態を説明する。ここでは、第1実施形態との相違点を主に説明する。
第1実施形態では、反射面内の位置毎に設定される主なパラメータを、「基板側ブロックのペア比とスペーサ層の膜厚との組み合わせ」としたが、本実施形態では、反射面内の位置毎に設定される主なパラメータを、「基板側ブロックのペア数と反基板側ブロックのペア数との組み合わせ」とする。
図8は、本実施形態の多層膜反射鏡の反射面内における6つの代表反射点E、F、I、J、P、Qを模式的に示す図であり、図9は、これら6つの代表反射点E、F、I、J、P、Qを含む17個の代表反射点A〜Qの膜構成を示す表である。なお、図9における数値は、ブロックのペア数Nであり、図9では、複数のブロックを反基板側(表面側)から順に「第1ブロック」、「第2ブロック」、「第3ブロック」、「第4ブロック」と称した。
また、本実施形態の多層膜反射鏡の反射面内における他の反射点の膜構成は、その反射点に近接する少なくとも2つの代表反射点の膜構成の中間的な膜構成に設定されている。つまり、その反射点のパラメータは、近接する少なくとも2つの代表反射点のパラメータの中間的な値に設定される。
以下、代表反射点A〜Qを詳しく説明する。
図8及び図9に示すとおり、本実施形態では、代表反射点Aから代表反射点Qにかけて、基板側ブロックのペア数Nが徐々に削減され、その反対に、反基板側ブロックのペア数Nが徐々に増加している。
また、基板側ブロックのペア数Nが削減され、そのペア数がゼロとなると、そのブロックが消滅する。よって、図8に示すとおり、代表反射点Eから代表反射点Fにかけてはブロック数が1つ減少しており、代表反射点Iから代表反射点Jにかけてはブロック数が1つ減少しており、代表反射点Pから代表反射点Qにかけてはブロック数が1つ減少している。
また、図9には示さなかったが、第1ブロック〜第4ブロックの各々は、Mo層とSi層とからなる等周期多層膜ブロックであって、これらブロックの各々におけるMo層の厚さは3.1nmであり、これらブロックの各々におけるSi層の厚さは4.2nmである。また、図9には示さなかったが、第2ブロック〜第4ブロックの各々の反基板側には、膜厚3.6nmのSi層からなるスペーサ層が形成されている。
また、図9に示すとおり、複数の代表反射点A〜Qの間で、基板側から反基板側までのトータルのペア数は、共通である。このため、本実施形態では、複数の代表反射点A〜Qの間で、基板側から反基板側までのトータルの膜厚も、共通である。よって、多層膜反射鏡の反射面内では、基板側から反基板側までのトータルの膜厚は一様に設定されている。
ここで、図8に符号(a)に示した間隙部の膜構成を詳しく説明する。
この間隙部は、代表反射点Iと代表反射点Jとの間隙であって、反基板側ブロック(第1ブロック)と基板側ブロック(第2、第3ブロック)との間隙である。この間隙部において、基板側ブロックと反基板側ブロックとの間に位置するスペーサ層は、代表反射点Iから代表反射点Jに向かうにつれて徐々に変位している。この間隙部を詳しく説明したのが図10である。
図10に示すとおり、この間隙部では、スペーサ層の配置先は、代表反射点Iから代表反射点Jに向かうにつれて、反基板側から基板側へ徐々に変位している。
但し、この間隙部では、スペーサ層の配置先が層対(Mo/Si)の間に設定されることはなく、その代わりに、スペーサ層は、或る層対(Mo/Si)の基板側に位置するスペーサ層(a)と、反基板側に位置するスペーサ層(b)とに分離される。
また、この間隙部では、反基板側のスペーサ層(b)の膜厚を基準とした基板側のスペーサ層(a)の膜厚の比は、代表反射点Iから代表反射点Jへ向かって連続的に大きくなっている。
しかも、この間隙部では、基板側のスペーサ層(a)の膜厚と反基板側のスペーサ層(b)の膜厚との和は、代表反射点I又は代表反射点Jにおけるスペーサ層の膜厚(=3.6nm)と同じに設定される。
したがって、この間隙部では、スペーサ層の見た目の膜厚は維持され、スペーサ層の見た目の配置先のみが連続的に変位する。
なお、図8(a)に示した間隙部におけるスペーサ層ついて説明したが、本実施形態では、他の間隙部におけるスペーサ層も同様に調整される(見た目の配置先が連続的に変化する)ものとする。
図11は、反射率の角度特性を代表反射点ごとに示したグラフである。なお、図11に示す角度特性は、波長13.5nmの無偏光EUV光に対する角度特性である。
図11に示すとおり、角度特性カーブの形状は、代表反射点Aから代表反射点Qにかけて徐々に変化している。代表反射点Aの角度特性カーブは、比較的広い角度範囲で均一な反射率を示しているのに対して、代表反射点Qの角度特性カーブは、比較的狭い角度範囲で比較的高い反射率を示している。つまり、代表反射点Aから代表反射点Qにかけては、ピーク反射率が徐々に高くなり、かつ、入射光の反射角度範囲(ピーク反射率の90%以上の反射率を示す角度範囲)が徐々に狭まる。また、代表反射点Aから代表反射点Qにかけては、カーブ形状が偏ったり歪んだりせずに連続的に変化している。
以上、本実施形態の多層膜反射鏡では、反射率の角度特性(反射角度範囲、ピーク反射率、ピーク角度の組み合わせ)が反射面内の位置毎に設定されている。
したがって、本実施形態の多層膜反射鏡は、反射率の角度特性(反射角度範囲とピーク角度との組み合わせ)の目標値が反射面の位置によって異なる光学系、すなわちEUV露光装置の投影光学系に好適である。
しかも、本実施形態の多層膜反射鏡において、「基板側ブロックのペア数と反基板側ブロックのペア数との組み合わせ」以外のパラメータは、反射面内の各位置の間で共通である。
したがって、この多層膜反射鏡によれば、設計時の設計パラメータの数、ひいては成膜時の調整パラメータの数を抑えることができる。
しかも、反射面内の各位置の間では、多くの層の材料が共通しているので、多くの成膜工程を共通化することができる(後述する第4実施形態〜第9実施形態を参照)。
しかも、反射面内の各位置の間では、膜構成及び反射特性が連続的に変化しているので、その成膜工程では、一部の成膜パラメータを連続的に変化させるだけで、反射面内の各位置の反射特性を適正にすることができる(後述する第4実施形態〜第9実施形態を参照)。
なお、本実施形態の多層膜反射鏡も、第1実施形態の多層膜反射鏡と同様、様々に変形することが可能である。
例えば、本実施形態では、多層膜反射鏡の反射面内の位置毎に設定される主なパラメータを、「基板側ブロックのペア数及び反基板側ブロックのペア数」としたが、他のパラメータを加えてもよい。
また、例えば、本実施形態の多層膜反射鏡では、等周期多層膜ブロックの総数を最大で4としたが(ブロック数が最大である代表反射点A、Bのブロック数は4である)、これに限定されることはなく、2又は4以上の何れかの数であってもよい。
また、本実施形態の多層膜反射鏡では、等周期多層膜ブロックの総数を最小で1としたが(ブロック数が最小である代表反射点Qのブロック数は1である)、これに限定されることはなく、2以上の何れかの数であってもよい。
[第1実施形態又は第2実施形態の補足]
なお、図12は、反射率の波長特性を幾つかの多層膜について示したグラフである。なお、図12に示す波長特性は、波長13.5nmの直入射EUV光に関する波長特性である。
図12における「等周期」は、3nmのMo層と3.935nmのSi層とからなる層対を34回にわたり積層した等周期構造多層膜である。
図12における「スペーサ1.0nm」は、前記等周期多層膜において、基板側から9層対目と10層対目との間に膜厚1.0nmのSiからなるスペーサ層を挿入し、かつ、基板側から14層対目と15層対目との間に膜厚1.0nmのSiからなるスペーサ層を挿入したものである。
図12における「スペーサ2.0nm」は、前記等周期多層膜において、基板側から9層対目と10層対目との間に膜厚2.0nmのSiからなるスペーサ層を挿入し、かつ、基板側から14層対目と15層対目との間に膜厚2.0nmのSiからなるスペーサ層を挿入したものである。
図12における「スペーサ3.0nm」は、前記等周期多層膜において、基板側から9層対目と10層対目との間に膜厚3.0nmのSiからなるスペーサ層を挿入し、かつ、基板側から14層対目と15層対目との間に膜厚3.0nmのSiからなるスペーサ層を挿入したものである。
図12における「スペーサ3.5nm」は、前記等周期多層膜において、基板側から9層対目と10層対目との間に膜厚3.5nmのSiからなるスペーサ層を挿入し、かつ、基板側から14層対目と15層対目との間に膜厚3.5nmのSiからなるスペーサ層を挿入したものである。
ここからわかるように、厚さ3.5nmのスペーサ層の挿入により反射波長帯域の幅が拡がり、広い波長帯域で均一な反射率が得られるようになる。
但し、スペーサ層の膜厚が0nmから3.5nmへと変化する過程では、反射率がピークとなる波長(ピーク波長)が長波長側に偏り、例えば波長13.2nmでは反射率が一旦大きく低下した後上昇するという好ましくない波長特性を示す。
したがって、仮に、反射面内の位置毎に設定されるパラメータを「スペーサ層の膜厚のみ」としたならば、反射面内の各位置の間でピーク波長がずれてしまう虞がある。
その点、上述した第1実施形態では、反射面内の位置毎に設定されるパラメータを「基板側ブロックのペア比とスペーサ層の膜厚との組み合わせ」としたので、反射面内の各位置の間で、高反射率が得られる角度範囲の中心角度を一致させることが可能であり、上述した第2実施形態では、反射面内の位置毎に設定されるパラメータを「基板側ブロックのペア数と反基板側ブロックのペア数との組み合わせ」としたので、反射面内の各位置の間でピーク波長を一致させることが可能である。
また、上述した第1実施形態又は第2実施形態では、等周期多層膜の層対としてMo層及びSi層を使用したが、等周期多層膜の層対の材料はEUV光の波長帯域などに応じて適宜に変更することができる。例えば、使用波長を11.3nm付近のEUV波長域とする場合には、等周期多層膜の層対としてモリブデン層(Mo層)及びベリリウム層(Be層)を使用することで、高い反射率を得ることができる。
また、上述した第1実施形態又は第2実施形態では、等周期多層膜の層対を構成する一方の層の材料として、ルテニウム(Ru)、炭化モリブデン(Mo2C)、酸化モリブデン(MoO2)、珪化モリブデン(MoSi2)等を用いてもよい。また、等周期多層膜の層対を構成する他方の層の材料として、炭化シリコン(SiC)を用いてもよい。
また、上述した第1実施形態又は第2実施形態では、等周期多層膜の層対を構成する一方の層と他方の層との間に、それら多層膜を構成する物質の拡散を抑制する拡散抑制層が形成されてもよい。また、その多層膜の表層に酸化抑制層が形成されてもよい。
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態として、多層膜反射鏡の更に具体的な実施形態を説明する。ここでは、第1実施形態又は第2実施形態で説明済みの事項の説明を省略する。
図13は、本実施形態の多層膜反射鏡の基板Pを光の入射側から見た図である。
図13に示すとおり、基板Pの外形は例えば6角形状であり、この基板Pの外周部には、基板Pを保持する構造(不図示)が設けられている。基板Pの表面は、例えば凹面の回転対称な非球面形状をしており、0.1nmrmsより小さい粗さに研磨されている。図13において符号900で示すのが研磨領域である。その研磨領域900よりも一回り小さい円枠内が多層膜の成膜領域901であって、その成膜領域901の内部における楕円枠内が有効領域902である。
本実施形態では、この有効領域902に対するEUV光(λ=13.5nm)の入射角度範囲は、図中の点イでは21〜23度、点ロ、ハでは18度〜25度、点ニでは14〜16度、点ホ、ヘでは10〜19度である。
そこで、本実施形態では、有効領域902における代表反射点イにおけるパラメータの組み合わせは、前述した代表反射点A−5(図3参照)と同じ組み合わせに設定され、代表反射点ロ、ハにおけるパラメータの組み合わせは、前述した代表反射点A−1(図3参照)と同じ組み合わせに設定され、代表反射点ニ、ホ、ヘにおけるパラメータの組み合わせは、前述した代表反射点B−5(図6参照)と同じ組み合わせに設定される。
また、本実施形態においても、有効領域902における代表反射点イ、ロ、ハ、ニ、ホ以外の反射点のパラメータは、その反射点に近接する少なくとも2つの代表反射点のパラメータの中間的な値に設定される。
また、本実施形態においても、有効領域902におけるパラメータの組み合わせ分布は、滑らかな分布に設定される。
その結果、EUV光(波長13.5nm)に対する有効領域902の反射率は、50%〜61%となる。よって、本実施形態の多層膜反射鏡100は、投影光学系の瞳内の透過率不均一性を抑え、投影光学系の性能を向上させることができる。
因みに、同じ有効領域902にペア数が50である等周期多層膜を形成し、そのペア周期長にのみ分布をつけたならば、有効領域902の反射率は40%〜70%となる。よって、この場合の多層膜反射鏡は、投影光学系の瞳内の透過率不均一性を悪化させ、投影光学系の光学性能を劣化させる。
また、仮に、有効領域902の全域のパラメータを代表反射点A−1のパラメータと同じに設定したならば、有効領域902の反射率は50%〜54%となる。よって、この場合の多層膜反射鏡は、投影光学系の瞳内の透過率不均一性を悪化させることはないものの、瞳内の平均透過率を低下させる。
したがって、本実施形態の多層膜反射鏡100が投影光学系に好適であることは明白である。
なお、本実施形態の多層膜反射鏡100では、各層の膜厚に分布がつけられているので、その分布の影響でEUV光の波面形状が変形する虞もある。その場合は、その変形を相殺するような膜厚分布の層を、基板側のベースとして付加してもよい。但し、ここでいう「変形」は、基板Pの面形状(ここでは凹面の非球面形状)に起因する適正な変形以外の変形のことを指す。
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態として成膜装置の実施形態を説明する。本実施形態の成膜装置は、第1実施形態〜第3実施形態の何れかで説明した多層膜反射鏡の製造に適用することが可能である。
図14(A)は、本実施形態の成膜装置の構成図である。図14(A)に示すとおり成膜装置は、基板ステージ102、マグネトロンカソード105、可変絞り機構200などを真空容器101内に収容したマグネトロンスパッタ成膜装置である。
カソード105には、Moターゲットなどのターゲット106が取り付けられる。なお、図14では1基のカソード105しか示さなかったが、実際の真空容器101には、基板104に形成すべき層の種類数に応じた数のカソード(例えば4基のカソード)が収容され、それらカソードには、互いに異なる種類のターゲットが取り付けられる。
基板ステージ102上には、成膜対象となる基板104がホルダ103を介して取り付けられており、その基板104の表面は、カソード105の側に向いている。この基板ステージ102は、所定の回転軸の周りに基板104を自転させることが可能であると共に、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各々への基板104を直線移動させることが可能である。
可変絞り機構200は、ターゲット106の基板側に設置されており、長方形に近い形状の開口200Aを有している。その開口200Aの短手方向は基板ステージ102のX軸方向に一致しており、その開口200Aの長手方向は基板ステージ102のY軸方向に一致している。なお、開口200AのY方向の幅は、基板104のY方向の幅よりも十分に大きいものとする。
基板104の表面における成膜領域の形状は、この開口200Aの形状によって規定される。ここで、成膜領域とは、ターゲット106から放出されたスパッタ粒子が到達する領域のことであって、基板104の表面のうち開口200Aに正対している領域にほぼ等しい。この成膜領域を基板104が通過(走査)すると、基板104の表面のうち成膜領域で走査された部分に膜が形成される。
図14(B)は、可変絞り機構200を説明する図である。図14(B)に示すとおり可変絞り機構200には、開口200Aのサイズよりも十分に小さな短冊状の多数の遮蔽板108と、それら遮蔽板108を個別に保持し、かつX軸方向に移動可能な多数の遮蔽板ステージ(不図示)と、それらの遮蔽板ステージを個別に駆動する開口幅可変機構107とが備えられる。
開口幅可変機構107は、多数の遮蔽板108のX方向の位置を独立に設定することにより、開口200Aの形状(すなわち、開口200AのX方向の幅のY方向分布)を自由に設定することができる。また、開口幅可変機構107は、多数の遮蔽板108のX方向の位置を独立に時間変化させることにより、開口200Aの形状(すなわち、開口200AのX方向の幅のY方向分布)を自由に時間変化させることができる。
以上の構成の成膜装置では、成膜中、基板ステージ102は、基板104を自転させることなくX方向へ平行移動させ、開口幅可変機構107は、開口200Aの形状(開口200AのX方向の幅のY方向分布)を時間変化させる。
ここで、基板104上のある点の成膜時間は、その点が成膜領域を通過するのにかかる時間に依存する。
そこで、開口幅可変機構107は、開口200AのX方向の幅を、Y軸方向にかけて変化させることでY軸方向の膜厚分布を制御し、開口200AのX方向の幅を時間変化させることでX軸方向の膜厚分布を制御する。
よって、本実施形態の成膜装置は、X方向及びY方向の双方に亘って自由な膜厚分布の層を基板104の表面へ形成することができる。また、本実施形態の成膜装置は、基板104に正対するターゲットを切り換え、その切り換えの前後において前述した制御を行えば、基板104に積層される複数の層の間で膜厚分布を異ならせることもできる。
したがって、本実施形態の成膜装置によれば、第1実施形態〜第3実施形態の何れかで説明した多層膜を基板104へ成膜することが可能である。
なお、本実施形態では、回転非対称な分布の層を基板104へ形成することを想定し、基板ステージ102が基板104を自転させなかったが、回転対称な分布の層を基板104へ形成する場合は、基板ステージ102が基板104を十分な速度で自転させればよいことは言うまでもない。
また、本実施形態の成膜装置において、互いに異なる種類のターゲットを保持した複数のカソード105を用意し、それら複数のカソード105をX方向に並べて配置すれば、材料の異なる複数の層を基板104へ順次に積層することができる(その場合、可変絞り機構200は、複数のカソード105の各々に設けられることが望ましい。)。
また、本実施形態の成膜装置では、ターゲット106から基板104までの距離を可変としてもよく、ターゲット106又は基板104の姿勢を可変としてもよい。
また、本実施形態の成膜装置では、基板ステージ102の移動速度を等速としてもよく、不等速としてもよい。
また、本実施形態の成膜装置では、カソード105の開口幅を可変とするために、遮蔽板108の位置を可変としたが、遮蔽板108の位置を可変とする代わりに、或いは遮蔽板108の位置を可変とするのに加えて、遮蔽板108の姿勢を可変としてもよい(その場合、例えば、遮蔽板108を所定の軸の周りに回転可能にすればよい。)。
また、本実施形態では、マグネトロンスパッタ方式の成膜装置を説明したが、イオンビーム方式の成膜装置又は蒸着方式の成膜装置にも本発明は適用が可能である。
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態として成膜方法の実施形態を説明する。本実施形態の成膜方法は、第1実施形態〜第3実施形態の何れかで説明した多層膜反射鏡の製造に適用することが可能である。本実施形態でも第4実施形態と同様にスパッタリング法を想定するが、本実施形態では、開口形状が可変の絞り(可変絞り)の代わりに、開口形状の固定された遮蔽マスクを使用する。
(第5実施形態の基本的な成膜方法)
図15は、本実施形態の基本的な成膜方法を説明する図である。なお、ここでは、成膜対象となる基板104の面形状を回転対称非球面と仮定する。
図15(a)に示すとおり、基本的な成膜方法では、ターゲット106から発したスパッタ粒子を基板104の表面に到達させることで、その表面に成膜を施す。この成膜中に、基板104とターゲット106との間には、例えば図15(b)に示すような遮蔽マスク300が配置され、例えば図15(a)に示すとおり基板104の非球面軸を自転軸として基板104が自転する。なお、基本的な成膜方法では、遮蔽マスク300の開口中心と基板104の自転軸とを一致させる。また、遮蔽マスク300としては、例えば、金属等からなるマスク基板に対して部分的に開口を設けたものが使用される。
(第5実施形態の第1実施例)
図16は、第5実施形態の第1実施例を説明する図である。第1実施例では、基板104に形成される層の膜厚分布を、軸外し回転対称分布とする。「軸外し回転対称分布」とは、基板104の非球面軸から外れた軸の周りに回転対称な分布のことを指す。
本実施例では、例えば図16(b)に示すように基板104の自転軸に対して遮蔽マスク300の開口中心をオフセットさせる。このように遮蔽マスク300をオフセットさせれば、基板104に形成される層の膜厚分布の対称軸を、基板104の非球面軸から外すことができる。
なお、ここでは遮蔽マスク300をオフセットさせたが、遮蔽マスク300をオフセットさせる代わりに、図16(d)に示すように、基板104をチルトさせた状態で成膜を行ってもよい。
但し、基板104がチルトした状態であっても、基板104の表面の近似球面の曲率中心は、基板104の自転軸から外れないものとする。そのためには、基板104の表面がその近似球面に沿うように基板104をチルトさせればよい。
ここで、基板104に形成される層の膜厚分布は、基板104とターゲット106との間隔分布によって決まる。このため、仮に、図16(e)に示すように、基板104の非球面軸を基板104の自転軸と平行に保ったまま基板104をシフトさせると、基板104とターゲット106との間隔分布、ひいては膜厚分布が、基板104の非球面軸に関して回転非対称となってしまう。
しかし、図16(d)に示すように基板104をチルトさせれば、基板104の表面とターゲット106との間隔分布、ひいては膜厚分布が、基板104の自転軸に関して回転対称になる(図16(c)に示した基本配置においても同じである)。
したがって、基板104を適正にチルトさせる本実施例では、基板104の表面に形成される層の膜厚分布誤差は、小さく抑えられる。
(第5実施形態の第2実施例)
図17、図18、図19は、第5実施形態の第2実施例を説明する図である。ここでは、第1実施例との相違点を説明する。
本実施例では、基板104に形成される層の膜厚分布を、チルト分布とする。「チルト分布」とは、特定方向における膜厚分布がその方向における位置の1次関数で表される分布のことを指す。膜厚分布を面形状に例えれば、「チルト分布」はチルト成分に相当する。
先ず、本実施例では、遮蔽マスク300の開口パターンを、例えば、図17(a)に示すようなパターンとする。この開口パターンは、開口中心の両側に位置する2つの開口からなり、それら2つの開口の形状は、互いに異なる。以下、遮光マスク300の開口中心の周りの角度を「θ」で表し、開口中心からの距離を「r」で表す(他の実施例も同様)。
次に、本実施例では、遮蔽マスク300の開口中心と基板104の自転軸とを一致させ、基板104の自転速度を非等速にする。なぜなら、本実施例の膜厚分布(=チルト分布)は、第1実施例の膜厚分布とは異なり、θの奇関数である。基板104の自転速度を非等速とすれば、基板104の表面においてrが共通であってθの異なる2つの点の膜厚に、差異を設けることができる。
例えば、基板104の自転速度を非等速とし、図17(b)に示すとおり基板104の左端部が図17(a)の右側開口を通過する際に自転速度を速くし、基板104の右端部が図17(a)の右側開口を通過する際に自転速度を遅くしたならば、基板104の左端部の膜厚を小さくし、基板104の右端部の膜厚を大きくすることができる。
そこで、本実施形態では、基板104の自転速度を図17(c)に示すとおりに制御する。すなわち、基板104の自転速度は、1/cosθに応じた速度に制御される。なぜなら、チルト分布はcosθで表されるので、開口による基板104の開放期間はcosθに応じた期間に設定される必要がある。また、開口による基板104の開放期間は、基板104の自転速度の逆数となる。
また、本実施形態では、遮蔽マスク300の開口形状を図17(d)に示すとおりに設定する。すなわち、2つの開口の各々のエッジ角度は、rの1次関数に設定される。なぜなら、チルト分布は、基板104の特定方向におけるrの1次関数で表されるので、このチルト分布を作るためには、遮蔽マスク300の2つの開口のトータルのエッジ角度をrの1次関数とすればよく、2つの開口のトータルのエッジ角度をrの1次関数とするためには、2つの開口の各々のエッジ角度をrの1次関数とすればよい。
図18は、本実施例のシミュレーション結果である。図18(a)は、r方向の膜厚分布をθごとに示したものである。これらの図18(a)からは、本実施例の膜厚分布がθ=0度の方向に傾斜していることがわかる。また、図18(b)は、θ方向の膜厚分布をrごとに示したものであり、これらの膜厚分布は何れもcosθで表される。
なお、図19は、シミュレーションの目標膜厚分布である。図19(a)は、r方向の膜厚分布を、図19(b)は、θ方向の膜厚分布を示す。なお、図19(a)、(b)における膜厚の値は、最大膜厚で規格化した値である。
なお、本実施例において基板104に形成される層の膜厚分布は、基板104の自転速度及び遮蔽マスク300の開口パターン以外の影響も受ける。例えば、基板104の表面の曲率や、ターゲット106から飛散したスパッタ粒子の空間分布などの影響である。これらの影響については後述するが、本実施例のシミュレーションでは、基板104の表面を平面と仮定し、スパッタ粒子は均一に存在する(飛散する)と仮定した。
(第5実施形態の第3実施例)
図20、図21、図22は、第5実施形態の第3実施例を説明する図である。ここでは、第2実施例との相違点を説明する。
本実施例では、基板104に形成される層の膜厚分布を、コマ分布とする。膜厚分布を面形状に例えれば、「コマ分布」はコマ成分に相当する。
本実施例における基板104の自転速度は、図20(b)に示すとおりに設定される。すなわち、第2実施例と同様、本実施例における基板104の自転速度は1/cosθに応じた速度に設定される。
一方、本実施例における遮蔽マスク300の開口形状は、図20(a)、(c)に示すとおりに設定される。すなわち、遮蔽マスク300の開口のエッジ角度は、rの3次関数に設定される。なぜなら、コマ分布は、rの3次関数(例えば、3r3−2r)で表されるからである。
図21は、本実施例のシミュレーション結果である。図21(a)は、r方向の膜厚分布をθごとに示したものであり、図21(b)は、θ方向の膜厚分布をrごとに示したものである。
なお、図22は、シミュレーションの目標膜厚分布である。図22(a)は、r方向の膜厚分布を、図22(b)は、θ方向の膜厚分布を示す。なお、図22(a)、(b)における膜厚の値は、最大膜厚で規格化した値である。
(第4実施例)
図23、図24、図25は、第5実施形態の第4実施例を説明する図である。ここでは、第3実施例との相違点を説明する。
本実施例では、基板104に形成される層の膜厚分布を、アス分布とする。膜厚分布を面形状に例えれば、「アス分布」はアス成分に相当する。
本実施例における基板104の自転速度は、図23(b)に示すとおり1/cos2θに応じた速度に設定される。なぜなら、アス分布は、cos2θで表されるからである。
一方、本実施例における遮蔽マスク300の開口形状は、図23(a)、(c)に示すとおりに設定される。すなわち、遮蔽マスク300の開口のエッジ角度は、rの2次関数に設定される。なぜなら、アス分布は、rの2次関数で表されるからである。
図24は、本実施例のシミュレーション結果である。図24(a)は、r方向の膜厚分布をθごとに示したものであり、図24(b)は、θ方向の膜厚分布をrごとに示したものである。
なお、図25は、シミュレーションの目標膜厚分布である。図25(a)は、r方向の膜厚分布を、図25(b)は、θ方向の膜厚分布を示す。なお、図25(a)、(b)における膜厚の値は、最大膜厚で規格化した値である。
なお、図24(a)の分布と図25(a)の分布とは一見すると異なるが、これは両者の曲率成分の量が異なるためである。あらかじめ基板104の曲率にオフセットを加えるなどの処置を施せば、両者の分布は一致する。
(第5実施形態の第5実施例)
図26、図27、図28は、第5実施形態の第5実施例を説明する図である。ここでは、第4実施例との相違点を説明する。
本実施例では、基板104に形成される層の膜厚分布を、ゼロθ分布とする。膜厚分布を面形状に例えれば、「ゼロθ分布」はゼロθ成分に相当する。
なお、ゼロθ分布の層の成膜は、従来の成膜方法によっても行うことが可能であるが、本実施例では、第2実施例〜第4実施例の成膜方法に対応した成膜方法で行う。
先ず、本実施例における基板104の自転速度は、図26(b)に示すとおりに設定される。
一方、本実施例における遮蔽マスク300の開口形状は、図26(a)、(c)に示すとおりに設定される。
図27は、本実施例のシミュレーション結果である。図27(a)は、r方向の膜厚分布をθごとに示したものであり、図27(b)は、θ方向の膜厚分布をrごとに示したものである。
図28は、シミュレーションの目標膜厚分布である。図28(a)は、r方向の膜厚分布を、図28(b)は、θ方向の膜厚分布を示す。なお、図28(a)、(b)における膜厚の値は、最大膜厚で規格化した値である。
以上、第5実施形態の第1実施例〜第5実施例では、膜厚分布の互いに異なる成分「軸外し回転対称分布」、「チルト分布」、「コマ分布」、「アス分布」、「ゼロθ分布」を実現する5通りの成膜方法を説明した。これらの「軸外し回転対称分布」、「チルト分布」、「コマ分布」、「アス分布」、「ゼロθ分布」は、互いに直交関係にあり、しかも、光学素子の表面に形成される層の膜厚分布を記述する主要成分でもある。つまり、これらの「軸外し回転対称分布」、「チルト分布」、「コマ分布」、「アス分布」、「ゼロθ分布」は、成分数が少ない割に、光学素子に要求される多くの膜厚分布を記述することが可能である。
したがって、第5実施形態の5通りの成膜方法を組み合わせて実行すれば、光学素子に要求され得る様々な膜厚分布の層を、基板104に成膜することができる。
しかも、第5実施形態の5通りの成膜方法には、共通の成膜装置を使用することが可能である。5通りの遮蔽マスクの切り換え機構を成膜装置へ搭載しておけば、5通りの成膜方法を任意の順序で実行することができる。
なお、言うまでもないが、基板104に形成すべき層の目標膜厚分布がシンプルである場合には、これら5通りの成膜方法の一部のみによって必要な層を基板104へ成膜できることもある。
例えば、或る層の目標膜厚分布がアス分布とコマ分布との線形和で表される場合は、その層の一部を第4実施例の成膜方法で形成し、その層の残りを第3実施例の成膜方法で形成すればよい。
なお、成膜装置で発生する膜厚分布は、基板104の形状やスパッタ粒子の空間分布の影響も受ける。第5実施形態における少なくとも1つの成膜方法は、この影響を補正するための補正層の成膜にも適用することができる。
また、EUV光で使用される多層膜は、各層の膜厚が数nmときわめて薄く、さらに層の総数は約100層にもなる。これを第5実施形態の成膜方法で成膜すると、成膜プロセスが複雑になり、成膜時間も長くなる虞がある。
そこで、第5実施形態では、例えば、成膜装置におけるスパッタ粒子の空間分布を均一化するために、例えば、ターゲット106に照射するイオンの入射角度や空間分布あるいはターゲット106の表面形状などを最適化しておくことが望ましい。
このような最適化を第5実施形態の成膜方法に適用すれば、非対称な膜厚分布の層の成膜をも高精度に行うことができる。
また、基板104の表面の曲率も膜厚分布の誤差になるため、その影響を極力低減するような工夫を施すことが好ましい。例えば、ターゲット106を基板104の曲率中心位置付近に配置すれば、基板104の表面位置とターゲット106との距離が均一化されるので、膜厚分布誤差が生じにくくなる。
また、第5実施形態では、膜設計の段階で目標膜厚分布をできるだけ単一の低次成分(シンプルな膜厚分布)で表現し、成膜プロセスの簡素化を図ることも重要である。
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態として成膜装置の実施形態を説明する。本実施形態の成膜装置は、第1実施形態〜第3実施形態の何れかで説明した多層膜反射鏡の製造に適用することが可能である。
図29は、本実施形態の成膜装置の構成図である。図29に示すとおり成膜装置は、成膜室1の内部に被成膜物(基板)2とスパッタ源(ターゲット及びカソード)3とを対向配置している。被成膜面21の向きは、鉛直下向き、上向き、或いは水平方向でも構わないが、スパッタ源3は、被成膜面21を見込むことが可能な位置に配置される。
スパッタ源3は、3次元的に任意の方向を向くことが可能であり、かつ、任意の位置へ並進することが可能な6軸駆動ステージ31によって保持されている。なお、この6軸駆動ステージ31は、3軸並進及び3軸回転が可能なステージのことである。但し、要求を満たすのであれば駆動ステージ31の軸数は6未満であっても構わない。
スパッタ源2からのスパッタ粒子32の出射方向には、成膜時間を調整するためのシャッター33と遮蔽マスク34とが設置されている。よって、このようなスパッタ源3を用いれば、被成膜物2上の任意の領域へ局所的に成膜を行うことができるため、被成膜面21に形成される層の膜厚分布を自由にコントロールすることが可能となる。
このようなスパッタ源3による成膜領域35の形状及びサイズは、遮蔽マスク34を用いて自由に変更が可能である。この遮蔽マスク34はカメラの絞りのような自由に開口を制御できる可変マスクでも構わない。
また、スパッタ源3として小型のスパッタ源を利用すれば、遮蔽マスク34の有無に依らず成膜領域35を制限することができる。或いは、小型のスパッタ源3を複数配置して多元スパッタ源化し、それらスパッタ源の出力分布を制御しても同様の利点が得られる。
なお、スパッタ源3はマグネトロンスパッタ方式のスパッタ源でもイオンビーム方式のスパッタ源でも蒸着源でも構わない。いずれにしても、スパッタ源3のターゲットは、成膜物質の数に応じた複数のターゲットの間で切り換えが可能である。
以上、本実施形態の成膜装置は、非回転対称膜厚分布の層を被成膜物(基板)2に成膜することが可能である。また、この成膜装置は、その層の膜厚分布を自由に制御することができるので、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡の製造に、好適である。
また、本実施形態の成膜装置は、比較的小さなスパッタ源3で被成膜物(基板)2を直接的に走査するので、被成膜物(基板)2の大型化にも対応可能である。
また、本実施形態の成膜装置は、スパッタ源3と被成膜物(基板)2との距離を近づけることができるので、成膜レートが向上し、多層膜成膜の総時間短縮に繋がり、反射率低下の一因である膜中酸化の悪影響を減らすことも可能である。
[第7実施形態]
以下、本発明の第7実施形態として成膜装置の実施形態を説明する。本実施形態の成膜装置は、第1実施形態〜第3実施形態の何れかで説明した多層膜反射鏡の製造に適用することが可能である。
図30は、本実施形態の成膜装置の構成図である。図30に示すとおり成膜装置は、成膜室4の内部に成膜ターゲット5と被成膜物(基板)6とを対向配置している。被成膜面61の向きは、鉛直下向き、上向き、或いは水平方向でも構わないが、成膜ターゲット5は、被成膜面61を見込むことが可能な位置に配置される。
被成膜物6は回転ステージ62によって保持されており、回転ステージ62は被成膜物6を成膜中に自転させる。こうすることで成膜物6の回転方向における膜厚均一性を保障する。
ここで、本実施形態の成膜装置は、成膜ターゲット5と被成膜物6との間に可変マスク7が取り付けられている。
よって、この可変マスク7の開口形状を成膜中に制御すれば、被成膜物6に成膜される層の膜厚分布を制御することができる。
図30の右側に示すとおり、可変マスク7は、多数のマスク要素71を所定方向に並べており、個々の要素71の形状は、細長い短冊状をしている。また、多数のマスク要素71の各々は、前記所定方向に垂直な方向にかけて移動可能である。因みに、この可変マスク7の構成は、いわゆる型取りゲージのような工具の構成と類似している。
したがって、以上の成膜装置を使用した成膜方法では、被成膜面61に対する層の成膜工程中に、例えば以下のような調整を行うことにより、その層の膜厚分布を目標膜厚分布に近づけることができる。
(1)被成膜面61に対する層の成膜後、その層の膜厚分布を評価し、目標の膜厚分布が得られるような可変マスク7の新形状を計算する。
(2)可変マスク7の先端部がその新形状となるように、型取りゲージの使用要領で多数のマスク要素71の各々の凹凸の位置決めを行う。可変マスク7は、モーター等の駆動機構を持つ訳ではないので、成膜装置内の省スペース化に役立つ。また、可変マスク7の制御に関しては電気的な駆動機構がないので故障の心配がない。
なお、図30では、1つの成膜ターゲット5しか描かれていないが、実際には、成膜すべき層の種類数に応じた数の成膜ターゲットが用意される。そこで、本実施形態の成膜装置は、成膜ターゲット5の数と同じ数だけ可変マスク7を用意してもよい。これによって、複数の層の各々の膜厚分布を任意に制御することが可能となる。
但し、成膜ターゲット5及び可変マスク7の数を複数とした場合は、交換機構が成膜成膜室4内に搭載される。
以上、本実施形態の成膜装置によれば、高レートで成膜を行うことが出来る。また、本実施形態の成膜装置は、固定マスク方式による膜厚制御のメリットと、可変マスク方式のメリットとの両方を兼ね備える。また、本実施形態の成膜装置によれば、成膜工程の短縮と、膜厚分布の高精度調整とが実現する。
[第8実施形態]
以下、本発明の第8実施形態として成膜装置及びそれを使用した成膜方法の実施形態を説明する。本実施形態の成膜装置及び成膜方法は、第1実施形態〜第3実施形態の何れかで説明した多層膜反射鏡の製造に適用することが可能である。本実施形態では、非回転対称な膜厚分布の層を基板に成膜する。
図31は、本実施形態の成膜装置を説明する図である。図31(A)に示すとおり、本実施形態の成膜装置は、真空容器(不図示)内に、EUV露光装置の投影光学系に搭載される反射鏡の基板102と、その基板102を固定するステージ101と、Moターゲット及びSiターゲットを取り付けたターゲットステージ104と、イオンビームを引き出すイオン源105と、膜厚補正の機能を有する遮蔽板103とを配置している。
イオン源105から引き出されたイオンビーム106がMoターゲットに照射されると、スパッタ現象によりMoターゲットからMo原子107が放出され、基板102の表面に到達したMo原子は、その表面にMo層を形成する。
また、ターゲットステージ104を180度回転させると、イオン源105から引き出されたイオンビーム106はSiターゲットに照射され、基板102の表面にSi層が形成される。
このようなMo層の形成とSi層の形成とを繰り返せば、基板102の表面にMo/Si多層膜が成膜される。
ここで、遮蔽板103を使用しない従来の成膜装置では、基板102におけるMo層の膜厚分布及びSi層の膜厚分布は、ターゲットに照射されるイオンビームの分布、ターゲットと基板102との位置関係、基板102の表面形状などに依存していた。
そこで、本実施形態の成膜装置は、ターゲットと基板102との間に遮蔽板103を配置し、かつ、その遮蔽板103を成膜中に移動させることにより、Mo層の膜厚分布及びSi層の膜厚分布を制御する。
図31(B)に示すとおり、遮蔽板103の形状は、例えば円盤状であり、その円盤の直径は、基板102の有効領域の直径の1/10程度である。
また、この遮蔽板103は、十分に細いワイヤー(不図示)によって支持されており、そのワイヤーを介して不図示の駆動部により移動可能となっている。遮蔽板103の移動方向は、基板102の表面の法線又は回転対称軸に垂直な面内において互いに垂直なX方向及びY方向である。また、遮蔽板103の移動範囲は、基板102の有効領域に正対する範囲の全域をカバーしている。
成膜中、遮蔽板103は、図31(B)に示すように、基板102の有効領域に正対する範囲の全域を、隙間無くラスタスキャンする。
以上の成膜装置により成膜を行う際には、遮蔽板103を使用せずに成膜した層の膜厚分布と、等速度の遮蔽板103を使用して成膜した層との膜厚分布とをそれぞれ評価し、両者の評価結果を比較することにより、遮蔽板103による膜厚の削減量を既知とすることができる。
また、遮蔽板103を使用せずに成膜した層の膜厚分布と、目標膜厚分布とを比較することにより、層のどの部分をどれだけ薄くしなければならないか(目標削減量分布)を計算することができる。
また、遮蔽板103を使用せずに成膜した層の膜厚分布と、等速度の遮蔽板103で成膜した層の膜厚分布とを比較することにより、等速度の遮蔽板103による膜厚の削減量を既知とすることができる。
ここで、ある成膜領域の近傍で遮蔽板103の移動速度が速くなれば遮蔽される時間が減るためにその成膜領域の膜厚は厚くなり、その移動速度が遅くなれば膜厚は薄くなる。
そこで、以上の成膜装置により成膜を行う際には、予め計算された目標削減量分布から、遮蔽板103の最適な速度パターンを計算しておく。そして、成膜時には、成膜中における遮蔽板103の速度パターンを、計算した最適な速度パターンに制御することで、層の膜厚分布を所望の分布にする。
以上、本実施形態の成膜装置によれば、遮蔽板103の速度パターンを適切に設定するだけで、層の膜厚分布を任意に設定することができる。
なお、ここでは遮蔽板103の数を1としたが、遮蔽板103の数を複数とし、それら複数の遮蔽板103の各々を成膜中に個別に移動させることで、層の膜厚分布を制御してもよい。
但し、複数の遮蔽板103を同時に移動させる際には、成膜中の層において複数の遮蔽板103が同時に影響を与えている部分領域同士が互いに重複しないよう、それらの遮蔽板103の間には一定に間隔が設けられることが望ましい。
また、ここでは、遮蔽板103の形状を円盤状とし、円盤の直径を基板102の有効領域の直径の1/10程度としたがが、遮蔽板102の形状及びサイズの組み合わせはこれに限定されることはない。
[第9実施形態]
以下、本発明の第9実施形態として成膜装置の実施形態を説明する。本実施形態の成膜装置は、第1実施形態〜第3実施形態の何れかで説明した多層膜反射鏡の製造に適用することが可能である。
図32は、本実施形態の成膜装置を説明する図である。図32(A)に示すとおり、本実施形態の成膜装置は、真空容器(不図示)内に、EUV露光装置の投影光学系に搭載される反射鏡の基板201と、その基板201を固定するステージ202と、Moターゲット及びSiターゲットを取り付けたターゲットステージ205と、イオンビームを引き出すイオン源206と、膜厚補正の機能を有する遮蔽板204−1、204−2とを配置している。
イオン源206から引き出されたイオンビーム207がMoターゲットに照射されると、スパッタ現象によりMoターゲットからMo原子208が放出され、基板201の表面に到達したMo原子は、その表面にMo層を形成する。
また、ターゲットステージ205を180度回転させると、イオン源206から引き出されたイオンビーム207がSiターゲットに照射され、基板201の表面にSi層が形成される。
このようなMo層の形成とSi層の形成とを繰り返せば、基板201の表面にMo/Si多層膜が成膜される。
なお、本実施形態の成膜装置では、成膜中、基板ステージ202は、所定の自転軸を中心に基板201を自転させる。
ここで、遮蔽板204−1、204−2を使用しない従来の成膜装置では、基板201の表面のMo層の膜厚分布、Si層の膜厚分布は、ターゲットに照射されるイオンビームの条件、ターゲットと基板201との位置関係、基板201の表面形状などに依存していた。
そこで、本実施形態の成膜装置は、ターゲットと基板201との間に2枚の遮蔽板204−1、204−2を順に配置することによって、Mo層の膜厚分布及びSi層の膜厚分布を制御する。
先ず、ターゲット側に配置された遮蔽板204−1は、成膜装置内に固定されており、基板201が自転しても遮蔽板204−1は自転しない。
この遮蔽板204−1の基本構造は、図32(B)に示すとおり、基板201に正対する領域の全面に幅0.5mmの梁を縦横4mmの間隔でメッシュ状に並べたものである。
但し、遮蔽板204−1の開口率分布(梁の幅分布によって決まる)は、基板201の表面に形成される層の膜厚分布を均一化するための分布に設定されている。基板201は成膜中に自転するため、その自転軸の周方向における開口率は均一であり、自転軸の径方向における開口率は自転軸からの距離によって異なる。
一方、基板側に配置された遮蔽板204−2は、遮蔽板ステージ203を介して基板ステージ202に固定されており、基板201と共に自転する。
この遮蔽板204−2の基本構造も、図32(C)に示すとおり、基板201に正対する領域の全面に幅0.5mmの梁を縦横4mmの間隔でメッシュ状に並べたものである。
但し、遮蔽板204−2の開口率分布(梁の幅分布によって決まる)は、基板201に成膜すべき層の目標膜厚分布に応じた分布に設定される。この遮蔽板204−2は、基板201と共に自転するため、成膜される層の膜厚分布を、回転対称な分布にすることも、非回転対称な分布にすることも可能である。
なお、本実施形態の成膜装置では、遮蔽板ステージ203が遮蔽板204−2を成膜中に振動させことが望ましい。その振動のストロークは、遮蔽板204−2のメッシュ間隔の半分程度である。これによって、メッシュの梁の影が基板201に写り込むことを防止することができる。もちろん、梁の影の影響が十分に小さい場合には、その振動を省略してもよい。
また、本実施形態の成膜装置には、成膜中にターゲットと基板201の間から遮蔽板204−1を他の位置へと一時的に退避させる機構が備えられることが望ましい。長期間に亘って成膜を続けると、ターゲットがイオンビーム照射により削られ分布が変化するという問題が生じうるが、この機構により遮蔽板204−1を挿脱させれば、この分布変化を相殺することが可能である。
また、本実施形態の成膜装置には、複数の遮蔽板が備えられ、それらの遮蔽板を切り換え使用してもよいことは言うまでもない。
また、本実施形態の遮蔽板204−1、204−2の基本構造を、基板201に正対する領域の全面に幅0.5mmの梁を縦横4mmの間隔でメッシュ状に並べたものとしたが、これに限定されるもものではなく、基板上の膜厚を所望の精度で制御できるのであれば、を他の基本構造としてもよい。
また、本実施形態の成膜装置では、遮蔽板204−1、204−2の基本構造を共通としたが、非共通としてもよいことは言うまでもない。
[第10実施形態]
以下、本発明の第10実施形態として露光装置の実施形態を説明する。下記の投影光学系の少なくとも1つのミラーには、上述した何れかの実施形態の多層膜反射鏡が適用される。
図33は、本実施形態に係る露光装置EXの一例を示す図である。本実施形態の露光装置EXは、EUV光で基板Pを露光するEUV露光装置である。
図33において、露光装置EXは、マスクMを保持しながら移動可能なマスクステージ111と、露光光ELが照射される基板Pを保持しながら移動可能な基板ステージ112と、EUV光を含む光(露光光)ELを発生する光源装置113と、光源装置113から射出される露光光ELでマスクステージ111に保持されているマスクMを照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する投影光学系PLと、少なくとも露光光ELが通過する所定空間を形成し、その所定空間を真空状態(例えば、1.3×10−3Pa以下)にする真空システムを有するチャンバ装置VCとを備えている。
基板Pは、半導体ウエハ等の基材上に感光膜が形成されたものを含む。マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。本実施形態では、露光光ELとしてEUV光が用いられ、マスクMは、EUV光を反射可能な多層膜を有する反射型マスクである。反射型マスクの多層膜は、例えばMo/Si多層膜、Mo/Be多層膜を含む。露光装置EXは、多層膜が形成されたマスクMの反射面(パターン形成面)を露光光ELで照明し、そのマスクMで反射した露光光ELの反射光で基板Pを露光する。
本実施形態の光源装置113は、レーザ励起型プラズマ光源装置であって、レーザ光を射出するレーザ装置115と、キセノンガス等のターゲット材料を供給する供給部材116とを含む。レーザ装置115は、赤外領域及び可視領域の波長のレーザ光を発生する。レーザ装置115は、例えば半導体レーザ励起によるYAGレーザ、エキシマレーザ、炭酸ガスレーザ等を含む。
また、光源装置113は、レーザ装置115から射出されたレーザ光を集光する第一集光光学系117を備えている。第一集光光学系117は、レーザ装置115から射出されたレーザ光を位置119に集光する。供給部材116は、位置119にターゲット材料を供給する供給口を有する。第一集光光学系117で集光されたレーザ光は、供給部材116から供給されるターゲット材料に照射される。レーザ光が照射されたターゲット材料は、レーザ光のエネルギーによって高温になり、プラズマ状態に励起され、低ポテンシャル状態へ遷移する際に、EUV光を含む光を発生する。なお、光源装置113は、放電型プラズマ光源装置でもよい。
光源装置113は、極端紫外領域のスペクトルを有する光(EUV光)を発生する。露光装置EXは、位置119の周囲に配置された第二集光ミラー118を備えている。第二集光ミラー118は、楕円鏡を含む。楕円鏡を含む第二集光ミラー118は、その第一焦点と位置119とがほぼ一致するように配置されている。
第二集光ミラー118により第二焦点に集光されたEUV光(露光光)ELは、照明光学系ILに供給される。照明光学系ILは、光源装置113からの露光光ELが供給される複数の光学素子120、121、122、123、124を含み、光源装置113からの露光光ELでマスクMを照明する。照明光学系ILの光学素子120、121、122、123、124の少なくとも一つが、上述した光学素子100でもよい。
照明光学系ILの光学素子120は、コリメータミラーとして機能する第三集光ミラーであって、第二集光ミラー118からの露光光ELが供給される。第二集光ミラー118からの露光光ELは、第三集光ミラー120に導かれる。
第三集光ミラー120は、放物面鏡を含む。第三集光ミラー120は、その焦点と第二集光ミラー118の第二焦点とがほぼ一致するように配置されている。
また、照明光学系ILは、オプティカルインテグレータ125を有する。本実施形態において、オプティカルインテグレータ125は、反射型フライアイミラー光学系を含む。オプティカルインテグレータ125は、入射側フライアイミラー121及び射出側フライアイミラー122を含む。第三集光ミラー120は、露光光ELを、ほぼコリメートした状態で、オプティカルインテグレータ125の入射側フライアイミラー121に供給する。
入射側フライアイミラー121は、例えば米国特許第6452661号等に開示されているように、並列に配列された照野と実質的に相似な円弧状の反射面を有する複数の単位ミラー(反射素子群)を含む。入射側フライアイミラー121は、マスクMの反射面及び基板Pの表面と光学的に共役な位置又はその近傍に配置されている。
また、射出側フライアイミラー122は、入射側フライアイミラー121の複数の単位ミラーと対応する複数の単位ミラー(反射素子群)を含む。射出側フライアイミラー122の単位ミラーのそれぞれは、矩形状であり、並列に配列されている。射出側フライアイミラー122は、投影光学系PLの瞳位置と光学的に共役な位置又はその近傍に配置されている。
第三集光ミラー120からのコリメートされた光は、入射側フライアイミラー121に入射して、その入射側フライアイミラー121によって波面分割される。入射側フライアイミラー121の単位ミラーのそれぞれは、入射した光を集光し、複数の集光点(光源像)を形成する。それら複数の集光点が形成される位置近傍のそれぞれには、射出側フライアイミラー122の複数の単位ミラーが配置されている。射出側フライアイミラー122の射出面又はその近傍には、射出側フライアイミラー122の単位ミラーの数に応じた複数の集光点(二次光源)が形成される。
また、照明光学系ILは、コンデンサミラー123を有する。コンデンサミラー123は、コンデンサミラー123の焦点位置とオプティカルインテグレータ125により形成される二次光源の位置近傍とがほぼ一致するように配置されている。オプティカルインテグレータ125により形成された二次光源からの光は、コンデンサミラー123で反射されるともに集光され、光路折り曲げミラー124を介して、マスクMに供給される。
このように、複数の光学素子120〜124を含む照明光学系ILは、光源装置113から射出される露光光ELでマスクM上の照明領域を均一に照明する。照明光学系ILにより照明され、マスクMで反射した露光光ELは、投影光学系PLに入射する。
なお、マスクMに供給される光と、マスクMで反射して投影光学系PLに入射する光との光路分離を空間的に行うために、本実施形態の照明光学系ILは、非テレセントリック系である。また、投影光学系PLもマスク側非テレセントリック系である。
マスクステージ111は、マスクMを保持しながら、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能な6自由度ステージである。本実施形態においては、マスクステージ111は、マスクMの反射面とXY平面とがほぼ平行となるように、マスクMを保持する。マスクステージ111(マスクM)の位置情報は、レーザ干渉計141によって計測される。レーザ干渉計141は、マスクステージ111に設けられた計測ミラーを用いて、マスクステージ111のX軸、Y軸、及びθZ方向に関する位置情報を計測する。
また、マスクステージ111に保持されているマスクMの表面の面位置情報(Z軸、θX、及びθYに関する位置情報)は、不図示のフォーカス・レベリング検出システムによって検出される。レーザ干渉計141の計測結果及びフォーカス・レベリング検出システムの検出結果に基づいて、マスクステージ111に保持されているマスクMの位置が制御される。
また、本実施形態の露光装置EXは、例えば特開2004−356415号公報等に開示されているような、マスクMの反射面の少なくとも一部と対向する位置に配置され、マスクMの反射面での露光光ELの照明領域を制限するブラインド部材160を備えている。ブラインド部材160は、露光光ELが通過可能な開口を有し、マスクMの反射面での露光光ELの照明領域を規定する。
投影光学系PLは、マスクMからの露光光ELが供給される複数の光学素子131、132、133、134、135、136を含み、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する。投影光学系PLの光学素子131、132、133、134、135、136の少なくとも一つが、上述した光学素子100でもよい。
投影光学系PLは、凹面状の反射面を有する第一反射ミラー131及び凹面状の反射面を有する第二反射ミラー132を含む第一ミラー対と、所定形状の反射面を有する第三反射ミラー133及び凹面状の反射面を有する第4反射ミラー134を含む第二ミラー対と、凸面状の反射面を有する第5反射ミラー135及び凹面状の反射面を有する第6反射ミラー136を含む第三ミラー対とを備えている。
それぞれのミラー対のうち、第一反射ミラー131、第三反射ミラー133、及び第5反射ミラー135のそれぞれは、反射面が投影光学系PLの物体面側(マスクM側)を向くように配置されており、第二反射ミラー132、第4反射ミラー134、及び第6反射ミラー136のそれぞれは、反射面が投影光学系PLの像面側(基板P側)を向くように配置されている。
マスクMからの露光光ELは、第一反射ミラー131及び第二反射ミラー132の順で第一ミラー対を反射した後に中間像を形成する。中間像からの光は、第三反射ミラー133及び第4反射ミラー134の順で第二ミラー対を反射する。第二ミラー対を反射した光は、第5反射ミラー135及び第6反射ミラー136の順で第三ミラー対を反射して基板Pへ導かれる。中間像が形成される位置には、基板P上の投影領域を制限する視野絞りFSが配置されている。
第一ミラー対の第一反射ミラー131と第二反射ミラー132との間には、投影光学系PLの開口数NAを制限する開口絞りASが配置されている。開口絞りASは、大きさ(口径)が可変な開口を有する。開口の大きさ(口径)は、開口絞り制御ユニット151により制御される。
基板ステージ112は、基板Pを保持しながら、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能な6自由度ステージである。本実施形態においては、基板ステージ112は、基板Pの表面とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。基板ステージ112(基板P)の位置情報は、レーザ干渉計142によって計測される。レーザ干渉計142は、基板ステージ112に設けられた計測ミラーを用いて、基板ステージ112のX軸、Y軸、及びθZ方向に関する位置情報を計測する。また、基板ステージ112に保持されている基板Pの表面の面位置情報(Z軸、θX、及びθYに関する位置情報)は、不図示のフォーカス・レベリング検出システムによって検出される。レーザ干渉計142の計測結果及びフォーカス・レベリング検出システムの検出結果に基づいて、基板ステージ112に保持されている基板Pの位置が制御される。
基板Pを露光するときには、照明光学系ILがマスクM上の所定の照明領域を露光光ELで照明しながら、マスクMを保持したマスクステージ111のY軸方向への移動と同期して、基板Pを保持した基板ステージ112がY軸方向へ移動する。これにより、マスクMのパターンの像が、投影光学系PLを介して基板Pに投影される。
以上の露光装置では、投影光学系PLの少なくとも1つのミラー、例えば、光ELの入射角度が最も大きいミラーに対して、上述した何れかの実施形態の多層膜反射鏡が適用される。
したがって、投影光学系PLの透過率は高まり、露光装置EXの性能(具体的には露光装置EXのスループット)は高まる。
なお、本実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスク又はレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
また、露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第一パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第一パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第二パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第二パターンの縮小像を第一パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。
また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、例えば米国特許第6611316号に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。
また、本発明は、米国特許6341007号、米国特許6400441号、米国特許6549269号、及び米国特許6590634号、米国特許6208407号、米国特許6262796号などに開示されているような複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
更に、例えば米国特許第6897963号等に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材及び/又は各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。また、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
本願実施形態の露光装置EXは、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
[第11実施形態]
以下、本発明の第11実施形態としてデバイスの製造方法の実施形態を説明する。本実施形態のデバイスの製造方法には、第10実施形態の何れかの露光装置が適用される。
半導体デバイス等のデバイスは、図34に示すように、デバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、マスクのパターンからの露光光で基板Pを露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を有する基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
但し、本実施形態では、基板Pを露光する露光処理に第10実施形態の何れかの露光装置を使用する。この露光装置は、前述したとおり高性能化されている。したがって、本実施形態の製造方法は、デバイスの製造を高スループットで行うことができる。
[実施形態の作用効果]
第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡は、基板(P)側から順に、第1等周期多層膜(基板側ブロック)と、調整層(スペーサ層など)と、第2等周期多層膜(反基板側ブロック)とを有した多層膜反射鏡であって、下記(a)〜(c)の組み合わせが反射面内の位置毎又は領域毎に設定されている。
(a)前記第1等周期多層膜(基板側ブロック)が単体で有する反射特性。
(b)前記第2等周期多層膜(反基板側ブロック)が単体で有する反射特性。
(c)前記調整層(スペーサ層など)の膜厚。
したがって、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡は、シンプルな膜構成であるにも拘らず、前記反射面内の位置毎又は領域毎に反射特性を付与することができる。
ゆえに、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡は、必要な反射特性(例えば、反射すべき入射光の角度範囲)が反射面内の位置又は領域によって異なるような光学系、例えば、EUV露光装置の投影光学系に好適である。
また、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡において、下記パラメータΓ1、d1、N1、Γ2、d2、N2、d3の組み合わせは、前記反射面内の位置毎又は領域毎に設定されている。
前記第1等周期多層膜を構成する層対の膜厚比Γ1、
前記層対の周期長d1、
前記第1等周期多層膜における前記層対の積層回数N1、
前記第2等周期多層膜を構成する層対の膜厚比Γ2、
前記層対の周期長d2、
前記第2等周期多層膜における前記層対の積層回数N2、
前記調整層の膜厚d3
例えば、第1実施形態の多層膜反射鏡の前記反射面内には、パラメータΓ1、d3の組み合わせの異なる少なくとも2つの反射点又は反射領域が存在する。また、Γ1、d3以外のパラメータは前記反射面内で一様又はほぼ一様である。
例えば、第2実施形態の多層膜反射鏡の前記反射面内には、パラメータN1、N2の組み合わせの異なる少なくとも2つの反射点又は反射領域が存在する。また、N1、N2以外のパラメータは前記反射面内で一様である。
また、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡において、前記反射面内における前記組み合わせの分布は、滑らかな分布に設定されている。
したがって、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡によれば、設計時の設計パラメータの数、ひいては成膜時の調整パラメータの数を抑えることができる。しかも、前記反射面内の各位置の間では、基本的な膜構成が共通するので、多くの成膜工程を共通化することができる(第4実施形態〜第9実施形態を参照)。
また、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡において、前記調整層は、前記第1等周期多層膜を構成する物質のうち、使用波長における消衰係数が最も大きな物質の消衰係数より小さな消衰係数を有するスペーサ層、ミキシング層、熱拡散層の何れかである。
また、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡において、前記調整層は、C、B、Zr、Nb、Ru、Mo、Siのうち何れかの1つの物質からなるスペーサ層、又は、C、B、Zr、Nb、Ru、Mo、Siのうち少なくとも1つの物質を含む混合物層からなるスペーサ層である。
また、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡において、前記第1等周期多層膜又は前記第2等周期多層膜を構成する前記層対は、Mo層とSi層との組み合わせからなり、前記スペーサ層はSi層又はMo層からなる。
したがって、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡は、高機能かつシンプルであるにも拘らず、特殊材料を必要としない。
また、第4実施形態〜第9実施形態の何れかの成膜方法は、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡の製造方法であって、前記多層膜反射鏡を構成する何れかの層の材料である粒子を成膜領域に向けて放出する放出手順と、前記多層膜反射鏡の前記基板と前記成膜領域とを相対移動させる移動手順と、前記移動方向における前記成膜領域のサイズと前記移動の速度との少なくとも一方を制御することにより、前記基板に形成される前記層の膜厚分布を制御する制御手順とを含む。
したがって、第4実施形態〜第9実施形態の何れかの成膜方法によれば、材料が共通であって膜厚分布が非一様な層を、前記基板へ形成することができる。
また、第5実施形態の成膜方法は、前記多層膜反射鏡を構成する何れかの層の材料である粒子を、前記多層膜反射鏡の前記基板に向けて放出する放出手順と、前記粒子の経路にセットされるべきマスクとして開口パターンの異なる複数のマスクを使い分けることにより、前記基板に形成される前記層の膜厚分布を制御する制御手順とを含む。
また、前記制御手順では、前記粒子の放出中に前記基板を軸周りに回転させ、前記基板の回転速度を、前記基板の回転角度位置の関数として制御する。
また、第5実施形態の成膜方法において、前記複数のマスクが前記基板へ個別に形成する各層の膜厚分布は、互いに直交関係にある。
したがって、第5実施形態の成膜方法によれば、様々な膜厚分布の層を前記基板へ形成することができる。
したがって、第4実施形態〜第9実施形態の何れかの成膜方法は、第1実施形態〜第3実施形態の何れかの多層膜反射鏡の製造に好適である。
また、第10実施形態の投影光学系は、上述した何れかの実施形態の多層膜反射鏡を備える。
したがって、第10実施形態の投影光学系は、高性能化される。
また、第10実施形態の露光装置は、上述した何れかの投影光学系を備える。
したがって、第10実施形態の露光装置は、高性能化される。
また、第11実施形態のデバイスの製造方法は、上述した露光装置を使用する。
したがって、第11実施形態のデバイスの製造方法は、高スループットでデバイスを製造することができる。
[その他]
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。