以下、本発明の実施の形態による電磁サスペンション装置を、添付図面に従って詳細に説明する。
図において、電磁サスペンション装置1は、リニアモータ(リニアアクチュエータ)を用いた電磁サスペンション(電動サスペンション)として構成されている。即ち、電磁サスペンション装置1は、車体(図示せず)側に配置される固定子2と、車輪(図示せず)側に配置される可動子12と、固定子2および可動子12の外側(外径側)に位置して車体側と車輪側との間に配置される図示しないばね(懸架ばね、コイルスプリング)とを含んで構成されている。そして、固定子2(の電機子4)と可動子12(の永久磁石14)とにより、3相リニア同期モータを構成している。
換言すれば、電磁サスペンション装置1は、車体(ばね上)と車輪(ばね下)との間に介装され、相対変位可能な同軸状の内筒と外筒とのうちの内筒に対応するコア5に設けられたコイル6A,6B,6C(コイル部材)と、外筒に対応するアウタチューブ13に設けられ該コイル6A,6B,6Cと対向する永久磁石14(磁性部材)とからなる筒状リニア電磁式アクチュエータ3を備えて構成されている。なお、図示は省略するが、筒状リニア電磁式アクチュエータは、径方向内側に配置される内筒と径方向外側に配置される外筒とのうちの外筒にコイル(コイル部材)を設け、内筒に永久磁石(磁性部材)を設ける構成としてもよい。
車体側に配置される固定子2は、電機子4とロッド7とにより大略構成されている。電機子4は、内筒としてのコア5と、該コア5に設けられたコイル部材としての複数のコイル6A、6B、6Cとにより構成されている。コア5は、例えば圧粉磁心や積層された電磁鋼板、磁性体片より切削加工等によって形成され、その形状は、全体として略円筒状となっている。一方、各コイル6A、6B、6Cは、それぞれ所定の方向に巻かれてコア5の外周面側に収容され、後述する可動子12(の永久磁石14)の内周面と対向して配置されている。
具体的には、コイル6A、6B、6Cは、略筒状のコア5の外周面側に位置して該コア5の周方向に配置されると共に、該コア5の軸方向の6箇所位置に軸方向に離間して配置されている。コイル6A、6B、6Cには、インバータ等に接続された動力線(図示せず)を介して電力が供給される。なお、コイル6A、6B、6Cの個数は、図示したものに限らず、設計仕様等に応じて適宜設定することができる。また、軸方向に隣合う6個のコイル6A、6B、6Cは、例えば電気角でそれぞれ120°ずつの位相差をもつように配置される。配線方法は、駆動電源側の電圧や電流仕様に応じて適宜選択することができる。
ロッド7は、略円筒状に形成され、基端側(図1の右端側)がコア5の内側に固定(嵌着)されている。ロッド7の先端側(図1の左端側)には、車両のばね上部材となる車体側に取付けられる円筒状の取付ロッド8が固定(嵌着)されている。ロッド7の内側には、後述する可動子12の案内ロッド13Dが挿入され、ロッド7の基端側の内周面と案内ロッド13Dの外周面との間には、軸受、スリーブ等からなる摺動部材9が設けられている。
固定子2には、ロッド7の外周側で電機子4と軸方向に離間する位置に配線収容ケース10が設けられている。配線収容ケース10内には、コイル6A,6B,6Cと接続される動力線(図示せず)と、後述するMRセンサ16とホールICセンサ17とにそれぞれ接続される一対(2本)の磁気センサ線16A,17Aとが収容されている。配線収容ケース10は、電磁サスペンション装置1の伸び状態でも、動力線およびセンサ線16A,17Aが外部に露出しないようにするものである。
配線収容ケース10と電機子4との間には、センサ収容ケース11が設けられている。センサ収容ケース11内には、後述するMRセンサ16とホールICセンサ17が収容されている。これら一対のセンサ16,17は、後述する永久磁石14の磁極位置(延いては、電磁サスペンション装置1のストローク位置)を検出するためのもので、それぞれセンサ線16A,17Aを介して後述する位置演算ユニット18(図2参照)に接続されている。この場合、センサ線16A,17Aは、配線収容ケース10内から取付ロッド8内を通じて固定子2から引き出されている。センサ収容ケース11は、一対のセンサ16,17を1つのセンサユニットとして構成するもので、センサ収容ケース11内には、一対のセンサ16,17が周方向に180°ずらして配置されている。従って、一対のセンサ16,17が同じ軸方向位置となることで、両方のセンサ16,17でほぼ同じ磁石磁束を検出することができる。
車輪側に配置される可動子12は、界磁を構成するもので、ストローク方向となる軸方向の相対変位を可能に固定子2に組み付けられている。可動子12は、電機子4(コア5およびコイル6A,6B,6C)の外周側に配置される外筒としてのアウタチューブ13と、該アウタチューブ13に設けられコイル6A、6B、6Cと径方向に隙間をもって対向する磁性部材としての複数の永久磁石14とにより構成されている。アウタチューブ13は、例えば、磁場の中に置くと磁路を形成する磁性体、例えば機械構造用炭素鋼鋼管(STKM12A)等を用いて有底円筒状に形成され、ストローク方向となる軸方向に延びている。
具体的には、アウタチューブ13は、軸方向に延びる筒部13Aと、該筒部13Aの一端側(図1の右端側)を閉塞する底部13Bとにより構成されている。筒部13Aの開口側には、固定子2のロッド7側に向けて径方向内側に突出する鍔部13Cが全周にわたって設けられている。鍔部13Cの内周面と配線収容ケース10の外周面との間には、軸受、スリーブ、シール等からなる摺動部材15が設けられている。一方、アウタチューブ13の底部13Bには、筒部13Aの内側に位置して底部13Bから電機子4の内側(ロッド7の内側)に延びる案内ロッド13Dが設けられている。また、底部13Bのうち案内ロッド13Dの反対側には、車両のばね下部材となる車輪側に取付けられる取付アイ13Eが設けられている。
アウタチューブ13の筒部13Aの内周面側には、磁場を生じさせる部材である磁性部材としての複数の円環状の永久磁石14が軸方向に沿って並んで配置されている。この場合、軸方向に隣合う各永久磁石14は、例えば互いに逆極性になっている。例えば、アウタチューブ13の一端側(右側または左側)から数えて奇数個目の永久磁石14を、内周面側がN極で外周面側がS極のものとしたならば、一端側から数えて偶数個目の永久磁石14は、内周面側がS極で外周面側がN極のものとなっている。この場合、各永久磁石14は、例えば、円弧状の複数の磁石素子を周方向に並べることにより円環状に構成した分割型の永久磁石とすることができる。なお、永久磁石14の個数は、図示の例に限るものではない。
ところで、電磁サスペンション装置1では、固定子2(電機子4)の各コイル6A,6B,6Cに通電する電流を、固定子2と可動子12との位置(ストローク位置)に応じて電流制御することで、電磁サスペンション装置1の全可動域(全ストローク領域)で目標通りの推力(減衰力)を発生させるようにしている。即ち、3相リニア同期モータとして構成された筒状リニア電磁式アクチュエータ3は、固定子2(電機子4)の各コイル6A,6B,6Cに電流を流すと、これら各コイル6A,6B,6Cに流れる電流と可動子12の永久磁石14との間に電磁力が生じ、この電磁力によって固定子2(コイル6A,6B,6C)と可動子12(永久磁石14)との間に推力が発生する。
この電磁力を制御し、目標通りの推力を発生させるために、各コイル6A,6B,6Cと接続されたインバータ等を制御する図示しないコントローラは、コイル6A,6B,6Cが発生する電流磁束が、例えば永久磁石14の1/2個分、即ち、電気角で90°分、永久磁石14の磁束に対してずれるように、U相コイル6A、V相コイル6B、W相コイル6Cに流れる電流値を制御する。これら各相に流す電流値の制御方法としては、120°通電方式と呼ばれる制御方法や、ベクトル制御方式と呼ばれるモータ制御方法が一般に知られている。
いずれの場合も、電流制御を行うために、各コイル6A,6B,6Cに対する永久磁石14の位置(磁極位置)を検出する必要がある。この場合、永久磁石14の位置(磁極位置)は、軸方向に隣合う永久磁石14の2つ分ごとの位置として求める必要がある。より具体的には、永久磁石14の位置(磁極位置)は、内周面側がN極の磁石と内周面側がS極の磁石とを合せた軸方向距離分ごとの位置、即ち、電気角で換算すると0°〜360°の位相分の位置(360度を1周期とした位置)として求める必要がある。そして、永久磁石14の位置を360度分の電気角の位相として検出するためのセンサとして、磁気センサを用いることができる。
磁気センサは、例えば、磁気抵抗素子を用いるMRセンサ、AMRセンサ、GMRセンサ、ホール素子を用いるホールセンサ、ホールICセンサ等があり、これらは、アナログ出力方式のもの、デジタル出力方式のものがある。これらの磁気センサを1個、または、複数個組み合わせて用いることにより、永久磁石14の位置(磁極位置)を、360度分の電気角(0°〜360°の電気角)の位相として検出することができる。
本実施の形態の場合は、永久磁石14の位置を検出するために、種類の異なる2個の磁気センサ、即ち、永久磁石14の磁界を検出する磁界検出磁気センサとしてのMRセンサ16と、永久磁石14の極性を検出する極性検出磁気センサとしてのホールICセンサ17とを設けている。この場合、MRセンサ16は、アナログ出力方式のものとし、ホールICセンサ17は、デジタル出力方式のものとしている。
ここで、MRセンサ16とホールICセンサ17は、各コイル6A,6B,6Cが設けられた固定子2のセンサ収容ケース11内に設けられている。従って、各永久磁石14が設けられた可動子12が(軸方向に)移動すると、各永久磁石14は、MRセンサ16およびホールICセンサ17に対して(軸方向に)相対変位する。このとき、MRセンサ16およびホールICセンサ17と各永久磁石14との間のギャップ距離(径方向の距離)は、摺動部材9,15により一定に保たれる。
図5は、永久磁石14の位置に対するMRセンサ16およびホールICセンサ17の理想的な出力と電気角との関係の一例を示している。ここで、永久磁石14の磁界を検出する磁界検出磁気センサとしてのMRセンサ16は、磁束の向きを検出するフルブリッジを有するもので、その出力は、例えば図5中に特性線31と特性線32で示すように、電気角で180度分(0°〜180°)を1周期とした正弦波と余弦波との2つの波形となる。一方、永久磁石14の極性(磁極:N極、S極)を検出する極性検出磁気センサとしてのホールICセンサ17は、例えばデジタルホールICとして構成され、その出力は、例えば図5中に特性線33で示すように、永久磁石14のN極が通過するときはHIGH信号となりS極が通過するときはLOW信号となる。
これらのMRセンサ16およびホールICセンサ17の出力から、電流制御を実施するために必要な各コイル6A,6B,6Cに対する永久磁石14の位置(磁極位置)を、360度分の電気角(0°〜360°の電気角)として求めることができる。具体的には、MRセンサ16の出力(特性線31,32)から、図5中に特性線34で示すように、180度分の電気角(0°〜180°の電気角)を求める。これと共に、ホールICセンサ17の出力(特性線33)から、該センサ17と対向する永久磁石14がN極かS極かを検出する。ホールICセンサ17の出力(特性線33)からN極と検出された場合は、MRセンサ16の出力から得られる電気角(特性線34)の角度をそのまま出力し、S極と検出された場合は、MRセンサ16の出力から得られる電気角(特性線34)に180°加算した180°〜360°の角度を出力する。これにより電流制御を実施するために必要な永久磁石14の位置(磁極位置)を、図5中に特性線35で示すように、360度分の電気角(0°〜360°の電気角)として求めることができる。
このような手法で360度分の電気角を求める場合は、MRセンサ16とホールICセンサ17を、永久磁石14の磁極に対する位置が同じになるように(同じ磁束を検出できるように)設置する必要がある。そこで、本実施の形態の場合は、MRセンサ16とホールICセンサ17とを、永久磁石14に対する軸方向位置が同じになるように配置している。即ち、図1に示すように、MRセンサ16とホールICセンサ17は、固定子2および可動子12の中心軸線に対して直交する仮想平面X上に配置している。なお、本実施の形態の場合は、MRセンサ16とホールICセンサ17とを固定子2および可動子12の周方向に関して180°ずらして(中心軸線を挟んで180°反対側位置に)配置している。しかし、周方向に関するMRセンサ16とホールICセンサ17の配置は、180°に限定するものではなく、例えば90°離間して配置する等、同じ円周上であればどの位置に配置してもよい。
ところで、磁気抵抗素子を用いるMRセンサ16等のアナログ出力方式の磁気センサは、例えば出力値が固着する固着異常の故障が発生した場合、その異常の検出を比較的容易に行うことができる。具体的には、アナログ出力式の磁気センサは、固着異常が生じたときは、その出力が正常時の出力値(例えば1〜4V)と異なる出力値(0Vまたは5V)に固着するため、その出力値から固着異常を即時に検出することができる。
これに対し、ホール素子を用いたホールICセンサ17等のデジタル出力方式の磁気センサは、出力値が固着する固着異常の故障が発生した場合、その出力値は、正常時の出力値(LOW、HIGH)の一方と同じ出力値(LOWまたはHIGH)に固着する。このため、そのままでは固着異常の検出を精度よく迅速に検出することが難しい。
ここで、従来技術によれば、デジタル出力方式の磁気センサ(極性検出磁気センサ)を使用する場合は、測定対象物がある程度の一定動作区間内で事前に設定した異常動作をしたか否かにより異常を検出するシステムを採用している。しかし、例えば、特許文献2の異常検出装置は、回転モータ(回転系)に適用するもので、回転モータのモータ軸(回転子)が一方向(左方向または右方向)にコンスタントに回転していることを前提としている。このため、電磁サスペンション装置のリニアモータのように、可動子が直線的、かつ、両方向(伸びる方向、縮む方向)に常に不規則に動作するものに適用すると、例えば、異常を検出するまでに過度の時間を要するおそれがある。
より具体的に説明すると、回転系においても、例えばモータ軸が微小動作をしているときは、異常を検出するために必要な距離に到達せず、異常が生じているにも拘わらず、異常が検出されない可能性があり、異常検出の信頼性を確保しにくいという問題がある。一方、リニアモータ(直線系)は、主として高速回転で使用される回転モータと異なり、低速での動作が多用される。このため、異常検出までに一定距離の動作を必要とする従来の回転系の異常検出装置をリニアモータに適用しても、磁気センサに異常が生じてからその異常を検出するまでの時間が過度に長くなるおそれがある。また、リニアモータの動作によっては、磁気センサに異常が生じているにも拘わらずその異常が検出されないおそれもある。
しかも、異常検出ができない区間で動作している場合や異常が生じてから異常と検出されるまでの間は、異常が発生した磁気センサからの正常でない信号に基づいて、誤った処理が行われるおそれがある。具体的には、例えばホールICセンサ17に固着異常の故障が生じると、該ホールICセンサ17から出力される誤った極性の信号に基づいて、永久磁石14の位置が不正確に求められ、該不正確な位置に基づいて電磁サスペンション装置1(筒状リニア電磁式アクチュエータ3)の電流制御が行われるおそれがある。この場合は、所望の電流制御が行われず、固定子2と可動子12との間で発生する推力が目標とする推力に対してずれる等のおそれがある。このため、早期に異常を検出できることと、異常が生じた場合でも永久磁石14の正確な位置(電気角)を推定できることが望まれている。
そこで、本実施の形態では、図2に示す位置演算ユニット18で、電気角の演算(位置検出)に加えて、ホールICセンサ17の不調の検出(不調検出)と、不調を検出した場合の電気角の推定(位置推定)とを行う構成としている。以下、位置演算ユニット18について説明する。
位置演算ユニット18は、各コイル6A,6B,6Cに対する永久磁石14の位置(磁極位置)を360度分の電気角(0°〜360°の電気角)として求める位置検出装置であり、例えばマイクロコンピュータのCPUの演算ユニットとして構成されている。位置演算ユニット18は、180°電気角演算器19、極判定演算器20、360°電気角演算器21、電気角不調検出器22、360°電気角補正器23、第1の故障判定器24、第2の故障判定器25等を備えている。そして、位置演算ユニット18には、MRセンサ16とホールICセンサ17とがそれぞれセンサ線16A,17Aを介して接続されている。
MRセンサ16は、永久磁石14の位置に応じて、A相とB相との2相のアナログ波形を出力する。ここで、MRセンサ16は、該MRセンサ16に対向する永久磁石14の磁界に応じた波形が出力されるもので、その理想の波形は、前述した図5中の特性線31と特性線32のように正弦波形である。しかし、実際は、高周波成分が重畳することで、例えば図6に特性線41と特性線42で示すような波形として出力され、位置演算ユニット18に入力される。この場合、MRセンサ16の出力は、位置演算ユニット18の180°電気角演算器19と第2の故障判定器25に入力される。
なお、図6は、電磁サスペンション装置1をストローク動作させたときのMRセンサ16とホールICセンサ17の実際の出力と電気角との関係の一例を示している。この図6中、時間軸(横軸)で5[s]のときに、永久磁石14のN極が連続する。これは、固定子2と可動子12との相対変位の方向が逆になったこと、即ち、電磁サスペンション装置1(筒状リニア電磁式アクチュエータ3)が伸長から縮小、または、縮小から伸長に変化したことを表している。後述する図8および図9についても同様である。
180°電気角演算器19は、後述する極判定演算器20と360°電気角演算器21と共に位置検出手段を構成するものである。180°電気角演算器19は、MRセンサ16の出力(A相の出力とB相の出力)から永久磁石14の位置(磁極位置)を、180度分の電気角(0°〜180°の電気角)として求める(演算する)ものである。即ち、180°電気角演算器19は、MRセンサ16のA相とB相の出力(特性線41,42)を補正(波形補正)する機能と、該補正されたA相とB相の出力から永久磁石14の位置(磁極位置)を180度分の電気角として求める機能とを有している。そして、180°電気角演算器19は、永久磁石14の位置を、図6中に特性線43で示すような0°〜180°の電気角「Angle(0_180°)」として、360°電気角演算器21に出力する。
ホールICセンサ17は、永久磁石14の位置に応じて、A相とB相との2相のデジタル波形を出力する。ここで、ホールICセンサ17の出力が、前述した図5中の特性線33のような波形であれば、一相のデジタル出力のみで、ホールICセンサ17に対向する永久磁石14の極性(磁極)の検出を行うことができる。しかし、ホールICセンサ17の実際の出力、例えばA相の出力は、図6中の特性線44で示すような波形として出力される。
即ち、ホールICセンサ17のA相の出力は、その立ち上がり44Aと立ち下がり44Bが、N極の永久磁石14の両端14A,14Aに対して多少ずれる(遅れる)。そこで、ホールICセンサ17のA相に対して90度位相のずれた状態のB相の出力、即ち、図6中の特性線45で示すような波形となるB相の出力も、極性の検出に用いる構成としている。即ち、位置演算ユニット18には、ホールICセンサ17のA相とB相との両方の出力が入力される構成となっている。この場合、ホールICセンサ17の出力は、位置演算ユニット18の極判定演算器20と第2の故障判定器25に入力される。
極判定演算器20は、180°電気角演算器19と、後述する360°電気角演算器21と共に位置検出手段を構成するものである。極判定演算器20は、ホールICセンサ17の出力(A相の出力とB相の出力)と、必要に応じて180°電気角演算器19の出力とから、ホールICセンサ17に対向する永久磁石14の極性(磁極:N極であるかS極であるか)を判定するものである。極判定演算器20が行う極性の判定(極判定)の一例を、図7を用いて説明する。
永久磁石14のN極とS極に対するホールICセンサ17のA相の出力は、例えば図7中の特性線51で示すような波形となり、B相の出力は、例えば図7中の特性線52で示すような波形となる。ホールICセンサ17のA相の立ち上がり立ち下がり点51A,51Bと、B相の立ち上がり立ち下がり点52A、52Bは、ヒステリシスが発生することにより、永久磁石14のN極の両端14A,14Aに対して多少ずれる。そこで、このずれの影響を受けずに極性を判定するために、ホールICセンサ17のA相の出力とB相の出力とを使い分ける(使用する相を切換える)。例えば、ホールICセンサ17の各相の立ち上がりと立ち下りの中間点53を境として、極性を判定するために使用するホールICセンサ17のA相の出力とB相の出力とを切換える。
例えば、0°〜360℃の電気角のうち、A相の出力で立ち上がりまたは立ち下がりが発生しない範囲54,55では、極性を判定するためにA相を使用し、B相の出力で立ち上がりまたは立ち下がりが発生しない範囲56,57では、極性を判定するためにB相を使用する。このような中間点53を境界として使用するホールICセンサ17の相の切換えを行うことと、MRセンサ16から求めた180度分の電気角(0°〜180°の電気角)、即ち、180°電気角演算器19の出力とを用いることで、ホールICセンサ17の各相の立ち上がり、立ち下がりのずれに拘わらず、極性の判定を行うことができる。
具体的には、ホールICセンサ17のA相の出力を使用する範囲54では、該A相の出力がHIGHの場合は、N極と判定する。ホールICセンサ17のA相の出力を使用する範囲55では、該A相の出力がLOWの場合は、S極と判定する。ホールICセンサ17のB相の出力を使用する範囲56では、該B相の出力がHIGH、かつ、電気角が0°ないし90°の範囲の場合は、N極と判定し、B相の出力がHIGH、かつ、電気角が90°ないし180°の範囲の場合は、S極と判定する。ホールICセンサ17のB相の出力を使用する範囲57では、該B相の出力がLOW、かつ、電気角が0°ないし90°の範囲の場合は、S極と判定し、B相の出力がLOW、かつ、電気角が90°ないし180°の範囲の場合は、N極と判定する。
極判定演算器20は、このような判定処理により、ホールICセンサ17に対向する永久磁石14の極性(磁極)を判定し、その判定結果(N極であるかS極であるか)を、360°電気角演算器21に出力する。なお、ホールICセンサ17の出力が、前述した図5中の特性線33のような理想的な波形であれば、極判定演算器20は、一相のデジタル出力のみで、極性の判定を行う構成としてもよい。
360°電気角演算器21は、180°電気角演算器19と、極判定演算器20と共に、位置検出手段を構成するもので、MRセンサ16の出力(検出値)とホールICセンサ17の出力(検出値)とから、電機子4(コイル6A,6B,6C)に対する永久磁石14の位置を求めるものである。即ち、360°電気角演算器21は、180°電気角演算器19の出力、即ち、MRセンサ16の出力に基づく0°〜180°の電気角「Angle(0_180°)」と、極判定演算器20の出力、即ち、ホールICセンサ17の出力に基づく極性(磁極)とから、永久磁石14の位置(磁極位置)を360度分の電気角(0°〜360°の電気角)として求める(演算する)ものである。
ここで、360°電気角演算器21は、極判定演算器20の出力がN極の場合は、180°電気角演算器19から出力される0°〜180°の電気角「Angle(0_180°)」をそのまま0°〜360°の電気角「Angle(0_360°_now)」として、後述する電気角不調検出器22に出力する。一方、極判定演算器20の出力がS極の場合は、180°電気角演算器19から出力される0°〜180°の電気角「Angle(0_180°)」にN極の磁極位置分に対応する180°を加算して、即ち、180°〜360°の電気角に変換して、0°〜360°の電気角「Angle(0_360°_now)」として、電気角不調検出器22に出力する。
即ち、360°電気角演算器21は、永久磁石14の位置を、図6中に特性線46で示すような0°〜360°の電気角「Angle(0_360°_now)」として、電気角不調検出器22に出力する。なお、ホールICセンサ17に不調(固着異常)が発生していない場合は、360°電気角演算器21からの0°〜360°の電気角「Angle(0_360°_now)」を、そのまま電磁サスペンション装置1(筒状リニア電磁式アクチュエータ3)の電流制御の位置情報として用いることができる。
次に、電磁サスペンション装置1のストローク動作中にホールICセンサ17に不調(固着異常)が発生した場合について、図8を用いて説明する。なお、図8は、図6と同じストローク動作の特性線図である。図8中、特性線61と特性線62は、MRセンサ16のA相とB相の出力を示し、特性線63は、180°電気角演算器19から出力される0°〜180°の電気角「Angle(0_180°)」を示し、特性線64と特性線65は、ホールICセンサ17のA相とB相の出力を示し、特性線66は、360°電気角演算器21から出力される0°〜360°の電気角「Angle(0_360°_now)」を示している。ここで、MRセンサ16は正常であるため、そのA相とB相の出力(特性線61,62)は、図6の場合と同様の出力(特性線41,42)となる。このため、180°電気角演算器19から出力される0°〜180°の電気角「Angle(0_180°)」(特性線63)も、図6の場合と同様の電気角「Angle(0_180°)」(特性線43)となっている。
一方、ホールICセンサ17は、不調(固着異常)の発生により、A相の出力とB相の出力との両方がHIGHに張り付いている(固着している)。なお、図8に示すホールICセンサ17の不調は、A相の出力とB相の出力との両方に発生した場合を示しているが、例えば図9に示すように、ホールICセンサ17の一方の相(A相)の出力にのみ不調(固着異常)が発生する場合もある。
図9も、図8と同様に、図6と同じストローク動作の特性線図となっている。この図9中、特性線71と特性線72は、MRセンサ16のA相とB相の出力を示し、特性線73は、180°電気角演算器19から出力される0°〜180°の電気角「Angle(0_180°)」を示し、特性線74と特性線75は、ホールICセンサ17のA相とB相の出力を示し、特性線76は、360°電気角演算器21から出力される0°〜360°の電気角「Angle(0_360°_now)」を示している。
いずれの場合も、ホールICセンサ17に不調(固着異常)が発生した場合は、その出力値は、正常時の出力値(HIGH、LOW)の一方と同じ値(図示の場合はHIGH)となる。このため、不調が発生したホールICセンサ17の出力に従って、極判定演算器20で極性の判定を続けると、360°電気角演算器21から出力される0°〜360°の電気角「Angle(0_360°_now)」は、特性線66,76のような波形となる。これらの特性線66,76は、図6に示す正常な場合の電気角「Angle(0_360°_now)」の特性線46とは異なったものとなる。即ち、360°電気角演算器21からは、不正確な電気角「Angle(0_360°_now)」が出力されることになる。
ここで、ホールICセンサ17の出力波形から不調(固着異常)の判定を、次のように行うことが考えられる。即ち、永久磁石14一個分の距離以上に固定子2と可動子12とが相対変位したときに、ホールICセンサ17の出力がHIGHからLOW、または、LOWからHIGHに変化しない場合に、ホールICセンサ17の出力が固着した、即ち、不調が発生したと判定することが考えられる。しかし、この場合は、不調の判定に、少なくとも永久磁石14一個分の距離以上の固定子2と可動子12との相対変位が必要になる。
このため、例えば、実際にホールICセンサ17に不調(出力の固着)が発生してから、固定子2と可動子12とが少なくとも永久磁石14一個分の距離を相対変位するまでは、極判定演算器20から誤った極性が出力され、360°電気角演算器21からは、不正確な電気角「Angle(0_360°_now)」が出力されるおそれがある。この出力を用いると、固定子2と可動子12との間で発生する推力が目標とする推力に対してずれる(好ましくない推力が発生する)おそれがある。特に、電磁サスペンション装置1は、永久磁石14の極ピッチ(永久磁石14の軸方向寸法)が長くなるため、不調と判定されるまでに必要な距離(必要な相対変位量)が長くなり、不正確な電気角「Angle(0_360°_now)」が出力される時間が長くなるおそれがある。
そこで、本実施の形態では、位置演算ユニット18は、ホールICセンサ17の不調を検出する不調検出手段としての電気角不調検出器22を備えている。即ち、本実施の形態では、位置演算ユニット18は、MRセンサ16の出力(検出値)とホールICセンサ17の出力(検出値)とから永久磁石14の位置(電気角「Angle(0_360°_now)」)を求める位置検出手段(180°電気角演算器19、極判定演算器20、360°電気角演算器21)に加えて、ホールICセンサ17の不調を検出する電気角不調検出器22を備えている。
ここで、電気角不調検出器22は、位置検出手段としての360°電気角演算器21による位置の履歴から、ホールICセンサ17の不調を検出するものである。具体的には、360°電気角演算器21により現在の処理で求められた位置(電気角)に対応する現在値と、前回の処理(直前の処理)で求められた位置(電気角)に対応する前回値(直前値)とから、ホールICセンサ17の不調を検出する構成としている。
即ち、図8および図9に示すように、ホールICセンサ17に不調(出力の固着)が発生すると、その後、この不調のホールICセンサ17の出力に変化がなくても、360°電気角演算器21から出力される電気角「Angle(0_360°_now)」には、図8および図9で符号Dを付すように、現在値と1サンプリング前(1制御周期前)の前回値(直前値)との間でその値が大きく変動する、電気角の不連続(逸脱)が発現する。この電気角の不連続(逸脱)は、ホールICセンサ17から正常とは逆の極性の信号が出力されることに基づいて生じるもので、電気角の絶対値で180°程度の大きな変動となる。
より具体的に説明すると、電気角の大きな変動は、例えば、ホールICセンサ17のA相の出力とB相の出力とを使い分ける(使用する相を切換える)ときに生じる。即ち、ホールICセンサ17に不調が発生した後、N極の永久磁石14を通過中と判断しているときに、使用するホールICセンサ17の相が切換わることにより、N極からS極に移動した旨の誤った極性が極判定演算器20から出力されることにより発生する。S極の永久磁石14が通過中と判断しているときに、使用するホールICセンサ17の相が切換わることにより、S極からN極に移動した旨の誤った極性が極判定演算器20から出力された場合も同様である。さらに、MRセンサ16の出力が0°(180°)となり磁極がN極からS極、または、S極からN極に変化するときに、ホールICセンサ17の出力が変化しないことによっても発生する。
いずれにしても、MRセンサ16の出力(検出値)とホールICセンサ17の出力(検出値)とに基づいて360°電気角演算器21で求められる0°〜360°の電気角「Angle(0_360°_now)」が、現在値と前回値とで大きく相違した(不連続に大きく変動した)場合は、ホールICセンサ17で不調が生じている(極判定演算器20で誤った極性が出力されている)ことが考えられる。そこで、本実施の形態では、電気角不調検出器22は、不調の検出を、360°電気角演算器21から出力される電気角「Angle(0_360°_now)」の現在値(現在の処理で求められた位置)と前回値(前回の処理で求められた位置)との差分が、所定の範囲内(特定の閾値の範囲内)であるか否かにより行う構成としている。
換言すれば、電気角不調検出器22は、ホールICセンサ17の不調を、該ホールICセンサ17の出力(検出値)から検出せずに、360°電気角演算器21の出力(電気角「Angle(0_360°_now)」)から検出する構成としている。そして、電気角不調検出器22は、不調を検出した場合に、ホールICセンサ17の出力(検出値)に基づく極性(極判定演算器20の極判定)を無効とする旨の指令を360°電気角補正器23と第1の故障判定器24に出力する構成としている。即ち、電気角不調検出器22は、ホールICセンサ17の不調を検出することにより、ホールICセンサ17の出力に基づく極判定を有効とするか無効とするかを判定し、その判定結果(有効または無効の指令)を、360°電気角補正器23と第1の故障判定器24に出力する構成としている。なお、電気角不調検出器22で無効と判定された場合でも、360°電気角演算器21は、不調のホールICセンサ17の出力に基づく極性(極判定演算器20の極判定)を用いて電気角「Angle(0_360°_now)」を求め、電気角不調検出器22に出力する。
このような電気角不調検出器22で行われる不調検出処理(極判定を有効とするか無効とするかの処理)について、図3を参照しつつ説明する。
例えば、360°電気角演算器21から電気角不調検出器22に電気角「Angle(0_360°_now)」が入力されることにより、図3の処理動作がスタートすると、ステップ1では、360°電気角演算器21により現在の処理で求められた現在値に対応する電気角「Angle(0_360°_now)」と、1サンプリング時間(例えば1[ms])前の処理となる前回の処理(直前の処理)で求められた前回値(直前値)に対応する電気角「Angle(0_360°_delay)」とを読み込む。このために、図2に示すように、電気角不調検出器22には、360°電気角演算器21からの出力(電気角「Angle(0_360°_now)」)と、後述する360°電気角補正器23からの出力(電気角「Angle(0_360°_delay)」)とが入力される構成となっている。なお、後述するように、ホールICセンサ17の出力に基づく極判定が有効の場合は、360°電気角補正器23からは、前回(直前)の処理で360°電気角演算器21により求められた電気角(前回の処理における電気角「Angle(0_360°_now)」)が「Angle(0_360°_delay)」として出力される。
次のステップ2では、電気角の現在値「Angle(0_360°_now)」と前回値「Angle(0_360°_delay)」の差分の絶対値|Angle(0_360°_now)−Angle(0_360°_delay)|を求め、この差分の絶対値が、所定の範囲内(特定の閾値の範囲内)、即ち、180°±α内の値であるか否かを判定する。要するに、現在値と前回値の差分の絶対値|Angle(0_360°_now)−Angle(0_360°_delay)|が、180°+α以下で、かつ、180°−α以上であるか否かを判定する。
なお、αは、現在値と前回値の間(1サンプリング時間の間)に、固定子2に対し可動子12が実際に変化し得る最大の電気角(最大変化可能電気角)に対応するものであり、例えば、α=10°程度の電気角として設定することができる。即ち、所定の範囲(180°±α)は、ホールICセンサ17から正常とは逆の極性の信号が出力されることに基づいて、現在の処理と前回の処理との間で生じ得る永久磁石14の位置(電気角)の変化量として設定されている。
ステップ2で、「NO」、即ち、現在値と前回値の差分の絶対値|Angle(0_360°_now)−Angle(0_360°_delay)|が、180°±α内の値ではないと判定された場合は、ステップ3に進み、ホールICセンサ17の出力に基づく極性(極判定演算器20の極判定)を有効とする。即ち、ステップ3では、極判定を有効とするか無効とするかの指令フラグ「KK」を、有効の指令に対応する「0」とする(KK=0)。そして、続くステップ4で、指令フラグ「KK=0」を360°電気角補正器23と第1の故障判定器24とに出力し、リターンを介してスタートに戻る。
一方、ステップ2で、「YES」、即ち、現在値と前回値の差分の絶対値|Angle(0_360°_now)−Angle(0_360°_delay)|が、180°±α内の値であると判定された場合は、ステップ5を介してステップ6に進み、ホールICセンサ17の出力に基づく極性(極判定演算器20の極判定)を無効とする。即ち、ホールICセンサ17の不調が検出されたため、ステップ6では、極判定を有効とするか無効とするかの指令フラグ「KK」を、無効の指令に対応する「1」とする(KK=1)。そして、続くステップ4で、指令フラグ「KK=1」を360°電気角補正器23と第1の故障判定器24とに出力し、リターンを介してスタートに戻る。
なお、ステップ6の前に行われるステップ5は、初期値エラーを無効にするための処理である。初期値エラーとは、位置演算ユニット18に電源が投入されたときは、1サンプリング目であり前回値が求められていないため、初期値として任意に設定された値が使用されることから発生し得るエラーである。この初期値エラーを回避すべく、ステップ5では、電気角の現在値「Angle(0_360°_now)」が電源投入から2サンプリング目以降のもの(データ)であるか否かを判定する。ステップ5で、「YES」と判定された場合は、ステップ6に進み、「NO」と判定された場合は、ステップ3に進む。
次に、360°電気角補正器23について説明する。
即ち、本実施の形態では、図2に示すように、位置演算ユニット18は、ホールICセンサ17の不調を検出する電気角不調検出器22に加えて、不調が検出された場合に、永久磁石14の位置(電気角)を推定する位置推定手段としての360°電気角補正器23を備えている。この360°電気角補正器23は、電気角不調検出器22でホールICセンサ17の不調を検出した場合、即ち、電気角不調検出器22からホールICセンサ17の出力に基づく極性(極判定)を無効とする旨の指令が出力された場合に、MRセンサ16からの検出値(0°〜180°の電気角)を用いて電流制御に必要な位置(0°〜360度の電気角)を推定するものである。
この位置の推定は、現在の処理で求められた位置、即ち、360°電気角演算器21から出力される現在値「Angle(0_360°_now)」と、前回の処理で求められた位置または推定された位置、即ち、360°電気角補正器23から出力される前回値「Angle(0_360°_delay)」との差分に基づいて、MRセンサ16の出力(検出値)から180°電気角演算器19で求められた0°〜180°の電気角「Angle(0_180°)」を補正することにより行う。
360°電気角補正器23は、電気角不調検出器22から極判定を有効とする旨の指令が出力された場合(KK=0の場合)は、360°電気角演算器21の現在値「Angle(0_360°_now)」をそのまま「Angle(0_360°)」として出力する。そして、この「Angle(0_360°)」は、電流制御に用いる360°電気角情報(永久磁石14の位置)として、電磁サスペンション装置1(筒状リニア電磁式アクチュエータ3)のコントローラ(例えば、インバータを制御するコントローラ)に出力されると共に、前回値「Angle(0_360°_delay)」となって電気角不調検出器22に出力される。
一方、電気角不調検出器22によりホールICセンサ17の不調が検出され極判定を無効とする旨の指令が出力された場合(KK=1の場合)は、360°電気角演算器21の現在値「Angle(0_360°_now)」は出力せずに、上記差分に基づいて現在の「Angle(0_180°)」を補正し、この補正したものを「Angle(0_360°)」として出力する。この場合は、「Angle(0_180°)」を補正したものが、360°電気角情報としてコントローラに出力されると共に、前回値「Angle(0_360°_delay)」となって電気角不調検出器22に出力される。
このような360°電気角補正器23で行われる電気角補正処理について、図4を参照しつつ説明する。
例えば、電気角不調検出器22から360°電気角補正器23に極判定の有効・無効の指令が入力されることにより、図4の処理動作がスタートすると、ステップ11では、180°電気角演算器19で求められた現在の電気角「Angle(0_180°)」と、極判定の有効・無効の指令フラグ「KK」を読み込む。続くステップ12では、極判定が無効であるか否か、即ち、「KK=1」であるか否かを判定する。
ステップ12で、「NO」、即ち、極判定が有効であると判定された場合は、ステップ13に進む。このステップ13では、360°電気角演算器21から出力される現在値「Angle(0_360°_now)」をそのまま360°電気角補正器23から出力させるために、360°電気角補正器23の出力となる「Angle(0_360°)」を「Angle(0_360°_now)」とする。即ち、「Angle(0_360°)=Angle(0_360°_now)」とする。そして、続くステップ14で、「Angle(0_360°)」を出力し、リターンを介してスタートに戻る。これにより、360°電気角補正器23から「Angle(0_360°)」が、電流制御に用いる360°電気角情報として前記コントローラに出力されると共に、前回値「Angle(0_360°_delay)」となって電気角不調検出器22に出力される。
一方、ステップ12で、「YES」、即ち、極判定が無効であると判定された場合は、ステップ15に進む。ステップ15では、360°電気角演算器21から出力される現在値「Angle(0_360°_now)」と、前回の処理で求められた位置または推定された位置、即ち、360°電気角補正器23から出力される前回値「Angle(0_360°_delay)」との差分(Angle(0_360°_now)−Angle(0_360°_delay))を求め、この差分が、所定の範囲内(特定の閾値の範囲内)、即ち、180°±α内の値であるか否かを判定する。要するに、現在値と前回値の差分(Angle(0_360°_now)−Angle(0_360°_delay))が、180°+α以下で、かつ、180°−α以上であるか否かを判定する。
ステップ15で、「YES」、即ち、現在値と前回値の差分(Angle(0_360°_now)−Angle(0_360°_delay))が、180°±α内の値であると判定された場合は、180°〜360°の永久磁石14の極性がN極であるのにS極と誤検出されたと考えられる。このため、その極性をN極に一時的に戻すべく、ステップ16に進み、180°電気角演算器19で求められた「Angle(0_180°)」を真として、「Angle(0_360°)=Angle(0_180°)」とする。そして、続くステップ14で、「Angle(0_360°)」を出力し、リターンを介してスタートに戻る。これにより、MRセンサ16からの出力(検出値)を用いて推定された正確な位置(電気角)が、360°電気角補正器23から「Angle(0_360°)」としてコントローラに出力されると共に、前回値「Angle(0_360°_delay)」となって電気角不調検出器22に出力される。
一方、ステップ15で、「NO」、即ち、現在値と前回値の差分(Angle(0_360°_now)−Angle(0_360°_delay))が、180°±α内の値でないと判定された場合は、永久磁石14の極性がS極であるのにN極と誤検出されたと考えられる。このため、その極性をS極に一時的に戻すべく、ステップ17に進み、180°電気角演算器19で求められた「Angle(0_180°)」に180°を加えた値を真として、「Angle(0_360°)=Angle(0_180°)+180°」とする。そして、続くステップ14で、「Angle(0_360°)」を出力し、リターンを介してスタートに戻る。これにより、MRセンサ16からの出力(検出値)を用いて推定された正確な位置(電気角)が、360°電気角補正器23から「Angle(0_360°)」としてコントローラに出力されると共に、前回値「Angle(0_360°_delay)」となって電気角不調検出器22に出力される。
ここで、電気角不調検出器22には、360°電気角補正器23からの「Angle(0_360°)」が前回値「Angle(0_360°_delay)」となって入力されるため、ホールICセンサ17の不調が継続していると(不調のままだと)、次の処理(次のサンプリング時間後の処理)における図3のステップ2でも「YES」と判定される。これにより、極判定の無効指令(KK=1)が継続され、360°電気角補正器23からは、正確な電気角が出力され続ける。
図8の特性線67、および、図9の特性線77は、360°電気角補正器23から出力される補正後の電気角「Angle(0_360°)」の波形を示している。これら特性線67,77は、ホールICセンサ17に不調が発生していない場合の図6の特性線46と同様の波形となる。即ち、ホールICセンサ17に不調(固着異常)が発生しているにも拘わらず、360°電気角補正器23からは、ホールICセンサ17に不調が発生していない場合と同じ電気角、即ち、正確な電気角を出力することができる。
なお、図8および図9には、不調が発生したタイミングと、その後に不調が検出される(ステップ2で初めてYESと判定される)タイミングとを、それぞれ黒色の三角印で示している。図8および図9の特性線67,77から明らかなように、不調が発生してから不調が検出されるまでの間も、360°電気角補正器23から正確な電気角を出力することができる。このため、例えば、後述する第1の故障判定器24や第2の故障判定器25が故障した場合や、これらの故障判定器24,25からの故障信号を伝達する信号線等が断線した場合等、センサの故障が出力されない場合でも、電磁サスペンション装置1の電流制御を安定して継続することができる。
次に、第1の故障判定器24と第2の故障判定器25について説明する。
即ち、本実施の形態では、図2に示すように、位置演算ユニット18は、電気角不調検出器22と360°電気角補正器23とに加えて、故障判定手段としての第1の故障判定器24を備えている。第1の故障判定器24は、電気角不調検出器22に接続され、該電気角不調検出器22からの出力、即ち、極判定を有効とするか無効とするかの指令に基づいて、ホールICセンサ17に故障が発生したか否かを判定するものである。ここで、第1の故障判定器24は、電気角不調検出器22からの無効の指令(KK=1)の回数が所定の回数に達すると故障が発生したと判定する構成としている。なお、第1の故障判定器24は、電気角不調検出器22からの無効の指令を用いずに、例えば、360°電気角演算器21からの出力「Angle(0_360°_now)」と360°電気角補正器23からの出力「Angle(0_360°_delay)」とから直接その差分の絶対値を算出し、この差分の絶対値が一定のサンプリング数内で連続的に発生した(差分の絶対値が0でない状態が継続した)場合に故障が発生したと判定する構成としてもよい。
いずれにしても、無効の指令の回数が所定の回数に達すると(または、差分が一定サンプリング数内で連続的に発生すると)、ホールICセンサ17に故障が発生したと判定するため、無効の指令の回数が所定の回数に達しないと(または、差分が一定サンプリング数内で連続的に発生しないと)、ホールICセンサ17に故障が発生したとは判定されない。このため、実際に故障が発生した場合と、ホールICセンサ17の出力(検出値)が例えば一時的なノイズ等により変動した場合とを区別することができる。即ち、一時的な不調であるか故障であるかを区別することができ、ホールICセンサ17の故障の判定の信頼性を向上することができる。なお、所定回数(や一定サンプリング数)は、一時的な不調と故障とを区別できるように、実験、シミュレーション等により適宜設定する。
第1の故障判定器24で故障が発生したと判定された場合は、故障の旨を、電磁サスペンション装置1(筒状リニア電磁式アクチュエータ3)のコントローラ(例えば、インバータを制御するコントローラ)に出力する。この場合、コントローラは、電流制御を停止する等の故障時に必要な処理を行うことができる。
さらに、位置演算ユニット18は、第1の故障判定器24に加えて、第2の故障判定器25を備えている。第2の故障判定器25は、MRセンサ16およびホールICセンサ17に直接接続され、MRセンサ16およびホールICセンサ17からの出力(検出値)に基づいて、これらのセンサの故障の判定を行うものである。この場合、第2の故障判定器25は、ホールICセンサ17の故障を、例えば次のように判定する。
即ち、永久磁石14一個分の距離以上に固定子2と可動子12とが相対変位したときに、ホールICセンサ17の出力がHIGHからLOW、または、LOWからHIGHに変化しない場合に、ホールICセンサ17に故障が発生したと判定する。そして、第2の故障判定器25で故障が発生したと判定された場合は、故障の旨を、コントローラに出力し、該コントローラは、電流制御を停止する等の故障時に必要な処理を行うことができる。
本実施の形態の場合は、第1の故障判定器24と第2の故障判定器25との2つの故障判定器を備える構成としているので、第1の故障判定器24から出力される故障情報と第2の故障判定器25から出力される故障情報とを併用することで、故障の検知の確率(正確性)を高めることができる。
本実施の形態による電磁サスペンション装置1は、上述のような構成を有するもので、次にその作動について説明する。
例えば、電磁サスペンション装置1を、車両のばね上部材(車体側)とばね下部材(車輪側)との間に上,下方向に縦置き状態で介在させた場合には、車両が上,下方向に振動すると、電磁サスペンション装置1にはストローク方向(軸方向)に力が作用する。この力に応じて、固定子2と可動子12とが相対移動する。このとき、コイル6A,6B,6Cには、各永久磁石14の位置に応じて所定の電流を流すことにより、電磁サスペンション装置1の減衰力を調整することができ、車両の乗り心地や操縦安定性を向上させることができる。
ここで、永久磁石14の位置は、MRセンサ16の出力(検出値)とホールICセンサ17の出力(検出値)に基づいて位置演算ユニット18で求められる。また、位置演算ユニット18では、ホールICセンサ17に不調が発生すると、電気角不調検出器22によりその不調が検知される。この場合、電気角不調検出器22は、360°電気角演算器21による位置の履歴からホールICセンサ17の不調を検出する構成としている。
より具体的には、電気角不調検出器22は、制御周期ごとに360°電気角演算器21で求められる位置の履歴が不連続となったときに、ホールICセンサ17が不調であることを検出する。このため、ホールICセンサ17の不調の検出を迅速に行うことができる。しかも、ホールICセンサ17の不調を検出した場合は、360°電気角補正器23により、MRセンサ16からの検出値を用いて永久磁石14の位置を推定する構成としている。このため、ホールICセンサ17の不調を検出した場合でも、360°電気角補正器23で推定した位置に応じて、電磁サスペンション装置1(筒状リニア電磁式アクチュエータ3)の制御を安定して継続することができる。これにより、ホールICセンサ17の不調の検出の信頼性、延いては、位置検出の信頼性を確保でき、電磁サスペンション装置1の安定性、信頼性の向上を図ることができる。
本実施の形態によれば、電気角不調検出器22での不調の検出を、図3のステップ2の処理により行う構成としている。即ち、不調の検出を、現在の処理で求められた位置となる360°電気角演算器21から出力される現在値「Angle(0_360°_now)」と、前回の処理で求められた位置となる360°電気角補正器23から出力される前回値「Angle(0_360°_delay)」との差分の絶対値|Angle(0_360°_now)−Angle(0_360°_delay)|が所定の範囲(180°±α)内の値であるか否かにより行う構成としている。このため、差分の算出とこの差分が所定の範囲内の値であるか否かの判定との2つの処理に基づいて、ホールICセンサ17の不調の検出を制御周期ごとに迅速に行うことができる。
本実施の形態によれば、所定の範囲(180°±α)は、ホールICセンサ17から正常とは逆の極性の信号が出力されることに基づいて、現在の処理と前回の処理との間で生じる位置の変化量として設定している。このため、差分の絶対値が所定の範囲内の値であるか否かの判定により、ホールICセンサ17の不調の検出を精度よく(正確に)行うことができる。
本実施の形態によれば、360°電気角補正器23による位置の推定は、図4のステップ15の処理により、現在の処理で求められた位置と前回の処理で求められた位置または推定された位置との差分を求め、この差分に基づいて、続くステップ16,17の処理により、MRセンサ16の検出値となる180°電気角演算器19からの出力「Angle(0_180°)」を補正することにより行う構成としている。このため、ホールICセンサ17が不調の場合でも、MRセンサ16の検出値に基づいて精度よく(正確な)位置を推定することができる。これにより、ホールICセンサ17が不調でも、電磁サスペンション装置1(筒状リニア電磁式アクチュエータ3)の制御を安定して継続することができる。
本実施の形態によれば、電気角不調検出器22は、不調を検出した場合に、図3のステップ6の処理により、ホールICセンサ17の出力(検出値)に基づく極性を無効とする旨の指令(KK=1)を出力する構成としている。このため、無効とする旨の指令に基づいて、360°電気角補正器23では必要な位置の推定を行うことができ、第1の故障判定器24では故障の判定を行うことができる。
本実施の形態によれば、電気角不調検出器22から出力される無効の指令(KK=1)に基づいてホールICセンサ17の故障を判定する第1の故障判定器24を備え、該第1の故障判定器24は、無効の指令(KK=1)の回数が所定の回数に達すると故障が発生したと判定する構成としている。このため、ホールICセンサ17の検出値が例えば一時的なノイズ等により変動した場合等、無効の指令(KK=1)の回数が所定の回数に達しない場合に故障と判定されることを防止することができる。これにより、ホールICセンサ17の故障の判定の信頼性を向上することができる。
なお、上述した実施の形態では、第1の故障判定器24に加えて第2の故障判定器25も有する構成、即ち、第1の故障判定器24と第2の故障判定器25とを併用してホールICセンサ17の故障を判定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第2の故障判定器25を省略し、第1の故障判定器24のみによりホールICセンサ17の故障を判定する構成としてもよい。
上述した実施の形態では、磁界検出磁気センサをMRセンサ16とし、極性検出磁気センサをホールICセンサ17とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、磁界検出磁気センサは磁界の検出ができるものであればよく、極性検出磁気センサは極性の検出ができるものであればよく、これらの磁気センサとして各種の磁気センサを用いることができる。
上述した実施の形態では、筒状リニア電磁式アクチュエータ3を、内筒に対応するコア5に設けられたコイル6A,6B,6C(コイル部材)と、外筒に対応するアウタチューブ13に設けられた永久磁石14(磁性部材)とにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、外筒に設けられたコイル(コイル部材)と、内筒に設けられた永久磁石(磁性部材)とにより筒状リニア電磁式アクチュエータを構成してもよい。即ち、筒状リニア電磁式アクチュエータは、内筒または外筒の一方の部材に設けられたコイル部材と、他方の部材に設けられた磁性部材とにより構成することができる。
上述した実施の形態では、固定子2を車両のばね上部材(例えば車体側)に取付けると共に、可動子12を車両のばね下部材(例えば車輪側)に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、固定子を車両のばね下部材に取付けると共に、可動子を車両のばね上部材に取付ける構成としてもよい。
上述した実施の形態では、電磁サスペンション装置1を縦置き状態で自動車等の車両に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、電磁サスペンション装置を横置き状態で鉄道車両等の車両に取付ける構成としてもよい。
上述した実施の形態では、電磁サスペンション装置1を車両に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、振動源となる種々の機械、建築物等に用いる電磁サスペンション装置に用いてもよい。
さらに、上述した実施の形態では、横断面形状が円形のリニアモータ、即ち、固定子2および可動子12を円筒状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、横断面形状がI字状(平板状)や矩形状、H字状のリニアモータ等、横断面形状が円形以外の筒状のリニアモータにより構成してもよい。
以上の実施の形態によれば、電磁サスペンション装置の信頼性の向上を図ることができる。
即ち、実施の形態によれば、位置検出手段による位置の履歴から極性検出磁気センサの不調を検出する構成としている。この場合、制御周期ごとに位置検出手段で求められる位置の履歴が不連続となったときに、極性検出磁気センサが不調であることを検出することができる。このため、極性検出磁気センサの不調の検出を迅速に行うことができる。しかも、極性検出磁気センサの不調を検出した場合は、磁界検出磁気センサからの検出値を用いて位置を推定する構成としている。このため、極性検出磁気センサの不調を検出した場合でも、推定した位置に応じて、電磁サスペンション装置の制御を安定して継続することができる。これにより、極性検出磁気センサの不調の検出の信頼性、延いては、位置検出の信頼性を確保でき、電磁サスペンション装置の安定性、信頼性の向上を図ることができる。
実施の形態によれば、不調の検出を、現在の処理で求められた位置と前回の処理で求められた位置との差分が所定の範囲内の値であるか否かにより行う構成としている。このため、差分の算出とこの差分が所定の範囲内の値であるか否かの判定との2つの処理に基づいて、極性検出磁気センサの不調の検出を制御周期ごとに迅速に行うことができる。
実施の形態によれば、所定の範囲は、極性検出磁気センサから正常とは逆の極性の信号が出力されることに基づいて、現在の処理と前回の処理との間で生じる位置の変化量として設定している。このため、差分が所定の範囲内の値であるか否かの判定により、極性検出磁気センサの不調の検出を精度よく(正確に)行うことができる。
実施の形態によれば、位置の推定は、現在の処理で求められた位置と前回の処理で求められた位置または推定された位置との差分に基づいて、磁界検出磁気センサの検出値を補正することにより行う構成としている。このため、極性検出磁気センサが不調の場合でも、磁界検出磁気センサの検出値に基づいて精度よく(正確な)位置を推定することができる。これにより、極性検出磁気センサが不調でも、電磁サスペンション装置の制御を安定して継続することができる。
実施の形態によれば、不調検出手段は、不調を検出した場合に、極性検出磁気センサの検出値に基づく極性を無効とする旨の指令を出力する構成としている。このため、無効とする旨の指令に基づいて、必要な位置の推定、故障の判定を行うことができる。
実施の形態によれば、不調検出手段から出力される無効の指令に基づいて極性検出磁気センサの故障を判定する故障判定手段を備え、該故障判定手段は、無効の指令の回数が所定の回数に達すると故障が発生したと判定する構成としている。このため、故障が発生した場合と、極性検出磁気センサの検出値が例えば一時的なノイズ等により変動した場合とを区別することができ、極性検出磁気センサの故障の判定の信頼性を向上することができる。