JP6015723B2 - 低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献2には、2次再結晶後の鋼板に対してプラズマアークを照射することにより、照射前には0.80W/kg以上あった鉄損W17/50を、0.65W/kg以下に低減する技術が示されている。また、特許文献3には、電子ビーム照射によって鋼板面に形成された磁区不連続部の平均幅と、被膜厚とを適正化することによって、鉄損が低く、騒音が小さいトランス用素材を得る技術が示されている。
すなわち、図2の左下吹き出しに示したように、鉄心中に磁歪が異なる方向性電磁鋼板が積層されている場合、積層された鋼板の励磁に伴う変位量の違いによって、鋼板の間に摩擦が発生し、騒音が発生するからである。従って、コイル平均の磁歪が如何に小さくても、そのばらつきが大きい場合には低騒音化することができない。これに対して、図2の右下吹き出しに示したように、鋼板同士の磁歪ばらつきが小さければ、積層された鋼板は同じように変形するので、摩擦は生じず、騒音もほとんど発生しないと考えられる。
Δ=WD×[[1+(L/(2WD))2]0.5−1]
WD:偏向コイル中心から鋼板までの距離
L:1台の電子銃による鋼板上の幅方向偏向照射長さ
それを傍証する実験結果を以下に示す。
さらに、発明者らは、ビーム径の増大が歪み部体積の増大につながり、鋼板の磁気特性を損なうとの従来知見を考慮しつつ、WDを増大した場合のビーム径縮小手法として、(1)加工室真空度の向上、(2)照射ビーム電流の低減、(3)加速電圧の増大、を想起し、これらについて検討した。
また、上記(2)の手法、すなわち、照射ビーム電流の低減については、照射ビーム電流を減少させてビーム径の縮小を図ったものの、その効果は小さく、WDを増大させた場合には、やはりビーム径が大きくなることが分かった。
これに対して、上記(3)の手法、すなわち、加速電圧の増大については、偏向コイル磁場増大など、ビーム偏向に必要な外部エネルギが増大するため、大きい偏向角での照射に適用することは考えられてこなかったが、実際に行ってみたところ、著しいビーム径低減効果が認められた。
本発明は上記知見に立脚するものである。
1.圧延方向を横切る方向に対して局所的に歪みを導入するに当たり、該歪みを圧延方向に周期的に繰返して導入する方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記歪みの圧延方向に対する繰返し間隔を30mm以下とし、
上記歪みの導入を、加速電圧:40〜300kVの電子ビームによるものとし、
電子銃直下における電子ビーム径:Dを、50μm≦D≦500μmの範囲とし、さらに、
1台の電子銃による鋼板上の幅方向偏向照射長さをL(mm)、偏向コイル中心から鋼板までの距離をWD(mm)としたとき、
WD>L/(2tanθ)、L≧150、
なお、θ=10 deg.とする
の関係を満たすものとする低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。
L≧T/4
の関係を満たし、さらに前記電子ビーム径:Dを、
50μm≦D≦300μmの範囲とする
前記1に記載の低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。
0.019×Va2+6.0×Va+215≧WDa
の関係を満たす前記1または2に記載の低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。
0.022×Va2+3.6×Va+168≧WDa
の関係を満たす前記3に記載の低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明は、電子ビーム照射を行う方向性電磁鋼板について、コイル全幅における鉄損と鉄損ばらつき、さらには磁歪と磁歪ばらつきを低減するものである。
以下、本発明にかかる種々の条件の限定理由を述べる。
加速電圧(Va):40〜300kV
同一加速電圧のもとでは、ビームの高速化に伴い、適正出力が増大し、低鉄損化に好ましくないビーム径増大が生じる。ビーム径増大の抑制には、高加速電圧化が最も有効である。ここに、Vaが40kV未満であると、ビーム径を絞ることが難しくなって鉄損低減効果が小さくなる一方で、Vaが300kV超であると、フィラメントなどの装置寿命が短くなるだけでなく、X線漏洩防止のために装置が過度に巨大化して、メンテナンス性・生産性が低下してしまう。
さらに加速電圧は、より高いほど物質を透過し、被膜での局所的なエネルギ集中を抑制することができるので、被膜の損傷を効果的に抑制するため、より好ましい範囲は、70〜200kVである。
ビーム径(D)が50μm未満であると、そのために、WDを極度に低減するなどの処置を講じざるを得ず、その場合、1つの電子ビーム源によって偏向照射可能な距離が大幅に減少してしまう。その結果、1200mmほどの広幅コイルを照射するために、多数の電子銃が必要となって、メンテナンス性・生産性が低下してしまう。
一方、Dが500μmより大きいと、十分な鉄損低減効果や、磁性改善効果が得られない。というのも、鋼板のビーム照射面積(歪み導入部分の体積)が過度に増大して、ヒステリシス損および磁歪が劣化するためである。
よって、ビーム径は50〜500μmの範囲に限定する。望ましくは、300μm以下、さらに望ましくは200μm以下である。
なお、ここでいうビーム径は、スリット幅30μmのスリット法によって得られたビーム波形の半値幅とする。
WDは小さいほど、ビームが絞りやすくなる利点がある一方で、鋼板上のビーム偏向量を増大するために偏向角を大きくすると、ビーム品質が劣化してしまう。
図6に、照射後の鉄損におよぼす偏向角の影響を示す。
ここで試料は、設定された偏向角によって走査された領域のうち、最外から60mmの領域を切出したものである。偏向角が10 deg.を超えると、鉄損が大幅に劣化することが認められた。図7に示すように、偏向角:θと偏向コイル中心から鋼板までの距離:WDおよび1台の電子銃による鋼板上の幅方向偏向照射長さ:Lを用いて、θ=tan-1(L/(2×WD))と表されるから、変形してWD=L/(2tanθ)>L/(2tan10(deg.))が導かれる。
また、照射長さLは150(mm)以上とする。150mmより小さい場合には、広いコイル幅の全幅を照射するのにより多くの電子銃が必要となり、メンテナンス性を著しく損なうからである。
電子銃台数が多いほど、電力消費や消耗品であるフィラメントの交換頻度、電子銃クリーニング時間が増大するため、生産性を著しく阻害する。したがって、電子銃台数は少ない方がよく、4台以下が望ましい。このとき、照射する領域の全幅がTであれば、L×4≧Tとなる。
0.022×Va2+3.6×Va+168(ビーム径がさらに200μm以下の場合)
図8に、偏向中心位置におけるビーム径が300μm以下、さらに200μm以下となった場合のワーキングディスタンスにおよぼす加速電圧の影響を示す。ここで、ワーキングディスタンスは、図7に示すように、収束コイル中心から鋼板までの距離を指し、偏向コイルからの距離で示したWDと区別するため、WDaとする。各コイル間動作の干渉を防ぐため、WDaは、WDよりも一般的に30mm以上大きいのが一般的である。また、出力は2kW、加速電圧を変更した場合には、適宜ビーム径が小さくなるよう光学系の調整を実施した。その結果、加速電圧が高いほど、WDaが大きくても小さなビーム径が得られることが分かる。ビーム径は300μm以下、特に200μm以下において、良好な磁気特性が得られる。
照射出力の増大には、フィラメント径拡大が必要であるが、一方でビーム径を増大してしまい、磁気特性上不利に働くため、定格出力は小さい方がよく、6kW以下とするのが好ましい。なお、照射定格出力の下限に特に限定はないが、0.2kW程度とすることが好ましい。
電子ビームは、直線状に鋼板の幅端部から、もう一方の幅端部へ照射し、これを圧延方向に周期的に繰返して行う。この繰返し間隔(RD線間隔、本発明では単に線間隔ともいう)は、30mm以下とする。線間隔が広すぎると、いくら深さ方向に還流磁区を拡大しても、磁区細分化効果が乏しくなって鉄損が改善しないからである。
一方、線間隔が狭いと、鋼中に形成される歪領域が過度に大きくなって、鉄損(ヒステリシス損)と共に、磁気歪みも劣化する結果、生産性が低下するおそれがあるので、4mm以上とすることが好ましい。
さらに、低磁歪化するためには、線間隔は6mm以上とするのがより好ましい。前述のとおり、低磁歪化のためには、鋼板内のランセット磁区を相殺するだけの還流磁区を形成する必要があるからである。
これに対して、線間隔は、収束条件を変えることなく数mmのオーダーで大きく変更することが可能である。図9に、λpp(B=1.7T,50Hz)におよぼす線間隔の影響を示す。サンプルは同一コイルから切り出し、図中、各点は30データの平均値である。このデータにおけるビームの単位走査長さあたりのエネルギは、18J/mである。このエネルギでは、線間隔:5mmにおいて鉄損が最小となり、λppは、6mm以上30mm以下において未照射材よりも低減されることが分かる。
本発明では、鋼板の幅端部からもう一方の幅端部への直線状照射において、始点から終点に向かう照射方向は、圧延方向を横切れば問題はないが、圧延方向から60°から120°の範囲の角度となる方向とするのが好ましい。望ましくは90°である。90°から大きくずれると、歪み導入部の体積が過度に増大してしまうため、ヒステリシス損が劣化するからである。
加工室圧力が3Paより高いと、電子銃から発生した電子が散乱されて、地鉄に還流磁区を形成するための電子のエネルギが減少するために、十分な磁区細分化がなされず、鉄損が改善しないおそれがあるので、加工室圧力は3Pa以下が好ましい。なお、加工室圧力の下限値は特に制限されないが、設備の過度な負担を考えると0.02Pa程度である。
電子ビームを偏向走査させて、通板される鋼板に直線状に分布される歪を与えていく。このとき、歪を導入する電子ビームの平均走査速度は30m/s以上とするのが良い。ここで、平均走査速度とは、直線状の連続電子ビーム走査であれば、その速度とすれば良く、点列状の照射であれば、(点列間最小距離)/(1点の滞在時間)を平均走査速度とすれば良い。走査速度が30m/sより小さいと、高い生産性を達成できない。より好ましくは、60m/s以上である。
全幅から切出した100mm幅の試料において、励磁中の圧延方向最大振幅:λppの最大λpp−最小λppが2.4×10-7以下
本発明における方向性電磁鋼板は、最大磁束密度B(T)にて励磁中の圧延方向最大振幅:λppの平均および最大λpp−最小λppの値が、上記した範囲、すなわち、λppの平均値(以下、平均磁歪振幅という)が3.5×10-7以下で、かつλppの最大値−最小値(以下、磁歪ばらつきという)が2.4×10-7以下となることを特徴としている。但し、前記B(T)は、1.3T以上1.9T以下のある一定値で励磁する。
以下に、その限定理由の根拠となる実験結果を示す。
かくして得られた結果から、圧延方向最大振幅の最大と最小の差および平均値を求めた。続いて、同一の電子ビーム照射条件によって処理したコイル内の素材だけで、変圧器鉄心を作製し騒音を測定した。騒音は、三相三脚の積み鉄心型の変圧器を模擬し、モデル変圧器を用いて評価を行った。
評価結果を表1および2に示す。
なお、鉄心重量を約20kgとした。三相は120°位相をずらして励磁を行い、磁束密度1.7Tにおいて、騒音測定を行った。騒音は、Aスケール補正を行ったdBA単位で表す。
なお、本発明において、上述した工程や製造条件以外については、従来公知の電子ビーム照射方法および方向性電磁鋼板の製造方法を適宜使用することができる。
表3に示した条件で電子ビームを照射した300mm幅コイルから幅方向に切出した100mm幅の試料3枚をコイル全体からまんべんなく15セット準備し、最大磁束密度B=1.7T、周波数50Hzの条件にてλppを測定した。なお、λppは、レーザドップラ振動計を用いて測定した。
上記測定手順にて測定したλppより平均磁歪振幅と磁歪ばらつきをそれぞれ求め表4に記載した。
Claims (6)
- 圧延方向を横切る方向に対して局所的に歪みを導入するに当たり、該歪みを圧延方向に周期的に繰返して導入する方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記歪みの圧延方向に対する繰返し間隔を30mm以下とし、
上記歪みの導入を、加速電圧:40〜300kVの電子ビームによるものとし、
電子銃直下における電子ビーム径:Dを、50μm≦D≦500μmの範囲とし、さらに、
1台の電子銃による鋼板上の幅方向偏向照射長さをL(mm)、偏向コイル中心から鋼板までの距離をWD(mm)としたとき、
WD>L/(2tanθ)、L≧150、
なお、θ=10 deg.とする
の関係を満たすものとする低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。 - 前記幅方向偏向照射長さ:L(mm)と、鋼板の全幅:T(mm)とが、
L≧T/4
の関係を満たし、さらに前記電子ビーム径:Dを、
50μm≦D≦300μmの範囲とする
請求項1に記載の低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。 - 前記電子ビームの加速電圧:Va(kV)と、収束コイル中心から鋼板までの距離:WDa(mm)とが、
0.019×Va2+6.0×Va+215≧WDa
の関係を満たす請求項1または2に記載の低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。 - 前記加速電圧:Va(kV)と前記収束コイル中心から鋼板までの距離:WDa(mm)とが、さらに、
0.022×Va2+3.6×Va+168≧WDa
の関係を満たす請求項3に記載の低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。 - 前記電子ビーム照射の最大出力を、6(kW)以下とする請求項1〜4の何れかに記載の低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記歪みの圧延方向に対する繰返し間隔を、4mm以上とする請求項1〜5の何れかに記載の低騒音変圧器鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。
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