以下に、本発明の実施の形態にかかる無線通信制御装置、無線通信装置および無線通信システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる制御装置3および路側機4を備える無線通信システム10において2本のアンテナを備える場合の構成例を示す図である。無線通信システム10は、制御装置3と、路側機4と、を備える。制御装置3は、巡回遅延ダイバーシチにより信号を送信する路側機4に対して、巡回遅延ダイバーシチにおける巡回遅延時間を制御する無線通信制御装置である。路側機4は、接続する制御装置3の制御によって、複数のアンテナを用いた巡回遅延ダイバーシチにより後述する移動局へ信号を送信する無線通信装置である。実施の形態1では、無線通信システム10において、巡回遅延無設定アンテナ71および延長型巡回遅延設定アンテナ72の2本のアンテナを用いて巡回遅延ダイバーシチにより信号を送信する場合について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる路側機4、ブランチ5、および移動局6の位置関係の例を示す図である。制御装置3と接続する路側機4は、巡回遅延無設定アンテナ71を用いて、路側機4の通信エリアであるセル1の範囲で信号を送信する。また、路側機4は、ブランチ5経由で、路側機4から同軸ケーブルまたは光ケーブルなどによって信号線であるケーブルのケーブル長が延長された延長型巡回遅延設定アンテナ72を用いて、ブランチ5の通信エリアであるセル2の範囲で信号を送信する。ブランチ5は、延長型巡回遅延設定アンテナ72が設置された基地局である。ただし、ブランチ5は、延長型巡回遅延設定アンテナ72を設置しているのみであり、信号を送信する制御は路側機4で行っている。実施の形態2以降で後述するように、ブランチ5では複数のアンテナを設置することも可能である。移動可能な移動局6は、セル1内では巡回遅延無設定アンテナ71から送信された信号を受信し、セル2内では延長型巡回遅延設定アンテナ72から送信された信号を受信する。移動局6は、セル1とセル2が重複するセル1およびセル2の境界付近では、巡回遅延無設定アンテナ71および延長型巡回遅延設定アンテナ72から送信された信号を受信することができる。
なお、路側機4とブランチ5とを光ケーブルで接続する場合、光ケーブルによる延長区間の路側機4側には電気信号を光信号に変換する電気光信号変換器、ブランチ5側には光信号を電気信号に変換する光電気信号変換器を備えるものとする。また、路側機4とブランチ5とを光ケーブルで接続する場合、途中で光信号の強度を増幅する光中継機能を備える構成にしてもよい。
図2に示す位置に移動局6がある場合に、セル1において巡回遅延無設定アンテナ71から移動局6までの空間伝搬距離を距離R1、巡回遅延無設定アンテナ71から信号が送信されて距離R1において移動局6で信号を受信するまでの無線区間における信号の遅延時間である空間伝搬遅延時間をΔTB1と仮定する。また、セル2において延長型巡回遅延設定アンテナ72から移動局6までの空間伝搬距離を距離R2、延長型巡回遅延設定アンテナ72から信号が送信されて距離R2において移動局6で信号を受信するまでの無線区間における信号の遅延時間である空間伝搬遅延時間をΔTB2と仮定する。
また、路側機4からブランチ5までの長距離のケーブル伝送を行うことで、巡回遅延無設定アンテナ71から送信される信号に対して延長型巡回遅延設定アンテナ72から送信される信号で発生する有線区間における遅延時間である有線伝搬遅延時間をΔTAと仮定する。路側機4の巡回遅延無設定アンテナ71における有線伝搬遅延時間は極めて小さいものと仮定して、ここでは有線伝搬遅延時間をゼロに設定する。なお、図2では、距離R1は厳密には巡回遅延無設定アンテナ71と移動局6との間を示していないが、便宜上、路側機4の中心と移動局6の中心との間の距離を距離R1とする。同様に、ブランチ5の中心と移動局6の中心との間の距離を距離R2とする。
ここで、各装置の動作について説明を行う前に、無線通信システム10の構成を図1および図2に示すような構成にすることについて説明する。また、図1および図2に示す無線通信システム10で用いる巡回遅延ダイバーシチにおける遅延時間差とビット誤り率の関係について説明する。
路側機などの基地局から同一の情報を広域に配信する無線通信システムの例として、ITS(Intelligent Transportation System)における路車間通信システムがある。安全運転支援の実現を目的として規格化が行われているIEEE802.11pでは、数百mから1km程度のエリアで路車間通信が可能とされている。なお、実施の形態1では、無線通信システム10として、路車間通信システムを例にして説明するが、列車無線を用いた指令−乗務員間の通話システムなどにも適用可能である。列車無線を用いた通話システムでは、図1および図2に示す路側機4は列車無線基地局となる。
基地局である路側機から同一の情報を広域に配信する無線通信システムに巡回遅延ダイバーシチを適用する場合、巡回遅延ダイバーシチの機能を備えた複数の路側機を設置する案が考えられる。しかしながら、安易に路側機を増設するとコストが増大し、設置工事も大規模になる。そこで、図1および図2に示すように、延長型巡回遅延設定アンテナ72について、同軸ケーブルまたは光ケーブルなどでケーブル長を延長することにより、路側機4の巡回遅延無設定アンテナ71と離れた位置に、巡回遅延無設定アンテナ71と同一情報を配信可能な延長型巡回遅延設定アンテナ72を増設する方法がある。
図1および図2の例では、路側機4と接続する2本のアンテナのうち1本、ここでは延長型巡回遅延設定アンテナ72までのケーブルを同軸ケーブルまたは光ケーブルなどでブランチ5まで延長する。これにより、無線通信システム10では、ブランチ5に設置された延長型巡回遅延設定アンテナ72から信号を送信することにより、セル1と通信エリアが隣接し、セル1と同一情報を配信可能なセル2を形成することができる。無線通信システム10では、各セルの中心付近における巡回遅延ダイバーシチの効果は弱まるものの、各セルからの送信タイミングが異なることから、セル境界において、同一信号が同一タイミングにおいて逆位相で打ち消し合う現象、すなわちビート干渉の発生を回避できるという利点がある。このように、無線通信システム10では、図1および図2に示す構成にすることで、1つの路側機4の設置でよいことからコストの増大を抑えつつ、巡回遅延ダイバーシチの効果を得ることができるという利点がある。
延長型巡回遅延設定アンテナ72における長距離のケーブル延長を伴い、かつ巡回遅延ダイバーシチを適用する無線通信システム10では、制御装置3で設定される巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間の他、有線伝搬遅延時間ΔTA、および空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2を無視することができなくなる。
巡回遅延ダイバーシチによる通信品質の改善効果は、路側機4の巡回遅延無設定アンテナ71およびブランチ5の延長型巡回遅延設定アンテナ72の各アンテナからの信号が移動局6で受信される際の遅延時間の差分である遅延時間差により決定される。特に、移動局6で観測される各アンテナからの遅延時間差がゼロに近づくと、巡回遅延ダイバーシチの効果が弱まる。そのため、制御装置3において、路側機4の巡回遅延無設定アンテナ71における空間伝搬遅延時間ΔTB1、ブランチ5の延長型巡回遅延設定アンテナ72における有線伝搬遅延時間ΔTAおよび空間伝搬遅延時間ΔTB2を考慮するとともに、巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延が有する特徴を考慮した巡回遅延時間の設定が行われることが望ましい。
巡回遅延について説明するために、巡回遅延無設定アンテナ71と延長型巡回遅延設定アンテナ72との間で巡回遅延ダイバーシチを行う場合を前提とした巡回遅延の概念図を図3に示す。図3は、実施の形態1にかかる無線通信システム10で用いる巡回遅延ダイバーシチにおける巡回遅延の概念を示す説明図である。ここでは、1つのOFDMシンボルにおける巡回周期を64サンプルと仮定する。巡回遅延ダイバーシチは、巡回シフトの考え方に基づいて、遅延させた後方のサンプル部分をデータフレームの前方へ複製する形で、送信する信号に対して巡回遅延を与える仕組みである。そのため、巡回遅延ダイバーシチでは、巡回周期、すなわちFFT(Fast Fourier Transform)周期で巡回遅延時間が一巡するという特徴がある。巡回遅延時間が一巡すると、移動局6で見た場合、巡回遅延無設定アンテナ71から送信される信号と、延長型巡回遅延設定アンテナ72から送信される巡回遅延が与えられた信号が同一のタイミングで受信されるように見え、巡回遅延ダイバーシチの効果が得られなくなる。
特に、一方のアンテナまでの距離を長距離のケーブルで延長するシステムにおいては、有線および空間の合計の伝搬遅延時間が比較的大きな値となることが予想され、有線および空間の伝搬遅延時間と巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間との合計値が遅延時間を一巡する可能性が高くなる。そのため、路側機4の巡回遅延無設定アンテナ71およびブランチ5の延長型巡回遅延設定アンテナ72の設置条件を考慮すると、設定される巡回遅延時間によっては、巡回遅延ダイバーシチによる通信品質の改善効果が消失してしまう可能性がある。
図4は、実施の形態1において、有線および空間の合計の伝搬遅延時間を考慮しないで巡回遅延時間を設定した場合の移動局6における巡回遅延無設定アンテナ71および延長型巡回遅延設定アンテナ72の2本のアンテナからの信号の受信タイミングの例を示す図である。図3と同様、1つのOFDMシンボルにおける巡回周期を64サンプルと仮定する。1サンプルの時間長は、例えば、OFDMのサンプリングレートが10MHzの場合には100nsec、OFDMのサンプリングレートが40MHzの場合には25nsecに相当する。
路側機4の巡回遅延無設定アンテナ71から送信される信号は、移動局6の受信時すなわち受信タイミングにおいて、空間伝搬遅延時間ΔTB1として2サンプル分の伝搬遅延時間が付加されると仮定する。一方、ブランチ5の延長型巡回遅延設定アンテナ72から送信される信号は、制御装置3内部で予め52サンプルの巡回遅延時間が付加されており、移動局6の受信時すなわち受信タイミングにおいて、有線伝搬遅延時間ΔTAおよび空間伝搬遅延時間ΔTB2の合計として14サンプル分の伝搬遅延時間が付加されると仮定する。このとき、移動局6では、ブランチ5の延長型巡回遅延設定アンテナ72からの信号は、受信時において52+14=66サンプル分だけ遅延しているように見える。巡回周期が64サンプルであることを考慮すると、移動局6では、実質的には66−64=2サンプル分しか遅延していないように見える。路側機4の巡回遅延無設定アンテナ71からの信号も2サンプル分の遅延であることから、移動局6では、両方のアンテナからの信号の遅延時間が同じ、すなわち遅延時間差がゼロのように見えてしまう。この場合、移動局6では、巡回遅延ダイバーシチの効果が消失し、巡回遅延ダイバーシチの効果を得ることができない。
図4のGI(Guard Interval)に示すように、一般的にGI部分には、データの後ろの部分から規定された複数のサンプルがコピーされて付加される。そのため、移動局6では、巡回遅延無設定アンテナ71から送信される信号の復調範囲において、巡回遅延無設定アンテナ71から送信される信号とサンプル番号が一致する信号を延長型巡回遅延設定アンテナ72からも受信する可能性がある。この場合、移動局6では、巡回遅延無設定アンテナ71および延長型巡回遅延設定アンテナ72から受信した信号は、同一信号の重ね合わせとして見えることになる。
図5は、実施の形態1にかかる巡回遅延ダイバーシチにおける遅延時間差の絶対値とビット誤り率の関係を示す説明図である。図5において、横軸は移動局6において巡回遅延無設定アンテナ71および延長型巡回遅延設定アンテナ72から信号を受信したときに各アンテナで発生する遅延時間の差分である遅延時間差の絶対値を示す。また、図5において、縦軸はビット誤り率を示し、値が小さいほど通信品質が良好であることを表している。
図5において横軸が0の場合は、移動局6で巡回遅延無設定アンテナ71および延長型巡回遅延設定アンテナ72からの信号を同一タイミング、図4の例ではサンプル番号が一致するタイミングで受信することを表し、巡回遅延ダイバーシチの効果を得ることができない。巡回遅延ダイバーシチの効果は、遅延時間差の絶対値を徐々に増加させるにつれて大きくなり、遅延時間差の絶対値が通信品質安定領域になるときの境界の情報を示す通信安定遅延時間であるτrになった時点で最大の効果が得られる。この通信安定遅延時間τrの値は、路側機4と移動局6との間の伝搬路およびブランチ5と移動局6との間の伝搬路のフェージングモデル、または使用する誤り訂正符号の種類などにより決定され、事前に無線通信システム10の管理者などがシミュレーション評価を行うことで通信安定遅延時間τrの値を把握することが可能である。
また、巡回遅延の特徴により、遅延時間差の絶対値が巡回周期であるN、前述の例では64サンプルに近づくにつれて、巡回遅延ダイバーシチの効果は得られなくなる。具体的に、遅延時間差の絶対値が(N−τr)から効果が薄れ始め、Nになった時点で消失する。
すなわち、遅延時間差の絶対値が0〜τrの領域および(N−τr)〜Nの領域は、移動局6において巡回遅延ダイバーシチの効果が十分に得られない通信品質不安定領域と解釈することができる。一方、遅延時間差の絶対値が0〜τrの領域と(N−τr)〜Nの領域との間に位置するτr〜(N−τr)の領域は、移動局6において巡回遅延ダイバーシチの効果が最大限に得られる通信品質安定領域と解釈することができる。すなわち、無線通信システム10では、遅延時間差の絶対値がτr〜(N−τr)の領域において、安定した通信品質を得ることができる。
ここで、図2において、移動局6は各セル内を移動することから、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2は、移動局6の位置により異なる値をとる。しかしながら、制御装置3では、各セルで想定されるセル半径などの情報を用いることで、距離R1,R2の取り得る値の範囲を推定することができる。制御装置3では、推定した距離R1,R2の取り得る値に対して電波の伝搬速度(=3.0×108m/sec)を除算することで、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の取り得る値の範囲を推定することができる。
また、巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間は、後述するように、セル2の延長型巡回遅延設定アンテナ72から送信される信号に付加される。延長型巡回遅延設定アンテナ72から送信される信号に付加される巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間をτと仮定する。τは巡回遅延時間であることから、巡回周期をNサンプルとした場合、0〜(N−1)の範囲の整数値で設定される。1サンプルの時間長をTsampと仮定すると、巡回遅延時間の時間長を「τ×Tsamp」に換算することができる。
ここで、巡回遅延無設定アンテナ71から送信される信号が移動局6で受信されるときの信号の遅延時間をTANT1、延長型巡回遅延設定アンテナ72から送信される信号が移動局6で受信されるときの信号の遅延時間をTANT2とすると、各々以下の式(1)、(2)のように計算することができる。なお、これらの式においては、説明を簡略化するために、移動局6の移動経路が直線で、かつ路側機4は移動経路沿いに直線上に設置されており、さらに全てのアンテナの高さが同一であるものと仮定している。
TANT1=ΔTB1 …(1)
TANT2=τ×Tsamp+ΔTA+ΔTB2 …(2)
従って、図5の横軸に示す遅延時間差の絶対値は、以下の式(3)のように計算することができる。
|TANT1−TANT2|=|ΔTB1−(τ×Tsamp+ΔTA+ΔTB2)| …(3)
制御装置3は、想定する移動局6の移動範囲の中で取り得る空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の各組み合わせにおいて、式(3)の計算結果が図5で示した通信品質安定領域に収まるように巡回遅延時間τの値を選択する。
制御装置3は、例えば、N=64の場合、ある空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の組み合わせでは式(3)の計算結果が図5で示す通信品質安定領域に収まる巡回遅延時間τの値として20〜40の範囲を選択する。また、制御装置3は、別の空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の組み合わせでは式(3)の計算結果が図5で示す通信品質安定領域に収まる巡回遅延時間τの値として30〜50の範囲を選択する。この場合、制御装置3は、想定する移動局6の移動範囲の中で取り得る空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の各組み合わせにおいて、式(3)の計算結果が図5で示した通信品質安定領域に収まるように巡回遅延時間τの値として30〜40の範囲を選択する。このように、制御装置3は、想定する移動局6の移動範囲の中で取り得る空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の各組み合わせにおいて、共通する範囲を巡回遅延時間τの値として選択する。制御装置3は、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の組み合わせの数が3つ以上になる場合も同様に、各空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の各組み合わせにおいて、共通する範囲を巡回遅延時間τの値として選択する。
これにより、無線通信システム10では、移動局6において、各セルの通信エリアで巡回遅延ダイバーシチの効果を最大限に得ることができる。
つづいて、図1および図2に示す無線通信システム10を構成する制御装置3および路側機4において、移動局6で巡回遅延ダイバーシチの効果が最大限に得られるようにするための動作について説明する。
図1に示すように、制御装置3は、記憶部31と、伝搬遅延推定部35と、巡回遅延時間選択部36と、を備える。また、記憶部31は、通信安定遅延時間記憶部32と、通信パラメータ記憶部33と、アンテナ設置情報記憶部34と、を備える。
通信安定遅延時間記憶部32は、事前にシミュレーション評価などを行うことで求められた、移動局6において巡回遅延ダイバーシチの効果が得られる図5に示す通信品質安定領域に対応する遅延時間の範囲を示す情報である通信安定遅延時間τrを記憶する。
通信パラメータ記憶部33は、無線通信システム10で用いるOFDMによる通信の通信パラメータを記憶する。通信パラメータ記憶部33は、具体的に、巡回周期であるN、送信される信号に挿入されるガードインターバル長、OFDMシンボル内のサンプルのサンプリングレートなどの通信パラメータの情報を記憶する。
アンテナ設置情報記憶部34は、巡回遅延無設定アンテナ71および延長型巡回遅延設定アンテナ72の各アンテナについての設置情報を記憶する。アンテナ設置情報記憶部34は、各アンテナについての設置情報として、具体的に、巡回遅延無設定アンテナ71と延長型巡回遅延設定アンテナ72との間のアンテナ設置間隔、各アンテナの高さ、路側機4からブランチ5への長距離ケーブルの長さ、各セルで想定されるセル半径、巡回遅延無設定アンテナ71および延長型巡回遅延設定アンテナ72が設置された道路形状についての情報、例えば、直線か曲線かの情報、曲線の場合には曲率半径などの情報を記憶する。アンテナ設置情報記憶部34は、路側機4において巡回遅延ダイバーシチによる信号の送信で使用される全てのアンテナの設置情報を記憶する。以降の実施の形態についても同様とする。
伝搬遅延推定部35は、アンテナ設置情報記憶部34が記憶する情報を用いて、有線伝搬遅延時間ΔTA、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の値を推定する。このとき、移動局6は各セル内を移動することから、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2は、移動局6の位置により異なる値をとる。しかしながら、伝搬遅延推定部35は、各セルで想定されるセル半径などの情報を用いることで、距離R1,R2の取り得る値の範囲を推定することができる。伝搬遅延推定部35は、推定した距離R1,R2の取り得る値に対して電波の伝搬速度を除算することで、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の取り得る値の範囲を推定できることから、想定される移動範囲の中で空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の値の組み合わせを推定する。また、伝搬遅延推定部35は、移動局6の位置が複数想定される場合、想定される各位置において空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2を推定する。
巡回遅延時間選択部36は、通信安定遅延時間記憶部32が記憶する通信安定遅延時間τr、通信パラメータ記憶部33が記憶する巡回周期Nなどの通信パラメータ、および伝搬遅延推定部35において推定された有線伝搬遅延時間ΔTA、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の値を用いて、式(1)〜(3)の計算を行う。そして、巡回遅延時間選択部36は、式(3)の計算結果、すなわち遅延時間差の絶対値が図5で示した通信品質安定領域の範囲に収まるように、巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間τを選択する。巡回遅延時間選択部36において遅延時間差の絶対値が通信品質安定領域の範囲に収まるように巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間τを選択することで、無線通信システム10では、安定した通信品質を得ることができる。巡回遅延時間選択部36は、選択した巡回遅延時間τを路側機4へ出力する。なお、巡回遅延時間選択部36は、移動局6は各セル内を移動することから、想定される移動範囲の中で空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の値の組み合わせを変えた場合においても式(1)〜(3)の計算を行い、式(3)の計算結果が図5で示した通信品質安定領域の範囲に収まるように、巡回遅延時間τの値を選択するものとする。巡回遅延時間選択部36は、伝搬遅延推定部35において推定された複数の位置における空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2を用いて、各位置において安定した通信品質が得られるように巡回遅延時間τの値を選択する。
図1に示すように、路側機4は、送信信号生成部41と、巡回遅延時間付加部42と、を備える。路側機4は、巡回遅延無設定アンテナ71および延長型巡回遅延設定アンテナ72から各セル内へ信号を送信する。
送信信号生成部41は、送信データをOFDM変調することにより各セル内の移動局6へ送信する信号を生成する。送信信号生成部41は、生成した信号を、巡回遅延無設定アンテナ71および巡回遅延時間付加部42へ出力する。なお、図1では、路側機4において、送信信号生成部41で生成されて出力された1つの信号を分岐して、分岐後の一方の信号を巡回遅延無設定アンテナ71へ出力し、分岐後の他方の信号を巡回遅延時間付加部42へ出力しているが、これに限定するものではない。送信信号生成部41は、同一の信号を2つ生成し、一方の信号を巡回遅延無設定アンテナ71へ出力し、他方の信号を巡回遅延時間付加部42へ出力してもよい。以降の実施の形態についても同様とする。
巡回遅延時間付加部42は、送信信号生成部41より入力された信号に対して、巡回遅延時間選択部36より入力された巡回遅延時間τを付加、すなわち巡回遅延時間τによる巡回遅延を与える。巡回遅延時間付加部42は、巡回遅延時間τの付加において、具体的には、巡回シフトの考え方に基づいて、巡回遅延時間τの遅延時間分だけ遅延させた後方のサンプル部分をデータフレームの前方へ複製する形で、送信する信号に対して巡回遅延時間τを付加する。巡回遅延時間付加部42は、巡回遅延時間τを付加後の信号を延長型巡回遅延設定アンテナ72へ出力する。
なお、路側機4では、送信信号生成部41から巡回遅延無設定アンテナ71への信号、および、巡回遅延時間付加部42から延長型巡回遅延設定アンテナ72への信号に対して、実際にはディジタル−アナログ変換処理、RF(Radio Frequency)周波数への周波数変換処理、増幅処理などのアナログ処理を行った後に出力しているが、一般的な処理のため記載を省略する。
そして、路側機4は、送信信号生成部41から出力された信号を、巡回遅延無設定アンテナ71からセル1内の移動局6へ送信する。また、路側機4は、ブランチ5経由で、巡回遅延時間τが付加されて巡回遅延時間付加部42から出力された信号を、延長型巡回遅延設定アンテナ72からセル2内の移動局6へ送信する。
路側機4から各セル内へ信号を送信するまでの制御装置3および路側機4の動作を、フローチャートを用いて説明する。図6は、実施の形態1にかかる制御装置3の動作を示すフローチャートである。まず、制御装置3の伝搬遅延推定部35は、アンテナ設置情報記憶部34において記憶されている路側機4からブランチ5へ接続している長距離ケーブルの長さの情報を用いて、有線伝搬遅延時間ΔTAを推定する(ステップS1)。また、伝搬遅延推定部35は、アンテナ設置情報記憶部34において記憶されている巡回遅延無設定アンテナ71と延長型巡回遅延設定アンテナ72との間のアンテナ設置間隔、各セルで想定するセル半径、道路形状についての情報などの情報を用いて、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2を推定する(ステップS2)。
つぎに、巡回遅延時間選択部36は、通信安定遅延時間記憶部32において記憶されている通信安定遅延時間τr、通信パラメータ記憶部33において記憶されている巡回周期Nなどの通信パラメータ、および伝搬遅延推定部35において推定された有線伝搬遅延時間ΔTA、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の値を用いて、式(1)、(2)より移動局6で受信される各アンテナからの信号の遅延時間TANT1,TANT2を算出する(ステップS3)。巡回遅延時間選択部36は、算出した遅延時間TANT1,TANT2を用いて、式(3)より移動局6における各アンテナからの信号の遅延時間の遅延時間差の絶対値を算出する(ステップS4)。そして、巡回遅延時間選択部36は、算出した遅延時間差の絶対値に基づいて、巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間τを選択する(ステップS5)。
図7は、実施の形態1にかかる路側機4の動作を示すフローチャートである。まず、路側機4の送信信号生成部41は、送信データをOFDM変調して各セル内へ送信する信号を生成する(ステップS11)。路側機4では、送信信号生成部41から出力された信号に対してアナログ処理を行い、巡回遅延無設定アンテナ71経由でセル1へ信号を送信する(ステップS12)。
路側機4では、巡回遅延時間付加部42が、送信信号生成部41から出力された信号に対して、制御装置3の巡回遅延時間選択部36において選択された巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間τを付加する(ステップS13)。路側機4では、巡回遅延時間τが付加された信号に対してアナログ処理を行い、ブランチ5に設置された延長型巡回遅延設定アンテナ72経由でセル2へ信号を送信する(ステップS14)。
つづいて、制御装置3のハードウェア構成について説明する。制御装置3において、記憶部31、すなわち、通信安定遅延時間記憶部32、通信パラメータ記憶部33、およびアンテナ設置情報記憶部34はメモリにより実現される。伝搬遅延推定部35および巡回遅延時間選択部36の各機能は、処理回路により実現される。すなわち、制御装置3は、有線伝搬遅延時間ΔTAおよび空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2を推定し、移動局6における各アンテナから受信される信号の遅延時間TANT1,TANT2および遅延時間の遅延時間差の絶対値を算出し、巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間τを選択するための処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)およびメモリであってもよい。
図8は、実施の形態1にかかる制御装置3の処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の例を示す図である。処理回路が専用のハードウェアである場合、図8に示す処理回路91は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。伝搬遅延推定部35および巡回遅延時間選択部36の各部の機能各々を処理回路91で実現してもよいし、各部の機能をまとめて処理回路91で実現してもよい。
図9は、実施の形態1にかかる制御装置3の処理回路をCPUおよびメモリで構成する場合の例を示す図である。処理回路がCPU92およびメモリ93で構成される場合、伝搬遅延推定部35および巡回遅延時間選択部36の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ93に格納される。処理回路では、メモリ93に記憶されたプログラムをCPU92が読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、制御装置3は、処理回路により実行されるときに、有線伝搬遅延時間ΔTAを推定するステップ、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2を推定するステップ、移動局6における各アンテナから受信される信号の遅延時間TANT1,TANT2を算出するステップ、遅延時間の遅延時間差の絶対値を算出するステップ、巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間τを選択するステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ93を備える。また、これらのプログラムは、伝搬遅延推定部35および巡回遅延時間選択部36の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、CPU92は、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。また、メモリ93とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。なお、記憶部31、すなわち、通信安定遅延時間記憶部32、通信パラメータ記憶部33、およびアンテナ設置情報記憶部34を実現するメモリを、メモリ93としてもよい。
なお、伝搬遅延推定部35および巡回遅延時間選択部36の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、伝搬遅延推定部35については専用のハードウェアとしての処理回路91でその機能を実現し、巡回遅延時間選択部36についてはCPU92がメモリ93に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
なお、制御装置3の構成について説明したが、路側機4の構成についても同様である。路側機4において、送信信号生成部41および巡回遅延時間付加部42については、図8および図9に示す構成により実現される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、無線通信システム10において、制御装置3では、路側機4からブランチ5への間の長距離のケーブル延長による有線伝搬遅延時間、および路側機4およびブランチ5の各アンテナから移動局6への伝搬における空間伝搬遅延時間が大きくなる場合、各伝搬遅延時間の値を推定し、さらに巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延が有する特徴を考慮して巡回遅延時間を設定することとした。これにより、無線通信システム10では、路側機4において巡回遅延ダイバーシチを行うための2本のアンテナのうち、1本のアンテナについて同軸ケーブルまたは光ケーブルなどで長距離の延長を行うことにより隣接するセル2を形成する場合においても、安定した巡回遅延ダイバーシチ効果を得ることができる。
なお、本実施の形態では、説明を簡略化するため、式(1)〜(3)において移動局6の移動経路が直線、かつ路側機4は移動経路沿いに直線上に設置され、さらに全てのアンテナの高さが同一であるものと仮定したが、各アンテナの設置条件によっては、その設置条件に合わせる形で式(1)〜(3)に変更を加えてもよい。また、有線伝搬遅延時間、空間伝搬遅延時間の算出にあたり、距離差が小さい部分については近似を行って説明したが、近似は行わずに厳密に遅延時間として考慮する形であってもよい。
実施の形態2.
図10は、実施の形態2にかかる制御装置3および路側機4を備える無線通信システム10において4本のアンテナを備える場合の構成例を示す図である。制御装置3および路側機4の構成は、図1に示す実施の形態1と同様である。実施の形態2では、無線通信システム10において、巡回遅延無設定アンテナ81、延長型巡回遅延無設定アンテナ82、巡回遅延設定アンテナ83、および延長型巡回遅延設定アンテナ84の4本のアンテナを用いて巡回遅延ダイバーシチにより信号を送信する場合について説明する。
図11は、実施の形態2にかかる路側機4、ブランチ5、および移動局6の位置関係の例を示す図である。制御装置3と接続する路側機4は、巡回遅延無設定アンテナ81および巡回遅延設定アンテナ83を用いて、路側機4の通信エリアであるセル1の範囲で信号を送信する。また、路側機4は、ブランチ5経由で、路側機4から同軸ケーブルまたは光ケーブルなどによってケーブル長が延長された延長型巡回遅延無設定アンテナ82および延長型巡回遅延設定アンテナ84を用いて、ブランチ5の通信エリアであるセル2の範囲で信号を送信する。移動局6は、セル1内では巡回遅延無設定アンテナ81および巡回遅延設定アンテナ83から送信された信号を受信し、セル2内では延長型巡回遅延無設定アンテナ82および延長型巡回遅延設定アンテナ84から送信された信号を受信する。移動局6は、セル1とセル2が重複するセル1およびセル2の境界付近では、巡回遅延無設定アンテナ81、延長型巡回遅延無設定アンテナ82、巡回遅延設定アンテナ83、および延長型巡回遅延設定アンテナ84から送信された信号を受信することができる。
図11に示す位置に移動局6がある場合に、セル1において巡回遅延無設定アンテナ81および巡回遅延設定アンテナ83から移動局6までの空間伝搬距離を距離R1、巡回遅延無設定アンテナ81および巡回遅延設定アンテナ83から信号が送信されて距離R1において移動局6で信号を受信するまでの無線区間における信号の遅延時間である空間伝搬遅延時間をΔTB1と仮定する。また、セル2において延長型巡回遅延無設定アンテナ82および延長型巡回遅延設定アンテナ84から移動局6までの空間伝搬距離を距離R2、延長型巡回遅延無設定アンテナ82および延長型巡回遅延設定アンテナ84から信号が送信されて距離R2において移動局6で信号を受信するまでの無線区間における信号の遅延時間である空間伝搬遅延時間をΔTB2と仮定する。
また、路側機4からブランチ5までの長距離のケーブル伝送を行うことで、巡回遅延無設定アンテナ81から送信される信号に対して延長型巡回遅延無設定アンテナ82から送信される信号で発生する有線区間における遅延時間である有線伝搬遅延時間をΔTA1と仮定する。また、路側機4からブランチ5までの長距離のケーブル伝送を行うことで、巡回遅延設定アンテナ83から送信される信号に対して、延長型巡回遅延設定アンテナ84から送信される信号で発生する有線区間における遅延時間である有線伝搬遅延時間をΔTA2と仮定する。路側機4の巡回遅延無設定アンテナ81および巡回遅延設定アンテナ83における有線伝搬遅延時間は極めて小さいものと仮定して、ここでは有線伝搬遅延時間をゼロに設定する。なお、図11では、距離R1は厳密には巡回遅延無設定アンテナ81および巡回遅延設定アンテナ83と移動局6との間を示していないが、便宜上、路側機4の中心と移動局6の中心との間の距離を距離R1とする。同様に、ブランチ5の中心と移動局6の中心との間の距離を距離R2とする。
セル1における路側機4の巡回遅延無設定アンテナ81および巡回遅延設定アンテナ83の各アンテナと移動局6との間の距離は厳密には異なるため、空間伝搬距離および空間伝搬遅延時間もアンテナ毎に異なるが、ここでは説明の簡略化のため各アンテナで同一と仮定する。同様に、セル2におけるブランチ5の延長型巡回遅延無設定アンテナ82および延長型巡回遅延設定アンテナ84の各アンテナと移動局6との間の距離は厳密には異なるため、空間伝搬距離および空間伝搬遅延時間もアンテナ毎に異なるが、ここでは説明の簡略化のため各アンテナで同一と仮定する。
実施の形態1と同様、図11において、移動局6は各セル内を移動することから、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2は、移動局6の位置により異なる値をとる。しかしながら、制御装置3では、各セルで想定されるセル半径などの情報を用いることで、距離R1,R2の取り得る値の範囲を推定することができる。制御装置3では、推定した距離R1,R2の取り得る値に対して電波の伝搬速度を除算することで、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の取り得る値の範囲を推定することができる。
また、巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間は、後述するように、セル1の巡回遅延設定アンテナ83およびセル2の延長型巡回遅延設定アンテナ84から送信される信号に付加される。巡回遅延設定アンテナ83および延長型巡回遅延設定アンテナ84から送信される信号に付加される巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間をτと仮定する。τは巡回遅延時間であることから、巡回周期をNサンプルとした場合、0〜(N−1)の範囲の整数値で設定される。1サンプルの時間長をTsampと仮定すると、巡回遅延時間の時間長を「τ×Tsamp」に換算することができる。
ここで、巡回遅延無設定アンテナ81から送信される信号が移動局6で受信されるときの信号の遅延時間をTANT11、巡回遅延設定アンテナ83から送信される信号が移動局6で受信されるときの信号の遅延時間をTANT12、延長型巡回遅延無設定アンテナ82から送信される信号が移動局6で受信されるときの信号の遅延時間をTANT21、延長型巡回遅延設定アンテナ84から送信される信号が移動局6で受信されるときの信号の遅延時間をTANT22とすると、各々以下の式(4)〜(7)のように計算することができる。なお、これらの式においては、説明を簡略化するために、移動局6の移動経路が直線で、かつ路側機4は移動経路沿いに直線上に設置されており、さらに全てのアンテナの高さが同一であるものと仮定している。
TANT11=ΔTB1 …(4)
TANT12=τ×Tsamp+ΔTB1 …(5)
TANT21=ΔTA1+ΔTB2 …(6)
TANT22=τ×Tsamp+ΔTA2+ΔTB2 …(7)
従って、図5で横軸に示す遅延時間差の絶対値は、以下の式(8)〜(13)のように計算することができる。
|TANT11−TANT12|=|ΔTB1−(τ×Tsamp+ΔTB1)|=τ×Tsamp …(8)
|TANT11−TANT21|=|ΔTB1−(ΔTA1+ΔTB2)| …(9)
|TANT11−TANT22|=|ΔTB1−(τ×Tsamp+ΔTA2+ΔTB2)| …(10)
|TANT12−TANT21|=|τ×Tsamp+ΔTB1−(ΔTA1+ΔTB2)| …(11)
|TANT12−TANT22|=|τ×Tsamp+ΔTB1−(τ×Tsamp+ΔTA2+ΔTB2)|=|ΔTB1−(ΔTA2+ΔTB2)| …(12)
|TANT21−TAN22|=|ΔTA1+ΔTB2−(τ×Tsamp+ΔTA2+ΔTB2)|=|ΔTA1−(τ×Tsamp+ΔTA2)| …(13)
制御装置3は、想定する移動局6の移動範囲の中で取り得る空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の各組み合わせにおいて、式(8)〜(13)の計算結果が図5で示した通信品質安定領域に収まるように巡回遅延時間τの値を選択する。これにより、無線通信システム10では、移動局6において、各セルの通信エリアで巡回遅延ダイバーシチの効果を最大限に得ることができる。
つづいて、図10および図11に示す無線通信システム10を構成する制御装置3および路側機4において、移動局6で巡回遅延ダイバーシチの効果が最大限に得られるようにするための動作について説明する。実施の形態1と異なる部分について説明する。
制御装置3において、アンテナ設置情報記憶部34は、巡回遅延無設定アンテナ81、延長型巡回遅延無設定アンテナ82、巡回遅延設定アンテナ83、および延長型巡回遅延設定アンテナ84の各アンテナについての設置情報を記憶する。アンテナ設置情報記憶部34は、具体的に、巡回遅延無設定アンテナ81と延長型巡回遅延無設定アンテナ82との間のアンテナ設置間隔、巡回遅延設定アンテナ83と延長型巡回遅延設定アンテナ84との間のアンテナ設置間隔、各アンテナの高さ、路側機4からブランチ5への各長距離ケーブルの長さ、各セルで想定されるセル半径、道路形状についての情報、例えば、直線か曲線かの情報、曲線の場合には曲率半径などの情報を記憶する。
伝搬遅延推定部35は、アンテナ設置情報記憶部34が記憶する情報を用いて、有線伝搬遅延時間ΔTA1,ΔTA2、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の値を推定する。このとき、移動局6は各セル内を移動することから、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2は、移動局6の位置により異なる値をとる。しかしながら、伝搬遅延推定部35は、各セルで想定されるセル半径などの情報を用いることで、距離R1,R2の取り得る値の範囲を推定することができる。伝搬遅延推定部35は、推定した距離R1,R2の取り得る値に対して電波の伝搬速度を除算することで、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の取り得る値の範囲を推定できることから、想定される移動範囲の中で空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の値の組み合わせを推定する。
巡回遅延時間選択部36は、通信安定遅延時間記憶部32が記憶する通信安定遅延時間τr、通信パラメータ記憶部33が記憶する巡回周期Nなどの通信パラメータ、および伝搬遅延推定部35において推定された有線伝搬遅延時間ΔTA1,ΔTA2、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の値を用いて、式(4)〜(13)の計算を行う。そして、巡回遅延時間選択部36は、式(8)〜(13)の計算結果、すなわち遅延時間差の絶対値が図5で示した通信品質安定領域の範囲に収まるように、巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延時間τを選択する。なお、移動局6は各セル内を移動することから、想定される移動範囲の中で空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の値の組み合わせを変えた場合においても式(4)〜(13)の計算を行い、式(8)〜(13)の計算結果が図5で示した通信品質安定領域の範囲に収まるように、巡回遅延時間τの値を選択するものとする。
路側機4における送信信号生成部41および巡回遅延時間付加部42の動作は実施の形態1と同様である。なお、路側機4では、送信信号生成部41から巡回遅延無設定アンテナ81および延長型巡回遅延無設定アンテナ82への信号、および、巡回遅延時間付加部42から巡回遅延設定アンテナ83および延長型巡回遅延設定アンテナ84への信号に対して、実際にはディジタル−アナログ変換処理、RF(Radio Frequency)周波数への周波数変換処理、増幅処理などのアナログ処理を行った後に出力しているが、一般的な処理のため記載を省略する。
そして、路側機4は、送信信号生成部41から出力された信号を、巡回遅延無設定アンテナ81からセル1内の移動局6へ送信し、巡回遅延時間τが付加されて巡回遅延時間付加部42から出力された信号を、巡回遅延設定アンテナ83からセル1内の移動局6へ送信する。また、路側機4は、ブランチ5経由で、送信信号生成部41から出力された信号を、延長型巡回遅延無設定アンテナ82からセル2内の移動局6へ送信し、巡回遅延時間τが付加されて巡回遅延時間付加部42から出力された信号を、延長型巡回遅延設定アンテナ84からセル2内の移動局6へ送信する。
路側機4から移動局6へ信号を送信するまでの制御装置3および路側機4の動作は、実施の形態1で説明したフローチャートと同様である。実施の形態2では、制御装置3の伝搬遅延推定部35は、図6のステップS1において、アンテナ設置情報記憶部34において記憶されている路側機4からブランチ5へ接続している長距離ケーブルの長さの情報を用いて、有線伝搬遅延時間ΔTA1,ΔTA2を推定する。また、巡回遅延時間選択部36は、図6のステップS3において、通信安定遅延時間記憶部32において記憶されている通信安定遅延時間τr、通信パラメータ記憶部33において記憶されている巡回周期Nなどの通信パラメータ、および伝搬遅延推定部35において推定された有線伝搬遅延時間ΔTA1,ΔTA2、空間伝搬遅延時間ΔTB1,ΔTB2の値を用いて、式(4)〜(7)より移動局6で受信される各アンテナからの信号の遅延時間TANT11,TANT12,TANT21,TANT22を算出する。また、巡回遅延時間選択部36は、図6のステップS4において、算出した遅延時間TANT11,TANT12,TANT21,TANT22を用いて、式(8)〜(13)より移動局6における各アンテナからの信号の遅延時間の遅延時間差の絶対値を算出する。
また、実施の形態2では、図7のステップS12において、路側機4は、送信信号生成部41から出力された信号に対してアナログ処理を行い、巡回遅延無設定アンテナ81経由でセル1へ信号を送信する。路側機4は、送信信号生成部41から出力された信号に対してアナログ処理を行い、ブランチ5に設置された延長型巡回遅延無設定アンテナ82経由でセル2へ信号を送信する。また、図7のステップS14において、路側機4は、巡回遅延時間τが付加された信号に対してアナログ処理を行い、巡回遅延設定アンテナ83経由でセル1へ信号を送信する。路側機4は、巡回遅延時間τが付加された信号に対してアナログ処理を行い、ブランチ5に設置された延長型巡回遅延設定アンテナ84経由でセル2へ信号を送信する。
なお、式(8)〜(13)における遅延時間差の絶対値の計算式において、巡回遅延時間τを含まないアンテナの組み合わせがある。具体的には、巡回遅延無設定アンテナ81および延長型巡回遅延無設定アンテナ82における遅延時間差の絶対値の計算の式(9)、および、巡回遅延設定アンテナ83および延長型巡回遅延設定アンテナ84における遅延時間差の絶対値の計算の式(12)である。式(9)はいずれのアンテナにも巡回遅延時間τが付加されない場合、式(12)はいずれのアンテナにも巡回遅延時間τが付加される場合を示している。このようなアンテナの組み合わせについては、有線伝搬遅延時間および空間伝搬遅延時間を用いて、すなわち、両アンテナのアンテナ設置間隔または長距離伝送に使用するケーブルの長さなどのアンテナ設置方法を調節することにより、両アンテナ間において適切な遅延時間差になるように調節するようにしてもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、無線通信システム10において、制御装置3では、路側機4からブランチ5への間の長距離のケーブル延長による有線伝搬遅延時間、および路側機4およびブランチ5の各アンテナから移動局6への伝搬における空間伝搬遅延時間が大きく、かつ路側機4およびブランチ5において複数のアンテナを備える場合、各伝搬遅延時間の値を推定し、さらに巡回遅延ダイバーシチの巡回遅延が有する特徴を考慮して巡回遅延時間を設定することとした。これにより、無線通信システム10では、路側機4およびブランチ5において複数のアンテナを備える場合においても、実施の形態1と同様に、安定した巡回遅延ダイバーシチ効果を得ることができる。
なお、本実施の形態では、説明を簡略化するため、式(4)〜(13)において移動局6の移動経路が直線、かつ路側機4はその移動経路沿いに直線上に設置され、さらに全てのアンテナの高さが同一であるものと仮定したが、各アンテナの設置条件によっては、その設置条件に合わせる形で式(4)〜(13)に変更を加えてもよい。また、有線伝搬遅延時間、空間伝搬遅延時間の算出にあたり、距離差が小さい部分については近似を行って説明したが、近似は行わずに厳密に遅延時間として考慮する形であってもよい。
また、本実施の形態では、説明を簡略化するために、路側機4のアンテナ数を2本とし、各アンテナへの信号線を分岐してブランチ5までケーブルで延長し、ブランチ5から2本のアンテナを用いてセル1に隣接するセル2を形成する場合について説明した。しかしながら、さらに、路側機4において各アンテナへの信号線を3つ以上に分岐して2以上のブランチ5を用いて複数のセルを形成するようにしてもよい。図12は、実施の形態2にかかる制御装置3および路側機4を備える無線通信システム10において6本のアンテナを備える場合の構成例を示す図である。無線通信システム10では、例えば、延長型巡回遅延無設定アンテナの信号線を分岐して2本の延長型巡回遅延無設定アンテナ82a,82bを備え、延長型巡回遅延設定アンテナの信号を分岐して2本の延長型巡回遅延設定アンテナ84a,84bを備えることで、巡回遅延無設定アンテナ81および巡回遅延設定アンテナ83と合わせて合計6本のアンテナにすることができる。巡回遅延時間選択部36では、6本のうち2本のアンテナの組み合わせ、すなわち合計15通りのアンテナの組み合わせについて、式(4)〜(13)と同様の方法により遅延時間および遅延時間差の絶対値を算出し、各計算結果を用いて各アンテナに適切な巡回遅延時間τを設定することができる。
実施の形態3.
実施の形態2では、実施の形態1に対して、路側機4の送信信号生成部41および巡回遅延時間付加部42からの信号を各々分岐して各々2本のアンテナ、すなわち合計4本のアンテナを用いて信号を送信していた。路側機4では、送信信号生成部41または巡回遅延時間付加部42の一方からの信号のみを分岐して合計3本のアンテナを用いて信号を送信するようにしてもよい。
図13は、実施の形態3にかかる制御装置3および路側機4を備える無線通信システム10において3本のアンテナを備える構成例を示す図である。制御装置3および路側機4の構成は、図1に示す実施の形態1と同様である。図13では、巡回遅延時間付加部42からの信号を分岐しており、無線通信システム10において、巡回遅延無設定アンテナ101、巡回遅延設定アンテナ102、および延長型巡回遅延設定アンテナ103の3本のアンテナを用いて巡回遅延ダイバーシチにより信号を送信する場合の例を示している。
図13において、路側機4が、送信信号生成部41から巡回遅延無設定アンテナ101経由でセル1へ信号を送信する動作は、実施の形態1において送信信号生成部41から巡回遅延無設定アンテナ71経由でセル1へ信号を送信する動作と同じである。また、路側機4が、巡回遅延時間付加部42から巡回遅延設定アンテナ102経由でセル1へ信号を送信する動作および延長型巡回遅延設定アンテナ103経由でセル2へ信号を送信する動作は、実施の形態2において巡回遅延時間付加部42から巡回遅延設定アンテナ83経由でセル1へ信号を送信する動作および延長型巡回遅延設定アンテナ84経由でセル2へ信号を送信する動作と同じである。
図14は、実施の形態3にかかる制御装置3および路側機4を備える無線通信システム10において3本のアンテナを備える他の構成例を示す図である。制御装置3および路側機4の構成は、図1に示す実施の形態1と同様である。図14では、送信信号生成部41からの信号を分岐しており、無線通信システム10において、巡回遅延無設定アンテナ111、延長型巡回遅延無設定アンテナ112、および延長型巡回遅延設定アンテナ113の3本のアンテナを用いて巡回遅延ダイバーシチにより信号を送信する場合の例を示している。
図14において、路側機4が、送信信号生成部41から巡回遅延無設定アンテナ111経由でセル1へ信号を送信する動作および延長型巡回遅延無設定アンテナ112経由でセル2へ信号を送信する動作は、実施の形態2において送信信号生成部41から巡回遅延無設定アンテナ81経由でセル1へ信号を送信する動作および延長型巡回遅延無設定アンテナ82経由でセル2へ信号を送信する動作と同じである。また、路側機4が、巡回遅延時間付加部42から延長型巡回遅延設定アンテナ113経由でセル2へ信号を送信する動作は、実施の形態1において巡回遅延時間付加部42から延長型巡回遅延設定アンテナ72経由でセル2へ信号を送信する動作と同じである。
制御装置3の巡回遅延時間選択部36では、図13に示す構成または図14に示す構成において、式(4)〜(7)のうち該当する式を用いて遅延時間を算出し、式(8)〜(13)のうち該当する式を用いて遅延時間差の絶対値を算出する。
このように、無線通信システム10では、路側機4において送信信号生成部41または巡回遅延時間付加部42のいずれか一方からの信号のみを分岐した場合においても、実施の形態1および2と同様に、安定した巡回遅延ダイバーシチ効果を得ることができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。