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JP6003018B2 - 肝保護剤、医薬組成物、および細胞等保護用組成物 - Google Patents

肝保護剤、医薬組成物、および細胞等保護用組成物 Download PDF

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Description

本発明は肝保護剤、医薬組成物、および細胞等保護用組成物に係り、特に、食経験のある食品由来の肝保護効果の得られる、実用性の高い肝保護剤等に関する。
肝臓は、栄養物の代謝やエネルギー源であるグリコーゲンの貯蔵、さらには薬物・ホルモン・毒物などの有害物質の分解・無毒化などを行う重要な臓器であるが、通常有害物質の分解・無毒化は、肝細胞に含まれるさまざまな酵素が担っている。たとえば、グルタチオントランスフェラーゼやチトクロームP450などにより酸化、還元、抱合などが行われ代謝される。しかし、肝臓に直接的な障害を与え得る物質を摂取した場合や代謝過程において有害物質が産生された場合、あるいは代謝産物が排出されずに肝臓内に蓄積された場合等においては、これらの物質により肝細胞の壊死や肝線維化が引き起こされる場合がある。このような肝障害の代表例としては、アルコール性肝硬変やウイルス性肝炎などがあげられる。
肝障害の治療に用いられる医療用製剤としては、肝臓水解物、インターフェロンなどの生物学的製剤、マロチラート、グルタチオン、グリチルリチンなどの化学療法剤などがあげられるが、これらにはいずれも種々の問題点がある。たとえばインターフェロンは、ウイルス性肝炎の治療に特に多用されるが、副作用として精神障害、間質性肺炎、血小板や白血球の減少などが報告されている。化学療法剤であるグリチルリチン製剤は、副腎皮質ステロイドと類似した投薬中止後のリバウンド現象を引き起こす場合のあることが報告されている。また、小柴胡湯などの漢方製剤も肝障害の治療のために使用されることがあるが、小柴胡湯を抗癌剤と併用した場合、または肝癌患者に使用した場合には、間質性肺炎の発症やそれが原因とされる死亡例が報告されており、小柴胡湯の使用が制限されている。
このような状況下、医療用製剤や漢方製剤に比べて副作用が少ない生物由来の素材またはその抽出物の肝保護効果が検討されている。肝保護効果を有する生物由来の素材としては、ウコン、リンデン、シジミなどがあげられるが、特にシジミは我が国において、昔から強肝食として親しまれ、利用されてきた素材である。シジミ貝 ( 蜆貝 ) は軟体動物・シジミ科に属す二枚貝であり、湖沼や川の中流以上の純淡水帯に全国的に生息するマシジミ、十三湖(青森県)・宍道湖(鳥取県)・涸沼湖(茨城県)など海水の入り交じる河口附近の汽水域に生息するヤマトシジミ、そして琵琶湖水系のセタシジミの三種が、日本種として知られている。
近年、シジミエキスの有効成分に関する研究が進展しており、その成分の解明も進んでいる。シジミエキスには、特にビタミンB12等の各種ビタミン類を初めとして、重要な生理活性を示す有用成分が含まれている。たとえば、脂質代謝改善作用をもつα、β−不飽和脂肪酸、尿素サイクルを活性化させ肝機能を改善する作用や成長ホルモン分泌促進作用によるダイエット作用を有するオルニチンやメチオニン、シスチン等のアミノ酸が含まれている。本願発明者等は、従来からシジミエキスに関する研究を続けてきているが、シジミエキスの有用成分の中でも近年特に注目されているのが、オルニチンである。本願発明者等は、この有用なオルニチンのシジミ生体内における含有量を増大化させる方法について、既に開示している(特許文献1、2)。
また本願発明者等は、オルニチン含有量の増大化メカニズムの解明を検討する過程で、N末端からβアラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合した新規な有用物質であるトリペプチド(以下、「該トリペプチド」ともいう。)を発見し、シジミエキスから該トリペプチドを製造する方法および化学合成により該トリペプチドを製造する方法を編み出し、これについても既に開示している(特許文献3)。さらに、酵素を用いて該トリペプチドを製造する方法(特許文献4)、該トリペプチドの機能性を利用した蛋白質安定化方法およびその作用を利用したイムノクロマト法についても、既に開示している(特許文献5、6)。
特許第3573676号 特許第3848986号 特許第4470152号 特開2008−72965 特許第4586181号 特開2008−189613
さて、該トリペプチドはシジミエキスに含有されている物質であるため、シジミエキスそのものを効果のある肝保護剤として利用することができるのであれば、それに越したことはない。しかし、実際上それは不可能であり、産業上の利用可能性がない。その理由を述べる。
第一に、該トリペプチドのシジミエキスにおける含有量は保存方法や季節等によって大きく変動する(下記参考文献1)ことから、シジミエキスの製造ロットごとに該トリペプチド含量を測定(定量)しないことには、該トリペプチドの一定量を製剤化したり、あるいは食品に含有させたりすることができない。該トリペプチドの定量には、高速液体クロマトグラフィ等による分析作業を行う必要があり、これには相当の手間と労力を要することから、製造ロットごとの管理は非常に困難、実際上は不可能であり、全く実用性がない。
(参考文献1 A nobel ornitihe−containing tripeputidde isolated from the extract of the brackish−water bivalve Corbicula japonica, Biochimica et Biophysica Acta, Vol.1770,pp.790−796(2007))
第二に、該トリペプチドはシジミエキス粉末に約0.5〜1%程度しか含まれていないが、該トリペプチドを肝保護剤として有効に使用するには、それ相応の分量が必要となる。たとえば、10mgの該トリペプチドを含有させた肝保護剤をシジミエキスそのものによって製造しようとすれば、シジミエキスが約1〜2gも必要となる。この場合、1錠に1gものエキス量を用いることは通常不可能であることから、5錠〜10錠以上に分けなければならなくなる。賦形剤等他の補助剤との混合を考えると、このことは、製剤上大きなマイナス要因となり、実用性が極めて乏しい。
第三に、当然のことながらシジミエキスそのものを医薬品として用いることはできない。さらに言えば、医薬品として製剤化するに当たっては、シジミエキスに含まれる該トリペプチド以外の成分である糖質やタンパク質等の影響を考慮することも必要であり、全く実用性がない。したがって、医薬品製造において単一成分である該トリペプチドを用いることのメリットは、非常に大きい。たとえば、シジミエキスそのものを静脈注射することは不可能であるが、該トリペプチドであれば可能である。また、各種飲食物を製造する場合においても全く同様のことが言える。すなわち、機能性が期待される一定の含有量を保証した医薬品や飲食物の製造においては、シジミエキスそのものを利用することは実際上不可能である。
本発明の課題はかかる従来技術の状況を踏まえ、食経験のある食品由来の肝保護効果を有する肝保護剤を提供すること、しかも十分に実用性を備えた肝保護剤やそれを用いた医薬品等を提供することである。
本願発明者は上記課題について検討した結果、上述のとおり既に開示したN末端からβアラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合した新規な有用物質であるトリペプチド(該トリペプチド)が、これまで知られていなかった生理活性を有することを実験動物および幹細胞由来肝組織を用いた実験によって明らかにし、このことに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
(1) 下記式で表わされるN末端からβ−アラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合したトリペプチドを主成分とし、該トリペプチドは、所定条件にてマウスに投与した場合に下記(A1)〜(D)の少なくともいずれかであることを特徴とする、肝保護剤。
(A1) 生理食塩水投与と比較して、肝障害マーカーASTレベルが低下する。
(A2) 生理食塩水投与と比較して、肝障害マーカーALTレベルが低下する。
(B) 肝臓組織標本中の脂肪球が認められない。
(C) 生理食塩水投与と比較して、WST−8を用いた細胞内ミトコンドリア活性の低下が認められない。
(D) 生理食塩水投与と比較して、スポットケムを用いた細胞内LDHのリリース量増加が抑制される。
(2) 前記トリペプチドの医薬的または食品的に許容される塩を主成分とすることを特徴とする、(1)に記載の肝保護剤。
(3) (1)または(2)に記載の肝保護剤を含有することを特徴とする、肝保護用の医薬組成物。
(4) 哺乳類の肝疾患治療方法に用いられることを特徴とする、請求項3に記載の医薬組成物。
(5) (1)または(2)に記載の肝保護剤を含有することを特徴とする、食品。
(6) (1)または(2)に記載の肝保護剤を用いることを特徴とする、細胞、人工組織または臓器の保護方法。
(7) (1)または(2)に記載の肝保護剤を含有することを特徴とする、細胞、肝臓に係る人工組織、または肝臓保護用の組成物。
すなわち本発明は、N末端からβ−アラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合した新規トリペプチドまたはその化合物を主成分とする肝保護剤、医薬組成物、および細胞等保護用組成物を提供するものであり、また、細胞等の保護方法をも提供するものである。
本発明の肝保護剤やそれを用いた医薬品・食品等は上述のように構成されるため、これによれば、食経験のある食品由来の物質を用いて、十分な肝保護効果を得ることができる。さらに本発明は、シジミエキスそのものではなく該トリペプチドを用いるものであるが故に、実用性のある、しかも実用性が十分に高い肝保護剤やそれを用いた医薬品・食品等を実現することができる。
つまり、保存方法や季節等による含有量変動の大きいシジミエキスをそのまま用いる場合と比べて、製造ロットごとに該トリペプチド含量を相当の手間と労力をかけて定量する必要がない。また本発明では、シジミエキス粉末の場合であれば約1%程度しか含まれていないところの該トリペプチド自体を直接用いるため、肝保護剤、医薬組成物、食品および細胞等保護用組成物を製造する上でも効率的である。
また、特に医薬品や保健機能食品、あるいはその他の食品のように、特定の成分による機能性が期待される一定の含有量を保証したものとして製剤化する場合、上述のとおりシジミエキスそのものを使用することは不可能である。しかし、単一成分である該トリペプチドを用いる本発明によれば問題なく可能である。つまり、特に医薬品等、特定の成分による機能性を担保する含有量の保証が要求される製品においては、本発明を用いなくては製造することができない。したがって、医薬品や保健機能食品の製造における本発明の意義は、非常に大きい。
実施例において、マウスにおける本発明の該トリペプチドおよびシジミエキス投与後の肝障害マーカーASTレベルの変化を示すグラフである。 実施例において、マウスにおける本発明の該トリペプチドおよびシジミエキス投与後の肝障害マーカーALTレベルの変化を示すグラフである。 実施例において、コントロール飼料(生理食塩水)投与後の肝組織標本を示す写真である。 実施例において、マウスにおけるアルコール入り飼料+生理食塩水(対照群)投与後の肝組織標本を示す写真である。 実施例において、マウスにおけるシジミエキス(試験群1)投与後の肝組織標本を示す写真である。 実施例において、マウスにおける本発明の該トリペプチド(試験群2)投与後の肝組織標本を示す写真である。 実施例において、幹細胞由来肝組織における該トリペプチドおよびシジミエキスのWST−8を用いた細胞内ミトコンドリア活性による細胞活性評価の結果を示すグラフである。 実施例において、幹細胞由来肝組織における該トリペプチドおよびシジミエキスのスポットケムを用いた細胞内LDHのリリースによる細胞障害性の結果を示すグラフである。 実施例において、幹細胞由来肝組織における該トリペプチドおよびシジミエキスの尿素合成能による肝機能評価の結果を示すグラフである。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の肝保護剤、およびそれを含有する各種の組成物は、N末端からβアラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合したトリペプチド(該トリペプチド。化学式は、前掲「化1」)を有効成分として含むものである。該トリペプチドは、既に本願発明者等が提案した方法、すなわちシジミエキスから分離精製することが可能である(特許文献3)。
シジミエキスは、シジミの種類や季節によりその成分組成が変動するものの、概ね約50%のグリコーゲンを主成分とする糖質、約35%のタンパク質、約10%の灰分、および約5%の水分からなる。その中で該トリペプチドは、分子量が317と低分子であり、かつそのシジミエキス固形分中の含有量は少量である。したがって、まず前処理として、分画分子量1,000から10,000程度の膜を用いて限外ろ過を行うことにより、高分子量の糖質やタンパク質を除去し、次いで得られた低分子画分をゲルろ過法あるいはイオン交換法などによりさらに分画することにより目的の該トリペプチドを得ることができる。また本願発明者等は、ペプチドシンセサイザ等を用いて化学的に合成する方法も提案済みであり(特許文献3)、さらに、酵素を用いた合成法によっても該トリペプチドを得ることができる(特許文献4)。
本発明に係る該トリペプチドは、医薬的あるいは食品的に許容される塩を包含する。たとえば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、マロン酸等との酸付加塩を挙げることができ、好ましくは塩酸等との塩であり、これらの塩は公知の方法により、遊離の該トリペプチドから製造でき、あるいは相互に変換することができる。
該トリペプチドまたはその化合物を含む組成物は、適当な医薬用の担体もしくは希釈剤と組み合わせて医薬とすることができ、通常の方法によって各種製剤化可能であり、経口もしくは非経口投与するための固体、半固体、液体またはエアロゾールの剤形等、あらゆる剤形に処方することができる。該トリペプチドまたはその化合物を含む組成物の性状は固体状または液体状を呈し、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、風味改善剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの常用される補助剤を加えて、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤、シロップ剤などの種々の形態で製剤化することができる。なお、処方にあたっては、本発明物質を単独で用いるか、あるいは他の医薬活性成分と適宜組み合わせて処方することとしてもよい。
該トリペプチドまたはその化合物を含む組成物を医薬品として人体に投与するときは、1回あたり体重60kgあたり0.1〜100mg(該トリペプチド重量)、好ましくは1〜50mg(該トリペプチド)を、1日に1回ないし数回に分けて経口投与するとよい。また、1日当たりの総投与量は、0.1〜100mg、好ましくは1〜50mgとすることが望ましい。
また、肝保護剤として機能することのできる該トリペプチドもしくはその化合物、またはこれらを含む組成物は、食品素材と混合して食品とすることができる。食品とする場合、これらと混合する食品素材は固形物(粉状、薄片状、塊状など)、半固形物(ゼリー状、水飴状など)、もしくは液状物等のいずれであってもよく、特に限定されない。たとえば、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、ゼリー、グミ、錠菓等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)を初めとする一般食品や、健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)具体的な食品の例として挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
また、これらの食品は、他の機能性成分と適宜組み合わせたり、種々の成分を配合したりすることも可能である。たとえば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸なども配合することができる。
本発明の食品には、肝機能を保護するための特定保健用食品および栄養機能食品を含む保健機能食品が含まれる。保健機能食品とする場合、該トリペプチドまたはその化合物を含む組成物の含有量は、1回あたり体重60kgあたり0.01〜10mg(該トリペプチド重量)、好ましくは0.1〜5mg(該トリペプチド重量)を、1日に1ないし数回摂取できるような量とすればよい。また、1日当たりの該トリペプチド総摂取量は、0.01〜10mg、好ましくは0.1〜5mgである。本発明の食品は、アルコールの量が気になる人、油っこい食事を好む人、ストレスで悩んでいる人、生活リズムが不規則な人、食生活や生活習慣病に不安を感じている人など、肝機能の維持や障害防止に配慮する必要性のある人々が用いることにより、肝保護機能を期待することができる。また本発明に係る医薬組成物は、肝疾患患者の治療用として用いて、一定の効果を得ることも可能である。
一方、少子高齢化等社会構造の変化を背景として犬・猫等のペットの飼育が増加しており、ペット産業は今後ますます成長すると考えられている。これに伴い、犬・猫等における疾病予防や治療の需要もますます増加すると見込まれるが、本発明に係る医薬組成物は、これらのペットを含む哺乳類の肝疾患治療方法にも用いて、一定の効果を得られることが期待される。
なおまた、本発明の肝保護剤は、細胞、人工組織または臓器を保護する手段としても用いることができる。また、細胞、人工組織または臓器保護するための組成物として、本発明肝保護剤を含有する組成物を用いることができる。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1 シジミエキスの調製)
砂抜き後のシジミ貝500gに1Lの水道水を加え、加熱し沸騰後20分間加熱し、4枚重ねガーゼおよびろ紙(No.2、アドバンテック東洋)を用いて得られたろ液を凍結乾燥し、粉末化した。収量は6.2gであった。また、得られたシジミエキス粉末1gに含まれる該トリペプチド含量は5.7mgであった。
(実施例2 N末端からβ−アラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合したトリペプチド(該トリペプチド)の調製)
該トリペプチドの調製は、以下のとおりに行った。シジミ貝から熱水抽出して得られたシジミエキスを分画分子量10,000の限外ろ過膜を用いた限外ろ過に供し、高分子量の糖質やタンパク質を除去した。次いで、得られた低分子画分を2種類のイオン交換樹脂(AG50W×8、Bio-RadおよびトヨパールCM-650C、東ソー)を用いて精製後、さらにシリカゲル(Silica gel 60、メルク)を用いて純度90%以上に精製した。得られた該トリペプチドの純度検定は、高速液体クロマトグラフィを用いて行った。オルトフタルアルデヒドと2-メルカプトエタノールを用いて該トリペプチドを蛍光標識し、カラムにはマイティシルRP−18 GP(関東化学)、移動相には50mM酢酸ナトリウム水溶液(pH5.0):メタノール:テトラヒドロフラン=35:58:7を用い、流速1ml/minの条件で行った。検出には、蛍光検出器(F−1050、日立製作所、Ex 340nm、Em 455nm)を用いた。
(実施例3 幹細胞由来肝組織の作製)
幹細胞由来肝組織の作製は、本願発明者等により編み出された胚性幹細胞由来肝組織の作製手法に基づいて行った(特開2007−014273)。すなわち、トリプシン処理を施した胚性幹細胞からハンギングドロップ法により胚様体を作製し、5日間培養した後に、ゼラチンコートしたプラスチックディッシュに50個の胚様体を接着させ、分化培地で18日間培養し、肝組織を作製した。
(実施例4 N末端からβ−アラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合したトリペプチド(該トリペプチド)の実験動物を用いた肝保護試験)
実験動物:C57BL/6Jマウス
試験区分:
・対照群:アルコール入り飼料+生理食塩水
・試験群1:アルコール入り飼料+10%シジミエキス(生理食塩水に溶解)
・試験群2:アルコール入り飼料+10μM該トリペプチド(生理食塩水に溶解)
プロトコール:
対照群および各試験群ともに、動物入荷後よりアルコールを含有しない通常飼料を3日間与えて飼育した後、アルコール入り飼料に切り替えて7日間飼育した。その後、アルコール入り飼料の給餌を継続しながら、対照群には生理食塩水、試験群1には10%シジミエキス、試験群2には10μM該トリペプチドをそれぞれ1日1回200μlずつゾンデを用いて経口投与した。アルコールを含有しない通常飼料からアルコール入り飼料に切り替えた7日後(7)、その後シジミエキスあるいは該トリペプチドを投与した4日後(7+4)、および同じく7日後(7+7)にそれぞれ採血を行い、肝障害マーカーである血漿中のトランスアミナーゼ活性(AST、ALT)を測定した。また、肝組織標本の作製は常法に従い、試験終了後(7+7)、肝臓を摘出し、10%ホルマリン液を用いて固定した。その後、パラフィンブロックに包埋し、ミクロトームによって得られた切片をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色して観察した。
血液生化学値分析結果:
図1は、マウスにおける本発明の該トリペプチドおよびシジミエキス投与後の肝障害マーカーASTレベルの変化を示すグラフである。また、
図2は、マウスにおける本発明の該トリペプチドおよびシジミエキス投与後の肝障害マーカーALTレベルの変化を示すグラフである。これらに図示するように、いずれの区分においても、アルコール入り飼料を7日間摂取することにより、顕著な数値の上昇が確認された。図1のシジミエキス(試験群1)および該トリペプチド(試験群2)を投与した区分4日後(7+4)および7日後(7+7)において、生理食塩水を投与した対照群と比較し顕著な低下が認められた。また、図2のALTにおいても同様の傾向が認められたが、シジミエキスよりも該トリペプチドにおいて、より高い効果が認められた。以上の結果より、該トリペプチドに肝臓保護作用があることが確認された。
肝臓組織標本観察結果:
図3−1〜3−4は、マウスにおける本発明の該トリペプチドならびにシジミエキス投与後、および対照群等の肝組織標本を示す写真である。このうち図3−1はコントロール飼料(生理食塩水)、図3−2はアルコール入り飼料+生理食塩水(対照群)、図3−3はシジミエキス(試験群1)、図3−4は本発明に係る該トリペプチド(試験群2)投与後の肝組織標本を、それぞれ示す写真である。なお各写真中のスケールバーは50μmである。図3−2に示されるように生理食塩水を投与した対照群では、白い粒状物として表される脂肪球が観察され、脂肪肝になっていることが分かった。一方、図3−4に示されるように該トリペプチド投与群では脂肪球は認められず、該トリペプチドの肝臓保護作用が確認された。なお、図3−3に示されるように、シジミエキス投与群においても同様に、脂肪球は観察されなかった。
(実施例5 N末端からβ−アラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合したトリペプチド(該トリペプチド)の幹細胞由来肝組織を用いた肝保護試験)
肝組織作製に用いた幹細胞:
・ST1(マウスBALB/c由来ES細胞)
試験区分:
・対照群1:アルコール無添加培地+リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
・対照群2:3%アルコール添加培地+リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
・試験群1:3%アルコール添加培地+17μg/mlシジミエキス(PBSに溶解)
・試験群2:3%アルコール添加培地+17μg/ml該トリペプチド溶液(PBSに溶解)
プロトコール:
上記の幹細胞を用いて作製した肝組織を用いて、アルコール添加により細胞障害を誘発し、その際に試験物質を添加しその効果を検討した。培地のアルコール濃度は3%とした。培養24時間後に、WST−8を用いた細胞内ミトコンドリア活性における細胞活性評価、スポットケムを用いた細胞内LDHのリリース量による細胞障害性評価、および尿素合成能による肝機能評価により試験物質の肝保護効果を検討した。
結果1:WST−8を用いた細胞内ミトコンドリア活性による細胞活性評価
図4は、幹細胞由来肝組織における該トリペプチドおよびシジミエキスのWST−8を用いた細胞内ミトコンドリア活性による細胞活性評価の結果を示すグラフである。図示するように、ST1細胞由来肝組織による試験において対照群1と対照群2を比較すると、培地に3%アルコールを添加することにより細胞活性が低下した。しかし、シジミエキスを添加することにより細胞活性の低下が抑えられており、該トリペプチド添加区分においては細胞活性の低下がほとんど認められなかった。以上の結果から、該トリペプチドの肝臓保護作用が確認された。
結果2:スポットケムを用いた細胞内LDHのリリース量による細胞障害性評価
図5は、幹細胞由来肝組織における該トリペプチドおよびシジミエキスのスポットケムを用いた細胞内LDHのリリースによる細胞障害性の結果を示すグラフである。図示するように、ST1細胞由来肝組織による試験において対照群1と対照群2を比較すると、培地に3%アルコールを添加することによりLDHのリリース量が増加した。しかし、シジミエキスを添加することによりLDHのリリース量の増加が抑制されており、該トリペプチド添加区分においては、さらに高い抑制効果が認められた。以上の結果から、該トリペプチドの肝臓保護作用が確認された。
結果3:尿素合成能による肝機能評価
図6は、幹細胞由来肝組織における該トリペプチドおよびシジミエキスの尿素合成能による関機能評価の結果を示すグラフである。図示するように、ST1細胞由来肝組織による試験において対照群1と対照群2を比較すると、培地に3%アルコールを添加することにより尿素合成能が抑制されており、肝機能の低下することが示された。しかし、シジミエキスを添加することにより尿素合成能の低下が抑えられており、さらに該トリペプチド添加区分においては、尿素合成能の低下がほとんど認められなかった。以上の結果から、該トリペプチドの肝臓保護作用が確認された。
今回の試験においては、実験動物を利用し、肝障害マーカーである血漿中のトランスアミナーゼ活性(AST、ALT)および組織標本観察により、該トリペプチドに肝保護作用が認められた。また、ST1細胞由来肝組織を利用し、WST−8を用いた細胞内ミトコンドリア活性による細胞活性評価、スポットケムを用いた細胞内LDHのリリース量による細胞障害性評価、および尿素合成能による肝機能評価試験において、該トリペプチドに肝保護作用が認められた。これらの試験においては、生理食塩水投与群を対照とし、シジミエキス投与群および該トリペプチド投与群について比較検討されたものであるが、一般的には陽性対照(ポジティブコントロール)との比較において効果が検証されるべきものである。
しかしながら、肝保護剤については現在もなお様々に研究が進められている状況下にあり、学術論文等においても陽性対照として確立されている物質が存在していないのが実情である。換言すれば、現在のところ肝保護剤においては陽性対照が確立されておらず、本発明に係る該トリペプチドに、今回初めて以上述べたような肝保護効果が認められた意義は非常に大きい。今後、該トリペプチドが陽性対照となり得る、すなわち肝保護効果に関する研究において基準となる物質として利用される可能性が、十分に期待される。また、本発明に係る該トリペプチドにおいて幹細胞由来肝組織に対する保護作用が認められたことにより、各種の細胞、人工組織および臓器を保護する目的にも該トリペプチドを利用可能であって、かつ有効であることが示された。
(実施例6 N末端からβ−アラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合したトリペプチド(該トリペプチド)の安全性試験)
マウスに、該トリペプチドを静脈内または経口投与したところ、両投与法において毒性は認められなかった。また、マウス肝臓から調製された肝細胞および肝細胞株での該トリペプチドの毒性試験を試みたところ、毒性は特に認められなかった。
(配合例1 医薬組成物)
本発明の肝保護剤は、適当な医薬用の担体もしくは希釈剤と組み合わせて医薬とすることができ、通常の方法によって各種製剤化可能で、経口又は非経口投与するための固体、半固体、液体又はエアロゾールの剤形に処方することができる。処方にあたっては、本発明物質を単独で用いるか、あるいは他の医薬活性成分と適宜組み合わせて処方してもよい。医薬組成物の配合例をあげるが、本発明がこれに限定されるものではない。
配合例1(医薬組成物):錠剤(1錠当たり)
クエン酸カルシウム 97mg
結晶セルロース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
該トリペプチド(肝保護剤) 1mg
200mg
(配合例2 食品)
以下に本発明の肝保護剤の配合例をあげるが、本発明がこれに限定されるものではない。
配合例2(食品):飲料(100g当たり)
果糖ブドウ糖液糖 30.0g
該トリペプチド(肝保護剤) 0.001g
香料 適量
精製水 残余
100.0g
以上述べたとおり、実験動物および幹細胞由来肝組織を用いた実験において、本発明に係る該トリペプチドの肝保護効果は明らかである。従来、肝障害治療のための医療用製剤としては、肝水解物、インターフェロンなどの生物学的製剤、マロチラート、グルタチオン、グリチルリチンなどの化学療法剤、小柴胡湯などの漢方製剤などが用いられてきたが、それぞれに種々の副作用が報告されており、より副作用の少ない生物由来の素材が求められている。このような状況下、本発明に係る該トリペプチドはシジミエキス由来の天然成分であり、食経験があることから、医療用製剤や加工食品の素材として、人や哺乳類への応用展開が十分可能であると期待される。したがって本発明は、産業上高い利用価値を有する発明である。





























Claims (5)

  1. 下記式で表わされるN末端からβ−アラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合したトリペプチドを主成分とし、該トリペプチドは、所定条件にてマウスに投与した場合に下記(A1)〜(D)の少なくともいずれかであることを特徴とする、肝保護剤。
    (A1) 生理食塩水投与と比較して、肝障害マーカーASTレベルが低下する。
    (A2) 生理食塩水投与と比較して、肝障害マーカーALTレベルが低下する。
    (B) 肝臓組織標本中の脂肪球が認められない。
    (C) 生理食塩水投与と比較して、WST−8を用いた細胞内ミトコンドリア活性の低下が認められない。
    (D) 生理食塩水投与と比較して、スポットケムを用いた細胞内LDHのリリース量増加が抑制される。
  2. 前記トリペプチドの医薬的または食品的に許容される塩を主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載の肝保護剤。
  3. 請求項1または2に記載の肝保護剤を含有することを特徴とする、肝保護用の医薬組成物。
  4. 哺乳類の肝疾患治療方法に用いられることを特徴とする、請求項3に記載の医薬組成物。
  5. 請求項1または2に記載の肝保護剤を含有することを特徴とする、細胞、肝臓に係る人工組織、または肝臓保護用の組成物。
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