以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態における車両用液圧緩衝器Dは、シリンダ1と、当該シリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿入されてピストン2に連結されるピストンロッド3と、シリンダ1内にピストン2で区画される伸側室R1と圧側室R2と、シリンダ1の側方に設けられて内部に中空部Aを備えたバルブケース4と、シリンダ1に軸方向に沿って連結されるとともに内部に中空部Aを介して圧側室R2に連通される液室Lを形成する液室筒5と、液室Lを附勢する附勢手段6と、中空部A内に収容されて圧側室R2と液室Lとを区画する仕切部材7と、中空部A内に収容されて圧側室R2と液室Lとを連通するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える絞り弁8と、中空部A内に収容されて絞り弁8に並列して圧側室R2と液室Lとを連通するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える弁要素9と、中空部A内に収容されて絞り弁8および弁要素9に並列して液室Lから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するチェック弁10と、絞り弁8の開口面積と弁要素9における上記抵抗とを同時に変化させる調整機構11とを備えて構成されており、図示しない車両の車体と車軸との間に介装されて車体の振動を抑制するものである。
以下、各部材について詳細に説明する。シリンダ1は、筒状であって下端がバルブケース4に設けた閉塞部材12によって閉塞されるとともに図1中上端には、ピストンロッド3を摺動自在に軸支するロッドガイド13が嵌合されている。ロッドガイド13の上方には、シール部材14が積層されており、このシール部材14は、シリンダ1の図1中上端外周に螺着されるキャップ15によってロッドガイド13とともにシリンダ1へ締め付け固定されている。
また、シリンダ1の図1中下端である一端には、シリンダフランジ1aが設けられており、このシリンダフランジ1aには、16個のボルト挿通孔1bが周方向に等間隔に設けられている。
なお、シール部材14は、ピストンロッド3の外周に摺接するリップ部14aと、ロッドガイド13に密着する外周シール部14bとを備えていて、ピストンロッド3とロッドガイド13との間が密にシールされている。また、ロッドガイド13の外周には、シリンダ1の内周に密着するシールリング13aが設けられており、シリンダ1とロッドガイド13との間が密にシールされている。
そして、シリンダ1内には上記ピストンロッド3の先端に固定されるピストン2が摺動自在に挿入され、当該ピストン2によってシリンダ1内は、図1中上方の伸側室R1と図1中下方の圧側室R2とに区画されている。これら伸側室R1および圧側室R2内には、作動油等の液体が充填されており、ピストン2に設けた減衰通路16によって伸側室R1と圧側室R2とが互いに連通されている。
上記減衰通路16は、減衰弁17を備えてこれを通過する液体の流れに抵抗を与えるようになっており、車両用液圧緩衝器Dの伸縮時に伸側室R1から圧側室R2へ、あるいは、圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流れに抵抗を与えてこれら伸側室R1と圧側室R2の圧力に差を生じさせるようになっていて、車両用液圧緩衝器Dは、両者の差圧に見合った減衰力を発生するようになっている。
なお、減衰弁17は、液体が通過する際にこの液体の流れに抵抗を与え、所定の圧力損失を生じさせるものであればよく、具体的にはたとえば、オリフィスやリーフバルブといった減衰バルブを採用することができる。また、伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する減衰通路と、圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する減衰通路の両方を設けておいて、それぞれに、減衰弁を設ける構成を採用してもよいし、また、減衰通路は、ピストン2以外にも、ピストンロッド3に設けたり、シリンダ1外に設けたりするようにしてもよい。
さらに、この場合、車両用液圧緩衝器Dは、片ロッド型の緩衝器とされており、詳しくは後述するが、圧縮行程時にピストンロッド3のシリンダ1へ侵入する体積分の液体がシリンダ1内で余剰となって、圧側室R2から液室Lへ排出される際に、この液体の流れに絞り弁8および弁要素9で抵抗を与えて減衰力を発生することができるようになっているので、伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する減衰通路を設ける場合、圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する逆止弁のみを備えて流れに殆ど抵抗を与えない通路を設けてもよい。
液室筒5は、図1中下端が閉塞され、当該下端に車両への取付を可能とするブラケット5aを備えている。また、液室筒5の図1中上端である一端には、液室筒フランジ5bが設けられており、この液室筒フランジ5bには、シリンダフランジ1aに設けたボルト挿通孔1bと同数の16個のボルト挿通孔5cが周方向に等間隔に設けられている。このボルト挿通孔5cは、内周に螺子山が形成されていて螺子孔とされている。
そして、この液室筒5内には、フリーピストン18が摺動自在に挿入されていて、液室筒5内であってフリーピストン18よりも図1中上方に液室Lが区画されるとともに、当該フリーピストン18よりも図1中下方に気室Gが区画されている。この気室Gは、内部圧力で液室Lを附勢する附勢手段6としてのエアばねを形成しており、液室筒5の下方に設けたバルブ19を介して気体を気室Gへ充填することができるようになっている。なお、附勢手段6としては、上記したエアばね以外にも、フリーピストン18を押圧する金属ばね等とされてもよいし、また、フリーピストン18で気室Gを画成するのではなく、ダイヤフラムやブラダで気室を形成してこれを附勢手段としてもよい。
つづいて、バルブケース4は、図1および図2に示すように、中空部Aを備えた有底筒状のケース本体20と、シリンダ1の図1中下端と液室筒5の図1中上端の間に介装される閉塞部材12と、閉塞部材12の図1中上端から立ち上がる筒状のシリンダ側ソケット21と、閉塞部材12の図1中下端から立ち上がる筒状の液室筒側ソケット22と、閉塞部材12とケース本体20とを連結する連結部23と、閉塞部材12の外周側であって周方向に等間隔をもって設けられる16個のボルト挿通孔24と、ケース本体20の内周から開口して連結部23を介してシリンダ側ソケット21内へ通じる連通孔25と、ケース本体20の内周から開口して連結部23を介して液室筒側ソケット22内へ通じる連通孔26とを備えている。
ケース本体20は、内周に段部20aが設けられており、この段部20aより上方から連通孔25が開口し、段部20aより下方から連通孔26が開口している。そして、シリンダ側ソケット21をシリンダ1内に挿入し、液室筒側ソケット22を液室筒5内に挿入すると、ケース本体20内の中空部Aは、連通孔25を介して圧側室R2へ連通されるとともに、連通孔26を介して液室Lへ連通される。
また、図2に示すように、ケース本体20の図1中上端開口部、つまり、中空部Aへ通じる開口20bには、環状のアジャスタ保持部材29と、アジャスタ保持部材29の内周に回転自在に保持されたアジャスタ30とで閉塞されている。なお、アジャスタ保持部材29は、外周であって図2中上方が上記ケース本体20の開口20bに螺着されていて、外周の図2中下方には、シールリング31が装着されており、アジャスタ保持部材29とケース本体20との間は密にシールされ、さらに、アジャスタ保持部材29とアジャスタ30との間は、アジャスタ30の外周に装着されたシールリング32によって密にシールされ、これにより中空部Aからの液体の漏えいが防止されている。なお、アジャスタ30の中空部A側の端部である図2中下端には外周へ向けて突出する鍔30aが設けられており、当該鍔30aがアジャスタ保持部材29の中空部A側である図2中下端の内周に設けた環状凹部29aに嵌合して、アジャスタ30のアジャスタ保持部材29からの抜けが防止されている。アジャスタ30は、中空部A側端部から開口する螺子孔30bを備えるとともに、反中空部A側端から開口する工具差込孔30cを備え、図示しない工具を工具差込孔30c内に差し込み工具を回転させることでアジャスタ30を外部操作で周方向へ回転させることができるようになっている。なお、このアジャスタ30をモータ等の駆動源で回転させるようにしてもよい。
そして、ケース本体20に設けた中空部A内であって、ケース本体20の内周に設けた段部20aには、仕切部材7が装着されていて、この仕切部材7は、中空部A内を図2中上方側の部屋と下方側の部屋に区画しており、上方側の部屋は連通孔25を介して圧側室R2に連通されて圧側室R2の一部として機能し、下方側の部屋は連通孔26を介して液室Lに連通されて液室Lの一部として機能している。したがって、仕切部材7は、圧側室R2と液室Lとを区画する仕切として機能している。
閉塞部材12は、この場合、円盤状であって、その外周側には周方向に等間隔をもって16個のボルト挿通孔24が設けられている。ボルト挿通孔24は、シリンダフランジ1aおよび液室筒フランジ5bに設けたボルト挿通孔1b,5cと同数の16個が設けられている。これらボルト挿通孔1b,5c,24は、同一径の円周上に設けられていて、閉塞部材12をシリンダ1と液室筒5で挟んで周方向に位置を合わせると三つのボルト挿通孔1b,5c,24で一つのボルト挿通孔Bが形成され、このボルト挿通孔Bにボルト27を挿通して先端を螺子孔とされるボルト挿通孔5cを螺着することで、シリンダ1、液室筒5およびバルブケース4が一体化される。そして、ボルト挿通孔1b,5c,24は、この例では、16個設けられているので、バルブケース4はシリンダ1および液室筒5に対して周方向に22.5度ずつ16位置のいずれか一つの位置を選択して固定することが可能となっている。つまり、このようにバルブケース4を取り付けることで、バルブケース4のシリンダ1および液室筒5に対する位置を選択することができるので、車両に車両用緩衝器Dを組み込む際に、バルブケース4が邪魔とならないように位置決めすることができる。なお、ボルト挿通孔1b,5c,24は、取付バランスのこともあり、少なくとも三つ以上設けるようにするとよい。また、ボルト挿通孔5cは、螺子孔ではなく単なる孔であって、ボルト27に螺合するナットを利用してシリンダ1、液室筒5およびバルブケース4を一体化してもよいし、ボルト挿通孔1bを螺子孔として図1中液室筒フランジ5bの下方側からボルト27をボルト挿通孔Bへ挿通するようにしてもよい。
このように、閉塞部材12をシリンダ1と液室筒5とで挟むようにしてこれらがボルト27でボルト締結されるが、シリンダ1内には閉塞部材12に設けたシリンダ側ソケット21が嵌合されるとともに、液室筒5内には液室筒側ソケット22が嵌合されるので、シリンダ1、バルブケース4および液室筒5のガタつきが防止されるとともに、シリンダ1と液室筒5に対するモーメントの入力に対しても耐えることができる。なお、シリンダ側ソケット21の外周にはシールリング21aが装着されておりシリンダ1との間が密にシールされ、液室筒側ソケット22の外周にもシールリング22aが装着されていて液室筒5との間が密にシールされている。
つづいて、上記のように構成されたバルブケース4の中空部A内には、仕切部材7の他に、圧側室R2と液室Lとを連通するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える絞り弁8と、絞り弁8に並列して圧側室R2と液室Lとを連通するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える弁要素9と、絞り弁8および弁要素9に並列して液室Lから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するチェック弁10とが設けられている。
したがって、シリンダ1に対してピストン2が図1中上方へ移動する、つまり、車両用液圧緩衝器Dが伸長作動する場合、ピストン2が伸側室R1を圧縮するとともに、圧側室R2を拡大させるので、伸側室R1内の液体は、減衰通路16を介して圧側室R2へ移動する。この減衰通路16を通過する液体の流れに減衰弁17で抵抗を与えて、車両用液圧緩衝器Dは伸側の減衰力を発生する。また、シリンダ1内からピストンロッド3が退出するのでシリンダ1内で不足する液体は、チェック弁10を介して液室Lからシリンダ1内へ供給され、液室Lから流出する液体の体積見合いでフリーピストン18が図1中下方へ移動して気室Gの体積が増加してシリンダ1内の容積変化を補償する。
反対に、シリンダ1に対してピストン2が図1中下方へ移動する、つまり、車両用液圧緩衝器Dが圧縮作動する場合、ピストン2が圧側室R2を圧縮するとともに、伸側室R1を拡大させるので、圧側室R2内の液体は、減衰通路16を介して伸側室R1へ移動するとともに、シリンダ1内へピストンロッド3が侵入してピストンロッド3がシリンダ1へ侵入する体積分の液体がシリンダ1内で余剰となるので、余剰の液体は、絞り弁8および弁要素9を介して液室L内へ排出され、液室L内へ流入する液体の体積見合いでフリーピストン18が図1中上方へ移動して気室Gの体積が減少してシリンダ1内の容積変化を補償する。シリンダ1内の余剰の液体が絞り弁8および弁要素9を介して液室L内へ排出されるため、シリンダ1内の圧力場(伸側室圧力と圧側室圧力の平均圧力)の低下が抑制されるとともに、減衰通路16を通過する液体の流れに減衰弁17で抵抗を与えて、圧側室R2と伸側室R1の圧力に差が生じて、車両用液圧緩衝器Dは圧側の減衰力を発生する。なお、圧側室R2から伸側室R1への流れを許容する逆止弁を備える通路を設けていて、液体が圧側室R2から伸側室R1へ移動する流れに殆ど抵抗を与えないようにする場合にも、絞り弁8および弁要素9によって圧側室R2内の圧力を上昇させることができるので、車両用液圧緩衝器Dは圧側の減衰力を充分に発生することができる。
仕切部材7は、図2に示すように、環状とされていて、図中上下方向となる軸方向に貫通するポート33と、液室L側となる図2中下端側に設けられてポート33の外周に形成される環状弁座34と、外周に設けた凹部7aと、アジャスタ保持部材29側となる図2中上端の外周から内周へ向けて設けられてポート33の下端に通じる溝7bと、アジャスタ保持部材29側となる図2中上端の内周径を拡径して設けられて溝7bに連通される内周凹部7cとを備えている。なお、ポート33は、開口面積を確保できれば、設置数は任意であり、溝7bもポート33の設置数に対応して設ければよい。よって、ポート33の図2中上端は、溝7bおよび連通孔25を通じてシリンダ1内の圧側室R2へ連通されており、ポート33の図2中下端は、連通孔26を介して液室Lに連通されている。また、仕切部材7の図2中上端外周は、面取部7dが設けてあるが、これは、ポート33から連通孔25へ、連通孔25からポート33へ抜けていく液体の流れを仕切部材7とバルブケース4におけるケース本体20の間の環状隙間で絞ってしまって妨げないように、流路面積を確保するために設けてあり、面取部7dを設けることで、流路面積の確保が容易となるので、バルブケース4のケース本体20における図2中上下方向長さを短縮化することができる。
この仕切部材7は、ケース本体20の図2中上端に設けた開口20bの内周に螺着されて固定される環状のアジャスタ保持部材29の図2中下端に当接している。また、仕切部材7の外周は、ケース本体20の内周に設けた段部20aに嵌合して図2中下方への移動が規制されてバルブケース4に装着される筒状のバルブキャップ40の上端に当接されている。したがって、仕切部材7は、アジャスタ保持部材29とバルブキャップ40とで挟持されてバルブケース4の中空部A内に収容固定されている。
バルブキャップ40は、具体的には、仕切部材7の外周に当接するとともにケース本体20の段部20aにおける仕切部材側面に当接する筒状の当接部40aと、当接部40aに連なるとともに環状であって外周径が当接部40aより小径でケース本体20の段部20aの内周に嵌合する嵌合部40bと、嵌合部40bの内周から反仕切部材側となる図2中下方へ設けた筒部40cと、筒部40cの図2中下端となる反仕切部材側端から仕切部材側へ向けて設けた二つの切欠40dと、当接部40aの仕切部材側端に周方向に適宜の間隔をあけて設けられて仕切部材側へ突出する複数の突起40eと、嵌合部40bを貫いてバルブキャップ40の内外を連通する複数の孔40fとを備えて構成され、上記突起40eが仕切部材7の外周に形成した凹部7aに嵌合することで、バルブキャップ40と仕切部材7の周方向の相対回転が規制されるともに、突起40eと凹部7aの嵌合によってバルブキャップ40に対して仕切部材7が径方向にも位置決めされる。そして、このバルブキャップ40をバルブケース4におけるケース本体20の内周に挿入すると、当接部40aの上端外周が段部20aの上端に当接して、バルブキャップ40のそれ以上のケース本体20内への移動が規制されるようになっている。なお、孔40fの設置数は、開口面積を確保できれば、任意である。
また、仕切部材7の内周には、当該内周に摺接して軸方向移動自在および周方向回転自在に摺動自在に有底筒状の中空軸35が挿入されている。この中空軸35は、先端となる開口側の外周に設けた螺子部35aと、螺子部35aより図2中下方外周に設けた環状溝35bと、内部を環状溝35bへ連通する透孔35cと、環状溝35bより図2中下方に設けられた長孔でなるオリフィスとされる絞り弁8と、底部となる図2中下端の外周に設けられて径方向へ突出する二つの規制部35dとを備えて構成されている。
そして、中空軸35は開口側を仕切部材7の内周を通してアジャスタ30内に挿入し、上記した中空軸35の螺子部35aがアジャスタ30の螺子孔30b内に螺合される。また、中空軸35の二つの規制部35dは、それぞれバルブキャップ40の切欠40d内へ挿入されており、中空軸35は、バルブキャップ40によって周方向への回転が規制されている。さらに、アジャスタ30は、鍔30aが仕切部材7とアジャスタ保持部材29とで挟まれて、軸方向に位置決めされるので、これによって、周方向への回転が許容されつつもバルブケース4に抜け止めされてバルブケース4に取り付けられている。
したがって、アジャスタ30を回転操作すると、中空軸35は、バルブキャップ40によって周方向回転が規制されているので、螺子部35aと螺子孔30bとでなる送り螺子の要領で、図2中上下方向となる軸方向に移動し、仕切部材7に対して遠近することができるようになっている。
また、中空軸35の環状溝35bにおける軸方向幅は、中空軸35がアジャスタ30によって上下方向へ移動せしめられても、仕切部材7の溝7bに対向することができるように設定されており、中空軸35内は、透孔35c、環状溝35b、内周凹部7c、溝7bおよび連通孔25を介してシリンダ1内の圧側室R2へ連通されるとともに、絞り弁8を介して液室Lへ連通されている。つまり、絞り弁8によって圧側室R2と液室Lとが連通されている。そして、絞り弁8は、これを通過する液体の流れを絞って抵抗を与える。
中空軸35の外周には、仕切部材7の中空部内側の内周に着座する筒状のシャッタ36が摺動自在に装着されており、当該シャッタ36は、中空軸35の外周に摺接する筒部36aと、筒部36aの外周に設けたフランジ状のバルブ支持部36bとを備えて構成されている。
さらに、このシャッタ36の筒部36aの外周には、仕切部材7の液室L側となる下端に形成された環状弁座34に離着座する環状の弁体37と、弁体37の仕切部材側に積層される環状のチェック弁10と、弁体37の反仕切部材側に積層されるバルブ抑え部材38が摺動自在に装着されている。
そして、中空軸35の外周であって、シャッタ36よりも反仕切部材側には、シャッタ36と対向する筒状のばね受39が摺動自在に装着されている。このばね受39は、中空軸35の外周に摺動自在に装着された筒部39aと、筒部39aの外周に設けられたフランジ状のばね受部39bとを備え、このばね受39とバルブ抑え部材38との間には、ばね要素としてのコイルばね41が圧縮状態で介装されている。そのため、ばね受39とバルブ抑え部材38はこのコイルばね41によって常に離間するように附勢されており、ばね受39は、中空軸35の規制部35dに当接すると、当該規制部35dによって中空軸35に対するそれ以上の図2中下方側への移動が規制されるので、コイルばね41はバルブ抑え部材38を介してシャッタ36を仕切部材7側へ向けて附勢している。
また、シャッタ36と仕切部材7との間には、図2に示すように、チェック弁10を弁体37側へ附勢するばね部材42が介装されており、このばね部材42は、シャッタ36と仕切部材7との間で挟持される環状部材42aと、当該環状部材42aの外周から延びてチェック弁10の仕切部材側を弾性支持してチェック弁10を弁体37側へ附勢する複数の腕42bとを備えて構成されている。
さらに、弁体37は、図2に示すように、環状のリーフバルブで構成されており、同一円周上に複数の透孔37aを備えて、この透孔37aは、チェック弁10が弁体37に当接している状態では、チェック弁10によって遮断される。透孔37aの設置数は、チェック弁10の機能上必要とされる開口面積を確保できれば、任意である。
上述のように、中空軸35の外周に、ばね部材42、シャッタ36、弁体37、バルブ抑え部材38、コイルばね41およびばね受39を装着して仕切部材7に組み付けると、チェック弁10がばね部材42によって弁体37へ向けて附勢されて透孔37aを遮断し、コイルばね41がバルブ抑え部材38を介して弁体37を仕切部材7側へ附勢することになる。
そして、この場合、弁要素9は、仕切部材7の液室L側に配置されて仕切部材7に形成された圧側室R2と液室Lとを連通するポート33の出口を開閉する弁体37と、弁体37の反仕切部材側に配置される環状のばね受39と、弁体37とばね受39との間に介装されて弁体37を仕切部材7側へ向けて附勢するばね要素としてのコイルばね41とで構成されている。つまり、弁体37は、バルブ抑え部材38を介してコイルばね41の附勢力で環状弁座34へ向けて附勢されて撓んでおり、圧側室R2の圧力が液室Lの圧力よりも高くなり、ポート33を介して作用する圧側室R2の圧力と反仕切部材側となる背面側に作用する液室Lの圧力との差圧が開弁圧に達すると、当該弁体37の外周が図2中下方側へ撓んでポート33を開放し、圧側室R2を液室Lへ連通させつつ通過する液体の流れに抵抗を与える。反対に、この弁要素9は、圧側室R2の圧力が液室Lの圧力よりも高く上記差圧が開弁圧に達しない状態では、弁体37が環状弁座34へ着座したままとなって、液室Lを圧側室R2へ連通させることは無い。
チェック弁10は、弁体37に積層されていて、弁体37の透孔37aを介して液室Lの圧力を受けるとともに、ポート33を介して反仕切部材側となる背面側には圧側室R2の圧力を受けるようになっている。そして、液室Lの圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、チェック弁10を図2中押し上げる力がばね部材42の附勢力に打ち勝つと、チェック弁10は、弁体37から離れて液室Lを圧側室R2へ連通するが、圧側室R2の圧力が液室Lの圧力よりも高い場合には、弁体37へ押しつけられるので透孔37aを遮断したままとなって圧側室R2と液室Lとを連通させることは無い。
このように圧側室R2から液室Lへ向かう液体の流れのみを許容する弁要素9と、液室Lから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するチェック弁10は、ポート33に対して並列して設けられている。なお、チェック弁10が弁要素9の弁体37に設けた透孔37aを利用しており、チェック弁10と弁要素9とが不可分とされているが、これらを全く別個に設けるようにしてもよい。しかしながら、上記の如く、弁要素9における上記弁体37に透孔37aを設けて、透孔37aを開閉する環状のチェック弁10を設けることで、チェック弁10をコンパクトに構成できる利点がある。また、上記したところでは、弁要素9におけるばね要素およびチェック弁10におけるばね部材は、それぞれ、金属製のばねとされているが附勢力を発揮できればよいので、上記に限らず広く弾性体を用いてもよい。
また、シャッタ36の筒部36aの図2中下端が中空軸35に設けた長孔でなる絞り弁8の下端に対向して、絞り弁8の下端側の一部を閉塞するとともに、ばね受39の筒部39aの図2中上端も中空軸35に設けた長孔でなる絞り弁8の上端に対向して、絞り弁8の上端の一部を閉塞している。ここで、アジャスタ30の回動操作で中空軸35を図2中上方側へ引き上げて仕切部材7に対して近づけると、中空軸35の規制部35dがばね受39を上方へ押圧するので、当該ばね受39が図中上方へ移動する。他方、シャッタ36は、仕切部材7に当接しており、当該仕切部材7によって上方への移動が規制されるので、上記アジャスタ30の操作によって中空軸35が仕切部材7へ接近すると、シャッタ36とばね受39とが接近して、シャッタ36の筒部36aの下端とばね受39の筒部39aの上端との間の間隔が狭くなり、絞り弁8がシャッタ36とばね受39とで閉塞される面積が大きくなる。つまり、中空軸35が仕切部材7へ向けて移動すると、絞り弁8のシャッタ36とばね受39で閉塞されない面積である開口面積が減少することになって、絞り弁8が通過する液体の流れに与える抵抗は大きくなる。
なお、この実施の形態の場合、中空軸35とばね受39との軸方向の位置関係は、中空軸35に移動によっても不変であり、ばね受39と絞り弁8とのラップ面積、つまり、ばね受39が絞り弁8の一部を閉塞する面積は変わらないので、ばね受39が絞り弁8の一部を閉塞していなくともよい。
また、弁体37は、上述したように、バルブ抑え部材38を介してコイルばね41の附勢力で環状弁座34へ向けて附勢されて撓んでおり、ポート33を介して作用する圧側室R2の圧力と、反仕切部材側となる背面側に作用する液室Lの圧力との差圧が開弁圧に達すると、当該弁体37の外周が図2中下方側へ撓んでポート33を開放するようになっており、差圧が大きくなるほど、弁体37の撓み量が大きくなって環状弁座34と弁体37との間に形成される環状隙間が大きくなる。なお、コイルばね41が上記差圧に負けて縮むと弁体37がバルブ抑え部材38とともに仕切部材7から図2中下方へ後退して、環状弁座34と弁体37との間に形成される環状隙間もより一層大きくなることになる。そして、中空軸35が仕切部材7へ接近すると、ばね受39とシャッタ36の外周に装着されたバルブ抑え部材38との図2中上下方向となる軸方向距離も短くなるので、コイルばね41の圧縮量(初期荷重)が大きくなり、コイルばね41が弁体37を附勢する附勢力がその分大きくなる。このように、中空軸35を仕切部材7へ接近させてコイルばね41の弁体37を附勢する力が大きくなればなるほど、弁体37を環状弁座34から離座させる開弁圧を大きくして、弁要素9を通過する液体に与える抵抗を大きくすることができる。
つづいて、アジャスタ30の回動操作で中空軸35を図2中下方側へ押し下げて仕切部材7に対して遠ざけると、ばね受39がコイルばね41によって押し下げられて中空軸35の規制部35dによって規制されつつ図中下方へ移動する。他方、シャッタ36は、コイルばね41によって仕切部材7へ押しつけられているので、上記アジャスタ30の操作によって中空軸35が仕切部材7から遠ざけると、シャッタ36とばね受39とが遠ざかってシャッタ36の筒部36aの上端とばね受39の筒部39aの下端との間の間隔が広くなり、絞り弁8がシャッタ36とばね受39とで閉塞される面積が小さくなる。つまり、中空軸35が仕切部材7から軸方向へ向けて離間すると、絞り弁8のシャッタ36とばね受39で閉塞されない面積である開口面積が拡大することになって、絞り弁8が通過する液体の流れに与える抵抗は小さくなる。
また、中空軸35を仕切部材7から遠ざけると、ばね受39とシャッタ36の外周に装着されたバルブ抑え部材38との図2中上下方向となる軸方向距離が長くなるので、コイルばね41の圧縮量(初期荷重)が少なくなり、コイルばね41が弁体37を附勢する附勢力がその分小さくなる。このように、中空軸35を仕切部材7から軸方向へ離間させてコイルばね41の弁体37を附勢する力が小さくなればなるほど、弁体37を環状弁座34から離座させる開弁圧を小さくして、弁要素9を通過する液体に与える抵抗を小さくすることができる。
上記したところから理解できるように、この実施の形態では、アジャスタ30を回動操作することで、中空軸35を軸方向へ移動させて仕切部材7に対して遠近させることで、絞り弁8の開口面積と弁要素9の開弁圧を変更して、両者を通過する液体の流れに与える抵抗を同時に調節することができる。より具体的には、アジャスタ30を一方向へ回転操作すると、絞り弁8の開口面積を減少させて絞り弁8における抵抗を大きくさせつつ弁要素9の開弁圧を大きくして当該弁要素9における上記抵抗を大きくすることができ、反対に、アジャスタ30と他方向へ回転操作すると、絞り弁8の開口面積を増大させて絞り弁8における抵抗を小さくさせつつ弁要素9の開弁圧を小さくして当該弁要素9における上記抵抗を小さくすることができる。
したがって、調整機構11は、本実施の形態では、上記ばね受39を外周に装着した中空軸35に設けたばね受39の反仕切部材側に当接してばね受39の反仕切部材側への移動を規制する規制部35dと、中空軸35を仕切部材7に対して軸方向に遠近させる駆動手段である外部操作可能なアジャスタ30と螺子部35aとでなる送り螺子と、中空軸35の駆動に対し不動とされて中空軸35の駆動に対し上記長孔でなる絞り弁8とのラップ面積を増減させるシャッタ36とを備えて構成されている。
つづいて、上述のように構成された車両用液圧緩衝器Dに作用について説明する。まず、図1中でピストン2が上方へ移動する車両用液圧緩衝器Dが伸長する場合、ピストン2の上昇によって伸側室R1が圧縮されて伸側室R1の液体が減衰弁17を介して下方の圧側室R2へ流入する。その際、ピストンロッド3がシリンダ1から退出してシリンダ1内でピストンロッド3が退出する体積分の液体が不足するので、この不足する分の液体は、チェック弁10が開いて液室Lから圧側室R2へ供給され、フリーピストン18が気室Gを膨張させる方向へ移動してシリンダ1内の容積変動を補償する。
なお、チェック弁10は、ばね部材42によって附勢されているが、当該附勢力は極弱く設定されており、この場合、液体は殆ど抵抗を受けずにチェック弁10を通過し液室Lから圧側室R2へ移動する。
したがって、この伸長行程時には、車両用液圧緩衝器Dは、液体がピストン2に設けた減衰弁17を通過する際に生じる伸側室R1と圧側室R2の圧力差に応じた伸側減衰力を発揮する。
他方、図1中でピストン2が下方へ移動する車両用液圧緩衝器Dが圧縮する場合、ピストン2の下降によって圧側室R2が圧縮されて当該圧側室R2の液体が減衰弁17を介して上方の伸側室R1へ流入する。その際、ピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入してシリンダ1内でピストンロッド3が侵入する体積分の液体が過剰となるので、この過剰分の液体は、弁要素9がポート33を開放して圧側室R2から液室Lへ排出され、フリーピストン18が気室Gを収縮させる方向へ移動してシリンダ1内の容積変動を補償する。
そして、弁要素9は、車両用液圧緩衝器Dが圧縮行程におけるピストン速度が所定速度以下では、圧側室R2と液室Lの差圧が小さく開弁せず、液体は、絞り弁8のみを介して圧側室R2から液室Lへ移動するので、図3中、実線aで示すがごとく、車両用液圧緩衝器Dは、絞り弁特有の減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の特性)を持って減衰力を発揮する。なお、図3に示した減衰特性は、絞り弁8の開口面積と弁要素9の開弁圧をアジャスタ30の操作で変更し得る上限と下限の中央に設定している状態を示している。
さらに、車両用液圧緩衝器Dが圧縮行程におけるピストン速度が所定速度以上となって、圧側室R2と液室Lの差圧が開弁圧に達すると、弁要素9が開弁して絞り弁8に並列されるポート33が開放されるので、開弁してからは図3の破線bで示すがごとくに、車両用液圧緩衝器Dの減衰特性は、ピストン速度に対して減衰係数が小さくなる。
そして、さらに、ピストン速度が高速となり、ばね要素としてのコイルばね41が弁体37を仕切部材7へ向けて附勢する附勢力を、圧縮される圧側室R2内の圧力の作用によって弁体37を押す力が打ち勝って、コイルばね41が圧縮して弁体37がバルブ抑え部材38とともに仕切部材7から後退するようになると、弁体37と環状弁座34との間に形成される環状隙間の大きさがより大きくなり、車両用液圧緩衝器Dの減衰特性は、ピストン速度に対して先程よりももっと減衰係数が小さくなる(図3中一点鎖線c)。
このように、弁要素9は、車両用液圧緩衝器Dが圧縮行程におけるピストン速度が所定速度以下では、流路面積を小さく制限するので、圧側室R2内の液体は液室Lへ移動しづらくなって、圧側室R2内の圧力は速やかに増圧されることになる。
すなわち、車両用液圧緩衝器Dは、圧側室R2内の圧力を速やかに増圧させて、伸側室R1と圧側室R2における圧力場の低下を抑制しつつ圧縮側の減衰力を発揮することができるので、伸長行程から圧縮行程に切換わる初期や、圧縮行程時でピストン速度が低速時において減衰力の立上りが時間的に不足する傾向を解消でき、減衰力発生応答性が向上する。
そして、上記したように、絞り弁8における抵抗を大きくさせつつ弁要素9の開弁圧を大きくして当該弁要素9における上記抵抗を大きくすることができるとともに、絞り弁8における抵抗を小さくさせつつ弁要素9の開弁圧を小さくして当該弁要素9における上記抵抗を小さくすることができるので、絞り弁8の特性による傾きを変更させることができるとともに、弁要素9の開弁タイミングを変更させることができる。したがって、たとえば、アジャスタ30を一方側へ回転させて絞り弁8の開口面積を最小にしつつ弁要素9の開弁圧を最大にする場合には、圧側室R2の圧力上昇の特性(ピストン速度に対する圧側室の圧力上昇の特性)は、図3の特性(図4中線X)から図4中線Yで示すように、絞り弁8を通過する液体に与える抵抗が大きくなって図3中の線aに対応する特性の傾きが大きくなり、絞り弁8における圧力損失が大きくなるのでその分、弁要素9の開弁時期がピストン速度の低速側へシフトし、図3中の線aに対応する特性が弁要素9の開弁時期までそのまま出力される特性へ変更される。また、アジャスタ30を他方側へ回転させて絞り弁8の開口面積を最大にしつつ弁要素9の開弁圧を最小にする場合には、圧側室R2の圧力上昇の特性(ピストン速度に対する圧側室の圧力上昇の特性)は、図3の特性(図4中線X)から図4中線Zで示すように、絞り弁8を通過する液体に与える抵抗が小さくなって図3中の線aに対応する特性の傾きを小さくでき、絞り弁8での圧力損失が低くなる分だけ弁要素9の開弁時期がピストン速度の高速側へシフトするようになり、図3中の線aに対応する特性が弁要素9の開弁時期までそのまま出力されるような特性となる。つまり、アジャスタ30の操作で、図4中線Yに示す特性から線Zに示す特性の範囲で圧側室R2の圧力上昇の特性を調節することができる。
なお、車両用液圧緩衝器Dの減衰特性も、圧側室R2の圧力上昇が上記のごとく補償されるから、図5に示すように、図中の線Y1から線Z1に示す範囲にて、アジャスタ30を回転させることで変化させることができる。
このように、絞り弁8と弁要素9の両方を同時に調整可能であるから、絞り弁8のみ、あるいは、弁要素9のみの調整が可能である緩衝器や、双方の調整が可能であっても独立して調整しなければならない緩衝器に比較して、圧側室R2の圧力上昇の特性をより簡単に且つ、より直感的に調節することができ、圧側の減衰力応答性の調節も同様に簡単に行うことができるのである。
また、気室内の圧力を高める必要も無いので、車両用液圧緩衝器Dのシリンダ1内の圧力が過剰に高くなることも無く、ピストンロッド3周りをシールするシール部材14の緊迫力が大きくなる心配が無く、車両搭乗者にゴツゴツ感を知覚させ車両における乗り心地を阻害してしまうこともない。
したがって、本発明の車両用液圧緩衝器Dによれば、車両における乗り心地を損なうことなく圧縮行程初期にあっても応答性良く必要十分な減衰力を発揮することができるのである。なお、弁要素9の流路面積が大きくなる上記所定速度は、車両に適するように任意に決定することができる。
他方、ピストン速度が所定速度を超えると流路面積が大きくなって、抵抗が小さくなって、液体は圧側室R2から液室Lへ差ほど制限されずに移動することができるようになるので、この場合は、従来の単筒型液圧緩衝器と同等の減衰力を発揮することになる。
また、図6に示すように、予め、環状弁座34とシャッタ36におけるバルブ支持部36bとの高低差(図6中上下方向の高低差)によって、リーフバルブでなる弁体37に初期撓みを設ける場合には、弁体37が環状弁座34から離座する開弁圧に達するまでの間に、ポート33を介して作用する圧側室R2の圧力によって、図7に示すように、弁体37の外周が環状弁座34に着座しつつもシャッタ36とともに内周側のみが仕切部材7から浮き上がる状態が生じる。この状態では、シャッタ36が弁体37とともに仕切部材7から浮き上がるため、中空軸35に形成した絞り弁8の開口面積を減少させることになる。そのため、リーフバルブでなる弁体37に初期撓みを設ける場合には、図8に示すように、初期撓みを設けない場合の減衰特性(図8中破線)に対して、初期撓みを設ける場合は、弁要素9が開弁するまで絞り弁8が徐々に開口面積を減じるために、絞り弁8での圧力損失が大きくなり、図8中実線で示すように、ピストン速度に対して減衰力が速やか立ち上がる、つまり、減衰係数を大きくすることができる。
なお、上記したところでは、絞り弁8をオリフィスとしているが、オリフィス以外にもチョークやその他の絞り弁としてもよく、たとえば、環状絞りを設ける場合には、中空軸35の上端を閉塞せずに、中空軸35内に環状弁座を設け、中空軸35内に中空軸35に対して軸方向不動であって環状弁座と対向して環状弁座との間に環状絞りを形成するニードル状などの弁体を設けておき、中空軸35を仕切部材7に接近させると弁体と環状弁座との間の距離も接近し、反対に、中空軸35を仕切部材7から遠ざけると弁体と環状弁座との間の距離も遠ざかるような構造の絞り弁を採用してもよいし、絞り弁8にチョークを採用する場合には、中空軸35内に小径部を設けておき、中空軸35に対して軸方向不動の軸を小径部内に摺動自在に挿入し、中空軸35の小径部の内周に或いは軸の外周にチョークを形成する溝を設けておき、中空軸35を軸方向へ移動させることによって小径部と軸の嵌合長を変更してチョーク長さを変更するような絞り弁の構造を採用することもできる。
また、弁要素9は、弁体37に環状のリーフバルブを採用しているが、ばね要素で附勢される弁体であれば、ポペット弁やその他の弁体を用いることも可能である。
さらに、上記したところでは、シリンダ1の側方に設けたバルブケース4の中空部A内に絞り弁8、弁要素9およびチェック弁10を収容しているので、絞り弁8、弁要素9或いはチェック弁10を交換して、減衰特性をチューニングしたい場合に、車両用液圧緩衝器Dの部品全部を分解する必要がなく、絞り弁8、弁要素9およびチェック弁10をバルブケース4から取り出して交換することで簡単かつ短時間でチューニングを行うことができる。また、絞り弁8、弁要素9およびチェック弁10は、仕切部材7とともにアジャスタ30および中空軸35とによって、各部材がばらけることなく一体的に組みつけられてバルブアッセンブリを構成しているので、アジャスタ保持部材29を取り外せば、バルブケース4からの中空部Aに収容されている絞り弁8、弁要素9およびチェック弁10を簡単に取り出すことが可能であり、また、バルブケース4への組み付けの際も、予め組み立てた上記バルブアッセンブリを中空部Aへ挿入することで簡単に組み付け作業を行うことができる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。