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JP5711955B2 - 切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品及びその製造方法 - Google Patents

切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品及びその製造方法に係り、より詳しくは、金属組織が主にラス状ベイニティックフェライト、残留オーステナイト、並びにマルテンサイトからなり、高い降伏強度と引張り強度を有する高焼入性の超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)からなる切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品、高強度鍛造品、高圧燃料配管及びそれらの製造方法に関する。
なお、本発明の「高強度鍛造品」としては、例えば、ニアネットシェイプ鍛造品等が代表的に挙げられ、一次鍛造品のみならず、一次鍛造品を更に鍛造(冷間、温間鍛造等)して得られる二次鍛造品、三次鍛造品等の精密鍛造品、更に当該鍛造品を複雑な形状に加工して得られる最終製品、ディーゼルエンジンに搭載される蓄圧式燃料噴射システム用コモンレール、燃料噴射管等も全て包含される。
自動車、電機、機械等の産業用技術分野における鍛造品は一般に、加熱温度が異なる種々の鍛造(加工)を行った後、焼入れ・焼戻し等の調質処理(熱処理)をして製造されており、例えば自動車を例に挙げると、クランクシャフト、コンロッド、トランスミッションギア、ディーゼルエンジンに搭載される蓄圧式燃料噴射システム用コモンレール等には、熱間鍛造品(加圧温度1100〜1300℃)や温間鍛造品(加圧温度600〜800℃)が、ピニオンギア、歯車、ステアリングシャフト、バルブリフター等には、冷間鍛造品(常温で加圧)がそれぞれ汎用されている。
近年、自動車の車体の軽量化と衝突安全性を確保するため、残留オーステナイトの変態誘起塑性を伴う成形可能な超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)の適用が検討されている。
例えば、特許文献1には、概ねフェライトとオーステナイトの2相域温度にて焼鈍と鍛造の両方を行った後、所定温度でオーステンパ処理するという独自の熱処理を採用することによって、引張強度が600MPa級以上の高強度域において、伸び及び強度−絞り特性のバランスに優れた高強度鍛造品の製造方法に関する技術が、又、特許文献2には、焼戻しベイナイト又はマルテンサイトを作り分けた後、概ねフェライトとオーステナイトの2相域温度で焼鈍と鍛造の両方を行い、その後、所定温度でオーステンパ処理する方法を採用することにより、伸び、及び、強度−絞り特性のバランスに優れた高強度鍛造品を製造し得る技術が、更に、特許文献3には、2相域の温度範囲に加熱した後、該2相域で鍛造加工を行い、その後、規定のオーステンパ処理を施すことで、鍛造加工時の温度を低下できると共に、優れた伸びフランジ性と加工性を備えた高強度鍛造品を製造し得る技術が、開示されている。
しかしながら、これらの方法で得られる鍛造品を製造する場合、以下に記載する問題が発生する可能性がある。
鍛造品は、その加工率に応じて発熱するため、鍛造時の部品温度が部位によって変化する場合がある。例えば、高温(Ac3点付近)で鍛造を行った場合には、加工率が高いと発熱量も大きくなり、オーステナイト同士の合体・成長が発生するため、熱処理後に粗大な残留オーステナイトが生成し、衝撃特性を劣化させることが考えられる(高温鍛造時の問題点)。一方、低温側(Ac1点付近)で鍛造を行った場合には、加工率が低いと十分な発熱量が確保できないので、不安定な残留オーステナイトが大量に生成し、熱処理後、破壊の起点となる硬質なマルテンサイトが生成して衝撃特性を劣化させることが考えられる(低温鍛造時の問題点)。従って、鍛造品の温度や加工率が異なると、部分的に粗大な残留オーステナイトや不安定なオーステナイトが発生し易く、鍛造品全体として安定かつ優れた耐衝撃特性を得ることが難しい。
一方、特許文献4には、熱延鋼材作製時にNb、Ti、Vの内の一種類あるいは2種類以上の添加、及び適量のAl添加を行い、概ねフェライトとオーステナイトの2相域温度で焼鈍と鍛造の両方を行った後、所定温度でオーステンパ処理するという熱処理を採用することにより、鍛造温度、及び鍛造加工率に依らず伸び、及び強度−絞り特性のバランスに優れ、引張強度も600MPa以上の、耐衝撃特性に優れた鋼製高強度加工品、高圧燃料配管(特に、高強度かつ耐衝撃特性に優れた、ディーゼルエンジン用燃料噴射管及びディーゼルエンジン用コモンレール等)を製造し得る技術が開示されている。
この特許文献4に開示されている発明は、前記特許文献1〜3に開示されている技術では得られない格別の効果を奏する点で優れ、その超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)は自動車の車体の軽量化と衝突安全性の確保により大きく寄与し得ることが期待される。しかしながら、この超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)は、微粒状ベイナイトフェライトとポリゴナルフェライトが、マトリックスの中で、ベイナイトフェライトのラス構造と共に共存することから、更なる高い降伏強度と引張強度を達成するための完全なTBF鋼を得るためには、高い焼入れ性が必要である。
又、特許文献5に開示されている超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)は優れた冷間鍛造性に加え、高い疲労強度を有するため、ディーゼルエンジンに搭載される蓄圧式燃料噴射システム用コモンレール、燃料噴射管等の各種自動車部品への適用が期待できる。しかし、これを可能にするには、TBF鋼の焼入れ性を高めることに加え、切欠き疲労強度を改善することが必要である。しかしながら、この高焼入れ性、高切欠き疲労強度を有するTBF鋼は未開発の状況にある。
特開2004−292876号公報 特開2005−120397号公報 特開2004−285430号公報 特開2007−231353号公報 特開2010−106353号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、鍛造温度や鍛造加工率等に依らず、化学組成の成分添加量及び熱処理条件を制御することによって、高切欠き疲労強度を有する超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)からなる高強度鋼製加工品及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、鍛造温度や鍛造加工率等に依らず、化学組成の成分添加量及び熱処理条件を制御することによって高切欠き疲労強度を有する超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)製の高強度鋼製加工品の実現と、これらの製造方法を確立すべく、ラス状ベイニティックフェライト、残留オーステナイト、並びにマルテンサイトのマトリックス構造をもつ超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)を試作し、その切欠き疲労特性を調査した。
その結果、C−Si−Mn系TBF鋼において、Cr、Mo、Nb及びBを適量含み、かつ、炭素当量(Ceq)を適正値に設定することにより、母相組織が主にラス状ベイニティックフェライトからなり、かつ少量のポリゴナルフェライト及びグラニュラーベイニティックフェライトを含み、第2相組織が微細な残留オーステナイト、マルテンサイトからなる微細構造の金属組織を有する、切欠き疲労強度の優れた超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)が得られることを見出した。
すなわち、本発明に係る切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品は、C:0.15〜0.25%(質量%の意味、以下同じ)、Si:2.5%以下(0%を含まない)、Mn:0.5〜2%、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.5%以下、Nb:0.1%以下を含有し、かつ、下記式により規定される炭素当量(Ceq)が0.65%以上0.75%未満で、残部Fe及び不可避的不純物からなり、さらに金属組織は、母相組織がラス状ベイニティックフェライトを全組織に対して体積率で65%以上と、ポリゴナルフェライト及びグラニュラーベイニティックフェライトを合計で全組織に対して体積率で5%以下含有し、第2相組織が残留オーステナイトを全組織に対して体積率で5〜20%と、マルテンサイトを全組織に対して体積率で10%以下含有することを特徴とするものである。
[式1]
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
前記切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品は、更に他の元素として、B:0.0025%以下を含んでいてもよい。
又、前記高強度鋼製加工品としては、ニアネットシェイプ鍛造品等の一次鍛造品のみならず、一次鍛造品を更に鍛造(冷間、温間鍛造等)して得られる二次鍛造品、三次鍛造品等の精密鍛造品、更に当該鍛造品を複雑な形状に加工して得られる最終製品の他、ディーゼルエンジンに搭載される蓄圧式燃料噴射システム用コモンレール、燃料噴射管等の高圧燃料配管が挙げられる。
本発明に係る切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品を製造する方法は、前記成分組成を満たす鋼素材を使用し、該鋼素材をAc3点以上の温度域で1秒以上保持し、該温度域で鍛造加工を施した後、1℃/s以上の平均冷却速度で300〜450℃(好ましくは325〜425℃)まで冷却し、該温度域で100〜2000秒保持する工程を含むことを特徴とするものである。
又、本発明は、前記高圧燃料配管を製造する方法として、該鋼素材をAc3点以上の温度域で1秒以上保持し、該温度域で鍛造加工を施した後、1℃/s以上の平均冷却速度で300〜450℃(好ましくは325〜425℃)まで冷却し、該温度域で100〜2000秒保持する工程を経た後、常温まで冷却し、その後、ガンドリル加工法による管軸方向の穿孔加工、管軸方向に圧延する伸管加工、切断加工、端末加工、及び、機械加工を行うことを特徴とするものである。
本発明は、焼入れ性及び切欠き疲労強度の向上のためにCr、Mo、Nb及びBを適量含有し、炭素当量(Ceq)を適正値に設定した鋼素材を用い、所定の熱処理を採用することにより、母相組織が主にラス状ベイニティックフェライトからなり、かつ少量のポリゴナルフェライト及びグラニュラーベイニティックフェライトを含み、第2相組織が微細な残留オーステナイト、マルテンサイトからなる微細構造の金属組織を有する、切欠き疲労強度の優れた超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)が得られ、これにより加熱温度や、加工率(鍛造加工率や圧延加工率等)等によらず、焼入れ性に優れた高切欠き疲労強度を有する高強度鋼製加工品を提供できる。
本発明の実施例1における、下記式2により規定される焼入れ性(Πf)の関数としての、引張強度(TS)、切欠き引張強度(TS)における変化を示す図である。 同じく実施例1における焼入れ性(Πf)の関数としての、切欠き強度比(NSR=TS/TS)における変化を示す図である。 同じく実施例1における焼入れ性(Πf)の関数としての、平滑試験片及び切欠きを有する試験片の疲労限における変化を示す図である。 同じく実施例1における焼入れ性(Πf)の関数と疲労限の切欠き感受性qの関係を示す図である。 同じく実施例1における炭素当量(Ceq)の関数としての、疲労強度(FL)及び切欠き疲労強度(FL)における変化を示す図である。 同じく実施例1における鋼種No.5の供試鋼の金属組織(顕微鏡写真)を示す図で、(a)はラス状ヘイニティックフェライトのマトリックス構造体(緑の相)と残留オーステナイト(赤の相)、(b)はマルテンサイト(黄緑の相)と残留オーテナイト(黒い相)をそれぞれ示す。
[式2]
Πf=(1+0.64Si)×(1+4.10Mn)×(1+2.83P)×(1−0.62S)×(1+2.33Cr)×(1+0.52Ni)×(1+3.14Mo)×(1+0.27Cu)×(1+1.5(0.9−C))
ただし、最後の項はB含有鋼のみ有効である。
本発明において、前記式1により規定される炭素当量(Ceq)の値を、0.65%以上0.75%未満に限定したのは、0.65%未満では結晶粒の微細化を十分にはかることができず、他方、0.75%以上では、焼入れ性が過大となって、降伏応力と引張強さが過度に高くなるためである。
又、本発明において、特に切欠き疲労強度を改善するためにCr、Mo、Nbの含有量を前記の値に規定したのは、以下に記載する理由による。
即ち、Crは鋼の強化元素として有用であると共に、残留オーステナイト(γR)の安定化や所定量の確保に有効な元素であるのみならず、鋼の焼入れ性の向上にも有効な元素であるが、焼入れ性の向上効果を十分に発揮させるためにはCrを0.5〜1.5%含有させる必要がある。その理由は、Crの含有量が0.5%未満では、鋼の焼入れ性を十分に向上できず、他方、1.5%を超えると焼入れ性は高くなるが、残留オーステナイトの炭素濃度が不安定となるためである。
Moは、鋼の焼入れ性の向上に有効な元素であるが、その効果を十分に発揮させるためには0.5%以下含有させる必要がある。Nbは、鋼の微小構造を保ち耐衝撃性を高める作用があるが、その効果を十分に発揮させるためには0.1%以下含有させる必要がある。
本発明において、前記切欠き疲労強度を改善するためには、その他の成分を下記の通り制御する必要がある。
・C:0.15〜0.25%
Cは高強度を確保し、かつ、残留オーステナイトを確保するために必須の元素である。より詳しくは、オーステナイト中のCを確保し、室温でも安定した残留オーステナイトを残存させて、延性及び耐衝撃特性を高めるのに有効であるが、0.15%未満ではその効果が十分に得られず、他方、添加量を増すと残留オーステナイト量が増加して高い延性及び耐衝撃特性が得られる。しかし、0.25%を超えると、その効果が飽和するのみならず、中心偏析等による欠陥等が発生し、耐衝撃特性を劣化するため、上限を0.25%に限定した。
・Si:2.5%以下(0%を含まない)
Siは酸化物生成元素であるので、過剰に含まれると耐衝撃特性を劣化させるため添加量を2.5%以下とした。
・Mn:0.5〜2%
Mnは、オーステナイトを安定化し、規定量の残留オーステナイトを得るために必要な元素である。この様な作用を有効に発揮させるためには、0.5%以上(好ましくは0.7%以上、より好ましくは1%以上)添加することが必要である。しかし、過剰に添加すると、鋳片割れが生じるなどの悪影響が出るので、2%以下とした。
・B:0.0025%以下
Bは、Cr、Mo等と同様に鋼の焼入れ性の向上に有効な元素であるが、残留オーステナイトの炭素濃度を低くしない効果がある。又、切欠き疲労強度を低下させずに焼入れ性を高め、コストを低く抑えるためには、0.0025%以下が好ましい。なお、Bは他の添加成分と異なり、結晶粒内に入らず粒界に析出するため、B添加のものは他の成分の添加のものより圧延等の加工性に優れている。
又、本発明において、金属組織を前記のように規定したのは、以下に記載する理由による。
・母相組織:ラス状ベイニティックフェライトが全組織に対して体積率で65%以上、ポリゴナルフェライト及びグラニュラーベイニティックフェライトを合計で全組織に対して体積率で5%以下
焼入れ性に優れた高強度鋼製加工品の切欠き疲労強度、耐衝撃特性及び耐内圧疲労特性を向上させるためには、ラス状ベイニティックフェライトの全組織に対する体積率を65%以上とする必要がある。なお、ポリゴナルフェライト及びグラニュラーベイニティックフェライトの全組織に対する体積率を合計で5%以下としたのは、5%を超えると靭性が低下するためである。
・第2相組織:残留オーステナイトが全組織に対して体積率で5〜20%、マルテンサイトが全組織に対して体積率で10%以下
本発明の加工品は、母相組織が主にラス状ベイニティックフェライトからなり、かつ少量のポリゴナルフェライト及びグラニュラーベイニティックフェライトを含み、第2相組織が微細な残留オーステナイト、マルテンサイトからなる。このうち、残留オーステナイトは、全伸びの向上に有効であり、又、塑性誘起マルテンサイト変態による亀裂抵抗となることで耐衝撃特性の向上にも有効であるが、該残留オーステナイトの全組織に対する体積率が5%未満では、前記効果を十分に発揮できず、他方、20%を超えると残留オーステナイト中のC濃度が低くなり、不安定な残留オーステナイトとなるので、前記効果を十分に発揮することができないため、全組織に対する体積率を5〜20%とした。又、マルテンサイトは、母相との界面において破壊の起点となるため、全組織に対する体積率を10%以下とした。
次に、本発明の高強度鋼製加工品の製造方法は、上記成分組成を満たす鋼材を使用し、該鋼材をAc3点以上の温度域で所定時間、好ましくは1秒以上保持し、該温度域で塑性加工を施した後、所定の平均冷却速度、好ましくは1℃/s以上の平均冷却速度で300〜450℃(325〜425℃)まで冷却し、該温度域で100〜2000秒(好ましくは1000秒)保持する工程を含むことを特徴とするものであるが、該熱処理条件を規定したのは以下に示す理由による。
まず、鋼材をAc3点以上の温度域で1秒以上保持するのは、加熱温度を概ね2相域〜オーステナイト単相域温度とすることにより微細なラス状ベイニティックフェライト(母相組織)及び第2相組織を得ることができるからである。なお、加熱温度がAc3点未満では、微細なラス状ベイニティックフェライト及び第2相組織が満足に析出しないためである。又、上記温度域での保持時間としては、加熱手段に例えば高周波加熱を採用した場合には瞬時にAc3点以上の温度域に保持できるので、好ましくは1秒以上である。なお、その上限は特に限定されないが、生産性を考慮すると約30分程度である。
上記塑性加工としては、鍛造加工、押出加工、穿孔加工、又はロール成形による伸管加工が挙げられるが、これらの加工における条件は、特に限定されず、通常行われている方法で行えばよい。
本発明は、上記製造条件を採用して、ディーゼルエンジン用燃料噴射管又はディーゼルエンジン用コモンレールを製造する方法も規定する。
ディーゼルエンジン用燃料噴射管を製造する方法としては、前記成分組成を満たす鋼素材を使用し、1200℃以上の温度に加熱保持する工程、熱間押出加工を施す工程を経た後、該鋼素材をAc3点以上の温度域で所定時間、好ましくは1秒以上保持し、該温度域で温間押出加工を施した後、所定の平均冷却速度、好ましくは1℃/s以上の平均冷却速度で300〜450℃、(好ましくは325〜425℃)まで冷却し、該温度域で100〜2000秒(好ましくは500〜1500秒)保持する工程を経た後、常温まで冷却し、その後、ガンドリル加工法による管軸方向の穿孔加工、管軸方向に圧延する伸管加工、切断加工、端末加工、及び、曲げ加工を行う方法を採用することができる。
又、ディーゼルエンジン用コモンレールを製造する方法としては、規定の成分組成を満たす鋼素材を使用し、該鋼素材をAc3点以上の温度域で所定時間、好ましくは1秒以上保持し、該温度域で鍛造加工を施した後、所定の平均冷却速度、好ましくは1℃/s以上の平均冷却速度で300〜450℃、(好ましくは325〜425℃)まで冷却し、該温度域で100〜2000秒(好ましくは500〜1500秒)保持する工程を経た後、常温まで冷却し、その後、ガンドリル加工法による管軸方向の穿孔加工、切断加工及び機械加工を行う方法を採用することができる。
なお、前記ディーゼルエンジン用燃料噴射管又はディーゼルエンジン用コモンレールを製造する方法において、熱間加工を施した後、Ac3点以上の温度域まで冷却する場合があるが、その冷却方法は特に限定されない。又、100〜2000秒保持する工程を経た後、常温までの冷却は、速やかに行うことが望ましい。さらに、熱間加工後、常温まで冷却する際の冷却方法は特に限定されない。
上記製造方法に用いる鋼素材としては、ビレットや熱延丸棒等が挙げられるが、これらは常法通りに目的成分を満足する鋼を溶製し、スラブとした後、熱間のまま加工するか、又は一旦室温まで冷却したものを再度加熱した後に熱間加工を行って得られたものを用いればよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で変更・実施することは、全て本発明の技術的範囲に含まれる。
供試鋼には、表1に示す成分組成からなる鋼種No.1〜6からなるビレット(表中の単位は質量%であり、残部Fe及び不可避的不純物)をそれぞれ1250℃域まで再加熱後、熱間圧延を行い、酸洗後、機械加工して作製した、直径13mmの6種類の丸棒鋼を用いた。鋼種No.1は基本鋼(ベース鋼)であり、鋼種No.2、3は従来鋼、鋼種No.4〜6は本発明鋼である。
次に、これらの熱延丸棒鋼から、引張試験用(平行部直径3mm)と疲労試験用(平行部直径3mm)の平滑材と切欠き材(応力集中Kt=1.7)を加工し、母相をラス状ベイニティックフェライトとした後、γ域焼鈍(900℃で1200秒保持)後、400℃で500秒のオーステンパ処理を施した。
本実施例における鋼種No.1〜6からなるTBF鋼の切欠き引張特性と切欠き疲労強度特性を下記要領で調査した結果を表2と、図1〜図5にそれぞれ示す。さらに、本実施例の鋼種No.4〜6のうち、代表例として鋼種No.5(本発明鋼)の試験片の金属組織(顕微鏡写真)を図6に、組織の体積率を表3にそれぞれ示す。図6(a)の緑と赤の相はそれぞれラス状ベイニティックフェライトのマトリックス構造体と残留オーステナイトを示し、図6(b)の黄緑の相はマルテンサイト、黒い相は残留オーステナイトを示す。
・切欠き引張特性:
引張試験は、前記引張試験片を用い、試験機にはハードタイプ万能試験機(株式会社島津製作所製 島津オートグラフ AG−10TD)を使用し、初期降伏挙動(0.2%耐力)を詳細に調査するため試験片平行部にひずみゲージ(ゲージ長さ10mm、共和電業株式会社製)を貼付した。試験温度は25℃、クロスヘッド速度は1mm/minとした。その結果を表2と図1、図2に示す。図1、図2は焼入れ性(Πf)の関数としての、引張強度(TS)、切欠き引張強度(TS)、切欠き強度比(NSR=TS/TS)における変化を示す。
・切欠き疲労強度特性:
疲労試験は、前記疲労試験片を用い、試験機には多軸式荷重疲労試験機(東京衝機製造所株式会社製 PMF−10)を使用し、試験温度25℃、応力比R=0.1、周波数80Hzとした。その結果を図3、図4、図5に示す。図3、図4は、焼入れ性(Πf)の関数としての、平滑試験片及び切欠き試験片と切欠き感受性因子の疲労限度における変化を示す。図5は炭素当量(Ceq)の関数としての疲労強度(FL)及び切欠き疲労強度(FL)における変化を示す。
・金属組織の観察:
各試験片の微細組織は、試験片をナイタール、及びレペラ腐食による光学顕微鏡(倍率400倍もしくは1000倍)、及び走査型電子顕微鏡(SEM:倍率1000倍もしくは4000倍)観察、飽和磁化法(熱処理, Voll.136, (1996), P.322)による残留オーステナイト量測定、X線によるオーステナイト中のC濃度測定、透過型電子顕微鏡(TEM:倍率10000倍)、ステップ間隔100nmによるFE/SEM−EBSPによる組織解析を実施し、組織を同定した。このようにして得られた各試験片について調べた組織の体積率を表3に示す。
これらの結果より、以下のように考察することができる。
(1).各TBF鋼のビッカース硬さと引張特性を示す表2より明らかのように、鋼種No.1〜6のうち、鋼種No.4〜6の本発明のTBF鋼はいずれもビッカース硬さが、HV338〜385であり、焼き入れ性の増加に伴い増加することがわかる。又、各鋼の切欠き引張特性を示す図1、図2より明らかのように、引張強度、切欠き引張強度及び切欠き強度比も、ビッカース硬さと同様に、焼入れ性に伴い増加し、鋼種No.4〜6の本発明鋼は引張強度、切欠き引張強度と切欠き強度比がすべて高い値を示している。
又、鋼種No.4〜6の本発明のTBF鋼において、平滑試験片及び切欠きを有する試験片の疲労限(FL)は、焼入れ性の増加に伴い、又はCr及び/又はMoの含有量の増加に伴い増加したが、切欠き材の疲労限(FL)の焼入れ性依存は、平滑試験片の疲労限(FL)のそれよりも大きかった(図3)。又、結果として生じる切欠き感受性qは、焼入れ性の増加に伴い低下することが判明した(図4)。なお、切欠き感受性qは下記式3により求めた値である。その際、応力集中係数については1.7を使用した。
[式3]
q=(Kf−1)/(Kt−1)
Kt:応力集中係数
Kf:疲労切欠き係数(=FL/FL)
又、鋼種No.1〜6のTBF鋼において、平滑試験片の疲労限(FL)については差は見られなかったが、切欠きを有する試験片の疲労限(FL)は、炭素当量(Ceq)が0.65以上になると増加する傾向を示している。
(2).鋼種No.4〜6に示す本発明鋼(TBF鋼)は、例えば鋼種No.5の金属組織(顕微鏡写真)を図6に示すように、母相組織が主にラス状ベイニティックフェライトとからなり、かつ少量のポリゴナルフェライト及びグラニュラーベイニティックフェライトを有し、第2相組織が微細な残留オーステナイトとマルテンサイトからなり、初析フェライトの生成が抑制され、かつ結晶粒が微細化された。又、焼入れ性(Πf)の高い鋼種No.4〜6の本発明鋼(TBF鋼)では、Ms温度(マルテンサイト開始温度)以上のオーステンパ処理において島状マルテンサイト組織が形成されたことにより硬度(Hv)が増加した。
表1の鋼種No.4に示す成分を有する本発明鋼製のビレットを1200℃の温度に加熱保持して熱間押出加工を施した後、940℃まで冷却し、当該温度に1秒間以上保持して所定の温間押出し加工を施して丸棒とし、該丸棒を4℃/sの冷却速度で325℃まで冷却し、該温度域に1800秒保持した後、所定の冷却速度で常温まで冷却し、しかる後ガンドリル加工にて管軸方向に穿孔して燃料噴射管用素管とし、該素管に所定の伸管加工を施して製品寸法が外径8.0mm、内径3.0mm、肉厚2.5mmの燃料噴射管用鋼管を得、これを所望長さに切断加工し、次いでナット等のねじ部品を挿入した後に接続頭部をプレス成形する端末加工を施し、更に曲げ加工を施してディーゼルエンジン用燃料噴射管を得た。
表1の鋼種No.5に示す成分を有する本発明鋼製のビレットを950℃の温度に1秒間以上保持し、該温度域で鍛造加工を施し、続いて1℃/sの冷却速度で300℃まで冷却し、該温度で2000秒間保持してオーステンパ処理を施し、次いで冷間でガンドリル加工法により管軸方向に穿孔し、その後冷間で機械加工を施して外径30mm、内径8mm、肉厚12mmとし、ディーゼルエンジン用コモンレールを得た。
上記実施例2のディーゼルエンジン用燃料噴射管、実施例3のディーゼルエンジン用コモンレールは、いずれも高強度であり、さらに高切欠き疲労強度を得ることができ、部品の小型軽量化がはかられることが確認された。
本発明は、焼入れ性及び切欠き疲労強度の向上のためにCr、Mo、Nb及びBを適量含有し、炭素当量(Ceq)を適正値に設定した鋼素材を用い、所定の熱処理を採用することにより、母相組織が主にラス状ベイニティックフェライトからなり、かつ少量のポリゴナルフェライト及びグラニュラーベイニティックフェライトを含み、第2相組織が微細な残留オーステナイト、マルテンサイトからなる微細構造の金属組織を有する、切欠き疲労強度の優れた超高強度低合金TRIP鋼(TBF鋼)が得られ、これにより加熱温度や、加工率(鍛造加工率や圧延加工率等)等によらず、焼入れ性に優れた高切欠き疲労強度を有する高強度鋼製加工品を提供できるので、ディーゼルエンジン用燃料噴射管やコモンレール等の各種自動車部品への適用がより一層期待できる。

Claims (7)

  1. C:0.15〜0.25%(質量%の意味、以下同じ)、Si:2.5%以下(0%を含まない)、Mn:0.5〜2%、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.5%以下、Nb:0.1%以下を含有し、かつ、下記式により規定される炭素当量(Ceq)が0.65%以上0.75%未満で、残部Fe及び不可避的不純物からなり、さらに金属組織は、母相組織がラス状ベイニティックフェライトを全組織に対して体積率で65%以上と、ポリゴナルフェライト及びグラニュラーベイニティックフェライトを合計で全組織に対して体積率で5%以下含有し、第2相組織が残留オーステナイトを全組織に対して体積率で5〜20%と、マルテンサイトを全組織に対して体積率で10%以下含有する、切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品。

    Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
  2. 更に、B:0.0025%以下を含有する請求項1に記載の切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品。
  3. 前記加工品が鍛造品である請求項1に記載の切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品。
  4. 前記加工品が高圧燃料配管である請求項1又は2に記載の切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品。
  5. 前記高圧燃料配管がディーゼルエンジン用燃料噴射管、又は、ディーゼルエンジン用コモンレールである切欠き疲労強度に優れた請求項4に記載の高強度鋼製加工品。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の高強度鋼製加工品を製造する方法であって、請求項1に記載の成分組成を満たす鋼素材を使用し、該鋼素材をAc3点以上の温度域で1秒以上保持し、該温度域で鍛造加工を施した後、1℃/s以上の平均冷却速度で300〜450℃まで冷却し、該温度域で100〜2000秒保持する工程を含むことを特徴とする切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品の製造方法。
  7. 請求項6に記載の高圧燃料配管を製造する方法であって、請求項1に記載の成分組成を満たす鋼素材を使用し、該鋼素材をAc3点以上の温度域で1秒以上保持し、該温度域で鍛造加工を施した後、1℃/s以上の平均冷却速度で300〜450℃まで冷却し、該温度域で100〜2000秒保持する工程を経た後、常温まで冷却し、その後、ガンドリル加工法による管軸方向の穿孔加工、管軸方向に圧延する伸管加工、切断加工、端末加工、及び、機械加工を行うことを特徴とする切欠き疲労強度に優れた高強度鋼製加工品の製造方法。
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