JP5791095B2 - Pnh型白血球の検出方法 - Google Patents
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Description
PNH型の異常血球は健常者の末梢血中にもごくわずかに存在するが、正常の造血幹細胞に比べて増殖能が高いわけではないので、一定の割合(0.003%)以上に増えることはない(非特許文献1)。一方で正常造血幹細胞に対する免疫学的な障害が存在する環境においては、PNH型の幹細胞は正常幹細胞に比べてT細胞による障害を受けにくいため、PNH型血球が相対的に増加すると考えられている。
以上のことから、RAやAAといった骨髄不全症例において治療方針を決定する上で、PNH型血球の検出を臨床前段階において正確に行うことは極めて重要であることがわかる。
本発明者らはこれらの知見に基づいてさらに鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
[1]FLAERおよび少なくとも一種の抗白血球表面抗原抗体を用いてフローサイトメトリーを行うことを含む、PNH型白血球の検出方法;
[2]フローサイトメトリーにおける波形処理がデジタル化されている、[1]に記載の方法;
[3]抗白血球表面抗原抗体が、抗CD11b抗体、抗CD33抗体、抗CD45抗体、抗CD3抗体からなる群、あるいは抗CD19抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体および抗CD56抗体からなる群から選択される、[1]または[2]に記載の方法;
[4]二種類以上のPNH型白血球を同時に検出することを特徴とする、[3]に記載の方法;
[5]FLAERおよび抗白血球表面抗原抗体を用いてフローサイトメトリーを行うことを含む、骨髄不全症候群の検査方法;
[6]フローサイトメトリーにおける波形処理がデジタル化されている、[5]に記載の方法;
[7]抗白血球表面抗原抗体が、抗CD11b抗体、抗CD33抗体、抗CD45抗体、抗CD3抗体からなる群、あるいは抗CD19抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体および抗CD56抗体からなる群から選択される、[5]または[6]に記載の方法;
[8]骨髄不全症候群が自己免疫性であると診断できる、[5]〜[7]のいずれか一に記載の方法;
[9]自己免疫性骨髄不全症候群と造血幹細胞異常性骨髄不全症候群の判別方法である、[5]〜[7]のいずれか一に記載の方法;
[10]骨髄不全症候群に対する免疫抑制療法の適否の判別方法である、[5]〜[9]のいずれか一に記載の方法;
などに関する。
当該検出方法を利用することで、骨髄不全症候群の免疫病態を診断することができる。PNH型白血球は自己免疫性の骨髄不全症例において有意に増加することから、本発明の方法により、自己免疫性の骨髄不全症候群を、造血幹細胞自身の異常に基づく骨髄不全と鑑別することができる。
本明細書における「PNH型白血球」とは、PIGA遺伝子に変異を来した造血幹細胞に由来するGPIアンカー型膜蛋白質欠失白血球のことをいう。PIGA遺伝子においては、通常、一定の割合で突然変異が発生することから健常者でもごく少数のPIGA変異幹細胞を有するが、健常者の骨髄に存在するこの変異造血幹細胞は静止期に留まり続けるため、この幹細胞由来のPNH型白血球が末梢血中に検出されることはない(Mochizuki K,et al.,Blood,112:2160−2162(2008))。
一方、正常造血幹細胞に対する免疫学的な障害が存在する環境(例えば自己免疫性の骨髄不全症例)では、PIGA遺伝子に変異を来した造血幹細胞はGPIアンカー型膜蛋白質を欠失しているため、正常幹細胞に比べてT細胞による障害を受けにくい。このような環境ではPIGA変異幹細胞が生き残るため、PNH型白血球が相対的に増加すると考えられる。
とはいえ、このような症例においてもPNH型白血球は血球全体の僅か0.1%前後しか存在しないため、PNH型白血球の検出には極めて高感度のフローサイトメトリーを用いる必要がある。本発明の検出方法は、このような微量PNH型白血球の検出に特に適したフローサイトメトリーの新たな手段を提供するものである。
後述する「FLAER(フレア、Fluorescent−Labeled inactive toxin Aerolysin)」はこれらのGPIアンカー型膜蛋白に結合する。
したがってFLAERが結合しない(FLAERで染色されない)白血球は、GPIアンカー型膜蛋白(たとえばCD59)を欠損している白血球として認識されるので、PNH型白血球であると判断することができる。
FLAERには液状とパウダー状の2種類があるが、液状FLAERであることが望ましい。本発明の方法では、液状FLAERの方が安定した結果を得ることができる。FLAERは通常488nmで励起し、530/30nmの蛍光を発する。
また好ましくは、これらの抗体は二つのグループに分けられる。抗CD11b抗体、抗CD33抗体、抗CD45抗体、抗CD3抗体からなる群は、PNH型顆粒球とPNH型単球を同時に検出するために用いられる。一方で抗CD19抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体および抗CD56抗体からなる群は、PNH型のB細胞とT細胞とNK細胞を同時に検出するために用いられる。
本発明の方法によれば、上記二つのグループのいずれかを選択し、その一種以上の抗体を用いることによって、二種類以上のPNH型白血球を同時に検出することも可能である。
これらの抗体のクラスは特に限定されず、また市販のものを用いてもよい。
例えばフローサイトメーターとしてFACSCanto(登録商標)を用いる場合、PE、FITC、PerCP−Cy5.5、PE−Cy7、APC、APC−H7などの蛍光色素や蛍光物質でそれぞれラベルした複数の抗体や細胞検出マーカー等を同時に用いることが可能である。
フローサイトメトリーの手法としては特に限定されないが、波形処理がデジタル化される(つまり「デジタル波形処理方式」を採用する)フローサイトメーターを用いることが望ましい。
すなわち、本発明における好ましい「フローサイトメトリー」とは、デジタル波形処理(「デジタル波形処理方式」)が可能なフローサイトメーターを用いて行うフローサイトメトリーを意味する。なお、本明細書中、フローサイトメトリーに用いられる機器のことをフローサイトメーターと称する。
特に後述するように、フローサイトメトリーとしてFACSCanto(登録商標)を採用した場合の「デジタル波形処理方式」としては、例えば上記蛍光パルスシグナルを直接262,144チャネルの解像度でリニアデータにAD変換し、その後Log対数換算及び蛍光補正(逆行列処理)によって数値演算処理プロセッサー(digital signal processer;DSP)によって解析することをいう。
細胞懸濁液には死細胞やデブリスが含まれており、これらはフローサイトメトリーにおけるノイズを発生させる原因となる。また正しいデータを得るためには細胞は一個ずつフローされる必要がある。したがって上記懸濁液をフローサイトメーターに付す前には、細胞懸濁液中の細胞はできるだけ一つずつの細胞に均一化したうえ、死細胞やデブリスなどの不純物はできるだけ除去することが望ましい。均一化には自体公知の一般的手法を適用でき、例えば細胞懸濁液のフィルタリングや、ボルテックス操作などを各操作のプロトコールに準じて行う。
フィルタリングに用いられるフィルターとしては、死細胞の集塊やデブリスが除けるメッシュサイズを有するものであれば特に限定されないが、例えばポア径(40μm)のナイロンメッシュが挙げられる。
フローサイトメーターに付す前には、再度デブリスや細胞塊が残っていないかどうかを視認し、残っていれば改めて上記フィルターに通すことが望ましい。
特にフローサイトメータとしてFACSCanto(登録商標)を用いた場合、上記サンプルフローの値を制御するシース圧(上記シース液の入った容器に対する圧力)は4.5psiに固定されているが、サンプル流への圧力は数値化(psi)されておらず、サンプルが吸引される量がLow=10μL/min、Med=60μL/min、High=120μL/minになるように、またシース液=18mL/minになるようにサンプル吸引中のチューブ内の圧が調節されている。
測定時のフロー速度は、100〜300細胞/秒が好ましく、特に100〜200細胞/秒であることが好ましい。
FACSCanto(登録商標)ではデュアルレーザー・セパレートビームスポット方式に加えてオプティカルゲルを用いる事で蛍光の漏れ込みを最小限にしている。また、従来の直列方式、または分岐光学方式で複数の蛍光色素を同時に検出する場合には、蛍光シグナルの強度は光学システムの検出器に達するまでに透過する光学フィルターの数に比例して減衰するという問題があったが、FACSCanto(登録商標)ではオクタゴン・トライゴン蛍光検出システムを採用することでこの問題を克服している。
パラメータ数は1パラメータでもよいし、2パラメータ以上であってもよいが、本発明の方法では少なくともFLAERと抗白血球表面抗原抗体の2つを検出するので、2パラメータ以上のヒストグラム(サイトグラム)を用いることが望ましい。複数の抗体を用いて多種類の細胞に対する測定を同時に行う場合は、例えばリストモードデータを用いてパラメータの組合せを変え、異なるヒストグラムをその都度得ればよい。
分析対象となる測定パラメータとしては、以下のパラメータが挙げられる。
(1)前方散乱光(Forward Scatter、FSC)
(2)側方散乱光(Side Scatter、SSC)
(3)7−ADD(DAPI)
(4)蛍光(Fluorescence、FL)
ゲーティングに用いられる蛍光パラメーターの少なくとも一つは、FLAERである。前述のとおりFLAERはGPIアンカー型膜蛋白質を検出するために用いられる。また少なくとも一つは、上記抗白血球表面抗原抗体(蛍光色素などで標識されたもの)に由来する。
(1)FSC−A(Area:パルス面積)とSSC−Aで展開し、顆粒球、単球、リンパ球からなる白血球領域にゲートをかける;
(2)FSC−W(Width:パルス幅)とFSC−H(Hight:パルス高)で展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外する;
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外する;
(4)死細胞を除外する(7−AAD陽性細胞やDAPI陰性細胞にゲートをかける);
(5)顆粒球領域にゲートをかける;
(6)CD11b強陽性細胞にゲートをかける;
(7)(1)〜(6)により導きだされた細胞が純粋な成熟顆粒球と定義される。この細胞群におけるFLAER発現を解析する。
ここで「リージョン」とは、目的とする細胞集団に着目した解析(クラスター解析)を行うために、データを絞り込むために設定した領域をいう。またリージョンを目的とする細胞集団ごとに設定することを「リージョンの設定」という。
リージョンの設定は種々の方法や条件式を利用して行われるが、これらの方法や条件式は当業者に公知であり、目的によって適宜設定することが可能である。
(1)FLAERへの反応性が低く;
(2)抗CD11b抗体に反応する;
という特徴を有するので、FLAER(X軸)と抗CD11b抗体(Y軸)との2パラメータヒストグラム上における左上の領域に現れる。
このヒストグラム上で左上領域に観察される細胞集団に対してリージョンを設定することで、得られたPNH型白血球の統計学的情報を入手することができる。
(1)FLAERへの反応性が低く;
(2)各細胞特異的な細胞表面抗原に対する抗体に反応する;
という特徴を有するので、FLAER(X軸)と抗細胞表面抗原抗体(Y軸)との2パラメータヒストグラム上における左上の領域に現れる。各細胞に特異的な細胞表面抗原に対する抗体については、前記したとおりである。
このヒストグラム上で左上領域に観察される細胞集団に対してリージョンを設定することでも、得られたPNH型白血球の統計学的情報を入手することができる。
(1)GPIアンカー型膜蛋白質の陰性細胞(PNH型白血球)の集団がヒストグラム上で明瞭に描出されるため、従来法と比べ視認しやすい。
(2)GPIアンカー型膜蛋白質の陰性細胞(PNH型白血球)の集団がヒストグラム上で集塊を形成し、陽性細胞の集団と明確に分離して描出されるため、左上領域に観察される細胞数を確認するだけでPNH型白血球の増加があるかどうかが判定できる。
(3)死細胞に起因するノイズや非特異的な結合に由来するノイズが極めて少なく、主観的な判断でノイズを省く必要が無い。
つまるところ、従来の高感度フローサイトメトリー法では本発明の方法と同じ感度・特異性で微少PNH型白血球を検出することは不可能であったが、本発明によって、どのような施設でも高感度で微少PNH型白血球を検出することができ、かつこれは何度でも簡単に再現できることが期待される。
本発明では、本発明者等が鋭意検討した結果、「PNH型白血球を検出する」という目的に対して、「FLAER」および「抗白血球表面抗原抗体」を、フローサイトメトリー、特に「波形処理がデジタル化された」フローサイトメトリーで行うという、極めてシンプルな条件を採用するに至った。しかしながらこの条件を採用することにより、従来法では予想だにし得ないほど、微量なPNH型白血球を自動的に検出できるようになったのである。特に、従来法の汎用化を妨げていた「偽のPNH型白血球」の主観による除外が可能となったことは、PNH型血球の検出法における画期的な進歩ということができる。
この場合、各抗体の陽性細胞集団の相対的蛍光強度が1×104〜1×105程度になるよう電圧を設定し、各蛍光抗体単独で染色した細胞(陽性コントロール)を未染色の細胞(陰性コントロール)と混ぜ合わせた検体を順番に流す。その時に陽性細胞集団にポジティブゲートをかけておく。全てのコンペンセーション用検体を流してから、Compensation Calculationボタンを押しコンペンセーションを行う(FACSCanto(登録商標)では自動的に蛍光補正されるので、マニュアルで蛍光補正をする必要がない)。
前記したように、骨髄不全症候群には、自己免疫的な障害によるものと造血幹細胞自身の異常によるものの2種類が混在している。骨髄不全症候群の治療に際しては、このような病態に即した治療を選択することが肝要である。
正常造血幹細胞に対する免疫学的な障害が存在する環境においては、PNH型の幹細胞は正常幹細胞に比べてT細胞による障害を受けにくいため、PNH型白血球は相対的に増加する。したがって対象におけるPNH型白血球を検出することで、対象が自己免疫的な骨髄不全に陥っているか否かを判断することができる。
本発明は、FLAERおよび抗白血球表面抗原抗体を用いてフローサイトメトリーを行うという骨髄不全症候群の新たな検査方法を提供するものである。
一方、本発明の方法によってもPNH型白血球を検出することができなければ、当該対象は自己免疫性の骨髄不全症候群を発症している可能性は低く、造血幹細胞の異常に基づく骨髄不全症候群の可能性が高いと判断することができる。
すなわち本発明は、対象における骨髄不全症候群が自己免疫性か造血幹細胞異常性かを判別する方法を提供する。
すなわち本発明は、骨髄不全症候群に対する免疫抑制療法の適否の判別方法を提供する。
また本明細書中において、「造血幹細胞異常性骨髄不全症候群」とは、造血幹細胞が後天的な遺伝子異常により増殖・分化しないようになることに起因する骨髄不全症候群を意味し、免疫抑制療法によって回復が見込まれない骨髄不全症候群のことをいう。このような疾患としては、例えば骨髄異形成症候群、低形成白血病などが挙げられる。
本発明で用いたフローサイトメーターであるFACSCanto(登録商標)は、ベクトン・ディキンソン社製のものである。
生体試料として末梢血を採用し、以下の操作を行うことで末梢血から白血球の細胞浮遊液を採取した。
(1)4℃に保存されたEDTA−2Na末梢血7mLから、別途PNH型赤血球の検出用に2mLを別のファルコンチューブに移し、4℃で保存した。残りのEDTA−2Na血5mLをそのまま2000rpmで10分間遠心分離し、血漿部分を除去した。
(2)ペレットに5−10倍量のLysis buffer(1L中に塩化アンモニウム8.26g、炭酸水素カリウム1.0g、4NA(EDTA・4Na)0.037gを含む溶液)を加えて転倒混和したのち8分間室温で静置した。この間、適宜転倒混和して溶血が進んでいることを確認した。
(3)500gで1分間遠心分離(KUBOTA社製 SEROMATIC IIのselection3)し、ペレットを残して上清をアスピレーターで除去した。
(4)再度5−10倍量のLysis bufferを加えて適宜転倒混和しながら5分間室温に置いた。溶血不十分の場合は計15分まで操作を延長した。
(5)500gで1分間遠心分離(KUBOTA社製 SEROMATIC IIのselection3)し、ペレットを残して上清をアスピレーターで除去した。
(6)ブロッキングのため、0.5%BSA+PBSを140μL加えてvortexしたのち10分間室温で静置した。
検体が採取後24時間以内であればブロッキングは不要とする。
これを細胞浮遊液として、以下の実験を行った。
以下の操作を行い、フローサイトメトリーに付すサンプルを作製した。
(1)5mLのファルコンチューブを2本用意し、実施例1で得られた細胞浮遊液から正確に50μLずつを取り、それぞれのチューブの底に静置した。この際チューブの壁に浮遊液がつかないように注意した。
(2)1本のチューブに、FLAER(10〜6M、Pinewood Scientific Services社製)6μL、抗CD11b−PE(50 ug/mL、BD Biosciences社製)4μL、7AAD(50 ug/mL、BD Biosciences社製)4μL、抗CD45−PE−Cy7(50μg/mL、BD Biosciences社製)4μL、抗CD33−APC(6.25μg/mL、BECKMAN COULTER社製)4μL、抗CD3−APC−H7(200μg/mL、BD Biosciences社製)4μLを加えた。他方のチューブは陰性対照として用い、FLAER以外の抗体をそれぞれ加えた。この時点で後に洗浄に用いるPBSを室温に戻しておいた。これらの操作は暗室(少なくとも蛍光灯は消した部屋内)で行った。また、試薬チューブの盖を開けたまま放置しないことに留意した。
(3)混合液をvortexした後、各チューブを遮光して、4℃の冷蔵庫内で20分静置した。
(4)各チューブにPBS3mLを加えて500gで1分間遠心分離(KUBOTA社製 SEROMATIC IIのselection3)した。次いで、ペレットを残して上清をアスピレーターで除去した。
(5)各チューブをラックの編み目にこすりつけるなどして震盪(ペレットをほぐす意味がある)し、PBSを400μLずつ加えた。
(6)軽くピペッティングしてからナイロンメッシュフィルターに通して死細胞の集塊を除去した後、新しいチューブに移してこれをフローサイトメトリー解析に付した。
(I)コンペンセーション
コンペンセーション用の検体は4℃保存されていた前日の健常者由来残余血を用いて行った。
(1)コンペンセーション用に何も加えない細胞浮遊液50μLをPBS 400mLで希釈した検体(以下、「unstained検体」と記載)、そして実施例2(2)に記載の各蛍光抗体を単独で加えた検体(以下、「蛍光抗体単独検体」などと記載)を用意した。なおFLAER検体、CD45検体にはunstained検体を50μLずつそれぞれ加えた。
(2)順番にFACSCanto(登録商標)に付し、データを保存した。細胞数は7AADのみ2×104、他は5×103であった。
(3)FACSCanto(登録商標)のコンペンセーションボタンを押し自動補正を行った。
以下の方法により顆粒球領域に対するゲーティングを行った。
(1)FSC−AとSSC−Aで展開し、顆粒球、単球、リンパ球からなる白血球領域にゲートをかけた。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)7−AAD陽性の死細胞を除外した。
(5)細胞構造の複雑性と大きさから類推される顆粒球領域にCD45およびSSC−Aでゲートをかけた。
(6)CD11b強陽性の細胞にゲートをかけた。
縦軸に白血球系統マーカー(顆粒球:CD11b、単球:CD33、リンパ球:CD3)を、横軸にFLAERをとってヒストグラムを展開した場合、PNH型血球はUpper Left(UL)領域に展開される。このUL領域内にある細胞をPNH型顆粒球として、その割合を(ULの細胞数/UR(Upper Right)の細胞数+ULの細胞数)×100(%)によって計算した。この計算を行うべく、上記方法によりPNH型顆粒球についてゲートをかけた結果を図1−1に示す。
一方、健常人50例を対象とした同様のPNH型顆粒球のフローサイトメトリー解析により、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加は、PNH型顆粒球0.003%以上と定義することができた。結果を図1−2に示す。
実施例1および2と同様の方法で末梢血からフローサイトメトリーに付すサンプルを作製した後、実施例3(I)に記載のコンペンセーションを行ったFACSCanto(登録商標)に対し当該サンプルを付した。次いで以下の方法によりゲーティングを行い、PNH型単球を検出した。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)7−AAD陽性死細胞を除外した。
(5)単球領域にゲートをかけた。
(6)CD33強陽性細胞にゲートをかけた。
一方、健常人50例を対象とした同様のPNH型単球のフローサイトメトリー解析により、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加は、PNH型単球0.05%以上と定義することができた。結果を図2−2に示す。
実施例1および2と同様の方法で末梢血からフローサイトメトリーに付すサンプルを作製した後、実施例3(I)に記載のコンペンセーションを行ったFACSCanto(登録商標)に対し当該サンプルを付した。次いで以下の方法によりゲーティングを行い、PNH型Tリンパ球を検出した。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)リンパ球領域にゲートをかけた。
(5)CD3強陽性細胞にゲートをかけた。
(6)必要に応じて、さらにCD8、CD4陽性細胞にそれぞれゲートをかけた。
一方、実施例3(III)に記載の方法と同様の方法で健常人50例以上を対象としたPNH型Tリンパ球の解析により、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加は、PNH型Tリンパ球0.1%以上と定義することができた。結果を図2−4a、2−4bおよび2−4cに示す。
実施例1および2と同様の方法で末梢血からフローサイトメトリーに付すサンプルを作製した後、実施例3(I)に記載のコンペンセーションを行ったFACSCanto(登録商標)に対し当該サンプルを付した。次いで以下の方法によりゲーティングを行い、B細胞を検出した。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)リンパ球領域にゲートをかけた。
(5)CD19強陽性細胞にゲートをかけた。
また健常人50例以上を対象としたPNH型B細胞の解析により、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加は、PNH型B細胞0.05%以上と定義することができた。結果を図2−4dに示す。
実施例1および2と同様の方法で末梢血からフローサイトメトリーに付すサンプルを作製した後、実施例3(I)に記載のコンペンセーションを行ったFACSCanto(登録商標)に対し当該サンプルを付した。次いで以下の方法によりゲーティングを行い、NK細胞を検出した。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)リンパ球領域にゲートをかけた。
(5)CD3強陽性細胞にゲートをかけた。
(6)CD56陽性細胞にゲートをかけた。
また健常人50例以上を対象としたPNH型NK細胞の解析により、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加は、PNH型NK細胞0.3%以上と定義することができた。結果を図2−4eに示す。
従来、PNH型血球の検出にはCD59のsingle−colorフローサイトメトリーかCD55−PE、CD59−FITCによるtwo−colorフローサイトメトリーが施行されてきた。
またこの場合、フローサイトメーターとしては、デジタル波形処理を採用していない機種(FACScan、FACSCaliburなど)を使用していた。
このように、FLAERおよびデジタル波形処理可能なフローサイトメーターを用いない従来法によりPNH型血球の検出を試みた。結果を図3に示す(図3のA法)。
比較例1の方法ではUL領域における細胞集団が集塊を形成せず、領域が不明確であるのでPNH型血球検出における感度や特異性が低く、微量なPNH型血球を正確に検出することができなかった。
次に、FLAERを用いずにFACSCantoと抗体を用いてPNH型白血球の検出を試みた。結果を図3に示す(図3のB法)。
比較例2の方法では、比較例1の方法よりは比較的明瞭であるものの、UL領域における細胞集団が依然として集塊を形成せず、領域が不明確であった。したがって比較例2の方法でもPNH型白血球検出における感度や特異性は依然として低く、微量なPNH型白血球を正確に検出することができなかった。
一方、本発明の方法(図3のC法)によれば、UL領域における細胞集団が集塊を形成し、PNH陽性細胞とPNH陰性細胞との領域が明瞭であった。したがって本発明の方法によれば、微量なPNH型白血球を簡単な手技で正確に検出できることがわかった。
(I)赤血球浮遊液の調製
生体試料として末梢血を採用し、以下の操作を行うことで末梢血から赤血球の細胞浮遊液を採取した。
(1)実施例1で別途保存しておいたEDTA−2Na血2mL入りファルコンチューブを2000rpmで10分間遠心した。
(2)この間にPBS2mLを入れたファルコンチューブを用意した。
(3)(1)のチューブより血漿を除去した後、赤血球層を50μL採取した。これを(2)のファルコンチューブに加えて3−5%赤血球浮遊液として以下の実験を行った。
以下の操作を行い、フローサイトメトリーに付すサンプルを作製した。
(1)新しいファルコンチューブを2本用意し、(I)で得られた赤血球浮遊液50μLを各チューブの底に静置した。
(2)抗CD55−FITC(200μg/mL、BD Biosciences社製)と同量のCD59−FITC(200μg/mL、BD Biosciences社製)とを加え、抗体混合液を用意した(以下、抗CD55/抗CD59−FITCと記載する)。
(3)CD55/CD59−FITC 4μL、glycophorinA−PE4μLを一方の赤血球浮遊液に、mouse IgG−FITC4μLとglycophorinA−PE 4μLを他方の赤血球浮遊液(陰性対照となる)に加え、各混合液をvortexした。次いで各チューブを遮光して、4℃の冷蔵庫内で25分間静置した。
(4)各チューブにPBS 3mLを加えて、軽く撹拌した。ついで500gで4分間遠心分離し、ペレットを残して上清をアスピレーターで除去した。
(5)ペレットにPBS 600μLを加え、スポイトで数回ピペッティングした後、ナイロンメッシュフィルターを通して死細胞の集塊を除去した後、新しいチューブに検体を移してこれをフローサイトメトリー解析に付した。
コンペンセーションは実施例3(I)と同様に、unstained検体と各蛍光抗体単独検体をFACSCanto(登録商標)に順番に流した後、コンペンセーションボタンを押し、自動補正を行った。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)Glycophorin強陽性細胞にゲートをかけた。
一方、この実験を健常人50例を対象として詳細に解析することにより、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加はPNH型赤血球0.005%以上と定義することができた。
Blood.2006;107:1308−1314に記載の方法と同様の方法で、PNH型血球の有無により再生不良性貧血患者における免疫抑制療法の奏効率やその後の生存率がどのように変化するかを調べた。結果を図5に示す。
PNH型血球陽性の再生不良性貧血患者では、陰性の患者に比べてATG+シクロスポリン療法が奏効しやすく(図5A)、また生存率が有意に高いこと(図5B)が分かった。
(1)PNH型白血球の検出における非特異的反応に基づくノイズの発生が抑制される。
(2)またGPIアンカー型膜蛋白質を有さない細胞集団が、ヒストグラム上に明瞭に描出される。これにより、PNH型白血球の検出に携わる者のフローサイトメトリーへの習熟度合いに関係なく、多くの施設でPNH型白血球を容易に検出することが可能となる。
(3)さらに白血球に特徴的な各表面抗原に対する抗体と組み合わせることで、どのような種類のPNH型白血球(PNH型顆粒球、PNH型単球など)でも一度に検出することが可能である。
Claims (6)
- FLAERおよび少なくとも1種の抗白血球表面抗原抗体を用いてフローサイトメトリーを行うことを含む、PNH型白血球の検出方法であって、フローサイトメトリーにおける波形処理がデジタル化され、少なくとも1種の抗白血球表面抗原抗体が抗CD11b抗体を含み、PNH型白血球がPNH型顆粒球である方法。
- PNH型顆粒球以外のPNH型白血球をPNH型顆粒球と同時に検出することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 抗白血球表面抗原抗体として、抗CD11b抗体、抗CD33抗体、抗CD45抗体及び抗CD3抗体を含む、請求項1又は2に記載の方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法によってPNH型白血球を検出することを含む、骨髄不全症候群の検査方法。
- 以下(1)〜(7)の操作を行うことを含む、波形処理がデジタル化されるフローサイトメーターを用いて、PNH型顆粒球を検出する方法であって、血球懸濁液を波形処理がデジタル化されるフローサイトメーターに付し、以下(1)〜(7)の操作を行うことを含む方法:
(1)前方散乱光パルス面積(FSC−A)と側方散乱光パルス面積(SSC−A)で展開し、顆粒球、単球、リンパ球からなる白血球領域にゲーティングする、
(2)前方散乱光パルス幅(FSC−W)と前方散乱光パルス高(FSC−H)で展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外するようゲーティングする、
(3)側方散乱光パルス幅(SSC−W)と側方散乱光パルス高(SSC−H)で展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外するようゲーティングする、
(4)7−AAD陽性細胞を除外するようゲーティングする、
(5)細胞構造の複雑性と大きさから類推される顆粒球領域にCD45およびSSC−Aでゲーティングする、
(6)CD11b強陽性細胞にゲーティングする、及び、
(7)(1)〜(6)により導きだされた細胞群におけるFLAER発現を、縦軸にCD11bを横軸にFLAERをとってヒストグラムを展開し、Upper Left(UL)領域の細胞数を確認することにより解析する、
ここで、該血球懸濁液は、FLAER抗体、抗CD11b抗体及び抗CD45抗体を含む抗白血球表面抗原抗体並びに7-アミノアクチノマイシン(7−AAD)で処理されている。 - 請求項5に記載の方法により検出されたPNH型顆粒球の有意増加値が0.003%以上と定義される、骨髄不全症候群の検出方法。
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