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JP5789605B2 - 染色体異数性の検出方法 - Google Patents

染色体異数性の検出方法 Download PDF

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Description

関連出願
本出願は、2009年8月11日に出願された米国仮出願第61/233,042号、および2010年2月26日に出願された米国仮出願第61/308,578号の優先権を主張するものであり、それぞれの内容はあらゆる目的のために全体が参照により本明細書に取り込まれる。
病院と医療従事者によって現在用いられている様々な方法により、染色体異数性のような様々な遺伝疾患が妊娠期間中に検出可能である。しかしながらこれらの方法はほとんどが侵襲性であり、胎児の意図されない喪失または流産の危険性を伴う。母体血漿中の胎児のDNAを用いる、染色体異数性の非侵襲性出生前診断は活発に研究されている分野であり、早期検出のための新規な、より信頼性のある方法が明らかに必要とされている。
本発明は、胎児に特異的なエピジェネティックマーカーと遺伝マーカーの組み合わせによる、21トリソミーのような染色体異数性を検出するための新規方法を提供する。
特に本発明者らは、胎盤と母体血細胞において差次的にメチル化された、第21、第18、および第13染色体上の胎児性DNAマーカーを、亜硫酸水素塩制限併用分析およびメチル化DNAの免疫沈降法に続くタイリングアレイハイブリダイゼーション(MeDIP−chip)を含む方法を用いて探索し、任意の標的遺伝子座を亜硫酸水素塩を用いるシークエンシングによって確認した。得られたマーカーを、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる消化と、それに続くリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはマイクロフルイディクスデジタルPCR分析を用いて分析した。染色体量分析は、これらのエピジェネティックマーカーの量を、胎児由来であり、その異なるポリヌクレオチド配列によって母体のDNA配列から区別され得るDNA配列である遺伝マーカーと比較することにより行った。このような遺伝マーカーの一例は、Y染色体上に存在するY連鎖ジンクフィンガータンパク質(ZFY)遺伝子である。
例えば、ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)遺伝子の推定プロモーターは胎盤では高度にメチル化されているが、母体血細胞では低メチル化されていることが見出された。高度にメチル化されたHLCSおよびZFY遺伝子座を用いた染色体量の比較により、21トリソミーと正倍数体の胎盤DNAサンプルを区別することができる。本発明者らは、エピジェネティックな−遺伝的な染色体量によるアプローチが、21トリソミー(T21)、18トリソミー(T18)、または13トリソミー(T13)のような染色体異数性の、非侵襲性の出生前検出のための新規な方法であることを示した。このアプローチにより、染色体異数性に関わる任意の染色体上のエピジェネティックマーカーを用いた非侵襲性の出生前診断のための、一般に使用可能な技術が提供される。
本発明は、妊婦が担持している胎児の染色体異数性を検出するための方法を提供する。該方法は、(a)妊婦から採取された生体サンプル中の胎児由来のメチル化マーカーの量を決定する工程であって、ここでメチル化マーカーは染色体異数性に関連する染色体上、または染色体異数性に関連する染色体の部位内に位置し、かつ胎児由来のメチル化マーカーは、差次的なDNAメチル化によって、母体由来のその対応物から区別される工程;(b)サンプル中の胎児由来の遺伝マーカーの量を決定する工程であって、ここで遺伝マーカーは参照染色体上にみられ、かつ胎児由来の遺伝マーカーは、ポリヌクレオチド配列における相によって、サンプル中の母体由来のその対応物から区別されるか、あるいは遺伝マーカーは母体ゲノムに存在しない、工程;(c)(a)および(b)から得られた量の比率を決定する工程;および(d)標準コントロールとの比率を比較する工程であって、ここで比率が標準コントロールよりも高いかまたは低い場合に、胎児における染色体異数性の存在が示される工程を含む。標準コントロール値は、検出方法に用いられる特定の方法論に依存してわずかな変動がみられ得るが、典型的には、ヒトゲノムにおいて予測される遺伝子、または染色体量、または比率に近い。例えば正倍数体の雄性ゲノムでは、第21染色体は2コピー、Y染色体は1コピーある。従って、第21染色体上のエピジェネティックマーカーの、Y染色体上の遺伝マーカーに対する量の比率はおおよそ2となるであろう。
場合によって、胎児由来のメチル化マーカーは胎盤に由来する。母体由来の対応物は妊婦の血液細胞に由来することもある。胎児由来のメチル化マーカーは、母体由来のその対応物よりも多くメチル化されていてもよいし、または母体由来のその対応物よりも少なくメチル化されていてもよい。
場合によって、サンプルは母体の全血、血清、血漿、尿、羊水、生殖器洗浄液、胎盤組織サンプル、絨毛膜絨毛サンプルであるか、または母体血から分離された胎児の細胞を含むサンプルである。サンプルは胎児の核酸を含む任意のサンプルであることもある。
場合によって、メチル化マーカーは、ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)遺伝子の一部であるか、またはそれに近接する。例えば、表2に示すHLCS遺伝子(推定プロモーター領域を含む)の幾つかの領域をメチル化マーカーとして使用してもよい。その他のメチル化マーカーは、マーカー18Aおよびマーカー13Aなどである。別のメチル化マーカーは以下のように定義される:約15ないし450ヌクレオチドの領域であって、1シトシンを含み、(1)MAT.18.0094、MAT.13.0023、MAT.13.0020、MAT.13.0038、MAT.18.0071、MAT.18.0097、MAT.21.0178、およびTAS.21.1175からなる群より選択されるゲノム遺伝子座;または(2)該遺伝子座から10kbを越えない上流および/または下流にある領域。第21染色体上の幾つかの特定のマーカーは以下のように定義される:第21染色体上の約15ないし450ヌクレオチドの領域であって、1シトシンを含み、(1)CGI137、ホスホジエステラーゼ9A(PDE9A)、ヒトプロテインホスファターゼ1、調節性(抑制性)サブユニット2偽遺伝子2(PPP1R2P2)、およびFem1A(シノラブディス・エレガンス)に類似するもの、からなる群より選択されるゲノム遺伝子座、または(2)該遺伝子座から10kbを越えない上流および/または下流にある領域。これらのメチル化マーカーは、本明細書に記載される遺伝マーカーの任意の1以上と組み合わせて、本発明の検出方法に従って使用することが意図される。
場合によって、工程(a)は、メチル化DNAと非メチル化DNAとを差次的に修飾する試薬でサンプルを処理することを含む。このような試薬は、亜硫酸水素塩、またはメチル化状態に基づいてDNAに結合するタンパク質もしくは化学物質を含んでいてもよく;または試薬は、メチル化DNAを優先的に切断するか、もしくは非メチル化DNAを優先的に切断する酵素を含んでいてもよい。
場合によって、遺伝マーカーは母体ゲノムには存在しない。遺伝マーカーはY染色体上に位置することもある。しばしば、胎児由来の遺伝マーカーは、一塩基多型(SNP)、単純タンデムリピート多型、および挿入−欠失多型などの遺伝的多型性に基づいて、母体由来の遺伝マーカーから区別される。一例では、遺伝マーカーは、Y連鎖ジンクフィンガータンパク質(ZFY)遺伝子である。別の例では、遺伝マーカーは、TMED8遺伝子内にSNP rs6636を含むゲノム配列、例えば配列番号1または配列番号2である。
場合によって、複数のメチル化マーカーまたは複数の遺伝マーカーを用いてもよい。しばしば、工程(a)または工程(b)は、メチル化マーカーおよび/または遺伝マーカー、特に胎児由来のメチル化マーカーおよび遺伝マーカーを増幅する過程を含み得る。一例として、増幅はメチル化特異的PCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR);または増幅は核酸配列に特異的な増幅によってもよい。
場合によって、工程(a)または(b)は、分子計数により行われる。工程(a)または(b)は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応、リアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応、アレイキャプチャー、核酸配列に基づく検出、大量に平行して行うゲノムのシークエンシング、単一分子のシークエンシング、またはカラーコードプローブ対によるポリヌクレオチドの多重検出を含むこともある。その他、工程(a)または(b)は、マススペクトロメトリー、またはマイクロアレイ、蛍光プローブ、もしくは分子標識へのハイブリダイゼーションを含むこともある。
幾つかの場合には、染色体異数性に関連する染色体は、第13、第18、第21、またはX染色体である。データ解釈の目的で、場合によって、比率が標準コントロールより少なくとも1標準偏差高いかまたは低い場合に、胎児に染色体異数性のあることが示されるが、比率が標準コントロールより少なくとも2または3標準偏差高いかまたは低い際であっても、胎児に染色体異数性のあることが示される場合もある。
広く応用すると、上記の方法は、その相対的な量がどのようにも変化しないと考えられる参照染色体である別の染色体との比較において、関心のある特定の染色体の何らかの潜在的な量の変化を評価するために、診断用ではない状況において使用できる。
本発明は、このような装置の1以上を含み、本明細書に記載される方法の全てもしくは幾つかを実行できる、装置またはシステムも具現できる。例えば、該装置またはシステムは、妊婦から採取された生体サンプルを受け取った後に以下の工程を行う場合もある:(a)サンプル中の染色体異数性に関連する胎児由来のメチル化マーカーの量を決定する工程;(b)サンプル中の、参照染色体上の胎児由来の遺伝マーカーの量を決定する工程;(c)(a)および(b)から得られた量の比率を決定する工程;および(d)標準コントロールとの比率を比較し、胎児に染色体異数性があるか否かを示す結果を提供する工程。本発明の装置またはシステムは、工程(a)および(b)を行い、(a)および(b)から得られた量を装置へ入力した後で、工程(c)および(d)のタスクを行う場合もある。好ましくは、該装置またはシステムは、部分的もしくは全体的に自動化される。
HLCS領域B2のクローニングおよび亜硫酸水素塩によるシークエンシングの結果を示した図である。個々のCpG部位は、転写開始点(位置0)に対して定義したヌクレオチドの位置により、最初から通し番号を付けた。最初のCpG部位(−232)は、UCSCゲノムブラウザのHuman March 2006 (hg18)アセンブリのchr21: 37275031 (逆鎖)に相当する。続く各列は、クローニングによって調べられた単一DNA分子内のCpG部位にわたるメチル化状態を示す。黒丸および白丸は、それぞれメチル化および非メチル化CpG部位を表す。21トリソミー、正常第1期、および正常第3期の胎盤組織サンプルからのクローンを、それぞれ「T21 PLN」、「正常PLN 第1」、および「正常PLN 第3」の接頭辞により標識し、母体血細胞からのクローンを「MBC」の接頭辞により標識した。異なる妊婦由来の胎盤および母体血細胞は、接頭辞に続くサンプル番号によって同定した。 遺伝子量実験のデジタルリードアウトを示した図である。HLCSおよびRASSF1Aアッセイはモノプレックスで行い、ZFX/Yアッセイはデュプレックスの様式で行った。各チップを12のパネルに分け、各パネルは765の反応ウェルに区分した。標的分子を有する反応ウェルを赤または青のカラードットで示し、増幅のみられない反応ウェルを灰色のカラードットで示す。HLCS、RASSF1A、およびZFYを赤で示す。ZFXを青で示す。(A)酵素により消化した正倍数体の胎盤DNAサンプルに対するデジタルPCRの結果の図示である。各サンプルについて4パネルを計算に入れると、各チップは3サンプルを収容することになる。(B)酵素により消化した正倍数体の母体血漿DNAサンプルに対するデジタルPCRの結果の図示である。サンプルからのDNAは、12パネル全てに均等に分配した。母体血漿の分析については、ZFY(胎児DNA)のコピー数が、ZFX(胎児プラス母体DNA)のそれよりもかなり少ないことに留意されたい。 正倍数体および21トリソミーの胎盤組織DNAサンプルの遺伝子量の比較を示した図である。(A)RASSF1Aに対するHLCSの比率。(B)ZFYに対するHLCSの比率。正常の参照範囲を点線で示す。 正倍数体および21トリソミーの母体血漿DNAサンプルの遺伝子量の比較を示した図である。各サンプルについて、ZFYに対するHLCSの比率をプロットした。正常の参照範囲を点線で示す。 4種のデジタルPCRアッセイ(HLCS、RASSF1A、ZFY、およびZFX:配列番号3、4、5および6)のゲノム配列を示した図である。UCSCゲノムブラウザのMarch 2006ヒト参照配列(NCBI Build 36.1)における染色体位置を示す。下線で示したヌクレオチドは酵素認識部位を表す。大文字による太字のヌクレオチドは、順方向および逆方向プライマーを表す。小文字による太字のヌクレオチドは、MGB(minor groove binding)プローブ配列を表す。 (A)HLCS領域B2、および(B)C21またはf81についての、COBRAの結果のゲル電気泳動を示した図である。2サンプルの21トリソミーの胎盤(T21 PLN)、2サンプルの第1期正常胎盤(正常PLN 第1)、2サンプルの第3期正常胎盤(正常PLN 第3)、および2サンプルの第1期母体血細胞(MBC)を分析した。PCR産物をBstUI酵素と共に(+)、または酵素なしで(−)インキュベートした。DNAのメチル化は、サイズがより小さい消化産物の出現によって検出した。ゲル電気泳動において、1kbラダー(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)(M)を用いた。 4サンプルの胎盤組織および8サンプルの母体血細胞から得られたHLCS DNAの定量を示した図である。サンプルのメチル化指数は、酵素消化後のHLCSのコピー数を、モック消化により得られたコピー数で割ることによって算出した。「正常PLN」は胎盤DNAを表し、「MBC」は母体血細胞DNAを表す。 血漿における産後のクリアランスを示した図である。母体血漿サンプル中の(A)制限酵素消化による(+)、または(B)制限酵素消化なしの(−)、HLCSの検出。「前」は出産前の血漿サンプルを表し、「後」は出産後の血漿サンプルを表す。同一被験者に由来する対のサンプルは、線で結ばれた同一のシンボルによって示す。 (A)モック消化による、TMED8−Cに対するHLCSの比率、および(B)BstUI消化による、TMED8−Cに対するHLCSの比率を決定することによる、正倍数体および21トリソミーの胎盤組織DNAサンプル中の染色体量の比較を示した図である。正常参照範囲を点線で表す。 (A)モック消化による、TMED8−Gに対するHLCSの比率、および(B)BstUI消化による、TMED8−Gに対するHLCSの比率を決定することによる、正倍数体および21トリソミーの胎盤組織DNAサンプル中の染色体量の比較を示した図である。正常参照範囲を点線で表す。 (A)TMED8−C対立遺伝子に対する高度メチル化HLCSの比率、および(B)TMED8−G対立遺伝子に対する高度メチル化HLCSの比率を決定することによる、BstUIにより消化した正倍数体および21トリソミーの母体血漿DNAサンプル中の染色体量の比較を示した図である。正常参照範囲を点線で表す。 クローン化亜硫酸水素塩シークエンシングにより決定した、6対の第1期正倍数体胎盤および母体血細胞におけるマーカー18AのDNAメチル化レベルを示した図である。各サンプルについて全8クローンをスコア化した。メチル化部位を黒丸で表し、非メチル化部位を白丸で表す。各CpG部位におけるメチル化指数(MI)を、各CpG部位のクローンの総数に対するメチル化クローンの数によって得た。メチル化部位の頻度は、各サンプルについてクローン化されたCpG部位の総数に対するクローン化されたメチル化CpG部位の数によって得た。メチル化感受性の制限エンドヌクレアーゼによる認識部位の位置を、CpG部位のゲノムの位置それぞれの隣に示した。ゲノムの位置は、UCSCゲノムブラウザ(genome.ucsc.edu)のHuman Genome March 2006 (hg18)アセンブリに従って定義した。 Epityperアッセイにより分析した、正倍数体(n=6)およびT18(n=6)胎盤中のマーカー18AのDNAメチル化レベルを示した図である。T18および正倍数体の胎盤は全て第1期に取得した。マンホイットニー順位和検定を用い、各CpG単位において、正倍数体のケースのメチル化指数(MI)をT18のケースと比較した。 母体血漿中の、消化抵抗性マーカー18Aの配列の特性を示した図である。(A)胎児の出産前および出産後の、母体血漿中の消化抵抗性マーカー18AのDNA濃度。(B)雄性胎児を有する妊婦における、確立された胎児の遺伝マーカーであるZFYの濃度に対する、消化抵抗性マーカー18AのDNA濃度の相関。 正倍数体(n=5)および18トリソミー(T18)(n=5)の胎盤DNAサンプルにおける、Y染色体(ZFY)に対する第18染色体(マーカー18A)の相対量を示した図である。正常参照範囲(平均±1.96SD)を点線で表す。 正倍数体(n=27)および18トリソミー(T18)(n=9)の母体血漿サンプルにおける、Y染色体(ZFY)に対する胎児の第18染色体(マーカー18A)の相対量を示した図である。正常参照範囲(平均±1.96SD)を点線で表す。 クローン化亜硫酸水素塩シークエンシングにより決定した、3対の第1期正倍数体胎盤および母体血細胞におけるベータアクチン遺伝子の領域のDNAメチル化レベルを示した図である。亜硫酸水素塩シークエンシングデータの説明については、図12を参照されたい。この領域は、酵素消化の効率を調べるためのコントロールアッセイの開発に用いられた。 クローン化亜硫酸水素塩シークエンシングにより分析した、正倍数体胎盤(n=6)および母体血細胞(n=6)におけるマーカー13AのDNAメチル化レベルを示した図である。全てのサンプルは第1期に取得した。各サンプルについて全8クローンをスコア化した。メチル化部位を黒丸で表し、非メチル化部位を白丸で表す。各CpG部位におけるメチル化指数(MI)を、各CpG部位のクローンの総数に対するメチル化クローンの数によって得た。メチル化部位の頻度は、各サンプルについてクローン化されたCpG部位の総数に対するクローン化されたメチル化CpG部位の数によって得た。メチル化感受性の制限エンドヌクレアーゼによる認識部位の位置を、CpG部位のゲノムの位置それぞれの次に標識した。ゲノムの位置は、UCSCゲノムブラウザ(genome.ucsc.edu)のHuman Genome March 2006 (hg18)アセンブリに従って位置付けた。 Epityperアッセイにより分析した、正倍数体(n=5)およびT13(n=5)胎盤中のマーカー13AのDNAメチル化レベルを示した図である。4サンプルの13トリソミー(T13)胎盤は第1期に取得したが、1サンプルは第2期に取得した。正倍数体の胎盤は全て第1期に取得した。マンホイットニー順位和検定を用い、各CpG単位において、正倍数体のケースのMIをT13のケースと比較した。 ZFYに対する消化抵抗性マーカー13Aの比率を決定することにより、正倍数体(n=10)および13トリソミー(T13)(n=5)胎盤DNAサンプルにおける染色体量の比較を示した図である。正常参照範囲を点線で表す。
定義
本出願で用いられる「妊娠に付随する疾患」は、妊婦、妊婦が有する胎児、もしくは妊婦および胎児の両方に影響を及ぼし得るいずれの状態または疾病も指す。このような状態または疾病は、限定された時期、例えば妊娠もしくは出産の間にその症状を現すか、または胎児の誕生後に一生持続することもある。「妊娠に付随する疾患」は、妊娠に伴うことが必須であり、妊婦に偶然起こる単なる状態ではない。換言すれば、該疾患は妊婦でない者には起こり得ない。妊娠に付随する疾患の幾つかの例には、子宮外妊娠、子癇前症、早産、および13、18、または21トリソミーなどの胎児の染色体異常が含まれる。
本明細書で用いられる「染色体異数性」の語は、いずれか一の染色体が正常な数よりも多いかもしくは少ないこと、およびいずれか一の染色体が正常な対に加えて余分な一部分を有するか、または正常な対においていずれか一の染色体の一部分が欠如していることなどの、染色体数の異常を示すいずれの遺伝的な異常も包含する。場合によって、異常は複数の染色体、または1以上の染色体の複数の部分に関係し得る。最も一般的な染色体異数性は、トリソミー、例えば罹患患者のゲノムが、正常な2(すなわち1対)ではなく3の第21染色体を有する、21トリソミーである。よりまれな場合には、患者は、正常な対に加えて第21染色体の余分な断片(完全長よりも短い)を有し得る。さらに別の場合には、第21染色体の一部分が別の染色体、例えば第14染色体に転座し得る。この例では、第21染色体は「染色体異数性に関連する染色体」であり、次に、関連しない染色体、すなわち患者のゲノム内に正常な対が存在する、例えば第1染色体は「参照染色体」である。また、関連する染色体の数が、正常な数である2よりも少ない場合もある。ターナー症候群は、女性患者のX染色体が2から1へ減少する、染色体異数性の一例である。
その相対的な量または濃度、すなわち比率を決定するために、「メチル化マーカー」との比較に関連して用いられる「遺伝マーカー」は、異なる対立遺伝子(例えば、胎児由来の対立遺伝子 v. 妊婦由来の対立遺伝子のような、二つの異なる個体に由来する対立遺伝子)を、ポリヌクレオチド配列における相違(例えば多型)、または完全に存在するか存在しない配列(例えば、雄性の胎児に由来するY染色体上に存在するが、妊婦のゲノムには存在しない配列)に基づいて互いに区別することを可能にする、参照染色体のゲノム配列内に存在するポリヌクレオチド配列を指す。これに関連して、染色体異数性に関連する染色体上に位置する「メチル化マーカー」は、異常な数を有する染色体上のゲノムポリヌクレオチド配列を指すか;または染色体の余分な断片が存在するか、もしくは染色体の一部が欠損する場合に、「メチル化マーカー」は関連する染色体の断片または部分内に位置する。メチル化マーカーのメチル化特性の相違により、二つの異なる個体、例えば胎児および妊婦由来に対応するメチル化マーカーの区別が可能になる。
本明細書で用いられる「エピジェネティックな状況」または「エピジェネティックな状態」の語は、一次ヌクレオチド配列以外の、核酸(例えばDNAまたはRNA)の分子レベルでのいずれの構造的特色も指す。例えば、ゲノムDNAのエピジェネティックな状況には、例えばそのメチル化パターン、またはその細胞タンパク質、例えばヒストンとの会合、ならびにこのようなタンパク質の修飾、例えばアセチル化、脱アセチル化、およびメチル化によって決定されるかまたは影響される、その二次または三次構造が含まれ得る。
本出願においてゲノム配列のメチル化の状況を記載する際の、「メチル化特性」または「メチル化状態」の語は、メチル化に関連する特定の遺伝子座におけるDNA断片の特性を指す。このような特性には、このDNA配列内のいずれかのシトシン(C)残基がメチル化されているか否か、1または複数のメチル化C残基の位置、特定の残基区間におけるメチル化Cのパーセンテージ、および、例えば異なる対立遺伝子の由来の相違による、メチル化における対立遺伝子の相違が含まれるが、これらに限定されない。「メチル化特性」または「メチル化状態」の語はまた、生体サンプル中のいずれかの特定の残基区間における、メチル化Cまたは非メチル化Cの相対的もしくは絶対的な濃度も指してよい。
本明細書で用いられる「一塩基多型」または「SNP」の語は、同じ個体に由来する同じ染色体の2コピー上に位置する同じ遺伝子(例えば、胎児に由来する二つの対立遺伝子)であってもよいし、または二つの異なる個体(例えば胎児と妊婦)に由来する同じ遺伝子であってもよい、同じ遺伝子の異なる対立遺伝子の中の単一のヌクレオチド残基に存在する、ポリヌクレオチド配列のバリエーションを指す。このバリエーションは、遺伝子のコード領域または非コード領域(例えばプロモーター領域もしくはその近傍、またはイントロン)内、または遺伝子間領域に起こり得る。1以上のSNPの検出により、一つの遺伝子の異なる対立遺伝子の区別が可能になる。
本明細書で用いられる「単純タンデムリピート多型」の語は、同じ個体(例えば胎児)に由来する同じ染色体の2コピー上に位置する同じ遺伝子であってもよいし、または二つの異なる個体(例えば胎児と妊婦)に由来する同じ遺伝子であってもよい、同じ遺伝子の異なる対立遺伝子の間の、ヌクレオチド配列のタンデムリピートの多様な数(例えば1以上のヌクレオチドのタンデムリピート)により示される、ポリヌクレオチド配列のバリエーションを指す。このバリエーションは、たいてい遺伝子の非コード領域(例えばプロモーター領域もしくはその近傍、またはイントロン)内、または遺伝子間領域に起こる。タンデムリピート数における相違の検出により、単一の遺伝子の異なる対立遺伝子の区別が可能になる。
本明細書で用いられる「挿入−欠失多型」の語は、同じ個体(例えば胎児)に由来する同じ染色体の2コピー上に位置する同じ遺伝子であってもよいし、または二つの異なる個体(例えば胎児と妊婦)に由来する同じ遺伝子であってもよい、同じ遺伝子の異なる対立遺伝子の中の、短いヌクレオチド配列(例えば1〜3ヌクレオチド)の存在または非存在により示される、ポリヌクレオチド配列のバリエーションを指す。このバリエーションは、遺伝子のコード領域および非コード領域(例えばプロモーター領域もしくはその近傍、またはイントロン)両方の内に、または遺伝子間領域に起こり得る。短いヌクレオチド配列が存在するか否かの検出により、単一の遺伝子の異なる対立遺伝子の区別が可能になる。
本明細書で用いられる「血液」の語は、妊婦もしくは妊娠の可能性を試験中である女性から得られた血液サンプルまたは標本を指す。この語は、全血、または従来定義されている血清および血漿のような、血液のいずれの分画も包含する。
本明細書で用いられる「亜硫酸水素塩」の語は、メチル化シトシンを化学的に修飾することなくシトシン(C)をウラシル(U)へ化学的に変換できることから、DNAのメチル化状態に基づいてDNA配列を差次的に修飾するために用いることができる亜硫酸水素ナトリウムなどの、全ての種類の亜硫酸水素塩を包含する。
本明細書で用いられる、メチル化または非メチル化DNAを「差次的に修飾する」試薬は、区別可能な産物または量的に区別可能な結果(例えば結合または沈殿の程度)がメチル化および非メチル化DNAから生成され、これによりDNAのメチル化状態の同定が可能になる過程を通して、メチル化および非メチル化DNAと差次的に反応するいずれの試薬も包含する。このような過程には、化学反応(例えば亜硫酸水素塩による非メチル化C→U変換)、酵素処理(例えばメチル化依存性エンドヌクレアーゼによる切断)、結合、および沈殿が含まれてよいが、これらに限定されない。従って、メチル化DNAを優先的に切断する酵素は、DNAがメチル化されている際に非常に高い効率でDNA分子を切断できるが、非メチル化DNAを優先的に切断する酵素は、DNAがメチル化されていない際に著しく高い効率を示す。本発明において、メチル化および非メチル化DNAを「差次的に修飾する」試薬はまた、DNA配列のメチル化状態に応じて、そのDNA配列への結合またはDNA配列の沈殿において差次的な能力を示すいずれの試薬も指す。このような試薬の一クラスは、メチル化DNA結合タンパク質からなる。
「核酸」または「ポリヌクレオチド」の語は、一本鎖または二本鎖いずれかの形である、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびそれらの重合体を指す。特に限定しない限り、この語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然ヌクレオチドと同様の様式で代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。特に指示しない限り、特定の核酸配列は、その保存的に修飾された変異体(例えば縮重コドン置換)、対立遺伝子、相同分子種、一塩基多型(SNP)、および相補性配列、ならびに明示的に示される配列もまた、黙示的に包含する。特に縮重コドン置換は、選択された1以上(または全て)のコドンの第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基により置換されている配列を生成することにより達成されていてもよい(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); and Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。核酸の語は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によりコードされるmRNAと互換的に用いられる。
「遺伝子」の語は、ポリペプチド鎖の産生に関わるDNAの区域を意味し;これはコード領域(リーダーおよびトレーラー)の上流、および下流の、遺伝子産物の転写/翻訳および転写/翻訳の調節に関わる領域、ならびに個々のコード区域(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を含む。
「遺伝子座」の語は、参照ゲノムアセンブリ(例えば、UCSCゲノムブラウザのHuman Genome March 2006アセンブリ(hg18))の染色体上の開始ヌクレオチド位置から終止ヌクレオチド位置(すなわち、ゲノムの位置、または染色体の位置)により定義されるDNAの区域を意味する。遺伝子座は、遺伝子、CpGアイランド、または転写/翻訳によるいずれかの産物のゲノムの位置と重複してもよいし重複しなくてもよい。本出願では、遺伝子座は通常、実験データ(例えば、MeDIP−chipデータセット)、および異なるDNAメチル化レベルを含むためのそれに続くデータ解析(例えばMAT、TAS)によって同定される、DNAの連続的な区域を指す。遺伝子座は、1以上のCpG部位を含んでいてもよい。遺伝子座は、分析(例えばEpityperアッセイ、亜硫酸水素塩シークエンシング、ポリヌクレオチド増幅および決定)が可能なより短い区域(例えばCpGを含むゲノム配列、断片、または領域)に、さらに分割され得る。1遺伝子座は、1以上の胎児性エピジェネティックマーカーへ開発され得る。本出願のある状況では、遺伝子座は、特定のバイオインフォマティクス基準によって同定される、DNAの連続的な区域も指す。
本出願における「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」の語は、アミノ酸残基の重合体を指すために、本明細書において互換的に用いられる。この語は、1以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工の化学模倣物であるアミノ酸重合体、ならびに天然アミノ酸の重合体および非天然アミノ酸の重合体に適用される。本明細書で用いられる際、この語は、アミノ酸残基が共有結合性のペプチド結合によって連結される、完全長タンパク質(すなわち抗原)を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含する。
「アミノ酸」の語は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の様式において機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を指す。天然アミノ酸は、遺伝コードによりコードされるアミノ酸、ならびに後に修飾されたこれらのアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンである。
本明細書では、アミノ酸は、一般に知られている三文字シンボル、またはIUPAC−IUB生化学命名委員会(IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission)により推奨される一文字シンボルのいずれかにより称され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に許容されているそれらの一文字コードにより称され得る。
本出願で用いられる「増大」または「減少」は、確立された標準コントロールからの、量における検出可能な正または負の変化を指す。増大は、標準コントロール値の少なくとも10%もしくは20%まで、または少なくとも50%、80%、もしくは100%までの正の変化であり;幾つかの場合には、増大は、コントロール値の少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍である。同様に減少は、コントロール値の少なくとも1/10、1/6、1/5まで、または少なくとも1/3もしくは1/2までにもなる、負の変化である。「より多い」、「より少ない」、「より高い」、および「より低い」のような、比較に基づいた量的変化または相違を示すその他の語は、本出願において上記と同様の様式により用いられる。
本明細書で用いられる「ポリヌクレオチドハイブリダイゼーション法」は、既知の配列のポリヌクレオチドプローブを用い、適切なハイブリダイゼーション条件下で、ワトソン−クリックの塩基対を形成するポリヌクレオチドの能力に基づき、ポリヌクレオチドの存在および/または量を検出するための方法を指す。このようなハイブリダイゼーション法の例には、サザンブロット法およびノーザンブロット法が含まれる。
本明細書で用いられる「プライマー」は、関心のある遺伝子、例えば様々なメチル化状況のHLCS遺伝子、に対応するポリヌクレオチド配列に基づいてヌクレオチド配列を増幅するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅法において使用できるオリゴヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチド配列増幅のための少なくとも1のPCRプライマーは、該配列に対して配列特異的である。
本明細書で用いられる「デジタルポリメラーゼ連鎖反応」の語は、DNA、cDNA、またはRNAを含む核酸を直接定量かつクローン性に増幅することで、標的核酸の量が直接定量的に測定される、従来のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法の改良されたバージョンを指す。デジタルPCRは、増幅産物を検出可能なレベルまで集めて濃縮できる多数の分離反応チャンバー内で、サンプル中に存在する個別の核酸分子それぞれを捕捉または分離することによって、この直接定量法を達成する。PCR増幅後、PCRの最終産物を含むチャンバーを数えることが、絶対的な核酸量の直接の測定となる。典型的には希釈による、個別の核酸分子の捕捉または分離は、キャピラリー、マイクロエマルション、小型化されたチャンバーのアレイ、または核酸結合表面において達成され得る。デジタルPCRの基本的な方法論は、例えばSykes et al., Biotechniques 13 (3): 444-449, 1992; および Vogelstein and Kinzler, Proc Natl Acad Sci U S A 1999;96:9236-41.に記載される。
本明細書で用いられる「分子計数」の語は、しばしば特性の異なるその他の共存分子または複合体に関連した相対数である、分子または分子複合体の数を定量的に測定することが可能ないずれの方法も指す。
分子計数の様々な方法は、例えばLeaner et al., Analytical Chemistry 69:2115-2121, 1997; Hirano and Fukami, Nucleic Acids Symposium Series No. 44:157-158, 2000; Chiu et al., Trends in Genetics 25:324-331, 2009;および米国特許第7,537,897号に記載される。
本明細書で用いられる「標準コントロール」は、参照染色体上に位置する胎児性遺伝マーカーの量または濃度に対する、特定の染色体異数性(例えば13、18、または21トリソミー)に関連する染色体上に位置する胎児のゲノム配列の比率、または量もしくは濃度を反映する値であって、平均的な、染色体が正常である胎児を有する健常妊婦に由来する生体サンプル(例えば血液、血漿、または血清)中に見出される量または濃度としての値を指す。「標準コントロール」は別に決定されてよく、それが用いられる状況によって異なる値が示される。例えば、エピジェネティックマーカーが遺伝マーカーに対して測定される、エピジェネティック−遺伝的量の方法において用いられる際の「標準コントロール」は、参照染色体上に位置する胎児性遺伝マーカーの量または濃度に対する、特定の染色体異数性(例えば13、18、または21トリソミー)に関連する染色体上に位置する胎児のゲノム配列の比率、または量もしくは濃度を反映する値であって、平均的な、染色体が正常である胎児を有する健常妊婦に由来する生体サンプル(例えば血液、血漿、または血清)中に見出される量または濃度としての値である。場合によって、標準コントロールは特定の妊娠期間にある平均的な健常妊婦に基づいて決定されるが、別の場合には妊娠期間に関して区別はされない。
妊婦についての記載に関連して用いられる「平均的な」の語は、染色体が正常である胎児を妊娠しており、かつサンプル収集の時点でいずれの妊娠に関連する疾病または状態も被っていない健常妊婦の無作為に選択された群を代表する妊婦の血液中に見出される、母体および胎児の両方に由来する特定の遺伝子またはゲノム配列のメチル化特性のような、特定の関連する特性を指す。この選択された群は、これらの妊婦の間での関心のある遺伝子の平均量またはメチル化特性が、妥当な正確さをもって、健常胎児を有する健常妊婦の一般的な集団における相当の特性を反映するように、十分な数の妊婦を含んでなる必用がある。加えて、選択された妊婦の群は一般に、その血液が潜在的に妊娠に付随する疾患の徴候について試験される妊婦の妊娠期間と同様の妊娠期間を有する。本発明の実施に好ましい妊娠期間は、スクリーニングされる疾患に応じて異なり得る。例えば、好ましくは胎児の染色体異数性がスクリーニングされ、できるだけ早期に診断される。さらに、試験に好ましい妊娠期間もまた、試験される関心のある遺伝子に依存し得る。
本出願で用いられる「量」の語は、関心のあるポリヌクレオチド配列、例えばサンプル中に存在する胎児由来の遺伝マーカーまたはエピジェネティック/メチル化マーカーの量を指す。このような量は、絶対的な語、すなわちサンプル中のポリヌクレオチド配列の総量(例えば質量による、または分子数による)、もしくは相対的な語(例えば比率、またはその他のマーカーへの相対性)により、またはサンプル中のポリヌクレオチド配列の濃度(例えば、単位容積あたりの質量、または単位容積あたりの分子数)として表され得る。
発明の詳細な説明
I.序文
21トリソミー(T21)のようなトリソミーについてのスクリーニングは、多くの国において現代の産科学的ケアの重要な要素を構成する。出生前外来で通常行われる一般的なスクリーニング法は、胎児の実際の染色体量を直接に標的とするよりも、むしろ染色体異数性に付随する付帯徴候を標的としている(Wapner et al., N Engl J Med 2003;349:1405-13; Malone et al., N Engl J Med 2005;353:2001-11)。確定試験のために、従来のスクリーニングプログラムでは、絨毛膜絨毛採取および羊水穿刺のような侵襲性の方法が必用とされている。しかしながらこれらの方法では、方法に関連した胎児の喪失が導かれ得る(Tabor et al., Lancet 1986;1:1287-93)。
1997年に母体血漿中に発見された無細胞性の胎児のDNAにより、非侵襲性の出生前診断の新しい可能性が提示された(Lo et al., Lancet 1997;350:485-7;Lo and Chiu, Nat Rev Genet 2007;8:71-7)。母体血漿サンプル中の、胎児に由来する父性遺伝による遺伝物質の検出により、胎児のRhD血液型の出生前判定(Lo et al., N Engl J Med 1998;339:1734-8; Finning et al., BMJ 2008;336:816-8)および伴性疾患のための胎児の性別判定(Costa et al., N Engl J Med 2002;346:1502)が可能となった。しかしながら、胎児の染色体異数性のための、非侵襲性の出生前診断用試験の開発はさらに困難である。
アプローチの二つの主要なグループが、母体血漿の核酸分析によるT21の直接検出のために開発されてきた。最初のグループは、胎児特異的な核酸マーカーに存在する一塩基多型(SNP)の対立遺伝子比の解析に関わる(Lo and Chiu, Nat Rev Genet 2007;8:71-7)。最近の例には、循環する胎盤mRNA(いわゆるRNA−SNPアプローチ)(Lo et al., Nat Med 2007;13:218-23)およびDNAメチル化マーカー(いわゆるエピジェネティックな対立遺伝子比のアプローチ)(Tong et al., Clin Chem 2006;52:2194-202)が含まれる。このアプローチが不利である主な点は、これらの方法が、解析されたSNPについてヘテロ接合性である胎児のみに適用可能なことである。さらに、特定の遺伝子座内に十分に高いヘテロ接合性率で存在するSNPの数は限られているため、このアプローチでは集団のカバー率が主な課題である。アプローチの第2のグループは、デジタルPCRのような単一分子計数アプローチの使用(Lo et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2007;104:13116-21)および大量に平行して行うゲノムのシークエンシング(Chiu et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105:20458-63; Fan et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105:16266-71)に関わる。これらのアプローチでは、個別の血漿DNA分子が計数される。このような方法の精度により、T21の胎児を有する妊婦の血漿中に存在する第21染色体に由来するDNA分子の検出はわずかに増大する。これらのアプローチが不利である一点は、胎児に特異的ではないマーカー(例えば、第21染色体由来のランダム配列)について使用した場合、極端に多数の分子を計数しなくてはならないことであり、このことは、一例あたり数百万の分子を計数しなくてはならなかった、大量に平行して行うゲノムのシークエンシングを用いた最近の実験により実証されている(Chiu et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105:20458-63; Fan et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105:16266-71)。後者には、高価な機器および試薬の使用、ならびに比較的複雑なバイオインフォマティクスが必要とされる。
本出願は、潜在的に異数性に関わる染色体(例えば第21染色体)上の胎児特異的なDNAメチル化マーカーおよび参照染色体上の胎児特異的なDNAマーカーの濃度の比率を決定することに基づく、母体血漿からの、染色体異数性(例えば21トリソミー)の非侵襲性の出生前検出のための新規なアプローチについて記載する。これは、エピジェネティック−遺伝的(epigenetic-genetic: EGG)染色体量によるアプローチと称される。上記のエピジェネティックな対立遺伝子比に比較して、EGGによるアプローチはDNAの短い伸展内に胎児特異的なDNAメチル化マーカーおよびSNPが存在することを必要としないために、集団カバー率を達成することがさらに容易となり得る。典型的には第21染色体上の1つと参照染色体上の1つによって行われる、単にエピジェネティックマーカーに基づくアプローチよりも、EGGアプローチはさらに正確である。
EGGアプローチがトリソミー検出に役立つためには、第21、第18、または第13染色体などの関連する染色体上に、良好な胎児特異的DNAメチル化マーカーが存在することが重要である。マーカーの好ましい一型は、消化によって母体の配列を除くためにメチル化感受性の制限酵素が使用できるように、胎児では過剰メチル化されているが母体血細胞では低メチル化されているものであろう。実際に以前の研究により、RASSF1A遺伝子のプロモーターは、これが第3染色体上にあることを別にすれば、このようなマーカーの一つであることが示された(Chan et al., Clin Chem 2006;52:2211-8; Chiu et al., Am J Pathol 2007;170:941-50)。第21染色体上にある胎児性DNAメチル化マーカーの数について報告されている(Chim et al., Clin Chem 2008;54:500-11; Old et al., Reprod Biomed Online 2007;15:227-35; Papageorgiou et al., Am J Pathol 2009;174:1609-18)。本発明者らは、第21染色体上の35の遺伝子プロモーター領域を標的とする亜硫酸水素塩制限併用分析(COBRA)(Xiong and Laird, Nucleic Acids Res 1997;25:2532-4)を用いて、さらなるマーカーを探索した。これにより、新規な過剰メチル化された胎児性DNAマーカーとして、ホロカルボキシラーゼ合成酵素(ビオチン−(プロピオニル−補酵素A−カルボキシラーゼ(ATP−加水分解性))リガーゼ)(HLCS)遺伝子の推定プロモーター領域の差次的なメチル化の発見が導かれた。その後、EGGの概念はHLCSを用いて実行された。第18および第13染色体上の胎児特異的なメチル化マーカーの発見により、18および13トリソミー検出のために同様の戦略を用いることがさらに可能になる。
II.一般的方法論
本発明の実施には、分子生物学分野の日常的な技術が利用される。本発明で用いられる一般的方法を開示している基礎的な教科書には、Sambrook and Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd ed. 2001); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990); and Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 1994)が含まれる。
核酸の大きさは、キロベース(kb)または塩基対(bp)のいずれかで示される。これらは、アガロースまたはアクリルアミドゲル電気泳動、シークエンシングされた核酸、または公開されているDNA配列に由来する推定である。タンパク質の大きさは、キロダルトン(kDa)またはアミノ酸残基数で示される。タンパク質の大きさは、ゲル電気泳動、シークエンシングされたタンパク質、由来するアミノ酸配列、または公開されているタンパク質配列から推定される。
市販されていないオリゴヌクレオチドは、例えばBeaucage and Caruthers, Tetrahedron Lett. 22:1859-1862 (1981) によって最初に記述された固相ホスホラミダイトトリエステル法により、Van Devanter et. al., Nucleic Acids Res. 12:6159-6168 (1984) によって記載される自動合成機を用いて、化学的に合成できる。オリゴヌクレオチドの精製は、当該技術分野において認められる任意の戦略、例えばPearson and Reanier, J. Chrom. 255: 137-149 (1983) に記載されるような、未変性アクリルアミドゲル電気泳動または陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行われる。
本発明で用いられる遺伝マーカーの配列またはゲノム配列、例えばHLCSまたはZFY遺伝子のポリヌクレオチド配列、および合成オリゴヌクレオチド(例えばプライマー)は、例えばWallace et al., Gene 16: 21-26 (1981) による二本鎖鋳型をシークエンシングするためのチェーンターミネーション法を用いて確認できる。
III.血液サンプルの取得とDNAの抽出
本発明は、妊娠に付随する状態または疾患の存在を検出するためおよび/または進行をモニターするための非侵襲性の手段として、母体血中に見出される適切な胎児性染色体DNAのエピジェネティック−遺伝的染色体量を分析することに関する。従って、本発明を実施するための第1工程は、妊婦から血液サンプルを取得し、該サンプルからDNAを抽出することである。
A.血液サンプルの取得
血液サンプルは、本発明の方法を用いる試験に適した妊娠期間の妊婦から取得される。以下に考察するように、適した妊娠期間は試験される疾患によって変動し得る。妊婦からの血液の採取は、病院または診療所が一般に従っている標準的なプロトコルによって行われる。末梢血の適切な量、例えば典型的には5〜50mLが採取され、さらなる調製の前に、標準的な手順に従って保管され得る。
B.血液サンプルの調製
本発明によって母体血中に見出された胎児DNAの分析は、例えば全血、血清、または血漿を用いて行われてよい。母体血から血清または血漿を調製する方法は、当業者の間で公知である。例えば妊婦の血液は、血液凝固を阻止するためにEDTAまたはVacutainer SST(Becton Dickinson、フランクリンレイクス、ニュージャージー州)のような専用の市販品を含むチューブ内に入れることができ、次に遠心分離を通して全血から血漿を得ることができる。EDTAの代わりに、抗凝固剤としてヘパリンまたはクエン酸塩を用いることもできる。一方で血清は、血液凝固後に遠心分離により、または遠心分離なしで得てもよい。遠心分離を用いる場合、典型的には適切な速度、例えば1,500〜3,000xgにおいて行われるが、限定されるものではない。血漿または血清は、DNA抽出のための新しいチューブに移される前に、追加の遠心分離工程に供されてよい。このような追加の遠心分離工程の代わりに、またはそれに加えて、血漿または血清から粒状の物質を除去するため、1以上の濾過工程を用いることも可能である。
全血の無細胞部分に加えて、DNAはまた、妊婦からの全血サンプルを遠心分離後、血漿を除去して得られるバッフィーコート部分に濃縮された細胞画分からも回収され得る。細胞画分はまた、母体血中を循環する胎児の有核細胞から予め濃縮することもできる。このような濃縮手順には、胎児の細胞に対する1以上の抗体を含む選別もしくは選択手順、または胎児の細胞を母体細胞から区別できる物理的、化学的、生化学的、もしくはその他の特性を標的とした手順が含まれ得る。選別手順には、蛍光励起セルソーター、磁気活性化細胞選別、またはマイクロフルイディクスのような技術が含まれ得る。選択手順には、顕微操作、あるいはレーザーキャプチャーマイクロダイセクション、光ピンセットによる操作、またはその他のいずれの単一細胞操作手順も含まれ得る。標的となり得る胎児の細胞の型には、有核赤血球、リンパ球、単核細胞、トロホブラスト、または細胞性残余物、例えばアポトーシス性の胎児細胞が含まれ得る。
C.DNAの抽出
血液を含む生体サンプルからDNAを抽出するための方法は、多数知られている。DNA調製の一般的な方法(例えばSambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d ed., 2001により記載される)に従って行うことができ;QIAamp DNAミニキットもしくはQIAamp DNA血液ミニキット(Qiagen、ヒルデン、独国)、GenomicPrep(商標)血液DNA分離キット(Promega、マディソン、ウィスコンシン州)、およびGFX(商標)ゲノム血液DNA精製キット(Amersham、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)のような様々な市販の試薬またはキットもまた、妊婦からの血液サンプル由来のDNAを得るために用いられてよい。これらの方法の1を超える組み合わせもまた用いられてよい。
IV.DNAのメチル化特異的な修飾
サンプル中に存在する胎児DNAと母体DNAの間で差次的にメチル化されるエピジェネティックマーカーまたはゲノム配列(例えばHLCS遺伝子)の由来を正しく同定するために、最終工程で分離されたDNAは、胎児DNAと母体DNAが区別されるように、それらのメチル化状態が分析されなければならない。妊婦の血液サンプルから抽出されたDNAは、メチル化の差によってDNAを化学的に修飾できる試薬によって処理される、つまり、異なっておりかつ区別可能な化学構造は、処理後のメチル化シトシン(C)残基および非メチル化C残基に起因する。典型的には、このような試薬はDNA分子内の単数または複数の非メチル化C残基と反応し、非メチル化C残基それぞれをウラシル(U)残基に変換するが、メチル化C残基には変化がない。このC→U変換により、核酸の一次配列における変化に基づくメチル化状態の検出および比較が可能となる。この目的に適した例示試薬は、亜硫酸水素ナトリウムのような亜硫酸水素塩である。DNAの化学修飾に亜硫酸水素塩を用いる方法は当該技術分野において周知であり(例えばHerman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821-9826, 1996を参照)、本明細書では詳述しない。
当業者が認識するであろうように、ここでは不特定であるが、メチル化および非メチル化DNAを差次的に化学(またはその他のいずれかの機序を通して)修飾する同じ性質を有するその他のいずれの試薬も、本発明を実施するために用いることができる。例えばDNAのメチル化特異的な修飾は、メチル化感受性の制限酵素によって達成されてもよく、これらの酵素の幾つかは典型的に非メチル化DNA断片を切断し、メチル化DNA断片は切断しないが、その他(例えばメチル化依存性エンドヌクレアーゼ、McrBC)はメチル化シトシンを含むDNAを切断し、非メチル化DNAは切断しない。加えて、化学修飾と制限酵素処理の組み合わせ、例えば亜硫酸水素塩制限併用分析(COBRA)を、本発明を実施するために用いてもよい。
V.ポリヌクレオチド配列の増幅及び決定
メチル化の差によるDNAの修飾後、処理されたDNAを次に配列に基づく解析に供し、ここで異数性に関連する染色体の胎児DNAに由来するエピジェネティックマーカー(例えばHLCS遺伝子)として作用するゲノム配列は、母体DNA由来の同遺伝子から区別され、サンプル中の胎児の遺伝子の量または濃度が定量的に決定され、胎児由来の参照染色体からの遺伝マーカーの量または濃度と比較され、次に二つの比率が標準コントロールと比較される。
A.ヌクレオチド配列の増幅
増幅反応は、メチル化特異的な修飾後のエピジェネティックマーカーの配列解析に先立って任意に行われる。本発明の幾つかの実施形態では、増幅は、特定のメチル化パターンを有するマーカーの一部を優先的に増幅するために行われ、ここで例えば胎盤またはその他の胎児組織に由来する特定の一つの源からのマーカーのみが検出され、その量または濃度が分析される。所望により、マーカー配列の胎児性バージョンを選択的に増幅する既知の増幅法を用いて、ポリヌクレオチド配列の相違に基づいた胎児由来または母体由来の決定を可能にする、参照染色体上の遺伝マーカーの増幅が行われる。典型的には、優先的な増幅は入念なプライマー設計により達成される。
様々なポリヌクレオチド増幅法は十分に確立されており、研究においてしばしば用いられる。例えば、ポリヌクレオチド配列増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の一般的方法については当該技術分野において周知であることから、本明細書では詳述しない。PCRの方法、プロトコル、およびプライマー設計の原理についての総説は、例えば、Innis, et al., PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc. N.Y., 1990 を参照されたい。PCR試薬およびプロトコルはまた、Roche Molecular Systems のような市販業者からも入手できる。
大抵の場合、PCRは耐熱性酵素を用いる自動化された方法によって行われる。この方法では、反応混合物の温度は、変性部分、プライマーのアニーリング部分、および伸長反応部分を通して自動的にサイクルする。この目的のために特に適応させた装置が市販されている。本発明のいくつかの実施形態では、リアルタイムPCRおよびデジタルPCRのような、改良された、さらに感受性の高いPCR法もまた有用である。
本発明の実施においては、標的ポリヌクレオチド配列(例えば胎児の配列と母体配列が差次的にメチル化される、エピジェネティックマーカーの部分)のPCR増幅が典型的に用いられるが、当業者は、母体血サンプル中に見出されるHLCS遺伝子配列の増幅が、それぞれが十分な増幅を提供するリガーゼ連鎖反応(LCR)、転写媒介性増幅、および自家持続配列複製法または核酸配列ベース増幅(NASBA)のような既知のいずれの方法によっても達成され得ることを認識するであろう。分岐DNA技術もまた、母体血中の、特定のマーカー配列(特定のメチル化パターンまたは特定のポリヌクレオチド配列を表す)の存在を定性的に実証するか、または特定のマーカー配列の量または濃度を定量的に決定するために用いられてよい。臨床サンプル中の核酸配列を直接定量するための分岐DNAシグナル増幅の総説については、Nolte, Adv. Clin. Chem. 33:201-235, 1998 を参照されたい。
B.ポリヌクレオチド配列の決定
ポリヌクレオチドシークエンシングのための技術もまた十分に確立されており、関連する研究分野において広く実施されている。例えば、ポリヌクレオチドのシークエンシングの基本的原理および一般的技術については、上記のWallaceら;上記のSambrookおよびRussellら、ならびに上記のAusubelらのような、分子生物学および組み換え遺伝学についての様々な研究報告書ならびに論文に記載されている。本発明の実施には、通常研究室で用手または自動化のいずれかによって行われる、DNAシークエンス法を用いることができる。本発明の方法を実施するための、ポリヌクレオチド配列内の変化(例えばC→U)の検出に適したさらなる手段には、マススペクトロメトリー、プライマー伸長法、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーション、リアルタイムPCR、融解曲線分析、高分解能融解分析、ヘテロ二本鎖分析、ピロシークエンス、および電気泳動が含まれるが、これらに限定されない。
VI.標準コントロールの確立
本発明の方法を実施するための標準コントロールを確立するため、最初に健常胎児を有する健常妊婦の群を選択する。これらの妊婦は、本発明の方法を用いて、胎児の染色体異数性などのような、妊娠に付随する状態をスクリーニングする目的に適した妊娠の時期内にある。任意に、妊婦は同様の妊娠期間、例えば、第1期または第2期のような同一の妊娠三半期にある。
選択された妊婦および該妊婦が妊娠している胎児の健康状態は、妊婦の一般的な健康診断、妊婦の遺伝子分析、ならびにCVSおよび羊水穿刺を用いた胎児の遺伝子分析を含むがこれらに限定されない、十分に確立された通常用いられる方法によって確認される。
さらに、健常胎児を有する健常妊婦の選択数は、母体血中の胎児の遺伝マーカーおよびエピジェネティックマーカーの平均の量/濃度、その量/濃度の比率、およびこの群から得られた母体血中の1以上のエピジェネティックマーカーのメチル化特性が、健常胎児を有する健常妊婦の一般的な集団内でのメチル化特性の正常または平均レベルを代表すると正当にみなされ得るように、妥当な大きさでなければならない。好ましくは、選択された群は少なくとも10人の妊婦を含む。
胎児のエピジェネティックマーカーのメチル化特性は、この遺伝子のメチル化状態についての複数の、異なっておりかつ分離可能な態様を反映し得る。例えばメチル化特性の一態様は、C残基がメチル化されているか否かであり;別の態様は、マーカーの特定の領域内のメチル化されたC塩基の数であり;特性のさらなる態様は、分析した幾つかのDNA分子の、任意の所定の位置におけるメチル化されたCの単数または複数のパーセンテージである。メチル化特性のさらなる態様には、対立遺伝子のメチル化における相違、差次的にメチル化された対立遺伝子の比率などが含まれ得るが、これらに限定されない。胎児性エピジェネティックマーカーのメチル化特性もまた、組織型、例えば胎盤またはその他の胎児の組織によって変動し得る。従って、試験に用いられる様々な胎児の組織のための、別々の標準コントロールが確立されてよい。
選択された健常対照群の各妊婦に見出された個別の値に基づいて、母体サンプル中に存在する胎児性マーカーの特定のセットに対する、胎児性エピジェネティック−遺伝マーカーの比についての平均値が一旦確立されると、この平均値もしくは中央値もしくは代表値、または特性は標準コントロールとみなされる。これらの健常対照妊婦から採取されたサンプルは、理想的には侵襲性の手順に先立って採取されるべきである。同じ過程の間に、標準偏差もまた決定される。場合によっては、エピジェネティックマーカー配列の異なる領域に基づくような、エピジェネティックマーカーのメチル化特性の様々な態様に対して、別々の標準コントロールが確立されてもよい。
実施例
以下の実施例は例証の目的のみで提供されるものであり、限定が目的ではない。当業者は、本質的に同じであるかもしくは同様の結果を生み出すために変更または改変され得る、様々な決定的ではないパラメータを容易に認識するであろう。
I.材料および方法
研究参加者
プリンスオブウェールズ病院(Prince of Wales Hospital)、香港、の産科および婦人科に通院する、正倍数体と21トリソミーの妊婦を採用した。研究に参加した個人からインフォームドコンセントを得て、香港中文大学−新界東医院連合臨床研究倫理委員会(Joint Chinese University of Hong Kong−New Territories East Cluster Clinical Research Ethical Committee)から倫理的承認を得た。
COBRAによる、第21染色体上の差次的にメチル化された領域のスクリーニング
胎盤および母体血細胞からのDNAサンプル中の、第21染色体上のゲノム配列のメチル化状態を評価するため、COBRA(Xiong and Laird, Nucleic Acids Res 1997;25:2532-4)を用いた。
COBRAにより同定された差次的にメチル化された遺伝子座の、クローニングおよび亜硫酸水素塩によるシークエンス分析
クローニングおよび亜硫酸水素塩によるシークエンシングのために、COBRA分析から得られたPCR産物を用いた。単一分子の分解能においてメチル化状態を分析するため、pGEM-T Easy Vector System (Promega、マディソン、ウィスコンシン州)を用いて、PCR産物をプラスミドベクター内へTAクローニングした。組み換え陽性クローンからの挿入断片をベクタープライマーT7およびSP6を用いてPCRにより増幅し、次にBigDye Terminator Cycle Sequencing v1.1 キット(Applied Biosystems、フォスターシティ、カリフォルニア州)を製造者の指示に従って用いる、サイクルシーケンスによって分析した。エタノール沈殿後、サンプルを10μLのHi-Diホルムアミドに再懸濁し、3100 DNA Analyzer(Applied Biosystems)にかけた。シークエンスデータは、SeqScapeソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて分析した。スコア化に先立ち、亜硫酸水素塩による変換の完全性を確認した。メチル化部位の頻度は、メチル化CpG部位の総数を、クローン化された全てのCpG部位で割ることにより算出した(Chiu et al., Am J Pathol 2007;170:941-50)。
HLCS遺伝子座の、従来のリアルタイム定量PCRによる分析
COBRAスクリーニングおよび亜硫酸水素塩によるシークエンシングの結果に基づき、本発明者らは、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ(MSRE)による消化アッセイに続く、胎盤で過剰にメチル化されているが、母体血細胞ではメチル化されていないHLCS遺伝子座領域B2を標的としたリアルタイム定量PCR分析を開発した。酵素消化の使用により、様々なゲノムDNAサンプル中の、HLCS遺伝子座におけるメチル化パターンの分析が可能になった。加えて、母体血漿サンプル中のバックグラウンドである母体DNA分子を除去することができた。リアルタイムPCRアッセイのためのプライマーおよびプローブの配列を表1に示す。
マイクロフルイディクスデジタルPCRプラットフォームによる遺伝子量の分析
第21染色体と参照マーカーの遺伝子量の比較を、マイクロフルイディクスデジタルPCRプラットフォームにおけるポリメラーゼ連鎖反応によって分析した(Ottesen et al., Science 2006;314:1464-7; Warren et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2006;103:17807-12)。エピジェネティック−エピジェネティックの比較のための遺伝子座は、第21染色体上のHLCSと第3染色体上のRASSF1Aであった(Chiu et al., Am J Pathol 2007;170:941-50)。両方とも、過剰メチル化された胎児性DNAマーカーであった。エピジェネティック−遺伝の比較のための遺伝子座は、雄性胎児の妊娠に由来する第21染色体上のHLCSとY染色体上のZFYであった。全てのアッセイのためのプライマーおよびプローブの配列を、PCRの熱サイクル条件と共に表1に示す。
統計解析
統計解析はSigmaStat 3.5ソフトウェア(SPSS)を用いて行った。
血液および組織サンプルの採取
絨毛膜絨毛サンプル(CVS)を、妊娠第1期における従来の出生前診断において採取した。胎盤組織サンプルを、正倍数体の第3期妊娠の出産後に、および正倍数体および21トリソミーの妊娠中絶後に採取した。胎児の染色体の状態を完全な核型分析によって確認した。全ての被験者から、母体末梢血サンプル(12〜20mL EDTA)を採取した。第3期妊娠の出産後に、追加の12mLの血液をEDTAチューブ内に採取した。第1期、第2期、および第3期の妊娠期間のサンプルは、それぞれ12〜14週、17〜21週、および38〜40週であった。
血液および組織サンプルの処理
母体末梢血サンプルを、以前に記載したように二重遠心分離プロトコルによって処理した(Chiu et al., Clin Chem 2001;47:1607-13)。血液細胞部分を2,500gで再遠心し、いずれの残余の血漿も除去した。末梢血液細胞からのDNAと母体血漿からのDNAを、QIAamp DNA血液ミニキットおよびQIAamp DSP DNA血液ミニキット(Qiagen、ヒルデン、独国)それぞれの血液および体液プロトコルにより抽出した。CVSおよび胎盤からのDNAは、QIAampDNAミニキット(Qiagen)を製造者の組織プロトコルに従って用いることにより抽出した。
COBRAによる、第21染色体上の差次的にメチル化された領域のスクリーニング
COBRAの手順を以下に記載する。亜硫酸水素塩による変換は、1グラムの各DNAサンプルに対し、EZ DNA メチル化キット(Zymo Research、オレンジ、カリフォルニア州)を製造者の指示に従って用いることにより行った。亜硫酸水素塩により変換されたDNAの40ナノグラム(元のDNAインプットに基づいた計算)を、次にHotStar Taq DNAポリメラーゼキット(Qiagen、ヒルデン、独国)に供給される試薬を用いたPCRによる増幅に供した。各PCRのための試薬組成物を表2に示す。典型的には、PCRは、1xPCR緩衝液、MgCl、50μMの各dNTP、順方向および逆方向プライマー、HotStar Taq ポリメラーゼ、および2X PCRx エンハンサー(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)が有または無の、20μLの反応にて行った。熱特性は、95℃15分に続き、95℃20秒の45〜55サイクル、適切なアニーリング温度で30秒、72℃1.5分、および72℃3分の最終伸長であった。PCR産物を次に制限酵素消化に供した。それぞれの遺伝子座に用いられる制限酵素は、亜硫酸水素塩による変換後のメチル化および非メチル化配列を区別できる能力によって選択した。本質的に、制限酵素部位は、配列の一つが消化され得るがもう一つは未変化のままであるように、メチル化または非メチル化配列のいずれかのみに存在し、両方には存在しなかった。制限酵素消化は、5μLのPCR産物、適切な1x緩衝液、および10Uの制限酵素(またはモック消化のために酵素なし)による20μLの反応において、製造者が推奨する温度下で2時間行った。全ての酵素は、New England Biolabs(イプスウィッチ、マサチューセッツ州)から購入した。消化した産物は、次にアガロースゲル電気泳動によって分析した。
HLCS遺伝子座の、従来のリアルタイム定量PCRによる分析
MSREによる消化。各胎盤および母体血細胞DNAサンプルについて、100ngのDNAをMSREによる消化に供した。制限酵素消化は、適切な1x緩衝液、25UのHpaIIおよび50UのBstUI(またはモック消化のために酵素なし)(New England Biolabs)による50μLの反応において、製造者が推奨する温度下で少なくとも16時間行った。各母体血漿サンプルについては、1.6mLの血漿をDNA抽出に用い、50μLの脱イオン水中に溶出して、その21μLを制限酵素消化に供した。酵素消化は、適切な1x緩衝液、20UのHpaIIおよび30UのBstUI(またはモック消化のために酵素なし)による30μLの反応において、製造者が推奨する温度下で少なくとも16時間行った。消化産物を次にリアルタイム定量PCRによって分析した。選択した制限酵素は非メチル化DNAのみを消化し、メチル化DNAは消化しない。COBRA分析のデータにより、HLCSは胎盤組織で過剰メチル化されているが、母体血細胞ではメチル化されていないことが示されたから、制限酵素処理後に、胎盤組織由来のDNAの割合は検出可能なままで、母体血細胞由来のほとんどのDNAが消化され、検出されなくなることが予想された。
リアルタイム定量PCR分析。制限酵素消化が有または無によるHLCSゲノムDNAの定量分析のために、リアルタイムPCRアッセイを開発した。制限酵素処理したDNAまたはモック消化サンプルの4μlを、リアルタイムPCRアッセイに用いた。各反応には、1x TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、各300nMの順方向および逆方向プライマー(Integrated DNA Technologies、コーラルビル、アイオワ州)、および100nMのTaqManプローブ(Applied Biosystems)が含まれた。プライマーおよびプローブの配列を表1に示す。熱プロファイルは、50℃2分、95℃10分に続き、95℃15秒の50サイクル、および60℃1分であった。全ての反応は二重に行い、平均量を採用した。最初に吸光度測定で定量して連続希釈したヒトゲノムDNAをアッセイの定量標準物質として用い、アッセイの検出限界は反応あたり1コピーであった。メチル化画分を表す、制限酵素消化後に検出されるHLCS分子として、リアルタイム定量PCRをメチル化の指数として表現した。サンプルのメチル化指数は、酵素消化後のHLCSのコピー数を、モック消化により得られたコピー数で割ることによって算出した。母体血漿DNA分析は、過剰にメチル化されたHLCS分子の産後クリアランスを示すために行った。
マイクロフルイディクスデジタルPCRプラットフォームによる遺伝子量の分析
MSREによる消化。MSREであるBstUI(New England Biolabs)を、低メチル化DNAの消化に使用した。抽出したDNAを、BstUI酵素により60℃にて16時間消化した。CVS、胎盤組織、および母体血細胞に対しては、マイクロフルイディクスデジタルPCRアッセイのための200ngのDNAを消化するために、40UのBstUI酵素を用いた。モック消化した一部の分量を、消化コントロールとして含めた。モック消化については、同量のDNAを、酵素の添加なしで同じ消化条件に供した。血漿サンプルに対しては、第3期サンプルの3.4〜4.8mLの血漿からのDNAを消化するために20UのBstUI酵素を使用した。第1期および第2期の血漿サンプルに対しては、4.4〜9.1mLの血漿から抽出したDNAを消化するために40Uまたは60UのBstUI酵素を使用した。下線で示したBstUI制限酵素部位を有する標的配列を、図5に示す。
マイクロフルイディクスデジタルPCR分析。それぞれが第21染色体、第3染色体、およびY染色体の量を表す、HLCS、RASSF1A、およびZFY遺伝子座(図5)に対するマイクロフルイディクスデジタルPCRアッセイを設計した。ZFX/Yアッセイ、およびデジタルPCR分析の基礎については以前に記載されている(Lun et al., Clin Chem 2008;54:1664-72)。プライマーおよびプローブの配列を表1に示す。デジタル実験は、12.765デジタルアレイ(Fluidigm、サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州)を用いるBioMark System(Fluidigm)において実行した。デジタルアレイは12パネルからなり、各パネルはさらに765の反応ウェルに分割される。各パネルに、最終濃度が1x TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、125nMのTaqManプローブ(Applied Biosystems)、ならびに900nMの順方向および逆方向プライマー(Integrated DNA Technologies)になるように、製造者のプロトコルに従ってアッセイ添加液およびサンプル添加液によって希釈した10μLの混合物として反応を設定した。インプットDNAの量は、10μLの各反応混合物に対して3.5μLであった。熱プロファイルは、50℃2分、95℃10分に続き、95℃15秒または30秒の50サイクル、および57℃または60℃1分であった。各アッセイの熱サイクル条件を表1に示す。HLCSおよびRASSF1Aアッセイはモノプレックスアッセイとして行った。ZFX/Yアッセイはデュプレックスで行った。
BstUIにより消化したゲノムDNAサンプルにおけるアッセイ特異性。CVS、胎盤、母体血細胞からのDNAサンプルを、BstUI消化後、HLCS、RASSF1A、およびZFX/YデジタルPCR分析に供した。酵素消化後、デジタルPCR分析の反応混合物中に添加するため、DNAの濃度を1〜2ng/μLに希釈した。CVSおよび胎盤からのDNAサンプルは、酵素消化に抵抗性のHLCSおよびRASSF1A分子により構成されるため、制限酵素消化後にシグナルが検出されるはずである。一方で本発明者らは、血液細胞がそれらの二つの遺伝子座において低メチル化されていることから、血液細胞における検出は無かまたは低レベルであると予想した。
ZFX/Y遺伝子座はいずれのBstUI酵素消化部位も含まなかったことから、制限酵素処理はDNA分子に対してどのような影響も与え得ない。ZFY分子は、比率を比較するための、雄性胎児からの胎児由来配列を構成した。
BstUIにより消化した血漿DNAサンプルにおけるアッセイ特異性。母体血漿DNAサンプルをBstUIにより消化した後、脱イオン水で4倍に希釈した。次にサンプルを、分析用のマイクロフルイディクスチップ上に添加するため、反応混合物と混合した。
エピジェネティック−エピジェネティックアプローチおよびエピジェネティック−遺伝アプローチによる、遺伝子量の比較。HLCS、RASSF1A、およびZFX/Y遺伝子座のデジタルPCR分析を、正倍数体およびT21胎盤DNAサンプルについて、BstUIによる制限酵素消化後に行った。母体血漿分析について、本発明者らは、正倍数体およびT21の妊娠に由来するBstUIにより消化したDNAサンプル中の、HLCSのZFYに対する比率を比較した。
II.結果
COBRAによる、第21染色体上の差次的にメチル化された領域のスクリーニング
第21染色体上の35のプロモーター領域を、COBRA法を用いた差次的なメチル化のスクリーニングのために選択し、そのうちの30はCpGアイランド(CGI)と関連していなかったが、その他の5はCGIに関連していた。CGIを決定する基準は以下の通りである:長さ>400bp、GC含量>50%、および観察された/予想されるCpG比>0.6(Yamada et al., Genome Res 2004;14:247-66)。35のプロモーターの、転写開始点に近接するDNA配列(−1kbから+500bp;転写開始点は0となる)を、UCSCゲノムバイオインフォマティクスデータベース(ウェブサイト:www.genome.ucsc.edu/)のMarch 2006ヒト参照配列(NCBI Build 36.1)から取得し、胎盤組織と母体血細胞の間でメチル化パターンを比較するために51のCOBRAアッセイを設計した(表2)。
51のアッセイにおいて、第1期および第3期に採取した胎盤組織と母体血細胞の間で、プロモーター領域のメチル化特性を比較した。正常妊娠からの少なくとも1の胎盤組織および1の母体血細胞サンプルをCOBRAスクリーニングに用いた(表2)。スクリーニングした領域のうち、HLCSの推定プロモーター領域およびC21またはf81(GenBank 受入番号AF326257)は、胎盤組織と母体血細胞の間で差次的にメチル化されることが、COBRAによって同定された。代表的なCOBRAの結果を、胎盤が母体血細胞に比較して高度にメチル化されるHLCS領域B2については図6Aに;母体血細胞が胎盤組織に比較して低度にメチル化されるC21またはf81については図6Bに示す。
HLCS遺伝子座の、クローニングおよび亜硫酸水素塩によるシークエンス分析
単一分子の分解能におけるメチル化状態のさらなる分析のため、HLCS領域においてクローニングおよび亜硫酸水素塩によるシークエンシング実験を行った結果を図1に示す。HLCS領域のシークエンシング結果により、HLCSの高度メチル化は胎盤特異的であり、メチル化部位の頻度は0.435ないし0.699であることが確認された。母体血細胞サンプル中の標的配列の3’末端(すなわち位置−57から+111、転写開始点は0となる)において低いメチル化レベルが検出されたが(メチル化部位頻度<0.100)、−232から−67のCpG部位にはメチル化はほとんど観察されなかった。
MSREにより消化した胎盤、母体血細胞、および血漿DNAサンプルに対するリアルタイム定量PCR
HLCS領域B2のCOBRAおよび亜硫酸水素塩によるシークエンスのデータに基づいてMSRE消化アッセイを行い、続いて胎盤および母体血細胞から抽出したゲノムDNAの差次的なメチル化を分析するためのリアルタイム定量PCR分析を行った。
8の母体血細胞サンプルに由来するHLCSの推定プロモーター領域のメチル化特性を、正倍数体の妊娠から採取した、2の第1期および2の第3期の胎盤組織サンプルに由来するものと比較した。制限酵素消化に続き、リアルタイム定量PCR分析を行った結果を図7に示す。全ての母体血細胞サンプルからのDNAは制限酵素によりほとんど消化され、メチル化指数は0に近づいた(中央値:0.0178、四分位範囲(IQR):0.0121〜0.0281)。胎盤組織DNAサンプルは部分的に消化され、メチル化指数は0.567ないし0.966の範囲であった。
以前のデータにより、胎盤は胎児DNAの主な源であるが(Bianchi, Placenta 2004;25 Suppl A:S93-S101)、母体血細胞は、母体血漿中で検出可能な、バックグラウンドである母体DNAに主に寄与することが示唆された(Lui et al., Clin Chem 2002;48:421-7)。従って、HLCSのDNA分子の胎盤特異的な画分、つまりメチル化されているかまたは消化されない画分が、母体血漿中に検出され得ると仮定された。出産前および出産後の、第3期の母体血漿サンプルを25組収集し、制限酵素で消化した後にリアルタイム定量PCR分析を行った。結果を図8に示す。陽性のHLCSシグナルは、酵素消化した出産前の血漿サンプルの全てから得られた。酵素処理した出産前および出産後の血漿サンプルからのクリアランスパターンにより、消化抵抗性のHLCS分子は妊娠特異的であったことが示唆された(P=<0.001、ウィルコクソン符号順位検定)。出産後の血漿サンプル中のHLCS濃度の中央値は、出産前のサンプル中のそれのわずかに8.1%であった(各20.1対247.8コピー/mL)(図8A)。モック消化を行ったサンプルについては、出産後の血漿サンプル中のHLCS濃度の中央値は、出産前のサンプル中のそれの83.8%であった(各1208.5対1442.4コピー/mL)(図8B)。モック消化により、出産前の血漿サンプルには胎児および母体DNAの両方が検出されたが、出産後のサンプルには母体DNAのみが測定された。モック消化による出産前と出産後のサンプル間でのHLCS濃度の相違は、統計的に有意であることに留意されたい(P=0.003、ウィルコクソン符号順位検定)。
BstUIで消化した一定分量のデータにより、比較的高レベルの胎児DNAを有する母体血漿サンプルが5サンプルあり、これらの5サンプルは、出産後のサンプル中で、酵素による消化なしでもHLCS濃度が大きく減少しているサンプルと同一であったことが示された。このことは、酵素による消化なしであっても、明らかな「クリアランス」パターンの一因となり得る。出産後の血漿サンプル中に観察されるHLCS濃度の減少は、異常に高レベルの胎児DNAを有する幾つかのサンプルによる可能性がある(P=0.003、ウィルコクソン符号順位検定)。極端に高濃度のHLCSを有する出産前の5サンプルは、酵素による消化の比較における上位の5サンプルと一致することに留意されたい。
マイクロフルイディクスデジタルPCRプラットフォームにおける遺伝子量の分析
第21染色体と参照染色体のマーカーの遺伝子量の比較を、マイクロフルイディクスデジタルPCRプラットフォームにおいて行った。第21染色体のマーカーは高度にメチル化されたHLCSであり、第3染色体およびY染色体上の参照マーカーは、それぞれ高度にメチル化されたRASSF1Aおよび雄性特異的なZFYであった。
酵素による消化の有または無によってHLCSおよびRASSF1Aアッセイの性能を点検するため、2組の胎盤組織および母体血細胞サンプルを用いた。ZFX/Yアッセイもまた行った(GenBank 受入番号、ZFX:NM_003410、およびZFY:NM_003411)。これらの遺伝子座には酵素消化部位が存在しなかったことから、コピー数は酵素消化によって影響され得ないことが予想された。消化抵抗性のHLCSおよびRASSF1A分子の産後クリアランスを試験するため、出産後の母体血漿の2サンプルを用いた。
各ゲノムDNAサンプルについて、各アッセイの1パネルを行った。出産後の母体血漿については、陽性シグナルを有するいずれのウェルもスコア化するために、酵素消化したDNAを2パネルに分配した。ゲノムDNAと血漿DNAサンプルの結果をそれぞれ表3Aおよび3Bに要約する。各標的遺伝子座について、陽性であったウェル数を数えた。パネルに分配した分子の実際の数はポアソン分布に従っており、以下の方程式:
標的=−ln[E/N]xN
(式中、標的はポアソン補正した標的分子の数、lnは自然対数、Eは陰性(空)ウェルの数、およびNは反応におけるデジタルPCRウェルの総数である)
によって補正した。
BstUIで消化した胎盤DNAサンプルの結果から、モック消化のサンプルと比較した際、HLCSおよびRASSF1A分子の約60%〜70%がなお検出可能であることが示された。母体血DNAでは、低メチル化RASSF1A分子はBstUI酵素処理によって完全に消化されたが、幾つかのHLCS分子はなおサンプル中に検出可能であった。ZFYおよびZFXアッセイについては、モックまたはBstUIで消化したDNAサンプルにおいてみられたコピー数に変化は見られなかった(表3A)。
出産後の母体血漿分析により、BstUI酵素による消化後に、HLCSおよびRASSF1A分子の両方が非常に低レベルで検出されたことが示された(表3B)。
MSREによる消化とそれに続くデジタルPCR分析による、胎盤DNAサンプルにおける遺伝子量の比較
10の正倍数体および12の21トリソミーの胎盤DNAサンプルに対して、HLCSおよびRASSF1Aアッセイを行った(表4A)。各アッセイについて、4パネルを準備した(図2A)。正倍数体およびT21のサンプルにおいて、HLCSとRASSF1Aの増幅が陽性であった数の比率は統計学的に有意に異なっていた(P=0.005、マンホイットニー順位和検定)。しかしながら、2群の間には大きな重複があった(図3A)。HLCSのRASSF1Aに対する比率の平均±1.96SDとして定義される正常参照範囲は、正倍数体サンプルから0.86〜1.63と算出した。参照範囲内であるT21の事例は半数を超えていた。異なるサンプル間の、二つの遺伝子座のメチル化密度の不均一性が、HLCSのRASSF1Aに対する比率が個体間で大きく変動する一因であると考えられる。この精密さの問題を解決するため、正倍数体とT21のDNAサンプル間での量の比較にはさらに安定なベースラインが要求され得る。
次に、そのメチル化状態に依存しない胎児特異的な遺伝子座、すなわちZFY遺伝子座を、雄性胎児の妊娠における遺伝子量比較のベースラインとするために調査した。これはエピジェネティックな−遺伝的な(EGG)アプローチの重要な特色である。
HLCSとRASSF1Aの比較に使用した、同じ制限酵素で消化した胎盤DNAサンプルを、ZFYデジタルPCR分析に供した(図2A)。4パネルの総コピー数を、上で得たHLCS分子の総コピー数に対する参照ベースラインとして用いた。HLCSのZFYに対する比率の平均±1.96SDとして定義される正常参照範囲は、正倍数体サンプルから1.08〜1.62と算出した。全てのT21サンプルは、正常対象範囲よりも高い比率を示した(図3B)。
MSREによる消化とそれに続くデジタルPCR分析による、母体血漿DNAサンプルにおける遺伝子量の比較
EGGアプローチが、胎児の21トリソミーの非侵襲性の出生前検出に適用できるか否かを決定するために、次にEGG技術を正倍数体およびT21の妊娠に由来する母体血漿DNAサンプルへ応用した。母体血漿中の母体HLCS分子はBstUI酵素によって制限消化され、胎児由来の過剰メチル化HLCS分子は未変化のまま残って分析可能であったが、胎児由来のZFY遺伝子座は、PCRアンプリコン内に位置するBstUI酵素認識部位が存在しないことから影響され得ず、このために遺伝子量比較のための安定なベースラインになると結論付けた。
正倍数体胎児の妊娠第3期、第2期、および第1期それぞれから、8の母体血漿サンプルを得た。BstUIによる消化後、各DNAサンプルを、HLCSおよびZFYアッセイのためのマイクロフルイディクスチップ上の少なくとも6パネルにおいて分析した(図2B)。陽性ウェルの総数を用いて、各サンプルごとにHLCSのZFYに対する比率を算出した(表4B)。
正常参照範囲の1.49〜2.88は、正倍数体の妊娠による24の母体血漿サンプルから算出した。1サンプルの正倍数体DNAサンプルの比率は正常参照範囲外であった。このサンプルは、Speedvac濃縮の間に乾燥させ、サンプル調製の間に水で元に戻したことが不正確さの説明となるかもしれない。T21の妊娠に由来する5の母体血漿サンプルは全て、HLCSのZFYに対する比率が参照範囲よりも高かった(図4)。このデータは、EGGアプローチによって、胎児の21トリソミーが母体血漿サンプルにおいて非侵襲性に検出できることを示した。
III.考察
この研究の最初の部分で、本発明者らは、第21染色体上の高度にメチル化された胎児性DNAマーカー、すなわちHLCS遺伝子のプロモーター領域の検証に成功した(米国特許出願公開第2007/0275402号)。このマーカーの高度にメチル化された性質により、メチル化感受性制限酵素による消化とPCRによる増幅の使用を通して、母体血漿中にこれを比較的容易に検出することが可能になる。
次にHLCSを用いて、新規なEGGアプローチが胎児の染色体量分析のために実行可能な方法であることを示した。EGG法が、これまでのエピジェネティックな対立遺伝子の比率分析(Tong et al., Clin Chem 2006;52:2194-202)よりも有利である主な点は、この方法を用いることで、エピジェネティックな標的および遺伝的な標的(すなわちSNP)が同じ遺伝子座に存在し、かつ互いの距離が近くなければならないという、後者の方法に対する要件を回避できることである。この研究では、Y染色体上のZFY遺伝子を、胎児に特異的である遺伝的な標的のモデルとして用いた。しかしながら実際には、胎児に特異的であるいずれの遺伝的な標的、例えば胎児が父親から受け継いでいるが、妊婦には存在しないSNP対立遺伝子も用いることができる。このようなマーカーのパネルは、このアプローチが広い集団を網羅することを確実にするために、比較的容易に開発され得る。
EGGアプローチがT21を識別する威力は、例として高度メチル化HLCSの高度メチル化RASSF1Aに対する比率を用いる、単なるエピジェネティックマーカーに基づいたアプローチより高いこともまた実証された。後者のアプローチの能力が最適以下であることの一つの可能な説明は、図1および以前に発表した亜硫酸水素塩によるシークエンシングの結果(Chiu et al., Am J Pathol 2007;170:941-50)にみられるように、個別の胎児に由来するHLCSおよびRASSF1A分子のDNAメチル化のレベルが様々であるという事実による。従って、これらの潜在的に可変的な二つのパラメータから決定された比率は、パラメータの一つが比較的安定な遺伝マーカー(EGGアプローチの場合のように)である場合よりも、広い基準範囲を有し得ることが予想されるであろう。
この研究では、これまでの結果により高度に正確な分析法であることが示されたていため(Lun et al., Clin Chem 2008;54:1664-72; Lun et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105:19920-5)、マイクロフルイディクスデジタルPCRを検出および測定のプラットフォームとして用いた。EGGアプローチは、この分子計数をテーマとするその他の変形、例えば「次世代」シークエンサーを用いる標的化されたシークエンシングによっても実行できる。
出生前のスクリーニングに重要なその他の染色体、例えば第18および第13染色体上の胎児性エピジェネティックマーカーの開発も、EGGアプローチの有用性をさらに広げるであろう。胎児性エピジェネティックマーカーの一例は、マスピンをコードする第18染色体上のSERPINB5遺伝子である(Chim et al., Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:14753-8)。第18および第13染色体上の胎児性エピジェネティックマーカーのその他の例については、Papageorgiouらにより記載される(Papageorgiou et al., Am J Pathol 2009;174:1609-18)。
胎児のエピジェネティックマーカーとして第21染色体上のホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)の推定プロモーター、および胎児の遺伝マーカーとしてY染色体上に存在するY連鎖ジンクフィンガータンパク質(ZFY)遺伝子を用いる、胎児の21トリソミーを検出するための新規のエピジェネティック−遺伝的染色体量アプローチが最近開発された(Tong et al., Clin Chem 2010;56:90-8)。この方法が雄性および雌性胎児の両方における検出に使用できることを実証するため、本発明者らは、Y染色体マーカーの代わりにエピジェネティック−遺伝的第21染色体の量の決定のベースラインとして役立つように、参照染色体上にある父親から受け継いだ胎児の一塩基多型(SNP)対立遺伝子の使用について探索した。
I.材料および方法
研究参加者
プリンスオブウェールズ病院(Prince of Wales Hospital)の産科および婦人科に通院する正倍数体と21トリソミー(T21)の妊婦を、2009年10月から2010年3月の間に採用した。研究に参加した個人からインフォームドコンセントを得て、香港中文大学−新界東医院連合臨床研究倫理委員会(Joint Chinese University of Hong Kong−New Territories East Cluster Clinical Research Ethical Committee)から倫理的承認を得た。
絨毛膜絨毛サンプル(CVS)を、妊娠第1期における通常の出生前診断において採取した。胎盤組織サンプルを、正倍数体の第3期妊娠の出産後に、およびT21の妊娠中絶(TOP)後に採取した。T21の各例の染色体の状態を完全な核型分析によって確認した。全ての被験者から、母体末梢血サンプル(EDTAチューブ内に12mL)を採取した。
血液および組織サンプルの処理
末梢血サンプルを、以前に記載したように二重遠心分離プロトコルによって処理した(Chiu et al., Clin Chem 2001;47:1607-13)。血液細胞部分を2,500gで再遠心し、いずれの残余の血漿も除去した。末梢血液細胞からのDNAと母体血漿からのDNAを、QIAamp DNA血液ミニキットおよびQIAamp DSP DNA血液ミニキット(Qiagen)それぞれの血液および体液プロトコルにより抽出した。
CVSおよび胎盤からのDNAは、QIAampDNAミニキット(Qiagen)を製造者の組織プロトコルに従って用いることにより抽出した。
染色体量分析
胎盤組織および母体血漿DNAサンプル中の第21染色体と参照マーカーの染色体量の比較を、それぞれリアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)およびデジタルPCR(Vogelstein and Kinzler Proc Natl Acad Sci U S A 1999;96:9236-41)により分析した。染色体量分析は、高度にメチル化されたHLCSの量を、胎児が父親から受け継いだが、妊娠中の母親には存在しないSNP対立遺伝子(C/GSNPであるrs6636)の量と比較することにより行った。SNPrs6636は、第14染色体上の輸送ドメイン含有膜貫通型emp24タンパク質8(transmembrane emp24 protein transport domain containing 8: TMED8)遺伝子内に位置し、平均ヘテロ接合性は0.451+/−0.149(dbSNP build 130)である。rs6636は、既報のSNPの一つである(Chow et al. Clin Chem 2007;53:141-2)。rs6636 SNPアッセイは、この文書ではTMED8−C/G SNPアッセイとして表される。
メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ(MSRE)による消化
メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼであるBstUI(New England Biolabs)を、低メチル化DNAの消化に使用した。抽出したDNAを、BstUI酵素により60℃にて16時間消化した。CVS、胎盤組織、ならびに母体および正常コントロール血液細胞に対しては、PCRアッセイのための100ngのDNAを消化するために、40UのBstUI酵素を用いた。モック消化した一定分量を、消化コントロールとして含めた。モック消化については、同量のDNAを、酵素の添加なしで同じ消化条件に供した。血漿サンプルに対しては、1.6〜5.2mLの血漿からのDNAを消化するために20Uないし40UのBstUI酵素を使用した。
従来のリアルタイムqPCR分析のアッセイ設計および反応条件
リアルタイムPCR分析をHLCSおよびTMED8遺伝子座について行った。プライマーおよびプローブの配列を表5に示す。HLCS、TMED8−C対立遺伝子、およびTMED8−G対立遺伝子アッセイは全てモノプレックス反応として行った。HLCS遺伝子座のPCRアンプリコン内には、二つのBstUI酵素認識部位が存在した。対照的に、TMED8 SNPアッセイはいずれのBstUI酵素認識部位も含まなかった。
最終濃度が1x TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、100nMのTaqMan(登録商標)プローブ(Applied Biosystems)、ならびに各300nMの順方向および逆方向プライマー(Integrated DNA Technologies)であり、25ngのDNAインプットを含む、25μLの混合物として、各反応を設定した。反応は50℃2分で開始し、次に95℃10分、95℃15秒の40サイクル、および60℃1分で続けた。実験は7300 Real-time PCR System(Applied Biosystems)で行い、蛍光データを収集してSDS v1.3.0 ソフトウェア(Applied Biosystems)により解析した。全ての反応は二重に実行し、平均量を採用した。検量線は、成人男性の血液細胞から抽出したゲノムDNAを、反応あたり10000ゲノム当量(GE)ないし3GEの範囲の濃度に段階希釈することによって作成した。
デジタルPCR分析のアッセイ設計および反応条件
HLCSおよびTMED8−C/G SNPのデジタルPCR分析には、リアルタイムPCR分析に対するものと同じオリゴヌクレオチド配列を用いた(表5)。ここでHLCSアッセイはデュプレックス反応として、各TMED8−C/G SNPアッセイと共に行った。蛍光プローブは、HLCS(VIC)とTMED8−C(FAM)をデュプレックスで、およびHLCS(FAM)とTMED8−G(VIC)をデュプレックスとして標識した。
デジタルPCR分析の基礎については既報である(Lo et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2007;104:13116-21; Lun et al. Clin Chem 2008;54:1664-72)。384ウェルプレートのウェルあたりの反応総量は5μLであり、最終濃度は1x TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、100nMのTaqMan(登録商標)プローブ(Applied Biosystems)、ならびに各300nMの順方向および逆方向プライマー(Integrated DNA Technologies)であった。反応は50℃2分で開始し、次に95℃10分、95℃15秒の50サイクル、および60℃1分で続けた。実験は7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems)において384ウェルフォーマットにより行い、蛍光データをSDS 2.3 ソフトウェアの「Absolute Quantification」アプリケーション(Applied Biosystems)により収集した。
TMED8−C/G SNPアッセイの特異性
既知のTMED8遺伝子型を有するゲノムDNAを胎盤組織から抽出し、HLCSおよびTMED8のデュプレックスアッセイに供した。一対立遺伝子がホモ接合性であったサンプルは、もう一方の対立遺伝子のTMED8−C/G SNPアッセイによって試験した。C対立遺伝子がホモ接合性であるサンプルは、G対立遺伝子を検出するTMED8アッセイに対してどのようなシグナルも示さないはずであり、この逆もまた同じである。
消化コントロールとしてのベータアクチンアッセイ
胎盤および母体血細胞の両方においてメチル化されていない、既報のベータアクチン領域を、BstUIによる消化の効率を判定するために用いた(Chan et al. Clin Chem 2006;52:2211-8)。ベータアクチンアッセイは、現行のHLCSアッセイにおけるBstUI酵素認識部位の数に一致させるため、二つのBstUI酵素認識部位を含むように改変した。プライマーおよびプローブの配列を表5に示す。リアルタイムqPCRとデジタルPCR分析の両方に同じ配列を使用した。
統計解析
統計解析はSigmaStat 3.5ソフトウェア(SPSS)を用いて行った。
II.結果と考察
従来のリアルタイムqPCRによる染色体量分析
HLCSおよびTMED8−C/G SNPアッセイを、ヘテロ接合性のC/G遺伝子型を有する、総数20の正倍数体と9のT21胎盤組織サンプルに適用した。6の正倍数体と4のT21サンプルは、HLCSのTMED8−Cに対する比率を用いて分析し、残りの14の正倍数体と5のT21サンプルは、HLCSのTMED8−Gに対する比率を用いて分析した。成人男性の血液細胞から抽出したゲノムDNAを段階希釈することによって作成した、反応あたり10000GEないし3GEの範囲の濃度を有する検量線を、試験サンプル中の二つの遺伝子座の絶対的なコピー数を判定するために用いた。
検量線の勾配およびy切片によって示すように、三つのアッセイは全て効率が同じになるように最適化した。HLCS、TMED8−C、およびTMED8−Gアッセイの検量線の勾配は、それぞれ−3.71、−3.70、および−3.62であり、一方でy切片は、それぞれ39.62、39.79、および42.04の閾値サイクル値を示した。
胎盤DNAサンプルにおけるHLCSのTMED8−Cに対する比率
最初に、HLCSのTMED8−Cに対する比率をモック消化した胎盤DNAサンプルにおいて決定した。HLCSのTMED8−Cに対する比率の平均±1.96SDとして定義される正常参照範囲は、6の正倍数体サンプルから1.78〜2.66と算出された。4のT21サンプルは全て、正常対象範囲よりも高い比率を示した(図6A)(図9A)。
次に同じサンプルを、リアルタイムPCR分析に先立ち、BstUI制限酵素による消化に供した。PCRにより検出される消化抵抗性の過剰メチル化HLCS分子のみを残して、非メチル化HLCS分子はBstUI酵素処理により消化され得たが、TMED8のPCRアンプリコン内にBstUI酵素認識部位が存在しなかったことから、TMED8分子は未変化のまま残ったであろう。正常参照範囲は1.24〜2.26と算出した。全てのサンプルは、正確に判定された(表6B)(図9B)。
アッセイの特異性を試験するために、モックとBstUIによる消化実験の両方に、TMED8 SNPについてホモ接合性のGG遺伝子型を有する胎盤DNAサンプルを含めた。C対立遺伝子を検出するTMED8アッセイでは、シグナルは見られなかった(表6Aおよび6B)。
胎盤DNAサンプルにおけるHLCSのTMED8−Gに対する比率
最初に、HLCSのTMED8−Gに対する比率をモック消化した胎盤DNAサンプルにおいて決定した。正常参照範囲は、14の正倍数体サンプルから1.36〜3.03と算出した。正倍数体およびT21群それぞれからの1サンプルについては判定を誤った(図7A)(図10A)。
次に同じサンプルを、リアルタイムPCR分析の前に、BstUI制限酵素による消化に供した。正常参照範囲は、0.90〜1.99と算出した。正倍数体およびT21群それぞれからの1サンプルについては判定を誤った(図7B)(図10B)。これらはモック消化実験において判定を誤ったサンプルと同じものではない。
アッセイの特異性を試験するために、モックとBstUIによる消化実験の両方に、TMED8 SNPについてホモ接合性のCC遺伝子型を有する胎盤DNAサンプルを含めた。G対立遺伝子を検出するTMED8アッセイでは、シグナルは見られなかった(表7Aおよび7B)。
消化コントロールとしてのベータアクチン
ベータアクチンアッセイを、HLCSのTMED8に対する染色体量分析で用いたものと同じであるモックおよびBstUIにより消化した胎盤DNAサンプルに適用することにより、BstUI酵素による消化の効率を評価した。サンプル中のベータアクチン配列量を定量するために、同じ標準検量線を用いた。検量線の勾配は−3.41であり、一方でy切片は37.97の閾値サイクル値を示した。結果により、試験したサンプル全てにおいて96%を超えるDNAが消化されたことが示された(表8Aおよび8B)。
デジタルPCRによる染色体量分析
TMED8−C/G SNPアッセイの特異性
SNP対立遺伝子のいずれか1の検出に対する特異性を確認するため、ヘテロ接合性のC/G、ホモ接合性のC/C、およびホモ接合性のG/G遺伝子型の胎盤DNAサンプルを、HLCSおよびTMED8のデュプレックスアッセイにより試験した。3グループそれぞれに2サンプルを用いた。C対立遺伝子がホモ接合性であるサンプルは、G対立遺伝子を検出するTMED8アッセイに対してどのようなシグナルも示さないはずであり、この逆もまた同じである。
各標的遺伝子座について、陽性であったウェル数を数えた。384ウェルプレートに分配した分子の総数はポアソン分布に従っており、以前に記載したように補正した(Tong et al. Clin Chem 2010;56:90-8)。
HLCSおよびTMED8−Cのデュプレックスアッセイの適用により、ヘテロ接合性のC/Gおよびホモ接合性のC/C遺伝子型である胎盤DNAサンプルは、両遺伝子座に対して陽性のウェルを示したが、ホモ接合性のG/G遺伝子型のサンプルは、HLCS遺伝子座に対してのみ陽性であり、TMED8−C対立遺伝子に対する検出可能なシグナルは見られなかった(図9A)。
HLCSおよびTMED8−Gのデュプレックスアッセイの適用により、ヘテロ接合性のC/Gおよびホモ接合性のG/G遺伝子型である胎盤DNAサンプルは、両遺伝子座に対して陽性のウェルを示したが、ホモ接合性のC/Cのサンプルは、HLCS遺伝子座に対してのみ陽性であり、TMED8−G対立遺伝子に対する検出可能なシグナルは見られなかった(図9B)。
この結果により、TMED8−C/G SNPアッセイは、個々のSNP対立遺伝子の検出に特異的であったことが示された。特異性は、異なる蛍光色素によって標識された対立遺伝子特異的なプローブによって与えられた。
母体血漿DNAサンプルにおける、HLCSのTMED8−Cに対する比率
情報価値のあるなサンプルにおいて、消化抵抗性HLCSの胎児特異的なTMED8 SNP対立遺伝子に対する比率を比較することにより、母体血漿DNA分析を行った。情報価値のあるサンプルは、TMED8−C/G SNPが胎児がヘテロ接合性であり、かつ母親がホモ接合性であるものとして定義される。胎児が父親から受け継いだ余分の対立遺伝子は、第21染色体の量を決定するための参照ベースラインとして用いた。
HLCSおよびTMED8−Cのデュプレックスアッセイを、総数16の正倍数体および2のT21の妊娠に対して適用した。これらのサンプルにおいて、胎児および母体のTMED8 SNPの遺伝子型は、それぞれC/GおよびG/Gであった。胎児特異的なSNP対立遺伝子はC対立遺伝子であった。母体血漿DNAサンプルをBstUI酵素で消化した後、デジタルPCRにより分析した。各サンプルは、少なくとも1の384ウェルプレートにて分析した。陽性ウェルの総数を用いて、各サンプルにおけるHLCSのTMED8−C対立遺伝子に対する比率を算出した。
正倍数体の母体血漿サンプルから正常参照範囲の2.12〜3.65を算出した。妊娠第3期から8サンプルを採取し、第2期および第1期からそれぞれ4サンプルを採取した。これらの16の正倍数体サンプルのうち、10は雌性胎児の妊娠由来であり、6は雄性胎児の妊娠由来であった。正倍数体サンプルの全てにおいて、HLCSのTMED8−C対立遺伝子に対する比率は参照範囲内であった。妊娠第2期および第1期から採取したT21サンプルは、参照範囲よりも高い比率を示した(図7A)。T21の例は両方とも雌性胎児を妊娠していた。
母体血漿DNAサンプルにおける、HLCSのTMED8−Gに対する比率
情報価値のあるサンプルの他の群において、胎児および母体のTMED8 SNPの遺伝子型は、それぞれC/GおよびC/Cであった。胎児特異的なSNP対立遺伝子はG対立遺伝子であった。HLCSおよびTMED8−GのデュプレックスデジタルPCRアッセイを、BstUIにより消化した9の正倍数体妊娠および1のT21妊娠に由来する母体血漿DNAサンプルに適用した。各サンプルは、少なくとも1の384ウェルプレートにて分析した。陽性ウェルの総数を用いて、各サンプルにおけるHLCSのTMED8−G対立遺伝子に対する比率を算出した。
正倍数体の母体血漿サンプルから正常参照範囲の2.06〜3.68を算出した。9の正倍数体サンプルのうち、5,3、および1例は、それぞれ妊娠第3期、第2期、および第1期から採取した。これらには、雌性胎児の妊娠4例、および雄性胎児の妊娠5例が含まれた。正倍数体サンプルの全てにおいて、HLCSのTMED8−G対立遺伝子に対する比率は参照範囲内であった。雌性胎児を有するT21の妊娠第1期は、参照範囲よりも高い、HLCSのTMED8−Gに対する比率を示した(図7B)。
消化コントロールとしてのベータアクチン
ベータアクチンデジタルPCRアッセイを、HLCSのTMED8に対する染色体量分析で用いたものと同じであるBstUIにより消化した母体血漿DNAサンプルに適用することにより、BstUI酵素による消化の効率を評価した。染色体量分析に供する前に、消化したDNAサンプルの一定分量(消化混合物の総量の1/50)について、ベータアクチンアッセイでは1を超える陽性ウェルを示さないことを確認した。
III.結論
前の実施例で本発明者らは、EGGアプローチが原理的には母体血漿DNAサンプル中の胎児の染色体量分析のために実行可能な方法であることを実証した。高度にメチル化されたHLCS遺伝子座を、胎児特異的な分子のクラスを表すエピジェネティックな成分として用い、ZFY遺伝子座は、雄性胎児に特異的な遺伝マーカーであった。第21染色体上の胎児特異的なエピジェネティックマーカーと参照染色体上の胎児特異的な遺伝マーカーとの間の比率を比較することにより、第21染色体の量が推定できた。
この実施例で本発明者らはさらに、エピジェネティック−遺伝的染色体量アプローチが、雄性胎児由来のY染色体マーカーの代わりに胎児特異的なSNP対立遺伝子を遺伝的な参照ベースラインとして用いる、21トリソミーの出生前診断に応用できることを実証した。
ここでは、第14染色体上のTMED8遺伝子座内に位置するSNP rs6636を例として用いた。高度にメチル化されたHLCSと胎児特異的なTMED8 SNP対立遺伝子との間の比率を比較することにより、第21染色体の量が推定できた。両SNP対立遺伝子とも、このような遺伝的な参照ベースラインとして役立ち得ることが実証された。
情報価値のあるSNP対立遺伝子を遺伝的な参照ベースラインとして用いることにより、EGGによる染色体量へのアプローチを21トリソミーの出生前診断に、雄性および雌性胎児の両方に対して適用できる。さらに、このようなマーカーのパネルの開発により、このアプローチが広い集団を網羅することを確実にするであろう。既報のように(Chow et al. Clin Chem 2007;53:141-2)、SNPのパネルについて母体の遺伝子型を確認するためには、ほとんどが母体DNAを含む母体バッフィーコートサンプルが最初に試験できる。母親のSNPがホモ接合性を示すと、次に母体血漿中の母体遺伝子型には表れない対立遺伝子の検出が目標となる。血漿サンプルが母体のものではない対立遺伝子について陽性である場合、胎児は父親から対立遺伝子を受け継いだことが示唆される。母体血漿中の、この父親から受け継がれた胎児特異的な対立遺伝子の定量化は、次にエピジェネティック−遺伝的アプローチを用いる遺伝子量評価のための参照として用いることができる。最後に、出生前試験に重要なその他の異数性に関わるその他の染色体、例えば第18および第13染色体に対するエピジェネティックマーカーの使用により、EGGアプローチの臨床的な有用性はさらに拡大するであろう。
胎児の18トリソミー検出に対するエピジェネティック−遺伝的染色体量によるアプローチ
この実施例は、胎児の18トリソミー(T18)検出に対するエピジェネティック−遺伝的(EGG)染色体量によるアプローチの適用を示すものである。EGGアプローチについてのこの実施例は、母体血漿中の、第18染色体上に位置する胎児性エピジェネティックマーカーおよび参照染色体上に位置する胎児性遺伝マーカーそれぞれに関する。胎児性エピジェネティックマーカーは、好ましくはマーカー18A[ゲノム位置chr18:10022533-10022724、Human Genome March 2006アセンブリ(hg18)により定義される]であり、これは、メチル化DNA免疫沈降法およびタイリングアレイ分析によって同定された通り(米国特許出願第61/308,578号に記載される)、VAPA(小胞結合膜タンパク質)結合プロテインA)遺伝子の75kb下流およびAPCDD1(発現低下大腸腺腫症1:adenomatosis polyposis coli down-regulated 1)遺伝子の421kb上流に位置する、146bpの遺伝子間領域である。しかしながらこの胎児性エピジェネティックマーカーは、上記の遺伝子座、すなわちchr18:10022533-10022724の100kb上流または下流の範囲に位置する、シトシン含有DNAゲノム領域のいずれかであってもよい。さらにこの胎児性エピジェネティックマーカーは、母体血漿中で胎児の第18染色体を母体の第18染色体から区別する、異なったエピジェネティック特性(DNAのメチル化レベル)を有するシトシン含有DNAゲノム領域のいずれかであってもよい。
母体血漿中の胎児性遺伝マーカーは、好ましくはY染色体上のY連鎖ジンクフィンガータンパク質(ZFY)遺伝子内に位置する領域である。しかしながらこの胎児性遺伝マーカーは、一塩基多型(SNP)および挿入/欠失(indel)多型を含む、胎児とその母親との間のいずれかの遺伝的な相違であってもよい。
この実施例で本発明者らは、T18の出生前の非侵襲性検出のために、EGGアプローチを導入して、第18染色体上のマーカー18Aの濃度とY染色体上の胎児性遺伝マーカーであるY連鎖ジンクフィンガータンパク質(ZFY)遺伝子の濃度を比較した。
I.材料および方法
サンプルの採取
サンプルは、プリンスオブウェールズ病院(Prince of Wales Hospital)、香港、の産科および婦人科、または賛育医院(Tsan Yuk Hospital)、香港、の出生前診断とカウンセリング部門、またはKing's College Hospital、ロンドン、英国、のHarris Birthright Research Centre for Fetal Medicineに通院する妊婦から採取した。全ての妊婦はインフォームドコンセントを得て採用された。本研究はそれぞれの機関の審査委員により承認された。
絨毛膜絨毛サンプル(CVS)を、妊娠第1期および第2期における通常の出生前診断において採取した。正倍数体およびT18の各例の染色体の状態を完全な核型分析によって確認した。全ての被験者から、母体末梢血サンプル(EDTAチューブ内に12mL)を採取した。英国からの血漿は採取後に凍結し、ドライアイスによりバッチで香港へ送った。
サンプル処理
末梢血サンプルを、既報の通り二重遠心分離プロトコルによって処理した(Chiu et al., Clin Chem 2001;47:1607-13)。血液細胞部分を2,500gで再遠心し、いずれの残余の血漿も除去した。
末梢血液細胞からのDNAと母体血漿からのDNAを、QIAamp DNA血液ミニキットおよびQIAamp DSP DNA血液ミニキット(Qiagen)それぞれの血液および体液プロトコルにより抽出した。CVSおよび胎盤からのDNAは、QIAampDNAミニキット(Qiagen)を製造者の組織プロトコルに従って用いることにより抽出した。
胎盤および母体血細胞におけるマーカー18Aのメチル化状態の分析
クローニングおよび亜硫酸水素塩を用いたシークエンシングによるDNAメチル化の分析
マーカー18Aのメチル化状態を、クローニングおよび亜硫酸水素塩を用いたシークエンシングにより、6組の胎盤組織および母体血細胞において分析した。簡単に述べると、EZ DNA メチル化キット(ZymoResearch)を製造者の指示に従って用いることにより、抽出したDNAの亜硫酸水素塩による変換を行った。亜硫酸水素塩により変換されたDNAを、マーカー18A領域を標的としたプライマーによるPCR増幅に供した。PCRのためのプライマー配列を表10に示す。PCR条件については、表11Aに要約する。続いて、pGEM-T Easy クローニングキット(Promega)を製造者の指示に従って用い、PCR産物をプラスミドベクター内へTAクローニングした。クローニングは、大腸菌株JM109(Promega)により行った。次にクローンからの挿入断片を、T7およびSP6プロモータープライマー(Promega)を製造者の指示に従って用いることによって増幅した(反応条件を、表11AのコロニーPCRアッセイの副題の下に要約する)。PCR産物を次に、BigDye Terminator Cycle Sequencing v1.1 キット(Applied Biosystems)を製造者の指示に従って用いるシークエンシング反応に供した(反応条件を、表11Aのシークエンシング反応の副題の下に要約する)。次にDNAをエタノール沈殿し、10μLのHi−Diホルムアミドに再懸濁して、3100 DNA Analyzer(Applied Biosystems)によりシークエンシングした。シークエンスデータは、SeqScape v2.5ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて分析した。本発明者らは、非CpGシトシン残基における変換率を調べることにより、各クローンの亜硫酸水素塩による変換が>99%であることを確保した。
各CpG部位におけるMIは、各サンプルについてメチル化クローンの数を総クローン数で割ることにより算出した。各CpG部位について、2つの生物学的複製の平均MIを算出した。メチル化部位の頻度は、各サンプルを通して、スコア化したクローンの総数に対するメチル化クローンの数によって示した。
T18および正倍数体の胎盤におけるマーカー18Aのメチル化状態の分析
EpityperアッセイによるDNAメチル化の分析
標準的なMassCLEAVEプロトコル(Sequenom)(Ehrich et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2005; 102:15785-90)によって、Epityperアッセイを行った(プロトコルに含まれる個別の反応に対する条件の詳細を図11Bに要約する)。簡単に述べると、亜硫酸水素塩により変換されたDNAを、マーカー18Aを標的とするEpityperアッセイによるPCR増幅に供した。プライマー配列を表10に示す。T7プロモータータグを逆方向プライマーの3’末端に付加し、10ベースタグを該プライマーの5’末端に付加して、順方向と逆方向プライマーの間で融解温度が同等になるようにした。抽出したDNAを、EZ DNA メチル化キット(ZymoResearch)を用いる亜硫酸水素塩による変換に製造者の指示に従って供し、PCRによって増幅した。次にPCR産物を、T7DNAポリメラーゼおよびT7RNAポリメラーゼを用いてRNAにin vitro転写し、リボヌクレアーゼAにより、AまたはG残基を有する塩基を特異的に切断した。切断反応によってCpGを含む断片、またはCpG単位が生成し、これらの大きさはCpG部位のメチル化状態(すなわち亜硫酸水素塩による変換後の、メチル化および非メチル化CpGそれぞれに対するCpGまたはTpG)に依存するであろう。次に産物を精製し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI−TOF)質量分光光度計(MassARRAY Analyzer Compact)によって分離した。各CpG単位のメチル化指数(MI)は、メチル化産物のピーク高さをメチル化および非メチル化産物のピーク高さの和で割ることによって算出した。
出産前および出産後の母体血漿におけるメチル化されたマーカー18Aの配列の検出
マーカー18Aを標的とした、定量リアルタイムPCR(qPCR)アッセイを設計した。関連する制限エンドヌクレアーゼにより、母体DNAの非メチル化CpG部位が特異的に切断され得るが、胎児DNAのメチル化CpG部位は切断され得ないように、プライマーおよびプローブを戦略的に配置した。
メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ(MSRE)による消化
血漿DNAを消化するため、二つの型のMSRE、すなわちHpaIIおよびHinP1I(New England Biolabs)を使用した。各血漿サンプルについて、0.8mL〜3.2mLの血漿からDNAを抽出し、50μLの水に溶出した。次に溶出したDNA35μLを、各20UのHpaIIおよびHinP1I(New England Biolabs)と、1X NEBuffer 1中で37℃2時間インキュベートした。
従来のリアルタイム定量PCR分析
1)胎児出産前および出産後の、消化抵抗性マーカー18Aの濃度
MSREによる消化後、マーカー18Aの高度メチル化DNA配列を従来のqPCRによりABI 7300 HT sequence detection system(Applied Biosystems)において増幅した。各qPCRアッセイの反応量は50μLであり、これには1x TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、各1500nmol/Lの順方向および逆方向PCRプライマー(Integrated DNA Technologies)、および250nmol/LのTaqMan(登録商標)プローブ(Integrated DNA Technologies)が含まれた。プローブは、レポーターとしてその5’末端をFAMにより標識した。熱プロファイルは、50℃2分、95℃10分、95℃15秒の40サイクル、および60℃1分であった。プライマーおよびプローブの配列を表12に示す。
2)雄性胎児の妊娠から得た出産前の母体血漿における、消化抵抗性のマーカー18Aの濃度とZFYの濃度との関連性
ZFYの濃度は、qPCRによりABI 7300 HT sequence detection system(Applied Biosystems)において、これまでに確立されたアッセイ(Lun et al. Clin Chem 2008; 54:1664-72)を用いて決定した。各qPCRアッセイの反応量は50μLであり、これには1x TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、各300nmol/Lの順方向および逆方向PCRプライマー、および100nmol/LのTaqMan(登録商標)プローブ(Applied Biosystems)が含まれた。プローブは、レポーターとしてその5’末端をVICにより標識した。熱プロファイルは、50℃2分、95℃10分、95℃15秒の40サイクル、および60℃1分であった。プライマーおよびプローブの配列を表12に示す。
qPCR分析による定量化のため、NanoDrop ND-1000(Thermo Fisher Scientific Waltham)によりDNA-50の設定を用いて定量した、雄性の末梢血液細胞サンプルから抽出した既知の濃度のゲノムDNAを段階希釈して検量線を作成した。次にこれを、反応あたり3コピーないし反応あたり10,000コピーの直線ダイナミックレンジを有する定量標準物質を構築するために用いた。検出限界(LOD)は反応あたり3コピーであった。LOD濃度にて反応を二重に20回行うと(40回反復)、定量化サイクルの中央値39.1(範囲:38.2〜40.8)で100%のウェルが陽性であった。この限界を超えて検出されたいずれのシグナルも、検出不能とみなした。全ての反応を二重に行い、平均量を採用した。PCR実施の全てに、水ブランク(鋳型を含まないコントロール)を複数含めた。
EGGによる染色体量の分析
本発明者らは、正倍数体ならびにT18の妊娠から得た胎盤組織(CVS)および母体血漿サンプル中の、第18染色体上の胎児性エピジェネティックマーカーであるマーカー18Aの相対量と、Y染色体上の胎児性遺伝マーカーであるZFYの相対量を比較するために、EGGアプローチを導入した。
メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ(MSRE)による消化
マーカー18Aに関するEGG分析のための消化プロトコルは、qPCR分析のために用いたものと同じとした。胎盤サンプル分析のため、50ngのDNAを消化に供した。胎盤組織は全て妊娠第1期から得た。血漿サンプル分析のため、正倍数体ならびにT18の妊娠第1期、第2期、および第3期から得た1.6mL〜3.2mLの血漿よりDNAを抽出した。各例から抽出したDNAを50μLの水に溶出し、その35μLを消化に供した。
デジタルPCR分析のアッセイ設計および反応条件
消化抵抗性のマーカー18AおよびZFY配列を増幅するために、デュプレックスデジタルPCRアッセイを開発した。デジタルPCR分析の基礎については既報である(Lo et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2007; 104:13116-21; Tong et al. Clin Chem 2010; 56: 90-8)。
ウェルあたりの反応量は5μLで、最終濃度は、各標的に対するそれぞれのプライマーおよびプローブについて1x TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)であった。マーカー18Aについての反応は、250nMのTaqMan(登録商標)プローブ(Integrated DNA Technologies)ならびに各1500nMの順方向および逆方向プライマー(Integrated DNA Technologies)を含んだ。ZFYについての反応は、100nMのTaqMan(登録商標)プローブ(Applied Biosystems)ならびに各300nMの順方向および逆方向プライマー(Integrated DNA Technologies)を含んだ。マーカー18Aに対するプローブはレポーターFAMで標識したが、ZFYに対するプローブはレポーターVICで標識した(表12)。各標的に対するデジタルPCR反応の総数は384とした。プライマーおよびプローブの配列はqPCRに対するものと同じとした。
消化の完全性を評価するため、(i)妊娠第1期の胎盤および母体血細胞の両方において全くメチル化されておらず(図17);かつ(ii)マーカー18Aと同様のMSRE認識部位の数および型を含む、ベータアクチン遺伝子の一領域を標的とした別のデジタルPCRアッセイを開発した。この特定領域のメチル化状態を、クローン化した亜硫酸水素塩によるシークエンシングによって確認した(図17)。亜硫酸水素塩によるシークエンス分析についてのPCR増幅のためのプライマーの配列を表10に示した。反応条件は、マーカー18Aについて記載したものと同じとした。完全な消化後に、ベータアクチン配列は検出されないことが予想された。ウェルあたりの反応量は5μLで、最終濃度は、250nMのTaqMan(登録商標)プローブ(Applied Biosystems)ならびに各900nMの順方向および逆方向プライマー(Integrated DNA Technologies)を含む1x TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)であった。プローブは、その5’末端をレポーターVICにより標識した(表10)。アッセイは、7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems)において行った。反応は50℃2分で開始し、次に95℃10分、95℃15秒の55サイクル、および60℃1分で続けた。各標的に対するデジタルPCR反応の総数は96とした。
全てのデジタルPCRアッセイの蛍光データは、SDS 2.3 ソフトウェアの「Absolute Quantification」アプリケーション(Applied Biosystems)により収集した。
統計解析
統計解析はSigmaStat 3.0ソフトウェア(SPSS)により行った。
II.結果
マーカー18Aは有望な胎児性エピジェネティックマーカーである
以前の研究により、胎盤と母体血細胞の間で差次的にメチル化されるゲノム領域は、母体血漿中の胎児性エピジェネティックマーカーへと開発できる可能性のあることが示された(Chim et al. Clin Chem 2008; 54:500-11; Tong et al. Clin Chem 2010; 56:90-8)。クローニングと亜硫酸水素塩によるシークエンシングの結果から、マーカー18Aは正倍数体の胎盤では主にメチル化されているが(n=6)、母体血細胞では基本的にメチル化されていない(n=6)ことが明らかになった(図12)。胎盤および母体血細胞における平均メチル化指数は、それぞれ0.68および0.01である。
本発明者らはまた、Epityperにより、正倍数体(n=6)およびT18(n=6)胎盤におけるマーカー18Aのメチル化レベルについても研究した。正倍数体胎盤のMIとT18胎盤のMIをそれぞれのCpG単位において比較するため、マンホイットニー順位和検定を行った(図13)。マーカー18Aのメチル化レベルが正倍数体とT18の胎盤の間で大きく変化しない場合には、正倍数体とT18の母体血漿中における胎児の第18染色体の量を比較するためにこれを使用できると結論付けた。マーカー18Aの標的領域内では、全てのCpG単位が、正倍数体とT18の胎盤の間で著しく差次的にメチル化されないことが見出された(図13)。
酵素消化後の母体血漿中におけるマーカー18Aの検出
本発明者らは、出産前および出産後24時間に得た母体血漿DNA中の消化抵抗性のマーカー18Aの濃度を分析し、比較した。消化後のサンプル全てにおいて非メチル化ベータアクチン配列が検出されなかったことから、消化は完全であったと示唆される。妊娠第3期において、胎児を出産する前、消化抵抗性マーカー18A配列の濃度の中央値は806コピー/mLであった(n=10)。出産後、血漿濃度は、反応あたり3コピーと見積もられるアッセイの検出限界未満に低下した。消化抵抗性マーカー18A配列の血漿濃度は、胎児を出産する前と後で統計学的に有意に異なっていた(ウィルコクソン符号順位検定、P値=0.002)(図14A)。
さらに、出産前の消化抵抗性マーカー18A配列の血漿濃度は、確立された胎児性遺伝マーカーであるZFYの血漿濃度と有意に相関することが示された(n=13、r=0.91;P値<0.00001;スピアマン相関)(図14B)。これらの結果により、母体血漿中の消化抵抗性マーカー18A配列は胎児由来であることが示唆された。
EGGによる染色体量の分析
胎盤DNAサンプルにおけるマーカー18AのZFYに対する比率
雄性胎児の妊娠に由来する、妊娠第1期の胎盤DNAサンプル(5サンプルのT18および5サンプルの正倍数体)を、マーカー18AおよびZFYに対するデュプレックスデジタルPCRアッセイによって分析した。正倍数体およびT18のサンプルにおけるマーカー18AのZFYに対する比率は有意に異なっていた(マンホイットニー順位和検定、P値=0.023)。正倍数体サンプルについて、マーカー18AのZFYに対する比率の平均±1.96SDとして定義される正常参照範囲は1.20〜1.66であった。T18の全ての例で、比率は参照範囲の上限を超えていた(図15)。
母体血漿サンプルにおけるマーカー18AのZFYに対する比率
このアプローチにより、母体血漿において非侵襲性にT18を検出することが可能であることを実証するために、本発明者らは、正倍数体の雄性胎児の妊娠から得た27の母体血漿サンプル、およびT18の雄性胎児の妊娠から得た9サンプルについて分析した。正倍数体の27例のうち、18、4、および9例は、それぞれ妊娠第1期、第2期、および第3期から得た。T18の例は全て妊娠第1期から得た。正倍数体およびT18群の妊娠期間の中央値は、それぞれ14.1および13.3であった。正常参照範囲は0.34〜3.04であった(図16)。この参照範囲に基づいて、正倍数体の27例のうちの26例、およびT18の9例のうちの8例は正確に判定され、感度は88.9%で特異性は96.3%であった。
消化コントロールとしてのベータアクチン
酵素により消化した母体血漿サンプルを、胎盤および母体血細胞において全くメチル化されていないが、マーカー18Aアンプリコンと同様のMSRE制限酵素部位を含む領域を標的とするベータアクチンアッセイを用いて分析することにより、酵素消化の効率を評価した(図17)。消化した血漿サンプル全てにおいて、ベータアクチン配列は検出されなかった。
III.結論
この実施例では、第18染色体上の胎児性エピジェネティックマーカーとしての高度にメチル化されたマーカー18AおよびY染色体上の胎児性遺伝マーカーとしてのZFYを用いて、母体血漿から胎児の第18染色体の相対量を推測するためにEGGアプローチが適用可能であることを示した。正倍数体とT18の母体血漿サンプル中のこのような相対的な染色体量をEGGアプローチによって比較することにより、18トリソミーの非侵襲性の出生前検出が実行可能であることもまた示された。EGGアプローチを用いる18トリソミーの非侵襲性の出生前検出は、母体血漿中の胎児の参照染色体の量を特異的に測定するために、具体例としてこの実施例で用いたY特異的な胎児性遺伝マーカーを、参照染色体上にある父親より受け継いだSNPなどのその他の胎児性遺伝マーカーに置き換えることにより、一般的集団においてより多くの胎児を網羅するように拡大することができる。
胎児の13トリソミー検出に対するエピジェネティック−遺伝的染色体量によるアプローチ
この実施例は、胎児の13トリソミー(T13)検出に対するエピジェネティック−遺伝的(EGG)染色体量によるアプローチの適用を示すものである。このEGGアプローチは、第13染色体上に位置する胎児性エピジェネティックマーカーおよび参照染色体上に位置する胎児性遺伝マーカーそれぞれに関わる。胎児性エピジェネティックマーカーは、好ましくはマーカー13A[ゲノム位置chr13:105941431-105941818、Human Genome March 2006アセンブリ(hg18)により定義される]である。これは、メチル化DNA免疫沈降法およびタイリングアレイ分析によって同定された通り(米国特許出願第61/308,578号に記載される)、EFNB2(エフリンB2)遺伝子の3’末端に位置する188bpの領域である。しかしながらこの胎児性エピジェネティックマーカーは、上記の遺伝子座、すなわちchr13:105941431-105941818の100kb上流または下流の範囲に位置する、シトシン含有DNAゲノム領域のいずれかであってもよい。さらにこの胎児性エピジェネティックマーカーは、母体血漿中において母体の第13染色体から胎児のものを区別する、異なったエピジェネティック特性(DNAのメチル化レベル)を有するシトシン含有DNAゲノム領域のいずれかであってもよい。
母体血漿中の胎児性遺伝マーカーは、好ましくはY染色体上のY連鎖ジンクフィンガータンパク質(ZFY)遺伝子内に位置する領域である。しかしながらこの胎児性遺伝マーカーは、一塩基多型(SNP)および挿入/欠失(indel)多型を含む、胎児とその母親との間のいずれの遺伝的な相違であってもよい。
材料および方法
サンプルの採取
サンプルは、プリンスオブウェールズ病院(Prince of Wales Hospital)、香港、の産科および婦人科、またはKing's College Hospital、ロンドン、英国、のHarris Birthright Research Centre for Fetal Medicineに通院する妊婦から採取した。全ての妊婦はインフォームドコンセントを得て採用された。本研究はそれぞれの機関の審査委員により承認された。
絨毛膜絨毛サンプル(CVS)を、妊娠第1期および第2期における通常の出生前診断において採取した。正倍数体およびT13の各例の染色体の状態を完全な核型分析によって確認した。全ての被験者から、母体末梢血サンプル(EDTAチューブ内に12mL)を採取した。英国からのCVSは採取後に凍結し、ドライアイスによりバッチで香港へ送った。
この研究では、5例のT13(妊娠第1期から4例、および第2期から1例)および10例の正倍数体(全て妊娠第1期から)を採用した。
サンプル処理
末梢血サンプルを、既報の二重遠心分離プロトコルによって処理した(Chiu et al., Clin Chem 2001;47:1607-13)。血液細胞部分を2,500gで再遠心し、いずれの残余の血漿も除去した。末梢血液細胞からのDNAを、QIAamp DNA血液ミニキットの血液および体液プロトコルにより抽出した。
CVSおよび胎盤からのDNAは、QIAampDNAミニキット(Qiagen)を製造者の組織プロトコルに従って用いることにより抽出した。
胎盤および母体血細胞におけるマーカー13Aのメチル化状態の分析
クローニングおよび亜硫酸水素塩を用いたシークエンシングによるDNAメチル化の分析
マーカー13Aのメチル化状態を、クローニングおよび亜硫酸水素塩を用いたシークエンシングにより、6組の胎盤組織および母体血細胞において分析した。EZ DNA メチル化キット(ZymoResearch)を製造者の指示に従って用いることにより、抽出したDNAの亜硫酸水素塩による変換を行った。亜硫酸水素塩により変換されたDNAを、マーカー13A領域を標的とした順方向プライマー5’−aggaagagagGGAGGATAGGAGGAGGGAGTTATAGT−3’ (配列番号7)および逆方向プライマー5’−cagtaatacgactcactatagggagaaggctAAAATTACACACAATACACACCAAAAAAT−3’ (配列番号8)によるPCR増幅に供した。このプライマーセットはEpityperアッセイによる分析のために設計したが、亜硫酸水素塩によるシークエンス分析のために、亜硫酸水素塩によって変換されたDNAのPCR増幅にも適用した。PCR条件については、表13Aに要約する。続いて、pGEM-T Easy クローニングキット(Promega)を製造者の指示に従って用い、PCR産物をプラスミドベクター内へTAクローニングした。クローニングは、大腸菌株JM109(Promega)により行った。次にクローンからの挿入断片を、T7およびSP6プロモータープライマー(Promega)を製造者の指示に従って用いることによって増幅した(反応条件を、表13AのコロニーPCRアッセイの副題の下に要約する)。PCR産物を次に、BigDye Terminator Cycle Sequencing v1.1 キット(Applied Biosystems)を製造者の指示に従って用いるシークエンシング反応に供した(反応条件を、表13Aのシークエンシング反応の副題の下に要約する)。次にDNAをエタノール沈殿し、10μLのHi−Diホルムアミドに再懸濁して、3100 DNA Analyzer(Applied Biosystems)によりシークエンシングした。シークエンスデータは、SeqScape v2.5ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて分析した。本発明者らは、非CpGシトシン残基における変換率を調べることにより、各クローンの亜硫酸水素塩による変換が>99%であることを確保した。
各CpG部位におけるMIは、各サンプルについてメチル化クローンの数を総クローン数で割ることにより算出し、本発明者らの実験では8であった。各CpG部位について、2つの生物学的複製の平均MIを算出した。メチル化部位の頻度は、各サンプルにわたり、スコア化したクローンの総数に対するメチル化クローンの数によって示した。
T13および正倍数体の胎盤におけるマーカー13Aのメチル化状態の分析
EpityperアッセイによるDNAメチル化の分析
標準的なMassCLEAVEプロトコル(Sequenom)(Ehrich et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2005; 102:15785-90)に従って、Epityperアッセイを行った(プロトコルに含まれる個別の反応に対する条件の詳細を図13Bに要約する)。簡単に述べると、亜硫酸水素塩により変換されたDNAを、マーカー13A領域を標的とした順方向プライマー5’−aggaagagagGGAGGATAGGAGGAGGGAGTTATAGT−3’(配列番号7)および逆方向プライマー5’−cagtaatacgactcactatagggagaaggctAAAATTACACACAATACACACCAAAAAAT−3’ (配列番号8)によるPCR増幅に供した。このプライマーセットにおいて、T7プロモータータグを逆方向プライマーの3’末端に付加し、10ベースタグを該プライマーの5’末端に付加して、順方向と逆方向プライマーの間で融解温度が同等になるようにした。抽出したDNAを、EZ DNA メチル化キット(ZymoResearch)を用いる亜硫酸水素塩による変換に製造者の指示に従って供し、PCRによって増幅した。次にPCR産物を、T7DNAポリメラーゼおよびT7RNAポリメラーゼを用いてRNAにin vitro転写し、リボヌクレアーゼAにより、AまたはG残基を有する塩基を特異的に切断した。切断反応によってCpGを含む断片、またはCpG単位が生成し、これらの大きさはCpG部位のメチル化状態(すなわち亜硫酸水素塩による変換後の、メチル化および非メチル化CpGそれぞれに対するCpGまたはTpG)に依存するであろう。次に産物を精製し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI−TOF)質量分光光度計(MassARRAY Analyzer Compact)によって分離した。各CpG単位のメチル化指数(MI)は、メチル化産物のピーク高さをメチル化および非メチル化産物のピーク高さの和で割ることによって算出した。
EGGによる染色体量の分析
本発明者らは、正倍数体ならびにT13の妊娠から得た胎盤組織(CVS)における、第13染色体上の胎児性エピジェネティックマーカーであるマーカー13Aの相対量と、Y染色体上の胎児性遺伝マーカーであるZFYの相対量を比較するために、EGGアプローチを導入した。
メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ(MSRE)による消化
胎盤DNAを消化するために、3タイプのMSRE、すなわちAccI、NlaIV、およびHpaII(FastDigest(登録商標)酵素、Fermentas Life Sciences)を用いた。各サンプルにつき、50ngの胎盤DNAを各2FDUの上記酵素と共に1XFastDigest(登録商標)緩衝液中で37℃2時間インキュベートし、続いて65℃20分で酵素の不活性化を行った。
デジタルPCR分析のアッセイ設計および反応条件
消化抵抗性のマーカー13AおよびZFYをそれぞれ増幅するために、2つのモノプレックスデジタルPCRアッセイを開発した。デジタルPCR分析の基礎については既報である(Lo et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2007; 104:13116-21; Tong et al. Clin Chem 2010; 56: 90-8)。
ウェルあたりの反応量は5μLで、最終濃度は、各標的に対するそれぞれのプライマーおよびプローブ濃度について1x TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)とした。マーカー13Aについての反応は、250nMのTaqMan(登録商標)プローブ(Integrated DNA Technologies)ならびに各900nMの順方向および逆方向プライマー(Integrated DNA Technologies)を含んだ。ZFYについての反応は、100nMのTaqMan(登録商標)プローブならびに各300nMの順方向および逆方向プライマー(Integrated DNA Technologies)を含んだ。マーカー13Aに対するプローブはレポーターFAMで標識したが、ZFYに対するプローブはレポーターVICで標識した(表14)。各標的に対するデジタルPCR反応の総数は192とした。
実験は、7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems)において行った。反応は50℃2分で開始し、次に95℃10分、95℃15秒をマーカー13AおよびZFYそれぞれについて55および45サイクル、および60℃1分で続けた。蛍光データは、SDS 2.3 ソフトウェアの「Absolute Quantification」アプリケーション(Applied Biosystems)により収集した。
統計解析
統計解析はSigmaStat 3.0ソフトウェア(SPSS)により行った。
II.結果
マーカー13Aは有望な胎児性エピジェネティックマーカーである
以前の研究により、胎盤と母体血細胞の間で差次的にメチル化されるゲノム領域は、母体血漿中の胎児性エピジェネティックマーカーへと開発できる可能性のあることが示された(Chim et al. Clin Chem 2008; 54:500-11; Tong et al. Clin Chem 2010; 56:90-8)。クローニングと亜硫酸水素塩によるシークエンシングの結果から、マーカー13Aは正倍数体の胎盤で主にメチル化されているが(n=6)、母体血細胞では基本的にメチル化されていない(n=6)ことが明らかになった(図18)。胎盤および母体血細胞における平均メチル化指数は、それぞれ0.78および0.00である。
本発明者らはまた、Epityperにより、正倍数体(n=5)およびT13(n=5)胎盤におけるマーカー13Aのメチル化レベルについても研究した。5サンプルの正倍数体胎盤のMIと5サンプルのT13胎盤のMIをそれぞれのCpG単位において比較するため、マンホイットニー順位和検定を行った(図19)。マーカー13Aのメチル化レベルが正倍数体とT18の胎盤の間で大きく変化しない場合には、正倍数体とT18の胎児の組織または母体血漿における胎児の第13染色体の量を比較するためにこれを使用できると結論付けた。マーカー13Aの標的領域内では、3つのCpG単位が、正倍数体とT13の胎盤の間で著しく差次的にメチル化されないことが見出された(図19)。従って本発明者らは、これら3個のCpG単位を標的とすることにより、次に行うこれらのデジタルPCRアッセイを設計した。
胎盤DNAサンプルを用いた、EGGによる染色体量の分析
雄性胎児の妊娠に由来する胎盤DNAサンプル(5サンプルのT13および10サンプルの正倍数体)を、マーカー13AおよびZFYに対するそれぞれのモノプレックスデジタルPCRアッセイによって分析した。正倍数体およびT13のサンプルにおけるマーカー13AのZFYに対する比率は有意に異なっていた(マンホイットニー順位和検定、P値=0.023)。正倍数体サンプルについて、マーカー13AのZFYに対する比率の平均±1.96SDとして定義される正常参照範囲は1.40〜2.10であった。1例を除くT13の全ての例で、比率は参照範囲の上限を超えていた(図20)。
III.結論
この実施例では、第13染色体上の胎児性エピジェネティックマーカーとしての高度にメチル化されたマーカー13AおよびY染色体上の胎児性遺伝マーカーとしてのZFYを用いて、妊娠第1期および第2期の間に得た胎盤組織における胎児の第13染色体の量を推測するためにEGGアプローチが適用可能であることを示した。正倍数体とT13の胎盤組織においてこのような相対的染色体量を比較することにより、13トリソミーを検出することが可能である。このアプローチは、母体血漿中の胎児性第13染色体の相対的染色体量を推測し、13トリソミーを非侵襲性に検出するために適用できる可能性がある。
本出願に引用される全ての特許、特許出願、およびGenBank受入番号を含むその他の出版物は、あらゆる目的のために、その全体が参照により取り込まれる。
配列表
配列番号1 dbSNP のrs6636 (ウェブサイト ncbi.nlm.nih.gov/snpより取得)
GAAGATTTTC CAAACTACTT TATGTCATTT AGCTTCTATT TTCTGAAGGG CTTTCTTTGG
TGCCATGTAC TCAGATCAGT CAGTTGACTG AAAGATGATC ATGTTTTCTT CGTAAAGATT
TAAGCAATTG GCAACTACAA AGACATTATT TTCTTACTGT TCTATATCAT GTACTGTTGC
TGACATTACA AAAAGGGTCT GGAAGGGAAA CCGTGTCACT GTTTTATCTT TTTTCTTTAA
AATACAAAAG TATCCCAACT AATCATTTAT TATGGTCAGC TTGTTTTACA TGTCCCCTAT
[C/G]
ATGAGAAATG CTATCAACAT CTGTGATTTC TAAGAGTCTT ACCAAATTGT TACTTTAATT
CTTGTGTCCT GCTGAGTGGT TTTTCTTTTA AAATACCATT TTTATCACCC TGTGGCACTG
GGTGTGTTAC TGCGATTACA CTGATGATTC TGAGCTGTGC TTCTTCAAGT AGCTCAGTTC
TTGCGTTTTA TATTAGGTAA CAGTTTTGTG ATGCTTTTGT GCATTCTTTG TCATCTCTTC
TGAGTTTTCG AATCTGTCAT AAATAAACTT TTTCACTATG CACCTGGTAA CATCTGAGTT

配列番号2 SNP rs6636の100bp上流および下流を含むDNA配列 (ウェブサイトgenome.ucsc.edu/cgi-bin/hgGatewayより取得)

GGAAGGGAAACCGTGTCACTGTTTTATCTTTTTTCTTTAAAATACAAAAG
TATCCCAACTAATCATTTATTATGGTCAGCTTGTTTTACATGTCCCCTAT
[C/G]
ATGAGAAATGCTATCAACATCTGTGATTTCTAAGAGTCTTACCAAATTGT
TACTTTAATTCTTGTGTCCTGCTGAGTGGTTTTTCTTTTAAAATACCATT
[表1] 従来のリアルタイムPCRおよびデジタルPCRアッセイのためのオリゴヌクレオチド配列および特異的なPCR条件。
Figure 0005789605
[表2] 名称および遺伝子座の位置、プライマー配列、反応条件、ならびに結果を含む、51のCOBRAアッセイに関する情報の一覧。
Figure 0005789605
Figure 0005789605
Figure 0005789605
Figure 0005789605
Figure 0005789605
Figure 0005789605
[表4]デジタルPCR分析に用いたサンプルについての情報。(A)胎盤組織サンプル、(B)母体血漿サンプル。
Figure 0005789605
各遺伝子座のコピー数、ならびにHLCSのRASSF1Aに対する比率、およびHLCSのZFYに対する比率を示す。コピー数はポアソン分布のために明細書中の式を用いて補正した。
[表5]HLCS、TMED8−C/G SNP、およびベータアクチンアッセイのためのオリゴヌクレオチド配列。
Figure 0005789605
[表6](A)モック消化した胎盤DNA、および(B)BstUI消化した胎盤DNAサンプルにおける、HLCSのTMED8−C対立遺伝子に対する比率。1T、妊娠第1期;2T、妊娠第2期;3T、妊娠第3期。
Figure 0005789605
[表7](A)モック消化した胎盤DNA、および(B)BstUI消化した胎盤DNAサンプルにおける、HLCSのTMED8−G対立遺伝子に対する比率。1T、妊娠第1期;2T、妊娠第2期;3T、妊娠第3期。
Figure 0005789605
[表8]ベータアクチンのリアルタイムqPCR分析により評価した消化効率。(A)HLCSのTMED8−Cに対する比率分析のためのサンプル。(B)HLCSのTMED8−Gに対する比率分析のためのサンプル。1T、妊娠第1期;2T、妊娠第2期;3T、妊娠第3期。
Figure 0005789605
[表9]TMED8−C/G SNPアッセイの特異性。胎盤の遺伝子型をサンプル番号の後に示す。コピー数はポアソン分布のために補正した。(A)HLCSおよびTMED8−Cの二本鎖アッセイ。(B)HLCSおよびTMED8−Gの二本鎖アッセイ。
Figure 0005789605
[表10]マーカー18Aおよびベータアクチンに対する、Epityperおよび亜硫酸水素塩を用いたシークエンス分析に関する、亜硫酸水素塩により変換したDNAのPCR増幅のためのプライマー配列。
Figure 0005789605
[表11A]亜硫酸水素塩によるシークエンス分析の反応条件。
Figure 0005789605
[表11B]Epityper分析の反応条件。
Figure 0005789605
[表12]マーカー18A、ZFY、およびベータアクチンのqPCR/デジタルPCRアッセイのためのオリゴヌクレオチド配列。
Figure 0005789605
[表13A]亜硫酸水素塩によるシークエンス分析の反応条件。
Figure 0005789605
[表13B] Epityper分析の反応条件。
Figure 0005789605
[表14]マーカー13AおよびZFYそれぞれのデジタルPCRアッセイのためのオリゴヌクレオチド配列。
Figure 0005789605

Claims (14)

  1. 下記工程を含む、妊婦に担持されている胎児の染色体異数性を検出するための方法:
    (a)妊婦から採取された生体サンプル中の胎児由来のメチル化マーカーの量を決定する工程であって、前記メチル化マーカーは染色体異数性に関連する染色体上、または染色体異数性に関連する染色体の部位内に位置し、かつ前記胎児由来のメチル化マーカーは、差次的なDNAメチル化によって、母体由来のその対応物から区別される、工程;
    (b)前記サンプル中の胎児由来の遺伝マーカーの量を決定する工程であって、前記遺伝マーカーは参照染色体上に位置し、かつ前記胎児由来の遺伝マーカーは、ポリヌクレオチド配列における相違によって、前記サンプル中の母体由来のその対応物から区別されるか、あるいは前記遺伝マーカーは母体ゲノムに存在しない、工程;
    (c)(a)および(b)から得られた量の比率を決定する工程;および
    (d)前記比率を標準コントロールと比較する工程であって、前記比率が標準コントロールよりも高いかまたは低い場合に、胎児における染色体異数性の存在が示唆される、工程。
  2. 前記胎児由来のメチル化マーカーが胎盤に由来する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記母体由来の対応物が妊婦の血液細胞に由来する、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 前記胎児由来のメチル化マーカーが母体由来のその対応物よりも高度にメチル化されているか、前記胎児由来のメチル化マーカーが母体由来のその対応物よりも低度にメチル化されている、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記サンプルが母体の全血、血清、血漿、尿、羊水、生殖器洗浄液、胎盤組織サンプル、絨毛膜絨毛サンプルであるか、または母体血から分離された胎児の細胞を含むサンプルである、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記サンプルが胎児の核酸を含む、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記メチル化マーカーがホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)遺伝子の一部であるか、ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)遺伝子に近接するか、HLCS遺伝子の推定プロモーターであるか、または、Human Genome March 2006アセンブリ(hg18)により定義されるゲノム位置chr18:10022533-10022724のマーカー18AもしくはHuman Genome March 2006アセンブリ(hg18)により定義されるゲノム位置chr13:105941431-105941818のマーカー13Aである、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記工程(a)が、メチル化DNAと非メチル化DNAとを差次的に修飾する試薬で前記サンプルを処理することを含み、
    前記試薬が、
    (i)亜硫酸水素塩、またはメチル化状態に基づいてDNAに結合するタンパク質もしくは化学物質、
    (ii)メチル化DNAを優先的に切断する酵素、または
    (iii)非メチル化DNAを優先的に切断する酵素、
    を含む、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の方法。
  9. (i)前記遺伝マーカーが、母体ゲノムに存在しない、
    (ii)前記遺伝マーカーが、Y染色体上に位置する、
    (iii)前記遺伝マーカーが、Y連鎖ジンクフィンガータンパク質(ZFY)遺伝子である、
    (iv)前記胎児由来の遺伝マーカーが、遺伝的多型性によって母体由来の遺伝マーカーから区別される、
    (v)前記胎児由来の遺伝マーカーが、一塩基多型(SNP)、単純タンデムリピート多型、または挿入−欠失多型を含む遺伝的多型性によって母体由来の遺伝マーカーから区別される、または
    (vi)前記遺伝マーカーが、配列番号1で表されるヌクレオチド配列の第301番目のヌクレオチドに位置する、TMED8遺伝子内のSNP rs6636を含む、
    請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 複数のメチル化マーカーまたは遺伝マーカーが用いられる、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記工程(a)または(b)が、
    (i)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、
    (ii)核酸配列特異的増幅、または
    (iii)メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
    による前記メチル化マーカーもしくは遺伝マーカーの増幅を含む、
    請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記工程(a)または(b)が、
    (i)分子計数により行われる、
    (ii)デジタルポリメラーゼ連鎖反応、リアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応、アレイキャプチャー、核酸配列に基づく検出、大量に平行して行うゲノムシークエンシング、単一分子のシークエンシング、またはカラーコードプローブ対によるポリヌクレオチドの多重検出を含む、または、
    (iii)マススペクトロメトリー、またはマイクロアレイ、蛍光プローブ、もしくは分子標識へのハイブリダイゼーションを含む、
    請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記染色体異数性に関連する染色体が、第13染色体、第18染色体、第21染色体、またはX染色体である、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記比率が、
    標準コントロールより少なくとも1標準偏差高いもしくは低いこと、標準コントロールより少なくとも2標準偏差高いもしくは低いこと、または標準コントロールより少なくとも3標準偏差高いもしくは低いことが、胎児に染色体異数性のあることを示す、請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載の方法。
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