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JP5786815B2 - 浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材 - Google Patents

浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材に関する。より詳しくは、高い面疲労強度を有する歯車、プーリー、軸受などの浸炭又は浸炭窒化部品の素材として好適な浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材に関する。
自動車や各種産業機械に用いられる歯車、プーリー、軸受などの部品は、従来、次のようにして製造される。まず、JIS G 4053(2008)に規定されている機械構造用合金鋼鋼材を素材として成形し、これに浸炭処理又は浸炭窒化処理を実施する。浸炭処理又は浸炭窒化処理を実施した成形品を焼入れし、次いで、200℃以下の温度で焼戻しを実施する。更に、必要に応じてショットピーニング処理を実施する。これにより、面疲労強度、曲げ疲労強度及び耐摩耗性など部品の所要の特性を確保する。
特に最近では、自動車の燃費向上やエンジンの高出力化が求められるのに伴い、使用環境が苛酷になっている。そのため、使用中に生じる「転がり接触」、「すべり接触」及び「転がり−すべり接触」により、早期に部品が破損する場合がある。
上記のような部品の早期破損を解決することを目的とした技術が次のとおり提案されている。
特開2002−317239号公報(特許文献1)は、転動部表面に高い残留圧縮応力を有し、かつNi皮膜を形成することで水素侵入を抑制し、転動疲労特性を高めた耐高圧部材を提供することを目的とする。具体的には、残留圧縮応力が700MPa以上、Ni皮膜厚さが0.2〜20μmとすることで、耐高圧部材の転動疲労特性が高まると特許文献1には記載されている。
特開2004−162113号公報(特許文献2)は、白層の発生を抑制することができる軸受用鋼からなる転がり摺動部材を提供することを目的とする。具体的には、マルテンサイトのラス内に平均粒径が100nm以下の微細炭化物を析出させる。これによって、転位が移動するのを規制して、白色組織の生成を抑制することで、摺動部材の転動疲労特性が高まると特許文献2には記載されている。
特開2005−90693号公報(特許文献3)は、トライボケミカル反応により生じる水素に起因する早期はく離を防止し、転がり軸受の転動疲労寿命を延ばすことを目的とする。具体的には、残留オーステナイト量及び残留オーステナイトの分解速度を規制することでトライボケミカル反応により生じる水素量が抑制され、転がり軸受における早期はく離を防止できると特許文献3には記載されている。
特開2008−280583号公報(特許文献4)は、水素脆性型の面疲労強度を高めて、肌焼鋼の転動疲労寿命を延ばすことを目的とする。具体的には、肌焼鋼は、C:0.1〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:0.3〜2.5%、Mo:0.1〜2.0%、V:0.1〜2.0%、Al:0.050%以下、O:0.0015%以下、N:0.025%以下、V+Mo:0.4〜3.0%、残部Fe及び不可避的不純物からなり、表層C濃度が0.6〜1.2%、表層硬さがHRC58以上64未満、表層に析出するV系炭化物のうち粒径100nm未満の微細なV系炭化物の個数割合が80%以上である。このような構成とすることで、水素脆性型の面疲労強度が高まり、肌焼鋼の転動疲労寿命が延びると特許文献4には記載されている。
特開2004−278781号公報(特許文献5)は、転動部表層への水素の侵入及び集合を妨げることで、ころがり軸受の転動疲労寿命を延ばすことを目的とする。具体的には、ころがり軸受の表層に窒素富化層を有して転動疲労現象を遅延させ、更には水素侵入を抑制する。更に、ころがり軸受の球状化炭化物の面積分率を10%以上として水素の集合を妨げることにより、水素脆性はく離が抑制され、ころがり軸受の転動疲労寿命が高まると特許文献5には記載されている。
特開2002−317239号公報 特開2004−162113号公報 特開2005−90693号公報 特開2008−280583号公報 特開2004−278781号公報
特許文献1は、例えば使用中の異物混入や過大な衝撃荷重などによりNi皮膜が破損した場合、水素侵入を抑制する手段がないため、早期はく離が発生する場合がある。
特許文献2〜4は、微細炭化物の析出又は残留オーステナイトの量及び分解速度を調節するための製造工程が緻密であり、同じ特性を持つ素材を安定的に生産するのは困難であり、量産には不向きである。
特許文献5は、球状化炭化物の面積分率の調整により水素の集合を妨げたとしても水素侵入が止まるわけではなく、水素侵入環境下で長時間使用し続けた場合、多量の水素による水素脆化は避けられない。その結果、早期はく離が発生する場合がある。
本発明の目的は、使用中に生じる「転がり接触」、「すべり接触」及び「転がり−すべり接触」により早期に部品が破損する問題を解消する浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材を提供することである。
本発明による浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材は、質量%で、C:0.15〜0.40%、Si:0.15〜0.40%、Mn:0.5〜1.5%、S:0.003〜0.050%、Cr:0.7〜1.5%、Cu:0.30〜0.80%、Ni:0.15〜1.0%、N:0.003〜0.020%、及びAl:0.005〜0.050%、を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP及びOがそれぞれ、P:0.025%以下、O:0.0020%以下であり、式(1)及び式(2)を満たす。
2Ni−Cu≧0・・・(1)
6C−7.5Si+1.6Mn+4Cr−Cu−1.6Ni≧4.0・・・(2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本発明による浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材は、Feの一部に代えて、Mo:0.4%以下を含有してもよい。
また、本発明による浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材は、Feの一部に代えて、V:0.2%以下、及び、Nb:0.1%以下の1種類以上を含有しても良い。
本発明によれば、使用中に生じる「転がり接触」、「すべり接触」及び「転がり−すべり接触」により早期に部品が破損する問題を解消する浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材が得られる。
図1は、本実施の形態で直径26mmの丸棒に実施した浸炭焼入れ焼戻し処理のヒートパターンを示す図である。 図2は、式(2)の左辺と浸炭後の0.3mm位置硬さの関係を示す図である。 図3は、ローラピッチング試験で使用する小ローラ試験片の正面図である。 図4は、本実施の形態で実施する浸炭焼入れ焼戻し処理のヒートパターンを示す図である。 図5は、本実施の形態で実施する浸炭窒化焼入れ焼戻し処理のヒートパターンを示す図である。 図6は、ローラピッチング試験方法を示す正面図及び側面図である。 図7は、ローラピッチング試験で使用する大ローラ試験片の正面図である。 図8は、ローラピッチング試験で使用する大ローラ試験片に対して実施した球状化焼なまし処理のヒートパターンを示す図である。 図9は、ローラピッチング試験で使用する大ローラ試験片に対して実施した焼入れ焼戻し処理のヒートパターンを示す図である。 図10は、水素分析試験片の作製工程を示す図である。 図11は、実施例中の鋼Cのミクロ組織写真画像である。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。以下、元素の含有量の「%」は、質量%を意味する。
本発明者らは、浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材に求められる特性について検討し、以下の知見を得た。
(a)鋼中のP及びCuは、鍛造性を低下する。したがって、鍛造性を高めるためには、これらの元素の含有量をなるべく低くすればよい。しかしながら、後述するように、Cuは転動疲労特性を高めるので、Cu含有量を低くするのは好ましくない。
Cu含有量及びNi含有量が下記の式(1)を満たせば、Cuを含有しても鍛造性が高まる。式(1)を満たせば、Niにより、Cuの鋼中への溶解度が向上し、Cuの粒界析出が抑制される。その結果、熱間鍛造時に鋼が割れるのを抑制でき、鍛造性が高まる。
2Ni−Cu≧0・・・(1)
(b)浸炭又は浸炭窒化部品の使用中には、潤滑剤及び外部から混入した水分から水素が発生し鋼中へ侵入する。使用中に生じる「転がり接触」、「すべり接触」及び「転がり−すべり接触」により早期に部品が破損する問題を解消するためには、鋼中への水素の侵入を抑え、鋼の転動疲労特性を高めることが好ましい。Cr、Cu及びNi、特にCuは鋼中への水素の侵入を抑制する。Cr、Cu及びNiが多く含有されれば、鋼中に侵入する水素量を低く抑えることができ、部品の早期の破壊を抑制することができる。
(c)使用中に生じる「転がり接触」、「すべり接触」及び「転がり−すべり接触」により早期に部品が破損する問題を解消するためには、適正な浸炭が実施されることが好ましい。鋼の化学組成と浸炭性とは、密接な関係を有する。具体的には、浸炭時のオーステナイト中のCの活量が低い場合は浸炭が促進され、逆に活量が高い場合は浸炭が抑制される。Cu及びNiは、Cの活量を増加させ、浸炭を抑制する。言い換えれば、Cu及びNiを多く含有することにより、浸炭深さが低下したり浸炭コストが増加したりする場合がある。これを回避するため、各元素の適正な含有量を検討することが必要である。
そこで、本発明者らは、浸炭が適正に実施されるための化学組成について検討を行った。
表1に示す化学組成の鋼を真空溶解して溶鋼を製造した。溶鋼からインゴットを製造し、インゴットから鋼片を製造した。
表1中の各元素(C、Si、Mn、P、S、Cr、Cu、Ni、N、Al、及びO)には、各鋼の化学組成中の対応する元素の含有量(質量%)が記載されている。「その他」欄には各鋼中に含有される選択元素及びその含有量(質量%)が記載されている。「式(2)の左辺」欄には、後述する式(2)の左辺の値が記載されている。また、「0.3mm位置硬さ」欄には、後述する浸炭材の0.3mm位置硬さが記載されている。なお、表1における鋼X1は、JIS G 4053(2008)に規定されたSCR420に相当する鋼であり、鋼X2及びX3は、鋼X1をベースにして、Cの含有量を0.25%と0.32%とにした。鋼Y1〜Y21及び鋼Z1〜Z3は、鋼X1〜X3をベースにしてそれぞれ、Si、Mn、Cr、Cu、Ni、Mo、V及びNbの含有量を変えたものであり、鋼Y1〜Y21及び鋼Z1〜Z3のCu及びNiの含有量は式(1)を満足した。
上記の鋼片を1200℃で加熱した。加熱後の各鋼片に対して1000〜1100℃の温度域で熱間圧延を行って直径30mmの丸棒とした後に放冷した。その後更に、直径30mmの丸棒を925℃で1時間加熱し、次いで室温まで放冷した。このようにして得られた直径30mmの丸棒の中心部から、直径26mmの丸棒を削り出した。この丸棒に、図1に示す条件で浸炭焼入れ焼戻しを実施した。具体的には、カーボンポテンシャルを0.80%とし、930℃で180分間浸炭処理した後、油温60℃の油中に浸漬して焼入れした。焼入れ後、170℃で90分間焼戻し処理を実施した。焼戻し後は大気中で常温になるまで放冷した。
ピッチング、スポーリング、フレーキングなど、転動中の表層破壊を生じさせないためには、適正な浸炭が実施され、表面から0.3mm位置の硬さがビッカース硬さ(以下、「Hv硬さ」という。)で680以上となることが望ましい。上記ガス浸炭焼入れ焼戻しを実施した直径26mmの丸棒を横断し、表面からの深さ0.3mm位置におけるHv硬さ(以下、「0.3mm位置硬さ」という。)を測定した。測定にはマイクロビッカース硬度計を使用し、試験力を4.9Nとして3点測定して平均値を求めた。
表1中の鋼X1〜X3の0.3mm位置硬さを比較すると、母材のC含有量が高くなるにつれて、硬くなることが分かる。すなわち、母材のC含有量が高くなるほど、鋼中のC活量が低下するために表面から侵入するC量が増加し、その結果、0.3mm位置硬さが高くなる。
次に、C及び合金成分の影響を検討するために、鋼X1〜X3、鋼Y1〜Y21を用いて、重回帰分析を行った。具体的には、C並びに鋼中のCの活量を低下させる作用を持つMn及びCrと、逆にCの活量を増加させる作用を持つSi、Cu及びNiについて、互いの影響度を整理した。
その結果、0.3mm位置硬さは、〔Fn=6C−7.5Si+1.6Mn+4Cr−Cu−1.6Ni〕の値で規定できることが分かった。なお、上記FnにおけるC、Si、Mn、Cr、Cu及びNiには、それぞれ母材に含まれる各元素の含有量(質量%)が代入される。
次に、鋼X1〜X3、鋼Y1〜21及び鋼Z1〜Z3について、0.3mm位置硬さを縦軸に、上記の〔Fn=6C−7.5Si+1.6Mn+4Cr−Cu−1.6Ni〕の値を横軸にとって図2に整理した。図中の「○」印は0.3mm位置硬さがHv硬さで680以上であったもの、「×」印はHv硬さで680未満であったものを示す。
図2を参照して、0.3mm位置硬さと〔Fn=6C−7.5Si+1.6Mn+4Cr−Cu−1.6Ni〕の値とはほぼ比例関係であった。この結果から、0.3mm位置硬さがHv硬さで680以上とするには、〔Fn=6C−7.5Si+1.6Mn+4Cr−Cu−1.6Ni〕の値が4.0以上であること、すなわち、下記の式(2)を満たせばよいことがわかった。
6C−7.5Si+1.6Mn+4Cr−Cu−1.6Ni≧4.0・・・(2)
なお、鋼Z1はMo及びVを含有した例であり、鋼Z2はVを含有した例であり、鋼Z3はMo及びNbを含有した例である。Mo、V及びNbを含有させたことによる0.3mm位置硬さの低下は確認されなかった。
以上の知見に基づいて、本発明者らは、本実施形態による浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材を完成した。以下、本実施形態を詳述する。
[化学組成]
本実施の形態による浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材は、以下の化学組成を有する。
C:0.15〜0.40%
炭素(C)は、浸炭深さを増大し、浸炭処理又は浸炭窒化処理後に急冷を行った部品の強度を高める。一方、Cの含有量が高すぎると、鋼材の芯部の靭性及び切削加工性が大きく低下する。したがって、C含有量は0.15〜0.40%である。C含有量の下限は、好ましくは0.15%よりも高い。C含有量の上限は、好ましくは0.40%未満である。
Si:0.15〜0.40%
珪素(Si)は、鋼を脱酸する。また、Siは、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める。一方、Siの含有量が高すぎると、上記の効果が飽和するだけでなく、鋼材の切削加工性が大きく低下する。更には、Siの含有量が高すぎると、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れによって表面硬化させる場合に粒界酸化層の著しく増加する。更には、Siは浸炭時のオーステナイト中のCの活量を増加させ、浸炭を抑制する。したがって、Si含有量は0.15〜0.40%である。Si含有量の下限は、好ましくは0.15%よりも高い。Si含有量の上限は、好ましくは0.40%未満であり、より好ましくは0.35%以下である。
Mn:0.5〜1.5%
マンガン(Mn)は、鋼の強度や焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める。また、Mnは浸炭時のオーステナイト中のCの活量を低下させ、浸炭を促進する。また、MnはSと結合してMnSを生成し、切削加工性を向上する。一方、Mnの含有量が高すぎると、上記の効果が飽和するだけでなく、鋼材の切削加工性が大きく低下する。また、Mnの含有量が高すぎると、粒界に偏析して粒界割れが発生する。したがって、Mn含有量は0.5〜1.5%である。Mn含有量の下限は、好ましくは0.5%よりも高い。Mn含有量の上限は、好ましくは1.5%未満であり、より好ましくは1.0%以下である。
S:0.003〜0.050%
硫黄(S)は、Mnと結合してMnSを形成し、切削加工性を高める。Sの含有量が低すぎると、前記の効果が得難い。一方、Sの含有量が高すぎると、粗大なMnSを生成しやすくなり鋼材の面疲労強度を低下させる。したがって、S含有量は0.003〜0.050%である。S含有量の下限は、好ましくは0.003%よりも高く、より好ましくは0.010%以上である。S含有量の上限は、好ましくは0.050%未満であり、より好ましくは0.030%以下である。
Cr:0.7〜1.5%
クロム(Cr)は、鋼の強度や焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める。また、Crは、浸炭時のオーステナイト中のCの活量を低下する元素でもあるため、浸炭を促進する。更に、Crは、水素の鋼への侵入を抑制する。一方、Crの含有量が高すぎると、上記の効果が飽和するだけでなく、鋼材の切削加工性が大きく低下する。また、Crの含有量が高すぎると、浸炭時に粒界にCr炭化物が生成しやすくなり、鋼材の転動又は曲げ疲労強度が低下する。したがって、Cr含有量は0.7〜1.5%である。Cr含有量の下限は、好ましくは0.7%よりも高い。Cr含有量の上限は、好ましくは1.5%未満である。
Cu:0.30〜0.80%
銅(Cu)は水素の鋼への侵入を抑制する。そのため、Cuは鋼の転動疲労特性を高める。一方、Cuが過剰に含有されれば、鋼の靱性が低下するだけでなく、熱間脆性を引き起こす。更には、Cuは浸炭時のオーステナイト中のCの活量を増加させ、浸炭を抑制する。したがって、Cu含有量は0.30〜0.80%である。Cu含有量の下限は、好ましくは0.30%よりも高い。Cu含有量の上限は、好ましくは0.80%未満である。
Ni:0.15〜1.0%
ニッケル(Ni)はCu含有量が高い場合であっても、鋼の靭性を高める。また、NiによってCuの鋼中への溶解度が向上し、Cuの粒界析出が抑制されるため、熱間鍛造時に鋼が割れるのを抑制でき、鍛造性が高まる。Niは更に、Cuと同様に、水素の鋼への侵入を抑制する。そのため、Niは鋼の転動疲労特性を高める。一方、Niが過剰に含有されれば、上記効果が飽和する。更には、浸炭時のオーステナイト中のCの活量を増加させ、浸炭を抑制する。したがって、Ni含有量は0.15〜1.0%である。Ni含有量の下限は、好ましくは0.15%よりも高い。Ni含有量の上限は、好ましくは1.0%未満である。
N:0.003〜0.020%
窒素(N)は、Al、Nb及びVと結合してAlN、NbN及びVNを形成して結晶粒微細化に有効で、浸炭層の靭性を高める。一方、Nが過剰に含有されれば、上記の効果が飽和するばかりか、鋼中にブローホールが生成されやすくなり、ブローホールは、加工された鋼材に疵を発生する要因となる。したがって、Nの含有量は0.003〜0.020%である。N含有量の下限は、好ましくは0.003%よりも高い。N含有量の上限は、好ましくは0.020%未満である。
Al:0.005〜0.050%
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Alは更に、鋼中のNと結合してAlNを形成する。AlNは上述のとおり、結晶粒を微細化する。一方、Alが過剰に含有されれば、硬質な酸化物系介在物が多くなり鋼材の切削加工性が低下する。また、Alが過剰に含有されれば、粗大なAlNが生成されやすくなり、粗大なAlNは、内部起点のスポーリング破壊の原因となる。したがって、Al含有量は0.005〜0.050%である。Al含有量の下限は、好ましくは0.005%よりも高い。Al含有量の上限は、好ましくは0.050%未満である。なお、本発明におけるAl含有量は、いわゆる酸可溶Alの含有量(sol.Al)である。
本実施の形態による浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材の残部は鉄(Fe)及び不純物からなる。ここでいう不純物は、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップ、あるいは製造過程の環境などから混入される元素をいう。本発明においては特に、不純物中のP及びO含有量は下記の通り制限される。
P:0.025%以下
燐(P)は不純物である。Pは粒界割れを引き起こしやすく、面疲労強度を低下する。したがって、P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量は0.025%以下である。好ましいP含有量は0.025%未満であり、より好ましくは0.015%以下である。
O:0.0020%以下
酸素(O)は不純物である。OはAlと結合して硬質な酸化物系介在物を形成する。この酸化物系介在物は鋼の面疲労強度を低下する。したがって、O含有量はなるべく低い方が好ましい。O含有量は0.0020%以下である。好ましいO含有量は0.0020%未満であり、より好ましくは0.0010%以下である。
本実施の形態による浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材の化学組成は更に、次の式(1)及び式(2)を満たす。
2Ni−Cu≧0・・・(1)
6C−7.5Si+1.6Mn+4Cr−Cu−1.6Ni≧4.0・・・(2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
[式(1)について]
上述のとおり、Cuは転動疲労特性を高める。しかしながら、Cuが粒界に析出すれば、粒界強度が低下する。そのため、熱間鍛造時に割れが起こりやすくなる。つまり、鍛造性が低下する。式(1)を満たせば、Niにより、Cuの鋼中への溶解度が向上し、Cuの粒界析出が抑制される。その結果、熱間鍛造時に鋼が割れるのを抑制でき、鍛造性が高まる。
[式(2)について]
上述のとおり、Mn及びCrは、浸炭時のオーステナイト中のCの活量を低下させ、浸炭を促進する。一方、Si、Cu及びNiは、浸炭時のオーステナイト中のCの活量を増加させ、浸炭を抑制する。式(2)を満たせば、鋼の浸炭性が高まり、転動中の表層破壊を防止することができる。
本実施の形態による浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材は、Feの一部に代えて、Moを含有してもよい。
Mo:0.4%以下
モリブデン(Mo)は選択元素である。Moは、鋼の強度、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める。Moが少しでも含有されれば、上述の効果が得られる。一方、Moが過剰に含有されれば、鋼材の切削加工性が低下する。したがって、Mo含有量は0.4%以下である。Mo含有量の上限は、好ましくは0.4%未満であり、より好ましくは0.3%以下である。Moを含有させて鋼の強度、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める場合、Mo含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
本実施の形態による浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材は、Feの一部に代えて、V及びNbの1種以上を含有してもよい。V及びNbはいずれも、AlNによる結晶粒微細化を補い、鋼の面疲労強度を高める元素である。
V:0.2%以下
バナジウム(V)は選択元素である。Vは、C及びNと結合してVC及びVNを形成しやすい元素である。上記のうち、VNは、結晶粒を微細化し、面疲労強度を高める。また、浸炭窒化時にVNが析出すると、前記の効果がより高まる。しかし、Vの含有量が高すぎると、鋼材の切削加工性が大きく低下する。したがって、V含有量は0.2%以下である。V含有量の上限は、好ましくは0.2%未満である。Vを含有させて鋼の面疲労強度を高める場合、V含有量は0.02%以上とするのが好ましい。
Nb:0.1%以下
ニオブ(Nb)は選択元素である。Nbは、C又は/及びNと結合してNbC、NbN及びNb(C、N)を形成しやすい元素である。そして、NbC、NbN及びNb(C、N)は、結晶粒を微細化し、面疲労強度を高める。しかし、Nbの含有量が高すぎると、粗大な析出物を生成して、異常粒成長が生じやすくなる。したがって、Nb含有量は0.1%以下である。Nb含有量の上限は、好ましくは0.1%未満である。Nbを含有させて鋼の面疲労強度を高める場合、Nb含有量は0.005%以上とするのが好ましい。
[製造方法]
本実施の形態による浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材、及び浸炭又は浸炭窒化部品の製造方法について一例を説明する。
上述の化学組成を満たし、かつ、式(1)及び式(2)を満たす溶鋼を連続鋳造法により鋳片にする。溶鋼を造塊法によりインゴット(鋼塊)にしてもよい。鋳片又はインゴットを熱間加工して、ビレット(鋼片)を製造する。ビレットを熱間加工して、棒鋼又は線材を製造する。熱間加工は、熱間圧延でもよいし、熱間鍛造でもよい。
製造された棒鋼又は線材を焼ならし処理した後に機械加工して所定の形状の機械加工品を製造する。機械加工は例えば、切削や穿孔である。
上記機械加工品に対して、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを実施し、その後、200℃以下で焼戻しを実施する。また必要に応じて、仕上げ加工を実施する。仕上げ加工は、例えば研削や研磨である。以上の工程により浸炭又は浸炭窒化部品が製造される。
種々の化学組成を有する複数の鋼材を製造した。製造された鋼材に対して転動疲労特性を評価した。
表2に示す化学組成を有する鋼A1〜A12、鋼B1〜B8及び鋼Cの溶鋼を製造した。溶鋼から鋳片(ブルーム)を製造し、鋳片から鋼片(ビレット)を製造した。
表2中の各元素記号欄(C、Si、Mn、P、S、Cr、Cu、Ni、N、Al、及びO)には、各鋼中の対応する元素の含有量(質量%)が記載されている。「その他」欄には各鋼中に含有される選択元素及びその含有量(質量%)が記載されている。「式(1)の左辺」欄及び「式(2)の左辺」欄には、対応する式の値が記載されている。「式(1)の成否」欄及び「式(2)の成否」欄には、対応する式を満たす場合は「○」が、対応する式を満たさない場合は「×」が記載されている。「0.3mm位置深さ」欄には、後述するローラピッチング試験で用いる小ローラ試験片における、試験部1(図3)での0.3mm位置硬さを示す。
鋼A1〜A12、鋼B1〜B8及び鋼Cの鋼片を1200℃で加熱した。加熱後の各鋼片に対して1000℃〜1100℃の温度域で熱間鍛造を実施して、直径30mmの丸棒とした後に放冷した。その後更に、直径30mmの丸棒を925℃で1時間加熱し、次いで室温まで放冷した。鋼B1及びB2の鋼塊では、熱間鍛造時に割れが発生した。鋼B1及びB2は、本発明のNi含有量を満足していたものの、式(1)を満たさなかったためである。したがって、鋼B1及びB2においては、以降の製造工程及び試験を実施しなかった。
各丸棒の中心部から、図3に示す小ローラ試験片10を採取した。小ローラ試験片10の長手方向は、丸棒の長手方向に一致した。図3に示すとおり、小ローラ試験片10は、円柱状の試験部1と、試験部1と同軸に配置される円柱状の一対のつかみ部2とを備えた。試験部1の直径は26mmであり、長さは28mmであった。小ローラ試験片10の全長は130mmであった。
小ローラ試験片10に対して、浸炭焼入れ焼戻し又は浸炭窒化焼入れ焼戻しを実施した。
鋼A1〜A3、鋼A7〜A12、鋼B3〜B8、及び鋼Cから採取した小ローラ試験片10に対しては、図4に示す条件で浸炭焼入れ焼戻しを実施した。具体的には、まず、カーボンポテンシャル1.00%の雰囲気中で、930℃で30分間浸炭処理した。次いで、カーボンポテンシャル0.80%の雰囲気中で、930℃で30分間浸炭処理した。次いで、カーボンポテンシャル0.80%の雰囲気中で、850℃で30分間浸炭処理した。その後、油温80℃の油中に浸漬して焼入れした。焼入れ後、170℃で90分間焼戻し処理を実施した。焼戻し後は大気中で常温になるまで放冷した。
一方、鋼A4〜A6から採取した小ローラ試験片10に対しては、図5に示す条件で浸炭窒化焼入れ焼戻しを実施した。具体的には、まず、カーボンポテンシャル0.90%の雰囲気中で、930℃で60分間浸炭処理した。その後、200℃までガス冷却した。次いで、カーボンポテンシャル0.80%の雰囲気中で、850℃で30分間浸炭処理した。次いで、カーボンポテンシャル0.80%、窒素ポテンシャル0.10%の雰囲気中で、840℃で60分間浸炭窒化処理した。その後、油温80℃の油中に浸漬して焼入れした。焼入れ後、170℃で90分間焼戻し処理を実施した。焼戻し後は大気中で常温になるまで放冷した。
浸炭焼入れ焼戻し又は浸炭窒化焼入れ焼戻しを実施した小ローラ試験片10における、試験部1での0.3mm位置硬さを測定した。測定にはマイクロビッカース硬度計を使用し、試験力を4.9Nとして3点測定して平均値を求めた。
表2を参照して、鋼A1〜A12の化学組成はいずれも本発明の範囲内であり、かつ、式(2)を満たした。そのため、鋼A1〜A12から採取した小ローラ試験片10の0.3mm位置硬さは680以上であった。また、鋼B5〜B8も、式(2)を満たした。そのため、鋼B5〜B8から採取した小ローラ試験片10の0.3mm位置硬さは680以上であった。一方、鋼B3及びB4は、式(2)を満たさなかった。そのため、鋼B3及びB4から採取した小ローラ試験片10の0.3mm位置硬さは680未満であった。
[ローラピッチング試験]
浸炭焼入れ焼戻し又は浸炭窒化焼入れ焼戻しを実施した小ローラ試験片10を用いて、図6に示すローラピッチング試験を実施した。図6(a)は、ローラピッチング試験方法を示す正面図であり、図6(b)はその側面図である。図6に示すとおり、ローラピッチング試験において、小ローラ試験片10と大ローラ試験片20とを準備した。大ローラ試験片20は、図6及び図7に示すとおり円板状であり、直径が130mm、円周面の幅が18mm、円周面のクラウニング曲率半径が150mmであった。
大ローラ試験片20は、次の工程で製造された。JIS G4805(2008)で規定された高炭素クロム軸受鋼材SUJ2の素材を、直径150mmを有する円板に熱間鍛造した。ミクロ偏析を抑制するために、熱間鍛造された円板の鋼材を1250℃で60分間保持し、その後、室温(25℃)まで大気中で放冷した。放冷された鋼材に対して、図8に示す処理条件で球状化焼なまし、及び図9に示す処理条件で焼入れ焼戻しを実施した。具体的には、790℃で300分間保持した後、670℃まで徐冷し、その後、大気中で放冷した。次いで、830℃で60分間保持した後、油に浸漬した。次いで、170℃で90分間保持した後、大気中で放冷した。焼戻し後の鋼材を機械加工して、図7に示す形状の大ローラ試験片20を製造した。
大ローラ試験片20の円周面を小ローラ試験片10の試験部1の表面に接触させ、ローラピッチング試験を実施した。試験条件を表3に示す。
表3に示すとおり、小ローラ試験片10の回転数を1500rpmとし、すべり率を−40%、試験中の大ローラ試験片20と小ローラ試験片10との接触面圧を2500MPa、繰り返し数を2.0×10cycleとした。大ローラ試験片20の回転速度をV1(m/sec)、小ローラ試験片10の回転速度をV2(m/sec)としたとき(図6(b)参照)、すべり率(%)は、以下の式により求めた。
すべり率=(V2−V1)/V2×100
試験中、潤滑剤(市販のオートマチックトランスミッション油)を油温90℃、塗布量1.0リットル/minの条件で、大ローラ試験片20と小ローラ試験片10との接触部分に回転方向と反対の方向から吹き付けた。以上の条件でローラピッチング試験を実施し、転動疲労特性(転動疲労寿命)を評価した。
[昇温離脱式水素分析試験]
ローラピッチング試験中、大ローラ試験片20と小ローラ試験片10との接触により潤滑剤が分解されて水素が発生する。そして、発生した水素が小ローラ試験片10の試験部1の表層から内部に侵入する。そこで、ローラピッチング試験後の小ローラ試験片10の試験部1の吸蔵水素量を分析して、鋼の水素侵入抑制効果を評価した。
図10は、水素分析試験片の作製方法を説明するための模式図である。まず、ローラピッチング試験後の小ローラ試験片10の試験部1の中央部11を切り出した。中央部11は円板であり、幅は7mmであった。更に、中央部11に対してくり貫き加工を実施し、1mmの肉厚を有する円環部材12を製造した。円環部材12を製造したのは、次の理由による。中央部11は、ローラピッチング試験において試験部1が大ローラ試験片20と接触する範囲に相当し、応力が負荷される範囲に相当する。上述のとおり、潤滑剤が分解されて発生する水素は、ローラピッチング試験中に試験部1の中央部11の表面内に侵入する。水素は表面から侵入するため、表層1mmの厚さ部分の水素濃度は、試験部1中心部の水素濃度よりも高い。したがって、円環部材12内の水素濃度を測定すれば、各鋼における水素吸蔵量を比較しやすい。
更に、円環部材12を周方向で4分割し、そのうちの1つ(1/4周部材)を水素分析試験片13とした。水素分析試験片13の質量はいずれも1gであった。
次に、水素分析装置を準備した。水素分析装置は、石英チャンバと、赤外線加熱炉と、四重極質量分析計とを備えた。水素分析試験片13を石英チャンバに収納した。その後、石英チャンバ内を10−3Paまで減圧した。赤外線加熱炉を用いて、減圧された石英チャンバを、昇温速度が一定になるように加熱した。加熱により、石英チャンバ内の水素分析試験片13からガスが放出された。放出されたガスは四重極質量分析計に送られた。
四重極質量分析計は、イオン源部と、四重極部と、イオン検出部とを備えた。四重極質量分析計に送られたガスは、イオン源部でイオン化される。イオン化されたガスは四重極部を通過してイオン検出部に送られる。イオン検出部はイオン化されたガスをイオン化電流として検出し、ガスの定量分析を行う。四重極部では、印加により水素ガスイオンのみが通過できるように制御される。したがって、イオン化電流は水素分析試験片13から放出された水素の放出速度と相関を持つ。検出されたイオン化電流を、予め水素放出速度が検出された標準リークにより得られたイオン化電流と比較することにより、水素分析試験片13の水素放出速度が検量される。そして、縦軸を水素放出速度とし、横軸を温度とする水素放出曲線が得られる。
各温度における水素放出速度(ppm/sec)は式(I)で示され、水素分析試験片13中の水素濃度(ppm)は式(II)で示される。
水素放出速度=C×I/W・・・(I)
水素濃度=T×Σ(C×I/W)・・・(II)
ここで、Cは換算係数である。Iはイオン化電流である。Wは水素分析試験片の質量である。Tはイオン化電流の測定間隔(sec)である。
本実施例では、赤外線加熱炉による昇温速度を10℃/minとして、石英チャンバ内の水素分析試験片13を室温から600℃まで加熱した。そして、上記式(I)及び式(II)に基づいて、水素濃度を検量した。
石英チャンバ内に残留した水素を試験前に除去するため、各鋼の試験前には、水素分析試験片13をセットせずに上記昇温速度で石英チャンバを室温から600℃まで加熱した。更に、分析ノイズを減らすため、石英チャンバに水素分析試験片13をセットせずにイオン化電流IBを検量した。そして、その後水素分析試験片13を石英チャンバに収納して、上記条件によりイオン化電流IAを検量した。そして、式(I)及び(II)におけるイオン化電流Iを式(III)に示すとおり定義して、水素濃度を求めた。
イオン化電流I=IA−IB・・・(III)
なお、ローラピッチング試験を実施する前の水素濃度は、いずれの試験番号においても0.15ppm以下であった。
[試験結果]
表4に試験結果を示す。
表4中の「処理」欄には、図4に示す浸炭焼入れ焼戻しを実施した鋼には「浸炭」が、図5に示す浸炭窒化焼入れ焼戻しを実施した鋼には「浸炭窒化」が記載されている。表4中の「転動疲労寿命[回]」欄には、ローラピッチング試験において小ローラ試験片10が破損したサイクル数が記載されている。同欄に記載された「−」は、その鋼がローラピッチング試験に耐久したことを示す。「ローラピッチング試験後の小ローラの水素濃度[ppm]」欄には、上述の昇温離脱式水素分析試験によって得られた水素濃度が記載されている。
表4を参照して、鋼A1〜A12から採取した小ローラ試験片10はいずれも、ローラピッチング試験に耐久し、2.0×10cycle後も破損しなかった。つまり、鋼A1〜A12の丸棒は優れた転動疲労特性を有した。そして、ローラピッチング試験後の鋼A1〜A12の水素濃度は、鋼C(Cu及びNiのほとんど含有せず、他の化学組成は本発明の範囲内)の水素濃度よりも低い値を呈した。したがって、鋼A1〜A12では、水素の侵入が抑制された。
鋼B3、B4、及びB6〜B8から採取した小ローラ試験片10は、ローラピッチング試験中(2.0×10cycle以前)に破損したため、水素濃度を測定しなかった。鋼B3及びB4はCu及びNiを本発明の範囲で含有しているものの、式(2)を満足しなかった。そのため、鋼B3及びB4はC活量が増加し、浸炭が抑制された結果0.3mm位置硬さが低くなり、転動疲労特性が鋼Cよりも劣った。鋼B6はSi含有量が高すぎ、浸炭時に粒界酸化層が増加し、転動疲労特性が鋼Cよりも劣った。鋼B7はMn含有量が高すぎ、粒界偏析による粒界割れが生じ、転動疲労特性が鋼Cよりも劣った。鋼B8はCr含有量が高すぎ、粒界にCr炭化物が多量に析出し、転動疲労特性が鋼Cよりも劣った。
鋼B5は式(1)及び(2)のいずれも満足しており、2.0×10cycleのローラピッチング試験に耐久した。しかし、鋼B5の水素濃度は鋼Cと同程度であった。Cu含有量が本発明の範囲より低いことにより、Cuの水素侵入抑制効果が発揮されなかったと考えられる。
実施例1でローラピッチング試験に耐久した鋼A1〜A12、B5及びCの各丸棒の中心部から、実施例1と同様に、図3に示す小ローラ試験片10を新たに採取した。採取した小ローラ試験片10に、実施例1と同様に、浸炭焼入れ焼戻し又は浸炭窒化焼入れ焼戻しを実施した。この小ローラ試験片10を用いて、ローラピッチング試験を実施した。このとき、繰り返し数を実施例1でのローラピッチング試験よりも多い、6.0×10cycleとした。その他の試験条件は実施例1におけるローラピッチング試験と同じとした。
いずれの鋼も、ローラピッチング試験に耐久した。耐久した鋼A1〜A12、B5及びCの小ローラ試験片10のミクロ組織を観察した。小ローラ試験片10の試験部1のうち、大ローラ試験片20と接触した面直下の組織を観察できるように、試験部1から、観察面が試験部1横断面となるようにサンプルを切り出した。そして、切り出されたサンプルを樹脂に埋め込み、鏡面研磨した。その後、ナイタル腐食して試験部1の表面近傍のミクロ組織観察試験を実施した。ミクロ組織観察では、白色組織及び内部き裂の有無を調査した。調査結果を表5に示す。
表5を参照して、鋼A1〜A12では、白色組織及び内部き裂は観察されなかった。一方、鋼B5及びCでは、白色組織及び内部き裂が観察された。図11は鋼Cのミクロ組織写真画像である。図11に示すとおり、鋼Cのミクロ組織には、白色組織及び内部き裂が観察された。
以上の試験結果から、鋼A1〜A12では、2.0×10cycleでのローラピッチング試験後における水素濃度が鋼Cよりも低位であった。更に、6.0×10cycleでのローラピッチング試験後においても、白色組織及び内部き裂の発生が抑制された。したがって、鋼A1〜A12は、優れた転動疲労特性を有した。
本発明による鋼材は、使用中に「転がり接触」、「すべり接触」及び「転がり−すべり接触」が生じる浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材として、早期に部品が破損する問題を解消するのに好適である。
1 試験部
2 つかみ部
10 小ローラ試験片
11 中央部
12 円環部材
13 水素分析試験片
20 大ローラ試験片

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.15〜0.40%、
    Si:0.15〜0.40%、
    Mn:0.5〜1.5%、
    S:0.003〜0.050%
    Cr:0.7〜1.5%、
    Cu:0.30〜0.80%、
    Ni:0.15〜1.0%、
    N:0.003〜0.020%、及び
    Al:0.005〜0.050%、
    を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
    不純物中のP及びOがそれぞれ、
    P:0.025%以下、
    O:0.0020%以下であり、
    式(1)及び式(2)を満たす、浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材。
    2Ni−Cu≧0・・・(1)
    6C−7.5Si+1.6Mn+4Cr−Cu−1.6Ni≧4.0・・・(2)
    ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. Feの一部に代えて、
    V:0.2%以下、及び、
    Nb:0.1%以下
    の1種類以上を含有する、請求項1に記載の浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材。
  3. Feの一部に代えて、
    Mo:0.4%以下、
    を含有する、請求項に記載の浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材。
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