JP5783425B2 - 非水電解質二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、上述したような従来の問題を解決すべく創出されたものであり、その目的とするところは、60℃以上の高温でのエージング処理に伴う微小短絡の発生を防止し、高品質な二次電池を短時間で製造し得る非水電解質二次電池の製造方法を提供することである。
(1)上記捲回電極体における捲回軸方向の両端部のうちの一方の端部は上記正極活物質層の形成されていない未塗工部が上記負極から突出した状態で積層されている。
(2)上記両端部のうちの他方の端部は上記負極活物質層の形成されていない未塗工部が上記正極から突出した状態で積層されている。
(3)上記正極の最外周を構成する部分を少なくとも含む正極最外周部分において、上記正極集電体の少なくとも捲回外周側の表面に正極活物質層が形成されていない。
かかる製造方法は、次いで、上記の捲回電極体を非水電解質とともに電池ケースに収容して二次電池を構築すること、および、上記二次電池に対し、60℃以上の温度域において保持するエージング処理を施すこと、を包含することを特徴としている。
一方で、正極活物質層が最外周の正極集電体の捲回外周側の面に形成された場合は、該正極活物質層の未塗工部が設けられた側の端部については、これよりも捲回外周側に正極集電体の未塗工部が存在しないために、電池ケース内の空間に対して直接的に開放された状態であり得る。
そこで、上記(3)の構成により、正極の最外周を構成する部分を少なくとも含む正極最外周部分には、正極集電体の捲回外周側の表面に正極活物質層を設けないようにすることで、換言すると、最も外周側に存在する正極活物質層は常に正極集電体よりも捲回内周側に位置する構成とすることで、かかる特定の部位が電池ケース内の酸素と接触的に接するのを抑制するようにしている。これにより、60℃以上の温度域においてエージング処理を行った場合の、微小短絡の発生の問題を解消することができる。
かかる構成によると、正極最外周部分において正極集電体の内周側の面に正極活物質層が形成されている場合は、当該正極活物質層に対して負極活物質層が対向して電極体面積が増えるため、より合理的に電池構造を構築することが可能となり得る。また、正極最外周部分において正極集電体の両面共に正極活物質層が形成されていない場合は、当該正極集電体のみが電極体の最外周を捲回することとなり、例えば外部からの衝撃および圧力等に対する耐性を備えた堅固な電池構造を構築することが可能となり得る。
捲回電極体においては、セパレータを介して対向する両極活物質層のうち、より外周側に位置するものの方が対向面積は広くなる。一方で、二次電池においては電荷担体の受け入れ性を考慮すると、正極は十分な広さの負極と対向しているのが好ましい。したがって、特に捲回電極体の巻き終わりにおいては、対向する正・負の活物質層のうち、負極活物質層がより捲回外周側に位置しているのも好ましい態様である。上記の構成によると、捲回電極体の巻き終わりにおいて、負極活物質層がより捲回外周側に位置するように正・負の活物質層を好適に対向させ得るため、金属リチウムの析出による短絡の問題が低減された非水電解質二次電池を製造することができる。
上記捲回電極体の負極の未塗工部を上記捲回電極体の周方向の少なくとも一部で束ね、上記負極の未塗工部を当該束ねた部分において他部材を介することなく上記負極集電端子板と接続することを特徴としている。
かかる構成によると、正負両電極に形成される未塗工部を束ねることで、正極活物質層が電池ケース内の酸素ガス成分と接触するのをより確実に防止することができ、かかる未塗工部を備える捲回電極体により適した製造方法となり得る。さらに、この製造方法においては、電極体と正負の極集電端子板とを接続するに際し、例えば、接続用の集電体箔やタブ等の他部材を介することなく、正負の未塗工部と正負の集電端子板とを直接的に接続するのが好ましい。これにより、上記の効果に加えて、内部抵抗を増大させることなく電極体からの電流の取り出しが可能となり、高出力な電池を製造することができる。
エージング処理のうち、金属異物の溶解を目的とするものは、正極電位を金属異物の酸化還元電位よりも高い値に設定することが必要である。しかしながら、高温でのエージング処理において微小短絡が生じやすい上記の特定の部位では、正極の電位が他の部位よりも更に高い電位となっていることが確認されている。一般的に正極電位が高いほど正極活物質は不安定な状態に置かれ、溶解等の副反応を起こしやすい。かかる不安定な状態は、例えば、マンガン(Mn)を含むリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とした場合に顕著に見られ、正極活物質から電解液へMnが溶解し、対向する負極上で局所的に堆積することによって微小短絡が発生している。これに対し、ここに開示される製造方法では、高温でのエージング処理においても上記特定の部位におけるMnの溶出が抑制され得る。したがって、この製造方法は、マンガンを含むリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いる二次電池の製造に好適に適用することができる。
かかる構成によると、高温でのエージング処理をコンディショニング処理後の電池に対して行うため、例えば、金属異物の溶解を目的とするエージング処理をより短時間で実施することができる。
上記のとおり、ここに開示される発明においては、高温でのエージング処理に際して電池電圧を3.8V以上に調整することができるため、例えば、銅(Cu)等の比較的酸化還元電位の高い金属異物を溶解することができる。
[微小短絡部位]
かかる高温エージングに伴う微小短絡は、上記のとおり、捲回電極体の最外周の正−負活物質層間であって、正極集電体の未塗工部が設けられる側の端部において発生する。そして、特に、捲回電極体が扁平に拉げられている場合には、その捲回断面において最も曲率の大きい曲部(捲回R部)において、微小短絡が頻発する。この微小短絡は、正極活物質の金属成分が電解液に溶解し、対向する負極表面に局所的に析出してゆき、遂には正極側にまで到達することにより発生するものである。したがって、正極の最外周部分における捲回外周側に位置する正極活物質層(正極集電体の捲回外周側の面に形成された正極活物質層)の、捲回軸方向(正極の幅方向)で正極集電体の未塗工部が設けられている側の端部近傍の正極活物質から、金属成分が溶出されることで微小短絡が引き起こされるといえる。
本発明者らの検討によると、この微小短絡の原因が以下の3つの要素によることが確認できた。
a)正極高電位
上記微小短絡部位は、何らかの原因で正極側の電位が特に高くなっていることが確認できた。エージング処理における金属異物の溶解は電気化学的反応を利用して行われるため、電池を高いSOC状態に調整して行っている。このとき、エージング処理中の電圧降下を見越して、3.8Vを超える(例えば、3.97V)電池電圧に調整してエージング処理を開始するのが一般的であるが、かかる状態において正極電位は電池電圧よりも更に高い電位(例えば、実測値で4.06V)となる。しかしながら、上記の微小短絡が発生する部位においては、コンディショニング処理の直後、すなわちエージング処理直前において、上記の正極電位よりも遥かに高い電位(例えば、実測値で4.3V以上)となることが確認されている。一般的に正極電位が高いほど正極活物質は不安定な状態におかれ、溶解(溶出)等の副反応を起こしやすくなる。したがって、かかる正極高電位による正極活物質からの金属成分の溶出により、微小短絡が発生しているものと考えられる。
二次電池において、電池ケース内の空間は一般的にドライエアーで満たされている。本発明者らの検討によると、電池ケース内の空間を不活性ガスで満たすと高温でのエージング処理においても正極活物質からの金属成分の溶出やこれに伴う微小短絡は発生しないことがわかっている。つまり、これらの現象は、電池ケース内の空間にエアーあるいはドライエアーが存在する場合に発生するため、当該空間に酸素が存在することが微小短絡の何らかの原因となっていることが推定される。詳細には確認されていないが、本発明者らは、電池ケース内の空間に存在する酸素がエージング処理の際に電解液と反応し、腐食性の物質(例えば、フッ酸等)を生成する等して、正極活物質からの金属成分の溶出やこれに伴う微小短絡を誘起しているものと予想している。しかしながら、かかる酸素の影響を防止するにあたり、製造ラインの一部を不活性ガス雰囲気として不活性ガスによる封入を行うことは、製造コストと製造ラインの安全性の面から好ましくない。したがって、例えば、大気あるいは空気雰囲気によるドライエアー封入を採用しても、高温でのエージング処理が可能となる製造方法を確立することが望ましい。
エージング処理の温度を60℃以下の比較的低い温度とすることで、微小短絡は発生しないことが確認されている。しかしながら、エージング処理時間、延いては二次電池の製造時間を短縮することで、製造コストの低減を図ることが望まれる。
(1)上記捲回電極体における捲回軸方向の両端部のうちの一方の端部は上記正極活物質層の形成されていない未塗工部が上記負極から突出した状態で積層されている。
(2)上記両端部のうちの他方の端部は上記負極活物質層の形成されていない未塗工部が上記正極から突出した状態で積層されている。
(3)上記正極の最外周を構成する部分を少なくとも含む正極最外周部分において、上記正極集電体の少なくとも捲回外周側の表面に正極活物質層が形成されていない。
また、本明細書において「二次電池」とは、電荷担体の移動により繰り返し充放電可能な電池一般をいい、典型的には、ニッケル水素電池、リチウム二次電池、リチウムポリマー電池等を包含する。また、本明細書において「活物質」は、二次電池において電荷担体となる化学種(例えば、リチウム二次電池ではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および脱離)可能な物質をいう。
本実施形態で製造するリチウムイオン電池10は、図1〜図4に示すように、捲回電極体20を備える電池10である。そしてここに開示される製造方法においては、まず、以下に説明する構成の捲回電極体20を用意するようにしている。
かかる捲回電極体20は、代表的には、長尺な正極集電体32の両面に正極活物質層34を備える正極シート(正極)30と、長尺な負極集電体52の両面に負極活物質層54を備える負極シート(負極)50とが、2枚のセパレータ70を介して互いに積層され、捲回されることで構成されている。
なお、セパレータ70については、図3に示されるように、正極30と負極50との絶縁を確保するに必要な分の長さとしてもよいし、例えば、正極最外周部分Xと外部(例えば電池ケース)との絶縁をより確実に確保するために正極最外周部分Xの外周を更に取り巻く長さとしても良い。
ここに開示される製造法においては、次いで、上記の通り用意した捲回電極体20を非水電解質(図示せず)とともに電池ケース80に収容してリチウムイオン電池10を構築する。ここで、電池ケース80は、典型的には、捲回電極体20において発生した電力を外部に取り出すために、電池ケース80の外側に外部接続端子(正極外部接続端子40および負極外部接続端子60を、電池ケース80の内側に正極集電端子板42および負極集電端子板62を備えている。そして、リチウムイオン電池10を構築するにあたり、捲回電極体20の正極30および負極50が、それぞれ正極集電端子板42および負極集電端子板62に接続される。このようにすることで、内部抵抗がより小さいリチウムイオン電池10を製造することができる。
ここで、一般的な捲回電極体20においては、正極最外周部分Xを構成する正極集電体32が存在しない形態であり得る。そのような場合、正極30の最外周に位置する正極活物質層34(図4では下側の正極活物質層34)は、その表面を正極集電体32とセパレータ70とで挟まれている。また、幅方向(捲回軸方向)の両端部(側面部)のうちの一方の端部を、捲回電極体20から突出している負極未塗工部53によって緩やかに挟まれる。しかしながら、もう一方の端部については、正極最外周部分Xを構成する正極集電体32が存在しないために正極未塗工部33によって挟まれることはない。したがって、捲回電極体20の最外周に位置する正極活物質層34は、電池ケース80の内部に形成される空間には解放された状態であり得る。
しかしながら、ここに開示される製造方法では、捲回電極体20の正極最外周部分Xは捲回外周側に正極活物質層34が形成されていない正極集電体32が配置される。したがって、捲回電極体20の最外周に位置する正極活物質層34についても、電池ケース80の内部に形成される空間には解放されず、例えば、電池内部に含まれる酸素成分との接触が抑制されている。
以上のように構築した二次電池に対し、ここに開示する製造方法においては、次工程の高温エージング処理に先立って、コンディショニング処理を施すようにしてもよい。コンディショニング処理は、電池の性能を安定化させるために行われる充放電であって、その条件は特に制限されない。例えば、適切な電流密度で何度か充放電を繰り返し行うことが例示される。
次いで、上記コンディショニング処理に引き続き、あるいは、上記コンディショニング処理を行わずに、60℃以上の高温域で保持するエージング処理を施す。かかるエージング処理においては、まず、正極電位が溶解の対象である金属異物の酸化還元電位よりも高い電位となるよう予備充電を行った後、その充電状態のままで所定の時間保持するものであってもよい。例えば、金属異物として銅(Cu)の溶解を行う場合には、電池電圧をCuの酸化還元電位である3.8V以上とすることができ、例えばエージング処理中の電圧降下を見越して3.9V以上とすること等が例示される。
なお、かかるエージング処理の時間については、エージング処理の目的や、製造する二次電池10の構成(体格)等を考慮して適宜設定することができる。例えば、電池の体格や、溶解の対象となる金属異物の特性(例えば、大きさ、電解液への溶解性等)等を考慮することができる。このように、エージング処理の時間については一概には言えないものの、例えば、50℃程度の温度域で行う従来のエージング処理に要する時間と比較して、1/2〜1/10程度の時間とすることができ、かかる時間を目安としてエージング処理の時間を設定すればよい。
正極30は、上記のとおり、正極集電体32上に、正極活物質層34が形成されている。
正極集電体32としては、従来よりリチウムイオン電池の正極30に適する金属あるいは合金が好適に使用され得る。例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を主体とする棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。この実施形態では、正極集電体32には、所定の幅を有し、厚さがおよそ1μmの帯状のアルミニウム箔が用いられている。また、正極集電体32には、幅方向片側の縁部に沿って未塗工部33が設けられている。そしてさらに、正極30の最外周を構成する部分を少なくとも含む正極最外周部分において、正極集電体32の少なくとも捲回外周側となる表面には、正極活物質層34が形成されていない。正極活物質層34は、少なくとも、正極集電体32に設定された未塗工部33と、最外周部分の捲回外周側を除いて、正極集電体32の両面に形成されている。
Li(LiaMnxCoyNiz)O2
(前式中のa、x、y、zはa+x+y+z≒1、xyz≠0を満たす。)
で表わされるような、遷移金属元素を3種含むいわゆる三元系のリチウム遷移金属酸化物や、一般式:
xLi[Li1/3Mn2/3]O2・(1−x)LiMeO2
(前式中、Meは1種または2種以上の遷移金属であり、xは0<x≦1を満たす。)
で表わされるような、いわゆる固溶型のリチウム過剰遷移金属酸化物等であってもよい。なお、これらのリチウム遷移金属酸化物は、その構成の明確のため上記一般式で示したが、かかる示性式中の遷移金属元素の一部(50原子%未満)が上記に例示したCo,Al,Mn,Cr,Fe…等からなる金属元素群から選択される一種または二種以上の元素で置換されていても良いことは言うまでもない。このようなリチウム遷移金属酸化物は、例えば、具体的には、D50が3〜8μm程度であり、比表面積(BET法による)が0.5〜1.9m2/g程度のリチウム過剰遷移金属酸化物を用いるのが好ましい例として示される。正極活物質として、例えば、リチウム過剰遷移金属酸化物や、固溶型のリチウム過剰遷移金属酸化物等を用いることで、高出力特性とハイレート特性を兼ね備えたリチウムイオン電池を構築することができる。
なお、本明細書において、D50は、レーザ回折散乱法により測定される粒度分布における、累積50%粒径(体積基準)で表わされる平均粒径を示している。以下、D50と平均粒径は同意で用いる。
負極集電体52としては、負極に適する金属が好適に使用され得る。例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を主体とする棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。この例において、具体的には、負極集電体52には、所定の幅を有し、厚さがおよそ10μmの帯状の銅箔を用いている。このような負極集電体52には、幅方向の片側縁端部に沿って未塗工部53が設定されている。負極集電体52に設定された未塗工部53を除いて、負極集電体52の両面に負極活物質層54が形成される。
ここで、負極活物質層54のバインダ、溶媒、増粘剤としては、上記正極活物質層34のバインダ、溶媒、増粘剤として例示した材料を同様に用いることができる。
溶媒としては、上記正極活物質層34で用いる水性溶媒および非水溶媒のいずれも使用可能である。非水溶媒の好適な例としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。
また、上記正極活物質層34のバインダとして例示したポリマー材料は、バインダとしての機能の他に、負極活物質層形成用組成物の増粘剤その他の添加剤としての機能を発揮する目的で使用されることもあり得る。
捲回電極体20を収容した後、蓋体82によって容器本体84を密閉することができる。蓋体82と容器本体84との合わせ目は、例えば、レーザ溶接によって溶接することで封止することができる。
すなわち、ここに開示する電池ケース内酸素低減方法は、電池ケース80内の酸素量を0.2mL〜2mLの範囲に低減させること、を包含することを特徴としている。なお、酸素量についての0.2mL〜2mLとの値は、電池ケースのサイズ(内容積)がおよそ120mLの電池についての値であり、かかる電池は内部に約20mL〜30mL程度の空間が形成され得る。電池ケース80内の酸素はエージング中にほぼ全量反応すると考えられるため、かかる酸素量の好適な範囲は絶対量として考慮することができる。しかしながら、例えば電池の大きさが極端に違う場合は、かかる好適な酸素量についても変動することもあり得る。したがって、上記酸素量は電池ケース内に形成される空間体積を考慮して(典型的には、空間体積に比例するように)適宜増減することも可能である。例えば、酸素量が電池ケース内の空間において1体積%〜8体積%程度となるように調節しても良い。
一方、電池ケース80内の酸素量を0.2mL未満とすることは、上記正極活物質からの金属元素の溶出をより確実に抑制し得る点で好ましいといえる。しかしながら、微小短絡を抑制し得る程度に金属元素の溶出を抑えるには、酸素量を0.2mL未満にまで低減することは必ずしも必要ではない。また、かかる酸素量を実現するには、例えば製造ラインの一部を不活性雰囲気にするなどの特殊な手段が必要となり、過剰なコストの増大となるために好ましくない。かかる事項を考慮して、ここに開示する方法においては、酸素量は0.2mL以上のレベルに低減するよう規定している。この酸素量は、例えば、0.3mL以上とすることができる。
なお、かかる電池ケース内酸素低減方法は、ここに開示される非水電解質二次電池の製造方法と併せて実施することで、より確実に高温エージング処理における微小短絡の発生を防止することができ、例えば、高容量で高出力特性を備える二次電池を、より高品質なものとして製造することが可能となる。
[評価用セルの準備]
評価セルとしての捲回電極体を備えるリチウム二次電池を、以下の手順に従って構築した。
≪正極≫
すなわち、正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2と、導電材としてのカーボンブラック(CB)と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを用い、これらの材料を質量比で90:8:2の割合となるように配合し、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合することで、正極活物質層形成用ペーストを調製した。次いで、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚さ約15μm)の両面に、その一端に沿って未塗工部を残しつつ、単位面積あたりの正極活物質の被覆量(目付量)が両面あたり11mg/cm2となるように該正極活物質層形成用ペーストを塗布した。塗布後、ローラープレス機にて正極活物質層の密度がおよそ2.2g/cm3となるように調製し、乾燥させた。これを、所定の幅を有するようにスリットし、正極活物質層の幅が9.8cmで、長さが300cmの正極を作製した。
負極活物質としての球状黒鉛と、結着材としてのスチレンブタジエンブロック共重合体(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これらの材料を質量比で98:1:1の割合となるように配合し、溶媒としてのイオン交換水と混合することにより、負極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストを、負極集電体としての銅箔(厚さ約10μm)の両面に、その一端に沿って未塗工部を残しつつ、単位面積あたりの負極活物質の被覆量(目付量)が両面あたり7mg/cm2となるように該負極活物質層形成用ペーストを塗布した。塗布後、ローラープレス機にて負極活物質層の密度がおよそ1.1g/cm3となるように調製し、乾燥させた。これを、所定の幅を有するようにスリットし、負極活物質層の幅が10.2cmで、長さが310cmの負極を作製した。
セパレータには、厚さが25μmのポリプロピレン(PP)製の微多孔質シートを用いた。
上記で用意したセパレータ2枚と、正極および負極を一枚ずつ用いて、評価用のリチウム二次電池を構築した。すなわち、セパレータを間に介して、正極と負極とを、互いの未塗工部が反対側に位置するように、また、負極活物質層が正極活物質層を幅方向で覆うように積層し、負極が捲回外周側となるように直径約4cmの軸を中心に捲回して捲回体を形成した。その後、軸を抜き去り直径方向で押しつぶして扁平形状に拉げさせることで、捲回型電極体を作製した。この捲回電極体の一端に楕円渦巻き状に突出している正極集電体の未塗工部に正極端子を、同じく負極集電体の未塗工部に負極端子を、溶接により接合した。
上記のサンプル1において、正極の長さを約312cmと捲回電極体の最外周1周分長く形成し、巻終わり(最外周)の12cmは捲回内周側の片面に相当する部位のみに正極活物質層を形成し、その他の構成はサンプル1と同様にして、リチウム二次電池(サンプル2)を構築した。すなわち、サンプル2のリチウム二次電池は、捲回電極体の最外周層を、捲回内周側にのみ正極活物質層を備える正極集電体で1周捲回した構成とした。かかるサンプル2の評価用のリチウム二次電池についても、10セル用意した。
上記のサンプル1において、正極の長さを約312cmと捲回電極体の最外周1周分長く形成し、巻終わり(最外周)の12cmは両面ともに正極活物質層を形成せず、その他の構成はサンプル1と同様にして、リチウム二次電池(サンプル3)を構築した。すなわち、サンプル3のリチウム二次電池は、捲回電極体の最外周層を、正極集電体のみで1周捲回した構成とした。かかるサンプル3の評価用のリチウム二次電池についても、10セル用意した。
上記で構築したサンプル1〜3評価用のリチウム二次電池に対して、室温(25℃)の温度条件の下、1Cの充電レートで電圧値(正負極端子間の電圧値)が4.1Vになるまで定電流充電(CC充電)を行い、次いで3.92Vまで定電流放電(CC放電)し、再度3.97VまでCCCV充電することで、3.97充電電池を用意した。
[エージング]
コンディショニング後の各リチウム二次電池を、80℃の高温条件で20時間保持することにより、エージング処理を施した。
上記エージング処理の後、常温(25℃)で5時間経過した時の各電池の電圧を初期電圧(Vini)とし、さらに25℃で72時間保存した後の電池電圧を測定電圧(V72h)として、V72hからViniを差し引いた値(V72h−Vini)を自己放電量(VSD)とした。この仕様の電池では、正常な電池はVSD<2mVとなる。一方で、微小短絡を起こしたセルではVSDが大きくなり、この実施形態ではVSDが5mVを超過したものを微小短絡セルとした。サンプル1〜3の各10セルのリチウム二次電池について、この自己放電量(VSD)が5mVより大きくなったセルの数を数え、表1に示した。
上記自己放電検査後の各リチウム二次電池を、グローブボックス内で注意深く解体し、電極体の様子を観察した。正極活物質からMn成分の溶出がある電池については、負極とセパレータに変色が確認されるため、かかる変色の有無を目視で確認した。サンプル1〜3の各リチウム二次電池について、Mnの溶出が確認できた電池の数を数え、表1に示した。
また、解体目視検査において、サンプル1のリチウム二次電池は、全てのセルについて、負極およびセパレータの変色が確認された。すなわち、自己放電量VSDが5mV以下であった2つのセルについても、正極からのMnの溶出と、負極およびセパレータ上への析出が確認されており、かかる溶出量は少ないながらもMn成分の溶出および析出が発生していたことがわかった。一方のサンプル2および3のリチウム二次電池については、全てのセルについて負極およびセパレータの変色は確認されず、正極からのMnの溶出自体が非常によく抑制されていることがわかった。
すなわち、捲回電極体の正極最外周に正極活物質層を設けていない構成とすることで、高温エージング処理を施した際の正極活物質からの金属成分の溶出をほぼ完全に抑制し得ることが確認できた。
(サンプル4)
上記サンプル1の電池の製造において、非水電解液を注入する際に窒素ガスでパージしながら注入し、その他はサンプル1と同様にして、リチウム二次電池(サンプル4)を構築した。すなわち、サンプル4のリチウム二次電池は、電解液を注有するに際し、注液口を封止可能な注液ノズルを注液口に押し当てながら、注液ノズルを通じて電池ケースの内部を約−90kPaまで減圧した後、電池ケース内に電解液と共に窒素ガスを注入した。所定量(35mL)の電解液の注入が終了した後、10秒以内に封止蓋を注液口にレーザ溶接により取り付けた。かかるサンプル4の評価用のリチウム二次電池を、10セル用意した。
上記サンプル4の電解液の注入に際し、窒素ガスに代えて、アルゴンガスを用いてパージし、その他はサンプル4と同様にして、リチウム二次電池(サンプル5)を構築した。かかるサンプル5の評価用のリチウム二次電池についても、10セル用意した。
(サンプル6)
上記サンプル4の電解液の注入に際し、窒素ガスに代えて、ヘリウムガスを用いてパージし、その他はサンプル4と同様にして、リチウム二次電池(サンプル6)を構築した。かかるサンプル6の評価用のリチウム二次電池についても、10セル用意した。
(サンプル7)
上記サンプル4の電解液の注入に際し、窒素ガスに代えて、ドライエアーを用いてパージし、その他はサンプル4と同様にして、リチウム二次電池(サンプル7)を構築した。かかるサンプル7の評価用のリチウム二次電池についても、10セル用意した。
上記で構築したサンプル4〜7の評価用のリチウム二次電池を電解液の注入後から約20時間静置して捲回電極体に電解液を含浸させた。その後、各電池をポリエチレン製の袋にそれぞれ入れ、袋内の空気を除去するために減圧した後、50mLのアルゴンを袋の中に注入して密封した。この密封された袋の中で電池ケースの安全弁を開弁し、1時間静置した後、この袋の中の気体に含まれる酸素含有量を測定した。酸素含有量の測定は、ポリエチレン袋内の気体から0.1mLのガスをシリンジで採取し、これをGC−MS分析することにより行った。また、酸素含有量Vox(mL)は、分析結果からサンプル気体0.1mL中の酸素割合A(体積%)を算出し、予め求めておいた電池内空間体積Vcell(mL)から、下記式(1)に基づいて算出した。各電池について得られた酸素含有量を、10セルあたりの平均値として、下記の表2に示した。
Vox=(Vcell+50)×A ・・・(1)
上記で構築したサンプル4〜7評価用のリチウム二次電池に対して、室温(25℃)の温度条件の下、1Cの充電レートで電圧値(正負極端子間の電圧値)が4.1Vになるまで定電流充電(CC充電)を行い、次いで3.92Vまで定電流放電(CC放電)し、再度3.97VまでCCCV充電することで、3.97充電電池を用意した。
[エージング]
コンディショニング後の各リチウム二次電池を、80℃の高温条件で20時間保持することにより、エージング処理を施した。
上記エージング処理の後、常温(25℃)で5時間経過した時の各電池の電圧を初期電圧(Vini)とし、さらに25℃で72時間保存した後の電池電圧を測定電圧(V72h)として、V72hからViniを差し引いた値(V72h−Vini)を自己放電量(VSD)とした。一般的に、正常な電池はVSD<2mVとなる。一方で、微小短絡を起こしたセルではVSDが大きくなり、この実施形態ではVSDが5mVを超過したものを微小短絡セルとした。サンプル4〜7の各10セルのリチウム二次電池について、この自己放電量(VSD)が5mVより大きくなったセルの数を数え、表2に示した。
上記自己放電検査後の各リチウム二次電池を、グローブボックス内で注意深く解体し、電極体の様子を観察した。正極活物質からMn成分の溶出がある電池については、負極とセパレータに変色が確認されるため、かかる変色の有無を目視で確認した。サンプル4〜7の各リチウム二次電池について、Mnの溶出が確認できた電池の数を数え、表2に示した。
また、解体目視検査において、サンプル7のリチウム二次電池は、全てのセルについて、負極およびセパレータの変色が確認された。すなわち、自己放電量VSDが5mV以下であった2つのセルについても、正極からのMnの溶出と、負極およびセパレータ上への析出が確認されており、かかる溶出量は少ないながらもMn成分の溶出および析出が発生していたことがわかった。一方のサンプル4〜6のリチウム二次電池については、全てのセルについて負極およびセパレータの変色は確認されず、正極からのMnの溶出自体が非常によく抑制されていることがわかった。
すなわち、電池ケース内の酸素量を、ゼロとしなくても、0.2mL〜2mL程度の範囲とすることで、高温エージング処理を施した際の正極活物質からの金属成分の溶出をほぼ完全に抑制し得ることが確認できた。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
20 捲回型電極体
30 正極
32 正極集電体
33 未塗工部
34 正極活物質層
40 正極端子
50 負極
52 負極集電体
53 未塗工部
54 負極活物質層
60 負極端子
70 セパレータ
80 電池ケース
82 蓋体
84 容器本体
86 注液口
88 安全弁
WL 捲回軸
Claims (6)
- 捲回電極体を備える二次電池の製造方法であって、
正極集電体の両面に正極活物質層を備える正極と、負極集電体の両面に負極活物質層を備える負極とが、セパレータを介して互いに積層され、捲回されてなる捲回電極体であり、
前記正極活物質層は、正極活物質として、マンガンを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含んでおり、
前記捲回電極体における捲回軸方向の両端部のうちの一方の端部は前記正極活物質層の形成されていない未塗工部が前記負極から突出した状態で積層され、
前記両端部のうちの他方の端部は前記負極活物質層の形成されていない未塗工部が前記正極から突出した状態で積層され、かつ、
前記正極の最外周を構成する部分を少なくとも含む正極最外周部分において、前記正極集電体の少なくとも捲回外周側の表面に正極活物質層が形成されていない捲回電極体を用意すること、
前記捲回電極体を非水電解質とともに電池ケースに収容して二次電池を構築すること、
および、
前記二次電池に対し、60℃以上の温度域において保持するエージング処理を施すこと、
を包含する、非水電解質二次電池の製造方法。 - 前記正極最外周部分が前記負極の最外周を構成する部分の捲回外周側に配置されている捲回電極体を用意する、請求項1に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
- 前記正極最外周部分における、前記正極集電体の両面ともに前記正極活物質層が形成されていない前記捲回電極体を用意する、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
- 前記電池ケースは、前記捲回電極体の正極と電気的に接続される正極集電端子板と、前記捲回電極体の負極と電気的に接続される負極集電端子板とを備えており、
前記二次電池の構築において、
前記捲回電極体の正極の未塗工部を前記捲回電極体の周方向の少なくとも一部で束ね、前記正極の未塗工部を当該束ねた部分において他部材を介することなく前記正極集電端子板と接続し、
前記捲回電極体の負極の未塗工部を前記捲回電極体の周方向の少なくとも一部で束ね、前記負極の未塗工部を当該束ねた部分において他部材を介することなく前記負極集電端子板と接続する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法。 - さらに、前記構築した二次電池に対してコンディショニング処理を施すことを含み、
該コンディショニング処理を施された二次電池に対して、前記エージング処理を施す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法。 - 前記二次電池の電池電圧を3.8V以上に調整した後に前記エージング処理を施す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
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