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JP5637530B2 - 高延性で、化成処理性に優れる780MPa以上の引張強度を有する超高強度冷延鋼板 - Google Patents

高延性で、化成処理性に優れる780MPa以上の引張強度を有する超高強度冷延鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、厳しい形状にプレス成形される自動車部品などに好適な、高延性で、化成処理性に優れる780〜1180MPa級の引張強度TSを有する超高強度冷延鋼板に関する。
自動車部品などに用いられるTSが780〜1180MPa級の超高強度冷延鋼板は、その用途の特徴から高強度に加え、伸びフランジ性などの延性が高く、化成処理性に優れていることが必要である。
高延性な高強度冷延鋼板に関しては、例えば、C:0.05〜0.35%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Al:0.10%未満、N:0.0020〜0.0100%、Ti:0.001〜0.20%、Caおよび/またはREM:0.0010〜0.010%を含有し、体積率で30%以上のフェライト相、体積率で2%以上の残留オーステナイト相および低温変態相からなる複合組織を有し、かつフェライト粒径が15μm以下で、鋼板表層から10nm深さまでのGDS分析によるSiとFeの強度比が6.0以下である塗膜の2次密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板が開示されている(特許文献1)。また、C:0.06〜0.25%、Si:2.5%以下、Mn:0.5〜3.0%、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Al:0.1〜2.5%、Ti:0.003〜0.08%、N:0.01%以下を含有し、かつ(48/14)N≦Ti≦(48/14)N+(48/32)S+0.01を満足し、体積率で5%以上の残留オーステナイト相を有する表面性状並びに衝撃吸収性に優れた高延性型高張力冷延鋼板が開示されている(特許文献2)。さらに、C:0.04〜0.14%、Si:0.2〜2.0%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.008%以下、B:0.0003〜0.0050%、Al:0.010〜2.00%を含有し、かつ面積率で4〜15%以上の残留オーステナイト相とフェライト相、ベイナイト相の複合組織からなる加工性と溶接性に優れた高強度冷延鋼板が開示されている(特許文献3)。
一方、化成処理性に関しては、必ずしも高強度冷延鋼板を対象としてないが、Ni酸化物やNi水酸化物を表面に付着させた化成処理性に優れた表面処理鋼板が開示されている(特許文献4)。また、C:0.001〜0.25%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜3.0%、およびCu:0.5〜1.5%、Ni:0.5〜1.5%、Mo: 0.2〜1.0%、Cr:0.1〜2.5%、V:0.01〜0.1%、B:0.0005〜0.0030%、Ti:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%のうちから選ばれた少なくとも一つの元素を含み、表面に鉄被覆層が形成された塗装後耐食性に優れた高強度冷延鋼板が開示されている(特許文献5)。さらに、C:0.001〜0.25%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜3.0%、およびCu:0.5〜1.5%、Ni:0.5〜1.5%、Mo: 0.2〜1.0%、Cr:0.1〜2.5%、V:0.01〜0.1%、B:0.0005〜0.0030%、Ti:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%のうちから選ばれた少なくとも一つの元素を含み、表面にニッケル金属粒子からなるニッケル金属層が形成されたリン酸塩処理性に優れた高強度冷延鋼板が開示されている(特許文献6)。また、Siの分布については、Si基酸化物の表面被覆率について開示されている(特許文献7)。さらに、TRIP鋼について、表面Si濃化量の平均値、表面Si濃度分布に占める鋼中Si濃度に対する濃度比が10以上である部位の面積率について開示されている(特許文献8)。
特開2003-201538号公報 特開平10-130776号公報 特開2001-64748号公報 特開昭59-159987号公報 特開平5-320952号公報 特開平6-93472号公報 特開2004-323969号公報 特開2004-204350号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載された高延性の高強度冷延鋼板では、化成処理性が不十分である。特に、特許文献1に記載の高強度冷延鋼板では、酸洗処理やブラシ処理によってSiとFeの強度比を6.0以下にして塗膜の2次密着性の向上を図っているが、十分に優れた化成処理性が得られず、鋼板表面に不均一な化成処理皮膜が形成される。また、特許文献3に記載された高強度冷延鋼板では、780MPa以上のTSが得られない。
特許文献4〜6に記載された表面処理鋼板や高強度冷延鋼板では、Ni酸化物、Ni水酸化物、鉄被覆層、ニッケル金属層などの特殊なめっき処理を行う必要があり、高コストで生産性が劣る。また、鋼板の成分しか開示されておらず、製造条件によっては高延性で、780MPa以上のTSを有する超高強度冷延鋼板が得られない。
特許文献7に記載された鋼板では、リン酸亜鉛結晶を隙間なく生成させることを図っているが、Si濃度を制御していないので、十分に優れた塗装後の耐食性が得られない。特許公報8に記載された鋼板は、TRIP特性を有するので延性のみに優れ、伸びフランジ性に劣る。加えて、表面Si平均濃化レベルが11〜42と極めて高く、鋼中Si濃度に対する濃度比が10以上である部位が存在しており、酸洗2回、研削、デスケーリングなど通常より高コストな工程を経ているにもかかわらず、十分にSi濃化の減少を達成できていない。焼鈍前に鋼板表面Siを低減しても、焼鈍中に鋼板表面にSi酸化物が生成してしまうことが大きな課題である。
本発明は、安価に製造可能な、高延性で、化成処理性に優れるTSが780〜1180MPa級の超高強度冷延鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らが、安価に製造可能な、高延性で、化成処理性に優れるTSが780〜1180MPaの超高強度冷延鋼板について検討を進めたところ、以下の知見が得られた。
i)高延性化とTSが780MPa以上の高強度化を図るには、成分組成を適正化し、ミクロ組織をフェライト相と焼戻マルテンサイト相からなる複合組織とし、かつ焼戻マルテンサイト相の体積率を20〜70%にする必要がある。
ii)優れた化成処理性を図るには、鋼板表面のSi濃度Si(0)と鋼板表面から0.1mm深さのところのSi濃度Si(0.1)の比、すなわち[Si(0)/Si(0.1)]を1.0〜1.6に、かつその標準偏差を0.50以下にする必要がある。
iii)上記のようなミクロ組織や表面Si濃度のコントロールは、例えば、連続焼鈍により焼鈍を行って、焼鈍条件を適正化するとともに、焼鈍後に酸洗処理とアルカリ処理を行うことにより初めて可能となる。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、質量%で、C:0.05〜0.2%、Si:0.5〜2.0%、Mn:1.5〜3.5%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.005%、Al:0.005〜0.08%、N:0.001〜0.01%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相と焼戻マルテンサイト相からなる複合組織を有し、焼戻マルテンサイト相の体積率が20〜70%であり、かつ鋼板表面のSi濃度Si(0)と鋼板表面から0.1mm深さのところのSi濃度Si(0.1)との比[Si(0)/Si(0.1)]が1.0〜1.6で、この比の標準偏差が0.50以下であることを特徴とする高延性で、化成処理性に優れる780MPa以上の引張強度を有する超高強度冷延鋼板を提供する。
本発明の超高強度冷延鋼板には、さらに、質量%で、Ti:0.001〜0.04%、Nb:0.001〜0.04%、V:0.001〜0.2%のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有できる。
また、本発明の超高強度冷延鋼板には、さらに、質量%で、Cu:0.01〜1%、Ni:0.01〜1%、Mo:0.01〜1%、Cr:0.01〜1%、B:0.0001〜0.005%のうちから選ばれた少なくとも1種の元素やCa:0.0001〜0.005%を含有することもできる。
本発明により、高延性で、化成処理性に優れるTSが780〜1180MPa級の超高強度冷延鋼板を安価に製造できるようになった。本発明の超高強度冷延鋼板は、厳しい形状にプレス成形される自動車部品などに好適である。
以下に、本発明の超高強度冷延鋼板について詳細に説明する。
1)成分
C: Cはマルテンサイト相などの低温変態相を利用して鋼を強化するために必要不可欠である。一般に、低温変態相の強度はC量に比例する傾向にある。その量が0.05%未満では、ミクロ組織がフェライト相とマルテンサイト相からなる複合組織にならず、780MPa以上のTSが得られず、TS-Elバランスも低い。ここで、Elは引張試験で得られる伸びを表す。さらに、780MPa以上のTSを得るにはその量が多いほうが好ましいが、0.2%を超えるとスポット溶接性が著しく劣化したり、マルテンサイト相が過度に硬質化して延性の低下を招く傾向にある。したがって、C量は0.05〜0.2%、好ましくは0.06〜0.16%とする。
Si: Siは固溶強化により高強度化に寄与する元素である。また、フェライト相を強化することによりマルテンサイト相との硬度差を低減し、伸びフランジ成形時にフェライト相とマルテンサイト相の境界での割れ発生や亀裂伝播を抑制して均一変形を促進し、伸びフランジ性を向上させる効果もある。そのため、その量は0.5%以上にする必要がある。一方、その量が2.0%を越えるとこうした効果が飽和するばかりではなく、以下のような問題が起こる。すなわち、過度に強化されフェライト相の延性が大きく低下する。スポット溶接性が低下する。熱間圧延時に難剥離性のスケールが生成し表面欠陥の原因となる。鋼板表面にSi酸化物が高濃度に偏在すると、塗装前処理段階である表面調整時にTiコロイドや帯電したリン酸塩微粒子の吸着を阻害したり、化成処理性を劣化させて、塗装後耐食性を低下させる。したがって、Si量は0.5〜2.0%、好ましくは0.8〜1.6%とする。
Mn: Mnは複合組織の形成に必要な元素であり、鋼の焼入れ性を高め硬質なマルテンサイト相を形成し、TS-Elバランスを向上させる。また、焼鈍時の加熱、冷却開始におけるフェライト相とオーステナイト相の体積分率制御により最終的に得られる焼戻マルテンサイト分率に影響を与える。したがって、所望の材料特性、組織を得るためには、その量は1.5%以上にする必要がある。一方、その量が3.5%を越えるとスポット溶接性が低下したり、Mnの偏析に起因したフェライト相とマルテンサイト相の層状組織が形成され、延性が低下する。したがって、Mn量は1.5〜3.5%、好ましくは1.7〜2.4%とする。
P: Pは固溶強化元素であるが、粒界への偏析により粒界の結合力を低下させ成形性やスポット溶接性を低下させる。そのため、その量は0.05%以下にする必要がある。一方、その量を0.001%未満に低減するには製造コストが著しく増加する。したがって、P量は0.001〜0.05%、好ましくは0.001〜0.02%とする。
S: Sは鋼板中に板状の介在物MnSとして存在し、鋼板の極限変形能を低下させ、伸びフランジ性を低下させる。そのため、その量は0.005%以下にする必要がある。一方、その量を0.0001%未満に低減するには生産性の低下やコストの増加が伴う。したがって、S量は0.0001〜0.005%、好ましくは0.0001〜0.002%とする。
Al: Alは鋼の脱酸剤として有効であり、局部延性を低下させる非金属介在物をスラグ中へ除去する効果もある。また、化成処理性に悪影響を及ぼすSiよりも酸化しやすく、鋼板表面にSiが局在したり、過剰に濃化するのを抑制する効果も有する。さらに、Alはフェライト相中に一部固溶し、フェライト相を強化し、フェライト相と硬質なマルテンサイト相の硬度差を低減して伸びフランジ性の向上にも寄与する。そのため、その量は0.005%以上にする必要である。一方、その量が0.08%を超えると、鋼板表面が過度にAlの不動態膜で覆われて、化成処理性が低下し、耐食性も劣化する。また、溶接性も低下する。したがって、Al量は0.005〜0.08%、好ましくは0.01〜0.05%とする。
N: Nは歪時効を引き起こす不純物元素ではあるが、複合組織鋼板においてはその影響は大きくなく歪時効が問題となることはない。また、Nは窒化物を形成し、スラブの表面割れを抑制する作用を有する。そのため、その量は0.001%以上にする必要がある。一方、その量が0.01%を超えるとスラブ表面割れ抑制の効果は飽和する傾向にある。したがって、N量は0.001〜0.01%、好ましくは0.001〜0.0050%とする。
残部は、Feおよび不可避的不純物である。
本発明の目的を達成するには上記の成分で十分であるが、以下の理由により、Ti:0.001〜0.04%、Nb:0.001〜0.04%、V:0.001〜0.2%のうちから選ばれた少なくとも1種の元素が含有されることが好ましい。すなわち、Tiが0.04%を超えて含有されるとフェライト相中にTiの炭窒化物が析出し、フェライト相の延性を低下させたり、焼鈍中にオーステナイト相へ濃化すべきC量を減少させ、マルテンサイト相の体積率を低下させる。一方、Tiが0.001%以上含有されると結晶粒の微細化により組織が均一化され、延性を向上させる。特に、熱間圧延に先立つスラブ加熱時に粒成長を抑制し、その後の組織の微細化に効果的である。また、Tiは、スラブの冷却時に高温で炭窒化物や硫化物として析出し、比較的低温で起こるAlNの析出やNbやVの炭化物の粒界析出を抑制して、スラブの表面割れを防止する上でも有効な元素である。したがって、Ti量は0.001〜0.04%、より好ましくは0.001〜0.02%とする。NbおよびVは、Tiと同様、0.001%以上含有されるとNbC、VCなどの炭化物として析出し、焼鈍時におけるフェライト相の成長を抑え、組織を微細均一化して伸びフランジ性を著しく向上させるのに有効な元素である。一方、Nbが0.04%を超えて含有されると、また、Vが0.2%を超えて含有されると、析出強化によりYSが上昇し、加工性が低下したり、マルテンサイト相が減少して延性を低下させる。したがって、Nb量は0.001〜0.04%、より好ましくは0.001〜0.02%とし、V量は0.001〜0.2%、より好ましくは0.001〜0.01%とする。
さらに、以下の理由により、Cu:0.01〜1%、Ni:0.01〜1%、Mo:0.01〜1%、Cr:0.01〜1%、B:0.0001〜0.005%のうちから選ばれた少なくとも1種の元素が含有されることが好ましい。すなわち、Cu、Ni、Mo、Crが0.01%以上含有されるとマルテンサイト相の生成が促進されるとともに、マルテンサイト相自体が強化され、また、Bが0.0001%以上含有されると焼入れ性が高くなりマルテンサイト相の生成が促進され、高強度化に寄与する。一方、Cu、Ni、Mo、Crが1%を超えて含有されると、また、Bが0.005%を超えて含有されると、焼入性が高くなり過ぎてフェライト相の生成が抑制されたり、マルテンサイト相が過度に硬化して加工性を低下させる。またコスト的にも不利となる。したがって、Cu量は0.01〜1%、より好ましくは0.01〜0.5%とし、Ni量は0.01〜1%、より好ましくは0.01〜0.5%とし、Mo量は0.01〜1%、より好ましくは0.01〜0.5%とし、Cr量は0.01〜1%、より好ましくは0.01〜0.5%とし、B量は0.0001〜0.005%、より好ましくは0.0001〜0.002%とする。
さらにまた、Caが0.0001〜0.005%、より好ましくは0.0001〜0.002%含有されると、MnSなど硫化物の形状を制御して伸びフランジ性などの延性を向上させる。
なお、Caと同様な効果を有するREMや鋼板表層の結晶を整粒にする作用を有するSbなどを0.0001〜0.1%の範囲内で含有させることもできる。これにより、化成処理性が大きく損なわれることはない。
2)ミクロ組織
上述したように、高延性化とTSが780MPa以上の高強度化を図るには、ミクロ組織をフェライト相と焼戻マルテンサイト相の複合組織とし、かつ焼戻マルテンサイト相の体積率をコントロールする必要がある。焼戻マルテンサイト相は、オーステナイト相をマルテンサイト変態温度Ms点以下まで水焼入れなどにより急冷して得られる低温変態相であるマルテンサイト相を再加熱して得られる組織であり、フェライト相より硬質なため強度に寄与する。780MPa以上のTSを得るためには、この焼戻マルテンサイト相の体積率を20%以上にする必要がある。一方、焼戻マルテンサイト相の体積率が70%を超えると軟質なフェライト相の体積率が低下して過度に高強度化され、TS-Elバランスが低下する。したがって、焼戻マルテンサイト相の体積率は20〜70%、好ましくは30〜65%とする。
ここで、焼戻マルテンサイト相の体積率は、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面の板厚1/4の位置を光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡により倍率1000で観察し、100mm四方の領域に存在する焼戻マルテンサイト相の占有面積率を画像処理によって求め、体積率とした。
3)[Si(0)/Si(0.1)]
上述したように、優れた化成処理性を図るには、鋼板表面のSi濃度Si(0)と鋼板表面から0.1mm深さのところのSi濃度Si(0.1)の比[Si(0)/Si(0.1)]およびその標準偏差をコントロールする必要がある。Siは易酸化元素であり、SiO2として過度に鋼板表面に存在すると鋼板表面に絶縁体が点在することになり、塗装前処理段階である表面調整時にTiコロイドや帯電したリン酸塩微粒子の吸着を阻害する。また、鋼板表面のSi酸化物は、電着塗装の下地処理として行われるリン酸亜鉛などによる化成処理皮膜の形成初期に、鋼板のエッチング性を阻害する。さらに、Si酸化物が局所的に高濃度で存在している場合には、エッチングにムラが生じ、高Si濃度の場所では化成結晶の形成が阻害される。すなわち化成処理皮膜が鋼板表面に十分に均一微細かつ緻密に形成されず、電着塗装後に塩温水のような劣悪な環境下に曝されると塗膜の2次密着性が著しく劣化する。そこで、鋼板表面のSi濃度を最適化するために、上記の比[Si(0)/Si(0.1)]と化成処理性の関係を検討したところ、[Si(0)/Si(0.1)]を1.0〜1.6、好ましくは1.0〜1.4とすれば優れた化成処理性が得られることがわかった。この比が1.6を超えると化成処理性が著しく低下する。なお、この比が1.0のとき、すなわち表面のSi濃度と0.1mm深さのところのSi濃度が同じとなり、優れた化成処理性が得られる。
鋼板表面のSi濃度に加えて、Siの分布も極めて重要である。これは、同じSi濃度であっても、高Si濃度の領域が多く存在する場合もあれば、Si濃度が均一である場合もあるからである。そこで、[Si(0)/Si(0.1)]の標準偏差と塗装後耐食性の関係について検討したところ、この標準偏差が0.50を超えると局所的にSi濃度の高い領域が存在して塗装後耐食性が急激に劣化する傾向にあることがわかった。したがって、この標準偏差は0.50以下、好ましくは0.30以下とする。
Siが平均的に存在していれば、エッチング性は悪いが、均一に反応が進み、より均一微細で緻密な化成結晶が生成する。それゆえ、この標準偏差が小さい、すなわち鋼板表面でSi濃度が均一であればあるほど好ましい。
ここで、Si(0)、Si(0.1)は次のようにして測定した。すなわち、日本電子(株)社製のEPMA、JXA8600MXを用い、分析エリア:200μm×200μm、電子線加速エネルギー:15kV、電流:1.2×10-7A、分析時間:50msec/pointの条件で、Si元素分布を調査し、Siの分布を強度レベルに応じてSiカウント0(MIN)〜500(MAX)のレンジで測定した。そして、鋼板表面のSiカウントの平均をSi(0)とし、鋼板表面から0.1mm深さまで研削した面のSiカウントの平均をSi(0.1)とした。なお、Si(0)とSi(0.1)の比の標準偏差は、Si(0)に対するSiカウントの分布から求めた。
4)製造方法
本発明の超高強度冷延鋼板は、例えば、上記した成分組成の鋼スラブを熱間圧延後、冷間圧延して鋼板とし、この鋼板を、連続焼鈍炉にて、700〜900℃の温度に加熱後、550〜800℃の温度から500℃/秒以上の冷却速度で急冷し、150〜500℃の温度で100〜1400秒間再加熱し、引き続き、0〜4のpHで、10〜100℃の温度で5〜150秒間酸洗処理後、10〜14のpHで、10〜100℃の温度で2〜50秒間アルカリ処理を行い、0.2〜1.5%の伸長率で調質圧延を行うことにより製造できる。
鋼スラブは連続鋳造または造塊と分塊圧延により製造され、製造後のスラブは冷却後再加熱されて、あるいはそのまま熱間圧延され熱延板となる。熱延板は冷却し巻取られ、酸洗、冷間圧延されて所望の板厚の冷延板となる。この時、熱間圧延から冷間圧延までの条件は特に限定されないが、熱間圧延における仕上温度は、熱延板の組織を均一化し、曲げ性などの加工性を向上させるため、850℃以上が望ましく、熱間圧延後の巻取温度は、冷間変形抵抗を低減して冷間圧延性を向上させるため450℃〜650℃が望ましく、冷間圧延率は、フェライト相の再結晶を促進させて延性を向上させるため、30%以上が望ましい。次いで、冷間圧延後の冷延板は連続焼鈍炉で焼鈍されるが、以下に示す連続焼鈍条件は、本発明に必要な鋼板のミクロ組織や鋼板表面のSi濃度を達成する上で、極めて重要である。
4-1)焼鈍温度:焼鈍温度が700℃より低いと、冷間圧延により展伸された組織からバンド状の不均一な組織が形成され、伸びフランジ性や曲げ性が劣化する。また、加熱時にオーステナイト相がほとんど存在しないためマルテンサイト相が形成されず、高強度化、高延性化を図れない。一方、焼鈍温度が900℃より高いと、結晶粒が過度に粗大化するとともに、フェライト相の生成量も減少して、伸びフランジ性などの延性が低下する。したがって、焼鈍温度は700〜900℃とする。
4-2)急冷開始温度:上記の焼鈍温度で加熱後の鋼板は、高延性化と高強度化を図るために、放冷後、所望の急冷開始温度から急冷されて、フェライト相とマルテンサイト相の複合組織が形成される。急冷開始温度が550℃未満では、マルテンサイト相の体積率が少なく、780MPa以上のTSが得られない。一方、急冷開始温度が800℃を越えるとマルテンサイト相の体積率が増大し、延性の低下を招く。したがって、急冷開始温度は550〜800℃とする。
4-3)急冷時の冷却速度:本発明ではフェライト安定化元素であるSiが添加されているため、冷却速度が500℃より低いとフェライト相が過度に生成し、マルテンサイト相の体積率が低下し、780MPa以上のTSが得られない。したがって、急冷時の冷却速度は500℃/秒以上、好ましくは1000℃/秒超えとする。なお、この冷却速度は、冷却開始温度から100℃までの平均冷却速度である。また、冷却は、水冷が好ましいが、放冷、ガス冷却、ミスト冷却、ロール冷却などを用いて組み合わせて冷却を行うことも可能である。
4-4)再加熱条件:再加熱温度が150℃より低いと、マルテンサイト相が十分に焼戻されずTS-Elバランスが低下する。また、硬質相が多くなるので、フェライト相との硬度差も大きくなり、伸びフランジ性や曲げ性が劣化する。一方、再加熱温度が500℃を越えると、焼戻が過度に急激に進行してマルテンサイト相がフェライト相と炭化物に分解し、軟化するため780MPa以上のTSが得られない。したがって、再加熱温度は150〜500℃、好ましくは200〜400℃とする。再加熱時間が100秒に満たないと、マルテンサイト相の焼戻が不十分となり、過度に高強度化し、TS-Elバランスや伸びフランジ性の低下を招く。一方、再加熱時間が1400秒を越えるとその効果は飽和する傾向にあるばかりではなく、焼戻が過度に進行し780MPa以上のTSが得られない。したがって、再加熱時間は100〜1400秒、好ましくは300〜1000秒とする。なお、再加熱後室温までの冷却は、空冷、炉冷却、ガス冷却、ミスト冷却、水冷などで行える。
4-5)酸洗処理条件:酸洗処理の目的は、鋼板表層に生成したFe系酸化物いわゆるスケールを除去して鋼板表面を清浄にすること、塗装前処理段階である表面調整時にTiコロイドや帯電したリン酸塩微粒子の吸着を阻害したり、化成処理の薬液に浸漬時に化成結晶の核生成を阻害するSiとMnの複合酸化物などを除去することである。そのためには、4以下のpHで、10℃以上の温度で5秒以上の間酸洗処理を行う必要がある。一方、処理温度が100℃を超えたり、処理時間が150秒を超えると、その効果は飽和するだけでなく、過酸洗となり鋼板表面に凹凸が生じるため化成電着塗装後の耐食性が低下する。なお、pHが0に近ければ近いほど反応は早く起こる。したがって、酸洗処理は、0〜4のpHで、10〜100℃の温度で5〜150秒間の処理条件で行う。酸洗は、塩酸、硫酸、硝塩酸などで行うのが好ましい。
4-6)アルカリ処理条件:アルカリ処理は、酸洗後に残っている難酸溶性のSiO2などを除去するために行われる。pH-電位図によると、SiO2は0〜4のpH領域では不活性であり、酸洗処理では除去されない。そのため、従来の技術では、SiO2の上にNiめっきなどを施して化成塗装後の耐食性を確保している。本発明者らは、酸洗後にアルカリ処理を行うことにより熱延または焼鈍中に生成し、酸洗後に残っている難酸溶性のSiO2を完全に除去できることを見出した。そのためには、10以上のpHで、10℃以上の温度で2秒以上の間アルカリ処理を行う必要がある。一方、処理温度が100℃を超えたり、処理時間が50秒を超えると、その効果は飽和する。なお、pHが14に近ければ近いほど反応は早く起こる。したがって、アルカリ処理は、10〜14のpHで、10〜100℃の温度で2〜50秒間の処理条件で行う。アルカリ薬液種は問わないが、苛性ソーダ、縮合リン酸塩系などが好ましい。
4-7)調質圧延の伸長率:一般に、調質圧延は降伏伸びなどを除去する目的で実施されるが、化成処理性にも影響を及ぼす。調質圧延の伸長率が0.2%未満だと、前処理段階である表面調整時のTiコロイドや帯電したリン酸塩微粒子の吸着のサイトの一つとなる格子欠陥数が少なく、その後の化成処理工程において微細緻密な化成結晶の生成が困難となる。また、鋼板表面には凹凸が残り、均一に化成結晶を生成させることが難しくなる。一方、伸長率を1.5%以上にすると、こうした効果が飽和する傾向にあるとともに、Elの低下が認められる。したがって、調質圧延の伸長率は0.2〜1.5%とする。
表1に示す成分を有する鋼A〜Kのスラブを、1250℃に加熱後、880℃の仕上温度で熱間圧延し、620℃の巻取温度で巻取り、50%の冷延圧下率で冷間圧延を行い、板厚1.8mmの鋼板とした。次いで、冷間圧延された鋼板に対し、表2に示す条件で連続焼鈍、酸洗処理、アルカリ処理、および調質圧延を行い冷延鋼板1〜18を作製した。そして、上記の方法によりミクロ組織や[Si(0)/Si(0.1)]を調査するとともに、下記の方法により引張特性、伸びフランジ性、化成処理性および化成電着塗装後の耐食性についても検討を行った。また、フェライト平均結晶粒径をJIS Z 0522に準拠して測定した。
引張特性:鋼板の圧延方向と90°の方向を長手方向とするJIS Z 2201の5号試験片を用い、JIS Z 2241準拠した引張試験を行いTSとElを測定した。ここで、TS×El≧17500MPa・%のとき優れたTS-Elバランスであると判定した。
伸びフランジ性:日本鉄鋼連盟規格JFS T1001に基づき、鋼板に直径10mmの穴を打抜き、60°の円錐ポンチを用いてこの穴を拡げ、亀裂が板厚貫通したときの穴径d(mm)を測定し、穴拡げ率λ=[(d-10)/10]×100を求めた。なお、同様な試験を3回行い、その平均値で評価した。ここで、TS×λ≧70000MPa・%のとき優れたTS-λバランスであると判定した。
化成処理性および化成電着塗装後の耐食性:日本ペイント(株)社製の表面調整薬品(5N-10)と化成処理液(SD2800)を用いて、75mm×150mmの試験片にリン酸亜鉛による化成処理後、厚さ25μmの電着塗装(塗料:V-50ブラック)を施し、カッターナイフで長さ100mmの2本の切り込みを入れ、50℃の5%NaCl溶液中に240時間浸漬後、粘着テープを切り込み上に貼って剥がし、塗膜の剥離巾を測定した。そして、化成結晶粒径が2〜10μm、皮膜重量が1.8〜2.6g/m2、最大剥離巾が2.5mm以下のとき、化成処理性および電着塗装後の耐食性が良好と判定した。ここで、皮膜重量は化成処理後に化成皮膜を溶解して、溶解前後の重量測定により求めた。また、化成結晶粒径は、SEMにより1000倍で組織観察し、切断法で測定した。
結果を表3に示す。本発明例である鋼板1、2、10〜17は、TS×El≧17500MPa・%、TS×λ≧70000MPa・%、最大剥離巾が2.5mm以下となっており、高延性で、化成処理性に優れるTSが780〜1180MPaの超高強度冷延鋼板であることがわかる。一方、比較例である鋼板3、4、5、6、7、8、9および18は、[Si(0)/Si(0.1)]およびその標準偏差が本発明範囲外となっており、化成処理性および塗装後の耐食性に劣っている。
Figure 0005637530
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本発明の超高強度冷延鋼板は、自動車部品に限らず、建築材料や家電製品の分野で厳しい曲げ加工や化成処理性が必要とされる部材にも好適である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.2%、Si:0.5〜2.0%、Mn:1.5〜3.5%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.005%、Al:0.005〜0.08%、N:0.001〜0.01%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相と焼戻マルテンサイト相からなる複合組織を有し、前記焼戻マルテンサイト相の体積率が20〜70%であり、かつ鋼板表面のSi濃度Si(0)と前記鋼板表面から0.1mm深さのところのSi濃度Si(0.1)との比[Si(0)/Si(0.1)]が1.0〜1.6で、前記比の標準偏差が0.50以下であることを特徴とする高延性で、化成処理性に優れる780MPa以上の引張強度を有する超高強度冷延鋼板。
  2. さらに、質量%で、Ti:0.001〜0.04%、Nb:0.001〜0.04%、V:0.001〜0.2%のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の高延性で、化成処理性に優れる780MPa以上の引張強度を有する超高強度冷延鋼板。
  3. さらに、質量%で、Cu:0.01〜1%、Ni:0.01〜1%、Mo:0.01〜1%、Cr:0.01〜1%、B:0.0001〜0.005%のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高延性で、化成処理性に優れる780MPa以上の引張強度を有する超高強度冷延鋼板。
  4. さらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.005%を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の高延性で、化成処理性に優れる780MPa以上の引張強度を有する超高強度冷延鋼板。
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