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JP5697128B2 - 胎児期及び乳児期等の哺乳動物へのCoQ10の新規用途 - Google Patents

胎児期及び乳児期等の哺乳動物へのCoQ10の新規用途 Download PDF

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Description

本発明は、哺乳動物の胎児や乳児における抗酸化ストレス剤や、哺乳動物の生産性向上剤や、哺乳動物の学習能力向上剤に関する。
コエンザイムQ10(CoQ10)は、ミトコンドリアにおける電子伝達系の補酵素として機能し、ビタミンEのような抗酸化性を有している他、ATPの産生にも重要な役割を果たしている。CoQ10は、ヒト等の哺乳動物の体内でも生成されるが、加齢に伴ってその生成量が低下することが知られている。しかし、CoQ10は、魚介類や肉類等の一部の食品にわずかに含まれているだけである。そこで、近年では、CoQ10のサプリメント等が広く市販されている。
CoQ10は、従来から、医薬品として、うっ血性心不全などの症状改善を目的とする代謝性強心薬等に使用されてきた。近年の研究により、CoQ10には、抗酸化作用に由来する心筋保護作用、発ガン予防、老化防止作用、血中LDL酸化抑制が認められるとの報告がなされている他、血圧上昇抑制、虚血心筋での酸素利用効率の改善、心筋ミトコンドリアのATP合成賦活、心機能改善等が認められるとの報告がなされている(特許文献1参照)。
他方、近年未熟児として出生する新生児の割合が高まってきている。昭和60年頃は、未熟児の割合は6%以下であったが、平成20年では10%弱にまで増加している。これは、不妊治療、未熟児治療等の医療の進歩の他、女性の喫煙率の増加、高齢出産の増加、ダイエット等の偏った食生活の増加が要因と考えられている。未熟児とは、妊娠37週未満の出生児であって、胎外生活に適応するだけの成熟度を備えていない出生児をいう。未熟児は発達が十分ではなく、自分の体温を保つことができなかったり、呼吸が十分に確立できなかったりするため、保育器に収容するなどして、温度管理すると共に、酸素療法を行うことが多い。しかし、酸素療法のコストは非常に高い上、酸素療法を続けていると、未熟児網膜症や呼吸窮迫症候群や気管支肺異形成症(BPD)などの弊害が生じる場合があった。これらの弊害を予防するため、未熟児や妊婦に抗酸化剤を投与することが試みられている。しかし、非特許文献1には、未熟児にビタミンE等の抗酸化剤を投与することにより、未熟児網膜症が改善する証拠はないとの記載や、未熟児へのビタミンEの投与は、脳室内出血のリスクを減少させるものの、敗血症のリスクを高めるので、利益をリスクが上回るとの記載がなされている。さらに、未熟児へのビタミンE投与は、神経細胞の細胞膜へのビタミンEの蓄積を招き、神経障害や生殖障害を引き起こすことが知られている。また、非特許文献2には、ビタミンE、ビタミンCやβカロチン等の抗酸化剤では、未熟児の様々な問題を改善することができないことが記載されている。
一方、ヒト以外の哺乳動物のうち、特に家畜動物では、その生産性が重要である。生産性を低下させる重要な要素としては、死産等による母動物の出産数の低下、離乳期までの子動物の死亡数の増加、母動物の出産可能回数の低下などが挙げられる。子動物の発達が未熟であると、母動物の出産数の低下や、離乳期までの子動物の死亡数の増加につながる。特に、ブタの場合は、1回の出産で平均12匹もの子ブタを産むため、個々の子ブタは未熟な状態で産まれてくることが多く、そのため、ブタは、家畜の中でも、離乳期までの死亡率が特に高い。子ブタの死亡率を低下させることは、生産性の著しい向上につながることから、子ブタの死亡率を低下させる試みがこれまでにも行われてきた。例えば特許文献2には、バチラス属等の細菌の殺菌処理された菌体などを含有する飼料組成物を、妊娠中の母豚に給餌することを特徴とする母豚用飼料組成物が記載されている。
また、特許文献3には、CoQ10等を含有するラジカル生成抑制剤が記載されており、該ラジカル生成抑制剤を家畜等の飼料に含有させることが開示されている。
しかし、CoQ10が、ヒトを含む哺乳動物の未熟児等の乳児における様々な問題を改善し得ることや、哺乳動物の生産性を向上し得ること等はこれまでに知られていなかった。
特開2007−209251号公報 特開平5−336896号公報 特開2006−188672号公報
Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition (2007) 45: S178-S182
本発明の課題は、哺乳動物の胎児や乳児における抗酸化ストレス剤、哺乳動物の生産性向上剤、哺乳動物の学習能力向上剤を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を行い、以下の1.〜3.の知見を見いだすことによって、本発明を完成するに至った。
1.妊娠期の母哺乳動物、及び、その母哺乳動物から早産で産まれた乳児期の子哺乳動物にCoQ10を投与すると、その子哺乳動物を高酸素に暴露したときの肺等の組織の酸素傷害を軽減し得ること。しかも、CoQ10は生体内で合成される成分であり、分解も含めて代謝調節されているので、乳児に投与しても、ビタミンE等の他の抗酸化剤のように副作用(神経細胞の細胞膜への蓄積など)を生じず安全であること。
2.妊娠期の母哺乳動物にCoQ10を投与すると、出産数が向上すること。
3.妊娠期及び授乳期の母哺乳動物、並びに、発育初期の子哺乳動物にCoQ10を投与すると、その子哺乳動物の学習能力(知能)が向上すること。
すなわち、本発明は、(1)CoQ10を有効成分とする哺乳動物の胎児又は乳児における抗酸化ストレス剤や、(2)乳児が未熟児である上記(1)に記載の抗酸化ストレス剤に関する。
また、本発明は、(3)CoQ10を有効成分とする非ヒト哺乳動物の生産性向上剤や(4)妊娠期及び/又は授乳期の母哺乳動物、並びに/あるいは、胎児期及び/又は乳児期の子哺乳動物に投与する上記(3)に記載の哺乳動物の生産性向上剤に関する。
さらに、本発明は、(5)CoQ10を有効成分とする哺乳動物の学習能力向上剤や、(6)妊娠期及び/又は授乳期の母哺乳動物、並びに/あるいは、胎児期及び/又は乳児期の子哺乳動物に投与する上記(5)に記載の哺乳動物の学習能力向上剤に関する。
本発明によれば、哺乳動物の未熟児における未熟児網膜症、呼吸窮迫症候群などの、酸素療法による弊害の低減等の、哺乳動物の胎児又は乳児の酸化ストレスの低減や、母哺乳動物の出産数の増加(死産の減少)、子哺乳動物の離乳期までの死亡率の低減、母哺乳動物の出産可能回数の増加などの、哺乳動物の生産性の向上や、哺乳動物の学習能力の向上を達成することができる。
実施例1の酸化ストレスアッセイにおける、肺組織タンパク質中の還元型グルタチオン(GSH)量(図1左のグラフ)及び酸化型グルタチオン(GSSG)量(図1右のグラフ)を示す図である。“Room air”はAグループを示し、“Room air+CoQ10”はBグループを示し、“Hyperoxia”はCグループを示し、“Hyperoxia+CoQ10”はDグループを示す。 実施例1の酸化ストレスアッセイにおける、肺胞表面液中のGSH濃度(図2左のグラフ)及びGSSG濃度(図2右のグラフ)を示す図である。“Room air”はAグループを示し、“Room air+CoQ10”はBグループを示し、“Hyperoxia”はCグループを示し、“Hyperoxia+CoQ10”はDグループを示す。 実施例1の酸化ストレスアッセイにおける、肺の湿重量/乾燥重量比を示す図である。“control”はAグループを示し、“Room air+CoQ10”はBグループを示し、“Hyperoxia”はCグループを示し、“Hyperoxia+CoQ10”はDグループを示す。 実施例2の酸化レベルアッセイにおける、血漿に関する結果を示す図である。 実施例2の酸化レベルアッセイにおける、肺組織に関する結果を示す図である。
1.本発明の哺乳動物の胎児や乳児における抗酸化ストレス剤
本発明の哺乳動物の胎児や乳児における抗酸化ストレス剤(以下、「本発明の抗酸化ストレス剤」と表示する。)は、哺乳動物の胎児や乳児に投与される抗酸化ストレス剤であり、CoQ10を有効成分とする限り特に制限されない。本発明の抗酸化ストレス剤は、抗酸化ストレス効果を有しているので、哺乳動物の胎児又は乳児の酸化ストレスを低減させることができる。しかも、CoQ10は生体内で合成される成分であり、分解も含めて代謝調節されているので、乳児に投与しても、ビタミンE等の他の抗酸化剤のように副作用(神経細胞の細胞膜への蓄積など)を生じず安全であるという有利な点がある。上記の抗酸化ストレス剤に関する発明は、CoQ10を哺乳動物の胎児又は乳児における抗酸化ストレス剤調製に使用する方法や、CoQ10を有効成分とする抗酸化ストレス剤を哺乳動物の胎児又は乳児に投与する方法の発明と範疇を同じくする。
本明細書における「CoQ10」とは、ユビキノン10、補酵素Qとも呼ばれる脂溶性成分を意味し、酸化型CoQ10(ユビキノン10)の他、還元型CoQ10(ユビキノール10)をも含む。本発明に用いるCoQ10としては、CoQ10産生微生物(好ましくはCoQ10産生酵母)の菌体抽出品や、工業的合成品などの市販のものの他にも、CoQ10産生微生物(好ましくはCoQ10産生酵母)の菌体自体等のCoQ10含有物を利用することができる。
本発明の抗酸化ストレス剤に含まれるCoQ10の量としては、特に制限されないが、本発明の抗酸化ストレス剤の全量に対して、例えば0.0001〜50質量%、より好ましくは0.001〜20質量%、さらに好ましくは0.002〜10質量%であることを好適に例示することができる。
本発明の抗酸化ストレス剤における「哺乳動物」としては、特に制限されないが、ヒト、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、サル、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でも、ヒトを特に好適に例示することができる。
本明細書における「胎児」とは、母哺乳動物の子宮内で成長途上にある胚や胎児を意味し、具体的には、着床した受精卵から出生する直前の胎児までを含む。また、本明細書における「乳児」とは、出生してから離乳期までの哺乳動物を意味するが、便宜上、離乳後の一定期間内の哺乳動物を含み、例えばヒトの場合は、出生から1年間、好適には6ヶ月間、より好適には3ヶ月間、さらに好適には1ヶ月間、より好適には2週間経過するまでのヒトや、離乳から3ヶ月間、さらに好適には1ヶ月間、より好適には2週間経過するまでのヒトを含み、ブタの場合は、出生から3週間、より好適には2週間、さらに好適には1週間経過するまでのブタや、離乳から3週間、さらに好適には2週間、より好適には1週間経過するまでのブタを含む。上記「乳児」の中でも未熟児は特に本発明の効果を有利に享受することができる。本明細書における「未熟児」とは、正期産より早期に出生し、かつ、胎外生活に十分適応するだけの成熟度を備えていない哺乳動物を意味する。ヒトの未熟児としては、妊娠37週未満の出生児であって、かつ、胎外生活に十分適応するだけの成熟度を備えていない児童を好適に例示することができ、この場合の「胎外生活に十分適応するだけの成熟度を備えていない児童」としては、自分の体温を保つことができないため、保育器等にて温度管理することが必要な児童や、自立呼吸では十分な酸素を吸入できないため、保育器や吸入器にて酸素療法を行うことが必要な児童を好適に例示することができる。また、ヒト以外の哺乳動物の乳児の好適な例としては、離乳期までの死亡率が15%以上、好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上である乳児、例えばブタの乳児を挙げることができる。
本明細書における「抗酸化ストレス効果」とは、哺乳動物の胎児又は乳児の酸化ストレスを低減させる効果を意味し、例えば、その胎児や乳児の血漿、肺胞表面液、肺組織、心臓組織、肝臓組織及び腎臓組織から選択される液体又は組織に含まれるGSSG含量に対するGSH含量の比率(以下、単に「GSH/GSSG比」とも表示する。)が酸化ストレスによって低下するのを抑制する効果や、酸化ストレスによって、その胎児や乳児の肺に浮腫が発生又は増加することを抑制する効果(すなわち、その胎児や乳児の肺の乾燥重量に対する肺の湿重量の比率(肺の湿重量/乾燥重量比)が酸化ストレスによって上昇するのを抑制する効果)や、その胎児や乳児の血漿、肺胞表面液、肺組織、心臓組織、肝臓組織及び腎臓組織から選択される液体又は組織に含まれるCoQ10の酸化度(=酸化型CoQ10濃度/(酸化型CoQ10濃度+還元型CoQ10濃度))が酸化ストレスによって低下するのを抑制する効果を好適に例示することができる。上記の液体や組織中のGSSG含量や、GSH含量や、酸化型CoQ10濃度や、還元型CoQ10濃度は、常法であるHPLC等により測定することができる。なお、GSSG含量やGSH含量における含量としては、重量であってもよいし、濃度であってもよい。
本発明の抗酸化ストレス剤における抗酸化ストレス効果の好適な程度としては、本発明の抗酸化ストレス剤を早産の哺乳動物(好適には、妊娠期間29日で出生した早産のウサギ)に継続的に腹腔内投与(80μl/h)しながら、該早産哺乳動物を湿度75%の高酸素(95%O)室内に24時間置いた後の肺組織におけるGSH/GSSG比が、本発明の抗酸化ストレス剤を腹腔内投与しなかったこと以外は前述の早産哺乳動物と同様の早産哺乳動物の肺組織におけるGSH/GSSG比と比較して、割合として25%以上、好適には50%以上、より好適には75%以上、さらに好適には100%以上高いこと;や、本発明の抗酸化ストレス剤を早産の哺乳動物(好適には、妊娠期間29日で出生した早産のウサギ)に継続的に腹腔内投与(80μl/h)しながら、該早産哺乳動物を湿度75%の高酸素(95%O)室内に24時間置いた後の肺胞表面液におけるGSH/GSSG比が、本発明の抗酸化ストレス剤を腹腔内投与しなかったこと以外は前述の早産哺乳動物と同様の早産哺乳動物の肺胞表面液におけるGSH/GSSG比と比較して、割合として25%以上、好適には50%以上、より好適には100%以上、さらに好適には200%以上高いこと;や、本発明の抗酸化ストレス剤を早産の哺乳動物(好適には、妊娠期間29日で出生した早産のウサギ)に継続的に腹腔内投与(80μl/h)しながら、該早産哺乳動物を湿度75%の高酸素(95%O)室内に24時間置いた後の肺の湿重量/乾燥重量比が、本発明の抗酸化ストレス剤を腹腔内投与しなかったこと以外は前述の早産哺乳動物と同様の早産哺乳動物の肺の湿重量/乾燥重量比と比較して、割合として10%以上、好適には15%以上、より好適には20%以上、さらに好適には30%以上低いこと;や、本発明の抗酸化ストレス剤を毎日経口投与した妊娠中の哺乳動物(好適にはウサギ)から、正期産より早い時期(ウサギの場合は好適には妊娠期間27日間の時期)に帝王切開で取り出した子哺乳動物の血漿、肺胞表面液、肺組織、心臓組織、肝臓組織及び腎臓組織から選択される液体又は組織に含まれるCoQ10の酸化度(=酸化型CoQ10濃度/(酸化型CoQ10濃度+還元型CoQ10濃度))が、本発明の抗酸化ストレス剤を妊娠中の哺乳動物に経口投与しなかったこと以外は前述の子哺乳動物と同様の子哺乳動物の血漿、肺胞表面液、肺組織、心臓組織、肝臓組織及び腎臓組織から選択される液体又は組織に含まれるCoQ10の酸化度と比較して、割合として15%以上、好適には25%以上、より好適には35%以上、さらに好適には50%以上低いこと;を例示することができる。
本発明の抗酸化ストレス剤に含有されるCoQ10は、常法によって適宜の製剤とすることができる。製剤の剤型としては、粉剤などの固形製剤、溶液剤などの液剤を例示することができるが、CoQ10をより安定的に保存し得ることから、固形製剤を好適に例示することができる。本発明におけるCoQ10を製剤とする場合には、製剤上の必要に応じて、適宜の担体、例えば、賦形剤、結合剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などの任意成分を配合することができる。
本発明の抗酸化ストレス剤の投与方法としては、所望の抗酸化ストレス効果が得られる限り特に制限されず、静脈内投与、経口投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与等を例示することができる。また、本発明の抗酸化ストレス剤は、妊娠期及び/又は授乳期の母哺乳動物、並びに/あるいは、胎児期及び/又は乳児期の子哺乳動物に投与することを好適に例示することができる。すなわち、胎児や乳児に直接投与してもよいし、妊娠している母動物や授乳中の母動物に投与することにより、間接的に投与してもよい。なぜならば、本発明の抗酸化ストレス剤中のCoQ10は、胎盤や母乳を通して胎児や乳児に移行するからである。また、本発明の抗酸化ストレス剤の投与量や投与回数や投与濃度は、当業者であれば、投与対象の症状や、投与方法や、投与対象の体重等に応じて、容易に最適化することができるが、注射投与の場合は、本発明におけるCoQ10換算で、一日あたり、例えば、0.01μg/kg〜1000mg/kg、好ましくは0.1μg/kg〜500mg/kg、さらに好ましくは0.5mg/kg〜5mg/kgを投与することができ、経口投与の場合は、本発明におけるCoQ10換算で、一日あたり、例えば、0.1μg/kg〜10g/kg、好ましくは1μg/kg〜5g/kg、より好ましくは0.5mg/kg〜5mg/kgを投与することができる。
本発明の抗酸化ストレス剤は、哺乳動物の胎児や乳児における酸化ストレスに起因する疾患や傷害を、予防又は改善することができる。かかる疾患や傷害としては、酸素療法による弊害を好適に例示することができ、中でも、未熟児網膜症、呼吸窮迫症候群、気管支肺異形成症(BPD)(慢性肺疾患ともいう)等をより好適に例示することができ、中でも、未熟児網膜症、呼吸窮迫症候群、気管支肺異形成症(BPD)をさらに好適に例示することができる。
2.本発明の哺乳動物の生産性向上剤
本発明の非ヒト哺乳動物の生産性向上剤(以下、「本発明の生産性向上剤」と表示する。)は、CoQ10を有効成分とする限り特に制限されない。本発明の生産性向上剤は、非ヒト哺乳動物の生産性向上効果を有しているので、非ヒト哺乳動物の生産性を向上させることができる。上記の非ヒト哺乳動物の生産性向上剤の発明は、CoQ10を非ヒト哺乳動物の生産性向上剤製造に使用する方法や、CoQ10を有効成分とする生産性向上剤を非ヒト哺乳動物に投与する方法の発明と範疇を同じくする。
本発明の生産性向上剤に含まれるCoQ10の量の例や好適な例は、前述の本発明の抗酸化ストレス剤におけるCoQ10の量の例や好適な例と同様であるが、本発明の生産性向上剤は飼料に添加して使用することができる。
本発明の生産性向上剤における「非ヒト哺乳動物」としては、特に制限されないが、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、サル、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ等の非ヒト哺乳動物を好適に例示することができ、中でも、本発明の生産性向上剤によるメリットをより多く享受し得る観点から、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマをより好適に例示することができ、中でも、ブタを特に好適に例示することができる。
本明細書における「非ヒト哺乳動物の生産性向上効果」としては、非ヒト哺乳動物の酸化ストレスを低減させることによって向上する生産性の向上効果を好適に例示することができ、中でも、母非ヒト哺乳動物の出産数の増加(死産の減少)効果、子非ヒト哺乳動物の離乳期までの死亡率の低減効果、母非ヒト哺乳動物の出産可能回数の増加効果、母非ヒト哺乳動物の出産間の期間の短縮効果を特に好適に例示することができる。出産は子非ヒト哺乳動物にも、母非ヒト哺乳動物にも酸化ストレスを与えるため、その酸化ストレスを低減させることによって、前述の各効果が得られる。
前述の「母非ヒト哺乳動物の出産数の増加効果」とは、母非ヒト哺乳動物が出産1回当たりに出産する、生存している子非ヒト哺乳動物の数を、コントロール母非ヒト哺乳動物と比較して、増加させる効果を意味し、前述の「子非ヒト哺乳動物の離乳期までの死亡率の低減効果」とは、出生した子非ヒト哺乳動物の数に対する、離乳期まで生存している子非ヒト哺乳動物の数の比率(以下、単に「離乳率」とも表示する。)を、コントロール母非ヒト哺乳動物と比較して、低減させる効果を意味し、前述の「母非ヒト哺乳動物の出産可能回数の増加効果」とは、特定の母非ヒト哺乳動物が一生涯に出産し得る回数を、コントロール母非ヒト哺乳動物と比較して、増加させる効果を意味し、前述の「母非ヒト哺乳動物の出産間の期間の短縮効果」とは、母非ヒト哺乳動物が出産してから、該母非ヒト哺乳動物が次の出産を行うまでの期間を、コントロール母非ヒト哺乳動物と比較して、短縮する効果を意味するが、より好適には、母非ヒト哺乳動物が出産してから、該母非ヒト哺乳動物が次に妊娠するまでの期間を、コントロール母非ヒト哺乳動物と比較して、短縮する効果を含む。なお、上記のコントロール母非ヒト哺乳動物としては、本発明の生産性向上剤を投与していない母非ヒト哺乳動物を意味する。
本発明の生産性向上剤における生産性向上効果の好適な程度としては、本発明の生産性向上剤を出産まで毎日投与した妊娠期の母非ヒト哺乳動物が出産する、生存している子非ヒト哺乳動物の数が、本発明の生産性向上剤を投与しなかったこと以外は前述の母非ヒト哺乳動物と同様の母非ヒト哺乳動物が出産する、生存している子非ヒト哺乳動物の数と比較して、割合として、3%以上、より好適には5%以上、さらに好適には7%以上、より好適には9%以上、さらに好適には12%以上高いこと;や、本発明の生産性向上剤を、胎児期の子非ヒト哺乳動物(妊娠期の母哺乳動物)、及び、乳児期の子非ヒト哺乳動物(授乳期の母非ヒト哺乳動物)に投与した場合の離乳率が、本発明の生産性向上剤を投与しなかったこと以外は同様の場合の離乳率と比較して、割合として、3%以上、より好適には5%以上、さらに好適には7%以上、より好適には9%以上、さらに好適には12%以上高いこと;や、本発明の生産性向上剤を母非ヒト哺乳動物に投与した場合の、該母非ヒト哺乳動物が一生涯に出産する回数が、本発明の生産性向上剤を投与しなかったこと以外は同様の母非ヒト哺乳動物が一生涯に出産する回数と比較して、割合として、3%以上、より好適には5%以上、さらに好適には7%以上、より好適には9%以上、さらに好適には12%以上高いこと;や、本発明の生産性向上剤を母非ヒト哺乳動物に投与した場合の、該母非ヒト哺乳動物が出産してから、次の出産を行うまでの期間が、本発明の生産性向上剤を投与しなかったこと以外は同様の母非ヒト哺乳動物のその期間と比較して、割合として、3%以上、より好適には5%以上、さらに好適には7%以上、より好適には9%以上、さらに好適には12%以上短いこと;を例示することができる。
本発明の生産性向上剤の製剤化の方法や、投与方法や、投与量としては、前述の本発明の抗酸化ストレス剤と同様の方法や量を例示することができるが、妊娠期及び/又は授乳期の母非ヒト哺乳動物、並びに/あるいは、胎児期及び/又は乳児期の子非ヒト哺乳動物に投与することを好適に例示することができ、より簡便であることから、妊娠期や授乳期の母非ヒト哺乳動物に投与し、授乳期には該非ヒト哺乳動物から子非ヒト哺乳動物へ授乳することをより好適に例示することができる。本明細書における「授乳期の母非ヒト哺乳動物」とは、子非ヒト哺乳動物を出産してから離乳させるまでの母非ヒト哺乳動物を意味するが、便宜上、離乳させてから一定期間内の母非ヒト哺乳動物を含み、例えばヒトの場合は、出産から1年間、好適には6ヶ月間、より好適には3ヶ月間、さらに好適には1ヶ月間、より好適には2週間経過するまでの(母)ヒトや、離乳させてから3ヶ月間、さらに好適には1ヶ月間、より好適には2週間経過するまでの(母)ヒトを含み、ブタの場合は、出産から3週間、より好適には2週間、さらに好適には1週間経過するまでの母ブタや、離乳させてから3週間、さらに好適には2週間、より好適には1週間経過するまでの母ブタを含む。
3.本発明の哺乳動物の学習能力向上剤
本発明の哺乳動物の学習能力向上剤(以下、「本発明の学習能力向上剤」と表示する。)は、CoQ10を有効成分とする限り特に制限されない。本発明の学習能力向上剤は、哺乳動物の学習能力向上効果を有しているので、哺乳動物の学習能力を向上させることができる。CoQ10が哺乳動物の学習能力を向上させる作用機作の詳細は不明であるが、後述の実施例3には、CoQ10が哺乳動物の学習能力を向上させることが示されている。上記の学習能力向上剤の発明は、CoQ10を哺乳動物の学習能力向上剤調製に使用する方法や、CoQ10を有効成分とする学習能力向上剤を哺乳動物に投与する方法の発明と範疇を同じくする。
本発明の学習能力向上剤に含まれるCoQ10の量の例や好適な例は、前述の本発明の抗酸化ストレス剤におけるCoQ10の量の例や好適な例と同様である。
本発明の学習能力向上剤における「哺乳動物」としては、特に制限されないが、ヒト、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、サル、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でも、ヒトを特に好適に例示することができる。
本明細書における「学習能力向上効果」には、知能向上効果や記憶力向上効果をも含んでおり、ヒトに関しては、例えば、ミニ・メンタルステート試験(MMSE)、ウェックスラー成人知能検査(WAIS−R)、又は、アルツハイマー病評価スケール(ADAS)のスコアの向上効果を好適に例示することができ、非ヒト哺乳動物に関しては、例えば、恐怖条件付け文脈学習試験、Y字型迷路試験、ロータロッド試験、水探索試験、新奇物質探索試験、受動回避試験、放射状迷路試験、Morris水迷路試験、又は、遅延見本合わせ・非見本合わせ試験のスコアの向上効果を好適に例示することができ、中でも、恐怖条件付け文脈学習試験のスコアの向上効果をより好適に例示することができ、中でも、能動回避試験や受動回避試験のスコアの向上効果をさらに好適に例示することができる。これらの各種試験の内容や方法は公知である。
本発明の学習能力向上剤における学習能力向上効果の好適な程度としては、胎児期には、その母哺乳動物(好適にはマウス)に本発明の学習能力向上剤を経口投与することによって、胎盤を通じて本発明の学習能力向上剤を投与し、出産後から離乳期までは、その母哺乳動物に本発明の学習能力向上剤を経口投与することによって母乳を介して本発明の学習能力向上剤を投与し、離乳後の一定期間(好適には1週間)には、本発明の学習能力向上剤を直接経口投与した子哺乳動物について、1日につき20回の能動回避試験を3日間連続して行ったときの3日目の能動回避しなかった平均回数が、本発明の学習能力向上剤を一切投与しなかったこと以外は前述の子哺乳動物と同様の子哺乳動物について行った同様の能動回避試験における能動回避しなかった平均回数と比較して、割合として15%以上、好適には30%以上、より好適には50%以上、さらに好適には70%以上低いこと;や、胎児期には、その母哺乳動物(好適にはマウス)に本発明の学習能力向上剤を経口投与することによって、胎盤を通じて本発明の学習能力向上剤を投与し、出産後から離乳期までは、その母哺乳動物に本発明の学習能力向上剤を経口投与することによって母乳を介して本発明の学習能力向上剤を投与し、離乳後の一定期間(好適には1週間)には、本発明の学習能力向上剤を直接経口投与した子哺乳動物について、受動回避試験(初日は刺激を与える獲得試行、2日目及び3日目は刺激を与えない試験試行)を行ったときの3日目の受動回避平均時間が、本発明の学習能力向上剤を一切投与しなかったこと以外は前述の子哺乳動物と同様の子哺乳動物について行った同様の受動回避試験における受動回避平均時間と比較して、割合として15%以上、好適には30%以上、より好適には50%以上、さらに好適には75%以上低いこと;を例示することができる。
本発明の学習能力向上剤の製剤化の方法や、投与方法や、投与量としては、前述の本発明の抗酸化ストレス剤と同様の方法や量を例示することができるが、妊娠期及び/又は授乳期の母哺乳動物、並びに/あるいは、胎児期及び/又は乳児期の子哺乳動物に投与することを好適に例示することができ、より簡便であることから、妊娠期や授乳期には母哺乳動物に投与し、授乳期には該哺乳動物から子哺乳動物へ授乳することをより好適に例示することができ、中でも、妊娠期及び授乳期の母哺乳動物に投与し、離乳期以降は子哺乳動物へ授乳に投与することをさらに好適に例示することができる。
4.本発明の方法等
本発明には、前記のように、哺乳動物の胎児又は乳児における抗酸化ストレス剤の製造における本発明におけるCoQ10の使用;や、哺乳動物の生産性向上剤の製造における本発明におけるCoQ10の使用;や、哺乳動物の学習能力向上剤の製造における本発明におけるCoQ10の使用;や、本発明におけるCoQ10を、哺乳動物の胎児又は乳児における抗酸化ストレス剤に使用する方法;や、本発明におけるCoQ10を哺乳動物の生産性向上剤に使用する方法;や、本発明におけるCoQ10を哺乳動物の学習能力向上剤に使用する方法;や、未熟児網膜症、呼吸窮迫症候群、又は、気管支肺異形成症(BPD)の予防・治療における、本発明におけるCoQ10の使用;や、本発明におけるCoQ10を哺乳動物に投与することを特徴とする、哺乳動物の胎児又は乳児における酸化ストレスの低減方法;や、本発明におけるCoQ10を哺乳動物に投与することを特徴とする哺乳動物の生産性向上方法;や、本発明におけるCoQ10を哺乳動物に投与することを特徴とする哺乳動物の学習能力向上方法;や、本発明におけるCoQ10を哺乳動物に投与することを特徴とする、未熟児網膜症、呼吸窮迫症候群、又は、気管支肺異形成症(BPD)の予防・治療方法;も含まれる。これらの使用や方法における文言の内容やその好ましい態様は、前述したとおりである。なお、本発明の剤は、食品や飼料に添加してもよい。
[早産ウサギを用いた酸化ストレスアッセイ]
CoQ10を早産の哺乳動物へ血管内投与することにより、酸化ストレスレベルがどのように変化するかを調べるため、以下のようなインビボの酸化ストレスアッセイを行った。
妊娠期間29日(人間の妊娠期間では32週に相当)で出生した早産ウサギを分娩により取り出した。早産ウサギに腹腔内カテーテルを取り付け、血管を確保した。早産ウサギを、以下の表1のA〜Dの4つのグループに分けた。
コントロール群であるAグループ及びCグループの早産ウサギには、生理食塩水、バンコマイシイン及びゲンタマイシンをカテーテルで送達(80μl/h)した。一方、CoQ10投与群であるBグループ及びDグループの早産ウサギには、生理食塩水、バンコマイシイン及びゲンタマイシンに加えて、10μMのCoQ10も、カテーテルで送達(80μl/h)した。このようにして、CoQ10投与群における早産ウサギでは、酸化ストレスアッセイ期間中の血管内のCoQ10濃度を一定に保った。
酸化ストレスアッセイ期間中、A〜Dの各グループの早産ウサギには、10%デキストロースを含む生理食塩水をチューブにより、1日に2回与えた。このように、栄養補給を最小限にしたのは、ヒトの未熟児では、少なくとも最初の24時間はそれと同様の栄養療法を行うからである。Aグループ及びBグループの早産ウサギは、湿度75%の室内空気室内に24時間置き、Cグループ及びDグループの早産ウサギは、湿度75%の高酸素(95%O)室内に24時間置いた(前述の表1参照)。A〜Dの各グループの早産ウサギから、肺組織及び肺胞表面液を採取した。肺組織からタンパク質を抽出し、そのタンパク質に含まれる還元型グルタチオン(GSH)量及び酸化型グルタチオン(GSSG)量を測定した。また、肺胞表面液に含まれるGSH量及びGSSG量も測定した。さらに、A〜Dの各グループの早産ウサギから肺を取り出し、肺の湿重量及び乾燥重量を測定した。
GSH量及びGSSG量を測定したのは、以下の理由によるものである。グルタチオンは細胞内に存在し、活性酸素種から細胞を保護する補助的な役割を果たしている。すなわち、グルタチオンは細胞内において通常は還元型グルタチオンとして存在するが、酸化ストレス等により活性酸素種が生じると、その活性酸素種を還元し、自らは酸化型グルタチオンとなる。そのため、細胞内のGSSG含量に対するGSH含量の比率(以下、単に「GSH/GSSG比」と表示する。)は、酸化ストレス等による傷害への感受性の指標(肺傷害マーカー)となる。例えば、GSH/GSSG比が高ければ、酸化ストレス等による傷害への感受性は低いと評価することができ、GSH/GSSG比が低ければ、酸化ストレス等による傷害への感受性は高いと評価することができる。また、肺の湿重量及び乾燥重量を測定したのは、肺酸素傷害により浮腫が生じると、肺の乾燥重量に対する湿重量の比率(肺の湿重量/乾燥重量比)が増加するため、肺の湿重量/乾燥重量比を肺傷害マーカーとして使用できるからである。
前述のように、各肺組織タンパク質(mg)に含まれる還元型グルタチオン(GSH)量(nmol)及び酸化型グルタチオン(GSSG)量(nmol)を測定した結果を図1に示す。なお、各グラフ中の4本の棒グラフは、それぞれ左から順にA〜Dグループの結果を示す。図1から分かるように、A〜DグループのGSH含量(nmol/mgタンパク)は、順に、22、24、11、19であり、A〜DグループのGSSG含量(nmol/mgタンパク)は、順に、8、7、10、8であった。これらの結果から分かるように、GSH含量については、Cグループ(生理食塩水、高酸素)は、Aグループ(生理食塩水、室内空気)と比較して有意な(31%)低下を示したのに対し、Dグループ(CoQ10、高酸素)は、Bグループ(CoQ10、室内空気)と比較して有意な低下は示さなかった。GSSG含量については、Cグループ(生理食塩水、高酸素)はAグループ(生理食塩水、室内空気)と比較して有意な低下を示さず、Dグループ(CoQ10、高酸素)はBグループ(CoQ10、室内空気)と比較して有意な変化を示さなかった。したがって、GSH/GSSG比については、Cグループ(生理食塩水、高酸素)は、Aグループ(生理食塩水、室内空気)と比較して有意な低下を示したのに対し、Dグループ(CoQ10、高酸素)は、Bグループ(CoQ10、室内空気)と比較して有意な低下は示さなかった。また、Aグループ(生理食塩水、室内空気)とBグループ(CoQ10、室内空気)とは、GSH/GSSG比について有意な差はなかった。したがって、Dグループ(CoQ10、高酸素)のGSH/GSSG比(2.4)は、Cグループ(生理食塩水、高酸素)のGSH/GSSG比(1.1)と比較して有意に(100%以上)高く、酸化ストレスによる弊害が低減していることが示された。
また、前述のように、各肺胞表面液(mg)に含まれる還元型グルタチオン(GSH)濃度(μM)及び酸化型グルタチオン(GSSG)濃度(μM)を測定した結果を図2に示す。なお、各グラフ中の4本の棒グラフは、それぞれ左から順にA〜Dグループの結果を示す。図2から分かるように、A〜DグループのGSH濃度(μM)は、順に、41、40、56、55であり、A〜DグループのGSSG含量(μM)は、順に、8、7、18、8であった。これらの結果から分かるように、GSH濃度については、Cグループ(生理食塩水、高酸素)は、Aグループ(生理食塩水、室内空気)と比較して有意な変化を示さなかったが、GSSG濃度については、Cグループ(生理食塩水、高酸素)は、Aグループ(生理食塩水、室内空気)に対して3.2倍に増加し、GSH/GSSG比で58%増加した。肺胞表面液の酸化還元容量のこの変化は、高酸素(95%O)に24時間暴露されたことによって、未熟な肺が酸化ストレスに曝されたことを示す。一方、CoQ10投与を行ったBグループ(CoQ10、室内空気)、Dグループ(CoQ10、高酸素)のいずれも、Aグループ(生理食塩水、室内空気)やCグループ(生理食塩水、高酸素)と比較してGSH濃度の有意な増加は示さなかった。しかし、GSSG濃度については、Dグループ(CoQ10、高酸素)は、Cグループ(生理食塩水、高酸素)のようには、有意な増加を示さなかった。このように、Dグループ(CoQ10、高酸素)の肺胞表面液のGSH/GSSG比(7.0)は、Cグループ(生理食塩水、高酸素)の肺胞表面液のGSH/GSSG比(2.2)と比較して有意に(200%以上)高く、高酸素暴露下での肺酸素傷害が低減していることを示している。
また、前述のように、各肺の湿重量及び乾燥重量を測定し、肺の湿重量/乾燥重量比を算出した結果を図3に示す。なお、各グラフ中の4本の棒グラフは、それぞれ左から順にA〜Dグループの結果を示す。図3から分かるように、A〜Dグループの肺の湿重量/乾燥重量比は、順に、11、10、17.5、13であった。これらの結果から分かるように、Aグループ(生理食塩水、室内空気)、グループB(CoQ10、室内空気)、グループD(CoQ10、高酸素)の肺の湿重量/乾燥重量比はほぼ同様であった。しかし、グループC(生理食塩水、高酸素)の肺の湿重量/乾燥重量比は、他の3グループと比較して、有意な(約30%)上昇が認められた。このことから、CoQ10投与は肺酸素傷害による浮腫を予防し得ること、すなわち、肺酸素傷害に対する保護作用を有していることが示された。
[妊娠ウサギ及び早産ウサギを用いた酸化レベルアッセイ]
妊娠哺乳動物にCoQ10を経口投与したときに、CoQ10が胎児哺乳動物にまで送達されるか等を調べるために、以下の酸化レベルアッセイを行った。
妊娠期間を揃えた妊娠ウサギを2つのグループに分けた。一方のグループには、10mg/kgのCoQ10を毎日経口投与しながら飼育した(CoQ10投与群の妊娠ウサギ)。他方のグループには、CoQ10を投与しないこと以外は、CoQ10投与群と同様の方法にて飼育した(コントロール群の妊娠ウサギ)。CoQ10投与群の妊娠ウサギでは、血漿中のCoQ10濃度が0.72±0.16mg/Lから0.94±0.23mg/Lに上昇した。妊娠期間(正期は31日)が27日のときに、各グループの妊娠ウサギから子ウサギ(早産ウサギ)を帝王切開で取り出した。各早産ウサギから、血漿、肺組織、心臓組織、肝臓組織及び腎臓組織をそれぞれ採取した。すべての組織は、液体窒素で凍結させ、解析に用いるまで−70℃で保存した。
その後、各組織を解凍し、血漿中又は組織中のCoQ10濃度、アスコルビン酸塩濃度、ビタミンE濃度、GSH濃度及びGSSG濃度をHPLCにて測定した。また、CoQ10については、酸化型CoQ10濃度と還元型CoQ10濃度をそれぞれ測定し、以下の数式で酸化度(%)を算出した。
酸化度(%)=酸化型CoQ10濃度/(酸化型CoQ10濃度+還元型CoQ10濃度)
血漿に関する結果を図4に示す。図4から分かるように、コントロール群の妊娠ウサギから産まれた早産ウサギ(n=15)の血漿では、CoQ10濃度は53±7nMであり、アスコルビン酸塩濃度は49.5±12.2μMであり、ビタミンE濃度は7.5±1.5μMであり、GSH濃度は2.0±0.2μMであり、GSSG濃度は0.6±0.2μMであり、CoQ10の酸化度(%)は62±5%であった。それに対し、CoQ10投与群の妊娠ウサギから産まれた早産ウサギ(n=16)の血漿では、CoQ10濃度は72±13nMであり、アスコルビン酸塩濃度は61.7±14.8μMであり、ビタミンE濃度は9.2±3.6μMであり、GSH濃度は、2.3±0.4μMであり、GSSG濃度は、0.3±0.2μMであり、CoQ10の酸化度(%)は39±4%であった(図4)。すなわち、CoQ10投与群の妊娠ウサギから産まれた早産ウサギの血漿中のCoQ10の酸化度(%)は、コントロール投与群の妊娠ウサギから産まれた早産ウサギの血漿中のCoQ10の酸化度(%)と比較して、割合として37%低下していた。
また、肺組織に関する結果を図5に示す。図5から分かるように、コントロール群の妊娠ウサギから産まれた早産ウサギ(n=15)の肺組織では、CoQ10濃度は7.28±1.0μg/g(湿重量)であり、アスコルビン酸塩濃度は0.37±0.02μg/g(湿重量)であり、ビタミンE濃度は0.05±0.01μg/g(湿重量)であり、GSH濃度は0.83±0.11μg/g(湿重量)であり、GSSG濃度は0.32±0.03μg/g(湿重量)であり、CoQ10の酸化度(%)は32±4%であった。それに対し、CoQ10投与群の妊娠ウサギから産まれた早産ウサギ(n=16)の肺組織では、CoQ10濃度は8.31±0.9μg/g(湿重量)であり、アスコルビン酸塩濃度は0.42±0.04μg/g(湿重量)であり、ビタミンE濃度は0.07±0.01μg/g(湿重量)であり、GSH濃度は、0.89±0.12μg/g(湿重量)であり、GSSG濃度は、0.19±0.04μg/g(湿重量)であり、CoQ10の酸化度(%)は14±6%であった(図5)。すなわち、CoQ10投与群の妊娠ウサギから産まれた早産ウサギの肺組織中のCoQ10の酸化度(%)は、コントロール投与群の妊娠ウサギから産まれた早産ウサギの肺組織中のCoQ10の酸化度(%)と比較して、割合として56%低下していた。
これらの結果から分かるように、血漿、肺組織のいずれの場合も、CoQ10や他の抗酸化物質の濃度は、CoQ10の投与によって大きくは上昇しなかったが、CoQ10の酸化度(%)は有意に(p<0.05)低下した。すなわち、CoQ10の投与により、酸化ストレスの有意な軽減が示された。出生時における酸化ストレスのそのような軽減は、酸素療法が必要なときに肺傷害等の酸化ストレスによる傷害の可能性が低減することを示している。
[妊娠マウス及び子マウスを用いた学習能力アッセイ]
妊娠授乳期から発育初期の哺乳動物にCoQを投与することが、その哺乳動物の知能発育にどのような影響を示すかを調べるために、マウスを用いた以下の学習能力アッセイを行った。
まず、親マウスとして、8週齢のddYマウスを6匹(雄2匹、雌4匹)用意し、1週間、馴化飼育した。この6匹のマウスを、3匹(雄1匹、雌2匹)ずつ、2群に分け、一方の群をコントロール群とし、他方の群をCoQ投与群とした。コントロール群には以下の表2に記載した原材料から成る20%プロテイン食を毎日与え、CoQ10投与群には、その20%プロテイン餌にCoQ10を0.05%添加したCoQ10含有20%プロテイン餌を毎日与えた。なお、CoQ10投与群におけるCoQ10投与量をマウス体重1kg当たりに換算すると、83mgとなる。
両群のマウスは自然交配を経て、20%プロテイン餌又はCoQ10含有20%プロテイン餌を給餌し始めた日(試験開始日)から約3週間後には両群の各雌マウスは出産をした。出産後の両群の各雌マウス(母マウス)には、出産前と同様に給餌し、離乳まで(出産後3週間経過まで)その給餌を継続した。また、子マウスについても離乳後1週間は、各群に応じた給餌を行った。すなわち、コントロール群の子マウスには20%プロテイン餌を給餌し、CoQ10投与群の子マウスにはCoQ10含有20%プロテイン餌を給餌した。離乳後1週間経過した後は、コントロール群及びCoQ10投与群のいずれも、20%プロテイン餌を給餌した。子マウスを8週齢になるまで成育させた後、各群をさらに2つのグループに分けて、一方のグループを後述の能動的回避試験に用い、他方のグループを後述の受動的回避試験に用いた。
なお、上記のマウス実験の全期間を通して、両群の親マウス、子マウスについて、餌・水分摂取量、運動能力、各種臓器(脳,心臓,肝,脾,肺,腎)重量を測定し、両群間で比較したが、有意な差は見られなかった。一方、コントロール群の雌マウスは、雌マウス1匹当たり、平均で10匹の子マウスを出産したのに対し、CoQ10投与群の雌マウスは、雌マウス1匹当たり、平均で12匹の子マウスを出産した。これにより、CoQ10投与には、出産数向上効果が示された。
能動的回避試験や受動的回避試験は、学習能力等を調べる試験として従来より用いられている。能動的回避試験は、以下のような方法で行った。隣接した2つの箱の間の壁に開閉仕切りが付いているものを用意した。マウスを一方の箱に入れてしばらく慣らした後に、ブザーを鳴らした。ブザーが鳴っている間にマウスが他方の箱に移動(能動回避)しない場合は、床から電気刺激を与えた。この試験を1日の間に20回繰り返し、能動回避しなかった回数を測定した。これを4日間連続して実施した。その結果を以下の表3に示す。
受動的回避試験は、以下のような方法で行った。
内部が明るい箱と内部が暗い箱が隣接し、かつ、これらの2つの箱の間の壁に開閉仕切りが付いているものを用意した。始めは仕切りを閉じておき、マウスを明るい箱に入れた。30秒後に仕切りを開けると、暗い所を好む習性によりマウスは暗い箱に移動するが、マウスが暗い箱に入ると再び仕切りが閉まり、床から電気刺激を与えた。初日(Day1)のこの獲得試行から24時間後(Day2)、48時間後(Day3)、72時間後(Day4)、7日後(Day8)に試験試行を行った。試験試行では、2つの箱の間の仕切りは開けておき、電気刺激も与えなかった。試験試行において、マウスが受動回避した時間(秒)、すなわち、マウスを明るい箱に入れてから暗い箱に移動するまでの時間(秒)を測定した。その結果を以下の表4に示す。なお、マウスが受動回避した時間が長いほど、獲得試行の際の電気刺激を学習していると評価することができる。
表4の結果から分かるように、いずれのDayでも、CoQ10投与群は、コントロール群と比較して、能動回避しなかった平均回数が有意に少なかった。また、表4の結果から分かるように、いずれのDayでも、CoQ10投与群は、同じDayのコントロール群と比較して、受動回避した平均時間(秒)が有意に長かった。これらのことから、妊娠授乳期から発育初期の哺乳動物にCoQ10を投与すると、学習能力が向上することが示された。
本発明は、哺乳動物の未熟児における未熟児網膜症、呼吸窮迫症候群などの、酸素療法による弊害の低減に関する分野や、母哺乳動物の出産数の増加(死産の減少)、子哺乳動物の離乳期までの死亡率の低減、母哺乳動物の出産可能回数の増加などの、哺乳動物の生産性の向上に関する分野や、哺乳動物の学習能力の向上に関する分野に好適に利用することができる。

Claims (2)

  1. CoQ10を有効成分とし、妊娠期の母哺乳動物に投与することを特徴とする、哺乳動物の胎児又は乳児における抗酸化ストレス剤。
  2. 乳児が未熟児である請求項1に記載の抗酸化ストレス剤。
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