JP5688665B2 - 自己溶菌能を有するシアノバクテリアを用いたバイオ燃料等有用物質の製造方法 - Google Patents
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Description
[2] 本発明は、外来遺伝子をさらに含む、[1]に記載の発現ベクターを提供する。
[3] 本発明は、[2]に記載の発現ベクターを、自己溶菌能を有するシアノバクテリアに導入して得られる、シアノバクテリア形質転換体を提供する。
[4] 本発明は、[3]に記載のシアノバクテリア形質転換体を培養し、外来遺伝子を発現させ、自己溶菌を誘導することを特徴とする、シアノバクテリアを用いた物質製造方法を提供する。好ましくは、前記シアノバクテリアは、受託番号FERM P-22172を有するリムノスリックス/シュードアナベナ・エスピー(Limnothrix/Pseudanabaena sp.)ABRG5-3株である。この方法において、前記シアノバクテリア形質転換体を培地を連続的にかき混ぜながら培養した後、静置培養することによって自己溶菌を誘導することが好ましい。前記静置培養は、暗所で行うか、又は白色光、赤色光若しくは青色光の照射下で行うことができる。前記静置培養を4〜50℃の温度条件下で行うことも好ましい。前記静置培養を窒素欠乏培地中で行うこともできる。また、前記静置培養を高塩濃度培地中又は高浸透圧培地中で行うこともできる。
[5] [4]に記載の方法において、前記外来遺伝子から生成されたタンパク質又は該タンパク質の活性により生成された物質を回収することをさらに含んでもよい。
[6] [4]又は[5]に記載の方法において、前記外来遺伝子は、炭水化物合成酵素遺伝子、より具体的にはアルカン合成酵素遺伝子であることが好ましい。この場合、本発明の物質製造方法には、前記形質転換体により生産されたアルカンを回収することをさらに含む、アルカン製造方法が含まれる。
1. 本発明に係るシアノバクテリア発現ベクター
本発明は、シアノバクテリア由来のpsbA2遺伝子上流領域を利用した、シアノバクテリア発現ベクターに関する。
本発明者は、以前、(財)新技術開発財団植物研究園(静岡県熱海市相の原町11-8)敷地内から、自己溶菌能を有するシアノバクテリアの新菌種を分離することに成功した(Nishizawa T, Hanami T, Hirano E, Miura T, Watanabe Y, Takanezawa A, Komatsuzaki M, Ohta H, Shirai M, Asayama M (2010) Biosci. Biotechnol. Biochem., 74:1827-1835)。この菌は、その菌学的性質に基づき、リムノスリックス属又はシュードアナベナ属の新菌種として同定された。本発明は、こうして同定されたシアノバクテリアの新菌種を有利に利用することができる。
(a)培養的性質
BG11寒天培地上で培養すると、緑色のコロニーを形成し、数日以内に放射状に拡散する。
BG11液体培地中で、30℃、大気中(0.4%CO2)で振とう培養(105〜110rpmで旋回培養)すると、培養液は緑色になり、約2週間で定常状態に達する。
約1.5〜2μm ×約3.5〜5μm(幅×長さ)の大きさの細胞を有し、約5〜30個の細胞が直線状に連なった半糸状性(非分枝性)を示す(図3)。ヘテロシスト(異型細胞)は見られず、この特徴は、代表的な糸状性シアノバクテリア、アナベナ(Anabaena)とは異なる(Golden JW, Yoon HS (2003) Curr Opin Microbiol, 6: 557-563)。
(1)最適生育条件:30℃、pH8、連続白色光100μmol フォトン/m2/s、二酸化炭素濃度2%
(2)生育の範囲:約25〜35℃、pH約5〜10、連続白色光30〜300μmol フォトン/m2/s、二酸化炭素濃度0.4〜10%
(3)酸素に対する性質:好気性
(4)16S rDNA(16SリボソームRNAコード配列)におけるDNA配列相同性:
ABRG5-3株の16S rDNA(配列番号5)は、リムノスリックス・レデケイ(Limnothrix redekei)NIVA-CYA 227/1Tの16S rDNA(配列番号6)との間で約97%の同一性を有する。
培養環境条件の変化によって、自己溶菌が誘導される可能性がある。特に、振とう培養後、静置培養すると自己溶菌し始める。そのため、培養及び植え継ぎには注意を要する。
本発明は、上述のように作製された、外来遺伝子を発現するための本発明の発現ベクターを導入して得られるシアノバクテリア形質転換体を培養し、外来遺伝子を発現させ、自己溶菌させることを特徴とする、シアノバクテリアを用いた物質製造方法に関する。
本明細書において「製造」とは、シアノバクテリアをはじめとする宿主細胞による目的物質の生成工程に加えて、目的物質の回収、単離又は精製工程などの人為的な作用を含みうる、目的物質の取得のためのプロセスをいう。
本発明に係る物質製造方法の第一段階目、生産・蓄積相における培養条件を以下に例示するが、これに限定されない。シアノバクテリアを、100ml容三角フラスコ中の50mlのBG11(又はCB)液体培地(必要ならば、形質転換体選抜のための薬剤を適切な濃度で添加する)に1%(v/v)になるように接種し、これを30℃、白色蛍光灯(35μmol フォトン/m2/s)常時照射下で、110rpmで旋回しながら2〜3週間前培養する。なお、二酸化炭素は特に供給する必要はなく、大気中濃度(0.4%CO2)である。次いで、この前培養液を、50mlのCB(又はBG11)液体培地に1%(v/v)になるように接種し、これを30℃、白色蛍光灯又は白色LED(35〜100μmol フォトン/m2/s)常時照射下、2%CO2ガス供給下、50rpmで7〜12日間レシプロ振とう培養(本培養)する。本培養では、短期間に細胞を増殖させ、細胞内に目的物質を生産及び蓄積させるために、2%CO2ガスを供給することが好ましい。これは、本発明の方法を用いた物質の大量製造の際、工場などからの排気CO2ガスを再利用資源化する観点からも特に望ましい。また、当業者であれば、上記培養条件を必要に応じてスケールアップして利用することができ、例えば、恒温培養器内、室内若しくは工場内、又は屋外に設置した培養槽内で本発明に係る物質製造方法を実施することもできる。
第一段階目の培養は、培地を連続的にかき混ぜながら行うことが好ましい。このような培養方法の例として、振とう培養(往復運動(レシプロ)又は旋回運動(ロータリー)による)、撹拌培養、灌流培養若しくは通気培養又はこれらの組み合わせがある。
第一段階目の培養は、数ミリリットル〜数リットルの規模で行う場合には、振とう培養を行うことが好ましい。スケールアップして数リットル〜数トンの規模で培養する場合には、CO2ガス供給による通気培養又は撹拌子などによる撹拌培養を行うことが好ましい。
本発明に係る物質製造方法の第二段階目、溶菌・回収相では、培養条件を調整して自己溶菌を誘導する。特に、第一段階目に培地を連続的にかき混ぜながらシアノバクテリア形質転換体を培養した後に第二段階目に静置培養を行うことにより、自己溶菌を誘導することが好ましい。本明細書において「静置培養」とは、培地を連続的にかき混ぜる操作を行うことなく実施する培養をいう。第二段階目の培養では、自己溶菌に加えて培地への物質添加又は除去に基づく外部からの直接的刺激による溶菌(物理的要因による溶菌)が生じてもよい。第二段階目の培養では、以下に限定されるものではないが、光条件、温度条件、培地組成(例えば塩、糖(浸透圧)、栄養源)などを変化させることにより、溶菌を促進することもできる。溶菌の促進は後述の実施例に示すように溶菌効率の増加により示される。第二段階目の培養において、目的物質を、自己溶菌及び物理的要因による溶菌の両者を介して培地中に放出させることができる。
第二段階目の培養(好ましくは静置培養)において、光の強度及び/又は波長などの光条件を調整することにより、溶菌を促進することもできる。
本発明の製造方法の一態様としては、シアノバクテリア形質転換体に導入された外来遺伝子の発現により、外来遺伝子から生成されるタンパク質(外来遺伝子によってコードされるタンパク質)を製造する、シアノバクテリアを用いた物質製造方法が挙げられる。この方法により、外来遺伝子から発現されたタンパク質又はそれに由来する物質(例えばペプチドなどの分解産物)自体を目的物質として製造することができる。用いる外来遺伝子は緑色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質又は酵素等の任意のタンパク質をコードする遺伝子であってよい。
ベクターの構築
シアノバクテリア発現ベクターを、後述のようにして、シアノバクテリア宿主プラスミドpVZ321を母体として、外来遺伝子を挿入するためのクローニング部位、及びシアノバクテリアの光合成遺伝子psbA2の上流領域を付加して構築した。
GFPを発現するベクターの作製
実施例1で作製したpAMベクター(pAM500及びpAM461c)は、母体となったpVZ321プラスミド上に元々存在したカナマイシン耐性遺伝子領域が、psbA2遺伝子上流領域の挿入によって置き換わるため、プラスミド上の他の箇所に存在するクロラムフェニコール耐性遺伝子によって抗生物質を含む培地により形質転換体の選抜が可能である。
シアノバクテリア形質転換株の作製及び単離
本発明者が構築した上記ベクターのシアノバクテリア中での機能を検証するため、実施例2で作製したGFPクローン化ベクターをシアノバクテリアに形質転換した。
シアノバクテリア形質転換株における発現ベクターのコピー数及び安定性
各TCコロニーを回収し、BG11液体培地で徐々にスケールアップしながら純粋培養した後、細胞を遠心により回収し、ホットフェノール法により全DNAを回収した。TC株の全DNAを鋳型にして、VZ-F2プライマー(5'-CTGATGTTACATTGCACAAG-3'、配列番号9)及びVZ-Rプライマー(5'-ATGAAGGAGAAAACTCACCG-3'、配列番号10)(図2A)を用いてPCRを行った。このPCR産物をアガロースゲル電気泳動で分離させると、発現ベクターpGFP500(図5A及びC:+AU、AUボックスを有する)及びpGFP461c(図5A及びC:-AU、AUボックスを欠失している)の存在を示す1.4kbpのバンドが確認され(図5A及びCはそれぞれPCC6803株及びABRG5-3株での結果を示す)、2種類のシアノバクテリア細胞に実施例2で作製したpGFPベクターが形質転換されたことが示された。
発現ベクターの機能と外来遺伝子の発現の確認
上述のように、本発明者が構築した発現ベクターはシアノバクテリアPCC6803及びABRG5-3株に形質転換され、安定して維持されることが示された。次に、発現ベクター上の外来遺伝子(今回の場合はモデル遺伝子であるgfp)からの発現量について「RNAレベル」及び「タンパク質レベル」での解析を行った。
モデル遺伝子gfpのシアノバクテリア細胞内での大量発現
PCC6803及びABRG5-3のTC株で「タンパク質レベル」でのgfp遺伝子発現が確認されたので、蛍光顕微鏡によってGFP発現による細胞の発色を確認した。pGFP500で形質転換したPCC6803株(+AU)及びpGFP461cで形質転換したPCC6803株(-AU)をCB液体培地で白色蛍光灯(35μmol フォトン/m2/s)下、12日間振とう培養した後、細胞を回収し、以下の方法により、蛍光顕微鏡観察を行った。すなわち、所定の培養条件下で生育させた細胞を、落斜型蛍光顕微鏡(BX51/DP50, オリンパス社製)により、GFPタンパク質による発色を、U-MWIB2フィルター(励起フィルター460〜490nm;蛍光フィルター510nm)を用いて観察した。
自己溶菌による光合成色素の生産及び回収
ABRG5-3株を用いた目的物質の生産と回収について、この株が持つ自己溶菌の特性に注目し、光合成色素フィコシアニン(phycocyanin、PC)の簡便回収が可能なことを以下のようにして確かめた。なおフィコシアニンは、青色素タンパク質で発色団として主にフィコシアノビリン(phycocyanobilin、開環したテトラピロール構造を持つビリン色素のフィコビリンの一種)を有しており、抗酸化・抗炎症作用を有する有用物質である。
自己溶菌による目的遺伝子産物GFPの生産及び回収
実施例7の結果を踏まえ、次に、発現ベクターにより大量生産された外来遺伝子産物GFPの回収を試験した。結果を図13に示す。実施例7と同様の条件で培養し、その後、自己溶菌したpGFP461cで形質転換したABRG5-3株の上澄画分を調製した。GFPタンパク質を濃縮するために、この上澄画分に、飽和硫安液を上澄画分の体積(ml)に対して等量添加し、氷上で30分間置いて塩析後、10,000gで10分間の遠心で沈殿を回収した。こうして硫安塩析した試料をバッファーに溶かし、12.5%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動した後、ウエスタンブロットにより解析した。その結果、コントロールとして用いたpVZ321で形質転換したABRG5-3株(図13:Vec)からは29kDaの位置にシグナルは確認されなかったが、pGFP461cで形質転換したABRG5-3株(図13:-AU)の細胞残渣(図13:沈殿)及び上澄画分(図13:上澄)からはGFPの分子量に相当する29kDaの位置にシグナルが確認された。以上より、本発明者が構築したシアノバクテリア発現ベクターを用いて生産させた外来遺伝子産物GFPを、ABRG5-3株の本来有する自己溶菌能を利用することにより簡便に回収可能であることが示された。
溶菌効率を改善する条件の検討
ABRG5-3株を用いた二段階培養法について、第二段階目の培養における培養条件又は培地組成を変化させることにより、溶菌効率を改善する誘導要因を検討した。なお以下の実験は、全て大気中(CO2濃度は0.4%)で行った。
第二段階目の培養における、培養方法(振とう又は静置)、温度、明暗、照射光色(赤色又は青色)による効果について検討した(図14及び15)。全て培地はBG11培地に固定し、第一段階目において12日間振とう培養してから、第二段階目の培養を開始し、その10日後の培地濁度を溶菌の指標(溶菌が進むほど液体培地の菌体濁度は減少する)とした。第二段階目の培養10日目(培養開始から22日目)の菌体濁度(図14)の値について、30℃、白色光照射下、振とう培養(終始振とう培養)した場合のOD730値を各溶菌誘導ストレス条件下で培養した時のOD730値で割った数値を溶菌効率(=倍率)とした(図15)。
続いて、この結果を基に暗黒条件下における温度効果について検討したところ、温度が高くなるにつれて溶菌効率が改善することが明らかとなった(図14及び15:4℃ 暗黒静置、22℃ 暗黒 静置及び30℃ 暗黒 静置)。42℃では30℃と比べてさらに溶菌効率は高くなった(30℃、白色光、振とう培養と比べて約30〜40倍)。この結果は、室温又はそれ以上の高温で効率良く溶菌が誘導されることを意味している。
第二段階目の培養において、窒素又はリン欠乏(ストレス要因)による溶菌誘導効果について検証した(図16)。「(i)培養条件」の項ではBG11培地には手を加えていなかったが、BG11培地はCB培地に比べて培地組成中の窒素(N)源やリン(P)源を制限するのに適した培地であるため、BG11培地を改変して窒素又はリン欠乏培地として用いた。
窒素欠乏については、第一段階目の培養をBG11培地で12日間行った後、第二段階目の培養へ移行する前に一旦遠心分離により菌体を集菌し、新しいBG110液体培地(BG11培地からNaNO3を抜いたもの)に再接種して(培養0日目)第二段階目の培養を行った(図16A)。30℃、白色光照射条件下、第二段階目の培養において培地をBG11(窒素源有、+N)にしたものと比較すると、BG110培地(窒素欠乏、-N)で培養した場合、数日間は菌体濁度にあまり差は見られないが、9日目を過ぎた辺りから徐々に濁度の低下が認められ、21日目辺りでその差が最大になった(図16A)。その時の細胞を光学顕微鏡で観察したところ、窒素欠乏培地では色抜けが起こり、溶菌が進行していた(図16B)。
遺伝子組換え技術を用いたバイオ燃料生産藻の作製と生産されたアルカンの組成分析及び生産量の検証
実施例1で作製した発現ベクターpAM461cにシネコシスティス・エスピーPCC6803株由来のアルカン合成酵素遺伝子群sll0208(アルデヒドデカルボニラーゼに相当、塩基配列及びアミノ酸配列をそれぞれ配列番号15及び16に示す)とsll0209(アシル-ACPリダクターゼに相当、塩基配列及びアミノ酸配列をそれぞれ配列番号17及び18に示す)を同時にクローン化し、これを自己溶菌能を有するリムノスリックス/シュードアナベナ・エスピーABRG5-3株に導入することによって形質転換体を作製し、効率良くヘプタデカン(重油と軽油の中間的物質)を生産する系を構築しようと試みた。なお、発現ベクターの機能の汎用性を試験するため、そして実験系の信頼性を高めるために上記組換え発現ベクターをPCC6803株にも平行して導入し、ABRG5-3株と生産能を比較することにした。
アルカン合成酵素遺伝子(sll0208/sll0209)群はゲノム上では隣接しているので、2つの遺伝子を一度にPCR増幅し、約2キロ塩基対(kbp)のDNA断片(配列番号19)として得ることが可能である。PCR増幅は、PCC6803株のゲノムDNAを鋳型として、6803ALKinfusion-Fプライマー(5’-GAAATTATCCACATATGCCCGAGCTTGCTGTCCGC-3’、配列番号20)及び6803ALKinfusion-Rプライマー(5'-AAGCTTTTACTACCCGGGCTAAAGAGCTACTAAAG-3'、配列番号21)、4種類のデオキシNTPs並びにLA-taq DNAポリメラーゼ(TaKaRa社製)を含む反応液(25μl)中で行った。PCRの反応条件は、94℃で2分間予備反応後、94℃で30秒/55℃で30秒/68℃で150秒のサイクルを35回繰り返し行い、最後に68℃で3分間反応を行った。この反応液から目的のDNA断片を回収し、予め制限酵素NdeIとSmaIで切断してから回収しておいた約9.2kbpサイズのpAM461cベクターDNA断片と混合し、組換え酵素キット(Clontech/TaKaRa社製、In-Fusion HD cloning kit)を使用してDNA断片同士を融合させ環状化させた。環状化したプラスミドベクターを大腸菌NEB10-beta(New England Biolabs社製)に形質転換した。組換え発現ベクターを保持するコロニーを、クロラムフェニコールを最終濃度で25μg/ml含む寒天培地で選抜した。こうして得られたクロラムフェニコール耐性大腸菌を培養して、プラスミドDNAを抽出し、組換え発現ベクターが構築されていることを確認した。この組換え発現ベクターをpTM_ALK11と命名した。
pTM_ALK11を保持する大腸菌NEB10-betaを用いて接合伝達法(実施例3を参照)によりシアノバクテリアPCC6803株又はABRG5-3株細胞にpTM_ALK11ベクターを導入した。シアノバクテリア形質転換体(TC, transconjugant)の選抜は、クロラムフェニコールを最終濃度で8μg/ml含むBG11寒天培地上で行った。クロラムフェニコール耐性コロニーを選抜し、BG11液体培地で徐々にスケールアップしながら純粋培養した後、TC株細胞を遠心により回収し、ホットフェノール法により全DNAを回収した。この全DNAを鋳型として、前述のVZ-F2プライマー(5'-CTGATGTTACATTGCACAAG-3'、配列番号9)及びVZ-Rプライマー(5'-ATGAAGGAGAAAACTCACCG-3'、配列番号10)(図2A)を用いてPCRを行った。このPCR産物をアガロースゲル電気泳動で解析するとsll0208/sll0209遺伝子群のサイズ(約2kbp)とその両側のプライマーの位置までのサイズ(0.75kbp)を合わせた約2.8kbpのサイズに相当する位置にバンドが確認され、pTM_ALK11を保持するシアノバクテリアPCC6803とABRG5-3のTC株の取得に成功したことが示された。それぞれの形質転換株を6803_ALK11、5-3_ALK11と名付けた。
6803_ALK11株及び5-3_ALK11株でのアルカン生産を確認するため、Nile Red染色による蛍光顕微鏡観察を行った。Nile Redは、炭化水素を蓄積する細胞を染める染色剤として一般的に知られている。それぞれのTC株をクロラムフェニコールを最終濃度で8μg/ml含むBG11液体培地で30℃白色光照射下で約14日間振とう培養した後、この菌体培養液の一部を、通常のBG11液体培地からNaNO3を抜いたBG110培地(6803_ALK11株用)、又は5分の1量に減らしたx1/5N_BG11液体培地(5-3_ALK11株用)に対し10分の1容添加し、大気中又は2%CO2ガス供給下(トミー社製 CF-415 インキュベーター内)、50rpmで9日間レシプロ振とう培養(本培養)した。この方法によるTC株細胞内でのアルカン生産の鍵は、BG11培地から窒素源を枯渇又は減少させることによって、細胞の代謝系を窒素代謝(アミノ酸合成)の流れから脂肪酸や炭化水素の合成系へ効率良く切り替える点にある。なお、脂肪酸や炭化水素合成をより効率的に行わせるために、上記BG110培地及びx1/5N_BG11液体培地には酢酸ナトリウムを最終濃度で10mM添加した(3Mの酢酸ナトリウム pH 7を50mlの培地に対して170μl添加した)。上記方法で調製した1mlの菌体培養液に対して1mMのNile Red染色剤を最終濃度10μMになるよう10μl加え、蛍光顕微鏡観察に供した。顕微鏡はオリンパス社のBX53/DP72を使用し、光学フィルター(BF)と青色蛍光フィルター(BW:励起フィルター460〜495nm;蛍光フィルター510nm)を用いた。観察の結果、5-3_ALK11株菌体(培養液)でアルカンと思われる物質の生産・蓄積が認められた(図19A及びB)。6803_ALK11株でも、同様にアルカンと思われる物質の生産・蓄積が確認された。
上記(iii)項に記載した条件で培養した6803_ALK11株及び5-3_ALK11株細胞を回収し、以下の方法で炭化水素を抽出してGC-MS(ガスクロマトグラム-マススペクトル)分析に供し、目的とするアルカン(ヘプタデカン、C17H36、分子量240)が最終産物として生産されているか検証した。
配列番号7〜14、20及び21:プライマー
Claims (7)
- シアノバクテリア形質転換体を培養し、外来遺伝子を発現させ、自己溶菌を誘導することを特徴とする、シアノバクテリアを用いた物質製造方法であって、
前記シアノバクテリア形質転換体が、シアノバクテリア発現ベクターを、受託番号FERM P-22172を有するリムノスリックス/シュードアナベナ・エスピー(Limnothrix/Pseudanabaena sp.)ABRG5-3株又は自己溶菌能を有するその変異体であるリムノスリックス/シュードアナベナ属シアノバクテリアに導入して得られるものであり、
前記シアノバクテリア発現ベクターは、配列番号1に示される塩基配列からなるpsbA2遺伝子上流領域の、ATボックス配列を含む塩基配列を欠失し、かつ転写活性を有する変異型領域と、外来遺伝子とを含み、
自己溶菌の誘導は、前記シアノバクテリア形質転換体を培地を連続的にかき混ぜながら培養した後、静置培養することによって行い、静置培養は、(i)暗所で行うか、又は(ii)赤色光の照射下で行う、
方法。 - 前記外来遺伝子が、配列番号16で示されるアミノ酸配列をコードするsll0208遺伝子及び配列番号23で示されるアミノ酸配列をコードするsll0209遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記静置培養を20〜50℃の温度条件下で行う、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記外来遺伝子から生成されたタンパク質又は該タンパク質の活性により生成された物質を回収することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記外来遺伝子が、炭化水素合成酵素遺伝子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記炭化水素合成酵素遺伝子が、アルカン合成酵素遺伝子である、請求項5に記載の方法。
- 前記形質転換体により生産されたアルカンを回収することをさらに含む、アルカン製造方法である、請求項6に記載の方法。
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