以下、添付図面を参照して、本発明に係る超音波診断装置及びその作動方法について実施形態毎に詳細に説明する。
第1の実施形態:
図1は本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図であり、図1に示す超音波診断装置10は、超音波探触子300から被検体OBJに超音波ビームを送信して、被検体OBJによって反射された超音波ビーム(以下、超音波エコー)を受信し、超音波エコーの検出信号から超音波画像を作成・表示する装置である。
CPU(Central Processing Unit)100は、操作入力部200からの操作入力に応じて超音波診断装置10の各ブロックの制御を行う。
操作入力部200は、オペレータからの操作入力を受け付ける入力デバイスであり、操作卓202とポインティングデバイス204とを含んでいる。操作卓202は、文字情報(例えば、患者情報)の入力を受け付けるキーボードと、振幅画像(Bモード画像)を単独で表示するモードと局所音速値の判定結果を表示するモードとの間で表示モードを切り替える表示モード切り替えボタンと、ライブモードとフリーズモードとの切り替えを指示するためのフリーズボタンと、シネメモリ再生を指示するためのシネメモリ再生ボタンと、超音波画像の解析・計測を指示するための解析・計測ボタンとを含んでいる。ポインティングデバイス204は、表示部104の画面上における領域の指定の入力を受け付ける
デバイスであり、例えば、トラックボール又はマウスである。なお、ポインティングデバイス204としては、タッチパネルを用いることも可能である。
格納部102は、CPU100に超音波診断装置10の各ブロックの制御を実行するための制御プログラムを格納する記憶装置であり、例えば、ハードディスク又は半導体メモリである。
表示部104は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ又は液晶ディスプレイであり、超音波画像(動画及び静止画)の表示、及び各種の設定画面を表示する。
超音波探触子300は、被検体OBJに当接させて用いるプローブであり、1次元又は2次元のトランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサ302を備えている。超音波トランスデューサ302は、送信回路402から印加される駆動信号に基づいて超音波ビームを被検体OBJに送信すると共に、被検体OBJから反射される超音波エコーを受信して検出信号を出力する。
超音波トランスデューサ302は、圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極が形成されて構成された振動子を含んでいる。前記振動子を構成する圧電体としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb (lead) zirconate titanate)のような圧電セラミック、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)のような高分子圧電素子を用いることができる。前記振動子の電極に電気信号を送って電圧を印加すると圧電体が伸縮し、この圧電体の伸縮により各振動子において超音波が発生する。例えば、振動子の電極にパルス状の電気信号を送るとパルス状の超音波が発生し、振動子の電極に連続波の電気信号を送ると連続波の超音波が発生する。そして、各振動子において発生した超音波が合成されて超音波ビームが形成される。また、各振動子により超音波が受信されると、各振動子の圧電体が伸縮して電気信号を発生する。各振動子において発生した電気信号は、超音波の検出信号として受信回路404に出力される。
なお、超音波トランスデューサ302としては、超音波変換方式の異なる複数種類の素子を用いることも可能である。例えば、超音波を送信する素子として前記圧電体により構成される振動子を用いて、超音波を受信する素子として光検出方式の超音波トランスデューサを用いるようにしてもよい。ここで、光検出方式の超音波トランスデューサとは、超音波信号を光信号に変換して検出するものであり、例えば、ファブリーペロー共振器又はファイバブラッググレーティングである。
次に、ライブモード時における超音波診断処理を例に超音波診断装置10の各ブロックの詳細について説明する。ライブモードは、被検体OBJに超音波探触子300を当接させて超音波の送受信を行うことによって得られた超音波画像(動画)の表示、解析・計測を行うモードである。
超音波探触子300が被検体OBJに当接されて、操作入力部200からの指示入力により超音波診断が開始されると、CPU100は、送受信部400に制御信号を出力して、超音波ビームの被検体OBJへの送信、及び被検体OBJからの超音波エコーの受信を開始させる。CPU100は、超音波トランスデューサ302ごとに超音波ビームの送信方向と超音波エコーの受信方向とを設定する。
さらに、CPU100は、超音波ビームの送信方向に応じて送信遅延パターンを選択する。ここで、送信遅延パターンとは、複数の超音波トランスデューサ302から送信される超音波によって所望の方向に超音波ビームを形成するために駆動信号に与えられる遅延時間のパターンデータである。前記送信遅延パターンは予め格納部102に格納されている。CPU100は、格納部102に格納されているものの中から送信遅延パターンを選択し、選択した送信遅延パターンに従って、送受信部400に制御信号を出力して超音波の送受信制御を行う。
送信回路402は、CPU100からの制御信号に応じて駆動信号を生成して、該駆動信号を超音波トランスデューサ302に印加する。このとき、送信回路402は、CPU100によって選択された送信遅延パターンに基づいて、各超音波トランスデューサ302に印加する駆動信号を遅延させる。ここで、送信回路402は、複数の超音波トランスデューサ302から送信される超音波が超音波ビームを形成するように、各超音波トランスデューサ302に駆動信号を印加するタイミングを調整する(遅延させる)送信フォーカスを実行する。なお、複数の超音波トランスデューサ302から一度に送信される超音波が被検体OBJの撮像領域全体に届くように、駆動信号を印加するタイミングを調節するようにしてもよい。
受信回路404は、各超音波トランスデューサ302から出力される超音波検出信号を受信して増幅し、アナログのRF信号としてA/D変換器406に出力する。
A/D変換器406は、受信回路404から出力されるアナログのRF信号をデジタルRF信号(以下、RFデータ)に変換する。ここで、RFデータは、受信波(搬送波)の位相情報を含んでいる。A/D変換器406から出力されるRFデータは、信号処理部502、シネメモリ602及びデータ解析部700にそれぞれ入力される。
シネメモリ602は、A/D変換器406から入力されるRFデータを順次格納する。また、シネメモリ602は、CPU100から入力されるフレームレートに関する情報(例えば、超音波の反射位置の深度、走査線の密度、視野幅を示すパラメータ)を前記RFデータに関連付けて格納する。
前記のように、各超音波トランスデューサ302と被検体OBJ内の超音波反射源との間の距離がそれぞれ異なるため、各超音波トランスデューサ302に反射波が到達する時間が異なる。
信号処理部502は、後述するデータ解析部700からの環境音速に基づいて設定される音速(以下、設定音速)又は音速の分布に従って、反射波の到達時刻の差(遅延時間)に相当する分、各RFデータを遅延させる。次に、信号処理部502は、遅延時間を与えたRFデータを整合加算することによりデジタル的に受信フォーカス処理を行い、RF画像データを生成する。
超音波反射源XROIと異なる位置に別の超音波反射源がある場合には、別の超音波反射源からの超音波検出信号は到達時刻が異なるので、前記信号処理部502で加算することにより、別の超音波反射源からの超音波検出信号の位相が打ち消し合う。これにより、超音波反射源XROIからの受信信号が最も大きくなり、フォーカスが合う。前記受信フォーカス処理によって、超音波エコーの焦点が絞り込まれたRF画像データが形成される。
また、信号処理部502は、前記RF画像データに対して、STC(Sensitivity Time gain Control)によって、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正をした後、包絡線検波処理を施し、Bモード画像データ(超音波エコーの振幅を点の明るさ(輝度)により表した画像データ)を生成する。
信号処理部502によって生成されたBモード画像データは、通常のテレビジョン信号の走査方式と異なる走査方式によって得られたものである。このため、DSC(Digital Scan Converter)504は、前記Bモード画像データを通常の画像データ(例えば、テレビジョン信号の走査方式(NTSC方式)の画像データ)に変換(ラスター変換)する。画像処理部506は、DSC504から入力される画像データに、各種の必要な画像処理(例えば、階調処理等)を施す。
画像メモリ508は、画像処理部506から入力される画像データを格納する。D/A変換器510は、画像メモリ508から読み出された画像データをアナログの画像信号に変換して表示部104に出力する。これにより、超音波探触子300によって撮影された超音波画像(動画)が表示部104に表示される。
次に、シネメモリ再生モードについて説明する。シネメモリ再生モードは、シネメモリ602に格納されているRFデータに基づいて超音波診断画像の表示、解析・計測を行うモードである。
操作卓202のシネメモリ再生ボタンが押下されると、CPU100は、超音波診断装置10の動作モードをシネメモリ再生モードに切り替える。シネメモリ再生モード時には、CPU100は、オペレータからの操作入力により指定されたRFデータの再生をシネメモリ再生部604に指令する。シネメモリ再生部604は、CPU100からの指令に従って、シネメモリ602からRFデータを読み出して、画像信号生成部500の信号処理部502に送信する。シネメモリ602から送信されたRFデータは、信号処理部502、DSC504及び画像処理部506において所定の処理(ライブモード時と同様の処理)が施されて画像データに変換された後、画像メモリ508及びD/A変換器510を経て表示部104に出力される。これにより、シネメモリ602に格納されたRFデータに基づく超音波画像(動画又は静止画)が表示部104に表示される。
ライブモード又はシネメモリ再生モード時において、超音波画像(動画)が表示されている時に操作卓202のフリーズボタンが押下されると、フリーズボタン押下時に表示されている超音波画像が表示部104に静止画表示される。これにより、オペレータは、静止画上の着目領域(ROI:Region of Interest)を観察することができる。
操作卓202の計測ボタンが押下されると、オペレータからの操作入力により指定された解析・計測が行われる。データ解析部700は、各動作モード時に計測ボタンが押下された場合に、A/D変換器406又はシネメモリ602から、画像処理が施される前のRFデータを取得し、当該RFデータを用いてオペレータ指定の解析・計測(例えば、組織部の歪み解析(硬さ診断)、血流の計測、組織部の動き計測、又はIMT(内膜中膜複合体厚:Intima-Media Thickness)値計測)を行う。
また、データ解析部700は、着目領域の環境音速を算出し、算出した環境音速を信号処理部502に出力する。詳細は後述する。
データ解析部700による解析・計測結果は、画像信号生成部500のDSC504に出力される。DSC504は、データ解析部700による解析・計測結果を超音波画像の画像データに挿入して表示部104に出力する。これにより、超音波画像と解析・計測結果とが表示部104に表示される。
図2は図1のデータ解析部の構成を示すブロック図である。データ解析部700は、図2に示すように、着目領域設定部701、送信フォーカス制御部702、設定音速指定部703、フォーカス指標算出部704及び環境音速決定部705を有して構成される。
着目領域設定部701は、表示部104に表示される超音波画像上において、CPU100を介してオペレータによる操作入力部200からの入力より着目領域を設定するものであり、着目領域設定手段を構成する。
送信フォーカス制御部702は、設定された着目領域に送信回路402が送信フォーカスを実行するようにCPU100に送信フォーカス指示を行うものであり、送信フォーカス指示手段を構成する。
設定音速指定部703は、CPU100の制御に基づき、RFデータ(超音波検出信号)に対して受信フォーカスを実行するための設定音速を指定するものであり、設定音速指定手段を構成する。
フォーカス指標算出部704は、シネメモリ602からRFデータを読み出し、設定音速指定部703が指定した複数の設定音速毎にRFデータに対して受信フォーカスして、RFデータのフォーカス指標を算出するものであり、フォーカス指標算出手段を構成する。
環境音速決定部705は、複数の設定音速毎のフォーカス指標に基づき、着目領域の環境音速を決定するものであり、環境音速決定手段を構成する。
このように構成された本実施形態の作用について、図3のフローチャートを用いて説明する。図3は図2のデータ解析部の処理の流れを示すフローチャートである。また、図4ないし図7は図3の処理を説明するための図である。
図3に示すように、データ解析部700は、着目領域設定部701にて表示部104に表示される超音波画像上において、CPU100を介してオペレータによる操作入力部200からの入力より着目領域を設定する(ステップS10)。
次に、データ解析部700は、設定音速指定部703にて設定音速Vの開始音速Vstと終了音速Vendを設定(ステップS20)し、設定音速Vに開始音速Vstをセットする(ステップS30)。
図4に示すように、点反射からのRFデータに対しては受信フォーカスを実施した際に強度やシャープネスを解析することのできるRF画像データを取得できる(図4参照)が、スペックル領域の無数の散乱点に対してはピーク値と方位方向の空間周波数が干渉によって崩れてしまい(図5参照)、受信フォーカスを実施した際に強度やシャープネスを解析することのできるRF画像データを取得することが困難となる。
そこで、データ解析部700は、スペックル領域の無数の散乱点に対して送信フォーカスを掛けることによって擬似的な点反射(図6参照)を形成し、取得した受信素子信号に対し受信フォーカスを実施し強度やシャープネスを解析する点反射と同様な方法によってスペックル領域においても環境音速を求める。
すなわち、データ解析部700は、送信フォーカス制御部702にて設定された着目領域に送信回路402が送信フォーカスを実行するようにCPU100に送信フォーカス指示を行い、送信フォーカス位置を擬似的な点反射とする(ステップS40)。
そして、データ解析部700は、フォーカス指標算出部704にてシネメモリ602からRFデータを読み出し、設定音速指定部703が指定した複数の設定音速毎にRFデータに対して受信フォーカスして、RF画像データのフォーカス指標を算出する(ステップS50)。
ここで図4の点反射のRF画像データの場合、図7に示すように、ピーク値と方位方向の空間周波数に設定音速による変化傾向が見られるが、図6に示すように送信フォーカスを掛けることによって擬似的な点反射を形成した時のRF画像データの場合も、図7に示す傾向が見られるため、データ解析部700は、フォーカス指標算出部704にて積分値、2乗積分値、ピーク値、コントラスト、半値幅、周波数スペクトル積分、最大値や直流成分で規格化された周波数スペクトル積分値や2乗積分値、自己相関値等をフォーカス指標として算出する(図7の場合、設定音速=Amp1490の時のフォーカス指標が最大となる)。
次にデータ解析部700は、設定音速指定部703にて設定音速Vが終了音速Vendに達したかどうか判定し(ステップS60)、設定音速Vが終了音速Vend未満ならば所定ステップ音速量ΔVを設定音速Vに加算し(ステップ70)ステップS40に戻り、設定音速Vが終了音速Vendに達したと判定するとステップS80に進む。
そして、データ解析部700は、ステップS80において、環境音速決定部705にて複数の設定音速毎のフォーカス指標に基づき、着目領域の環境音速を決定し、決定した環境音速を信号処理部502に出力して処理を終了する(図7の場合、最も高いフォーカス指標の設定音速=Amp1490が環境音速となる)。
このように本実施形態では、スペックル領域の無数の散乱点に対して送信フォーカスを掛け擬似的な点反射とし、複数の設定音速毎のフォーカス指標を生成し、複数の設定音速毎のフォーカス指標に基づき、着目領域の環境音速を決定するので、スペックル領域を含む着目領域の環境音速を点反射レベルにて適正に決定することが可能となり、高精度の超音波画像を構築することができる。
第2の実施形態:
第2の実施形態は、第1の実施形態とその構成は同じであり、データ解析部での処理が第1の実施形態と異なるので、異なる点のみ説明する。
図8は本発明の第2の実施形態に係るデータ解析部の処理の流れを示すフローチャートである。また、図9及び図10は図8の処理を説明するための図である。
図8に示すように、データ解析部700は、ステップS10の処理の後、着目領域設定部701にてパラメータNの開始数Nstと終了数Nendを設定(ステップS11)する。そして、データ解析部700は、ステップS30の処理の後、パラメータNに開始数Nstをセットする(ステップS31)。
本実施形態では、図9に示すように、データ解析部700は、例えばライン-by-ライン方式で取得したRF画像データに対してオペレータが着目領域を指定することで着目領域設定部701が着目領域を設定(ステップS10)し、この着目領域の各ラインで得られた受信素子データに対し、点反射を仮定した受信フォーカスを実施、フォーカス指標を算出し、各ライン・深さの総和をとることによって、スペックル領域においても高精度に環境音速を求める。
そこで、データ解析部700は、送信フォーカス制御部702にて設定された着目領域に送信回路402が送信フォーカスを実行するようにCPU100に送信フォーカス指示を行い、送信フォーカス位置を擬似的な点反射とし、例えば多段フォーカスを実行する(ステップS40a)。
そして、データ解析部700は、フォーカス指標算出部704にてシネメモリ602からラインN(パラメータN)のRFデータを読み出し、設定音速指定部703が指定した複数の設定音速毎にラインNのRFデータに対して点反射を仮定した受信フォーカスを実行して、ラインNのRF画像データを作成し、フォーカス指標を算出する(ステップS50a)。このRF画像データを、以降、ライン画像と呼ぶ。
次にデータ解析部700は、着目領域設定部701にてパラメータNが終了数Nendに達したかどうか判定し(ステップS51)、パラメータNが終了数Nend未満ならばパラメータNをインクリメントして(ステップ52)ステップS40aに戻り、パラメータNが終了数Nendに達したと判定するとステップS53に進む。
次に、データ解析部700は、設定速度VでのラインN(パラメータN)のフォーカス指標の総和よりフォーカス指標Σ(=ラインNstフォーカス指標+ラインNst+1フォーカス指標+…)を算出する(ステップS53)。
データ解析部700は、ステップS60、70の処理の後、環境音速決定部705にて複数の設定音速毎のフォーカス指標Σに基づき、着目領域の環境音速を決定し、決定した環境音速を信号処理部502に出力して処理を終了する(ステップS80)。
本実施形態の図8の処理により、データ解析部700は、図10に示すように、設定した設定速度Vにおける着目領域を多段フォーカスしたライン-by-ラインRFデータに基づくRF画像データよりライン毎にフォーカス指標を算出し、さらにこのライン毎のフォーカス指標の総和によりフォーカス指標Σを算出する。そして、データ解析部700は、設定速度V毎のフォーカス指標Σにより着目領域の環境音速を決定する。
すなわち、本実施形態では、ライン-by-ラインの各ラインで得られた受信素子データから、送信フォーカス位置のみでなく周囲を含めて、点反射を仮定して受信フォーカスを実施、画像構築し、フォーカス指標を計算し、各ラインの総和をとることで最終的なフォーカス指標Σを得て着目領域の環境音速を決定する。
このように本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、着目領域を構成する各ラインについて点反射を仮定して構築したRF画像データ(ライン画像)から計算したフォーカス指標の平滑化効果によって、さらに精度よく着目領域の環境音速を決定することができる。
そして本実施形態によれば、従来のライン-by-ラインの最終画像から求める方法より、着目領域の環境音速を精度よく決定することができる。すなわち、図4に示す点反射の場合、RF画像データは図7のように各ライン位置に相当する送信フォーカス位置におけるピーク値が設定音速によって変化するため、送信フォーカス位置のRF画像データのみを利用する従来の方法も、周囲を含めて利用する本実施形態も同等の精度となるが、図6に示す擬似的な点反射の場合、RF画像データは図7の傾向を示すものの、ピーク位置やプロファイルが干渉によって多少変化しているため、送信フォーカス位置の周囲を含めて利用することによってその傾向を精度よく捉えることができ、本実施形態の方が従来の方法より精度よく環境音速を決定することができる。
なお、各実施形態での着目領域は、オペレータにより設定されるとしたが、これに限らず、例えば着目領域を自動的に図9に示したRF画像データ上において移動させ、全RF画像データの環境音速を着目領域毎に決定することができる。
また、上記各実施形態のステップS50あるいはS50aにおいて、データ解析部700は、フォーカス指標算出部704にてシネメモリ602からRFデータを読み出すとしたが、これに限らず、フォーカス指標算出部704にてA/D変換器406からのRFデータ設定音速指定部703が指定した複数の設定音速毎にRFデータに対して受信フォーカスさせ、RF画像データのフォーカス指標を算出させるようにしてもよい。
第3の実施形態:
第3の実施形態は、ライン画像から環境音速を求めるために、画像強度を含めずに、周波数スペクトル形状のみを利用するようにしたものである。
すなわち、上記ライン画像(点反射を仮定した受信フォーカスを実行して作成したRF画像データ)に対して、画像強度を含めずに方位方向の空間周波数スペクトル形状のみから環境音速を求めることによって、従来のライン-by-ラインの最終画像から求める方法より、スペックルの環境音速を精度良く求めることができる。
以下、これについて詳しく説明する。
一般的に、超音波画像の点反射(PSF)は、図7を用いて既に説明したように、「画像強度」及び「周波数スペクトル形状」の両方の特性が設定音速によって変化する。そこで、この設定音速に依存するという特性を利用して環境音速を求めることができる。
しかし、超音波診断の対象がスペックルの場合、すなわち周囲散乱の干渉が存在する場合には、それによって画像強度と周波数スペクトル共に、上記設定音速依存特性に誤差を生ずる。
また、本願発明者による鋭意研究によって、画像強度と周波数スペクトルのどちらが干渉によって誤差を生じ難いかは、PSFの特性に依存することがわかった。
具体的には、受信フォーカスのみを実施した場合のPSFは画像強度よりも周波数スペクトル形状の方が干渉の影響を受け難く、また、送信フォーカスまで掛かった結果のPSFの場合はその逆に周波数スペクトル形状よりも画像強度の方が干渉の影響を受け難いことがわかった。
従って、従来の送信フォーカスまで掛かったライン-by-ラインの最終画像を利用する場合、干渉の影響を受け難い画像強度のみに基づく指標、例えば「2乗和」を利用することで精度良く環境音速を求めることができる。
ここで、ライン-by-ライン画像は、各送信に対応するライン画像の真中ラインを繋ぎ合わせた画像である。
従って、この指標は、「ライン画像の真中ラインの2乗和を複数ライン分平滑化した指標」とみなすことができる。
ここで、ライン画像において散乱点位置が真中ライン(送信フォーカスの中心)と、必ずしも一致しないこと、及び、干渉によって画像ピーク位置が真中ラインからずれることなどを踏まえると、「ライン画像の真中ラインの2乗和」を利用するよりも、「ライン画像のコントラスト」を利用する方が、正しく画像強度を評価することができ、その結果、環境音速を精度良く求めることができる。
そして、ライン画像は、擬似的な点反射に対して受信フォーカスのみを実施した画像であることから、その場合のPSFは、画像強度よりも周波数スペクトル形状の方が干渉の影響を受け難いことがわかり、従って、画像強度と周波数スペクトル形状の両方に基づく「コントラスト」より、周波数スペクトル形状のみに基づく指標、例えば、「平均値で規格化した2乗和」や「直流成分で規格化した周波数スペクトル積分」、「自己相関値」、「周波数スペクトルの半値幅」などを利用した方が精度良く環境音速を求めることができることがわかる。
以上のことから、通常の送信フォーカスまで掛かったライン-by-ライン画像を利用する場合には、「2乗和」などの画像強度のみに基づく指標を利用すると環境音速を精度良く求めることができるが、それよりも、送信フォーカスを1点に掛けて形成された擬似的な点反射に対して受信フォーカスのみを実施したライン画像に対して「平均値で規格化した2乗和」などの周波数スペクトル形状のみに基づく指標を利用した方が環境音速をより精度良く求めることができる、と言う事ができる。
「平均値で規格化した2乗和」は、パーセバルの定理から「直流成分で規格化した周波数スペクトルの2乗の積分」と同じであり、簡単な計算で求めることができ、実用的である。
「平均値で規格化した2乗和」により環境音速を求める場合、上記のように送信フォーカスを1点に掛けて形成された擬似的な点反射に対して受信フォーカスのみを実施したライン画像の周辺部程、その値が小さくなるような係数を掛けることにより、ノイズが支配的で信頼性の低い画像端部を抑制することができ、さらに不連続性も低減することができるため求めた環境音速の精度を向上させることができる。
この様子を図11に示す。図11において、左側の画像はライン画像であり、真中のグラフは画像端部抑制係数を示している。画像端部抑制係数のグラフは、横軸に方位方向画素位置をとり、縦軸に係数をとって示したものであり、グラフ中央の係数値が1で、その両側の係数値は1より小さな値となっており、これを掛けることで画像端部の値が抑制されるようになっている。図11の左側のライン画像に対して、真中の画像端部抑制係数を掛けたものが右側の画像である。この右側の画像が示すように、係数を掛けることによって画像端部の値が抑制されていることがわかる。
なお、他の指標を用いた場合でも、ライン画像周辺部を抑制することは、環境音速の精度向上に有効である。
以上説明したように、上記第3の実施形態によれば、ライン画像から環境音速を求めるために、画像強度を含めずに周波数スペクトル形状のみを利用するようにし、また特に、ライン画像の信頼性が低い画像端部を抑制すると共に、不連続性を低減するように画像端部程その値が小さくなるような係数を掛けるようにしたため、求める環境音速の精度をより向上させることができる。
なお、着目領域の環境音速を判定する際に、着目領域内が均一なスペックルではなく、着目領域内に明瞭な構造物が含まれる場合には、上述した第3の実施形態のように、ライン画像を利用して周波数スペクトル形状のみを用いて環境音速を求める方法では却って精度が劣化することが有り得る。つまり、ライン画像の真中ラインに送信フォーカスを掛けても、周辺ラインからの反射の方が強いと誤差を生じることがある。
このように着目領域内に明瞭な構造物が含まれる場合には、ライン画像を利用せずに、従来のようなライン-by-ラインの最終画像を利用して環境音速を判定するようにした方が良い。ライン-by-ライン画像は、送信フォーカスが掛かった画像なので、画像強度に基づく指標、例えば、「2乗和」を利用して環境音速を精度良く求めることができる。
そこで、次に、第4の実施形態として、着目領域に構造物が含まれるか否かを判定することで、その後どのような指標を用いて環境音速を求めていくかという処理を切り分ける方法について説明する。
第4の実施形態:
着目領域に構造物が含まれるか否か、すなわち均一なスペックルか否か、を判定する方法としては、例えば、以下のような3つの方法が考えられる。
まず一つ目として、平均値の所定倍以上の画素数の着目領域内全画素数に対する比率が所定の閾値以上か否かにより判定する方法。
次に二つ目として、対数圧縮前、又は後の深さ方向の1次微分値が所定の閾値以上となる画素があるか否かにより判定する方法。
三つ目として、レイリー分布からの逸脱度が所定の閾値以上であるか否かにより判定する方法。
ここで、さらにレイリー分布からの逸脱度による判定法としては、例えば、次のような方法が考えられる。
すなわち、レイリー分布の標準偏差σ、と平均値uとの関係は次の式で与えられる。
σ = sqrt(4/π − 1)*u
ここで、sqrt( )は、( )内の平方根を表す。
このとき、もし着目領域に構造物が含まれると、σの値が大きくなるので、着目領域の平均値から上式で得た仮想標準偏差σ0と実際の標準偏差σとの比が所定の閾値以上か否かによって判定することができる。
上に示した、いずれかの方法によって、まず着目領域に構造物が含まれるか否か、すなわち均一なスペックルかそれとも不均一か、を判定する。
次に、その結果、例えば、着目領域に構造物が含まれていないと判定された場合には、前述した第3の実施形態のように、ライン画像を利用し、画像強度を含めずに周波数スペクトル形状のみに基づいた指標により環境音速を求める。
一方、着目領域に構造物が含まれていると判定された場合には、従来のようにライン-by-ラインの最終画像を利用して環境音速を求めるようにする。このとき、真中ラインの周囲を含めずに、そのラインの強度情報のみに基づく指標、例えば、積分値、2乗積分値、ピーク値、周波数スペクトル積分値の少なくともいずれか一つを用いて環境音速を求めるようにする。
以上説明したように、上記第4の実施形態によれば、着目領域に構造物が含まれるか否か、つまり均一なスペックル領域か否か、を判定し、その結果に応じた指標を用いて環境音速を求めるようにし、特に、着目領域に構造物が含まれない場合にはライン画像を利用し、画像強度を含めずに周波数スペクトル形状のみに基づいた指標により環境音速を求め、逆に着目領域に構造物が含まれる場合にはライン画像を利用せずに、通常画像(ライン-by-ラインの最終画像)を利用して環境音速を求めるようにしたため、求める環境音速の精度をさらに向上させることができる。
以上、本発明の超音波診断装置及びその作動方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。