JP5676860B2 - 多糖類ナノファイバーとその製造方法、多糖類ナノファイバー含むイオン液体溶液と複合材料 - Google Patents
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Description
セルロースを生産する代表的なものは植物であり、セルロースは植物細胞壁を構成する多糖類であり、共存するリグニン、ヘミセルロース等を分離除去することにより取り出すことができる。
一方、キチンは昆虫やエビ、カニなどの外殻に含まれる多糖類であり、共存する蛋白質,脂質、炭酸カルシウムを分離除去することにより取り出すことができる。
これら天然物質から取り出された、セルロースおよびキチンは、非結晶性の不純物を含んでおり、そのファイバーの直径も大きいものであり、そのファイバーがより細いナノファイバーとして取り出すことができれば、超比表面積効果、ナノサイズ効果、超分子配列効果等の効果が期待されるため、近年ナノファイバーとして取り出す方法が種々開発されてきている。
従来法としでは、セルロース繊維原料を叩解処理やホモジナイズ処理などにより、繊維をフィブリル化させる方法がある(特許文献1、特許文献2)。しかし、繊維径の小さいセルロースナノファイバーを得るためには、叩解処理を十分に行う必要があり、その結果繊維に大きなダメージを与え、得られたセルロースナノファイバーの強度及びアスペクト比が低下してしまう。叩解処理を低減して繊維のダメージを抑えると、得られた繊維の繊維径が大きく、アスペクト比も小さいので良好な補強特性を有するセルロースナノファイバーが得られない。
また、従来法は生産効率が悪いという問題点もある。例えば、特許文献1の予備叩解方法はダブルディスクリファイナーで7〜15回の処理を行うことを必要とした。さらに、特許文献2に提案されたように、予備叩解したパルプを砥石板のすり合わせによりフィブリル化し、さらに高圧ホモジナイザー処理を行うと、ミクロフィブリル化セルロースが得られるが、相当な処理回数が必要となり、生産効率が低いという問題点がある。
さらに、メディア撹拌式粉砕機でミクロフィブリル状セルロースを得る方法も提案されている(特許文献3)が、繊維状セルロースを懸濁液としたものを直接に粉砕機に投入して粉砕を行うため、上記叩解処理と同様にセルロースナノファイバーにダメージを与える問題があると共に、セルロースナノファイバー化に要する時間が非常に長く、生産性が低いという問題点がある。
また、塩酸溶液中、120〜130℃で加水分解処理した後、中和、洗浄し、ディスクリファイナーで磨砕する工程を備えた方法も提案されている(特許文献4)。この方法は、酸処理によりセルロースナノファイバーを分離しやすくするので、より微細な繊維を得ることが出来る。しかし長時間の酸処理はセルロースナノファイバーにダメージを与え、セルロースナノファイバーの物性が低下する問題点がある。
非特許文献1ではキチンナノ繊維は市販キチンの非結晶相を繰り返し加水分解することによって除去することによって棒状のキチンナノ繊維が残ると報告している。この方法によると、90℃で数回の加水分解反応を繰り返すことが必要である。また、加水分解の際、高濃度量の酸を用いているので、キチンの分子構造が破壊される可能性もある。
さらに、前記水又は有機溶媒を用いて洗浄する工程の前段階の多糖類ナノファイバーを含むイオン液体溶液がナノファーバーを製造するのに有用な前駆体であることを見出した。
(1)セルロース系物質またはキチン物質から多糖類ナノファイバーを製造する方法であって、
化1化学式で表せるイオン液体と有機溶媒を含有する混合溶媒を用いてセルロース系物質またはキチン物質を膨潤及び/または部分溶解させる工程と、膨潤及び/または部分溶解された成分に化学変性又は加水分解を加える工程と、イオン液体及びその他の可溶物の一部又は全部を除去する洗浄工程とを有することを特徴とする多糖類ナノファイバーの製造方法である。
式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2は炭素1〜4のアルキル基またはアリル基である。陰イオンXはハロゲン、擬ハロゲン、炭素数1〜4までのカルボキシレート、又はチオシアネートの群から選ばれるものである。
更に、この方法により得られる前記多糖類ナノファイバーの繊維径は平均値が4nm〜500nmであることが好ましく、4nm〜200nmであることがより好ましく、4nm〜100nmであることがより一層好ましい。また、その繊維長は平均値が50nm〜50μmであることが好ましく、100nm〜10μmであることがより好ましい。
前記(1)に記載する化1化学式で表せるイオン液体と有機溶媒を含有する混合溶媒を用いてセルロース系物質またはキチン物質を膨潤及び/または部分溶解させた、または膨潤及び/または部分溶解された成分に化学変性若しくは加水分解を加えたことを特徴とする多糖類ナノファイバーを含むイオン液体溶液。
式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2は炭素1〜4のアルキル基またはアリル基である。陰イオンXはハロゲン、擬ハロゲン、炭素数1〜4までのカルボキシレート、又はチオシアネートの群から選ばれるものである。
使用するセルロース系物質またはキチン物質の形状は特に限定するものではないが、処理の容易さ及び溶媒の浸透促進の目的から、適宜粉砕してから使用してもちいるのがよい。
また、膨潤及び/または部分溶解させた後化学変性又は加水分解しする前に若しくは膨潤及び/または部分溶解させた後化学変性又は加水分解しすると同時に解繊する工程では、ホモジナイズ処理、超音波処理などによりさらに解繊を行なうことができる。
また、セルロース物質またはキチン物質をイオン液体と有機溶媒を含有する溶媒に膨潤及び/又は部分溶解させてから、機械処理または超音波処理により更に解繊することが好ましい。イオン液体と有機溶媒を含有する溶媒により膨潤及び/又は部分溶解処理を行なったセルロース系物質またはキチン物質は、ナノファイバー間の結合が弱くなっているため、外力の作用によりナノファイバーは容易に解繊される。
上記イオン液体を含有する溶液の処理後、解繊をさらに促進するための機械または超音波処理を行なうことが好ましい。方法としては機械せん断、粉砕や研磨、ホモジナイズ、または超音波処理などが挙げられる。
前記化学変性はエステル化反応とエーテル化反応は単独で行うこともできるし、エステル化反応とエーテル反応と同時に行うことも好ましい。
更に、エステルはアセテート、アセテートプロピオネート、アセテートブチレート、フタレートまたはこれらの混合エステルであるものでもよい。
エステル化剤は酸塩化物又は酸無水物であるものが好ましい。酸塩化剤としては、例えば、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化オクタノイル、塩化ステアロイル、塩化ベンゾイル、パラトルエンスルホン酸クロライド等が挙げられる。なお、酸塩化物の反応においては、触媒として働くと同時に、副生物である酸性物質を中和する目的でアルカリ性化合物を添加してもよい。具体的には、トリエチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン化合物やピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物が挙げられるが、この限りではない。
また、酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族の酸無水物、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の二塩基酸無水物が挙げられる。なお、酸無水物の反応においては触媒として、硫酸、塩酸、燐酸などの酸性触媒であるもの或いはトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を添加してもよい。
更にエステル化反応は不定形セルロースとキチンの他、ナノファイバーの表面でも行うことも好ましい。
更にエーテル化反応は不定形セルロースとキチンの他、ナノファイバーの表面でも行うことも好ましい。
加水分解反応を効率よく進行するために水の添加量は多糖類ナノファイバーを含むイオン液体溶液に対して20重量パーセントを好ましい。さらに好ましくは10重量パーセント以下である。
エステル化した場合は、水、アルコール類、ケトン類、アミド類、エーテル、芳香族等の溶媒で多糖類ナノファイバーが分散するイオン液体溶液を洗浄するのが好ましい。
好ましくはポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース又はその誘導体である。
濾紙(ADVANTECのFILTER PAPER)をハサミで3mm角に切断したもの2gを200mlのビーカに入れ、それにN,N−ジメチルアセトアミド50mLとイオン液体塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム60gを加え、80℃で磁性攪拌子で30分攪拌した後、Ultra-Turraxホモジナイザーをもちいて13000rpmで5分間処理を行なった。得られた繊維分散液を光学顕微鏡で観察をしたところ、ミクロンオーダーの単繊維に解繊され、液中に均一に状態が確認できた。
実施例1で得られたセルロースナノファイバーのイオン液体分散液をホモジナイザーで処理した後、4重量部の無水酢酸を加え、90℃で2時間反応を行った。得られた反応液を200重量部のジメチルアセトアミドに投入分散してから、遠心分離させたことにより無水酢酸又は酢酸、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、N−ジメチルアセトアミド、及び可溶性の酢酸セルロースを除去し、沈殿したナノファイバーを回収し、更に200重量部のメタノールに分散させてから再度遠心分離することによって不純物を除去した。得られたナノファイバーのSEM像とIRスペクトルは図3と4にしめす。セルロースナノファイバーの直径は約50nm前後であり、ナノファイバーの表面が後記する比較例1のSEMと比べはっきりしていることから不定形セルロースは除去されたと分った。又IR分析結果からアセチル化させたセルロースナノファイバーのIRスペクトルにエステル化の特徴とする波数1720のカルボキシ基吸収バンドがあることからナノファイバーの表面にアセチル化修飾できたと確認した。
実施例1で得られたセルロースナノファイバーのイオン液体分散液をホモジナイザーで処理した後、6重量部の無水酪酸を加え、90℃で2時間反応を行った。得られた反応液を200重量部のジメチルアセトアミドに投入分散してから、遠心分離させたことにより無水酪酸又は酪酸、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、N−ジメチルアセトアミド、及び可溶性を有するセルロースブチレートを除去し、遠心管の底に沈殿したナノファイバーを回収し、更に200重量部のメタノールに分散させてから再度遠心分離によって不純物を除去した。得られたナノファイバーのSEM像とIRスペクトルは図5と6にしめす。セルロースナノファイバーの直径は約50nm前後であり、ナノファイバーの表面が後記する比較例1のSEM像と比べはっきりしていることから不定形セルロースは除去されたと分った。又IR分析結果からブチレート化させたセルロースナノファイバーのIRスペクトルにエステル化の特徴とする波数1720のカルボキシ基吸収バンドがあることからナノファイバーの表面にブチレート化修飾ができたと確認した。
実施例1で得られたセルロースナノファイバーのイオン液体分散液をホモジナイザーで処理した後、6重量部のプロピルブロマイドを加え、90℃で2時間反応を行った。得られた反応液を200重量部のジメチルアセトアミドに投入分散してから、遠心分離させたことによりプロピルブロマイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、N−ジメチルアセトアミド、及び可溶性を有するプロビルセルロースを除去し、沈殿したナノファイバーを回収し、更に200重量部のメタノールに分散させてから再度遠心分離することによって不純物を除去した。得られたナノファイバーのSEM像とIRスペクトルは図7と8に示す。セルロースナノファイバーの直径は約50nmであり、ナノファイバーの表面が後記する比較例1のSEM像と比べはっきりしていることから不定形セルロースは除去されたと分った。又得られたナノファイバーのIRスペクトルに波数3650〜3200の水酸基吸収バンド、2975〜2970のアルキル基吸収バンド、及び1275〜1060のエーテル吸収バンドは比較例1と比較すると大きい変化があることからエーテル化反応はできたと推測した。
実施例1で得られたセルロースナノファイバーのイオン液体分散液を加水分解またはアセチル化せず、遠心分離によってイオン液体を除去し、さらにメタノールを用いて洗浄した。得られたナノファイバーの5000倍で撮影したSEM像は図9に示す。実施例1〜4で得られたナノファイバーのSEM像と比べ、比較例1で得られたナノファイバーは太くて凝集していることが分かる。さらに、その背面にある繊維がSEM像で撮影されていないことから繊維の間には非結晶性の物質(不定形の物質)が存在していることが確認できる。
実施例3で得られたセルロースナノファイバー1重量部、ポリ乳酸99重量部をラッボ混練機で190℃10分混練させてから、ホットプレス機にてフィルムを成形した。得られたフィルムの厚さは約0.2mmであった。フィルムを20mm×5mmの長方形をカットしてTMAの分析をさせた。更にDSC分析された。又液体窒素で冷却させてから折って破断断面をSEMで観察させた。TMA、とDSC分析した結果を図10、11及び表1に示す。フィルムの破断断面のSEMを図12に示す。SEM像からナノファイバーはポリ乳酸(PLA)に凝集しなく分散状態は良好であることが分った。又TMAの分析から軟化温度はPLA単独樹脂より約15℃上がることが分った。又、DSCの結果からセルロースナノファイバーと複合することにより結晶速度は顕著に向上し、結晶化熱が34J/gであった。この結果から本技術により調製したセルロースナノファイバーはポリマーの結晶核剤として利用できることが分った。
セルロースナノファイバー5重量部、ポリ乳酸95重量部以外実施例6と同様に実施して得られたフィルムのTMAとDSC分析結果は図10、13と及び表1に示す。TMAの分析から軟化温度はPLA単独樹脂より約90℃上がることが分った。DSC分析結果からセルロースナノファイバー5%を添加するとポリ乳酸の結晶速度は顕著に向上し、結晶化熱が32J/gであった。この結果から本技術により調製したセルロースナノファイバーはポリマーの結晶核剤として利用できることが分った。
比較例2
セルロースナノファイバーを添加せず以外は実施例6と同様実施した。得られたPLAフィルムのTMA、DSC分析結果を図10、14及び表1に示す。熱軟化温度は実施例5と6よりはるか低くなり、結晶ピークは検出されなかった。
また、セルロースナノファイバー、キチンナノファイバーは、環境に優しい特性と再生資源の利用などの利点を生かして、多方面の材料分野でこれまで以上の応用展開が大きく期待できる。
それ以外にもその耐熱性を生かして他の材料に混入させることにより耐熱性材料としても利用できることができる。
特に、化学変性(エステル化及びエーテル化)したセルロースナノファイバーは、水素結合が修飾されるので、再凝縮することなく高分散の状態を維持することができる。そのため、疎水性のポリマーだけでなく、親水性のポリマーにも添加することができる。
特に、キチンは生体内で分解され、良好な生体親和性を持ち、創傷治癒効果があるために医療分野で注目され、キチンナノファイバーは、例えば止血剤、人工皮膚、人口骨、生体吸収性縫合糸などへ応用ができる。
また、抗菌性、消臭効果があるため繊維分野にも利用可能である。
Claims (9)
- セルロース系物質またはキチン物質から多糖類ナノファイバーを製造する方法であって、
化1化学式で表せるイオン液体と有機溶媒を含有する混合溶媒を用いてセルロース系物質またはキチン物質を膨潤及び/または部分溶解させる工程と、膨潤及び/または部分溶解された成分にエステル化、エーテル化又は同時にエステル化とエーテル化を行う工程と、イオン液体及びその他の可溶物の一部又は全部を除去する洗浄工程とを有することを特徴とする多糖類ナノファイバーの製造方法。
式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2は炭素1〜4のアルキル基またはアリル基である。陰イオンXはハロゲン、擬ハロゲン、炭素数1〜4までのカルボキシレート、又はチオシアネートの群から選ばれるものである。 - 前記混合溶媒中のイオン液体の含有率はセルロース系物質の場合にはイオン液体の比率が30〜65質量%であり、キチン物質の場合にはイオン液体の比率が50〜95質量%であることを特徴とする請求項1に記載の多糖類ナノファイバーの製造方法。
- 前記有機溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、アセトニトリル、メタノール、エタノールの中から選ばれる一つ以上の溶媒であることを特徴とする請求項1または2に記載の多糖類ナノファイバーの製造方法。
- 前記セルロース系物質またはキチン物質を膨潤及び/または部分溶解させる工程と同時に若しくは前記工程後に、膨潤及び/または部分溶解された成分に加水分解を加える工程を設けて、前記加水分解の工程後にエステル化、エーテル化又は同時にエステル化とエーテル化を行う工程を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の多糖類ナノファイバーの製造方法。
- 前記エステル化は、無水酢酸、酢酸ビニル、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、塩化フェニルアセチルなどのエステル化試薬から選ばれる1種又は2種以上の物質を用いて行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の多糖類ナノファイバーの製造方法。
- 前記エーテル化は炭素数1〜20のハロゲン化アルキル、炭素数2〜4のアルキレンオキシドまたはモノハロゲン化酢酸などのエーテル化剤から選ばれる1種又は2種以上の物質を用いて行うことを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の多糖類ナノファイバーの製造方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載の多糖類ナノファイバーの製造方法で製造された多糖類ナノファイバー。
- 樹脂の結晶核剤として用いることを特徴とする請求項7に記載の多糖類ナノファイバー。
- 請求項7に記載の多糖類ナノファイバーと樹脂を含むことを特徴とする複合材料。
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