<<< §1. 基本的実施形態に係る力覚センサの基本構造 >>>
はじめに、本発明の基本的実施形態に係る力覚センサの基本構造を説明する。本発明に係る力覚センサは、XYZ三次元直交座標系における各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントのうち、少なくとも1軸に関する力もしくはモーメントを検出する機能を有している。そこで、以下、この力覚センサの基本構造部の構成を、XYZ三次元直交座標系に配置された状態について説明する。
図1は、本発明の基本的な実施形態に係る力覚センサの基本構造部の分解斜視図である。後述するように、本発明に係る力覚センサは、この基本構造部に、更に、検出素子と検出回路を付加することにより構成される。図示のとおり、この基本構造部は、支持体100、中間体200、受力体300を上下方向に並べて配置し、相互に接合したものである。
ここでは説明の便宜上、図に一点鎖線の矢印で示すようにX軸、Y軸、Z軸をとって、XYZ三次元直交座標系を定義する。支持体100、中間体200、受力体300は、いずれもZ軸が中心軸となるように配置されている。
中間体200は、力やモーメントを検出する際に最も重要な役割を果たす構成要素であり、検出リング210、支持接続部材221,222、受力接続部材231,232を有している。ここに示す例の場合、中間体200は、一体成形体として構成されており、検出リング210、支持接続部材221,222、受力接続部材231,232は、この一体成形体の個々の部分により構成されることになる。もちろん、中間体200は、必ずしも一体成形体として構成する必要はなく、個々の部分を接合して得られる構造体にしてもかまわない。
検出リング210は、Z軸が中心軸となるようにXY平面上に配置された円筒状(ワッシャ状)の環状構造体であり外周面も内周面も円柱面を構成する。また、この検出リング210は、検出対象となる力もしくはモーメントの作用により弾性変形を生じる材料から構成されている。支持接続部材221,222は、この検出リング210とX軸との交点位置を下方の支持体100に固定するための部材であり、その下面は支持体100の上面に接合される。一方、受力接続部材231,232は、この検出リング210とY軸との交点位置を上方の受力体300に固定するための部材であり、その上面は受力体300の下面に接合される。
支持体100は、検出リング210の下方に配置され、支持接続部材221,222を介して検出リング210を支持固定する役割を果たす。一方、受力体300は、検出リング210の上方に配置され、作用した力やモーメント(検出対象)を受力接続部材231,232を介して検出リング210に伝達する役割を果たす。図示の例の場合、支持体100は上下両面がXY平面に平行な板面を有する円盤状部材であり、Z軸が中心軸となるように配置されている。また、受力体300も上下両面がXY平面に平行な板面を有する円盤状部材であり、Z軸が中心軸となるように配置されている。なお、受力体300には、中心に円形の開口部Hが設けられているが、これは後述するように、内部に配線を施すための便宜である。
このような基本構造部を用いれば、支持体100を固定した状態において、受力体300に作用した所定の座標軸方向の力もしくは所定の座標軸まわりのモーメントを検出することができる。図2は、図1に示す基本構造部を組み立てて、ロボットアームの関節部分に利用する状態を示す斜視図である。図の下方には、ロボットの第1アーム部400が配置され、図の上方には、ロボットの第2アーム部500が配置されている。
基本構造部の支持体100の下面を第1アーム部400に接続し、受力体300の上面を第2アーム部500に接続すれば、当該基本構造部をロボットアームの関節として利用することができ、かつ、第1アーム部400を固定した状態において、第2アーム部500に作用した力やモーメントを検出する力覚センサとしての機能を果たすことができる。実際には、盤状の支持体100および盤状の受力体300には、ボルトを挿通するための孔部を形成しておき、この孔部を利用して、それぞれ第1アーム部400への固定や第2アーム部500への固定を行うことができるようにしておくのが好ましい。
もっとも、作用反作用の法則により、第1アーム部400を固定した状態において、第2アーム部500に作用した力やモーメントは、第2アーム部500を固定した状態において、第1アーム部400に作用した力やモーメントと、方向は逆転するものの等価である。
したがって、本発明に係る力覚センサは、支持体100を固定した状態において、受力体300に作用した所定の座標軸方向の力もしくは所定の座標軸まわりのモーメントを検出するセンサと言うこともできるが、逆に、受力体300を固定した状態において(この場合、部材300は支持体と呼ぶべきものになる)、支持体100に作用した(この場合、部材100は受力体と呼ぶべきものになる)所定の座標軸方向の力もしくは所定の座標軸まわりのモーメントを検出するセンサと言うこともできる。
このように、図示の基本構造部において、部材100を固定した状態において部材300に作用した力やモーメントを検出することと、部材300を固定した状態において部材100に作用した力やモーメントを検出することとは、物理的には等価である。ただ、本願明細書では、説明の便宜上、部材100を支持体100と呼び、部材300を受力体300と呼び、前者を固定した状態において、後者に作用した力やモーメントを検出する例について、以下の説明を行うことにする。
また、本願明細書では、説明の便宜上、検出リング200の下方に支持体100を配置し、検出リング200の上方に受力体300を配置した例を説明するが、もちろん、ここで言う「上方/下方」とは、図を参照しながら説明を行う上での便宜上の位置を示すものである。したがって、本発明に係る力覚センサの実装時には、天地を逆にして、検出リング200の上方に支持体100が配置され、検出リング200の下方に受力体300が配置されるような向きで利用しても何ら支障はない。
続いて、この基本構造部の構造について、より詳細な説明を行う。図3(a) は、図1に示す基本構造部の上面図である。ここでは、便宜上、中間体200の位置を破線で示す。受力体300は、中央に円形の開口部Hを有するワッシャ状の部材であり、ここに示す実施例の場合、開口部Hの径は、検出リング200の内径と一致している。したがって、この図3(a) の上面図では、この開口部Hの奥に、円盤状の支持体100の上面が覗いている。
また、ここに示す実施例の場合、支持体100の外径と受力体300の外径とが等しいため、上面図では、両者の外側輪郭線は重なっている。一方、検出リング210の外径は、支持体100や受力体300の外径よりも小さく設定されており、後述するように、検出リング210が変形を生じても、支持体100および受力体300の外側輪郭線より外側に食み出すことはない。
図1に示すように、支持接続部材221,222および受力接続部材231,232は、検出リング210の外周面から更に外側に突出する部材によって構成されている。しかも、支持接続部材221,222の上面は検出リング210の上面に揃っているが、下面は検出リング210の下面よりも所定寸法d1だけ下方に突き出している。このため、支持接続部材221,222の下面を支持体100の上面に接合したとき、検出リング210と支持体100との間に寸法d1の空隙が確保されることになる。一方、受力接続部材231,232の下面は検出リング210の下面に揃っているが、上面は検出リング210の上面よりも所定寸法d2だけ上方に突き出している。このため、受力接続部材231,232の上面を受力体300の下面に接合したとき、検出リング210と受力体300との間に寸法d2の空隙が確保されることになる。ここに示す実施例の場合、d1=d2に設定している。
図3(b) は、図1に示す基本構造部の側面図である。ここでは図示のとおり、原点Oを円形の検出リング210の中心点(支持体100の上面と受力体300の下面との中間位置)に定義し、図の右方向をX軸正方向、図の上方向をZ軸正方向、図の紙面垂直奥方向をY軸正方向にとってXYZ三次元座標系を定義している。図示のとおり、検出リング210のX軸に沿った方向の両端(図の左右両端)は、支持接続部材221,222によって支持体100の上面に接合されており、検出リング210のY軸に沿った方向の両端は、受力接続部材231,232(部材231は奥に位置するため、図3(b) には現れていない)によって受力体300の下面に接合されている。
その結果、検出リング210と下方の支持体100との間には空隙寸法d1が確保され、検出リング210と上方の受力体300との間には空隙寸法d2が確保され、検出リング210の各部は、これら空隙寸法d1,d2の範囲内において、上下に変形することが可能である。
図4(a) は、図3に示す基本構造部をXZ平面で切断した状態を示す断面図、図4(b) は、これをYZ平面で切断した状態を示す断面図である。図4(a) の断面図には、検出リング210が、X軸に沿った方向の両端部において、支持接続部材221,222を介して支持体100の上面に接合され、Y軸に沿った奥端部において、受力接続部材231を介して受力体300の下面に接合された状態が示されている。同様に、図4(b) の断面図には、検出リング210が、Y軸に沿った方向の両端部において、受力接続部材231,232を介して受力体300の下面に接合され、X軸に沿った奥端部において、受力接続部材222を介して支持体100の上面に接合された状態が示されている。
図1および図2の斜視図、図3(a) の上面図、図3(b) の側面図、図4(a) ,(b) の側断面図を参照すれば、支持体100,中間体200,受力体300からなる基本構造部の具体的な構造が容易に理解できよう。
なお、検出リング210は、検出対象となる力もしくはモーメントの作用により、少なくともその一部に弾性変形を生じる必要がある。これは、本発明に係る力覚センサが、検出リング210に生じた弾性変形に基づいて、作用した力もしくはモーメントの検出を行うためである。そのため、検出リング210の少なくとも一部は、可撓性を有する材料によって構成する必要がある。
これに対して、支持体100は検出リング210を支持固定する役割を果たす構成要素であり、受力体300は検出リング210に力やモーメントを作用させる役割を果たす構成要素であるため、原理的には、弾性変形を生じる弾性体で構成してもよいし、弾性変形を生じない剛体で構成してもよい。ただ、実用上、支持体100および受力体300は、作用する力もしくはモーメントが所定の許容範囲内である限り実質的な変形を生じない剛体によって構成するのが好ましい。これは、作用する力もしくはモーメントを、できるだけ効率的に検出リング210に伝達するためである。同様の理由により、支持接続部材221,222や受力接続部材231,232も、作用する力もしくはモーメントが所定の許容範囲内である限り実質的な変形を生じない剛体によって構成するのが好ましい。
基本構造部の各部は、原理的には任意の材料によって構成することができるが、商業的な利用を考慮すると、金属(たとえば、アルミニウム合金、鉄系金属)やプラスチックなどの一般的な工業材料を用いて構成するのが好ましい。このような一般的な工業材料からなる部材は、通常、その形態によって弾性体になったり剛体になったりする。たとえば、金属の場合、ブロック状の金属塊であれば剛体として振る舞うが、薄い板状にすれば弾性体として振る舞うことになろう。したがって、支持体100、中間体200、受力体300は、同一の材料で構成したとしても、その形態を変えることにより、それぞれに与えられた役割を果たすことができる。
たとえば、支持体100、中間体200、受力体300をすべて同一のアルミニウム合金で構成したとしても、図1の斜視図に示すように、検出リング210は、その径方向の幅やZ軸方向の厚みをある程度小さくとることにより、実質的に全体が弾性変形を生じる弾性体として機能させることができる。これに対して、受力体300は、その径方向の幅をある程度大きくとることにより、実質的に弾性変形を生じない剛体として機能させることができる。
もちろん、受力体300に力やモーメントが加わると、厳密に言えば、受力体300自身にも若干の弾性変形が生じることになるが、検出リング210に生じる弾性変形に比べてわずかな弾性変形であれば無視することができ、実質的に剛体と考えて支障はない。そこで、ここに示す実施例では、支持体100および受力体300が剛体であり、力やモーメントによる弾性変形は、専ら検出リング210において生じるものとして説明を行うことにする。
<<< §2. 基本的実施形態に係る力覚センサの検出原理 >>>
本発明に係る力覚センサは、XYZ三次元直交座標系における各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントのうち、少なくとも1軸に関する力もしくはモーメントを検出する機能を有している。そこで、以下、§1で述べた基本構造部を有する力覚センサによる力およびモーメントの検出原理を説明する。
まず、図5を参照しながら、支持体100および受力体300に対する検出リング210の固有の接続位置を説明する。図5(a) は、図1に示す中間体200の上面図である。参考のため、支持体100の位置(受力体300の位置も同様)が破線で示されている。前述したとおり、X軸上に配置された支持接続部材221,222は、検出リング210を下方の支持体100に接続する役割を果たし、Y軸上に配置された受力接続部材231,232は、検出リング210を上方の受力体300に接続する役割を果たす。
そこで、ここでは説明の便宜上、図5(a) に二点鎖線で示す環状路S(検出リング210の環状中心線)とX軸との交点P1,P2を固定点と呼び、Y軸との交点Q1,Q2を作用点と呼ぶことにする。第1の固定点P1はX軸正領域上の点、第2の固定点P2はX軸負領域上の点、第1の作用点Q1はY軸正領域上の点、第2の作用点Q2はY軸負領域上の点ということになる。
前述したように、支持体100を固定した状態において、受力体300に加えられた力もしくはモーメントを検出する動作を考える場合、検出リング210における固定点P1,P2は、支持体100上に固定された文字通り「固定点」として機能し、検出リング210における作用点Q1,Q2は、受力体300に加えられた外力が作用する文字通り「作用点」として機能することになる。したがって、支持接続部材221,222は、検出リング210を固定点P1,P2の位置において支持体100に固定する機能を果たし、受力接続部材231,232は、検出リング210を作用点Q1,Q2の位置において受力体300に接続する機能を果たすことになる。
図5(b) は、図5(a) に示す中間体200から、検出リング210の部分のみを抜き出して示す上面図である。上述したとおり、固定点P1,P2はX軸上の点であり、作用点Q1,Q2はY軸上の点である。ここでは、更に、図示のようなV軸およびW軸を定義し、これら各軸V,Wと二点鎖線で示す環状路S(検出リング210の環状中心線)との交点R1〜R4を測定点と呼ぶことにする。
ここで、V軸は、XYZ三次元直交座標系における原点Oを通り、正の領域がXY平面の第1象限、負の領域がXY平面の第3象限に位置し、X軸に対して45°をなす軸であり、W軸は、XYZ三次元直交座標系における原点Oを通り、正の領域がXY平面の第2象限、負の領域がXY平面の第4象限に位置し、V軸に対して直交する軸である。したがって、第1の測定点R1はV軸正領域に位置する点であり、第2の測定点R2はW軸正領域に位置する点であり、第3の測定点R3はV軸負領域に位置する点であり、第4の測定点R4はW軸負領域に位置する点ということになる。
続いて、§1で述べた基本構造部の支持体100を固定した状態において、受力体300に各座標軸方向に関する力およびモーメントが加えられた場合に、検出リング210にどのような外力が加わり、どのような弾性変形が生じるかを考えてみよう。図5(b) に示す検出リング210において、固定点P1,P2は支持体100上に固定されており、受力体300に加えられた力やモーメントは、作用点Q1,Q2に外力として作用するので、検出リング210は、作用点Q1,Q2に作用する外力の向きに応じた弾性変形を生じることになる。
図6は、支持体100を固定した状態において受力体300にX軸正方向の力+Fxが加わったときの検出リング210の変形態様を示す平面図である。ここで、破線は変形前の状態(図5(b) の状態)を示し、実線が変形後の状態を示している。固定点P1,P2は固定されているため定位置を保つが、作用点Q1,Q2は、X軸正方向の力+Fxの作用を受けて図の右方向に移動する。その結果、検出リング210の2点P1,Q1間の部分および2点P1,Q2間の部分は、原点Oから遠ざかる方向に弾性変形を生じ、2点P2,Q1間の部分および2点P2,Q2間の部分は、原点Oに近づく方向に弾性変形を生じる。各測定点R1〜R4の位置に着目すれば、測定点R1,R4は外側に変位し、測定点R2,R3は内側に変位することになる。このとき、Z軸方向に関する変位は生じない。
図7は、支持体100を固定した状態において受力体300にY軸正方向の力+Fyが加わったときの検出リング210の変形態様を示す平面図である。ここでも、破線は変形前の状態(図5(b) の状態)を示し、実線が変形後の状態を示している。固定点P1,P2は固定されているため定位置を保つが、作用点Q1,Q2は、Y軸正方向の力+Fyの作用を受けて図の上方向に移動する。その結果、検出リング210の2点P1,Q1間の部分および2点P2,Q1間の部分は、原点Oに近づく方向に弾性変形を生じ、2点P1,Q2間の部分および2点P2,Q2間の部分は、原点Oから遠ざかる方向に弾性変形を生じる。各測定点R1〜R4の位置に着目すれば、測定点R1,R2は内側に変位し、測定点R3,R4は外側に変位することになる。このとき、Z軸方向に関する変位は生じない。
図8は、支持体100を固定した状態において受力体300にZ軸正方向の力+Fzが加わったときの検出リング210の変形態様を示す側面図である(右がX軸正方向)。固定点P1,P2は固定されているため定位置を保つが、作用点Q1,Q2は、Z軸正方向の力+Fzの作用を受けて図の上方向に移動する。その結果、検出リング210の2点P1,Q1間の部分、2点P2,Q1間の部分、2点P1,Q2間の部分、2点P2,Q2間の部分は、図の上方に引き上げられるように弾性変形を生じる。各測定点R1〜R4の位置に着目すれば、測定点R1〜R4はいずれもZ軸正方向(図の上方)に変位する。このとき、X軸方向およびY軸方向に関する変位は生じない。
図9は、支持体100を固定した状態において受力体300にX軸正まわりのモーメント+Mxが加わったときの検出リング210の変形態様を示す側面図である(右がY軸正方向)。なお、本願では、所定の座標軸まわりに作用するモーメントの符号を、当該座標軸の正方向に右ネジを進めるための当該右ネジの回転方向を正にとることにする。したがって、図9に示すモーメント+Mxの回転方向は、右ネジをX軸正方向(図の手前方向)に進めるための回転方向になる。
この場合も、固定点P1,P2は固定されているため定位置を保つが、モーメント+Mxの作用により、作用点Q1は図の上方向に移動し、作用点Q2は図の下方向に移動する。その結果、検出リング210の2点P1,Q1間の部分および2点P2,Q1間の部分は、図の上方に引き上げられるように弾性変形を生じ、2点P1,Q2間の部分、2点P2,Q2間の部分は、図の下方に引き下げられるように弾性変形を生じる。各測定点R1〜R4の位置に着目すれば、測定点R1,R2はZ軸正方向(図の上方)に変位し、測定点R3,R4はZ軸負方向(図の下方)に変位する。このとき、X軸方向およびY軸方向に関する変位は生じない。
図10は、支持体100を固定した状態において受力体300にY軸正まわりのモーメント+Myが加わったときの検出リング210の変形態様を示す側面図である(右がX軸正方向)。この場合も、固定点P1,P2は固定されているため定位置を保つが、モーメント+Myの作用により、作用点Q1,Q2には、図において時計まわりの方向に回転させる外力が作用する。その結果、検出リング210の2点P1,Q1間の部分および2点P1,Q2間の部分は、図の下方に引き下げられるように弾性変形を生じ、2点P2,Q1間の部分、2点P2,Q2間の部分は、図の上方に引き上げられるように弾性変形を生じる。各測定点R1〜R4の位置に着目すれば、測定点R1,R4はZ軸負方向(図の下方)に変位し、測定点R2,R3はZ軸正方向(図の上方)に変位する。このとき、X軸方向およびY軸方向に関する変位は生じない。
図11は、支持体100を固定した状態において受力体300にZ軸正まわりのモーメント+Mzが加わったときの検出リング210の変形態様を示す平面図である。ここでも、破線は変形前の状態(図5(b) の状態)を示し、実線が変形後の状態を示している。固定点P1,P2は固定されているため定位置を保つが、作用点Q1,Q2は、Z軸正まわりのモーメント+Mzの作用を受け、図において反時計まわりの方向に移動する。その結果、検出リング210の2点P1,Q1間の部分および2点P2,Q2間の部分は、原点Oに近づく方向に弾性変形を生じ、2点P1,Q2間の部分および2点P2,Q1間の部分は、原点Oから遠ざかる方向に弾性変形を生じる。各測定点R1〜R4の位置に着目すれば、測定点R1,R3は内側に変位し、測定点R2,R4は外側に変位することになる。このとき、Z軸方向に関する変位は生じない。
以上、図6〜図11を参照しながら、支持体100を固定した状態において受力体300に、力+Fx,+Fy,+Fz,モーメント+Mx,+My,+Mzの6軸成分が加わったときの検出リング210の弾性変形の態様を説明した。これらの説明から、6軸成分が作用したときに、検出リング210にはそれぞれ固有の弾性変形が生じることがわかる。本発明に係る力覚センサは、この検出リング210に生じる固有の弾性変形を電気的に検出することにより、上記6軸成分を別個独立して検出するものである。その具体的な手法については、次の§3で詳述する。
<<< §3. 基本的実施形態に係る力覚センサの検出素子および検出回路 >>>
本発明に係る力覚センサは、§1で述べた基本構造部に、検出素子および検出回路を付加することにより構成される。検出素子は、検出リング210の弾性変形を電気的に検出する役割を果たし、検出回路は、検出素子の検出結果に基づいて、支持体100を固定した状態において、受力体300に作用した所定の座標軸方向の力もしくは所定の座標軸まわりのモーメントの検出値を出力する役割を果たす。ここでは、この検出素子と検出回路の具体的な実施例を説明する。
検出素子は、図6〜図11に示すような検出リング210の弾性変形を電気的に検出することができる素子であれば、どのような素子であってもかまわない。ただ、実用上は、検出リングの測定点R1〜R4の変位を電気的に検出することができる検出素子を用いるのが好ましい。より具体的には、検出リング210の測定点R1〜R4近傍の測定対象面と、これら測定対象面に対向し、支持体100もしくは受力体300に固定された対向基準面と、の距離を電気的に検出する素子を用いるのが好ましい。ここでは、そのような検出素子として、容量素子を用いた実施例を述べる。
図12は、図1に示す基本的な実施形態に係る力覚センサの基本構造部に、容量素子を構成するための固定電極を付加した状態の分解斜視図である。具体的には、この実施例の場合、円盤状の支持体100の上面に、8枚の固定電極E1〜E8が付加されている。ここでは、図示のとおり、XY平面上に定義されたX軸,Y軸,V軸,W軸(図5(b) 参照)を支持体100の上面に正射影投影して得られる投影軸として、それぞれX′軸,Y′軸,V′軸,W′軸を定義することにする。図12では、支持体100の上面に定義されたこれらの投影軸が一点鎖線で示されている。また、8枚の固定電極E1〜E8の位置を明確にするため、支持体100の上面には、検出リング210の正射影投影像が破線で示されている。
図示のとおり、第1の固定電極E1はV′軸正領域に配置され、第2の固定電極E2はW′軸正領域に配置され、第3の固定電極E3はV′軸負領域に配置され、第4の固定電極E4はW′軸負領域に配置されている。ここで、外径が検出リング210の内径よりも若干小さい円筒を、その中心軸がZ軸に一致するように支持体100の上面に配置したとすると、4枚の固定電極E1〜E4は、いずれも、当該円筒の一部をなす湾曲した導電性部材によって構成されている。したがって、中間体200を支持体100の上面に接合した場合、4枚の固定電極E1〜E4は、いずれも、検出リング210の内周面に対向した状態になる。
一方、図示のとおり、第5の固定電極E5はV′軸正領域における第1の固定電極E1の外側に配置され、第6の固定電極E6はW′軸正領域における第2の固定電極E2の外側に配置され、第7の固定電極E7はV′軸負領域における第3の固定電極E3の外側に配置され、第8の固定電極E8はW′軸負領域における第4の固定電極E4の外側に配置されている。ここで、外径が検出リング210の外径よりも若干小さく、内径が検出リング210の内径よりも若干大きいワッシャ状構造体を、その中心軸がZ軸に一致するように支持体100の上面に配置したとすると、4枚の固定電極E5〜E8は、いずれも、当該ワッシャ状構造体の一部をなす円弧状の導電性部材によって構成されている。したがって、中間体200を支持体100の上面に接合した場合、4枚の固定電極E5〜E8は、いずれも、検出リング210の下面に対向した状態になる。
図13は、図12に示す支持体100の上面図である。参考のため、検出リング210の位置(検出リング210の支持体100の上面への正射影投影像)を破線で示してある。この図13の上面図では、8枚の固定電極E1〜E8は、いずれも原点Oの投影点O′を中心として配置された円弧状の電極として描かれているが、固定電極E1〜E4と、固定電極E5〜E8とは、互いに異なる形態をもった電極である。
すなわち、固定電極E1〜E4は、上述したとおり、検出リング210の内径よりも若干小さい外径をもった円筒の一部分(投影軸V′およびW′と当該円筒との交点の近傍部分)によって構成されており、支持体100の上面からZ軸に沿った方向に立ち上がる壁のような構造体である。一方、固定電極E5〜E8は、支持体100の上面に形成された円弧状の薄い層である。
このように、固定電極E1〜E4と固定電極E5〜E8の形態は大きく異なるが、これら8枚の固定電極は、いずれも支持体100の上面に固定されており、検出リング210の表面の一部分と対向する位置に配置される、という共通の特徴を有している。そして、各固定電極E1〜E8と検出リング210の表面の対向部分とによって、それぞれ容量素子が構成されることになる。なお、支持体100として樹脂などの絶縁材料を用いる場合は、支持体100の上面に固定電極E1〜E8を直接形成することができるが、支持体100として金属などの導電性材料を用いる場合には、各固定電極E1〜E8が相互に短絡しないように、支持体100の上面と各固定電極E1〜E8との間に絶縁層を形成する必要がある。
図14は、図12に示す基本的な実施形態に係る力覚センサに検出素子として用いられる8組の容量素子C1〜C8を示す平面図である。この図14は、当該力覚センサから、検出リング210と8組の固定電極E1〜E8のみを抽出して示した平面図である。ここに示す実施例の場合、検出リング210は金属などの導電性材料によって構成されており、その表面は、共通の電極E0として機能する。8組の固定電極E1〜E8が支持体100上に固定されている電極であるのに対して、検出リング210は、力やモーメントの作用によって弾性変形を生じるため、その表面からなる電極E0は変位することになる。そこで、ここでは、検出リング210の表面からなる電極を変位電極E0と呼ぶことにする。
検出リング210全体を金属などの導電性材料で構成した場合、全体が1つの電極として機能することになるが、ここでは、容量素子としての機能を考えるため、8組の固定電極E1〜E8に対向する個々の部分を、それぞれ別個の変位電極として把握し、合計8組の変位電極が存在するものとする。結局、8組の固定電極E1〜E8と、これらに対向する8組の変位電極E0とによって、8組の容量素子C1〜C8が形成されることになる。
具体的には、固定電極E1〜E4については、図に太線で示すように、検出リング210の内周面の一部分が対向する変位電極となり、両者により、容量素子C1〜C4が形成される。一方、固定電極E5〜E8(検出リング210の下方に位置するため、図14では破線で示されている)については、検出リング210の下面の対向領域(図14の平面図では、固定電極E5〜E8と同一位置にある同一形状の領域)が対向する変位電極となり、両者により、容量素子C5〜C8が形成される。
一般に、一対の電極からなる容量素子は、当該電極間の距離を電気的に検出する検出素子として機能する。これは、容量素子の静電容量値が電極間距離に反比例する性質を有しているためである。したがって、8組の容量素子C1〜C8の静電容量値を測定すれば、各容量素子C1〜C8の電極間距離を求めることができる。ここで、各容量素子C1〜C8の一方の電極は、変位を生じない固定電極E1〜E8であるため、8組の容量素子C1〜C8の静電容量値の変動は、各固定電極E1〜E8に対向している変位電極、すなわち、検出リング210の特定箇所の変位を示すことになる。
図14に示されているとおり、容量素子C1,C5は第1の測定点R1の近傍位置に配置された検出素子であり、第1の測定点R1の変位を検出する役割を果たす。より具体的には、第1の容量素子C1は、第1の測定点R1のV軸方向の変位検出を行い、第5の容量素子C5は、第1の測定点R1のZ軸方向の変位検出を行うことになる。同様に、容量素子C2,C6は第2の測定点R2の近傍位置に配置された検出素子であり、第2の測定点R2の変位を検出する役割を果たす。より具体的には、第2の容量素子C2は、第2の測定点R2のW軸方向の変位検出を行い、第6の容量素子C6は、第2の測定点R2のZ軸方向の変位検出を行うことになる。
また、容量素子C3,C7は第3の測定点R3の近傍位置に配置された検出素子であり、第3の測定点R3の変位を検出する役割を果たす。より具体的には、第3の容量素子C3は、第3の測定点R3のV軸方向の変位検出を行い、第7の容量素子C7は、第3の測定点R3のZ軸方向の変位検出を行うことになる。同様に、容量素子C4,C8は第4の測定点R4の近傍位置に配置された検出素子であり、第4の測定点R4の変位を検出する役割を果たす。より具体的には、第4の容量素子C4は、第4の測定点R4のW軸方向の変位検出を行い、第8の容量素子C8は、第4の測定点R4のZ軸方向の変位検出を行うことになる。
このように、容量素子C1〜C4は、検出リング210内の測定点R1〜R4の径方向の変位検出を行う機能を有しているが、当該検出結果は、測定点R1〜R4の上下方向(Z軸方向)の変位の影響を受けることはない。同様に、容量素子C5〜C8は、検出リング210内の測定点R5〜R8の上下方向(Z軸方向)の変位検出を行う機能を有しているが、当該検出結果は、測定点R5〜R8の径方向の変位の影響を受けることはない。その理由は、次のとおりである。
いま、図15に示すような一対の対向電極Ea,Ebから構成される容量素子の静電容量値を考えてみよう。この例の場合、両電極Ea,Ebは、いずれも矩形の板状電極であるが、電極Eaの縦および横のサイズは、電極Ebの縦および横のサイズよりも大きくなっている。しかも、両電極Ea,Ebは、それぞれの中心点が向かい合う位置に配置されているので、電極Ebを電極Eaの形成面に投影した投影像A(正射影投影像)は、電極Eaの内部に包含されている。要するに、電極Eaは、電極Ebよりも、ひとまわり大きなサイズになっている。
この図15に示す例の場合、破線で示す投影像Aの内部の面積が、この容量素子の有効対向面積ということになるが、両電極Ea,Ebが電極面に平行な方向に変位しても、投影像Aが電極Ea内に包含されている限り、有効対向面積は一定であるので、静電容量値に変化は生じない。したがって、たとえば、電極Ebが電極面に垂直な方向に変位した場合、電極間距離に変化が生じて静電容量値が変化することになるが、電極Ebが電極面に平行な方向に変位した場合、電極間距離は変化せず、また、投影像Aが電極Ea内に包含されている限り、有効対向面積も変化しないので、静電容量値に変化は生じない。
したがって、図15に示す容量素子は、両電極Ea,Ebの、電極面に垂直な方向に関する変位検出を行う機能を有しているが、当該検出結果は、両電極Ea,Ebの、電極面に平行な方向に関する変位の影響を受けることはない。
図14に示す力覚センサにおける容量素子C5〜C8も同様の特徴を有している。すなわち、固定電極E5〜E8のサイズに比べて、変位電極E0(検出リング210の下面)のサイズの方が大きいため、測定点R1〜R4が径方向(XY平面に平行な方向)に変位を生じたとしても、当該変位が所定の許容範囲(有効対向面積が一定に維持される範囲)である限り、静電容量値に変化は生じない。
このように、容量素子C5〜C8を構成する固定電極E5〜E8を、対向する変位電極E0(検出リング210の下面)の形成面に投影した投影像は、当該変位電極E0の内部に包含される関係になっている。このため、容量素子C5〜C8は、測定点R1〜R4の上下方向(Z軸方向)の変位検出を行う機能を有しているが、測定点R1〜R4が径方向に変位を生じたとしても、当該変位が所定の許容範囲内である限り、容量素子C5〜C8によって径方向の変位が検出されることはない。別言すれば、容量素子C5〜C8の静電容量値の変化は、専ら、測定点R1〜R4の上下方向(Z軸方向)の変位を示す情報として取り扱うことが可能になる。
続いて、容量素子C1〜C4について考えてみる。図14の平面図に示されているように、容量素子C1〜C4は、固定電極E1〜E4と、検出リング210の内周面の対向部分(図では太線で示す)からなる変位電極E0と、によって構成される素子である。ここで、固定電極E1〜E4は、図12の斜視図に示されているように、支持体100の上面から上方へと伸びる電極である。実際には、この固定電極E1〜E4の高さは、その上端が検出リング210の上面よりも更に上に突き出るように設定されている。したがって、中間体200を支持体100の上面に接合すると、検出リング210の上面より更に上方に、固定電極E1〜E4の上端が所定量δだけ食み出した状態になる。
このような構成を採れば、検出リング210の測定点R1〜R4が上下方向(Z軸方向)に変位したとしても、当該変位量が上記所定量δの範囲内である限り、固定電極E1〜E4と対向電極E0(検出リング210の内周部分の対向面)との有効対向面積に変化は生じない。
結局、図14に太線で示した4箇所の部分(検出リング210の内周面の一部分)を、それぞれ固定電極E1〜E4に対向する変位電極として把握すれば、これら変位電極を、対向する固定電極E1〜E4に投影した投影像は、それぞれ当該固定電極E1〜E4の内部に包含される関係になっている(固定電極E1〜E4の方が上下に広がっている)。このため、容量素子C1〜C4は、測定点R1〜R4の径方向の変位検出を行う機能を有しているが、測定点R1〜R4が上下方向(Z軸方向)に変位を生じたとしても、当該変位が所定の許容範囲内である限り、容量素子C1〜C4によって上下方向の変位が検出されることはない。別言すれば、容量素子C1〜C4の静電容量値の変化は、専ら、測定点R1〜R4の径方向の変位を示す情報として取り扱うことが可能になる。
図16は、このような前提において、図12に示す力覚センサの支持体100を固定した状態で受力体300に対して各座標軸方向の力および各座標軸まわりのモーメントが作用したときの容量素子C1〜C8の静電容量値の変化を示すテーブルである。このテーブルで「+」は静電容量値が増加すること(両電極間距離が狭くなること)を示し、「−」は静電容量値が減少すること(両電極間距離が広くなること)を示し、「0」は静電容量値が変動しないことを示している。
なお、テーブルの「C1〜C8」欄に付記された括弧書きは、各容量素子を構成する一対の対向電極を示している。たとえば、C1欄の(E1&E0)は、容量素子C1が一対の対向電極E1,E0で構成されることを示している。ここで、電極E1は固定電極、電極E0(検出リング210の内周面の一部の領域もしくは下面の一部の領域)は変位電極である。
前述したように、容量素子C1〜C4の静電容量値の変化は、専ら、測定点R1〜R4の径方向の変位を示し、容量素子C5〜C8の静電容量値の変化は、専ら、測定点R1〜R4の上下方向(Z軸方向)の変位を示すことになる。そして、受力体300に対して、力+Fx,+Fy,+Fz,モーメント+Mx,+My,+Mzの6軸成分が加わったときの検出リング210の弾性変形の態様は、図6〜図11に示したとおりである。これらの事実を踏まえれば、図16のテーブルに示すような結果が得られることは容易に理解できよう。
たとえば、力+Fxが作用した場合、検出リング210は図6の実線に示すような弾性変形を生じることになり、測定点R1,R4は径方向に沿って原点Oから遠ざかり、測定点R2,R3は径方向に沿って原点Oに近づく。このため、容量素子C1,C4の静電容量値は減少し、容量素子C2,C3の静電容量値は増加する。このとき、測定点R1〜R4はZ軸方向には変位しないので、容量素子C5〜C8の静電容量値に変化は生じない。図16のテーブルの「+Fx」の欄の結果は、このような現象に基づいて得られた結果である。
そして、力+Fyが作用した場合、検出リング210は図7の実線に示すような弾性変形を生じることになり、測定点R1,R2は径方向に沿って原点Oに近づき、測定点R3,R4は径方向に沿って原点Oから遠ざかる。このため、容量素子C1,C2の静電容量値は増加し、容量素子C3,C4の静電容量値は減少する。このとき、測定点R1〜R4はZ軸方向には変位しないので、容量素子C5〜C8の静電容量値に変化は生じない。図16のテーブルの「+Fy」の欄の結果は、このような現象に基づいて得られた結果である。
また、力+Fzが作用した場合、検出リング210は図8に示すような弾性変形を生じることになり、測定点R1〜R4はいずれも上方向(Z軸正方向)に変位する。このため、容量素子C5〜C8の静電容量値は減少する。このとき、測定点R1〜R4は径方向には変位しないので、容量素子C1〜C4の静電容量値に変化は生じない。図16のテーブルの「+Fz」の欄の結果は、このような現象に基づいて得られた結果である。
一方、モーメント+Mxが作用した場合、検出リング210は図9に示すような弾性変形を生じることになり、測定点R1,R2は上方向(Z軸正方向)に変位し、測定点R3,R4は下方向(Z軸負方向)に変位する。このため、容量素子C5,C6の静電容量値は減少し、容量素子C7,C8の静電容量値は増加する。このとき、測定点R1〜R4は径方向には変位しないので、容量素子C1〜C4の静電容量値に変化は生じない。図16のテーブルの「+Mx」の欄の結果は、このような現象に基づいて得られた結果である。
また、モーメント+Myが作用した場合、検出リング210は図10に示すような弾性変形を生じることになり、測定点R1,R4は下方向(Z軸負方向)に変位し、測定点R2,R3は上方向(Z軸正方向)に変位する。このため、容量素子C5,C8の静電容量値は増加し、容量素子C6,C7の静電容量値は減少する。このとき、測定点R1〜R4は径方向には変位しないので、容量素子C1〜C4の静電容量値に変化は生じない。図16のテーブルの「+My」の欄の結果は、このような現象に基づいて得られた結果である。
最後に、モーメント+Mzが作用した場合、検出リング210は図11の実線に示すような弾性変形を生じることになり、測定点R1,R3は径方向に沿って原点Oに近づき、測定点R2,R4は径方向に沿って原点Oから遠ざかる。このため、容量素子C1,C3の静電容量値は増加し、容量素子C2,C4の静電容量値は減少する。このとき、測定点R1〜R4はZ軸方向には変位しないので、容量素子C5〜C8の静電容量値に変化は生じない。図16のテーブルの「+Mz」の欄の結果は、このような現象に基づいて得られた結果である。
図16のテーブルに示すとおり、8組の容量素子C1〜C8の静電容量値(ここでは、便宜上、静電容量値も同じ符号C1〜C8で示す)の変化パターンは、6軸成分が作用した個々の場合のそれぞれで異なり、しかも作用した力やモーメントが大きくなればなるほど、静電容量値の変動量も大きくなる。そこで、検出回路により、これら静電容量値C1〜C8の測定値に基づく所定の演算を施せば、6軸成分の検出値を独立して出力することが可能になる。
図17は、図12に示す力覚センサに対して作用する各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzおよび各座標軸まわりのモーメントMx,My,Mzを求める具体的な演算式を示す図である。このような演算式によって、個々の検出値が得られる理由は、図16に示すテーブルを参照すれば理解できる。たとえば、図16のテーブルの+Fxの行を参照すれば、「+」が記されたC2,C3の和と、「−」が記されたC1,C4の和と、の差により、+Fxの検出値が得られることがわかる。他の検出値についても同様である。
また、負方向の力−Fx,−Fy,−Fzおよび負まわりのモーメント−Mx,−My,−Mzが作用した場合は、図16のテーブルにおける「+」と「−」とが逆転するので、図17に示す演算式をそのまま利用すれば、各検出値を負の値として得ることができる。この図17に示す6軸成分の演算式は、他軸成分の干渉を受けないので、6軸成分についての各検出値を独立して得ることができる。たとえば、+Fyが作用した場合、C1,C2は増加し、C3,C4は減少するが、FxやMzについての演算式では、これらの増加および減少成分は互いにキャンセルされるので、FxやMzについての検出値にFyの成分が含まれることはない。その他の軸成分についても、同様に、干渉が生じることはない。
図17に示すとおり、力Fz以外の演算式は、2組の容量値の和についての差分を求める形式になっている。このような差分検出は、温度環境の変化により基本構造部が膨張もしくは収縮し、対向電極間距離が変動する誤差が生じたとしても、生じた誤差を相互にキャンセルすることができるので、外乱成分を含まない正確な検出結果を得る上で好ましい。なお、Fzについても差分検出を行いたい場合は、受力体300の下面にも固定電極を追加し(たとえば、図12において、XY平面を対称面として固定電極E5〜E8と対称となるような電極を形成すればよい)、検出リング210の上面の対向部分を変位電極とする容量素子を形成すればよい。当該容量素子は、測定点R1〜R4と受力体300の下面との距離を測定する役割を果たすので、これらの容量素子の容量値と容量素子C5〜C8の容量値との間で差分をとるようにすればよい。
図18は、図12に示す力覚センサに用いる検出回路を示す回路図である。この検出回路は、図17に示す演算式に基づいて、力Fx,Fy,FzおよびモーメントMx,My,Mzの検出値を電圧値として出力する回路である。まず、8組の容量素子C1〜C8の静電容量値C1〜C8は、C/V変換器11〜18によって、それぞれ電圧値V1〜V8に変換される。続いて、加減算回路21〜26によって、それぞれ図17に示す演算式に基づく加減算が行われ、演算結果がそれぞれFx,Fy,Mz,Mx,My,Fzの検出値として出力される。
もちろん、この図18に示す検出回路は一例を示すものであり、原理的に図17の演算式に基づく検出結果が出力できれば、どのような回路を用いてもかまわない。たとえば、一対の容量素子を並列接続すれば、接続後の容量素子対の静電容量値は、個々の容量素子の静電容量値の和になるので、図18に示す回路図において、たとえば、容量素子C2とC3とを並列接続すれば、接続後の容量素子対の静電容量値は「C2+C3」になるので、加減算回路21における「V2+V3」の演算は省略することができる。
また、図18は、アナログ演算器を用いた検出回路を示すものであるが、図17に示す演算は、もちろん、デジタル演算によって行うことも可能である。たとえば、C/V変換器11〜18の後段にA/D変換器を接続すれば、静電容量値C1〜C8をそれぞれデジタル値として取り込むことができるので、マイクロコンピュータなどのデジタル回路により、図17に示す演算を行い、各検出値をデジタル値として出力することができる。
最後に、図12に示す力覚センサで利用されている検出素子および検出回路の特徴をまとめておくと、次のように言うことができる。
まず、図12に示す力覚センサにおいて、容量素子C1〜C4として実装されている検出素子は、検出リング210の内周面の各測定点R1〜R4の近傍に内側測定対象面(図14の太線部分)を定義し、この内側測定対象面に対向する内側対向基準面を有し支持体100の上面に固定された固定構造体を設けたときに、内側測定対象面と内側対向基準面との距離を電気的に検出する機能を果たす素子ということができる。図12に示す例の場合、固定電極E1〜E4が固定構造体ということになり、その内側面が内側対向基準面ということになる。容量素子C1〜C4は、内側測定対象面(図14の太線部分)と内側対向基準面(固定電極E1〜E4の内側面)との距離を、静電容量値C1〜C4として検出する機能を果たす。
なお、図12に示す実施例の場合、固定構造体となる固定電極E1〜E4を支持体100の上面に固定しているが、受力体300の下面に固定した構造を採用してもかまわない。この場合、固定電極E1〜E4は、その上端が受力体300の下面に接合され、受力体300の下面から下方に伸びる構造体になる。この場合、固定電極E1〜E4は、支持体100に対しては変位することになるが、検出リング210と受力体300との相対的な変位を考える上では、受力体300に固定された固定電極として機能することができ、これまで述べてきた実施例と同等の役割を果たすことができる。
一方、図12に示す力覚センサにおいて、容量素子C5〜C8として実装されている検出素子は、検出リング210の下面の測定点R1〜R4の近傍に下側測定対象面を定義したときに、当該下側測定対象面と支持体100の上面との距離を電気的に検出する機能を果たす素子ということができる。容量素子C5〜C8は、検出リング210の下面の測定点R1〜R4近傍の部分領域として定義された下側測定対象面と、これに対向する支持体100の上面の所定箇所に設けられた固定電極E5〜E8との距離を、静電容量値C5〜C8として検出する機能を果たす。
もちろん、固定電極E5〜E8を支持体100の上面に設ける代わりに、受力体300の下面(XY平面を対称面としたときの対称位置)に設けるようにしてもかまわない。この場合、容量素子C5〜C8は、受力体300の下面に設けられた固定電極E5〜E8と、検出リング210の上面の測定点R1〜R4近傍の部分領域として定義された上側測定対象面と、によって構成される容量素子ということになる。固定電極E5〜E8を受力体300の下面に設けると、固定電極E5〜E8は支持体100に対して変位することになるが、やはり検出リング210と受力体300との相対的な変位を考える上では、受力体300に固定された固定電極として機能することができ、これまで述べてきた実施例と同等の役割を果たすことができる。
要するに、各測定点R1〜R4の変位を検出する検出素子として、容量素子を用いる場合は、検出リング210側の測定対象面に設けられた変位電極と、これに対向する支持体100側もしくは受力体300側の対向基準面に設けられた固定電極と、によって容量素子を構成すればよい。
特に、これまで述べた実施例の場合、検出リング210を可撓性をもった導電性材料によって構成したため、検出リング210の表面を共通変位電極E0として利用することができ、構造を単純化することができる。たとえば、図12に示す実施例では、支持体100の上面側には、8組の別個独立した固定電極E1〜E8を設ける必要があるものの、検出リング210側には、実際には何ら個別の変位電極を設ける必要はない。これは検出リング210の表面が共通の電極層としての役割を果たし、検出リング210の表面における、各固定電極E1〜E8の対向部分が各容量素子C1〜C8の個別の変位電極として機能するためである。
もちろん、検出リング210を樹脂などの絶縁性材料によって構成した場合には、検出リング210の表面における、各固定電極E1〜E8の対向部分に個別の変位電極を設けるようにすればよい。この場合、図15を用いて説明したように、各容量素子C1〜C8を構成する一方の電極を他方の電極の形成面に投影した投影像が、当該他方の電極の内部に包含される関係が維持されるようにしておけば、容量素子C1〜C4の静電容量値の変化は、専ら、測定点R1〜R4の径方向の変位を示し、容量素子C5〜C8の静電容量値の変化は、専ら、測定点R1〜R4の上下方向(Z軸方向)の変位を示すことになり、より正確な検出を行うことが可能になる。
結局、図12に示す実施例の場合、検出リング210は、Z軸が中心軸となるように、支持体100上方の所定の配置平面(この例では、XY平面)に配置された円形のリングであり、検出素子として、図14に示すように、次のような8組の容量素子が設けられていることになる。
(1) 検出リング210の内周面の第1の測定点R1近傍位置に配置された第1の変位電極(検出リング210の内周面のV軸正領域との交点近傍領域:図の太線部分)と、検出リング210の内側の上記第1の変位電極に対向する位置に配置され、支持体100の上面に固定された第1の固定電極E1と、によって構成される第1の容量素子C1。
(2) 検出リング210の内周面の第2の測定点R2近傍位置に配置された第2の変位電極(検出リング210の内周面のW軸正領域との交点近傍領域:図の太線部分)と、検出リング210の内側の上記第2の変位電極に対向する位置に配置され、支持体100の上面に固定された第2の固定電極E2と、によって構成される第2の容量素子C2。
(3) 検出リング210の内周面の第3の測定点R3近傍位置に配置された第3の変位電極(検出リング210の内周面のV軸負領域との交点近傍領域:図の太線部分)と、検出リング210の内側の上記第3の変位電極に対向する位置に配置され、支持体100の上面に固定された第3の固定電極E3と、によって構成される第3の容量素子C3。
(4) 検出リング210の内周面の第4の測定点R4近傍位置に配置された第4の変位電極(検出リング210の内周面のW軸負領域との交点近傍領域:図の太線部分)と、検出リング210の内側の上記第4の変位電極に対向する位置に配置され、支持体100の上面に固定された第4の固定電極E4と、によって構成される第4の容量素子C4。
(5) 検出リング210の下面の第1の測定点R1近傍位置に配置された第5の変位電極(検出リング210の下面の測定点R1の下方に位置する領域)と、支持体100の上面の第5の変位電極に対向する位置に配置された第5の固定電極E5とによって構成される第5の容量素子C5。
(6) 検出リング210の下面の第2の測定点R2近傍位置に配置された第6の変位電極(検出リング210の下面の測定点R2の下方に位置する領域)と、支持体100の上面の第6の変位電極に対向する位置に配置された第6の固定電極E6とによって構成される第6の容量素子C6。
(7) 検出リング210の下面の第3の測定点R3近傍位置に配置された第7の変位電極(検出リング210の下面の測定点R3の下方に位置する領域)と、支持体100の上面の第7の変位電極に対向する位置に配置された第7の固定電極E7とによって構成される第7の容量素子C7。
(8) 検出リング210の下面の第4の測定点R4近傍位置に配置された第8の変位電極(検出リング210の下面の測定点R4の下方に位置する領域)と、支持体100の上面の第8の変位電極に対向する位置に配置された第8の固定電極E8とによって構成される第8の容量素子C8。
ここで、各容量素子C1〜C8を構成する一方の電極を他方の電極の形成面に投影した投影像は、他方の電極の内部に包含されるようになっており、検出リング210の変位が所定の許容範囲内である限り、各容量素子の有効対向面積は一定に維持される。このため、前述したとおり、容量素子C1〜C4の静電容量値の変化は、専ら、測定点R1〜R4の径方向の変位を示し、容量素子C5〜C8の静電容量値の変化は、専ら、測定点R1〜R4の上下方向(Z軸方向)の変位を示すことになり、正確な検出が可能になる。また、実際には、検出リング210は、可撓性をもった導電性材料によって構成されているため、検出リング210の表面が共通の電極として機能し、各容量素子C1〜C8を構成する変位電極は、いずれも検出リング210の表面の部分領域によって構成されることになる。
一方、この力覚センサの検出回路は、第1の容量素子の静電容量値をC1、第2の容量素子の静電容量値をC2、第3の容量素子の静電容量値をC3、第4の容量素子の静電容量値をC4、第5の容量素子の静電容量値をC5、第6の容量素子の静電容量値をC6、第7の容量素子の静電容量値をC7、第8の容量素子の静電容量値をC8としたときに、図17に示すとおり、
Fx=−C1+C2+C3−C4
Fy=+C1+C2−C3−C4
Fz=−C5−C6−C7−C8
Mx=−C5−C6+C7+C8
My=+C5−C6−C7+C8
Mz=+C1−C2+C3−C4
なる演算式に基づいて、X軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fz、X軸まわりのモーメントMx、Y軸まわりのモーメントMy、Z軸まわりのモーメントMzの検出値を出力する機能を果たす。具体的な検出回路の例は、図18の回路図に示したとおりである。
なお、図18の回路図に示すとおり、8組の容量素子C1〜C8と検出回路との間には配線を施す必要がある。本発明に係る力覚センサの場合、図12に示すとおり、検出リング210の内部に十分なスペースを確保することができるため、この内部スペースを利用して、各容量素子を構成する電極に対する配線が可能になる。特に、図12に示す実施例の場合、受力体300に開口部Hが形成されているため、この開口部Hを通して配線を力覚センサの外部へと導出することが可能である。もちろん、必要があれば、図18に示す検出回路を半導体集積回路として構成し、検出リング210の内部スペースに収容することもできる。
<<< §4. 本発明の変形例 >>>
以上、§1〜§3では、本発明の基本的実施形態に係る力覚センサの構造および動作を説明した。ここでは、この基本的実施形態に対する変形例をいくつか述べておく。
<4−1.中間体に関する変形例>
はじめに、中間体200に関する変形例を述べる。図19は、図1に示す基本的な実施形態に利用されている中間体200の変形例を示す斜視図である。この変形例に係る中間体200Aは、検出リング210A、支持接続部材221A,222A、受力接続部材231A,232Aによって構成される。これら各構成要素の基本的な形態および機能は、これまで述べた基本的実施形態に係る中間体200の検出リング210、支持接続部材221,222、受力接続部材231,232とほぼ同じである。
ただ、図1に示す中間体200と図19に示す中間体200Aとを比較するとわかるとおり、前者の検出リング210に比べて後者の検出リング210Aは高さ方向の厚み(Z軸方向の厚み)が小さく設定されており、同一材料によって構成した場合でも、前者の検出リング210に比べて後者の検出リング210Aの方が撓みやすくなっている。したがって、検出リング210を採用した力覚センサよりも、検出リング210Aを採用した力覚センサの方が検出感度が高くなる。
要するに、より精度の高い力覚センサが必要な場合には、図19の変形例に示すような高さ方向の厚みが小さい検出リング200Aを用い、より定格荷重の大きな力覚センサが必要な場合には、図1の基本的実施形態に示すような高さ方向の厚みが大きい検出リング200を用いるようにすればよい。
検出の基本原理に関しては、図1に示す中間体200を用いた力覚センサと、図19に示す中間体200Aを用いた力覚センサとの間に違いはない。すなわち、図19に示す中間体200Aにおいて、X軸上に配置された支持接続部材221A,222Aの下面は、Y軸上に配置された受力接続部材231A,232Aの下面より下方に突出しているため、受力接続部材231A,232Aの下面と支持体100の上面との間には所定の空隙が確保される。同様に、Y軸上に配置された受力接続部材231A,232Aの上面は、X軸上に配置された支持接続部材221A,222Aの上面より上方に突出しているため、支持接続部材221A,222Aの上面と受力体300の下面との間には所定の空隙が確保される。
図20は、図1に示す基本的な実施形態における中間体200の代わりに、図19に示す変形例に係る中間体200Aを用いて構成した基本構造部の側面図であり、図21は、当該基本構造部をXZ平面で切断した状態を示す断面図である。図20,図21を、図3(b) ,図4と比較すればわかるとおり、両者の相違は、検出リングのZ軸方向の厚みだけであり、動作原理に根本的な違いはない。検出リング210Aは、Z軸方向の厚みが小さいため撓みが生じ易くなり、検出感度を高めることができる。また、検出リング210Aの下面と支持体100の上面との距離や、検出リング210Aの上面と受力体300の下面との距離も大きく確保できるため、測定点R1〜R4の変位量を大きくとることができ、この点においても、検出感度を高める効果が得られる。
一方、図22は、図1に示す基本的な実施形態に利用されている中間体200の別な変形例を示す斜視図である。この変形例に係る中間体200Bの特徴は、上方検出リング211Bおよび下方検出リング212Bという2組の検出リングを上下2段に配置した構造を有する点である。すなわち、この変形例に係る中間体200Bは、上方検出リング211B、下方検出リング212B、支持接続部材221B,222B、受力接続部材231B,232Bによって構成される。
ここで、支持接続部材221B,222Bは、上方検出リング211Bおよび下方検出リング212Bの双方をX軸正方向端およびX軸負方向端で支持し、支持体100の上面に接続する機能を果たし、受力接続部材231B,232Bは、上方検出リング211Bおよび下方検出リング212Bの双方をY軸正方向端およびY軸負方向端で支持し、受力体200の下面に接続する機能を果たす。
この図22に示す中間体200Bにおいても、X軸上に配置された支持接続部材221B,222Bの下面は、Y軸上に配置された受力接続部材231B,232Bの下面より下方に突出しているため、受力接続部材231B,232Bおよび下方検出リング212Bの下面と支持体100の上面との間には所定の空隙が確保される。同様に、Y軸上に配置された受力接続部材231B,232Bの上面は、X軸上に配置された支持接続部材221B,222Bの上面より上方に突出しているため、支持接続部材221B,222Bおよび上方検出リング211Bの上面と受力体300の下面との間には所定の空隙が確保される。
図23は、図1に示す基本的な実施形態における中間体200の代わりに、図22に示す変形例に係る中間体200Bを用いて構成した基本構造部の側面図であり、図24は、当該基本構造部をXZ平面で切断した状態を示す断面図である。前述した中間体200Aを用いた変形例と比較するために、図20,図21に示す構造と図23,図24に示す構造とを比較すると、前者では単一の検出リング210Aしか用いられていないのに対して、後者では上方検出リング211Bおよび下方検出リング212Bという2組の検出リングが用いられている点が大きな相違点であることがわかる。
図20,図21に示す構造の場合、検出リング210AはXY平面上に配置されているが、図23,図24に示す構造の場合、2組の検出リングの配置位置は、いずれもXY平面上ではない。すなわち、上方検出リング211Bは、XY平面より若干上方にずれた位置に配置され、下方検出リング212Bは、XY平面より若干下方にずれた位置に配置されている。本発明では、このように、各検出リング211B,212Bの配置位置がXY平面からずれていても、基本的な検出原理に影響はない。
本発明に用いる検出リングは、Z軸が中心軸となるように、XY平面に平行な所定の配置平面(XY平面であってもよい)上に配置され、検出対象となる力もしくはモーメントの作用により少なくとも一部に弾性変形を生じるものであれば足りる。図23,図24に示す構造の場合、上方検出リング211Bは、XY平面の上方に位置し、XY平面に平行な配置平面上に配置されており、下方検出リング212Bは、XY平面の下方に位置し、XY平面に平行な配置平面上に配置されている。したがって、上方検出リング211Bおよび下方検出リング212Bは、いずれも、これまで述べてきた基本的実施形態に係る検出リング210と同等の機能を果たすことができる。
ここでは、この2組の検出リング211B,212Bのそれぞれについて、測定点R1〜R4を定義することにする。具体的には、上方検出リング211Bについては、図5(b) に示す検出リング210上の各測定点R1〜R4に対応する位置に測定点R1〜R4が定義され、下方検出リング212Bについても、同様に、図5(b) に示す検出リング210上の各測定点R1〜R4に対応する位置に測定点R1〜R4が定義される。
支持接続部材221B,222Bおよび受力接続部材231B,232Bによる上方検出リング211Bおよび下方検出リング212Bの接続態様は全く同じなので、支持体100を固定した状態において受力体300に、力+Fx,+Fy,+Fz,モーメント+Mx,+My,+Mzの6軸成分が加わったとき、上方検出リング211Bに生じる弾性変形の態様と、下方検出リング212Bに生じる弾性変形の態様とは全く同じになる。したがって、上方検出リング211Bに定義された4つの測定点R1〜R4の変位の態様と、下方検出リング212Bに定義された4つの測定点R1〜R4の変位の態様とは全く等価になり、両検出リング211B,212Bの変形動作は、いわばシンクロナイズしたものになる。
中間体200として、図22に示す中間体200Bを用いた変形例の場合も、検出素子を構成するための固定電極E1〜E8の構成は、図12に示す基本的実施形態の構成と同じでかまわない。図12に示す構成において、中間体200を図22に示す中間体200Bに交換すると、4組の固定電極E1〜E4は、上方検出リング211Bの内周面と下方検出リング212Bの内周面との双方に対向することになるが、相互に対向する電極によって4組の容量素子C1〜C4が形成される点に変わりはない。
すなわち、上方検出リング211Bの内周面のV軸正領域の近傍領域と、これに向かい合った固定電極E1の対向領域と、によって構成される容量素子を第1の上方容量素子C1(upper)と定義し、下方検出リング212Bの内周面のV軸正領域の近傍領域と、これに向かい合った固定電極E1の対向領域と、によって構成される容量素子を第1の下方容量素子C1(lower)と定義した場合、第1の容量素子C1は、第1の上方容量素子C1(upper)と第1の下方容量素子C1(lower)とを並列接続した容量素子ということになり、その静電容量値は、各測定点R1の径方向の変位を示すものになる。
また、上方検出リング211Bの内周面のW軸正領域の近傍領域と、これに向かい合った固定電極E2の対向領域と、によって構成される容量素子を第2の上方容量素子C2(upper)と定義し、下方検出リング212Bの内周面のW軸正領域の近傍領域と、これに向かい合った固定電極E2の対向領域と、によって構成される容量素子を第2の下方容量素子C2(lower)と定義した場合、第2の容量素子C2は、第2の上方容量素子C2(upper)と第2の下方容量素子C2(lower)とを並列接続した容量素子ということになり、その静電容量値は、各測定点R2の径方向の変位を示すものになる。
そして、上方検出リング211Bの内周面のV軸負領域の近傍領域と、これに向かい合った固定電極E3の対向領域と、によって構成される容量素子を第3の上方容量素子C3(upper)と定義し、下方検出リング212Bの内周面のV軸負領域の近傍領域と、これに向かい合った固定電極E3の対向領域と、によって構成される容量素子を第3の下方容量素子C3(lower)と定義した場合、第3の容量素子C3は、第3の上方容量素子C3(upper)と第3の下方容量素子C3(lower)とを並列接続した容量素子ということになり、その静電容量値は、各測定点R3の径方向の変位を示すものになる。
最後に、上方検出リング211Bの内周面のW軸負領域の近傍領域と、これに向かい合った固定電極E4の対向領域と、によって構成される容量素子を第4の上方容量素子C4(upper)と定義し、下方検出リング212Bの内周面のW軸負領域の近傍領域と、これに向かい合った固定電極E4の対向領域と、によって構成される容量素子を第4の下方容量素子C4(lower)と定義した場合、第4の容量素子C4は、第4の上方容量素子C4(upper)と第4の下方容量素子C4(lower)とを並列接続した容量素子ということになり、その静電容量値は、各測定点R4の径方向の変位を示すものになる。
一方、図12に示す構成において、中間体200を図22に示す中間体200Bに交換すると、4組の固定電極E5〜E8は、下方検出リング212Bの下面に対向することになるので、相互に対向する電極によって4組の容量素子C5〜C8が形成される点に変わりはなく、その静電容量値は、下方検出リング212B側の測定点R1〜R4のZ軸方向の変位を示すものになる。この場合、上方検出リング211B側の測定点R1〜R4のZ軸方向の変位は検出されないが、力+Fx,+Fy,+Fz,モーメント+Mx,+My,+Mzの6軸成分の検出を行う上では何ら支障は生じない。
もちろん、上方検出リング211B側の測定点R1〜R4のZ軸方向の変位も検出するようにし、下方検出リング212B側の測定点R1〜R4のZ軸方向の変位と上方検出リング211B側の測定点R1〜R4のZ軸方向の変位との双方を用いて(たとえば、両者の平均値を用いて)、検出対象となる力やモーメントの検出を行うようにすれば、検出精度をより向上させることが可能である。その場合には、受力体300の下面にも、固定電極E5〜E8に対応する位置(XY平面を対称面としたときの対称位置)に4組の電極を設け、これらの電極と上方検出リング211Bの対向面とによって4組の容量素子を形成し、この4組の容量素子の静電容量値に基づいて、上方検出リング211B側の測定点R1〜R4のZ軸方向の変位を検出するようにすればよい。
<4−2.複数の検出リングを用いる変形例の特徴>
§4−1では、図22に示すように、上方検出リング211Bおよび下方検出リング212Bという2組の検出リングを上下2段に配置した構造を有する中間体200Bを用いる変形例を述べたが、3組以上の検出リングを上下に配置した構造を有する中間体を用いることも可能である。
このように複数の検出リングを用いる変形例の構造を一般論として述べれば、互いに所定間隔をおいてZ軸方向に隣接して配置された複数m本(m≧2)の検出リングを備え、個々の検出リングは、いずれもZ軸が中心軸となるようにXY平面に平行な個々の配置平面上に配置されており、支持体100は最も下方に位置する検出リングの更に下方に配置され、受力体300は最も上方に位置する検出リングの更に上方に配置された構造ということができる。図22に示す実施例のように、個々の検出リング(図22の実施例の場合は、m=2であるため、上方検出リング211Bと下方検出リング212B)のそれぞれの固定点P1,P2は支持接続部材221B,222Bによって支持体100に固定され、個々の検出リングのそれぞれの作用点Q1,Q2は受力接続部材231B,232Bによって受力体300に固定されている。
実用上は、複数m本の検出リングは、いずれもZ軸が中心軸となるように個々の配置平面上に配置された同一形状同一寸法の円形のリングとし、個々の検出リングの固定点P1,P2の位置(図22の例の場合、支持接続部材221B,222Bによって支持されている位置)および作用点Q1,Q2の位置(図22の例の場合、受力接続部材231B,232Bによって支持されている位置)が、平面的に同じ位置にくるようにするのが好ましい。別言すれば、個々の検出リングの固定点P1,P2および作用点Q1,Q2のXY平面への投影像が互いに重なり合うようにすればよい。たとえば、図22には、上方検出リング211Bの固定点P1と下方検出リング212Bの固定点P1とが例示されているが、これら一対の固定点P1のXY平面への投影像は互いに重なり合う。
このような構造を採用すれば、支持接続部材は、XY平面上の同一位置に投影像を形成する、異なる検出リングの各固定点の近傍を、相互に接続するとともに支持体100に固定することができ、受力接続部材は、XY平面上の同一位置に投影像を形成する、異なる検出リングの各作用点の近傍を、相互に接続するとともに受力体300に固定することができるので、支持接続部材および受力接続部材の構造を単純化することができる。
たとえば、図22に示す例の場合、支持接続部材221Bは、上方検出リング211Bの固定点P1および下方検出リング212Bの固定点P1(いずれも、XY平面への投影像がX軸正領域上の同一位置にくる点)の近傍を、相互に接続するとともに支持体100に固定する役割を果たしており、支持接続部材222Bは、上方検出リング211Bの固定点P2および下方検出リング212Bの固定点P2(図22では図示が省略されているが、いずれもXY平面への投影像がX軸負領域上の同一位置にくる点)の近傍を、相互に接続するとともに支持体100に固定する役割を果たしている。
同様に、図22に示す例の場合、受力接続部材231Bは、上方検出リング211Bの作用点Q1および下方検出リング212Bの作用点Q1(図22では図示が省略されているが、いずれもXY平面への投影像がY軸正領域上の同一位置にくる点)の近傍を、相互に接続するとともに受力体300に固定する役割を果たしており、受力接続部材232Bは、上方検出リング211Bの作用点Q2および下方検出リング212Bの作用点Q2(図22では図示が省略されているが、いずれもXY平面への投影像がY軸負領域上の同一位置にくる点)の近傍を、相互に接続するとともに受力体300に固定する役割を果たしている。このため、図22に示す実施例における支持接続部材221B,222Bおよび受力接続部材231B,232Bの構造は、図19に示す実施例における支持接続部材221A,222Aおよび受力接続部材231A,232Aの構造と同様に、非常に単純なものになる。
要するに、複数m本の検出リングを用いた変形例においても、固定点P1,P2および作用点Q1,Q2の位置は、1本の検出リングを用いた基本的実施形態と同様に定めればよい。具体的には、個々の検出リングのそれぞれについて、図5(b) に示す位置に固定点P1,P2および作用点Q1,Q2を設定すればよい。
また、測定点R1〜R4の位置も、1本の検出リングを用いた基本的実施形態と同様に、個々の検出リングのそれぞれについて、図5(b) に示す位置に4組の測定点R1〜R4を設定すればよい。すなわち、複数m本の検出リングを用いた変形例の場合も、XYZ三次元直交座標系における原点Oを通り、正の領域がXY平面の第1象限、負の領域がXY平面の第3象限に位置し、X軸に対して45°をなすV軸と、XYZ三次元直交座標系における原点Oを通り、正の領域がXY平面の第2象限、負の領域がXY平面の第4象限に位置し、V軸に対して直交するW軸と、を定義し、個々の検出リングのそれぞれについて、XY平面への投影像がV軸正領域上に位置する点として第1の測定点R1を設定し、XY平面への投影像がW軸正領域上に位置する点として第2の測定点R2を設定し、XY平面への投影像がV軸負領域上に位置する点として第3の測定点R3を設定し、XY平面への投影像がW軸負領域上に位置する点として第4の測定点R4を設定すればよい。
特に、m=2に設定した変形例、すなわち、図12に示す基本的な実施形態における中間体200の代わりに、図22に示す中間体200Bを採用した変形例に係る力覚センサは、次のような構造上の特徴を有している。
まず、検出リングに関しては、互いに所定間隔をおいてZ軸方向に隣接して配置された上方検出リング211Bと下方検出リング212Bとを備えており、この2本の検出リング211B,212Bは、いずれもZ軸が中心軸となるようにXY平面に平行な個々の配置平面上に配置された同一形状同一寸法の円形のリングとなっている。
しかも、上述したとおり、上方検出リング211Bの第1の固定点P1のXY平面への投影像と、下方検出リング212Bの第1の固定点P1のXY平面への投影像と、は互いに重なり合い、上方検出リング211Bの第2の固定点P2のXY平面への投影像と、下方検出リング212Bの第2の固定点P2のXY平面への投影像と、は互いに重なり合い、上方検出リング211Bの第1の作用点Q1のXY平面への投影像と、下方検出リング212Bの第1の作用点Q1のXY平面への投影像と、は互いに重なり合い、上方検出リング211Bの第2の作用点Q2のXY平面への投影像と、下方検出リング212Bの第2の作用点Q2のXY平面への投影像と、は互いに重なり合っている。
また、第1の支持接続部材221Bにより、上方検出リング211Bの第1の固定点P1の近傍と下方検出リング212Bの第1の固定点P1の近傍とが相互に接続されるとともに、支持体100にも接続され、第2の支持接続部材222Bにより、上方検出リング211Bの第2の固定点P2の近傍と下方検出リング212Bの第2の固定点P2の近傍とが相互に接続されるとともに、支持体100にも接続され、第1の受力接続部材231Bにより、上方検出リング211Bの第1の作用点Q1の近傍と下方検出リング212Bの第1の作用点Q1の近傍とが相互に接続されるとともに、受力体300にも接続され、第2の受力接続部材232Bにより、上方検出リング211Bの第2の作用点Q2の近傍と下方検出リング212Bの第2の作用点Q2の近傍とが相互に接続されるとともに、受力体300にも接続されている。
一方、この変形例に係る力覚センサに検出素子として用いられる固定電極E1〜E8は、§4−1で述べたとおり、図12に示す基本的実施形態に用いられている固定電極E1〜E8をそのまま利用すればよい。この場合、各固定電極E1〜E8に対応する変位電極は、次のような各位置に構成された電極になる。もっとも、上方検出リング211Bおよび下方検出リング212Bを導電性材料によって構成すれば、個々の変位電極は、実際には、上方検出リング211Bもしくは下方検出リング212Bの表面の一部分の領域によって構成されることになる。
第1の変位電極は、上方検出リング211Bの内周面の第1の測定点R1の近傍位置と、下方検出リング212Bの内周面の第1の測定点R1の近傍位置と、の2箇所に分散して配置され、第1の固定電極E1は、この2箇所に分散して配置された変位電極の双方に対向した電極になる。第2の変位電極は、上方検出リング211Bの内周面の第2の測定点R2の近傍位置と、下方検出リング212Bの内周面の第2の測定点R2の近傍位置と、の2箇所に分散して配置され、第2の固定電極E2は、この2箇所に分散して配置された変位電極の双方に対向した電極になる。第3の変位電極は、上方検出リング211Bの内周面の第3の測定点R3の近傍位置と、下方検出リング212Bの内周面の第3の測定点R3の近傍位置と、の2箇所に分散して配置され、第3の固定電極E3は、この2箇所に分散して配置された変位電極の双方に対向した電極になる。そして第4の変位電極は、上方検出リング211Bの内周面の第4の測定点R4の近傍位置と、下方検出リング212Bの内周面の第4の測定点R4の近傍位置と、の2箇所に分散して配置され、第4の固定電極E4は、この2箇所に分散して配置された変位電極の双方に対向した電極になる。
また、第5の変位電極は、下方検出リング212Bの下面の第1の測定点R1の近傍位置に配置され、第5の固定電極E5は、この第5の変位電極に対向した電極になる。第6の変位電極は、下方検出リング212Bの下面の第2の測定点R2の近傍位置に配置され、第6の固定電極E6は、この第6の変位電極に対向した電極になる。第7の変位電極は、下方検出リング212Bの下面の第3の測定点R3の近傍位置に配置され、第7の固定電極E7は、この第7の変位電極に対向した電極になる。そして第8の変位電極は、下方検出リング212Bの下面の第4の測定点R4の近傍位置に配置され、第8の固定電極E8は、この第8の変位電極に対向した電極になる。
<4−3.複数の検出リングを用いる変形例のメリット>
ここでは、複数の検出リングを用いて力覚センサを構成するメリットを述べておく。これまで、中間体の形態としては、図1に示すような1本の厚型検出リング210を用いた中間体200、図19に示すような1本の薄型検出リング210Aを用いた中間体200A、そして図22に示すような2本の薄型検出リング210Bを用いた中間体200Bを例示した。一般に、検出リングの高さ方向の厚みおよび径方向の厚みを変えると、同じ材質でも弾性変形のしやすさが変わるため、力覚センサとしての検出感度が変化する。
したがって、§4−1で述べたとおり、精度の高い力覚センサが必要な場合には、図19に示す例のような厚みが小さい検出リング200Aを用い、定格荷重の大きな力覚センサが必要な場合には、図1に示す例のように厚みが大きい検出リング200を用いるようにすればよい。検出リングの数も同様に、力覚センサとしての検出感度に影響を及ぼすファクターである。したがって、設計者は、検出リングの数を変えることによって、設計対象となる力覚センサの精度や定格荷重を調整することも可能である。
ただ、本願発明者は、力とモーメントとの双方を検出する機能をもった力覚センサの場合、検出リングの数が、力の検出感度とモーメントの検出感度とのバランスを調整する上で重要なファクターになることを見出した。
一般的に、検出リングの各部の厚み等を変えると、全体的に弾性変形のしやすさが変わることになる。たとえば、厚みを小さくして弾性変形しやすくすると、力とモーメントの検出感度はいずれも増加し、厚みを大きくして弾性変形しにくくすると、力とモーメントの検出感度はいずれも減少する。また、同じサイズの検出リングの数を増やしてゆくと、中間体全体としては弾性変形しにくくなるため(外力が個々の検出リングに分散してしまうため)、力とモーメントの検出感度はいずれも減少する。
しかしながら、本願発明者が行った実験によると、検出リングの数を増やした場合の検出感度の減少程度が力とモーメントとでは異なる、という結果が得られた。この実験結果を踏まえると、検出リングの数は、力の検出感度とモーメントの検出感度とのバランスを調整するファクターとして非常に有効であることがわかる。したがって、複数の検出リングを用いる変形例は、力の検出感度とモーメントの検出感度とのバランスを調整した設計を行いやすくする、という固有のメリットを有することになる。
§3で述べた基本的実施形態に係る力覚センサの場合、力+Fx,+Fy,+Fz,モーメント+Mx,+My,+Mzの6軸成分の検出を行うことができる。ここで、力+Fx,+Fy,+Fzの検出感度はほぼ同じであるが、これら力についての検出感度と、モーメント+Mx,+My,+Mzの検出感度との間には、かなりの差が生じることになり、実用上は、何らかの是正を行うのが好ましい。
もっとも、力とモーメントは、そもそも異なる物理量であるため、両者の値を直接的に比較することはできない。すなわち、力は単位「N(ニュートン)」で表現される物理量であるのに対して、モーメントは単位「N・m」で表現される物理量(トルク)であり、「力の大きさF」と「力の作用線と回転中心との距離L」との積として定義されるものである。ただ、実用上は、この力覚センサを実装予定の利用環境において、上記距離Lとして具体的な数値を想定することができるので、特定用途向けの力覚センサを設計する際には、標準的な距離Lを設定した上で、力の検出感度とモーメントの検出感度とのバランスを調整するのが好ましい。
そこで、本願発明者は、図19に示す中間体200Aに類似した構造体として、次のような具体的な寸法をもった構造体を設計し(各部の寸法比は、図19に示す中間体200Aの各部の寸法比とは異なったものになる)、支持体100を固定した状態において受力体300に力+Fx,+Fy,+Fz,モーメント+Mx,+My,+Mzの6軸成分を作用させた場合の具体的な変形態様を示す数値を求めるシミュレーションを行った。以下、このような特定の寸法をもった中間体を、便宜上、「サンプルS1」と呼ぶことにする。
検出リング210Aの外径:27.5mm
検出リング210Aの内径:24.5mm
検出リング210Aの径方向の厚み(幅):1.5mm
検出リング210Aの高さ方向の厚み(幅):5.5mm
各接続部材221A,222A,232A,232Aの径方向寸法:10mm
(検出リング210Aの内周位置から、各接続部材の外周位置までの寸法)
具体的には、受力体300に、それぞれ200Nの力+Fx,+Fy,+Fzを作用させた場合と、それぞれ10N・mのモーメント+Mx,+My,+Mzを作用させた場合について、検出リング210Aに生じる具体的な変形態様を示す数値を求めることにした。ここで、具体的な変形態様を示す数値としては、図16の表の対応欄に「+」もしくは「−」が示されている容量素子(電極間距離に有意な変化が生じる容量素子)について生じた変位量の絶対値の平均値(以下、平均変位量Δと呼ぶ)を用いている。その結果、サンプルS1については、次のような平均変位量が得られた(単位:mm)。
力+Fxを作用させた場合:平均変位量Δ=0.12
力+Fyを作用させた場合:平均変位量Δ=0.12
力+Fzを作用させた場合:平均変位量Δ=0.14
モーメント+Mxを作用させた場合:平均変位量Δ=0.30
モーメント+Myを作用させた場合:平均変位量Δ=0.30
モーメント+Mzを作用させた場合:平均変位量Δ=0.063
なお、ここでは、力+Fx,+Fy,+Fzについては200N、モーメント+Mx,+My,+Mzについては10N・mという値を用いているが、これは上記寸法値をもったサンプルS1を用いた一般的な力覚センサの用途において、「力の作用線と回転中心との距離L」としてL=50mm(当該力覚センサを実装予定の利用環境において妥当と思われる想定距離)という設定を行ったためである。すなわち、回転中心から所定軸に沿って50mm離れた地点に、当該所定軸に直交する方向に200Nの力が作用すると、回転中心には、200N×0.05m=10N・mのモーメントが作用することになるので、当該利用環境において、力の検出感度とモーメントの検出感度とのバランスを評価する上では、適切な力およびモーメントの値になっている。すなわち、いずれも200Nの外力が受力体300に作用した場合を前提とした平均変位量Δということになる。
上記結果を踏まえると、少なくともL=50mmという設定環境においては、力の検出感度とモーメントの検出感度とのバランスは必ずしも良好とは言えない。そこで、本願発明者は、上記サンプルS1に対して、各部の寸法を変更したり、検出リングの数を変更したりすることにより、中間体についていくつかのバリエーションを作成し、これらバリエーションについても、同様の設定環境において、平均変位量Δを求めるシミュレーションを行った。
図25は、これら中間体の種々のサンプルについて、検出リングの数や各部の寸法を示す表である。この表に掲載されている8通りのサンプルのうち、サンプルS1〜S3は1本の検出リング(シングルリング)を用いたサンプル(図19に示す中間体200Aに相当)、サンプルW1〜W4は2本の検出リング(ダブルリング)を用いたサンプル(図22に示す中間体200Bに相当)、そしてサンプルT1は3本の検出リング(トリプルリング)を用いたサンプル(図示はされていないが、図22に示す中間体200Bにおいて、上方検出リング211Bと下方検出リング212Bとの間に、同じサイズの中間検出リングを付加したもの)である。なお、図25の表における「リング間隔」は、最も上方に配置された検出リングの下面と最も下方に配置された検出リングの上面との距離を示すものである。
この図25の表に示されている8種類のサンプルのうち、サンプルS1は、上述した各寸法値をもった基本となるサンプルであり、サンプルS2は、検出リングの高さ方向の厚みを2倍の11mmに変更したサンプルであり、サンプルS3は、検出リングの径方向の厚みを2倍の3mmに変更したサンプルである。一方、サンプルW1は、サンプルS1と同サイズの検出リングを2本に増やしたサンプルであり、サンプルW2〜W4は、サンプルW1における2本の検出リングの間隔を狭めたり、広げたりしたサンプルである。また、サンプルT1は、サンプルS1と同サイズの検出リングを3本に増やしたサンプルである。
図26は、図25に示す8種類のサンプルを用いた力覚センサにおける力とモーメントの検出感度のバランスを示す表である。具体的には、図26(a) は、200Nの力Fx,Fzが作用したときの平均変位量Δと、10N・mのモーメントMy,Mzが作用したときの平均変位量Δとを示す表であり、図26(b) は、図26(a) に示す結果をFzについての平均変位量Δに基づいて規格化した結果を示す表である。なお、力Fyが作用したときの結果は力Fxが作用したときの結果と等しくなり、モーメントMxが作用したときの結果はモーメントMyが作用したときの結果と等しくなるため、図26ではFy,Mxについての結果表示を省略している。
前述したとおり、平均変位量Δは、容量素子についての電極間距離の変位量の平均を示すものであり、実質的に検出感度を示すパラメータということになる。図26(b) の表では、Fzについての平均変位量Δに基づく規格化が行われているため、Fzの欄はすべて1.00になっている。ここで、検出感度についてバランスがとれた力覚センサを実現する上では、すべての欄の平均変位量Δが、Δ=1.00になるのが理想的である。ただ、6軸成分のすべてがΔ=1.00となるような設計は現実的には非常に困難であるので、実用上は、FzについてΔ=1.00となる規格化を行った上で、他軸成分の平均変位量Δができるだけ1.00に近くなるような設計を行うことになる。
このような観点で図26(b) の表を見ると、シングルリングのサンプルS1〜S3に比べて、ダブルリングのサンプルW1〜W4もしくはトリプルリングT1の方が、全体的に理想に近い結果を示していることがわかる。もちろん、理想的な平均変位量ΔがΔ=1.00であることを考慮すると、ダブルリングやトリプルリングのサンプルについて得られた結果は、決して十分とは言えないものの、シングルリングのサンプルに比べれば、6軸成分全体についての検出感度のバランスは改善されていることがわかる。
要するに、シングルリングの構造を採用している限りは、サンプルS2,S3のように検出リングの厚みを変えても、検出感度のバランスを改善する効果はほとんど見られないが、ダブルリングやトリプルリングの構造を採用した変形例(複数の検出リングを用いる変形例)では、検出感度のバランスを改善する効果が見られることになる。別言すれば、複数の検出リングを上下に積層する積層構造を採用すれば、力の検出感度とモーメントの検出感度とのバランスを、用いる検出リングの個数によって容易に調整することが可能になるので、内部空間を確保しつつ、力の検出感度とモーメントの検出感度とのバランスを調整した設計を行いやすい小型の力覚センサを提供することが可能になる。
なお、ダブルリングの構造を採用した4通りのサンプルW1〜W4の構造上の相違は、図25の表に示されているとおり、上方検出リング211Bと下方検出リング212Bとの間隔だけである。図26(b) に示す結果からは、間隔を狭くした方がよいのか、広くした方がよいのか、を一概に断定することはできないが、少なくともリング間隔は、バランス改善効果に影響を及ぼすパラメータの1つになっているので、実用上は、種々の間隔を試行錯誤で設定し、最も改善効果が期待できる間隔を決定すればよい。
また、図26(b) に示すとおり、トリプルリングのサンプルT1の結果と、ダブルリングW1〜W4の結果との間には、それほど大きな違いは見られなかった。本願発明者は、検出リングの本数を3本以上に増やしても、それほど大きなバランス改善効果は期待できないものと考えている。したがって、バランス改善効果を得るという観点からは、2本の検出リングを用いれば十分と言える。
<4−4.支持体および受力体に関する変形例>
ここでは、支持体および受力体に関する変形例を述べる。これまで述べてきた実施例では、たとえば、図1の斜視図に示されているように、支持体100および受力体300として、いずれも円盤状の部材を用いた例を述べたが、支持体100および受力体300の形態は必ずしも円盤にする必要はなく、任意形状の板状部材を用いて構成してもかまわないし、必ずしも板状部材である必要もない。本発明に係る力覚センサにおいて、支持体100および受力体300は、一方を固定した状態において他方に力を作用させることができればよいので、その形状は特に特定の形状に限定されるものではない。
ただ、図2に例示するように、ロボットの第1アーム部400と第2アーム部500との間に介挿して実装するようなケースを考慮すると、支持体100および受力体300を板状部材によって構成しておいた方が、取付作業が容易になる。また、中間体200に用いられる検出リング210としては、円形リングを用いるのが好ましいので、実際には、支持体100および受力体300も円盤状の部材で構成しておいた方が形状の整合性がとれて効率的である。したがって、実用上は、これまで述べてきた実施例のように、支持体100および受力体300を、上下両面がXY平面に平行になるように配置された円盤状部材によって構成するのが好ましい。
なお、これまで述べてきた実施例の場合、図1の斜視図に示されているように、支持体100としては、単なる円盤状の部材を用い、受力体300としては、円盤状の部材の中央に円形の開口部Hを設けたワッシャ状の部材を用いている。開口部Hは、内部に配線を通すための便宜である。たとえば、図12には、検出素子として支持体100の上面に8枚の固定電極E1〜E8を設けた例が示されているが、これら各電極に対する配線を基本構造部の外部まで導出し、検出回路を外部に設ける場合には、受力体300に設けられた開口部Hを通して配線を取り出すことができる。
あるいは、検出リング210の内部スペースに検出回路を配置する場合でも、当該検出回路からの検出信号(図18に示す検出回路における出力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mz)を出力ための信号線を外部に導出する際には、検出リング210の内部スペースから受力体300に設けられた開口部Hを通して信号線を取り出すことができる。
もちろん、開口部Hは、必ずしも受力体300側に設ける必要はなく、支持体100側に設けてもかまわないし、両方に設けるようにしてもかまわない。要するに、支持体100および受力体300の一方もしくは双方を、中心部に開口部Hを有する盤状部材によって構成しておけば、当該開口部Hを通して、検出素子に対する配線や、検出回路からの信号線を外部に取り出すことが可能になる。
図27は、図21に示す基本構造部における支持体100の代わりに、支持体100Cを用いた変形例をXZ平面で切断した状態を示す断面図である。支持体100Cは、円盤状の支持体100の中央部に円形の開口部hを設けたものである。この図27に示す変形例の場合、円盤状の受力体300にも円形の開口部Hが設けられているため、配線や信号線は開口部Hを通して図の上方に導出することもできるし、開口部hを通して図の下方に導出することもできる。なお、支持体100Cの上面には、8枚の固定電極E1〜E8を設ける必要があるため、開口部hの直径は、開口部Hの直径よりも若干小さくなっている。
もちろん、支持体や受力体には、必ずしも開口部を設ける必要はない。たとえば、各固定電極E1〜E8に対する配線や、検出リングの内部スペースに設けた検出回路からの信号線を、中間体の側方から外部へ導出する構成を採る場合は、支持体および受力体に開口部を形成する必要はない。
図28は、図24に示すダブルリング式基本構造部における受力体300の代わりに、受力体300Dを用いた変形例をXZ平面で切断した状態を示す断面図である。受力体300には円形の開口部Hが設けられていたが、図28に示す受力体300Dは単なる円盤状の部材である。このため、図28に示す基本構造部の場合、支持体100にも受力体300Dにも開口部は形成されていない。しかしながら、この変形例の場合、たとえば、上方検出リング211Bと下方検出リング212Bとの間の空隙部を利用して、側方から検出リングの内部空間に対する配線や信号線の出し入れが可能であるため、上下に開口部がなくても支障は生じない。
<4−5.接続部材に関する変形例>
ここでは、支持接続部材および受力接続部材に関する変形例を述べる。図29(a) は、これまで述べてきた基本的実施形態に係る検出リング210と、支持接続部材221,222および受力接続部材231,232(図では、太い破線で示してある)との位置関係を示す平面図である。既に述べたとおり、図示のようにXY座標系を定義した場合、検出リング210におけるX軸上の点として定義された固定点P1,P2は、支持接続部材221,222によって支持体100の上面に固定され、検出リング210におけるY軸上の点として定義された作用点Q1,Q2は、受力接続部材231,232によって受力体300の下面に固定される。
このように、これまで述べてきた実施例は(種々の変形例を含めて)、支持接続部材221,222および受力接続部材231,232が、検出リング210の外周面から更に外側に突出する部材によって構成されている。そして、支持接続部材221,222の下面は、検出リング210(複数の検出リングがある変形例の場合には、最も下方に位置する検出リング)の下面よりも下方に位置し、支持体100の上面に接続され、検出リング210(複数の検出リングがある変形例の場合には、最も下方に位置する検出リング)の下面と支持体100の上面との間には所定の空隙が形成される。また、受力接続部材231,232の上面は、検出リング210(複数の検出リングがある変形例の場合には、最も上方に位置する検出リング)の上面よりも上方に位置し、受力体300の下面に接続され、検出リング210(複数の検出リングがある変形例の場合には、最も上方に位置する検出リング)の上面と受力体300の下面との間には所定の空隙が形成されている。
しかも、支持接続部材221,222および受力接続部材231,232のXY平面への投影像は、支持体100のXY平面への投影像の内部に包含され、かつ、受力体300のXY平面への投影像の内部に包含されている。別言すれば、図2の斜視図に示されているように、中間体200は、支持体100と受力体300との間に挟まれた円柱状空間内にすっぽりと収容された状態になっている。
このように、検出リング210の外周部に各接続部材を配置して、支持体100もしくは受力体300に接続する構造を採用すると、支持体100もしくは受力体300に対する接続面の面積を比較的広くとることができ、接続強度を十分に確保する上で好ましい。また、図2の斜視図に示されているように、中間体200が、支持体100と受力体300との間に挟まれた円柱状空間内にすっぽりと収容された状態になっているため、検出リングに弾性変形が生じたとしても、検出リングの膨らんだ変形部分が上記円柱状空間の外側に食み出すことはなく、検出リングの一部が外部の物体に接触して検出結果に悪影響を及ぼすような事態は発生しない。
しかしながら、検出リングの内部に配線や回路を組み込むためスペースを確保するという観点からは、検出リングの直径はできるだけ大きくした方が好ましい。図29(b) は、このような観点に基づく変形例を示す平面図であり、検出リング210Eと、支持接続部材221E,222Eおよび受力接続部材231E,232E(図では、太い破線で示してある)との位置関係を示している。
図29(b) に示す検出リング210Eは、図29(a) に示す検出リング210に比べて直径が大きく設定されている。その代わり、支持接続部材221E,222Eおよび受力接続部材231E,232Eは、検出リング210Eの外周部ではなく、上面もしくは下面に配置されている。
すなわち、図29(b) に示すように、単一の検出リング210Eのみを用いたシングルリング式基本構造部について、上下両面からの接続方式を採用する場合には、支持接続部材221E,222Eは、当該検出リング210Eの下面と支持体100とを接続する部材によって構成され、受力接続部材231E,232Eは、当該検出リング210Eの上面と受力体300とを接続する部材によって構成される。
図30は、シングルリング式基本構造部について、図29(b) に示す変形例を適用した例をXZ平面で切断した状態を示す断面図である。図示のとおり、検出リング210Eの下面の固定点P1,P2の位置(図の左右両端位置)には、支持接続部材221E,222Eが配置され、支持体100の上面に対する接続が行われている。また、検出リング210Eの上面の作用点Q1,Q2の位置(図の中央位置)には、受力接続部材231E,232Eが配置され(図には、奥に位置する受力接続部材231Eのみが現れている)、受力体300の下面に対する接続が行われている。
一方、図22に示す例のように、複数の検出リングを積層したマルチリング式基本構造部について、図29(b) に示すような上下両面からの接続方式を採用する場合には、支持接続部材221E,222Eを、最も下方に位置する検出リングと支持体とを接続する部材と、上下に隣接する個々の検出リング対について上方検出リングの下面と下方検出リングの上面とを接続する部材と、によって構成すればよい。同様に、受力接続部材231E,232Eを、最も上方に位置する検出リングと受力体とを接続する部材と、上下に隣接する個々の検出リング対について上方検出リングの下面と下方検出リングの上面とを接続する部材と、によって構成すればよい。
図31は、図22に示すダブルリング式基本構造部について、図29(b) に示すような上下両面からの接続を行う変形例を適用した例をXZ平面で切断した状態を示す断面図である。
図示のとおり、上方検出リング211Fの上面の作用点Q1,Q2の位置(図の中央位置)には、受力接続部材231F1,232F1が配置され(図には、奥に位置する受力接続部材231F1のみが現れている)、受力体300の下面に対する接続が行われている。そして、更に、上方検出リング211Fの下面の作用点Q1,Q2の位置(図の中央位置)と、下方検出リング212Fの上面の作用点Q1,Q2の位置(図の中央位置)と、の間には、受力接続部材231F2,232F2が配置されている(図には、奥に位置する受力接続部材231F2のみが現れている)。
一方、下方検出リング212Fの下面の固定点P1,P2の位置(図の左右両端位置)には、支持接続部材221F2,222F2が配置され、支持体100の上面に対する接続が行われている。そして、更に、上方検出リング211Fの下面の固定点P1,P2の位置(図の左右両端位置)と、下方検出リング212Fの上面の固定点P1,P2の位置(図の左右両端位置)と、の間には、支持接続部材221F1,222F1が配置されている。
結局、この図31に示す変形例の場合、支持接続部材221F1,221F2が、上下両検出リングの固定点P1を支持体100に固定するための支持接続部材としての機能を果たし、支持接続部材222F1,222F2が、上下両検出リングの固定点P2を支持体100に固定するための支持接続部材としての機能を果たす。同様に、受力接続部材231F1,231F2が、上下両検出リングの作用点Q1を受力体300に固定するための受力接続部材としての機能を果たし、受力接続部材232F1,232F2(図31には現れていない)が、上下両検出リングの作用点Q2を受力体300に固定するための受力接続部材としての機能を果たす。
図30および図31に示す変形例のように、接続部材を検出リングの上面もしくは下面に接続する形態を採用すると、支持体100もしくは受力体300に対する接続面の面積はあまり大きくとることはできず、また、検出リングに弾性変形が生じた場合に、検出リングの膨らんだ変形部分が外側に食み出して外部の物体に接触するおそれが生じるものの、検出リングの直径を大きくすることができるため、配線や回路を組み込むためスペースを十分に確保することができるというメリットが得られる。
なお、これまで述べてきた実施例は、いずれも検出リング上に2組の固定点P1,P2と2組の作用点Q1,Q2を設定した例であるため、これに応じて、2組の支持接続部材221,222と2組の受力接続部材231,232を設けているが、本発明を実施する上で、固定点Pおよび作用点Qは、必ずしも2組ずつに限定されるものではない。本発明における固定点Pは、検出リング上の1点であって支持体に対して接続される点を意味し、本発明における作用点Qは、検出リング上の1点であって受力体に対して接続される点を意味するものである。
したがって、原理的には、少なくとも1つの固定点Pと少なくとも1つの作用点Qとが定義されており、かつ、固定点PのXY平面への投影像と作用点QのXY平面への投影像とが異なる位置に形成されるような定義が行われていれば足りる(固定点PのXY平面への投影像と作用点QのXY平面への投影像とが同じ位置に形成されてしまうと、外力の作用により検出リングに弾性変形が生じないため、検出を行うことができなくなる)。
もっとも、実用上は、2以上の固定点Pと2以上の作用点Qを設けるのが好ましい。具体的には、検出リングの輪郭に沿った環状路に、複数n個(n≧2)の固定点Pと複数n個の作用点Qとが交互に配置されるように定義し、検出素子によって、隣接配置された固定点Pと作用点Qとの間の位置に定義された測定点Rの近傍における検出リングの弾性変形を電気的に検出するようにすればよい。
これまで述べてきた実施例は、いずれも、n=2に設定した例であり、図5(b) に示すように、検出リング210の輪郭に沿った環状路S(図では二点鎖線で示されている)に、第1の固定点P1、第1の作用点Q1、第2の固定点P2、第2の作用点Q2の順に、2個の固定点および2個の作用点を配置し、当該環状路Sにおける第1の固定点P1と第1の作用点Q1との間の位置に配置された第1の測定点R1、当該環状路Sにおける第1の作用点Q1と第2の固定点P2との間の位置に配置された第2の測定点R2、当該環状路Sにおける第2の固定点P2と第2の作用点Q2との間の位置に配置された第3の測定点R3、当該環状路Sにおける第2の作用点Q2と第1の固定点P1との間の位置に配置された第4の測定点R4をそれぞれ定義したときに、検出素子が、これら第1〜第4の測定点R1〜R4の近傍における検出リング210の弾性変形を電気的に検出する機能を果たすことになる。
特に、これまで述べてきた実施例では、2組の固定点P1,P2と、2組の作用点Q1,Q2とが、互いに直交する座標系上の点となるような定義を行っている。このような定義を行うことにより、力+Fx,+Fy,+Fz,モーメント+Mx,+My,+Mzという三次元直交座標系における6軸成分を効率的に検出することが可能になる。
図5(b) に示す例の場合は、固定点P1,P2および作用点Q1,Q2は、いずれもXY平面上の点になるが、図22に示すように2組の検出リング211B,212Bを用いる変形例の場合は、個々のリングごとにそれぞれ固定点P1,P2および作用点Q1,Q2が定義され、これらの点は必ずしもXY平面上の点にはならない。ただ、このような複数のリングを用いる変形例も含めて、2組の固定点P1,P2と2組の作用点Q1,Q2の配置および中間体の構造は、次のように言うことができる。
まず、第1の固定点P1のXY平面への投影像はX軸正領域上に、第1の作用点Q1のXY平面への投影像はY軸正領域上に、第2の固定点P2のXY平面への投影像がX軸負領域上に、第2の作用点Q2のXY平面への投影像がY軸負領域上に、それぞれ位置している。
そして、XY平面への投影像がX軸正領域上に位置するように配置された第1の支持接続部材により、検出リングの第1の固定点P1近傍が支持体に接続され、XY平面への投影像がX軸負領域上に位置するように配置された第2の支持接続部材により、検出リングの第2の固定点P2近傍が支持体に接続されている。同様に、XY平面への投影像がY軸正領域上に位置するように配置された第1の受力接続部材により、検出リングの第1の作用点Q1近傍が受力体に接続され、XY平面への投影像がY軸負領域上に位置するように配置された第2の受力接続部材により、検出リングの第2の作用点Q2近傍が受力体に接続されている。
更に、検出素子は、XY平面への投影像がXY座標系の第1象限、第2象限、第3象限、第4象限にそれぞれ位置する第1の測定点R1、第2の測定点R2、第3の測定点R3、第4の測定点R4の近傍における検出リングの弾性変形を電気的に検出する役割を果たすことになる。
<4−6.検出素子に関する変形例>
最後に、検出素子に関する変形例を述べる。これまで述べてきた実施例は、いずれも検出素子として容量素子を利用した例であるが、本発明に用いる検出素子は、検出リングの弾性変形を電気的に検出することができる素子であれば、どのような素子を用いてもかまわない。
たとえば、ストレインゲージを検出素子として利用すれば、検出リングの弾性変形を各部の機械的な歪みとして電気的に検出することができる。具体的には、検出リングの測定点Rの近傍にストレインゲージを貼り付けておき、これらストレインゲージを検出素子として用いた検出回路として、ホイートストンブリッジ回路を用意しておくようにすれば、ブリッジ電圧として作用した力やモーメントを検出することが可能である。
また、これまで述べてきた実施例は、検出素子として容量素子を利用し、検出リング上の測定点Rの変位を容量素子の静電容量値の変動として検出する例であるが、測定点Rの変位を電気的に検出可能な検出素子は、必ずしも容量素子に限定されるものではなく、一般的に、距離の検出が可能な素子であれば、どのような検出素子を利用してもかまわない。
たとえば、検出リングの少なくとも測定点Rの近傍が導電性材料によって構成されていれば、その近傍において支持体に固定された渦電流変位計を検出素子として利用することが可能である。渦電流変位計は、高周波磁界によって測定点Rの近傍に渦電流を発生させる機能を有するとともに、コイルに生じるインピーダンス変化を検知する機能を有しており、当該インピーダンス変化に基づいて測定点Rとの距離を測定することができる。したがって、これまで述べてきた容量素子と同様の機能を果たすことができる。
また、検出リングの少なくとも測定点Rの近傍を磁石によって構成しておけば、その近傍において支持体に固定されたホール素子を検出素子として利用することが可能である。ホール素子に作用する磁界の強度は、測定点R近傍の磁石の変位によって変化するので、ホール素子による磁界の検出値を、距離測定値として用いることが可能になる。
この他、光ビームを利用した距離測定器を検出素子として利用することもできる。たとえば、検出リングの測定点Rの近傍に対して斜め方向に光ビームを照射する光ビーム照射器と、照射面から反射された光ビームを受光する光ビーム受光器とを、支持体側に固定しておき、光ビーム受光器による光ビームの受光位置に基づいて距離測定値を出力する測定回路を用意しておけばよい。検出リング200の測定点R近傍が変位すると、光ビームの照射位置および反射ビームの射出方向が変化することになるので、光ビーム受光器による光ビームの受光位置も変化する。したがって、測定回路は、この受光位置に基づいて距離測定値を出力することができる。