以下、添付図面に従って本発明の画像形成方法の好ましい実施の形態について詳説する。
本発明の画像形成方法は、以下に説明するインクジェット記録装置、記録媒体、及び水性インクを用いることによって構成される。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
まず、本発明の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置についての全体構成を説明する。
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、専用の記録媒体22(図14参照)に直接的に画像を形成する直接描画方式として、記録媒体22を複数のドラムで搬送しながら、それぞれのドラム上で描画、乾燥、定着を行うドラム搬送構造のインクジェット記録装置である。
インクジェット記録装置1は、記録媒体22の搬送方向の上流側から順に、記録媒体22〈枚葉紙〉を供給する給紙部10と、記録媒体22の記録面に色インクを付与して画像形成を行う描画部14と、色インクの溶媒を乾燥させる乾燥部16と、画像を堅牢化する定着部18と、画像が形成された記録媒体22を搬送して排出する排出部20とから主に構成される。このように、インクジェット記録装置1は、各部に各画像形成プロセスを配置させた構成になっている。そして、描画部14と乾燥部16とのスペース部分には第1中間搬送部26が、乾燥部16と定着部18のスペース部分には第2中間搬送部28が配置される。
(給紙部)
給紙部10は、記録媒体22を描画部14に供給する機構である。給紙部10には、給紙トレイ50が設けられ、記録媒体22は給紙トレイ50から描画部14に給紙される。なお、給紙トレイ50に収納される記録媒体22は、下記の[記録媒体]の項で詳細に説明する。
(描画部)
描画部14は、図2に示すように、渡し胴52と描画ドラム70を備え、渡し胴52は記録媒体22を給紙部10の給紙トレイ50から受け取り、描画ドラム70に受け渡す。
描画ドラム70外周面に対向する位置には、ドラム回転方向(図2において反時計回り方向)に関して上流側から順に、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色のインクにそれぞれ対応したラインヘッド型のインクヘッド72C,72M,72Y,72Kが配列される。
描画ドラム70は、その外周面に記録媒体22の搬送方向の先端を保持して記録媒体22を回転搬送する保持手段73を備えるドラムである。インクヘッド72C,72M,72Y,72Kは、記録媒体22の記録面にインクを付与するインク付与手段である。
図2に示すように、各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kは、それぞれ描画ドラム70の外周面に配置される記録媒体22における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有している。そして、各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kは、ラインヘッド型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kは、記録媒体22の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。このラインヘッド型のインクジェットヘッドは、副走査方向(記録媒体の搬送方向)に1000dpi以上のノズル密度で幅50cm以上に設けることが好ましい。
このような各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kは、それぞれ対応する色インクの液滴を描画ドラム70の外周面に保持された記録媒体22の記録面に向かって吐出する。すると、後述する記録媒体22の記録面に存在する凝集成分により、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、記録媒体22上で色材流れなどが発生しないように、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体上に画像が形成される。
なお、インクと凝集成分の反応の一例として、凝集成分として酸を用いて記録媒体22の記録面のpHをダウンすることにより顔料分散を破壊し凝集するメカニズムを用い、色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避することが考えられる。
また、各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kの打滴タイミングは、描画ドラム70に配置された回転速度を検出するエンコーダ91(図9参照)に同期させる。これにより、高精度に着弾位置を決定することができる。また、予め描画ドラム70のフレなどによる速度変動を学習し、エンコーダ91で得られた打滴タイミングを補正して、描画ドラム70のフレ、回転軸の精度、描画ドラム70の外周面の速度に依存せずに打滴ムラを低減させることができる。
また、各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kのノズル面の清掃、増粘インク排出など、メンテナンス動作はヘッドユニットを描画ドラム70から退避させて実施する。
また、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。なお、インクヘッド72C,72M,72Y,72Kのより詳細な説明については、後述する。
(乾燥部)
乾燥部16は、前記の図1に示すように、乾燥ドラム76を備え、図3に示すように、乾燥ドラム76の回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、乾燥ドラム76の周面に対向する位置に、第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82を備える。
乾燥ドラム76は、その外周面に記録媒体22を保持して回転搬送させるためのドラムである。第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82は、記録媒体22に付与されたインク溶媒に含まれる水分(水溶性有機溶媒を含む場合もある)を乾燥させるための乾燥手段である。
乾燥部16は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる工程であり、図2に示す第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82により、乾燥ドラム76に保持された記録媒体22の記録面のインク溶媒に含まれる水分を蒸発させる。
乾燥ドラム76は、その外周面に設けられた爪形状の保持手段(図2の保持手段73と同様な手段)により記録媒体22の先端を保持する。なお、乾燥ドラム76は、その外周面に吸引孔を設けて、吸引孔からの吸引により記録媒体22を密着保持してもよい。
温風噴出しノズル80からの温風の温度は50℃〜70℃とし、蒸発した水分は不図示の排出手段によりエアとともに機外に排出される。なお、回収されたエアを冷却器(ラジエータ)などで冷却して、液体として回収してもよい。
一例として、乾燥ドラム76の温度を60℃以下、第1のIRヒータ78と第2のIRヒータ82の温度を180℃、温風噴出しノズル80からの温風の温度を70℃、温風噴出しノズル80からの温風の風量を12m3/分と設定することができる。
なお、描画部14の描画ドラム70と乾燥部16の乾燥ドラム76は、構造上分離しているので、インクヘッド72C,72M,72Y,72Kにおいて、熱乾燥によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの不吐出を低減することができる。また、乾燥部16の温度設定に自由度があり、最適な乾燥温度を設定することができる。
(定着部)
定着部18は、前記の図1に示すように、定着ドラム84を備え、図4に示すように、定着ドラム84の回転方向(図4において反時計回り方向)に関して上流側から順に、定着ドラム84の周面に対向する位置に、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88、インラインセンサ90を備える。
定着ドラム84は、その外周面に記録媒体22を保持して回転搬送させるためのドラムである。第1定着ローラ86、第2定着ローラ88は、記録媒体22に形成された画像を定着させるためのローラ部材である。インラインセンサ90は、記録媒体22に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
定着ドラム84は、その外周面に設けられた爪形状の保持手段(図2の保持手段73と同様な手段)により記録媒体22の先端を保持する。なお、定着ドラム84は、前記の描画ドラム70における吸引孔74と同様に、その外周面に吸引孔を設けて、吸引孔からの吸引により記録媒体22を密着保持してもよい。
定着部18では、図4に示すように、定着ドラム84に保持された記録媒体22の記録面に前記の乾燥部16にて形成された薄層の画像層内のラテックス粒子を、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88により加圧・加熱して溶融し、記録媒体22に固定定着させる。
第1定着ローラ86、第2定着ローラ88は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラとする。そして、ラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーを付与してラテックス粒子を溶融することで、記録媒体22の凹凸に押し込み定着を行なうとともに、画像表面の凹凸をレベリングし光沢性を得ることができる。
また、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88は、定着ドラム84と一対のニップローラを形成し、少なくとも一方はローラ表面に弾性層を持ち、記録媒体22に対し均一なニップ幅を持つ構成とする。
また、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88は、画像層厚みやラテックス粒子のTg特性により、複数段設けた構成でもよい。
一例として、定着ドラム84の温度を60℃、第1定着ローラ86と第2定着ローラ88の温度を60〜80℃、第1定着ローラ86と第2定着ローラ88のニップ圧を1MPaと設定することができる。
なお、定着部18と他のドラム上に構成されたプロセスが構造上分離されているので、定着部18の温度設定は、描画部14や乾燥部16と分離して自由に設定することができる。
(排出部)
定着部18に続いて排出部20が設けられている。定着部18の定着ドラム84と排出部20の排出トレイ92との間には、これらに対接するように渡し胴94、搬送ベルト96、張架ローラ98が設けられている。記録媒体22は、渡し胴94により搬送ベルト96に送られ、排出トレイ92に排出される。
〔インクヘッドの構造〕
次に、各インクヘッドの構造について説明する。色別のインクヘッド72C,72M,72Y,72Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号100によってインクヘッドを示すものとする。
図5(a)はインクヘッド100の構造例を示す平面透視図であり、図5(b) はその一部の拡大図である。記録媒体22上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、インクヘッド100におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクヘッド100は、図5(a)、(b) に示したように、インク吐出口であるノズル102と、各ノズル102に対応する圧力室104等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)108を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体22の搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体22の搬送方向(図5中矢印S)と略直交する方向(図5中矢印M)に記録媒体22の画像形成領域の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は図示の例に限定されない。例えば、図5(a) の構成に代えて、図6 に示すように、複数のノズル102が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール100’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体22の画像形成領域の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル102に対応して設けられている圧力室104は、その平面形状が概略正方形となっており(図5(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル102への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)106が設けられている。なお、圧力室104の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図7は、インクヘッド100における記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル102に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図5(a) 中の9−9線に沿う断面図)である。
図7に示したように、各圧力室104は供給口106を介して共通流路110と連通されている。共通流路110はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路110を介して各圧力室104に供給される。
圧力室104の一部の面(図7において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)112には個別電極114を備えたアクチュエータ116が接合されている。個別電極114と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ116が変形して圧力室104の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル102からインクが吐出される。なお、アクチュエータ116には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ116の変位が元に戻る際に、共通流路110から供給口106を通って新しいインクが圧力室104に再充填される。
入力画像からデジタルハーフトーニング処理によって生成されるドットデータに応じて各ノズル102に対応したアクチュエータ116の駆動を制御することにより、ノズル102からインク滴を吐出させることができる。記録媒体22を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル102のインク吐出タイミングを制御することによって、記録媒体22上に所望の画像を記録することができる。
上述した構造を有するインク室ユニット108を図8に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット108を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影(正射影)されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル102が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズル列の高密度化を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体22の搬送方向と直交する方向に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図8に示すようなマトリクス状に配置されたノズル102を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル102-11 、102-12 、102-13 、102-14 、102-15 、102-16 を1つのブロックとし(他にはノズル102-21 、…、102-26 を1つのブロック、ノズル102-31 、…、102-36 を1つのブロック、…として)、記録媒体22の搬送速度に応じてノズル102-11 、102-12 、…、102-16 を順次駆動することで記録媒体22の搬送方向と直交する方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体22とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、記録媒体22の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ116の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔制御系の説明〕
図9は、インクジェット記録装置1のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置1は、通信インターフェース120、システムコントローラ122、プリント制御部124、第1中間搬送制御部128、ヘッドドライバ130、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、定着制御部138、インラインセンサ90、エンコーダ91、モータドライバ142、メモリ144、ヒータドライバ146、画像バッファメモリ148、吸引制御部149等を備えている。
通信インターフェース120は、ホストコンピュータ150から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース120にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ150から送出された画像データは通信インターフェース120を介してインクジェット記録装置1に取り込まれ、一旦メモリ144に記憶される。
システムコントローラ122は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置1の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ122は、通信インターフェース120、第1中間搬送制御部128、ヘッドドライバ130、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、定着制御部138、メモリ144、モータドライバ142、ヒータドライバ146、吸引制御部149等の各部を制御し、ホストコンピュータ150との間の通信制御、メモリ144の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ152やヒータ154を制御する制御信号を生成する。
メモリ144は、通信インターフェース120を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ122を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ144は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
ROM145には、システムコントローラ122のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、ROM145は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ144は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ142は、システムコントローラ122からの指示にしたがってモータ152を駆動するドライバである。図9には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号152で図示されている。例えば、図9に示すモータ152には、図1の渡し胴52、描画ドラム70、乾燥ドラム76、定着ドラム84、渡し胴94などの回転を駆動するモータ、描画ドラム70の吸引孔74から負圧吸引するためのポンプ75の駆動モータ、インクヘッド72C,72M,72Y,72Kのヘッドユニットの退避機構のモータ、などが含まれている。
ヒータドライバ146は、システムコントローラ122からの指示にしたがって、ヒータ154を駆動するドライバである。図9には、インクジェット記録装置1に備えられる複数のヒータを代表して符号154で図示されている。例えば、図9に示すヒータ154には、給紙部10において記録媒体22を予め適温に加熱しておくための不図示のプレヒータ、などが含まれている。
プリント制御部124は、システムコントローラ122の制御にしたがい、メモリ144内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ130に供給する制御部である。プリント制御部124において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ130を介してインクヘッド100のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部124には画像バッファメモリ148が備えられており、プリント制御部124における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ148に一時的に格納される。なお、図9において画像バッファメモリ148はプリント制御部124に付随する態様で示されているが、メモリ144と兼用することも可能である。また、プリント制御部124とシステムコントローラ122とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース120を介して外部から入力され、メモリ144に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データがメモリ144に記憶される。
インクジェット記録装置1では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ144に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ122を介してプリント制御部124に送られ、該プリント制御部124において閾値マトリクスや誤差拡散法などを用いたハーフトーニング処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
即ち、プリント制御部124は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部124で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ148に蓄えられる。
ヘッドドライバ130は、プリント制御部124から与えられる印字データ(即ち、画像バッファメモリ148に記憶されたドットデータ)に基づき、インクヘッド100の各ノズル102に対応するアクチュエータ116を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ130にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
ヘッドドライバ130から出力された駆動信号がインクヘッド100に加えられることによって、該当するノズル102からインクが吐出される。記録媒体22を所定の速度で搬送しながらインクヘッド100からのインク吐出を制御することにより、記録媒体22上に画像が形成される。
また、システムコントローラ122は、第1中間搬送制御部128、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、定着制御部138、吸引制御部149を制御する。なお、第1及び第2の中間搬送部26、28等の装置構成については図11参照。
第1中間搬送制御部128は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、第1の中間搬送部26の中間搬送体30や搬送ガイド32の動作を制御する。具体的には、中間搬送体30において、中間搬送体30自体の回転駆動、中間搬送体30に備わる保持手段34の回動やブロワ38の駆動などを制御する。また、搬送ガイド32においては、吸引孔42から吸引動作を行うためのポンプ43の動作などを制御する。
図10に、第1中間搬送制御部128のシステム構成を示す要部ブロック図を示す。図10に示すように、第1中間搬送制御部128は、中間搬送体回転駆動部141、送風制御部143、負圧制御部147を構成する。
中間搬送体回転駆動部141により中間搬送体30自体の回転駆動を制御する。
送風制御部143により、ブロワ38からの送風の温度や風量を調整して、効率的に水性インクに含まれる水分乾燥及び 高沸点溶媒の低粘化や浸透を促進させるように制御させることができる。また、記録媒体22の種類に応じてブロワ38からの送風の風量を制御して、送風による正圧の大きさを制御してもよい。また、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに応じて、ブロワ38からの送風の風量を制御して、送風による正圧の大きさを制御してもよい。また、記録媒体22の種類(例えば、上質紙、コート紙などの種類)に応じてブロワ38からの送風の温度を制御してもよい。
負圧制御部147により、ポンプ43を制御して、水性インクに含まれる溶媒を浸透させるように、記録媒体22の記録面と反対側の面である非記録面から吸引する。また、ポンプ43により付与する負圧を、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに基づき可変するように制御してもよい。また、記録媒体22の種類に応じてポンプ43により付与する負圧の大きさを制御してもよい。
第2中間搬送制御部132と第3中間搬送制御部136は、第1中間搬送制御部128と同様なシステム構成を有し、システムコントローラ122からの指示にしたがい、各々第1の中間搬送部26と第2の中間搬送部28の中間搬送体30や搬送ガイド32の動作を制御する。
乾燥制御部134は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、乾燥部16における第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82の動作を制御する。
定着制御部138は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、定着部18における第1定着ローラ86、第2定着ローラ88の動作を制御する。
吸引制御部149は、描画部14の描画ドラム70の吸引孔74に接続されるポンプ75の動作を制御する。
また、システムコントローラ122には、インラインセンサ90から記録媒体22に付されたチェックパターンや記録媒体22の水分量、表面温度、光沢度などの計測結果のデータの検出信号も入力される。さらに、エンコーダ91から描画ドラム70の回転速度の検出信号も入力され、ヘッドドライバ130を介してインクヘッド100の打滴タイミングを制御する。
〔中間搬送部〕
次に、第1及び第2の中間搬送部26、28の構造について説明する。
第1の中間搬送部26は、記録媒体22を描画部14の描画ドラム70から乾燥部16の乾燥ドラム76へ搬送するための搬送手段である。第2の中間搬送部28は、記録媒体22を乾燥部16の乾燥ドラム76から定着部18の定着ドラム84へ搬送するための搬送手段である。
第1の中間搬送部26、第2の中間搬送部28の構造は共通しているので、これらを代表して第1の中間搬送部26について説明する。
第1中間搬送部26は、大きく分けて中間搬送体30と搬送ガイド32から構成される。
中間搬送体30は、描画部14の圧胴ドラムである描画ドラム70から受け取った記録媒体22の先端を保持して回転移動させて、乾燥ドラム76に記録媒体22を受け渡す手段である。そして、記録媒体22の先端を保持するための爪形状の保持手段34を有している。この保持手段34は、円軌跡を描きながら回転する。本実施形態では、2つの保持手段34が中間搬送体30の両端部に備えられているが、保持手段34の数はこれに限らない。
図12は、第1の中間搬送部26の断面図であり、図12(b)は図12(a)のA−A断面図である。
中間搬送体30は、図12(b)に示すように、搬送される記録媒体22の幅方向(搬送方向に垂直な方向)に間隔を空けて固設されたフレーム31,33にベアリング35,37を介して回転可能に設けられている。
図12(a)と図12(b)に示すように、中間搬送体30の表面には、記録媒体22の記録面に対して送風を送り出すための複数の送風口36が形成されている。そして、送風口36は、送風を送り出す送風手段としてのブロワ38に接続されている。なお、一例として、ブロワ38から送り出される送風を、温度が70℃の温風とし、風量を1m3/分に設定することも考えられる。また、複数の送風口36から記録媒体22の記録面に対して、送風をほぼ垂直に送出させることが望ましい。
送風口36から送り出される送風により、記録媒体22を搬送ガイド32に沿わせて回転移動させるので、中間搬送体30と記録媒体22の記録面の接触が回避され中間搬送体30へのインクの付着を回避できる。
また、図12(a)と図12(b)に示すように、中間搬送体30は、送風口36から送り出される送風を一部規制する送風規制ガイド40を内部に備える。送風規制ガイド40は、図12(b)に示すようにフレーム31に固設されている。例えば、図12(a)に示すように、図面左側の保持手段34により記録媒体22が保持され、記録媒体22が中間搬送体30に対し搬送ガイド32側に位置した状態を想定する。このとき、送風規制ガイド40は、記録媒体22の記録面と対峙する方向の送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制している。
送風規制ガイド40により送風の向きを規制することにより、より確実に送風口36から送り出される送風により、記録媒体22を搬送ガイド32に沿わせて回転移動させるので、より確実に中間搬送体30と記録媒体22の記録面の接触が回避され中間搬送体30への水性インクの付着を回避できる。
また、送風口36やブロワ38などは、記録媒体22の記録面に送風を送出して正圧を付与する正圧付与手段であるが、記録媒体22の回転方向と逆方向の力を作用させるバックテンション付与手段としての機能も発揮し、記録媒体22の記録面にバックテンションを作用させながら記録媒体22を回転移動させる。
これにより、記録媒体22は、乾燥ドラム76の保持手段73に記録媒体22の先端が保持されて密着搬送される際に、送風口36からの送風により記録媒体22の後端の記録面にバックテンションが作用し、記録媒体22が乾燥ドラム76へ搬送された時にシワ、浮きが生じない。
また、搬送ガイド32は、図11及び図12に示すように、中間搬送体30に近接配置されている。そして、搬送ガイド32は、円弧形状に形成され、記録媒体22の記録面の反対面(以下、非記録面という)にバックテンションを作用させながら記録媒体22の回転移動を案内する。具体的には、搬送ガイド32は、中間搬送体30の保持手段34が円軌跡を描く位置に対峙し、記録媒体22の搬送を案内するガイド面30aを備え、記録媒体22の回転方向と逆方向の力を作用させるバックテンション付与手段を備える。
バックテンション付与手段としては、記録媒体22の非記録面に負圧を付与する負圧付与手段が考えられる。具体的に負圧付与手段としては、ガイド面30aに複数設けられた吸引孔42、当該吸引孔42に連通するチャンバー41、当該チャンバー41に接続されるポンプ43などが設けられている。
また、ガイド面30aは、記録媒体22を支持し案内する複数の支持部44を備える。
これにより、記録媒体22は、乾燥ドラム76の保持手段73に記録媒体22の先端が保持されて密着搬送される際に、吸引孔42からの吸引により記録媒体22の後端の非記録面にバックテンションが作用し、記録媒体22が乾燥ドラム76へ搬送された時にシワ、浮きが生じない。
このような構成を有する中間搬送体30と搬送ガイド32のもと、記録媒体22は、先端を中間搬送体30の保持手段34により保持されて回転移動する一方、非記録面を搬送ガイド32のガイド面30aの吸引孔42を通してポンプ43により負圧吸引される。そのため、記録媒体22は、支持部44に支持されながら案内されて回転移動する。その後、中間搬送体30の保持手段34から乾燥ドラム76の保持手段73へ受け渡される。
ここで、記録媒体22は、非記録面が支持部44に支持されながら搬送され、記録媒体22の記録面は、中間搬送体30や搬送ガイド32などの構成部材に接触することなく搬送される。
また、乾燥ドラム76の保持手段73に記録媒体22の先端が保持されて密着搬送される際に、記録媒体22の後端の記録面および非記録面にバックテンションが作用し、記録媒体22が乾燥ドラム76へ搬送された時にシワ、浮きが発生せず高品位な画像が形成できる。
なお、バックテンション付与手段としては、その他、表面の摩擦係数が大きい支持部44も考えられる。具体的には、表面粗さを大きくした支持部44や、ゴムなどの材質からなる表面を備える支持部44が考えられる。これにより、吸引する場合と同等の効果を得ることができる。
なお、前記のように描画部14においては、渡し胴52の代わりに中間搬送部(図示せず)を設け、当該中間搬送部の中間搬送体30が記録媒体22の先端を保持して記録媒体22を回転移動させ、描画ドラム70に記録媒体22を受け渡す場合も考えられ、この場合の中間搬送部も、第1の中間搬送部26、第2の中間搬送部28の構造と共通とする。
これにより、描画ドラム70の保持手段に記録媒体22の先端が保持されて密着搬送される際に、記録媒体22の先端と密着搬送部間にバックテンションが作用し、記録媒体22が描画ドラム70へ搬送された時にシワ、浮きの発生が無く精度の良いインク付与を行うことができる。
図13は、記録媒体22の幅方向(記録媒体22の搬送方向と垂直な方向)から見たときの乾燥ドラム76近傍の断面図である。図13に示すように、乾燥ドラム76の外周面には、ポンプ75に接続し負圧吸引する吸引孔74が設けられている。そのため、乾燥ドラム76に記録媒体22が密着搬送される際に、乾燥ドラム76にて記録媒体22の先端を吸引して密着させる一方で、第1の中間搬送部26にて記録媒体22の後端にバックテンションを作用させることになるので、より確実に乾燥ドラム76上の記録媒体22のシワ、浮きの発生を防止することができる。なお、乾燥ドラム76にて記録媒体22の先端を静電吸着により密着させてもよい。
なお、記録媒体22の非記録面を吸引する際に、中間搬送部26、28のポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を、制御系の負圧制御部147(図10参照)により、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率、記録媒体22の種類などの記録媒体22の仕様のうち、少なくとも1つに応じて可変するように制御してもよい。
〔インクジェット記録装置の特有の効果〕
上記の如く構成されたインクジェット記録装置1は、下記に示す特有の効果を得ることができる。
乾燥部16では、第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82により記録媒体22上のインク溶媒の乾燥を行うので、記録媒体22上における色材の流動による画像ムラや、複数のインクを付与することによるインク滲みや混色を生じることがなく、記録媒体22上に高速高品質の画像を形成することができる。
描画部14と乾燥部16との関係においては、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kと第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82が、描画ドラム70と乾燥ドラム76に構造上分離して配置されている。これにより、描画ドラム70自体が加熱されることがなく、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kのメニスカスが乾燥せず、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kの不吐出現象を防止でき、記録媒体22上に高速高品質の画像を形成することができる。
描画部14と乾燥部16と定着部18との関係においては、インクヘッド72C,72M,72Y,72Kと、第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82と、第1定着ローラ86,第2定着ローラ88とが、ドラムごとに構造上分離して配置されている。これにより、第1定着ローラ86,第2定着ローラ88による温度設定を自由に設定できる。
また、記録媒体22の記録面に中間搬送体30などの他の構造部材が接触しないので、画像故障を回避することができる。
また、記録媒体22の記録面が半ウェット状態の大サイズの記録媒体であっても高精度に搬送することができ、高精度に記録媒体位置を確保することができる。
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の種類に応じてポンプ43やブロワ38を制御して記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに応じて記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
また、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の記録面に対して送風を送出すれば、記録媒体22の記録面に打滴されたインクの高沸点溶媒の記録媒体22への浸透をさらに促進させることができる。
また、中間搬送体30においては、送風規制ガイド40を用いて記録媒体22の記録面と対峙する送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制することにより、より確実に記録媒体22の記録面に打滴されたインクの高沸点溶媒の記録媒体22への浸透が促進される。
表1に、高沸点溶媒を含有する液体について、当該液体の温度に対する高沸点溶媒の粘度特性の評価結果を示す。表1では、高沸点溶媒の溶媒含有量を5種類設定したときに、液体の温度を3種類設定したときの評価結果を示す。粘度の単位は、mPa・s(cp)である。
表1に示すように、液体の温度が高いほど高沸点溶媒の粘度は減少する傾向にあるので、温風を送り出すことにより水性インクの温度を高くして、水性インクの高沸点溶媒を低粘化すれば、水性インクの溶媒の記録媒体22への浸透を促進させることができる。
また、中間搬送体30においては、搬送ガイド32は、描画ドラム70や乾燥ドラム76や定着ドラム84に記録媒体22を受け渡す際に記録媒体22の回転方向と逆方向の力(バックテンション)を作用させる。これにより、記録媒体22が乾燥ドラム76や定着ドラム84へ搬送された時にシワ、浮きの発生を低減できる。したがって、乾燥ドラム76上ではテンション付与して乾燥を促進するためカールカックルの低減効果、定着ドラム84上ではテンションを付与して用紙浮きを低減しつつ定着部18へ搬送するため、定着部18のシワ発生防止効果が得られる。
そして、記録媒体22にバックテンションを付与する手段としては、記録媒体22の非記録面を吸引する手段が考えられる。また、記録媒体22にバックテンションを付与する手段としては、記録媒体22の記録面に送風を送出する手段が考えられる。なお、記録媒体22の記録面に送出する送風を一部規制することにより、例えば、送風規制ガイド40によって記録媒体22の記録面と対峙する方向の送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制すれば、効率的に記録媒体22にバックテンションを作用させることができる。その他、搬送ガイド32の支持部44の表面粗さを大きくしたり、ゴムなどを貼り付けて摩擦力を大きくさせたりする方法も考えられる。
また、描画ドラム70や乾燥ドラム76や定着ドラム84に、ドラム周面に記録媒体22を密着させる手段を備えれば、記録媒体22が描画ドラム70へ搬送された時に確実にシワ、浮きが生じない。ドラム周面に記録媒体22を密着させる手段としては、吸引手段や静電吸着手段などが考えられる。
また、第1の中間搬送部26において、記録媒体22の先端を中間搬送体30の保持手段34により保持して記録媒体22を回転移動させる。このとき、中間搬送体30の送風口36からの送風の送出および搬送ガイド32の吸引孔42からの吸引の少なくともいずれか一方を行うことにより、記録媒体22の非記録面は支持部44に支持されながら搬送される。そのため、記録媒体22は記録面が中間搬送体30に接触することなく搬送される。したがって、描画部14にて記録媒体の記録面に付与された水性インクにより形成された画像は、そのまま維持される。
なお、記録媒体22の記録面に送出する送風を一部規制することにより、例えば、送風規制ガイド40によって記録媒体22の記録面と対峙する方向の送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制すれば、効率的に記録媒体22にバックテンションを作用させることができる。
また、第1の中間搬送部26と第2の中間搬送部28において、搬送ガイド32の吸引孔42からの吸引および中間搬送体30の送風口36からの送風の送出の少なくともいずれか一方を行なうことにより、描画部14にて付与された水性インクに含まれる高沸点溶媒が記録媒体に浸透する。そのため、後工程の定着部18において、第1定着ローラ86,第2定着ローラ88を用いて画像を定着させる際に、記録媒体22の表面に高沸点溶媒が存在しないので、凝集色材と記録面との密着性が確保でき、画像の定着性が向上し、画像の品質が向上するとともに第1定着ローラ86,第2定着ローラ88への色材オフセットを改善する効果がある。
なお、記録媒体22の非記録面を吸引する際にポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を、制御系の負圧制御部147(図10参照)により、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに基づき可変するように制御してもよい。具体的には、記録媒体22の厚みが大きいほど、記録媒体22への溶媒の浸透を促進させるために、ポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を大きくする。また、記録媒体22の空隙率が小さいほど、記録媒体22への溶媒の浸透を促進させるために、ポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を大きくする。
また、第1の中間搬送部26と第2の中間搬送部28において、中間搬送体30の送風口36から専用紙の記録面に温風を送り出すことにより、インク中の高沸点溶媒を低粘化し記録媒体22への浸透を促進させるとともに、インク中の残留水分の乾燥を促進させる。
なお、制御系の送風制御部143(図10参照)により、ブロワ38からの送風の温度や風量を調整して、効率的にインク中の高沸点溶媒の低粘化や残留水分の乾燥が促進するように制御させてもよい。
以上、本発明のインクジェット記録装置、インクジェット記録方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
[記録媒体]
以下に本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体22について詳細に説明する。
本発明で使用する記録媒体22は、原紙と、第1の層と、第2の層とを有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の層を有してなる。
例えば、図14に示すように、記録媒体22は、上質紙を用いた原紙211と、原紙211の上に溶媒ブロッキング層として形成された第1の層212と、第1の層212の上にインク吸収層として形成された第2の層213とを有する。記録媒体200は、シート紙及びロール紙のいずれであってもよい。
(原紙)
原紙211としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
原紙211の原料として使用できるパルプとしては、原紙の表面平滑性、剛性および寸法安定性(カール性)を同時にバランス良く、かつ十分なレベルにまで向上させる点から、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が望ましいが、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や広葉樹サルファイトパルプ(LBSP)等を使用することもできる。
パルプの叩解には、ビータやリファイナー等を使用できる。パルプを叩解した後に得られるパルプスラリーには、(以下「パルプ紙料」と称することがある)には、必要に応じて各種添加材、例えば、填料、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、湿潤紙力増強剤、定着剤、pH調整剤、その他の薬剤等が添加される。
填料としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、白土、タルク、酸化チタン、珪藻土、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。乾燥紙力増強剤としては、例えば、カチオン化澱粉、カチオン化ポリアクリルアミド、アニオン化ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。サイズ剤としては、例えば、脂肪酸塩、ロジン、マレイン化ロジン等のロジン誘導体、パラフィンワックス、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、エポキシ化脂肪酸アミド等が挙げられる。
湿潤紙力増強剤としては、例えば、ポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂等が挙げられる。定着剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の多価金属塩、カチオン化澱粉等のカチオン性ポリマー等が挙げられる。pH調整剤としては、例えば苛性ソーダ、炭酸ソーダ等が挙げられる。
その他の薬剤としては、例えば、消泡剤、染料、スライムコントロール剤、蛍光増白剤等が挙げられる。また、必要に応じて柔軟化剤等を添加することもできる。柔軟化剤については、例えば、新・紙加工便覧(紙薬タイム社編)554〜555頁(1980年発行)に記載がある。
表面サイズ処理に使用される処理液には、例えば、水溶性高分子、サイズ剤、耐水性物質、顔料、pH調整剤、染料、蛍光増白剤等が含まれていてもよい。水溶性高分子としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースサルフェート、ゼラチン、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
サイズ剤としては、例えば、石油樹脂エマルジョン、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルキルエステルのアンモニウム塩、ロジン、高級脂肪酸塩、アルキルケテンダイマー(AKD)、エポキシ化脂肪酸アミド等が挙げられる。
耐水性物質としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、塩化ビニリデン共重合体等のラテックス・エマルジョン類、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン挙げられる。
顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン等が挙げられる。pH調整剤としては、例えば、塩酸、苛性ソーダ、炭酸ソーダ等が挙げられる。
原紙211の材料の例としては、上記した天然パルプ紙の他に、合成パルプ紙、天然パルプと合成パルプの混抄紙、さらには各種の抄き合わせ紙を挙げることができる。原紙の厚みは30〜500μm、望ましくは50〜300μm、より望ましくは、70〜200μmが好ましい。
(第1の層)
第1の層212としては、バインダーを含み、第1の層212が設けられた原紙211における、JIS P8140に規定される吸水度試験による接触時間15秒間のコッブ吸水度が5.0g/m2以下である限り、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、次の条件を備えていることがより好ましい。
即ち、第1の層212が設けられた原紙211における、JIS P8140に規定される吸水度試験による接触時間2分間のコッブ吸水度が2.0g/m2以下であることが好ましい。また、第1の層212が設けられた原紙211における、JIS P8140に規定される吸水度試験に基づいてジエチレングリコールを用いて求めた接触時間2分間のコッブ値が5.0g/m2以下であることが好ましい。また、バインダーとして、熱可塑性樹脂及びポリビニルアルコール(特に、重合度1000以上のアセトアセチル変性ポリビニルアルコールが好ましい)の少なくともいずれかを含むこと、層状無機化合物をさらに含むこと、ポリビニルアルコールの質量Xと、層状無機化合物としての水膨潤性合成雲母の質量Yとの質量比率X/Yは、1以上30以下であること、硬膜剤をさらに含むこと、白色顔料をさらに含むこと等が好ましい。
<バインダー>
第1の層212に含有されるバインダーは、熱可塑性樹脂及びポリビニルアルコールの少なくともいずれかを含むものであれば、特に限定されないが、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のα−オレフィンの単独重合体またはこれらの混合物)等、公知の熱可塑性樹脂やそのラテックスから適宜選択して用いることができる。中でも、ラテックスが好ましく、ポリエステル系ウレタンラテックス、アクリル系ラテックス、アクリルシリコーン系ラテックス、アクリルエポキシ系ラテックス、アクリルスチレン系ラテックス、アクリルウレタン系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、および酢酸ビニル系ラテックス等を好適に挙げることができ、これらから少なくとも1種を選択して用いるのが好ましい。これらの中でも、特に、ポリエステル系ウレタンラテックス及びアクリルシリコーン系ラテックスより選択される少なくとも1種を選択して用いるのが好ましい。
前記ポリエステル系ウレタンラテックスとしては、大日本インキ化学工業(株)製のハイドランAPシリーズ、ハイドランECOSシリーズ等を挙げることができる。
前記アクリル系ラテックスとしては、市販品も使用でき、例えば、以下のような水分散性ラテックスが利用できる。即ち、アクリル系樹脂の例として、ダイセル化学工業(株)製の「セビアンA4635、46583、4601」など、日本ゼオン(株)製の「Nipol Lx811、814、821、820、857」等が挙げられる。
特に、特開平10−264511号、特開2000−43409号、特開2000−343811号、特開2002−120452号の各公報に記載のアクリルシリコーンラテックスのアクリルエマルジョン(市販品としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製の商品名「アクアブリッドシリーズ UM7760、UM7611、UM4901、MSi−045、ASi−753、ASi−903、ASi−89、ASi−91、ASi−86、4635、MSi−04S、AU−124、AU−131、AEA−61、AEC−69、AEC−162」)、等も好適に使用することができる。
なお、上記の熱可塑性樹脂は、一種単独のみならず、二種以上を併用することもできる。
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、5〜70℃が好ましく、特に15〜50℃が好ましい。該Tgを特に上記範囲にすることによって、第1の層形成用の液(例えば塗工液)のカワバリ等の問題を起こす等製造上の取扱いが困難となることがなく、またTgが高すぎてカレンダー温度をかなり高く設定しないと所望の光沢が得られない、金属ロール表面への接着が発生し易く逆に面状が悪化する等の支障を来すこともなく、容易に高光沢性、高平面性を得ることができる。
また、熱可塑性樹脂の最低成膜温度としては、20〜60℃が好ましく、25〜50℃がより好ましい。成膜しようとしたときの成膜可能な最低成膜温度領域を特に上記範囲にすることによって、第1の層形成用の液(例えば塗工液)のカワバリ等の問題を起こす等製造上の取扱いが困難となることがなく、また第2の層213を形成したときの染み込みが大きくなって該層の塗布面状が低下することもなく、インク溶媒を速やかに透過するのに充分な微孔性を有する層に構成することができる。液(例えば塗工液)を付与しただけの層は良好な光沢性を具えるものではないが、後にソフトカレンダー処理を施すことで微孔性を保有した高光沢性の層が得られる。
前記組成物を層状に形成した場合において、前記熱可塑性樹脂の第1の層212中における含有量としては、該第1の層212の固形分に対して15〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましい。該含有量を特に上記範囲にすることによって、カレンダー処理を施した後の光沢性、平面性を損なうことなく、インク溶媒の浸透性が得られ、経時滲みの発生をより効果的に防止することができる。
ポリビニルアルコールとしては、ポリビニルアルコール(PVA)のほか、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール及びその他ポリビニルアルコール誘導体も含まれる。ポリビニルアルコールは一種単独のみならず二種以上を併用することもできる。なかでもポリビニルアルコールとアセトアセチル変性ポリビニルアルコールが好適に使用できる。
ポリビニルアルコールのケン化度は70〜99%のものが好ましく、85〜99%のモノがより好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度としては、1000〜4500のものが好ましく、1500〜4500のものがより好ましい。前記範囲のケン化度、重合度とすることで、十分な膜の強度と伸張性を得ることができる。
上記したポリビニルアルコールの一態様であるアセトアセチル変性ポリビニルアルコールは、一般には、ポリビニルアルコール系樹脂の溶液、分散液あるいは粉末に、液状またはガス状のジケテンを添加反応させて製造することができる。アセトアセチル変性ポリビニルアルコールのアセチル化度は、目的とする感熱記録材料の品質に応じて適宜選定することができるが、0.1モル%〜20モル%、より好ましくは、0.5モル%〜10モル%である。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルの低級アルコール溶液をケン化して得られるポリビニルアルコール及びその誘導体が、さらに酢酸ビニルと共重合しうる単量体と酢酸ビニルとの共重合体のケン化物が含まれる。ここで、酢酸ビニルと共重合しうる単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、スルホン酸マレート等のオレフィンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸ソーダ、エチレンスルホン酸ソーダ、スルホン酸ソーダ(メタ)アクリレート、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート等のオレフィンスルホン酸アルカリ塩、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩等のアミド基含有単量体、さらには、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
バインダーとしては、上記したアセチル変性ポリビニルアルコールの他に必要に応じて25℃の水に対して5質量%以上溶解する化合物を併用してもよい。これらのバインダーとして、ポリビニルアルコール(カルボキシ変性、イタコン酸変性、マレイン酸変性、シリカ変性および上記アミノ基変性等の変性ポリビニルアルコールを含む)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類(変性デンプンを含む)、ゼラチン、アラビヤゴム、カゼイン、スチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド、酢酸ビニル−ポリアクリル酸共重合体のケン化物等が挙げられる。これらのバインダーは分散のみならず、塗膜強度を向上させる目的で使用されるが、この目的に対してはスチレン・ブタジエン共重合物、酢酸ビニル共重合物、アクリロニトリル・ブタジエン共重合物、アクリル酸メチル・ブタジエン共重合物、ポリ塩化ビニリデン等のごとき合成高分子のラテックス系のバインダーを併用することができる。また、必要に応じてこれらのバインダーの種類に応じて、適当なバインダーの架橋剤を添加してもよい。
また、第1の層212に含有されるアセトアセチル変性ポリビニルアルコールは、酸素透過抑制が大きく、S−S特性が高い。ここで、S−S特性とは、膜の破断時までの応力−伸びで表される引張りエネルギー吸収量(タフネス)をいう。そのため、第1の層212は、加熱を要する処理に対しても自在に伸縮し亀裂が発生せず、ブリスターが発生しにくい。
本発明において、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールの重合度は1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましい。重合度が1000以上であることにより、低湿環境下(例えば、20℃、10%)でのクラックの発生を抑制する効果が大きくなる。これは、重合度を1000以上と比較的大きくすることにより、破断時の強度、伸びを著しく大きくすることができることに起因すると考えられる。また、重合度を高めると、塗工液の粘度が向上し、塗布面状が低下するが、塗工液の濃度、水分散性雲母の比率を低下させることによりその欠点を補うことができる。
前記アセトアセチル変性ポリビニルアルコールの変性率は、硬膜剤との反応による耐水化と、水溶液中での安定性の観点から、0.05〜20モル%であることが好ましく、0.05〜15モル%であることがより好ましい。
前記アセトアセチル変性ポリビニルアルコールのケン化度は、特に制限はないが、80〜99.5%が好ましい。ケン化度が低くなれば破断時の伸びが大きくなる。また、重合度が高いと、ケン化度が高くなるが、低重合度の場合はケン化度を低くすることが好ましい。さらに、ケン化度を低くすると、伸びを大きくできる一方、低粘度化、塗布面のレベリングの向上が図られ塗布面状を向上するという利点がある。
(コッブ吸水度)
前記コッブ吸水度は、JIS P8140に規定される吸水度試験により得られたものであり、紙の片面から一定時間水が接触する場合に吸収する水の量を測定したものである。なお、接触時間は15秒間及び2分間とした。
<コッブ値>
前記コッブ値は、JIS P8140に規定される吸水度試験方法に基づき、接触時間を2分間として、紙の片面から一定時間ジエチレングリコールが接触する場合に吸収するジエチレングリコールの量を測定したものである。なお、接触時間は2分間とした。
(層状無機化合物)
上記第1の層212は、さらに層状無機化合物を含有することが好ましい。該層状無機化合物としては、膨潤性無機層状化合物が好ましく、これらの化合物としては、例えば、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、ビーデライト、ノントロナイト、スチブンサイト、バイデライト、モンモリナイト等の膨潤性粘度鉱物類、膨潤性合成雲母、膨潤性合成スメクタイト等が挙げられる。これらの膨潤性無機層状化合物は1〜1.5nmの厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物よりも著しく大きい。その結果、格子層は正荷電不足を生じ、それを補償するために層間にNa+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に層間の陽イオンがLi+、Na+等の場合、イオン半径が小さいため、層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイト及び膨潤性合成雲母はその傾向が強く本発明の目的には好ましい。特に、水膨潤性合成雲母が好ましい。
水膨潤性合成雲母としては、NaテトラシックマイカNaMg2.5(Si4O10)F2Na、Liテニオライト(NaLi)Mg2(Si4O10)F2Na、またはLiヘクトライト(NaLi)/3Mg2/3Li1/3Si4O10)F2等が挙げられる。
本発明において好ましく用いられる水膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μmである。拡散制御のためには、厚さは薄ければ薄いほど良く、平面サイズは塗布面の平滑性及び透明性を悪化しない範囲で大きいほど良い。従ってアスペクト比は100以上、好ましくは200以上、特に好ましくは500以上である。
<質量比率>
上記第1の層212に含有されるアセトアセチル変性ポリビニルアルコールの質量Xと水膨潤性合成雲母の質量Yとの質量比率X/Yは、1以上30以下の範囲であることが好ましく、5以上15以下の範囲であることがより好ましい。上記質量比率が1以上30以下の範囲であると、酸素透過抑制、ブリスター発生の抑制に効果が大きい。
<硬膜剤>
本発明の第1の層212における硬膜剤は、アルデヒド系化合物と、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン及びその誘導体と、ハメットの置換基定数σpが正である置換基に隣接するビニル基を単一分子内に二つ以上有する化合物とから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。本発明における第1の層に、硬膜剤として、アルデヒド系化合物と、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン及びその誘導体と、ハメットの置換基定数σpが正である置換基に隣接するビニル基を単一分子内に二つ以上有する化合物とから選択される少なくとも1種を含有させることにより、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールと反応し、第1の層用塗工液を増粘させることなく、記録材料の耐水性を向上させることができ、結果として記録材料の耐水性と第1の層用塗工液の塗布安定性とが向上した記録材料が得られる。
ハメットの置換基定数σpが正である置換基としては、CF3基(σp値:0.54)、CN基(σp値:0.66)、COCH3基(σp値:0.50)、COOH基(σp値:0.45)、COOR(Rはアルキル基を表す。)基(σp値:0.45)、NO2基(σp値:0.78)、OCOCH3基(σp値:0.31)、SH基(σp値:0.15)、SOCH3基(σp値:0.49)、SO2CH3基(σp値:0.72)、SO2NH2基(σp値:0.57)、SCOCH3基(σp値:0.44)、F基(σp値:0.06)、Cl基(σp値:0.23)、Br基(σp値:0.23)、I基(σp値:0.18)、IO2基(σp値:0.76)、N+(CH3)2基(σp値:0.82)、S+(CH3)2基(σp値:0.90)等が挙げられる。
上記ハメットの置換基定数σpが正である置換基に隣接するビニル基を単一分子内に二つ以上有する化合物としては、2−エチレンスルホニル−N−[2−(2−エチレンスルホニル−アセチルアミノ)−エチル]アセトアミド、ビス−2−ビニルスルホニルエチルエーテル、ビスアクリロイルイミド、N−N’−ジアクリロイルウレア、1,1−ビスビニルスルホンエタン、エチレン−ビス−アクリルアミドの他、下記構造式で表されるジアクリレート及びジメタクリレート化合物が挙げられ、この中でも2−エチレンスルホニル−N−[2−(2−エチレンスルホニル−アセチルアミノ)−エチル]アセトアミドが特に好ましい。
第1の層212における上記ハメットの置換基定数σpが正である置換基に隣接するビニル基を単一分子内に二つ以上有する化合物の含有量は、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールに対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。上記第1の層における上記化合物の含有量が、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールに対して、0.5質量%以上10質量%以下であると、第1の層用塗工液が増粘することなく、記録材料の耐水性を向上させることができるという本発明における上記化合物の効果がより発揮できる。
<白色顔料>
前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、リトポン、アルミナ白、酸化亜鉛、シリカ、三酸化アンチモン、燐酸チタン、水酸化アルミニウム、カオリン、クレー、タルク、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。これらのうち、特にカオリンが好ましい。
<カオリン>
前記カオリンとしては、アスペクト比(直径/厚み)が30以上であることが好ましい。アスペクト比が30以上のカオリンとしては、グレードがエンジニアードのもの(例えば、Contour 1500(アスペクト比59)、Astra−Plate(アスペクト比34))が挙げられる。また、前記カオリンが、高い白色度とスティープな粒度分布(均一な粒径)を有するものであると、各種塗工紙に優れた白色度と印刷適正をもたらす。
白色顔料の粒子サイズとしては、2μm以下の粒子が75%以上であることが好ましく、さらに平均粒子径が0.1〜0.5μmが好ましい。該粒子サイズを特に上記範囲にすることによって、白色度が低下したりあるいは光沢度が低下するのを効果的に回避することができる。
前記酸化チタンは、ルチル系、アナターゼ型のいずれでもよく、これらを単独もしくは混合して使用することができる。また、硫酸法で製造されたものや塩素法で製造されたもののいずれでもよい。前記酸化チタンとしては、含水アルミナ処理、含水二酸化ケイ素系処理、又は酸化亜鉛処理等の無機物質による表面被覆処理したもの、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,4−ジヒドロキシ−2−メチルペンタン等の有機物質による表面被覆処理したもの、あるいはポリジメチルシロキサン等のシロキサン処理したもの等から適宜選択できる。
白色顔料の屈折率としては、1.5以上であるのが好ましい。屈折率が該範囲にある白色顔料を含むと、高画質画像を形成することができる。
また、白色顔料のBET法による比表面積としては100m2/g未満であるのが好ましく、該範囲の比表面積を持つ白色顔料を含むと、第2の層を塗布形成する際の塗工液の染み込みを抑え、第2の層のインク吸収性を高めることができる。
前記BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、すなわち比表面積を求める方法である。通常吸着気体として窒素ガスが用いられ、吸着量を被吸着気体の圧又は容積の変化から測定する方法が一般的である。多分子吸着の等温線を表す著名なものとして、Brunauer Emmett、Tellerの式(BET式)があり、これに基づき吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
前記組成物を層状に形成した場合において、前記白色顔料の第1の層中における含有量としては、白色顔料の種類や熱可塑性樹脂の種類、層厚等によって異なるが、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、通常50質量部〜200質量部程度が望ましい。
なお、第1の層には酸化防止剤等の公知の添加剤を添加することもできる。
前記組成物を用いて第1の層を形成した場合の膜厚としては、1〜30μmの範囲が好ましく、5〜20μmの範囲がより好ましい。該膜厚を特に上記範囲にすることによって、後にカレンダー処理された表面の光沢性、少量の白色顔料での白色性が得られると同時に、折り曲げ適性などの取り扱い性がコート紙、アート紙と同等にすることができる。また、第1の層が白色顔料を含むことにより、第1の層塗布後のカレンダー処理する際に、カレンダーへのはりつきを防止することができるという効果もある。
(第2の層)
前記第2の層213としては、白色顔料を含み、ブリストー法による接触時間0.5秒間の吸水量が2mL/m2以上8mL/m2以下である限り、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、次の条件を備えることがより好ましい。即ち、ブリストー法によりジエチレングリコールを30質量%含有する純水を用いて求めた接触時間0.9秒間の吸水量が1mL/m2以上6mL/m2以下であること、バインダー(熱可塑性樹脂)をさらに含むこと、白色顔料の固形質量部100部当たり、固形質量部10〜60部の可塑性樹脂を含むこと、膜面pHが4以下であること等が好ましい。
<白色顔料>
前記白色顔料としては、特に制限はなく、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン、三水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、サチン白、タルクなど一般に印刷用コート紙の白色顔料として、利用させるものの中から選んで良い。第2の層が白色顔料を含むことにより、インクにおける顔料を第2の層内に留めることができるという効果がある。
前記白色顔料としては、JIS K5101に規定されるpH値試験法(常温抽出法)によるpHが8.0未満(好ましくは7.5以下)となる白色顔料のみからなることが好ましい。前記pHが8.0を超えると、第2の層の表面pHが高くなり、インク中の一般的な色材はアニオン電荷(アニオン性の解離基)を有しているため、色材の溶解乃至分散が比較的安定であり、色材の凝集が起こりにくく、画像のにじみ及び着弾後の打滴の変形による画質の低下を引き起こすことがある。
また、前記白色顔料は、JIS K5101に規定されるpH値試験法(常温抽出法)の測定液10gに対して1mol/Lの塩酸0.1mLを添加した後のpHが6.0未満(好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下)であることが好ましい。前記pHが6.0以上であると、第2の層の表面pHが高くなり、画像のにじみ及び画質の低下を引き起こすことがある、また、色材の凝集を促進するために酸などを用いて第2の層のpHを低く調整する際には、白色顔料が中和して表面pHを高くしてしまうためにpH調整の効果を減少させてしまい、画像のにじみや画質の低下を引き起こすことがある。
このような顔料としては、例えばカオリン、酸化チタン、カオリンと酸化チタンの混合物が挙げられる。
前記白色顔料の第2の層における含有量は、50質量%〜98質量%が好ましく、70質量%〜97質量%がより好ましい。
<ブリストー法>
前記ブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及した方法であり、日本紙パルプ技術協会(J’TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は、J’TAPPI No.51「紙、板紙の液体吸収性試験方法」に述べられている。また、測定時には、インクの表面張力に合わせてブリストー試験のヘッドボックススリット幅を調節する。また、紙の裏にインクがぬけてしまう点は計算から外す。
<バインダー(熱可塑性樹脂)>
バインダー(熱可塑性樹脂)としては、特に制限はなく、例えば、第1の層212で用いたものと同様のものを用いることができる。第2の層213におけるバインダーの含有量は前記白色顔料100質量部に対して2質量部〜50質量部が好ましく、3質量部〜30質量部がより好ましい。
<層表面pH>
前記第2の層213の層表面pHを酸性に調整することによって、インクを凝集させ、インクの定着を向上させることができる。
前記第2の層213の層表面pHは、pH調整後において、着弾干渉を防止するために5.5以下が必要であり、4.5以下がより好ましい。
ここで、前記表面pHの測定は、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI)の定めた膜面pHの測定のうちA法(塗布法)により行うことができ、例えば、前記A法に相当する、株式会社共立理化学研究所製の紙面用pH測定セット「形式MPC」を使用して行うことができる。
前記pH調整は、前記第2の層213表面の塗工液に添加して行うことが好ましいが、場合によっては記録媒体の表面に酸を付与して行っても良い。具体的には酸性物質を含む処理液を付与して行う。前記酸性物質としては、例えばリン酸基、ホスホン基、ホスフィン基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸又はカルボン酸あるいはその塩を使用することができ、リン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基であることがより好ましい。リン酸としては、リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩があり、スルホン酸としてはメタンスルホン酸、ポリスルホン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩があり、カルボン酸としては、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、サリチル酸、フタル酸、乳酸、酢酸、トリクロロ酢酸、クロロ酢酸、ポリアクリル酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩があり、また、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリドン、ピロン、ピロール、チオフェン、インドール、ピリジン、キノリン構造を有し、更に官能基としてカルボキシル基を有する化合物等、例えば、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が挙げられる。また、塩酸、硫酸、硝酸等の酸を使用することもできる。
<その他の層>
その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
(記録媒体の製造方法)
本発明における記録媒体22の製造方法は、第1の形成工程と、第2の形成工程とを含み、更に、必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
<第1の形成工程>
第1の形成工程としては、原紙211上に第1の層212を形成し、該第1の形成工程において、原紙211の表面に設けられた熱可塑性ポリマー微粒子を、前記熱可塑性ポリマー微粒子の最低造膜温度以上の温度領域で加熱処理すること以外には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記加熱処理において、圧力を印加してもよい。
前記熱可塑性樹脂粒子としては、特に制限はなく、従来公知の熱可塑性樹脂の粒子を総て包括する。この様な公知の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン類;ポリアミドやポリイミド類;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類;等の汎用熱可塑性重合体を始め、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸フェニル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;スチレン、クロルスチレン、ビニルスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等からなる単独重合体、或いは、これらの構成単位を含む任意の共重合体等が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂粒子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記熱可塑性樹脂粒子としては、平均粒径が10〜200nmのものが好ましい。ここで、樹脂粒子の平均粒径は、動的光散乱法(装置名:大塚電子(株)ELS−800)により測定した値を採用している。また、ポリマー微粒子を構成する熱可塑性樹脂としては、最低造膜温度(MFT)が5〜60℃であるものが好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂の塗工量としては、1〜30g/m2であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂粒子としては、コックリングの抑制や経時滲みの改善及び製造適性等の観点より、水分散性ラテックスの分散粒子を含むものが好ましい。
前記水分散性ラテックスは、水に不溶ないし難溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水相の分散媒体中に分散したものである。該分散状態としてはポリマーが分散媒体中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、或いはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したもの等いずれでもよい。尚、この様なポリマーラテックスについては、奥田平・稲垣寛編集「合成樹脂エマルジョン」(高分子刊行会発行、1978)、杉村孝明・片岡靖男・鈴木聡一・笠原啓司編集「合成ラテックスの応用」(高分子刊行会発行、1993)、室井宗一著「合成ラテックスの化学」(高分子刊行会発行、1970)等に詳しく記載されている。
前記水分散性ラテックスとしては、具体的には、アクリル系ラテックス、アクリルシリコーン系ラテックス、アクリルエポキシ系ラテックス、アクリルスチレン系ラテックス、アクリルウレタン系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、及び酢酸ビニル系ラテックスより選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
前記水分散性ラテックスの分子量としては、数平均分子量で3,000〜100,0000が好ましく、特に5,000〜100,000程度のものがより好ましい。該分子量が小さ過ぎるものは下塗り形成層の力学強度が不足することがあり、大き過ぎるものは分散安定性や粘度等の製造適性面で不利になることがある。
前記水分散性ラテックスの中でも、本発明の第1の層としては、インク溶媒浸透性とコックリング抑制の効果が高く経済性と製造適性を兼備できる観点より、アクリルシリコーン系ラテックス及びアクリルスチレン系ラテックスより選択される少なくとも1種が最も好ましい。
<第2の形成工程>
第2の形成工程としては、第1の層212上に第2の層213を形成すること以外には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第2の層213を形成するための塗工液は、塗工速度S(m/min)及び塗工層の膜厚t(μm)によって規定されるせん断速度D(=S/(t×60×10−6))が103以上106以下(s−1)の範囲にある場合において、ハイシェア粘度が20mPa・s以上150mPa・s以下であること、第2の層213を形成するための塗工液がブレード塗工方式によって塗布されることが好ましい。
<ハイシェア粘度>
第2の層用塗工液のハイシェア粘度は、好ましくは30mPa・sから150mPa・sであり、より好ましくは40mPa・sから140mPa・sである。
20mPa・s未満であると、原紙211に直接塗工するのと異なり、第2の層用塗工液が第1の層211への染み込みがない為、ブレード塗工では塗工量が増やせなくなり、150mPa・sを超えると、第2の層用塗工液の流動性が損なわれ、取り扱い上、不適となる。
<ブレード塗工方式>
前記ブレード塗工方式とは、紙支持体上にアプリケイトされた塗料をスクレイプする瞬間に比較的大きなせん断応力が発生する塗工方法である。
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
[水性インク]
以下、本発明の画像形成方法に使用する水性インクについて詳細に説明する。
本発明における水性インクは、樹脂分散剤(A)と、前記樹脂分散剤(A)によって分散された顔料(B)と、自己分散性ポリマー微粒子(C)と、水性液媒体(D)とを少なくとも含む専用インクとして構成される。
(樹脂分散剤(A))
前記樹脂分散剤(A)は、水性液媒体(D)中での顔料(B)の分散剤として用いるものであり、顔料Bを分散しうる樹脂であれば如何なる樹脂でもかまわないが、樹脂分散剤(A)の構造は、疎水性構造単位(a)と、親水性構造単位(b)とを有することが好ましい。必要に応じて、樹脂分散剤(A)は、前記疎水性構造単位(a)及び前記親水性構造単位(b)とは異なる構造単位(c)を含むことができる。
前記親水性構造単位(b)及び疎水性構造単位(a)の組成としては、それぞれの親水性、疎水性の程度にもよるが、疎水性構造単位(a)が樹脂分散剤(A)全体の質量に対して80質量%を超えて含有されることが好ましく、85質量%以上がより好ましい。即ち、親水性構造単位(b)は15質量%以下にする必要があり、親水性構造単位(b)が15質量%よりも多い場合には、顔料の分散に寄与せず単独で水性液媒体(D)中に溶解する成分が増加し、顔料(B)の分散性等の諸性能を悪化させ、インクジェット記録用インクの吐出性を悪化させる原因となる。
<疎水性構造単位(a)>
本発明における樹脂分散剤(A)は、疎水性構造単位(a)のうち、樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環を有する疎水性構造単位(a1)を少なくとも含む。
ここでいう「直接に結合していない」とは、芳香環と樹脂の主鎖構造を形成する原子とが、連結基を介して結合した構造となっていることを表す。このような形態を有することで、樹脂分散剤(A)中の親水性構造単位と疎水性の芳香環との間に適切な距離が維持されるため、樹脂分散剤(A)と顔料(B)とに相互作用が生じやすくなり、強固に吸着し、結果分散性が向上する。
〈芳香環を有する疎水性構造単位(a1)〉
前記樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環を有する疎水性構造単位(a1)は、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性の観点から、前記樹脂分散剤(A)の全質量のうち40質量%以上75質量%未満であることが好ましく、40質量%以上70質量%未満であることがより好ましく、40質量%以上60質量%未満であることが特に好ましい。
前記樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環が、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性、耐擦過性の向上の点で、樹脂分散剤(A)中15質量%以上27質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下がより好ましく、15質量%以上20質量%以下が特に好ましい。
上記範囲とすることにより、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性、耐擦過性を向上することができる。
本発明においては、前記疎水性構造単位(a)における前記芳香環を含む疎水性構造単位(a1)は、下記一般式(1)で表される構造で樹脂分散剤(A)に導入された形態が好ましい。
一般式(1)中、R1は水素原子、メチル基、またはハロゲン原子を表し、L1は(主鎖側)−COO−、−OCO−、−CONR2−、−O−、または置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。L2は単結合または、炭素数1〜30の2価の連結基を表し、2価の連結基である場合、その好ましい範囲は好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、特に好ましくは炭素数1〜20の連結基である。ここで、前記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等、シアノ基等が挙げられるが、特に限定されない。Ar1は芳香環から誘導される1価の基を表す。
上記一般式(1)の中でも、R1が水素原子またはメチル基であり、L1が(主鎖側)−COO−であり、L2がアルキレンオキシ基および/またはアルキレン基を含む炭素数1〜25の2価の連結基である構造単位の組合せが好ましく、より好ましくは、R1が水素原子またはメチル基であり、L1が(主鎖側)−COO−であり、L2が(主鎖側)−(CH2−CH2−O)n−である(nは平均の繰り返し単位数をあらわし、n=1〜6である)構造単位の組合せである。
疎水性構造単位(a1)中に含まれる前記Ar1における芳香環としては、特に限定されないが、ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、または二個以上連結したベンゼン環が挙げられる。
前記炭素数8以上の縮環型芳香環とは、少なくとも二個以上のベンゼン環が縮環した芳香環、及び/又は、少なくとも一種以上の芳香環と該芳香環に縮環した脂環式炭化水素で環が構成される、炭素数8以上の芳香族化合物である。具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
前記芳香環が縮環したヘテロ環とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが少なくとも縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は5員環または6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は複数のヘテロ原子を有していても良く、この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。芳香環が縮環したヘテロ環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
以下に、前記ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、または二個以上連結したベンゼン環から誘導される1価の基を含む疎水性構造単位(a1)を形成しうるモノマーの具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例に制限されるものではない。
本発明において、前記樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環を有する疎水性構造単位(a1)のなかでも、分散安定性の観点から、ベンジルメタアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及びフェノキシエチルメタクリレートのいずれか1以上に由来する構造単位であることが好ましい。
(アクリル酸またはメタクリル酸の、炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する疎水性構造単位(a2))
前記樹脂分散剤(A)に含まれるアクリル酸またはメタクリル酸の、炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する疎水性構造単位(a2)は、樹脂分散剤(A)中に少なくとも15質量%以上であることが必要であり、好ましくは20質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以上50質量%以下である。
これら(メタ)アクリレート類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。
<親水性構造単位(b)>
本発明における樹脂分散剤(A)を構成する親水性構造単位(b)について説明する。
該親水性構造単位(b)は、前記樹脂(A)の全質量に対して、0質量%超15質量%以下含有され、2質量%以上15質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下が好ましく、8質量%以上12質量%以下がより好ましい。
前記樹脂(A)は、親水性構造単位(b)としてアクリル酸及び/またはメタクリル酸(b1)を少なくとも含む。
(親水性構造単位(b1))
前記親水性構造単位(b1)の含有量は、後述の構造単位(b2)の量または疎水性構造単位(a)の量か、あるいはその両方により変更する必要がある。
即ち、本発明における樹脂分散剤(A)は、疎水性構造単位(a)として80質量%を超える量を含み、かつ親水性構造単位(b)を15質量%以下とする量とすればよく、前記疎水性構造単位(a1)と(a2)、親水性構造単位(b1)と(b2)及び構造単位(c)により決定されるものである。
例えば、樹脂分散剤(A)が、疎水性構造単位(a1)、(a2)と親水性構造単位(b1)と構造単位(b2)のみから構成される場合において、アクリル酸及び/またはメタクリル酸(b1)の含有量は、「100−(疎水性構造単位(a1)・(a2)の質量%)−(構造単位(b2)の質量%)」で求めることができる。このとき、(b1)と(b2)の和は15質量%以下でなければならない。
また、樹脂分散剤(A)が疎水性構造単位(a1)、(a2)と、親水性構造単位(b1)と、構造単位(c)とからなるとき、親水性構造単位(b1)の含有量は、「100−(疎水性構造単位(a1)・(a2)の質量%)−(構造単位(c)の質量%)」で求めることができる。
また、樹脂分散剤(A)は疎水性構造単位(a1)、疎水性構造単位(a2)、親水性構造単位(b1)のみから構成されることも可能である。
親水性構造単位(b1)は、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を重合することにより得ることができる。
なお、アクリル酸またはメタクリル酸は、単独で又は混合して用いることができる。
本発明における樹脂分散剤(A)の酸価は、顔料分散性、保存安定性の観点から、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上、85mgKOH/g未満であることがより好ましく、50mgKOH/g以上、85mgKOH/gであることが特に好ましい。
なお、ここでいう酸価とは、樹脂分散剤(A)の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定することができる。
(前記構造単位(b2))
前記構造単位(b2)は非イオン性の親水性基を含有して成ることが好ましい。また、構造単位(b2)は、これに対応するモノマーを重合することにより形成することができるが、ポリマーの重合後、ポリマー鎖に親水性官能基を導入してもよい。
前記構造単位(b2)を形成するモノマーは、重合体を形成しうる官能基と非イオン性の親水性の官能基とを有していれば特に制限はなく、公知の如何なるモノマー類をも用いることができるが、入手性、取り扱い性、汎用性の観点からビニルモノマー類が好ましい。
これらビニルモノマー類の例として、親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類が挙げられる。
親水性の官能基としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基及び、後述するようなポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド重合体が挙げられる。
これらのうち、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アルキレンオキシド重合体を含有する(メタ)アクリレートが特に好ましい。
前記構造単位(b2)は、アルキレンオキシド重合体構造を有する親水性の構造単位を含むことが好ましい。
前記アルキレンオキシド重合体のアルキレンとしては、親水性の観点から炭素数1〜6が好ましく、炭素数2〜6がより好ましく、炭素数2〜4が特に好ましい。
また、前記アルキレンオキシド重合体の重合度としては、1〜120が好ましく、1〜60がより好ましく、1〜30が特に好ましい。
前記構造単位(b2)は、水酸基を含む親水性の構造単位であることも好ましい態様である。
前記構造単位(b2)中の水酸基数としては、特に限定されず、樹脂(A)の親水性、重合時の溶媒や他のモノマーとの相溶性の観点から、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
<構造単位(c)>
本発明における樹脂分散剤(A)は、前述の通り、前記疎水性構造単位(a1)、前記疎水性構造単位(a2)及び前記親水性構造単位(b)とは異なる構造を有する構造単位(c)(以下、単に「構造単位(c)」という。)を含有することもできる。
前記疎水性構造単位(a1)、疎水性構造単位(a2)及び親水性構造単位(b)とは異なる構造単位(c)とは、前記(a1)、(a2)又は(b)とは異なる構造を有する構造単位(c)を言い、該構造単位(c)は疎水性の構造単位であることが好ましい。
前記構造単位(c)は、疎水性の構造単位であるが、疎水性構造単位(a1)、疎水性構造単位(a2)とは異なる構造を有する構造単位である必要がある。
前記構造単位(c)は、前記樹脂分散剤(A)に全質量中35質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましく、15質量%以下とすることが更に好ましい。
前記構造単位(c)はこれに対応するモノマーを重合することにより形成することができる。また、樹脂の重合後に、ポリマー鎖に疎水性官能基を導入してもよい。
前記構造単位(c)が疎水性の構造単位である場合のモノマーは、重合体を形成しうる官能基と疎水性の官能基とを有していれば特に制限はなく、公知の如何なるモノマー類をも用いることができる。
前記疎水性の構造単位を形成しうるモノマーとしては、入手性、取り扱い性、汎用性の観点から、ビニルモノマー類、((メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエステル類等)が好ましい。
(メタ)アクリルアミド類としては、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、n−ブチルスチレン、tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、およびα−メチルスチレン、ビニルナフタレン等などが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられ、中でも、ビニルアセテートが好ましい。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明における樹脂分散剤(A)は、各構造単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であっても良く、ブロック共重合体である場合の各構造単位は、如何なる導入順序で合成されたものであっても良く、同一の構成成分を2度以上用いてもよいが、ランダム共重合体であることが汎用性、製造性の点で好ましい。
さらに、本発明で用いる樹脂分散剤(A)の分子量範囲は、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは3万〜15万であり、より好ましくは3万〜10万であり、さらに好ましくは3万〜8万である。
前記分子量を上記範囲とすることにより、分散剤としての立体反発効果が良好な傾向となり、また立体効果により顔料への吸着に時間がかからなくなる傾向の観点から好ましい。
また、本発明で用いる樹脂の分子量分布(重量平均分子量値/数平均分子量値で表される)は、1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
前記分子量分布を上記範囲とすることは、インクの分散安定性、吐出安定性の観点から好ましい。ここで数平均分子量及び、重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用い換算して表した分子量である。
本発明に用いられる樹脂分散剤(A)は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常、0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は再沈殿などの精製を行っても良い。
本発明における樹脂分散剤(A)として好ましい具体例を以下に示すが、本発明は以下に限定されるものではない。
<顔料(B)と樹脂分散剤(A)の比率>
顔料(B)と樹脂分散剤(A)の比率は、重量比で100:25〜100:140が好ましく、さらに好ましくは100:25〜100:50である。樹脂分散剤が100:25以上の場合は分散安定性と耐擦性が良化する傾向となる。樹脂分散剤が100:140以下の場合も、分散安定性が良化する傾向となる。
<顔料(B)>
本発明において、顔料(B)とは化学大辞典第3版1994年4月1日発行(編集 大木道則他)の518頁に記載のように、水、有機溶剤にほとんど不溶の有色物質(無機顔料では白色も含む)の総称であり、本発明では有機顔料と無機顔料とを用いることができる。
また、本発明において、「樹脂分散剤(A)によって分散された顔料(B)」とは、樹脂分散剤(A)によって分散保持されている顔料をいい、水性液媒体(D)に樹脂分散剤(A)を用いて分散保持されている顔料として用いることが好ましい。水性液媒体(D)中には更に分散剤を含んでいても、含んでいなくともよい。
本発明において、樹脂分散剤(A)によって分散された顔料(B)としては、樹脂分散剤(A)によって分散保持されている顔料であれば、特に限定されないが、中でも、顔料分散の安定性、吐出安定性の観点から、転相法により作製されたマイクロカプセル化顔料であることが一層好ましい。
本発明に含有される顔料(B)として、マイクロカプセル化顔料を好ましい例として挙げることができる。マイクロカプセル化顔料とは、顔料が樹脂分散剤(A)で被覆された顔料である。
マイクロカプセル化顔料の樹脂は、前記樹脂分散剤(A)を用いる必要があるが、更に、水に対して自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物を樹脂分散剤(A)以外の樹脂に用いることが好ましい。
(マイクロカプセル化顔料の製造)
マイクロカプセル化顔料は、樹脂分散剤(A)等の前記成分を用いて、従来の物理的、化学的方法によって製造することができる。例えば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、または特開平11−43636号に開示されている方法によって製造することができる。マイクロカプセル化顔料の製造方法について以下に概説する。
マイクロカプセル化顔料の製造方法としては、特開平9−151342号及び特開平10−140065号記載の転相法と酸析法等を用いることができ、中でも、転相法が分散安定性の点で好ましい。
a)転相法
本発明において、転相法とは、基本的には、自己分散能または溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる、自己分散化(転相乳化)方法をいう。また、この混合溶融物には、前記した硬化剤または高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、また溶解して混合した状態、またはこれら両者の状態のいずれの状態をも含むものをいう。「転相法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に開示されているものと同様であってよい。
b)酸析法
本発明において、酸析法とは、樹脂と顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、樹脂が含有してなるアニオン性基の一部又は全部を、塩基性化合物を用いて中和することによって、マイクロカプセル化顔料を製造する方法をいう。
酸析法は具体的には、(1)樹脂と顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、又、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程と、(2)pHを中性または酸性にすることによって樹脂を疎水化して、樹脂を顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過および水洗を行なって、含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、樹脂が含有してなるアニオン性基の一部または全部を、塩基性化合物を用いて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行ない樹脂のゲル化を図る工程と、を含んでなるものである。
上記の、転相法及び酸析法のより具体的な製造方法は、特開平9−151342号、特開平10−140065号に開示されているものと同様であってよい。特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号公報に記載の着色剤の製造方法も本発明において用いることができる。
本発明において好ましい製法の概要は、基本的には次の製造工程からなる。
(1)アニオン性基を有する樹脂またはそれを有機溶剤に溶解した溶液と塩基性化合物水溶液とを混合して中和することと、(2)この混合液に顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等で顔料を分散して顔料分散液を得ることと、(3)必要に応じて、溶剤を蒸留して除くことによって、顔料を、アニオン性基を有する樹脂で被覆した水性分散体を得ることとを含んでなるものである。
本発明において、前記における混練、分散処理は、たとえばボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌型分散機、超音波ホモジナイザ−などを用いて行うことができる。
<顔料B>
本発明において使用可能な顔料としては、イエローインクの顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、14C、16、17、24、34、35、37、42、53、55、65、73、74、75、81、83、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、128、129、138、150、151、153、154、155、180等が挙げられる。
また、マゼンタインクの顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、48(Ca)、48(Mn)、48:2、48:3、48:4、49、49:1、50、51、52、52:2、53:1、53、55、57(Ca)、57:1、60、60:1、63:1、63:2、64、64:1、81、83、87、88、89、90、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、163、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、209、219等が挙げられ、特に、C.I.ピグメントレッド122が好ましい。
また、シアンインクの顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、22、25、56、60、C.I.バットブルー4、60、63等が挙げられ、特に、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。
その他のカラーインクの顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19(キナクリドンレッド)、23、38等も挙げられる。その他顔料表面を樹脂等で処理したグラフトカーボン等の加工顔料等も使用できる。
黒色系のものとしては、例えばカーボンブラックが挙げられる。かかるカーボンブラックの具体例としては、三菱化学製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B 等が、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等が、キャボット社製のRegal 400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Monarch700、Monarch800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等が、デグッサ社製のColor Black
FW1、ColorBlack FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、ColorBlack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U 、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black4A、Special Black4等が挙げられる。
上記の顔料は、単独種で使用してもよく、また上記した各群内もしくは各群間より複数種選択してこれらを組み合わせて使用してもよい。
本発明における水性インク中の顔料(B)の含有量としては、水性インクの分散安定性、濃度の観点から、1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、2〜6質量%が特に好ましい。
<自己分散性ポリマー微粒子>
本発明に用いられる水性インクは、自己分散性ポリマー微粒子の少なくとも1種を含有する。本発明における自己分散性ポリマー微粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、pr樹脂自身が有する官能基(特に、酸性基またはその塩)によって、水性媒体中で分散状態となりうる水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの微粒子を意味する。
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルジョン)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
本発明における水不溶性ポリマーにおいては、水溶性インクに含有されたときのインク凝集速度とインク定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子の分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶媒を除去した後でも、分散状態が25℃で少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
また、水不溶性ポリマーとは、樹脂を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下である樹脂をいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
前記水性媒体は、水を含んで構成され、必要に応じて親水性有機溶媒を含んでいてもよい。本発明においては、水と水に対して0.2質量%以下の親水性有機溶媒とから構成されることが好ましく、水から構成されることがより好ましい。
前記水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中で、特にビニルポリマーが好ましい。
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と芳香族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
本発明において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
本発明における親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
本発明における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。本発明において前記芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートであることが特に好ましい。
尚、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子は、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、その含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
本発明においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子は、例えば、芳香族基含有モノマーからなる構成単位と、解離性基含有モノマーからなる構成単位とから構成することができるが、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んで構成することができる。
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。尚、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定することできる。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜90質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜100であって、重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜80質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜95であって、重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
以下に、自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーの具体例として、例示化合物B−01〜B−19を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(50/45/5)
B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(30/35/29/6)
B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(50/44/6)
B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(30/55/10/5)
B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/59/6)
B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(10/50/35/5)
B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(55/40/5)
B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(45/47/8)
B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(5/48/40/7)
B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/30/30/5)
B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(12/50/30/8)
B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(93/2/5)
B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(50/5/20/25)
B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(62/35/3)
B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/51/4)
B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/49/6)
B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/48/7)
B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/47/8)
B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/45/10)
本発明における自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーの製造方法としては特に制限はなく、例えば、重合性界面活性剤の存在下に、乳化重合を行い、界面活性剤と水不溶性ポリマーとを共有結合させる方法、上記親水性基含有モノマーと芳香族基含有モノマーとを含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法により、共重合させる方法を挙げることができる。前記重合法の中でも、凝集速度及び水性インクとしたときの打滴安定性の観点から、溶液重合法が好ましく、有機溶媒を用いた溶液重合法がより好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子は、凝集速度の観点から、有機溶媒中で合成された第1のポリマーを含み、前記第1のポリマーはカルボキシル基を有し、酸価が20〜100であって、前記第1のポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部は中和され、水を連続相とする樹脂分散物として調製されたものであることが好ましい。
すなわち、本発明における自己分散性ポリマー微粒子の製造方法は、有機溶媒中で前記第1のポリマーを合成する工程と、前記第1の樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程とを含むことが好ましい。
前記分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
工程(1):第1のポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶媒、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程。
工程(2):前記混合物から、前記有機溶媒を除去する工程。
前記工程(1)は、まず前記第1のポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶媒に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶媒中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散ポリマー粒子を得ることができる。該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性ポリマー微粒子を得ることができる。
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。本発明の自己分散ポリマーが解離性基としてアニオン性の解離基(例えば、カルボキシル基)を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアニン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本発明の自己分散性ポリマー微粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく、10〜110モル%であることがより好ましく、15〜100モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、100モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
前記工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散ポリマー粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子の平均粒径は、10〜400nmの範囲であることが好ましく、10〜200nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。10nm以上の平均粒径であることで製造適性が向上する。また、400nm以下の平均粒径とすることで保存安定性が向上する。
また、自己分散性ポリマー微粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、水不溶性粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、自己分散性ポリマー微粒子の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本発明の自己分散性ポリマー微粒子は、例えば、水性インク組成物に好適に含有させることができ、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<水性液媒体(D)>
インクジェット記録方式の水性インクにおいて、水性液媒体(D)とは、水及び水溶性有機溶媒の混合物を表す。水溶性有機溶媒(以下、「水溶性有機溶剤」ともいう。)は乾燥防止剤、湿潤剤あるいは浸透促進剤の目的で使用される。
ノズルのインク噴射口において該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で乾燥防止剤が用いられ、乾燥防止剤や湿潤剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また、インクジェット用インクを記録媒体(紙等)により良く浸透させる目的で浸透促進剤として、水溶性有機溶剤が好適に使用される。
水溶性有機溶剤の例として、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオール(多価アルコール類);ヴルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類;糖アルコール類;ピアルロン酸類;尿素類等のいわゆる固体湿潤剤;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルポキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
乾燥防止剤や湿潤剤の目的としては,多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
浸透剤の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
水溶性有機溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性有機溶媒の含有量としては、インク中、1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。
水の添加量は、インク中、特に制限は無いが、好ましくは、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
本発明における水性液媒体(D)は、インク中、分散安定性、吐出安定性の観点から、好ましくは 60質量%以上95質量%以下、より好ましくは70質量%以上95質量%以下である。
<界面活性剤>
本発明における水性インクには、界面活性剤(以下、表面張力調整剤ともいう。)を添加することが好ましい。界面活性剤としてはノニオン、カチオン、アニオン、ベタイン界面活性剤が挙げられる。表面張力の調整剤の添加量は、インクジェットで良好に打滴するために、本発明における水性インクの表面張力を20〜60mN/mに調整する量が好ましく、より好ましくは20〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mに調整できる量である。
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。更には、上記高分子物質(高分子分散剤)を界面活性剤としても使用することもできる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルポコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテ硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルポコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、t−オクチルフェノキシエトキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
本発明におけるインクジェット記録用水性インクに添加する界面活性剤の量は、特に限定されるものではないが、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
<その他成分>
本発明に使用される水性インクはその他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
pH調整剤としては、調合される記録用インクに悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤などが挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
(実施例A)
次に、画像形成に用いるインクジェット記録装置、記録媒体、水性インクの全てが本発明条件を満足した場合の画像品質(本発明)と、画像形成に用いるインクジェット記録装置、記録媒体、水性インクの少なくとも一つが本発明条件を満足しない場合の画像品質(比較例)との対比実験を以下に説明する。
[本発明で使用したインクジェット記録装置]
図1に示したインクジェット記録装置の給紙部10から描画ドラム70上に繰り出された記録媒体22に対して、画像信号に応じてCMY(シアン・マゼンダ・イエロー)のそれぞれの水性インクをヘッド72から吐出して打滴した。インク吐出体積はハイライト部では1.4pl、高濃度部では3pl(2drop)で、記録密度は主走査・副走査方向共に1200dpiで記録されるようにした。
次に、記録媒体22の記録面に打滴された水性インクを、乾燥ドラム76上で第1のIRヒータ78(表面温度180℃)、温風噴出しノズル80(70℃の温風)、第2のIRヒータ82(表面温度180℃)で乾燥させた。乾燥時間は2秒である。
次に、画像形成された記録媒体22を定着ローラに搬送し、圧胴(定着ドラム84)50℃、第1及び第2の定着ローラ80℃の温度で0.14MPaのニップ圧で加熱定着させた。
記録媒体22は、各ドラム70、76、84によるドラム搬送によって535mm/sの搬送速度で搬送されるようにした。
[比較用で使用したインクジェット記録装置]
比較用のインクジェット記録装置としては、図15に示すように、搬送系をドラム搬送から一対のローラ24と無端状ベルト25とで構成されたベルト搬送装置27に変更した以外はインク打滴条件、乾燥条件、定着条件等は本発明のインクジェット記録装置と同じ条件のものを使用した。即ち、本発明のインクジェット記録装置で用いたインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72K、第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82、定着ローラ86(但し定着ローラ86に対しては圧胴と同様の材質で作られたバックアップローラー88を設けた)を配置し、各温度も同様に制御した。したがって、図15では図1と同じ部材には同符号を付してある。
[記録媒体S−1の作製]
(第1の層形成用塗布液Aの調製)
カオリン(商品名:カオブライト90、白石カルシウム(株)製)100部、0.1N水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)3.8部、40%ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亞合成製)1.3部、及び水49.6部を混合し、ノンバブリングニーダー(商品名:NBK−2、日本精機製作所(株)製)を用いて分散を行い、65%カオリン分散液を得た。
次いで、22.5%ポリエステル系ウレタンラテックス水分散液(ガラス転移温度49℃、最低造膜温度29℃;商品名:ハイドランAP−40F、大日本インキ化学工業(株)製)100部に、水5部と、得られた65%カオリン分散液7.0部と、10%エマルゲン109P(花王(株)) 0.8部とを加えた。そして、十分に攪拌混合した後、得られた混合液の液温度を15〜25℃に保って24.0%の第1の層形成用塗布液Aを得た。
(第2の層形成用塗布液aの調製)
カオリン(商品名:カオブライト90、白石カルシウム(株)製)100部と、40%ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亞合成製)1.3部とを混合した。そして、混合物を水中に分散し、7%PVA245((株)クラレ製)水溶液100部と、10%エマルゲン109P((株)花王製)水溶液3.5部とを添加し、さらに塗布後の層表面pHが3.5となるようにマロン酸を添加し、最終的な固形分濃度が27%の第2の層形成用塗布液aを調製した。
(第1の層の形成)
坪量81.4g/m2の上質紙(商品名:しらおい、日本製紙製)の両面に、得られた下塗り層用塗工液を、エクストルージョンダイコーターを用いて、片面当たりの塗工量が8.0g/m2となるように調整しながら片面ずつ塗布した。そして、85℃、風速15m/秒の乾燥風で1分間乾燥して、第1の層を形成した。さらに、形成した第1の層に対して、下記に示すソフトカレンダー処理を行った。得られた第1の層の厚みは8.1μmであった。
(第2の層の形成)
第1の層が形成された上質紙の両面に、上記で調製した第2の層形成用塗布液aを、エクストルージョンダイコーターを用いて、片面当たりの乾燥重量が20g/m2となるように調整しながら片面ずつ塗布した。そして、70℃、風速10m/秒の乾燥風で1分間乾燥して、第2の層を形成した。このようにしてインクジェット記録媒体S−1を作成した。得られた第2の層の厚みは20.2μmであった。
記録媒体S−1は、第1の層についてのコッブ吸水度が1.4g/m 2 であり、第2の層のブリストー法による接触時間0.5秒の吸水量が3.1g/m2であった。
[記録媒体S−2の作製]
上記の如く得られた記録媒体S−1の表面に、金属ロールと樹脂ロールとが対をなすロール対を備えたソフトカレンダーを用い、金属ロールの表面温度50℃、ニップ圧50kg/cmの条件でソフトカレンダー処理を行った。これにより、記録媒体S−2を作製した。記録媒体S−2は、第1の層についてのコッブ吸水度が1.4g/m 2 であり、第2の層のブリストー法による接触時間0.5秒の吸水量が3.1g/m2であった。
[比較例で使用した記録媒体の作成]
比較例で使用する記録材料として、特菱アート坪量104.7g/m2(三菱製紙社製)を用意した。特菱アートは1層構成であり、ブリストー法による接触時間0.5秒の吸水量は5.5g、層表面pHは7.1であり、本発明の記録媒体の特徴を有しない。
[本発明で使用した水性インクの作成]
(樹脂分散剤P−1の合成)
下記スキームにしたがって、樹脂分散剤(A)の1態様である樹脂分散剤P−1(化10)を合成した。
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加え窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、メチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。そして、滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温し4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥して樹脂分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂分散剤P−1の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
(自己分散性ポリマー微粒子B−01の合成)
下記スキームにしたがって、自己分散性ポリマー微粒子(C)の1態様である自己分散性ポリマー微粒子B−01を合成した。
即ち、攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットルの三口フラスコで形成された反応容器に、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。
次に、反応容器内の温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。
滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000であり、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出した。使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製)を用いた。
次に、共重合体の重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去した。これにより、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を得た。
下記に自己分散性ポリマー微粒子B−01の化学構造式を示す。各構成単位の数字は質量比を表す。
(シアン顔料含有樹脂粒子の分散物の作成)
ピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)10質量部と、表1に記載の樹脂分散剤(P−1)5質量部と、メチルエチルケトン42質量部と、1規定NaOH水溶液5.8質量部と、イオン交換水86.9質量部を混合し、ビーズミルで0.1mmΦジルコニアビーズを使い、2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%のシアン顔料含有樹脂粒子の分散物を得た。
(シアンインク組成物C−1の調製)
次に、得られたシアン顔料含有樹脂粒子の分散物、自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を使い、以下の組成で水溶性のシアンインク組成物C−1を調製した。
顔料含有樹脂粒子の分散物 39.2質量部
自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物 28.6質量部
グリセリン 20質量部
ジエチレングリコール 10質量部
オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) 1質量部
イオン交換水 1.2質量部
(マゼンタインク組成物M−1の調製)
シアン顔料分散物の調製の際に使用したピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)を、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のCromophtal Jet Magenta DMQ(PR-122)に代えた以外はシアンインク組成物の調製と同様にしてマゼンタインク組成物M−1を調製した。
(イエローインク組成物Y−1の調製)
シアン顔料分散物の調製の際に使用したピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)を、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のIrgalite Yellow GS(PY74)に代えた以外はシアンインク組成物の調製と同様にしてイエローインク組成物Y−1を調製した。
(ブラックインク組成物Bk−1の調製)
シアン顔料分散物の調製の際に使用したピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)を、三菱化学社製カーボンブラック MA100に代えた以外はシアンインク組成物の調製と同様にしてブラックインク組成物Bk−1を調製した。
(シアンインク組成物C−2、マゼンタインク組成物M−2、イエローインク組成物Y−2、ブラックインク組成物Bk−2の調製)
また、本発明条件を満足する水性インクとして、前述のシアンインク組成物C−1、マゼンタインク組成物M−1、イエローインク組成物Y−1、ブラックインク組成物Bk−1の高沸点溶媒を、グリセリンの代わりGP−250(トリオキシプロピレングリセリルエーテル、サンニックスGP250、三洋化成工業(株)製))に半分量で置き換え、ジエチレングリコールの代わりにDEGmEE(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)に半分量で置き換え、更に差分を水で補完した。これにより、シアンインク組成物C−2、マゼンタインク組成物M−2、イエローインク組成物Y−2、ブラックインク組成物Bk−2を調製した。
[比較例で使用した水性インクの調製]
(シアンインク組成物C−3、マゼンタインク組成物M−3、イエローインク組成物Y−3、ブラックインク組成物Bk−3の調製)
比較例で使用するシアンインク組成物C−3、マゼンタインク組成物M−3、イエローインク組成物Y−3、ブラックインク組成物Bk−3については以下のように調製した。
即ち、実施例の水性インクとして調製した前述のシアンインク組成物C−1、マゼンタインク組成物M−1、イエローインク組成物Y−1、ブラックインク組成物Bk−1から自己分散性ポリマー微粒子(B−01)を抜き、抜いた不足分を水で置き換えた。これにより、比較例で使用するシアンインク組成物C−3、マゼンタインク組成物M−3、イエローインク組成物Y−3、ブラックインク組成物Bk−3を調製した。
(シアンインク組成物C−4、マゼンタインク組成物M−4、イエローインク組成物Y−4、ブラックインク組成物Bk−4の調製)
比較例で使用する別の水性インクとして、前述のシアンインク組成物C−1、マゼンタインク組成物M−1、イエローインク組成物Y−1、ブラックインク組成物Bk−1の顔料分散の際に、樹脂分散剤(P−1)の代わりに低分子量分散剤2−1を等重量置き換えた以外はシアンインク組成物C−1、マゼンタインク組成物M−1、イエローインク組成物Y−1、ブラックインク組成物BK−1と同様にシアンインク組成物C−4、マゼンタインク組成物M−4、イエローインク組成物Y−4、ブラックインク組成物Bk−4を調製した。
下記に比較で使用した低分子分散剤2−1の化学構造式(化12)を示す。
[試験結果]
上記インクジェット記録装置、記録媒体、水性インクを使用した試験1〜試験15までの試験結果を図16の表に示す。
試験1は、図1に示したインクジェット記録装置を用い、上記作成した記録媒体S−1に対し、上記調製したシアンインク組成物C−1、マゼンタインク組成物M−1、イエローインク組成物Y−1、ブラックインク組成物Bk−1を打滴して画像形成を行ったものである(本発明)。
試験2は、試験1の水性インクをシアンインク組成物C−3、マゼンタインク組成物M−3、イエローインク組成物Y−3、ブラックインク組成物Bk−3に代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(水性インクが本発明を満足しない比較例)。
試験3は、試験1の水性インクをシアンインク組成物C−4、マゼンタインク組成物M−4、イエローインク組成物Y−4、ブラックインク組成物Bk−4に代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(水性インクが本発明を満足しない比較例)。
試験4は、試験1の記録媒体S−1を特菱アートに代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(記録媒体が本発明を満足しない比較例)。
試験5は、試験1の水性インクをシアンインク組成物C−3、マゼンタインク組成物M−3、イエローインク組成物Y−3、ブラックインク組成物Bk−3に代えると共に、試験1の記録媒体S−1を特菱アートに代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(水性インク及び記録媒体が本発明を満足しない比較例)。
試験6は、試験1の水性インクをシアンインク組成物C−4、マゼンタインク組成物M−4、イエローインク組成物Y−4、ブラックインク組成物Bk−4に代えると共に、試験1の記録媒体S−1を特菱アートに代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(水性インク及び記録媒体が本発明を満足しない比較例)。
試験7は、試験1のインクジェット記録装置を、図15に示すインクジェット記録装置に代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(インクジェット記録装置が本発明を満足しない比較例)。
試験8は、試験1のインクジェット記録装置を、図15に示すインクジェット記録装置に代えると共に、試験1の水性インクをシアンインク組成物C−3、マゼンタインク組成物M−3、イエローインク組成物Y−3、ブラックインク組成物Bk−3に代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(インクジェット記録装置及び水性インクが本発明を満足しない比較例)。
試験9は、試験1のインクジェット記録装置を、図15に示すインクジェット記録装置に代えると共に、試験1の水性インクをシアンインク組成物C−4、マゼンタインク組成物M−4、イエローインク組成物Y−4、ブラックインク組成物Bk−4に代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(インクジェット記録装置及び水性インクが本発明を満足しない比較例)。
試験10は、試験1のインクジェット記録装置を、図15に示すインクジェット記録装置に代えると共に、試験1の記録媒体S−1を特菱アートに代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(インクジェット記録装置及び記録媒体が本発明を満足しない比較例)。
試験11は、試験1のインクジェット記録装置を、図15に示すインクジェット記録装置に代えると共に、試験1の水性インクをシアンインク組成物C−2、マゼンタインク組成物M−2、イエローインク組成物Y−2、ブラックインク組成物Bk−2に代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(インクジェット記録装置及び記録媒体が本発明を満足しない比較例)。
試験12は、試験1のインクジェット記録装置を、図15に示すインクジェット記録装置に代えると共に、試験1の記録媒体S−1を特菱アートに代え、更に試験1の水性インクをアンインク組成物C−3、マゼンタインク組成物M−3、イエローインク組成物Y−3、ブラックインク組成物Bk−3に代えて画像形成を行った(インクジェット記録装置、記録媒体、及び水性インクの全てが本発明を満足しない比較例)。
試験13は、試験1の記録媒体S−1を記録媒体S−2に代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(本発明)。
試験14は、試験1の水性インクをシアンインク組成物C−2、マゼンタインク組成物M−2、イエローインク組成物Y−2、ブラックインク組成物Bk−2に代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(本発明)。
試験15は、試験1の記録媒体S−1を記録媒体S−2に代えると共に、試験1の水性インクをシアンインク組成物C−2、マゼンタインク組成物M−2、イエローインク組成物Y−2、ブラックインク組成物Bk−2に代えた以外は試験1と同様に画像形成を行った(本発明)。
そして、上記試験1〜試験15について、着弾干渉、画像縮み、文字再現性、カールの4つの評価項目について○、△、×の3段階評価を行った。
(着弾干渉の評価基準)
○…隣接する4ノズルでラインを描いた場合ラインの太さばらつき5μm以下
△…隣接する4ノズルでラインを描いた場合ラインの太さばらつき5μm以上10μm以下
×…隣接する4ノズルでラインを描いた場合ラインの太さばらつき10μm以上
(画像縮みの評価基準)
マゼンタ、シアンを重ねて100%の網%で50dot×50dotの正方形を描画した場合の面積の理論値に対する実面積の縮んだ割合で示した。
○…画像縮みが1%以下
△…画像縮みが5%以下
×…画像縮みが5%以上
(文字再現性の評価基準)
○…3point鷹文字が再現できる
△…3point鷹文字は再現できないが4point鷹文字が再現できる
×…4point鷹文字が再現できない
(カールの評価基準)
印画率250%で印画した記録媒体のサンプルを長辺が弧を描くように5×50mmに裁断し、下記のようにしてサンプルの曲率Cを測定した。そして、下記評価基準に従ってカール性を評価した。
〈曲率の測定方法〉
水性インクを塗布したサンプルを、25℃の温度、相対湿度50%の環境下で所定期間保管したときの曲率Cを測定した。曲率Cは、半径Rの円の弧とみなして下記式1で表わすことができる。
C=1/R(m) (式1)
〜評価基準〜
○…水性インクを塗布して保管1日後のサンプルの曲率Cが20を超えなかった。
△…水性インクを塗布して保管7日後のサンプルの曲率Cが20を超えなかった。
×…水性インクを塗布して保管7日後のサンプルの曲率Cが20を超えた。
その結果、図16の表から分かるように、画像形成に用いるインクジェット記録装置、記録媒体、水性インクの全てが本発明条件を満足した場合(試験1、13、14、15)の画像品質は、着弾干渉、画像縮み、文字再現性、カールの全ての評価項目の評価が○であった。
これに対して、画像形成に用いるインクジェット記録装置、記録媒体、水性インクの少なくとも1つが本発明条件を満足しない場合(試験2〜12)の画像品質は、着弾干渉、画像縮み、文字再現性、カールの少なくとも1つが×の評価になった。
なお、試験7の画像縮みに記載された※は、10分連続印刷時に画像縮みが○から△のレベルに悪化したことを示す。
実施例Aの結果から、本発明の画像形成方法を実施するにあたって、インクジェット記録装置、記録媒体、水性インクの全てが本発明条件を満足することが、着弾干渉、画像縮み、文字再現性、及びカールの全てについて良い評価を得るために必要であることが実証された。
(実施例B)
実施例Bは、図1のインクジェット記録装置を用いた装置条件と、シアンインク組成物C−1、マゼンタインク組成物M−1、イエローインク組成物Y−1、ブラックインク組成物Bk−1の水性インクを用いたインク条件とを固定し、記録媒体の条件を変えたときに、画像品質やカールがどのような評価になるかを調べたものである。
本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体は、次の3つの本発明条件を満足する。
〈条件1〉第1の層が設けられた原紙は、JIS P8140に規定される吸水度試験による接触時間15秒間のコッブ吸水度が5.0g/m2以下であること、
〈条件2〉第2の層は、ブリストー法による接触時間0.5秒間の吸水量が2mL/m2以上8mL/m2以下であること、
〈条件3〉第2の層の層表面pHがpH調整後において5.5以下であること、
上記3つの条件を満足する場合と、満足しない場合とについて、下記のS−3〜S−17の16種類の記録媒体を作成した。なお、記録媒体の作成において、記録媒体S−2については実施例Aで作成方法を説明したので、ここでは省略する。
(記録媒体S−2の作成)
実施例Aで説明した作成方法と同様に作成し、試験1に使用した。試験1は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−3の作成)
記録媒体S−2の作成において第1の層の厚みを4.5μmにした以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験2に使用した。試験2は上記の条件1を満足しない場合である。
(記録媒体S−4の作成)
記録媒体S−2の作成において第1の層の厚みを5μmにした以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験3に使用した。試験3は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−5の作成)
記録媒体S−2の作成において第1の層の厚みを5.8μmにした以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験4に使用した。試験4は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−6の作成)
記録媒体S−2の作成における第2の層の作成時において、カオリン(商品名:カオブライト90、白石カルシウム(株)製)100部のうち、30部をカオカル(白石カルシウム(株)社製)に置き換えた以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験5に使用した。試験5は上記の条件2の上限を満足しない場合である。
(記録媒体S−7の作成)
記録媒体S−2の作成における第2の層の作成時において、カオリン(商品名:カオブライト90、白石カルシウム(株)製)100部のうち、27部をカオカル(白石カルシウム(株)社製)に置き換えた以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験6に使用した。試験6は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−8の作成)
記録媒体S−2の作成における第2の層の作成時において、カオリン(商品名:カオブライト90、白石カルシウム(株)製)100部のうち、10部をカオカル(白石カルシウム(株)社製)に置き換えた以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験7に使用した。試験7は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−9の作成)
記録媒体S−2の作成における第2の層の作成時において、7%PVA245((株)クラレ製)水溶液添加量を157部にした以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験8に使用した。試験8は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−10の作成)
記録媒体S−2の作成における第2の層の作成時において、7%PVA245((株)クラレ製)水溶液添加量を214部にした以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験9に使用した。試験9は上記の条件2の下限を満足しない場合である。
(記録媒体S−11の作成)
記録媒体S−2の作成における第2の層の作成時において、塗布後の層表面pHが6となるようにマロン酸を添加した以外は記録媒体S−2と同様に成し、試験10に使用した。試験10は上記の条件3が本発明を満足しない場合である。
(記録媒体S−12の作成)
記録媒体S−2の作成における第2の層の作成時において、塗布後の層表面pHが5.5となるようにマロン酸を添加した以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験11に使用した。試験11は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−13の作成)
記録媒体S−2の作成における第2の層の作成時において、塗布後の層表面pHが4.5となるようにマロン酸を添加した以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験12に使用した。試験12は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−14の作成)
記録媒体S−2の作成における第2の層の作成時において、塗布後の層表面pHが2.5となるようにマロン酸を添加した以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験13に使用した。試験13は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−15の作成)
記録媒体S−2の作成における第2の層の作成時において、塗布後の層表面pHが1.5となるようにマロン酸を添加した以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験14に使用した。試験14は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−16の作成)
記録媒体S−2の作成において、第1の層の厚みを5μmにし、第2の層の作成時において、カオリン(商品名:カオブライト90、白石カルシウム(株)製)100部のうち、27部をカオカル(白石カルシウム(株)社製)に置き換え、塗布後の層表面pHが5.0となるようにマロン酸を添加した以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験15に使用した。試験15は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(記録媒体S−17の作成)
記録媒体S−2の作成において、第1の層の厚みを5μmにし、第2の層の作成時において、7%PVA245((株)クラレ製)水溶液添加量を157部に変え、塗布後の層表面pHが5.0となるようにマロン酸を添加した以外は記録媒体S−2と同様に作成し、試験16に使用した。試験16は上記の条件1〜条件3の全てを満足する場合である。
(試験結果)
そして、試験1〜試験16、即ち記録媒体S−2〜記録媒体S−17について実施例Aと同様に、着弾干渉、画像縮み、文字再現性、カールの4項目について○、△、×の3段階評価を行った。なお、上記したように、インクジェット記録装置と水性インクは同一のものを使用した。
実施例Bの試験結果を図17の表に示す。
図17の表から分かるように、本発明の条件1〜条件3の全てを満足する記録媒体を使用した試験1、3、4、6〜8、及び11〜16は、着弾干渉、画像縮み、文字再現性、及びカールの全ての項目の評価が○であった。
これに対して、本発明の条件1〜条件3の少なくとも1つを満足しない記録媒体を使用した試験2、5、9、10は、着弾干渉、画像縮み、文字再現性、及びカールの少なくとも一つが×の評価になった。
このことから、本発明の画像形成方法を実施するにあたって、記録媒体が上記条件1〜3の全てを満足することが、着弾干渉、画像縮み、文字再現性、及びカールの全てについて良い評価を得るために必要であることが実証された。
また、実施例Aと実施例Bとの結果から、本発明の画像形成方法を実施するにあたって、インクジェット記録装置、記録媒体、水性インクの全てが本発明条件を満足し、且つ記録媒体が上記条件1〜3の全てを満足することが、着弾干渉、画像縮み、文字再現性、及びカールの全てについて良い評価を得るために必要であることが実証された。
1、2…インクジェット記録装置、10…給紙部、22…記録媒体、26…第1中間搬送部、28…第2中間搬送部、30…中間搬送体、30a…ガイド面、32…搬送ガイド、36…送風口、38…ポンプ、40…送風規制ガイド、42…吸引孔、43…ポンプ、70…描画ドラム、72C,72M,72Y,72K…インクヘッド、73…保持手段、74…吸引孔、76…乾燥ドラム、84…定着ドラム、86…第1定着ローラ、88…第2定着ローラ、143…送風制御部、147…負圧制御部、200…記録媒体