以下、本発明の実施形態の例について図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る有機EL素子の一例を模式的に示す図である。
図1に示す有機EL素子は、下部電極膜ETLと、下部電極膜ETLの上面と接する下部電子注入層EILと、下部電子注入層EILの上面と接する下部ホール注入層HILと、下部ホール注入層HILの上面と接する下部発光層EMLと、下部発光層EMLの上面と接するホールブロッキング層HBLと、ホールブロッキング層HBLの上面に接する上部発光層EMUと、上部発光層EMUの上面に接する上部ホール注入層HIUと、上部ホール注入層HIUの上面に接する電子注入層EIUと、電子注入層EIUの上面に接する上部電極膜ETUとからなり、下部電極膜ETLと上部電極膜ETUとの間に電圧が印加される。印加される電圧の極性は正負の2つのうちどちらも取り得るようになっている。また、この有機EL素子は、図示しない反射材料の上に形成されており、反射材料は、図示しないガラス基板上に形成されている。
図1の例において、下部発光層EMLは青色に発光する層であり、上部発光層EMUは赤色に発光する層である。しかし下部発光層EMLおよび上部発光層EMUにおける発光色の組み合わせはこれに限られることはなく、例えば上部発光層EMUが緑色に発光する層となっていてもよいし、下部発光層EMLが青色以外の色を発光する層であってもよい。以下では説明の容易のため、下部電子注入層EILおよび上部電子注入層EIUをまとめて電子注入層と呼び、下部ホール注入層HILおよび上部ホール注入層HIUをまとめてホール注入層と呼び、下部発光層EMLおよび上部発光層EMUをまとめて発光層と呼び、下部電極膜ETLおよび上部電極膜ETUをまとめて電極膜と呼ぶ。
電極膜は金属やITO(Indium Tin Oxide)やInZnO(Indium Zinc Oxide)などの透明電極などからなり、外部の配線と接続されている。電子注入層はこの層に接する電極膜から電子を受取り、発光層にその電子を送り込む性質を有する。電子注入層は後述する電子輸送性の物質と電子供与性の物質とを共蒸着することで形成される。層厚は20nm以上あれば機能するが、発光層から発する光と反射電極から反射した光とを干渉させることを考慮して膜厚を決定するとよい。また、隣接する上部電極膜ETUがスパッタ法により形成する場合などは、ダメージを回避するために60nm程度の膜厚を確保する必要がある。
電子注入層に用いる電子輸送性の物質としては、アルカリ金属と共蒸着することにより電荷移動錯体化しやすいものであれば特に限定は無い。例えばトリス(8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル−8−キノリノラート)−4−フェニルフェノラート−アルミニウム、ビス[2-[2-ヒドロキシフェニル]ベンゾオキサゾラート]亜鉛などの金属錯体や2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン等を用いてよい。
電子注入層に用いる電子供与性の物質としては、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す材料であれば特に限定は無い。例えば、リチウム、セシウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、さらには希土類金属等の金属類を用いてよい。また、上述の物質の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物等から電子供与性を示す物質を選択して用いてもよい。
ホール注入層は例えば五酸化バナジウムなどの周りの物質を酸化させる、つまり周りの物質から電子を取込む性質をもつ物質で構成されており、発光層にホールを供給する。ホール注入層はトンネル効果によって電子を輸送する。そのためには膜厚は最大でも10nm以下とする必要がある。トンネル効果を利用するため膜厚はできる限り薄い方が望ましいが、ホール注入層として機能するためには0.5nm以上望ましくは3nm程度必要である。従って、膜厚は0.5nm〜3nmの間とするとよい。なお、本実施形態ではホール注入層には酸化性の強い五酸化バナジウムを用いたが、酸化モリブデン、酸化タングステンなどを用いてもよい。
発光層は、ホール注入層から供給されたホールとホールブロッキング層を超えてきた電子とを再結合させて発光させる役割を有する。また、発光層はホールも電子も輸送する性質を有するが、電子輸送性の物質とホール輸送性の物質とでは、電子輸送性の物質の方が多くなっており、全体としては電子輸送性が強い。具体的には電子輸送性のホスト材料にホール輸送性の材料を10〜30%混ぜ、さらに発光ドーパントとなる物質を3〜10%混ぜたものを用いる。発光層の厚さはその機能を発揮するために20nm以上必要であるが、具体的な厚さは反射電極からの光との干渉を考慮して決定するとよい。
発光層の材料としては、電子、ホールの輸送能力を有するホスト材料に、それらの再結合により蛍光もしくはりん光を発するドーパントを添加したもので共蒸着により発光層として形成できるものであれば特に限定は無い。
例えば、ホストとしてはトリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]のような錯体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、等を用いてよい。
また、ドーパントとしてはホスト中で電子とホールを捉えて再結合させ発光するものであって、例えば青ではアントラセン、緑ではクマリン誘導体、赤ではピラン誘導体などの蛍光を発光する物質や、もしくはイリジウム錯体、ピリジナート誘導体などりん光を発する物質であってもよい。
ホールブロッキング層HBLは、電子を輸送するがホールを輸送しない性質を有する。ホールブロッキング層HBLが厚いと駆動電圧が上昇する一方、薄いとホールの動きを遮断できなくなる。具体的には10nm程度〜20nm程度が望ましい。20nmの厚さがあればホールの動きをほぼ完全にブロックすることができる。
ホールブロック層としては、電子注入層において電子輸送性の物質として挙げた材料のうちとくにHOMOのエネルギー準位が低いものを用いるとよい。
次に、導通および発光のメカニズムについて説明する。図2は、図1に示す有機EL素子の電圧を印加しない場合におけるエネルギー図である。本図は各層毎のエネルギーバンドを示している。本図の左右方向は各層の層厚と位置を示し、上下方向がエネルギーを示す。エネルギーバンドは、左から上部電極膜ETU、電子注入層EIU、上部ホール注入層HIU、上部発光層EMU、ホールブロッキング層HBL、下部発光層EML、下部ホール注入層HIL、下部電子注入層EIL、下部電極膜ETLの順に示されている。上部電極膜ETUおよび下部電極膜ETLは導体であるため、そのフェルミ準位を線で示し、その他の各層は半導体であるため、価電子帯またはHOMOバンドの上限を下側の辺、導電帯またはLUMOバンドの下限を上側の辺とする四角形で表している。本図では、ホール注入層の導電帯の下限のエネルギー準位が隣接する発光層および電子注入層に比べて高いことがわかる。
図3は、図1に示す有機EL素子の下部電極膜ETLから上部電極膜ETUに電子が輸送されるよう電圧を印加した場合におけるエネルギー図である。この場合全体としてみれば、電子は上部電極膜ETUから下部電極膜ETLの方向に輸送される。上部電極膜ETUに負、下部電極膜ETLに正の電圧を印加すると、上部電極膜ETUの電子のポテンシャルは高まり、電子は電子注入層EIUの上部電極膜ETU近傍にあるポテンシャル障壁をトンネルして上部電子注入層EIUに流れ込む。電子注入層EIUに流れ込んだ電子は、上部ホール注入層もトンネル効果により通過して上部発光層EMUに流れ込む。上部発光層EMUでは電子はLUMOに送り込まれ、一部は発光層EMU中の発光ドーパントにトラップされながらもホールブロッキング層HBLに達する。
ホールブロッキング層HBLは電子をブロックしない性質を有するため、電子はそのまま通過し下部発光層EMLに達する。下部発光層EMLでは電子は発光ドーパントにトラップされる。一方、下部電極膜ETLの電圧によって下部電子注入層EILのポテンシャルが下がる。それにより下部電子注入層EILは下部ホール注入層HILから電子を取込む。下部ホール注入層HILにはホールが作られ、そのホールは、本来の特性により下部発光層EMLから電子を取込む分とあわせて下部発光層EMLに流れ込む。すると、下部発光層EMLにおいて電子とホールが結合し、下部発光層EMLが発光する。ここで、電子とホールとが結合するのは発光層内の発光ドーパント分子上である。なお、下部発光層EML中にあるホールの一部は電位差によりホールブロッキング層HBLまで到達するが、ホールブロッキング層HBLはホールを輸送しないため下部発光層EML中にとどまり、上部発光層EMUからホールブロッキング層HBLを越えてきた電子と結合し、下部発光層EMLが発光する。
ここで、ホール注入層は接する電子注入層側のポテンシャルが低い場合には効率的に下部発光層EMLにホールを供給している。また接する発光層のポテンシャルが低い場合にはトンネル効果によって電子を輸送している。
図4は、図1に示す有機EL素子の上部電極膜ETUから下部電極膜ETLに電流が流れるよう電圧を印加した場合におけるエネルギー図である。この場合全体としてみれば、電子は下部電極膜ETLから上部電極膜ETUの方向に輸送される。この有機EL素子は上下対称の順序で積層されているため、図3で説明したものと同様のメカニズムによって、上部発光層EMUが発光する。
ここで、ホール注入層と発光層との間にキャリア輸送層を設けても良い。キャリア輸送層を設けることで、ホール注入層がひきおこす酸化によって発光層が劣化することを抑制することができる。キャリア輸送層の厚さは10〜20nm程度でもよく、材質は電子輸送性の材料をベースに20〜40%程度のホール輸送性の材料を混ぜたものでよい。
ここで用いる電子輸送性の物質は、電子注入層に用いる電子輸送性の物質としてあげたものでよい。ホール輸送性の材料としては、例えば、テトラアリールベンジシン化合物(トリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、銅フタロシアニン誘導体等を用いるとよい。
図5は、本発明の実施形態に係る有機EL素子の他の例を模式的に示す図である。図1との違いは、ホールブロッキング層HBLの代わりに電子ブロッキング層EBLを設けている点であり、発光層が全体としてホール輸送性を示す場合にはこの構成の方がよい。
図5に示す有機EL素子は、下部電極膜ETLと、下部電極膜ETLの上面と接する下部電子注入層EILと、下部電子注入層EILの上面と接する下部ホール注入層HILと、下部ホール注入層HILの上面と接する下部発光層EMLと、下部発光層EMLの上面と接する電子ブロッキング層EBLと、電子ブロッキング層EBLの上面に接する上部発光層EMUと、上部発光層EMUの上面に接する上部ホール注入層HIUと、上部ホール注入層HIUの上面に接する電子注入層EIUと、電子注入層EIUの上面に接する上部電極膜ETUとからなる。なお、下部発光層EMLは青色に発光する層であり、上部発光層EMUは緑色に発光する層である。
図1と同様に下部電極膜と上部電極膜との間に電圧が印加され、また、図示しない反射材料の上に形成されており、反射材料は図示しないガラス基板上に形成されている。
発光層は、電子輸送性の物質とホール輸送性の物質とでは、ホール輸送性の物質の方が多くなっており、全体としてはホール輸送性が強い。電子ブロッキング層は、ホールを輸送するが電子を輸送しない性質を有する。電子ブロッキング層の材料としては、キャリア輸送層の説明で挙げたホール輸送性の材料のうちとくにLUMOのエネルギー準位が高いものを用いるとよい。その他の層の構成は図1の例と同様である。
図5に示す有機EL素子において、上部電極膜ETUに負、下部電極膜ETLに正の電圧を印加した場合には、上部発光層EMUが発光する。図1の例と同様に電子は上部電極膜ETUから上部発光層EMUに送り込まれるが、その電子は電子ブロッキング層EBLによってブロッキングされる。一方で下部ホール注入層HILから下部発光層EMLに供給されたホールが電子ブロッキング層を通過して上部発光層EMUに到達し、上部発光層EMUの発光ドーパント分子において電子とホールの再結合が起こるからである。また、反対の電圧を印加した場合には、下部発光層EMLが発光する。
なお、図5に示す有機EL素子を電子ブロッキング層EBLの中心、つまり上部発光層EMUに接する部分と下部発光層EMLに接する部分とで二つに分割し、間にITOの配線を設けても同様の性質を示す有機EL素子を作ることができる。
以下では上述の有機EL素子を用いた有機EL表示装置について説明する。有機EL表示装置は、絶縁基板SUB上に薄膜トランジスタTFTや有機EL素子等が形成されたアレイ基板と、アレイ基板に対向し有機EL素子が外界と接することを防ぐ封止基板SSを含む。なお、絶縁基板SUBはガラス基板である。アレイ基板上の表示領域には、画素回路がマトリクス状に並んでいる。アレイ基板の表示領域を覆うように封止基板SSが設けられている。一つの画素回路は一つのサブ画素に対応する。有機EL表示装置の一つの画素はサブ画素の集合によって赤青緑の3種類の光を放つ必要があるが、一つのサブ画素が2色発光できるため、1画素を構成するサブ画素は3つとは限らない。この点は単色発光の有機EL素子を用いる場合と異なる。
図6は、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置の一例を示す断面図である。絶縁基板SUB上には、2色発光の有機EL素子と薄膜トランジスタTFTを含む画素回路が形成されている。薄膜トランジスタTFTは、絶縁基板SUB上に形成された半導体膜SIと、その上方に絶縁膜を挟んで平面的に半導体膜SIと重なるように形成されたゲート電極GTと、半導体膜SIの一端の上に設けられ、その一端と接するソース電極STと、ゲート電極GTを挟んでソース電極STの反対側にある半導体膜SIの他端の上に設けられ、その他端と接するドレイン電極とを有する。薄膜トランジスタTFTおよび絶縁基板SUBおよび図示しない画素回路の配線の一部は、ソース電極STの上面とドレイン電極の上面を除き、層間絶縁膜MIに覆われている。層間絶縁膜MIの上には、上部絶縁膜PASが形成されている。さらに上部絶縁膜PASの上には、平坦化膜FLが形成されている。平坦化膜FLのうち、表示領域外にある領域の上には気密性を保持するための封止材SMがあり、その上に封止基板SSが設けられている。封止基板SSはガラス材料によって形成されている。封止材SMは例えばエポキシ系接着剤である。封止材SMにより密閉封止することで、例えば電子注入層が水分によって劣化することを防ぐ。
平坦化膜FLにおいて表示領域に対応する領域の上方には、複数の有機EL素子が並んで形成されている。平坦化膜FL上には有機EL素子ごとに反射電極RMが形成されている。各反射電極RMの上面には各有機EL素子の下部電極膜ETLが接し、下部電極膜ETLは、平坦化膜FLおよび上部絶縁膜PASを貫くコンタクトホールによって薄膜トランジスタTFTのドレイン電極DTに接続されている。隣り合う有機EL素子の下部電極膜ETLの間は、電極分離材料DMが充填されており、その上部が盛り上がっている。下部電極膜ETLの上部には図示しない下部電極膜ETL、下部電子注入層EIL、下部ホール注入層HILおよび下部キャリア輸送層が形成されている。その上には下部発光層EMLが設けられている。ここで、下部発光層EMLおよび上部発光層EMUは、発光する色によって、青発光体BE、赤発光体RE、緑発光体GEとも呼ぶ。下部発光層EMLの上には図示しないホールブロッキング層HBLが設けられている。その上層には上部発光層EMUが設けられ、その上層には図示しない上部キャリア輸送層、上部ホール注入層HIU、電子注入層EIUが設けられている。その上には上部電極膜ETUが複数の有機EL素子の間で共通して設けられ、電気的には各有機EL素子の上部電極膜ETUは互いに接続されている。
次は、2色発光の有機EL素子の発光体の配置方法および、その配置方法ごとの有機EL表示装置の製造方法について説明する。図7Aは有機EL表示装置における有機EL素子の下部発光層EMLの平面配置の一例を示す図である。図7Bは有機EL表示装置における有機EL素子の上部発光層EMUの平面配置の一例を示す図である。各有機EL素子の下部発光層EMLおよび上部発光層EMUは平面的に見て上下方向に長い矩形をしており、それらがマトリクス状に配置されている。また図6からもわかるように、図7Aに示すそれぞれの下部発光層EMLと重なるように図7Bに示すそれぞれの上部発光層EMUが配置されている。ここで図7Aと図7Bとで同じ位置に表される発光層は、実際には重なって位置している。
図7Aおよび図7Bに示す例では、全ての下部発光層EMLとして青発光体BEが配置されている。また、上部発光層EMUについては、縦方向には同じ色の発光層が並んで列をなしており、横方向には赤発光体REの2列と緑発光体GEの2列とが交互に配置されている。この有機EL表示装置では下側の青発光体BEおよび上側の赤発光体REからなるサブ画素と下側の青発光体BEおよび上側の緑発光体GEからなるサブ画素との二つで1画素を構成するため、単色発光の素子のように3つのサブ画素で1画素を形成する場合より解像度を向上できる。また、同じ色の発光層を2列並べることで、蒸着の際のマスクをサブ画素の大きさより大きくでき、それによっても解像度を高めている。なお、図7Aおよび図7Bは配置例を説明するためのものであるため、2×8のサブ画素に限定して図示しているが、実際の有機EL表示装置では表示する画素数に応じた数のサブ画素が並んでいることはもちろんである。
図7Aおよび図7Bに示す有機EL表示装置の製造方法について説明する。はじめに、絶縁基板SUB上に公知の成膜方法やフォトリソグラフィなどの手法を用いて画素回路の配線や薄膜トランジスタTFTおよびそれらを覆う層間絶縁膜MIを形成する。次に、層間絶縁膜MI上に窒化シリコンなどを成膜し、上部絶縁膜PASを形成する。その上には感光性の有機樹脂膜等を塗布し、平坦化膜FLを形成する。平坦化膜FLのコンタクトホール部分をフォトリソグラフィによりパターニングした後、厚さ100nmのアルミ合金を成膜し反射電極RMをパターニングする。その後ドライエッチングでドレイン電極DTを露出させる。さらに厚さ77nmのITOを積層、パターニングし、ドレイン電極DTと電気的に接続される下部電極膜ETL(画素電極)を形成する。その画素電極上に、厚さ15nmの下部電子注入層EIL、厚さ1nmのホール注入層HIL、厚さ24nmの下部キャリア輸送層、厚さ33nmの青発光体BE(下部発光層EML)をそれぞれ蒸着により順に形成する。さらにその上方には、緑発光体GEを形成する領域にはマスク蒸着によって、厚さ15nmのホールブロッキング層HBL、厚さ34nmの緑発光体GE(上部発光層EMU)を順に形成する。一方、赤発光体REを形成する領域にはマスク蒸着によって、厚さ70nmの電子輸送層、厚さ15nmのホールブロッキング層HBL、厚さ35nmの赤発光体RE(上部発光層EMU)を順に形成する。その後、発光色に関係なく上部発光層EMUの上に厚さ15nmのキャリア輸送層、厚さ1nmのホール注入層HIU、厚さ50nmの電子注入層EIUを蒸着により形成し、さらにスパッタ法によりInZnOを30nm成膜し、上部電極膜ETUとすることで有機EL表示装置のアレイ基板は完成する。その後、封止基板SSとアレイ基板の貼り合わせや外部との接続配線の形成などを行い、有機EL表示装置が完成する。なお、各層の厚みは、発光層の発光位置から反射電極RMまでの光学長を、各色の光の3/4波長とするために設定した厚さである。
図8Aは有機EL表示装置における有機EL素子の下部発光層EMLの平面配置のもう一つの例を示す図である。図7Bは有機EL表示装置における有機EL素子の上部発光層EMUの平面配置のもう一つの例を示す図である。これらの図は図7Aおよび図7Bに対応する図である。この例では、上部発光層EMUおよび下部発光層EMLは縦方向には同じ色の発光層が並んで列をなしている。下部発光層EMLについては横方向には青発光体BEの列と緑発光体GEの列が交互に配置されている。また、上部発光層EMUについては、横方向には赤発光体REの列と緑発光体GEの列とが交互に配置されている。緑発光体GEの列の幅は、赤発光体REおよび青発光体BEの列の幅に比べて狭い。ここで、緑発光体GEは上下共に同色であるので、2色発光の有機EL素子ではなく、単色発光の有機EL素子を用いてよい。この例でも、二つのサブ画素によって1画素を構成することができる。
2色発光の有機EL素子を用いる場合、電流方向の切替が必要となる。最も回路構成が単純な切替方法として、上部電極膜ETUの極性を反転する方法(いわゆるコモン反転)がある。しかしこの方法では、全てのサブ画素の極性を一度に反転させるため、各画素回路の容量にたまった電荷が一時に放出されることになる。すると駆動回路の負荷が大きく、電力的にも不利である。
図9は、有機EL表示装置の画素回路の一例を示す図である。本図に示す回路では、画素回路の縦方向の列ごとに設けられている電源線Vpnについて、隣り合う電源線Vpnで電流方向を反転すること(いわゆるライン反転)ができる。
図9に示す有機EL表示装置の表示領域においては、複数のセレクト線SELが左右方向に延び、複数の信号線DLが上下方向に延びている。セレクト線SELは、画素スイッチ制御回路YDVに接続され、信号線DLは信号入力回路XDVに接続されている。セレクト線SELと信号線DLとが平面的に交差する点に対応して、画素回路がマトリクス状に配置されている。また、画素回路の縦方向の列ごとに電源線Vpnが設けられており、電源線Vpnは信号入力回路XDVに接続されている。
図9に示す各画素回路の構成について説明する。トランジスタTR1は、そのソース電極が信号線DLに接続されており、そのゲート電極はセレクト線SELに接続されている。トランジスタTR1のドレイン電極は、トランジスタTR2のゲート電極および容量Cpsの一端と接続されている。また、容量Cpsの他端は、電源線Vpnに接続されている。トランジスタTR2のソース電極は電源線Vpnに接続され、ドレイン電極は有機EL素子OLの一端(下部電極膜ETL)に接続されている。有機EL素子OLの他端(上部電極膜ETU)は、共通電極に接続されている。ここで、有機EL素子はダイオードの一種であり、さらに本実施形態の有機EL素子は両方の極性を有するため、本図では極性の異なるダイオードを並列にした記号で表している。トランジスタTR1,TR2はnチャネルの薄膜トランジスタである。なお、2色発光の有機EL素子を用いる画素回路においてはトランジスタTR1,TR2のソース電極とドレイン電極に印加される電圧の極性が適宜反転する。従って、トランジスタTR1,TR2のソース電極とドレイン電極は、印加される電圧の極性により定まるものであるが、ここでは便宜上ソース電極とドレイン電極を接続先によって定めて記載する。
この回路構成において、電源電圧Vpnには列ごとに正負の電圧を印加し、一定時間後その極性を反転するように駆動する。この方法によって駆動回路の負荷を低減できる。また、上部電極の抵抗値が大きいことに起因する輝度傾斜の問題を回避することもできる。なお、図9の例において、隣り合う電源線Vpnにかかる電源電圧を一定とし、時間毎に回路図中アースとなっている電極の極性を反転させれば、上述のコモン反転を行うこともできる。これは、ライン反転によって画素回路が複雑化しないことを意味する。
上述のコモン反転やライン反転の他の駆動方法として、サブ画素単位で反転させる方法(ドット反転)もある。図10は、有機EL表示装置の画素回路の他の例を示す図である。図10に示す有機EL表示装置の表示領域においては、複数のセレクト線SELが左右方向に延び、複数の信号線DLが上下方向に延びている。セレクト線SELは、画素スイッチ制御回路YDVに接続され、信号線DLは信号入力回路XDVに接続されている。セレクト線SELと信号線DLとが平面的に交差する点に対応して、画素回路がマトリクス状に配置されている。また、画素回路の縦方向の列ごとに電源線VpおよびVnが設けられており、それらは信号入力回路XDVに接続されている。電源線Vpには正の電位が、電源線Vnには負の電位が印加されている。
図10に示す各画素回路の構成について説明する。本図にはドット反転で駆動される画素回路が示されている。トランジスタTR1は、そのソース電極が信号線DLに接続されており、そのゲート電極はセレクト線SELに接続されている。トランジスタTR1のドレイン電極は、トランジスタTR3のゲート電極、トランジスタTR4のゲート電極および容量Cpdの一端と接続されている。また、容量Cpdの他端は、トランジスタTR3のドレイン電極およびトランジスタTR4のドレイン電極に接続されている。トランジスタTR3のソース電極は電源線Vpに接続され、トランジスタTR4のソース電極は電源線Vnに接続されている。ここで、トランジスタTR1,TR3はnチャネルの薄膜トランジスタであり、トランジスタTR4はpチャネルの薄膜トランジスタである。また、容量Cpdの他端は、有機EL素子OLの一端(下部電極膜ETL)にも接続されている。有機EL素子OLの他端(上部電極膜ETU)は、本図のアースの記号で表された共通電極に接続されている。
この回路においては、電源線Vpおよび電源線Vnの電位はそれぞれ一定であり、信号線DLから供給される信号の極性で正負を選択する。ドット反転ではライン反転よりさらに負荷低減できる、また、前述の輝度傾斜の問題に加えスメアも低減できる。一方、図9と比べてみればわかるように、回路が複雑になる。
ここで、有機EL素子の平面配置を工夫し、ライン反転やドット反転を利用して発光パターンを制御することで、視認できる解像度をさらに向上させることも可能である。以下ではその例について説明する。
図11Aは有機EL表示装置における有機EL素子の下部発光層の平面配置の他の例を示す図である。図11Bは有機EL表示装置における有機EL素子の上部発光層の平面配置の他の例を示す図である。上部発光層EMUおよび下部発光層EMLは縦方向には同じ色の発光層が並んで列をなしている。下部発光層EMLについては、横方向に青発光体BEの2列と緑発光体GEの2列とが交互に配置されている。上部発光層EMUについては、横方向に緑発光体GEの2列と赤発光体REの2列とが交互に配置されている。ここで、青発光体BEの上方には緑発光体GEが配置されており、赤発光体REの下方にも緑発光体GEが配置されている。この配置によって、全てのサブ画素で緑発光ができる。緑は視感度が高く、解像性も高いため、視覚上は各サブ画素の解像度が認識されやすい。
図12は、図11Aおよび図11Bに示す有機EL表示装置における発光パターンの例を示す図である。図12の例においては、有機EL表示装置の1フレームの期間をT1、T2、T3の3つのサブ期間に分割し、それぞれのサブ期間における発光パターンを示している。本図では各サブ期間の発光パターンを2段のサブ画素の列で示されており、上段は横方向に並ぶ有機EL素子の上部発光層EMU側の発光対象となる色の列を、下段が横方向に並ぶ有機EL素子の下部発光層EML側の発光対象となる色の列を示す。発光対象とならない発光層は非表示部NAで示し、発光対象となる発光層は、その色により、赤表示部RA、緑表示部GA、青表示部BAで表している。ここで、発光対象とは、サブ画素(有機EL素子)の上部発光層EMUおよび下部発光層EMLのうち、信号線DLから供給される信号により発光しうる箇所を示す。言い換えれば白発光の際に発光する箇所である。例えば黒を表示させる画素に対応するサブ画素は、発光対象であっても実際には発光しない。なお、2色発光の有機EL素子の極性によって発光対象を切り替えるため、図12において上段が発光対象となるときは、下段は非表示部NAとなる。
図12によれば、サブ期間がT1、T2、T3と進むにつれて、緑表示部GAを有するサブ画素が右にずれていく。また、緑表示部GAの左右のサブ画素は、青表示部BAを有するサブ画素と赤表示部RAを有するサブ画素である。緑表示部GAを有するサブ画素は3列おきに存在するため、3つのサブ期間によって、全てのサブ画素で緑色の発光層が発光対象となる。こうすれば、緑のサブピクセルの数だけ画素があるのと同等の解像度が得られ、解像度を高くできる。
次に図11Aおよび図11Bに示す有機EL表示装置の製造方法について、図7Aおよび図7Bに示す有機EL表示装置の製造方法との相違点を中心に説明する。絶縁基板SUB上に様々な層を形成し、平坦化膜FLを形成するまでの製造方法は上述の製造方法と同様である。平坦化膜FLのコンタクトホール部分をフォトリソグラフィによりパターニングした後ドライエッチングでドレイン電極DTを露出させる。その後、厚さ100nmの銀合金と厚さ30nmのITOを積層、パターニングし、薄膜トランジスタTFTのドレイン電極DTと電気的に接続される反射電極RMと下部電極膜ETL(画素電極)を形成する。その画素電極上に、厚さ15nmの下部電子注入層EIL、厚さ1nmの下部ホール注入層HILを順に蒸着によって形成する。次にマスク蒸着によって、青発光体BEを形成する領域に厚さ71nmのキャリア輸送層、厚さ33nmの発光層、厚さ19nmのホールブロッキング層を順に形成する。さらに青発光体BEの上方および赤発光体REの下方の緑発光体GEを形成するために、両方の種類の有機EL素子を生成する領域に厚さ25nmの緑色発光層を形成する。次にマスク蒸着で赤発光体REを形成する領域に厚さ149nmの電子輸送層、厚さ15nmのホールブロック層、厚さ30nmの赤色発光層30nmを順に形成する。さらに両方の種類の有機EL素子を形成する領域に厚さ15nmのキャリア輸送層、厚さ1nmのホール注入層、厚さ50nmの電子輸送層を蒸着によって順に形成し、上部電極膜ETUとして厚さ30nmのInZnOをスパッタ法により形成する。その後は図7Aおよび図7Bの例と同様の製造方法でよい。
各層の厚みは青発光体BEおよび赤発光体REの発光位置から反射電極RMまでの光学長はそれぞれ3/4波長となり、下部発光層EMLの緑発光体GEの発光位置から反射電極RMまでの光学長は1/4波長、上部発光層EMUの緑発光体GEの発光位置から反射メタルまでの光学長は3/4波長となるようにしている。
ライン反転駆動やドット反転駆動にすれば以上述べたように、上部電極の抵抗による輝度傾斜やスメアを低減できる利点がある。これらは発光素子が逆方向にも電流を流すことができることから実現できるものである。逆方向にも電流を流すことが可能な最低限の層構成を図13に示す。
本発明で述べた電荷注入層、すなわち第1の電極層(上部電極膜ETUに対応する)に接し電子を輸送する第1の電子注入層(上部電子注入層EIUに対応する)と、有機発光膜を含むとともに電子及びホールを輸送する第1の電子ホール輸送層(上部発光層EMUに対応する)と、前記第1の電子注入層と第1の電子ホール輸送層との間にあり、前記第1の電子注入層および前記第1の電子ホール輸送層に接するとともに前記第1の電子ホール輸送層から電子を取込む第1のホール注入層(上部ホール注入層HIUに対応する)よりなる構成は電子、ホールともに注入することができ、これを用いると逆方向にも電流を流すことが可能となる。第1の電極に対向する第2の電極(下部電極膜ETLに対応する)と発光層との間に電子ブロッキング層EBLが設けられる。すると、第1の電極を負の電位とし、第2の電極を正の電位とした時は、第1の電極から電子を、第2の電極からホールが注入され電流が流れて発光する。一方、逆の電位を印加した場合、第1の電極からホールが注入されるが第2の電極から電子は注入されない。しかしホールは途中止められることなく第2の電極に到達するので発光はしないが電流は流れる。また、さらに電子ブロッキング層EBLと第2の電極との間にホール注入層を設けてもよい。そうすれば、より効率的にホールの注入を行うことができる。
また、第2の電極と発光層との間にホールブロッキング層HBLを設けてもよい。すると、第1の電極を正の電位とし、第2の電極を負の電位として第1の電極からホールを、第2の電極から電子を注入した時は電流が流れて発光する。一方、逆の電位を印加した場合、第1の電極から電子が注入されるが第2の電極からホールは注入されない。しかし電子は途中止められることなく第2の電極に到達するので発光はしないが電流は流れる。さらにホールブロッキング層HBLと第2の電極との間に電子注入層を設けてもよい。そうすればより効率的に電子を注入することができる。
この素子と図9や図10に示したようなドット反転あるいはライン反転駆動できる回路とを組み合わせることで輝度傾斜やスメアを低減できる。その駆動方法の一例を図14に示す。図14Aは画素配列を示す。一つの画像を表示する1フレームの時間を二分割し、図14Bと図14Cのように隣り合った画素を一組として2分の1フレームの一方では片側が発光し逆側が発光しない方向に電流を流し、残りの2分の1フレームでは逆方向に電流を流して発光する画素を入れ替えることによりドット反転駆動あるいはライン反転駆動とすることができる。
逆方向に電流を流しても発光する素子と比較すると発光している時間が半分になるため最高輝度が低下するあるいは電流効率が低下するという不利益があるが、層構成が単純で作りやすいという利点がある。
図15は、本発明の実施形態に係る有機EL素子を照明に用いた例である。交流を有機EL素子の上部電極UEと下部電極LEの間に印加して発光させるが、直流をバイアスすれば連続的に色調を変化することが可能である。補色関係にある2色を選んで有機EL素子を作れば白色を挟んで2色の間の色合いを自在に表現できる。同様なことがエリアカラーのディスプレイに応用した場合も実現できる。