本発明は、概して化合物または組成物の効力のインビボ試験、および特に古典的小分子、天然産物、遺伝子、ペプチドおよびタンパク質のインビボ活性による試験および生物学的機能化に関するものである。
さらに本発明は、特に調節が解除された新脈管形成に関連した病気または細胞増殖性疾患処置用の医薬の製造を目的とする、線維芽細胞増殖因子23(FGF−23)、FGF−23フラグメント、FGF−23 C−末端ポリペプチド、FGF−23相同体および/またはFGF−23変異型の医学的効用に関するものである。
製薬会社は、新たに発見された遺伝子および遺伝子産物(タンパク質)、特に病気に結びついた機構または化合物の作用を理解する上で助けとなり得る新たに発見された遺伝子およびタンパク質の機能および調節の評価および理解に興味をもっている。さらに、遺伝子および遺伝子産物は、薬剤またはバイオマーカーになり得る可能性がある。Grenet O、Pharmacogenomics J. 1(1):11−2(2001)。
しかしながら、遺伝子配列単独では、細胞または生物の生理機能におけるタンパク質の実際の機能に関する情報を提供しない。さらに、ゲノムは比較的明確な数の遺伝子を有しているが、タンパク質変異型の可能な数に対する限界は知られていない。タンパク質はまた、RNAレベルだけではなくタンパク質レベルでのスプライシングにより生成され得ることが最近見出されたため、これらの遺伝子によりコード化されるタンパク質の潜在的な数は、遺伝子の数の2倍から少なくとも100倍高い数であると推定される。
現行の薬剤発見プロセスは、単一標的から単一薬剤製品へと進行する。この現行プロセスは、長いプロセスであり、後の段階で、効力の欠失、誤った設計または虚偽の適応症(indications)のために、自然になくなることが頻繁に起こる。
故に、当業界では薬剤候補、遺伝子標的およびバイオマーカーを発見および同定するためのより効率的な方法が要望されている。
本発明は、生物全体に及ぶ遺伝子発現プロファイリングを用いた生物学的機能化ペプチド、タンパク質、遺伝子、小分子および天然産物の発見プロセスを提供する。本発明の発見プロセスは、単一の手掛かりまたは薬剤から多数の標的および適応症(経路のカスケード連鎖における標的に対する影響により示される)、および多数の薬剤製品へと進行するため、短期間で正確なヒト実証試験(proof-of-concept)への指針が提供される。
本発明の発見プロセスは、動物への試験物質の投与から始まり、次いで試験動物から得られた多くの臓器において生じた遺伝子発現のスクリーニングが実施される。本発明は、生物体のゲノム全体を生物学的に機能化するのに使用され得、その場合マイクロアレイチップが利用可能である。本発明が、機能化される化合物のタイプに制限されることはない。小分子、タンパク質、天然産物、cDNA(興味の対象である遺伝子を機能化するため)などは、全て本発明戦略に許容され得る。
本発明の発見プロセスは、非予想的仮説および生物総体多臓器分析に基いているため、ポリペプチドは、ペプチド配列以外の生物学的選択基準の非存在下における試験用に選択され得る。得られたトランスクリプトームにおける遺伝子発現変化の生物全体にわたるパターンは、分子および生物全体に及ぶレベルでの活性の概観を提供する。従って、化合物の投与に関する本発明の不偏な方法は、化合物の投与により誘発される身体全体におよぶ生理学的関係に関する情報を提供し得る。
次に本発明の発見プロセスでは、内部および外部ゲノムデータベースとインビボプロファイリングを統合することにより、典型的には数ヶ月以内に未知蛋白質の機能を解明する。化合物の投与に関する本発明の不偏な方法によると、有利には多くの臓器からのゲノムサインが提供される。得られたデータは、当業者には公知のツールを用いるかまたは種々の臓器の中で化合物の投与により誘導された化合物サインを比較するツールを使用することにより分析され得る。この多臓器分析は、不偏な化合物投与方法を使用しないため、化合物の機能の多臓器同定には至らない標準方法とは対照的である。その代わり、標準方法は個別的な分析結果を提供するが、交差実験比較は困難となり得る。標準方法とは対照的に、本発明方法を用いた化合物の機能の同定により、多くの代謝および調節経路における化合物の機能の同定が可能となる。さらに、本発明方法を用いた化合物機能の同定により、有利には体内における活性化合物の安定性、すなわち標準方法を用いても演繹的には予測できない投与化合物の特性についての理解が得られる。
本発明方法を用いた化合物の機能の同定では、同定の一段階または一部が同定の別の段階または一部を誘導するため、多段階であり得ることから、投与化合物のインビボ活性についてのより完全な理解が得られる。例えば、一臓器(例えば脾臓)における化合物機能の同定により、他の臓器における化合物機能が解明され得る。反対に、限られた数の臓器に関する試験の直接利用に頼る標準方法は、化合物機能の同定におけるさらなる段階へ進むのに他の実験からの不確かな証拠に依存することになる。
本発明は、薬剤標的およびバイオマーカーの両方を同定する、薬剤発見の幾つかの段階に適切である。本発明の発見プロセスでは、有利には検証される薬剤候補および同定される薬剤標的およびバイオマーカーの数の増大と共に時間、物資および動物の節約がもたらされる。本発明の発見プロセスは、有利には新たなゲノムアプローチで標準探査ツールを一プロセスに統合する。本発明の発見プロセスはまた、再指標についての薬剤承認の初期段階(例、フェーズI)後に停止された安全な化合物の再プロファイリングに使用され得る。本発明は、2化合物間の遺伝子発現サインの最適マッチング、副作用の削除および効力の増強により、組合わせ療法に関する最良の適合を調節するのに使用され得る。本発明の発見プロセスを、さらに進歩した開発ポートフォリオのプロファイリングに使用することにより、薬剤承認プロセスの後期段階(例、フェーズIIおよびフェーズIII)に至り得る。
幾つかの実施態様において、本発明プロセスは組織または体液の分析に使用され得る(例えば冠動脈心疾患、乳癌および他の適応症;各々健康な対照と比較)。機能が既知または未知である、正常対象および冠動脈疾患患者間で差異的に発現される血漿タンパク質を、潜在的標的の同定/実証、およびバイオマーカー同定用に分析する。
一実施態様では、本発明の発見プロセスは、マウスにおけるタンパク質、ペプチドおよび対照化合物のインビボスクリーニングから始まる。次いで、マウススクリーニングの結果に基づき、選択されたタンパク質、ペプチドまたは対照化合物のインビボ検証を、ヒト以外の霊長類またはヒト病理または病気の動物モデルにおいて実施する。得られた情報と薬理学的活性が十分に特性確認されている対照薬剤のプロファイルとの比較により、未知化合物のプロファイルの生物学的解釈が容易になる。特定実施態様において、タンパク質、ペプチドまたは対照化合物に関する選択割合は〜20%である。
一実施態様において、本発明の発見プロセスは、一プロセスで(a)マウスにおけるプレスクリーニング、(b)サルにおける選択されたタンパク質/ペプチド/対照化合物の検証、(c)多数の分析組織(マウスでは25まで、サルでは120まで)、(d)組織試料の等質性、(e)高品質mRNA、(f)ハイブリダイゼーションチップによるゲノム全体に及ぶアプローチ、(g)クラスタリングおよび統計に関する強力な生物情報ツール、(h)交差検定メタ分析の可能性、および(i)in situハイブリダイゼーションによる罹患遺伝子または経路の細胞レベルでの局在性を組合わせる。
本発明発見プロセスの使用により、驚くべきことに、FGF−23に関するポリペプチドが、細胞分化および増殖、並びに新脈管形成を制御する主要遺伝子に影響することが見出された。
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、線虫類からヒトの範囲に及ぶ生物体で見出されるポリペプチド増殖因子の大きなファミリーを構成する。胚発達中、FGFは、細胞増殖、移動および分化の調節において多様な役割を有する。成熟生物体では、FGFは、ホメオスタシス因子であり、組織修復および創傷に対する応答において機能する。FGFの中には、その不適切な発現が、癌の病因の一因となり得るものもある。
マウスFGF−23は、マウスFGF−15のアミノ酸配列とのGenBankヌクレオチド配列データベースにおける相同性検索により同定された。マウスFGF−23およびヒトFGF−23は、高い同一性(〜72%アミノ酸同一性)を示す。マウスおよびヒトFGF−23のcDNAは両方とも、分泌タンパク質には典型的な疎水性アミノ末端(〜24アミノ酸)、および他のFGFファミリー構成員との相同性を全くもたない特有なC−末端を有する、251アミノ酸のタンパク質をコード化する。マウスにおいて、FGF−23mRNAは、脳、優先的には腹側外側視床核、および低レベルではあるが胸腺で発現される。
FGF−23の過剰発現または突然変異FGF−23の発現は、幾つかの病理学的発見に付随して立証された。
組換えFGF−23は、尿リン酸塩消耗の結果としてインビボで低リン酸塩血症を誘導する(Shimada T., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98:6500−6505(2001))。
FGF−23過剰発現は、腫瘍性骨軟化症(OOM)が原因である腫瘍で観察される(White K.E., et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 86:497−500(2001))。
常染色体優性低リン血症性くる病(ADHR)は、FGF−23の分解を阻止する、176−RXXXR−179開裂部位内におけるFGF−23の突然変異と関連していることが示された(The ADHR Consortium(コンソーシアム), Nat. Genet. 26:345−348(2000))。
OOMおよびADHRは、FGF−23と関連していることが立証されたが、OOMおよびADHRと表現型が類似しているさらなる疾患、X染色体低リン血症(XLH)は、PHEX遺伝子における突然変異から生じることが示された。PHEXは膜結合エンドペプチダーゼをコード化し(Tne HYP Consortium, Nat. Genet. 11:130−136(1995))、またFGF−23はPHEX基質であると仮定されており、FGF−23 ADHR突然変異体(FGF−23(R179Q))はPHEXにより分解され得ない。
上記症候群は各々、低リン酸塩血症、腎臓リン酸塩再吸収の減少、正常または低血清カルシトリオール濃度、カルシウムおよび副甲状腺ホルモンの正常血清濃度、および骨格鉱化作用の欠陥を特徴としている(Quarles L. D. および Drezner M. K., J. Clin. Endocrinol. Metab. 86:494−496(2001))。
FGF−23の過剰生産およびミスセンス突然変異の両方が腎リン酸消耗を伴う低リン酸塩血症を誘発するため、FGF−23はOOMを引き起こす因子の少なくとも一つであり、リン酸塩および骨代謝の重要なレギュレーターであるという結論に達する(Shimada T., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:6500−6505(2001))。しかしながら、FGF−23またはFGF−23誘導タンパク質またはペプチドが腎臓および骨格異常をいかに誘発するかについての機構が未知であるのと同様、FGF−23またはFGF−23タンパク質分解開裂産物の分子標的も未だ判明していない(Quarles L. D., Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 285:E1−9(2003))。
すなわち、本発明は、調節が解除された新脈管形成と関連した病気の処置で使用される医薬の製造についてのポリペプチドの使用であって、(a)線維芽細胞増殖因子23(FGF−23)(配列番号1)またはFGF−23のフラグメント;(b)(a)のポリペプチドのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性パーセンテージを有する生物活性ポリペプチド;または(c)(a)または(b)のポリペプチドのいずれか一つの生物活性変異型から成る群から選択されるポリペプチドの使用に関するものである。
さらなる態様において、本発明は、細胞増殖性疾患の処置で使用される医薬の製造についての上記ポリペプチドの使用に関するものである。
さらなる態様において、本発明は、調節が解除された新脈管形成に関連した病気または細胞増殖性疾患の処置方法であって、病気または疾患に罹患したヒトを含む哺乳類に上記ポリペプチドの有効量を投与することを含む方法に関するものである。
別の態様において、本発明は、上記ポリペプチドおよび医薬上許容される担体を含む、調節が解除された新脈管形成に関連した病気または細胞増殖性疾患で使用される医薬組成物に関するものである。
図面の簡単な説明
図1は、GPA018、GPA019、GPA020、GPA022およびGPA023に関する一連のポリペプチド配列および推定ポリペプチド配列相関関係である。
図2は、FDF−23C−末端ポリペプチド(FGF23CTP;(右眼;カラム1))およびPBS(左眼、カラム2)で処置した動物の網膜フラットマウントにおける血管変化に関する増殖スコア(単位)のボックスプロットである。
発明の詳細な記載
緒論および概観。製薬業界における古典的発見プロセスは、標的(酵素、受容体、細胞検定法、動物および疾患モデルなど)に基いている。化学物質または生物学的製品は、一連の予め選択された種々の標的について、ハイスループット方法で試験される。古典的アプローチの弱点は、生物総体における種々の標的の堅固な相互連結および相互依存関係と比べて「人工的に分離された」インビトロ標的モデルであること、および全ての非選択標的に対する生物学的活性が失われているという事実である。
反対に、本発明は、生物総体、多臓器およびトランスクリプトーム全体における新たな生成物の生物活性を迅速に同定および分析する、「非予想的仮説」の発見プロセスである。異なる臓器または組織間における全ての生理学的相互作用が存在し、いかなる細胞経路または可能性のある標的でも、潜在的に非人工的系で分析され得る。
本発明の薬剤発見プロセスは、有利にはプロテオミクスおよび機能化分野における可能性を高めるものである。プロテオミクスは、所定の時点での組織標本中、または生物学的流体中に存在するタンパク質の系統的分離、同定および特性確認を含む。病気および薬物に対する応答を含む生物学的過程は、タンパク質の変化を誘発し、全体的タンパク質プロファイル(「プロテオーム」)は、生物体の発達、細胞型または組織の成熟、および病気の進行または処置中に変化する。各細胞型は、異なる時点では異なるタンパク質パターンを発現し得る。また、各タンパク質は、異なる細胞機能を助けるため同じく異なる数の方法で化学的に修飾され得る。同一遺伝子に由来するタンパク質は大部分同一であり得、小さな部分ではあるが機能的に関連のある細部のみ異なり得るため、タンパク質同定ツールは、多数のタンパク質を同定するのみならず、近縁物質間の区別を行う。
古典的プロテオミクスアプローチでは、高分解能2次元ゲル電気泳動(2−DGE)を、イメージングソフトウェアと組合わせることにより、存在量、分子量(Mr)またはゲル間での電荷が異なるタンパク質について定量的および定性的にスクリーニングする。次いで、これらのタンパク質差異は、高感度生物情報検索ツールと一緒に「最新式」質量分析(MS)方法およびロボットの組合わせを用いることにより高速および高感度で同定され得る。
RNA転写物は、DNAおよび細胞機能に関与する最も活性の高い分子に属するタンパク質間の中間形態を表す。RNAの全内容物は、「トランスクリプトーム」と呼ばれる。高密度DNAチップ技術により、任意に定めた時点で細胞集団または組織により製造される全転写物の解析が潜在的に可能となる。すなわち、ゲノム規模のRNA発現解析により、動物へのペプチドまたは他の化学物質の投与時に誘導される細胞事象に対する新たな洞察が提供され得る。これにより、試験されている動物における代謝、シグナリング、調節または他の生化学的経路に視野の広い見解が与えられる。細胞転写において誘導された摂動の分析により、投与化合物の活性の詳細な分子描写が与えられる。
トランスクリプトーム解析は、ハイスループットRNA定量システムの実行により到達可能な現実となっている。高密度マイクロアレイにより、一度にトランスクリプトームの何千もの情報ポイントを集め、発現された遺伝子の推定数の桁に達し、細胞事象に対する広範で詳細な見解がもたらされ得る。
細胞の内側における種々の機能の変化は緊密に相互連結しているため、生物体の内側における種々の臓器における変化も関連している。同一処置にかけられた異なる臓器に遺伝子プロファイリングを適用することにより、生理学的状態の影響および変化についての完全な概観が得られる。もともと非常に異なるトランスクリプトームをもつ臓器における共通変化を同定することにより、実験ノイズの排除が容易になる。同一シグナルの有無は、処置が多面発現効果を有するかまたは標的臓器に影響を及ぼすか否かを示し得る。化合物が一次臓器をターゲッティングする場合、他の臓器は影響された第一臓器の機能的変化を反映する。このタイプの情報は、薬理学的効果または潜在的毒性効果に関連して集められ得る。また、生物全体に及ぶ発現変化パターンは、影響された臓器の範囲を正確に描写する、化合物の薬力学に関する有用な情報を提供し得る。
種々の臓器における情報の蓄積は、正確な作用モードを解明する助けとなるだけでなく、生物規模での化合物誘導変化の完全な再構造を提供する。
化合物の投与。タンパク質または他の薬剤化合物の投与は、複雑なネットワーク(経路)を含み、タンパク質修飾、例えばリン酸化、グリコシル化等に頼る、細胞内シグナリング事象の多重カスケードを誘発する。これらの事象は、結局、遺伝子発現レベルの変化をまねく。従って、活性化合物の投与により、トランスクリプトームの組成における多重の相互依存的変化がもたらされる。
一実施態様において、試験動物は脊椎動物である。特定実施態様では、脊椎動物は哺乳類である。さらなる特定実施態様では、哺乳類は霊長類、例えばカニクイザルまたはヒトである。本明細書で使用されている、対象または患者への薬剤または薬物の投与は、自己投与および第二者による投与を含む。
さらなる特定実施態様では、生物学的または非生物学的供給源の天然または合成物質、例えばアミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、cDNA、化学物質は、当業界で公知の方法により、例えば注射、吸入、または経口投与により動物、例えばマウス(ムス・ムスクルス、Mus musculus)、ラット(ラッツス・ノルベギクス、Rattus norvegicus)、サル(マカカ・ファシクラリス、Macaca fascicularis)に投与され得る。それらの物質の投与は、曝露時間および用量、およびその組合わせに関して調節され得る。動物の「処置群」には、物質または物質の組合わせの投与に適切な賦形剤化合物中の物質または物質の組合わせを投与するべきであり、「対照」(または「基準」)群には、賦形剤化合物のみを投与するべきである。処置期間中、生物学的標本、例えば組織片(例、生検により入手)、または体液、例えば血液、尿、または唾液から試料が採取され得る。処置期間の最後に、全群の全動物を殺すことにより、生物学的標本、例えば臓器全体またはその断片から試料が採取され得る。試料を採取した標本は全て、限定するわけではないが、RT−PCR、ノーザンブロッティング、in−situ ハイブリダイゼーション、マイクロアレイによる遺伝子発現プロファイリングを含むさらなる分析用に当業界で公知の要領で貯蔵され得る。
本明細書で使用されている「直接投与」は、動物への化合物、例えばタンパク質の注射、経口胃管栄養法、飼料混入または他の投与である。ある程度の時間、すなわち数時間、数日間または数週間経過後、臓器および組織を動物から集め、遺伝子発現プロファイリングを測定する。この手順は、薬理毒物ゲノミクス、薬理ゲノミクスなど常用されている。
一実施態様において、本発明は、潜在的標的の同定および立証およびバイオマーカーの同定に関して正常対象および冠動脈疾患患者間において血漿で特異的に発現されたタンパク質から開始される。
本発明の薬剤発見プロセスは、古典的検出方法では見逃されていたプロテオームの小さいタンパク質(0.5〜20kDaの範囲)の解析に特に適用され得る。小分子量タンパク質は、市販の方法(例、マイクロプロット(登録商標)方法、ジーンプロット、スイス国ジュネーブ)により容易に合成され得る。化学合成タンパク質は、迅速に製造され得、生物学的汚染物質を含有しない。
マウスの場合、機能化される最少量(僅か約5mg)の化合物が使用される。
本明細書で使用されている「間接投与」は、(cDNAプラスミドとして)タンパク質をコードする遺伝子の注射であり、次いで遺伝子発現プロファイリングを行う。一実施態様において、この技術は、マウス(または他の動物)へ注射された「裸の」DNA(cDNA発現プラスミド)の使用である。この技術は、DNA免疫化(Kim J-M et al., Gene Ther. 10(15):1216−24(2003年8月))および治療目的のための遺伝子送達(Alino SF et al., Gene Ther. 10(19):1672−9(2003年9月))について広範に公表されている。インビボ遺伝子移入に関する若干の技術の中では、プラスミドDNAの静脈内注射または筋肉への直接注入が単純で、安価で安全である。Kim J-M et al., Gene Ther. 10(15):1216−24(2003年8月)。非ウイルスゲノムDNAの重要な効力は、ヒト遺伝子治療の安全適用における新たな道を開いている。Alino SF et al., Gene Ther. 10(19):1672−9(2003年9月)。
裸のDNAの投与は、当業者に公知の方法で行われ得る、米国特許第6165754、6309370、6566342、6620617および6651655号参照、これらについては出典明示により本明細書の一部とする。
遺伝子発現プロフィール。タンパク質投与の一定期間(例、2週間)後、処置動物を剖検する。選択された組織(例、マウスの場合25組織/サルの場合120組織)を切開し、迅速にゲノム解析用に瞬間冷凍する。臓器試料(例、サルの場合50臓器試料)は、組織病理学的実験用および例えばin situ ハイブリダイゼーションによる遺伝子発現位置推定用に摘出され得る。最初の試験は、マウスの場合、25の試料採取による組織のうち3〜10組織あれば、一般的に化合物を遺伝子発現およびハイブリダイゼーションにより特性検定するのには十分であり、サルの場合、120の試料採取による組織のうち20組織あれば一般的に十分であることを示している。
さらなる特定実施態様では、mRNAの発現レベルの検出方法は、当業界では公知であり、限定するわけではないが、逆転写PCR、リアルタイム定量的PCR、ノーザンブロッティングおよび他のハイブリダイゼーション方法が含まれる。複数の遺伝子から得られたmRNA転写物レベルの特に有用な検出方法は、オリゴヌクレオチドを整列させたアレイと標識mRNAのハイブリダイゼーションを含む。かかる方法によると、複数のこれら遺伝子の転写レベルが同時に測定され、遺伝子発現プロファイルまたはパターンが作成され得る。
本明細書で使用されている遺伝子発現プロファイルは、遺伝子発現の増加または減少が、化合物投与後における基準遺伝子発現に対する増加または減少(例、少なくとも1.2倍差異)であるとき、診断に用いられる。本明細書で使用されている遺伝子発現パターンは、遺伝子発現(例、処置対象からの試料において)が基準試料と比べて発現レベルの1.2倍差異(すなわち、高い)を示すとき、「正常より高い」とされる。遺伝子発現パターンは、遺伝子発現(例、処置対象からの試料において)が基準試料と比べて発現レベルの1.2倍差異(すなわち、低い)を示すとき、「正常より低い」とされる。他の実施態様では、1.5倍変化が基準として使用され得る。
本発明により報告されている遺伝子の遺伝子発現検出技術には、ノーザンブロット、RT−PCT、リアルタイムPCR、プライマー伸長、リボヌクレアーゼ保護、RNA発現プロファイリングおよび関連技術を含むが、これらに限定されるわけではない。本発明により報告された遺伝子によりコード化されるタンパク質産物の検出による遺伝子発現の検出技術には、タンパク質産物を認識する抗体、ウエスタンブロット、免疫蛍光、免疫沈降、ELISAおよび関連技術を含むが、これらに限定されるわけではない。これらの技術は当業者にはよく知られている。Sambrook J et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(コールドスプリングハーバープレス、コールドスプリングハーバー、2000)。一実施態様において、遺伝子発現検出技術には、遺伝子チップの使用が含まれる。遺伝子チップの構造および効用は、当業界ではよく知られている。米国特許第5202231、5445934、5525464、5695940、5744305、5795716および5800992号参照。また、Johnston,M. Curr Biol 8:R171−174(1998);Iyer VT et al.、Science 283:83−87(1999)および Elias P, “New human genome chip is a revolution in the offing” Los Angeles Daily News (2003年10月3日)も参照。
遺伝子発現プロファイルは例えばアフィメトリックスのマイクロアレイ技術を用いて作成され得る。簡単に述べると、生物学的試料からの全体または好ましくはポリA+RNAを、当業界で公知の標準手順、例えばRNeasy(登録商標)(キアゲン、メリーランド、米国)を用いて抽出する。次の段階で、二本鎖cDNAを、当業界で公知の「逆転写(RT)」と呼ばれる方法で、例えば「SuperScript 二本鎖cDNA合成キット(Double-Stranded cDNA Synthesis Kit)」(インビトロゲン、カリフォルニア、米国)を用いて調製する。「インビトロ転写」と呼ばれる後続段階で、前段階で得られた二本鎖cDNAを、例えばENZO標識キット(ENZO、ニューヨーク、米国)を用いて、当業界で公知の方法により蛍光色素で標識する。標識RNAをオリゴヌクレオチドマイクロアレイとハイブリダイゼーションさせる。これらは当業界では公知であり、遺伝子産物(例、mRNA、ポリペプチド、そのフラグメントなど)と配列が対応するプローブが特異的に既知位置とハイブリダイゼーションまたは結合され得る表面により構成される。例えば洗浄、染色、走査を含むマイクロアレイの処理は、製造者の使用説明書に従って実施される。スキャナーにより検出されるハイブリダイゼーション強度データは、自動的に獲得され、解析ソフトウェアコンポーネント、例えばGENECHIP(登録商標)ソフトウェア(アフィメトリックス、カリフォルニア、米国)により処理される。200の標的強度を用いて、未処理データを発現レベルに正規化する。
発現プロファイリングにおける値の2要素は、組織試料の品質および均質性およびmRNA品質である。この目的の場合、試料採取する組織の場所および各試料は、双眼顕微鏡を用いることにより他の周囲組織から注意深く切開され得る。
次いで、試料を、RNA抽出するため分子生物学研究室に移す。RNA抽出についてのプロトコールは、部分的に自動化され得るため、この段階の再現性および速度が高められ得る。抽出されたRNAは、冷凍状態で長期間貯蔵され、既採取物として保持され得る。
抽出RNAのアリコートを逆転写することにより、cDNAを得る。第二段階では、蛍光標識の存在下でcDNAを転写することにより、cRNAを得る。得られたcRNAの組成は、試料中におけるRNAのもとの組成と同一であるが、各分子は蛍光マーカーを有する。cRNAの標識混合物は、例えばGeneChip(登録商標)検定法(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア、米国)を用いてハイブリダイゼーション過程に使用される。未処理データ(チップのレーザー走査後に得られた)を、特有の値で利用可能な全情報を各遺伝子について圧縮する特異的アルゴリズムにより処理する。平均差異と呼ばれるこの値は、遺伝子の発現レベルを表す。
情報は相補技術の使用によりさらに精密化され得る。例えばin situ ハイブリダイゼーションは、臓器内のどの細胞型が所定の遺伝子を特異的に発現しているかを正確に示し得る。RNAの検出に基くこの技術は、抗体の利用能とは無関係である。定量的PCRもまた、興味の対象である特定遺伝子の発現レベルを確認するのに使用され得る。
解析。データの数学的および統計的処理(クラスタリング)は、データセットの複雑度およびサイズを縮小するのを助ける。種々のタイプのクラスタリングを使用することにより、種々の遺伝子が、様々な条件全体にわたるそれらの行動類似性に従って分離され、同一生物学的現象に関連し得る遺伝子間の連関が確立され得る。データ処理はまた、実験ノイズから有意な変動を分離するための統計テストを含む。しかしながら、データの生物学的性質を統括するためには様々なフィルタリング段階のストリンジェンシーを調節しなければならない。
次いで、様々な罹患遺伝子のリストを、科学文献で集められた情報と比較する。種々の遺伝子に関連した利用可能な情報を合成すると、一つまたは幾つかのシグナリング、代謝または他の生化学的経路または既知修飾が指摘される。明瞭なイメージが再構築されると、プロファイルは可能性のある指標との関連性を示し得る。異なる仮説間の区別は、差異に基く診断に密接に関連したプロセスに従って行なわれる。
解析中、発現データならびに細胞シグナリングおよび調節に関する現行の知識間の一定した比較が確立される。かかる永続的な関係確立により、特に細胞内および細胞間シグナリング分野において既存モデルの有効な精密化方法が提供される。遺伝子発現変化の相互依存性を、異なる臓器で異なる刺激因子下において評価する。経路における新たなプレーヤーが同定され得、既に報告されているプレーヤー間の連関が精密化され得る。細胞調節の一部しかRNA発現変化に依存していない場合でも、発現データの蓄積は、新たなそしてより正確な細胞機能モデルを構築する助けとなり得る。集められた情報は、標的またはバイオマーカーとして使用される経路の重大要素を同定するのに役立ち得る。
発現プロファイルの中には、一般的科学知識から得られた既存の情報と容易にマッチするものもあり得る。その場合、この情報を潜在的指標または潜在的副作用と結び付けるのは簡単なことである。発現変化の組合わせの中には、薬理学的情報への翻訳がより困難なものもある。かかる場合には、未知化合物のRNA発現プロファイルを、対照薬剤または疾患のプロファイルとマッチさせることにより、解釈が容易になり得る。従って、潜在的指標を見つけるのに全細胞修飾を再構築する必要がない場合もあり得る。対照薬剤および疾患プロファイリングはまた、重大な情報集団をデータベースへ構築するのにも役立つ。
より具体的な統計分析実施態様では、解析用ソフトウェアコンポーネント、例えばGeneSpring(登録商標)(シリコン・ジェネティクス、カリフォルニア、米国)の使用により、マイクロアレイデータセットが解析され得る。マイクロアレイデータセットは、一つには、スライドガラスに結合されており、相補的配列をもつ標識cDNA(上記参照)が、組織または体液試料中に存在する場合には結合するオリゴヌクレオチド配列を指すプローブセット識別表により構成される。検出され、ソフトウェア、例えばMAS5(アフィメトリックス、カリフォルニア、米国)により数値に変換されるシグナルの走査強度は、実験下の生物学的試料中に存在するcDNAの量、または発現レベルに関する間接的尺度である。生物学的試料のマイクロアレイデータセットにおける全プローブセットに関するシグナル強度値により示される遺伝子発現レベルの統一体は、その試料の発現プロファイルと称され得る。各マイクロアレイデータセットにおいて、シグナル強度値、cDNAまたは遺伝子注釈、並びにソフトウェア、例えばMAS5(アフィメトリックス、カリフォルニア、米国)により作成され得る品質パラメーターは、プローブセット識別表と関連させた情報結果である。
cDNAマイクロアレイシステムでは、興味の対象である実験細胞からの遺伝子発現は、一定基準または対照細胞型における同一遺伝子の発現に対して測定される。実験下の試料または組織または体液の発現プロファイルに対する物質の統計的に関連性のある効果を同定するため、プローブセットは、値の作成に使用されるソフトウェア、例えばMAS5(アフィメトリックス、カリフォルニア、米国)により与えられた関連値に基いてフィルタリングにかけられ得る。フィルターは、品質パラメーター、発現レベル、処置対対照標本からの試料中における発現レベルの変化、ならびに有意性に基き得る。得られたプローブセットのリストは、それらが誘導された生物学的試料の処置の直接的または間接的結果として発現レベルの顕著な変化を経験する遺伝子を指す。
生物系および経路に対する物質の効果に関する上記遺伝子リストの解釈は、研究者の知識および経験に委ねられる。解析ソフトウェアコンポーネント、例えばGeneSifter(登録商標)(VizXLabs、シアトル、ワシントン、米国)の適用により、上記遺伝子リストの解釈が助けられる。
さらに、我々は、種々の臓器間において化合物の投与により生じた化合物サインを比較する、本発明方法により作成されたデータの多臓器解析用ソフトウェアを開発した。
本発明薬剤発見プロセスにより確認された新規効用。本発明はまた、調節が解除された新脈管形成と関連した病気の処置で使用される医薬の製造についてのポリペプチドの使用であって、(a)線維芽細胞増殖因子23(FGF−23)(配列番号1)またはFGF−23のフラグメント;(b)(a)のポリペプチドのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性パーセンテージを有する生物活性ポリペプチド;または(c)(a)または(b)のポリペプチドのいずれか一つの生物活性変異型から成る群から選択されるポリペプチドの使用に関するものである。
別の態様によると、本発明は、細胞増殖性疾患の処置で使用される医薬の製造に関する上記ポリペプチドの使用に関するものである。
配列番号1(ヒトFGF−23アミノ酸配列)
本明細書で使用されている「ポリペプチド」の語は、タンパク質、ペプチド、オリゴペプチドまたは合成オリゴペプチドをいう。これらの語は、互換的に使用されるものとする。上記語のいずれか一つは、翻訳後修飾、例えばグリコシル化またはリン酸化とは関係無く、ペプチドまたはアミド結合と一緒に連結される2個またはそれ以上のアミノ酸の連鎖をいう。ポリペプチドはまた複数のサブユニットを含み得、各サブユニットは、別々のDNA配列によりコード化される。
本明細書で使用されている「生物活性」の語は、生物学的事象を誘発またはそれに影響を及ぼす分子をいう。上記生物学的事象は、例えば調節が解除された新脈管形成に関連した病気または細胞増殖性疾患に関連したもので有り得る。
本発明の「生物活性ポリペプチド」は、FGF−23、FGF−23のフラグメント、例えばFGF−23のC−末端から誘導されたフラグメントを含む。また、FGF−23またはそのフラグメントと少なくとも50%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列を有する相同体およびFGF−23またはFGF−23フラグメントの変異型も含まれる。本発明によるポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有するFGF−23を含み得る。FGF−23のフラグメントは、少なくとも10アミノ酸、好ましくは少なくとも15、20、25または30アミノ酸を含み得る。さらに好ましくは、FGF−23のフラグメントは、少なくとも50、60または70アミノ酸を含み得る。最も好ましくは、FGF−23のフラグメントは、75アミノ酸を含む。別法として、FGF−23のフラグメントは、少なくとも80または100アミノ酸、最も好ましくは少なくとも120または150アミノ酸を含み得る。特に、フラグメントは、少なくとも180アミノ酸、例えば200アミノ酸を含み得る。
上記ポリペプチドはまた、プロテアーゼ、例えばPHEXを含む膜結合エンドペプチダーゼにより生成されたFGF−23のタンパク質分解開裂産物であり得る。本発明によるポリペプチドは、FGF−23のC−末端フラグメントを含み得る。上記C−末端フラグメントは、FGF−23のC−末端の少なくとも15アミノ酸、好ましくは少なくとも25、少なくとも35または45、さらに好ましくは少なくとも55または少なくとも65、最も好ましくは少なくとも70、例えば75アミノ酸を含み得る。最低15アミノ酸は、大部分のC−末端最低15アミノ酸を含み得、それはまた、FGF−23のC−末端部分内における最低15アミノ酸を含み得る。ポリペプチドは、FGF−23の少なくとも75の大部分のアミノ酸を含み得、それはまた、FGF−23のC−末端ポリペプチド(FGF23CTP)と称される配列番号2のアミノ酸配列を有し得る。
配列番号2(FGF23CTPアミノ酸配列)
ポリペプチドはまた、上記ポリペプチドのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%の同一性、さらに好ましくは少なくとも70%または80%、そして最も好ましくは少なくとも90%、例えば95%、97%、または99%同一性のパーセンテージを有するアミノ酸配列を有し得る。
上記本発明生物活性ポリペプチドはまた、FGF−23、FGF−23タンパク質またはポリペプチド、FGF−23誘導または関連ポリペプチド、FGF−23のC−末端誘導または関連ポリペプチド、またはFGF−23のC−末端ポリペプチドとも称され得る。
アミン酸残基は、本明細書ではそれらの標準1文字または3文字表記により示される:A(Ala)アラニン、C(Cys)システイン、D(Asp)アスパラギン酸、E(Glu)グルタミン酸、F(Phe)フェニルアラニン、G(Gly)グリシン、H(His)ヒスチジン、I(Ile)イソロイシン、K(Lys)リシン、L(Leu)ロイシン、M(Met)メチオニン、N(Asn)アスパラギン、P(Pro)プロリン、Q(Gln)グルタミン、R(Arg)アルギニン、S(Ser)セリン、T(Thr)トレオニン、V(Val)バリン、W(Trp)トリプトファン、Y(Tyr)チロシン。
対照基準配列および別の配列(すなわち「候補」配列)の比較に関して使用されている「同一性のパーセンテージ(%)」などの語は、2配列間の最適アラインメントにおいて、示されたパーセンテージと同等である若干のサブユニット位置で候補配列が対照基準配列と同一であることを意味するもので、サブユニットは、ポリヌクレオチド比較についてはヌクレオチドまたはポリペプチド比較についてはアミノ酸である。本明細書で使用されている、比較されている配列の「最適アラインメント」とは、サブユニット間のマッチを最大にし、アラインメントの構築で使用されるギャップの数を最少にするものである。同一性パーセントは、NeedlemanおよびWunsch, J. Mol. Biol. 48:443−453(1970)により報告されたアルゴリズムの市販の道具により測定され得る(ウィスコンシン・シーケンス・アナリシス・パッケージの「GAP」プログラム、ジェネティクス・コンピューター・グループ、マディソン、ウィスコンシン)。アラインメントを構築し、同一性パーセンテージまたは類似性の他の尺度を計算するための当業界における他のソフトウェアパッケージには、SmithおよびWaterman, Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)(ウィスコンシン・シーケンス・アナリシス・パッケージ、ジェネティクス・コンピューター・グループ、マディソン、ウィスコンシン)のアルゴリズムに基いた「BestFit」プログラムがある。同一性のパーセンテージはまた、WU−BLAST−2(Altschul et al., Methods in Enzymology 266:460−480(1996))により算出され得る。WU−BLAST−2は、幾つかの検索パラメーターを使用しており、そのほとんどはデフォルト値に設定されている。調節可能パラメーターは、以下の値により設定される:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11。アミノ酸配列同一性%値は、マッチする同一残基の数を整列領域における残基の総数で割ることにより決定される。例えば、対照基準アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、対照基準配列におけるアミノ酸残基の5パーセント以下が欠失され得るか、または別のアミノ酸と置換され得るか、または対照基準配列における全アミノ酸残基の5パーセント以下の若干のアミノ酸が、対照基準配列へ挿入され得る。対照基準配列のこれらの改変は、対照基準アミノ酸配列のアミノまたはカルボキシ末端位置または対照基準配列の残基間において個々にまたは対照基準配列内で1またはそれ以上の連続群として散在した、末端位置間のいずれかの場所で行われ得る。本発明の対照基準配列と比較する場合、その候補配列は大きなポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一成分またはセグメントであり得ること、および同一性パーセンテージをコンピューターで算出する目的のための上記比較は、関連性のある成分またはセグメントに関して実施すべきであることがわかる。
本発明ポリペプチドはまた、本発明ポリペプチドのポリペプチドフラグメントを含む。上記ポリペプチドフラグメントは、本発明ポリペプチドのアミノ酸配列の全部ではなく一部が完全に同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであることを意味する。上記ポリペプチドフラグメントは、「独立したもの」であり得るか、または上記ポリペプチドフラグメントが一部領域を、最も好ましくは単一連続領域として形成している大きなポリペプチドの一部であり得る。好ましくは、上記ポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントは、本発明の対応するポリペプチドの生物学的活性を保持している。
本発明はまた、本明細書に記載されたポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントの機能的に保存された変異型を包含する。上記変異型は、当業界における標準方法を用いて、例えば同類アミノ酸置換により製造され得る。典型的には、上記置換は、Ala、Val、LeuおよびIle間、SerおよびThr間、酸性残基AspおよびGlu間、AsnおよびGln間、および塩基性残基LysおよびArg間、または芳香族残基PheおよびTyr間で行なわれる。特に好ましいのは、幾つか、5〜10、1〜5、または2アミノ酸が、任意の組合わせで置換、欠失または付加されている変異型である。
様々な他の実施態様において、ポリペプチド(フラグメント)またはポリペプチド変異型は、線状または分枝状であり得、修飾アミノ酸を含み得、また非アミノ酸により中断され得、および/または複数のポリペプチド連鎖の複合体に組立てられ得る。当業界で十分に理解されているところによると、ポリペプチドは、天然で、または介入、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または他の操作または修飾、例えば標識成分とのコンジュゲーションにより修飾され得る。実施態様の中には、ポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントがアミノ酸の1個またはそれ以上の類似体(例えば非天然アミノ酸等を含む)、並びに当業界で公知の他の修飾を含む場合もある。
本発明のポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントは、単離された天然に存するポリペプチドを含む。好ましくは、かかる天然ポリペプチドは、選択された母集団において少なくとも5パーセント、そして最も好ましくは少なくとも10パーセントの頻度を有する。選択された母集団は、集団遺伝学分野において認められた試験集団であり得る。好ましくは、選択された集団は、白人系、黒人系またはアジア人系である。さらに好ましくは、選択集団は、フランス人、ドイツ人、イギリス人、スペイン人、スイス人、日本人、中国人、韓国人、中国系シンガポール人、アイスランド人、北米人、イスラエル人、アラブ人、トルコ人、ギリシア人、イタリア人、ポーランド人、太平洋諸島人またはインド人である。
本発明のポリペプチド(フラグメント)はまた、組換え技法により製造されたポリペプチド、合成製造されたポリペプチドおよび本発明の上記ポリペプチドの組合わせ、およびそれらのフラグメントを包含し得る。上記ポリペプチドの製造手段は当業界では十分に理解されている。例えば、本発明のポリヌクレオチドフラグメントまたはポリペプチドは、体液、例えば限定するわけではないが、血清、尿および腹水から単離されるか、または化学的または生物学的方法(例えば、細胞培養、組換え遺伝子発現)により合成され得る。本明細書において「単離された」とは、特記しない場合、「共存物質から分離された」という意味を含む。
本発明の組換えポリペプチドは、発現系を含む遺伝子工学による宿主細胞から当業界でよく知られている方法により製造され得る。従って、さらなる態様において、本発明は、組換え技術によるポリペプチドの製造、本発明ポリペプチドをコード化する一核酸または複数核酸を含む発現系、上記発現系により遺伝子操作が加えられた宿主細胞、およびポリペプチドの単離方法に関するものである。
別の実施態様において、本発明ポリペプチドは、配列番号3または配列番号4とストリンジェント条件下でハイブリダイゼーションする核酸によりコード化される。実施態様によっては、核酸が少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、または少なくとも150ヌクレオチドを含む場合もある。好ましくは、核酸は、少なくとも175または少なくとも200ヌクレオチドを含む。特に、それは、225または228ヌクレオチドを含む。核酸はまた、少なくとも300、または少なくとも400または500ヌクレオチドを含み得る。好ましくは、それは、少なくとも600または少なくとも700ヌクレオチドを含み得る。最も好ましくは、それは、少なくとも750ヌクレオチドを含む。上記核酸は、配列番号3または配列番号4の連続ヌクレオチドまたは配列番号3または4とストリンジェント条件下でハイブリダイゼーションできる連続ヌクレオチドを含み得る。
配列番号3(ヒトFGF−23の核酸配列)
配列番号4(FGF23CTPの核酸配列)
「核酸」の語は、天然または半合成または合成または修飾核酸分子を意味する。これは、ヌクレオチド配列、デオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドおよび/または修飾ヌクレオチドを包含する。これらの語は、互換的に使用されるものとする。RNAは、tRNA(転移RNA)、snRNA(小核RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNAおよびリボザイムの形態であり得る。DNAは、プラスミドDNA、ウイルスDNA、線状DNA、染色体またはゲノムDNA、cDNAまたはこれらの基の誘導体の形態であり得る。さらに、これらのDNAおよびRNAは、1本、2本、3本または4本鎖であり得る。この語はまた、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、および天然核酸のリン酸バックボーンの他の変異型を包含する。
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェント条件」は、当業者であれば容易に決定できるものであり、一般的にはプローブ長、洗浄温度、および塩濃度により異なる経験に基づく計算である。一般に、長いプローブは、適正なアニーリングに対して高温を要求し、短いプローブは低温を必要とする。相補鎖が融解温度未満ではあるがそれに近い環境に存在するとき、ハイブリダイゼーションは、一般的に変性核酸の再アニーリング能力に左右される。プローブおよびハイブリダイゼーション可能な配列、例えば配列番号3または4間の相同性の度合が高いとき、使用され得る相対温度も高くなる。結果として、相対温度が高いと、反応条件はさらにストリンジェントとなる傾向があり、温度が低いと反応条件のストリンジェンシーは低くなることになる。さらに、ストリンジェンシーはまた、塩濃度と逆比例している。「ストリンジェント条件」は、(1)洗浄には低いイオン強度および高温、例えば50℃で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム;(2)変性剤、例えばホルムアミド、例えば0.1%牛血清アルブミン/0.1%フィコル/0.1%ポリビニルピロリドン/750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム含有の50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5と共に50%(v/v)ホルムアミド、42℃の使用を特徴とする反応条件により典型的に示される。別法として、ストリンジェント条件は、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート溶液、超音波処理したサーモン精液DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストラン、42℃であり、洗浄は42℃での0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および55℃での50%ホルムアミド中、次いで55℃でのEDTA含有0.1×SSCから成る高ストリンジェンシー洗浄であり得る。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの追加的な詳細および説明については、Ausubel et al., Protocols in Molecular Biology(1995)参照。
FGF−23のC−末端ポリペプチドの組換え製造。本明細書記載の核酸、例えば配列番号3または4を、組換えDNA分子で使用することにより、適切な宿主細胞における対応するポリペプチドの発現が指令され得る。遺伝コードにおける縮重故に、他のDNA配列でも、均等内容のアミノ酸配列をコード化し得、FGF−23またはそのフラグメントのクローン化および発現に使用され得る。特定宿主細胞が好むコドンを選択して、天然に存するヌクレオチド配列へ置換することにより、発現の速度および/または効率が高められ得る。所望のFGF−23またはFGF−23フラグメント、例えばFGF23CTPをコード化する核酸(例、cDNAまたはゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)用および/または発現用の複製可能なベクターへ挿入され得る。
発現系。ポリペプチドは、当業界で公知の方法(Ausubel et al., 編、Current Protocols in Molecular Biology, ジョン・ワイリー・サンズ、ニューヨーク、1990)に従って若干の発現系のいずれかにおいて組換え技法により発現され得る。上記発現系は、染色体、エピソームおよびウイルス由来の系、例えば細菌性プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス、例えばバクロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスから誘導されたベクター、およびそれらの組合わせから誘導されたベクター、例えばプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝エレメントから誘導されたもの、例えばコスミドおよびファージミドを包含する。
発現系は、発現を調節および誘発する制御領域を含み得る。一般的に、核酸を維持、増殖または発現させることにより、宿主でポリペプチドを製造させ得る系またはベクターであれば使用され得る。適切なヌクレオチド配列は、様々な公知常用技術のいずれか、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク(1989)で示されたものにより発現系に挿入され得る。一般に、DNAは、当業界で公知の技術を用いて適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。
ベクター成分は、一般的に複製起点、1種またはそれ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、シグナルまたは分泌配列、および転写終結配列のうちの一つまたはそれ以上を含むが、これらに限定されるわけではない。
発現ベクターは、2つの複製系を有し得るため、2種の生物体、例えば発現については哺乳類または昆虫細胞、ならびにクローニングおよび増幅については原核生物宿主で維持され得る。上記配列は、様々な細菌、酵母株およびウイルスについてよく知られている。
好ましくは、発現ベクターがマーカー遺伝子を含むことにより、形質転換宿主細胞が選択され得る。選択遺伝子は、当業界では熟知されており、使用される宿主細胞により変動する。発現およびクローニングベクターは、典型的には選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートまたはテトラサイクリンに対する耐性を付与するか、(b)栄養要求性欠乏を補完するか、または(c)不可欠な栄養素、例えばD−アラニンラセマーゼ遺伝子を供給するタンパク質をコード化する。
プロモーター配列は、構成的または誘導性プロモーターをコード化する。プロモーターは、天然に存するプロモーターまたはハイブリッドプロモーターであり得る。複数のプロモーターのエレメントを組合わせたハイブリッドプロモーターもまた当業界では公知であり、本発明では有用である。さらに、発現ベクターを組込むため、発現ベクターは、宿主細胞ゲノムに相同的な少なくとも1つの配列、そして好ましくは発現構築物の両端に2つの相同性配列を含む。組込みベクターは、ベクターにおける適切な相同性配列の挿入により宿主細胞の特異的な座に指向され得る。ベクターを組込むための構築物は当業界ではよく知られている。
適切な分泌シグナルを所望のポリペプチドに組込むことにより、ポリペプチドが小胞体のルーメン、周辺腔または細胞外環境へ分泌され得る。これらのシグナルは、ポリペプチドにとって内在性であり得るかまたはそれらは異種シグナルであり得る。シグナル配列は、例えばアルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーから成る群から選択される原核生物シグナル配列であり得る。酵母分泌については、シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(サッカロマイシス(Saccharomyces)およびクルイベロマイシス(Kluyveromyces)a−因子リーダーを含む)であり得る。哺乳類細胞発現系において、同一または関連種の分泌ポリペプチドからの哺乳類シグナル配列、およびウイルス分泌リーダーは、FGF−23またはそのフラグメント、例えばFGF−23CTPの分泌を指令するのに使用され得る。
適切な宿主細胞には、酵母、細菌、古細菌、真菌、および昆虫および動物細胞、例えば哺乳類細胞、例えば限定はされないが幹細胞を含む一次細胞がある。適切な宿主の代表例には、細菌細胞、例えばエシェリキア・コリ(E.coli)、ストレプトコッカス(Streptococci)、スタフィロコッカス(Staphylococci)、ストレプトマイシス(Streptmyces)、およびバシラス・サチラス(Bacillus subtilis);真菌細胞、例えばサッカロマイシス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、他の酵母細胞またはアスペルギルス(Aspergillus);昆虫細胞、例えばドロソフィラ(Drosophila)S2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞;動物細胞、例えばCHO、COS、ヒーラ、C127、3T3、BHK、HEK293およびボーズメラノーマ細胞;および植物細胞がある。
宿主細胞株は、挿入された配列の発現をモジュレーションするかまたは所望のやり方で発現されたポリペプチドをプロセッシングする能力について選択され得る。ポリペプチドの上記修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化があるが、これらに限定されるわけではない。ポリペプチドの「プレプロ」形態を開裂する翻訳後プロセッシングもまた、正確な挿入、折りたたみおよび/または機能にとって重要であり得る。
FGF−23またはそのフラグメント、例えばFGF23CTPは、タンパク質またはポリペプチドの発現を誘導または誘発するのに適切な条件下でFGF−23またはそのフラグメントをコード化する核酸を含む発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を培養することにより製造され得る。本発明の好ましい実施態様では、配列番号3または4の核酸により安定して、または一時的にトランスフェクションされたかまたはストリンジェント条件下で配列番号3または4とハイブリダイゼーションする核酸によりトランスフェクションされた宿主細胞が提供される。本発明の別の実施態様によると、上記宿主細胞を培養することにより、FGF−23またはFGF−23フラグメントが発現され得、そしてポリペプチドが細胞培養から単離される。
形質転換宿主細胞には、微生物、例えば組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミド(cosmic)DNA発現ベクターにより形質転換された細菌、酵母発現ベクターにより形質転換された酵母、および組換え昆虫ウイルス(例えばバクロウイルス)に感染した昆虫細胞、および哺乳類発現系があるが、これらに限定はされない。
FGF−23またはそのフラグメント、例えばFGF23CTPの発現に適切な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択により変化するが、常用の実験を通して当業者により容易に確認される。例えば、発現ベクターにおける構成的プロモーターの使用は、宿主細胞の成長および増殖を最適化することを必要とし、誘導性プロモーターの使用は、誘導に適切な生長条件を必要とする。さらに、実施態様によっては、採取のタイミングが重要な場合もある。例えば、昆虫細胞と一緒に使用されるバクロウイルス系は、溶菌ウイルスであるため、採取時間の選択は生成物の収率にとって重大であり得る。
所望のFGF−23またはFGF−23フラグメントは、組換え技法により直接的のみならず、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても製造され得る。上記異種ポリペプチドは、一般的にFGF−23またはFGF−23フラグメントのアミノ−またはカルボキシル末端に位置しており、抗標識抗体が選択的に結合し得るエピトープ標識を提供し得る。従って、上記エピトープ標識により、抗標識抗体またはエピトープ標識と結合する別のタイプのアフィニティーマトリックスを用いて、FGF−23またはそのフラグメントを容易に精製することが可能となる。エピトープ標識の例は、6×Hisまたはc−myc標識である。別法として、FGF−23またはそのフラグメントは、例えばGST融合タンパク質の形態で発現され得る。適切な構築物は当業界では公知であり、市場の供給業者、例えばインビトロゲン(サンディエゴ、カリフォルニア)、ストラタジーン(ラジョラ、カリフォルニア)、ギブコBRL(ロックビル、メリーランド)またはクロンテック(パロアルト、カリフォルニア)から入手可能である。
遺伝子発現の評価。遺伝子発現は、試料中で直接的に、例えば、当業者に公知の標準技術、例えばDNA検出についてはサザーンブロッティング、mRNAの転写測定にはノーザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA)、または本発明で提供された配列に基く適切な標識プローブを用いたin situ ハイブリダイゼーションにより評価され得る。別法として、抗体は、核酸、例えば特異的デュプレックス、例えばDNAデュプレックス、RNAデュプレックス、およびDNA−RNAハイブリッドデュプレックスまたはDNA−タンパク質デュプレックスを検出するための検定法で使用され得る。上記抗体に標識を付し、デュプレックスを表面に結合させる検定法を実施し得るが、その方法では、表面上にデュプレックスが形成されたとき、デュプレックスに結合した抗体の存在が検出され得る形をとる。別法として、遺伝子発現を、細胞または組織片の免疫組織化学染色および細胞培養または体液の検定法により測定することによって、FGF−23またはFGF−23フラグメントの発現が直接評価され得る。上記免疫学的検定法に有用な抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得、本発明で提供されているDNA配列に基き天然配列FGF−23またはFGF−23フラグメントに対して調製され得うる。
発現されたタンパク質の精製。発現されたFGF−23またはFGF−23フラグメント、例えばFGF−23CTPは、当業者に公知の様々な方法のいずれかを用いて発現後に精製または単離され得る。適切な技術は、FGF−23またはFGF−23フラグメントの発現方法により異なる。ポリペプチドは、例えば分泌タンパク質形態で細胞培養から、または宿主細胞ライゼートから回収され得る。細胞は、様々な物理的または化学的手段、例えば凍結解凍サイクル、超音波処理、機械的破壊により、または細胞溶解剤の使用により破壊され得、膜結合ポリペプチドは、適切なデタージェント溶液(例、トリトン−X100)を用いて、または酵素的開裂により膜から脱離され得る。ポリペプチド精製または単離に適切な技術もまた、試料中に他のいかなる成分が存在するかにより異なる。また、必要な精製の程度もFGF−23またはそのフラグメントの使用により異なる。単離または精製により除去される汚染物質成分は、典型的にはポリペプチドについての診断または治療上の効用を妨げる物質であり、酵素、ホルモンおよび他の溶質が含まれ得る。選択される精製工程(複数も可)は、例えば、使用される製造方法の性質および製造される特定のFGF−23またはFGF−23フラグメントにより異なる。
通常、単離FGF−23またはそのフラグメントは、少なくとも一精製工程により製造される。公知精製方法には、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈澱、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーがある。最も好ましくは、アフィニティークロマトグラフィーが精製に使用される。例えば、FGF−23またはそのフラグメント、例えばFGF−23CTPは、標準抗FGF−23のC−末端ポリペプチド抗体カラムを用いて精製され得る。タンパク質濃縮と連係的な限外濾過および透析技術もまた有用である(例えば、Scopes,R., Protein Purification, スプリンガー−フェルラーク、ニューヨーク、ニューヨーク、1982)。ポリペプチドが単離および精製中に変性したとき、タンパク質についての公知再生技術を用いることにより、活性立体配座が再現され得る。
発現されたポリペプチドの標識。本発明の核酸、タンパク質および抗体には標識が付され得る。本明細書における標識とは、化合物の検出を可能にするために、化合物に少なくとも一エレメント、同位体または化学的化合物が結合されていることを意味する。一般に、標識は、3種:a)放射性または重同位体であり得る同位体標識、b)抗体または抗原であり得る免疫標識、およびc)着色または蛍光色素に分類される。標識は、検出されている化合物の生物活性または特性に干渉しない位置であればいずれの位置でも組込まれ得る。
FGF−23およびFGF−23フラグメントの化学的製造。ポリペプチドまたはそのフラグメントは、組換え技法だけでなく、当業界で公知の化学的方法を用いても製造され得る。固相ペプチド合成は、リンカー基を介して連続的にアルファ−アミノ−および側鎖保護アミノ酸残基を不溶性ポリマー支持体に付加する一回毎または連続フロープロセスで実施され得る。リンカー基、例えばメチルアミン誘導体化ポリエチレングリコールをポリ(スチレン−コ−ジビニルベンゼン)に結合することにより、支持体樹脂を形成させる。アミノ酸残基は、酸不安定Boc(t−ブチルオキシカルボニル)または塩基不安定Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)によりNアルファ保護されている。保護アミノ酸のカルボキシル基をリンカー基のアミンにカップリングすることにより、残基を固相支持体樹脂に固定する。トリフルオロ酢酸またはピペリジンを用いることにより、BocまたはFmocのそれぞれの場合における保護基を除去する。カップリング剤または前活性化アミノ酸誘導体を用いて各追加アミノ酸を固定残基に付加させ、樹脂を洗浄する。完全長ペプチドは、連続的脱保護、誘導体化アミノ酸のカップリング、およびジクロロメタンおよび/またはN,N−ジメチルホルムアミドによる洗浄により合成される。ペプチドをペプチドカルボキシ末端およびリンカー基間で開裂することにより、ペプチド酸またはアミドが生成される。(Novabiochem 1997/98 Catalog and Peptide Synthesis Handbook, サンディエゴ、カリフォルニア、S1−S20頁)。自動合成もまた、例えばABI431Aペプチド合成装置(アプライド・バイオシステムズ)などの機械で実施され得る。ポリペプチドまたはそのフラグメントは、分取高速液体クロマトグラフィーにより精製され、その組成はアミノ酸分析または配列決定により確認される(Creighton T.E.(1984)Proteins,Structures and Molecular Properties, W H Freeman、ニューヨーク、ニューヨーク)。
変異型。天然ポリペプチドの変異型は、様々な環境において望ましいものであり得る。例えば、特に副作用活性がポリペプチドの所望の活性に関連した部分とは異なる部分に随伴している場合、望ましくない副作用はある種の変異型により低減化され得る。発現系によっては、天然ポリペプチドがプロテアーゼによる分解を被り易い場合もあり得る。かかる場合、分解され易い配列を変えるアミノ酸の選択された置換および/または欠失により収率が著しく高められ得る。変異型はまた、精製手順における収率を高め、および/または酸化、アシル化、アルキル化、または他の化学的修飾を被り易いアミノ酸を排除することによりタンパク質の貯蔵寿命を増加させることができる。好ましくは、上記変異型は、立体配座的に中性である改変を含む、すなわち、それらは天然ポリペプチドと比べて変異型ポリペプチドの三次構造に加えられる変化が最小となるように設計されている、そして(ii)抗原的に中性である改変を含む、すなわちそれらは天然ポリペプチドと比べて変異型ポリペプチドの抗原決定基に加えられる変化が最小となるように設計されている。
病気の処置で使用される医薬の製造。本発明によると、前述のポリペプチドは、調節が解除された新脈管形成に関連した病気または細胞増殖性疾患の処置で使用される医薬の製造に使用され得る。
「処置」の語は、治療的処置および予防的または防止的措置の両方をさす。処置を必要とする者は、既に罹患している者および疾患を防止すべき者を包含する。
「疾患」または「病気」は、上記および下記のFGF−23またはFGF−23のフラグメントによる処置から恩恵を被る状態をいう。これは、慢性および急性疾患の両方、並びに問題の疾患または病気に罹患し易い病理学的状態を包含する。本発明で処置される疾患または病気の非限定的な例には、調節が解除された新脈管形成に関連した病気または細胞増殖の統制解除から生じる状態が包含される。調節が解除された新脈管形成に関連した病気の例としては、眼の新生血管形成、例えば網膜症(糖尿病性網膜症を含む)、加齢黄斑変性、乾癬、血管芽細胞腫、血管腫、動脈硬化、炎症性疾患、例えばリウマチ様またはリウマチ性炎症性疾患、特に関節炎、例えば慢性関節リウマチ、または他の慢性炎症性疾患、例えば慢性喘息、動脈または移植後アテローム性動脈硬化、子宮内膜症、および特に新生物疾患、例えばいわゆる固体腫瘍および液体腫瘍(例えば白血病)がある。
調節が解除された新脈管形成に関連した病気の好ましい例は、網膜症、加齢性黄斑変性、血管芽細胞腫、血管腫および腫瘍から成る群から選択される。調節が解除された新脈管形成に関連した病気の特に好ましい例は、網膜症である。
細胞増殖性疾患の例には、慢性または急性腎臓病、例えば糖尿病性ネフロパシー、悪性腎硬化症、血栓性細小血管障害症候群または移植拒絶、または特に炎症性腎臓病、例えば糸球体腎炎、特にメサンギウム増殖性糸球体腎炎、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性ネフロパシー、高血圧性腎硬化症、アテローム、動脈再狭窄、光線角化症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、滑液包炎、肝炎、混合結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間血色素尿症、真性赤血球増加症、乾癬、一次血小板血症、および自己免疫疾患、急性炎症、線維性疾患(例、肝硬変)、糖尿病、子宮内膜症、慢性喘息、神経変性疾患および特に新生物疾患、例えば腺癌、神経膠腫、白血病、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、肉腫、カポジ肉腫、奇形癌、および特に副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、胸部、頚部、結腸、胆嚢、神経節、胃腸管、心臓、腎臓、肝臓、肺(特に小細胞肺癌)、筋肉、卵巣、膵臓、上皮小体、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺および子宮の癌がある。
細胞増殖性疾患の好ましい例は、慢性または急性腎臓病、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、乾癬、子宮内膜炎、糖尿病、慢性喘息および癌から成る群から選択される。細胞増殖性疾患の特に好ましい例は癌である。
本発明の別の態様は、調節が解除された新脈管形成に関連した病気の処置方法であって、病気に罹った哺乳類、例えばヒトにポリペプチドの有効量を投与することを含む方法に関するものであり、このポリペプチドは、(a)FGF−23(配列番号1)またはFGF−23のフラグメント;(b)(a)のポリペプチドのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性パーセンテージを有する生物活性ポリペプチド;または(c)(a)または(b)のポリペプチドのいずれか一つの生物活性変異型から成る群から選択されるものとする。場合に応じて、上記ポリペプチドが投与され得る。
本発明の別の態様は、細胞増殖性疾患の処置方法であって、この疾患に罹った哺乳類、例えばヒトに上記のFGF−23またはFGF−23フラグメント、例えばFGF−23CTPの有効量を投与することを含む方法に関するものである。
処置目的についての「哺乳類」は、ヒト、家畜および動物園、競技用の動物、または愛玩動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなどを含む、哺乳類として分類される動物をいう。好ましくは、哺乳類はヒトである。
医薬組成物。本発明の別の態様は、上記の本発明FGF−23またはそのフラグメントおよび医薬上許容される担体を含有する調節が解除された新脈管形成と関連した病気または増殖性疾患で使用される医薬組成物を提供する。本発明組成物は、有効量で投与される。
医薬組成物は、上記処置方法で使用され得る。上記組成物は、好ましくは無菌であり、有効量のFGF−23またはFGF−23フラグメント、例えばFGF−23CTPまたは所望の応答を誘導するポリペプチドをコード化する核酸を、患者への投与に適切な重量または用量単位で含有する。
FGF−23またはそのフラグメント、化合物または医薬組成物の「有効量」は、直接的または間接的に、有益または所望の成果、例えば未熟児または糖尿病性網膜症を阻止する、血管形成を阻止する、腫瘍のサイズを縮小させる、癌細胞増殖を抑制する、病気または疾患から生じる一つまたはそれ以上の症状を緩和する、患者の生活の質を向上させる、病気または疾患の処置に要求される他の医薬の用量を減少させる、別の医療の効果を高める、病気または疾患の進行を遅らす、および/または患者の生存期間を延ばすといった臨床的な成果をあげるのに十分な量である。
上記量はまた、処置されている特定の状態、病状の重さ、年齢、身体条件、体格および体重を含む個々の患者パラメーター、処置の持続時間、併用療法の性質(ある場合)、特定の投与経路および医療従事者の知識および専門的判断の範囲内における因子により異なる。これらの因子は当業者には十分認識されており、これらの取組みについては常用の実験で十分である。
有効量は、1回またはそれ以上の投与回数で投与され得、別の薬剤、化合物または医薬組成物と連係的に達成される場合もされない場合もあり得る。すなわち、「有効量」は、1種またはそれ以上の治療薬を投与する状況で考慮され得、1種またはそれ以上の他の薬剤と連係的に、望ましい結果が達成され得るか、または達成されている場合、一薬剤は有効量で与えられているとみなされ得る。
単独または別の薬剤、化合物または医薬組成物と連係的である場合、FGF−23またはFGF−23フラグメントまたは本発明ポリペプチドを含む医薬組成物の有効量は、注射または長時間の輸液を含む慣用的経路により投与され得る。投与は、例えば経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、局所または経皮経路であり得る。
投与時、本発明医薬組成物は、医薬上許容される製品で投与される。本明細書で使用されている「医薬上許容される担体」の語は、ヒトを含む哺乳類への投与に適切である1種またはそれ以上の適合性固体または液体充填剤、希釈剤または封入物質をいう。「担体」の語は、有効成分と組合わせることにより、適用が容易になる、天然または合成の有機または無機成分をいう。
「医薬上許容される」の語は、有効成分の生物活性の有効性に干渉しない非毒性材料を意味する。上記製品は、常用的に、医薬上許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、補足的な免疫増強剤、例えばアジュバントおよびサイトカインおよび所望による他の治療薬、例えば化学療法剤を含み得る。
医薬での使用時、塩は医薬上許容されるものであるべきだが、医薬上許容される塩ではない場合でも、好都合にはその医薬上許容される塩の製造に使用され得るため、本発明の範囲からは排除されない。
医薬組成物は、酢酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩およびリン酸塩を含む、適切な緩衝剤を含み得る。
医薬組成物はまた、所望により、適切な保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールを含み得る。
対象に投与される上記ポリペプチドをコード化するポリペプチドまたは核酸の用量は、種々のパラメーターに従って、特に使用される投与方法および対象の状態に従って選択され得る。他の因子としては、所望の処置期間がある。対象における応答が、初回適用量では不十分である事象では、患者の耐容性が許容する範囲まで高用量(または異なるより局所的な送達経路による有効な高用量)が使用され得る。
医薬組成物は、好都合には単位用量形態をとり得、製薬業界における周知方法のいずれかにより製造され得る。どの方法も全て、有効成分を、1種またはそれ以上の補助成分を構成する担体と合わせる段階を含む。一般に、組成物は、均一かつ緊密に活性化合物を液体担体、微細分割固体担体、またはその両方と合わせ、次いで必要ならば、生成物を成型することにより製造される。
経口投与に適切な組成物は、個別単位、例えばカプセル剤、錠剤、ロゼンジとして提供され得、各々予め定められた量の活性化合物を含有する。他の組成物には、水性液体または非水性液体中の懸濁液、例えばシロップ、エリキシルまたはエマルジョンがある。
非経口投与に適切な組成物は、好都合にはポリペプチドまたはポリペプチドをコード化する核酸の滅菌水性または非水性調製物を含み、それは、好ましくはレシピエントの血液と等張性である。この調製物は、適切な分散または湿潤剤および懸濁剤を用いる公知方法に従って製剤化され得る。滅菌注射可能調製物はまた、非経口投与上許容される非毒性希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であり得る。使用され得、許容される賦形剤および溶媒には、水、リンゲル液、および塩化ナトリウム等張溶液がある。さらに、滅菌固定油は、好都合には溶媒または懸濁媒質として使用される。この目的の場合、合成モノ−またはジ−グリセリンを含め、刺激の強くないものであればいかなる固定油でも使用され得る。さらに脂肪酸、例えばオレイン酸は、注射可能溶液の製造で使用され得る。
経口、皮下、静脈内、筋肉内等投与に適切な担体製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences(マック・パブリッシング・カンパニー、イーストン、ペンシルベニア)に記載されている。
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様をさらに詳しく説明するために示されている。これらの実施例は、添付の請求の範囲に記載されている、本発明の範囲を制限するものとみなされるべきではない。
マウスにおけるインビボ遺伝子発現プロファイリングを通じて統合された研究的薬理学
この実施例では、本発明の発見方法を用いて100の未知化学合成ペプチドを機能化する。これらのペプチドの大部分はヒト血漿に存在する。
対照として、20の対照基準薬剤を、本発明発見方法により同時に試験する。このスクリーニングについては、6匹の雄から成る1対照および4処置群を、タンパク質の皮下経路による毎日投与により2週間処置する。対照基準薬剤は、緑内障、神経保護、新生血管形成、抗血管形成、アクネ、喘息およびアレルギー、心臓血管疾患、神経学的疾患、疼痛、糖尿病、高コレステロール血症、オステオポローシスおよび腫瘍学の領域における処置条件について活性を示し得る。
選択された活性ペプチドから期待されることは、(a)幾つかの潜在的治療薬が同定され得る、(b)治療用抗体についての標的ペプチドが同定され得る、(c)再構築された生化学経路から演繹される新たな研究用標的が同定され得る、そして(d)診断試験の開発に使用されるバイオマーカーが同定され得ることである。マウスにおける遺伝子発現の生物情報研究は、分子経路および機能の分析を通して治療上の指標および洞察を示唆しており、サルにおいて選択されたタンパク質/ペプチドを確認するための優先順位決定が可能となる。タンパク質/ペプチド選択率は、約20%である。選択/優先順位決定基準は、活性のタイプ、治療上の興味および疑われる毒性である。
初回分析において、マウスへのペプチド(FGF−23、下記参照、実施例3)の投与後、化合物が、細胞分化に関与する経路に対して活性を示し、影響を与えることを示す転写物レベルの変化が幾つかの臓器において観察された。
マウスにおける皮下経路による7日間薬理学および毒性試験;マイクロアレイ遺伝子発現解析
緒論および要旨。機能が確認されていない5ペプチドを、マウスにおいて試験することにより、それらの活性を明確化し得る生化学的および薬理ゲノム学データを得た。異系交配CD−1マウスを、ペプチドGPA018、GPA019、GPA020、GPA022およびGPA023で7日間処置し、治療効果の臨床徴候(死亡数、臨床徴候、体重、食物消費、血液学、臨床生化学)について観察し、殺した後、選択された一連の組織を遺伝子発現プロファイリングに使用した。組織の瞬間冷凍試料採取を処置期間の最後に剖検で実施した。これらの組織をmRNA発現プロファイリングおよび組織病理学的分析(ホルマリン固定)に使用した。さらに、標準予備試験で調べられたパラメーターを記録した。ペプチドの中で、臨床または薬理ゲノム学的パラメーターに影響を与えるものは無かった。遺伝子発現プロファイリングは、対照および処置動物間において大した変化は示さなかった。ペプチドは不活性であるという結論に達し、これらのペプチドに関してそれ以上の研究は行わないことを決定した。
処置。ペプチドGPA018、GPA019、GPA020、GPA022およびGPA023(ジーンプロット、ジュネーブ、スイス国、図1参照)を、7日間300mcg/日の用量でCD−1マウスに皮下投与した。マウス臓器重量、すなわちマイクロアレイ解析用のRNAの収率を高めるため、CD−1マウス(フランス国ラルブルスル、チャールズ・リバー・ラボラトリーズからの異系交配系統)の選択を行った。1処置群および性別につき動物4匹を使用した。処置期間の開始時、動物は12〜14週令であった。体重は平均42.2g(38〜45.6g)であった。動物を標準動物福祉条件下に保った。
処置期間の開始前に一旦用量形態を調製した。各試験品目を賦形剤(PBS)に溶かすことにより、必要濃度を達成した。得られた用量形態を、アリコートに分割し、使用中−20℃で貯蔵した。各群および日につき、2アリコートを調製した。処置用アリコートを毎処置日2回動物の部屋へ送達した。
インビボ試験。少なくとも1日2回、死亡数、食物消費および臨床所見について動物を調べた。体重を週に1回記録した。
血液試料を各動物から採取した。血清試料をホルモン測定分析まで急速冷凍(約−80℃)した。
組織試料採取のため、最後の注射の約12〜16時間後、動物を二酸化炭素により窒息させた。肉眼的剖検を実施することにより、主要臓器の可能なサイズ縮小を(特にリンパ様組織に注目して)明示した。処置関連する形態学的変化は全く認められなかった。
処置期間の最後に剖検で多くの臓器の瞬間冷凍を実施した。殺した後15〜20以内に瞬間冷凍のため全試料採取を実施した。
脳、十二指腸(盲腸)、肝臓、腎臓、筋肉および脾臓(血液)を含む、28種の組織の試料採取を実施した。この実施例については、雄および雌動物を腎臓および肝臓検定法で使用した。他の組織試料は全て雌のみに由来していた。
組織病理学用試料を、リン酸緩衝10%ホルマリン中で固定した。骨鉱物質除去を10%蟻酸により実施した。
遺伝子発現プロファイリング用試料を、摘出直後に液体窒素中で急速冷凍し、ドライアイス上、それに続いてさらなる使用時まで急速冷凍庫において約−80℃で貯蔵した。
RNA抽出および精製。簡単に述べると、各冷凍組織片から酸性グアニジニウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出(トリゾール(登録商標)、インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ、カールスバッド、カリフォルニア、米国)により、全RNAを得、次いでアフィニティー樹脂(Rneasy(登録商標)、キアゲン)において製造業者の使用説明書に従って全RNAを精製し、定量した。λ=260nm(A260nm)での吸光度で全RNAを定量し、A260nm/A280nm割合により純度を評価した。RNA分子の完全さを、非変性アガロースゲル電気泳動により確認した。RNAを約−80℃で分析時まで貯蔵した。個々の各RNA試料の一部分を、リアルタイムPCR手段による不可欠遺伝子の解析用に保存した。
GeneChip(ジーンチップ、登録商標)検定法。GeneChipシステムの製造業者の推奨に従って(アフィメトリックス、Expression Analysis Technical Manual、(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア、米国、2003))、全GeneChip(登録商標)検定法を実施した。ゲノムMG−U74Av2発現プローブアレイセット(アフィメトリックス、インコーポレイテッド、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)を使用した。
T7−(dT)24DNAオリゴヌクレオチドプライマーの存在下、スーパースクリプト・チョイス・システム(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ)を用いて約5μg完全長全RNAの出発量で二本鎖cDNAを合成した。合成後、cDNAを、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出およびエタノール沈澱により精製した。次いで、ビオチニル化リボヌクレオチドの存在下、BioArray(登録商標)High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO、ファーミングデール、ニューヨーク、米国)を用いて、精製cDNAをインビトロ転写することにより、ビオチン標識cRNAを形成した。次いで、標識cRNAを、アフィニティー樹脂(Rneasy(登録商標)、キアゲン)で精製し、定量し、フラグメント化した。約10μg量の標識cRNAを、45℃で約16時間発現プローブアレイとハイブリダイゼーションさせた。次いで、アレイを洗浄し、GeneChip(登録商標)Fluidics Workstation400(アフィメトリックス)を用いて、ストレプトアビジン−フィコエリスリン(モレキュラー・プローブズ、ユージーン、オレゴン、米国)で2回染色した。
次いで、共焦レーザースキャナー(GeneArray(登録商標)スキャナー、アギレント、パロアルト、カリフォルニア、米国)を用いて、アレイを2回走査することにより、一走査画像が得られた。得られたこの「.dat−file」を、MAS4プログラム(アフィメトリックス)を用いて「.cel−file」へ処理した。「.cel−file」を捉え、アフィメトリックスのGeneChip Laboratory Information Management System(LIMS)へロードした。LIMSデータベースを、全プローブセル(CELファイル)についての平均強度をOracleデータベースへダウンロードさせ得るネットワークファイリングシステムを介してUNIX Sun Solarisサーバーにつなぐ。150の「標的強度」を用いて、未処理データを発現レベルに変換した。データを品質についてチェックし、解析用のGeneSpring(登録商標)ソフトウェア5.0.3(シリコン・ジェネティクス、レッドウッドシティー、カリフォルニア、米国)へロードした。
品質対照として、GAPDHまたはβ−アクチンプローブを用いてハイブリダイゼーションを遂行させた。
データ分析。ヒトアフィメトリックスMG−U74Av2 GeneChip(登録商標)を用いることにより、RNA試料を試験した。上記チッププラットホームにおいて、個々の遺伝子についてのプローブセットは、20オリゴヌクレオチド対を含んでおり、各々「完全マッチ」25量体および単一塩基が「完全」マッチオリゴヌクレオチドとは異なる「ミスマッチ」25−量体により構成されている。プローブ標識、ハイブリダイゼーション、およびレーザー走査後、所定のプローブのオリゴヌクレオチド対により測定されるシグナル強度の差異の平均をとることにより発現レベルを評価する(AvgDiff値)。この試験について使用される画像捕捉および数値翻訳ソフトウェアは、アフィメトリックス・マイクロアレイ・スイート・バージョン4(MAS5)であった。数値を記憶させ、シリコン・ジェネティクスGeneSpring(登録商標)5.0.3ソフトウェアツールキット解析用に移した。
これらのプログラムにおける様々なフィルタリングおよびクラスタリングツールを用いて、データセットを探査し、改変された細胞および組織機能について知らせ、化合物の作用モードに関する作業仮説を確立するのに使用され得る転写物レベルの変化を同定した。データセットを全て中央値に正規化した。多面発現性または特有の効果を同定するため、シリコン・ジェネティクスにより提供されたスクリプトを適用した。また、発現レベルが8種の状態(すなわち、臓器)のうちの少なくとも3つにおいて60を越える遺伝子を解析し、その後統計分析(パラメトリック、分散は等しくないと仮定、p<0.1)を適用することによって、多面発現性効果についても調べることにより、対照および処置動物間で発現の変化が著しい遺伝子が同定された。
個々の臓器における遺伝子発現の顕著な変化を識別するため、発現制限フィルターを適用し(試料の50%においてADV>60)、上記統計フィルターを加えた。
中には、比率変化フィルタースクリプト(シリコン・ジェネティクスが提供)を、発現制限後に使用することにより、遺伝子発現の変化がある一定レベルを超える遺伝子を発見し、統計フィルターを適用する場合もあった。
ある特定遺伝子が関連性を有するとみなす決定は、上記の探査的フィルタリングおよび統計的アルゴリズムにより同定された数値変化と、共通の生物学的テーマを指し示す他のモジュレーションされた遺伝子との関係の連結に基づいている。その関係の重要さは、関連性のある科学文献の検討を通して分析者により評価される。
遺伝子発現プロファイリング。多数の統計的アプローチにもかかわらず、処置群の遺伝子発現パターンには、大した変化は観察されなかった。どの分析においても、変化している遺伝子の数は、常に偶然見出された遺伝子の数より小さかった。比率変化の範囲は通常非常に小さく、2倍を越えることはほとんどない。
興味深いことに、最も大きな変化は性別に関して特異的であった。対照雄および対照雌、並びに処置雄対処置雌の比較は、対照雄または雌対処置雄または雌の場合の変化より、約3倍も多い遺伝子変化を示した。さらに、雌および雄における処置特異的効果の遺伝子リストは、ほとんど重複を示さなかった。
雄および雌を合わせた(各群につき8試料)GPA018処置腎臓において、TGFβシグナリングにより影響されたかまたはそれに影響を与える遺伝子に対してある程度の可能性のある影響が観察された(表2Aおよび表2B)。GPA018は、mLTBP−2(ネズミ潜在的トランスフォーミング成長因子結合タンパク質−2)のN−末端領域とある程度の配列類似性を示す。LTBPタンパク質は、LAP(潜伏関連タンパク質)−TGFβ複合体を分泌させ、それがECM(細胞外マトリックス)−構造タンパク質フィブリリンに結合するのを助ける(Annes JP et al., J. Cell Sci. 116(Pt2):217−24(2003);Chen S et al., Nucl. Acids Res. 31(4):1302−10(2003);Vehivilainen P et al., J. Biol. Chem. 278(27):24705−13(2003))。しかしながら、処置後の変化の範囲は非常に小さく、通常1.5倍未満であり、雌または雄群を別々に調べた場合でも類似パターンは観察されなかった。
FGF23CTP(100μg/日、皮下)で処置したカニクイザルの多臓器遺伝子発現プロファイリング
緒論および要旨。この実施例の目的は、サルにおける多臓器マイクロアレイプロファイリングにより治療適用性の可能性があるペプチドFGF23CTP作用モードについて確認することである。ペプチドFGF23CTP(GPA006、ジーンプロット、ジュネーブ、スイス国)は、FGF−23の特有のCOOH−末端ドメインから誘導される。それは、他のFGFファミリー構成員の領域とは相同性を示さないFGF−23の特有な75量体COOH−末端ペプチドである。PCT特許出願国際公開第02/088358号参照、この内容については出典明示により本明細書の一部とする。脳では、FGF−23転写物は、視床で優先的に発現される(Yamashita T et al., Biochem. Biophys. Res. Commu., 277:494−8(2000))。FGF−23分子のこの領域における突然変異は、常染色体優性くる病の一形態に関与する腎臓リン酸消耗症候群における原因事象として提案された(Saito H et al., Am. J. Pathol. 156:697−707(2002)、White KE et al., Kidney Int. 60:2079−86(2001))。この症候群の類似腫瘍随伴性形態は、腫瘍組織におけるFGF−23の異所性発現を伴った(Shimada T et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:6500−5(2001))。FGF−23は、脳の視床腹側外側核で発現される。FGF23CTPは、腎臓リン酸消耗症候群に関与することが知られている線維芽細胞増殖因子FGF−23の可能性のあるプロセッシング産物としてインシリコで誘導されている。75量体ペプチドがリン酸ホメオスタシスに影響を与え得ると仮定された。
FGF23CTPをカニクイザルに2週間皮下投与したところ、高密度ヒトマイクロアレイ検定法による多臓器遺伝子発現プロファイリング解析において細胞分化の決定的経路に影響を及ぼすことが見出された。16種の異なる臓器における発現変化の比較は、細胞から細胞への成長および系列決定のシグナリング、細胞サイクリングおよびアミノ酸およびイオン輸送に関与する遺伝子について共通した転写物レベル変化を示していた。FGF23CTPドメインは特有であり、他のFGFファミリー構成員からは見出されないが、FGFシグナリング経路の成分に関する転写物レベルは幾つかの臓器において影響を受けている。循環IGF2−結合タンパク質の血清タンパク質レベルは、処置動物では低下している。
新脈管形成/脈管形成に関与する遺伝子は、幾つかの臓器で影響を受けることが見出された。新脈管形成に対するFGF23CTPの効果は、低酸素症血管網膜症マウスモデルで確認される(実施例8参照)。
方法。FGF23CTPを、100μg/日の用量で2週間カニクイザルに皮下投与する。処置期間の最後に、全臓器からの標本を、剖検時に急速冷凍し、GeneChip(登録商標)発現プロファイリングで解析する。
TRIzol(登録商標)試薬(ライフ・テクノロジーズ)を製造業者の使用説明書に従って用いることにより、これらの冷凍組織から全RNAを抽出する。λ=260nmでの吸光度(A260nm)により全RNAを定量し、純度をA260nm/A280nm割合により評価する。変性ゲル電気泳動により、完全さをチェックする。RNAを分析時まで−80℃で貯蔵する。
Superscript(登録商標)チョイス・システム(テクノロジーズ、ガイザーズバーグ、メリーランド、米国)を用いることにより、品質良好な全RNAを用いて2本鎖cDNAを合成する。次いで、cDNAをインビトロ転写する(MEGAscript(登録商標)T7キット、アンビオン)ことにより、ビオチン標識cRNAを形成させる。次に、12〜15μgの標識RNAを、45℃で16時間アフィメトリックス・ヒューマンU95Aバージョン2発現プローブアレイとハイブリダイゼーションさせる。次いで、アレイをEukGE−WS2プロトコール(アフィメトリックス)に従って洗浄し、10μg/mlのストレプトアビジン−フィコエリスリンコンジュゲート(モレキュラー・プローブズ)で染色する。シグナルを、2mg/mlのアセチル化BSA(ライフ・テクノロジーズ、ガイザーズバーグ、メリーランド、米国)、100mMのMES、1Mの[Na+]、0.05%トウィーン20、0.005%のAntiofoam(シグマ)、0.1mg/mlのヤギIgGおよび0.5mg/mlビオチニル化抗体で抗体増幅し、ストレプトアビジン溶液で再染色する。洗浄後、Gene Array(登録商標)スキャナー(アフィメトリックス)でアレイを2回走査する。
所定のプローブのオリゴヌクレオチド対により測定されたシグナル強度の差異の平均をとることにより、発現レベルを評価する(AvgDiff値)。使用した画像捕捉および数値翻訳ソフトウェアは、アフィメトリックス・マイクロアレイ・スイートバージョン4(MAS4)であった。
処置により影響を受ける遺伝子を同定するため、データセットを最初にフィルタリングにかけることにより、解析の第一波で、実験ノイズが高い場合に値が系統的に低い発現範囲に含まれる遺伝子を排除する(検定ポイントの最小数の繰返しに対応する若干の検定法において少なくとも80のAvgDiff値)。選択の第2ラウンドにおいて、閾値t−検定p−値(0.05)により、2成分誤差モデル(グローバル・エラーモデル)に基き処置および未処置群間で値が異なる遺伝子を同定し、そして可能な場合、多重仮説検定についての補正を段階的に減少させる(BenjaminiおよびHochberg偽発見率)。
次いで、フィッシャー正確検定を用いて、選択された遺伝子リストを、経路および細胞成分について確立された遺伝子リストと比較する。ベン図を用いることにより、異なる臓器間で共通している遺伝子変化が同定される。関連性の高い遺伝子の発現プロファイルを用いることにより、幾つかの距離基準(標準、ピアソン)を用いて、個々の検定ポイントで相関関係を示す変化を伴う遺伝子が発見される。
ある特定遺伝子が関連性を有するとみなす決定は、上記の探査的フィルタリングおよび統計的アルゴリズムにより同定された数値変化と、共通の生物学的テーマを指し示す他のモジュレーションされた遺伝子との関係の連結に基づいている。
8種の状態のうちの少なくとも4つにおける少なくとも80.0の未処理値からのFGF23CTP吻側視床下部発現未処理データについてフィルターを適用する。
p値カットオフ0.05での統計的有意差およびBenjaminiおよびHochberg偽発見率に基く多重仮説検定補正に基いてFGF23CTP吻側視床下部に関する処置条件について選択を行う。この制限で5134個の遺伝子を試験した。同定された遺伝子の約5.0%は、偶然に制限を通過すると予測される。
結果。RNAレベルでは、化合物が、細胞分化および増殖を制御する主要遺伝子、特に増殖因子および増殖因子受容体に影響を及ぼすことは明白である。新脈管形成に決定的に関与する遺伝子は幾つかの臓器から見出される。また、網膜芽細胞腫細胞周期制御チェックポイントの成分についても転写物に対する多臓器効果が見られる。吻側視床下部は、特に輸送タンパク質および細胞構造について最も明白な変化を示す。
分析された臓器の交差比較は、FGF23CTPが同一または密接に関連した経路に影響を及ぼし、同様の細胞効果を誘発することを示している。日常的な臨床または生化学的変化は処置動物においては全く観察されない。驚くべきことに、リン酸代謝に対する効果は全く観察されない。
表3〜6は、RNAレベルで、FGF23CTPが、細胞分化および増殖を制御する主要遺伝子、特に増殖因子および増殖因子受容体(表3)に影響を及ぼすことを示している。新脈管形成に決定的に関与する遺伝子は、FGF23CTPによる処置時に幾つかの臓器で改変されることが見出された(表4)。また、網膜芽細胞腫細胞周期制御チェックポイントの成分についても転写物に対する多臓器効果が見られる(表5)。吻側視床下部は、特に輸送および細胞構造に関与するタンパク質に対応する転写物ついて最も明白な変化を示す(表6)。
特に、FGF23CTPは、膠細胞および前駆体の悪性増殖の病因においてある一定の役割を演じることが報告された幾つかの分子に影響を及ぼす:表皮成長因子(EGF)(Hoi Sang U et al., J. Neurosurg. 82:841−846(1995);Wu CJ et al., Oncogene 19:3999−4010(2000))、Bax(Streffer JR et al., J. Neurooncol. 56:43−49(2002);Martin S et al., J. Neurooncol. 52:129−139(2001))、コネキシン43(Huang R et al., Cancer Res. 62:2806−2812(2002);Soroceanu L et al., Glia 33:107−117(2001))、PKR(Shir & Levitzki A, Nature Biotechnology 20:895−900(2002))、ニューロフィブロミン(NF1)(Cichowski K & Jacks T, Cell 104:593−604(2001);Gutmann、DH et al., Hum. Mol. Genet. 10:3009−3016(2001))。
増殖因子および増殖因子受容体。線維芽細胞増殖因子(FGF)−受容体および細胞分化および維持に関する他の重要な細胞外シグナリング分子を含む増殖因子および関連増殖因子受容体の幾つかのサブファミリー、同様の骨形態発生タンパク質(BMP)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーの構成員は、FGF23CTPでの処置により複数の臓器において影響を受けることが見出された(表3)。
ROHY:吻側視床下部;B Marrow:骨髄;AV node:心臓房質(AV)結節。
新血管形成/脈管形成。新血管形成/脈管形成に特異的に関与する遺伝子についての転写物レベル変化は、FGF23CTPで処置した動物の幾つかの臓器で見出される(表4)。
ROHY:吻側視床下部;AV node:心臓房質(AV)結節。
細胞周期:網膜芽細胞腫チェックポイント。細胞周期制御に関与する遺伝子、特にG1からS期へのトランジションに関与する遺伝子の転写物レベルは、FGF23CTPでの処置により幾つかの臓器で影響を受ける(表5)。特に、網膜芽細胞腫遺伝子産物(Rb)リン酸化段階、増殖因子誘導増殖についての主要下流制御段階の上流または下流遺伝子の発現が改変される。FGF23CTPはまた、サイクリン−依存的キナーゼ4およびRbリン酸化に関与するサイクリンD2、D3およびE2についての転写物レベルに影響を及ぼす。また第2制御レベルは、サイクリンキナーゼ阻害剤、例えばp19INK4D、p21CIP1およびp27Kip1により起動される。また、p53およびRbの阻害剤、Mdm2も影響を被る。網膜芽細胞腫タンパク質の標的もまた関与する:E2F1、E2F2、E2F5およびそれらの結合パートナーDp−2。
ROHY:吻側視床下部
吻側視床下部。吻側視床下部は、FGF23CTPで処置された動物において転写物レベルの変化が最も明白な臓器である。表6は、この臓器において変化が最も顕著であった特定経路および細胞作用の遺伝子を反映している。特に、細胞構造遺伝子に対する影響は脳組織において特に目立っている。
表7(1臓器当たりの遺伝子リスト)から分かるように、他の臓器ではそれほど目立った変化を伴わないこれらの経路を代表する遺伝子がある。輸送分子および細胞内シグナリング分子をコードする遺伝子に対する効果は、ほとんどの臓器で見出される。細胞構造遺伝子に対する効果は脳組織において特に顕著である。表7に示されているのは、アフィメトリックスチッププローブセットID、p値および選択された602個の遺伝子の遺伝子の種類である。
IGFB2について血清レベルを測定したところ、肝臓を含む幾つかの臓器では転写レベルの減少に応じて減少していることが見出された。
分析。さらに血管形成は、C57/B6マウスにおける高酸素誘導血管増殖性網膜症モデル(Aiello FP et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:10457−61(1995)、Ozaki H et al., Am. J. Pathol. 156:697−707(2000))においてFGF23CTPにより阻害されることが示されている(実施例8参照)。高酸素から正常酸素状態へマウスを推移させることによる相対的虚血を通して誘発された網膜血管障害の増殖成分は、FGF23CTP(GPA006)ペプチドの硝子体内注射により著しく阻害される(p=0.018)。
吻側視床下部では、その血管形成およびサイクリング遺伝子に対する効果以外に、FGF23CTPは、グリア細胞および前駆体(悪性脳腫瘍)、上皮成長因子(EGF;Hoi Sang U et al., J. Neurosurg. 82:841−6(1995)、Wu CJ et al., Oncogene 19:3999−4010(2000))、Bax(Streffer JR et al., J. Neurooncol. 56:43−9(2002);Martin et al., (2001))、コネキシン43(Huang R et al., Cancer Res. 62:2806−12(2002)、Soroceanu L et al., Glia 33:107−17(2001))、PKR(Shir A および Levitzki A, Nature Biotechnology 20:895−900(2002))、NF1(Cichowski K および Jacks T, Cell 104:593−604(2001)、Gutmann DH et al., Hum. Mol. Genet. 10:3009−16(2001))の悪性増殖の病因において一定の役割を演じることが報告された幾つかの分子に影響を及ぼす。
ヒト以外の霊長類におけるインビボ遺伝子発現プロファイリングを通して統合された研究的薬理学
本発明の発見方法は、周知の薬理学的活性をもつ3種のペプチド:(1)ソマトスタチン類似体SOM230、(2)ゴナドトロフィン放出ホルモン(GnRH)、および(3)白血病阻害因子(LIF)を用いた「盲検」サル試験を通して確認された。それぞれの場合において、3種の「未知」ポリペプチドによる「盲検」試験を実施した。結果は、遺伝子発現解析チームが、4ヶ月以内に薬理学的活性、治療適応症および副作用の大部分、さらにはタンパク質の正体を確認できることを示すものであった。これらの第一の結果は、本発明発見方法が、薬剤の薬理学的機構および潜在的副作用を当業者が理解し、バイオマーカーおよび潜在的な新しい指標を選択する際に有用な形で利点をもたらすことを立証している。
カニクイザルにおいて選択されたヒトタンパク質またはペプチドを検証するため、雄2匹および雌2匹から成る1対照群および4処置群(すなわち、各々について3ペプチドおよびプラセボ)を、皮下経路によるオートロガス血清(すなわち、各動物自身の血清)に溶かしたタンパク質の毎日投与により2週間処置する。投与されたペプチドの量は、100μg/動物/日(合計5〜6mgのペプチド)であった。
アフィメトリックスU95チップ(各々ヒトゲノムの1/3を含む)における100を越える臓器の遺伝子発現プロファイリングを用いて、これらのヒト以外の霊長類における薬剤プロファイリングを解析した。さらに、十分な生化学および臨床化学スクリーニング(>60パラメーター)および組織病理学試験(約60臓器)を実施した。
次いで、データマイニング手順を使用した。4つの疑問に答えるようにデータを調査した:(1)ポリペプチドは、さらなる研究に値するか?(2)影響される生理学的経路は何か?(3)可能性のある適応症は何か?(4)ポリペプチドの正体の尤度は?
ペプチド1。ペプチド1はSOM230であった。SOM230(パシレオチド)は、以下の化学構造シクロ[4−(NH
2−C
2H
4−NH−CO−O)Pro−Phg−DTrp−Lys−Tyr(4−Bzl)−Phe]を有する:
ここで、Phgは、−HN−CH(C6H5)−CO−を意味し、Bzlはベンジルを意味する。PCT特許出願国際公開第02/10192号参照。SOM230は、ソマトスタチン受容体4(SSTR4)以外の5種のソマトスタチン受容体に対する結合親和力を有するソマトスタチン類似体である。SOM230は、他のソマトスタチン類似体に関して上記で開示したものを含む、幾つかの適応症に向けて開発された。Lewis I et al., J. Med. Chem. 46(12):2334−44(2003年6月5日);Weckbecker G et al., Endocrinology 143(10):4123−4130(2002);Kneissel M et al., Bone 28:237−250(2001);およびThomsen JS et al., Bone 25:561−569(1999)参照、これらについては出典明示により本明細書の一部とする。
SOM230は、インビボでの血漿半減期が長い、より強力なソマトスタチン類似体としてではあるが、承認されたサンドスタチン(Sandostatin、登録商標)適応症に向けて開発された。Lewis I et al., J Med Chem 46(12):2334−44(2003年6月5日);Weckbecker G et al., Endocrinology 143(10):4123−30(2002年10月)。他の類似体とは対照的に、SOM230は、SSTR4以外の全ソマトスタチン受容体と結合する。種々のソマトスタチン受容体に対する結合親和力は、SOM230に関して可能性のある新たな臨床適応症の範囲を特定する基礎であった。Bruns C et al., Eur J Endocrinol 143(補遺1):S3−7(2000);Bruns C et al., Eur J Endocrinol 146(5):707−16(2002年5月)。さらに、成長ホルモンおよびIGF−1調節に関して改良されたSOM230の活性ならびにインスリンおよびグルカゴン分泌に対するその異なる阻害効果故に他の可能性のある新たな適応症が示唆された。
ペプチド1(SOM230)の盲検投与後、以下の結果が得られた:
上表における下線部の結果を、さらなる研究用に確認した。
これらの結果に基づき、データマイニングチームは、投与されたペプチド1の正体について予測をした。
これらの結果に基づき、SOM230は、承認されたソマトスタチン神経内分泌適応症(例、先端巨大症、胃腸膵臓腫瘍)を処置するためのソマトスタチン類似体としてさらなる開発用に選択されたが、またこれは、膵臓内分泌病因をもつさらなる適応症、例えば糖尿病性血管障害および高インスリン血症に伴う病的肥満についての可能性も有する。IGF−1血清レベルが代用マーカーとして提案された。従って、SOM230について可能性のある他の適応症は、炎症(例、乾癬)、疼痛および免疫抑制(例、慢性拒絶)である。
ペプチド2。ペプチド2(ゴナドトロフィン放出ホルモン)の盲検投与後、以下の結果が得られた:
上表における下線部の結果を、さらなる研究用に確認した。
これらの結果に基づき、データマイニングチームは、投与されたペプチド2の正体について予測をした。
これらの結果に基づくと、投与されたペプチド2(ゴナドトロピン放出ホルモン)について予測される適応症は、ゴナドトロフィン放出ホルモン関連適応症または黄体形成ホルモン放出ホルモン関連適応症、例えば抗増殖性疾患(癌)、卵巣および精巣機能(視床下部低ゴナドトロピン性性機能低下、生殖能力制御および思春期遅延または停止状態/早発思春期)、および成長ホルモン欠乏症に関するものであった。
ペプチド3。ペプチド3(白血病阻害因子)の盲検投与後、以下の結果が得られた:
これらの結果に基づき、データマイニングチームは、投与されたペプチド2の正体について予測した。
これらの結果に基づくと、投与されたペプチド3についての予測される作用は、血小板、骨髄細胞および巨核球を増加させること、急性相タンパク質(例えばC−反応性タンパク質(CRP)およびハプトグロビン)を増加させること、脂質生成性(肥満および心臓血管リスクの処置に関する治療上の指示を伴う)を減少させること、トランスアミナーゼ、アルブミンおよび乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を減少させること、およびアルカリ性ホスファターゼ、骨シアロタンパク質(BSP)およびオステオカルシン(変形性関節症およびオステオポローシスの処置に関する治療上の指示を伴う)を減少させることである。
要約すると、データマイナーに提起された3つの疑問はデータマイナーによりほぼ完全に答えられ得る。3種のポリペプチドは全て、さらなる研究に値するものとして確認された。投与されたこれら3種のポリペプチドにより影響を受けることが知られている生理学的経路が全て発見された(例、LIFについては骨折、SOM230については胃腸管)。それらの判明した潜在的適応症の80%は発見され、中には新たに同定されたものもあった。
サルにおけるSOM230誘導遺伝子発現プロファイリング
緒論および要約。14日間治療用量以下の用量のSOM230で処置したサルの組織を用いて、マイクロアレイ遺伝子発現検定法を実施した。検定結果を分析することにより、可能性のある治療適用性との関係を有するSOM230の作用モードを確認した。SOM230の説明については、上記実施例参照。
調べたサル組織(甲状腺、褐色脂肪、下垂体、膵臓、肝臓、腎臓、脾臓)は全て、ソマトスタチン受容体(SSTR)への天然ソマトスタチン14(SST−14)およびソマトスタチン28(SST−28)の結合により調節された遺伝子における変化を示した。転写物プロファイルは、成長ホルモン/インスリン様増殖因子1(GH/IGF−1)、グルカゴン/インスリン軸および細胞増殖に対する公知ソマトスタチン作用を反映していた。しかしながら、化合物は、下垂体および腎臓において他の関連遺伝子、例えばインスリン様増殖因子2(IGF−2)の転写物レベルに著しく影響を及ぼした。タンパク質生合成における変化が容易に接近できる組織、例えば血液で反映されるならば、これは薬剤効力の候補生物マーカー(バイオマーカー)であり得る。成長因子、免疫系細胞および心臓血管および腎機能に対するソマトスタチンおよびアゴニストの他の周知効果もまた、SOM230に続くこれらのクラスの遺伝子のプロファイルにおける変化により反映されていた。
組織の起源および処理。雄および雌カニクイザルにSOM230(100μg/動物/日)または賦形剤を14日間皮下投与した。15日目、全動物を殺し、RNA抽出用組織を瞬間冷凍し、処理まで−80℃で保った。
主に完全長ヒト遺伝子に応答指令信号を送る12600を越えるプローブセットおよびある程度の対照プローブセットを含む、HG−U95A遺伝子発現プローブアレイ(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア、米国)の手段により、RNA発現プロファイリングを実施した。製造業者の推奨に従って、検定法を実施した。簡単に述べると、酸性グアニジニウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出(TRIzol(登録商標)、インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)により各冷凍組識片から全RNAを得た。次いで、全RNAをアフィニティー樹脂(Rneasy(登録商標)、キアゲン)で精製し、定量した。T7−(dT)24DNAオリゴヌクレオチドプライマーの存在下、Superscript(登録商標)チョイスシステム(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ、カールスバッド、カリフォルニア、米国)を用いて、約5μg完全長全RNAの出発量で2本鎖cDNAを合成した。合成後、cDNAを、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出およびエタノール沈澱により精製した。次いで、ビオチニル化リボヌクレオチドの存在下、BioArray(登録商標)ハイ・イールドRNAトランスクリプト・ラベリング・キット(ENZO、ファーミングデール、ニューヨーク、米国)を用いて、精製cDNAをインビトロ転写し、ビオチン標識cRNAを形成させた。次いで、標識cRNAを、アフィニティー樹脂(Rneasy(登録商標)、キアゲン)で精製し、定量し、フラグメント化した。約10μg量の標識cRNAを、45℃で約16時間発現プローブアレイとハイブリダイゼーションさせた。次いで、アレイを洗浄し、GeneChip(登録商標)Fluidics Workstation400(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア、米国)を用いて、ストレプトアビジン−フィコエリスリン(モレキュラー・プローブズ、)で2回染色した。次いで、共焦レーザースキャナー(GeneArray(登録商標)スキャナー、アギレント、パロアルト、カリフォルニア、米国)を用いて、アレイを2回走査することにより、一走査画像が得られた。得られたこの「.dat−file」を、MAS4プログラム(アフィメトリックス)を用いて「.cel−file」へ処理した。「.cel−file」を捕捉し、アフィメトリックスのGeneChip(登録商標) Laboratory Information Management System(LIMS)へロードした。LIMSデータベースを、全プローブセル(CELファイル)についての平均強度をOracleデータベース(NPGN)へダウンロードさせ得るネットワークファイリングシステムを介してUNIX Sun Solarisサーバーにつなぐ。150の「標的強度」を用いて、未処理データを発現レベルに変換した。データを品質管理についてチェックし、解析用のGeneSpring(登録商標)ソフトウェア4.2.4(シリコン・ジェネティクス、カリフォルニア、米国)へロードした。
ヒトアフィメトリックスHGU95Av2チップでは、個々の遺伝子についてのプローブセットは、20オリゴヌクレオチド対を含んでおり、各々「完全マッチ」25量体および単一塩基が「完全」マッチオリゴヌクレオチドとは異なる「ミスマッチ」25−量体により構成されている。プローブ標識、ハイブリダイゼーション、およびレーザー走査後、所定のプローブのオリゴヌクレオチド対により測定されるシグナル強度の差異の平均をとることにより発現レベルを評価した(AvgDiff値)。比率の変化および方向を、選択された遺伝子について、対照および処置群間のAvgDiff値の差異から計算した。
SOM230により影響を受ける遺伝子を同定するため、データセットを最初にフィルタリングにかけることにより、解析の第一波で、実験ノイズが高い場合に値が系統的に低い発現範囲に含まれる遺伝子を排除する(検定ポイントの最小数の繰返しに対応する若干の検定法において少なくとも80)。選択の第2ラウンドでは、0.05の閾値p−値(t−検定に基く)により、2成分誤差モデル(グローバル・エラーモデル)に基く処置および対照群間での差異を同定し、そして可能な場合、多重仮説検定(BenjaminiおよびHochberg偽発見率)についての補正を段階的に減少させた。ある特定遺伝子を保存するかまたは拒絶するかの決定は、比較および統計アルゴリズムにより同定された数値変化と、共通の生物学的テーマを指し示す他のモジュレーションされた遺伝子との関係の連結に基づいていた。関連性のある科学文献の検討を通して分析者がこの関係の重要さを評価した。
本明細書で記載されている検定分析について、(1)特記しない場合、発現の増加および減少は、RNA発現レベルに関するものであった。(2)同一遺伝子を示す多数のプローブがある場合には、センス標的について設計されたプローブセットが有利であった。(3)遺伝子発現の変化は、個々の遺伝子が表す経路、細胞活性または成分が影響され得ることを示していた。機能的な潜在的関連性についての理解は、転写物レベル変化の生物学的状況に関する入手可能な情報(遺伝子機能、生理学的変化、他の遺伝子変化、組織、化合物)に依存している。RT−PCRを用いて、mRNAレベルの絶対変化の範囲を同定するが、この方法では一般に、転写物レベル変化の関連性に関する情報がそれ以上追加されることはない。
1チップについて12600個のの遺伝子の中で、約100個の遺伝子は、特定組織における化合物サインを反映することが見出された。明確にするため、それらを種々のクラスに分割し、重複は多いが、下表における機能的範ちゅうにさらに分割した。
これらの結果は、幾つかのシグナル伝達経路が影響を受けたことを示している。それらは、ホスファチジルイノシトール/PKC/ホスホリパーゼ/カルシウム−カルシニューリン−カルモジュリン経路、Ras/MAPKキナーゼ/ERKキナーゼ依存性経路、JAK/STAT経路、および依存的経路をもつアデニル酸/グアニル酸シクラーゼを含んでいた。細胞表面受容体についての変化には、多数のGプロテインカップリング受容体、成長因子についての受容体およびグルタミン酸受容体が含まれた。ATP−依存性輸送タンパク質の変化には、イオンチャンネルおよび関連タンパク質が関与した。化合物はまた、神経メディエーター/神経モジュレーター、膵臓および胃腸分泌、ホルモン、細胞骨格タンパク質および酵素/触媒に影響を与えた。
下垂体において幾つかのSSTRシグナリング経路を反映する遺伝子の例を表21に示す。一次遺伝子リストから選択された遺伝子は、一連のフィルタリングおよび統計アルゴリズム(t−検定、p値:0.05)により作成された。数値は、括弧間の観察値の範囲での各検定に関する関連性のあるプローブセットのAvgDiff(上記参照)に対応する。この解析において特に興味深いのは、SSTRへの天然ペプチド、SST−14およびSST−28の結合と密接に関連することが知られている分子に関する転写物レベル変化であった。
成長ホルモン/インスリン様増殖因子−1(GH/IGF−1)およびグルカゴン/インスリン軸に対する効果(Macaulay VM, Br J Cancer 65:311−20(1992);Pollak MN および Schally AV, Proc Soc Exp Biol Med 217:143−52(1998))は、幾つかの臓器における転写物レベル変化で反映されていた。結果を表22に示す。IGF−1転写物レベルの予想された変化以外に、血液中で反映されるならばSOM230活性の生物マーカーとして有用であり得る(下垂体および腎臓において)インスリン様増殖因子−2(IGF−2)に対する効果も認められた。上記表21に従って遺伝子を選択した。
興味の対象である他の遺伝子でSOM230による影響を受けたのは、成長因子(PDGF、FGF、EGF、TGFβ)の転写物レベル、腫瘍増大および拡散に関与するそれらの受容体および血管形成因子(PDGF、VEGF、トロンボスポンジン)であった(Woltering EA et al., New Drugs 15:77−86(1997))。ソマトスタチンおよび類似体についても報告されており、変化を被ったのは免疫に関与する遺伝子、すなわちサイトカイン(IL−1、TNF、IFN)、TおよびB細胞発生および機能のレギュレーター(CD2抗原、IL−2受容体、B−リンパ球チロシンキナーゼ、IL−2誘導性T細胞キナーゼ、p56lck、RAG1、TCRζ鎖前駆体、RAG2、FLT3リガンド)(van Hagen PM et al. Eur J Clin Invest 24:91−9(1994))、並びに血圧コントロールおよび利尿に関与する遺伝子、すなわち心房ナトリウム排泄増加性ペプチドおよびその受容体グアニリルシクラーゼA、アルギニンバソプレシンおよびその受容体(Aguilera G et al., Nature 292:262−3(1981);Aguilera G et al., Endocrinology 111:1376−84(1982);Ray C et al., Clin Sci (Lond)84:455−60(1993);Cheng H et al., Biochem J 364:33−9(2002))であった。脂肪貯蔵の制御に関与する特異的遺伝子は、アドレナリン作用性β3受容体である(Bachman E et al., Science 297:843−45(2002))。
上記遺伝子のタンパク質産物は、SOM230の生物学的活性の代用マーカーとして、特に下垂体および腎臓でのIGF−2に関する発見に有用である。
結論として言えば、治療有効量より少量のSOM230で処置したサル組織の遺伝子プロファイリングは、ソマトスタチンについて知られているシグナリングおよびエフェクター経路の感度の良い同定方法である。このアゴニストについての明白な転写サインの発見は、サンドスタチン(登録商標)により誘導される遺伝子発現変化との比較を明らかにしている。
サルにおけるサケカルシトニンおよびPTS893、薬理ゲノム学的探査試験マイクロアレイ遺伝子発現解析
カルシトニンは、カルシウムホメオスタシスの内在性レギュレーターであり、高カルシウム血関連疾患処置用の抗吸収剤として使用され得る。例えばサケおよびウナギカルシトニンを含む様々なカルシトニンが市販されており、例えばパジェット病およびオステオポローシスの処置では常用されている。米国特許第5733569および5759565号参照、これらについては出典明示により本明細書の一部とする。また、米国特許第5719122、5175146および56986721号、および米国特許出願第003015815号も参照。カルシトニンの一バージョン(ミアカルシン(Miacalcin)、(登録商標))は、鼻用スプレーとして利用可能である。ミアカルシン(登録商標)(カルシトニン−サケ)鼻スプレーの投与に関する情報は、ミアカルシン(登録商標)添付文書(ノバルティス、2002年11月)で入手可能である。
副甲状腺ホルモン(PTH)は、84アミノ酸のポリペプチドである。副甲状腺ホルモンは、骨リモデリングおよびCa2+ホメオスタシスを調節する。副甲状腺ホルモンはまた、破骨細胞分化および活性の既知パラクリンアクチベーターである。PTS893は、内在性副甲状腺ホルモンの類似体であり、化学に不安定なある種の部位が特定残基での適切なアミノ酸置換によりN−末端副甲状腺ホルモンフラグメント内で排除された結果、安定した生物活性ヒト副甲状腺ホルモンフラグメントが得られる。PTS893[SDZ PTS893;Leu8、Asp10、Lys11、Ala16、Gln18、Thr33、Ala34ヒトPTH1−34[hPTH(1−34)]]は、骨量および生体力学特性を高める34アミノ酸副甲状腺類似体である。Kneissel M et al., Bone 28:237−50(2001年3月);Stewart AF et al., J. Bone. Miner. Res. 15(8):1517−25(2000年8月);Thomsen JS et al., Bone 25(5):561−9(1999年11月)。ヒト副甲状腺ホルモンのN−末端フラグメントは、hPTH(1−34)OHムテインおよびhPTH(1−38)OHムテインを含む。PTS893は、副甲状腺ホルモンの少なくとも最初の27N−末端アミノ酸単位を含む。好ましい副甲状腺ホルモン誘導体は、副甲状腺ホルモン配列の以下の位置:8−11、13、16−19、21、22、29−34、特に8−11、16−19、33および/または34のうちの一つまたはそれ以上に配置された少なくとも一アミノ酸単位を含むものである。これらの化合物は、天然PTHおよびそのN−末端フラグメントのレベルと同等またはそれより上のレベルであるインビボおよびインビトロの両方での望ましい骨形成特性を呈する。欧州特許EP0672057、公開PCT特許出願WO94/02510;Kneissel M et al., Bone 28:237−50(2001年3月);Stewart AF et al., J Bone Miner Res 15(8):1517−25(2000年8月);Thomsen JS et al., Bone 25(5):561−9(1999年11月)参照。
緒論および要旨。この実施例の目的は、50μg/動物/日でのサケカルシトニン(sCT)および5μg/動物/日でのPTS893による2週間皮下処置後のカニクイザルにおける遺伝子発現変化を評価することにより、それらの効果を伝達する作用機構を解明し、治療適応症のバイオマーカーを同定することであった。この実施例は、霊長類における多臓器−遺伝子−プロファイリング解析によりサケカルシトニンおよび副甲状腺ホルモン類似体の作用の分子機構を全体的に説明する初めての解析であると考えられる。これはまた、サケカルシトニンおよびPTS893によるホルモン伝達される骨リモデリングの作用の分子機構を説明する初めての遺伝子プロファイリング解析であると考えられる。
この実施例では、サケカルシトニンおよびPTS893の両方が、間葉細胞機能の直接的なオートクリン、パラクリンおよび内分泌調節に影響する遺伝子、例えばトランスホーミング成長因子ベータ(TGF−β)、インスリン様増殖因子(IGF)、骨形態発生タンパク質(BMP)および血管内皮増殖因子(VEGF)に対するモジュレーション効果を有することが見出された。両化合物とも、細胞外マトリックス成分の合成および分解を調節する。サケカルシトニンはまた、エストロゲン受容体およびステロイド生成因子を調節し、PTS893は、ステロイド/甲状腺受容体ファミリーの核受容体に対して強いアップレギュレーションをもたらした。従って、これらのデータは、同化促進剤としてのカルシトニンの役割を裏付けている。
さらに、アメロゲニン、象牙質およびエクトヌクレオチドピロホスファターゼにおいて変化が観察されたことから、サケカルシトニンおよびPTS893はまた、細胞外マトリックスの鉱化作用の局面に影響を与えた。
さらに、PTS893は、サイトカインおよびRANKリガンドを通じた、破骨細胞分化および活性のパラクリン活性化の伝達に対する効果を示した。
単一療法に関して、サケカルシトニンおよびPTS893を組合わせて投与するという事実に起因すると考えられる遺伝子発現プロファイリングの顕著な差異は無かった。
すなわち、この実施例における遺伝子プロファイリング解析により、プロテインG結合受容体刺激により誘発される、カルシトニンおよび副甲状腺ホルモンシグナル伝達に関与する経路およびサイクリンで観察された変化により示された細胞周期に対するそれらの影響の再構築は可能となった。
動物。各々9%オートロガス血清含有リン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解した、サケカルシトニン(sCT)、PTS893または2者の組合わせにより2週間皮下処置を実施した。溶媒は、対照群用の賦形剤として使用された。
この解析に使用した動物は、モーリシャス、ポートルイスのCentre de Recherches Primatologiques により供給された、カニクイザル(マカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis))であった。動物2匹を1群および性別につき使用した。処置期間の開始時、動物は少なくとも24ヶ月令、体重約3kgであった。動物を標準的動物愛護条件下に保った。死亡数、食物消費および臨床所見について動物を毎日調べた。体重を週に1回記録した。用量は、0μg/動物/日(対照として)、50μg/動物/日のサケカルシトニンおよび5μg/動物/日のPTS893であった。
インビボ試験。顕著な組織病理学的変化は観察されなかった。サケカルシトニン群における8〜12%の範囲の体重減少以外、関連性のある変化は観察されなかった。体重減少と必ずしも一致するわけではないが、食物消費の減少もまた観察された。
サケカルシトニンを投与された動物は、8〜12%の範囲で体重の減少を呈したが、これは食物消費の減少に起因すると考えられ得る。食欲不振効果は、アミリン受容体を通して作用するサケカルシトニンについて以前に報告されている:Eiden S et al., J. Physiol. 541(pt3):1041−1048(2002);Lutz TA et al., Peptides 21(2):233−8(2000)。しかしながら、この場合毒性の徴候は全く観察されなかった。この実施例で観察されたホルモンおよび脂質変化は、結果的な代謝適応性に関連しているとほぼ考えられる。
心電図(ECG)または血圧において関連性のある変化は全く観察されなかった。
血液試料採取。動物を一晩絶食させたが、水は自由に与えた。血液試料を末梢静脈から採取した。標準血液および臨床化学的分析を予備試験中1回および処置期間の最後に実施した。臨床化学試験について記載したのと同じ間隔で各動物から血液試料を集めた。ホルモン測定についての分析時まで血清試料を急速冷凍(約−80℃)した。
臨床化学およびホルモン測定。対照を含む全試験動物において軽い貧血が観察された。これは、血液試料採取の反復に起因していたため、関連性があるとはみなされなかった。
d−6、d7およびd13は、投薬開始日に対して−6日、7日および13日目であることを示す。
d−6、d7およびd13は、投薬開始日に対して−6日、7日および13日目であることを示す。
d−8、d7およびd13は、投薬開始日に対して−8日、7日および13日目であることを示す。
d−8、d7およびd13は、投薬開始日に対して−8日、7日および13日目であることを示す。
実施された標準臨床化学試験の中で、リンおよび/またはマグネシウムの軽微から中等度の減少およびトリグリセリドの中等度から顕著な減少が、サケカルシトニンおよびPTS893を投与された群で見られた。
d−6、d7およびd13は、投薬開始日から−6日、7日および13日目であることを示す。
d−6、d7およびd13は、投薬開始日から−6日、7日および13日目であることを示す。
d−6、d7およびd13は、投薬開始日から−6日、7日および13日目であることを示す。
d−8、d7およびd13は、投薬開始日から−8日、7日および13日目であることを示す。
d−8、d7およびd13は、投薬開始日から−8日、7日および13日目であることを示す。
d−8、d7およびd13は、投薬開始日から−8日、7日および13日目であることを示す。
実施された標準尿検査では、関連性のある変化は観察されなかった。
d−6、d−5およびd13は、投薬開始日から−6日、−5日および13日目であることを示す。
d−6、d−5およびd13は、投薬開始日から−6日、−5日および13日目であることを示す。
d−6、d−5およびd13は、投薬開始日から−6日、−5日および13日目であることを示す。
d−8、d−7およびd13は、投薬開始日から−8日、−7日および13日目であることを示す。
d−8、d−7およびd13は、投薬開始日から−8日、−7日および13日目であることを示す。
d−8、d−7およびd13は、投薬開始日から−8日、−7日および13日目であることを示す。
サケカルシトニン群は、血清ソマトメジンの中等度の減少を呈した(S.MED、表32および42参照)。
d−6、d7およびd13は、投薬開始日から−6日、7日および13日目であることを示す。
d−6、d7およびd13は、投薬開始日から−6日、7日および13日目であることを示す。
d−6、d7およびd13は、投薬開始日から−6日、7日および13日目であることを示す。
d−8、d7およびd13は、投薬開始日から−8日、7日および13日目であることを示す。
d−8、d7およびd13は、投薬開始日から−8日、7日および13日目であることを示す。
d−8、d7およびd13は、投薬開始日から−8日、7日および13日目であることを示す。
組織試料採取。ペントタール(登録商標)の静脈内注射により誘導した深い麻酔により動物を殺し、全採血を行った。関連性のある組織を全て、組織病理学および遺伝子発現プロファイリング用に試料採取した。以下の組織試料を分析用に処理した:肝臓、腎臓、下垂体、筋肉、骨、十二指腸、脾臓および気管。組織病理学用標本を、リン酸緩衝10%ホルマリンに固定した。10%蟻酸により骨から鉱物質を除去した。組織標本をパラプラスト(Paraplast、登録商標)に埋封し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色するため4ミクロンの薄片に切断した。遺伝子発現プロファイリング用試料を、切断直後に液体窒素中で急速冷凍し、ドライアイス上、続いて約−80℃の急速冷凍庫でさらなる使用時まで貯蔵した。遺伝子発現プロファイリング用に選択した組織を全て、組織病理学的に調べた。
組織病理学。遺伝子発現プロファイリング用に選択された組織の組織病理学検査は、正常な範囲の偶発的病変を呈しており、それらは病変の重症度および分布に関して全処置群における対照とは異なっていなかった。
サケカルシトニンを投与した雌の腎臓において炎症および再生変化の僅かに高い発生が観察された。40年のカルシトニン治療的使用後に腎臓毒性の記録は存在しないため、これらの変化は関連性があるとはみなされなかった。
骨片をオステオネクチン、オステオポンチンおよびオステオカルシンで染色し、組織病理学的に評価した。骨組織の組織形態計測を、骨吸収および合成(類骨合成)のパラメーターに関して実施した。
脛骨のオステオネクチン、オステオポンチンおよびオステオカルシン染色は、1(対照)および2(サケカルシトニン)群間において差異を全く示さなかった。オステオネクチンは、重症の非処置関連病理学的状態(重症の亜急性骨端離開)故に動物番号2553の骨端成長軟骨板の大きな腫脹および変質を呈した。
骨組織の組織形態計測を実施することにより、骨吸収および骨合成(類骨合成)に関するパラメーターを測定した。
結果(表34および35参照)は、サケカルシトニンが、椎骨ではなく、脛骨において小柱体積および厚さを約17%増加させることを示していた。PTS893は、椎骨(V)ではなく、脛骨(T)において皮質の厚さを減少させ(18%)、皮質の有孔性を増加させた(54%)。対照的に、PTS893は、類骨体積(37%T、213%V)および表面(49%T、37%V)の増加、並びに脛骨および椎骨の両方における骨芽細胞表面の増加(40%T、24%V)をそれぞれ誘導した。
BV/TV 小柱骨体積; Tb. Th. 小柱厚さ; Tb. N. 小柱数; Tb. Sp. 小柱分離; Ct. Por. 皮質有孔性; Ct, Th. 皮質厚さ; OS/BS 類骨表面; OV/BV 類骨体積; ES/BS 変質表面; Obs/BS 骨芽細胞表面.
組織形態計測は、PTS893により誘導される類骨合成の増加以外は、脛骨および椎骨間で一致する結果を示した。この効果は、不連続方法で投与したときの副甲状腺ホルモンについては記録で十分に立証されている。
RNA抽出および精製。遺伝子発現プロファイリング用に組織のセットを選択した。これらのセットは、腎臓、骨、筋肉、十二指腸、下垂体および肝臓からの試料を含んでいた。簡単に述べると、各冷凍組織片から酸性グアニジニウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出(トリゾール(登録商標)、インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ、カールスバッド、カリフォルニア、米国)により全RNAを得、次いで全RNAをアフィニティー樹脂(RNeasy(登録商標)、キアゲン)で製造業者の使用説明書に従って精製した。λ=260nm(A260nm)での吸光度により全RNAを定量し、A260nm/A280nm比により純度を評価した。RNA分子の完全さを、非変性アガロースゲル電気泳動により確認した。RNAを分析時まで約−80℃で貯蔵した。個々の各RNA試料の一部を、リアルタイムPCR手段による決定的遺伝子の解析用に保存した。
ハイブリダイゼーション検定法。GeneChip(登録商標)発現プローブアレイ手段による転写物プロファイリングを、GeneChip(登録商標)システムの製造業者(GeneChip Expression Analysis Technical Manual、アフィメトリックス・インコーポレイテッド、サンタクララ、カリフォルニア、米国)の推奨に従って実施した。HG−U95Av2 GeneChip(登録商標)発現プローブアレイ(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア、米国)を使用した。T7−(dT)24DNAオリゴヌクレオチドプライマーの存在下、スーパースクリプト・チョイス・システム(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ)を用いて約5μgの出発量の完全長全RNAにより2本鎖cDNAを合成した。合成後、cDNAを、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出およびエタノール沈澱により精製した。次いで、BioArray(登録商標)高収率RNA転写物標識キット(ENZO)を用いて、精製cDNAをインビトロ転写することにより、ビオチン標識cRNAを形成させた。次いで、標識cRNAを、アフィニティー樹脂(Rneasy(登録商標)、キアゲン)で精製し、定量し、フラグメント化した。約10μg量の標識cRNAを、45℃で約16時間発現プローブアレイとハイブリダイゼーションさせた。次いで、アレイを洗浄し、GeneChip(登録商標)Fluidics Workstation400(アフィメトリックス)を用いて、ストレプトアビジン−フィコエリスリン(モレキュラー・プローブズ、)で2回染色した。次いで、共焦レーザースキャナー(GeneArray(登録商標)スキャナー、アギレント)を用いて、アレイを2回走査することにより、一走査画像が得られた。
得られたこの「.dat−file」を、マイクロアレイ・アナリシス・スイート・バージョン4(MAS4)プログラム(アフィメトリックス)を用いて「.cel−file」へ処理した。「.cel−file」を捕捉し、アフィメトリックスのGeneChip(登録商標) Laboratory Information Management System(LIMS)へロードした。LIMSデータベースを、全プローブセル(CELファイル)についての平均強度をOracleデータベースへダウンロードさせ得るネットワークファイリングシステムを介してUNIX Sun Solarisサーバーにつなぐ。150の「標的強度」を用いて、未処理データを発現レベルに変換した。表示された数値は、所定の転写物配列についてのプローブセットに含まれるプローブ対のシグナル強度の加重平均である(AvgDiff値)。データを品質についてチェックし、解析用のGeneSpring(登録商標)ソフトウェア4.2.4および5(シリコン・ジェネティクス、カリフォルニア、米国)へロードした。
データ分析。シリコン・ジェネティクスのソフトウェアパッケージGeneSpringバージョン4.2.1および5により、データ分析を実施した。20未満の平均差値は20に設定された。これらのプログラムにおける様々なフィルタリングおよびクラスタリングツールを用いて、データセットを探査し、細胞および組織機能の改変を知らせ、化合物の作用モードに関する作業仮説の確立に使用され得る転写物レベル変化を同定した。
アップまたはダウンレギュレーションとしてみなす閾値範囲は、この試験の生物学的解釈の範囲内で測定された。
データセットの情報内容は、数値変化と生物学的情報を連結させたものである。ある特定遺伝子が関連性を有するとみなす決定は、比較および統計アルゴリズムにより同定された数値変化と、共通の生物学的テーマを指し示す他のモジュレーションされた遺伝子との関係の連結に基づいていた。関連性のある科学文献の検討を通して分析者がその関係の重要さを評価した。
本明細書で報告されている増加および減少は、特記しない場合、転写物存在量に関するものである。
遺伝子発現プロファイリング。50μg/動物/日のサケカルシトニンが投与された群において、多臓器比較遺伝子プロファイリング解析を実施した。解析用に選択された臓器は、肝臓、腎臓、下垂体、骨格筋、骨、十二指腸、脾臓および気管であった。
リアルタイムPCR。DNAマイクロアレイデータに基づき、転写物のセットを、リアルタイムPCR(RT−PCR)による定量分析用に選択した。
簡単に述べると、2本鎖DNAの間に入り込むSyBrグリーン色素を利用する。PCR産物の蓄積は、SyBrグリーン色素の蛍光の増加をモニターすることにより直接検出される。一定数のサイクル後に蓄積されたPCR産物の量ではなく、PCR産物の増幅が最初に検出されるとき、反応はサイクル中の特定の時間であることを特徴とする。核酸標的の出発コピー数が高いとき、蛍光の顕著な増加が早く観察される。
各RNA試料から、アプライド・バイオシステムズのキット(アプライド・バイオシステムズ#N808−0234)を用いて、製造業者の推奨に従ってcDNAを調製した。以下の通り、SyBrグリーン・ユニバーサルPCRマスターミックス(アプライド・バイオシステムズ#4309155)を用いて、PCR混合物を調製した:5μlのcDNAテンプレート、400nMの各プライマー、0.2mMのデオキシヌクレオチド三リン酸、1mMのMgCl2および0.5UのTaq DNAポリメラーゼ、5μlのSyBrグリーンPCR緩衝液および最終量を50μlにするリボヌクレアーゼ不含有の水。95℃で10分の1ステップ後、ABIプリズム7700配列検出システムを用いて、PCRを実施し、ステップ−サイクルプログラムを合計40サイクルの要領で実施した:95℃で30秒間、60℃で1分間。cDNA試料の代わりに水とのPCR反応混合物である、陰性対照を含ませた。
最初のテンプレート濃度は、閾値周期に基いて決定された。閾値周期は、蛍光がバックグラウンドを越えて最初に検出されるPCRサイクルであり、試料中に存在する標的コピー数と逆比例することが示された。絶対標準に対して未知標的濃度を計算し、確認されている内在性対照、例えばハウスキーピング遺伝子(β−アクチン)に正規化することにより、定量を実施した。ベータ−アクチンに関する分子数で割った興味の対象である遺伝子に関する分子数間の割合が算出されると、結果は対照のパーセンテージとして提示される。
DNAマイクロアレイデータに基づき、以下の転写物のセットをRT−PCRによる定量分析用に選択した:接着受容体CD44、アンギオポイエチン、骨形態形成タンパク質5、炭酸アンヒドラーゼII、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質、カテプシンK、オステオポンチン、プレ−プロ−アルファ−2 I型コラーゲン、Spi−BおよびY−ボックス結合タンパク質。
RT−PCRは、骨形態形成タンパク質5、炭酸アンヒドラーゼII、カテプシンK、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質、プレ−プロ−アルファ−2 I型コラーゲン、Spi−BおよびY−ボックス結合タンパク質についての場合のように、遺伝子プロファイリング解析で観察された変化をほとんどの場合に確認した。しかしながら、接着受容体CD44、アンギオポイエチン−1およびオステオポンチンの発現レベルにおいて変化は観察されなかった。
解析。カルシトニンは、破骨細胞の分化、生存および吸収活性に対して効果を発揮することにより、破骨細胞活性を減少させることが知られている。Pondel M, Intl. J. Exp. Pathol. 81(6):405−22(2000)。これらの効果は、多臓器遺伝子プロファイリングにより再構築され得る(表39)。
サケカルシトニン処置動物における多臓器遺伝子発現プロファイリング。発現の変化が見られた臓器が表示されている。B=骨、K=腎臓、M=筋肉、P=下垂体、L=肝臓、T=気管。
PU.1は、破骨細胞生成の最初の段階に関与する。Tondravi MM et al., Nature 386(6620):81−4(1997)。CSF−1は、マクロファージ成熟に不可避である。それは、初期は骨細胞前駆体におけるその受容体c−fmsに結合することにより、生存および分化に要求されるシグナルをもたらす。Teitelbaum SL., Science 289(5484):1504−1508(2000)。
興味深いことに、PTS893はまた、破骨細胞分化および生存に関与する遺伝子、SPII、CSF−IおよびMMDを調節する。この破骨細胞調節は、以前には報告されていなかった。
サケカルシトニンは、破骨細胞形成および骨吸収を間接的に誘導する破骨細胞により生成される細胞内タンパク質である、破骨細胞刺激因子(OSF)をコードする遺伝子の発現を調節することが示された。Reddy S et al., J. Cell Physiol. 177(4):636−45(1998)。これは、破骨細胞機能の調節におけるサケカルシトニンのオートクリン効果を示すもので、このことは本明細書で初めて報告されていることである。
さらに、サケカルシトニンは、骨芽細胞におけるシスタチン発現の調節を通して、破骨細胞吸収活性のパラクリン調節を発揮すると思われる。炭酸アンヒドラーゼI、II、H+−ATPアーゼおよびカテプシンKは、骨鉱質の溶解およびマトリックス分解についての主要エフェクターである。Blair HC et al., Biochem. (2000)。チューブリンおよびPAK4遺伝子の調節は、破骨細胞運動性PAK4に対するカルシトニンの効果との関連を有し得る。Zaidi M et al., Bone 30(5):655−63(2002);Jaffer ZM および Chernoff J, Int. J. Biochem. Cell Biol. 34(7):713−7(2002)。
これらの結果は、骨芽細胞機能の直接的な、オートクリン、パラクリンおよび内分泌部調節に影響する遺伝子に対するカルシトニンのモジュレーション効果を示している(表40)。これらのデータは、骨同化効果がカルシトニンに起因するという仮説を裏付けている。
サケカルシトニン処置動物における多臓器遺伝子発現プロファイリング。発現の変化が見られた臓器が表示されている。B=骨、K=腎臓、M=筋肉、P=下垂体、L=肝臓、T=気管。
成長因子の3ファミリー、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)、インスリン様増殖因子(IGF)および骨形態形成タンパク質(BMP)は、骨形成の主要局所レギュレーターであるとみなされている。骨形態形成タンパク質は、初期前駆体骨細胞複製および骨芽細胞始動反応に対してそれらの主要効果を有すると考えられている。対照的に、TGB−βは、始動骨細胞複製および骨芽細胞マトリックス生成の最も強力な誘導物質であると考えられており、IGFは、両因子の効果を統合し、拡張すると思われる。McCarthy TL et al., Crit. Rev. Oral Biol. Med. 11(4):409−22(2000)。これらの結果は、サケカルシトニンおよびPTS893の両方が骨代謝に関与するこれらの局所的および全身的因子を調節できるという事実を裏付けている。サケカルシトニンが、骨芽細胞におけるTGF−β−依存的シグナリングを遮断する、α2−HS糖タンパク質(AHSG)を調節するという事実もまたこの役割を裏付けている。AHSGを欠くマウスは、成長板欠損、年齢による骨形成の増加、およびサイトカイン依存的骨形成の向上を示す。Szweras M et al., J. Biol. Chem., 277(22):19991−19997(2002)。
サケカルシトニンおよびPTS893はまた、血管内皮増殖因子(VEGF)をコードする遺伝子の発現をモジュレーションすることが示された。VEGFは、正常および病理学的血管形成においてある重要な役割を演じることが知られている。軟骨内骨化中における有効な骨形成に関する血管形成の決定的な役割は、記録により十分に立証されている。VEGFは、内皮細胞を刺激して骨同化成長因子を産生させることにより、骨芽細胞の増殖および分化を間接的に誘導する。Wang DS et al., Endocrinology 138(7):2953−62(1997)。さらに、VEGFは、一次ヒト骨芽細胞の走化性遊走を刺激することから、骨形成およびリモデリングにおける機能的役割が示唆されている。Mayr−Wohlfahrt U et al., Bone 30(3):472−7(2002)。
骨吸収および形成の両方の伝達についての骨芽細胞に対する副甲状腺ホルモンの効果は、広範に報告されている。Swarthout JT et al., Gene 282(1−2):1−17(2002)。本発明では、破骨細胞分化および活性のパラクリン活性化を伝達する、サイトカイン様インターロイキン6(IL−6)に対するPTS893の効果を確認することが可能であった。Greenfield EM et al., Life Sci. 65:1087−102(1999)。PTS893はまた、核受容体(ステロイド/甲状腺ファミリー)に対して強いアップレギュレーションを誘発した。
カルシトニンおよび副甲状腺ホルモン受容体は両方ともG−プロテイン受容体サブファミリーに属する。受容体刺激後、シグナル変換は、カルシトニンの場合にはアデニル酸シクラーゼ/cAMP/プロテインキナーゼ、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼD、およびMAPK(後期エフェクターとして)経路により、そして副甲状腺ホルモンの場合にはアデニル酸シクラーゼおよびホスホリパーゼCにより伝達される。遺伝子プロファイリング解析によりこれらの経路が再構築され得たことから、処置によりモジュレーションされ、シグナル伝達経路の異なるレベルで局在している遺伝子が示された。
サケカルシトニン処置動物における多臓器遺伝子発現プロファイリング。発現の変化が見られた臓器が表示されている。B=骨、K=腎臓、M=筋肉、P=下垂体、L=肝臓、T=気管。
骨形態形成タンパク質(BMP)は、Smadタンパク質を通して骨芽細胞増殖および分化を制御する。抗増殖性タンパク質の新生ファミリーの一員であるTobは、骨芽細胞におけるBMP/Smadシグナリングの負のレギュレーターである。Smad経路およびそれらのレギュレーターの一つとしてのTobはまた、sCTおよびPTS893処置によりモジュレーションされる遺伝子として同定されており、骨リモデリングのBMP調節に対する両化合物の仮定された効果と一致している。この状況の中で、サイクリンおよびサイクリン関連タンパク質における変化も観察され得るため、両化合物とも細胞周期に対して直接的な影響を発揮すると思われる。
両化合物とも、細胞外マトリックス成分の合成および分解を調節する(表42)。
サケカルシトニン処置動物における多臓器遺伝子発現プロファイリング。発現の変化が見られた臓器が表示されている。B=骨、K=腎臓、M=筋肉、P=下垂体、L=肝臓、T=気管。
特に興味深いのは、Y−ボックス結合タンパク質(YB−1)の調節であり、これは、両処置により、そしてサケカルシトニン群で分析された6臓器のうちの4つにおいてモジュレーションされると思われる。YB−1は、コラーゲンアルファ1(I)遺伝子の遠位領域においてTGF−β応答エレメントと相互作用するタンパク質である。YB−1タンパク質は、コラーゲンプロモーターを活性化し、線維芽細胞へのTGF−β付加中に核へ転位することから、TGF−βシグナリングにおける、このタンパク質についてのある一定の役割が示唆されている。Sun W et al., trix Biol. 20(8):527−41(2001)。
さらに、アメロゲニン、象牙質およびエクトヌクレオチドピロホスファターゼにおいて変化が観察されたことから、サケカルシトニンおよびPTS893は、骨細胞外マトリックスの鉱化作用のある局面を調節していた。
サケカルシトニン処置動物における多臓器遺伝子発現プロファイリング。発現の変化が見られた臓器が表示されている。B=骨、K=腎臓、M=筋肉、P=下垂体、L=肝臓、T=気管。
式(II)の化合物の遺伝子発現プロファイリング
式(II):
で示される化合物、7−ヒドロキシ−4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)ベンジル]−3−(2,4−ジクロロ−フェニル)−クロメン−2−オン
式(II)の化合物は、一般的にオステオポローシス、転移性骨癌、歯科インプラントによる骨溶解性病変、パジェット病、および甲状腺機能亢進に伴う骨喪失を含む、骨吸収疾患の処置用に開発された。式(II)の化合物はまた、様々な癌(例、乳癌、前立腺癌、結腸癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、腎細胞癌、および頚部癌)および関節炎(例、アジュバント−、コラーゲン−および抗原誘導関節炎、特に慢性関節リウマチ)を含むIL−6に関連した他の状態を処置するのにも使用され得る。公開されたPCT特許出願WO96/31206、WO00/39120、WO01/49673参照。式(II)の化合物は、エストロゲン、抗エストロゲン、避妊および子宮肥大活性を有する。
この実施例の目的は、式(II)の化合物の「化合物サイン」を同定することにより、さらなる開発用の戦略を確定することである。主たる関心事は、子宮の潜在的刺激および深部静脈血栓症(DVT)の誘導である。さらに、実施例の目標は、式(II)で示される化合物の効力または危険性評価についてのバイオマーカーを同定することである。
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は、標的組織次第でアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する選択的エストロゲン受容体モジュレーターである。様々なSERMの直接組織特異的効果の理解を深めるため、そして根元的分子機構を解明するため、DNAマイクロアレイを用いて総合的なインビボ遺伝子発現プロファイリングを実施する試験を開始した。
遺伝子発現マイクロアレイ技術により、単一実験で所定の細胞または組織試料での何千もの遺伝子の発現の同時検出および測定が可能となった。van de Rijn M および Gilks CB. Histopathology 44:97−108(2004)。この技術は、1実験につき少数の遺伝子の評価に限られている、以前の遺伝子発現測定方法、例えば逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応およびノーザンブロット分析を凌ぐ顕著な利点を有する。
マイクロアレイ技術は迅速で包括的な遺伝子発現プロファイリング(GEP)を可能にするため、広範な病気の分析、薬理ゲノム学研究、薬剤発見におけるハイスループットスクリーニング、および様々な病気についての診断的スクリーニングにとって強力なツールを提供する。Heller MJ. Annual Review of Biomedical Engineering. 4:129−153(2002)。遺伝子発現プロファイリングを用いることにより、発現の改変が特定疾患の誘発に直接関連したものであり得る遺伝子が同定され得る。上記スクリーンにより同定された遺伝子を系統的に評価することにより、研究者らにとって治療的介入に適切な標的を発見できる尤度が高くなる。さらに、薬理ゲノム学における遺伝子発現プロファイリングの使用は、遺伝子発現の変化を同定することにより薬剤処置の潜在的な望ましくない効果を同定するのに有用であり得る。同様に、遺伝子発現プロファイリングは、所定の治療的処置から有意義な成果を達成する尤度の高い患者を同定するのに有用であり得る。治療に応じた遺伝子発現の変化を検出する方法は使用されてきたが、それらの各遺伝子発現プロファイリングに基く治療剤の評点(またはランク付け)方法については全く報告されていない。
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)である、タモキシフェンは、様々な標的組織によってアゴニストおよびアンタゴニスト効果を有する非ステロイド系ホルモン活性剤である。これは、胸部組織ではアンタゴニストであり、子宮ではアゴニストである。Kiang DT および Kennedy BJ, Ann Intern Med. 87:687−690(1997);Jordan VC および Allen KE., Eur. J. Cancer 16:239−251(1980);Jordan VC et al., Breast Cancer Res Treat. 10:31−35(1987);Gottardis MM et al., Cancer Res. 48:812−815(1998);Fornander T et al., Lancet 1:117−120(1989)。タモキシフェンは、エストロゲン介在性乳癌の処置で化学的予防剤として使用される有効な抗腫瘍剤である。これは、侵襲性および非侵襲性乳癌の両方の危険性を低下させる。しかしながら、タモキシフェンは、子宮内膜に対するそのプロエストロゲン効果を通して子宮過形成および癌についての危険性を高める。これらの望ましくない作用があることから、安全性良好なプロファイルをもつSERMについての探索が行なわれた。タモキシフェンよりも治療上および安全上好ましいプロファイルを有する第2世代のSERMであるラロキシフェンがそれに続いて開発された。Cohen FJ et al., Obstet. Gynecol. 95:104−110(2000);Ring J et al. (デスロラタジン研究グループ)Int J Dermatol. 40:1−5(2001);Fugere P et al., Am J Obstet Gynecol. 182:568−574(2000)。ラロキシフェンは、タモキシフェンと比べて子宮内膜に対する拮抗作用が低く、子宮内膜癌の危険性とも関連していない。
様々なSERMが子宮に対して特異的なエストロゲン効果を呈するため、我々は、遺伝子発現プロファイリングに従って種々の治療剤の相対的薬理学的および毒物学的活性の新しい独特な評点方法を試験し、確認するためのモデルシステムとしてこの治療効果を使用した。遺伝子発現プロファイリングを用いることにより、組織培養物、トランスジェニックマウス、および正常ラットを用いて子宮における生理学的作用および病気の分子機構が詳細に分析された。しかしながら、霊長類において実施された試験は少ししかなく、サル子宮組織における遺伝子発現プロファイリングについてもほとんど判明していない。Ace CI および Okulicz WC, Reprod Biol Endocrinol. 2:54(2004);Marvanova M et al., FASEB J. 17:929−931(2003);Zou J et al., Genome Biol. 3:research0020.1−research0020.13(2002)。さらに、それらの各遺伝子発現プロファイリングに基いた治療剤の評点(またはランク付け)方法を組入れた試験はなかった。上記ランク付けシステムが利用可能である場合、広い範囲の治療領域についての広範な有用性を有し得、新しい薬理学的物質の発見および開発にとって著しい進歩を示すことになり得る。本実施例では、子宮遺伝子発現プロファイリングにおける変化を、タモキシフェンおよびラロキシフェン処置後の正常およびOVXカニクイザルにおいて調べた。結果をエストラジオール処置後に得られる結果と比較する。次いで、各薬剤のエストロゲン効力により、子宮遺伝子発現に対するその効果に基いた評点が下された。
動物。約48ヶ月令の性的に成熟した雌カニクイザル(オランダ国チルブルクのR.C.Hartelust BVから入手したマカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis))に処置の10週間前に手術(卵巣切開[OVX]または模擬(sham)切除)を行い、寄生節足動物およびぜん虫について処置し、ツベルクリン検査にかけ、処置開始前の少なくとも14日間処置施設に順応させた。
全動物に、0.22μmフィルターで濾過した水道水を自由に与えた。動物を絶食させる処置の最終日を除き、投薬の少なくとも1時間後に約180gのOWMペレット食餌(Dietex France、SDS、サングラタン、フランス国)を各動物に毎日投与した。各動物には毎日2種の果物または野菜を与えた。
手術手順。エストロゲンおよびSERMのヒト臨床試験での成果を予測する有用なモデルとして確認された、卵巣切開したカニクイザル(マカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis))(Cline JM et al., Toxicol Pathol. 29:84−90(2001))を、エストロゲン欠乏モデルとして使用した。処置の第1日目の約10週間前に動物を卵巣切開した。キシラジン(Rompun(登録商標):0.4mL/動物、バイエル・ファーマ・ディヴィジョン・サンテ・アニマル、プトー、フランス国)およびケタミン塩酸塩(Imalgene(登録商標):0.6mL/kg、メリア、リヨン、フランス国)を組合わせた筋肉内注射による麻酔後、卵巣を摘出した。模擬手術動物にも卵巣摘出以外は同じ手術手順をふんだ。
エストラジオール検定法。手術の約2週間後、エストラジオール血清レベルを各動物において測定することにより、卵巣摘出の影響を立証した。非絶食動物の静脈血試料(約1.5mL)を抗凝血剤不含有の管に集め、ラジオイムノアッセイ(ソラン、エコール・ナツィオナル・ベテリナル・ド・リヨン、フランス国)を用いて分析した。
処置プロトコール。卵巣摘出および模擬手術動物を4群に分け、下記で概略を示した通り処置した。
組織標本。薬剤治療の最後に遺伝子発現を下垂体および子宮で測定した。分析すべき試料(下垂体および子宮)を切除し、液体窒素中で急速冷凍し、RNA抽出の実施まで−80℃で貯蔵した。
DNAマイクロアレイ解析。全RNAを酸性グアニジニウムイソチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出(トリゾール;インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)により得、アフィニティー樹脂カラム(RNeasy;キアゲン、ヒルデン、ドイツ国)で製造業者の使用説明書に従って精製した。Chomczynski P および Sacchi N. Anal Biochem. 1987;162:156−159。DNAマイクロアレイ実験を、GeneChipシステムの製造業者(アフィメトリックス、インコーポレイテッド、2002)による推奨に従って前記と同様に実施した。Lockhart DJ、Dong H、Byrne MC et al., Nat Biotechnol. 1996;14:1675−1680。
以前の試験で交差種DNAチップ解析の有効性は証明されているため(Hacia JG et al. Nat Genet 18:155−158(1998))、最初に注釈したヒト遺伝子に応答指令信号を送る22283プローブセットを含むヒト遺伝子発現プローブアレイHGU133A(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア、米国)を使用した。得られた画像ファイル(.dat files)を、マイクロアレイ・アナリシス・スイート5(MAS5)ソフトウェア(アフィメトリックス、インコーポレイテッド)を用いて処理した。シグナル強度に関するデータ(「シグナル」)および絶対的な発現レベル測定値(「絶対コール」)を含むタブで区切ったファイルを得た。
特異的薬剤作用に対する薬剤効力の定量:GEPスコアリング軸。所望の薬理学的/毒物学的作用を表す対照基準軸を特定するため、我々は、試験下の条件の極値を表すかまたはそれに近似する2群の演繹的知識を使用した。これらは、OVX群(一方の極値を表すOVX未処置動物)およびOVX+エストラジオール(十分に特定された作用を発揮することが知られている薬剤、エストラジオールで処置したOVX動物、他方の極値を表す)により構成された。これら2群を用いて、定量的に軸を定めた。次いで、他の化合物をこの軸上で配置させることにより、薬剤は薬理学的/毒物学的作用の特異的局面に関してランク付けされ得る。
特徴の選択。一般的に、個々のマイクロアレイ、プロテオームまたは代謝プロファイリング実験から誘導されたデータは、フィンガープリントとしてみなされ得る。しかしながら、実際的には、特徴(例、遺伝子)の多くは、関連性のある情報を表しておらず、上記実験の成果の分析結果を混同しているに過ぎない。すなわち、適切な特徴の選択および排除は、この方法の重要な局面であり、この方法の定量的性質は、薬剤作用の軸の特定に使用される特徴に左右される。
十分に特定された条件の場合、特徴の選択に関する演繹的知識を引き合いに出すことが可能である。特異的薬剤作用の分子生物学が既知である場合、軸の特定に使用される特徴(例、遺伝子、代謝物)は演繹的に特定され得る。十分には特定されていない条件の場合、単変量フィルター(この場合、遺伝子強度>50、対照[OVX]に対し1.5倍以上の発現変化)、および統計的有意性および統計的手法を用いることにより、非情報提供的特徴を同定し、排除することが可能である。
データ前処理。変換の結果、中心化(変数に関して)、およびデータのスケーリングが考えられ得た。マイクロアレイの場合、データはlog10変換され、プローブセットについて中心化された。一般的にスケーリングは適用されなかった。少数の生物学的に確認された特徴のみを用いるとき、これらをユニット分散にスケーリングした。
主成分分析。薬剤作用の軸を計算するため、極値にある2処置群(未処置OVX動物対エストラジオール処置OVX動物)のみを用いて主成分軸(PCA)を特定した。Massart DL et al., Handbook for Chemometrics and Qualimetrics, Part a. (エルセビア、1997);Jolliffe IT. Principal Component Analysis. 第2版(スプリンガー、ニューヨーク、ニューヨーク、2002)。最大分散方向で指し示すインプットデータにおける全特徴の重み付きの線状組合わせである、1主成分(PC)のみを計算した。この線状組合わせにおけるプローブセットの重みは「ローディング」と呼ばれ、それらの絶対値は、2群間の差異を説明する際の重要性の尺度である。次いで、実験(例、マイクロアレイ)におけるあらゆる測定結果は、PC上のその座標(評点)により表され得る。別法として、群間をより明確に分離するため、応答ベクトルとしての0/1ダミー変数によるPLS−DA(部分最小2乗判別分析)方法を使用した。Barker M および Rayerns W. Journal of Chemometrics 17:166-173 (2004). Massart DL et al., Handbook of Chemometrics and Qualimetrics, Part b. (エルセビア;1997)。次の段階は、軸の特定に重要である特徴の同定であった。これは、それらのローディングの大きさに基いており、推定誤差を用いたそれらの統計的有意性は、ローディングのクロス−バリデーションおよび/または正規確率プロットに基いていた。Hunter WG & Hunter JS. Statistics for Experimenters: an Introduction to Design, Data Analysis, and Model Building. 第1版 (ワイリー;1978)。これにより、重要な特徴のみを用いて新しいPCAモデルを計算することが可能となった。
薬理学的または毒物学的作用が、測定における著しく異なる数の特徴により示される多くの生化学的経路に影響を及ぼす場合、ブロックスケーリングを使用した。Eriksson L et al., Multi- and Megavariate Data Analysis - Principles and Applications. (ウメトリクス・アカデミー; 2001)。これは、同じ影響がPCAモデルの計算における全経路(特徴の群)に原因があると考えるものであった。階層的PCAは、薬剤作用の最重要経路の同定に適用され得る。Eriksson L et al., J Comput Aided Mol Des. 16:711-726 (2002)。
PCAモデルの適用。最終PCAモデルのローディングを使用することにより、他の処置群(タモキシフェンおよびラロキシフェン)における全測定結果の評点を計算した。2極値群のスコアのメディアン(または平均)を用いて、薬剤作用の軸を見積もった(0〜100%)。処置の評点(エストロゲン効力)(薬剤/用量)を、個体または群平均(メディアンまたは平均)についてこの尺度で表した。
統計分析。評点分散を用いて信頼区間を評価し(Sachs L. Angewandte Statistik、10(スプリンガー;ベルリン、ドイツ国、2002))、群間の有意差を様々な統計試験(例、t−検定、u−検定)により評価した。Zar JH. Biostatistical Analysis.第4版(Prentice Hall; 1998)。
エストラジオール、タモキシフェンおよびラロキシフェン処置後の比較GEP。下垂体。卵巣摘出により、下垂体において黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)をコード化する遺伝子の予想どおりの顕著なアップレギュレーションが誘導された(表45)。
模擬手術の場合と比較すると、転写物レベルは、未処置OVX動物では7.6倍および6.2倍(それぞれLHおよびFSH)高かった。エストラジオールの投与により、卵巣切除の影響は打ち消され、LHおよびFSH転写物の発現をそれぞれ16.4および73.4の率で減少させ、正常な生理学的数値よりかなり低くなった。タモキシフェンは、弱いエストロゲン効果を有し、OVXサルにおいて下垂体LHおよびFSH遺伝子発現を2.4および2.7の率でダウンレギュレーションさせた。ラロキシフェンは、ゴナドトロピン発現に極小の影響しか与えず、LHおよびFSH転写物を1.2〜1.3の率で低下させた。
子宮。子宮遺伝子発現に対する効果を、シグナル伝達、成長因子、細胞外マトリックス、および1群として細胞周期、輸送およびレドックスに関与する遺伝子といった異なる論理的範ちゅうでの遺伝子群にさらに分けた。
シグナル伝達誘導物質。全般的に、シグナル伝達タンパク質をコード化する遺伝子の発現増加が、OVXサルにおいてエストラジオール処置後に観察された(表46)。
プロゲステロン受容体、分泌性フリズルド(frizzled)関連タンパク質1、分泌性フリズルド(frizzled)関連タンパク質4、形態形成のジシェベルド(Dishevelled)関連アクチベーター1、無翼型MMTV組込み部位(ファミリー、構成員2B、wnt2B)およびインテグリン(ベータ5)は、それぞれ未処置OVX対照と比べて9.8、7.1、4.2、3.1および2.6および1.7倍の率で増加していた。これらと同じ遺伝子は、タモキシフェン治療後1.2〜4.5倍の率でアップレギュレーションされた。対照的に、ラロキシフェン療法では、これらと同じシグナル伝達タンパク質についての遺伝子発現は緩やかな変化を示した(0.9〜1.9倍)。調査された残りの遺伝子は全て、エストラジオール、タモキシフェン(LDL受容体アダプタータンパク質については除外)およびラロキシフェンによりダウンレギュレーションされていた。
成長因子。エストラジオールは、表47で要約されているとおり成長因子(GF)をコード化する幾つかの遺伝子の発現を増加させた。
最も顕著な効果は、OVX対照と比較した場合、インスリン様GF結合タンパク質2(36kDa)(7.1倍増加)、およびインスリン様GF1(ソマトメジンC)(5.3〜6.9倍増加)について観察された。これらの成長因子をコード化する遺伝子はまた、タモキシフェン治療後に2.7倍および3.7〜4.8倍の率でアップレギュレーションされた。ラロキシフェンは、模擬群と類似した、約2倍の小さな増加を誘発した。
エストラジオールもまた、OVX対照と比べた場合、インスリン様増殖因子結合タンパク質5、潜在トランスフォーミング増殖因子ベータ結合タンパク質1、および高システイン血管形成誘導物質61を、それぞれ5.2、3.6および3.5倍の率でアップレギュレーションした。対照的に、タモキシフェンおよびラロキシフェンは、模擬群で観察されたレベルと同様、これらの成長因子をコード化する遺伝子における緩やかな変化を伴ったに過ぎない(表46)。
細胞外マトリックス。若干の種々の細胞外マトリックスタンパク質は、表47で要約されているとおり、エストラジオールによりアップレギュレーションされた。コラーゲンI型アルファ2、コラーゲンIII型アルファ1、コラーゲンI型アルファ1、およびコラーゲンIV型アルファ1は、OVX対照と比べた場合、エストラジオール処置によりそれぞれ13.2、6.8、6.6および4.3倍の率でアップレギュレーションされた。タモキシフェン療法もまた、これらのマトリックスタンパク質をコード化する遺伝子を、それぞれ6.1、3.4、3.5および3.2倍の率でアップレギュレーションした。この範ちゅうにおける遺伝子の残りの大多数については、タモキシフェンまたはラロキシフェン処置後、全般的発現が模擬対照と変わらないレベルまで戻っていた。
輸送、レドックスおよび細胞周期。エストラジオールは、OVX対照と比較した場合、エストラジオール処置動物において様々な輸送遺伝子(溶質担体ファミリー2[促進グルコース/フルクトース輸送体];構成員5ATPアーゼ;Na+/K+輸送性、ベータ3ポリペプチド;溶質担体ファミリー2[促進グルコース/フルクトース輸送体]、構成員5;溶質担体ファミリー25[ミトコンドリア担体;アデニンヌクレオチド輸送体]、構成員5;ATPアーゼ、H+輸送性、リソソーム38kDa、V0サブユニットdイソ型1;ATPシンターゼ、H+輸送性、ミトコンドリアF0複合体、サブユニットc[サブユニット9]イソ型3;溶質担体ファミリー22[有機カチオン輸送体]、構成員1−様ATPシンターゼ、H+輸送性、ミトコンドリアF0複合体、サブユニットc[サブユニット9]イソ型3;塩素細胞内チャンネル4)の発現を2〜7倍の率で;レドックスタンパク質をコード化する遺伝子(SETドメイン二叉1、ペルオキシレドキシン1、およびシトクロムcオキシダーゼサブユニットVIaおよびVIIa)の発現を約2〜3倍の率で;および細胞周期タンパク質をコード化する遺伝子(CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2)の発現を4倍までの率で増加させた。エストラジオール処置は、OVX対照と比べて、レドックスタンパク質、チオレドキシン相互作用性タンパク質についての遺伝子の発現を3倍、そして細胞周期タンパク質、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤1C(p57、Kip2)についての遺伝子の発現を2〜4倍の率でダウンレギュレーションした。僅かに効力は劣るが、タモキシフェンは類似効果を発揮し、ラロキシフェンは、試験された輸送体、レドックスおよび細胞周期遺伝子のいずれに対してもほとんどまたは全く影響を及ぼさなかった。
エストロゲン誘導遺伝子。幾つかのエストロゲン誘導遺伝子(脳クレアチンキナーゼ、細胞質ダイニン;ヒッポカルシン様1;軽ポリペプチド1;脳プロスタグランジンD2シンターゼ21kDa;ヘキソキナーゼ1;および骨芽細胞カドヘリン11、2型)は、OVX対照と比べた場合エストラジオールにより3〜10倍の率でアップレギュレーションされた。しかしながら、子宮生理学および病理学に対するこれらの変化の意義はまだ明確にされていなかった。
子宮GEPによる薬剤活性のランク付け。相対的エストロゲン有効性を測定し、所定のエストロゲン処置について評価するため、OVX対照(エストロゲン無し)については「0」のメジアンGEPスコアおよびエストラジオール処置動物については「100」のメジアンGEPスコア(最大エストラジオール効果)を割当てることにより、有効性軸を構築した。タモキシフェンおよびラロキシフェンについてのそれぞれのGEPスコアをプロットすることにより、それらの相対エストロゲン有効性を測定した。
種々のフィルタリングパラメーター−遺伝子強度>50、OVX対照からの統計的に異なる変化、およびOVX対照値からの1.5倍より高率の変化を示す遺伝子−の適用により、規定された遺伝子発現プロファイリング(GEP)基準による相対的処置有効性のランク付けが可能となった。これらの方法は、適用されていないGEPデータ分析よりもさらに有用な情報をもたらした。
1チップにつき検定された22283個のプローブのうち、個々の225個の遺伝子は、OVX対照と比較した発現レベルが統計的に有意な1.5倍より大きい変化を示した。この遺伝子群のみについて考えると、タモキシフェンは、スコアが59の強いエストロゲン応答を示し、ラロキシフェンは23の弱いエストロゲンスコアを有していた。対照的に、模擬動物は、48の基礎エストロゲンスコアを呈する。
変化比率のみを考慮に入れ、統計的有意性を無視したとき、673個の遺伝子は、OVX対照と比べて発現レベルが1.5倍より大きい変化を示した。タモキシフェンは、スコアが71の強いエストラジオール効果を呈し、ラロキシフェンは34の弱いエストロゲンスコアを有し、模擬動物についての基礎値は66であった。
統計的に有意な1.5倍より高い発現変化を示し、子宮機能においてある一定の役割を有すると考えられる123個の遺伝子を用いてさらに細かい分析を行った。この解析によると、タモキシフェンは、69の高いエストロゲンスコアを保持しており、ラロキシフェンは依然として20の弱いエストロゲンスコアを有し、そして模擬動物の基礎値は44であった。この方法を用いることによる、特異的遺伝子群のさらに詳しい分析は、タモキシフェンのエストロゲン効果(61〜87のスコア)が、各範ちゅうにおいてラロキシフェンの場合(−11〜32のスコア)より一貫して大きいことを示していた。
検討。エストロゲン欠乏のOVXカニクイザルモデルが、子宮に対するホルモン効果に関してヒトとの関連性を有することがこれまでの試験により立証されている。Cline JM et al., Toxicol Pathol.29:84−90(2001)。これらの試験からのデータは、エストラジオールまたはタモキシフェンでの処置後における子宮内膜過形成の増大を示しており、このことは本実施例で確認されている。さらに、我々は、このモデルで、エストラジオールが、下垂体においてゴナドトロピン遺伝子アップレギュレーションに対するOVXの効果を示すこと証明し(表45)、OVXサルがエストラジオールおよびSERMの遺伝子発現プロファイリング(GEP)についての有効なモデルを表すという証拠をさらに提供した。
全般的に、本実施例で報告されている遺伝子発現データは、子宮に対するエストラジオールおよびSERMの組織病理学的効果と相関関係を示していた。実験および臨床試験は、子宮および子宮腫瘍細胞に対するエストロゲンおよびタモキシフェンの明白な増殖効果を立証している。Gottardis MM et al., Cancer Res.48:812−815(1988)。タモキシフェンは、卵巣摘出したマカークで観察される子宮のう胞性過形成、間質線維症、およびプロゲステロン受容体の発現増加と一致する、OVXサルの子宮におけるエストロゲン様遺伝子発現プロファイリングを誘導した。 Cline JM et al., Toxicol Pathol.29:84-90 (2001).ラロキシフェン治療後のOVXサルの子宮GEPにおけるごく小さな変化は、それがヒト子宮に対する病理学的効果を欠くことを示す試験と一致していた。Cohen FJ et al., Obstet Gynecol.95:104-110 (2000)。
子宮における、タモキシフェンの増殖効果は、一つにはGFにより伝達される。エストロゲン治療後のIGF−1および関連結合タンパク質の発現増加は、記録により十分に立証されており、子宮組織増殖の局所パラクリン刺激にとって重要であり得る。Norstedt G et al., Acta Endocrinologica (Copenh).120:466-472 (1989); Stygar D et al., Reproductive Biology and Endocrinology.1:40 (2003)。また高システイン血管形成誘導物質「61」およびトランスフォーミング増殖因子ベータ遺伝子の誘導もエストロゲンに応じるものとして報告されており、両成長因子とも子宮内膜増殖および過形成を伝達すると思われる。Sampath D et al., Endocrinology.142:2540-2548 (2001); Takahashi T et al., Cell Growth Differ. 5:919-935 (1994); Sartor BM et al., Reprod Toxicol.9:225-231 (1995)。これらの観察結果は、エストラジオールが子宮においてこれらの成長因子の発現を増加させるという本実施例からのデータを裏付けている(表46)。
ヒト子宮内膜における遺伝子発現プロファイリングを用いる最近の試験では、胚および母体子宮内膜間の複雑な相互作用を伴う着床過程と関連した遺伝子のアレイおよび遺伝子ファミリーが同定された。局所分泌されるwntタンパク質は、膜結合フリズル(frizzle)受容体(FzR)の活性化を含む細胞シグナリング経路を開始させ、次いでジシェベルド(Dishevelled)(Dvl)および着床に要求される核遺伝子転写の調節を活性化する。frizzle関連タンパク質(FRP)は、wnt−FzR−リガンド結合部位におけるwntシグナリングをモジュレーションし、分泌されたFRP4(FrpHEとしても知られている)はwntシグナリングを阻害する。wnt遺伝子はエストロゲンを含む性ステロイドにより制御されるが、エストロゲン誘導子宮成長とこれらの発見の関連性は判明していない。Tulac S et al., J Clin Endocrinol Metab. 88:3860-3866 (2003)。癌セルラインでの試験によると、wnt2Bシグナリングは、腫瘍発生においてある一定の役割を演じると思われる。Katoh M, Int J Mol Med.8:657-660 (2001); Ricken A et al., Endocrinology. 143:2741-2749 (2002)。さらに、分泌FRP1および分泌FRP4の発現増加は、ヒト子宮平滑筋腫、エストラジオール投与されたOVXラットの子宮、およびヒト増殖性子宮内膜において観察された。Fujita M et al., J Mol Endocrinol. 28:213-223 (2002); Fukuhara K et al., J Clin Endocrinol Metab. 87:1729-1736 (2002)。エストロゲンによりアップレギュレーションされる間質FRP4は、子宮内膜増殖に関与し、分泌FRP1は、抗アポトーシスおよび抗腫瘍効果と関連していた。これらの試験は、エストラジオール治療後に子宮におけるwnt2B、Dvl、および分泌FRP1およびFRP4をコード化する遺伝子の発現が増加したことを示す、本実施例で報告されているデータと関連性を示す(表46)。データは、子宮に対するエストロゲン効果が、wntシグナリング経路および分泌FRP4によるその調節を必然的に伴い得ることを示唆している。Tulac S et al., J Clin Endocrinol Metab. 88:3860-3866 (2003)。
ウマエストロゲンコンジュゲートによる長期治療は、OVXカニクイザルの子宮内膜間質組織においてプロゲステロン受容体をアップレギュレーションする。Wang H et al., Reprod Biol Endocrinol. 1:7 (2003)。エストラジオールが本実施例でプロゲステロン受容体遺伝子発現を増加させた(表46)ことから、遺伝子発現プロファイリングについてOVXサルモデルがさらに検証された。
エストラジオールはまた、細胞外マトリックスタンパク質(表47)および細胞増殖に一般的に関連した遺伝子(例、細胞周期、レドックス、および輸送;表48)を含む、他の機能的クラスの遺伝子の子宮発現も増加させた。これらの効果は、細胞増殖および組織成長の増加を特徴とする、エストロゲン誘導子宮過形成に関連していると思われる。Cline JM et al., Toxicol Pathol. 29:84-90 (2001).
エストラジオールおよびSERMに関連した遺伝子発現プロファイリング(GEP)プロファイルの解析は、これらの薬剤が子宮に影響を及ぼす際の分子機構の重要な差異を示した。すなわち、タモキシフェンの遺伝子発現プロファイリングは、それが主に成長因子のエストロゲン刺激、シグナル伝達機構、細胞外マトリックスタンパク質合成、および子宮における細胞増殖に関連した遺伝子を介して作用することを示唆している。対照的に、ラロキシフェンは、その遺伝子発現プロファイリングが示すように、これらの分子経路にほとんどまたは全く影響を及ぼさない程度の弱いエストロゲン活性を呈した。
遺伝子発現プロファイリング(GEP)データのさらなる解析は、タモキシフェンおよびラロキシフェンの相対的エストロゲン効果をランク付けするための新規スコアリングシステムの開発を伴った。発現された遺伝子の7種の異なるクラスの各々において、タモキシフェンは、エストラジオールについての100と比較して、69〜87の範囲のスコアを有する最強のエストロゲン薬剤としてランク付けされた。ラロキシフェンは、エストラジオールの100と比べて、−11〜32の範囲の低スコアが示す通りこれらの基準ではかなり低いエストロゲン剤であった。
結論として、本明細書記載の治療剤の新規ランク付け方法と組合わせてDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイリング(GEP)は、新規化学物質の相対的薬理学的および毒物学的作用を特定および予測するための強力な技術であり、製薬業界における薬剤開発についての新たなパラダイムを表す。さらに、この手順は、薬剤スクリーニング方法を精密化するのに使用され得る有効で安全なバイオマーカーを同定する大きな可能性を有し、薬剤の発見から臨床使用までに要求される時間と費用を低減化させるものである。
緒論および要旨。この実施例の目的は、低酸素血管網膜症マウスモデルを用いることによる実施例3で示された血管形成に対するFGF23CTPの効果をさらに評価することである。
方法。7日齢のC57/B16Jマウスを、12日目まで75%±2%の最終酸素濃度にした酸素および圧縮空気の混合物により換気される密閉コンテナ中に養親と一緒に入れる。部屋の空気に戻すと、動物は、早くも14日目に始まる新生血管形成を伴う相対的な網膜の虚血を発症する。
12日目、動物が酸素インキュベーションから戻ったとき、先が直径約150μmのガラスピペットを用いて2.0μl容量を眼に注入する。動物の右眼には6マイクログラム(μg)のFGF23CTP(3μg/μl)、個体対照として左眼にはPBSを注入する。
12日目に物質の硝子体内注射を行うため、イソフルランの吸入によりマウスに麻酔をかける。5日後、デキストラン−フルオレセインでの灌流後に動物を殺し、網膜フラットマウントを調製する。コードされた検鏡板全体により、網膜の血管変化が盲検的に評価できる。増殖スコアは、ヒト網膜疾患でも見られる特徴である、乳頭、血管発生、血管収縮、網膜充血および管の蛇行を含む増殖の定量化を含む。
動物。合計で、動物44匹を、FGF23CTPおよびPBS注射用に使用する。それらのうち、動物8匹は低酸素中または注射後に死亡し、動物2匹は灌流されず、動物5匹についてはニューロンの評価用にパラフィン埋封し、そのうち動物3匹のみ検査され得、そして残りのこれら動物29匹からフラットマウントを調製する。
血管増殖変化の評価。網膜標本における血管増殖変化の評価を、コード化された標本において遮蔽方法で実施する。網膜症スコアリングシステムは、新生児集中治療病棟で臨床的に使用されているスコアリングシステムの修正後に開発された Higgins, R. D.,et al. (J. AAPOS 3: 114-116 (1999))から適合化される。以下の特徴を考慮に入れる:視神経乳頭の新生血管形成、血管房状分岐形成、血管房状分岐の大きなクラスター、中心血管収縮および血管の蛇行。網膜充血については、眼内注射から生じ得るものであるため、考慮に入れない。
各規準について、特定数のポイント(P)が割当てられ、それらを合算して合計増殖スコアにする。スコアが高いとき、低酸素が誘発する網膜症は悪化する。詳細:
視神経乳頭の新生血管形成:視神経乳頭増殖が測定される(1P)かまたは存在しない(0P)場合、それぞれ1または0ポイントが割当てられる。
血管房状分岐:血管房状分岐についてのスコアは、4ゾーンにおける標本表面の時計時間毎の分割により測定される:ゾーン1(視神経乳頭ゾーン)はさらに評価される;ゾーン2:ウイング毎に1ポイント(最大4P);ゾーン3:時計時間毎に1ポイント(最大12P);およびゾーン4:時計時間毎に1ポイント(最大12P)。すなわち、無血管領域が存在する場合最大28ポイントが測定され、完全無血管の場合には最大12ポイントが算出される。
血管房状分岐の大きなクラスター:3つを越えるセクターを覆う血管房状分岐の大きなクラスター毎に1ポイントとして計数する。すなわち、無血管領域が存在しない場合最大8ポイントが測定され得、最大4ポイントが完全無血管状態について割当てられ得る。
中心血管収縮:50%を越えるゾーン1の血管収縮には1ポイントが割当てられる。血管収縮がゾーン2およびゾーン3のあらゆるウイングの50%を越える場合、1ポイントが割当てられる。すなわち、最大1ポイントがゾーン1に割当てられ得、最大4ポイントがゾーン2、3および4に各々割当てられ得る。ゾーン4についてこれまでに血管収縮は観察されていないため、最大合計9ポイント(ゾーン4を含まず)が割当てられ得る。
血管の蛇行:血管の3分の1未満が蛇行している場合、2ポイントが割当てられる。蛇行血管の量が3分の1と3分の2の間である場合、4ポイントが割当てられ、血管の3分の2を越える部分が蛇行している場合、6ポイントが与えられる。
ポイントの理論的最大値に達することはあり得ない。例えば、ゾーン4は無血管ゾーンを決して示さない。無血管領域における増殖は観察されていない。これは原則として、基準の相互排除である。血管増殖の存在は、大きな無血管領域よりも網膜症スコアに強い影響を及ぼす。従って、血管増殖を促進すると考えられる物質を用いて、このシステムで計数された最大スコアは、38ポイントである。
FGF23CTP(右眼)およびPBS対照(左眼)で処置された個々の動物についての網膜フラットマウントにおける血管変化に関する増殖スコアは、上記要領で測定される。網膜症の重症度は、動物ごとに異なる。表52は、測定された増殖スコアを要約したものである。
全動物の増殖スコアは、図2におけるボックスプロットとしてさらに表示されている。個々の処置した眼(右眼、FGF23CTP)と対照(左、PBS)を比較すると、FGF23CTP注射の効果は、p=0.04で対応のあるt−検定において統計的有意性に達している(表53)。
別々の因子についての増殖スコアは、表54に提示されており、それぞれの対応のあるt−検定については、表55〜57に示されている。
毒性の評価。右眼におけるFGF23CTPおよび左眼におけるPBSの注射後のニューロン損傷評価用に当初計画された5匹のマウスから、一眼におけるレンズへの損傷および別の動物における固定の問題故に、3匹のみが試験される。
パラフィン埋封およびヘマトキシリンおよびエオシン(HE)−染色後に標準化拡大法を用いて、外側核層、内側核層および神経節細胞層の合計厚さを測定する。各眼の3部分を3箇所で各々測定する。表58は、200倍の倍率を用いたmmでの測定値の結果を示す。3部分は、評価用にコード化されている。
動物3匹で実施された測定の結果に基づき、FGF23CTPは、眼においてニューロン損傷を誘導しないことが見出された。詳しく述べると、FGF230CTPまたはPBSの注射の5日後において内側核層、外側核層または神経節細胞層のニューロン層の厚さに著しい差異は無い。
本明細書で引用されている参考文献は全て、個々の文献または特許または特許出願があらゆる目的のために各々具体的かつ個別にそのままの形で説明の一部として示されているのと同程度に、あらゆる目的のために出典明示により完全に援用されているものとする。さらに、本明細書で引用されているGenBank受入番号、Unigene Cluster番号およびタンパク質受入番号は、上記の各番号が具体的かつ個別に全目的のためにそのままの形で説明の一部として示されているのと同程度に、全目的のために完全に出典明示により援用されているものとする。
本発明は、本明細書に記載されている特定の実施態様に限定されるわけではなく、それらは本発明の個々の態様を単に説明しているに過ぎないものとする。当業者には明白なことであるが、発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明には多くの修飾および変形が加えられ得る。本明細書で列挙されているものに加えて、本発明の範囲内における機能的に均等内容である方法および装置も、本明細書の記載および添付の図面から当業者であれば容易に理解できるものである。上記修飾および変形は、添付された請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。本発明は、上記請求の範囲に包含される均等内容の全範囲も加えて、添付された請求の範囲によってのみ制限されるものとする。
図1は、GPA018、GPA019、GPA020、GPA022およびGPA023に関する一連のポリペプチド配列および推定ポリペプチド配列相関関係である。
図2は、FDF−23C−末端ポリペプチド(FGF23CTP;(右眼;カラム1))およびPBS(左眼、カラム2)で処置した動物の網膜フラットマウントにおける血管変化に関する増殖スコア(単位)のボックスプロットである。