JP5176035B2 - Drefを分子標的とする癌治療用組成物 - Google Patents
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Description
本発明は、ヒト細胞増殖制御因子DREF又はDREF遺伝子を分子標的とする癌治療用組成物に関する。
従来、細胞増殖に関連する遺伝子を標的とする癌治療法は種々検討されている。DREFはHiroseらが単離したショウジョウバエの転写因子で、遺伝子プロモーター配列中のDRE−motifと呼ばれるDNA配列を認識してそれに結合し、その遺伝子の発現を誘導する(非特許文献1)。ショウジョウバエでは、S期にPCNA(proliferating cell nuclear antigen)転写を誘導することが報告され、さらに細胞増殖に関連するいくつかの遺伝子が、DREFにより発現制御されることが報告されている。その後、ショウジョウバエDREFのヒトホモログが、Ohshimaらによってクローニング、配列決定され、ヒトDREFがヒストンH1遺伝子の誘導に係わることが報告された(非特許文献2)。このとき、ヒトDREF遺伝子の発現がDREF CR1ドメインに対して作製された2つのsiRNAによって低下し、これによってヒストンH1遺伝子発現が抑制される(非特許文献2)。
ヒトDREF遺伝子は、Espositoら(非特許文献3)がヒト非誘導性男性奇形癌細胞株由来のcDNAライブラリーから見出した遺伝子Tramp(Ac−like transposable element;putative Ac−like transposon;Chromosome:X,Y;Location:Xp22.33;Yp11)と同一である。
Sanoらは、ヒトDREF遺伝子をノックダウンすることによってDREFが細胞周期進行に関与する因子のひとつであること、またノックダウンによってリボソームタンパク質(RP)の発現低下が起こることから、DREFがタンパク合成遺伝子の調節を介して細胞増殖を刺激する役割を果たすことを指摘した(非特許文献4及び非特許文献5)。
これまでヒトDREFについて細胞増殖能との関連が示唆されたが、しかし癌に対する治療との関連での詳細な機能解析は行われていなかった。
Hirose,F.ら,J.Biol.Chem.271:3930−3937,1996 Ohshima,N.ら,J.Biol.Chem.278:22928−38,2003 Esposito,T.ら,Human Molecular Genetics,8(1):61−67,1999 Sano,Y.ら,日本分子生物学会要旨集(平成17年11月25日発行),講演番号1P−0873,2005 Sano,Y.ら,第20回国際生化学分子生物学会要旨集(平成18年6月18日発行),講演番号5P−A−217,2006
ヒトDREF遺伝子は、Espositoら(非特許文献3)がヒト非誘導性男性奇形癌細胞株由来のcDNAライブラリーから見出した遺伝子Tramp(Ac−like transposable element;putative Ac−like transposon;Chromosome:X,Y;Location:Xp22.33;Yp11)と同一である。
Sanoらは、ヒトDREF遺伝子をノックダウンすることによってDREFが細胞周期進行に関与する因子のひとつであること、またノックダウンによってリボソームタンパク質(RP)の発現低下が起こることから、DREFがタンパク合成遺伝子の調節を介して細胞増殖を刺激する役割を果たすことを指摘した(非特許文献4及び非特許文献5)。
これまでヒトDREFについて細胞増殖能との関連が示唆されたが、しかし癌に対する治療との関連での詳細な機能解析は行われていなかった。
Hirose,F.ら,J.Biol.Chem.271:3930−3937,1996 Ohshima,N.ら,J.Biol.Chem.278:22928−38,2003 Esposito,T.ら,Human Molecular Genetics,8(1):61−67,1999 Sano,Y.ら,日本分子生物学会要旨集(平成17年11月25日発行),講演番号1P−0873,2005 Sano,Y.ら,第20回国際生化学分子生物学会要旨集(平成18年6月18日発行),講演番号5P−A−217,2006
肺癌、食道癌などの難治性癌は、一般的な化学療法に対して抵抗性であり外科手術以外に治癒が期待できる有効な手段が確立されていない。そのために、癌の発症・増殖・転移に関与する遺伝子を標的とする分子標的治療薬を開発して、癌の治癒を目指した治療法を確立することが求められている。
本発明の目的は、癌に対する治療用組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、癌に対する治療用薬剤をスクリーニングする方法を提供することである。
本発明者らは、ヒトDREFが癌治療の標的になることを見出し、本発明を完成させた。
DREFは、背景技術で記載したように、ショウジョウバエの転写因子として発見され、その後、ヒトにおいてもそのホモログが存在することが示された。本発明者らは今回、ヒトDREFが正常細胞で実質的に発現されない一方で、癌細胞で有意に発現されることを見出し、これに基いて、DREFが癌治療の分子標的になりうると予測し、DREFの発現抑制が実際に癌の抑制と細胞死に導くことを実証した。
したがって、本発明は、以下の特徴を有する。
本発明は、その一の態様において、癌細胞又は癌組織においてヒト細胞増殖制御因子DREF又はDREF遺伝子のインビボ機能を抑制する、DREFに対するRNAi核酸、アンチセンス核酸又は抗体を含むことを特徴とする癌治療用組成物を提供する。
DREFは、Hiroseらによって命名されたDRE(DNA replication−related element)−binding factorの略称であり、別名ZBED1(zinc finger,BED−type containing 1)とも呼ばれている。本明細書中では以後、ヒトDREFを単に「DREF」と称する。
本発明の実施形態において、DREFは配列番号1に示されるアミノ酸配列、或いは該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加を含むアミノ酸配列、を含むタンパク質である。また、DREF遺伝子は、そのオープンリーディングフレーム(ORF)が配列番号1のアミノ酸配列によってコードされるヌクレオチド配列、より具体的には配列番号2の202位〜2286位に示されるヌクレオチド配列を含む。DREFのアミノ酸及びヌクレオチド配列はともに、GenBankにAccession number NM_004729として登録されている。本発明におけるDREFは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつDREFと同等のインビボ機能を有する変異体(例えば、多型性による変異体、スプライス変異体、縮重変異体、突然変異体など)も包含する。また、本発明におけるDREF遺伝子は、配列番号2に示されるヌクレオチド配列(202位〜2286位)と95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、かつ翻訳後にDREFと同等のインビボ機能を有する上記と同様の変異体も包含する。
本明細書において、DREF遺伝子は、エキソンのみならずイントロン、3’非翻訳領域及び5’非翻訳領域も包含することを意図して使用される。
本発明の別の実施形態において、インビボ機能の抑制は、癌細胞における、細胞増殖抑制、細胞周期停止及び/又は細胞死誘導作用である。
本明細書で使用される「インビボ機能」は、DREFの癌細胞内での働き、例えば細胞増殖、細胞周期進行などをいう。
本発明の別の実施形態において、RNAi核酸又はアンチセンス核酸はDREF mRNAの切断又はその機能の抑制を可能にするものである。
本明細書で使用される「RNAi」は、所謂RNA干渉(RNA interference)と呼ばれるものであり、外から加えたDNA又は二本鎖RNA(dsRNA)により、それらと相同な配列をもつ遺伝子の発現が抑制される現象をいう(例えば、牛田千里、蛋白質核酸酵素Vol.46(No.10)、pp.1381−1386、2001)。標的となるRNAは該遺伝子によってコードされるmRNA又はプレmRNAであり、標的mRNAはRNAiによって分解されるか或いは発現抑制される。
具体的には、本発明で使用可能な好適なRNAi核酸は、siRNA(small interfering RNA)又はshRNA(short hairpin RNA)、該siRNA又はshRNAをコードするDNA、或いは該DNAを含むベクターDNAである。本発明において使用可能な別のRNAi核酸には、miRNA(microRNA)も含まれる。miRNAは、DREF mRNAの3’非翻訳領域に結合してDREF遺伝子の発現を抑制するものである。これらのRNAi核酸のサイズは、19〜30ヌクレオチド長、好ましくは19〜25ヌクレオチド長、さらに好ましくは19〜23ヌクレオチド長である。
本発明で使用される「アンチセンス核酸」は、DREF mRNAの全体又はその部分に相補的なRNA配列、或いは該RNA配列をコードするDNA、或いは該DNA配列を含むベクターを含む。
本明細書で使用される「ベクター」は、目的のsiRNA又はshRNAをコードするDNA或いはアンチセンスRNAをコードするDNAの他に、プロモーター、ポリT配列、複製開始点、ターミネーターなどの調節配列、選択マーカーなどを含むことができる。本発明のベクターが癌細胞内に導入されると、該DNAの発現によって該siRNA又はshRNA、或いはアンチセンスRNAが細胞内で産生される。
本発明の実施形態において、RNAi核酸又はアンチセンス核酸はDREFのCR2ドメイン又はCR3ドメインをコードするヌクレオチド配列(それぞれ配列番号3及び4)に由来するものである。本発明における好ましいヌクレオチド配列は、例えば、DREF遺伝子の配列番号2の配列において、1,300位〜1,500位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1099位〜1299位)、1,900〜2,000位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1699位〜1799位)などに存在する。
本明細書で使用する「CR」は、ヒトDREFとショウジョウバエDREFとの配列比較において、高度に保存された領域(conserved region)を示す。そのような領域(アミノ酸配列;ヌクレオチド配列)は、CR1(配列番号1の4〜140位;配列番号2の211〜621位)、CR2(配列番号1の377〜506位;配列番号2の1330〜1719位)及びCR3(配列番号1の541〜688位;配列番号2の1822〜2265位)からなり、同一性はそれぞれ27.7%、29.2%、21.1%である(Ohshima,N.ら,J.Biol.Chem.278:22928−38,2003)。
本発明でより好ましいRNAi核酸は、配列番号5〜15、19、22、25及び28のいずれか1つのDNA配列又は該DNA配列に対応するRNA配列を含む。本明細書中で使用する、DNAなる用語は、デオキシリボ核酸を表わし、RNAなる用語は、リボ核酸を表わす。
また、本発明でより好ましいベクターは、配列番号20、21、23、24、26、27、29及び30のいずれか1つのDNA配列を含む。
本発明によれば、本発明の組成物はDREFのインビボ機能を抑制する、DREFに対する抗体を含むことができる。このような機能抑制が可能であれば、いかなる抗体も本発明において使用可能である。好ましい抗体は、DREFのCR1ドメイン、CR2ドメイン又はCR3ドメイン(それぞれ配列番号138、133又は134)、或いは該CR1又はCR3ドメイン中のDREFのDNA結合に関連する機能ドメイン(例えば配列番号140又は141)、のエピトープと結合する抗体である。本明細書で使用するエピトープなる用語は、抗原分子上の抗体が結合する部位を意味し、通常、そのような部位のアミノ酸数が8以上、好ましくは10以上であり、アミノ酸は連続的配列からなっていてもよいし又は不連続的配列からなっていてもよい。従って、本発明の抗体は、上記DREFのアミノ酸配列中の連続する又は不連続の8以上、好ましくは10以上のアミノ酸からなるエピトープと免疫学的に結合することができる。
本発明で使用可能な好ましいDREFに対する抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はそのフラグメントである。
本発明はさらに、別の態様において、ヒト培養癌細胞を含む培地に候補薬剤を加えて、DREF遺伝子の発現又は翻訳を抑制する薬剤をインビトロでスクリーニングすることを含む、癌治療用薬剤をスクリーニングする方法を提供する。
本発明で使用可能な癌細胞は、癌細胞株、バイオプシー(生検)からの癌細胞を含む。特に後者の癌細胞は、患者由来のものであり、該患者に有効な薬剤の探索のために使用しうる。本発明において、癌細胞の種類は特に限定されないが、DREFが癌細胞で発現されるが正常細胞でほとんど又は全く発現されない癌細胞が望ましい。
本発明で使用可能な候補薬剤は、小分子から高分子のいずれでもよく、低分子有機化合物、ペプチド、タンパク質、オリゴ糖類、多糖類、脂質などを含む。
本発明において、スクリーニングは、癌細胞の細胞増殖抑制、細胞周期停止及び/又は細胞死誘導作用を指標として行うことができる。このような作用は、正常組織又は細胞では実質的に認められないが、これは、DREFが正常組織又は細胞でほとんど又は全く発現されないからである。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2006−275695号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
本発明の目的は、癌に対する治療用組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、癌に対する治療用薬剤をスクリーニングする方法を提供することである。
本発明者らは、ヒトDREFが癌治療の標的になることを見出し、本発明を完成させた。
DREFは、背景技術で記載したように、ショウジョウバエの転写因子として発見され、その後、ヒトにおいてもそのホモログが存在することが示された。本発明者らは今回、ヒトDREFが正常細胞で実質的に発現されない一方で、癌細胞で有意に発現されることを見出し、これに基いて、DREFが癌治療の分子標的になりうると予測し、DREFの発現抑制が実際に癌の抑制と細胞死に導くことを実証した。
したがって、本発明は、以下の特徴を有する。
本発明は、その一の態様において、癌細胞又は癌組織においてヒト細胞増殖制御因子DREF又はDREF遺伝子のインビボ機能を抑制する、DREFに対するRNAi核酸、アンチセンス核酸又は抗体を含むことを特徴とする癌治療用組成物を提供する。
DREFは、Hiroseらによって命名されたDRE(DNA replication−related element)−binding factorの略称であり、別名ZBED1(zinc finger,BED−type containing 1)とも呼ばれている。本明細書中では以後、ヒトDREFを単に「DREF」と称する。
本発明の実施形態において、DREFは配列番号1に示されるアミノ酸配列、或いは該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加を含むアミノ酸配列、を含むタンパク質である。また、DREF遺伝子は、そのオープンリーディングフレーム(ORF)が配列番号1のアミノ酸配列によってコードされるヌクレオチド配列、より具体的には配列番号2の202位〜2286位に示されるヌクレオチド配列を含む。DREFのアミノ酸及びヌクレオチド配列はともに、GenBankにAccession number NM_004729として登録されている。本発明におけるDREFは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつDREFと同等のインビボ機能を有する変異体(例えば、多型性による変異体、スプライス変異体、縮重変異体、突然変異体など)も包含する。また、本発明におけるDREF遺伝子は、配列番号2に示されるヌクレオチド配列(202位〜2286位)と95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、かつ翻訳後にDREFと同等のインビボ機能を有する上記と同様の変異体も包含する。
本明細書において、DREF遺伝子は、エキソンのみならずイントロン、3’非翻訳領域及び5’非翻訳領域も包含することを意図して使用される。
本発明の別の実施形態において、インビボ機能の抑制は、癌細胞における、細胞増殖抑制、細胞周期停止及び/又は細胞死誘導作用である。
本明細書で使用される「インビボ機能」は、DREFの癌細胞内での働き、例えば細胞増殖、細胞周期進行などをいう。
本発明の別の実施形態において、RNAi核酸又はアンチセンス核酸はDREF mRNAの切断又はその機能の抑制を可能にするものである。
本明細書で使用される「RNAi」は、所謂RNA干渉(RNA interference)と呼ばれるものであり、外から加えたDNA又は二本鎖RNA(dsRNA)により、それらと相同な配列をもつ遺伝子の発現が抑制される現象をいう(例えば、牛田千里、蛋白質核酸酵素Vol.46(No.10)、pp.1381−1386、2001)。標的となるRNAは該遺伝子によってコードされるmRNA又はプレmRNAであり、標的mRNAはRNAiによって分解されるか或いは発現抑制される。
具体的には、本発明で使用可能な好適なRNAi核酸は、siRNA(small interfering RNA)又はshRNA(short hairpin RNA)、該siRNA又はshRNAをコードするDNA、或いは該DNAを含むベクターDNAである。本発明において使用可能な別のRNAi核酸には、miRNA(microRNA)も含まれる。miRNAは、DREF mRNAの3’非翻訳領域に結合してDREF遺伝子の発現を抑制するものである。これらのRNAi核酸のサイズは、19〜30ヌクレオチド長、好ましくは19〜25ヌクレオチド長、さらに好ましくは19〜23ヌクレオチド長である。
本発明で使用される「アンチセンス核酸」は、DREF mRNAの全体又はその部分に相補的なRNA配列、或いは該RNA配列をコードするDNA、或いは該DNA配列を含むベクターを含む。
本明細書で使用される「ベクター」は、目的のsiRNA又はshRNAをコードするDNA或いはアンチセンスRNAをコードするDNAの他に、プロモーター、ポリT配列、複製開始点、ターミネーターなどの調節配列、選択マーカーなどを含むことができる。本発明のベクターが癌細胞内に導入されると、該DNAの発現によって該siRNA又はshRNA、或いはアンチセンスRNAが細胞内で産生される。
本発明の実施形態において、RNAi核酸又はアンチセンス核酸はDREFのCR2ドメイン又はCR3ドメインをコードするヌクレオチド配列(それぞれ配列番号3及び4)に由来するものである。本発明における好ましいヌクレオチド配列は、例えば、DREF遺伝子の配列番号2の配列において、1,300位〜1,500位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1099位〜1299位)、1,900〜2,000位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1699位〜1799位)などに存在する。
本明細書で使用する「CR」は、ヒトDREFとショウジョウバエDREFとの配列比較において、高度に保存された領域(conserved region)を示す。そのような領域(アミノ酸配列;ヌクレオチド配列)は、CR1(配列番号1の4〜140位;配列番号2の211〜621位)、CR2(配列番号1の377〜506位;配列番号2の1330〜1719位)及びCR3(配列番号1の541〜688位;配列番号2の1822〜2265位)からなり、同一性はそれぞれ27.7%、29.2%、21.1%である(Ohshima,N.ら,J.Biol.Chem.278:22928−38,2003)。
本発明でより好ましいRNAi核酸は、配列番号5〜15、19、22、25及び28のいずれか1つのDNA配列又は該DNA配列に対応するRNA配列を含む。本明細書中で使用する、DNAなる用語は、デオキシリボ核酸を表わし、RNAなる用語は、リボ核酸を表わす。
また、本発明でより好ましいベクターは、配列番号20、21、23、24、26、27、29及び30のいずれか1つのDNA配列を含む。
本発明によれば、本発明の組成物はDREFのインビボ機能を抑制する、DREFに対する抗体を含むことができる。このような機能抑制が可能であれば、いかなる抗体も本発明において使用可能である。好ましい抗体は、DREFのCR1ドメイン、CR2ドメイン又はCR3ドメイン(それぞれ配列番号138、133又は134)、或いは該CR1又はCR3ドメイン中のDREFのDNA結合に関連する機能ドメイン(例えば配列番号140又は141)、のエピトープと結合する抗体である。本明細書で使用するエピトープなる用語は、抗原分子上の抗体が結合する部位を意味し、通常、そのような部位のアミノ酸数が8以上、好ましくは10以上であり、アミノ酸は連続的配列からなっていてもよいし又は不連続的配列からなっていてもよい。従って、本発明の抗体は、上記DREFのアミノ酸配列中の連続する又は不連続の8以上、好ましくは10以上のアミノ酸からなるエピトープと免疫学的に結合することができる。
本発明で使用可能な好ましいDREFに対する抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はそのフラグメントである。
本発明はさらに、別の態様において、ヒト培養癌細胞を含む培地に候補薬剤を加えて、DREF遺伝子の発現又は翻訳を抑制する薬剤をインビトロでスクリーニングすることを含む、癌治療用薬剤をスクリーニングする方法を提供する。
本発明で使用可能な癌細胞は、癌細胞株、バイオプシー(生検)からの癌細胞を含む。特に後者の癌細胞は、患者由来のものであり、該患者に有効な薬剤の探索のために使用しうる。本発明において、癌細胞の種類は特に限定されないが、DREFが癌細胞で発現されるが正常細胞でほとんど又は全く発現されない癌細胞が望ましい。
本発明で使用可能な候補薬剤は、小分子から高分子のいずれでもよく、低分子有機化合物、ペプチド、タンパク質、オリゴ糖類、多糖類、脂質などを含む。
本発明において、スクリーニングは、癌細胞の細胞増殖抑制、細胞周期停止及び/又は細胞死誘導作用を指標として行うことができる。このような作用は、正常組織又は細胞では実質的に認められないが、これは、DREFが正常組織又は細胞でほとんど又は全く発現されないからである。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2006−275695号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、ヒトDREF/ZBED1遺伝子(Xp22.33 & Yp11)のドメイン構造と、RNAi部位及び配列を示す
図2は、RNAi効果のRT−PCR解析結果を示す。
図3は、RNAi効果のWestern blot解析結果を示す。
図4は、細胞周期解析結果を示す。
図5Aは、細胞周期解析結果を示す。
図5Bは、細胞周期解析結果を示す。
図5Cは、細胞周期解析結果を示す。
図6は、Aは細胞増殖能解析結果を示す。Bは細胞増殖能解析結果を示す。
図7は、γH2AX(Phospho−H2AX)、Phospho−ATM(Ser1981)免疫染色結果を示す。
図8は、TUNEL解析結果を示す。
図9は、細胞死及び細胞周期解析結果を示す。
図10は、M期での細胞死(mitotic catastroph)を示す。
図11は、ACC−LC−91におけるsiDREF−#3,#4の遺伝子発現解析結果を示す。
図12は、肺癌患者検体におけるDREFの発現を示す。
図13は、DREF−RNAi#4によって発現抑制される遺伝子の中で、癌の増殖に関連すると考えられるRPL17遺伝子のDNA配列(A;配列番号137)と、RPL17遺伝子のDREFによる転写活性化の機序(B)を示す。
図2は、RNAi効果のRT−PCR解析結果を示す。
図3は、RNAi効果のWestern blot解析結果を示す。
図4は、細胞周期解析結果を示す。
図5Aは、細胞周期解析結果を示す。
図5Bは、細胞周期解析結果を示す。
図5Cは、細胞周期解析結果を示す。
図6は、Aは細胞増殖能解析結果を示す。Bは細胞増殖能解析結果を示す。
図7は、γH2AX(Phospho−H2AX)、Phospho−ATM(Ser1981)免疫染色結果を示す。
図8は、TUNEL解析結果を示す。
図9は、細胞死及び細胞周期解析結果を示す。
図10は、M期での細胞死(mitotic catastroph)を示す。
図11は、ACC−LC−91におけるsiDREF−#3,#4の遺伝子発現解析結果を示す。
図12は、肺癌患者検体におけるDREFの発現を示す。
図13は、DREF−RNAi#4によって発現抑制される遺伝子の中で、癌の増殖に関連すると考えられるRPL17遺伝子のDNA配列(A;配列番号137)と、RPL17遺伝子のDREFによる転写活性化の機序(B)を示す。
1.癌治療用組成物
本発明は、癌細胞又は癌組織においてヒト細胞増殖制御因子DREF又はDREF遺伝子のインビボ機能を抑制する、DREFに対するRNAi核酸、アンチセンス核酸又は抗体を含むことを特徴とする癌治療用組成物を提供する。
DREFは、癌細胞又は癌組織で発現されるが、正常細胞又は正常組織では実質的に(或いは、ほとんど又は全く)発現されない。本発明者らは、この知見に加えて、癌細胞又は組織においてDREF遺伝子の発現又はタンパク質への翻訳を抑制(阻止又は阻害を含む)すると、癌の細胞増殖抑制、細胞周期停止、細胞死誘導などの事象が起こることを見出した。
本発明による治療の対象となる癌は、DREFの発現が可能である癌、以下のものに限定されないが、例えば肺癌、食道癌、膵癌、胃癌、肝癌、大腸癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、皮膚癌、胆癌、脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、精巣癌、リンパ腫、メラノーマ、肉腫、骨肉種などを含む。好ましい癌は、肺癌、食道癌、乳癌、膵癌などである。
本発明の標的であるDREFのアミノ酸配列及びDREF遺伝子のヌクレオチド配列はそれぞれ、例えば配列番号1、配列番号2(オープンリーディングフレーム(ORF):202位〜2286位)として公知である。DREFのアミノ酸及びヌクレオチド配列はともに、GenBankにAccession number NM_004729として登録されている。本発明においては、DREF又はDREF遺伝子の変異体、例えば、突然変異、多型、選択的スプライシング、縮重などに基づいた変異体のインビボ機能を抑制することも含む。
具体的には、本発明におけるDREFは、配列番号1に示されるアミノ酸配列、或いは該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加を含むアミノ酸配列、を含むタンパク質である。或いは、本発明におけるDREFは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつDREFと同等のインビボ機能を有する変異体も包含する。
また、本発明におけるDREF遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列によってコードされるヌクレオチド配列、より具体的には配列番号2に示されるヌクレオチド配列、特に202位〜2286位のDREF ORFに対応するヌクレオチド配列を含む。本発明におけるDREF遺伝子はさらに、配列番号2の202位〜2286位に示されるヌクレオチド配列において1もしくは数個のヌクレオチドの欠失、置換又は付加を含むヌクレオチド配列を含むDNAである。或いは、本発明におけるDREF遺伝子は、配列番号2の202位〜2286位に示されるヌクレオチド配列と95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、かつ翻訳後にDREFと同等のインビボ機能を有する変異体も包含する。
本明細書で使用される「数個」なる用語は、約10以下の整数、例えば9、8、7、6、5、4、3、2を意味する。
DREFは、細胞増殖や細胞周期進行などのインビボ機能をもつが、本発明は、癌においてDREFのインビボ機能を抑制して癌の縮退や細胞死に導くことを可能にする。
本発明において、標的DREF遺伝子の発現又はタンパク質翻訳を抑制する薬剤として、DREFに対するRNAi核酸、アンチセンス核酸及び抗体を挙げることができる。これらの各薬剤について、以下にさらに具体的に説明する。
1.1 RNAi核酸
本発明で使用可能なRNAi核酸は、DREF遺伝子(エキソン、イントロン、3’非翻訳領域及び5’非翻訳領域からなる)のヌクレオチド配列、或いはDREF mRNAのヌクレオチド配列、に由来の連続する19〜30ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドを含むDNA又はRNAである。
本発明で使用可能なRNAi法は、1)短い二重鎖RNA(siRNA)を細胞内に直接導入する、或いは2)short−hairpin型RNA(shRNA)を各種発現ベクターに組み込み、そのベクターを細胞内に導入する、或いは3)対立方向に並ぶ2個のプロモーターを持つベクターに、siRNAに対応する短い二重鎖DNAをプロモーター間に挿入してsiRNAを発現させるベクターを作製し、細胞内に導入する、などの手法を含む。
上記のRNAi核酸は、DREF mRNAの切断又はその機能抑制を可能にするsiRNA、shRNA又はmiRNAを含む。また、RNAi核酸は、インビボで使用したときに、siRNA、shRNA又はmiRNAを産生することを可能にする、これらのRNAをコードするDNA又は該DNAを含むベクターであってもよい。
本発明において、好ましいRNAi核酸は、DREFのCR2ドメイン又はCR3ドメインをコードするヌクレオチド配列(それぞれ配列番号3及び4)に由来の連続する19〜30ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドを含むDNA、又は該DNAに対応するRNAである。さらに好ましいCR2ドメイン又はCR3ドメインの標的部位はそれぞれ、例えば、DREF遺伝子の配列番号2の配列において、1,300位〜1,500位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1099位〜1299位)、1,900〜2,000位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1699位〜1799位)などに存在する。
本発明において使用可能なRNAi核酸は、例えば下記の配列番号5〜15、19、22、25及び28のいずれかのDNA配列、又はそのDNA配列に対応するRNA配列(すなわち、DNA配列のTをUに置き換えた配列)、を含むものである。なお、下記の配列の後に記載の数字は、DREFのORF上の開始部位の位置(但し、ORFの開始コドンATGの塩基「A」を第1番目として番号づけする。)を表す。
特に好ましい配列は、配列番号19(RNAi #3(1136〜1156位))、配列番号22(RNAi #4(1718〜1738位))、配列番号25(RNAi #5(1245〜1265位))、及び配列番号28(RNAi #6(1737〜1757位))のDNA配列、又はそのDNA配列に対応するRNA配列(すなわち、DNA配列のTをUに置き換えた配列)、である。なお、配列番号と共に括弧内に示した数字範囲は、配列番号2のヌクレオチド配列において、DREF ORFの開始コドンATGの塩基「A」(202位)を第1番目として番号づけしたときの位置を表す。
DREFに対するRNAi核酸の別の例は、下記の配列番号33〜132のDNA配列、又はそのDNA配列に対応するRNA配列(すなわち、DNA配列のTをUに置き換えた配列)、である。
本発明の好適な実施形態において、RNAi核酸は、配列番号2のヌクレオチド配列を含むDREF遺伝子によってコードされるmRNA又はその変異体の配列からの連続する19〜30ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドのセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列とを含んでなるsiRNAである。ここで、該siRNAは、インビボ又はインビトロでDREF遺伝子又はmRNAの発現を抑制することができる。siRNAを構成する対応のDNA配列の好ましい例は、DREFのCR2ドメイン又はCR3ドメインをコードするヌクレオチド配列(それぞれ配列番号3及び4)に由来の連続する19〜30ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドを含むDNA配列、より好ましい例は、配列番号2のヌクレオチド配列において、1,300位〜1,500位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1099位〜1299位)、1,900〜2,000位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1699位〜1799位)の配列からの連続する19〜30ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドを含むDNA配列、さらに好ましい例は、配列番号5〜15、19、22、25、28、33〜132によって示されるDNA配列である。
本発明において、DREF RNAi核酸の配列は、上記の配列に限定されず、DREF遺伝子、対応するmRNA又はその変異体のインビボにおける機能を抑制する限り、例えば、配列番号2のヌクレオチド配列において上記の配列番号5〜15、19、22、25、28、33〜132の各配列を5’方向又は3’方向に1〜5塩基シフトした配列も包含されるし、或いは上記の特定の配列と異なる、例えば1〜3個の塩基が異なる、配列であってもよい。
本発明のsiRNAは、上に例示したようなsiRNAの標的となるDREF配列に基づいて、周知の化学合成技術を用いて合成することができる。例えば、固相ホスホアミダイト法などのDNA合成技術を利用したDNA(/RNA)自動合成装置を使用して化学的に合成するか、或いは、siRNA関連の受託合成会社(例えばフナコシ株式会社、Dharmacon社、Ambion社など)に委託して合成することも可能である。
本発明の実施形態によれば、本発明のsiRNAは、その前駆体である二本鎖RNA(shRNA)から、細胞内RNアーゼであるダイサー(Dicer)によるプロセシングを介して誘導されてもよい。
shRNAは、siRNAのセンス鎖配列とアンチセンス鎖配列との間にループを有する二本鎖RNAであり、好ましくはその3’末端に1〜6個、好ましくは2〜4個のポリUからなるオーバーハングを含む。shRNAは、RNアーゼIIIファミリーに属するダイサーによってsiRNAにプロセシングされたのち、siRNAが一本鎖化され、そのアンチセンス鎖RNAがRNA切断活性をもつ分子等と複合体RISC(RNA−Induced Silencing Complex)を形成し、これによってsiRNA配列に相補的な配列を持つ標的mRNAが切断され、その結果、DREF遺伝子の発現が抑制される。
したがって、本発明の上記siRNA及びその前駆体shRNAはいずれも、本発明の組成物の有効成分として使用することができる。
選択されたRNAi核酸は、臨床使用の際にいわゆるオフターゲット(off−target)作用を示さないことが望ましい。オフターゲット作用とは、標的遺伝子以外に、使用したRNAi核酸に部分的にホモロジーのある別の遺伝子の発現を抑制する作用をいう。オフターゲット作用を避けるために、候補RNAi核酸について、予めジーンチップなどを利用して交差反応がないことを確認するか、或いはGenBank(米国NCBI)などのデータベースを利用して配列同一性のない又はほとんどないことを確認することが必要である。しかし幸いにも、ヒトDREFは、ヒトにおいて、正常細胞で実質的に発現されない一方で、癌細胞で有意に発現されるため、オフターゲット作用の問題は回避できると予想される。
本発明のRNAi核酸を患者の体内に導入するときには、核酸を患部に直接注入するか、又は核酸の発現が可能なベクターを使用することが好ましい。或いは、siRNA又はベクターを、リポソーム、例えばリポフェクタミン、リポフェクチン、セルフェクチン、他の正電荷リポソーム(例えば、正電荷コレステロール)、又はマイクロカプセル、と複合体形成し、この複合体を使用することもできる(例えば、中西守ら,蛋白質 核酸 酵素,44巻11号,48〜54頁,1999年;Clinical Cancer research 59:4325−4333,1999;Wuら,J.Biol.Chem.262:4429,1987)。哺乳動物細胞の細胞膜は負電荷を帯びているため、正電荷リポソームが好ましく使用される。正電荷リポソーム−核酸複合体は、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれたのち、核酸はさらに細胞質又は核へ移行することができる。
或いは、本発明の治療用RNAi核酸を、粒径約500nm以下のナノ粒子中に封入することもできる。ナノ粒子として、例えばB型肝炎ウイルスエンベロープL粒子から形成されるホローナノ粒子(hollow nanoparticles)が例示され、核酸は、エレクトロポレーションによってこの粒子内に封入される。この核酸封入粒子は、血中に投与されるとき肝臓に送達されうる(T.Yamadaら,Nature Biotech 21(8):885−890,2003)ため、肝癌の治療に有用であろう。
或いは、本発明の治療用RNAi核酸をリポソーム中に封入するときには、核酸を硫酸プロタミンで処理して凝縮を起こし核酸−タンパク質複合体としたのち、正電荷脂質又は高分子ミセル中に封入することもできる。
リポソーム−核酸複合体は、例えば逆相蒸発法(F.Szokaら,Biochim.Biophys.Acta,601:559,1980)、ボルテックス振とう法、カルシウム融合−EDTAキレート法(金田安史,実験医学22巻14号(増刊),147〜152頁,2004年)などの方法によって製造することができる。
本発明のsiRNAやベクターなどの核酸を標的癌細胞の中に導入する別の方法は、マイクロインジェクション法、ウイルスベクター法などがある。
マイクロインジェクション法は、微細な注入針で核酸を細胞内に直接顕微注入する方法である。
ウイルスベクター法は、ウイルスベクターを用いて核酸を細胞内に導入する方法であって、siRNA、shRNA又はmiRNAを発現する発現ユニットを組み込んだ組換えウイルスを作製し、細胞に感染させて細胞内で発現させる方法である。ウイルスの例は、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスなどを含む。
本発明の実施形態により、本発明で使用可能な核酸として、前記siRNAやshRNAなどのRNAi核酸をコードするDNA配列をプロモーターの調節下に含む発現ベクターが含まれる。
発現ベクターの1つの例は、ヘアピン型ベクターである。このベクターは、前記センス鎖RNA配列と前記アンチセンス鎖RNA配列とが一本鎖ループ配列を介して共有結合されているヘアピン型RNAをコードするDNAを含み、ここで該DNAは、細胞内で転写により該ヘアピン型RNAを形成し、ダイサーによりプロセシングされて前記siRNAを形成するベクターである。
siRNAをコードするヘアピン型DNAの3’末端には、転写停止シグナル配列として、或いはオーバーハングのために、1〜6個、好ましくは1〜5個のTからなるポリT配列、例えば4個又は5個のポリT配列が連結される。ベクターDNAから転写されたsiRNA前駆体としてのショートヘアピンRNA(shRNA)は、そのアンチセンス鎖の3’末端に2〜4個のUからなるオーバーハングを有することが望ましく、オーバーハングの存在によって、センス鎖RNA及びアンチセンス鎖RNAはヌクレアーゼによる分解に対して安定性を増すことができる。ヒトには内在性のダイサーが1つ存在し、これが長鎖dsRNAや前駆体miRNAをそれぞれsiRNAと成熟miRNAに変換する役割をもつ。
本発明における前記ループ配列の例は、5’−UUCAAGAGA−3’(配列番号135)、5’−CUUCCUGUCA−3’(配列番号136)、5’−UUCCAG−3’(配列番号137)などであるが、これらに限定されない。
本発明のRNAi核酸のなかで特に好ましいRNAi#3、RNAi#4、RNAi#5及びRNAi#6を発現するためのベクターに組み込まれるDNA配列の組み合わせはそれぞれ、下記の配列番号20と21、配列番号23と24、配列番号26と27、配列番号29と30である。なお、下線は、siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に対応する配列を示す。
本発明の上記発現ベクターは、上記ヘアピン型DNAの5’側にプロモーターを含むことができる。プロモーターの例は、pol IIIプロモーター、例えばヒトもしくはマウス由来のU6プロモーター又はH1プロモーター、pol IIプロモーター、或いはサイトメガロウイルスプロモーターである。
本発明の発現ベクターの別の例は、タンデム型ベクターである。このベクターは、前記siRNAを構成するセンス鎖RNA配列をコードするDNA配列とアンチセンス鎖RNA配列をコードするDNA配列とを連続して含み、かつ各鎖の5’末端にプロモーターが、また各鎖の3’末端にポリT配列がそれぞれ連結されたDNAを含み、ここで該DNAは、細胞内で転写後に該センス鎖RNAと該アンチセンス鎖RNAとがハイブリダイズして前記siRNAを形成するベクターである。
タンデム型ベクターにおけるプロモーターの例は、pol IIIプロモーター、例えばヒトもしくはマウス由来のU6プロモーター又はH1プロモーター、或いはサイトメガロウイルスプロモーターである。
また、ポリT配列は、1〜6個、好ましくは1〜5個のTからなるポリT配列、例えば4個又は5個のポリT配列である。
本発明のタンデム型ベクターは、細胞内に導入されたのち、センス鎖とアンチセンス鎖に相当するRNAに転写され、互いにハイブリダイズして目的のsiRNAを生成することができる。
本発明の実施形態により、上記ヘアピン型及びタンデム型ベクターは、プラスミドベクター又はウイルスベクターである。
プラスミドベクターは、後述の実施例に記載の手法又は文献記載の方法を用いて調製してもよいし、或いは市販のベクター系、たとえばpiGENETMU6系ベクター及びpiGENETMH1系ベクター(タカラバイオ株式会社)を利用することもできる(T.R.Brummelkampら,Science(2002),296:550−553;N.S.Leeら,Nature Biotech.(2002),20:500−505;M.Miyagishiら,Nat.Biotechnol.(2002),20:497−500;P.J.Paddisonら,Genes & Dev.(2002),16:948−958;T.Tusch,Nature Biotech(2002),20:446−448;C.P.Paulら,Nature Biotech.(2002),20:505−508;多比良和誠ら編、RNAi実験プロトコル、羊土社、2003年)。
プラスミドベクターは一般に、本発明のsiRNAをコードするDNA配列及びプロモーターの他に、薬剤耐性遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子など)、転写停止配列、ユニーク制限部位もしくはマルチプルクローニングサイト、複製開始点などを含むことができる。
ウイルスベクターは、たとえばアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター(白血病ウイルスベクターなど)、ヘルペスウイルスベクターなどを使用することができる。ウイルスベクターは、ヒトに使用する際に疾病を引き起こさないように例えば自己複製能を欠損したタイプのものが好ましい。たとえばアデノウイルスベクターの場合には、E1遺伝子及びE3遺伝子を欠失した自己複製能欠損型アデノウイルスベクター(例えばInvitrogen社のpAdeno−X)を使用することができる。ウイルスベクターの構築は、文献記載の方法を利用することができる(米国特許第5252479号、国際公開WO94/13788など)。
本発明のプラスミドベクターは、上記のとおり、例えばリポフェクタミン、リポフェクチン、セルフェクチン、又は正電荷コレステロールなどの正電荷リポソームと複合体を形成しカプセル化された状態で患者の体内に導入することができる(中西守ら,上記;Wuら,上記)。また、ウイルスベクターは患部に導入し細胞感染させることによって細胞内に遺伝子導入することができる(L.Zenderら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2003),100:77797−7802;H.Xiaら,Nature Biotech.(2002),20:1006−1010;X.F.Qinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2003),100:183−188;G.M.Bartonら,Proc.Natl.Acad.,Sci.USA(2002),99:14943−14945;J.D.Hommelら,Nature Med.(2003),9:1539−1544)。特にアデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターは種々の細胞種に非常に高い効率で遺伝子導入可能であることが確認されている。このベクターはまた、ゲノム中に組み込まれることがないため、その効果は一過性であり安全性も他のウイルスベクターと比べて高いと考えられる。
本発明のベクターに組み込まれるsiRNAをコードするDNAは、siRNAを構成するセンス鎖配列とアンチセンス鎖配列とが一本鎖ループ配列を介して共有結合されているヘアピン型RNAをコードし、かつ細胞内で転写により該ヘアピン型RNAを形成し、ダイサーによりプロセシングされて該siRNAを形成するものである。
本発明のベクターに組み込まれるsiRNAをコードするDNAの別の例は、siRNAを構成するセンス鎖配列をコードするDNA配列とアンチセンス鎖配列をコードするDNA配列とを連続して含み、かつ各鎖の5’末端にプロモーターが、また各鎖の3’末端にポリT配列がそれぞれ連結されており、該DNAは、細胞内で転写後に該センス鎖RNAと該アンチセンス鎖RNAとがハイブリダイズして前記siRNAを形成するものである。
1.2 アンチセンス核酸
本発明の組成物の有効成分としての別の核酸は、アンチセンス核酸である。このアンチセンス核酸は、配列番号2(202位〜2286位)のヌクレオチド配列を含むDREF遺伝子に対応するmRNAの配列、又はその部分配列、に相補的な配列を含むRNAか、或いは配列番号2(202位〜2286位)のヌクレオチド配列、又はその部分配列、に相補的な配列を含むDNAのいずれかである。
前記部分配列は、DREF遺伝子又はmRNAの配列において連続する約30以上、50以上、70以上、100以上、150以上、200以上又は250以上から全長以下、例えば50〜150、のヌクレオチドからなる配列を含むことができる。
アンチセンス核酸のヌクレオチドは、天然のヌクレオチドに加えて、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、メチル、カルボキシメチル又はチオ基などの基を有する修飾ヌクレオチドを含むことができる。
アンチセンス核酸は、周知のDNA/RNA合成技術又はDNA組換え技術を用いて合成することができる。DNA組換え技術によって合成する場合、配列番号2の配列を含むベクターDNAを鋳型にして、増幅しようとする配列を挟み込むプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って標的配列を増幅し、必要に応じてベクター中にクローニングして、アンチセンスDNAを生成することができる。或いは、このようにして得られた増幅標的配列を有するDNAをベクターに挿入し、該ベクターを真核又は原核細胞に導入し、その転写系を利用してアンチセンスRNAを得ることができる。ベクターは、上に記載のウイルスベクター、プラスミドベクターを使用することができる。
本発明のアンチセンス核酸は、それがDNAであってもRNAであっても、DREF mRNAに結合することによって、タンパク質への翻訳を抑制することができる。
本発明のアンチセンス核酸を患者に送達するために、アンチセンス核酸を、上述したような正電荷リポソーム等のリポソームに封入してもよいし、或いはアンチセンス核酸を、例えば強力なpol II又はpol IIIプロモーターの調節下にあるようにベクター(上述のプラスミド又はウイルスベクター)に組み込んでもよい。
1.3 抗体
本発明はさらに、配列番号1のアミノ酸配列を含むDREFタンパク質又はその変異体のインビボ機能を抑制する抗体又はそのフラグメントを含む、癌治療用組成物を提供する。
本発明の前記標的タンパク質は、DREF遺伝子によってコードされるタンパク質であり、ヒト癌の細胞増殖や細胞周期進行に関与するタンパク質である。したがって、癌細胞内に発現された該タンパク質の機能を阻害又は抑制することによって、結果として癌の増殖の抑制や細胞死に導くことができる。この目的のための薬剤は、DREFタンパク質又はその部分に対する抗体である。
好ましくは、DREFに対する抗体は、DREFのCR1ドメイン、CR2ドメイン又はCR3ドメイン(それぞれ配列番号135、133又は134)、或いはその部分に対する抗体である。特に好ましい抗体の例は、DREF上のDRE(DNA replication−related element)結合領域に対する抗体である。DREFのDNA結合ドメインは「BEDジンクフィンガー」と呼ばれ、亜鉛イオン(一個)をもつ蛋白構造を有する。このドメインはCR1内の一部であり、配列番号1のDREFアミノ酸配列の20番目〜74番目の配列(配列番号140)を含む。DREFのこのドメインを含む領域に対する抗体は、DREFのDNA結合を阻害し、その結果DREFのインビボ機能を阻害することができる。
また、別のDNA結合に関連するドメインは、DREFのCR3内の一部であり、配列番号1のDREFアミノ酸配列の571番目〜651番目の配列(配列番号141)を含む。このドメインは、アクチベータースーパーファミリー(hAT element superfamily)と呼ばれ、二量体形成ドメイン(dimerisation domain)である。DREFのこのドメインを含む領域に対する抗体は、DREFの二量体形成を阻害するため、結果としてDREFのDNA結合が阻害され、DREFのインビボ機能が阻害されうる。
本発明に有用な抗体の作製については、下記のCR1、CR2及びCR3ドメインのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を利用して、公知のペプチド合成技術又はDNA組換え技術を用いて(ポリ)ペプチドを合成し目的の抗体を作製することができる。
このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え産生抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab、F(ab’)2、scFv、Fv、二重特異抗体、合成抗体などが含まれる。抗体の特性及び構造については、小関至ら,実験医学22巻14号(増刊)125〜130頁,2004年、羊土社(東京、日本)に記載されており、その開示は本発明のために使用できる。
本発明での使用に適する好ましい抗体は、アナフィラキシーによる副作用を全く又はほとんど起こさないヒト抗体又はヒト化抗体、特にヒト又はヒト化モノクローナル抗体である。また、抗体のクラス、サブクラスは任意のタイプのものでよい。例えば、抗体のタイプには、IgG、IgM、IgE、IgD、IgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2が含まれる。抗体はまた、ペグ化、アセチル化、グリコシル化、アミド化などによって誘導体化されていてもよい。
ヒト抗体は、例えばファージジスプレイライブラリー(pharge display library)法(T.C.Thomasら,Mol.Immunol.33:1389−1401,1996)又はヒト抗体産生動物(例えばマウス、有蹄類など)を用いる方法(I.Ishidaら,Cloning Stem Cell 4:91−102,2002)によって製造できる。
ヒト抗体産生マウスは、例えば、ヒト人工染色体にヒト抗体産生遺伝子を含むヒト染色体断片を導入したのち、ミクロセル法を用いて例えばマウス胚性幹細胞ゲノムに人工染色体を組み込み、仮親マウスの子宮に移植し、キメラマウスを出産し、雌雄のキメラマウスの交配、或いはキメラマウスと同種の野生型マウスとの交配によって、ヒト抗体遺伝子を含み、したがってヒト抗体の産生が可能である、ホモ型の子孫マウスを作出するなどの方法によって作製することができる(例えば、再表02/092812、国際公開WO 98/24893、国際公開WO 96/34096など)。このヒト抗体産生トランスジェニックマウスに、本発明の標的DREFタンパク質を抗原として免疫したのち、脾臓を摘出し、慣用技術によってこの脾臓細胞とマウスミエローマ細胞とを融合してハイブリドーマを形成し、目的のモノクローナル抗体を作製することができる(G.Kohler及びC.Milstein,Nature 256:495−497,1975)。
ファージディスプレイ・ライブラリー法は、未処置のヒトリンパ細胞から直接入手した免疫グロブリン遺伝子のライブラリーから、目的の抗体をコードするDNAをスクリーニングし、このDNAと、抗体鎖との間に、ファージ粒子を用いて物理的会合を確立し、これによって、標的に親和性をもつ抗体を提示するファージを親和性スクリーニングによって富化することを含む。この方法を用いて、標的に対する結合親和性をもつ抗体を、通常の手法によって大量に合成することができる(例えば、特表2003−527832)。
ヒト化抗体は、例えば、ヒトDREFタンパク質を免疫したマウスから作製した該DREFに対するマウス抗体の相補性決定領域(CDR)を、ヒトIgGに結合することによって得ることができる。このようなヒト化抗体は、遺伝子組換え技術を用いることに作製可能である。抗体をヒト化する技術は、例えば米国特許第6639055号、同5530101号などに記載されている。
本発明において、DREFタンパク質の変異体は、ヒト個体内で自然発生的に生ずるすべての変異体を含み、例えば多型性や突然変異に基づくような変異体、或いは選択的スプライシングによる変異体を含む。変異体は、配列番号1のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加された配列を有し、かつ癌の細胞増殖に関与するインビボ機能を有する。本明細書において「数個」とは、10個以下、8個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下又は2個を意味する。或いは、変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の%同一性を有する配列を含むものである。本明細書において「%同一性」は、配列アラインメントにおいてギャップの導入が可能な公知のBLASTプログラム(BLASTX及びBLASTN)に基づいて決定されうる(例えばS.F.Altschulら,J.Mol.Bio.215:403−410,1990など)。
本発明の抗体又はその断片は、単独で、或いは抗癌剤(化学療法剤、放射性物質など)などの薬剤を結合させた形態で、癌に対する治療剤として用いることができる。抗癌剤には、例えばタキソール、シタラビン、シスプラチン、エトポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンブラスチン、パクリタキセルなどの化学療法剤、放射性インジウム、テクネチウム、イッテルビウムなどの放射性金属などが含まれるが、これらに限定されない。抗体への抗癌剤の結合は、例えばリンカーを介して共有結合によって、或いは金属イオンとの配位結合によって、抗体定常領域の任意の部位に抗癌剤を結合することを含む方法によって行うことができる。
患者への抗体又はそのフラグメントの送達は、単独か又は例えばリポソーム(好ましくは、正電荷リポソーム)、マイクロカプセル又はナノ粒子中に抗体又はそのフラグメントを封入した形態で、通常は適当な担体、賦形剤又は希釈剤と組み合わせて、非経口経路(例えば、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与など)にて行うことができる。
1.4 組成物
本発明の組成物は、癌、特にDREFを発現する癌をもつ患者を治療するために使用することができる。そのような癌の例は、以下のものに限定されないが、肺癌、食道癌、膵癌、胃癌、肝癌、大腸癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、皮膚癌、胆癌、脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、精巣癌、リンパ腫、メラノーマ、肉腫、骨肉種などを含み、より好ましい癌は、肺癌、食道癌、乳癌、膵癌などである。
本発明の組成物中の核酸の用量は、siRNA分子又はアンチセンス核酸分子に換算すると、以下のものに限定されないが、1投与単位あたり、1nM〜100μM、好ましくは10nM〜50μM、より好ましくは100nM〜20μMである。
本発明の組成物中の抗体又はそのフラグメントの用量は、以下のものに限定されないが、1投与単位あたり、約1〜約100mg/ml、約5〜約70mg/ml、約10〜50mg/mlである。
しかし、上記の用量又は投与量は、患者の状態、年齢、性別、重篤度などに応じて変化しうるものであり、専門医の判断により用量又は投与量が決定されるべきである。
本発明の組成物は、通常、製薬上許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤、例えば滅菌水、生理食塩水、緩衝液、非水性液体(例えば、アーモンド油、植物油、エタノールなど)などを含むことができる。該組成物にはさらに、製薬上許容可能な安定剤(例えばメチオニンなどのアミノ酸類)、保存剤(p−ヒドロキシ安息香酸メチル、ソルビン酸)、等張化剤(例えば塩化ナトリウム)、乳化剤(例えばレシチン、アラビアゴム)、懸濁化剤(例えばセルロース誘導体)などを含有させることができる。
好ましい医薬製剤は、溶液剤、懸濁液剤、乳剤、リポソーム封入剤などである。
本発明の組成物の投与方法は、非経口投与、例えば静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与などを含む。局所投与には、外科手術又は内視鏡下で患部に直接注射する方法などが含まれる。また、専門医が決定した治療計画に基づいて、一定の時間間隔、例えば1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、1年又は2年などの間隔で、患者に対して、本発明の組成物を1〜数回に分けて投与することができる。
本発明のRNAi核酸、アンチセンス核酸、又は抗体を癌、特に肺癌に適用したとき、肺癌細胞で強く細胞周期停止とともに細胞死誘導を起こすことができる。特に一部の肺癌細胞では、mitotic catastrophと呼ばれる、M期での細胞死誘導が見られた。一方、正常肺由来細胞株では、肺癌に比して、細胞周期停止は軽度であった。
本発明のDREFを標的とする癌治療法は、下記に述べる治療剤のスクリーニング法と組み合わせることによって、癌患者の症例に最適なオーダーメイド医療として使用できるだろう。
2.癌治療薬のスクリーニング
本発明はさらにヒト培養癌細胞、或いは強発現可能にDREF遺伝子をトランスフェクションした(正常又は非正常)ヒト細胞株、を含む培地に候補薬剤を加えて、DREF遺伝子の発現又は翻訳を抑制する薬剤をインビトロでスクリーニングすることを含む、癌治療用薬剤をスクリーニングする方法を提供する。
薬剤のスクリーニングは、具体的には、癌細胞、或いはDREF強発現哺乳類(例えばヒト、マウスなど、好ましくはヒト)細胞株、の細胞増殖抑制、細胞周期停止及び/又は細胞死誘導を指標とすることができる。
具体的には、本発明の方法は、ヒト培養癌細胞、又はDREF強発現細胞株、を準備し、該細胞を候補薬剤の存在下で培養し、DREF遺伝子又はmRNAの発現の抑制について、或いは上記細胞又は細胞株の細胞増殖抑制、細胞周期停止及び/又は細胞死誘導について、候補薬剤をスクリーニングすることを含む。
ヒト培養癌細胞には、公知の癌細胞株、癌患者からのバイオプシー由来の癌細胞などが含まれ、本発明において使用できる。癌細胞株の例は、いずれも肺癌細胞株である、ACC−LC−91(H.Osadaら,Mol.Carcinog.2005,44:233−241)等のACC−LC、A549(ATCC,Rockvill,MD)、PC10(免疫生物研究所、群馬、日本)、Calu6(ATCC,Rockvill,MD)などである。
DREF強発現細胞株は、例えば次のようにして作製することができる。レンチウイルスベクター(例えばCSII−CMV−MCS−IRES2−Bsdベクター(理化学研究所(埼玉、日本)の三好浩之博士から入手)にDREF cDNAを挿入したレンチウイルスを作製し、これを、ヒト正常気道上皮由来細胞株BEAS2Bに感染させ、Blasticidin(Invitrogen)で選択培養することで、DREFを恒常的に強発現している株を選択する。培養培地としては、例えば胎児牛血清1%添加F12培地(Sigma)を使用できる。増殖速度は、TetraColorOneTM(生化学工業、東京、日本)を用いるMTTアッセイなどによって測定できる。このようにして実際に作製されたDREF強発現細胞株(例えばBEAS2B−DREF株)は、6日の培養で対照株と比べて約3倍の増殖速度の亢進が観察された。
本発明の方法において、DREF遺伝子又はmRNAの発現の抑制の程度は、候補薬剤を添加しない対照との比較実験によって判定できる。発現レベルは、癌細胞、又はDREF強発現細胞株、から周知の方法(例えばフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール法やグアニジウム/CsCl法、オリゴdTセルロースカラムクロマトグラフィーなど)で得た全RNA又はmRNA又はポリA(+)RNAについて、或いは逆転写酵素−PCR(RT−PCR)法によってRNAから合成されたcDNAについて、定量RT−PCR法、蛍光又は放射性標識したプローブを用いるハイブリダイゼーション法(例えばノーザンハイブリダイゼーション、サザンハイブリダイゼーション、DNAマイクロアレイ、組織マイクロアレイなど)によって決定することができる(西郷薫ら訳、分子生物学実験プロトコールI,II,III、1997年、丸善)。或いは、発現レベルは、DREF遺伝子によってコードされるタンパク質(配列番号1)の細胞内レベルを、該タンパク質に対する抗体又はそのフラグメントを用いる免疫測定法、ウエスタンハイブリダイゼーション法、組織染色法などによって測定することによって間接的に決定することができる。
前記プローブは、配列番号2(202位〜2286位)のヌクレオチド配列又はそれと相補的な配列、或いはその連続する例えば約20以上、約30以上、50以上、70以上、100以上、150以上、200以上、250以上のヌクレオチドからなる配列、を有するDNAである。プローブは、蛍光又は放射性標識を結合した標識プローブとするのが好ましい。蛍光性標識には、例えばフルオレサミン、ローダミン、それらの誘導体、Cy3、Cy5などが含まれる、放射性標識には、例えば放射性リン又はイオウ原子が含まれる。
ハイブリダイゼーションは、低ハイブリダイゼーション、中ハイブリダイゼーション又は高ハイブリダイゼーション条件によって、好ましくは高ハイブリダイゼーション条件によって行うことができる。例えば、約45〜50℃で2〜6×SSC(1×SSCは150mM塩化ナトリウム/15mMクエン酸ナトリウム)中でのハイブリダイゼーションと、それに続く、約50〜65℃での0.2〜2×SSC/0.1〜1%SDSによる洗浄からなる(例えば、Ausubelら,Curent Protocols in Molecular Biology,1995年,John Wiley and Sons,US;西郷薫ら訳、分子生物学実験プロトコールI,II,III、1997年、丸善)。或いは、60〜65℃で6×SSC、Denhardt’s溶液、0.2%SDS中でのハイブリダイゼーションののち、60〜65℃での0.2×SSC、0.1%SDSによる洗浄などからなる。ハイブリダイゼーション温度は、一般に融解温度(Tm)より5〜10℃低い温度を使用することができる。Tmは、例えば、式:Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)(式中、Nはハイブリッドの塩基数であり、[Na+]はハイブリダイゼーションバッファ中のNa+の濃度である。)によって求めることができる(J.Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Mannual 2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)。
候補薬剤は、小分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸(DNA又はRNA)などを含むが、これらに限定されない。
免疫測定法は、抗原−抗体反応を利用する分析法であり、例えば酵素結合抗体法(例えばELISA)、蛍光抗体法、固相法、均一法、サンドイッチ法、ビオチン/アビジン系などを適宜組み合わせて行うことができる。固相としては、例えば市販のプラスチック製プレート(例えばポリスチレン製の96ウエルプレートなど)を使用することができる。これらの方法は、当業界で周知であり、その慣用技術を本発明で使用できる。
ヒト培養癌細胞、又はDREF強発現細胞株、において、DREF遺伝子又はmRNAの発現が、候補薬剤の存在によって、候補薬剤無添加の対照と比べて、有意に阻害又は抑制される場合、該候補薬剤は癌治療剤として同定しうる。
定量RT−PCRは、例えば、Taqポリメラーゼなどの耐熱性ポリメラーゼの存在下でmRNA又はポリA(+)RNAを鋳型に、DREF遺伝子の配列由来のプラーマーを用いるPCRによって行うことができる。プライマーのサイズは、約15〜30ヌクレオチド、好ましくは17〜25ヌクレオチドである。このとき発現変動のないハウスキーピング遺伝子の発現量に対するDREF遺伝子の発現量を決定する。
候補薬剤のスクリーニングはまた、ヒト培養癌細胞、又はDREF強発現細胞株、の細胞増殖の抑制、細胞周期の停止、又は細胞死を調べることによっても行うことができる。
細胞増殖は、次の手法によって測定できる。遺伝子導入の翌日、細胞を蒔き直した後にpuromycin(2μg/ml)で2日間選択し、更にpuromycin(0.5μg/ml)で10日間選択を続ける。その後、TetraColorOneTM(生化学工業、東京、日本)5%入り培地に置き換え、37℃で1時間反応させる。その後その培地を回収しプレートリーダーにてOD450nmを測定し(このとき、OD630nmを対照とする。)、生存細胞数とする(colorimetric assay)。又、その後、細胞はメタノール固定後に、5%Giemsa(Sigma−Aldrich)水溶液にて染色する。
細胞周期及び細胞死は、次の手法によって測定できる。遺伝子導入細胞をpuromycin選択後に回収し、低張液(75mM KCl)に浮遊させる(37℃,20分)。その後、攪拌しながら固定液(メタノール:氷酢酸=3:1混合液)約3容を加えて細胞を固定する。遠心上清除去後に再度固定液に浮遊させる。細胞浮遊液をスライドガラス上に1、2滴滴下し風乾する。その後5% Giemsa水溶液にて核染色体を染色する。実体顕微鏡BHT−323(Olympus)にて観察し、細胞を間期(Go/G1,S,G2)、細胞分裂前期(Prophase)、細胞分裂中期(Metaphase)、細胞分裂後期/終期(Anaphase/telophase)、及び死細胞(mitotic catastroph及びapoptosis)に分けて計測する。
3.DREF遺伝子の発現抑制によって影響を受ける遺伝子群
DREF遺伝子の発現をRNAi核酸によって抑制したときに、発現が変化する遺伝子群を、マイクロアレイを使用して解析した。
DREF−RNAi#4によるDREF遺伝子の発現抑制によって、表1(下記参照)に示される遺伝子群の発現に変化が認められた。
DREF−RNAi#3によるDREF遺伝子の発現抑制によって、表2(下記参照)に示される遺伝子群の発現に変化が認められた。
遺伝子の多くが、癌の発症、癌の進展、癌の転移と関連の高いものであることが判明した。これらの解析からも、DREFが種々の癌にとって重要な因子であることが分かる。それゆえに、DREFを分子標的とする本発明の方法は、癌の治療にとって有効な方法を提供するものであるといえる。
以下の実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって制限されないものとする。
本発明は、癌細胞又は癌組織においてヒト細胞増殖制御因子DREF又はDREF遺伝子のインビボ機能を抑制する、DREFに対するRNAi核酸、アンチセンス核酸又は抗体を含むことを特徴とする癌治療用組成物を提供する。
DREFは、癌細胞又は癌組織で発現されるが、正常細胞又は正常組織では実質的に(或いは、ほとんど又は全く)発現されない。本発明者らは、この知見に加えて、癌細胞又は組織においてDREF遺伝子の発現又はタンパク質への翻訳を抑制(阻止又は阻害を含む)すると、癌の細胞増殖抑制、細胞周期停止、細胞死誘導などの事象が起こることを見出した。
本発明による治療の対象となる癌は、DREFの発現が可能である癌、以下のものに限定されないが、例えば肺癌、食道癌、膵癌、胃癌、肝癌、大腸癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、皮膚癌、胆癌、脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、精巣癌、リンパ腫、メラノーマ、肉腫、骨肉種などを含む。好ましい癌は、肺癌、食道癌、乳癌、膵癌などである。
本発明の標的であるDREFのアミノ酸配列及びDREF遺伝子のヌクレオチド配列はそれぞれ、例えば配列番号1、配列番号2(オープンリーディングフレーム(ORF):202位〜2286位)として公知である。DREFのアミノ酸及びヌクレオチド配列はともに、GenBankにAccession number NM_004729として登録されている。本発明においては、DREF又はDREF遺伝子の変異体、例えば、突然変異、多型、選択的スプライシング、縮重などに基づいた変異体のインビボ機能を抑制することも含む。
具体的には、本発明におけるDREFは、配列番号1に示されるアミノ酸配列、或いは該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加を含むアミノ酸配列、を含むタンパク質である。或いは、本発明におけるDREFは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつDREFと同等のインビボ機能を有する変異体も包含する。
また、本発明におけるDREF遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列によってコードされるヌクレオチド配列、より具体的には配列番号2に示されるヌクレオチド配列、特に202位〜2286位のDREF ORFに対応するヌクレオチド配列を含む。本発明におけるDREF遺伝子はさらに、配列番号2の202位〜2286位に示されるヌクレオチド配列において1もしくは数個のヌクレオチドの欠失、置換又は付加を含むヌクレオチド配列を含むDNAである。或いは、本発明におけるDREF遺伝子は、配列番号2の202位〜2286位に示されるヌクレオチド配列と95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、かつ翻訳後にDREFと同等のインビボ機能を有する変異体も包含する。
本明細書で使用される「数個」なる用語は、約10以下の整数、例えば9、8、7、6、5、4、3、2を意味する。
DREFは、細胞増殖や細胞周期進行などのインビボ機能をもつが、本発明は、癌においてDREFのインビボ機能を抑制して癌の縮退や細胞死に導くことを可能にする。
本発明において、標的DREF遺伝子の発現又はタンパク質翻訳を抑制する薬剤として、DREFに対するRNAi核酸、アンチセンス核酸及び抗体を挙げることができる。これらの各薬剤について、以下にさらに具体的に説明する。
1.1 RNAi核酸
本発明で使用可能なRNAi核酸は、DREF遺伝子(エキソン、イントロン、3’非翻訳領域及び5’非翻訳領域からなる)のヌクレオチド配列、或いはDREF mRNAのヌクレオチド配列、に由来の連続する19〜30ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドを含むDNA又はRNAである。
本発明で使用可能なRNAi法は、1)短い二重鎖RNA(siRNA)を細胞内に直接導入する、或いは2)short−hairpin型RNA(shRNA)を各種発現ベクターに組み込み、そのベクターを細胞内に導入する、或いは3)対立方向に並ぶ2個のプロモーターを持つベクターに、siRNAに対応する短い二重鎖DNAをプロモーター間に挿入してsiRNAを発現させるベクターを作製し、細胞内に導入する、などの手法を含む。
上記のRNAi核酸は、DREF mRNAの切断又はその機能抑制を可能にするsiRNA、shRNA又はmiRNAを含む。また、RNAi核酸は、インビボで使用したときに、siRNA、shRNA又はmiRNAを産生することを可能にする、これらのRNAをコードするDNA又は該DNAを含むベクターであってもよい。
本発明において、好ましいRNAi核酸は、DREFのCR2ドメイン又はCR3ドメインをコードするヌクレオチド配列(それぞれ配列番号3及び4)に由来の連続する19〜30ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドを含むDNA、又は該DNAに対応するRNAである。さらに好ましいCR2ドメイン又はCR3ドメインの標的部位はそれぞれ、例えば、DREF遺伝子の配列番号2の配列において、1,300位〜1,500位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1099位〜1299位)、1,900〜2,000位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1699位〜1799位)などに存在する。
本発明において使用可能なRNAi核酸は、例えば下記の配列番号5〜15、19、22、25及び28のいずれかのDNA配列、又はそのDNA配列に対応するRNA配列(すなわち、DNA配列のTをUに置き換えた配列)、を含むものである。なお、下記の配列の後に記載の数字は、DREFのORF上の開始部位の位置(但し、ORFの開始コドンATGの塩基「A」を第1番目として番号づけする。)を表す。
特に好ましい配列は、配列番号19(RNAi #3(1136〜1156位))、配列番号22(RNAi #4(1718〜1738位))、配列番号25(RNAi #5(1245〜1265位))、及び配列番号28(RNAi #6(1737〜1757位))のDNA配列、又はそのDNA配列に対応するRNA配列(すなわち、DNA配列のTをUに置き換えた配列)、である。なお、配列番号と共に括弧内に示した数字範囲は、配列番号2のヌクレオチド配列において、DREF ORFの開始コドンATGの塩基「A」(202位)を第1番目として番号づけしたときの位置を表す。
DREFに対するRNAi核酸の別の例は、下記の配列番号33〜132のDNA配列、又はそのDNA配列に対応するRNA配列(すなわち、DNA配列のTをUに置き換えた配列)、である。
本発明の好適な実施形態において、RNAi核酸は、配列番号2のヌクレオチド配列を含むDREF遺伝子によってコードされるmRNA又はその変異体の配列からの連続する19〜30ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドのセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列とを含んでなるsiRNAである。ここで、該siRNAは、インビボ又はインビトロでDREF遺伝子又はmRNAの発現を抑制することができる。siRNAを構成する対応のDNA配列の好ましい例は、DREFのCR2ドメイン又はCR3ドメインをコードするヌクレオチド配列(それぞれ配列番号3及び4)に由来の連続する19〜30ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドを含むDNA配列、より好ましい例は、配列番号2のヌクレオチド配列において、1,300位〜1,500位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1099位〜1299位)、1,900〜2,000位(ORFの開始コドンATGの「A」を第1位とした場合1699位〜1799位)の配列からの連続する19〜30ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドを含むDNA配列、さらに好ましい例は、配列番号5〜15、19、22、25、28、33〜132によって示されるDNA配列である。
本発明において、DREF RNAi核酸の配列は、上記の配列に限定されず、DREF遺伝子、対応するmRNA又はその変異体のインビボにおける機能を抑制する限り、例えば、配列番号2のヌクレオチド配列において上記の配列番号5〜15、19、22、25、28、33〜132の各配列を5’方向又は3’方向に1〜5塩基シフトした配列も包含されるし、或いは上記の特定の配列と異なる、例えば1〜3個の塩基が異なる、配列であってもよい。
本発明のsiRNAは、上に例示したようなsiRNAの標的となるDREF配列に基づいて、周知の化学合成技術を用いて合成することができる。例えば、固相ホスホアミダイト法などのDNA合成技術を利用したDNA(/RNA)自動合成装置を使用して化学的に合成するか、或いは、siRNA関連の受託合成会社(例えばフナコシ株式会社、Dharmacon社、Ambion社など)に委託して合成することも可能である。
本発明の実施形態によれば、本発明のsiRNAは、その前駆体である二本鎖RNA(shRNA)から、細胞内RNアーゼであるダイサー(Dicer)によるプロセシングを介して誘導されてもよい。
shRNAは、siRNAのセンス鎖配列とアンチセンス鎖配列との間にループを有する二本鎖RNAであり、好ましくはその3’末端に1〜6個、好ましくは2〜4個のポリUからなるオーバーハングを含む。shRNAは、RNアーゼIIIファミリーに属するダイサーによってsiRNAにプロセシングされたのち、siRNAが一本鎖化され、そのアンチセンス鎖RNAがRNA切断活性をもつ分子等と複合体RISC(RNA−Induced Silencing Complex)を形成し、これによってsiRNA配列に相補的な配列を持つ標的mRNAが切断され、その結果、DREF遺伝子の発現が抑制される。
したがって、本発明の上記siRNA及びその前駆体shRNAはいずれも、本発明の組成物の有効成分として使用することができる。
選択されたRNAi核酸は、臨床使用の際にいわゆるオフターゲット(off−target)作用を示さないことが望ましい。オフターゲット作用とは、標的遺伝子以外に、使用したRNAi核酸に部分的にホモロジーのある別の遺伝子の発現を抑制する作用をいう。オフターゲット作用を避けるために、候補RNAi核酸について、予めジーンチップなどを利用して交差反応がないことを確認するか、或いはGenBank(米国NCBI)などのデータベースを利用して配列同一性のない又はほとんどないことを確認することが必要である。しかし幸いにも、ヒトDREFは、ヒトにおいて、正常細胞で実質的に発現されない一方で、癌細胞で有意に発現されるため、オフターゲット作用の問題は回避できると予想される。
本発明のRNAi核酸を患者の体内に導入するときには、核酸を患部に直接注入するか、又は核酸の発現が可能なベクターを使用することが好ましい。或いは、siRNA又はベクターを、リポソーム、例えばリポフェクタミン、リポフェクチン、セルフェクチン、他の正電荷リポソーム(例えば、正電荷コレステロール)、又はマイクロカプセル、と複合体形成し、この複合体を使用することもできる(例えば、中西守ら,蛋白質 核酸 酵素,44巻11号,48〜54頁,1999年;Clinical Cancer research 59:4325−4333,1999;Wuら,J.Biol.Chem.262:4429,1987)。哺乳動物細胞の細胞膜は負電荷を帯びているため、正電荷リポソームが好ましく使用される。正電荷リポソーム−核酸複合体は、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれたのち、核酸はさらに細胞質又は核へ移行することができる。
或いは、本発明の治療用RNAi核酸を、粒径約500nm以下のナノ粒子中に封入することもできる。ナノ粒子として、例えばB型肝炎ウイルスエンベロープL粒子から形成されるホローナノ粒子(hollow nanoparticles)が例示され、核酸は、エレクトロポレーションによってこの粒子内に封入される。この核酸封入粒子は、血中に投与されるとき肝臓に送達されうる(T.Yamadaら,Nature Biotech 21(8):885−890,2003)ため、肝癌の治療に有用であろう。
或いは、本発明の治療用RNAi核酸をリポソーム中に封入するときには、核酸を硫酸プロタミンで処理して凝縮を起こし核酸−タンパク質複合体としたのち、正電荷脂質又は高分子ミセル中に封入することもできる。
リポソーム−核酸複合体は、例えば逆相蒸発法(F.Szokaら,Biochim.Biophys.Acta,601:559,1980)、ボルテックス振とう法、カルシウム融合−EDTAキレート法(金田安史,実験医学22巻14号(増刊),147〜152頁,2004年)などの方法によって製造することができる。
本発明のsiRNAやベクターなどの核酸を標的癌細胞の中に導入する別の方法は、マイクロインジェクション法、ウイルスベクター法などがある。
マイクロインジェクション法は、微細な注入針で核酸を細胞内に直接顕微注入する方法である。
ウイルスベクター法は、ウイルスベクターを用いて核酸を細胞内に導入する方法であって、siRNA、shRNA又はmiRNAを発現する発現ユニットを組み込んだ組換えウイルスを作製し、細胞に感染させて細胞内で発現させる方法である。ウイルスの例は、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスなどを含む。
本発明の実施形態により、本発明で使用可能な核酸として、前記siRNAやshRNAなどのRNAi核酸をコードするDNA配列をプロモーターの調節下に含む発現ベクターが含まれる。
発現ベクターの1つの例は、ヘアピン型ベクターである。このベクターは、前記センス鎖RNA配列と前記アンチセンス鎖RNA配列とが一本鎖ループ配列を介して共有結合されているヘアピン型RNAをコードするDNAを含み、ここで該DNAは、細胞内で転写により該ヘアピン型RNAを形成し、ダイサーによりプロセシングされて前記siRNAを形成するベクターである。
siRNAをコードするヘアピン型DNAの3’末端には、転写停止シグナル配列として、或いはオーバーハングのために、1〜6個、好ましくは1〜5個のTからなるポリT配列、例えば4個又は5個のポリT配列が連結される。ベクターDNAから転写されたsiRNA前駆体としてのショートヘアピンRNA(shRNA)は、そのアンチセンス鎖の3’末端に2〜4個のUからなるオーバーハングを有することが望ましく、オーバーハングの存在によって、センス鎖RNA及びアンチセンス鎖RNAはヌクレアーゼによる分解に対して安定性を増すことができる。ヒトには内在性のダイサーが1つ存在し、これが長鎖dsRNAや前駆体miRNAをそれぞれsiRNAと成熟miRNAに変換する役割をもつ。
本発明における前記ループ配列の例は、5’−UUCAAGAGA−3’(配列番号135)、5’−CUUCCUGUCA−3’(配列番号136)、5’−UUCCAG−3’(配列番号137)などであるが、これらに限定されない。
本発明のRNAi核酸のなかで特に好ましいRNAi#3、RNAi#4、RNAi#5及びRNAi#6を発現するためのベクターに組み込まれるDNA配列の組み合わせはそれぞれ、下記の配列番号20と21、配列番号23と24、配列番号26と27、配列番号29と30である。なお、下線は、siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に対応する配列を示す。
本発明の上記発現ベクターは、上記ヘアピン型DNAの5’側にプロモーターを含むことができる。プロモーターの例は、pol IIIプロモーター、例えばヒトもしくはマウス由来のU6プロモーター又はH1プロモーター、pol IIプロモーター、或いはサイトメガロウイルスプロモーターである。
本発明の発現ベクターの別の例は、タンデム型ベクターである。このベクターは、前記siRNAを構成するセンス鎖RNA配列をコードするDNA配列とアンチセンス鎖RNA配列をコードするDNA配列とを連続して含み、かつ各鎖の5’末端にプロモーターが、また各鎖の3’末端にポリT配列がそれぞれ連結されたDNAを含み、ここで該DNAは、細胞内で転写後に該センス鎖RNAと該アンチセンス鎖RNAとがハイブリダイズして前記siRNAを形成するベクターである。
タンデム型ベクターにおけるプロモーターの例は、pol IIIプロモーター、例えばヒトもしくはマウス由来のU6プロモーター又はH1プロモーター、或いはサイトメガロウイルスプロモーターである。
また、ポリT配列は、1〜6個、好ましくは1〜5個のTからなるポリT配列、例えば4個又は5個のポリT配列である。
本発明のタンデム型ベクターは、細胞内に導入されたのち、センス鎖とアンチセンス鎖に相当するRNAに転写され、互いにハイブリダイズして目的のsiRNAを生成することができる。
本発明の実施形態により、上記ヘアピン型及びタンデム型ベクターは、プラスミドベクター又はウイルスベクターである。
プラスミドベクターは、後述の実施例に記載の手法又は文献記載の方法を用いて調製してもよいし、或いは市販のベクター系、たとえばpiGENETMU6系ベクター及びpiGENETMH1系ベクター(タカラバイオ株式会社)を利用することもできる(T.R.Brummelkampら,Science(2002),296:550−553;N.S.Leeら,Nature Biotech.(2002),20:500−505;M.Miyagishiら,Nat.Biotechnol.(2002),20:497−500;P.J.Paddisonら,Genes & Dev.(2002),16:948−958;T.Tusch,Nature Biotech(2002),20:446−448;C.P.Paulら,Nature Biotech.(2002),20:505−508;多比良和誠ら編、RNAi実験プロトコル、羊土社、2003年)。
プラスミドベクターは一般に、本発明のsiRNAをコードするDNA配列及びプロモーターの他に、薬剤耐性遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子など)、転写停止配列、ユニーク制限部位もしくはマルチプルクローニングサイト、複製開始点などを含むことができる。
ウイルスベクターは、たとえばアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター(白血病ウイルスベクターなど)、ヘルペスウイルスベクターなどを使用することができる。ウイルスベクターは、ヒトに使用する際に疾病を引き起こさないように例えば自己複製能を欠損したタイプのものが好ましい。たとえばアデノウイルスベクターの場合には、E1遺伝子及びE3遺伝子を欠失した自己複製能欠損型アデノウイルスベクター(例えばInvitrogen社のpAdeno−X)を使用することができる。ウイルスベクターの構築は、文献記載の方法を利用することができる(米国特許第5252479号、国際公開WO94/13788など)。
本発明のプラスミドベクターは、上記のとおり、例えばリポフェクタミン、リポフェクチン、セルフェクチン、又は正電荷コレステロールなどの正電荷リポソームと複合体を形成しカプセル化された状態で患者の体内に導入することができる(中西守ら,上記;Wuら,上記)。また、ウイルスベクターは患部に導入し細胞感染させることによって細胞内に遺伝子導入することができる(L.Zenderら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2003),100:77797−7802;H.Xiaら,Nature Biotech.(2002),20:1006−1010;X.F.Qinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2003),100:183−188;G.M.Bartonら,Proc.Natl.Acad.,Sci.USA(2002),99:14943−14945;J.D.Hommelら,Nature Med.(2003),9:1539−1544)。特にアデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターは種々の細胞種に非常に高い効率で遺伝子導入可能であることが確認されている。このベクターはまた、ゲノム中に組み込まれることがないため、その効果は一過性であり安全性も他のウイルスベクターと比べて高いと考えられる。
本発明のベクターに組み込まれるsiRNAをコードするDNAは、siRNAを構成するセンス鎖配列とアンチセンス鎖配列とが一本鎖ループ配列を介して共有結合されているヘアピン型RNAをコードし、かつ細胞内で転写により該ヘアピン型RNAを形成し、ダイサーによりプロセシングされて該siRNAを形成するものである。
本発明のベクターに組み込まれるsiRNAをコードするDNAの別の例は、siRNAを構成するセンス鎖配列をコードするDNA配列とアンチセンス鎖配列をコードするDNA配列とを連続して含み、かつ各鎖の5’末端にプロモーターが、また各鎖の3’末端にポリT配列がそれぞれ連結されており、該DNAは、細胞内で転写後に該センス鎖RNAと該アンチセンス鎖RNAとがハイブリダイズして前記siRNAを形成するものである。
1.2 アンチセンス核酸
本発明の組成物の有効成分としての別の核酸は、アンチセンス核酸である。このアンチセンス核酸は、配列番号2(202位〜2286位)のヌクレオチド配列を含むDREF遺伝子に対応するmRNAの配列、又はその部分配列、に相補的な配列を含むRNAか、或いは配列番号2(202位〜2286位)のヌクレオチド配列、又はその部分配列、に相補的な配列を含むDNAのいずれかである。
前記部分配列は、DREF遺伝子又はmRNAの配列において連続する約30以上、50以上、70以上、100以上、150以上、200以上又は250以上から全長以下、例えば50〜150、のヌクレオチドからなる配列を含むことができる。
アンチセンス核酸のヌクレオチドは、天然のヌクレオチドに加えて、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、メチル、カルボキシメチル又はチオ基などの基を有する修飾ヌクレオチドを含むことができる。
アンチセンス核酸は、周知のDNA/RNA合成技術又はDNA組換え技術を用いて合成することができる。DNA組換え技術によって合成する場合、配列番号2の配列を含むベクターDNAを鋳型にして、増幅しようとする配列を挟み込むプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って標的配列を増幅し、必要に応じてベクター中にクローニングして、アンチセンスDNAを生成することができる。或いは、このようにして得られた増幅標的配列を有するDNAをベクターに挿入し、該ベクターを真核又は原核細胞に導入し、その転写系を利用してアンチセンスRNAを得ることができる。ベクターは、上に記載のウイルスベクター、プラスミドベクターを使用することができる。
本発明のアンチセンス核酸は、それがDNAであってもRNAであっても、DREF mRNAに結合することによって、タンパク質への翻訳を抑制することができる。
本発明のアンチセンス核酸を患者に送達するために、アンチセンス核酸を、上述したような正電荷リポソーム等のリポソームに封入してもよいし、或いはアンチセンス核酸を、例えば強力なpol II又はpol IIIプロモーターの調節下にあるようにベクター(上述のプラスミド又はウイルスベクター)に組み込んでもよい。
1.3 抗体
本発明はさらに、配列番号1のアミノ酸配列を含むDREFタンパク質又はその変異体のインビボ機能を抑制する抗体又はそのフラグメントを含む、癌治療用組成物を提供する。
本発明の前記標的タンパク質は、DREF遺伝子によってコードされるタンパク質であり、ヒト癌の細胞増殖や細胞周期進行に関与するタンパク質である。したがって、癌細胞内に発現された該タンパク質の機能を阻害又は抑制することによって、結果として癌の増殖の抑制や細胞死に導くことができる。この目的のための薬剤は、DREFタンパク質又はその部分に対する抗体である。
好ましくは、DREFに対する抗体は、DREFのCR1ドメイン、CR2ドメイン又はCR3ドメイン(それぞれ配列番号135、133又は134)、或いはその部分に対する抗体である。特に好ましい抗体の例は、DREF上のDRE(DNA replication−related element)結合領域に対する抗体である。DREFのDNA結合ドメインは「BEDジンクフィンガー」と呼ばれ、亜鉛イオン(一個)をもつ蛋白構造を有する。このドメインはCR1内の一部であり、配列番号1のDREFアミノ酸配列の20番目〜74番目の配列(配列番号140)を含む。DREFのこのドメインを含む領域に対する抗体は、DREFのDNA結合を阻害し、その結果DREFのインビボ機能を阻害することができる。
また、別のDNA結合に関連するドメインは、DREFのCR3内の一部であり、配列番号1のDREFアミノ酸配列の571番目〜651番目の配列(配列番号141)を含む。このドメインは、アクチベータースーパーファミリー(hAT element superfamily)と呼ばれ、二量体形成ドメイン(dimerisation domain)である。DREFのこのドメインを含む領域に対する抗体は、DREFの二量体形成を阻害するため、結果としてDREFのDNA結合が阻害され、DREFのインビボ機能が阻害されうる。
本発明に有用な抗体の作製については、下記のCR1、CR2及びCR3ドメインのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を利用して、公知のペプチド合成技術又はDNA組換え技術を用いて(ポリ)ペプチドを合成し目的の抗体を作製することができる。
このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え産生抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab、F(ab’)2、scFv、Fv、二重特異抗体、合成抗体などが含まれる。抗体の特性及び構造については、小関至ら,実験医学22巻14号(増刊)125〜130頁,2004年、羊土社(東京、日本)に記載されており、その開示は本発明のために使用できる。
本発明での使用に適する好ましい抗体は、アナフィラキシーによる副作用を全く又はほとんど起こさないヒト抗体又はヒト化抗体、特にヒト又はヒト化モノクローナル抗体である。また、抗体のクラス、サブクラスは任意のタイプのものでよい。例えば、抗体のタイプには、IgG、IgM、IgE、IgD、IgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2が含まれる。抗体はまた、ペグ化、アセチル化、グリコシル化、アミド化などによって誘導体化されていてもよい。
ヒト抗体は、例えばファージジスプレイライブラリー(pharge display library)法(T.C.Thomasら,Mol.Immunol.33:1389−1401,1996)又はヒト抗体産生動物(例えばマウス、有蹄類など)を用いる方法(I.Ishidaら,Cloning Stem Cell 4:91−102,2002)によって製造できる。
ヒト抗体産生マウスは、例えば、ヒト人工染色体にヒト抗体産生遺伝子を含むヒト染色体断片を導入したのち、ミクロセル法を用いて例えばマウス胚性幹細胞ゲノムに人工染色体を組み込み、仮親マウスの子宮に移植し、キメラマウスを出産し、雌雄のキメラマウスの交配、或いはキメラマウスと同種の野生型マウスとの交配によって、ヒト抗体遺伝子を含み、したがってヒト抗体の産生が可能である、ホモ型の子孫マウスを作出するなどの方法によって作製することができる(例えば、再表02/092812、国際公開WO 98/24893、国際公開WO 96/34096など)。このヒト抗体産生トランスジェニックマウスに、本発明の標的DREFタンパク質を抗原として免疫したのち、脾臓を摘出し、慣用技術によってこの脾臓細胞とマウスミエローマ細胞とを融合してハイブリドーマを形成し、目的のモノクローナル抗体を作製することができる(G.Kohler及びC.Milstein,Nature 256:495−497,1975)。
ファージディスプレイ・ライブラリー法は、未処置のヒトリンパ細胞から直接入手した免疫グロブリン遺伝子のライブラリーから、目的の抗体をコードするDNAをスクリーニングし、このDNAと、抗体鎖との間に、ファージ粒子を用いて物理的会合を確立し、これによって、標的に親和性をもつ抗体を提示するファージを親和性スクリーニングによって富化することを含む。この方法を用いて、標的に対する結合親和性をもつ抗体を、通常の手法によって大量に合成することができる(例えば、特表2003−527832)。
ヒト化抗体は、例えば、ヒトDREFタンパク質を免疫したマウスから作製した該DREFに対するマウス抗体の相補性決定領域(CDR)を、ヒトIgGに結合することによって得ることができる。このようなヒト化抗体は、遺伝子組換え技術を用いることに作製可能である。抗体をヒト化する技術は、例えば米国特許第6639055号、同5530101号などに記載されている。
本発明において、DREFタンパク質の変異体は、ヒト個体内で自然発生的に生ずるすべての変異体を含み、例えば多型性や突然変異に基づくような変異体、或いは選択的スプライシングによる変異体を含む。変異体は、配列番号1のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加された配列を有し、かつ癌の細胞増殖に関与するインビボ機能を有する。本明細書において「数個」とは、10個以下、8個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下又は2個を意味する。或いは、変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の%同一性を有する配列を含むものである。本明細書において「%同一性」は、配列アラインメントにおいてギャップの導入が可能な公知のBLASTプログラム(BLASTX及びBLASTN)に基づいて決定されうる(例えばS.F.Altschulら,J.Mol.Bio.215:403−410,1990など)。
本発明の抗体又はその断片は、単独で、或いは抗癌剤(化学療法剤、放射性物質など)などの薬剤を結合させた形態で、癌に対する治療剤として用いることができる。抗癌剤には、例えばタキソール、シタラビン、シスプラチン、エトポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンブラスチン、パクリタキセルなどの化学療法剤、放射性インジウム、テクネチウム、イッテルビウムなどの放射性金属などが含まれるが、これらに限定されない。抗体への抗癌剤の結合は、例えばリンカーを介して共有結合によって、或いは金属イオンとの配位結合によって、抗体定常領域の任意の部位に抗癌剤を結合することを含む方法によって行うことができる。
患者への抗体又はそのフラグメントの送達は、単独か又は例えばリポソーム(好ましくは、正電荷リポソーム)、マイクロカプセル又はナノ粒子中に抗体又はそのフラグメントを封入した形態で、通常は適当な担体、賦形剤又は希釈剤と組み合わせて、非経口経路(例えば、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与など)にて行うことができる。
1.4 組成物
本発明の組成物は、癌、特にDREFを発現する癌をもつ患者を治療するために使用することができる。そのような癌の例は、以下のものに限定されないが、肺癌、食道癌、膵癌、胃癌、肝癌、大腸癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、皮膚癌、胆癌、脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、精巣癌、リンパ腫、メラノーマ、肉腫、骨肉種などを含み、より好ましい癌は、肺癌、食道癌、乳癌、膵癌などである。
本発明の組成物中の核酸の用量は、siRNA分子又はアンチセンス核酸分子に換算すると、以下のものに限定されないが、1投与単位あたり、1nM〜100μM、好ましくは10nM〜50μM、より好ましくは100nM〜20μMである。
本発明の組成物中の抗体又はそのフラグメントの用量は、以下のものに限定されないが、1投与単位あたり、約1〜約100mg/ml、約5〜約70mg/ml、約10〜50mg/mlである。
しかし、上記の用量又は投与量は、患者の状態、年齢、性別、重篤度などに応じて変化しうるものであり、専門医の判断により用量又は投与量が決定されるべきである。
本発明の組成物は、通常、製薬上許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤、例えば滅菌水、生理食塩水、緩衝液、非水性液体(例えば、アーモンド油、植物油、エタノールなど)などを含むことができる。該組成物にはさらに、製薬上許容可能な安定剤(例えばメチオニンなどのアミノ酸類)、保存剤(p−ヒドロキシ安息香酸メチル、ソルビン酸)、等張化剤(例えば塩化ナトリウム)、乳化剤(例えばレシチン、アラビアゴム)、懸濁化剤(例えばセルロース誘導体)などを含有させることができる。
好ましい医薬製剤は、溶液剤、懸濁液剤、乳剤、リポソーム封入剤などである。
本発明の組成物の投与方法は、非経口投与、例えば静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与などを含む。局所投与には、外科手術又は内視鏡下で患部に直接注射する方法などが含まれる。また、専門医が決定した治療計画に基づいて、一定の時間間隔、例えば1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、1年又は2年などの間隔で、患者に対して、本発明の組成物を1〜数回に分けて投与することができる。
本発明のRNAi核酸、アンチセンス核酸、又は抗体を癌、特に肺癌に適用したとき、肺癌細胞で強く細胞周期停止とともに細胞死誘導を起こすことができる。特に一部の肺癌細胞では、mitotic catastrophと呼ばれる、M期での細胞死誘導が見られた。一方、正常肺由来細胞株では、肺癌に比して、細胞周期停止は軽度であった。
本発明のDREFを標的とする癌治療法は、下記に述べる治療剤のスクリーニング法と組み合わせることによって、癌患者の症例に最適なオーダーメイド医療として使用できるだろう。
2.癌治療薬のスクリーニング
本発明はさらにヒト培養癌細胞、或いは強発現可能にDREF遺伝子をトランスフェクションした(正常又は非正常)ヒト細胞株、を含む培地に候補薬剤を加えて、DREF遺伝子の発現又は翻訳を抑制する薬剤をインビトロでスクリーニングすることを含む、癌治療用薬剤をスクリーニングする方法を提供する。
薬剤のスクリーニングは、具体的には、癌細胞、或いはDREF強発現哺乳類(例えばヒト、マウスなど、好ましくはヒト)細胞株、の細胞増殖抑制、細胞周期停止及び/又は細胞死誘導を指標とすることができる。
具体的には、本発明の方法は、ヒト培養癌細胞、又はDREF強発現細胞株、を準備し、該細胞を候補薬剤の存在下で培養し、DREF遺伝子又はmRNAの発現の抑制について、或いは上記細胞又は細胞株の細胞増殖抑制、細胞周期停止及び/又は細胞死誘導について、候補薬剤をスクリーニングすることを含む。
ヒト培養癌細胞には、公知の癌細胞株、癌患者からのバイオプシー由来の癌細胞などが含まれ、本発明において使用できる。癌細胞株の例は、いずれも肺癌細胞株である、ACC−LC−91(H.Osadaら,Mol.Carcinog.2005,44:233−241)等のACC−LC、A549(ATCC,Rockvill,MD)、PC10(免疫生物研究所、群馬、日本)、Calu6(ATCC,Rockvill,MD)などである。
DREF強発現細胞株は、例えば次のようにして作製することができる。レンチウイルスベクター(例えばCSII−CMV−MCS−IRES2−Bsdベクター(理化学研究所(埼玉、日本)の三好浩之博士から入手)にDREF cDNAを挿入したレンチウイルスを作製し、これを、ヒト正常気道上皮由来細胞株BEAS2Bに感染させ、Blasticidin(Invitrogen)で選択培養することで、DREFを恒常的に強発現している株を選択する。培養培地としては、例えば胎児牛血清1%添加F12培地(Sigma)を使用できる。増殖速度は、TetraColorOneTM(生化学工業、東京、日本)を用いるMTTアッセイなどによって測定できる。このようにして実際に作製されたDREF強発現細胞株(例えばBEAS2B−DREF株)は、6日の培養で対照株と比べて約3倍の増殖速度の亢進が観察された。
本発明の方法において、DREF遺伝子又はmRNAの発現の抑制の程度は、候補薬剤を添加しない対照との比較実験によって判定できる。発現レベルは、癌細胞、又はDREF強発現細胞株、から周知の方法(例えばフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール法やグアニジウム/CsCl法、オリゴdTセルロースカラムクロマトグラフィーなど)で得た全RNA又はmRNA又はポリA(+)RNAについて、或いは逆転写酵素−PCR(RT−PCR)法によってRNAから合成されたcDNAについて、定量RT−PCR法、蛍光又は放射性標識したプローブを用いるハイブリダイゼーション法(例えばノーザンハイブリダイゼーション、サザンハイブリダイゼーション、DNAマイクロアレイ、組織マイクロアレイなど)によって決定することができる(西郷薫ら訳、分子生物学実験プロトコールI,II,III、1997年、丸善)。或いは、発現レベルは、DREF遺伝子によってコードされるタンパク質(配列番号1)の細胞内レベルを、該タンパク質に対する抗体又はそのフラグメントを用いる免疫測定法、ウエスタンハイブリダイゼーション法、組織染色法などによって測定することによって間接的に決定することができる。
前記プローブは、配列番号2(202位〜2286位)のヌクレオチド配列又はそれと相補的な配列、或いはその連続する例えば約20以上、約30以上、50以上、70以上、100以上、150以上、200以上、250以上のヌクレオチドからなる配列、を有するDNAである。プローブは、蛍光又は放射性標識を結合した標識プローブとするのが好ましい。蛍光性標識には、例えばフルオレサミン、ローダミン、それらの誘導体、Cy3、Cy5などが含まれる、放射性標識には、例えば放射性リン又はイオウ原子が含まれる。
ハイブリダイゼーションは、低ハイブリダイゼーション、中ハイブリダイゼーション又は高ハイブリダイゼーション条件によって、好ましくは高ハイブリダイゼーション条件によって行うことができる。例えば、約45〜50℃で2〜6×SSC(1×SSCは150mM塩化ナトリウム/15mMクエン酸ナトリウム)中でのハイブリダイゼーションと、それに続く、約50〜65℃での0.2〜2×SSC/0.1〜1%SDSによる洗浄からなる(例えば、Ausubelら,Curent Protocols in Molecular Biology,1995年,John Wiley and Sons,US;西郷薫ら訳、分子生物学実験プロトコールI,II,III、1997年、丸善)。或いは、60〜65℃で6×SSC、Denhardt’s溶液、0.2%SDS中でのハイブリダイゼーションののち、60〜65℃での0.2×SSC、0.1%SDSによる洗浄などからなる。ハイブリダイゼーション温度は、一般に融解温度(Tm)より5〜10℃低い温度を使用することができる。Tmは、例えば、式:Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)(式中、Nはハイブリッドの塩基数であり、[Na+]はハイブリダイゼーションバッファ中のNa+の濃度である。)によって求めることができる(J.Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Mannual 2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)。
候補薬剤は、小分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸(DNA又はRNA)などを含むが、これらに限定されない。
免疫測定法は、抗原−抗体反応を利用する分析法であり、例えば酵素結合抗体法(例えばELISA)、蛍光抗体法、固相法、均一法、サンドイッチ法、ビオチン/アビジン系などを適宜組み合わせて行うことができる。固相としては、例えば市販のプラスチック製プレート(例えばポリスチレン製の96ウエルプレートなど)を使用することができる。これらの方法は、当業界で周知であり、その慣用技術を本発明で使用できる。
ヒト培養癌細胞、又はDREF強発現細胞株、において、DREF遺伝子又はmRNAの発現が、候補薬剤の存在によって、候補薬剤無添加の対照と比べて、有意に阻害又は抑制される場合、該候補薬剤は癌治療剤として同定しうる。
定量RT−PCRは、例えば、Taqポリメラーゼなどの耐熱性ポリメラーゼの存在下でmRNA又はポリA(+)RNAを鋳型に、DREF遺伝子の配列由来のプラーマーを用いるPCRによって行うことができる。プライマーのサイズは、約15〜30ヌクレオチド、好ましくは17〜25ヌクレオチドである。このとき発現変動のないハウスキーピング遺伝子の発現量に対するDREF遺伝子の発現量を決定する。
候補薬剤のスクリーニングはまた、ヒト培養癌細胞、又はDREF強発現細胞株、の細胞増殖の抑制、細胞周期の停止、又は細胞死を調べることによっても行うことができる。
細胞増殖は、次の手法によって測定できる。遺伝子導入の翌日、細胞を蒔き直した後にpuromycin(2μg/ml)で2日間選択し、更にpuromycin(0.5μg/ml)で10日間選択を続ける。その後、TetraColorOneTM(生化学工業、東京、日本)5%入り培地に置き換え、37℃で1時間反応させる。その後その培地を回収しプレートリーダーにてOD450nmを測定し(このとき、OD630nmを対照とする。)、生存細胞数とする(colorimetric assay)。又、その後、細胞はメタノール固定後に、5%Giemsa(Sigma−Aldrich)水溶液にて染色する。
細胞周期及び細胞死は、次の手法によって測定できる。遺伝子導入細胞をpuromycin選択後に回収し、低張液(75mM KCl)に浮遊させる(37℃,20分)。その後、攪拌しながら固定液(メタノール:氷酢酸=3:1混合液)約3容を加えて細胞を固定する。遠心上清除去後に再度固定液に浮遊させる。細胞浮遊液をスライドガラス上に1、2滴滴下し風乾する。その後5% Giemsa水溶液にて核染色体を染色する。実体顕微鏡BHT−323(Olympus)にて観察し、細胞を間期(Go/G1,S,G2)、細胞分裂前期(Prophase)、細胞分裂中期(Metaphase)、細胞分裂後期/終期(Anaphase/telophase)、及び死細胞(mitotic catastroph及びapoptosis)に分けて計測する。
3.DREF遺伝子の発現抑制によって影響を受ける遺伝子群
DREF遺伝子の発現をRNAi核酸によって抑制したときに、発現が変化する遺伝子群を、マイクロアレイを使用して解析した。
DREF−RNAi#4によるDREF遺伝子の発現抑制によって、表1(下記参照)に示される遺伝子群の発現に変化が認められた。
DREF−RNAi#3によるDREF遺伝子の発現抑制によって、表2(下記参照)に示される遺伝子群の発現に変化が認められた。
遺伝子の多くが、癌の発症、癌の進展、癌の転移と関連の高いものであることが判明した。これらの解析からも、DREFが種々の癌にとって重要な因子であることが分かる。それゆえに、DREFを分子標的とする本発明の方法は、癌の治療にとって有効な方法を提供するものであるといえる。
以下の実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって制限されないものとする。
(実験方法)
1.ヒト癌細胞株
ヒト肺癌細胞株(ACC−LC−91又はA549)、5%牛胎児血清(Invitrogen)添加RPMI1640培地(Sigma)を用いて5%CO2存在下で培養し、以下の実験に使用した。又、ヒト正常気道上皮細胞株(BEAS2B又はHPL1)は1%牛胎児血清(Invitrogen)、5μg/ml牛インスリン(Sigma)、5μg/mlヒトトランスフェリン(Sigma)、0.1μMハイドロコルチゾン(Sigma)及び0.2nMトリヨードサイロニン(Sigma)を添加したHam F12培地(Sigma)を用いて5%CO2存在下で培養し、以下の実験に使用した。
2.トランスフェクション及びDREF発現ベクター
細胞へのDREF発現ベクター及びRNAi−ベクターの遺伝子導入(transfection)は、3.5cm培養皿に3×105の細胞を蒔き、翌日DNAとLipofectamine2000(Invitrogen)を混合し、培地中に添加して行った。RNAiベクター等のpuromycin耐性遺伝子を持つベクターをトランスフェクトした場合は、トランスフェクションの翌日より(必要に応じ細胞を蒔き直した後に)puromycin dihydrochloride(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)2μg/ml培地に添加し2日間選択後に遺伝子導入細胞を回収し、RNA及び蛋白試料の作成、或いはFACS解析等を施行した。DREF発現ベクターは、RT−PCRにより得られたDREF cDNAのORF部分を発現ベクターのpcDNA3(Invitrogen)に挿入したものを廣瀬富美子博士(兵庫県立大学、兵庫、日本)より分与された。
3.RNAi−オリゴヌクレオチドおよびRNAiベクター
図1に示すように、対照としての公知の2つのRNAi部位(#1,#2)のうちの1箇所(#1)及び新規RNAi4箇所(#3,#4,#5及び#6)に対するDNAオリゴヌクレオチドをGreiner Japan(東京、日本)に依頼して作製した。その塩基配列は以下のとおりである(なお、RNAiの部位の数字はDREF ORF中の開始コドンの塩基「A」を第1位としたときの核酸残基の位置番号を表わす)。
(注1)RNAi#3〜#6の最初のGはベクター上のGが読まれるため、oligo配列ではRNAi部位の最初のGが含まれず、2番目の残基から始まっている。
(注2)下線部はDREF RNAi部位を示す。
puromycin耐性遺伝子を持つプラスミドベクター(pCMV−puro)〔(注)このベクターは、Clontech社のプラスミドpIRESpuro2(5.2kb長)から、不要な部分1.0kb長を切り取って作製されたものである。〕に、RNA polymerase IIIによって転写するプロモーターであるマウスU6遺伝子プロモーターを挿入したRNAiベクターを作製した(pU6−puro)(Osada.,H.ら,Cancer Res.65:10680−5,2005)。同様にヒトH1遺伝子プロモーターを挿入したRNAiベクターを作製した(pH1−RNApuro)。
RNAiベクターの作製のために、RNAi#1用oligoは、pH1−RNApuroをBglII−HindIII消化後に挿入した。RNAi #3〜#6は、pU6−puroをApaI消化、T4 DNA polymerase処理、及びEcoRI消化した後に挿入した。
Blank oligoは、pU6−puroをApaI−EcoRI消化後に挿入した。
4.RT−PCR解析
遺伝子導入後の細胞から、RNeasy Mini Kit(Qiagen)にてtotal RNAを回収した。One−step RT−PCR kit(Qiagen)にて、添付の使用説明書にしたがってRT−PCRを施行し、RT−PCR産物をTBE−agaroseゲル電気泳動にかけて、DREF遺伝子の発現を検討した(図2)。
5.Western blot解析
DREFタンパク質は、DREF−cDNAの付加されたHA−tag/myc−tagに対する抗体を用いて検出された。遺伝子導入後の細胞を4%SDS溶液で溶解、加熱処理した後に、タンパク質をSDS−PAGEにて電気泳動し、セミドライ電気転写システムTrans−Blot SD cell(Bio−Rad)にてImmobilon−Pメンブレン(Millipore)に転写した。メンブレンに抗HA−tag抗体(Santa cruz)及び抗myc−tag抗体(9E10,Santa cruz)を重層し、洗浄後horseradish peroxidaseが結合した二次抗体(Cell Signaling)を再度重層し、ECL Western Blotting Detection Reagents(GE Healthcare)にて、DREFタンパク質を検出した。
6.FACS解析
遺伝子導入後の細胞を、IGEPAL(登録商標)CA−630(0.5%,Sigma−Aldrich)、Propidium iodide(20μg/ml,Sigma−Aldrich)、PBS溶液で浮遊させて、裸核中のDNAを染色し、DNA量をFACSCalibur(Becton−Dickinson)を用いて定量し、細胞周期解析ソフトModFit(BD Biosciences社)で細胞周期(G0/G1,S,G2/M)を解析した。
7.細胞増殖解析
遺伝子導入の翌日、細胞を蒔き直した後にpuromycin(2μg/ml)で2日間選択し、更にpuromycin(0.5μg/ml)で10日間選択を続ける。その後、TetraColor One(Seikagaku Kogyo、東京、日本)5%入り培地に置き換え、37℃で1時間反応させる。その後その培地を回収しプレートリーダーにてOD450nmを測定し(このとき、OD630nmを対照とする。)、生存細胞数とした(colorimetric assay)。又、その後、細胞はメタノール固定後に、5% Giemsa(Sigma−Aldrich)水溶液にて染色した。
8.免疫染色
遺伝子導入の翌日、細胞を培養皿に置いたカバーグラス上に蒔き直し、2日間puromycin(2μg/ml)選択する。その後、3.7% Formaldehyde(10% Formalin)(Wako,Osaka,Japan)PBS溶液にて細胞を固定し(室温、8分)、TBS溶液(150mM NaCl,50mM Tris(pH7.6))にて洗浄後、0.5% TritonX(Wako)TBS溶液にて、細胞透過処理する(室温、8分)。その後、各種一次抗体(抗γH2AX(Upstate,Lake Placid,NY),抗phospho−ATM−Ser1981(Cell Signaling,Danvers,MA),抗phospho−histoneH3(Upstate,Lake Placid,NY))を添加し、Alexa Fluor 488等の蛍光色素結合二次抗体(Molecular Probe−Invitrogen)をDAPI(Sigma−Aldrich)と共に添加した。洗浄後封入剤PermaFluor(Thermo Shandon,Pittsburgh,PA)を加えてスライドガラスに載せ、共焦点レーザー蛍光顕微鏡Radiance2100(BIO−RAD)にて観察した。
9.TUNEL解析
免疫染色実験と同様に、遺伝子導入細胞をカバーグラス上に蒔き、2日間puromycin選択する。その後、3.7% Formaldehyde(10% Formalin)(Wako)PBS溶液にて細胞を固定する(室温、10分)。その後、1%過酸化水素含有メタノール溶液処理(室温、2分)、0.1% TritonX−100含有PBS溶液処理(室温、5分)の後に、In Situ Cell Death Detection Kit,Fluorescein(Roche)にて、細胞内のDNA切断部位をFluorescein結合核酸にて標識する。その後必要に応じて、抗phospho−histoneH3等で免疫染色し、洗浄後、蛍光封入剤Shandon PermaFluor(Thermo Electron Corp.,MA,USA)を加えてスライドガラスに載せ、共焦点レーザー蛍光顕微鏡にて観察した
10.細胞死・細胞周期解析
遺伝子導入細胞をpuromycin選択後に回収し、低張液(75mM KCl)に浮遊させる(37℃,20分)。その後、攪拌しながら固定液(メタノール:氷酢酸=3:1混合液)約3容を加えて細胞を固定する。遠心上清除去後に再度固定液に浮遊させる。細胞浮遊液をスライドガラス上に1、2滴滴下し風乾する。その後5% Giemsa水溶液にて核染色体を染色した。実体顕微鏡BHT−323(Olympus)にて観察し、細胞を間期(Go/G1,S,G2),細胞分裂前期(Prophase),細胞分裂中期(Metaphase),細胞分裂後期/終期(Anaphase/telophase),及び死細胞(mitotic catastroph及びapoptosis)に分けて計測した。
11.Microarray解析
理化学研究所・バイオリソースセンター(和光市、埼玉、日本)の三好浩之博士よりレンチウイルスシステム(pENTR4−H1,CS−RfA−EG,pCAG−HIVgp,pCMV−VSV−G−RSV−Rev)の分与を受ける。pU6−puro−RNAiベクターのU6prmoter−RNAi−オリゴ部分をpENTR4−H1ベクターに挿入し、その後LRclonase(Invitrogen)にてCS−RfA−EGベクターに組み込む。pCAG−HIVgp,pCMV−VSV−G−RSV−Revと共に、293T細胞にtransfectamin2000にてトランスフェクションする。翌日Forskolin(Sigma−Aldrich)10μM添加培地に置換し24時間培養し、培養上清を回収する。培養上清をSwing rotor SW28にて19,400rpmで2時間超遠心し、レンチウイルス粒子沈渣を回収し、約50倍に濃縮するように培地に溶かし、ウイルスストックとする(−70℃保存)。ACC−LC−91細胞にレンチウイルス50×濃縮ストック(1×104細胞あたり1.5μl)を添加する。添加後36,54,72時間後に細胞を回収し、FACS解析、RNA試料作製を行う。得られた36時間のRNA試料250ngから、MMLV−RT(Agilent Technologies,Palo Alto,CA)及びT7プロモーター配列を付加したオリゴdTプライマーを用いてcDNAを合成する。次にT7 RNA polymeraseを含むLow RNA Fluorescent Linear Amplification kit(Agilent Technologies)と、Cyanine3(Cy3)−CTP及びCyanine5(Cy5)−CTP(PerkinElmer,Quebec,Canada)にて、Cy3/Cy5標識cRNAを合成する。Cy3/Cy5標識cRNAをAgilent oligonucleotide microarray(Whole human genome 44K)にハイブリダイズさせ、アレースキャナー(Agilent Technologies)で、蛍光色素量を定量し解析した。RNAi#3及びRNAi#4のRNA試料と対照レンチウイルスのRNA試料との組み合わせでCy3/Cy5標識を交換(Color swapping)して2回行い、平均値でRNAi後の遺伝子変化を検討した。
(結果)
図1に、ヒトDREF/ZBED1遺伝子のドメイン構造と、RNAi部位及び配列を示す。puromycin耐性遺伝子を持つplasmidベクター(pCMV−puro)に、RNA polymerase IIIが転写するプロモーターであるマウスU6プロモーターを挿入し、さらにshort−hairpin型oligoを挿入してDREF−RNAi系を作製した(pCMV−puro−siDREF#1〜#6)。DREF−RNAi系をヒト肺癌細胞株にトランスフェクションし、その後24〜48時間puromycin処理により遺伝子導入細胞を選択し、DREF−RNAi作用を解析した。
また、RNAiのためにlentivirusベクターも用いた。lentivirusベクターに同様にshort hairpin型oligoを挿入して、定法にしたがって293T細胞に遺伝子導入し、short hairpin RNAを発現するlentivirus粒子を回収し、それを細胞培養液に添加して、解析した。
図2は、RNAi効果のRT−PCR解析結果を示す。肺癌細胞A549に、RNAiベクターpCMV−puro−siDREF#1,#3,#4,#5,#6を導入し、puromycin48時間処理後に、細胞を採取し、RNAを抽出し、RT−PCRにてDREF発現を検討した。DREF−siRNAを発現しない対照ベクター(pCMV−puro−)U6blankに比して、すべてのpCMV−puro−siDREFベクターでRNAiによる発現低下が見られた。
図3は、RNAi効果のWestern blot解析結果を示す。RNAi効果を更に検討するために、DREF全長cDNA発現ベクター、及び、#3,#4のRNAi部位をそれぞれsilent mutationを起こし、RNAi抵抗性となったDREF全長cDNA発現ベクターを用い、Western blotにてDREF蛋白の発現変化を検討した。検出はDREF cDNAのN末に挿入したHA−tagに対する抗体である抗HAポリクローナル抗体を用いた。siDREF#3,#4でともに野生型DREFタンパク質の著名な減少がみられた。#3,#4のsilent mutationをもつDREF(#3mut,#4mut)はRNAiに対して抵抗性であった。
図4は、細胞周期解析(1)の結果を示す。肺癌細胞株ACC−LC−91にpCMV−puro−siDREF#1,#3,#4,#5,#6(及び対照ベクターのU6blank)を導入し、puromycin選択後に、PI染色のFACSにて細胞周期解析(DNA含量解析)を行った。siDREF−#3,#5でS期の低下が見られG1−S移行段階での細胞周期停止(G1停止)傾向が見られた。又、#4ではG1が著減しG2/Mの著増が見られて、非常に強いG2/Mステップでの細胞周期停止が見られた。#3でもG2/Mの軽度の増加が見られ、#3は強いG1停止と比較的軽度のG2/M停止を起こすと考えられた。
そこで、以降は強い細胞周期停止作用を示した#3,#4を中心に解析した。
図5A,5B,5Cは、細胞周期解析(2)の結果を示す。数種の肺癌細胞株に同様にpCMV−puro−siDREF,#3,#4(及びU6blank)を導入し細胞周期を解析した。ACC−LC−172では、ACC−LC−91と同様に、#3は強いG1停止と比較的軽度のG2/M停止を起こし、#4では強いG2/Mでの細胞周期停止が見られた。Calu6・ACC−LC−319でも#4でG2/M停止傾向が見られた。A549−#4・PC10−#3及び−#4では、Sの減少が見られ、G1停止傾向であった。また、正常肺由来細胞株のBEAS2B及びHPL1で、細胞周期停止はほとんど見られなかった。
図6A,6Bは、細胞増殖能解析結果を示す。puromycin−selection 10日後の細胞数をMTTアッセイ(細胞増殖キット使用)で解析した。siDREF−#3,#4により非常に強い細胞増殖抑制作用が得られ、抑制の強さは、#4の方が強いと考えられた。#1は弱い増殖抑制効果しか得られなかった。
図7は、γH2AX(Phospho−H2AX)、Phospho−ATM(Ser1981)染色結果を示す。MTT解析での増殖抑制の機序として、DNA damage誘導の可能性を考え、DNA損傷に反応し活性化されるキナーゼのATM(Ser1981リン酸化が活性化の指標)、およびこのATMによりリン酸化されるヒストンH2AX(γH2AX=phospho−H2AX)を免疫蛍光で検討した。ACC−LC−91及びACC−LC−172でともに、#3、#4によりγH2AXシグナルの増加がみられ、特に#4では著増していた。ACC−LC−91のPhospho−ATM(Ser1981)染色では、シグナルの著増がみられ、siDREF−#3,#4特に#4で、DNA障害が誘導され、ATM活性化、H2AX等のATM基質のリン酸化、細胞周期停止というシグナルが働いていると考えられる。ACC−LC−91と比較して、A549・PC10の#3によるγH2AXシグナルは、ほぼ同程度で見られた(データ示さず)。また、ACC−LC−91と比較して、A549・PC10の#4によるγH2AXシグナルは、A549(±)<PC10(+)<ACC−LC−91(++)であった(データ示さず)。
図8は、TUNEL解析結果を示す。DNA断片化を検出するTUNEL解析で、アポトーシス(細胞死)の誘導を検討した。U6blankと比較して、#3及び#4でアポトーシス誘導が見られた。アポトーシス頻度は#3及び#4で差異があり、#3はA549、PC10、ACC−LC−91及びACC−LC−172の4株でほぼ同程度であったが、#4では、A549はPC10とほぼ同程度であり、またACC−LC−91はACC−LC−172とほぼ同程度であり、ACC−LC−91はA549よりかなり大きなアポトーシス誘導を示した(一部データを示さず)。
図9は、細胞周期の変化を示す。FACSではG2とMとの区別が容易ではないので、細胞をギムザ染色して細胞周期(間期(interphase=G1,S,G2)M期(prophase,metaphase,anaphase−telophase))を検討した。ACC−LC−91ではsiDREF #3,#4でM期の増加が見られた。また、#4では強いクロマチン凝集を起こしたM期細胞が増加しM期での細胞死誘導(mitotic catastroph)が起こっていることが示された。
図10は、M期での細胞死(mitotic catastroph)を示す。M期にリン酸化されるphospho−histon H3(H3−P)とγH2AXとを免疫染色し、DNA障害・細胞死誘導と細胞周期との関係を検討した。ACC−LC−91ではH3−P陽性のM期細胞の多くがγH2AX陽性であり、M期でDNA障害により細胞死が誘導されていることが示された。
図11は、siDREF−#3,#4の遺伝子発現解析結果を示す。ACC−LC−91にsiDREF#3,siDREF#4のlentivirusを感染させRNAiを誘導した。細胞周期停止(54時間及び72時間)が起こる前の、感染後36時間でRNAを採取し、対照lentivirus感染群のRNAを対照RNAとして、siDREF#3,#4によって引き起こされる遺伝子発現の変化を検討した。この段階で変化する遺伝子群は、DREFによって直接発現制御され、細胞周期停止・細胞死誘導を引き起こしてくる遺伝子群である可能性が高い。
図12は、肺癌患者検体におけるDREFの発現を示す。
肺癌患者検体よりRNeasy Mini Kit(Qiagen)にてtotal RNAを回収し、そのtotal RNA 5μgからMoloney Murine Leukemia Virus Reverse Transcriptase(MMLV−RT,Invitrogen)にて、RTを施行しcDNAを合成した。そのcDNA(RNA 20ng相当)を用いて、DREF遺伝子発現量及び内部対照として18SリボゾームRNA発現量を、図2のDREFプライマー及び18Sプライマーを用いて、ABI−PRISM 7900(ABI)にて定量した。有意さの検定は、StatView(SAS)のt検定にて行った。
肺癌では全例DREF発現が見られたのに対して、正常肺ではDREF発現が無かった。又、肺癌の中で組織型間でのDREFの発現を比較してみると、組織型毎にDREF発現が異なり、特に腺癌と(腺癌、扁平上皮癌以外の)その他の組織型の肺癌とでは有意差(P=0.012)があった。これらの事から、DREF発現と肺癌発症との関連が示唆された。
図13は、DREF−RNAi#4によって発現抑制される遺伝子の中で、癌の増殖に関連すると考えられるRPL17遺伝子のDNA配列(A)と、RPL17遺伝子のDREFによる転写活性化の機序(B)を示す。転写開始点より+7nt〜+16ntの位置にDREFタンパク質のDNA結合モチーフTGTCGYGAYA(Y=C又はT)にほぼ一致(90%)する配列が見出された。この配列にDREFが結合してRPL17 DREF発現を誘導しており、DREF−RNAi#4によってDREF発現が低下するために、RPL17遺伝子も発現低下すると考えられる。
図11のマイクロアレイによる遺伝子発現解析結果を表1(#4)及び表2(#3)示す。これらのRNAi誘導の早期(36時間)で発現が変化する遺伝子群はDREFによって直接発現制御され、細胞周期停止、細胞死誘導を引き起こしてくる遺伝子群である可能性が高く、癌治療の標的となると考えられる。
1.ヒト癌細胞株
ヒト肺癌細胞株(ACC−LC−91又はA549)、5%牛胎児血清(Invitrogen)添加RPMI1640培地(Sigma)を用いて5%CO2存在下で培養し、以下の実験に使用した。又、ヒト正常気道上皮細胞株(BEAS2B又はHPL1)は1%牛胎児血清(Invitrogen)、5μg/ml牛インスリン(Sigma)、5μg/mlヒトトランスフェリン(Sigma)、0.1μMハイドロコルチゾン(Sigma)及び0.2nMトリヨードサイロニン(Sigma)を添加したHam F12培地(Sigma)を用いて5%CO2存在下で培養し、以下の実験に使用した。
2.トランスフェクション及びDREF発現ベクター
細胞へのDREF発現ベクター及びRNAi−ベクターの遺伝子導入(transfection)は、3.5cm培養皿に3×105の細胞を蒔き、翌日DNAとLipofectamine2000(Invitrogen)を混合し、培地中に添加して行った。RNAiベクター等のpuromycin耐性遺伝子を持つベクターをトランスフェクトした場合は、トランスフェクションの翌日より(必要に応じ細胞を蒔き直した後に)puromycin dihydrochloride(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)2μg/ml培地に添加し2日間選択後に遺伝子導入細胞を回収し、RNA及び蛋白試料の作成、或いはFACS解析等を施行した。DREF発現ベクターは、RT−PCRにより得られたDREF cDNAのORF部分を発現ベクターのpcDNA3(Invitrogen)に挿入したものを廣瀬富美子博士(兵庫県立大学、兵庫、日本)より分与された。
3.RNAi−オリゴヌクレオチドおよびRNAiベクター
図1に示すように、対照としての公知の2つのRNAi部位(#1,#2)のうちの1箇所(#1)及び新規RNAi4箇所(#3,#4,#5及び#6)に対するDNAオリゴヌクレオチドをGreiner Japan(東京、日本)に依頼して作製した。その塩基配列は以下のとおりである(なお、RNAiの部位の数字はDREF ORF中の開始コドンの塩基「A」を第1位としたときの核酸残基の位置番号を表わす)。
(注1)RNAi#3〜#6の最初のGはベクター上のGが読まれるため、oligo配列ではRNAi部位の最初のGが含まれず、2番目の残基から始まっている。
(注2)下線部はDREF RNAi部位を示す。
puromycin耐性遺伝子を持つプラスミドベクター(pCMV−puro)〔(注)このベクターは、Clontech社のプラスミドpIRESpuro2(5.2kb長)から、不要な部分1.0kb長を切り取って作製されたものである。〕に、RNA polymerase IIIによって転写するプロモーターであるマウスU6遺伝子プロモーターを挿入したRNAiベクターを作製した(pU6−puro)(Osada.,H.ら,Cancer Res.65:10680−5,2005)。同様にヒトH1遺伝子プロモーターを挿入したRNAiベクターを作製した(pH1−RNApuro)。
RNAiベクターの作製のために、RNAi#1用oligoは、pH1−RNApuroをBglII−HindIII消化後に挿入した。RNAi #3〜#6は、pU6−puroをApaI消化、T4 DNA polymerase処理、及びEcoRI消化した後に挿入した。
Blank oligoは、pU6−puroをApaI−EcoRI消化後に挿入した。
4.RT−PCR解析
遺伝子導入後の細胞から、RNeasy Mini Kit(Qiagen)にてtotal RNAを回収した。One−step RT−PCR kit(Qiagen)にて、添付の使用説明書にしたがってRT−PCRを施行し、RT−PCR産物をTBE−agaroseゲル電気泳動にかけて、DREF遺伝子の発現を検討した(図2)。
5.Western blot解析
DREFタンパク質は、DREF−cDNAの付加されたHA−tag/myc−tagに対する抗体を用いて検出された。遺伝子導入後の細胞を4%SDS溶液で溶解、加熱処理した後に、タンパク質をSDS−PAGEにて電気泳動し、セミドライ電気転写システムTrans−Blot SD cell(Bio−Rad)にてImmobilon−Pメンブレン(Millipore)に転写した。メンブレンに抗HA−tag抗体(Santa cruz)及び抗myc−tag抗体(9E10,Santa cruz)を重層し、洗浄後horseradish peroxidaseが結合した二次抗体(Cell Signaling)を再度重層し、ECL Western Blotting Detection Reagents(GE Healthcare)にて、DREFタンパク質を検出した。
6.FACS解析
遺伝子導入後の細胞を、IGEPAL(登録商標)CA−630(0.5%,Sigma−Aldrich)、Propidium iodide(20μg/ml,Sigma−Aldrich)、PBS溶液で浮遊させて、裸核中のDNAを染色し、DNA量をFACSCalibur(Becton−Dickinson)を用いて定量し、細胞周期解析ソフトModFit(BD Biosciences社)で細胞周期(G0/G1,S,G2/M)を解析した。
7.細胞増殖解析
遺伝子導入の翌日、細胞を蒔き直した後にpuromycin(2μg/ml)で2日間選択し、更にpuromycin(0.5μg/ml)で10日間選択を続ける。その後、TetraColor One(Seikagaku Kogyo、東京、日本)5%入り培地に置き換え、37℃で1時間反応させる。その後その培地を回収しプレートリーダーにてOD450nmを測定し(このとき、OD630nmを対照とする。)、生存細胞数とした(colorimetric assay)。又、その後、細胞はメタノール固定後に、5% Giemsa(Sigma−Aldrich)水溶液にて染色した。
8.免疫染色
遺伝子導入の翌日、細胞を培養皿に置いたカバーグラス上に蒔き直し、2日間puromycin(2μg/ml)選択する。その後、3.7% Formaldehyde(10% Formalin)(Wako,Osaka,Japan)PBS溶液にて細胞を固定し(室温、8分)、TBS溶液(150mM NaCl,50mM Tris(pH7.6))にて洗浄後、0.5% TritonX(Wako)TBS溶液にて、細胞透過処理する(室温、8分)。その後、各種一次抗体(抗γH2AX(Upstate,Lake Placid,NY),抗phospho−ATM−Ser1981(Cell Signaling,Danvers,MA),抗phospho−histoneH3(Upstate,Lake Placid,NY))を添加し、Alexa Fluor 488等の蛍光色素結合二次抗体(Molecular Probe−Invitrogen)をDAPI(Sigma−Aldrich)と共に添加した。洗浄後封入剤PermaFluor(Thermo Shandon,Pittsburgh,PA)を加えてスライドガラスに載せ、共焦点レーザー蛍光顕微鏡Radiance2100(BIO−RAD)にて観察した。
9.TUNEL解析
免疫染色実験と同様に、遺伝子導入細胞をカバーグラス上に蒔き、2日間puromycin選択する。その後、3.7% Formaldehyde(10% Formalin)(Wako)PBS溶液にて細胞を固定する(室温、10分)。その後、1%過酸化水素含有メタノール溶液処理(室温、2分)、0.1% TritonX−100含有PBS溶液処理(室温、5分)の後に、In Situ Cell Death Detection Kit,Fluorescein(Roche)にて、細胞内のDNA切断部位をFluorescein結合核酸にて標識する。その後必要に応じて、抗phospho−histoneH3等で免疫染色し、洗浄後、蛍光封入剤Shandon PermaFluor(Thermo Electron Corp.,MA,USA)を加えてスライドガラスに載せ、共焦点レーザー蛍光顕微鏡にて観察した
10.細胞死・細胞周期解析
遺伝子導入細胞をpuromycin選択後に回収し、低張液(75mM KCl)に浮遊させる(37℃,20分)。その後、攪拌しながら固定液(メタノール:氷酢酸=3:1混合液)約3容を加えて細胞を固定する。遠心上清除去後に再度固定液に浮遊させる。細胞浮遊液をスライドガラス上に1、2滴滴下し風乾する。その後5% Giemsa水溶液にて核染色体を染色した。実体顕微鏡BHT−323(Olympus)にて観察し、細胞を間期(Go/G1,S,G2),細胞分裂前期(Prophase),細胞分裂中期(Metaphase),細胞分裂後期/終期(Anaphase/telophase),及び死細胞(mitotic catastroph及びapoptosis)に分けて計測した。
11.Microarray解析
理化学研究所・バイオリソースセンター(和光市、埼玉、日本)の三好浩之博士よりレンチウイルスシステム(pENTR4−H1,CS−RfA−EG,pCAG−HIVgp,pCMV−VSV−G−RSV−Rev)の分与を受ける。pU6−puro−RNAiベクターのU6prmoter−RNAi−オリゴ部分をpENTR4−H1ベクターに挿入し、その後LRclonase(Invitrogen)にてCS−RfA−EGベクターに組み込む。pCAG−HIVgp,pCMV−VSV−G−RSV−Revと共に、293T細胞にtransfectamin2000にてトランスフェクションする。翌日Forskolin(Sigma−Aldrich)10μM添加培地に置換し24時間培養し、培養上清を回収する。培養上清をSwing rotor SW28にて19,400rpmで2時間超遠心し、レンチウイルス粒子沈渣を回収し、約50倍に濃縮するように培地に溶かし、ウイルスストックとする(−70℃保存)。ACC−LC−91細胞にレンチウイルス50×濃縮ストック(1×104細胞あたり1.5μl)を添加する。添加後36,54,72時間後に細胞を回収し、FACS解析、RNA試料作製を行う。得られた36時間のRNA試料250ngから、MMLV−RT(Agilent Technologies,Palo Alto,CA)及びT7プロモーター配列を付加したオリゴdTプライマーを用いてcDNAを合成する。次にT7 RNA polymeraseを含むLow RNA Fluorescent Linear Amplification kit(Agilent Technologies)と、Cyanine3(Cy3)−CTP及びCyanine5(Cy5)−CTP(PerkinElmer,Quebec,Canada)にて、Cy3/Cy5標識cRNAを合成する。Cy3/Cy5標識cRNAをAgilent oligonucleotide microarray(Whole human genome 44K)にハイブリダイズさせ、アレースキャナー(Agilent Technologies)で、蛍光色素量を定量し解析した。RNAi#3及びRNAi#4のRNA試料と対照レンチウイルスのRNA試料との組み合わせでCy3/Cy5標識を交換(Color swapping)して2回行い、平均値でRNAi後の遺伝子変化を検討した。
(結果)
図1に、ヒトDREF/ZBED1遺伝子のドメイン構造と、RNAi部位及び配列を示す。puromycin耐性遺伝子を持つplasmidベクター(pCMV−puro)に、RNA polymerase IIIが転写するプロモーターであるマウスU6プロモーターを挿入し、さらにshort−hairpin型oligoを挿入してDREF−RNAi系を作製した(pCMV−puro−siDREF#1〜#6)。DREF−RNAi系をヒト肺癌細胞株にトランスフェクションし、その後24〜48時間puromycin処理により遺伝子導入細胞を選択し、DREF−RNAi作用を解析した。
また、RNAiのためにlentivirusベクターも用いた。lentivirusベクターに同様にshort hairpin型oligoを挿入して、定法にしたがって293T細胞に遺伝子導入し、short hairpin RNAを発現するlentivirus粒子を回収し、それを細胞培養液に添加して、解析した。
図2は、RNAi効果のRT−PCR解析結果を示す。肺癌細胞A549に、RNAiベクターpCMV−puro−siDREF#1,#3,#4,#5,#6を導入し、puromycin48時間処理後に、細胞を採取し、RNAを抽出し、RT−PCRにてDREF発現を検討した。DREF−siRNAを発現しない対照ベクター(pCMV−puro−)U6blankに比して、すべてのpCMV−puro−siDREFベクターでRNAiによる発現低下が見られた。
図3は、RNAi効果のWestern blot解析結果を示す。RNAi効果を更に検討するために、DREF全長cDNA発現ベクター、及び、#3,#4のRNAi部位をそれぞれsilent mutationを起こし、RNAi抵抗性となったDREF全長cDNA発現ベクターを用い、Western blotにてDREF蛋白の発現変化を検討した。検出はDREF cDNAのN末に挿入したHA−tagに対する抗体である抗HAポリクローナル抗体を用いた。siDREF#3,#4でともに野生型DREFタンパク質の著名な減少がみられた。#3,#4のsilent mutationをもつDREF(#3mut,#4mut)はRNAiに対して抵抗性であった。
図4は、細胞周期解析(1)の結果を示す。肺癌細胞株ACC−LC−91にpCMV−puro−siDREF#1,#3,#4,#5,#6(及び対照ベクターのU6blank)を導入し、puromycin選択後に、PI染色のFACSにて細胞周期解析(DNA含量解析)を行った。siDREF−#3,#5でS期の低下が見られG1−S移行段階での細胞周期停止(G1停止)傾向が見られた。又、#4ではG1が著減しG2/Mの著増が見られて、非常に強いG2/Mステップでの細胞周期停止が見られた。#3でもG2/Mの軽度の増加が見られ、#3は強いG1停止と比較的軽度のG2/M停止を起こすと考えられた。
そこで、以降は強い細胞周期停止作用を示した#3,#4を中心に解析した。
図5A,5B,5Cは、細胞周期解析(2)の結果を示す。数種の肺癌細胞株に同様にpCMV−puro−siDREF,#3,#4(及びU6blank)を導入し細胞周期を解析した。ACC−LC−172では、ACC−LC−91と同様に、#3は強いG1停止と比較的軽度のG2/M停止を起こし、#4では強いG2/Mでの細胞周期停止が見られた。Calu6・ACC−LC−319でも#4でG2/M停止傾向が見られた。A549−#4・PC10−#3及び−#4では、Sの減少が見られ、G1停止傾向であった。また、正常肺由来細胞株のBEAS2B及びHPL1で、細胞周期停止はほとんど見られなかった。
図6A,6Bは、細胞増殖能解析結果を示す。puromycin−selection 10日後の細胞数をMTTアッセイ(細胞増殖キット使用)で解析した。siDREF−#3,#4により非常に強い細胞増殖抑制作用が得られ、抑制の強さは、#4の方が強いと考えられた。#1は弱い増殖抑制効果しか得られなかった。
図7は、γH2AX(Phospho−H2AX)、Phospho−ATM(Ser1981)染色結果を示す。MTT解析での増殖抑制の機序として、DNA damage誘導の可能性を考え、DNA損傷に反応し活性化されるキナーゼのATM(Ser1981リン酸化が活性化の指標)、およびこのATMによりリン酸化されるヒストンH2AX(γH2AX=phospho−H2AX)を免疫蛍光で検討した。ACC−LC−91及びACC−LC−172でともに、#3、#4によりγH2AXシグナルの増加がみられ、特に#4では著増していた。ACC−LC−91のPhospho−ATM(Ser1981)染色では、シグナルの著増がみられ、siDREF−#3,#4特に#4で、DNA障害が誘導され、ATM活性化、H2AX等のATM基質のリン酸化、細胞周期停止というシグナルが働いていると考えられる。ACC−LC−91と比較して、A549・PC10の#3によるγH2AXシグナルは、ほぼ同程度で見られた(データ示さず)。また、ACC−LC−91と比較して、A549・PC10の#4によるγH2AXシグナルは、A549(±)<PC10(+)<ACC−LC−91(++)であった(データ示さず)。
図8は、TUNEL解析結果を示す。DNA断片化を検出するTUNEL解析で、アポトーシス(細胞死)の誘導を検討した。U6blankと比較して、#3及び#4でアポトーシス誘導が見られた。アポトーシス頻度は#3及び#4で差異があり、#3はA549、PC10、ACC−LC−91及びACC−LC−172の4株でほぼ同程度であったが、#4では、A549はPC10とほぼ同程度であり、またACC−LC−91はACC−LC−172とほぼ同程度であり、ACC−LC−91はA549よりかなり大きなアポトーシス誘導を示した(一部データを示さず)。
図9は、細胞周期の変化を示す。FACSではG2とMとの区別が容易ではないので、細胞をギムザ染色して細胞周期(間期(interphase=G1,S,G2)M期(prophase,metaphase,anaphase−telophase))を検討した。ACC−LC−91ではsiDREF #3,#4でM期の増加が見られた。また、#4では強いクロマチン凝集を起こしたM期細胞が増加しM期での細胞死誘導(mitotic catastroph)が起こっていることが示された。
図10は、M期での細胞死(mitotic catastroph)を示す。M期にリン酸化されるphospho−histon H3(H3−P)とγH2AXとを免疫染色し、DNA障害・細胞死誘導と細胞周期との関係を検討した。ACC−LC−91ではH3−P陽性のM期細胞の多くがγH2AX陽性であり、M期でDNA障害により細胞死が誘導されていることが示された。
図11は、siDREF−#3,#4の遺伝子発現解析結果を示す。ACC−LC−91にsiDREF#3,siDREF#4のlentivirusを感染させRNAiを誘導した。細胞周期停止(54時間及び72時間)が起こる前の、感染後36時間でRNAを採取し、対照lentivirus感染群のRNAを対照RNAとして、siDREF#3,#4によって引き起こされる遺伝子発現の変化を検討した。この段階で変化する遺伝子群は、DREFによって直接発現制御され、細胞周期停止・細胞死誘導を引き起こしてくる遺伝子群である可能性が高い。
図12は、肺癌患者検体におけるDREFの発現を示す。
肺癌患者検体よりRNeasy Mini Kit(Qiagen)にてtotal RNAを回収し、そのtotal RNA 5μgからMoloney Murine Leukemia Virus Reverse Transcriptase(MMLV−RT,Invitrogen)にて、RTを施行しcDNAを合成した。そのcDNA(RNA 20ng相当)を用いて、DREF遺伝子発現量及び内部対照として18SリボゾームRNA発現量を、図2のDREFプライマー及び18Sプライマーを用いて、ABI−PRISM 7900(ABI)にて定量した。有意さの検定は、StatView(SAS)のt検定にて行った。
肺癌では全例DREF発現が見られたのに対して、正常肺ではDREF発現が無かった。又、肺癌の中で組織型間でのDREFの発現を比較してみると、組織型毎にDREF発現が異なり、特に腺癌と(腺癌、扁平上皮癌以外の)その他の組織型の肺癌とでは有意差(P=0.012)があった。これらの事から、DREF発現と肺癌発症との関連が示唆された。
図13は、DREF−RNAi#4によって発現抑制される遺伝子の中で、癌の増殖に関連すると考えられるRPL17遺伝子のDNA配列(A)と、RPL17遺伝子のDREFによる転写活性化の機序(B)を示す。転写開始点より+7nt〜+16ntの位置にDREFタンパク質のDNA結合モチーフTGTCGYGAYA(Y=C又はT)にほぼ一致(90%)する配列が見出された。この配列にDREFが結合してRPL17 DREF発現を誘導しており、DREF−RNAi#4によってDREF発現が低下するために、RPL17遺伝子も発現低下すると考えられる。
図11のマイクロアレイによる遺伝子発現解析結果を表1(#4)及び表2(#3)示す。これらのRNAi誘導の早期(36時間)で発現が変化する遺伝子群はDREFによって直接発現制御され、細胞周期停止、細胞死誘導を引き起こしてくる遺伝子群である可能性が高く、癌治療の標的となると考えられる。
本発明によるDREFを標的とする癌治療は、正常組織に実質的に影響を及ぼすことなく、癌細胞に対して非常に強い細胞増殖抑制、M期での細胞死誘導、及びG2/M期での非常に強い細胞周期停止作用を有するため、癌の退縮と細胞死に非常に有効である。
本発明は、DREFを分子標的とする癌治療を可能とする。すなわち、本発明の治療剤は、癌の退縮と細胞死に非常に有効であるため、DREFを発現する癌の治療に有効に使用できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
[配列表]
本発明は、DREFを分子標的とする癌治療を可能とする。すなわち、本発明の治療剤は、癌の退縮と細胞死に非常に有効であるため、DREFを発現する癌の治療に有効に使用できる。
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Claims (15)
- 癌細胞又は癌組織においてヒト細胞増殖制御因子DREF又はDREF遺伝子のインビボ機能を抑制する、DREFに対するRNAi核酸、アンチセンス核酸又は抗体を含むことを特徴とする癌治療用組成物。
- DREFが、配列番号1に示されるアミノ酸配列、或いは該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加を含むアミノ酸配列、を含む請求項1に記載の組成物。
- DREF遺伝子が、配列番号2の202位〜2286位に示されるヌクレオチド配列、或いは該ヌクレオチド配列と95%以上の同一性を有するヌクレオチド配列、を含む請求項1に記載の組成物。
- インビボ機能の抑制が、癌細胞における、細胞増殖抑制、細胞周期停止及び/又は細胞死誘導である請求項1に記載の組成物。
- RNAi核酸又はアンチセンス核酸が、DREF mRNAの切断又はその機能抑制を可能にするものである請求項1に記載の組成物。
- RNAi核酸が、siRNA又はshRNA、該siRNA又はshRNAをコードするDNA、或いは該DNAを含むベクターである請求項1に記載の組成物。
- アンチセンス核酸が、アンチセンスRNA、該アンチセンスRNAをコードするDNA、該DNAを含むベクターである請求項1に記載の組成物。
- RNAi核酸又はアンチセンス核酸が、DREF遺伝子のヌクレオチド配列に由来するものである請求項1に記載の組成物。
- RNAi核酸又はアンチセンス核酸が、DREFのCR2ドメイン又はCR3ドメインをコードするヌクレオチド配列(それぞれ配列番号3及び4)に由来するものである請求項1に記載の組成物。
- RNAi核酸が、配列番号5〜15、19、22、25及び28のいずれか1つのDNA配列、又は該DNA配列に対応するRNA配列を含む請求項1に記載の組成物。
- ベクターが、配列番号20、21、23、24、26、27、29及び30のいずれか1つのDNA配列を含む請求項6に記載の組成物。
- DREFに対する抗体が、DREFのCR1ドメイン、CR2ドメイン又はCR3ドメイン(それぞれ配列番号138、133又は134)、或いは該CR1又はCR3ドメイン中のDREFのDNA結合に関連する機能ドメイン、のエピトープと結合する抗体である請求項1に記載の組成物。
- DREFに対する抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体又はそのフラグメントである請求項1又は12に記載の組成物。
- ヒト培養癌細胞、又はDREF強発現哺乳類細胞株、を含む培地に候補薬剤を加えて、DREF遺伝子の発現又は翻訳を抑制する薬剤をインビトロでスクリーニングすることを含む、癌治療用薬剤をスクリーニングする方法。
- 前記細胞又は細胞株の細胞増殖抑制、細胞周期停止及び/又は細胞死誘導を指標とする請求項14に記載の方法。
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