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JP5011675B2 - 物質の生産プロセスのシミュレーション方法 - Google Patents

物質の生産プロセスのシミュレーション方法 Download PDF

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Description

アミノ酸、核酸に代表される物質の、微生物等の細胞を用いた生産プロセスのためのシミュレーションの方法及びそのためのプログラムに関する。
細胞内の酵素による生化学反応の数式モデルを構築することによって細胞内の代謝物の動的な挙動を推定する技術は、代謝シミュレーション(metabolic simulation)と呼ばれ、多数の例があり(非特許文献1)、多くの方法が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)。比較的大規模な代謝シミュレーションの例として、Teusinkらは、Saccharomyces cerevisiaeの解糖系からグリコーゲン、トレハロース、グリセロール、コハク酸への分岐経路を考慮した嫌気的なエタノール発酵のシミュレーションを実施している(非特許文献2)。Escherichia coliにおいては、Chassagnoleらが、増殖速度一定条件での中央代謝モデルを構築し、シミュレーションを行っている(非特許文献3)。E. coli の代謝酵素遺伝子発現の一部を数式化し、酵素反応モデルと組み合わせてシミュレーションを実施している例も報告されている(非特許文献4、非特許文献5)。また、Varnerの報告では、酵素の動力学モデルに遺伝子発現を組み込んだ大規模モデルの構築が概念的に示され、比増殖速度は、最大の比増殖速度に対する各前駆体の飽和係数を用いた式で表現されている(非特許文献6)。他生物では、さらに詳細なモデルが報告されている。Jeongらは、Bacillus subtilisにおいて、バッチ培養における胞子形成過程を数式モデル化している(非特許文献7)。Tomitaらにより、Mycoplasma genitaliumのゲノムの転写、翻訳、エネルギー生成及びリン脂質合成に関わる127遺伝子のシミュレーションも報告されている(非特許文献8)。
Ishii, N. et al. J. Biotechnol. 113:281-294, 2004 米国出願公開第20020022947号明細書 国際公開パンフレット第WO2004/081862号 国際公開パンフレット第WO03/07217号 国際公開パンフレット第WO02/55995号 国際公開パンフレット第WO02/05205号 特開2003-180400号公報 Teusink, B. et al. Eur. J. Biochem. 267:5313-5329, 2000 Chassagnole, C. et al. Biotechnol. Bioeng. 26:203-216, 2002 Wang, J. et al. J. Biotechnol. 92:133-158, 2001 Schmid J. W. et al. Metab. Eng. 6:364-377, 2004 Varner, J. D. Biotechnol. Bioeng. 69:664-678, 2000 Jeong et al. Biotechnol. Bioeng. 35:160-184, 1990 Tomita et al. Bioinformatics 15:72-84, 1999)。
細胞のアミノ酸、核酸に代表される物質の、微生物等の細胞を用いた生産プロセスのシミュレーションにおいては、基質から目的生成物にいたる酵素反応を、動力学的パラメーターを用いて数式化することが多い。しかしながら、有用物質の生産には、回分培養法(batch culture)、あるいは半回分培養法(fed batch culture)が用いられることが多く、細胞の増殖速度は変化する。それに伴い、各種の細胞内のパラメーターは変化する。加えて、基質となる物質、培地中に存在する成分、目的生成物に加えてアミノ酸、有機酸あるいは、二酸化炭素(CO2)といった副生成物も物質生産の過程でその生成速度が変化する。従って、このような増殖速度や副生成物の実験データに適合させる形で、精度よく代
謝シミュレーションを行うための手法が望まれている。実験データを反映するような正確な代謝シミュレーションが可能となれば、遺伝子の増幅や欠損化の実験をコンピューター内で短時間に行うこと(in silico実験)が可能になる。これにより、細胞の物質生産能の向上を実施するための開発期間の大幅な短縮が期待される。
本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意検討を行った結果、アミノ酸、核酸に代表される物質の、微生物等の細胞を用いた生産のための代謝シミュレーションにおいて、細胞増殖の指標となる比増殖速度を測定値から時間関数にて数式化し、各種パラメーター、細胞内代謝物の細胞構成成分への流出速度、さらには、細胞内代謝物の細胞外からの取込速度または細胞外への排出速度を時間関数または比増殖速度を変数とした関数を用いることで、より正確なシミュレーションが可能となることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、下記のものを提供する。
[1] 細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式を準備し、微分方程式におけるシミュレーションに必要なパラメーターに値を入力し、値が入力された微分方程式を解くことを含む、細胞を用いた物質の生産プロセスを細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式によりシミュレーションする方法であって、下記(a)〜(d)を特徴とする前記方法。
(a)前記微分方程式は、細胞の比増殖速度を含む微分方程式を含み、比増殖速度は、時間の関数として表される。
(b)微分方程式のパラメーターの全てまたは一部が比増殖速度の関数または時間の関数として表わされる。
(c)微分方程式に、細胞内代謝物が細胞構成成分へと形成される形成速度が含まれ、該形成速度が比増殖速度の関数または時間の関数として表わされる。
(d)微分方程式に、細胞外から取り込まれる代謝物質の流入速度、及び/または、細胞内から細胞外へ排出される代謝物質の流出速度が含まれ、該流入速度及び/または流出速度が比増殖速度の関数または時間の関数として表わされる。
[2] 細胞の比増殖速度を含む微分方程式が下記の式(1)〜(3)に示す微分方程式を含む[1]記載の方法。
d[Metabolite]/dt=Vinput−Voutput−μ[Metabolite] (式1)
d[mRNA]/dt=ktranscription[P]−(kdRNA+μ)[mRNA] (式2)
d[Protein]/dt=ktranslation[mRNA]−(kdProtein+μ)[Protein] (式3)
式1中、[Metabolite]は細胞内代謝物質の濃度、Vinputは代謝物質を生成する反応速度の和、Voutputは代謝物質を消費する反応速度の和、μは比増殖速度を表わす。
式2中、[mRNA]はmRNAの濃度、ktranscriptionは、転写の速度定数、[P]はプロモーター濃度、kdRNAはmRNAの分解の速度定数、μは比増殖速度を表わす。
式3中、[Protein]はタンパク質の濃度、ktranslationは、翻訳の速度定数、kdProteinはタンパク質の分解の速度定数、μは比増殖速度を表わす。
[3] 比増殖速度を表わす時間の関数が、生産プロセスにおける比増殖速度の測定データを数式化することにより得られるものである[1]または[2]記載の方法。
[4] 前記形成速度を表わす比増殖速度の関数または時間の関数が、生産プロセスにおける前記形成速度の測定データを数式化することにより得られるものである[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5] 前記流入速度及び/または流出速度を表わす比増殖速度の関数または時間の関数が、生産プロセスにおける前記流入速度及び/または流出速度の測定データを数式化することにより得られるものである[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6] 細胞内に取込まれる代謝物質が、基質および/または、培地中の有機物である[
1]〜[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7] 細胞外に排出される代謝物質が、目的とする生成物および/または、副生成物である[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8] 細胞外に排出される代謝物質がアミノ酸、有機酸及び/又は二酸化炭素である[7]に記載の方法。
[9] 細胞外に排出される代謝物質がアミノ酸又は有機酸である[8]に記載の方法。[10] シミュレーションに必要なパラメーターが、転写の速度定数、及び/または、翻訳の速度定数である[1]〜[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11] 細胞がアミノ酸生産能及び/又は有機酸生産能を保持する微生物である[1]〜[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12] 微生物がEscherichia coliである[11]に記載の方法。
[13] 細胞構成成分の組成自体が、細胞の比増殖速度、または、同等の生育に関する指標を用いた数式で表される[1]〜[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14] 細胞を用いた物質の生産プロセスを細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式によるシミュレーションのためのプログラムであって、下記(1)〜(3)の手段としてコンピューターを機能させる前記プログラム。
(1)下記(a)〜(d)を満たす、細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式を記憶する手段。
(a)前記微分方程式は、細胞の比増殖速度を含む微分方程式を含み、比増殖速度は、時間の関数として表される。
(b)微分方程式のパラメーターの全てまたは一部が比増殖速度の関数または時間の関数として表わされる。
(c)微分方程式に、細胞内代謝物が細胞構成成分へと形成される形成速度が含まれ、該形成速度が比増殖速度の関数または時間の関数として表わされる。
(d)微分方程式に、細胞外から取り込まれる代謝物質の流入速度、及び/または、細胞内から細胞外へ排出される代謝物質の流出速度が含まれ、該流入速度及び/または流出速度が比増殖速度の関数または時間の関数として表わされる。
(2)微分方程式におけるシミュレーションに必要なパラメーターの値を記憶する手段。(3)記憶された微分方程式及びパラメーターに基づいて微分方程式の解を算出する手段。
[15] [14]に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
この方法によれば、アミノ酸、核酸に代表される物質の生産プロセスのシミュレーションを、微生物等の細胞を用いた増殖速度が大きく変化する生産プロセスに対して行うことが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における、細胞を用いた物質の生産プロセスとは、細胞を用いて、基質から生成物に至る生化学反応を連続的な酵素反応によって行い目的とする生成物を生じせしめるプロセスを指す。
本発明の、上記生産プロセスの微分方程式によるシミュレーション方法は、本発明における特定の条件を採用する他は、通常のシミュレーション方法と同様でよい。通常のシミュレーション方法は、細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式を準備し、微分方程式におけるシミュレーションに必要なパラメーターに値を入力し、値が入力された微分方程式を解くことを含む。
微分方程式の準備は、通常には、代謝シミュレーションに発現制御の数式を組み込むことによって行うことができる。
代謝シミュレーションとは、細胞内の生化学反応を数式で表現し、それに基づく物質の変化を微分方程式で記述し、これを数値計算によって解くことによって、時間に依存したダイナミックな変化を記述する方法である。これに用いられる数式は、非線形常微分方程式(ODE: ordinary differential equation)であることが多く、この数式化の過程をモデル化(modeling)と一般的に呼ぶことが多い。多数の非線形微分方程式は計算機を用いて解くのが一般的である。
生化学反応は、細胞内の代謝物が酵素反応によって細胞内で変換される過程を指し、多くの生物に関して、データベース化されている。例えば、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes http://www.genome.ad.jp/kegg/ Kanehisa, M. et al. Nucleic Acids Res. 32:277-280, 2004)を参照することが出来る。E. coliに対しては、EcoCyc(Encyclopedia of Escherichia coli K12 Genes and Metabolism http://ecocyc.org/ Keseler
et al., (2005) Nucleic Acids Res. 33, D334-D337, 2005)が知られている。これらの生化学的な酵素反応を数式化するのには、ミカエリス-メンテン型反応式を基本とした動力学的式がよく用いられる(Segel, I. H. Enzyme Kinetics: Behavior and Analysis of
Rapid Equilibrium and Steady-State Enzyme Systems, John Wiley & Sons, 1975)。個々の酵素のパラメーターは、文献から収集することが可能である。例えば、E. coliではChassagnoleらがグルコースからアセチルCoAに至る解糖経路及びペントースリン酸経路の酵素反応の動力学的パラメーターを用いた数式化を行っている(Chassagnole, C. et al. Biotechnol. Bioeng. 26, 203-216, 2002)。細胞内の酵素の量を規定するのは、遺伝子発現であり、このプロセスは、遺伝子からmRNAへの転写とmRNAからタンパク質への翻訳の過程を経て行われる。この遺伝子発現を代謝シミュレーションに含めることにより、より詳細な細胞内の挙動を記述することが可能になる。例としては、Wang らがE. coli のスクロース及びグリセロール取込系の発現制御を数式化し、解糖経路の酵素反応モデルと組み合わせてシミュレーションを実施している(Wang, J. et al. J. Biotechnol. 92:133-158, 2001)、あるいは、Schmidらが、トリプトファン生合成経路遺伝子(trp operon)の発現制御をモデル化、E. coliの中央代謝モデルを組み合わせて解析を実施している(Schmid J. W. et al. Metab. Eng. 6:364-377, 2004)ように、発現制御を数式化して代謝シミュレーションに含めることが挙げられる。このようにして、細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式が準備される。
一般的に代謝物質の濃度変化と遺伝子発現は、以下の微分方程式で表現することができる。
各細胞内代謝物質に関しては、個々の細胞内代謝物質に対する酵素反応速度と増殖による希釈効果を考慮した式1で表わすのが一般的である。
d[Metabolite]/dt=Vinput−Voutput−μ[Metabolite](式1)
ここで、[Metabolite]は細胞内代謝物質の濃度、Vinputは代謝物質を生成する酵素反応速度の和、Voutputは代謝物質を消費する酵素反応速度の和、μは比増殖速度。
遺伝子発現については、転写および翻訳の二段階に分け、遺伝子が転写されて生成するmRNAおよびmRNAが翻訳されて生成するタンパク質の濃度変化で表わすのが一般的である(図1)。
様々な遺伝子が転写されて生成するmRNAに関しては、遺伝子からmRNAが合成される転写速度とmRNAの分解速度に希釈効果を加えた以下の式で表わすことが可能である。
d[mRNA]/dt=ktranscription[RNAP][Promoter]−(kdmRNA +μ)[mRNA](式2)
ここで、[mRNA]は各mRNAの濃度、ktranscriptionは転写の速度定数、[RNAP] は転写を行なうRNAポリメラーゼ濃度、[Promoter]は対応する遺伝子のプロモーター濃度、kdRNAはmRNAの分解の速度定数、μは比増殖速度。
mRNAが翻訳されて生成するタンパク質に関しては、mRNAからタンパク質が翻訳される翻訳速度とタンパク質の分解速度に希釈効果を加えた以下の式で記述することが出来る。
d[Protein]/dt=ktranslation[Ribosome][mRNA]−(kdProtein +μ)[Protein](式3)
ここで、[Protein]はタンパク質の濃度、ktranslationは翻訳の速度定数、[Ribosome]は翻訳を行なうリボゾームの濃度、kdProteinはタンパク質の分解の速度定数、μは比増殖速度。
(式2)及び(式3)については、他にも様々な記述方法が可能である。
微分方程式が準備されると、準備された微分方程式における、シミュレーションに必要なパラメーターに値が入力される。シミュレーションに必要なパラメーターとしては、速度定数、初期濃度などが挙げられる。パラメーターは、好ましくは、転写の速度定数、及び/または、翻訳の速度定数である。
個々の酵素反応及び遺伝子発現のパラメーターは、文献から収集可能である。しかし、酵素反応及び遺伝子発現のモデル化に際してのパラメーターは多数存在し、全てを文献から集めることは不可能であることも多い。その際には、文献上の様々な情報から適切な値を推測すること、実験における測定結果に対する最適化により推測することが可能である。
かくして得られた非線形常微分方程式を解くのには、MATLABR(MathWorks)、MATHEMATICAR(Wolfram Research)等の数学計算プログラムを使用することが可能である。代謝シミュレーションの実行には、例えば、MATLABR(MathWorks)のODEソルバ使用することが可能である。代謝反応式や遺伝子発現式を解くためのODEソルバとしては、ode45やode21sなどが好適に用いられる。また、代謝シミュレーションを行うためのソフトウエアとして、多くの代謝シミュレーションソフトウエアが開発されており、利用することが可能である(Ishii, N. et al. J. Biotechnol. 113:281-294, 2004)。例としては、GEPASI(Mendes, P. Comput. Applic. Biosci. 9:563-571, 1993)、SCAMP(Sauro, H. M. Comput. Appl. Biosci. 9:441-450, 1993)、E-CELL(Tomita, M. et al. Bioinformatics 15:72-84,
1999)などがあげられる。
本発明の方法は、このようなシミュレーションの手法において、以下の条件を加えることを特徴とする。これにより、細胞の増殖を伴う物質生産プロセスのより正確なシミュレーションが可能になる。
(a)比増殖速度の時間の関数での記述
微分方程式に、細胞の比増殖速度を含む微分方程式を含ませ、比増殖速度を時間の関数として表わす。
細胞の増殖とは、物質生産過程において細胞数が増える現象を指し、通常は物質生産にために加えた基質が細胞構成成分へ変換されて、細胞数が増加していく。増殖を細胞数で表した場合、増殖速度は細胞数の増加速度であり、比増殖速度は、細胞数の増加速度を細胞数で除することにより得られる。ここで、細胞数は、細胞増殖の指標となる値の一つであり、同等の機能を持つ値(例えば、培養液の濁度)であれば、いかなるものを用いることも可能である。
比増殖速度の時間の関数は、生産プロセスにおける比増殖速度の測定データを数式化することにより得ることが好ましい。細胞の増殖は、培養液の濁度や希釈した培養液中の細胞数を数えることで測定することができる。実験的に測定される細胞の増殖曲線は、時間の関数として近似することが可能である。このような近似式を得るためのソフトウエアとしては多数が市販されているが、好適なものとしてTableCurveR 2D(Systat Software)をあげることができる。得られた増殖曲線の時間関数を微分し、増殖曲線の式で除することにより、比増殖速度の時間式を得ることができる。濁度(OD)の測定により得られた増殖曲線及びそれから得られた比増殖速度μの時間式の例を図2に示す。
(b)パラメーターの比増殖速度あるいは時間の関数での記述
微分方程式のパラメーターの全てまたは一部を比増殖速度の関数または時間の関数として表わす。
パラメーターの中には、細胞の増殖に連動して変化するものがあり、より多くのパラメーターを細胞の比増殖速度または時間の関数で表わすことが好ましい。例えば、遺伝子発現のパラメーターである転写及び翻訳の速度定数は、細胞の増殖速度によって大きく変化することが知られており、それぞれの過程を触媒するRNAポリメラーゼ及びリボゾームは、培養速度によって数が大きく変化することが知られている( Bremer and Dennis, In Escherichia coli and Salmonella: Cellular and Molecular Biology/Second Edition (Neidhardt, F. C. Ed.) pp. 1553-1569. American Society for Microbiology Press, Washington, D.C., 1996)。これらを比増殖速度依存的な数式として表現し、遺伝子発現の数式に組み込むことで、より正確な発現の数式化が可能になる。より具体的には、上記のmRNAの微分方程式(式2)において、[RNAP]を比増殖速度μの式で表現することが可能である。同様に、上記のタンパク質の微分方程式(式3)において、[Ribosome]を比増殖速度μの式とすることができる。ここで、比増殖速度μは、上記(a)で用いたものと同一であってもよいし、別の細胞の増殖に関する指標に基づく比増殖速度であってもよい。
測定が可能なパラメーターであれば、細胞増殖過程における測定値を直接、時間関数に表現して用いることも可能である。また、パラメーターを表わす関数が比増殖速度依存的な式であれば、比増殖速度の時間関数を代入することで、パラメーターを時間関数に変換することが可能である。
(c)細胞構成成分形成速度の増殖速度あるいは時間関数での記述
微分方程式に、細胞内代謝物が細胞構成成分へと形成される形成速度を含めて、該形成速度を比増殖速度の関数または時間の関数として表わす。
細胞構成成分は、細胞を主として構成するタンパク質、RNA、DNA、脂質、リポ多糖などの高分子化合物を指す。基質がタンパク質、核酸、脂質等の細胞構成成分に酵素変換することで、細胞は必要な構成成分を得ることができる。これら細胞構成成分に至る生化学反応を列挙することによって、化学量論マトリックスを生成することができる(Savinell, J. M. and Palsson, B. O. J. Theor. Biol. 154:421-454, 1992; Vallino, J. J. and Stephanopoulos, G. Biotechnol. Bioeng. 41:633-646, 1993)。E. coliのグルコースから全てのアミノ酸への代謝反応の化学両論マトリクスの生成の詳細は公開特許WO2005001736に詳しく記載されている。細胞構成成分の組成を与えることにより、化学量論マトリックスを用いて、細胞内代謝物から細胞構成成分の形成速度Vbiomassを計算することができる(Pramanik, J. and Keasling J. D. Biotechnol. Bioeng. 56:398-421, 1997)。
細胞構成成分形成速度は、増殖速度依存的であることも知られている(Pramanik, J. and Keasling J. D. Biotechnol. Bioeng. 60:230-238, 1998)。さらに、細胞構成成分の
組成も増殖速度に依存的であり、これを測定することで、比増殖速度を用いて数式化することが可能である(Bremer and Dennis, In Escherichia coli and Salmonella: Cellular and Molecular Biology/Second Edition (Neidhardt, F. C. Ed.) pp. 1553-1569. American Society for Microbiology Press, Washington, D.C., 1996)。かくして得られた細胞構成成分形成速度Vbiomassによって、細胞構成成分の前駆体である代謝物に対して細胞内代謝物への影響を考慮することができる。具体的には、細胞構成成分の前駆体である代謝物の微分方程式(式1)においてVbiomassをVoutputに含めて計算することによって、細胞構成成分の前駆体である代謝物の物質収支をより増殖速度あるいは時間に依存した式で記述することが可能となる。
細胞構成成分の形成速度が測定可能であれば、生産プロセスにおける測定値を直接、時間関数に表現して用いることも可能である。また、形成速度を表わす関数が比増殖速度依存的な式であれば、比増殖速度の時間関数を代入することで、形成速度を時間関数に変換することが可能である。比増殖速度は、上記(a)で用いたものと同一であってもよいし、別の細胞の増殖に関する指標に基づく比増殖速度であってもよい。
また、細胞構成成分の組成自体を、細胞の比増殖速度、または、同等の生育に関する指標を用いた数式で表わすことが好ましい。
(d)細胞外からの代謝物質の流入速度、細胞内からの代謝物質の流出速度の数式化
微分方程式に、細胞外から取り込まれる代謝物質の流入速度、及び/または、細胞内から細胞外へ排出される代謝物質の流出速度を含めて、該流入速度及び/または流出速度を比増殖速度の関数または時間の関数として表わす。
物質の生産プロセスにおいては、培地成分としてグルコースなどの基質以外に有機物を加えるのが一般的である。例としては、トリプトン、大豆加水分解物、酵母抽出物などがあげられる。このような培地成分由来のアミノ酸などの物質も細胞内に取り込まれ、代謝シミュレーションに影響を与える。培地中に残存する培地成分濃度の測定値から細胞内から取り込まれる代謝物質の取込み速度Vuptakeを比増殖速度の関数あるいは時間関数で記述することが可能である。生産プロセスで細胞内から細胞外へ排出される代謝物質には、目的とする生成物の他に副生成物と呼ばれる物質が排出されることがある。これらの物質も代謝シミュレーションに含めることで、より正確な物質の収支を記述することができる。培地中に検出される代謝物質濃度の測定値から細胞外への流出速度Vexcretionを比増殖速度の関数あるいは時間関数にて数式化することが可能である。代謝物質の微分方程式(式1)においてVuptakeをVinputに含めて計算し、VexcretionをVinputに含めて計算することによって、細胞の増殖速度あるいは時間に依存した物質収支を記述することが出来る(図3)。
流入速度及び/または流出速度が測定可能であれば、生産プロセスにおける測定値を直接、時間関数に表現して用いることも可能である。例えば、細胞外酢酸濃度測定により得られた濃度変化曲線及びそれから得られた排出速度の時間式の例を図4に示す。また、流入速度及び/または流出速度を表わす関数が比増殖速度依存的な式であれば、比増殖速度の時間関数を代入することで、流入速度及び/または流出速度を時間関数に変換することが可能である。比増殖速度は、上記(a)で用いたものと同一であってもよいし、別の細胞の増殖に関する指標に基づく比増殖速度であってもよい。
細胞内に取込まれる代謝物質は、好ましくは、基質および/または、培地中の有機物である。
細胞外に排出される物質は、好ましくは、目的とする生成物および/または、副生成物
である。細胞外に排出される物質は、より好ましくは、アミノ酸、有機酸及び/又は二酸化炭素であり、さらに好ましくは、アミノ酸又は有機酸である。
物質の生産プロセスに用いられる細胞は、物質生産に用いられるものであれば、どのようなものでもよい。例えば、各種培養細胞、カビ、酵母、各種バクテリア等が挙げられる。好ましくは、有用化合物、例えばアミノ酸、核酸、または有機酸を産生する能力を保持する微生物である。アミノ酸、核酸、または有機酸の生産能を保持する微生物としては、例えば、大腸菌、バチルス属細菌、コリネ型細菌などが好適に用いられる。より好ましくは、アミノ酸生産能及び/又は有機酸生産能を保持する微生物である。微生物は、好ましくは、Escherichia coliである。
本発明の方法によるシミュレーションにより、細胞内の代謝物質に加えて、各酵素のmRNAやタンパク質濃度の動的な挙動を予測することが可能となる。従って本発明の方法は、アミノ酸、核酸に代表される有用物質の生産プロセスの改良を行なう上で有用なツールとなりうる。例えば、各酵素の増幅効果あるいは欠損効果をコンピューター内で検証すること(in silico実験)が可能となる。また、基質に対する親和性、阻害物質に対する親和性等の各酵素のパラメーターを変化させたときの代謝全体に与える影響、さらに、各酵素遺伝子発現を制御する因子の増幅や欠損効果も容易に推定可能となる。これらの結果は、生産プロセスの改良に重要な指針を与えるものであり、産業上の有用性も大きい。
また、本発明は、本発明のシミュレーション方法を行うためのプログラム及びそれを格納した記憶媒体を提供する。
本発明のプログラムは、本発明のシミュレーション方法をコンピューターに実行させるためのプログラムであり、下記(1)〜(3)の手段としてコンピューターを機能させるものである。
(1)下記(a)〜(d)を満たす、細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式を記憶する手段。
(a)前記微分方程式は、細胞の比増殖速度を含む微分方程式を含み、比増殖速度は、時間の関数として表される。
(b)微分方程式のパラメーターの全てまたは一部が比増殖速度の関数または時間の関数として表わされる。
(c)微分方程式に、細胞内代謝物が細胞構成成分へと形成される形成速度が含まれ、該形成速度が比増殖速度の関数または時間の関数として表わされる。
(d)微分方程式に、細胞外から取り込まれる代謝物質の流入速度、及び/または、細胞内から細胞外へ排出される代謝物質の流出速度が含まれ、該流入速度及び/または流出速度が比増殖速度の関数または時間の関数として表わされる。
(2)微分方程式における、シミュレーションに必要なパラメーターの値を記憶する手段。
(3)記憶された微分方程式及びパラメーターの値に基づいて微分方程式の解を算出する手段。
本発明のプログラムによる処理のフローチャートを図5に示す。また、本発明のプログラムがインストールされたコンピューターの機能ブロック図を図6に示す。
微分方程式を記憶する手段は、中央処理部1、記憶部2および入力部3により構成される。微分方程式を記憶する手順(S1)では、入力部3から入力される微分方程式のデータを中央処理部1が記憶部2に記憶する。微分方程式のデータの形式は、特に限定されず、通常のものでよい。
パラメーターの値を記憶する手段は、中央処理部1、記憶部2および入力部3により構成される。パラメーターの値を記憶する手順(S2)では、入力部3から入力されるパラメーターの値を中央処理部1が記憶部2に記憶する。
微分方程式の解を算出する手段は、中央処理部1、記憶部2および出力部4により構成される。微分方程式の解を算出する手順(S3)では、中央処理部が、記憶部2から微分方程式のデータ及びパラメーターの値を読み出し、それらに基づいて微分方程式の解を算出し、出力部4に出力する。
中央処理部1は、例えば、プロセッサである。記憶部2は、例えば、記録媒体を用いる記憶装置である。入力部3は、例えば、キーボード等の入力装置や、他の装置からのデータ受信装置である。出力部4は、例えば、ディスプレイなどの出力装置や、他の装置へのデータ送信装置である。
上記の手段としてコンピューターを機能させるプログラムは、通常のプログラム化の方法に従って作成することができる。
また、本発明にかかるプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に格納することもできる。ここで、この「記録媒体」は、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、MO、DVD等の任意の「可搬用の物理媒体」や、各種コンピュータシステムに内蔵されるROM、RAM、HD等の任意の「固定用の物理媒体」、あるいは、LAN、WAN、インターネットに代表されるネットワークを介してプログラムを送信する場合の通信回線や搬送波のように、短期にプログラムを保持する「通信媒体」を含むものとする。
また、「プログラム」は、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読みとるための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明する。
<1> システムパラメーター
図7に示したE. coliの中央代謝のマップに示されている酵素及び転写因子の遺伝子からのタンパク質への発現と、酵素反応による物質変換のシミュレーションを実施した。シミュレーションに用いたシステムパラメーターと、量を定数として扱った代謝物を表1に示した。生育の指標として濁度OD(optical density)の実験値を用いるために、以下の基礎データを取得した。OD当たりの乾燥菌体重量DCWperOD(dry cell weight per OD)は、MG1655株の培養液300 mlを遠心分離し、乾燥菌体重量の測定を行なった結果を用いた。OD当たりの細胞密度celldens(cell density)は、MG1655株の培養液を2段階の希釈で各5回測定し、これを5回独立に繰り返した平均の結果(計50プレート計測)を用いた。一細胞当たりの体積cellvol(cell volume)と重量cellweight(cell weight)は、DCW 1 gあたりのcellvolを0.0025 l/g(Rohwer et al. J. Biol. Chem. 275, 34909-34921, 2000)とすることで算出した。翻訳速度定数は、μ=0.01 (min)-1における文献値11.03 (min)-1(Lee and Baily, Biotech. Bioeng. 26, 66-72, 1984)とリボゾーム濃度から算出した。タンパク質分解の速度定数も文献値を採用した(Miller, C. G. In Escherichia coli and Salmonella: Cellular and Molecular Biology/Second Edition (Neidhardt, F. C.
Ed.), pp. 680-691. American Society for Microbiology Press, Washington, D.C., 1996)。
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<2> 酵素反応モデリング
表2に本実施例で用いた代謝物の略称と初期値を示した。文献から採用したものについては、文献名を示した。シミュレーション上では増殖の過程で、細胞全体の体積が増加していくとして、総細胞体積(cellvoltot)を変数として扱った。総細胞体積(cellvoltot)の初期値は、ODの初期測定値(initOD)から以下の式で計算した。
cellvoltot=cellvol×celldens×reacvol×initOD
酵素反応のモデリングはSegel により記載されているミカエリス-メンテン型を基本として行なった(Segel, Enzyme Kinetics: Behavior and Analysis of Rapid Equilibrium
and Steady-State Enzyme Systems John Wiley & Sons, New York, 1975)。酵素、転写因子及びmRNAの名称と量の初期値を表3に示した。表4には酵素反応の形式とパラメーターの値、基質、生成物、エフェクターを示した。表4には、酵素反応式を示した。
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<3> 平衡反応
転写因子とそのエフェクターとの結合、あるいは、CYAの活性化は、平衡の成立を仮定し、代数方程式の解を用いた。CRPはカタボライト抑制に関与する転写因子であり、CRPとエフェクターであるcAMPの平衡により生じる[CRP-cAMP]totは表6のCRP1に示した二次方程式の解として表現した。[CRP]totと[cAMP]totは、それぞれ、菌体内のCRPとcAMPの総濃度を表す。CRPに関しては、ゲノム上に約200箇所の結合サイトが知られており、CRP-cAMPとこれら結合サイトも平衡に達しているとみなす必要がある。この乖離定数をKdCRP=4×10-8 (M)と仮定すると、ゲノム上のプロモーターと結合しているCRP-cAMPの濃度は、表6
のCRP2に示した二次方程式の解とみなすことができる。Mlcは、グルコース非存在時には標的遺伝子を抑制するが、グルコース存在下では、非リン酸化状態のIICBGlcと結合することが知られている。IICBGlcと結合し不活化した[Mlc- IICBGlc]は表6のMlcに示した二次方程式の解として表現した。Craは多くの糖代謝関連遺伝子のActivator/Repressorとして知られている転写因子である。Cra濃度は一定と仮定した。エフェクターであるF1Pと結合した[Cra- F1P]を表6のCraに示した二次方程式の解として表現した。PDHをコードするaceEF遺伝子のリプレッサーであるPdhRのエフェクターはPYRであり(Quail and Guest, Mol. Microbiol. 15, 519-529, 1995)、PYRと結合し不活化した[PdhR- PYR]は表6のPdhRに示した二次方程式の解として表現した。IclRはグリオキシル酸経路の発現を制御する転写因子であり、そのエフェクターはPEPであることが、Cortayらにより示唆されている(Cortay et al., EMBO J. 10, 675-679, 1991)。PEPと結合し不活化した[IclR- PEP]は表6のPclRに示した二次方程式の解として表現した。CYAには、リン酸化型IIAGlc(IIAGlc-P)による活性化が知られている。詳細なメカニズムは不明であるが、CYAとIIAGlc-Pの結合により活性化型CYA(CYAA)となると仮定してモデル化を実施した。野生株とIIAGlc をコードするcrr欠損株とのCYA活性の違いから(Reddy and Kamireddi, J. Bacteriol. 180, 732-736.1998)、CYAAの乖離定数をKdCYAA=1.34×10-4 (M)と予測した。これによりCYAとIIAGlc-Pの平衡により生じる活性化型CYAA濃度[CYAA]は表6のCYAに示した二次方程式の解として表現した。
Figure 0005011675
<4> 遺伝子発現モデリング
E. coliの遺伝子発現に関しては、EcoCycデータベース(Keseler et al. Nucleic Acids Res. 33, D334-D337, 2005)を参照し、転写因子(TF)CRP、Cra、Mlc、PdhR、IclRの関与する遺伝子についてモデルリングを行なった。転写因子自身については、CRP、Mlc、PdhR、IclRに関して発現のモデリングを行なった。それぞれの遺伝子の転写と翻訳の式とパラメーターのリストを表7に、遺伝子発現に用いた式を表8に示した。[mRNAgene]は転写されるmRNA濃度、 [Pgene]は遺伝子のプロモーター濃度、 [RNAPσD] は σD の結合したRNA polymerase濃度を示す。パラメーターkgene base、kgene TF、kgene dRNAはそれぞれ、基底レベルの転写速度定数、TF結合時の転写速度定数、mRNAの分解定数である。[Protein]は翻訳されるタンパク質濃度、[Ribosome] はリボゾーム濃度を示す。パラメーターktrans、及びkdegはそれぞれ、翻訳の速度定数、及びタンパク質分解の速度定数である。制御が知られていない遺伝子あるいは、考慮しない遺伝子に関してはNoTF式、転写因子が
一つ関与する遺伝子に関してはTF1を用いた。転写因子が2つ関与する遺伝子(crp、mlc、ptsG、ptsHI、aceBAK)については、それぞれの式を示した。オペロン内で翻訳されるタンパク質濃度が異なる場合、転写産物の減衰、あるいは翻訳効率が異なることが理由であると考えられることから、TProtein(タンパク質の翻訳効率係数)を定義し、TL1式を用いた。E. coli のsdhCDAB- sucABCD オペロンにはSDHをコードするsdhCDAB と、KGDH複合体のE1及びE2サブユニットをコードするsucAB、SCSをコードするsucCDからなるsucABCDが含まれている(Cunningham and Guest, Microbiology 144, 2113-2123, 1998)。sucABCDオペロンはPsdhとともにPsucからも転写が起こること、さらにKGDH複合体及びSCSそれぞれに、翻訳効率に関する係数TKGDH及びTSCSを考慮してTL (KGDH) 及びTL (SCS)を用いて記述した。aceBAKオペロンの産物ICL、MSA、ICDKPの比は1:0.3:0.003であると報告されていることから(Chung et al. J. Bacteriol. 175, 4572-4575, 1993)、MSAとICDKPの翻訳に対しては、それぞれ翻訳定数TMSA及びTICDKPを定義しTL1を用いた。
プロモーターの濃度は、Bremer and Dennis (Escherichia coli and Salmonella: Cellular and Molecular Biology/Second Edition (Neidhardt, F. C. Ed.) pp. 1553-1569.
American Society for Microbiology Press, Washington, D.C., 1996)により述べられているμ依存的な細胞内遺伝子数データに基づき、μ=0.01(min)-1における値を推定し、定数として用いた。CRPのゲノム上の結合サイト数は、CRPの結合サイト数約200がゲノム上均一に分布していると仮定して、μ=0.01(min)-1における値を算出した。転写の速度定数は、文献値のタンパク質濃度あるいは酵素比活性を定常値として与えるように算出した値を用いた。転写因子による制御で複数の転写速度定数が必要な場合は、転写因子の欠損株での転写活性やタンパク質濃度のデータを用いて算出した。mRNAの分解速度は、個別の遺伝子の実験値が文献上ある場合はそれを採用し、それ以外はSelingerら(Genome Res. 13, 216-223, 2003)のDNAマイクロアレイ実験による測定データを用いた。
Figure 0005011675
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<5> 比増殖速度μの数式化と細胞形成速度
比増殖速度μはよく用いられる生育を示す指標であり、生育をより正確なμで表現するために、野生株のS型ジャー培養の経時のODデータからカーブフィットプログラムTableCurve 2D(Systat Software)にて以下のODの近似式を得、また、それを微分した式から以下のμの時間関数を得た。近似式によるODとμのプロット結果は図2に示した。
OD=(2.05+1.53×10-5t2−5.35×10-10t4+3.07×10-25t6)/(1−1.76×10-5t2+1.17×10-10t4−3.19×10-16t6+4.19×10-22t8)
μ=dOD/dt/OD
生育に伴う細胞形成速度を算出するため、E. coliの代謝反応をChassagnoleらの報告(Biotechnol. Bioeng. 79, 53-73, 2002)に基づき定義した。細胞構成成分の合成反応はタンパク質合成、RNA合成、DNA複製、脂質(lipid)合成、グリコーゲン(glycogen)合成及びペプチドグリカン(murein)合成、それぞれに対し定義し、構成成分の比率(Neid
hardt and Umbarger, Escherichia coli and Salmonella: Cellular and Molcular Biology (Neidhardt, F. C. Ed.) pp. 13-16. American Society for Microbiology, Washington, D.C., 1996; Pramanik and Keasling, Biotechnol. Bioeng. 56, 398-421, 1997)と合成に必要なエネルギー(Stephanopoulos et al. Metabolic Engineering: Principles and Methodologies. Academic Press, San Diego, 1998)から化学量論式を定義した。さらに、細胞の組成(Chassagnole et al. Biotechnol. Bioeng. 79, 53-73, 2002)から細胞1 gの合成に必要な構成成分の化学量論式を導き出した。この細胞形成に関する式を本シミュレーションで用いている代謝中間体を用いた化学量論式に変換して、以下の細胞1 gを生成するのに必要な各中間代謝物の量論式を導き出した。
g_biomass = 3.962 Pyr + 1.229 aKG + -2.232 CO2 + 10.91 NH4 + 44.69 ATP + -44.6 ADP + -15.18 P + 16.09 H + 18.17 NADPH + -18.17 NADP + 2.409 AcCoA + -2.949 CoA +
-0.487 Fum + 2.393 OAA + 1.957 3PG + 0.252 SO4 + -2.329 NADH + 2.329 NAD + 0.5402 SucCoA + -0.4727 Suc + 0.6887 PEP + 0.3312 E4P + 0.4133 DHAP + 0.1023 O2 + -0.0432 GAP + 0.5312 R5P + 0.1025 F6P
細胞1 gの形成に必要な中間代謝物量を、細胞体積当たり、分当たりに換算し、比増殖速度μの式として、微分方程式に組み込んだ。
<6> RNAポリメラーゼとリボソームの数式化
遺伝子発現における転写と翻訳は、それぞれ、RNAポリメラーゼとリボゾームによって触媒される。生育の過程を考えるとき、これら酵素の分子数は変化することが知られている。Bremer and Dennis (Escherichia coli and Salmonella: Cellular and Molecular Biology/Second Edition (Neidhardt, F. C. Ed.) pp. 1553-1569. American Society for Microbiology Press, Washington, D.C., 1996)により述べられているμ依存的な細胞内分子数データより、近似式を用いて、数式化を行なった。RNAポリメラーゼは、σ因子と結合し、ホロエンザイムとなって機能するが、増殖期の遺伝子の発現を担うσDは増殖の過程でほぼ一定であることから、σD結合型のRNAポリメラーゼ濃度[RNAPσD]は、RNAポリメラーゼ総濃度の1/3として以下の式を用いた。
[RNAPσD]=6.67×10-7+3.0×10-4μ+2.64×10-2μ2
リボゾームは、Bremer and Dennis (Escherichia coli and Salmonella: Cellular and Molecular Biology/Second Edition (Neidhardt, F. C. Ed.) pp. 1553-1569. American Society for Microbiology Press, Washington, D.C., 1996)のデータをTableCurve 2Dでフィッティングし、以下の式を得た。
[Ribosome]=1.90×10-5+1.38μ2+10.2μ2.5+36.6μ3
<7> 細胞外への排出と細胞外からの取込み
細胞外へ排出される物質のうち、野生株の培養で検出量の多かった酢酸(AcOH)とギ酸(Formate)の排出を組み込んだ。酢酸及びギ酸の経時の菌体外濃度の測定データから、経時プロファイルを時間関数に近似して、その関数を微分して速度に変換し、ACCoAとPYRの微分方程式に組み込んだ。近似関数による酢酸の量と、近似関数を微分した速度のプロットを図4に示した。
AcOHex=(2.49×10-3−7.61×10-3t−3.38×10-7t2+9.33×10-10t3)/(1−7.61×10-3t+2.44×10-5t2−1.05×10-8t3)
Formex=4.41×10-4−1.17×10-9t2+1.97×10-13t4+3.93×10-19t6
培地中に存在する有機物ではアミノ酸などが、細胞内へ取込まれる。野生株の培養で存在量の多かったグルタミン酸(Glu)とアラニン(Ala)の取込みを数式化して、組み込ん
だ。初発培地中のグルタミン酸及びアラニンの取込みを以下の時間関数で近似して、その関数を微分して速度に変換し、AKGとPYRの微分方程式に組み込んだ。
Gluin=9.2×10-4−7.26×10-6t
Alain=8.36×10-4−6.69×10-6t
<8> 野生株MG1655の培養と代謝フラックス解析
野生株MG1655をLB培地30 mlにて一晩培養した培養液から細胞を集菌し、MS培地で13Cグルコースを用いたバッチ培養条件にてS型ジャーにて培養を行なった。MS培地の組成は1 L当たり、グルコース 40 g、MgSO4・7H2O 1 g、(NH4)2SO4 16 g、KH2PO4 1 g、Bacto-yeast extract 2 g、MnSO4・4H2O 0.01 g、FeSO4・7H2O 0.01 g、GD113 (消泡剤) 0.5 mlであり、培養条件は培養体積 0.3 L、温度37oC 、pH: 7.0、通気攪拌条件下で行なった。増殖期(315分)及び定常期(495分)に代謝フラックス解析を行なった。代謝フラックス解析の方法については国際公開WO2005001736に詳細な記載がある。この培養結果をシミュレーションの検証に用いた。菌体外グルコース濃度の測定結果と菌体外CO2濃度の測定結果は、それぞれ図8のB及び図8のPにプロットされている(破線)。また、増殖期(315分)及び定常期(495分)における代謝フラックス解析の結果を表9に示した。代謝フラックスを酵素反応速度に変換した値を酵素活性にプロットした(図9のF、I、L、O、及びR)。
Figure 0005011675
<9> シミュレーションとE. coli中央代謝モデルの検証
シミュレーションは数学計算プログラムMATLAB(MathWorks)を用いて微分方程式を記述し、ODEソルバとしてode15sを用いて実施した。シミュレーションに用いた物質収支の微分方程式を以下に示した。それぞれの物質の収支を、表4に示した酵素反応速度、増殖による希釈効果、細胞構成成分への合成速度(y_biomass(metabolite))、菌体外物質の取込み速度、及び菌体外物質への排出速度の和として記述した。
d[Cellvoltot]/dt = μ * [Cellvoltot]
d[Glucose]/dt = - rx1e
d[G6P]/dt = rx1e - rx2 - rx12 - (μ * [G6P])
d[F6P]/dt = rx2 + rx29 + rx16 + rx17b - rx3 - (μ * [F6P]) - y_biomass(F6P) * mu
/ cellvol * cellweight
d[FDP]/dt = rx3 - rx4 - rx29 - (μ * [FDP]) - y_biomass(FDP) * μ / cellvol * cellweight
d[DHAP]/dt = rx4 - rx5 - (μ * [DHAP]) - y_biomass(DHAP) * μ / cellvol * cellwe
ight
d[GA3P]/dt = rx4 + rx5 + rx17b - rx6 - rx16 - rx17 - (μ * [GA3P]) - y_biomass(GA3P) * μ / cellvol * cellweight
d[13DPG]/dt = rx6 - rx7 - (μ * [13DPG])
d[3PG]/dt = rx7 - rx8 - rx9 - (μ * [3PG]) - y_biomass(3PG) * μ / cellvol * cellweight
d[2PG]/dt = rx8 + rx9 - rx10 - (μ * [2PG])
PEP
d[PEP]/dt = rx10 + rx30 + rx34 - rx11 - rx1a - rx31 - (μ * [PEP]) - y_biomass(11) * μ / cellvol * cellweight
d[PYR]/dt = rx11 + rx1a + rx32 + rx33 - rx18 - rx30 - (μ * [PYR]) - y_biomass(PYR) * mu / cellvol * cellweight + Alauptake - Formin
d[6PGC]/dt = rx12 - rx13 - (μ * [6PGC])
d[RL5P]/dt = rx13 - rx14 - rx15 - (μ * [RL5P])
d[R5P]/dt = rx14 + rx17 - (μ * [R5P]) - y_biomass(R5P) * μ / cellvol * cellweight
d[X5P]/dt = rx15 + rx17 - rx17b - (μ * [X5P])
d[E4P]/dt = rx16 - rx17b - (μ * [E4P]) - y_biomass(E4P) * μ / cellvol * cellweight
d[S7P]/dt = - rx16 - rx17 - (μ * [S7P])
d[ACCoA]/dt = rx18 - rx19 - rx36 - (μ * [ACCoA]) - AcOHin - y_biomass(19) * mu / cellvol * cellweight + Formin
d[OAA]/dt = rx28 + rx31 - rx19 - rx34 - (μ * [OAA]) - y_biomass(OAA) * μ / cellvol * cellweight
d[CIT]/dt = rx19 - rx20 - rx21 - (μ * [CIT]) - y_biomass(CIT) * μ / cellvol * cellweight
d[ICIT]/dt = rx20 + rx21 - rx22 - rx35 - (μ * [ICIT]) - y_biomass(ICIT) * μ / cellvol * cellweight
d[AKG]/dt = rx22 - rx23 - (μ * [AKG]) - y_biomass(AKG) * μ / cellvol * cellweight + Gluuptake
d[SUCCoA]/dt = rx23 - rx24 - (μ * [SUCCoA]) - y_biomass(SUCCoA) * μ / cellvol * cellweight
d[SUCC]/dt = rx24 + rx35 - rx25 - rx26 - (μ * [SUCC」) - y_biomass(SUCC) * μ /
cellvol * cellweight
d[FUM]/dt = rx25 + rx26 - rx27 - (μ * [FUM]) - y_biomass(FUM) * μ / cellvol * cellweight
d[MAL]/dt = rx27 + rx36 - rx28 - rx32 - rx33 - (μ * [MAL]) - y_biomass(27) * μ
/ cellvol * cellweight
d[GLX]/dt = rx35 - rx36 - (μ * [GLX])
d[cAMP]/dt = rx39 + rx39a - rx40 - rx41 - (μ * [cAMP])
d[cAMPex]/dt = rx41
d[F1P]/dt = - rx42 - (μ * [F1P])
d[CO2]/dt = rx13 + rx18 + rx22 + rx23 + rx32 + rx33 + rx34 - rx31 - (μ * [CO2])
- y_biomass(32) * μ / cellvol * cellweight
シミュレーションに際して、パラメーターの一部をマニュアルで変更し実施した。変更したパラメーターは表3、表4、及び表7に示してある。E. coli中央代謝モデルのシミュレーション結果のうち、主要な代謝物の経時的な変化を図8に示した。生育の過程で、菌体外グルコース濃度(図8のB)と菌体外CO2濃度(図8のP)は、培養前半に乖離は見られるものの測定値(破線)に極めて近い挙動を示した。代謝物の中では、PEP (図8
のF)以外の代謝物が、グルコース存在下の培養経時で、生理的に妥当と考えられる範囲内の数値での変化を示した。図9には、主要な遺伝子のmRNA濃度、タンパク質濃度、酵素活性を示した。mRNA濃度の初期値は全て0と設定しているため、増殖速度の増加にしたがって増加していき、μが最大となった後に減衰していくという一般的なパターンを示した(図9のAなど)。タンパク質濃度は初期値から減衰した後、増殖速度の増加とともに増加し、mRNAのピークから少し遅れて最大値をとり、その後減衰するパターンを示した(図9のBなど)。酵素活性については、酸化的ペントースリン酸経路酵素G6PD活性(図9のL)は代謝フラックス解析の結果と乖離が大きかったが、解糖系のPFK活性(図9のF)、TCAサイクル酵素CS活性(図9のO)、補充経路PEPC活性(図9のR)は、フラックス解析データを基にした酵素反応速度の値と近いプロファイルが得ることが出来た。
RNAポリメラーゼとリボゾーム濃度をμ非依存とした時の遺伝子発現のシミュレーション結果を図10に示した。本シミュレーションに当たっては、RNAポリメラーゼとリボゾーム濃度をμ=0.01(min)-1の時の値とし、パラメーター中で、kptsG CRPのみを0.45倍に変更しシミュレーションを実施した。mRNAレベルが一定化し(図10のAなど)、タンパク質濃度がμの低下した培養後期に上昇する(図10のBなど)という、生理的には考えにくい結果となった。このことから、μ依存的なRNAポリメラーゼ、リボゾーム濃度の記述が、生育過程をシミュレーションする上で重要な因子であることを示している。細胞増殖に伴う細胞形成の効果を見るために、菌体内代謝物から細胞構成成分への速度を0としたシミュレーションを実施し、代謝物シミュレーション結果を図11に示した。多くの代謝物が細胞内に蓄積し、生理的な濃度を外れてしまっていることがわかる。さらに、物質の取り込みと排出の効果を見るために、Glu及びAlaの取込みを0とし、酢酸及びギ酸の排出を0としたシミュレーションを実施し、代謝物の結果を示した(図12)。AcCoA(図12のJ) やCIT(図12のK)などのシミュレーション結果に明らかな相違が認められ、生理的な濃度から離れてしまうことが分かる。菌体内代謝物から細胞構成成分の形成及び菌体外代謝物の取込みや排出が、より測定結果に近いシミュレーションを得るために必要であることが明らかとなった。
本発明により、細胞増殖を伴う物質の生産プロセスに対して、正確な代謝シミュレーション結果をもたらすことが可能になる。これによって、アミノ酸、核酸に代表される物質の生産プロセスの改良を行なう上での実用的な指針を与えるin silico実験が可能となる。
遺伝子発現モデリングの説明図である。 濁度(OD)の測定により得られた増殖曲線(A)及びそれから得られた比増殖速度μの時間式(B)の例を示す。 代謝物の物質収支式の説明図である。 細胞外酢酸濃度測定により得られた濃度変化曲線(A)及びそれから得られた排出速度の時間式(B)の例を示す。 本発明のプログラムによる処理のフローチャートを示す。 本発明のプログラムがインストールされたコンピューターの機能ブロック図を示す。 モデリングを実施したE. coli中央代謝経路図を示す。代謝物、酵素及び遺伝子は略語で示した。矢印は代謝物間の酵素反応による変換を示し、それぞれの反応に酵素(大文字)とそれをコードする遺伝子(小文字斜体字)を示している。四角で囲われたタンパク質は転写因子を示し、破線はエフェクターとの相互作用を示している。点線は、菌体内代謝物から、菌体構成成分への流出を示している。太い黒枠は細胞膜を示し、外側の物質は菌体外物質、細胞膜上の四角は取込みあるいは排出を示している。 E. coli中央代謝モデルの代謝物シミュレーション結果を示す図。細胞体積(増殖)(A)、菌体外グルコース(B)、G6P(C)、FDP(D)、GA3P(E)、PEP(F)、PYR(G)、6PGC(H)、R5P(I)、ACCoA(J)、CIT(K)、AKG(L)、SUCCoA(M)、FUM(N)、OAA(O)、菌体外CO2(P)。菌体外グルコース(B)及び菌体外CO2(P)には実測値を破線でプロットした。横軸は培養時間(分)である(図9〜12においても同じ)。 図8の続き。 E. coli中央代謝モデルの遺伝子発現シミュレーション結果を示す図。ptsHI mRNA(A)、EI(B)、HPr(C)、ptsG mRNA(D)、IICBGlc(E)、IICBGlc活性(F)、pfkA mRNA(G)、PFKA(H)、PFKA活性(I)、zwf mRNA(J)、G6PD(K)、G6PD活性(L)、gltA mRNA(M)、CS(N)、CS活性(O)、ppc mRNA(P)、PPC(Q)、PPC活性(R)。315分と495分における代謝フラックスを酵素反応速度に換算した値を丸印で示した。 図9の続き。 RNAポリメラーゼとリボゾーム濃度のμ非依存条件下での遺伝子発現シミュレーション結果を示す図。ptsHI mRNA(A)、EI(B)、HPr(C)、ptsG mRNA(D)、IICBGlc(E)、IICBGlc活性(F)、pfkA mRNA(G)、PFKA(H)、PFKA活性(I)、zwf mRNA(J)、G6PD(K)、G6PD活性(L)、gltA mRNA(M)、CS(N)、CS活性(O)、ppc mRNA(P)、PPC(Q)、PPC活性(R)。315分と495分における代謝フラックスを酵素反応速度に換算した値を丸印で示した。 図10の続き。 菌体構成成分への合成速度を0としたとした代謝物シミュレーション結果を示す図。細胞体積(増殖)(A)、菌体外グルコース(B)、G6P(C)、FDP(D)、GA3P(E)、PEP(F)、PYR(G)、6PGC(H)、R5P(I)、ACCoA(J)、CIT(K)、AKG(L)、SUCCoA(M)、FUM(N)、OAA(O)、菌体外CO2(P)。菌体外グルコース(B)及び菌体外CO2(P)には実測値を破線でプロットした。 図11の続き。 代謝物の取込みと排出の速度を0とした代謝物シミュレーション結果を示す図。細胞体積(増殖)(A)、菌体外グルコース(B)、G6P(C)、FDP(D)、GA3P(E)、PEP(F)、PYR(G)、6PGC(H)、R5P(I)、ACCoA(J)、CIT(K)、AKG(L)、SUCCoA(M)、FUM(N)、OAA(O)、菌体外CO2(P)。菌体外グルコース(B)及び菌体外CO2(P)には実測値を破線でプロットした。 図12の続き。

Claims (12)

  1. 細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式を準備し、微分方程式におけるシミュレーションに必要なパラメーターに値を入力し、値が入力された微分方程式を解くことを含む、細胞を用いた物質の生産プロセスを細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式によりシミュレーションする方法であって、下記(a)〜(d)を特徴とする前記方法。
    (a)前記微分方程式は、細胞の比増殖速度を含む微分方程式を含み、比増殖速度は、生産プロセスにおける比増殖速度の測定データを数式化することにより得られる時間の関数として表される。
    (b)微分方程式のパラメーターの全てまたは一部が前記比増殖速度の関数として表わされる。
    (c)微分方程式に、細胞内代謝物が細胞構成成分へと形成される形成速度が含まれ、該形成速度が前記比増殖速度の関数または生産プロセスにおける前記形成速度の測定データを数式化することにより得られる時間の関数として表わされる。
    (d)微分方程式に、細胞外から取り込まれる代謝物質の流入速度、及び/または、細胞内から細胞外へ排出される代謝物質の流出速度が含まれ、該流入速度及び/または流出速度が前記比増殖速度の関数または生産プロセスにおける前記流入速度及び/または流出速度の測定データを数式化することにより得られる時間の関数として表わされる。
  2. 細胞の比増殖速度を含む微分方程式が下記の式(1)〜(3)に示す微分方程式を含む請求項1記載の方法。
    d[Metabolite]/dt=Vinput−Voutput−μ[Metabolite] (式1)
    d[mRNA]/dt=ktranscription[P]−(kdRNA+μ)[mRNA] (式2)
    d[Protein]/dt=ktranslation[mRNA]−(kdProtein+μ)[Protein] (式3)
    式1中、[Metabolite]は細胞内代謝物質の濃度、Vinputは代謝物質を生成する反応速度の和、Voutputは代謝物質を消費する反応速度の和、μは比増殖速度を表わす。
    式2中、[mRNA]はmRNAの濃度、ktranscriptionは、転写の速度定数、[P]はプロモーター濃度、kdRNAはmRNAの分解の速度定数、μは比増殖速度を表わす。
    式3中、[Protein]はタンパク質の濃度、ktranslationは、翻訳の速度定数、kdProteinはタンパク質の分解の速度定数、μは比増殖速度を表わす。
  3. 細胞内に取込まれる代謝物質が、基質および/または、培地中の有機物である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 細胞外に排出される代謝物質が、目的とする生成物および/または、
    副生成物である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 細胞外に排出される代謝物質がアミノ酸、有機酸及び/又は二酸化炭素である請求項に記載の方法。
  6. 細胞外に排出される代謝物質がアミノ酸又は有機酸である請求項に記載の方法。
  7. シミュレーションに必要なパラメーターが、転写の速度定数、及び/または、翻訳の速度定数である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  8. 細胞がアミノ酸生産能及び/又は有機酸生産能を保持する微生物である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  9. 微生物がEscherichia coliである請求項に記載の方法。
  10. 細胞構成成分の組成自体が、細胞の比増殖速度、または、同等の生育に関する指標を用いた数式で表される請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  11. 細胞を用いた物質の生産プロセスを細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式によるシミュレーションのためのプログラムであって、下記(1)〜(3)の手段としてコンピューターを機能させる前記プログラム。
    (1)下記(a)〜(d)を満たす、細胞内代謝物及び遺伝子発現に関する微分方程式を記憶する手段。
    (a)前記微分方程式は、細胞の比増殖速度を含む微分方程式を含み、比増殖速度は、生産プロセスにおける比増殖速度の測定データを数式化することにより得られる時間の関数として表される。
    (b)微分方程式のパラメーターの全てまたは一部が前記比増殖速度の関数として表わされる。
    (c)微分方程式に、細胞内代謝物が細胞構成成分へと形成される形成速度が含まれ、該形成速度が前記比増殖速度の関数または生産プロセスにおける前記形成速度の測定データを数式化することにより得られる時間の関数として表わされる。
    (d)微分方程式に、細胞外から取り込まれる代謝物質の流入速度、及び/または、細胞内から細胞外へ排出される代謝物質の流出速度が含まれ、該流入速度及び/または流出速度が前記比増殖速度の関数または生産プロセスにおける前記流入速度及び/または流出速度の測定データを数式化することにより得られる時間の関数として表わされる。
    (2)微分方程式におけるシミュレーションに必要なパラメーターの値を記憶する手段。(3)記憶された微分方程式及びパラメーターに基づいて微分方程式の解を算出する手段。
  12. 請求項11に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピューター読み取り可能な記録媒体。
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