JP4779265B2 - インク充填方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンターのインク供給カートリッジなどのインクカートリッジにインクを充填する方法に関し、さらに詳しくは、インクを保持吸収する多孔質体を内蔵するインクカートリッジの、新品だけでなくインクが残留している使用済みの中古カートリッジであってもインクを充填することができるインク充填方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
インクジェットプリンター用のインクは液体であるため、インクを供給するカートリッジには、インクがこぼれず、取り扱いが楽であり、カートリッジの交換で手や衣服が汚れない、等の特性が要求される。これらの要求を満足するカートリッジとして、インクを吸収保持する多孔質体を内蔵したインクカートリッジが提案され、使用されている。
【0003】
多孔質体へインクを吸収させるには、多孔質体が保持している空気とインクとを置換する必要があり、そのような方法として、例えば、(1)多孔質体を予め圧縮しておき、開放時にインクを吸収させる方法、(2)インクを加圧してカートリッジへ注入する方法、(3)カートリッジ内の多孔質体から減圧により空気を除去した後、インクを注入する方法、などが提案されている。
【0004】
カートリッジを減圧してインクを充填する方法として特開平3−227656号公報には、発泡体からなるインク吸収部材を有するインクカートリッジ内の空気を吸引し、真空状態にした後、インクを注入する充填方法が提案されている。この方法においては、三方切替弁を通して真空ポンプへつながれた配管をインクカートリッジの第1の接続口へ接続し、インクカートリッジの第2の配管を介してインクタンクからインクを供給するインク注入装置が用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
インクを吸収保持する多孔質体を内蔵するインクカートリッジへ、減圧下においてインクを充填するには、多孔質体が保持している空気とインクとを置換する必要がある。上記方法では、発泡体中の空気を除去した後、インクを注入するので、インク充填の効率が高いという利点がある。しかしながら、真空ポンプからの配管が直接カートリッジへ接続されているため、カートリッジ内にインクが残留している使用済みカートリッジでは、減圧すると多孔質体の中の空気と一緒にインクがカートリッジ外へと溢れてきて、空気と一緒にインクも真空ポンプへ吸い込まれてしまう。このため、この方法は、使用済みカートリッジには適用できないという問題点を有している。
また、さらに、この方法では、充填効率を高めるために、発泡体内の空気を完全に除去してからインクの充填を行う必要があった。
【0006】
真空度の高い条件でインクを注入すれば、インクカートリッジ内の空気との置換を円滑に行えるものの、高い真空を実現できる充填装置が必要となる。また、カートリッジ内部のみを真空とし充填するには、圧力差に耐えられる強度のカートリッジが必要となる。更に、高真空下のインク充填においては、特にインクが残留した使用済みカートリッジへのインク充填の場合顕著であるが、カートリッジ内のインクの沸騰や泡立ちが避けられず、これらがインクカートリッジから溢れたり、減圧時に真空ポンプに吸引される可能性が大きかった。
【0007】
一方、減圧条件を緩くするとインクの沸騰や泡立ちを防止できるが、多孔質体が保持している空気とインクとの置換が不十分となるため、インクの充填が不完全となる。
【0008】
また、さらに従来の方法では、インクカートリッジ内の脱気と、インクの充填を順次行うため、それぞれのための専用の配管を設けるか、もしくは一つの配管で行うのであれば切り替え弁を複数設置し、順次切り替え操作を行わなくてはならず、充填装置の構造と該装置の操作が複雑であった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、新規カートリッジへの充填はもとより、カートリッジ内にインクが残留している使用済みのカートリッジへの再充填においても、インクを効果的に多孔質体へ吸収保持させることができる簡便なインクの充填方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、減圧下の多孔質体は常圧へ戻る際に最も効率よくインクを吸収することに着目し、溢れてくるインクと充填するインクとを収容可能なインクタンクを設けこれを減圧し、さらにこれに連結したインクカートリッジを減圧した後、インクタンクを常圧に戻して、インクタンクとインクカートリッジの間に差圧を生じさせ、これが解消される際に多孔質体へとインクを吸収させる方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、
1.インクを吸収保持する多孔質体を内蔵するインクカートリッジへインク充填方法であって、インクカートリッジの充填口に充填するインクの入ったインクタンクを直結し、前記インクタンク内を減圧することによって、前記インクカートリッジ内を減圧してから、該インクタンク内を常圧に戻し、該インクカートリッジと該インクタンクの間に差圧を生じさせ、該インクカートリッジにインクを充填することを特徴とするインク充填方法。
を提供する。
【0012】
また、本発明は上記課題を解決するために、
2.前記インクの充填方法において前記インクタンク及び前記インクカートリッジ全体を耐圧容器内で減圧し、ついで該耐圧容器内を常圧に戻すことにより、該インクカートリッジと該インクタンク間に差圧を生じさせインクを充填するインク充填方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は上記課題を解決するために、
3.前記インクタンク及び前記インクカートリッジの減圧を、耐圧容器に入れて系全体を減圧するのではなく、該インクタンク及び該インクカートリッジは常圧下に置き、該インクタンクと該インクカートリッジの内部のみを減圧する前記1記載のインク充填方法を提供する。
【0014】
本発明の充填方法は、インクカートリッジの充填口から直接真空ポンプで吸引するのではなく、充填口にインクタンクを直結し、該インクタンク内を減圧することによって、インクタンクに直結しているインクカートリッジ内を減圧するため、インクタンクがバッファタンクとして機能し、カートリッジ内の残留インクが直接に真空ポンプへと吸引されることがない。またかりに充填中にインクが沸騰したとしても、インクタンクがバッファとなるので、インクカートリッジから溢れることがない。
【0015】
また、あらかじめ充填する量のインクをインクタンクに入れておいて、これをタンクと直結されたカートリッジへと充填すれば良いため、インクカートリッジとインクタンクの間に気体、液体の流路切り替えや、充填量調整のための特別な弁を設置する必要がない。本発明の充填方法では、インクタンクに入れた充填用のインクが空気の逆止弁のように働き、インクカートリッジ内の空気はインクタンク側へ通過させるがインクタンク側から空気がインクカートリッジ内へ入り込むことを阻止する。このため、インクタンク内を常圧に戻す際、一時的にインクカートリッジ内はインクタンク内よりも圧力が低くなって差圧が生じ、この差圧によって空気よりも先にインクがインクカートリッジ内へと入り込む。空気よりも先にインクが注入されるため、減圧により空気が除去された多孔質体中にインクを効率よく吸収させることができる。
【0016】
インクタンクを減圧することによってインクカートリッジ内を減圧する方法として、インクタンク及びインクカートリッジ全体を、前記の位置関係を保ったまま耐圧容器内で減圧する方法が挙げられる。この場合インクタンクは開放系で、減圧される耐圧容器内の空間と連通していなければならず、インクタンクを通してインクカートリッジが減圧される。さらに耐圧容器内を常圧に戻した時に発生するインクタンク内とインクカートリッジ内の差圧によって、タンク内のインクが直結されたカートリッジへと充填される。従って、インクタンクとインクカートリッジ及びそれらの接続部には何のバルブも切り替え弁も不要である。
【0017】
さらに、インクタンク、インクカートリッジは常圧下に置きインクタンクとインクカートリッジの内部のみを減圧することもできる。この場合は、インクタンクは密閉系で外気と連通しておらず、真空ポンプによって吸引するための吸引口を有する必要がある。インクタンクを通してインクカートリッジを減圧した後、インクタンクを常圧にもどし、タンクとカートリッジの間の差圧を利用して、あらかじめセットされたインクタンク内のインクをカートリッジへと充填する。このため、インクタンクとインクカートリッジ及びそれらの接続部には、空気もしくはインクの流路を制御する切り替え弁が不要である。
【0018】
また前記のいずれの方法においてもインクカートリッジにはインクタンクと直結する充填口が一つ空いていれば充分であり、充填口の他に減圧のための吸引口は不要である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のインクタンクは、インクカートリッジへの充填用のインク容器であり、同時に、減圧時にインクカートリッジから溢れるインクのバッファの役目をはたすものである。インクタンクはインクカートリッジの充填口に直結されるが、耐圧容器内においてインクタンクとインクカートリッジ全体を減圧する充填方法の場合は、充填孔以外の外気への連通口を有する開放系の構造であり、インクタンクから吸引しインクカートリッジ内を減圧とする充填方法の場合は充填孔の他に真空ポンプによる吸引のための吸引口を有した密閉系の構造のものを用いる。
インクタンクからのインクの充填が円滑に行われるよう、インクタンクはカートリッジ上部に据え付けられ、タンク底部の注入口がインクカートリッジの上蓋部に空けられた充填孔に直結されるのが好ましい。このような配置をとることによって、インクタンク内のインクが差圧と重力で効果的にインクカートリッジへと充填される。
【0020】
本発明の充填方法ではインクカートリッジ中の空気がインクタンク中のインクを通過して出てくるため、インクへ空気を吹き込む状況となり泡立ちが避けられない。この時の泡立ちがどの程度になるかは種々の条件により変化するため、一概には決まらない。本発明のインクタンクの容量は、充填するインクの泡立ち易さ、充填するインクカートリッジが新品か中古品か、充填する時の減圧度がどの程度か、等を考慮して適宜選択しなければならない。
【0021】
本発明のインク充填口はカートリッジの外側と内側とを結ぶ口を指しており、その位置及び形状は特に指定はない。また、口の数についても1カ所以上であれば良く、複数個の口がある場合は、構造上使いやすい位置の口をインク充填口として適宜決めれば良い。この場合、他の口は栓やテープ等でふさいでおく必要がある。
【0022】
インクタンク及びインクカートリッジ全体を耐圧容器内で減圧し、インクを充填する場合、インクタンク及びインクカートリッジは真空チャンバーのような耐圧の減圧容器内に設置し、減圧容器は三方弁を介して真空ポンプへと接続する。三方弁は減圧容器内を大気圧へ戻すときの開放弁である。減圧容器内の圧力は適宜決定すれば良い。
【0023】
インクタンク及びインクカートリッジは常圧下に設置し、インクタンクからの吸引によりインクカートリッジ内を減圧しインクを充填する場合、インクタンクとインクカートリッジとの接続部は、空気もれが生じないような構造としなければならない。インクタンクは上部に吸引口を備えた密閉構造であり、吸引口は三方弁を介して真空ポンプへ接続される。三方弁はカートリッジ内を常圧に戻すための大気開放弁である。充填時の圧力は適宜決定すれば良い。
【0024】
インクタンクへ充填するインクの全量を入れ、真空チャンバー内もしくはインクタンク内を減圧とし、インクカートリッジ内の空気を脱気する。この時、カートリッジ内の空気がインクタンク内のインクを通過して出てくるため、インクタンク内のインクが泡立つ。所定の圧力に到達後、三方弁を操作し真空チャンバー内もしくはインクタンク内を常圧へ戻すと、減圧されたインクカートリッジ内へ空気よりも先にインクタンク内のインクが流れ込むため、多孔質体にはインクが効率よく吸収され充填が完了する。
【0025】
また、本発明の充填方法では、減圧−大気開放の操作を繰り返すことにより、一度充填したインクカートリッジ中の再脱気が可能となる。インクタンク、インクカートリッジ内のみを減圧する充填方法を例に説明すると、一度充填操作を終えた後にインクタンクへインクを入れずに再度インクタンク内を減圧する。この時、インクカートリッジからは先に充填したインクの一部がカートリッジ内の空気と一緒にインクタンク側へ溢れ出してくる。この後、溢れ出したインクが逆止弁のように機能し、インクタンク内を常圧に戻すときに空気よりも先に溢れ出したインクがインクカートリッジ内へ流れ込む。
【0026】
再脱気は比較的減圧度の低い低真空での充填において特に有効である。低真空での充填では、多孔質体が保持している空気の脱気が不十分となり易く、充填可能なインクの全量を1回の充填操作では充填できない場合が生じる。この場合、再脱気操作を繰り返すことでインクの全量を多孔質体に吸収保持させることが可能となる。このように、再脱気に伴う充填を行うことにより、低真空による多孔質体中の空気の脱気が不十分になり易い欠点を補うことができる。
【0027】
このような再脱気は、前記、耐圧の減圧容器を用いた方法においても同様に用いることができる。
【0028】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
第1図に示す充填装置を使用して、市販のインクカートリッジIC1BK04(セイコーエプソン(株)社製)へインクを充填した。カートリッジはインクを空になるまで使い切った使用済みカートリッジであり、充填するインクは必要量を新品のカートリッジから抜き出した。
【0030】
カートリッジ下面のプリンターへのインク供給口は密栓し、上面のラベルを剥がし2ヶ所ある口のうち、中央部の口へインクタンクを取り付け、他方の口は密栓し真空チャンバー内へ設置する。インクタンクの容量は200mlとし、30mlのインクを充填した。
【0031】
チャンバー内の圧力を120hPaとし、数秒間保持した後に3方弁を開けチャンバー内を常圧に戻した。チャンバー内を常圧に戻す際に、インクタンク内のインクは全量カートリッジ内の多孔質体へ充填された。
【0032】
充填したカートリッジをEM−900C(セイコーエプソン(株)社製)へ搭載し印刷を実施したところ、ドット欠けもなく良好な印刷が可能であった。
【0033】
(実施例2)
第2図に示す充填装置を使用して、市販のインクカートリッジIC1BK04(セイコーエプソン(株)社製)へインクを充填した。カートリッジはインクを空になるまで使い切った使用済みカートリッジであり、充填するインクは必要量を新品のカートリッジから抜き出した。
【0034】
カートリッジ下面のプリンターへのインク供給口は密栓し、上面のラベルを剥がし2ヶ所ある口の内、中央部の口へインクタンクを取り付け、他方の口は密栓した。インクタンクの容量は400mlとし、30mlのインクを充填した。
【0035】
インクタンクを通してインクカートリッジ内を脱気、減圧し、インクタンク内の圧力を120hPaとし、数秒間保持した後に3方弁を開けインクタンク内を常圧に戻した。インクカートリッジ内を常圧に戻す際に、インクタンク内のインクは全量カートリッジ内の多孔質体へ充填された。
【0036】
充填したカートリッジをEM−900C(セイコーエプソン(株)社製)へ搭載し印刷を実施したところ、ドット欠けもなく良好な印刷が可能であった。
【0037】
(実施例3)
実施例1と同様にインクカートリッジ及びインクタンクを真空チャンバー内へ設置し、チャンバー内の圧力を500hPaとし、数秒間保持した後に3方弁を開けチャンバー内を常圧に戻した。チャンバー内を常圧に戻す際に、インクタンク内のインクは全量カートリッジ内の多孔質体へ充填されず、一部はインクタンクに残っていた。そのまま減圧−大気開放を3回繰り返したところ、インクタンク内のインク全量がインクカートリッジ内の多孔質体へ吸収された。
【0038】
充填したカートリッジをEM−900C(セイコーエプソン(株)社製)へ搭載し印刷を実施したところ、ドット欠けもなく良好な印刷が可能であった。
【0039】
【発明の効果】
本発明のインク充填方法は、新規カートリッジへの充填はもとより、カートリッジ内にインクが残留している使用済みのカートリッジへの再充填においても、残留インクが真空ポンプへ吸引されることがなく、インクを効果的にインクカートリッジ内の多孔質体へ吸収保持させることができる。さらにインクカートリッジには充填口が一つあれば充分であり、特別な脱気のための吸引口は不要である。また充填装置も構造が極めて単純であり、切り替え弁も少なく操作も簡単である。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクカートリッジ及びインクタンクを耐圧容器内で減圧する実施例1、3で用いた装置の概念図である。
【図2】インクカートリッジ及びインクタンクを常圧下に置き、インクタンクからの吸引で減圧する実施例2で用いた装置の概念図である。
【符号の説明】
1 インクカートリッジ
2 インクタンク
3 真空計
4 真空ポンプ
5 3方弁
6 真空チャンバー
Claims (3)
- インクを吸収保持する多孔質体を内蔵するインクカートリッジへのインク充填方法であって、インクカートリッジの上蓋部に空けられた充填口に、該インクカートリッジの上部に据え付けられ、かつ充填するインクの入ったインクタンクの底部の注入口を直結し、前記インクタンク内を減圧することによって、前記インクカートリッジ内を減圧してから、該インクタンク内を常圧に戻し、該インクカートリッジと該インクタンクの間に差圧を生じさせ、該インクカートリッジにインクを充填することを特徴とするインク充填方法。
- 前記インクタンクは開放系で、前記インクタンク及び前記インクカートリッジ全体を耐圧容器内で減圧し、ついで該耐圧容器内を常圧に戻すことにより、該インクカートリッジと該インクタンク間に差圧を生じさせインクを充填する請求項1記載のインク充填方法。
- 前記インクタンクは上部に真空ポンプへ接続される吸入口を備えた密閉構造で、前記インクタンク及び前記インクカートリッジは常圧下に置き、該インクタンクと該インクカートリッジの内部のみを減圧する請求項1記載のインク充填方法。
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