ところが、発明者は、時刻t30(電子を蓄積するために駆動電圧Vinを負の所定電圧に変更した時点)の直後や時刻t40(電子を放出するために駆動電圧Vinを正の所定電圧に変更した時点)の直後等において、予定していないタイミングで電子が放出されたり、及び/又は、電子が過度に放出されることにより異常な大発光(極めて強い発光)が発生する等、不要な発光が生じる場合があることを見出した。
この理由は定かではないが、実験によれば、駆動電圧Vinを切換えた直後はエミッタ部に大きな突入電流が流れること、或いは、エミッタ部の分極反転が完了した後に上部電極と下部電極との間の実際の素子の電位差(以下、「素子電圧」とも称呼する。)が急激に変化すること等によるものと推定される。また、異常な大発光は、上部電極14とコレクタ電極18との間にプラズマが発生して上部電極14とコレクタ電極18との間の絶縁が破壊されることによるものと考えられる。このような大発光が一旦発生すると、プラズマ状態が継続して連続的に異常な大発光が発生することがある。
この不要な電子の放出は、ディスプレイにより表示される画像の色純度やコントラストを悪化させるという問題を発生させる。また、異常な大発光は、上部電極14を形成している物質を飛散させて上部電極14を破壊し、或いは、エミッタ部13に穴を開けてしまうことがあり、電子放出装置にダメージを与えるという問題も生じる。
本発明は、上記課題に対処するためになされたものであって、コレクタ電極に付与する電圧等を適切に制御することにより、不要な電子の放出を回避することを目的としている。コレクタ電極は上部電極に対向するように配設されているので、コレクタ電極に与える電圧等を制御すれば不要な電子の放出を抑制することができる。
上記目的を達成するための本発明による電子放出装置は、
誘電体からなるエミッタ部と同エミッタ部の下部に形成された下部電極と同エミッタ部を挟んで同下部電極に対向するように同エミッタ部の上部に形成されるとともに微細貫通孔が複数形成されてなる上部電極とを有する素子と、
前記上部電極の上部において同上部電極に対向するように配設されたコレクタ電極と、
前記下部電極の電位を基準としたときの同下部電極と前記上部電極との間の電位差である上下電極間電圧を負の所定電圧として同上部電極から供給される電子を同上部電極近傍の前記エミッタ部に蓄積させる駆動電圧であって、その後同上下電極間電圧を正の所定電圧として同エミッタ部に蓄積された電子を前記微細貫通孔から放出させる駆動電圧を、同下部電極と同上部電極との間に周期的に繰り返して付与する駆動電圧付与手段と、
前記コレクタ電極の電位であるコレクタ電圧が正の第1所定電圧となるように同コレクタ電極に第1コレクタ電圧を付与することにより、同コレクタ電極により形成される電界によって前記放出される電子が同コレクタ電極に引き寄せられるようにするコレクタ電圧付与手段と、
を備えている。
これによれば、下部電極の電位を基準としたときの同下部電極と上部電極との間の電位差である上下電極間電圧が負の所定電圧となったとき、エミッタ部の双極子は上部電極側に正の分極が向くように反転(以下、便宜上、「負側分極反転」とも称呼する。)する。この結果、上部電極からエミッタ部に電子が供給され、その電子がエミッタ部の上部に蓄積される。そして、上下電極間電圧が正の所定電圧となったとき、エミッタ部の双極子は上部電極側に負の分極が向くように反転(以下、便宜上、「正側分極反転」とも称呼する。)する。この結果、エミッタ部に蓄積された電子がクーロンの反発力を受け、上部電極の微細貫通孔を通して上方に放出される。
更に、前記コレクタ電圧付与手段は、以下に述べる所定の時点(便宜上、「コレクタ電極オフ時点」と呼ぶ。)にて前記コレクタ電圧が前記第1所定電圧から同第1所定電圧より小さい第2所定電圧へと変化するように同コレクタ電極に第2コレクタ電圧を付与し又は同コレクタ電極をフローティング状態へと変化させることにより、同コレクタ電極が前記放出された電子を引き寄せる電界を形成しないようにするか又は同電界の強度を小さくする。
コレクタ電極に第2コレクタ電圧が付与されるか、又は、コレクタ電極がフローティング状態にされると、コレクタ電極は放出された電子を引き寄せる電界を形成しないか或いは同電界強度を小さくするので、上述した不要な電子放出(ディスプレイ装置のように上部電極に対向する蛍光体を備えている場合には不要な発光)が回避される。
その後、コレクタ電圧付与手段は、別の所定時点(便宜上、「コレクタ電極オン時点」と呼ぶ。)にてコレクタ電極に対する前記第1コレクタ電圧の付与を再開する。これにより、放出された電子は、コレクタ電極により形成される電界によって加速されながら(高いエネルギーが与えられ)上部電極の上方に進行する。従って、上部電極の上方に蛍光体が配置されていれば、大きな輝度を得ることができる。換言すると、第1コレクタ電圧が付与されたコレクタ電極は放出された電子を引寄せるので、結果として、コレクタ電極近傍に必要とされる量の電子が到達する。
本発明において、コレクタ電極オフ時点は、図8に例示したように、「前記上下電極間電圧が正の所定電圧とされることにより前記電子の放出が実質的に完了する第1時点(1)(時刻t6)」から「同上下電極間電圧が前記負の所定電圧とされる第2時点(2)(時刻t7)」までの期間内の所定時点に設定される。この期間においては、電子は既にエミッタ部から放出されているので、エミッタ部に残存していない。従って、コレクタ電極に第1コレクタ電圧を印加しておく必要はない。
コレクタ電極オン時点は、以下のように様々な時点に設定しておくことができる。
(1)コレクタ電極オン時点を、「上下電極間電圧が前記負の所定電圧とされることにより前記電子の蓄積が実質的に完了する第3時点(3)(時刻t10)」から「同第3時点(3)後に再び到来する同第1時点(1)(時刻t16)より前」までの期間内の所定時点に設定した場合(図8の符合Aを付した期間を参照。)。
これによれば、少なくとも上下電極間電圧が前記負の所定電圧とされて電子の蓄積を開始しようとする時刻t7(第2時点(2))から電子の蓄積が完了する時刻t10(第3時点(3))までの間、コレクタ電極に第2コレクタ電圧が印加されることによりコレクタ電圧が第2所定電圧となるか、又は、コレクタ電極がフローティング状態に維持される。
従って、時刻t7(第2時点(2))において電子の蓄積を開始するのために上下電極間電圧が前記負の所定電圧とされた直後にエミッタ部を流れる大きな突入電流に起因すると考えられる電子の不要な放出が抑制され得る。更に、負側分極反転が完了した時点、即ち、負側の抗電界電圧を超える時刻t9から電子の蓄積が完了する時刻t10(第3時点(3))までに生じる「抗電界後の素子電圧の大きな電圧変化率」に起因すると考えられる電子の不要な放出も抑制され得る。
一方、遅くとも電子放出が完了する時刻t16(次の第1時点(1))の前までにはコレクタ電極に第1コレクタ電圧が付与されるので、正規に放出される電子をコレクタ電極側に導くことができる。
また、仮に上部電極とコレクタ電極間がプラズマ状態となったとしても、コレクタ電極を間欠的にオフするので、プラズマ状態を消滅させることができる。この結果、プラズマ状態が継続してしまうことによる大発光の連続的発生を回避することができる。この効果は、本発明の他の態様も同様に奏する効果である。
(2)コレクタ電極オン時点を、「前記上下電極間電圧が正の所定電圧に再び変更される第4時点(4)(時刻t11)」に設定した場合(図8の符合Bを付した時点を参照。)。
これによれば、少なくとも上下電極間電圧が前記負の所定電圧とされて電子の蓄積を開始しようとする時刻t7(第2時点(2))から上下電極間電圧が前記正の所定電圧に再び変更される時刻t11(第4時点(4))までの間、コレクタ電極に第2コレクタ電圧が印加されることによりコレクタ電圧が第2所定電圧となるか、又は、コレクタ電極がフローティング状態に維持される。
従って、上述した(1)の場合と同様、時刻t7(第2の時点(2))において電子の蓄積を開始するのために上下電極間電圧が前記負の所定電圧とされた直後にエミッタ部を流れる大きな突入電流に起因すると考えられる電子の不要な放出が抑制され得る。更に、負側の分極反転が完了した時点、即ち、負側の抗電界電圧を超える時刻t9から電子の蓄積が完了する時刻t10(第3時点(3))までに生じる「抗電界後の素子電圧の大きな電圧変化率」に起因すると考えられる電子の不要な放出も抑制され得る。
加えて、電子放出がなされる期間全体(時刻t11〜時刻t16前)に渡りコレクタ電極18に第1コレクタ電圧が付与されるので、正規に放出される電子をコレクタ電極18の近傍に導くことができる。
更に、この場合、上下電極間電圧に前記正の所定電圧を与えるタイミング(時刻t11である第4時点(4))と、コレクタ電極に第1コレクタ電圧を与えるタイミングと、を一致させているので、このような作動を行うための駆動回路を簡素化することができる。
(3)コレクタ電極オン時点を、「前記上下電極間電圧が正の所定電圧に再び変更されることにより前記エミッタ部に流れる突入電流がピークとなる第5時点(5)(時刻t12)の直後の時点」から「エミッタ部の分極の反転(正側分極反転)が実質的に完了する第6時点(6)(時刻t14)」までの期間内の所定時点に設定した場合(図8の符合Cを付した期間を参照。)。
これによれば、少なくとも上下電極間電圧が負の所定電圧とされて電子の蓄積を開始しようとする時刻t7(第2時点(2))から上下電極間電圧が正の所定電圧に再び変更されることにより前記エミッタ部に流れる突入電流がピークとなる時刻t12(第5時点(5))の直後まで、コレクタ電極に第2コレクタ電圧が印加されることによりコレクタ電圧が第2所定電圧となるか、又は、コレクタ電極がフローティング状態に維持される。
従って、時刻t7〜時刻t10に発生する前述した電子の蓄積の際の不要な電子の放出が抑制される。加えて、時刻t11(第4の時点(4))において電子の放出を開始するために上下電極間電圧が前記正の所定電圧に再び変更された時点の直後にエミッタ部に流れる大きな突入電流に起因すると考えられる電子の不要な放出も抑制され得る。
一方、遅くともエミッタ部の分極の反転(正側分極反転)が実質的に完了する時刻t14(第6時点(6))以降において、コレクタ電極に第1コレクタ電圧が付与される。従って、時刻t14(第6時点(6))から時刻t16(第1時点(1))の間に正規に放出される電子をコレクタ電極側に導くことができる。
(4)コレクタ電極オン時点を、「前記上下電極間電圧が正の所定電圧に再び変更されることにより前記エミッタ部の分極の反転が実質的に完了する第6時点(6)(時刻t14)」から「同第6時点(6)後に再び到来する第1時点(1)(時刻t16)より前」までの期間内の所定時点に設定した場合(図8の符合Dを付した期間を参照。)。
これによれば、少なくとも上下電極間電圧が前記負の所定電圧とされて電子の蓄積を開始しようとする時刻t7(第2時点(2))から前記上下電極間電圧が前記正の所定電圧に再び変更されることにより前記エミッタ部の分極の反転が実質的に完了する時刻t14(第6時点(6))までの間、コレクタ電極に第2コレクタ電圧が印加されることによりコレクタ電圧が第2所定電圧となるか、又は、コレクタ電極がフローティング状態に維持される。
従って、時刻t7〜時刻t10に発生する前述した電子の蓄積の際の不要な電子の放出が抑制される。更に、電子の放出を開始するために時刻t11(第4の時点(4))にて上下電極間電圧が前記正の所定電圧に再び変更された時点の直後にエミッタ部に流れる大きな突入電流に起因すると考えられる電子の不要な放出も抑制され得る。加えて、時刻t11〜時刻t14における電子の放出を開始する際に発生する不要(或いは、過大)な電子の放出も抑制され得る。
一方、遅くとも電子放出が完了する時刻t16(第1時点(1))の前までにはコレクタ電極に第1コレクタ電圧が付与される。従って、正規に放出される電子をコレクタ電極側に導くことができる。また、実質的に予定された電子放出期間においてのみコレクタ電極に第1コレクタ電圧が付与されるので、過大な電子の放出を最も効果的に抑制することができる。
(5)コレクタ電極オン時点を、「前記上下電極間電圧が正の所定電圧に再び変更されることにより前記エミッタ部の分極の反転が実質的に完了する第6時点(6)(時刻t14)」から「エミッタ部からコレクタ電極に到達する単位時間あたりの電子の量(コレクタ電極に流れる電流)が最大となる第7時点(7)(時刻t15)」までの期間内の所定時点に設定した場合(図8の符合Eを付した期間を参照。)。
これによれば、少なくとも上下電極間電圧が前記負の所定電圧とされて電子の蓄積を開始しようとする時刻t7(第2時点(2))から上下電極間電圧が正の所定電圧に再び変更されることにより前記エミッタ部の分極の反転が実質的に完了する時刻t14(第6時点(6))までの間、コレクタ電極に第2電圧が印加されることによりコレクタ電極の電位が第2電位となるか、又は、コレクタ電極がフローティング状態に維持される。
従って、時刻t7〜時刻t10に発生する前述した電子の蓄積の際の不要な電子の放出が抑制される。更に、電子の放出を開始するために時刻t11(第4の時点(4))において上下電極間電圧が前記正の所定電圧に再び変更された時点の直後にエミッタ部に流れる大きな突入電流に起因すると考えられる電子の不要な放出も抑制され得る。加えて、時刻t11〜時刻t14における電子の放出を開始する際に発生する不要(或いは、過大)な電子の放出も抑制され得る。
一方、遅くとも上部電極から同コレクタ電極に到達する単位時間あたりの電子の量(コレクタ電極に流れる電流)が最大となる時刻t15(第7時点(7))より後はコレクタ電極に第1コレクタ電圧が付与される。この結果、正規に放出される電子のみをより確実にコレクタ電極側に導くことができる。換言すると、電子の過度の放出を回避しつつ、必要とされる電子放出量を確保することが可能となる。
(6)コレクタ電極オン時点を、「前記上下電極間電圧が正の所定電圧に再び変更されてから下部電極と上部電極との実際の電位差(素子電圧)が所定閾値電圧Vthに到達した時点」に設定した場合(図8の符合Fを付した時点を参照。)。この場合、所定閾値電圧Vthを、コレクタ電極オン時点が第6時点(6)から第7時点(7)までの期間内となるように選択しておくことが好ましい。
例えば、電子放出装置がディスプレイに適用された場合等においては、表示すべき画像に応じて放出すべき電子の量(従って、各素子のエミッタ部に蓄積しておく電子の量)が変化する。従って、下部電極と上部電極との間に常に同じ正の所定電圧を付与した場合であっても、下部電極と上部電極との間の電位差の変化の仕方は画像に応じて変化する。特に、電子放出装置が複数の素子を有する場合、放出するべき電子の量の変化が大きいので、下部電極と上部電極との間の電位差の変化の仕方も画像に応じて大きく相違する。
そこで、上記(6)のように、下部電極と同上部電極との実際の電位差が所定閾値電圧Vthに到達した時点をコレクタ電極オン時点とすれば、下部電極と上部電極との電位差の変化の仕方に拘わらず常に適切なタイミング(不要な電子放出を抑制しつつ正規に放出された電子をできるだけ多くコレクタ電極に導くタイミング)にてコレクタ電極に付与する電圧及び/又は状態を切り換えることができる。
ところで、このような電子放出装置は前記素子を複数備えることが多い。この場合、
前記駆動電圧付与手段は、
前記複数の各素子の前記上下電極間電圧を順次連続的に前記負の所定電圧とし、その後同複数の総ての素子の同上下電極間電圧を同時に前記正の所定電圧として同複数の総ての素子から一斉に電子を放出させるように構成され得る。
これによれば、電子は、例えば、各素子が構成する画素に要求される量だけ、各素子毎に個別に順番に蓄積され、その後、総ての素子から動画などの表示タイミングに合わせたタイミングで同時・一斉に放出される。従って、一つの素子が電子を放出しているときに、他の素子が電子を蓄積しているという状態は発生しない。
そこで、コレクタ電圧付与手段は、
前記複数の素子のうち最も遅く前記上下電極間電圧が前記負の所定電圧とされる素子が前記電子の蓄積を完了した時点より後に同コレクタ電極に対する前記第1コレクタ電圧の付与を再開するように構成されることが好適である。この場合、コレクタ電極は、各素子の上部電極に対向するように各素子毎に個別に設けられ、且つ、互いに導線によって同電位に維持されるように構成されていてもよく、各素子の上部電極の総てに対向する単一の層状電極であってもよい。
これによれば、コレクタ電圧付与手段はスイッチング素子を一つだけ備えればよいことになるので、コレクタ電圧付与手段を安価で且つ信頼性の高いものとすることができる。
以下、本発明による電子放出装置の各実施形態について図面を参照しながら説明する。この電子放出装置は、電子照射線装置、光源、電子部品製造装置等の種々の装置に適用することができるが、以下の説明においてはディスプレイに適用されている。
<第1実施形態>
(構造)
図1乃至図3に示したように、本発明の第1実施形態に係る電子放出装置10は、基板11、複数の下部電極(下部電極層)12、エミッタ部13、複数の上部電極(上部電極層)14、絶縁層15及び集束電極(集束電極層)16を備えている。なお、図1は電子放出装置10の部分平面図である図3の1−1線に沿った平面にて電子放出装置10を切断した断面図、図2は図3の2−2線に沿った平面にて電子放出装置10を切断した断面図である。
基板11は、互いに直交するX軸及びY軸により形成される平面(X−Y平面)に平行な上面及び下面を有し、X軸及びY軸のそれぞれに直交するZ軸方向に厚み方向を有する薄板体である。基板11は、酸化ジルコニウムを主成分とした材料(例えば、ガラス又はセラミックス)からなっている。
下部電極12のそれぞれは、導電性物質(ここでは、銀又は白金)からなり、基板11の上面の上に層状に形成されている。各下部電極12の平面視における形状はY軸方向に長手方向を有する帯状である。図1に示したように、互いに隣接する二つの下部電極12は、X軸方向において所定の距離だけ離れた位置に形成されている。図1において、符合12−1、12−2及び12−3が付された下部電極12は、便宜上、第1下部電極、第2下部電極及び第3下部電極とそれぞれ称呼される。
エミッタ部13は、比誘電率が大きい誘電体(例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、チタン酸鉛(PT)及びジルコン酸鉛(PZ)の3成分系材料PMN−PT−PZ。材質については、後に詳述する。)からなり、基板11の上面及び下部電極12の上面の上に形成されている。エミッタ部13は、基板11と同様な薄板体である。エミッタ部13の上面には、図4に拡大して示したように、誘電体の粒界による凹凸13aが形成されている。
上部電極14のそれぞれは、導電性物質(ここでは、白金)からなり、エミッタ部13の上面の上に層状に形成されている。各上部電極14の平面視における形状は、図3に示したように、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ沿った短辺及び長辺を有する長方形である。複数の上部電極14は互いに離間し、マトリクス状に配列されている。上部電極14のそれぞれは、下部電極12のそれぞれに対向し、平面視において下部電極12のそれぞれに重なる位置に配設されている。更に、上部電極14のそれぞれには、図4及び上部電極14の部分拡大平面図である図5に示したように、複数の微細な貫通孔14aが形成されている。図1及び図3において、符合14−1、14−2及び14−3が付された上部電極14は、便宜上、第1上部電極、第2上部電極及び第3上部電極とそれぞれ称呼される。また、X軸方向に配列された複数の上部電極14同士は図示しない導体からなる層により接続され、同電位に維持されるようになっている。
下部電極12、エミッタ部13及び白金レジネートペーストからなる上部電極14は焼成処理によって一体化させられている。この一体化のための焼成処理により、上部電極14となる膜が例えば厚み10μmから厚み0.1μmに収縮する。このとき、上部電極14には前述した複数の微細貫通孔14aが形成される。
以上に述べたように、平面視において上部電極14と下部電極12とが重なった部分は一つの電子放出のための素子を形成していることになる。例えば、第1下部電極12−1、第1上部電極14−1及び第1下部電極12−1と第1上部電極14−1とにより挟まれたエミッタ部13は、第1の素子を構成している。また、第2下部電極12−2、第2上部電極14−2及び第2下部電極12−2と第2上部電極14−2とにより挟まれたエミッタ部13は、第2の素子を構成している。更に、第3下部電極12−3、第3上部電極14−3及び第3下部電極12−3と第3上部電極14−3とにより挟まれたエミッタ部13は、第3の素子を構成している。このように、電子放出装置10は、複数の独立した電子放出素子を備えている。
絶縁層15は、エミッタ部13の上面の上に、複数の上部電極14の間を埋めるように形成されている。絶縁層15の厚み(Z軸方向長さ)は、上部電極14の厚み(Z軸方向長さ)より僅かだけ大きくなっている。図1及び図2に示したように、各絶縁層15のX軸及びY軸方向端部は、上部電極14のX軸方向両端部及びY軸方向両端部の上に配置されている。
集束電極16は、導電性物質(ここでは、銀)からなり、絶縁層15の上に層状に形成されている。図3に示したように、各集束電極16の平面視における形状はY軸方向に長手方向を有する帯状である。各集束電極16は、平面視においてX軸方向にて互いに隣接する上部電極14の間(X軸方向に互いに隣接している素子の各上部電極の間であって、各上部電極の斜め上方、即ち、電子放出方向に僅かに離間した位置)に形成されている。総ての集束電極16は、図示しない導体からなる層により互いに接続され、同電位に維持されるようになっている。
なお、図1及び図3において、符合16−1、16−2及び16−3が付された集束電極16は、便宜上、第1集束電極、第2集束電極及び第3集束電極とそれぞれ称呼される。この称呼方法を利用すると、第2集束電極16−2は第1の素子の第1上部電極14−1と第2の素子の第2上部電極14−2との間であって、第1上部電極14−1及び第2上部電極14−2の斜め上方に形成されていると言える。同様に、第3集束電極16−3は第2の素子の第2上部電極14−2と第3の素子の第3上部電極14−3との間であって、第2上部電極14−2及び第3上部電極14−3の斜め上方に形成されていると言える。
この電子放出装置10は、更に、透明板17、コレクタ電極(コレクタ電極層)18及び蛍光体19を備えている。
透明板17は、透明な材質(ここでは、ガラス又はアクリル製)からなっていて、上部電極14の上方(Z軸正方向)に所定の距離だけ離れた位置に形成されている。透明板17は、その上面及び下面がエミッタ部13の上面及び上部電極14の上面と平行(X−Y平面内)となるように配設されている。
コレクタ電極18は、導電性物質(ここでは、透明導電膜,ITO)からなっていて、透明板17の下面全体に層状に形成されている。即ち、コレクタ電極18は、各上部電極14の上部において各上部電極14に対向するように配設されている。
蛍光体19のそれぞれは、電子の衝突により赤、緑及青色の何れかの光を発するようになっている。各蛍光体19は、平面視において各上部電極14と略同一の形状を備え、各上部電極14と重なる位置に配設されている。図1において、符合19R、19G及び19Bが付された蛍光体19は、赤色、緑色及び青色をそれぞれ発光するようになっている。従って、本例においては、赤色蛍光体19Rは第1上部電極14−1の直上部(Z軸正方向)に位置し、緑色蛍光体19Gは第2上部電極14−2の直上部に位置し、青色蛍光体19Bは第3上部電極14−3の直上部に位置している。なお、エミッタ部13、上部電極14、絶縁層15、集束電極16及び透明板17(コレクタ電極18)により囲まれた空間は略真空(102〜10−6Paが好ましく、より好ましくは10−3〜10−5Pa)に維持されている。
換言すると、透明板17及びコレクタ電極18は、図示しない電子放出装置10の側壁部とともに密閉空間を形成する空間形成部材を構成している。そして、この密閉空間は略真空に維持されている。従って、電子放出装置10の素子(少なくとも各素子のエミッタ部13の上部と上部電極14)は、空間形成部材により略真空状態に維持されている密閉空間内に配置されていることになる。
加えて、電子放出装置10は、図1に示したように、駆動電圧付与回路(駆動電圧付与手段、電位差付与手段)21と、集束電極電位付与回路(集束電極電位差付与手段)22と、コレクタ電圧付与回路(コレクタ電圧付与手段)23と、を備えている。
駆動電圧付与回路21は、各上部電極14及び各下部電極12に接続されるとともに、信号制御回路100及び電源回路110に接続されている。駆動電圧付与回路21は、信号制御回路100からの信号に基づいて、互いに対向する上部電極14と下部電極12との間にパルス状に変化する駆動電圧Vin(後述)を付与するようになっている。集束電極電位付与回路22は、集束電極16に接続されていて、集束電極16に一定の負の電位(電圧)Vsを常に付与するようになっている。
コレクタ電圧付与回路23は、コレクタ電極18に所定の電圧(コレクタ電圧)を付与するための回路であって、抵抗23aと、スイッチング素子23bと、一定の電圧Vcを発生する定電圧源23cと、スイッチ制御回路23dとを備えている。抵抗23aの一端はコレクタ電極18に接続されている。抵抗23aの他端はスイッチング素子23bの固定接続点に接続されている。スイッチング素子23bは、MOS−FETなどの半導体素子であり、スイッチ制御回路23dと接続されている。
スイッチング素子23bは、前記固定接続点に加え、二つの切換点を備えている。スイッチング素子23bは、スイッチ制御回路23dからの指示信号に応じて二つの切換点の何れか一つと固定接続点とを選択的に接続するようになっている。この二つの切換点の一つは接地され、他の一つは定電圧源23cの陽極と接続されている。定電圧源23cの陰極は接地されている。スイッチ制御回路23dは、信号制御回路100と接続されていて、信号制御回路100からの信号に基づいてスイッチング素子23bの切換制御を行うようになっている。更に、スイッチ制御回路23は、後述する素子電圧測定回路、電子放出完了検出回路を内蔵している。
(電子放出の原理及び作動)
次に、上記のように構成された電子放出装置10の電子放出に関する作動原理について説明する。
先ず、図6に示したように、下部電極12の電位を基準とした下部電極12と上部電極14の実際の電位差Vka(素子電圧Vka)が正の所定電圧Vpに維持され、エミッタ部13の電子が総て放出した直後であって、電子がエミッタ部13に蓄積されていない状態から説明を開始する。このとき、エミッタ部13の双極子の負極はエミッタ部13の上面(Z軸正方向、即ち、上部電極14側)に向いた状態となっている。この状態は、図7に示したグラフ上の点p1の状態である。図7のグラフは、横軸に素子電圧Vkaをとり、縦軸に上部電極14近傍部分の電荷Qをとったエミッタ部13の電圧−分極特性のグラフである。
この状態において、駆動電圧付与回路21は、図8の時刻t7に示したように、駆動電圧Vinを負の所定電圧Vmに変更する。これにより、素子電圧Vkaは図7の点p2を経由して点p3に向けて減少する。そして、素子電圧Vkaが図7に示した負の抗電界電圧Vaの近傍の電圧になると、エミッタ部13の双極子の向きが反転し始める。即ち、図9に示したように、分極反転(負側分極反転)が開始する。この分極反転により、エミッタ部13の上面と、上部電極14と、これらの周囲の媒質(この場合、真空)との接触箇所(トリプルジャンクション)及び/又は微細貫通孔14aを形成している上部電極14の先端部分において電界が大きくなり(電界集中が発生し)、図10に示したように、上部電極14からエミッタ部13に向けて電子が供給され始める。
この供給された電子は、主としてエミッタ部13の上部であって上部電極14の微細貫通孔14aから露呈している部分の近傍及び微細貫通孔14aを形成している上部電極14の端部近傍(以下、単に「微細貫通孔14a近傍」とも言う。)に蓄積される。その後、所定の時間が経過して図8の時刻t9にて負側分極反転が完了すると、素子電圧Vkaは負の所定電圧Vmに向けて急激に変化し、時刻t10にて負の所定電圧Vmとなる。この結果、電子の蓄積が完了する(電子の蓄積飽和状態に至る)。この状態が、図7の点p4の状態である。
次に、駆動電圧付与回路21は、図8に示した時刻t11にて、駆動電圧Vinを正の所定電圧Vpに変更する。これにより、素子電圧Vkaは増大し始める。このとき、素子電圧Vkaが図7の点p5に対応する正の抗電界電圧Vdより僅かに小さい電圧Vb(点p6)に到達するまでは、図11に示したように、エミッタ部13の帯電状態が維持される。その後、素子電圧Vkaは図8に示した時刻t13にて正の抗電界電圧Vdの近傍の電圧に到達する。これにより、双極子の負極がエミッタ部13の上面側に向き始める。即ち、図12に示したように、分極が再び反転する(正側分極反転が開始する。)。この状態が図7の点p5近傍の状態である。
その後、図8の時刻t14にて正側分極反転が完了する時点の近傍の時点になると、負極がエミッタ部13の上面側に反転した双極子の数が多くなる。この結果、図13に示したように、クーロンの反発力により微細貫通孔14aの近傍に蓄積されていた電子が微細貫通孔14aを通って上方(Z軸正方向)に放出され始める。
そして、図8の時刻t14にて正側分極反転が完了すると、素子電圧Vkaは急激に増大を開始し、電子が活発に放出される。次いで、時刻t16になると電子の放出は完了し、素子電圧Vkaは正の所定電圧Vpに到達する。この結果、エミッタ部13の状態は図6に示した当初の状態(図7の点p1の状態)に復帰する。以上が、電子の蓄積(消灯)及び放出(点灯・発光)に係る一連の作動原理である。
なお、駆動電圧付与回路21は、電子放出を行うべき上部電極14に対してのみ駆動電圧Vinを負の所定電圧Vmとして電子の蓄積を行い、電子放出を行う必要のない上部電極14に対しては駆動電圧Vinを「0」の値に維持し、その後、総ての上部電極14に対して駆動電圧Vinを正の所定値Vpに一斉に(同時に)変化させるようになっている。これにより、電子は、電子をエミッタ部13に蓄積していた素子の上部電極14(微細貫通孔14a)のみから放出させられる。従って、電子放出を行う必要のない上部電極14近傍のエミッタ部13内では分極反転が発生しない。
ところで、電子が上部電極14の微細貫通孔14aを通して放出されるとき、図14に示したように、電子は次第に広がりながら(コーン状に)Z軸正方向に進行する。この結果、従来の装置においては、一つの上部電極14(例えば、第2上部電極14−2)から放出された電子が、その上部電極14の直上に存在する蛍光体(例えば、緑色蛍光体19G)に到達するのみでなく、隣接する蛍光体(赤色蛍光体19R及び青色蛍光体19B)にも到達してしまう場合があった。このような状態が発生すると、色純度が低下して画像の鮮明さが低下する。
これに対し、本実施形態に係る電子放出装置10は負の電位が付与される集束電極16を備えている。この集束電極16は、隣接する上部電極14の間(隣接する素子の各上部電極の間)であって、上部電極14よりも若干だけ上方の位置に配設されている。従って、図15に示したように、上部電極14の微細貫通孔14aから放出された電子は、集束電極16によりもたらされる電界によって広がることなく実質的に直上方向に放出される。
この結果、第1上部電極14−1から放出された電子は赤色蛍光体19Rのみに到達し、第2上部電極14−2から放出された電子は緑色蛍光体19Gのみに到達し、第3上部電極14−3から放出された電子は青色蛍光体19Bのみに到達する。従って、ディスプレイの色純度が低下することなく、より鮮明な画像を得ることができる。
(不要な電子放出のタイミング及び推定理由)
上述したような作動を行う電子放出装置10においては、図8に示したコレクタ電流(コレクタ電極に単位時間あたりに到達する電子の量)から理解されるように、時刻t14近傍にて電子放出が始まり、時刻t15にて単位時間あたりの電子放出量が最大となり、時刻t16にて電子放出が完了する。即ち、この期間において、正規の発光が行われる。しかしながら、発明者が実験したところ、以下に列挙するように予定していない発光(不要な電子放出)が生じることが判明した。
(1)駆動電圧(上下電極間電圧)Vinを正の所定値Vpから負の所定値Vmに変更した時点(図8の時刻t7)の直後に不要な電子放出が発生する。これは、駆動電圧Vinが急変することに伴って、上部電極14と下部電極12との間(即ち、エミッタ部13)に大きな突入電流が流れることに起因すると推定される。
(2)負側分極反転が完了した時点(図8の時刻t9)の直後に不要な電子放出が発生する。これは、エミッタ部13の負側分極反転が完了した後に素子電圧Vkaが急激に変化すること(素子電圧Vkaの時間的変化率(dVka/dt)が過大になること)等によるものと推定される。
(3)駆動電圧Vinを負の所定値Vmから正の所定値Vpに変更した時点(図8の時刻t11)の直後に不要な電子放出が発生する。これは、駆動電圧Vinが急変することに伴って、図8の時刻t12にて上部電極14と下部電極12との間(即ち、エミッタ部13)に大きな突入電流が流れることに起因すると推定される。
(4)正側分極反転が完了した時点(図8の時刻t14)の直後に不要な電子放出が発生する。これは、エミッタ部13の正側分極反転が完了した後に素子電圧Vkaが急激に変化すること等によるものと推定される。
(コレクタ電極の制御)
そこで、第1実施形態に係る電子放出装置10においては、以下のようにコレクタ電極18の制御を行う。
コレクタ電圧付与回路23は、「上下電極間電圧(駆動電圧)Vinが正の所定電圧Vpとされたことにより微細貫通孔14aを介する電子の放出が実質的に完了する第1時点(1)(時刻t6)」から「上下電極間電圧が負の所定電圧Vmとされる第2時点(2)(時刻t7)」までの期間内の所定時点にて、コレクタ電圧が第1所定電圧から第1所定電圧より小さい第2所定電圧へと変化するように、コレクタ電極18に第2コレクタ電圧V2を付与する。
より具体的に述べると、コレクタ電圧付与回路23は、信号制御回路100からの信号に基づいて上下電極間電圧(駆動電圧)Vinが正の所定電圧Vpに変化したことを検出してから所定時間経過した時点を第1時点(1)と第2時点(2)との間の上記所定時点と見做し、その時点にてスイッチング素子23bの固定接続点の接続先を定電圧源23cに接続されている切換点から接地されている切換点に切り換える。
なお、コレクタ電圧付与回路23のスイッチ制御回路23dは、素子電圧Vkaを測定する素子電圧測定回路と、その測定された素子電圧Vkaが正の所定電圧Vpに実質的に一致した時点を電子放出が完了した第1時点(1)として検出する電子放出完了検出回路とを内蔵していて、信号制御回路100からの信号と電子放出完了検出回路からの信号とに基づいて検出した第1時点(1)の直後の時点にてスイッチング素子23bの固定接続点の接続先を定電圧源23cに接続されている切換点から接地されている切換点に切り換えてもよい。
また、スイッチング素子23bは、上記接地されている切換点をどこにも接続していないフローティング点となるように構成され得る。この場合、スイッチング素子23bが第1時点(1)の直後に固定接続点の接続先を定電圧源23cに接続されている切換点からフローティング点となっている切換点に切り換えることにより、コレクタ電極18は、フローティング状態へと変化させられる。このように、コレクタ電極18を接地することによりコレクタ電極18に第2コレクタ電圧V2を付与するか、又は、コレクタ電極18をフローティング状態とすることを、「コレクタ電極をオフする。」とも言う。
コレクタ電極18をオフすると、コレクタ電極18は放出された電子を引き寄せる電界を形成しないか或いはそのような電界の強度を小さくする。この結果、不要な電子放出(ディスプレイ装置のように上部電極に対向する蛍光体を備えている場合には不要な発光)が回避される。
その後、コレクタ電圧付与回路23は、別の所定時点(便宜上、「コレクタ電極オン時点」と呼ぶ。)にてコレクタ電極18に対する第1コレクタ電圧V1の付与を再開する。これにより、放出された電子は、コレクタ電極18により形成される電界によって加速されながら(高いエネルギーが与えられ)上部電極14の上方に進行する。従って、蛍光体19に高いエネルギーをもった電子が照射されるので、大きな輝度が得られる。換言すると、第1コレクタ電圧V1が付与されたコレクタ電極18は、放出された電子を引寄せるので、結果として、コレクタ電極18の近傍に必要とされる量の電子が到達する。
第1実施形態において、上記コレクタ電極オン時点は、「上下電極間電圧(駆動電圧)Vinが負の所定電圧Vmとされることにより電子の蓄積が実質的に完了する第3時点(3)(図8の時刻t10)」から「第3時点(3)後に再び到来する第1時点(1)(時刻t16)より前」までの期間内の所定時点に設定される。即ち、コレクタ電圧付与回路23は、図8の符合Aを付した期間の内の所定時点にて、スイッチング素子23bの固定接続点の接続先を接地されている切換点から定電圧源23cに接続されている切換点へ切り換える。
これによれば、少なくとも時刻t7(第2時点(2))から時刻t10(第3時点(3))までの間、コレクタ電極18に第2コレクタ電圧V2が印加されることによりコレクタ電圧が第2所定電圧(本例では、グランドの電位である0V)となるか、又は、コレクタ電極がフローティング状態に維持される。
従って、時刻t7(第2の時点(2))直後にエミッタ部13を流れる大きな突入電流に起因すると考えられる電子の不要な放出が抑制され得る。更に、負側の分極反転が完了した時点、即ち、負側の抗電界電圧を超える時刻t9から電子の蓄積が完了する時刻t10(第3時点(3))までに生じる「抗電界後の素子電圧Vkaの大きな電圧変化率」に起因すると考えられる電子の不要な放出も抑制され得る。
一方、遅くとも電子放出が完了する時刻t16(次の第1時点(1))の前までにはコレクタ電極に第1コレクタ電圧V1(本例では、電圧Vc)が付与されるので、上部電極14の微細貫通孔14aを通して放出される電子は、コレクタ電極18によって形成される電界によってコレクタ電極18(従って、蛍光体19)に引寄せられるように加速しながら上方に進行する。従って、正規に放出される電子をコレクタ電極側に導くことができ、大きな輝度を得ることができる。
(駆動電圧付与回路、集束電極電位付与回路及びコレクタ電圧付与回路の具体例)
次に、駆動電圧付与回路21、集束電極電位付与回路22及びコレクタ電圧付与回路23の具体的構成及び作動について説明する。
駆動電圧付与回路21は、図16に示したように、行選択回路21a、パルス発生源21b及び信号供給回路21cを備えている。図16において、符合D11、D12、…D22、D23などが付されたものは、それぞれ、前述した一つの素子(上部電極14と下部電極12とが重なった部分により構成される電子放出素子)を示している。また、この例における電子放出装置10は、行方向にn個、列方向にm個の素子を備えている。
行選択回路21aは、信号制御回路100の制御信号線100aと、電源回路110の正極ライン110p及び負極ライン110mとに接続されている。行選択回路21aは、更に、複数の行選択線LLと接続されている。行選択線LLのそれぞれは一群をなす複数の素子(同一行上の素子)の下部電極12と接続されている。例えば、行選択線LL1は第1行の素子D11、D12、D13、…D1mの各下部電極12と接続され、行選択線LL2は第2行の素子D21、D22、D23、…D2mの各下部電極12と接続されている。
行選択回路21aは、電子を各素子のエミッタ部13に蓄積させる電荷蓄積期間Tdにおいて、信号制御回路100からの制御信号に応答して行選択線LLの一つに対し一定の期間(行選択期間)Tsだけ選択信号Ss(ここでは、50Vの電圧信号)を出力し、残りの行選択線LLに非選択信号Sn(ここでは、0Vの電圧信号)を出力するようになっている。行選択回路21aは、選択信号Ssを出力する行選択線LLを、一定の行選択期間Ts毎に順次変更して行くようになっている。
パルス発生源21bは、電荷蓄積期間Tdにおいて基準電圧(ここでは、0V)を発生するとともに、発光期間(点灯期間、電子放出期間)Thにおいて所定の一定電圧(ここでは、−400V)を発生するようになっている。パルス発生源21bは、電源回路110の負極ライン110mとグランド(GND)との間に接続されている。
信号供給回路21cには、信号制御回路100の制御信号線100bと、電源回路110の正極ライン110p及び負極ライン110mと、が接続されている。信号供給回路21cは、内部に、パルス生成回路21c1と振幅変調回路21c2とを備えている。
パルス生成回路21c1は、電荷蓄積期間Tdにおいて一定のパルス周期で一定の振幅(ここでは、50V)を有するパルス信号Spを出力するとともに、発光期間Thにおいて基準電圧(ここでは、0V)を出力するようになっている。
振幅変調回路21c2は、パルス生成回路21c1からのパルス信号Spを入力するように、パルス生成回路21c1と接続されている。また、振幅変調回路21c2は、複数の画素信号線ULと接続されている。画素信号線ULのそれぞれは一群をなす複数の素子(同一列上の素子)の上部電極14と接続されている。例えば、画素信号線UL1は第1列の素子D11、D21、…Dn1の各上部電極14と接続され、画素信号線UL2は第2列の素子D12、D22、…Dn2の各上部電極14と接続され、画素信号線UL3は第3列の素子D13、D23、…Dn2の各上部電極と接続されている。
振幅変調回路21c2は、電荷蓄積期間Tdにおいてパルス信号Spを選択されている行の画素の輝度レベルに応じて振幅変調し、その振幅変調した信号(ここでは、0、30、50Vの何れかの電圧信号)を画素信号Sdとして複数の画素信号線UL(UL1、UL2、…ULm)に出力するようになっている。更に、振幅変調回路21c2は、発光期間Thにおいて、パルス生成回路21c1が発生する基準電圧(0V)をそのまま出力するようになっている。
信号制御回路100は、映像信号Sv及び同期信号Scを入力し、これらの入力信号に基づいて行選択回路21aを制御する信号、信号供給回路21cを制御する信号及びコレクタ電圧付与回路23を制御する信号を、信号線100a、信号線100b及び信号線100cにそれぞれ出力するようになっている。
電源回路110は、正極ライン110pの電位を負極ライン110mの電位よりも一定電圧(ここでは50V)だけ高くするための電圧信号を正極ライン110p及び負極ライン110mに出力するようになっている。
集束電極電位付与回路22は、総ての集束電極16を接続する接続線SLと接続されている。集束電極電位付与回路22は、この接続線SLにグランドに対する電位Vs(例えば−50V)を付与するようになっている。
コレクタ電圧付与回路23は、コレクタ電極18に接続された接続線CL及び信号制御回路100の信号線100cと接続されている。コレクタ電圧付与回路23は、接続線CLに正の第1電圧Vc及び第1電圧Vcよりも小さい第2電圧(ここでは、グランドの電位である0(V))を信号制御回路100からの信号に基づいて交互に付与するようになっている。
次に、このように構成された回路の作動について説明する。先ず、ある時点にて始まる電荷蓄積期間Tdの開始時において、行選択回路21aは、信号制御回路100からの制御信号に基づいて第1行の行選択線LL1に選択信号Ss(50V)を出力し、他の行選択線LLに非選択信号Sn(0V)を出力する。これにより、第1行の素子D11、D12、D13、…D1mの各下部電極12の電位が選択信号Ssの電圧(50V)となる。また、他の素子(例えば、第2行の素子D21…D2m、第3行の素子D31…D3m)の各下部電極12の電位は非選択信号Snの電圧(0V)となる。
このとき、信号供給回路21cは、信号制御回路100からの制御信号に基づいて、選択されている行の素子(即ち、第1行の素子D11、D12、D13、…D1m)のそれぞれにより構成される各画素の輝度レベルに応じた画素信号Sd(ここでは、0、30、50Vの何れかの電圧信号)を複数の画素信号線UL(UL1、UL2、…ULm)に出力する。
この場合、例えば、画素信号線UL1に0Vの画素信号Sdが付与されたと仮定すると、素子D11の上部電極14の下部電極12に対する上下電極間電圧Vin(D11)は前述した負の所定電圧Vmである−50V(=0V−50V)となる。これにより、非常に多くの電子が素子D11の上部電極14近傍のエミッタ部13に蓄積される。また、画素信号線UL2に30Vの画素信号Sdが付与されたと仮定すると、素子D12の上部電極14の下部電極12に対する上下電極間電圧Vin(D12)は前述した負の所定電圧Vmである−20V(=30V−50V)となる。
これにより、素子D11よりは少ない電子が素子D12の上部電極14の近傍のエミッタ部13に蓄積される。更に、画素信号線UL3に50Vの画素信号Sdが付与されたと仮定すると、素子D13の上部電極14の下部電極12に対する上下電極間電圧Vin(D13)は0V(=50V−50V)となる。従って、素子D13のエミッタ部13には電子が蓄積されない。つまり、素子D13のエミッタ部13には分極反転が発生しない。
次いで、行選択期間Ts(図8に示した時刻t7〜時刻t11に相当する時間)が経過すると、行選択回路21aは、信号制御回路100からの制御信号に基づいて第2行の行選択線LL2に選択信号Ss(50V)を出力し、他の行選択線に非選択信号Sn(0V)を出力する。これにより、第2行の素子D21、D22、D23、…D2mの各下部電極12の電位が選択信号Ssの電圧(50V)となる。また、他の素子(例えば、第1行の素子D11…D1m、第3行の素子D31…D3m)の各下部電極12の電位は非選択信号Snの電圧(0V)となる。
このとき、信号供給回路21cは、信号制御回路100からの制御信号に基づいて、選択されている行の素子(即ち、第2行の素子D21、D22、D23、…D2m)のそれぞれにより構成される各画素の輝度レベルに応じた画素信号Sd(0、30、50Vの何れかの電圧信号)を複数の画素信号線UL(UL1、UL2、…ULm)に出力する。この結果、第2行の素子D21、D22、D23、…D2mの各エミッタ部に、画素信号Sdに応じた量の電子が蓄積されて行く。なお、非選択信号Snの電圧(0V)が付与されている素子の上下電極間電圧Vinは最大で50Vとなるが、この程度の電圧では既に電子が蓄積されている素子から電子は放出されない。
更に、行選択期間Tsが経過すると、行選択回路21aは、第3行の行選択線LL3(図示省略)に選択信号Ss(50V)を出力するとともに、他の行選択線に非選択信号Sn(0V)を出力する。また、信号供給回路21cは、選択されている第3行の素子のそれぞれにより構成される各画素の輝度レベルに応じた画素信号Sdを複数の画素信号線ULに出力する。このような動作が、行選択期間Tsの経過毎に総ての行が選択されるまで繰り返される。この結果、所定の時点になると、すべての素子のエミッタ部13に、各素子が構成する画素の輝度レベルに応じた量(「0」を含む量)の電子が蓄積される。以上が、電荷蓄積期間Tdにおける作動である。
次いで、行選択回路21aは、発光期間Thを開始するために、総ての行選択線LLに対して大きな負の電圧(ここでは、電源回路110の発生する+50Vとパルス発生源21bが発生する−400Vの差である−350V)を印加する。これにより、総ての素子の下部電極12の電位は大きな負の電圧(−350V)となる。同時に、信号供給回路21cは、振幅変調回路21c2を介してパルス生成回路21c1が発生する基準電圧(0V)をそのまま総ての画素信号線ULに出力する。これにより、総ての素子の上部電極14の電位は基準電圧(0V)となる。
この結果、総ての素子の上部電極14の下部電極12に対する上下電極間電圧Vinは大きな正の所定電圧Vp(=350V)となるので、分極が再び反転し、それぞれの素子のエミッタ部13に蓄積されていた電子はクーロン反発力によって一斉に放出させられる。これにより、各素子の上部に位置する蛍光体が発光し、画像が表示される。なお、電荷蓄積期間Tdにおいて上下電極間電圧Vinが「0」とされることにより電子を蓄積していなかった素子のエミッタ部においては、分極反転が発生していないので、上下電極間電圧Vinが大きな正の電圧となったときも分極反転は発生しない。従って、例えば、あるタイミングにおいて画像の関係から電子を放出する必要の無い素子は、分極反転に伴う無駄な電力を消費することがない。
このように、駆動電圧付与回路21は、電荷蓄積期間Tdにおいて、複数の素子の各上下電極間電圧Vinを順次連続的に負の所定電圧Vmとして行く。その後、駆動電圧付与回路21は、総ての素子に対する電子の蓄積動作が完了すると、総ての素子の上下電極間電圧Vinを同時に正の所定電圧Vpとして同複数の総ての素子から一斉に電子を放出させ、発光期間Thを開始する。更に、その後、所定の発光期間Thが経過すると、駆動電圧付与回路21は再び電荷蓄積期間Tdを開始する。
また、上述したように、各集束電極には所定の電位(Vs)が与えられているから、各素子の上部電極14から放射された電子は各上部電極14の上部に存在する蛍光体のみに照射される。この結果、鮮明な画像が提供される。
一方、コレクタ電圧付与回路23は、「総ての素子の実質的な電子放出が完了した最初の第1時点(1)(時刻t6)」から「複数の素子のうち最も早く電子が蓄積される素子の上下電極間電圧Vinが負の所定電圧Vmとされる第2時点(2)(時刻t7)」までの期間内の所定時点にてコレクタ電極18をオフする。これにより、総ての素子の電荷蓄積期間Tdの開始前までの時点にてコレクタ電極18はオフされていることになる。
また、コレクタ電圧付与回路23は、一つの電荷蓄積期間Td内において最も遅く上下電極間電圧Vinが負の所定電圧Vmに変更される素子が電子の蓄積を完了した第3時点(3)より後であって、第3時点(3)後に再び到来する第1時点(1)より前までの期間内の所定時点にてコレクタ電極18をオンする。即ち、コレクタ電圧付与回路23は、図8の符合Aを付した期間の内の所定時点にて、スイッチング素子23bの固定接続点の接続先を接地されている切換点から定電圧源23cに接続されている切換点へ切り換える。従って、各素子から一斉に放出される電子は、大きなエネルギーをもって蛍光体19に進入し、蛍光体19を励起させる。
このように、電子放出装置10においては、一つの素子が電子を放出しているときに、他の素子が電子を蓄積しているという状態は発生しない。従って、コレクタ電圧付与回路23は、複数の素子を有する電子放出装置10にあっても、コレクタ電極18をオンする状態とオフする状態とを切り換えるだけで、不要な電子放出を抑制しつつ、正規に放出された電子にエネルギーを付与することができる。この結果、コレクタ電圧付与回路23は、安価で簡素な回路となる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る電子放出装置について説明する。この第2実施形態は、コレクタ電極オン時点を上記第1実施形態の電子放出装置10のコレクタ電極オン時点と異なる時点に設定した点のみにおいて同電子放出装置10と相違する。従って、以下、この相違点を中心として説明する。
第2実施形態において、コレクタ電極オン時点は、電子の放出後であって「上下電極間電圧(駆動電圧)Vinが正の所定電圧Vpに再び変更される第4時点(4)(図8の時刻t11であって符合Bを付した時点)」に設定されている。即ち、コレクタ電圧付与回路23は、制御信号回路100からの信号に基づいて上記第4時点(4)にてスイッチング素子23bの固定接続点の接続先を接地されている切換点から定電圧源23cに接続されている切換点へ切り換える。
これによれば、少なくとも上下電極間電圧Vinが負の所定電圧Vmとされて電子の蓄積を開始しようとする時刻t7(第2時点(2))から上下電極間電圧Vinが正の所定電圧Vpに再び変更される時刻t11(第4時点(4))までの間、コレクタ電極18に第2コレクタ電圧V2が印加されることによりコレクタ電圧が第2所定電圧(本例では、グランドの電位である0V)となるか、又は、コレクタ電極18がフローティング状態に維持される。
従って、第1実施形態と同様、時刻t7(第2の時点(2))直後にエミッタ部を流れる大きな突入電流に起因すると考えられる電子の不要な放出が抑制され得る。更に、負側の分極反転が完了した時点、即ち、負側の抗電界電圧を超える時刻t9から電子の蓄積が完了する時刻t10(第3時点(3))までに生じる「抗電界後の素子電圧Vkaの大きな電圧変化率」に起因すると考えられる電子の不要な放出も抑制され得る。
加えて、電子放出がなされる期間全体(時刻t11〜時刻t16前)に渡りコレクタ電極18に第1コレクタ電圧V1(本例では、電圧Vc)が付与されるので、正規に放出される電子をコレクタ電極18の近傍に導くことができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る電子放出装置について説明する。この第3実施形態は、コレクタ電極オン時点を上記第1実施形態の電子放出装置10のコレクタ電極オン時点と異なる時点に設定した点のみにおいて同電子放出装置10と相違する。従って、以下、この相違点を中心として説明する。
第3実施形態において、コレクタ電極オン時点は、電子蓄積後に「上下電極間電圧(駆動電圧)Vinが正の所定電圧Vpに再び変更されることによりエミッタ部13に流れる突入電流がピークとなる第5時点(5)(図8の時刻t12)の直後の時点」から「エミッタ部の分極の反転(正側分極反転)が実質的に完了する第6時点(6)(時刻t14)」までの期間内の所定時点に設定されている。
より具体的に述べると、コレクタ電圧付与回路23のスイッチ制御回路23dは、下部電極12と上部電極14との間を流れる電流を測定する素子電流測定回路と、その測定された電流のピークを検出する電流ピーク検出回路とを内蔵している。そして、コレクタ電圧付与回路23は、信号制御回路100からの信号と電流ピーク検出回路からの信号とに基づいて上記第5時点(5)を検出し、その時点の直後の時点にてスイッチング素子23bの固定接続点の接続先を接地されている切換点から定電圧源23cに接続されている切換点へ切り換える。なお、エミッタ部13の正側分極反転の開始から終了までにはある程度の時間がかかるので、検出した第5時点(5)の直後にコレクタ電極18をオフにすれば、コレクタ電極18は第6時点(6)の前までにオフにされることになる。
これによれば、少なくとも上下電極間電圧Vinが負の所定電圧Vmとされて電子の蓄積を開始しようとする時刻t7(第2時点(2))から上下電極間電圧Vinが正の所定電圧Vpに再び変更されることによりエミッタ部13に流れる突入電流がピークとなる時刻t12(第5時点(5))の直後まで、コレクタ電極18に第2コレクタ電圧V2が印加されることによりコレクタ電圧が第2所定電圧(本例ではグランドの電位である0V)となるか、又は、コレクタ電極18がフローティング状態に維持される。
従って、図8の時刻t7〜時刻t10に発生する前述した電子の蓄積の際の不要な電子の放出が抑制される。加えて、時刻t11(第4の時点(4))において電子の放出を開始するために上下電極間電圧Vinが正の所定電圧Vpに再び変更された時点の直後にエミッタ部に流れる大きな突入電流に起因すると考えられる電子の不要な放出も抑制され得る。
一方、遅くともエミッタ部の分極の反転(正側分極反転)が実質的に完了する時刻t14(第6時点(6))以降において、コレクタ電極18に第1コレクタ電圧V1が付与される。従って、時刻t14(第6時点(6))から時刻t16(第1時点(1))の間に正規に放出される電子をコレクタ電極18の近傍に導くことができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る電子放出装置について説明する。この第4実施形態は、コレクタ電極オン時点を上記第1実施形態の電子放出装置10のコレクタ電極オン時点と異なる時点に設定した点のみにおいて同電子放出装置10と相違する。従って、以下、この相違点を中心として説明する。
第4実施形態において、コレクタ電極オン時点は、電子蓄積後であって、「上下電極間電圧(駆動電圧)Vinが正の所定電圧Vpに再び変更されることによりエミッタ部13の分極の反転が実質的に完了する第6時点(6)(図8の時刻t14)」から「第6時点(6)後に再び到来する第1時点(1)(図8の時刻t16)より前」までの期間内(図8の符合Dを付した期間を参照。)の所定時点に設定されている。
より具体的に述べると、コレクタ電圧付与回路23のスイッチ制御回路23dは、素子電圧測定回路と正側分極反転完了検出回路とを内蔵している。素子電圧測定回路は、素子電圧Vkaを測定するようになっている。正側分極反転完了検出回路は、素子電圧測定回路により測定された素子電圧Vkaの波形をモニターし、その素子電圧Vkaが正の抗電界電圧近傍の電圧となったときに同素子電圧Vkaの時間変化率(dVka/dt)が所定値より小さくなり、その後、同素子電圧の時間変化率(dVka/dt)が急激に大きくなり始める(同時間変化率が所定変化率を越える)時点をエミッタ部13の分極の反転が実質的に完了する第6時点(6)として検出するようになっている。
そして、コレクタ電圧付与回路23は、信号制御回路100からの信号と正側分極反転完了検出回路からの信号とに基づいて上記第6時点(6)を検出し、その時点の直後の時点にてスイッチング素子23bの固定接続点の接続先を接地されている切換点から定電圧源23cに接続されている切換点へ切り換える。
これによれば、少なくとも上下電極間電圧Vinが負の所定電圧Vmとされて電子の蓄積を開始しようとする時刻t7(第2時点(2))から上下電極間電圧Vinが正の所定電圧Vpに再び変更されることによりエミッタ部13の分極の反転が実質的に完了する時刻t14(第6時点(6))までの間、コレクタ電極18に第2コレクタ電圧V2が印加されることによりコレクタ電圧が第2所定電圧(本例ではグランドの電位である0V)となるか、又は、コレクタ電極がフローティング状態に維持される。
従って、時刻t7〜時刻t10に発生する前述した電子の蓄積の際の不要な電子の放出が抑制される。更に、電子の放出を開始するために時刻t11(第4の時点(4))にて上下電極間電圧Vinが正の所定電圧Vpに再び変更された時点の直後においてエミッタ部に流れる大きな突入電流が流れ、この突入電流に起因すると考えられる電子の不要な放出も抑制され得る。加えて、時刻t11〜時刻t14における電子の放出を開始する際に発生する不要な電子の放出も抑制され得る。
一方、遅くとも電子放出が完了する時刻t16(第1時点(1))の前までにはコレクタ電極18に第1コレクタ電圧V1が付与される。従って、正規に放出される電子をコレクタ電極18の近傍に導くことができる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る電子放出装置について説明する。この第5実施形態は、コレクタ電極オン時点を上記第1実施形態の電子放出装置10のコレクタ電極オン時点と異なる時点に設定した点のみにおいて同電子放出装置10と相違する。従って、以下、この相違点を中心として説明する。
第5実施形態において、コレクタ電極オン時点は、電子蓄積後であって、「上下電極間電圧(駆動電圧)Vinが正の所定電圧Vpに再び変更されることにより前記エミッタ部13の分極の反転が実質的に完了する第6時点(6)(図8の時刻t14)」から「エミッタ部13から(上部電極14の微細貫通孔14aを介して)コレクタ電極18に到達する単位時間あたりの電子の量(コレクタ電極18に流れる電流=コレクタ電流)が最大となる第7時点(7)(図8の時刻t15)」までの期間(図8の符合Eを付した期間を参照。)内の所定時点に設定されている。
より具体的に述べると、コレクタ電圧付与回路23のスイッチ制御回路23dは、素子電圧測定回路、正側分極反転完了検出回路、コレクタ電流測定回路及びコレクタ電流ピーク近傍値検出回路を内蔵している。
素子電圧測定回路は、素子電圧Vkaを測定するようになっている。正側分極反転完了検出回路は、素子電圧測定回路により測定された素子電圧Vkaの波形をモニターし、その素子電圧Vkaが正の抗電界電圧近傍の電圧Vdとなったときに同素子電圧Vkaの時間変化率が小さくなり、その後、同素子電圧Vkaの時間変化率(dVka/dt)が急激に大きくなり始める時点をエミッタ部13の分極の反転が実質的に完了する第6時点(6)として検出するようになっている。
コレクタ電流測定回路は、コレクタ電極18に流れる電流(コレクタ電流)を測定するようになっている。コレクタ電流ピーク近傍値検出回路は、コレクタ電流測定回路により測定されたコレクタ電流の波形をモニターし、そのコレクタ電流の大きさが予想される最大値(ピーク)の近傍まで大きくなった時点を検出するようになっている。
そして、コレクタ電圧付与回路23は、信号制御回路100、正側分極反転完了検出回路及びコレクタ電流ピーク近傍値検出回路からの各信号に基づいて上記第6時点(6)経過後であって第7時点(7)となるまでに、即ち、コレクタ電流ピーク近傍値検出回路によるコレクタ電流のピーク近傍値検出時点にてスイッチング素子23bの固定接続点の接続先を接地されている切換点から定電圧源23cに接続されている切換点へ切り換える。
これによれば、少なくとも上下電極間電圧Vinが負の所定電圧Vmとされて電子の蓄積を開始しようとする時刻t7(第2時点(2))から上下電極間電圧(駆動電圧)Vinが正の所定電圧Vpに再び変更されることによりエミッタ部13の分極の反転が実質的に完了する時刻t14(第6時点(6))までの間、コレクタ電極18に第2電圧V2が印加されることによりコレクタ電極の電位が第2電位(本例ではグランドの電位である0V)となるか、又は、コレクタ電極18がフローティング状態に維持される。
従って、時刻t7〜時刻t10に発生する前述した電子の蓄積の際の不要な電子の放出が抑制される。更に、電子の放出を開始するために時刻t11(第4の時点(4))において上下電極間電圧Vinが正の所定電圧Vpに再び変更された時点の直後にエミッタ部13に流れる大きな突入電流に起因すると考えられる電子の不要な放出も抑制され得る。加えて、時刻t11〜時刻t14における電子の放出を開始する際に発生する不要な電子の放出も抑制され得る。
一方、遅くともエミッタ部13からコレクタ電極18に到達する単位時間あたりの電子の量(コレクタ電流)が最大となる時刻t15(第7時点(7))より後はコレクタ電極18に第1コレクタ電圧V1が付与される。この結果、正規に放出される電子のみをより確実にコレクタ電極18の近傍に導くことができる。
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態に係る電子放出装置について説明する。この第6実施形態は、コレクタ電極オン時点を上記第1実施形態の電子放出装置10のコレクタ電極オン時点と異なる時点に設定した点のみにおいて同電子放出装置10と相違する。従って、以下、この相違点を中心として説明する。
第6実施形態において、コレクタ電極オン時点は、電子蓄積後であって、「上下電極間電圧(駆動電圧)Vinが正の所定電圧Vpに再び変更されてから下部電極12と上部電極14との実際の電位差(即ち、素子電圧)Vkaが所定閾値電圧Vthに到達した時点(図8の符合Fを付した時点を参照。)」に設定されている。この場合、所定閾値電圧Vthは、コレクタ電極オン時点が第6時点(6)から第7時点(7)までの期間内となるように設定されている。即ち、所定閾値電圧Vthは、正の抗電界電圧Vecより僅かに大きく、正の所定電圧Vpよりは小さい電圧に選択されているとよい。
より具体的に述べると、コレクタ電圧付与回路23のスイッチ制御回路23dは、素子電圧測定回路と比較回路とを内蔵している。素子電圧測定回路は、素子電圧Vkaを測定するようになっている。比較回路は、素子電圧測定回路により測定された素子電圧Vkaと所定閾値電圧Vthとを比較し、その比較結果を出力するようになっている。
そして、コレクタ電圧付与回路23は、信号制御回路100及び比較回路からの各信号に基づいて素子電圧Vkaが所定閾値電圧Vthに到達した時点にて、スイッチング素子23bの固定接続点の接続先を接地されている切換点から定電圧源23cに接続されている切換点へ切り換える。
この実施形態は、複数の素子を複数の画素に対応させたディスプレイに電子放出装置が適用された場合等に特に効果的である。このようなディスプレイにおいては、表示すべき画像に応じて放出すべき電子の量が変化する。従って、下部電極12と上部電極14との間に常に同じ正の所定電圧Vpを付与した場合であっても、素子電圧Vkaの変化の仕方は画像に応じて変化する。
従って、この実施形態にように、実際の素子電圧Vkaが所定閾値電圧Vthに到達した時点にてコレクタ電極をオンとすれば、素子電圧Vkaの変化の仕方に拘わらず常に適切なタイミング(不要な電子放出を抑制しつつ正規に放出された電子をできるだけ多くコレクタ電極に導くタイミング)にてコレクタ電極18に付与する電圧及び/又は状態を切り換えることができる。
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態に係る電子放出装置20について図17を参照しながら説明する。電子放出装置20は、電子放出装置10のコレクタ電極18及び蛍光体19をコレクタ電極18’及び蛍光体19’に置換した点のみにおいて電子放出装置10と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明する。
電子放出装置20においては、透明板17の裏面(上部電極14と対向する面)に蛍光体19’が形成され、蛍光体19’を覆うようにコレクタ電極18’が形成されている。コレクタ電極18’は、エミッタ部13から上部電極14の微細貫通孔14aを通して放出された電子が貫通できる程度の厚さを有するように形成されている。この場合、コレクタ電極18’の厚さは100nm以下であることが望ましい。コレクタ電極18’の厚さは、放出された電子の運動エネルギーが大きいほど大きくすることができる。
係る構成は、CRT等に採用される構成である。コレクタ電極18’はメタルバックとして機能する。エミッタ部13から上部電極14の微細貫通孔14aを通して放出された電子はコレクタ電極18’を貫通して蛍光体19’に進入し、蛍光体19’を励起し、発光を生ぜしめる。この電子放出装置20は、以下の効果を奏することができる。
(a)蛍光体19’が導電性でない場合、蛍光体19’が帯電(負に帯電)することを回避することができる。この結果、電子を加速させる電界を維持することができる。
(b)コレクタ電極18’により蛍光体19’が発生した光が反射されるので、その光を効率よく透明板17側(発光面側)に放出させることができる。
(c)蛍光体19’への過度の電子の衝突を防ぐことができるので、蛍光体19’の劣化や蛍光体19’からガスが発生することを回避することができる。
<各構成部材の材料例及び製法例>
次に、上記各電子放出装置の構成部材の材料及び製法例について説明する。
(下部電極12)
下部電極には、上述したように導電性を有する物質(例えば、白金、モリブデン、タングステン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム等の金属導体)が使用される。以下、下部電極に好適な物質を列挙する。
(1)高温酸化雰囲気に対して耐性を有する導体(例えば、金属単体又は合金)
例)白金、イリジウム、パラジウム、ロジウム、モリブデン等の高融点貴金属
例)銀−パラジウム、銀−白金、白金−パラジウム等の合金を主成分とするもの
(2)高温酸化雰囲気に対して耐性を有する絶縁性セラミックスと金属単体との混合物
例)白金とセラミック材料とのサーメット材料
(3)高温酸化雰囲気に対して耐性を有する絶縁性セラミックスと合金との混合物
(4)カーボン系、又は、グラファイト系の材料
これらのうち、白金のみ又は白金系の合金を主成分とする材料が非常に好ましい。なお、電極材料中にセラミック材料を添加する場合、その添加されるセラミック材料の割合は5〜30体積%程度が好適である。また、後述する上部電極14の材料と同様な材料を用いてもよい。下部電極は、厚膜形成法により形成されることが好適である。下部電極の厚さは、好ましくは20μm以下であり、更に好ましくは5μm以下である。
(エミッタ部13)
エミッタ部を構成する誘電体としては、上述したように比誘電率が比較的高い(例えば、比誘電率が1000以上)の誘電体を採用することができる。以下、エミッタ部に好適な物質を列挙する。
(1)チタン酸バリウム、ジルコン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛等
(2)上記(1)に記載の物質のうちの任意の物質を組み合わせたものを含有するセラミックス
(3)上記(2)に記載のセラミックスに、更に、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル及びマンガン等の酸化物を添加したもの、上記(2)に記載のセラミックスにこれらの酸化物の任意の物質を組み合わせたものを添加したもの、又は、更に他の化合物を適切に添加したもの
(4)主成分が上記(1)に記載の物質を50%以上有する物質
なお、例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)とチタン酸鉛(PT)との2成分系nPMN−mPT(n,mをモル数比とする。)については、PMNのモル数比を大きくすることにより、キューリー点が低下し且つ室温での比誘電率を大きくすることができる。特に、n=0.85〜1.0及びm=1.0−nとしたnPMN−mPTは、比誘電率が3000以上となるので、エミッタ部の材料として非常に好ましい。例えば、n=0.91及びm=0.09のnPMN−mPTの室温における比誘電率は15000となり、n=0.95及びm=0.05のnPMN−mPTの室温における比誘電率は20000となる。
また、例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、チタン酸鉛(PT)及びジルコン酸鉛(PZ)の3成分系PMN−PT−PZについては、PMNのモル数比を大きくすることにより比誘電率を大きくすることができる。更に、この3成分系においては、正方晶と擬立方晶又は正方晶と菱面体晶のモルフォトロピック相境界(MPB:Morphotropic Phase Boundary)付近の組成とすることにより、比誘電率を大きくすることができる。
例えば、PMN:PT:PZ=0.375:0.375:0.25とすると比誘電率は5500、PMN:PT:PZ=0.5:0.375:0.125とすると比誘電率は4500となり、このような組成のPMN−PT−PZはエミッタ部の材料として特に好ましい。
更に、絶縁性が確保できる範囲内でこれらの誘電体に白金のような金属を混入することにより、誘電率を向上させることが好ましい。この場合、例えば、誘電体に白金を重量比で20%混入させるとよい。
エミッタ部には、更に、圧電/電歪層や反強誘電体層等を用いることができる。エミッタ部に圧電/電歪層を用いる場合、その圧電/電歪層として、例えば、ジルコン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、マグネシウムタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛等、又はこれらのいずれかの組み合わせを含有するセラミックスを挙げることができる。
当然、エミッタ部には、主成分が上記化合物を50重量%以上含有するものを使用することができる。また、前記セラミックスのうち、ジルコン酸鉛を含有するセラミックスは、エミッタ部を構成する圧電/電歪層の構成材料として最も頻繁に使用される。
また、圧電/電歪層をセラミックスにて構成する場合、前記セラミックスに、さらに、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン等の酸化物、もしくはこれらのいずれかの組み合わせ、又は他の化合物を、適宜、添加したセラミックスを用いてもよい。また、前記セラミックスにSiO2、CeO2、Pb5Ge3O11もしくはこれらのいずれかの組み合わせを添加したセラミックスを用いてもよい。具体的には、PT−PZ−PMN系圧電材料にSiO2を0.2wt%、もしくはCeO2を0.1wt%、もしくはPb5Ge3O11を1〜2wt%添加した材料が好ましい。
より具体的には、例えば、マグネシウムニオブ酸鉛とジルコン酸鉛及びチタン酸鉛とからなる成分を主成分とし、さらにランタンやストロンチウムを含有するセラミックスを用いることが好ましい。
圧電/電歪層は、緻密であっても、多孔質であってもよい。多孔質の場合、その気孔率は40%以下であることが好ましい。
エミッタ部13に反強誘電体層を用いる場合、その反強誘電体層としては、ジルコン酸鉛を主成分とするもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分を主成分とするもの、更には、ジルコン酸鉛に酸化ランタンを添加したもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分に対してジルコン酸鉛やニオブ酸鉛を添加したものが望ましい。
反強誘電体層は、多孔質であってもよい。多孔質の場合、その気孔率は30%以下であることが望ましい。
更に、タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム(SrBi2Ta2O9)は、分極反転疲労が小さいので、エミッタ部に適している。このような分極反転疲労が小さい材料は、層状強誘電体化合物で、(BiO2)2+(Am-1BmO3m+1)2-という一般式で表される。ここで、金属Aのイオンは、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Pb2+、Bi3+、La3+等であり、金属Bのイオンは、Ti4+、Ta5+、Nb5+等である。更に、チタン酸バリウム系、ジルコン酸鉛系、PZT系の圧電セラミックスに添加剤を加えて半導体化させることも可能である。この場合、エミッタ部13内で不均一な電界分布をもたせられるので、電子放出に寄与する上部電極との界面近傍に電界を集中させることができる。
また、圧電/電歪/反強誘電体セラミックスに、例えば鉛ホウケイ酸ガラス等のガラス成分や、他の低融点化合物(例えば酸化ビスマス等)を混ぜることによって、エミッタ部13の焼成温度を下げることができる。
また、エミッタ部を圧電/電歪/反強誘電体セラミックスで構成する場合、エミッタ部はシート状の成形体、シート状の積層体、又は、これらを他の支持用基板に積層又は接着したものから作成することができる。
また、エミッタ部に非鉛系の材料を使用すること等により、エミッタ部を融点もしくは蒸散温度の高い材料により形成すれば、電子もしくはイオンの衝突に対し損傷しにくいエミッタ部が得られる。
なお、エミッタ部は、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、電気泳動法、エアロゾルデポジション法等の各種厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、めっき等の各種薄膜形成法により形成することができる。特に、圧電/電歪材料を粉末化したものを、エミッタ部として形成し、これに低融点のガラスやゾル粒子を含浸させることにより、700℃或いは600℃以下といった低温で膜を形成することができる。
(上部電極14)
上部電極には焼成後に薄い膜が得られる有機金属ペースト(例えば、白金レジネートペースト等の材料)が使用される。また、上部電極の材料には、分極反転疲労を抑制する酸化物電極、或いは、分極反転疲労を抑制する酸化物電極を例えば白金レジネートペーストに混ぜた材料が好適である。分極反転疲労を抑制する酸化物電極としては、例えば、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化イリジウム(IrO2)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)、La1-xSrxCoO3(例えばx=0.3や0.5)、La1-xCaxMnO3(例えばx=0.2)、La1-xCaxMn1-yCoyO3(例えばx=0.2、y=0.05)等を挙げることができる。
また、上部電極に、鱗片状の物質(例えば黒鉛等)の集合体や、鱗片状の物質を含んだ導電性の物質の集合体を使用することが好適である。このような物質の集合体は、元来、鱗片と鱗片とが離間している部分を有しているので、焼成などの熱処理を経なくても、その部分を上部電極の上記微細貫通孔として使用することができる。更に、エミッタ部上に有機樹脂と金属薄膜とをこの順に層状に形成した後で焼成し、有機樹脂を燃焼させることにより金属薄膜に微細貫通孔を形成し、上部電極としてもよい。
上部電極は、上記材料を用い、スクリーン印刷、スプレー、コーティング、ディッピング、塗布、電気泳動法等の各種の厚膜形成法や、スパッタリング法、イオンビーム法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、めっき等の各種の薄膜形成法による通常の膜形成法により形成することができる。
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る電子放出装置は、不要な電子の放出が発生する可能性があるときにコレクタ電極をオフし、電子放出が必要な場合にコレクタ電極をオンとする。従って、この電子放出装置は、不要な電子放出を回避しながら、正規に放出された電子に十分なエネルギーを付与することができ、良好な画像を提供し得るディスプレイとなっている。また、仮に上部電極14とコレクタ電極18間がプラズマ状態となったとしても、コレクタ電極18を間欠的にオフとするので、プラズマ状態を消滅させることができる。この結果、プラズマ状態が継続してしまうことによる大発光の連続的発生を回避することができる。
また、集束電極を採用することにより、電子が上部電極から実質的に直上方向に放出されるから、上部電極とコレクタ電極との距離を大きくすることができる。この結果、上部電極とコレクタ電極との間の絶縁破壊を低減或いは回避することができる。更に、上部電極とコレクタ電極との間の絶縁破壊の可能性が低減するから、コレクタ電極18をオンしている期間中においてコレクタ電極18に付与する第1コレクタ電圧V1(Vc)を大きくすることができる。この結果、蛍光体に到達する電子に大きなエネルギーを付与することができるので、ディスプレイの輝度を向上することができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、図18に示したように、集束電極16は、平面視において互いにX軸方向において隣接する上部電極14の間のみだけでなく、Y軸方向において互いに隣接する上部電極14の間にも形成されていてもよい。
これによれば、ある素子の上部電極14から放出された電子はX軸方向において隣接する他の素子の上部電極14の上方にある蛍光体に到達しない。従って、色純度を良好に維持することができる。更に、この例では、Y軸方向において互いに隣接する二つの素子の各上部電極14の間にも集束電極16が形成されているので、ある上部電極14から放出された電子はY軸方向において隣接する上部電極14の上方にある蛍光体にも到達しない。この結果、画像パターンがにじむことを回避することができる。
更に、図19に示したように、電子放出装置は一つの略正方形の画素PX内に4つの素子(従って、4つの上部電極14である第1上部電極14−1,第2上部電極14−2,第3上部電極14−3,第4上部電極14−4)と、集束電極16とを備えていてもよい。この場合、例えば、第1上部電極14−1の直上には図示しない緑色蛍光体が配設され、第2上部電極14−2及び第4上部電極14−4の直上には図示しない赤色蛍光体が配設され、第3上部電極14−3の直上には図示しない青色蛍光体が配設される。集束電極16は、各上部電極14を取り囲むように各上部電極14の周囲に形成されている。これによれば、ある素子の上部電極14から放出された電子はその上部電極14の直上に配置された蛍光体のみに到達するから、色純度を良好に維持するとともに画像パターンのにじみを回避することができる。
更に、図20及び図21に示したように、本発明に係る電子放出装置30は、下部電極32、エミッタ部33及び上部電極34を備えてなる完全に独立した素子を基板11上に配列し、各素子の間を絶縁体35で満たし、且つ、その絶縁体35の上面であってX軸方向において互いに隣接する素子の各上部電極34の間に集束電極36を形成した構造を備えるものであってもよい。
このように構成された電子放出装置30は、各素子から独立したタイミングにて或いは同時に電子を放出することができる。従って、各素子の上部電極34の上部に独立したコレクタ電極を設けておき、コレクタ電圧付与回路は、各コレクタ電極に対応する素子の状態に応じて同各コレクタ電極をオン又はオフとするように構成されてもよい。
また、集束電極16に、時間経過とともに変化する電圧Vs(t)を付与できるように構成してもよい。この場合、例えば、発光期間Thよりも電荷蓄積期間Tdにおいて、大きさがより大きい負の電圧を集束電極16に付与し、電荷蓄積期間Tdにおける不要な電子放出をより確実に抑制してもよい。
更に、電荷蓄積期間Tdにおいて集束電極16をフローティング状態に維持し、発光期間Thにおいて集束電極16に所定の電位を付与してもよい。これによれば、集束電極16と上部電極14との間、或いは、集束電極16と下部電極12との間の容量結合によって生じる過渡的な電流の発生を回避できるので、無駄な電力消費を回避することができる。
また、基板11は、酸化アルミニウムを主成分とする材料、或いは、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムとの混合物を主成分とする材料から構成されていてもよい。
10…電子放出装置、11…基板、12…下部電極、13…エミッタ部、14…上部電極、14a…微細貫通孔、15…絶縁層、16…集束電極、17…透明板、18…コレクタ電極、19…蛍光体、19B…青色蛍光体、19R…赤色蛍光体、19G…緑色蛍光体、21…駆動電圧付与回路、22…集束電極電位付与回路、23…コレクタ電圧付与回路23a…抵抗、23b…スイッチング素子、23c…定電圧源、23d…スイッチ制御回路。