JP4666330B2 - 正内圧缶用の缶蓋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、缶内圧が高い正内圧缶(陽圧缶)に使用される缶蓋に関し、特に、簡易開口用の弱化部を備えた缶蓋(イージーオープンエンド)ではなく、例えば、ボトル型シームレス缶の胴部開口端に巻締固着される底蓋のような、パネル部に簡易開口用の弱化部が形成されていない缶蓋の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭酸飲料やビール等の発泡性飲料を内容物とする飲料缶、或いは、内容物の充填時に液体窒素を滴下した飲料缶のような缶内圧の高い正内圧缶(陽圧缶)では、缶容器の板厚をある程度まで薄くしても缶内圧により缶容器の形状を維持できるため、製缶の際の経済性や省資源の観点から、缶容器の板厚をできるだけ薄くして使用材料を減らすような努力が従来から図られており、缶容器の端板部となる缶蓋の部分についても同様な使用材料の削減が図られている。
【0003】
そのように缶蓋の使用材料を削減する場合、金属板の板厚を薄くすればその分だけ缶蓋の耐圧強度が低下するのに対して、そのような耐圧強度の低下を補うために、使用する金属板を高強度化する以外に、例えば、缶蓋のパネル部外周に形成される強化用の環状溝(缶内側に窪んだ環状溝)を深くすることでカウンターシンクデプス(フランジカール部の上面から環状溝の溝底までの深さ)やパネルハイト(環状溝の下端からパネル部の下面までの高さ)をそれぞれ大きくしたり、また、強化用の環状溝の底壁の曲率半径を小さくしたりする等、缶蓋の形状について耐圧性能を高くするための様々な工夫が従来から行われている(例えば、特開昭60−183353号公報,特開平2−192837号公報,実開平2−131931号公報,特開平3−275443号公報,特表平3−503140号公報等参照)。
【0004】
一方、缶蓋の主材料として使用する金属板については、従来、強度,耐食性,成形性の面からの観点から、AL−Mg系のJIS−5052,5082,5182等のアルミニウム合金板が一般的に用いられており、特にビールや炭酸飲料等を内容物とする内圧の高い飲料缶の缶蓋では、耐圧強度の観点から高強度のJIS−5182材が多く用いられているが、そのような缶蓋用のアルミニウム合金板は、圧延されていることで強度の異方性が大きくなっており、金属板の圧延方向(圧延方向に対して0°方向)やそれと直交する方向(圧延方向に対して90°方向)の強度に比べて、45°方向(圧延方向に対して45°方向)の強度が小さくなっている。これに対して、そのような缶蓋用のアルミニウム合金板を製造する段階で、強度の異方性をできるだけ少なくするような工夫が従来から行われている(例えば、特開平5−5149号公報,特開平9−256097号公報等参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ビールや炭酸飲料等を内容物とする内圧の高い飲料缶では、高い缶内圧により缶蓋の周辺部分が反転してパネル部が缶外方に膨出する所謂バックリングという現象が発生することがあり、JIS−5182材のような耐圧強度の高いアルミニウム合金板を使用して耐圧性の高い形状に缶蓋を成形しても、何らかの原因(例えば、夏場の自動車内のダッシュボードで飲料缶が異常な高温に曝される等)によって缶内圧が異常に高くなるとバックリングが発生することがあって、そのようなバックリングが発生する際には、金属板の強度異方性を少なくしている場合であっても、金属板の圧延方向に対して45°方向からバックリングが発生し易い傾向のあることには変わりはない。
【0006】
すなわち、異常に高くなった缶内圧が缶蓋に内側から作用すると、缶蓋中央のパネル部が徐々に外方に膨出することで、環状溝の外側壁とチャックウォール部からなるカウンターシンク壁が内方に徐々に撓み、パネル部の膨出量が限界に達すると、カウンターシンク壁が上方にめくれ上がるように一気に反転してパネル部が缶外方に大きく膨出するようにバックリングするが、そのようなバックリングの発生時に、缶蓋の周辺部分(チャックウォール部や環状溝やパネル部の外周部分)に起きる変形が、強度が小さく変形し易いライン、即ち、金属板の圧延方向と45°の角度で缶蓋の中心を通る仮想線の部分に集中して、図4(A)や図5(A)に示すように、強度が小さく変形し易いラインを山折りの屈曲線として缶外方に突出した角出し部10が缶蓋の周辺部分で瞬間的に形成される。
【0007】
そのように缶蓋の中心を通って圧延方向と45°の方向に延びる仮想線の部分に変形が集中して、該仮想線に沿って缶蓋の周辺部分に鋭く角出し部が形成される際に、カウンターシンク壁を上方にめくり上げる反転エネルギーが大きい場合には、即ち、カウンターシンク壁が上方にめくれ上がって反転する時の缶内圧が高い場合には、この角出し部によって引っ張られるような状態で、チャックウォール部に続く巻締部の缶蓋側(カバーフック)と缶胴側(ボディフック)の係合状態が引き延ばされ、遂には、図5(B)に示すように、巻締部が破壊されて缶蓋が缶胴から外れることで内容物が周囲に飛び散る所謂ブローオフと呼ばれる現象が起きることがある。
【0008】
そのような巻締部の破壊によるブローオフ現象は、特に、胴部が絞り・しごき加工等により薄く延ばされたシームレス缶で、材料合理化のために金属板を薄肉化した上に巻締部の幅(高さ方向での長さ)を通常よりも小さくした所謂ミディシームやミニシームと呼ばれる巻締部を持った缶容器の場合に起こり易く、また、ボトル型のシームレス缶に底蓋として使用されるようなパネル部に簡易開口用の弱化部が形成されていない缶蓋において起こり易いものである。すなわち、イージーオープンエンドと言われる簡易開口蓋の場合には、バックリングの発生により角出し部が形成されると、巻締部が破壊されるよりも前に、簡易開口のために形成された弱化部が先に破壊される虞があるからである。
【0009】
なお、既に述べたように、缶蓋の耐圧性(耐バックリング性)を高めるための形状(強化用の環状溝を深くする等)について従来から様々な工夫が行われているが、そのように耐圧性の高い形状としてバックリングが発生し難いようにすることで、一旦バックリングが発生した時には反転エネルギー(カウンターシンク壁を反転させるエネルギー)が大きなものとなってブローオフが起こり易くなり、一方、ブローオフが起き難いようにバックリング時の反転エネルギーが小さくなるような形状にすることは、簡単にバックリングが発生し易くなる(即ち、缶蓋の耐バックリング性を低下させる)ことでもあるから、両方のバランスをどのようにとるか適宜に考えることが必要である。
【0010】
しかしながら、必要な耐圧性(耐バックリング性)を確保できるようにした上で、バックリングが発生して角出し部が形成された時でも直ちにブローオフが起きないように缶蓋の形状を設定したとしても、最初のバックリングが発生した後で缶内圧が更に高くなり続けるような場合には、最初のバックリングにより形成された角出し部以外の箇所で新たな角出し部を形成するように2回目のバックリングを発生させない限り、高くなった缶内圧により最初のバックリングで形成された角出し部によって引っ張られる状態で、チャックウォール部に続く巻締部の係合状態が引き延ばされてブローオフが起きることになる。
【0011】
この点に関して、最初にバックリングが発生する場合、既に述べたように、缶蓋で強度が小さく変形し易いラインに沿って、即ち、金属板の圧延方向と45°の角度で缶蓋の中心を通る仮想線(対称的な2本の仮想線)の一方に沿って、缶蓋の周辺部分に一つの角出し部が形成されるのであるが、そのような角出し部の形成に連れて、この角出し部を頂点として中央のパネル部が膨出するように変形すると共に、角出し部で最も大きく変形し角出し部から離れる程変形の度合い徐々に小さくなるように、パネル部の外周で円周方向に延びる環状溝の深さが浅くなる(カウンターシンク壁がめくれる)ように変形することになる。
【0012】
そのような最初のバックリングによる角出し部を頂点とした環状溝の変形が、金属板の圧延方向と45°の角度で缶蓋の中心を通る仮想線の他方を横切る位置にまで延びることにより、本来はこの他方の仮想線(強度が小さく変形し易いライン)に沿って角出し部を形成するようにバックリングが発生し易いのに対して、最初のバックリングによる環状溝の変形がリブ効果として働くことで、他方の仮想線に沿って角出し部を形成するような2回目のバックリングの発生が抑制されることとなり、その結果、2回目のバックリングが発生し難くなることで、再び高くなった缶内圧により最初のバックリングで形成された角出し部に引っ張られる状態でブローオフが起きる虞がある。
【0013】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、缶内圧の高い正内圧缶用の缶蓋について、缶蓋の金属組成や巻締部の仕様を特に変更するようなことなく、必要な耐圧性が確保できる形状とした上で、缶内圧が異常に上昇してバックリングが発生しても、巻締部が破壊されて内容物を周囲に飛散させるようなブローオフ現象が起きることのないようにすることを課題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、略円板状のパネル部の外周に補強用の環状溝が形成され、下方に窪んだ環状溝の外縁に続いてチャックウォール部が外方に傾斜して立ち上がり、チャックウォール部の上端がフランジカール部の内縁曲壁部分に連なるように、板厚が0.20〜0.35mmに圧延されたアルミニウム系金属板を主材料として一体成形されて正内圧缶用の缶蓋において、フランジカール部の上面から環状溝の溝底までの深さが、パネル部の外径に対して0.11〜0.16の比率となり、パネル部の下面の高さでの環状溝の幅が、パネル部の下面から環状溝の溝底までの深さに対して0.85〜1.20の比率となり、環状溝の外側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径よりも、環状溝の内側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径の方が小さくなるように形成すると共に、補強用の環状溝と僅かに間隔を置いて、パネル部の周辺部分に補強用の環状ビードを形成することを特徴とするものである。
【0015】
上記のような構成の缶蓋によれば、最初のバックリングの発生により、金属板の圧延方向と45°の角度で缶蓋の中心を通る2本の仮想線の一方に沿って角出し部が形成される時に、その反転エネルギーによって直ちにブローオフを起こすようなことはない。また、その際、角出し部を頂点として缶蓋の中心を通るパネル部の傾斜角度、即ち、図5(A)中に符号θで示すような、角出し部の頂点と缶蓋の中心を通るラインに沿った断面でのパネル部の傾斜角度は、12〜18°の範囲となっており、角出し部を頂点としたカウンターシンク壁のめくれによる環状溝の変形は、上方から見て、金属板の圧延方向と45°の角度で缶蓋の中心を通る2本の仮想線の他方を横切る位置にまで延びることはない。
【0016】
そのため、最初のバックリングが発生した後で缶内圧が更に高くなっても、最初のバックリングでの缶蓋の変形によるリブ効果に抑制されるようなことなく、金属板の圧延方向と45°の角度で缶蓋の中心を通る2本の仮想線の他方に沿って角出し部を形成するように、2回目のバックリングが容易に発生することから、この2回目のバックリングによる缶内ヘッドスペースの容積拡大により缶内圧が低下することで、最初のバックリングで形成された角出し部に引っ張られる状態で巻締部が破壊されてブローオフが起きることはない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の正内圧缶用の缶蓋の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の缶蓋の一実施形態について、図1は、巻締め前の缶蓋全体の上面形状を示し、図2は、巻締め前の缶蓋のパネル部からフランジカール部までの部分の断面形状を示し、図3は、最初のバックリングにより変形した巻締め後の缶蓋の上面形状を示すものである。また、図4は、(A)最初のバックリングと(B)2回目以降のバックリングの状態をそれぞれ示し、図5は、(A)バックリングと(B)ブローオフの状態をそれぞれ示し、図6は、比較例となる各缶蓋(A),(B),(C)の周辺部分の断面形状を示すものである。
【0018】
本実施形態の缶蓋は、例えば、口頸部と肩部と胴部が一体成形されたボトル型シームレス缶のように、炭酸飲料やビール等を内容物とする正内圧缶(陽圧缶)で、絞り・しごき加工等により薄く延ばされた胴部を有する缶体に対して、その胴部開口端に底蓋(イージーオープンエンドではない缶端板部)として巻締固着されるものであり、従来から知られた成形金型によるプレス成形によって缶蓋用の金属板材から一体成形されるものである。
【0019】
缶蓋の素材として使用される金属板材は、板厚が0.20〜0.35mmに圧延されたアルミニウムやアルミニウム合金(5052材や5182材等)の金属板を主材料として、その少なくとも一方の面(缶内面側)に樹脂塗料の塗装や熱可塑性樹脂フィルムのラミネートによる保護被膜を施したような、製缶分野で従来から一般的に使用されている缶蓋用のアルミニウム系金属板材である。
【0020】
そのような金属板材から一体成形されている缶蓋では、図1および図2に示すように、缶蓋1の中央部分である略円板状のパネル部2の外周に、下方(缶内側)に窪むように補強用の環状溝3が形成され、環状溝3と僅かに間隔を置いたパネル部2の周辺部分に補強用の環状ビード2aが形成され、環状溝3の外側壁3aから連続してチャックウォール部4が外方に傾斜して立ち上がり、チャックウォール部4の上端は曲壁部分を介してフランジカール部5に連なっている。
【0021】
そのような形状を備えた缶蓋1は、図示していないが、フランジカール部5の裏面側に有機高分子製のシール剤が塗布されてから、缶体(缶本体)の胴部開口端に形成されたフランジ部の上にフランジカール部5が載置されて、缶体のフランジ部とフランジカール部5が二重巻締めされることとなる。
【0022】
ところで、上記のような缶蓋1では、圧延金属板を材料として一体成形されていることから、強度の異方性が大きくなっており、図1に示すように、金属板の圧延方向(圧延方向に対して0°方向)Yやそれと直交する方向(圧延方向に対して90°方向)Xの強度に比べて、圧延方向に対して45°の方向の強度が小さくなっていて、特に、金属板の圧延方向Yと45°の角度で缶蓋の中心Oを通る2本の仮想線L1,L2の部分が、最も強度が小さく変形し易いラインとなっている。
【0023】
そのため、この缶蓋1を缶の端板部(底蓋)として使用した場合、缶内圧が異常に高くなることで環状溝の外側壁とチャックウォール部によるカウンターシンク壁が上方にめくれ上がるように反転してパネル部が缶外方に大きく膨出するようにバックリングが発生する際に、缶蓋の周辺部分(チャックウォール部や環状溝やパネル部の外周部分)に起きる変形が、強度が小さく変形し易いライン、即ち、金属板の圧延方向と45°の角度で缶蓋の中心Oを通る2本の仮想線L1,L2の何れかに集中して、図3および図4(A)に示すように、先ず、缶蓋1の周辺部分の一箇所で、強度が小さく変形し易いラインの何れか(図3に示したものでは仮想線L1のライン)を山折りの屈曲線として缶外方に突出した角出し部10が瞬間的に形成される。
【0024】
そのように最初にバックリングが発生して、金属板の圧延方向と45°の方向に延びる仮想線L1,L2の何れかに沿って缶蓋の周辺部分の一箇所に鋭く角出し部10が形成される際に、従来の缶蓋では、既に図4(A),(B)によって説明したように、カウンターシンク壁(環状溝の外側壁とチャックウォール部)を上方にめくり上げる反転エネルギーが大きい場合には、角出し部の形成に連れて角出し部に引っ張られる状態でブローオフが起きることがある。
【0025】
また、最初のバックリング発生時にはブローオフが起きなくても、その後で缶内圧が更に高くなった時に、最初のバックリングによる角出し部を頂点としたカウンターシンク壁のめくれによる環状溝の変形が、金属板の圧延方向と45°の角度で缶蓋の中心Oを通る他方の仮想線L2を横切る位置にまで延びて、そのような缶蓋の変形がリブ効果として働くことで、他方の仮想線L2に沿って角出し部を形成するような2回目のバックリングの発生が抑制され、その結果、2回目のバックリングが発生しないことで、最初のバックリングで形成された角出し部によって引っ張られる状態でブローオフが起きることがある。
【0026】
これに対して、本実施形態の缶蓋1では、図2に示すように、カウンターシンクデプスC(フランジカール部5の上面から環状溝3の溝底までの深さ)が、パネル部2の外径PDに対して0.11〜0.16の比率となり、且つ、パネル部2の下面の高さでの環状溝3の幅Bが、パネル部2の下面から環状溝3の溝底までの深さHに対して0.85〜1.20の比率となるように形成されていると共に、環状溝3の外側壁3aから底壁3bに続く屈曲部の曲率半径R1よりも、環状溝3の内側壁3cから底壁3bに続く屈曲部の曲率半径R2の方が小さくなるように形成されている。
【0027】
なお、パネル部2の外径PDに対してカウンターシンクデプスCの比率が大きくなる程、最初のバックリングが発生した時に、反転エネルギーが大きくなって直ちにブローオフが起き易くなるため、少なくとも、パネル部2の外径PDに対するカウンターシンクデプスCの比率は0.16以下としておくことが必要である。すなわち、バックリング時の反転エネルギーの大きさについては、環状溝3の断面形状も関係するため、それだけでは充分とは言えないが、必要条件の一つではある。
【0028】
しかしながら、パネル部PDの外径に対するカウンターシンクデプスCの比率を小さく(浅く)し過ぎた場合には、缶の落下等による衝撃でバルジ変形(膨出変形)が起きると、巻締部よりも外方にパネル部が膨出して、巻締部を接地させた正置姿勢では安定しなくなるという問題を生じ易くなる。そのため、本実施形態の缶蓋1では、ブローオフの防止とバルジ変形の両方の観点から、パネル部2の外径PDに対するカウンターシンクデプスCの比率を0.11〜0.16としている。
【0029】
そのような本実施形態の缶蓋1では、最初にバックリングが発生した時に、図3に示すように、金属板の圧延方向と45°の角度で缶蓋の中心Oを通る一方の仮想線L1に沿って角出し部10を形成するように缶蓋が変形する(カウンターシンク壁がめくれ上げる)が、そのときの角出し部10を頂点とする環状溝3の変形は、上方から見て、金属板の圧延方向と45°の角度で缶蓋の中心Oを通る他方の仮想線L2を横切る位置にまで延びるようなことはない。なお、この最初にバックリングにより形成される角出し部10を頂点として缶蓋の中心Oを通るパネル部2の傾斜角度(ラインL1に沿った断面でのパネル部2の傾斜角度)、即ち、図5(A)中に符号θで示す角度に相当する角度は、12〜18°の範囲となっている。
【0030】
上記のような本実施形態の缶蓋1によれば、一般的に必要な耐圧性(保証耐圧である617kPaの缶内圧ではバックリングを発生させないような耐バックリング性)を充分に確保することができると共に、最初にバックリングが発生した時に、反転エネルギーが大きくなり過ぎるようなことがなく、角出し部の形成に連れて直ちにブローオフが起きるのを回避することができる。
【0031】
また、その後で缶内圧が高くなっても、最初にバックリングでの缶蓋の変形によるリブ効果によって2回目のバックリングの発生が抑制されるというようなことはなく、2回目のバックリングを容易に発生させることができ、そのように2回目のバックリングを容易に発生させることで、ヘッドスペースの容積を拡大して、巻締部の係合部に作用する引張応力の分散化を図ることができて、最初のバックリングで形成された角出し部により引っ張られる状態でブローオフが起きるのを回避することができる。
【0032】
上記のような本実施形態の缶蓋について、5182−H39アルミニウム合金材で、板厚が0.31mm、カール外径(巻締前の缶蓋の直径)が68.3mm、チャックウォール部の傾斜角が13°、環状ビードの高さが0.5mmであるという点では共通するが、以下のような点で形状が異なる実施例と各比較例の缶蓋を使用して、何れも、3004−H191アルミニウム合金材による450mlボトル型缶の缶胴の開口端部(缶胴フランジ壁の板厚が0.20mm)に対して、缶蓋を底蓋として巻締部の幅(高さ方向での長さ)が2.75mm(ミディシーム)となるように二重巻締した缶容器により、以下のようなブローオフ試験と耐圧試験をそれぞれ行って、その結果を比較検討した。
【0033】
なお、以下に示す実施例と各比較例の缶蓋の各部分の寸法については、何れも、カウンターシンクデプス(フランジカール部の上面から環状溝の溝底までの深さ)をC、パネル部の外径をPD、パネルハイト(環状溝の底壁の下端からパネル部の下面までの高さ)をPH、パネル部の下面の高さでの環状溝の幅をB、パネル部の下面から環状溝の溝底までの深さ(測り易いパネルハイトPHを実測して、それから板厚分をマイナスする)をHとして示している。
【0034】
〔実施例〕
図2に示した形状のものであり、Cが6.85mm、PDが54.6mm(カウンターシンクデプスとパネル部の外径の比率C/PDは約0.13)、PHが2.48mm、環状溝における幅と深さの比率B/Hが0.89であって、環状溝の外側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径R1が0.55mm、環状溝の内側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径R2が0.40mm、環状溝の底壁(上面側)の曲率半径R3が1.20mmとなっている缶蓋。
【0035】
〔比較例1〕
図6(A)に示した形状のものであり、Cが6.90mm、PDが55.6mm(カウンターシンクデプスとパネル部の外径の比率C/PDは約0.12)、PHが2.28mm、環状溝の幅と深さの比率B/Hが0.72であって、環状溝の外側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径(R1)が0.35mm、環状溝の内側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径(R2)が0.55mm(両方の屈曲部が直接連続して底壁はない)となっている缶蓋。
【0036】
〔比較例2〕
図6(B)に示した形状のものであり、Cが6.85mm、PDが55.1mm(カウンターシンクデプスとパネル部の外径の比率C/PDは約0.12)、PHが2.35mm、環状溝の幅と深さの比率B/Hが0.80であって、環状溝の外側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径(R1)が0.45mm、環状溝の内側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径(R2)が0.45mm、環状溝の底壁(上面側)の曲率半径(R3)が0.90mmとなっている缶蓋。
【0037】
〔比較例3〕
図6(C)に示した形状のものであり、Cが6.85mm、PDが53.1mm(カウンターシンクデプスとパネル部の外径の比率C/PDは約0.13)、PHが2.45mm、環状溝の幅と深さの比率B/Hが1.26であって、環状溝の外側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径(R1)が0.55mm、環状溝の内側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径(R2)が0.40mm、環状溝の底壁(上面側)の曲率半径(R3)が2.90mmとなっている缶蓋。
【0038】
ブローオフ試験
コーラを内容物として液温が21℃で缶内圧が333〜363kPa(3.4〜3.7kgf/cm2 )となるように缶容器に充填してキャッピングし、60℃の恒温室で6時間かけていく間の缶蓋のバックリング状況と、巻締部の外れ状況について目視で観察した。なお、缶蓋のバックリング状況については、最初のバックリング状況と、最初にバックリングした後の変化する様子を観察した。実施例と各比較例1〜3のサンプルは何れも10個ずつである。
【0039】
耐圧試験
空の缶容器の口部側を切り落とし、圧力テスターにテスト缶をクランプセットし、バックリングするまでエアーで加圧し、最初のバックリングが発生して角出し部が形成される時の圧力を調べた。なお、最初のバックリングでブローオフしたものについては、その直前の内圧を測定した。実施例と各比較例1〜3の何れも10個ずつのサンプルの平均値を取った。圧力は、触圧内圧計で測定しガス圧測定器との差圧を換算している。
【0040】
上記のブローオフ試験と耐圧試験の結果については、以下の表1に示す通りである。
【0041】
【表1】
【0042】
上記の表1に示した結果から見ると、実施例と各比較例1〜3については、何れも、カウンターシンクデプスとパネル部の外径の比率C/PDが0.11〜0.16の範囲にあるものの、比較例1では、高い缶内圧(804kPa)になるまで最初のバックリングが発生せず、最初のバックリング時に、反転エネルギーが大きいために殆どのものでブローオフが起きており、僅かにブローオフしなかったもの(1個)についても、その後の缶内圧の上昇により、2回目のバックリングを発生させることなく、最初のバックリングによる角出し部の近傍からブローオフが起きている。
【0043】
また、比較例2では、比較的高い缶内圧(775kPa)になるまで最初のバックリングが発生せず、最初のバックリング時に、比較的反転エネルギーが大きいために半数近く(10個のうちの4個)でブローオフが起きている。なお、最初のバックリング時にブローオフしなかったものについては、その後で缶内圧が高くなっても、2回目のバックリングが全周に発生していることで、ブローオフは起きていない。
【0044】
また、比較例3では、全てのサンプルにおいて、最初のバックリング時にブローオフは起きず、また、その後で缶内圧が高くなっても、2回目のバックリングが全周に発生して、ブローオフは全く起きていないものの、最初のバックリング時には、一般的に必要とされている保証耐圧である617kPa(6.3kgf/cm2 )以下の低い缶内圧(615kPa)でバックリングが発生していることから、充分な耐圧性は確保されていない。
【0045】
これに対して、実施例の缶蓋によれば、一般的に必要とされている保証耐圧の617kPa(6.3kgf/cm2 )を越えた缶内圧(735kPa)で最初のバックリングが発生していることから、充分な耐圧性は確保されており、しかも、最初のバックリング時にはブローオフが全く起きておらず、さらに、その後で缶内圧が高くなっても、全てのサンプルで2回目のバックリングが全周(4点乃至5点で角出し)に発生して、ブローオフは全く起きていない。
【0046】
なお、実施例の缶蓋では、環状溝の外側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径R1よりも、環状溝の内側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径R2の方が小さくなるように形成されていることで、バックリング時の反転エネルギーが大きくなり過ぎるのを防ぐことができ、しかも、シーマー(缶蓋巻締機)により缶蓋を缶本体に巻締固着する工程において、スタッカーから積み重ねられた缶蓋をセパレーターナイフとセパレーターロールにより一枚ずつ取り出して供給する所謂蓋切りが行われる際に、缶蓋同士のシャッフル性(積み重ねられた缶蓋同士の横ずれによる蓋切れ、流れ性)を良好なものとすることができる。
【0047】
以上、本発明の缶蓋の一実施形態について説明したが、本発明は、上記のような実施形態にのみ限定されるものではなく、例えば、缶蓋のパネル部に上方に突出して形成した補強用の環状ビードについては、下方に突出して形成しても良く、また、その補強用の環状ビードの凹凸を使ってアルコール飲料かノンアルコール飲料かを識別させるような内容物識別機能を持たせるようにしても良く、また、環状溝の底壁については、実施例に示したような曲率半径の曲面に限られるものではなく、実質的に平坦な形状であっても良い等、適宜設計変更可能なものであることは言うまでもない。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の缶蓋によれば、缶蓋の材料や巻締部の仕様を特に変更することなく、缶蓋に必要な耐圧性を確保した上で、缶内圧が異常に上昇して最初のバックリングが発生しても、巻締部が破壊されて内容物を周囲に飛散させるようなブローオフ現象が起きるのを防止することができると共に、最初のバックリングが発生した後で更に缶内圧が上昇しても、最初のバックリングの際の缶蓋の変形によるリブ効果により抑制されることなく、2回目のバックリングを容易に発生させることができて、最初のバックリングによる角出し部の近傍でブローオフ現象が起きるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る巻締め前の缶蓋の全体を示す上面図。
【図2】本発明の缶蓋の一実施形態について、巻締め前の缶蓋のパネル部からフランジカール部までの部分を示す縦断面図。
【図3】本発明の缶蓋の一実施形態について、巻締め後の缶蓋の最初のバックリングにより変形した状態を示す上面図。
【図4】缶蓋のバックリングについて、(A)一箇所の角出しにより最初にバックリングした状態と(B)全周の角出しにより2回目にバックリングした状態をそれぞれ示す斜視図。
【図5】缶蓋がバックリングしてからブローオフする状態について、(A)バックリングした状態を示す縦断面図、および(B)ブローオフした状態を示す側面図。
【図6】比較例となる各缶蓋(A),(B),(C)について、缶蓋の周辺部分の形状を示す断面説明図。
【符号の説明】
1 缶蓋
2 パネル部
2a 環状ビード
3 環状溝
4 チャックウォール部
5 フランジカール部
C フランジカール部の上面から環状溝の溝底までの深さ
B パネル部の下面の高さでの環状溝の幅
H パネル部の下面から環状溝の溝底までの深さ
PD パネル部の外径
R1 環状溝の外側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径
R2 環状溝の内側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径
Claims (1)
- 略円板状のパネル部の外周に補強用の環状溝が形成され、下方に窪んだ環状溝の外縁に続いてチャックウォール部が外方に傾斜して立ち上がり、チャックウォール部の上端がフランジカール部の内縁曲壁部分に連なるように、板厚が0.20〜0.35mmに圧延されたアルミニウム系金属板を主材料として一体成形されている正内圧缶用の缶蓋において、フランジカール部の上面から環状溝の溝底までの深さが、パネル部の外径に対して0.11〜0.16の比率となり、パネル部の下面の高さでの環状溝の幅が、パネル部の下面から環状溝の溝底までの深さに対して0.85〜1.20の比率となり、環状溝の外側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径よりも、環状溝の内側壁から底壁に続く屈曲部の曲率半径の方が小さくなるように形成されていると共に、補強用の環状溝と僅かに間隔を置いて、パネル部の周辺部分に補強用の環状ビードが形成されていることを特徴とする正内圧缶用の缶蓋。
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