本発明のインクジェットヘッドの製造方法は、インク吐出口に連通する圧力室を有する流路ユニットと、圧電層、圧電層の一表面に前記圧力室に対応して形成された個別電極、及び、圧電層を挟んで個別電極と対向するように形成された共通電極を有し、圧力室内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータと、基材、基材の表面に形成され、個別電極及び共通電極に接続された配線、及び、基材の表面に実装され、配線を介して個別電極に駆動電圧を付与するとともに共通電極を所定の基準電圧に保持するドライバICを有する配線部材とを備えたインクジェットヘッドの製造方法である。そして、短手方向の両端部付近に長手方向に沿って所定の間隔で複数の搬送用のスプロケット穴が形成されたTABテープの表面に、スプロケット穴と所定の位置関係になるように配線を形成する配線形成工程と、TABテープの表面に、配線と所定の位置関係にあるスプロケット穴と所定の位置関係になるようにドライバICを実装するドライバIC実装工程と、TABテープから、スプロケット穴を含むように配線及びドライバICが配置された部分を切り出し、配線部材を形成する切り出し工程と、配線部材のスプロケット穴の位置に基づいて配線部材の圧電アクチュエータに対する位置決めを行い、配線部材を圧電アクチュエータに取り付ける取り付け工程とを備えている。
これによると、配線及びドライバICと所定の位置関係にあるTABテープのスプロケット穴の位置に基づいて配線部材の圧電アクチュエータに対する位置決めを行っているので、配線部材を圧電アクチュエータに正確に取り付けることができる。また、TABテープからスプロケット穴を含むように配線部材を切り出し、スプロケット穴を位置決め用の穴として用いているので、別途位置決め用の穴を形成する工程が必要なく製造工程が簡略化される。
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法においては、取り付け工程の後に、配線部材のスプロケット穴が形成された部分を切り取る切り取り工程をさらに備えていてもよい。これによると、配線部材を圧電アクチュエータに取り付けた後、配線部材のスプロケット穴が形成された部分を切り取ることにより配線部材を小型化することができる。
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法においては、ドライバIC実装工程において、ドライバICと、TABテープの長手方向に関して同じ位置にある2つのスプロケット穴とが、TABテープの短手方向に関して、一直線上に並ぶようにドライバICを実装し、切り出し工程において、2つのスプロケット穴を含むように、TABテープから配線及びドライバICが配置された部分を切り出してもよい。これによると、ドライバICが配置されていることにより、配線部材のスプロケット穴が形成された部分周辺の剛性が高くなるため、配線部材を圧電アクチュエータに取り付ける際などに、配線部材のスプロケット穴が形成された部分が破損してしまうのを防止することができる。また、配線部材の所定の取り付け位置に対する微妙な位置合わせが容易にできる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッドについて説明する。図1に、本実施の形態に係るインクジェットヘッド2を含むプリンタ1を示す。図1に示すプリンタ1は、平面視において図1紙面と直交する方向に細長い矩形である4つの固定されたインクジェットヘッド2を有するラインヘッド型カラーインクジェットプリンタである。プリンタ1には、図中下方に給紙装置114が、図中上方に紙受け部116が、図中中央部に搬送ユニット120がそれぞれ設けられている。さらに、プリンタ1には、これらの動作を制御する制御部100が備えられている。
給紙装置114は、積層された複数の矩形印刷用紙(被記録媒体)Pを収容可能な用紙収容部115と、用紙収容部115内において最も上にある印刷用紙Pを1枚ずつ搬送ユニット120に向けて送り出す給紙ローラ145とを有している。用紙収容部115内には、印刷用紙Pがその長辺と平行な方向に給紙されるように収容されている。用紙収容部115と搬送ユニット120との間には、搬送経路に沿って、二対の送りローラ118a、118b;119a、119bが配置されている。給紙装置114から排出された印刷用紙Pは、その一方の短辺を先端として、送りローラ118a、118bによって図1中上方へ送られ、その後送りローラ119a、119bによって搬送ユニット120に向けて左方へと送られる。
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と、搬送ベルト111が巻き掛けられた2つのベルトローラ106、107とを備えている。搬送ベルト111の長さは、2つのベルトローラ106、107間に巻き掛けられた搬送ベルト111に所定の張力が発生するような長さに調整されている。2つのベルトローラ106、107に巻き掛けられることによって、搬送ベルト111には、ベルトローラ106、107の共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面が形成されている。これら2つの平面のうちインクジェットヘッド2と対向する方が印刷用紙Pの搬送面127となる。給紙装置114から送り出された印刷用紙Pは、その上面(印刷面)にインクジェットヘッド2によって印刷が施されつつ搬送ベルト111によって形成された搬送面127上を搬送されて、紙受け部116に到達する。紙受け部116では、印刷が施された複数の印刷用紙Pが重なり合うように載置される。
4つのインクジェットヘッド2は、それぞれ、その下端にヘッド本体13を有している。ヘッド本体13は、後述するように、ノズル(インク吐出口)8に連通した圧力室10を含む個別インク流路32が多数形成された流路ユニット4に、多数の圧力室10のうち、所望の圧力室10内のインクに圧力を与えることができる4つの圧電アクチュエータ21が接着剤を介して貼り合わされたものである(図2及び図4参照)。そして、各圧電アクチュエータ21には、これに印刷信号を供給するCOF(Chip On Film、配線部材)50(図2及び図5参照)が貼り合わされている。
ヘッド本体13は、平面視において図1紙面と直交する方向に細長い直方体形状を有している(図2参照)。4つのヘッド本体13は、図1紙面における左右方向に沿って互いに近接配置されている。4つのヘッド本体13の各底面(インク吐出面)には、微小径を有する多数のノズル8が設けられている(図3参照)。ノズル8から吐出されるインク色は、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれかであって、1つのヘッド本体13に属する多数のノズル8から吐出されるインク色は同じである。なおかつ、4つのヘッド本体13に属する多数のインク吐出口からは、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色から選択された互いに異なる色のインクが吐出される。
ヘッド本体13の底面と搬送ベルト111の搬送面127との間には、僅かな隙間が形成されている。印刷用紙Pは、この隙間が作る搬送経路に沿って図1中右から左へと搬送される。4つのヘッド本体13の下方を印刷用紙Pが順次通過する際、印刷用紙Pの上面に向けてノズル8からインクが画像データに応じて吐出されることで、印刷用紙P上に所望のカラー画像が形成される。
2つのベルトローラ106、107は、搬送ベルト111の内周面111bと接している。搬送ユニット120の2つのベルトローラ106、107のうち、搬送経路の下流側に位置するベルトローラ106は、搬送モータ174と接続されている。搬送モータ174は、制御部100の制御に基づいて回転駆動される。他方のベルトローラ107は、ベルトローラ106の回転に伴って搬送ベルト111から付与される回転力によって回転する従動ローラである。
ベルトローラ107の近傍にはニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、搬送ユニット120に供給された印刷用紙Pを搬送面127に押し付けることができるように、図示しないばねによって下方に付勢されている。そしてニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111と共に印刷用紙Pを挟み込む。本実施の形態では、搬送ベルト111の外周面には粘着性のシリコンゴムによる処理が施されており、印刷用紙Pは搬送面127に確実に粘着させられる。
搬送ユニット120の図1中左方には剥離プレート140が設けられている。剥離プレート140は、その右端が印刷用紙Pと搬送ベルト111との間に入り込むことによって、搬送ベルト111の搬送面127に粘着させられている印刷用紙Pを搬送面127から剥離する。
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、二対の送りローラ121a、121b及び122a、122bが配置されている。搬送ユニット120から排出された印刷用紙Pは、その一方の短辺を先端として、送りローラ121a、121bによって図1中上方へ送られ、送りローラ122a、122bによって紙受け部116へ送られる。
ニップローラ138と最も上流側にあるインクジェットヘッド2との間には、搬送経路上における印刷用紙Pの先端位置を検出するために、発光素子と受光素子とから構成される光学センサである紙面センサ133が配置されている。
次に、ヘッド本体13の詳細について説明する。図2は、図1に示したヘッド本体13の平面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれたブロックの拡大平面図である。ただし、図面をわかりやすくするため、図2においては、COF50を、二点鎖線により描いているとともに、COF50の下方にあって破線で描くべき圧電アクチュエータ21を実線により描いている。また、図3においては、圧電アクチュエータ21を二点鎖線で描いているとともに、圧電アクチュエータ21の下方にあって破線で描くべき圧力室10(圧力室群9)、アパーチャ12を実線で描いている。図2及び図3に示すように、ヘッド本体13は、4つの圧力室群9を構成する多数の圧力室10及び各圧力室10に連通した多数のノズル8が形成された流路ユニット4を有している。流路ユニット4の上面には、千鳥状になって2列に配列された4つの台形の圧電アクチュエータ21が接着されている。より詳細には、各圧電アクチュエータ21は、その平行対向辺(上辺及び下辺)が流路ユニット4の長手方向に沿うように配置されている。また、隣接する圧電アクチュエータ21の斜辺同士が、流路ユニット4の幅方向にオーバーラップしている。
圧電アクチュエータ21の接着領域に対向した流路ユニット4の下面は、インク吐出領域となっている。図3に示すように、インク吐出領域の表面には、多数のノズル8が規則的に配列されている。流路ユニット4の上面には、多数の圧力室10がマトリックス状に配列されており、流路ユニット4の上面において1つの圧電アクチュエータ21に対向した領域内に存在する複数の圧力室10が、1つの圧力室群9を構成している。後述するように、各圧力室10には、圧電アクチュエータ21に形成された1つの個別電極35が対向している。本実施の形態では、等間隔に流路ユニット4の長手方向に並ぶ圧力室10の列が、短手方向に互いに平行に16列配列されている。各圧力室列に含まれる圧力室10の数は、圧電アクチュエータ21の外形形状に対応して、その長辺側から短辺側に向かって次第に少なくなるように配置されている。ノズル8も、これと同様の配置がされている。そして、全体として、600dpiの解像度で画像形成が可能となっている。
流路ユニット4内には、共通インク室であるマニホールド流路5及びその分岐流路である副マニホールド流路5aが形成されている。マニホールド流路5は、圧電アクチュエータ21の斜辺に沿うように延在しており、流路ユニット4の長手方向と交差して配置されている。流路ユニット4の中央部では、1つのマニホールド流路5が、隣接する圧電アクチュエータ21に共有されており、副マニホールド5aがマニホールド流路5の両側から分岐している。1つのインク吐出領域には、流路ユニット4の長手方向に延在した4本の副マニホールド流路5aが対向している。また、マニホールド流路5には、流路ユニット4の上面に設けられているインク流入口5bからインクが供給される。
各ノズル8は、平面形状がほぼ菱形の圧力室10及びアパーチャ12を介して副マニホールド流路5aと連通している。流路ユニット4の長手方向に延在する互いに隣接した4つのノズル列に含まれるノズル8は、同じ副マニホールド流路5aに連通している。流路ユニット4の内部では、このように副マニホールド流路5aの出口から圧力室10を介して対応するノズル8に至る複数の個別インク流路32が形成されている。
流路ユニット4に形成された多数のノズル8は、これら全てのノズル8を流路ユニット4の長手方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に延びた仮想線上にこの仮想線と直交する方向から射影した射影点が、600dpiで等間隔に並ぶような位置に形成されている。
ヘッド本体13の断面構造について説明する。図4は、図3のIV−IV線における断面図である。図4に示すように、ヘッド本体13は、流路ユニット4と圧電アクチュエータ21とが貼り合わされたものである。そして、流路ユニット4は、上から、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、マニホールドプレート26、27、28、カバープレート29及びノズルプレート30が積層された積層構造を有している。流路ユニット4の内部には、外部から供給されたインクがインク滴として吐出されるノズル8までのインク流路が形成されている。インク流路としては、インクを一時的に貯留するマニホールド流路5や副マニホールド5a、さらには副マニホールド5aの出口からノズル8に至る個別インク流路32等が含まれている。各プレート22〜30には、このインク流路の構成要素となる凹部や孔がそれぞれ形成されている。
キャビティプレート22は、圧力室10となるほぼ菱形の孔が多数形成された金属プレートである。ベースプレート23は、各圧力室10とこれに対応するアパーチャ12とを連通させるための連通孔及び各圧力室10とこれに対応するノズル8とを連通させるための連通孔が多数形成された金属プレートである。アパーチャプレート24は、各アパーチャ12となる孔及び各圧力室10とこれに対応するノズル8とを連通させるための連通孔が多数形成された金属プレートである。サプライプレート25は、各アパーチャ12と副マニホールド流路5aとを連通させるための連通孔及び各圧力室10とこれに対応するノズル8とを連通させるための連通孔が多数形成された金属プレートである。マニホールドプレート26、27、28は、副マニホールド流路5aとなる孔及び各圧力室10とこれに対応するノズル8とを連通させるための多数の連通孔が形成された金属プレートである。カバープレート29は、各圧力室10とこれに対応するノズル8とを連通させるための連通孔が多数形成された金属プレートである。ノズルプレート30は、ノズル8が多数形成された金属プレートである。これら9枚の金属プレートは、個別インク流路32が形成されるように、互いに位置合わせして積層されている。
図5に示すように、圧電アクチュエータ21は、4枚の圧電層41、42、43、44が積層された積層構造を有している。これら圧電層41〜44は、すべて厚みが15μm程度であり、圧電アクチュエータ21の厚さは60μm程度となっている。いずれの圧電層41〜44も、ヘッド本体13内の1つのインク吐出領域内に形成された多数の圧力室10に跨って配置されるように連続した層状の平板(連続平板層)となっている。圧電層41〜44は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなるものである。
最上層の圧電層41上には、厚みが1μm程度の個別電極35が形成されている。個別電極35及び後述する共通電極34は、共に、例えば金属などの導電材料を含む導電性ペーストを印刷法を用いて形成したものである。個別電極35はほぼ菱形の平面形状を有しており、圧力室10に対向するように且つ平面視において大部分が圧力室10内に収まるように形成されている。したがって、図3に示すように、最上層の圧電層41上には、そのほぼ全域にわたって多数の個別電極35が規則的に二次元配列されている。本実施の形態では、個別電極35が圧電アクチュエータ21の表面だけに形成されているので、最外層である圧電層41だけが外部電界により圧電歪を生じる活性領域を含むことになる。そのため、圧電アクチュエータ21はユニモルフ変形を起こすアクチュエータとなりその変形効率が優れたものとなる。
個別電極35の一方の鋭角部は、キャビティプレート22において圧電アクチュエータ21と接着されてこれを支持している桁部(キャビティプレート22において圧力室10が形成されていない部分)22a上にまで延出されている。そして、その延出部の先端近傍上にはランド(接続部材)36が形成されている。ランド36は平面視で略円形であり、その厚みが15μm程度になっている。ランド36は、個別電極35及び共通電極34と同様の導電性ペーストを印刷法を用いて形成したもので、個別電極35とランド36とは、電気的に接続されている。
最上層の圧電層41とその下側の圧電層42との間には、シートのほぼ全面に形成された厚み2μm程度の共通電極34が介在している。これにより、圧電層41は、圧力室10に対向する部分において、個別電極35及び共通電極34の一対の電極によって挟まれる。このように、1つの積層構造体の中には、図5に示すような構造が圧力室10毎に作り込まれており、これにより、圧電アクチュエータ21が構成されている。なお、圧電層42と圧電層43の間に、電極は配置されていない。
多数の個別電極35は、後述するように、それぞれがCOF50上の接点部52(図6参照)を構成するバンプ46及び駆動配線53(図6参照)を介して個別に制御部100の一部であるドライバIC60(図6参照)に電気的に接続されている。一方、共通電極34は、圧電層41上において個別電極35が作る電極群を避けて形成された図示しない表面電極に、圧電層41に形成された図示しないスルーホールを介して電気的に接続されており、表面電極はCOF50上のグランド電位に保持されたコモン配線54(図6参照)に接続されている。これにより、共通電極34は、表面電極及びコモン配線54を介して、すべての圧力室10に対向する領域において等しくグランド電位に保持されている。
圧電アクチュエータ21の上方には、図5、図6に示すように、COF50が配置されている。COF50は、基材51の表面に接点部52、55、駆動配線53、コモン配線54及び制御配線55が形成されるとともにドライバIC60が実装されることにより形成されている。
接点部52には、その下面に複数の個別電極35に対応した略円形の平面形状を有する複数のバンプ46が形成されている。バンプ46の下面には、ハンダ47が形成されており、ハンダ47によりランド36とバンプ46とが電気的に接続されている。さらに、バンプ46は基材51を貫通しており、駆動配線53に電気的に接続されている。
駆動配線53は、前述の通り、接点部52においてバンプ46と電気的に接続されているとともに、ドライバIC60に接続されている。そして、ドライバIC60により、駆動配線53、バンプ46、ランド36を介して個別電極35の電位が制御されている。
コモン配線54は、基材51の外縁に沿って形成されており、圧電アクチュエータ21の表面に形成された表面電極と電気的に接続されているとともに、後述するように、接点部55及び制御配線56を介してドライバIC60に接続されており、ドライバIC60によりグランド電位に保持されている。これにより、コモン配線54及び表面電極を介して共通電極34は常にグランド電位に保持されている。
制御配線56は、ドライバIC60と接点部55に制御配線56に対応して形成された図示しない端子に接続されている。そして、ドライバIC60は制御配線56及び接点部55の端子を介して外部の図示しない制御基板などに接続されている。そして、制御基板によりドライバIC60の動作が制御されている。また、制御配線56には、ドライバIC60を駆動させる電源電圧を供給するための配線や、前述したようにドライバIC60とコモン配線54とを接続するための配線も含まれている。
ここで、アクチュエータユニット21の動作について述べる。アクチュエータユニット21においては、4枚の圧電層41〜44のうち圧電層41だけが個別電極35から共通電極34に向かう方向に分極されている。ドライバIC60により、個別電極35に所定の電位が付与されると、圧電層41のうちこの電位が付与された個別電極35とグランド電位に保持された共通電極43とに挟まれた領域(活性領域)に電位差が生じる。これにより、圧電層41のこの部分には厚み方向の電界が発生し、圧電横効果により圧電層41のこの部分は分極方向と直角方向に縮む。その他の圧電層42〜44は、電界が印加されないのでこのように縮むことはない。したがって、圧電層41〜44において活性領域と対向する部分には、全体として、圧力室10側に凸となるユニモルフ変形が生じる。すると、圧力室10の容積が減少してインクの圧力が上昇し、図4に示したノズル8からインクが吐出される。その後、個別電極35がグランド電位に戻ると、圧電層41〜44は元の形状に戻って圧力室10も元の容積に戻る。そのため、副マニホールド流路5aから個別インク流路へとインクが吸い込まれる。
他の駆動方法としては、予め個別電極35に所定の電位を付与しておき、吐出要求があるごとに一旦個別電極35をグランド電位にした後、所定のタイミングで再び個別電極35に所定の電位を付与する方法もある。この場合、個別電極35がグランド電位となるタイミングで圧電層41〜44が元の状態に戻り、圧力室10の容積は初期状態(予め電圧が印加された状態)と比較して増加し、副マニホールド流路5aから圧力室10へとインクが吸い込まれる。その後、再び個別電極35に所定の電位が付与されたタイミングで圧電層41〜44において活性領域と対向する部分が圧力室10側に凸となるように変形し、圧力室10の容積変化によりインクの圧力が上昇し、ノズル8からインク滴が吐出される。
次に、インクジェットヘッド2の製造方法、特に、COF50の製造方法、及び、COF50の圧電アクチュエータ21への取り付け方法について図7を用いて説明する。図7は、COF50の製造方法、及び、COF50の圧電アクチュエータ21への取り付け方法を示す工程図である。
インクジェットヘッド2の製造工程において、COF50を製造するには、まず図7(a)に示すように、短手方向(図7(a)の上下方向)の両端部付近に長手方向(図7(a)の左右方向)に沿って所定の間隔毎に複数の搬送用のスプロケット穴70aが形成されたTABテープ70の一方の表面に、駆動配線53、コモン配線54、接点部55を構成する図示しない端子及び制御配線56を、他方の表面に接点部52を構成するバンプ46及びハンダ47(図5参照)を、それぞれスプロケット穴70aを位置の基準として、このスプロケット穴70aと所定の位置関係になるように形成した(配線形成工程)後、TABテープ70の一方の表面にドライバIC60を実装する(ドライバIC実装工程)。ここで、コモン配線54は、TABテープ70の短手方向両端部においてTABテープ70の短手方向にスプロケット穴70aに重なる部分まで突出するように形成されており、この部分が突出部54aとなっている。また、ドライバIC60も、スプロケット穴70aを位置の基準として、駆動配線53及び制御配線56に接続されて実装されるので、これらの配線と同様、スプロケット穴70aと所定の位置関係となる。
次に、図7(b)に示すように、TABテープ70からコモン配線54の外縁に沿って接点部52、55、駆動配線53、コモン配線54、制御配線56及びドライバIC60が形成された部分を切り出すことによりCOF50を作製する(切り出し工程)。このとき、コモン配線54はスプロケット穴70aに重なる突出部54aを含んでいるため、この段階のCOF50にはスプロケット穴70a(突出部54a)が含まれる。なお、TABテープ70の切り出された部分がCOF50の基材51となる。
次に、COF50のスプロケット穴70aを治具に設けられたピンに固定するとともに、予め流路ユニット4と圧電アクチュエータ21とを貼り合わせて作製しておいたヘッド本体13を治具にセットすることにより、スプロケット穴70aの位置に基づいてCOF50をヘッド本体13(圧電アクチュエータ21)に対して位置合わせした後、加熱しながらCOF50を圧電アクチュエータ21に向かって押圧し、ハンダ47によりランド36とバンプ46とを接合することによって、図7(c)に示すように、COF50を圧電アクチュエータ21に取り付ける(取り付け工程)。このとき、スプロケット穴70aは、接点部52と所定の位置関係にあるので、COF50を圧電アクチュエータ21に対する位置決めを正確に行うことができる。また、スプロケット穴70aはTABテープ70に形成されていたものであるので、別途位置決め用の穴を形成する工程が必要なく製造工程が簡略化される。なお、本実施の形態では、4つの圧電アクチュエータ21が流路ユニット4上に配置されている。図7(c)では、1つの圧電アクチュエータ21に1つのCOF50が接続された状態を示しているが、全ての圧電アクチュエータ21に対して、上述の手順の取り付けが同時的になされる。
次に、図7(d)に示すように、圧電アクチュエータ21に取り付けたCOF50から、突出部54aを切り取る(切り取り工程)。これにより、COF50を小型化することができる。また、組み立ての途中で、COF50に不必要な外力が加わって、この力が、突出部54aからCOF50と圧電アクチュエータ21の接合部に及ぶことがない。その分、COF50と圧電アクチュエータ21との電気的接続の信頼性が向上する。さらに、この後、COF50の接点部55と図示しない制御基板などとを接続し、インクジェットヘッド2の製造が完了する。
以上に説明した実施の形態によると、接点部52、55、駆動配線53、コモン配線54、制御配線56及びドライバIC60と所定の位置関係にあるスプロケット穴70aを治具のピンに固定するとともに、ヘッド本体13を治具にセットすることによって、COF50の圧電アクチュエータ21に対する位置決めを行っているので、COF50を圧電アクチュエータ21に対して正確に取り付けることができる。また、TABテープ70からスプロケット穴70aを含むようにCOF50を切り出し、スプロケット穴70aを位置決め用の穴として用いているので、別途位置決め用の穴などを設ける工程が必要なく、製造工程が簡略化される。
また、COF50を圧電アクチュエータ21に取り付けた後、スプロケット穴70aを含む突出部54aを切り取ることによりCOF50を小型化することができる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものに関しては、同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
一変形例では、図8(a)に示すように、TABテープ70の短手方向(図8(a)の上下方向)の両端部付近において、TABテープ70の長手方向(図8(a)の左右方向)に関して同じ位置にある2つのスプロケット穴70aと、ドライバIC60とがTABテープ70の短手方向に平行な一直線上に並ぶように、ドライバIC実装工程においてドライバIC60を実装し、図8(b)に示すように、切り出し工程において、これら2つのスプロケット穴70aを含むように、TABテープ70からCOF80を切り出している(変形例1)。この場合にも、実施の形態と同様、これら2つのスプロケット穴70aを治具に設けられたピンに固定することにより圧電アクチュエータ21(図2参照)に対する位置決めを行うが、2つのスプロケット穴70aとドライバIC60とが一直線上に並んでいるため、COF80のスプロケット穴70a周辺部分の剛性が大きくなり、スプロケット穴70aを治具のピンに固定する際などにCOF80が破損してしまうのを防止することができる。さらに、スプロケット穴70aで位置決めをすると、ドライバIC60の実装により剛性が向上した部分で位置決め作業を行うことになるので、所定の位置への微妙な位置合わせを精度よく容易にできる。なお、この場合には、配線形成工程において、ドライバIC60が2つのスプロケット穴70aと一直線上に並ぶ位置に実装されるように駆動配線53及び制御配線56が形成されるとともに、コモン配線84は、TABテープ70の短手方向の両端からこれら2つのスプロケット穴70aに重なる位置まで延びるように形成され、この部分が突出部84aとなっている。
別の一変形例では、図9(a)に示すように、配線形成工程においてコモン配線94をスプロケット穴70に重なる部分には形成せず、切り出し工程において、スプロケット穴70aを含むように(例えば、コモン配線94の外縁及び図9(a)中の一点鎖線に沿って、)TABテープ70からCOF90を切り出している(変形例2)。この場合、COF90にはスプロケット穴70aが形成された突出部95が含まれており、スプロケット穴70aを圧電アクチュエータ21(図2参照)に対する位置決め用の穴として用いることができる。
本実施の形態や変形例では、COF50、80、90を圧電アクチュエータ21に取り付けた後、スプロケット穴70aを含む突出部54a、84a、95を切り取ったが、突出部54a、84a、95を切り取らず、残しておいてもよい。例えば、近くに熱を外部に放散する放熱部材があれば、この放熱部材に突出部54a、84a、95を固定することで、ドライバIC60からの熱を放熱部材に伝えることができ、ドライバIC60に対する放熱効果の向上に寄与する。この放熱部材は金属製であることが多く、このときには、コモン配線54、84の一部が形成されている突出部54a、84aを固定することで、放熱部材に外部からの電磁的ノイズを遮蔽する効果が期待でき、回路部品の誤動作を起こすノイズに対するシールド効果が向上する。
図10は、インクジェットヘッド4を用いて、上述のような構成に組み立てたヘッドユニットの例を示している。図10(a)は、ヘッドユニットを短手方向に切断した断面図であり、図10(b)は、配線部材を放熱部材に固定する様子を示した斜視図である。
配線部材は、変形例1で説明したCOF80が用いられている。ヘッドユニットは、インクジェットヘッド4にインクを一時的に貯留するリザーバユニット100、圧電アクチュエータ21に制御信号を送る回路基板102、略矩形状の箱型に整形されたユニットカバー104とから構成されている。
リザーバユニット100は、流路ユニット4の表面に配置された圧電アクチュエータ21を避けるように固定されている。また、リザーバユニット100は、図10(a)に示すように、4枚のプレートから構成されて、流路ユニット4の表面側からアンダープレート94、リザーバプレート93、フィルタプレート92及びフィルタカバープレート91の順に積層されている。フィルタプレート92には、インクを濾過するフィルタ部が内部に形成されている。リザーバプレート93には、インクを貯留するリザーバ93aが形成され、フィルタ部に連通している。アンダープレート94には、リザーバプレート93の開口を封止するとともに、リザーバ93aとインク流入口5bとを連通する連通孔94aが形成されている。流路ユニット4の表面には、この連通孔94aの下側開口周辺だけで接続されている。そのため、アンダープレート94の下面は、連通孔94aの開口部周辺を除いて流路ユニット4の表面との間に隙間が形成されている。なお、フィルタカバープレート91には、インク供給口が形成されており、外部から供給されたインクは、このインク供給口、フィルタ部、リザーバ93a及び連通孔94aの順に流れて、インク流入口5bから流路ユニット4の内部に流入する。
この例では、圧電アクチュエータ21は、このリザーバユニット100と流路ユニット4とが作る隙間内に配置されている。COF80が、この隙間から引き出され、リザーバユニット100の側壁に沿って上方に延在している。COF80の引き出し方向の端部は、リザーバユニット100上部に積層された回路基板102とコネクタ102aを介して接続されている。さらに、ユニットカバー104が流路ユニット4の表面に配設されて、COF80、回路基板102及びリザーバユニット100が内部に収納されている。これにより、外部からインクやインクミストが浸入して電気的な動作不良や、外力による損傷が防がれている。
ユニットカバー104は、図10(a)に示すように、蓋部104aと側壁部104bとから構成されている。また、この側壁部104bとリザーバユニット100の側面との間には、僅かな隙間ができており、COF80はこの隙間を介して引き出されている。COF80に実装されたドライバIC60は、ユニットカバー104の側壁部104bに当接されている。COF80のドライバIC60と反対側には、弾性部材としてのスポンジ101が配設されており、ドライバIC60は、ちょうどユニットカバー104とリザーバユニット100とで挟持された状態で固定されている。ここで、側壁部104bは、金属板で構成されており、放熱板として機能している。また、蓋部104aと側壁部104bとの接合部及び側壁部104bと流路ユニット4との当接部には、それぞれ封止部材200が塗布されており、これにより、外部からインクやインクミストがさらに浸入しにくくなっている。
この例では、上述のように、突出部84aを有したCOF80が用いられている。COF80は図10(b)に示すように、ユニットカバー104の側壁部104bに固定される。COF80は、上述のように、ドライバIC60が側壁部104bとリザーバユニット100の側面とで挟持され、さらに、スプロケット穴70aを使って突出部84aが側壁部104bに固定されている。ここでは、突出部84aに形成された配線部分が、金属製の側壁部104bに当接するようにネジ止めされている。これにより、ドライバIC60の当接状態が良好に維持され、ドライバIC60の発熱も効果的に放熱板(側壁部104b)に伝えられる。さらに、コモン配線84が、側壁部104bに電気的に接続されるとともに、この側壁部104によって回路部品が包囲されるので、回路部品の誤動作を起こす電磁的ノイズに対するシールド効果が向上する。
なお、圧電アクチュエータ21とCOF80とを接続する際には、実施の形態と同様、駆動配線が圧電アクチュエータ21と反対側になるようにCOF80を配置してもよく、駆動配線が圧電アクチュエータ21と対向するようにCOF80配置してもよい。駆動配線が圧電アクチュエータ21と反対側になるようにCOF80を配置した場合には、ドライバIC60が駆動配線とは反対側の表面に実装され、ドライバIC60の端子が基材を貫通することによって駆動配線に接続される。一方、駆動配線が圧電アクチュエータ21と対向するようにCOF80が配置されている場合には、ドライバIC60が駆動配線と同じ表面に実装されており、この表面上で両者が接続される。
また、流路ユニット4のCOF80の引き出し方向前方の端縁部には、溝4aが1つずつ形成されている。この溝4aは、流路ユニット4の短手方向で、圧電アクチュエータ21に関してインク流入口5bと反対側に、それぞれ配置されている。一方、ユニットカバー104の側壁部104bには、この溝4aに対応して突起104cが形成されている。ユニットカバー104を流路ユニット4の表面に配設するときには、突起104cと溝4aとが嵌合される。これにより、側壁部104bからドライバIC60に適切な当接力が働き、両者間の熱的な結合状態が向上する。また、不必要な外力がドライバIC60に直接及ぶことがないので、外力によるドライバIC60の損傷を抑制することができる。
以上のように、COF80のヘッドユニットへの応用に際して、側壁部104bと突出部84aとをネジによって固定したが、導電性の接着剤を用いて固定してもよい。このとき、側壁部104bには、スプロケット穴70aに対応する位置に凸状に突出した突起を形成(エンボス加工)しておき、COF80を、側壁部104bの適切な位置に容易に位置合わせして固定することができる。