JP4118495B2 - 泥漿の再利用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粗塩水を精製する際に生成する泥漿の再利用方法に関する。詳しくは、粗塩水に精製剤を添加して沈降せしめた難溶性化合物を含む泥漿を有効に活用するための新規な再利用方法である。
【0002】
【従来の技術】
電解法による苛性ソーダの製造原料或いはアンモニアソーダ法による炭酸ナトリウムの製造原料として使用される食塩(NaCl)は、原塩の形態で入手され、これを精製して使用される。
【0003】
上記製造工程において、原塩に含有されるカルシウム、マグネシウム、硫酸イオンなどの不純イオンは、種々の問題を引き起こす。例えば、イオン交換膜法電解において、カルシウム、マグネシウム等の多価金属イオンはイオン交換膜の電気抵抗を短時間の内に上昇させ、また、硫酸イオンはイオン交換膜に損傷を与え、電流効率の低下を招く等の問題を有する。
【0004】
上記不純イオンを低減するための精製方法として、原塩を水に溶解した粗塩水に、苛性ソーダ、ソーダ灰、塩化カルシウム、塩化バリウム、炭酸バリウム等の精製剤を添加して該不純イオンを難溶性化合物として沈降せしめる方法が一般に実施される。
【0005】
上記方法によって生成した難溶性化合物は、次いで、これを沈降せしめる静定槽の下部より泥漿として得られる。上記のようにして得られた泥漿は飽和に近い食塩水を溶媒とするため、これを濾過して分離された固形分は、高濃度の食塩を含み、他の用途に対しての再利用が困難であり、埋め立て地等に廃棄されているのが現状である。
【0006】
しかしながら、社会的に産業廃棄物を減少するための運動が推進される近年において、かかる固形分を有効に利用する対応が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、前記粗塩水に精製剤を添加して生成する難溶性化合物を含む泥漿を有効に活用することができる、新規な再利用方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、上記泥漿より分離される難溶性化合物を主成分とする固形分は飽和食塩水を含んでいるものの、意外にも濾過性が良好であり、特定の食塩濃度以下の水と接触させた後、濾過することにより、上記濾過性が更に大幅に向上し、得られる固形分中の食塩濃度を、容易に、極めて低濃度に低減できるという知見を得た。
【0009】
そして、かかる塩素濃度が極めて微量に低減された上記固形物は、セメント原料として利用した場合、得られるセメントの性能に殆ど影響を与えることなく有効に使用し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、原塩を飽和水溶液となるように水に溶解して得られた粗塩水に精製剤を添加することにより生成する難溶性化合物を含む泥漿を再利用する方法であって、該泥漿を濾過して難溶性化合物を含む固形分を分離し、次いで、該固形分を食塩濃度10重量%以下の水と接触せしめて、上記難溶性化合物が接触している水の食塩濃度を10重量%以下となるように調整した後、濾過し、得られた固形分をセメント用原料の一部として使用することを特徴とする泥漿の再利用方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、粗塩水は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び硫酸イオンよりなる不純物イオンの少なくとも一種を含む、食塩(NaCl)の水溶液であり、代表的なものとして、原塩を飽和水溶液となるように水に溶解して得られた粗塩水(以下、かかる粗塩水を調製粗塩水ともいう。)が挙げられる。
【0012】
前記粗塩水を調製するために使用される原塩は、塩の生産国より入手できる公知の原塩が特に制限なく使用される。また、上記原塩の水への溶解の方法は、原塩の層中に水を通過させて飽和水溶液として取り出す方法など、公知の方法が特に制限なく採用される。
【0013】
また、その他、前記塩水を用いた製造方法において、循環使用される塩水も、上記不純物イオンを含有するものは、本発明でいう、粗塩水に含まれる(以下、かかる粗塩水を循環粗塩水ともいう。)。
【0014】
本発明の対象とする泥漿は、上記の粗塩水に精製剤を添加することによって、主として、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び/又は硫酸イオンよりなる不純物イオンを難溶性化合物として難溶化し、これを沈降せしめて濃縮した部分を取り出すことによって得られる。
【0015】
本発明において、精製剤は、上記不純物イオンと反応し、難溶性の化合物を生成する公知のものが特に制限なく使用される。例えば、カルシウムイオンに対しては炭酸ナトリウムが、マグネシウムイオンに対しては水酸化ナトリウムが好適である。上記精製剤との反応により、カルシウムイオンは炭酸カルシウムとなり、マグネシウムイオンは水酸化マグネシウムとなる。
【0016】
また、硫酸イオンに対しては、塩化カルシウム、塩化バリウム、炭酸バリウムが好適に使用され、反応により硫酸イオンは硫酸カルシウム、硫酸バリウムとなる。
【0017】
上記精製剤の添加は、含まれる不純物イオンに応じて公知の方法が特に制限なく採用される。例えば、硫酸イオンとカルシウムイオンが混在する場合、硫酸イオンの除去を行うための塩化カルシウムを添加後、残余のカルシウムイオンを除去するための炭酸ナトリウムを添加する方法が好ましい。また、マグネシウムイオンを除去するための水酸化ナトリウムは、炭酸ナトリウムと同時に添加するのが一般的である。
【0018】
これら精製剤の添加の形態は、粉状、粒状等の固体状で添加しても良いし、水に溶解した溶液状で添加しても良い。
【0019】
本発明において、上記塩水中で難溶性化合物を沈降及び濃縮せしめて泥漿を得る操作は、一般に静定槽を設けて行うことが望ましい。
【0020】
また、これら精製剤の添加は、上記静定槽の前に別途反応槽を設けて行うことが好ましい。勿論、反応槽において沈降が激しい場合は、反応槽が静定槽を兼ね、生成物の一部又は全部を反応槽の下部より泥漿として取り出すことも可能である。また、かかる反応槽は、単数でも多段に設けても良い。また、静定槽での難溶性化合物の沈降を促すため、反応槽出口に凝集剤を添加しても良い。
【0021】
また、本発明において、泥漿は複数の静定槽から得られる泥漿を混合して、後述する処理に供することもできる。例えば、前記調製粗塩水より得られた泥漿と循環粗塩水より得られた泥漿とを混合して、後述する処理に供しても良い。
【0022】
本発明において、上記泥漿に含まれる上記難溶性化合物を食塩濃度10重量%以下、好ましくは、0.05〜5重量%、さらに好ましくは、0.1〜0.5重量%の水と接触せしめた後、濾過して固形分として回収することが極めて重要である。
【0023】
即ち、本発明者らは数多くの実験により、泥漿に含まれる難溶性化合物の濾過性は、生成する炭酸カルシウム及び硫酸カルシウムの特性により、意外にも良好であり、更に、上記難溶性化合物が接触している水の食塩濃度を10重量%以下となるように調整した場合、上記濾過性が著しく向上することを見い出したのである。
【0024】
そして、上記濾過を経て得られた固形分は、驚くべきことに、乾燥状態での塩素濃度が0.1重量%以下にまで低減され、セメント原料として使用した場合でも、セメントの製造工程或いは得られるセメントに対して、殆ど悪影響を及ぼさないことが確認された。
【0025】
本発明において、泥漿に含まれる上記難溶性化合物を食塩濃度10重量%以下の水と接触せしめる方法は特に制限されるものではない。
【0026】
例えば、泥漿に水を直接添加して希釈することにより、泥漿中の食塩濃度を低下せしめ、前記範囲に調整することも可能である。しかし、かかる方法は、濾液を廃棄せざるを得ず、食塩の再利用率の低下を招くおそれがある。
【0027】
これに対して、泥漿を一旦濾過し、固形分を分離した後、再度水に分散せしめることにより食塩濃度を低下させた分散液を濾過する方法は、上記泥漿を濾過して得られる高濃度の塩水を回収し、再利用することができるため、推奨される。
【0028】
また、他の方法として、泥漿を濾過後、得られた固形分を濾布上で、濾液の食塩濃度が前記濃度以下となるまで水で洗浄する方法が挙げられる。
【0029】
尚、上記希釈、分散、或いは洗浄に使用する水としては、工業用水、ピット排水等を使用することが経済的である。
【0030】
本発明において、前記泥漿の濾過、泥漿を濾過して得られる固形分を再分散させた分散液の濾過などに使用する濾過装置は、公知のものが特に制限なく使用される。例えば、フィルタープレス式濾過装置が最も効率が良く、経済的である。
【0031】
本発明において、難溶性化合物を食塩濃度10重量%以下の水と接触せしめた後の濾過により得られる固形分中に占める水分の割合(水分率)は、かかる接触による濾過性の向上を利用して可及的に低く抑えることが、最終的に得られる固形分中の食塩濃度を低く抑えるために好ましい。
【0032】
上記水分率は、50重量%以下、好ましくは40重量%以下とすることが好ましい。
【0033】
本発明において、以上の方法によって得られた、泥漿に含まれる難溶性化合物を主成分とする固形物は、セメント製造装置において製造される種々のセメントを製造するためのセメント原料の一部として特に制限なく使用される。
【0034】
セメント製造装置において、セメント原料は、一般に、乾燥・粉砕された後、予熱装置を経て、焼成炉(キルン)に供給されて焼成され、セメントクリンカーとなるが、本発明において、上記固形分のセメント原料への添加は、乾燥・粉砕工程に供給されるセメント原料に混合することによって行うのが一般的である。
【0035】
また、上記固形分は、塩素含有量が極めて低いため、セメント原料に添加する割合は、セメントの組成を大きく変動しない範囲で任意に決定することができるが、一般に、全セメント原料中に占める固形分の割合が、0.005〜10重量%程度、特に、0.01〜5重量%程度の量で添加することが好ましい。
【0036】
焼成炉において得られるセメントクリンカーは、必要な成分調整を行うと共に粉砕され、セメントとなる。例えば、ポルトランドセメントの場合、上記セメントクリンカーに、石膏を添加して粉砕することによって製品化される。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明によれば、泥漿の前記処理条件の選定による濾過性の向上、母液となる水における食塩濃度の低減等の作用によって、濾過後の固形分中の水分率を、容易に、低減することができる。
【0038】
従って、前記したように、得られる固形分中の塩素濃度を劇的に低減することができ、該固形分をセメントの製造原料として何ら問題なく使用することができる。
【0039】
よって、本発明によれば、塩水の精製処理において発生する泥漿中の難溶性化合物を主とする固形分を廃棄することなく、有効に使用することができ、その工業的価値或いは環境上の価値は極めて高いものである。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を更に具体的に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
実施例1
図1に示す工程に従い、下記の方法によって、本発明を実施した。
【0042】
Ca 0.06重量%、Mg 0.02重量%及びSO4 0.16重量%を含有する原塩1に工業用水11を散布し、ライン12より飽和塩水を取り出し、飽和槽2に貯蔵した。飽和槽2内の塩水は、ライン13より撹拌機付きの反応槽3に送り、塩化カルシウム14を添加して硫酸イオンを硫酸カルシウムとして難溶化せしめた。
【0043】
塩水に比べて比重が大きい硫酸カルシウムは反応槽の下部に沈降するため、泥漿として一部抜き出し、貯槽6に貯蔵した(図示せず)。一方、残部は処理塩水はライン29より撹拌機付きの反応槽4に送り、水酸化ナトリウム15と炭酸ナトリウム16を添加してマグネシウムイオンを水酸化マグネシウムとして、カルシウムイオンを炭酸カルシウムとして難溶化せしめた。
【0044】
次いで、反応槽4の塩水をライン17によって静定槽5に導き、下部より、上記反応槽で生成した難溶性化合物を5重量%で含む塩水を泥漿としてライン18より取り出し、貯槽6に貯蔵した。
【0045】
静定槽5の上澄み液は、カルシウムイオン2ppm、マグネシウムイオン0.1ppm、及び硫酸イオン0.6重量%を含有するNaCl濃度25重量%の塩水としてライン22より取り出され、塩水2次精製設備23を経てイオン交換膜式電解装置24に供給した。
【0046】
一方、泥漿は、貯槽6よりライン19を経てフィルタープレス式濾過装置7に供給し、水分率30重量%の固形分を得た。
【0047】
参考のため、上記濾過によって得られた固形分を乾燥して分析した結果、炭酸カルシウム30重量%、水酸化マグネシウム6重量%、硫酸カルシウム26重量%及び塩素含有量6重量%であった。
【0048】
上記固形分は、分散槽8において、工業用水21を加えて水中に再分散せしめ、且つ分散液の塩水濃度を0.3重量%に調整後、ライン25を経てフィルタープレス式濾過装置9に供給し、水分率30重量%の固形分が得られた。
【0049】
尚、フィルタープレス式濾過装置9はフィルタープレス式濾過装置7より全濾過面積が約30%少ないにも拘わらず、濾過に必要な装置の稼動時間が約30%短縮された。
【0050】
得られた固形分を乾燥して分析した結果、炭酸カルシウム35重量%、水酸化マグネシウム7重量%、硫酸カルシウム25重量%及び塩素含有量0.1重量%以下であった。
上記の水分量30重量%の固形分をそのまま、セメント製造装置10の原料粉砕工程に、全原料の0.1重量%の割合となるように添加したが、得られるセメントの性能には全く変動が無かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法を実施するための代表的な工程を示す概略図
【符号の説明】
1 原塩
2 飽和槽
3 反応槽
4 反応槽
5 静定槽
7 濾過装置
8 分散槽
9 濾過装置
10 セメント製造装置
11 工業用水
14 塩化カルシウム、塩化バリウム、炭酸バリウム
15 水酸化ナトリウム
16 炭酸ナトリウム
22 精製塩水
23 塩水2次精製設備
24 イオン交換膜式電解槽
27 固形分
Claims (3)
- 原塩を飽和水溶液となるように水に溶解して得られた粗塩水に精製剤を添加することにより生成する難溶性化合物を含む泥漿を再利用する方法であって、該泥漿を濾過して難溶性化合物を含む固形分を分離し、次いで、該固形分を食塩濃度10重量%以下の水と接触せしめて、上記難溶性化合物が接触している水の食塩濃度を10重量%以下となるように調整した後、濾過し、得られた固形分をセメント用原料の一部として使用することを特徴とする泥漿の再利用方法。
- 精製剤が、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化バリウム及び炭酸バリウムよりなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項1記載の泥漿の再利用方法。
- 固形分の水分率を50重量%以下とする請求項1記載の泥漿の再利用方法。
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