JP4116891B2 - 還元反応用触媒及びその製造方法、並びに選択的水素添加方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パラジウム等の遷移元素からなる触媒物質を担持させた還元反応用触媒及びその製造方法、並びに選択的水素添加方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、化学品や医薬品等の有機化合物を合成する際、あるいは石油の還元脱硫を行う際に、水素化(還元)触媒が使用されている。この触媒としては、主にパラジウムブラック(Pd微粉末)やPd−C(粉状活性炭にPd微粉末を添着させたもの)等の粉体が用いられ、反応対象物(反応基質)を溶媒に溶解させた溶液に粉末の触媒を投入して反応を進行させている。
一方、還元触媒は、水素添加反応と加水素分解反応のいずれにも作用し、これらの反応条件が同一であるために、このうち一方の反応のみを反応基質に対して選択的に行わせることは難しい。そこで、本発明者らは、ベンジルオキシアルケンの選択的水素添加方法として、電解による方法を報告している(例えば、特許文献1、2参照)。この方法では、陰極として用いるパラジウム薄膜で反応系を2槽に区切り、そのうち1槽で水を電気分解して水素を発生させる。水素は、水素吸蔵金属であるパラジウム薄膜に吸蔵され、反対面から他の槽中に透過する。この槽の反応液には反応基質であるベンジルオキシアルケンが溶解しており、ここで、反応基質中のアルケンの不飽和基のみが選択的に水素添加され、一方で加水素分解反応(例えばベンジルオキシアルケンからのベンジル基の脱離等)が抑制された水素添加反応が進行する。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−145818号公報
【特許文献2】
特開2001−316315号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した粉末触媒の場合、反応後の溶液から触媒を濾過して回収する作業を要し、又、触媒の耐久性も低く、さらには、触媒が粉末であるために発火性が高いという問題があった。
一方、上記した選択的水素添加方法の場合、電気分解のための各種装置(電源、電解セル等)を必要とし、実用的でないという問題があった。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、取り扱い性、安全性、耐久性に優れ、又、水素添加反応を選択的に行うことができる還元反応用触媒及びその製造方法、並びに選択的水素添加方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明の還元反応用触媒は、合成繊維からなる不織布(但し、グラフト重合された合成繊維を除く)である担体に遷移元素イオンを含む溶液を含浸後、該担体を室温で水素ガス中に保持して前記遷移元素イオンを還元することにより得られ、複数の不飽和結合を有する反応対象物の1置換二重結合部又は2置換二重結合部を選択的水素添加することを特徴とする。
【0008】
又、前記遷移元素は、パラジウムであることが好ましい。
【0009】
本発明の還元反応用触媒の製造方法は、合成繊維からなる不織布(但し、グラフト重合された合成繊維を除く)である担体に遷移元素イオンを含む溶液を含浸させる工程と、含浸後の担体を室温で水素ガス中に保持して前記遷移元素イオンを還元する工程とを有し、複数の不飽和結合を有する反応対象物の1置換二重結合部又は2置換二重結合部を選択的水素添加することを特徴とする。
【0011】
又、本発明の還元触媒の製造方法において、前記遷移元素は、パラジウムであることが好ましい。
【0012】
本発明の選択的水素添加方法は、前記還元反応用触媒を、複数の不飽和結合を有する反応対象物を含む溶液中に水素ガスの存在下で浸漬し、該反応対象物の1置換二重結合部又は2置換二重結合部を選択的水素添加することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る還元反応用触媒及びその製造方法、並びに選択的水素添加方法の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の還元反応用触媒の構成を模式的に示す断面図である。この図において、還元触媒10は、シート状の担体2に遷移元素からなる触媒物質4が担持されて構成されている。この実施形態では、担体2は合成樹脂の不織布からなり、多数の樹脂繊維2aが網目状に絡み合い、各繊維間に空隙が形成されている。そして、担体2の内部の各繊維の表面全体に触媒物質(パラジウムブラック)4が担持されており、担体2の内部の空隙にも触媒物質が存在している。なお、本発明において、パラジウムブラックとは、微粉末ではないが、従来のパラジウムブラック(黒色微粉末パラジウム)と同様に黒色であり同様な触媒活性を有するものをいう。
【0015】
上記パラジウムブラックは、担体の表面にアモルファス状で粒状に析出し、その粒径は通常0.1〜3μm、好ましくは0.3〜2μmである。
【0016】
担体2は、遷移元素イオンを含む溶液が含浸しやすいよう、不織布を用いることができる。又、担体の形状も特定限定されず、シート状、チューブ状、塊状、棒状、球状とすることができるが、取り扱いが容易で表面積の大きいシート状が好ましい。特に、後述するように触媒反応を有機溶媒中で進行させる場合には、溶媒との親和性のよい合成樹脂を用いると空隙に溶液が侵入しやすくなり、反応が促進されるので好ましい。合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド等を用いることができる。空隙の大きさ、密度等も特に限定ない。
【0017】
触媒物質4は、詳しくは後述するが、担体に遷移元素イオンを含む溶液を含浸させた後、還元することにより担体に担持される。又、触媒物質4は遷移元素からなる還元触媒であって、水素添加反応の触媒作用を有するものである。触媒物質4としては、3A〜7A族、8族及び1B族の元素を用いることができるが、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、レニウム等を用いるとよく、さらに好ましくはパラジウムを用いるとよい。特に、上記したパラジウムブラックとするのが好ましい。触媒物質の担体への担持量は特に限定されず、対象となる反応に応じて選択できるが、通常1×10−3〜1×103mg/cm3、好ましくは1×10−1〜1×102mg/cm3、より好ましくは0.5〜5mg/cm3である。
【0018】
このように、本発明の還元反応用触媒は、多数の空隙を有する担体の内部に遷移元素イオンを含む溶液を含浸させることにより、担体の内部に触媒物質(遷移元素)が担持されるので、有効表面積の大きく反応性に優れた触媒となる。その結果として、従来の粉末触媒に比べて反応に必要な触媒物質の量を低減することもできる。又、触媒物質は担体の空隙内に存在するので、担体の最表面に触媒物質を大量に担持させる必要がない。つまり、担体の最表面のみに触媒物質を担持させると、外部との接触等によって触媒物質が脱落し易くなる。特に、触媒の表面積を増大させるためにデンドライト(針)状に触媒物質を析出させると、触媒物質が容易に脱落して触媒性能が低下し、触媒の耐久性に劣ることになる。本発明では、担体の内部にある空隙の周りに触媒物質が担持されており、この部分は外部と接触しずらいので、触媒物質の脱落等が生じにくく耐久性が向上する。又、バルクの担体に触媒物質が固定(担持)されているので、反応後に触媒を反応系から分離しやすく、従来の粉状触媒に比べて取り扱いも容易になる。
【0019】
このように、本発明の還元反応用触媒は触媒物質の脱落が生じにくいものであるが、触媒物質が脱落したとしてもそれを生成物に混入させないようにすることもできる。つまり、図2に示すように、還元触媒10を捕集布20で包み込むことで、脱落した触媒物質を捕集布20内に留めておくことができる。捕集布20としては例えば網、不織布等を用いることができ、還元触媒10の担体として不織布を用いた場合には、それより目の細かい(空隙の径が小さい)不織布等を用いることができる。
【0020】
次に、本実施形態の還元反応用触媒の製造方法について図3を参照して説明する。まず、上記した多数の空隙を有する担体に、遷移元素イオンを含む溶液(例えば塩化パラジウム溶液)を滴下して含浸させる(図3(a))。含浸方法としては、上記した滴下の他、例えば担体を溶液に浸漬してもよい。
【0021】
上記溶液における溶媒としては、例えば水、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホアミド等の水溶性有機溶媒、あるいは無水酢酸、酢酸エチル、塩化メチレン、ベンゼン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ヘキサメチルホスホアミド等の非水溶性有機溶媒を挙げることができ、これらを単独又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
遷移元素イオンとしては、通常は二価、三価、四価のものが挙げられる。例えばPdイオンの場合、溶媒に溶解しやすい塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム等のパラジウム塩に起因する二価のものを好適に用いることができる。又、遷移元素イオンを含む溶液は、通常水素イオン濃度が0.3〜5mol/L、好ましくは酸濃度が1〜2mol/Lの酸溶液に遷移元素の塩(上記パラジウム塩等)を溶解させると、容易に調整できる。
【0023】
溶液中の遷移元素イオンの濃度は、通常1×10−6mol/L〜過飽和状態まで、好ましくは1×10−4mol/L〜1×10−1mol/Lとすることができる。
【0024】
次いで、含浸後の担体を密閉室内に吊り下げ、室内に水素ガスを導入した後で室を密閉し、水素ガス中に担体を保持する(図3(b))。保持時間は担体の形状等にもよるが、通常数分〜数時間程度でよい。これにより、含浸した溶液中の遷移元素イオン(例えばPdイオン)が遷移元素(例えばPd0)に還元されて担体表面に析出し、還元触媒が得られる(図3(c))。室内の水素ガスの圧力としては、通常1.013×102〜1.013×108Pa、好ましくは1.013×105〜1.013×106Pa、さらに好ましくは1.013×105〜2.026×105Paとすることができる。
【0025】
次に、室内の水素ガスを不活性ガス(Ar等)で置換する(図3(d))。そして、得られた還元触媒を室外に取り出し、適宜洗浄を行う。洗浄は、例えば触媒を水洗した後、有機溶媒(メタノール等)で洗浄して行うことができる。さらに、適宜触媒を減圧乾燥させてもよい。このようにして還元触媒が製造される(図3(e))。
【0026】
このように、本発明の製造方法によれば、担体が多数の空隙を有していて液体を吸収しやすいため、担体の内部に遷移元素イオンを含む溶液を含浸させることができ、担体の内部に触媒物質(遷移元素)が担持されるので、有効表面積の大きく反応性に優れた触媒を製造することができる。
【0027】
又、本発明の製造方法によれば、担体に上記溶液を含浸させて水素ガス中に保持するだけで触媒を製造することができるので、製造が簡便となる。又、担持量の調整は、溶液の濃度や含浸量を調整するだけでよいので、担持量の調整を簡便かつ正確に行うことができる。
【0028】
次に、本発明の還元反応用触媒を用いて、選択的水素添加を行う方法について説明する。本発明の方法は、反応対象物を含む溶液中に水素ガスの存在下で還元反応用触媒を浸漬するものである。そして、反応が終了すれば、溶液から還元反応用触媒を取り出して適宜洗浄乾燥すれば、使用によって触媒活性が低下しないので、触媒として繰り返し使用することができる。本発明の方法によれば、溶液中に水素ガスを導入して還元触媒を浸漬するだけでよく、従来のような特別な電解装置を必要としない。
【0029】
ここで、選択的水素添加とは、不飽和結合を有する反応対象物に水素添加をする際に、所定の水素添加以外の望まない反応を生じさせないか、又は抑制させることをいう。又、選択的水素添加は、反応対象物が複数の不飽和結合を有する場合に、所定位置の水素添加を選択的に生じさせるものである(以下、「タイプ2」と称する)。
【0032】
又、上記タイプ2の反応に用いる反応対象物としては、a)炭素−炭素1置換二重結合、炭素−炭素2置換二重結合から選ばれた少なくとも1つを有する化合物を例示することができる。
【0033】
本発明の方法において、反応対象物が液体であればそのまま用いることができるが、反応対象物を溶媒に溶かしてもよい。この溶媒としては、反応温度で液体であれば何でもよく、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、フェノール類、等の種々の有機溶媒を用いることができる。これら溶媒は、反応基質の種類、反応温度あるいは目的とする反応時間等によって適宜選択され、単独でも二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、反応基質の水素添加反応が優先されるように、水素添加反応を起こす不飽和結合を有する化合物からなる溶媒でないことが好ましい。特に好ましくは、芳香族炭化水素類、アルキル置換芳香族炭化水素類、ハロゲン置換芳香族炭化水素類、アルコキシ置換芳香族炭化水素類等の非プロトン性の芳香族炭化水素類を用いると、加水素分解反応をほぼ完全に生じさせずに水素添加反応を生じさせることができる。
【0034】
本発明の方法において、還元触媒の量としては、担体を除く正味の触媒物質の量が反応基質(反応対象物)に対し、1×10−5〜100重量%、好ましくは1×10−2〜100重量%、より好ましくは5×10−1〜5重量%とすることができる。
【0035】
本発明の方法において、反応系に存在させる水素ガスの圧力は、1.013×104〜1.013×109Pa、好ましくは5.065×104〜1.013×106Pa、より好ましくは1.013×105〜2.026×105Paとすることができる。
【0036】
本発明の方法において、反応温度は、−200〜1000℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜30℃とすることができる。
【0037】
本発明の方法において、反応時間は、1分〜1000時間、好ましくは30分〜240時間、より好ましくは30分〜72時間とすることができる。
【0038】
なお、本発明の還元触媒を用いれば、上記した反応の他、従来の黒色粉末状パラジウムブラックを用いたのと同様の接触還元操作を行うことにより、ニトロ化合物を還元して対応するアミンを製造したり、ニトリルを還元して対応する第一アミンを製造することもできる。
【0039】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
【実施例】
A.選択的水素添加の比較実験
実施例1、比較例1〜4
1.還元触媒の作製
ポリプロピレン製の不織布(ダイワボウ社製、型版RPX−101、目付49.7g/m2、厚み1.2mm)を5×2cmに切り出し(重さ5.0mg)、さらに折り畳んで縦横2.5×1cm、厚み0.5cmとした。そして、塩化パラジウム150mgを1mol/Lの塩酸10mLに溶解し、濃度8.5×10−2mol/Lとした塩化パラジウム塩酸溶液0.11mLを、この不織布に滴下して含浸させた。次に、含浸後の不織布を密閉室に吊るし、0.1MPa(常圧)の水素ガスを導入し、室温で180分放置して不織布にパラジウムを担持させた。担持後の不織布を水及びアセトンで充分に洗浄し、乾燥して溶媒を完全に取り除いて還元触媒を作製した。触媒担持量は1.0mg(担体を含む全体の重量は約6.0mg)であった。これを実施例1とした。
【0041】
比較として、粉末のパラジウムブラック(和光純薬工業株式会社製)を用意した。これを比較例1とする。又、粉末のPd−C(粉状活性炭にPd微粉末を添着させたもの、川研ファインケミカル株式会社製、Pd担持量5%、Pd活性0.2%)を用意した。これを比較例2とする。さらに、塩化パラジウムを蟻酸により還元する公知の方法で粉末のパラジウムブラックを得た。これを比較例3とする。又、パラジウム箔を比較例4とする。
【0045】
3.選択的水素添加反応(タイプ2:所定位置の不飽和結合の選択的水素添加)
上記したタイプ2の選択的水素添加反応として、水素添加し得る二重結合を2つ有する化合物2
【化3】
を用意した。ここで、式Aは反応基質、式Bは末端の二重結合が水素添加された部分水素化生成物、式Cはさらにエステルに結合している3置換二重結合部も水素添加された望まない生成物、を示す。そして、この化合物について、上記タイプ2の反応と同様に実施例1、比較例1〜4の触媒を用い、この化合物を溶媒に7.0×10 −3 mol/Lとなるよう溶解して得た溶液に、2% w/w(反応基質100gに対し触媒2g)となるよう、触媒を浸漬し、水素雰囲気で所定時間攪拌して反応させた。反応後、溶液から触媒を取り出し、溶媒留去後の残渣(生成物)の重量を測定し、さらに残渣をNMR(核磁気共鳴法)測定して生成物の構造を特定した。なお、比較例1〜4については、触媒量を4% w/wとした。
得られた結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表2から明らかなように、実施例1の場合、反応が4時間経過した時点で1置換二重結合部の選択的水素添加を100%の収率で行うことができたとともに、反応開始から24時間経過しても3置換二重結合部の水素添加が生じず、1置換二重結合への水素添加の選択性がより優れたものとなった。一方、比較例1〜3の場合、反応が1時間経過した時点で、1置換二重結合部のみならず3置換二重結合部の水素添加も進行してしまい、3置換二重結合部を還元することなく1置換二重結合部のみ部分水素添加を行うことができなかった。又、比較例4の場合は、触媒反応が全く生じなかった。以上のことから、本発明の還元触媒を用いると所定位置への選択的水素添加を高収率で行えるとともに、望まない位置での水素添加が進行しないことが明らかである。
【0063】
3.選択的水素添加反応(タイプ2:所定位置の不飽和結合の選択的水素添加)
上記したタイプ2の選択的水素添加反応として、水素添加し得る二重結合を2つ以上有する種々の化合物を用意した。
【0064】
(1)実施例27〜37
前記化合物2を用意した。ここで、式A、B、Cは前記化合物2において説明した反応基質及び生成物である。又、反応基質を溶解させるための溶媒は以下の表5のとおりである。
得られた結果を表5に示す。ここで、表中の数字は式A〜Cの各化合物の反応液中での存在割合を示し、hrは反応時間を示す。
【0065】
【表5】
【0066】
表5から明らかなように、各実施例27〜37の場合、1置換二重結合部の選択的水素添加を所定の収率で行うことができた。特に、実施例27、28の場合、反応が4時間経過した時点で1置換二重結合部の選択的水素添加を100%の収率で行うことができるとともに、反応後24時間経過しても3置換二重結合部の水素添加が生じず、1置換二重結合部への水素添加の反応選択性がより優れたものとなった。
【0067】
(2)実施例38〜47、比較例8
上記したタイプ2の選択的水素添加反応として、水素添加し得る二重結合を2つ有する化合物12
【化13】
を用意した。ここで、式Aは反応基質、式Bはエステルに結合している2置換二重結合部が水素添加された部分水素化生成物、式Cはさらに側鎖3置換二重結合部も水素添加された望まない生成物、を示す。又、反応基質を溶解させるための溶媒は以下の表6のとおりである。
得られた結果を表6に示す。ここで、表中の数字は式A〜Cの各化合物の反応液中での存在割合を示し、hrは反応時間を示す。
【0068】
【表6】
【0069】
表6から明らかなように、各実施例38〜47の場合、エステルに結合している2置換二重結合部の選択的水素添加を所定の収率で行うことができた。特に、実施例38、39の場合、反応が24時間経過した時点で2置換二重結合部の選択的水素添加を100%の収率で行うことができるとともに、反応後48時間経過しても側鎖3置換二重結合部の水素添加が生じず、2置換二重結合部への水素添加の反応選択性がより優れたものとなった。一方、比較例8の場合、B式の生成物は得られず、望まないC式の生成物が生じた。
【0070】
(3)実施例124
化合物13
【化14】
を用意した。溶媒はトルエンを用いた。ここで、左式の化合物は反応基質であり、右式の左側化合物は目的とする生成物(白抜矢印の位置,1置換二重結合部を水素添加する)、右式の右側化合物は望まない生成物(白抜矢印の2ヶ所の位置,1置換二重結合部および3置換二重結合部を水素添加する)である。この実施例では、反応後4時間で1置換二重結合部の選択的水素添加を100%の収率で行うことができ、さらに反応後24時間経過しても3置換二重結合部の水素添加が生じなかった。
【0071】
(4)実施例125
化合物14
【化15】
を用意した。溶媒はトルエンを用いた。ここで、左式の化合物は反応基質であり、右式の化合物は目的とする生成物(白抜矢印の位置,1置換二重結合部を水素添加する)である。この実施例では、反応後4時間で1置換二重結合部の選択的水素添加を100%の収率で行うことができ、さらに反応後24時間経過しても3置換二重結合部の水素添加が生じなかった。
【0072】
(5)実施例126
化合物15
【化16】
を用意した。溶媒はトルエンを用いた。ここで、左式の化合物は反応基質であり、右式の左側化合物は目的とする生成物(白抜矢印の位置,(1置換二重結合部を水素添加する)、右式の右側化合物は望まない生成物(白抜矢印の2ヶ所の位置,1置換二重結合部および3置換二重結合部を水素添加する)である。この実施例では、反応後4時間で1置換二重結合部の選択的水素添加を100%の収率で行うことができ、さらに反応後24時間経過しても3置換二重結合部の水素添加が生じなかった。
【0073】
(6)実施例127
化合物16
【化17】
を用意した。溶媒はトルエンを用いた。ここで、左式の化合物は反応基質であり、右式の化合物は目的とする生成物(白抜矢印の位置,2置換二重結合部を水素添加する)である。この実施例では、反応後4時間で2置換二重結合部の選択的水素添加を26%の収率で行うことができ、反応後8時間では52%の収率となり、反応後24時間では100%の収率となった。さらに反応後48時間経過しても3置換二重結合部の水素添加が生じなかった。又、反応中、3置換二重結合部の水素添加は全く生じなかった。
【0075】
(8)実施例129
前記化合物2を用意した。溶媒はメタノールを用い、この実施例のみ反応温度を−30℃(243K)とした。ここで、式A〜Cは前記化合物2において説明したとおりである。得られた結果を表7に示す。ここで、表中の数字は式A〜Cの各化合物の反応液中での存在割合を示し、hrは反応時間を示す。
【0076】
【表7】
【0077】
表7から明らかなように、この実施例では、1置換二重結合部の選択的水素添加を所定の収率で行うことができた。特に、反応後30分では1置換二重結合部の水素添加のみ生じ、3置換二重結合部の水素添加は全く生じなかった。
【0078】
C.触媒の耐久性評価
1.実験条件
上記実施例1と同じ還元触媒を用い、化合物18
【化19】
を反応基質とする触媒反応を行った。ここで、左式の化合物は反応基質であり、右式の化合物は目的とする生成物(白抜き矢印の末端二重結合部を水素添加する)である。反応基質12.5gをトルエン500mLに溶解し、実施例1の触媒(触媒物質の担持量が4mg)を浸漬し、水素雰囲気ですべての反応基質の末端二重結合部が完全に水素添加されるまで溶液を攪拌して反応させた。
【0079】
次に、化合物2をトルエン溶媒中の濃度が7.0×10−3mol/Lとなるよう溶解した溶液に、2% w/wとなるように上記触媒を浸漬し、水素雰囲気で4時間攪拌して反応させた。反応後、溶液から触媒を取り出し、溶媒留去後の残渣(生成物)の重量を測定し、さらに残渣をNMR(核磁気共鳴法)測定して生成物の構造を特定した。その結果、化合物2における式Bの生成物(末端の1置換二重結合が水素添加された部分水素化生成物)が100%の収率で得られた。この収率は、未使用の還元触媒を用いた場合の値と同じであり、本発明の還元触媒4mgが84mmol(12.5g)の反応基質に触媒作用してもなお活性を維持していることを示している。このとき、turnoverと称される触媒の耐久性指標を求めると、2.1×102mol/g以上(触媒1g当り、反応基質を2.1×102mol以上反応させることができる値)となった。
【0080】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の還元触媒は、触媒物質が担体の空隙の周りに担持されているので、触媒の有効表面積が増大し、反応性に優れている。その結果として、従来の粉末触媒に比べて反応に必要な触媒物質の量を低減することもできる。又、触媒物質は担体の空隙内に存在し、外部と接触しずらいため、触媒物質の物理的接触による脱落等が生じにくく耐久性が向上する。又、反応後に触媒を反応系から分離しやすく、従来の粉状触媒に比べて取り扱いも容易になる。
【0081】
本発明の製造方法によれば、担体が液体を吸収しやすいため、担体の内部に遷移元素イオンを含む溶液を確実に含浸させることができ、担体の内部に触媒物質が担持され有効表面積の大きく反応性に優れた触媒を製造することができる。又、担体に上記溶液を含浸させて水素ガス中に保持するだけで触媒を製造することができる。さらに、担持量の調整は、溶液の濃度や含浸量を調整するだけでよいので、担持量の調整を簡便かつ正確に行うことができる。
【0082】
本発明の選択的水素添加方法によれば、不飽和結合を有する反応対象物を含む溶液中に水素ガスの存在下で還元触媒を浸漬するだけで、水素添加反応を選択的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の還元触媒の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】 還元触媒を捕集布で包んだ状態を示す図である。
【図3】 本発明の還元触媒の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
2 担体
2a 樹脂繊維
4 触媒物質(遷移元素)
10 還元触媒
Claims (5)
- 合成繊維からなる不織布(但し、グラフト重合された合成繊維を除く)である担体に遷移元素イオンを含む溶液を含浸後、該担体を室温で水素ガス中に保持して前記遷移元素イオンを還元することにより得られ、複数の不飽和結合を有する反応対象物の1置換二重結合部又は2置換二重結合部を選択的水素添加することを特徴とする還元反応用触媒。
- 前記遷移元素は、パラジウムであることを特徴とする請求項1に記載の還元反応用触媒。
- 合成繊維からなる不織布(但し、グラフト重合された合成繊維を除く)である担体に遷移元素イオンを含む溶液を含浸させる工程と、
含浸後の担体を室温で水素ガス中に保持して前記遷移元素イオンを還元する工程と
を有し、複数の不飽和結合を有する反応対象物の1置換二重結合部又は2置換二重結合部を選択的水素添加することを特徴とする還元反応用触媒の製造方法。 - 前記遷移元素は、パラジウムであることを特徴とする請求項3に記載の還元反応用触媒の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の還元反応用触媒を、複数の不飽和結合を有する反応対象物を含む溶液中に水素ガスの存在下で浸漬し、該反応対象物の1置換二重結合部又は2置換二重結合部を選択的水素添加することを特徴とする選択的水素添加方法。
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