JP4151161B2 - 基板用ガラス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、破壊の進行に対する抵抗力が大きい基板用ガラス、すなわち破壊じん性の大きな基板用ガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラープラズマディスプレイパネル(以下カラーPDPという。)に代表される大型フラットディスプレイパネルが普及しつつあり、その基板として使用されるガラスも多種多様化している。従来より、通常のソーダ石灰ガラスが大型フラットディスプレイパネル用基板として広く使用されてきた。その理由のひとつは、無機シール材料をはじめとして、パネルの構成部材として使用される様々なガラスフリット材料の熱膨張係数をソーダ石灰ガラスの熱膨張係数と整合させやすいからであった。
【0003】
一方、大型フラットディスプレイパネル製造工程の熱処理プロセスにおけるガラス基板の変形や熱収縮を小さくするために、基板用ガラスの耐熱性向上への強い要求がある。そのため、ソーダ石灰ガラスと同等の熱膨張係数を有し、かつ、より高い歪点(約550℃以上)を有し、かつ、電気絶縁性を高めるためにアルカリ含有量を低く抑えた、いわゆる高歪点ガラスが基板として広く使用されている。
【0004】
また、情報記録媒体用基板、特に磁気ディスク(ハードディスク)用基板として、表面の平滑性や、耐衝撃性などの機械的強度が優れているために、ガラス基板が実用化されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの高歪点ガラスはソーダ石灰ガラスと比較すると脆く、製造工程中に割れやすい問題があった。また、前記高歪点ガラスは比重が大きく、大型フラットディスプレイパネルの軽量化が困難である問題もあった。
【0006】
これらの問題を解決すべく、密度が小さくかつキズがつきにくい、フラットパネルディスプレイ用基板に好適な基板用ガラスが提案されている(特開平9−301733)。しかし、キズがつきにくいという特性は、破壊の起点となるキズがパネルの製造工程においてつく場合に対しては有効であるが、キズが前記製造工程前の切断等の加工処理中につく場合には必ずしも有効とはいえない。そして切断等の加工処理中にガラスのエッジ部にはすでに破壊起点となりうるキズが多数存在しているのが通常である。
【0007】
また、磁気ディスク用基板としてガラスを用いる場合にも、円形加工、芯抜き、内外周面面取り(チャンファリング)、等多くの加工処理が必要となる。これらの加工処理中に、やはりガラスのエッジ部等に破壊起点となりうるキズが多数発生し、製造工程においてのみならず磁気ディスク使用時にもそのキズを破壊起点としてガラスが割れる問題があった。特に、最近では読み書き(read/write)速度向上のためディスク回転の高速化が提言されており、この場合ガラスが割れる問題はより重要となる。
【0008】
このような場合にガラスの割れを防止するためには、本質的に引張応力による破壊の進行に対する抵抗力すなわち破壊じん性が高い基板用ガラスを提供する必要があった。
本発明は以上の課題を解決し、高いガラス転移点を有し、かつ熱膨張係数がソーダ石灰ガラスと同等であるとともに、破壊の進行に対する抵抗力すなわち破壊じん性が高く、製造工程で、または使用中に割れにくい基板用ガラスの提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、重量%表示で実質的に、
SiO2 45〜65、
Al2O3 6〜20、
B2O3 2.6〜 5、
MgO 2〜 5、
CaO 1〜10、
SrO 0〜 6.5、
BaO 0〜 2、
MgO+CaO+SrO+BaO 10〜17、
ZrO2 0〜 7、
Na2O+K2O 7〜15、
からなり、破壊じん性が0.70MPa・m1/2以上、ガラス転移点が600℃以上、50〜350℃の平均熱膨張係数が80×10−7〜95×10−7/℃である基板用ガラスを提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明でいう基板用ガラスとは、カラーPDP、プラズマアドレス液晶(PALC)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等のフラットパネルディスプレイ用の基板や、磁気ディスク等の情報記録媒体用の基板に用いられるガラスである。
本発明の基板用ガラスはフロート成形に適する。
【0011】
本発明の基板用ガラスは、重量%表示で実質的に、
SiO2 45〜65、
Al2 O3 10〜20、
B2 O3 2.6〜 5、
MgO 2〜 5、
CaO 1〜10、
SrO 0〜 4.5、
BaO 0〜 2、
MgO+CaO+SrO+BaO 10〜17、
ZrO2 0〜 5、
Na2 O+K2 O 7〜15、
からなることが好ましい。
【0012】
本発明における組成の限定理由は以下のとおりである(以下では特記しないかぎり重量%を単に%と表記する。)。
SiO2 はネットワークフォーマーであり必須である。65%超では50〜350℃の平均熱膨張係数(以下単に熱膨張係数という。)が小さくなりすぎるおそれがある。好ましくは59%以下、より好ましくは55%以下、特に好ましくは54%以下である。45%未満では耐熱性および化学的耐久性が低下するおそれがある。好ましくは50%以上である。
【0013】
Al2 O3 はガラス転移点を高くし、また耐熱性を高くする効果があり、必須成分である。20%超では熱膨張係数が小さくなりすぎるおそれがあり、また溶融ガラスの粘度が高くなりすぎてフロート成形が困難になる。好ましくは16%以下である。6%未満では前記効果が小さい。好ましくは10%以上、より好ましくは12%以上である。
なお、溶融ガラスが直接接触する部分にAZS(Al2 O3 −ZrO2 −SiO2 )系電鋳煉瓦が使用されているガラス溶融窯において本発明の基板用ガラスを溶融する場合は、Al2 O3 の含有量は6%以上10%未満であることが好ましい。10%以上ではAZS系電鋳煉瓦に対する溶融ガラスの侵食性が大きくなるおそれがある。
【0014】
B2 O3 は破壊じん性を高くし、またガラス溶解時の溶融ガラスの粘度を低下させる効果があり、必須成分である。6%超では熱膨張係数が小さくなりすぎる、または、ガラス溶解時のB2 O3 揮散が多くなりすぎるおそれがある。好ましくは5%以下である。0.5%未満では前記効果が小さい。好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上である。前記効果を大きくするためには2.6〜5%とすることが好ましい。なお、ガラス溶解窯炉材の揮散B2 O3 による損傷を抑制するためには、0.5〜2.5%とすることが好ましく、0.5〜1%未満とすることがより好ましい。
【0015】
MgOは破壊じん性を高くし、またガラス溶解時の溶融ガラスの粘度を低下させる効果があり、必須成分である。5%超ではガラスが不安定になるおそれがある。好ましくは4%以下である。2%未満では前記効果が小さい。好ましくは3%以上である。
【0016】
CaOは熱膨張係数を大きくし、またガラス溶解時の溶融ガラスの粘度を低下させる効果があり、必須成分である。10%超ではガラスが不安定になるおそれがある。好ましくは9%以下である。1%未満では前記効果が小さい。好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上である。
【0017】
SrOは必須ではないが、熱膨張係数を大きくし、またガラス溶解時の溶融ガラスの粘度を低下させる効果があり、6.5%までは添加してもよい。6.5%超では比重が大きくなりすぎるおそれがある。好ましくは4.5%以下、より好ましくは4%以下、特に好ましくは3%以下である。
【0018】
BaOは必須ではないが、熱膨張係数を大きくし、またガラス溶解時の溶融ガラスの粘度を低下させる効果があり、2%までは添加してもよい。2%超では比重が大きくなりすぎるおそれがある。好ましくは1%以下である。
【0019】
SrOおよびBaOの合量は7%以下であることが好ましい。7%超では比重が大きくなりすぎるおそれがある。より好ましくは6%以下、特に好ましくは5%以下である。
【0020】
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合量は10〜17%である。17%超ではガラスが不安定になるおそれがある。好ましくは15%以下である。10%未満ではガラス溶解時の溶融ガラスの粘度が高くなりすぎるおそれがある。好ましくは12%以上である。
【0021】
ZrO2 は必須ではないが、破壊じん性を高くし、ガラス転移点を高くし、また耐アルカリ性を向上させるために7%までは添加してもよい。7%超ではガラスが不安定になり、またガラスが傷つきやすくなるおそれがある。好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下である。なお、アルカリ性洗浄液を用いたガラス基板洗浄が行われる場合は、ZrO2 は5%超7%以下であることが好ましい。
【0022】
Na2 OおよびK2 Oは、熱膨張係数を大きくし、またガラス溶解時の溶融ガラスの粘度を低下させる効果を有する成分であり、それらの合量は7〜15%である。15%超では化学的耐久性および電気絶縁性が低下するおそれがある。好ましくは13%以下である。7%未満では前記効果が小さい。好ましくは9%以上である。
【0023】
Na2 Oは1〜10%であることが好ましい。10%超では電気絶縁性が低下するおそれがある。より好ましくは7%以下、特に好ましくは6%以下である。1%未満では、K2 Oとの共存による混合アルカリ効果(電気絶縁性の向上)が小さくなる、または、ガラス溶解時の溶融ガラスの粘度を高くするおそれがある。
【0024】
K2 Oは5〜14%であることが好ましい。14%超では電気絶縁性が低下するおそれがある。5%未満では、熱膨張係数が小さくなる、または、ガラス転移点が低下するおそれがある。好ましくは7%以上である。
【0025】
本発明のガラスは上記成分の他に、SO3 、As2 O3 、Sb2 O3 、等の清澄剤、Fe2 O3 、NiO、CoO、等の着色剤を適宜含有しうる。また、電子線等によるブラウニングを防止するために、TiO2 、CeO2 をそれぞれ2%以下、合量で2%以下、の範囲で添加できる。
【0026】
さらに、溶解性を改善するためにZnOを添加してもよいが、5%以上添加するとフロート成形を行うフロートバス内で還元されて欠点を生じるおそれがある。
また、Na2 O、K2 Oと同様の効果を得るために、Li2 Oを添加してもよい。ただし、過度の添加はガラス転移点の低下をもたらすおそれがあるため、2%以下とすることが好ましい。
【0027】
本発明のガラスの破壊じん性は、製造工程で、または使用中に割れにくいものとするために0.70MPa・m1/2 以上であることが好ましい。
本発明のガラスの比重は、軽量化のために2.65未満、特には2.6以下であることが好ましい。
【0028】
本発明のガラスのガラス転移点は、ガラス基板の熱変形または熱収縮が起りにくくするために、600℃以上とすることが好ましい。これは歪点が約550℃以上であることに相当する。
本発明のガラスの熱膨張係数は、ソーダ石灰ガラスと同程度の80×10-7〜95×10-7/℃、特には80×10-7〜90×10-7/℃であることが好ましい。
【0029】
本発明の基板用ガラスを用いたガラス基板は、たとえば次のような方法で製造できる。すなわち、通常使用される各成分の原料を目標成分になるように調合し、これを溶解炉に連続的に投入し、1500〜1650℃に加熱して溶解する。この溶融ガラスをフロート法により所定の板厚に成形し、徐冷後切断することによって、透明なガラス基板を得る。
【0030】
【実施例】
表の上段に重量%表示で示した組成となるように原料を調合して白金るつぼに入れ、1550〜1650℃に加熱し4〜5時間溶解した。その間白金スターラにより2時間撹拌しガラスの均質化を行った。次いで溶融ガラスを流し出して板状に成形後、徐冷を行った。
表のRO合量およびM2 O合量の欄にはそれぞれ、MgO、CaO、SrO、BaOの合量、およびNa2 O、K2 Oの合量を重量%表示で示す。
【0031】
得られたガラスについて、比重、破壊じん性(単位:MPa・m1/2 )、熱膨張係数(単位:10-7/℃)、ガラス転移点(単位:℃)を、また一部のガラスについては歪点(単位:℃)、溶融状態での粘度η、および比抵抗ρ(単位:Ω・cm)も測定した。測定結果を表に示す。表のlogη=4、logη=2、の欄に示されているのは、粘度ηがそれぞれ104 ポアズ、102 ポアズ、となる温度(単位:℃)である。前者はフロート成形性の指標、後者はガラス溶解性の指標である。また、表のlogρの欄に示されているのは、150℃におけるρの常用対数である。ρは電気絶縁性の指標であり、150℃においてlogρが9.5以上であることが好ましい。
【0032】
上記各種測定の方法を以下に示す。
比重:泡を含まない約30gのガラス塊についてアルキメデス法により測定した。
破壊じん性:Int.J.Fracture,16(1980)137〜141に記載のシェブロンノッチ法により測定した。すなわち、厚さ8mm、幅8mm、長さ80mmの試験片の中央部にシェブロン型ノッチを形成した。テンシロン型強度試験装置を用いて、スパン64mmに支持した試験片のノッチ先端から安定破壊が起こるようにクロスヘッド速度0.005mm/分で4点曲げ試験を行った。上スパンは16mmとした。なお、水分によるガラスの疲労効果を避けるため、乾燥N2 雰囲気中で測定を行った。
【0033】
熱膨張係数:示差熱膨張計を用いて、石英ガラスを参照試料として室温から5℃/分の割合で昇温した際のガラスの伸び率を測定した。測定はガラスが軟化してもはや伸びが観測されなくなる温度すなわち屈伏点まで行い、50〜350℃の平均の線熱膨張係数を算出した。
歪点:JIS R3103に規定されている方法により測定した。
ガラス転移点:上記熱膨張係数測定時に得られた熱膨張曲線における屈曲点に相当する温度を読み取りガラス転移点とした。
溶融状態での粘度:回転円筒法により測定した。
比抵抗:ASTM C657に規定されている方法により測定した。
【0034】
表から明らかなように、本発明の実施例である例1〜11のガラスの破壊じん性は0.70MPa・m1/2 以上であり、破壊の進行に対する抵抗力が高くなっている。また、比重も2.65未満であり、ガラス基板の軽量化が容易である。一方、比較例である例12、13のガラスはそれぞれカラーPDP用基板、磁気ディスク用基板として公知のガラスであるが、破壊じん性が0.70MPa・m1/2 未満であり、破壊の進行に対する抵抗力が低く、製造工程中でまたは使用中に割れる確率が高い。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、ソーダ石灰ガラスと同程度の熱膨張係数を有し、軽量かつ高歪点であり、破壊じん性が高いガラス基板を提供できる。
このガラス基板をフラットディスプレイパネルに用いることにより、フラットディスプレイパネルの製造工程中のガラスの割れが減少する、ガラス基板の熱変形または熱収縮が小さくなる、パネルの構成部材として使用されるガラスフリット材料の熱膨張係数との整合が容易になる、パネルが軽量化される、等の効果が得られる。
【0038】
また、このガラス基板を磁気ディスクに用いることにより、製造時または使用時のガラスの割れが減少するとともに、金属製固定治具の熱膨張係数との整合が容易になる。さらに、磁性層(磁気記録層)の熱処理温度を上げることができ、その結果磁性層の保磁力が高くなり磁気記録媒体の高記録密度化が可能となる。
Claims (3)
- 重量%表示で実質的に、
SiO2 45〜65、
Al2O3 6〜20、
B2O3 2.6〜 5、
MgO 2〜 5、
CaO 1〜10、
SrO 0〜 6.5、
BaO 0〜 2、
MgO+CaO+SrO+BaO 10〜17、
ZrO2 0〜 7、
Na2O+K2O 7〜15、
からなり、破壊じん性が0.70MPa・m1/2以上、ガラス転移点が600℃以上、50〜350℃の平均熱膨張係数が80×10−7〜95×10−7/℃であることを特徴とする基板用ガラス。 - 比重が2.65未満であることを特徴とする請求項1に記載の基板用ガラス。
- Na2O+K2Oが13.2重量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板用ガラス。
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