JP4070373B2 - 蛋白質maguin - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、神経シナプス結合後部の構成分子PSD-95/SAP90およびS−SCAMに特異的に結合する蛋白質MAGUIN−1と、そのアイソフォームであるMAGUIN−2に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、ヒトの神経系の形成や発達、あるいは記憶、学習等のメカニズムの解明、さらには神経系の機能的または構造的障害を原因とする各種神経疾患の診断、予防および治療のための技術開発等に有用な新規の蛋白質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒトをはじめとする多細胞生物の正常な機能維持には、秩序ある細胞接着とそれに引き続く細胞間の情報交換を支える細胞間結合の成立、さらにその細胞間結合を通じて受け渡しされる情報に基づいて引き起こされる細胞の分化といった一連の生命現象の時系制御が極めて重要である。
【0003】
多細胞生物に認められる細胞間結合には多くの共通性が存在するが、一方で、細胞の種類による特異性も存在し、とくに神経シナプス結合は他の細胞間結合とは大きく異なる特徴を有している。第一に、神経シナプス結合は極性を有し、その前部と後部では構造が著しく異なる。前シナプス膜は神経伝達物質の放出に関わる構造を有するのに対し、後シナプス膜はpostsynaptic density(PSD)と呼ばれる特異な細胞骨格構造を有している(Curr. Opin. Neurobiol. 3, 732-737, 1993; Trends Neurosci. 20, 264-268, 1997)。第二には、神経シナプス結合は一度成立した後にも神経刺激伝達に伴い結合の性状の変化(可塑性)を示すということである。この可塑性は、記憶・学習のメカニズムの基本を成す現象であると考えられており、正に神経シナプス結合を他の細胞間結合から際立たせる特徴である。可塑性のメカニズムの詳細は未だ明らかでないが、神経シナプス結合の前部に依存する前シナプス可塑性と、後部に依存する後シナプス可塑性の存在が知られている。いずれにしても神経シナプス結合の特徴的な構造が深く関与していることが予測され、この構造の解明が可塑性のメカニズム、さらには記憶・学習のメカニズム解明に必須であると考えられている。
【0004】
効果的な神経伝達のためには、後シナプス膜において神経伝達物質受容体が正確な位置に存在することが必要である。最近の研究から、PSDにおいて様々な受容体の蓄積とクラスタリングに機能する幾つかの分子が同定されている。例えば、PSD-95/SAP90とそのアイソフォーム(isoforms)はNMDA受容体およびShaker型K+チャネルに結合し(例えば、Neuron 9, 929-942, 1993)、またGRIPおよびHomerはAMPA受容体と代謝性グルタミン酸受容体にそれぞれ結合する(Nature 386, 279-284, 1997; Nature 386, 284-288, 1997)ことが知られている。これら分子の共通の特徴は、それらが、蛋白質−蛋白質相互作用のためのモジュールPDZドメインを有するということである(例えば、Trends Biochem. Sci. 20, 102-103, 1995; Trends Biochem. Sci. 20, 350, 1995; Curr. Biol. 6, 1385-1388, 1996; Neuron 17, 575-578, 1996)。
【0005】
PDZドメインは最初、PSD-95/SAP90の約90アミノ酸の繰り返しとして見出され、その後、3つの蛋白質[PSD-95/SAP90、ショウジョウバエ(Drosophilia)のdiscs-large 腫瘍抑制蛋白質Dlg−A、tight junction蛋白質ZO−1)に含まれることからPDZと命名された(Neuron 9, 929-942, 1992; J. Biol. Chem. 268, 4580-4583, 1993; Cell 66, 451-464, 1991; J. Cell Biol. 121, 491-502, ; Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 90, 7834-7838, 1993)。このPDZドメインは様々な蛋白質のC末端配列に結合する。すなわち、PSD-95/SAP90の第1および第2のPDZドメインはNMDA受容体およびShaker型K+チャネルと結合する(Science 269, 1737-1740, 1995; Nature 378, 85-88, 1995)。第3のPDZドメインはニューロリギン(neuroligin)と呼ばれる神経細胞接着分子の細胞質ドメインと結合する(Science 277, 1511-1515, 1997)。また、PSD-95/SAP90はN末端のディサルフィド結合を介してホモテトラマを形成する(Neuron 18, 803-814, 1997)。
【0006】
PSD-95/SAP90は、PDZドメインの他に1つのSH3ドメインと1つのグアニル酸キナーゼ(GK)ドメインを有している。SH3ドメインはsrcチロシンキナーゼのシグナル伝達モジュールとして規定されていたが、その後他の多くの蛋白質でも同定されている(Cell 80, 237-248, 1995)。ただし、PSD-95/SAP90におけるSH3ドメインの機能は不明である。GKドメインは酵母グアニル酸キナーゼと相同であり、様々な膜関連蛋白質に存在する。これらの蛋白質は特定の膜構造を維持していると考えられており、膜関連グアニル酸キナーゼ(membrane-associated guanylate kinase:MAGUK)と命名されている(Mech. Dev. 44, 85-89, 1993; Curr. Biol. 6, 382-384, 1996)。
【0007】
近年、PSD-95/SAP90のGKドメインと相互作用する分子が3つの研究グループによって同定され、GKAP/SAPAP/DAPと命名されている(J. Cell Biol. 136, 669-678, 1997; J. Biol. Chem. 272, 11943-11951, 1997; Genes Cells 2, 415-424, 1997; J. Neurosci. 17, 5687-5696, 1997)。これらの分子のうち、SAPAP(1,2)はこの出願の発明者らが見出した分子であり、既に特許出願している(特願平9-11714号、特願平9-11715号)。またこの出願の発明者らは、HEK293細胞においては、このSAPAPが細胞膜と強固に結合し、PSD-95/SAP90を細胞膜に移行させることを見出してもいる(J. Biol. Chem. 272, 11943-11951, 1997)。
【0008】
そしてさらにこの出願の発明者らは、神経シナプス結合後部のPSD形成に関与するGKAP/SAPAP/DAPに特異的に結合する分子を見出している。このGKAP/SAPAP/DAP結合分子はMAGUKの構造を有し、N末端のGKドメインと2つのWWドメインおよび6つのPDZドメインを有し、GKドメインを介してGKAP/SAPAP/DAPに結合し、PDZドメインを介してNMDA受容体およびニューロリギン(neuroligin)に結合する。そして、この蛋白質はシナプス結合の受容体および細胞接着蛋白質を統合させることから、S−SCAM(synaptic scaffolding molecule)と命名され、既に特許出願されている(特願平10-302239号)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この出願の発明者らおよびその他の研究グループから提出された様々な知見により、GKAP/SAPAP/DAPはPSDの中核的な蛋白質であると考えられ、そして、このGKAP/SAPAP/DAPに結合するS−SCAMがPSD形成に重要な役割を果たしていることが明らかにされつつあるが、PSD形成の全貌を解明するためには、S−SCAMと相互作用する新規分子を特定することが不可欠である。
【0010】
また、このような分子の同定とその機能の解明は、ヒトの記憶・学習といった高次脳機能の理解に大きな前進をもたらすばかりか、この分子あるいはこの分子の活性、作用に影響する様々な物質、化合物等は、中枢神経系の機能的または構造的障害を原因とする様々な神経疾患の原因解明、並びにそれら疾患の診断、予防および治療法等の開発に大きく寄与するものと期待される。
【0011】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、神経シナプス結合後部のPSD形成に関与する重要な役割を果たしているS−SCAMに特異的に結合する未知分子を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この出願は、上記の課題を解決するものとして以下の(1)〜(9)の発明を提供する。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列を有するラット蛋白質MAGUIN−1。
(2) 配列番号3のアミノ酸配列を有するラット蛋白質MAGUIN−2。
(3) 前記発明(1)のラット蛋白質MAGUIN−1、および請求項2のラット蛋白質MAGUIN−2をコードするラット遺伝子。
(4) 前記発明(3)の遺伝子のcDNAであって、配列番号2の塩基配列を有するDNA断片。
(5) 前記発明(3)の遺伝子のcDNAであって、配列番号4の塩基配列を有するDNA断片。
(6) 前記発明(4)または(5)のDNA断片を保有する組換えベクター。
(7) 前記発明(1)のラット蛋白質MAGUIN−1に対する抗体。
(8) 配列番号1と相同のアミノ酸配列を有し、前記発明(1)のラット蛋白質MAGUIN−1と同一の機能を有する動物性蛋白質。
(9) 配列番号3と相同のアミノ酸配列を有し、前記発明(2)のラット蛋白質MAGUIN−2と同一の機能を有する動物性蛋白質。
【0013】
前記発明(1)の蛋白質MAGUIN−1は、yeast two-hybrid法を用いてS−SCAMとの相互作用分子を探索した結果単離された新規の蛋白質分子であり、SAMドメイン、PDZドメインおよびPHドメインを有し、C末端にはPDZに対する結合のコンセンサスモチーフを持っており、PSD−95とも結合する。また、前記発明(2)の蛋白質MAGUIN−2はMAGUIN−1のalternative splicing form(アイソフォーム)であり、PDZ結合モチーフを欠損している。
【0014】
コンピューターによるホモロジー検索の結果、これらの蛋白質は新規蛋白質であることが確認されている。なお、MAGUINとは、"membrane-associated guanylate kinase-interacting protein"から命名した。
【0015】
以下、この出願の前記発明(1)〜(9)について実施の形態を詳しく説明する。
【0016】
【発明の実施の形態】
発明(1)のラット蛋白質MAGUIN−1は、配列番号2に塩基配列を示したcDNAにコードされた蛋白質であり、配列番号1のアミノ酸配列を有している。そして、このアミノ酸配列には、SAMドメイン(アミノ酸番号8−75)、PDZドメイン(アミノ酸番号157−296)、PHドメイン(アミノ酸番号572−667)、およびPDZに対する結合のコンセンサスモチーフ(アミノ酸番号1029−1032)が含まれている。
【0017】
発明(2)のラット蛋白質MAGUIN−2は、配列番号4に塩基配列を示したcDNAにコードされた蛋白質であり、配列番号2のアミノ酸配列を有している。そして、このアミノ酸配列には、SAMドメイン(アミノ酸番号8−75)、PDZドメイン(アミノ酸番号157−296)、およびPHドメイン(アミノ酸番号572−667)が含まれている。
【0018】
また、ノザン解析の結果、図1に示したように、MAGUIN−1はラットの脳でのみ発現していることが確認されている。
これらの蛋白質MAGUIN−1およびMAGUIN−2(以下、「MAGUINs」と記載することがある)は公知の方法、すなわちラットの脳から単離する方法、この発明によって提供されるアミノ酸配列に基づき化学合成によってペプチドを調製する方法、あるいはこの発明によって提供されるcDNA断片を用いて組換えDNA技術で生産する方法などにより取得することができる。例えば、組換えDNA技術によってMAGUINsを取得する場合には、発明(4)または(5)のcDNA断片を有するベクターからインビトロ転写によってRNAを調製し、これを鋳型としてインビトロ翻訳を行なうことによりインビトロで発現できる。また翻訳領域を公知の方法により適当な発現ベクターに組換えれば、大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞等で、cDNAがコードするMAGUINsを大量に発現させることができる。
【0019】
この発明の蛋白質MAGUINsを大腸菌などの微生物で発現させる場合には、微生物中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、cDNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発現ベクターに、この発明のcDNAの翻訳領域を挿入結合して組換えた発現ベクター(発明(6))を作成し、この発現ベクターで宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、cDNAがコードしているMAGUINsを微生物内で大量生産することができる。あるいは、他の蛋白質との融合蛋白質として発現させることもできる。得られた融合蛋白質を適当なプロテアーゼで切断することによって、cDNAがコードするタンパク質部分のみを取得することもできる。
【0020】
蛋白質MAGUINsを動物細胞で発現させる場合には、この発明のcDNAの翻訳領域を、動物細胞用プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する動物細胞用発現ベクターに組換え(発明(6))、動物細胞内に導入すれば、この発明のMAGUINsを動物細胞内で発現できる。
【0021】
以上のとおりの方法によって得られるラット蛋白質MAGUINsは、例えば、この蛋白質を特異的に認識する抗体を作成するための抗原として使用することができる。
【0022】
この発明のラット蛋白質MAGUINsには、配列番号1または2で表されるアミノ酸配列のいかなる部分アミノ酸配列を含むペプチド断片(5アミノ酸残基以上)も含まれる。これらのペプチド断片もまた抗体を作製するための抗原として用いることができる。
【0023】
発明(3)は、上記の蛋白質MAGUINsをコードするラットの遺伝子であって、例えば、発明(4)または(5)のcDNAもしくはその一部配列をプローブとして、既存のゲノムライブラリーから単離することができる。
【0024】
発明(4)および(5)のcDNAは、それぞれ配列番号2および4で表される塩基配列を有することを特徴とするものであり、この発明の前記蛋白質MAGUIN−1およびMAGUIN−2をそれぞれコードしている。蛋白質MAGUINsは少なくともラットの脳組織で発現しているので、配列番号2または4の塩基配列に基づいて合成したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ラット脳cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、この発明のcDNAと同一のクローンを容易に得ることができる。あるいは、これらのオリゴヌクレオチドをプライマーとして、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、目的cDNAを合成することもできる。
【0025】
一般に哺乳動物の遺伝子は個体差による多型が頻繁に認められる。従って配列番号2または4において、1または複数個のヌクレオチドの付加、欠失および/または他のヌクレオチドによる置換がなされているcDNAもこの発明に含まれる。
【0026】
同様に、これらの変更によって生じる1または複数個のアミノ酸残基の付加、欠失および/または他のアミノ酸残基による置換がなされている蛋白質も、配列番号1または2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質の活性を有する限り、この発明に含まれる。
【0027】
さらに、発明(4)および(5)のDNA断片には、配列番号2および4で表される塩基配列のアンチセンス鎖からなるDNA断片も含まれる。
【0028】
発明(7)の抗体は、蛋白質それ自体、またはその部分ペプチドを抗原として、公知の方法により、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体として得ることができる。
【0029】
発明(8)および(9)の蛋白質は、各々、配列番号1および3と相同のアミノ酸配列を有し、発明(1)および(2)のMAGUINsと同一の機能を有するラット以外の動物蛋白質である。このような蛋白質は、例えば、発明(4)または(5)のcDNAをプローブとして様々な動物種のcDNAライブラリーから相同のcDNAを単離し、このcDNAを微生物、動物細胞または植物細胞等で発現させることにより取得することができる。
【0030】
以下、蛋白質MAGUINsを単離した方法およびその機能の解析結果等について詳しく説明する。
1.MAGUINsの単離
公知の方法(J. Neurosci. 16, 2488-2494, 1996)に従い、ラット脳yeast two-hybridライブラリー(5×106クローン)を構築し、S−SCAMのPDZドメインを含むバイト(bait)を用いてスクリーニングした。その結果、34個のポジティブクローンが得られ、そのうち、22個が新規クローンであった。さらにノザン解析の結果、脳でのみ発現がみられる2個のクローンを得たが、そのうち1クローンは公知のヒト遺伝子のラットホモログであることが判明した。
【0031】
残りの1クローンについて、ラット脳cDNAライブラリーのスクリーニングと、そのラット脳cDNAを鋳型とするPCRにより、全配列を決定した。
2つのアイソフォームが得られ、各々、MAGUIN−1およびMAGUIN−2と命名した。MAGUIN−1は、配列番号2に塩基配列を示したcDNAにコードされた蛋白質であり、配列番号1のアミノ酸配列を有している。そして、このアミノ酸配列には、SAMドメイン(アミノ酸番号8−75)、PDZドメイン(アミノ酸番号157−296)、PHドメイン(アミノ酸番号572−667)、およびPDZに対する結合のコンセンサスモチーフ(アミノ酸番号1029−1032)が含まれている。MAGUIN−2は、配列番号4に塩基配列を示したcDNAにコードされた蛋白質であり、配列番号2のアミノ酸配列を有している。そして、このアミノ酸配列には、SAMドメイン(アミノ酸番号8−75)、PDZドメイン(アミノ酸番号157−296)、およびPHドメイン(アミノ酸番号572−667)が含まれている。
2.MAGUINsとS−SCAMおよびPSD-95/SAP90との結合
先ず、MAGUINsとS−SCAMとの結合を調べるため、S−SCAMを発現するCOS細胞の抽出物と、GST−MAGUIN−12(MAGUIN−1のC末端)またはGST−MAGUIN−16(MAGUIN−2のC末端)をインキュベートした。結果は図2に示したとおりであり、MAGUIN−1のC末端はS−SCAMと結合したが、MAGUIN−2のC末端は結合しなかった。なお、図2のウェスタンブロット解析において、バンドの検出には抗S−SCAM抗体(J. Biol. Chem. 273, 21105-21110, 1998)を使用した。
【0032】
S−SCAMのMAGUIN−1結合領域を調べるため、図3Aに示した様々なMyc標識S−SCAMコンストラクトを作成し、GST−MAGUIN−12(MAGUIN−1のC末端)とインキュベートした。結果は図3Bに示したとおりであり、4番目と5番目のPDZドメインが両者の結合に関係していることが確認された。なお、図3Bのウェスタンブロット解析において、バンドの検出には抗Mycモノクローナル抗体9E10(ATCCから入手)を使用した。
【0033】
次に、pBTM116 MAGUIN−9(配列番号1の846-1032)をバイトとする逆yeast two-hybridスクリーニングによって、PSD-95/SAP90、PSD93/chapsyn110およびSAP97の各々のPDZドメインが得られた。このことから、MAGUIN−1はS−SCAMのみならず、PSD-95/SAP90とそのアイソフォームにも結合することが確認された。また、図4Aは、MAGUIN−1とPSD-95/SAP90との共免疫沈降を調べたウェスタンブロット解析の結果である。ラットの粗シナプトゾーム画分のTriton X-100抽出物を抗PSD-95/SAP90血清または免疫前の血清とProtein G−セファロースビーズ上でインキュベートし、ビーズに結合した蛋白質を抗MAGUIN抗体によってイムノブロットした。抗MAGUIN抗体は、pGex4T-1 MAGUIN−1(配列番号1の716−858)を免疫原として作成されたウサギ・ポリクローナル抗体である。図4Aにおいて、レーン1はインキュベーション前の粗シナプトゾーム抽出物のサンプル、レーン2は免疫前の血清とインキュベートしたサンプル、レーン3は抗PSD-95/SAP90血清とインキュベートしたサンプルである。この図4Aに示したように、MAGUIN−1はラットの粗シナプトゾーム画分のPSD-95/SAP90と共免疫沈降した。さらに、図4Bは、MAGUIN−1とPSD-95/SAP90のPDZドメインとの結合を調べたウェスタンブロット解析の結果である。Myc標識した様々なPSD-95/SAP90を発現するCOS細胞抽出物と、グルタチオンビーズを結合したGST−MAGUIN−12(MAGUIN−1のC末端)またはGST−MAGUIN−16(MAGUIN−2のC末端)とをインキュベートし、ビーズに結合した蛋白質を抗Myc抗体で検出した。レーン1−3は全長PSD-95/SAP90、レーン4−6はPSD-95/SAP90のPDZドメイン、レーン7−9はSrcホモロジー3とPSD-95/SAP90のGKドメインである。さらに、レーン1、4および7はインキュベーション前のサンプル、レーン2、5および8はGST−MAGUIN−12とのインキュベーション後のサンプル、レーン3、6および9はGST−MAGUIN−16とのインキュベーション後のサンプルである。この図4Bに示したように、MAGUIN−1がPSD-95/SAP90のPDZドメインと結合することが確認された。
3.MAGUINsの組織および細胞分布
図1にも示したように、ノザン解析によって、MAGUINsがラットの脳でのみ発現することが確認された。さらに、ラット脳細胞にける分布を調べたところ、MAGUINsは主に、シナプス形質膜(synaptic plasma membrane:SPM)およびPSD画分で発現することが確認された(図5A)。また、ラットの海馬ニューロンでは、MAGUINsは細胞体と神経突起に分布し、NMDAR1と共存していることが確認された(図5B)。
【0034】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明の蛋白質MAGUINsは神経シナプス結合後部におけるPSD形成に重要な役割を果たしている蛋白質S−SCAMに特異的に結合する新規な蛋白質であり、この蛋白質はヒトをはじめとする動物の神経系の発生や発達、あるいは記憶、学習等のメカニズムの解明、さらには神経系の機能的または構造的障害を原因とする各種神経疾患の診断、予防および治療のための技術開発等に有用である。
【0035】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】MAGUINsの組織分布を調べたノザン解析の結果である。
【図2】MAGUINsとS−SCAMとの結合を調べたウェスタンブロット解析の結果である。レーン1はインキュベーション前のサンプル、レーン2はGST−MAGUIN-12とインキュベートしたサンプル、レーン3はGST−MAGUIN-16とインキュベートしたサンプルである。
【図3】Aは、S−SCAMのMAGUIN−1結合ドメインを調べるのに作成した様々なS−SCAMコンストラクト(a〜g)の構成図であり、Bは、ウェスタンブロット解析の結果である。
【図4】Aは、MAGUIN−1とPSD-90/SAP90との共免疫沈降を調べたウェスタンブロット解析の結果である。BはMAGUIN−1とPSD-90/SAP90のPDZドメインとの結合を調べたウェスタンブロット解析の結果である。
【図5】Aは、ラット脳細胞におけるMAGUINsの分布を調べたウェスタンブロット分析の結果である。ラット脳の微細胞画分を抗MAGUIN抗体でイムノブロットした。レーン1はホモジネート画分、レーン2は核ペレット画分、レーン3は粗シナプトゾーム画分、レーン4はシナプトゾームサイトゾル画分、レーン5は粗シナプトゾームペレット画分、レーン6は粗シナプス小胞画分、レーン7は溶出したシナプトゾーム膜画分、レーン8はSPM画分、レーン9はSPMの0.5%(W/V) Triton X-100可溶性画分、レーン10はSPMの0.5%(W/V) Triton X-100不可溶性画分、レーン11はSPMの1.0%(W/V) Triton X-100可溶性画分、レーン12はSPMの1%(W/V) Triton X-100不可溶性画分である。Bは、ラット海馬ニューロンにおけるMAGUINsの発現を示した顕微鏡写真である。海馬ニューロンをマウス抗MAGUINポリクローナル抗体で免疫染色した。スケールバーは10μmを示す。
Claims (6)
- 配列番号1のアミノ酸配列からなり、神経シナプス結合後部の構成分子PSD−95/SAP90とS−SCAMに結合するラット蛋白質MAGUIN−1。
- 請求項1のラット蛋白質MAGUIN−1をコードするラット遺伝子。
- 請求項2のラット遺伝子のcDNAであって、配列番号2の塩基配列を含むDNA断片。
- 請求項3のDNA断片を保有する組換えベクター。
- 請求項1のラット蛋白質MAGUIN−1に対する抗体。
- 配列番号1のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の付加、欠失および/または他のアミノ酸残基による置換がなされたアミノ酸配列からなり、神経シナプス結合後部の構成分子 PSD-95 / SAP90 と S-SCAM に結合する蛋白質。
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