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JP4053295B2 - 穴明け工具 - Google Patents

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JP4053295B2
JP4053295B2 JP2002016153A JP2002016153A JP4053295B2 JP 4053295 B2 JP4053295 B2 JP 4053295B2 JP 2002016153 A JP2002016153 A JP 2002016153A JP 2002016153 A JP2002016153 A JP 2002016153A JP 4053295 B2 JP4053295 B2 JP 4053295B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば硬さが40HRC以上のような高硬度鋼材に穴明け加工するのに適したドリル等の穴明け工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、冷間ダイス鋼等の金型に穴明け加工等を行う場合、穴明け加工後に熱処理していたため、一般鋼用工具を用いて加工できたが、近年では金型加工の工期短縮によるコスト低減の要請等により、加工用鋼材を熱処理後に穴明け加工を行う方法が増大してきている。この場合、熱処理後の穴明け加工の際に放電加工等を用いると加工能率が低いため、例えば40〜60HRC程度、最大70HRC程度の高硬度鋼材を加工可能な高硬度鋼用ドリルを用いて穴明け加工等を行うようになって来ている。
この場合、これらのドリルは、いずれも加工穴の深さLとドリル外径Dの加工穴比L/Dが3以下の浅穴用に用いられていた。このような技術として例えば特開平7−80714号公報や特開平7−112311号公報等に開示されたものがある。
【0003】
従来のドリルによれば、40HRCを超えるような高硬度鋼材加工用のドリルでは、工具本体の先端切刃が切削加工時に摩耗したりチッピングや欠損等を起こし易く切刃の損耗が著しく進行してしまい工具寿命が短いという欠点を有している。そのため、一般鋼加工用の通常のドリルは切屑排出溝のねじれ角が20°〜30°程度であるが、上述した公知文献記載のような高硬度鋼材加工用のドリルではねじれ角10°〜20°程度の弱ねじれを採用し、また芯厚を厚くしてドリル外径をDとした時に芯厚0.3D以上として、或いはこれらの構成を組み合わせることで工具剛性を高めて工具寿命を維持するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような高硬度鋼材の穴明け加工において、例えば後工程で加工穴の仕上げ加工を行なう場合には上記高硬度鋼材用ドリルによる穴加工は下穴加工になり、そのために工具寿命の他に、その穴加工精度について高い精度が要求される。しかしながら、上述した工具剛性を高めるための構成は芯厚を大きくして切屑排出溝のねじれ角を緩くすると切刃欠損や工具折損を生じにくくはなるが、切削抵抗が大きくなって切れ味が低下し加工穴精度を悪化させるという欠点がある。
この発明は、このような実情に鑑み、加工精度を損なうことなく工具寿命を向上できるようにした穴明け工具を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明による穴明け工具は、回転軸線回りに回転させられる工具本体の外周に回転軸線回りにねじれた切屑排出溝を形成するとともに、この切屑排出溝の回転方向を向く壁面と先端逃げ面との稜線部に切刃を形成した穴明け工具において、前記切刃のラジアルレーキ角が−5°〜−7°の負角に設定されているとともに、前記工具本体の先端角が125°〜135°の範囲に設定され、前記工具本体の材質は、少なくとも前記切刃の領域が(10±2wt%)Co−(0.65±0.25wt%)Cr−(残)WC及び不可避不純物の組成を有してWCの平均粒径が0.1〜1.0μmである超硬合金であり、前記工具本体の溝幅比を0.9〜1.1の範囲に設定した上で、前記工具本体の芯厚が切刃外径をDとして0.38D〜0.42Dに設定されるとともに、前記切屑排出溝のねじれ角が5°〜15°に設定されていることを特徴とする。
切刃のラジアルレーキ角がこの範囲であれば切削抵抗と切刃欠損を抑えて良好な切れ味を確保できる。炭素鋼等の一般鋼の穴加工であればラジアルレーキ角がポジティブでも切削可能であるが、40HRC以上のような高硬度鋼材ではラジアルレーキ角が−5°より大きいと切刃欠損を起こし易く−10°より小さいと切削抵抗が増大して穴加工精度不良を引き起こす。
また工具本体の先端角が125°より小さいと高硬度鋼の穴加工では切刃先端食い付き時での振動(ビビリ)を生じ易く切刃が完全に被削材に食い付くまでの不安定切削領域が長く、135°を超えると食い付き性が悪く、いずれの場合も穴精度不良になる。
そして、前記工具本体の少なくとも切刃の領域の材質として(10±2wt%)Co−(0.65±0.25wt%)Cr−(残)WC及び不可避不純物の組成を有する超硬合金を採用しているので、工具本体を高剛性とすることができる。
【0006】
また本発明による穴明け工具においては、工具本体の溝幅比を0.9〜1.1の範囲に設定されている。
この溝幅比が0.9より小さいとスペースの減少によって切屑詰まりを起こし、1.1を超えると工具剛性低下を来たし、いずれの場合も穴精度不良と工具折損を引き起こす。
更に工具本体の芯厚が切刃外径をDとして0.38D〜0.42Dに設定されるとともに、切屑排出溝のねじれ角が5°〜15°に設定されている。
芯厚が0.38Dより小さいと工具の曲げ剛性が不足し、0.42Dを超えると切屑排出溝のスペースが不十分で切屑詰まりによる切削抵抗増大を起こし、いずれも穴精度不良と工具寿命低下を来す。
ねじれ角が5°より小さいと切れ味と切屑排出性の低下による工具欠損を引き起こし、15°を超えるとねじれ剛性不足により穴精度不良となる。
【0007】
また工具本体の前記超硬合金のWCの平均粒径が0.1〜1.0μmであることにより、微細粒径であるために刃型形状の自由度が高くラジアルレーキ角を−5°〜−7°に設定しても耐久性があり欠損を防止できる。特にこのように平均粒径の小さいWCを用いた上述のような組成の超硬合金を材質とすることで、切刃の切れ味を向上させる手段の一つとしてラジアルレーキ角を−5°〜−7°と正角方向に大きく設定することが可能で、靱性と耐欠損性に優れ穴加工精度と工具寿命を向上できる。
更に工具本体は少なくとも切屑排出溝を有する領域が高硬度材料であるTiAlNの薄膜でコーティングされていてもよい。
高硬度材料の薄膜としてTiAlNを被覆することで切屑との摩擦抵抗が軽減し切削トルクやスラスト等の荷重を低減する効果があり、その結果として切刃の耐欠損性が向上し工具寿命の延長が図られる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図4を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。 図1は実施の形態によるドリルの先端面図、図2はドリルの刃部先端側の側面図、図3はドリルの刃部の軸直交断面図、図4は図1に示すドリルの側面図である。
図1乃至図4に示す本実施の形態による穴明け工具としてのドリル1は、工具本体2がシャンク部3と刃部4とからなる略棒状を呈しており、後述するように超硬合金製とされている。工具本体2の刃部4の外周面4aに2つの切屑排出溝6,6が工具本体2の回転軸線Oを中心に対向して回転対称に形成され、回転軸線O回りにねじれている。
【0009】
図1及び図2において、各切屑排出溝6,6の回転方向を向く先端側の壁面6a,6aと刃部4の先端面7との各交差稜線部に一対の切刃8,8が形成されている。
また図1に示す工具本体2の先端面7において、各切刃8は回転軸線Oから径方向外側に向かう略直線状の中心側刃部8aと、中心側刃部8aに対して鈍角をなすように回転方向後方側に湾曲して径方向外周端縁まで延びる略直線状の外周側切刃8bとでそれぞれ形成されている。切刃8は図では中心側切刃8aと外周側切刃8bとの接続領域が円弧状に湾曲して滑らかに接続されているが、これに限定されることなく、例えば接続部が鈍角(例えば150°〜170°)の2つの面が交差する直線になる稜線で構成された角で屈曲させて接続させるようにしてもよい。
【0010】
刃部4の先端面7は回転軸線Oとの交差点を頂点としてその両側に径方向外側に向かうに従って工具本体基端側に傾斜する一対のランド部10,10が回転対称に形成されている。各ランド部10は切刃8の逃げ面を構成し、切刃8に交差する側の回転方向前方領域が比較的小さいポジの逃げ角α1を有する二番逃げ面11とされ、その回転方向後方の隣に比較的大きいポジの逃げ角α2(>α1)を有する三番逃げ面12が設けられ、更にその回転方向後方に逃げ角α2より大きな逃げ角α3を有するシンニング面13を有している。
尚、図1等では先端面7の逃げ面は二番逃げ面11と三番逃げ面12の平面逃げ(スリーレーキ刃型)に形成されているが、これに限定されることなく円錐逃げ面形状等適宜の逃げ面形状に構成してもよい。
各切屑排出溝6の先端側壁面6aが外周側切刃8bのすくい面を構成し、一方のランド部10の二番逃げ面11と他方のランド部10のシンニング13との間の段差面13aが工具本体基端側に延びて中心側切刃8aのすくい面を構成する。
【0011】
そして各二番逃げ面11の外周側端縁は三番逃げ面12の外周側端縁12aよりも径方向外側に突出して小幅のマージン11a,11aを構成し、各マージン11aはそれぞれ切屑排出溝6に沿って刃部4の外周面4aに延在して形成されている。一対のマージン11a,11aの回転方向先端側の切刃8,8の端縁間の距離が刃部4の最大外径(切刃外径)Dを形成する(図参照)。
また図1,3において、各切屑排出溝6の中心軸線Oを中心とする円弧状の距離をLaとし、ランド部11の外周の円弧状の距離をLbとした場合、溝幅比La/Lbは0.9〜1.1の範囲に設定されている。ここで、溝幅比が0.9より小さいと切屑排出溝6の幅が小さくなって切屑排出性を低下させて切屑詰まりを起こす欠点があり、溝幅比が1.1より大きいと切屑の排出性は向上するもののドリル1の工具剛性が低下し、いずれの場合も穴加工精度の不良と工具折損を起こし易くする欠点がある。
【0012】
図1及び図3で示すように、ランド部10,10は一対の切屑排出溝6,6で仕切られて、ランド部10,10間の中央部をなす芯厚14は一対の切刃8,8の端縁間の切刃外径をDとして、0.38D〜0.42Dの範囲に設定されている。芯厚14が0.38Dより小さいと工具本体2の曲げ剛性が低くなり、0.42Dより大きいと切屑排出溝6の深さが浅くてスペースが不十分になり切屑詰まりによる切削抵抗が増大して切刃8の欠損や摩耗を招き、いずれの場合も穴精度が悪くなると共に工具寿命が短くなるという問題がある。
また刃部4の各切屑排出溝6は工具本体2の先端側から基端側に向けて回転軸線Oの回りに回転方向後方に漸次捻れており、図2に示すように回転軸線Oに対する側面視でのねじれ角θは5°〜15°に設定されている。このねじれ角θが5°より小さいとすくい面6aを含む切屑排出溝6の傾斜が小さくなって切れ味が低下する上に切刃8による回転切削で生じる切屑の生成方向より傾斜が小さいために切屑排出性が低下して切削抵抗が増大するために切刃欠損を生じ易い。また15°を超えるとねじれ剛性不足を来たし特に高硬度鋼材の穴加工に際して穴精度不良を起こすことになる。
【0013】
また図2に示す工具本体2の先端面7において、二番逃げ面11,11において一対の切刃8,8に沿ってその延長線が交差してなす先端面7の先端角γは125°〜135°の範囲に設定されている。先端角γが125°未満であると特に高硬度鋼材の穴加工時に振動を生じ易く切刃8の外周端縁が被削材に食い込む間での不安定切削領域が長く、135°を超えると食い付き性が悪くいずれの場合も穴精度不良になる。
更に図1において、切刃8のラジアルレーキ角βは特に外周側切刃8bの領域で−5°〜−10°の負角に設定されている。角度βが−5°より大きいと切刃欠損を起こし易く、−10°より小さいと切削抵抗により穴位置精度不良になる欠点がある。
【0014】
そして工具本体2は少なくとも切刃8の領域或いは刃部4、実施の形態では工具本体全体の材質が超硬合金からなり、その組成は(10±2wt%)Co−(0.65±0.25wt%)Cr−(残)WC及び不可避不純物からなっている。この組成の超硬合金は主成分をなすWC(タングステンカーバイト)の平均粒径が0.1〜1.0μmとされている。
従来の超硬合金ドリルは組成が9%Co−8.1%TiC−9.9%TaC−1.1NbC−残WCからなり、その主成分をなすWCはその粒子の平均粒径が2〜3μm程度となっていて、そのために切刃のラジアルレーキ角が例えば−25°以下でないと欠損し易くそのラジアルレーキ角の小さな負角のために切れ味が不十分であった。
その点、本実施の形態によるドリル1によれば、WCの平均粒径を更に微細にすることで従来のものより正方向に大きなラジアルレーキ角−5°〜−10°を設定できて、切刃8の切れ味を向上できる上に成形時の刃型を変化させ易く、耐欠損性を維持できることになる。
更に刃部4の表面には、図3に示すようにチタン系化合物、例えばTiAlN(チタンアルミナイトライド)等の高硬度材料からなる超硬質薄膜のコーティング層16が被覆されている。これによって更に切刃8の耐欠損性と耐摩耗性を向上でき穴加工精度と工具寿命の向上に寄与する。
【0015】
本実施の形態によるドリル1は上述の構成を有しており、例えば予め熱処理を施した後の硬さが例えば40HRC以上の高硬度材を被削材として穴明け加工する場合、ドリル1の工具本体2を回転軸線O回りに回転させつつ回転軸線O方向に送り被削材に切り込むと、刃部4の先端角が125°〜135°の範囲に設定されているとともに切刃8の領域を含めた工具本体2が(10±2wt%)Co−(0.65±0.25wt%)Cr−(残)WC及び不可避不純物の組成を有する超硬合金から形成されているために、被削材が高硬度であっても食い付きがよく剛性もあり、切刃8,8が欠損することなく被削材に進入する。しかも切刃8を構成するWCの平均粒径が0.1〜1.0μmと小さくラジアルレーキ角が−5°〜−10°の範囲の小さい負角とされているために、切刃欠損を抑えて切削抵抗も小さく良好な切れ味を確保できる。
また芯厚も0.38D〜0.42Dの範囲に設定されているために工具本体2の工具剛性が高く切屑排出溝のスペースも十分確保できる。
【0016】
切刃8で生成された切屑は被削材が高硬度用ダイス鋼等であるために細かく分断され、弦巻状に長く延びることがなく、切屑排出溝6のねじれ角が5°〜15°の比較的小さい値であっても溝幅比が0.9〜1.1の範囲とされていることもあって切屑が詰まりにくく、切屑排出性低下による工具本体2の欠損を起こさず、工具剛性低下による穴精度不良を抑えることができる。
【0017】
上述のようにして本実施の形態によるドリル1によれば、従来例と同程度のL/D=3以下程度の浅穴加工を硬さ40HRC以上の高硬度鋼材に施した場合でも、加工穴の真円度が高くて拡大代が小さく面粗さも良好であるため穴精度が高く、しかも切刃8の欠損を抑えて工具寿命を向上できる。
【0018】
【実施例】
次に本発明の実施例を用いて行った切削試験について説明する。
試験サンプルは基本構成を上述の実施の形態によるドリル1と同一構成を備えたもので、表1に示すように実施例A,Bと比較例C,D,Eとを用意した。
実施例A,BはいずれもZ10(超硬合金=(10±2wt%)Co−(0.65±0.25wt%)Cr−(残)WC及び不可避不純物)でWCの平均粒径1.0μmとしたものを材質とし、芯厚14、溝幅比、切刃8のラジアルレーキ角β、先端角γ、ねじれ角θを表1記載のものとし、比較例Cについては材質がM20(超硬合金=9wt%Co−8.1wt%TiC−9.9wt%TaC−1.1wt%NbC−残WC)で平均粒径2μmである他は実施例と同様であり、比較例Dは切刃のラジアルレーキ角が−15°、先端角が120°である以外は上記の数値範囲内であり、比較例Eは芯厚が0.25D、ねじれ角が30°である他は上記の数値範囲内である。
被削材は冷間ダイス鋼(SKD11)を熱処理したものを用いた。熱処理後の硬さは60HRCである。
【0019】
【表1】
Figure 0004053295
【0020】
まず第1試験として工具材種の違いによる工具寿命を比較する試験を行った。サンプルとして、実施例A,Bと比較例Cを用い、試験条件として切刃外径Dをφ3mm、切削速度10m/min、送り0.04mm/rev、加工深さ9mm(L/D=3)で被削材を貫通させるものとし、切削油剤は水溶性エマルジョン(10%希釈)を用いた。
実施例A,B、比較例Cはそれぞれ2本用いて切削し、加工結果は図5に示すものとなった。
実施例Aは約140穴、実施例Bは120〜110穴開けることができ、加工後の刃部4に正常摩耗が生じた状態となっていた。これに対して比較例Cは30穴前後で折損してしまい、工具寿命の差異が明確にでた。
【0021】
第2試験としてラジアルレーキ角と先端角の違いによる加工穴精度を比較する試験を行った。
サンプルとして、実施例Aと比較例Dを用い、試験条件として切刃外径Dをφ10mm、加工深さ30mm(L/D=3)で被削材を貫通させるものとし、切削油剤は水溶性エマルジョン(10%希釈)を用いた。
実施例A、比較例Dはそれぞれ3本用いて切削し、加工結果は図6に示すものとなった。
【0022】
(a) 拡大代比較
先ず送りを0.10mm/rev(一定)として切削速度を1〜20m/minまで漸次増大させ(図6(a)の上図参照)、また切削速度を20m/min(一定)として送りを0.10mm/revまで漸次増大させて(図6(a)の下図参照)それぞれ加工穴の拡大代を測定した。
全体に実施例Aより比較例Dの方が拡大代のバラツキが大きい。比較例Dは上図で切削速度20m/minの時、下図で送り0.10mm/revの時にそれぞれ折損した。
(b) 面粗さ比較
送りを0.10mm/rev(一定)として切削速度を1〜20m/minまで漸次増大させ(図6(b)上図参照)、また切削速度を20m/min(一定)として送りを0.10mm/revまで漸次増大させて(図6(b)下図参照)それぞれ加工穴の拡大代を測定した。
全体に実施例Aより比較例Dの方が面粗さのバラツキが大きい。比較例Dは図6(b)上図で切削速度20m/minの時、図6(b)下図で送り0.10mm/revの時にそれぞれ折損した。
(c) 真円度比較
送り0.10mm/rev(一定)として切削速度を1〜20m/minまで漸次増大させ(図6(c)上図参照)、また切削速度を20m/min(一定)として送りを0.10mm/revまで漸次増大させて(図6(c)下図参照)それぞれ加工穴の拡大代を測定した。
全体に実施例Aより比較例Dの方が真円度が悪かった。比較例Dは図6(c)上図で切削速度20m/minの時、図6(c)下図で送り0.10mm/revの時にそれぞれ折損した。
【0023】
第3試験として逃げ面摩耗量と拡大代の推移を比較する試験を行った。
サンプルとして、実施例Aと比較例Eを用い、試験条件として被削材をSKD61で熱処理後の硬さ50HRCであり、切刃外径Dをφ10mm、切削速度30m/min、送り0.10mm/rev、加工深さ30mm(L/D=3)で被削材を貫通させるものとし、切削油剤は水溶性エマルジョン(10%希釈)を用いた。
(a) 逃げ面摩耗量
実施例Aで100穴前後穿孔したときの逃げ面摩耗量(約0.39mm)と比較例で22穴前後穿孔したときの逃げ面摩耗量とがほぼ同等になった。この状態で両者に正常摩耗が見られ折損は生じていない。実施例Aは比較例Eの約3.5倍の工具寿命を確認できた。
(b) 拡大代
拡大代は比較例Eより実施例Aの方が格段に良好で、比較例Eでは30穴程度で折損したが、実施例Aでは100穴以上穿孔できた。
【0024】
上述した第1から第3試験結果により本実施例は加工穴精度と工具寿命を向上させることができることを確認できた。特に工具材質、ラジアルレーキ角、先端角、芯厚、ねじれ角が穴精度と工具寿命の向上に大きく寄与することを確認できた。
【0025】
尚、実施の形態によるドリル1はソリッドタイプとしたが、本発明はこれに限定されることなくろう付けタイプ、スローアウェイタイプ等各種のドリル等を採用でき、その際、少なくとも切刃8の部分が上述した組成を備えた超硬合金製であればよい。
また被削材は必ずしも高硬度鋼材に限定されることなく例えば40HRC以下の低硬度の被削材の穴明け加工に用いてもよい。
また本発明はドリルに限定されることなく各種の穴明け工具に採用できる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明による穴明け工具は、切刃のラジアルレーキ角が−5°〜−7°の負角に設定されているから、切削抵抗と切刃欠損を抑えて良好な切れ味を確保できる。炭素鋼等の一般鋼の穴加工であればラジアルレーキ角がポジでも切削可能であるが、40HRC以上のような高硬度鋼材ではラジアルレーキ角が−5°より大きいと切刃欠損を起こし易く−7°より小さいと切削抵抗が増大して穴加工精度不良を引き起こす。
更に工具本体の先端角が125°〜135°の範囲に設定されているので、高硬度鋼の穴加工で振動による不安定切削領域が短くし、食い付きが良く穴精度不良を抑える。
そして、工具本体の少なくとも切刃の領域の材質が、(10±2wt%)Co−(0.65±0.25wt%)Cr−(残)WC及び不可避不純物の組成の超硬合金であるので、高硬度鋼の被削材にも耐久性があり欠損を防止できる。
【0027】
一方、工具本体の溝幅比を0.9〜1.1の範囲に設定することにより、切屑排出溝のスペースの減少による切屑詰まりを抑えると共に、工具剛性を確保し、穴精度不良と工具折損を防止できる。
また、工具本体の芯厚を、ドリル外径をDとして0.38D〜0.42Dに設定することにより、工具の曲げ剛性を確保して、切屑詰まりによる切削抵抗増大を防止し、穴精度不良と工具寿命低下を防ぐことができる。
更に、切屑排出溝のねじれ角を5°〜15°に設定することにより、切れ味と切屑排出性の低下による工具欠損を抑え、ねじれ剛性を確保して穴精度を維持する。
【0028】
そして、前記超硬合金を、そのWCの平均粒径が0.1〜1.0μmのものとすることにより、前記切刃のラジアルレーキ角が−5°〜−7°の負角に設定されているから、切刃の切れ味が良く高硬度鋼の被削材に対してラジアルレーキ角を正角方向に大きく設定しても切刃の欠損を生じることがなく穴加工精度と工具寿命を向上できる。
更に、工具本体の少なくとも切屑排出溝を有する領域を高硬度材料であるTiAlNの薄膜でコーティングすることにより、切屑との摩擦抵抗を軽減し切削トルクやスラスト等の荷重を低減するために切刃の耐欠損性が向上し工具本体の耐摩耗性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態によるドリルの先端面図である。
【図2】 実施の形態によるドリルの刃部の側面図である。
【図3】 実施の形態によるドリルの軸直交断面図である。
【図4】 実施の形態によるドリルの側面図である。
【図5】 本発明の実施例と比較例についての第1試験結果を示す図である。
【図6】 本発明の実施例と比較例についての第2試験結果を示す図である。
【図7】 本発明の実施例と比較例についての第3試験結果を示す図である。
【符号の説明】
1 ドリル(穴明け工具)
2 工具本体
4 刃部
6 切屑排出溝
8 切刃
14 芯厚
16 コーティング層

Claims (2)

  1. 回転軸線回りに回転させられる工具本体の外周に回転軸線回りにねじれた切屑排出溝を形成するとともに、この切屑排出溝の回転方向を向く壁面と先端逃げ面との稜線部に切刃を形成した穴明け工具において、
    前記切刃のラジアルレーキ角が−5°〜−7°の負角に設定されているとともに、前記工具本体の先端角が125°〜135°の範囲に設定され、
    前記工具本体の材質は、少なくとも前記切刃の領域が(10±2wt%)Co−(0.65±0.25wt%)Cr−(残)WC及び不可避不純物の組成を有してWCの平均粒径が0.1〜1.0μmである超硬合金であり、
    前記工具本体の溝幅比を0.9〜1.1の範囲に設定した上で、
    前記工具本体の芯厚が切刃外径をDとして0.38D〜0.42Dに設定されるとともに、前記切屑排出溝のねじれ角が5°〜15°に設定されていることを特徴とする穴明け工具。
  2. 前記工具本体は、少なくとも前記切屑排出溝を有する領域が高硬度材料であるTiAlNの薄膜でコーティングされていること特徴ととする請求項1に記載の穴明け工具。
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