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JP3945664B2 - 撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法 - Google Patents

撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撥水性、耐摩耗性および耐擦傷性を有する撥水性酸化シリコン皮膜、およびその撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法、並びに硬質撥水性酸化シリコン皮膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラス製品、樹脂製品、金属製品、半導体製品、木材製品、繊維、建材等の表面において、水などをはじくことを目的として、撥水性皮膜を形成するなどの表面改質による撥水処理がなされている。
こうした撥水性皮膜としては、テフロンや、表面科学Vol.14,No.9,pp540−545,1993で開示されているフッ素含有SiO2薄膜などが知られている。
【0003】
テフロンは、水滴の静的接触角が108°であり、撥水性に優れた材料であるが、耐摩耗性に劣るという問題があった。一方、前記フッ素含有SiO2薄膜は、テトラエトキシシランとフルオロアルキルシラン等を液体状態で混合して調製されたコーティング溶液と、ガラス基板と、を用いてゾル−ゲル法により形成され、酸化シリコンを主成分とし、フッ素を含有するもので、酸化シリコンを主成分とするため耐摩耗性に優れ、かつフッ素を含有するため撥水性に優れる材料として知られている。
【0004】
しかし、このゾル−ゲル法を用いた撥水性酸化シリコン皮膜の形成では、コーティング溶液の調製時にエタノール等の溶媒が必要となり、また液体状態にあるテトラエトキシシランとフルオロアルキルシランを用いるため、揮発性の高いものでは、コーティング溶液の濃度調節等が困難である。さらに、コーティング溶液を表面に塗布した後において350℃以上の高温の熱処理を必要とするため、耐熱温度の低い製品においては、この高温の熱処理によりその品質が低下してしまうという不具合があった。また、この方法では、乾燥、硬化時における溶媒の蒸発に伴ってフッ素が皮膜の表面付近に濃縮してしまうため、フッ素が皮膜中に均一に分散した形態の撥水性酸化シリコン皮膜を得ることが困難であった。このフッ素が表面付近に濃縮した形態の撥水性酸化シリコン皮膜は、摩耗等によりフッ素濃縮部分が削り取られてしまうと、撥水性が低下してしまうという不具合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、コーティング溶液の調製、高温の熱処理等を必要とせず、撥水性、耐摩耗性および耐擦傷性に優れる撥水性酸化シリコン皮膜を容易に、低温でかつ母材と密着性良く製造する方法を提供することを目的とする
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、シリコン化合物を含むシリコン化合物ガスとフッ素化合物を含むフッ素化合物ガスとを用い、気相中でシリコン化合物およびフッ素化合物を分解することにより、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物の少なくとも一方が酸素を含み、また少なくとも一方が炭素を含む形態で、それぞれシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物を生成した。そして、これらのシリコン含有分解物とフッ素含有分解反応物とを母材上に堆積させることにより形成した撥水性酸化シリコン皮膜が撥水性、耐摩耗性および耐擦傷性に優れることを発見し、かつ容易に、低温でかつ母材と密着性良くこのような性質をもつ撥水性酸化シリコン皮膜を形成できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法は、シリコン化合物およびフッ素化合物の少なくとも一方は酸素を含み、かつ該シリコン化合物および該フッ素化合物の少なくとも一方は炭素を含む化合物をそれぞれ用い、該シリコン化合物を含むシリコン化合物含有ガスと、水素ガスを含むキャリアガスとともに該フッ素化合物を含むフッ素化合物含有ガスと、を調製し、それぞれを原料ガスとする原料ガス調製工程と、該原料ガスに含まれる該シリコン化合物と該フッ素化合物とを気相中で分解反応させることにより、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物の少なくとも一方が酸素を含有し、かつ該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方が炭素を含有する形態で該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物を生成する分解反応物生成工程と、前記分解反応物生成工程で生成した該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物とを母材上に堆積させることにより、該シリコンが該シリコン含有分解反応物および該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方に含まれる該酸素と結合した酸化シリコンと、該フッ素が該シリコン含有分解反応物および該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方に含まれる該炭素と結合した該フッ素および該炭素と、を含む皮膜を形成する皮膜形成工程と、からなることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法の実施の形態を、撥水性酸化シリコン皮膜および硬質撥水性酸化シリコン皮膜とともに、以下にそれぞれ説明する。
(撥水性酸化シリコン皮膜)
水性酸化シリコン皮膜は、シリコン化合物を気相中で分解反応させることにより生成したシリコン含有分解反応物と、フッ素化合物を気相中で分解反応させることにより生成したフッ素含有分解反応物と、からなる皮膜である。シリコン化合物およびフッ素化合物は、これら化合物の少なくとも一方が酸素を含む化合物であり、かつこれら化合物の少なくとも一方が炭素を含む化合物である。シリコンはこれら分解反応物の少なくとも一方に含まれる酸素と結合した酸化シリコンの形態で含まれ、かつフッ素はこれら分解反応物の少なくとも一方に含まれる炭素と結合した形態で含まれる。
【0012】
このとき用いるシリコン化合物は、その種類において特に限定されるものでないが、有機シリコン化合物であることが望ましい。有機シリコン化合物は、室温で気体状態のものが多く、気相中で分解反応させやすいため好ましい。また、有機シリコンはシリコンだけでなく炭素を含み、この炭素をフッ素との結合に利用できるため好ましい。
【0013】
また、このとき用いる有機シリコン化合物はオルガノアルコキシシランであることが望ましい。オルガノアルコキシシランは、蒸気圧が高いため蒸発しやすく、加熱したりキャリアガス等を用いたりしなくても安定して原料の供給ができ、また安全性に優れるため扱いやすく、安価であるため製造コストを低減することができる。
【0014】
また、有機シリコン化合物としては、テトラメチルシラン((CHSi)、テトラエトキシシラン(Si(OC)、テトラメトキシシラン(Si(OCH)、メチルトリメトキシシラン(CHSi(OCH)、ジメチルジメトキシシラン((CHSi(OCH)、トリメチルメトキシシラン((CHSi(OCH))、ヘキサメチルジシラン((CHSi)およびヘキサメチルジシロキサン((CHOSi)の少なくとも一種であることが望ましい。
【0015】
これら上記の有機シリコン化合物は沸点が低く、蒸気圧が高いため好ましい。また、オルガノアルコキシシランの中でも、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランは酸素を含むため、この酸素をシリコンと結合させて酸化シリコンを形成できるため好ましい。さらに、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシランより生成したシリコン含有分解反応物からなる撥水性酸化シリコン皮膜は、擦傷性に優れるため好ましい。
【0016】
フッ素化合物は、その種類において特に限定されるものでないが、パーフルオロアルキル基を有するシリコン化合物であることが望ましい。パーフルオロアルキル基を有するシリコン化合物は、沸点が低く、蒸気圧が高いため好ましい。また、シリコンを含むため、このシリコンを酸素と結合させて酸化シリコンを形成できるため好ましい。また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような低い表面自由エネルギーをもつ表面を形成し、撥水性、潤滑性、離型などの性質が向上し、さらに撥油性も発現する。
【0017】
また、このパーフルオロアルキル基を有するシリコン化合物は、フルオロアルキルシラン(Cn2n+1CH2CH2Si(OCH33(但し、nは任意の正の整数である。))の少なくとも一種であることが望ましい。パーフルオロアルキル基を有するシリコン化合物の中でも、Cn2n+1CH2CH2Si(OCH33は、例えばCn2n+1CH2CH2SiCl3と比較しても加水分解速度が低く、母材表面と化学的に反応して耐久性のある表面エネルギーの低い皮膜を形成する。
【0018】
さらに、このフルオロアルキルシランのnの値は8以上であることが望ましい。このようなnの値をもつものは、フルオロアルキルシランの中でも、特に撥水性が優れるため、さらに好ましい。
さらには、シリコン化合物はテトラメチルシランであり、かつフッ素化合物はnの値が8であるフルオロアルキルシラン(CF3(CF27CH2CH2Si(OCH33であって、水滴の静的接触角が150°以上であることが望ましい。
テトラメチルシランは酸素を含まないが、フルオロアルキルシランは酸素を含み、この酸素をシリコンと結合させて酸化シリコンを生成できるため好ましい。また、撥水性酸化シリコン皮膜では、水滴との接触角がさらに大きくなり、水滴の静的接触角を150°以上とすることにより、超撥水性をもたせることができる。
【0019】
水性酸化シリコン皮膜では、膜形状、膜面積、膜厚等は特に限定されるものでなく、用途に応じてそれぞれ任意に選択することができる。
水性酸化シリコン皮膜では、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物の共存形態は特に限定されるものではないが、シリコン含有分解反応物がシリコンと酸素が結合している酸化シリコンを含まない場合や、フッ素含有分解反応物が互いに結合しているフッ素と炭素を含まない場合、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物とが互いに化学反応し、酸化シリコンや互いに結合したフッ素と炭素が生成された皮膜とすることができる。
【0020】
また撥水性酸化シリコン皮膜では、酸化シリコンはSi−O−Siで表される結合形態のものであることが望ましい。この酸化シリコンは結合力が大きく、皮膜の硬さを大きくし、耐摩耗性および耐擦傷性を向上させる。
また撥水性酸化シリコン皮膜では、該フッ素および該炭素は、C−F結合を有する官能基を形成していることが望ましい。フッ素原子Fは原子半径が小さく、電気陰性度が高いためC−F結合エネルギーは大きく、結合距離が短い。従って、分子内では極めて弱い相互作用しかもたない。このため、極性分子である水との相互作用が弱くなり、撥水性が向上する。
【0021】
このとき、C−F結合を有する官能基は、CF−で表される官能基、あるいは/また−CF−で表される官能基であることが望ましい。これら官能基で覆われた表面は臨界表面張力(表面エネルギー)が低くなるため、撥水性がさらに向上する。
さらに撥水性酸化シリコン皮膜では、疎水性の大きい炭素と水素とからなる官能基を含有することが望ましい。撥水性酸化シリコン皮膜がその組織中にパーフルオロアルキル基のように構造が長く、剛直な官能基を有する場合、皮膜の構造形態が隙間の多いものとなり、緻密な構造形態を作りにくくなる。このことは、撥水性を低下させる原因となり好ましくない。そこで、このような隙間を疎水性の大きい官能基で埋めることにより、撥水性を向上することができる。特に、炭素と水素からなる官能基には、疎水性の大きいものが多く、また化学的にも安定である。
【0022】
このような官能基としてはメチル基であることが望ましい。メチル基は疎水性が大きく、また構造的に小さいため前記皮膜構造中の隙間を埋めやすく、非常に緻密な構造形態を作ることができる。さらに化学的にも非常に安定である。
また撥水性酸化シリコン皮膜では、互いに結合したフッ素と炭素が皮膜中に均一に分散していることが望ましい。これにより、摩耗等により皮膜の表面となる部分が繰り返し削り取られても、新たに表面となる部分は常に互いに結合したフッ素と炭素が均一に含まれる形態となり、撥水性が持続される。
【0023】
また、皮膜中に含まれるフッ素の含有量は特に限定されるものではないが、フッ素が10〜50at%含まれるものが望ましい。これにより、表面エネルギーの低い皮膜を形成することができ、撥水性を向上させることができる。このとき、フッ素が10at%未満しか含まれていないと、表面エネルギーの低下が不十分となり、十分な撥水性が得られなくなる。また、フッ素が50at%を超えて含まれると硬さが小さくなり、耐摩耗性が低下する。
【0024】
また、可視光の透過率については特に限定されるものではないが、可視光の透過率は90〜95%が望ましい。この撥水性酸化シリコン皮膜は透光性に優れ、透光性の要求される材料、例えばポリカーボネイトのような透明プラスチック、透明ガラス等への利用が可能となる。
(撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法)
次に、本発明の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法について、その実施の形態を以下に説明する。本製造方法は、原料ガス調製工程、分解反応物生成工程および皮膜形成工程の3つの工程からなる。
【0025】
原料ガス調製工程は、シリコン化合物およびフッ素化合物の少なくとも一方は酸素を含み、かつ該シリコン化合物および該フッ素化合物の少なくとも一方は炭素を含む化合物をそれぞれ用い、該シリコン化合物を含むシリコン化合物含有ガスと、該フッ素化合物を含むフッ素化合物含有ガスと、を調製し、それぞれを原料ガスとする工程である。
【0026】
この工程で使用するシリコン化合物含有ガスは、室温で液体状態のシリコン化合物を気化させるなどして用意することができ、シリコン化合物含有ガス中のシリコン化合物の濃度、ガス温度、ガス圧等は特に限定されるものではないが、用途に応じて選択することができる。同様に、フッ素化合物含有ガスは、室温で液体状態のフッ素化合物を気化させるなどして用意することができ、フッ素化合物含有ガス中のフッ素化合物の濃度、ガス温度、ガス圧等は特に限定されるものではないが、用途に応じて選択することができる。なお、使用するシリコン化合物あるいは/またフッ素化合物の沸点が高い場合には、アルゴンガス等の不活性ガスをキャリアガスとして利用したり、加熱するなどして蒸発、気化させることができる。
【0027】
のフッ素化合物含有ガスは水素ガスを含むキャリアガスとともにフッ素化合物を含むことが望ましい。この水素ガスは、後の分解反応物生成工程において、フルオロアルキルシラン中のC−F結合から分解して生成したF原子と反応し、HFの形で真空中から排気される。それゆえ皮膜のエッチングが抑制される。また、これにより、皮膜形成工程で皮膜中に取り込まれる酸素の量が減る。それゆえ、酸素含有量の少ない撥水性酸化シリコン皮膜を得ることができる。
【0028】
分解反応物生成工程は、該原料ガスに含まれる該シリコン化合物と該フッ素化合物とを気相中で分解反応させることにより、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物の少なくとも一方が酸素を含有し、かつ該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方が炭素を含有する形態で該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物を生成する工程である。
【0029】
この工程は、あらかじめロータリーポンプ等の真空ポンプにより高真空にするなどして空気等の不純物ガスがほとんど存在しない状態となった雰囲気下において行う。
原料ガスに含まれるシリコン化合物とフッ素化合物とを気相中で分解反応させる方法は、特に限定されないが、プラズマ、高熱、光等を用いて分解反応させることができる。プラズマ、高熱、光等は高エネルギーを有するため、原料ガスに含まれるシリコン化合物とフッ素化合物を、この高エネルギーにより分解することができる。
【0030】
このときプラズマを用いる場合、プラズマの温度等の状態は特に限定されるものではないが、シリコン化合物およびフッ素化合物の少なくとも一方は、低温プラズマを用いて気相中で分解反応させることが望ましく、特に、シリコン化合物およびフッ素化合物の両方を低温プラズマを用いて気相中で分解反応させることが好ましい。撥水性酸化シリコン皮膜を形成する製品が耐熱温度が低い場合、高温のプラズマを用いると、このプラズマの高熱により製品の品質が低下する恐れがあるので、皮膜形成工程において製品を高温のプラズマの高熱の影響を受けない位置に設置してシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物を堆積させるなどの注意が必要である。しかし、低温のプラズマを用いる場合はこのような注意を必要としないため、任意の製品を任意の位置に設置してシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物を堆積させることができ、好ましい形態である。
【0031】
また、低温プラズマの発生方法は特に限定されないが、マイクロ波あるいは/また高周波を用いた真空放電により発生させることが望ましい。これにより、ガス温度が低いが電子温度の高いプラズマを得ることができる。
また、この工程では、シリコン化合物含有ガスとフッ素化合物含有ガスとを混合した形態でシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物とを生成することが望ましい。これにより、同じ容器内で、かつ同じ作業で行うことができるので、撥水性酸化シリコン皮膜を形成する装置が簡便なものとなり、かつ作業効率も向上し、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物の生成が容易となる。
【0032】
このとき、シリコン化合物含有ガスおよびフッ素化合物含有ガスの全圧、分圧比等は特に限定されるものではないが、これらの全圧、分圧比等に対応してシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物と生成速度がそれぞれ決まるため、これら分解反応物の所望の生成速度に応じて全圧、分圧比等を選択することができる。
このとき、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物との生成は、該シリコン化合物含有ガスと該フッ素化合物含有ガスとの全圧が10Pa以上の圧力下でおこなうことが望ましい。この圧力下でシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物を生成することにより、低温プラズマ中で均一核生成が行われ、粒成長が著しくなり、皮膜形成工程において形成される撥水性酸化シリコン皮膜の表面の凹凸が大きくなる。
【0033】
皮膜形成工程は、前記分解反応物生成工程で生成した該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物とを母材上に堆積させることにより、該シリコンが該シリコン含有分解反応物および該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方に含まれる該酸素と結合した酸化シリコンと、該フッ素が該シリコン含有分解反応物および該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方に含まれる炭素と結合した該フッ素および該炭素と、を含む皮膜を形成する工程である。
【0034】
この工程では、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物とを分子レベルで母材上に堆積させるため、母材と密着性よく皮膜を形成することができる。
また、シリコン含有分解反応物がシリコンと酸素が結合している酸化シリコンを含まない場合や、フッ素含有分解反応物が互いに結合しているフッ素と炭素を含まない場合、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物とを母材上に堆積させ、互いに化学反応させて酸化シリコンや互いに結合したフッ素と炭素とを皮膜中に生成することができる。
【0035】
この工程では、母材の皮膜を形成する表面の温度は特に限定されるものではないが、少なくとも母材の皮膜を形成する表面を加熱することにより、この表面を50〜350℃の温度にすることが望ましい。これにより、熱分解反応が進むため膜が緻密化し、得られる皮膜の硬さが大きくなる。
また、この工程で使用する母材の材質については特に限定されるものではないが、ガラス材料、樹脂材料、金属材料、半導体材料、木材、繊維、建材の少なくとも一種からなるものが望ましい。撥水性、耐摩耗性および耐擦傷性が要求される製品には、これらの材料からなるものが多く、望ましい形態である。
【0036】
また、母材の形状、大きさについても特に限定されるものではなく、母材の形状、大きさに応じて母材を固定したり一次元、二次元あるいは三次元的に動かすなどしてシリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解反応物を堆積させることにより、任意の形状、大きさをもつ母材に撥水性酸化シリコン皮膜を形成することができる。
【0037】
なお、生成されたシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物の母材表面への移動形態は特に限定されるものではないが、気流等により移動させたりするなどして母材上に堆積することができる。
母材の設置形態については特に限定されるものではないが、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物が最も多く生成され、かつ移動距離ができるだけ短くなる位置に母材を設置してシリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解反応物を堆積させることが望ましい。このとき、母材表面において皮膜が成長する方向は、特に限定されるものではないが、シリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解反応物の移動方向に応じて母材表面の面方向を選択し、シリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解反応物を堆積させることにより、母材表面に対して任意の方向に皮膜を成長させることができる。
【0038】
具体的には、例えば低温プラズマを用いた場合、低温プラズマの終端付近に母材を設置することにより、プラズマ中で生成されたシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物とを、移動距離がほとんどない状態で堆積させることができる。このとき、低温プラズマの終端付近から離れた位置に設置すると、プラズマ中で生成したシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物の移動距離が長くなり、容器等に付着するなどして、効率的にシリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物を母材上に堆積させることができなくなる。
【0039】
また、前記分解反応物生成工程において、シリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解反応物をそれぞれ任意の生成速度で生成することができるため皮膜形成工程において、シリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解反応物をそれぞれ所望の堆積速度で堆積することができ、任意の成膜速度で皮膜を形成することができる。
(硬質撥水性酸化シリコン皮膜)
質撥水性酸化シリコン皮膜は、前記の如く撥水層および硬質層の少なくとも2層から構成され、それぞれの層は皮膜の最表面に撥水層が位置するように基材上に配置される。この撥水層は高い撥水性能をもつ層である。一方、この硬質層は高い硬質性能をもつ層である。
【0040】
それゆえ、本硬質撥水性酸化シリコン皮膜では、撥水層を硬質層で裏打ちした構成となっており、高い撥水性および高い硬質性が得られる。さらに、双方の層とも酸化シリコン系化合物を主成分とするため互いに高い整合性をもち、それらの層の密着性が高い。なお、この撥水層でも撥水性酸化シリコン皮膜と同様、互いに結合したフッ素と炭素が皮膜中に均一に分散していることが望ましい。
【0041】
また、いずれの層も可視光の高い透過率をもちうる。それゆえ、本硬質撥水性酸化シリコン皮膜では可視光の高い透過性を得ることができる。
それぞれの層の厚さについては特に限定されるものではないが、硬質層が薄すぎたり、あるいは逆に撥水層が厚すぎたりすることがないようにそれぞれの層の厚さを適切に選択することが好ましい。硬質層が薄すぎたりするとその硬質性能を十分に得ることができなくなる。また、逆に撥水層が厚すぎたりすると、これによって硬質層の硬質性能の発揮が妨げられる。
【0042】
質撥水性酸化シリコン皮膜は、基材の上に最初に硬質層を形成し、この硬質層の上に撥水層を形成することによって作製することができる。このとき、硬質層形成には、公知の形成手段を用いることができる。また、撥水層の形成には、本発明の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法による形成手段を用いることができる。
【0043】
このとき、前記フッ素および前記炭素を全体に一様に含む撥水層と、硬質層と、を組み合わせて本硬質撥水性酸化シリコン皮膜を構成してもよいが、高い整合性が得られるとは言え、完璧な整合性とは言えない。
そこで、本硬質撥水性酸化シリコン皮膜では、前記撥水層は、前記硬質層との境界部分に、前記炭素および前記フッ素の含有濃度が境界方向に向かうにつれ傾斜的に低下してその境界面においてほぼゼロとなる傾斜層をもつことが望ましい。この傾斜層により、硬質層との境界面でほぼ完璧な整合性が得られる。それゆえ、それらの層の密着性が極めて高くなる。
【0044】
【作用】
上記撥水性酸化シリコン皮膜は、酸化シリコンを含むため耐摩耗性および耐擦傷性に優れる。また、フッ素と炭素の結合を含有するため撥水性に優れる。さらに、コーティング溶液の調製等を経ずに形成され、必要最小限の原料から生成された分子レベルの分解反応物からなるため、皮膜中に含まれる不純物が少ないことや、組成のむらがないなどの理由により、従来の撥水性酸化シリコン皮膜より撥水性に優れる。
【0045】
この撥水性酸化シリコン皮膜で、互いに結合したフッ素と炭素が皮膜中に均一に分散している形態のものは、撥水性の持久性および耐候性に優れる。また、フッ素が10〜50at%含まれるものは撥水性に優れる。さらに、可視光の透過率が90〜95%であるものは透光性に優れる。
本発明の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法により、撥水性および耐摩耗性に優れる撥水性酸化シリコン皮膜を、容易に、低温でかつ母材と密着性良く形成することができる。また、皮膜形成工程において、シリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解物をそれぞれ任意の堆積速度で同時に母材上に堆積することができ、また任意の膜厚の撥水性酸化シリコン皮膜を形成することができるため、フッ素が皮膜中に均一に分散した形態のものや、任意のフッ素含有量のもの、任意の透過率のもの等を形成することができる。具体的には、フッ素が10〜50at%含まれるものや、可視光の透過率が90〜95%であるものなどを製造することができる。
【0046】
上記硬質撥水性酸化シリコン皮膜では、撥水層が高い撥水性能を発揮し、硬質層が高い硬質性能を発揮するため、高い撥水性および高い硬度が得られる。また、これらの層が高い密着性で接着されており、互いに剥がれにくいため、高い機械的強度が得られる。さらに、いずれの層にも可視光の高い透過率をもつものを用いることにより、可視光の高い透過性を得ることができる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例1〜7、実施例9および10は参考例である。
(実施例1)
本実施例の撥水性酸化シリコン皮膜の形成には、シリコン化合物としてテトラメチルシラン(関東化学製)を用い、フッ素化合物としてnの値が8のフルオロアルキルシラン(以下、FAS−17と称する)(CF(CFCHCHSi(OCH)(信越化学製;KBM7803)を用い、母材としてSi基板(サイズ;30×30×0.5mm)を用いた。
【0048】
また、皮膜形成装置としては、マイクロ波により真空放電を起こさせて低温プラズマを発生することができるマイクロ波プラズマCVD装置を使用した。なお、この装置では、原料ガスをマイクロ波プラズマにより化学反応を起こさせ、この化学反応により生成した反応生成物を下方に設置した基板等の表面上に移動させて堆積させることにより基板等に皮膜を形成するダウンストリーム方式を採用した皮膜形成装置である。図1に、この皮膜形成装置1の概略図を示す。
【0049】
この皮膜形成装置1は、シリコン化合物含有ガスおよびフッ素化合物含有ガスが分解反応される反応容器2と、基板4が設置され反応容器2内で生成した分解反応物を基板4上に堆積させる堆積容器6と、マイクロ波を発生することができるマイクロ波電源8と、真空引き用のロータリーポンプ10と、シリコン化合物を供給することができるシリコン化合物供給源12と、フッ素化合物を供給することができるフッ素化合物供給源14と、を主要な構成としてなる。
【0050】
反応容器2は、一端が閉じ、かつ他端が開口した筒状の石英管(サイズ;長さ270mm、内径51mm、外径57mm)からなり、開口端部分16が堆積容器6の天井部分18を貫通して連結されている。反応容器2の内部はこの開口端部分16を通して堆積容器6内と連通している。
また、堆積容器6では、容器内に基板ホルダー20が設けられ、この基板ホルダー20上に基板4を設置することができる。この基板ホルダー20では、基板4を反応容器2の中心部分から100〜450mmの位置に設置することができる。
【0051】
マイクロ波電源8は導波管22を介して反応容器2と連結され、マイクロ波電源8で発生させた所定の出力のマイクロ波は導波管22を通して反応容器2内に送ることができる。このとき、反応容器2はその中央付近で導波管22のキャビティー24に固定され、導波管22に取り付けられたスリースタブチューナー26およびプランジャー27によりマイクロ波の入射波と反射波を調節して一定の強さのマイクロ波を反応容器2内に送ることができる。なお、キャビティー24は、マイクロ波電源8およびスリースタブチューナー26を連結、固定するだけでなく、導波管22を通過してくるマイクロ波を反応容器に効率よく伝える役割を果たす。このマイクロ波により反応容器2内に真空放電を生じさせ、安定した低温プラズマ28を反応容器2内に発生させることができる。
【0052】
また、ロータリーポンプ10、シリコン化合物供給源12およびフッ素化合物供給源14は、堆積容器6に連結されており、ロータリーポンプ10により堆積容器6と直結する反応容器2内を最高1Paの真空度にすることができ、シリコン化合物供給源12およびフッ素化合物供給源14により堆積容器6内にシリコン化合物含有ガスおよびフッ素化合物含有ガスを供給することができる。
【0053】
シリコン化合物供給源12では、液体状態のシリコン化合物が容器内に入れられており、これを蒸発、気化させることにより、シリコン化合物含有ガスを供給することができる。また、フッ素化合物供給源14では、液体状態のフッ素化合物が容器内に入れられており、これを蒸発、気化させることにより、フッ素化合物含有ガスを供給することができる。なお、フッ素化合物の沸点が高い場合、容器の外に巻き付けて取り付けられたリボンヒーターを用いて所定の加熱温度で容器内の液体状態にあるフッ素化合物を加熱して蒸発、気化させることができる。さらに、フッ素化合物供給源14には、キャリアガス供給源29よりキャリアガスを導入できるように配管が施されており、液体状態にあるフッ素化合物を通じて容器内に導入し、導入管から堆積容器6内へと移動させることができる。このキャリアガスは真空放電を安定させるガスとして働き、フッ素化合物含有ガスの輸送を促進することにより、気体状態にあるフッ素化合物を安定して供給することができる。なお、本実施例では、キャリアガスとしてアルゴンガスを用いた。
【0054】
これらシリコン化合物含有ガスおよびフッ素化合物含有ガスは、それぞれ導入管を通じて堆積容器6へそれぞれ導入され、堆積容器6を通して反応容器2内に混合ガスの状態で充満される。このとき、シリコン化合物含有ガスおよびフッ素化合物含有ガスの導入量は、それぞれの導入管に取り付けられたニードルバルブ30、30で調節することができる。そして、それぞれの導入量を調節することによりシリコン化合物含有ガスおよびフッ素化合物含有ガスを所望の分圧に調節することができ、反応容器2内の圧力を所定の圧力とすることができる。
【0055】
反応容器2内のシリコン化合物含有ガスおよびフッ素化合物含有ガスは、低温プラズマによりシリコン化合物およびフッ素化合物が分解され、シリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解反応物が生成される。これら生成されたシリコン含有分解反応物およびフッ素含有分解反応物は、堆積容器6内の基板4上に移動させて堆積させることができる。
【0056】
また、基板温度は、外部からの加熱を特に行わない場合、低温プラズマ28の放射熱などにより最高で80℃程度になる。そこで、基板温度を100〜400℃の温度範囲で加熱できる抵抗加熱装置(図示せず)が基板ホルダー20に取り付けられており、基板温度をこの温度範囲で任意に制御することができる。
本実施例では、基板4を低温プラズマ28の中心付近から100mmの位置に設置し、ロータリーポンプ10によって反応容器2および堆積容器6内を1Paまで真空引きした後、ロータリーポンプ10による真空引き速度を調節しながらシリコン化合物供給源12よりテトラメチルシランガスを反応容器2内に導入し、反応容器2内の圧力を所定の圧力でほぼ一定に維持した。続いて、フッ素化合物供給源14をリボンヒーターにより70〜80℃程度で加熱することにより、容器内の液体状態にあるFAS−17を蒸発、気化させ、このFAS−17ガスを反応容器2内に導入し、先に導入したテトラメチルシランガスと混合して混合ガスの全圧を所定の圧力とした。なお、このとき20〜50sccmのアルゴンガスをキャリアガスとして用いた。
【0057】
マイクロ波電源8の出力を300Wとして真空放電を起こさせ、この出力で真空放電を維持して低温プラズマ28を発生させ、基板温度を50℃でほぼ一定に維持しながら撥水性酸化シリコン皮膜の形成を15分間行った。
このとき、テトラメチルシランガスの所定の圧力を12.5Pa、15.0Pa、20.0Pa、25.0Paから選択し、またこのテトラメチルシランガスの所定の圧力に対応させてFAS−17ガスの分圧を12.5Pa、15.0Pa、20.0Pa、25.0Paから選択し、混合ガスの全圧を25.0Pa、30.0Pa、40.0Pa、50.0Paとして4種類の撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0058】
これらの撥水性酸化シリコン皮膜について、膜厚、接触角および可視光透過率の評価を行った。なお、それぞれの測定は次の手段を用いて行った。なお、後述する他の実施例のものについても、これと同様に評価を行った。
膜厚は表面粗さ計(Mitsutoyo製、Surftest SV−600)を用いて測定した。撥水性は蒸留水の静的接触角(液滴径約2mmφ)を液滴法により25℃の雰囲気下で接触角計(協和界面科学製、CA−X150型)により測定した。可視光透過率はダブルビーム分光光度計(島津製作所製、UV−3101PC)を用いて測定した。
【0059】
図2に、得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角を示す。図2より、これらの撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角は115〜160°であることがわかる。この水滴との静的接触角は、テフロンの水滴との静的接触角の108°を超えており、得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜は撥水性に非常に優れることがわかる。特に、混合ガスの全圧を50.0Paとして作製した撥水性酸化シリコン皮膜は160°の水滴との静的接触角をもち、150°を超える非常に高い撥水性(超撥水性)をもつことがわかった。
【0060】
また、図2より、これらの撥水性酸化シリコン皮膜の成膜速度は25〜120nm/minで、混合ガスの全圧が大きくなるに従って成膜速度が大きくなることがわかった。
さらに、混合ガスの全圧を25.0Pa、30.0Paとして作製した撥水性酸化シリコン皮膜は、可視光の透過率が93%であり、透光性に優れることがわかった。
(実施例2)
シリコン化合物としてトリメチルメトキシシラン(関東化学製)を用い、トリメチルメトキシシランの所定の圧力を25.0Paとし、また、フルオロアルキルシランの分圧を25.0Paとして、混合ガスの全圧を50.0Paとし、基板温度を50℃、100℃、200℃、300℃から選択して一定とする以外は実施例1と同様にして、基板温度の異なる4種類の撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。これらの基板温度はアルメル・クロメル熱電対により測定した。なお、断らない限り、以下の基板温度はすべてこの測定手段により測定した。
【0061】
このとき基板温度50℃で作製した撥水性酸化シリコン皮膜について、赤外線吸収分析法(IR)により赤外線の透過率の測定を行い、赤外線吸収スペクトルを透過率より求め、皮膜中の結合形態を調べた。この測定結果を図3に示す。なお、図3では横軸に赤外線の波数を示し、縦軸には透過率を示した。
図3により、Si−O−Siの結合間の伸縮振動に起因する赤外線の吸収ピークが、1070/cm、800/cm、および460〜410/cmの波数付近で確認され、さらに、Si−Oの結合間の伸縮振動に起因する赤外線の吸収ピークが850/cmの波数付近で確認されたことより、皮膜中に酸化シリコンが含まれていることがわかった。また、CF3−、−CF2−中のC−Fの結合間の伸縮振動に起因する赤外線の吸収ピークが、1260〜1200/cmおよび1120/cmの波数付近で確認されたことより、フッ素と炭素が互いに結合してC−F結合の形態で皮膜中に含まれていることがわかった。
【0062】
また、静的接触角を図4に示す。図4より、これらの撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角は102〜110°であることがわかり、いずれの撥水性酸化シリコン皮膜についても優れた撥水性をもつことがわかる。
(実施例3)
シリコン化合物として、ジメチルジメトキシシラン(関東化学製)を用いる以外は実施例2と同様にして4種類の撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0063】
このとき得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜について、水滴との静的接触角を図5に示す。図5より、これらの撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角は95〜100°であることがわかり、いずれの撥水性酸化シリコン皮膜についても優れた撥水性をもつことがわかる。
(実施例4)
シリコン化合物として、メチルトリメトキシシラン(関東化学製)を用いる以外は実施例2と同様にして4種類の撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0064】
このとき得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜について、水滴との静的接触角を図6に示す。図6より、これらの撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角は90〜94°であることがわかり、いずれの撥水性酸化シリコン皮膜についても優れた撥水性をもつことがわかる。
また、ステンレス鋼製のチップによるひっかき試験の結果、耐擦傷性に優れていることがわかった。
(実施例5)
シリコン化合物として、テトラメトキシシラン(以下、TMSと称する)(関東化学製)を用いる以外は実施例2と同様にして4種類の撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0065】
このとき得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜について、水滴との静的接触角を図7に示す。図7より、これらの撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角は80〜93°であることがわかり、いずれの撥水性酸化シリコン皮膜についても優れた撥水性をもつことがわかる。
また、ステンレス鋼製のチップによるひっかき試験の結果、耐擦傷性に優れていることがわかった。
(実施例6)
シリコン化合物として、テトラエトキシシラン(関東化学製)を用いる以外は実施例2と同様にして4種類の撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0066】
このとき得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角については図示しないが、実施例5の撥水性酸化シリコン皮膜とほぼ同じ水滴との静的接触角をもつことがわかり、いずれの撥水性酸化シリコン皮膜についても優れた撥水性をもつことがわかった。
また、ステンレス鋼製のチップによるひっかき試験の結果、耐擦傷性に優れていることがわかった。
(実施例7)
シリコン化合物として、ヘキサメチルジシラン(以下、HMDSと称する)を用いる他は、実施例と同様にして撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0067】
この撥水性酸化シリコン皮膜膜について、それぞれの接触角を測定した。その測定結果を図14に示す。
(実施例8)
FAS−17ガスのキャリアガスとしてArガスの代わりにHガスを使用して、このFAS−17ガス中に水素ガスを含ませる他は、実施例と同様にして撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0068】
これらの撥水性酸化シリコン皮膜は、どれもアルゴンを用いた膜よりも高い撥水性をもつことがわかった。特に、基板温度200℃以上では単独の撥水膜と同様の接触角が得られた。また、XPS測定の結果、上層の酸素含有量がアルゴンを用いた場合と比べて大幅に低下していることが確認された。
(実施例9)
本実施例では、撥水層と硬質層とからなり、該撥水層の表面が最表面となるように基材上にそれぞれ配置されてなる硬質撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
この皮膜は、この撥水層が、硬質層との境界部分に、前記炭素および前記フッ素の含有濃度が境界方向に向かうにつれ漸次低下してその境界面においてほぼゼロとなる傾斜層をもつ。
【0069】
本実施例では、まず最初に硬質層を基板上に形成してからこの硬質層の上に傾斜層を形成し、続いて撥水層をその傾斜層の上に形成して硬質撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。この硬質層の形成にはTMSガスと酸素ガスとを原料ガスとして用い、これらの原料ガスを気相反応させて形成した。また、撥水層の形成にはFAS−17ガスとTMSガスとを原料ガスとして用い、これらの原料ガスを気相反応させて形成した。これら一連の層形成過程を図8に模式的に示す。
【0070】
本実施例の硬質撥水性酸化シリコン皮膜の作製手順を図1および図8を用いながら以下に説明する。なお、これらの層の形成には、いずれも図1に示したマイクロ波プラズマCVD装置を使用した。また、硬質撥水性酸化シリコン皮膜の作製に先立ち、基板としてシリコンウエハー(10mm×10mm×0.5mm)を用意し、プラズマ中心から約100mm離れた位置にこの基板を設置した。また、約5分間基板を酸素プラズマ(20Pa)に曝し、あらかじめ基板表面の不純物を除去した。
【0071】
まず、反応容器6をロータリーポンプ10により1Paまで排気した後、TMSガス用のシリコン化合物供給源12を室温に保持し、その蒸気を反応容器6内に導入した。このとき、基板4の上部約10mmからTMSガスを、また、酸素ガスは石英管2の上部から導入した。これら原料ガスを導入した後、成膜条件を次のように設定して成膜を行った。
【0072】
全圧およびマイクロ波出力はそれぞれ50Pa、300Wと一定にした。酸素分圧比(O2 (Pa)/全圧(Pa))は、本発明者らの研究により最適硬さが得られることがわかっている80%を採用した。基板温度は後述する温度で一定に保持した。成膜時間は膜厚が1.0μm以上となるように選択した。
こうして図8の(a)に示すように、基板上に硬質層100が形成された。この硬質層100は、後述の比較例1において得られる皮膜と同じものである。
【0073】
次に、先に保持した基板温度を維持しつつ、酸素ガスの供給をニードルバルブ30により徐々に減少させ、代わりにFAS−17をキャリアガスのArを用いて反応容器6内に導入した。ここでは、FAS−17用のフッ素化合物供給源14を約70℃に保持し、その蒸気を反応容器6内に導入した。また、FAS−17蒸気の凝縮を避けるため、ガス導入管も約70℃に保持した。一方、Ar流量はマスフローコントローラーにより20sccmに制御した。こうして図8の(b)に示すように、硬質層100の上に傾斜層200が形成された。
【0074】
続いて、全圧が50PaでTMSとFAS−17/Arの分圧比が25Pa:25Paになるようにニードルバルブ30で調整し、1〜5分間成膜を実施した。こうして図8の(c)に示すように、傾斜層200の上に撥水層300が形成された。
本実施例では、基板温度を制御しない条件(約70℃)と、外部からの抵抗加熱により100℃、200℃および300℃と、のように350℃までの温度範囲でほぼ一定に制御した条件とでそれぞれ4種類の硬質撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。以下、特に断らない限り、4種類とはこれらの基板温度の種類を指す。
【0075】
これらの硬質撥水性酸化シリコン皮膜では、いずれも約1.0μm以上の膜厚を有した。また、これらの皮膜では、基板/皮膜、硬質層/傾斜層ともそれぞれ良好な密着性をもつことがわかった。これは、碁盤目剥離試験において、基板/皮膜、硬質層/傾斜層の境界(界面)での剥離が観察されなかったことで確認した。次に、それらの接触角および硬度について、それぞれ以下のように評価を行った。
【0076】
まず、接触角の測定結果を図9に示す。比較のために、実施例5の撥水性酸化シリコン皮膜の接触角を図9に併せて示した。
図9より、いずれも100°以上の高い接触角をもつことがわかる。ただし、実施例5のものに比べるとやや劣る。また、基板温度が低温であるほど、より高い接触角が得られることもわかる。
【0077】
次に、硬度の測定結果を図10に示す。なお、ここでは、ダイナミック超微小硬度計(島津製作所製,DUH−200)を用いて超微小硬度を測定した。圧子はヌープ圧子を用い、最大荷重は0.50gfに設定した。
図10より、いずれの皮膜も高い硬度をもつことがわかる。特に、200℃以上の基板温度で得られたものは比較例1の皮膜と同等の硬度をもち、その硬度は極めて高いことがわかる。
【0078】
一方、100℃以下の基板温度で得られたものは、200℃以上の基板温度で得られたものと比べると硬度が小さいことが確認された。これは、撥水層の厚さの違いによるものと考える。前者の形成速度は、後者のものに比べると、約60〜100nm/minと非常に早いことがわかっている。ここでは、それぞれの成膜時間が同じであるため、前者の方が、後者に比べて厚い撥水層が形成されている。それゆえ、100℃以下の基板温度で得られたものは、硬質層の硬さが反映されていないために硬度が小さくなったと考えられる。
【0079】
そこで、100℃以下の基板温度で得るものにおいて、撥水層の成膜時間を1分間と、先のものより成膜時間を小さくして成膜を実施したところ、硬度は200℃以上の基板温度で得られたものとほぼ同等の値を示した。それらの皮膜の硬度を図10に併せて示した(図中の△印)。このときの接触角は、撥水層の成膜時間が短くなるに従い若干低下したものの、105〜112°とPTFE(108°)並みの高い撥水性を示した。
【0080】
以上のように、本実施例の硬質撥水性酸化皮膜は、実施例5の撥水性酸化シリコン皮膜に比べるとやや接触角で劣るものの、優れた撥水性をもち、かつ極めて高い硬度をもつことがわかった。また、成膜時の基板温度の違いによって、接触角および硬度に違いが出てくることもわかった。そこで、本実施例の皮膜が実施例5のものに比べてやや接触角で劣る原因、並びに基板温度によって接触角および硬度が違ってくる原因を突き止めるべく、これらの皮膜での化学結合状態および化学組成についてそれぞれ以下のように評価した。
【0081】
まず、本実施例の皮膜と実施例5の皮膜とについて、それらの表面部分の化学結合状態を測定した。その分析結果を表1に示す。なお、化学結合状態の分析には、XPS(島津製作所製、ESCA1000)およびFTIR(JASCO製、FT/TR5300)を用いた。
【0082】
【表1】
Figure 0003945664
表1より、本実施例のいずれの皮膜においても、その表面では、撥水性に寄与するF/SiおよびF/C値が減少していること、親水性の増加に寄与するO/F値が増加していること、並びに皮膜の無機化を示すC/Si値が減少していることがそれぞれ確認された。この測定結果からも明らかなように、本実施例で得られた皮膜の表面は、実施例5の皮膜の表面よりも親水化していることがわかる。これは、成膜途中で反応容器内に導入するガスを酸素からFAS−17/Arに切り替える際、プラズマ雰囲気中に残存する酸素がFAS−17の分解および皮膜中への極性基(水素基等)の生成を促進したためと考えられる。それゆえ、本実施例の皮膜の接触角が低下したものと考えられる。
【0083】
次に、70℃の基板温度で得られた皮膜と、300℃の基板温度で得られた皮膜とについて、それぞれ皮膜の深さ方向の化学組成を分析した。それらの分析結果をそれぞれ図11および図12に示す。図11および図12において、図中の記号△は炭素、○はシリコン、●は酸素、□はフッ素を示す。なお、皮膜の深さ方向の化学組成変化はXPSのArイオンエッチング(2.0kV、30mA)により測定した。この測定では、エッチング深さはエッチング時間に比例して大きくなる。
【0084】
図11から明らかなように、70℃の基板温度で得られた皮膜では、エッチング時間が約120分を越えたあたりから、フッ素および炭素濃度の著しい減少が観察され、反対に、シリコンおよび酸素濃度の増加が確認された。一方、図12から明らかなように、300℃の基板温度で得られた皮膜では、エッチング時間が約30分を越えたあたりから、同様の傾向が観察された。
【0085】
以上の化学組成の分析結果から、70℃の基板温度で得られた皮膜の方が300℃の基板温度で得られたものよりも撥水層の厚さが大きいことがわかる。即ち、100℃以下の基板温度で得られた皮膜の方が200℃以上の基板温度で得られたものよりも撥水層の厚さが大きい。このように選択する基板温度によって、その撥水層の質および厚さが異なってき、ひいては皮膜の撥水性および硬度が異なってくる。
【0086】
最後に、本実施例で得られた皮膜の可視光透過率について測定した。その測定の結果、いずれの皮膜においても、可視光領域での透過率が90%以上で、未処理のガラス基板と変わらないことがわかった。図13に、200℃の基板温度で得られた皮膜の可視光透過率の測定結果を一例として示した。なお測定にあたっては、リファレンスに空気を使用した。
【0087】
以上の評価により、本実施例の硬質撥水性酸化シリコン皮膜は、撥水性に優れかつ硬度が大きく、さらに可視光の透過率も大きいことが明らかとなった。
(比較例1)
傾斜層300および撥水層を形成しない以外は、実施例9と同様にして4種類の皮膜を形成した。
【0088】
これらの皮膜はいずれも膜中にSi−O−Siの結合をもち、そのシリコンおよび酸素濃度がそれぞれ、30at.%および60at.%であることがわかった。さらに、これらの硬質酸化シリコン皮膜は、いずれもホウ珪酸ガラスに匹敵する硬さをもつことがわかった。さらに緻密な皮膜であることも確認された。
(実施例10)
TMSの代わりにヘキサメチルジシラン(以下、HMDSと称する)を用いる他は、実施例9と同様にして4種類の硬質撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0089】
また、これらの硬質撥水性酸化シリコン皮膜では、いずれも実施例9で同じ基板温度条件で得られたものとほぼ同じ接触角および硬度をそれぞれもつことがわかった。しかし、実施例9での撥水層の成膜速度は、約10〜25nm/minであったのに対し、本実施例のものでは約70〜100nm/minと非常に大きかった。
(実施例11)
FAS−17ガスのキャリアガスとしてArガスの代わりにH2ガスを使用して、このFAS−17ガス中に水素ガスを含ませる他は、実施例9と同様にして4種類の硬質撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0090】
これらの撥水性酸化シリコン皮膜では、いずれも実施例9で同じ基板温度条件で得られたものよりも高い撥水性をそれぞれもつことがわかった。特に、基板温度200℃以上では単独の撥水膜と同様の接触角が得られた。また、XPS測定の結果、いずれの撥水層の酸素含有量も、実施例9でそれぞれで得られたものと比べて大幅に低下していることが確認された。
(実施例12)
TMSの代わりにHMDSを用いる他は、実施例11と同様にして4種類の硬質撥水性酸化シリコン皮膜を作製した。
【0091】
これらの硬質撥水性酸化シリコン皮膜について、それぞれの接触角を測定した。その測定結果を図14に示す。比較のために、実施例7および実施例10で得られたものの測定結果についても図14に併せて示した。
図14より、本実施例のいずれの皮膜も優れた撥水性をもち、特に実施例10の同じ基板温度の条件で得られた皮膜よりも高い撥水性をそれぞれもつことがわかった。この結果より、キャリアガスにH2ガスを用いたほうが、アルゴンガスを用いるよりも高い撥水性が得られることがわかる。
【0092】
ただし、200℃以下の基板温度で得られた皮膜は、実施例7の同じ基板温度の条件で得られた皮膜よりもそれぞれ撥水性でやや劣ることがわかった。しかしながら、硬度についてはここでは図示しないが、いずれも実施例7の同じ基板温度条件で得られた皮膜よりも高いことがわかった。
【0093】
【発明の効果】
上記撥水性酸化シリコン皮膜は、撥水性、耐摩耗性および耐擦傷性に優れるため、これらのような性能に劣る製品等に用いることにより、これらの製品の撥水性、耐摩耗性および耐擦傷性を向上させることができる。
また、上記撥水性酸化シリコン皮膜は、撥水性の持久性および耐候性に優れるため、摩耗頻度が大きい環境下や雪や氷の付着の著しい環境下などで使用される製品等に用いることにより、これらの製品の撥水性の持久性および耐候性を向上させることができる。
【0094】
本発明の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法により、撥水性および耐摩耗性に優れる撥水性酸化シリコン皮膜を、容易に、低温でかつ母材と密着性良く形成することができるため、製造コスト等を低減することができ、また、耐熱温度の低い製品においても、品質を低下させることなく、撥水性、耐摩耗性および耐擦傷性に優れた撥水性酸化シリコン皮膜を製造することができる。
【0095】
具体的には、300以下の低温で硬質な撥水性酸化シリコン皮膜が作製できるため、耐熱性、耐摩耗性の低い材料の表面硬質、高機能化に有効な方法である。特に、100℃以下の低温でこうした皮膜を作製できることから、プラスチックのような材料に適用できる。
また、フッ素が皮膜中に均一に分散した形態の撥水性酸化シリコン皮膜を、容易に、低温でかつ密着性良く形成することができるため、撥水性の持久性および耐候性に優れた撥水性酸化シリコン皮膜を、低コストで、かつ耐熱温度の低い製品においても、品質を低下させることなく製造することができる。
【0096】
また、任意のフッ素含有量の撥水性酸化シリコン皮膜を、容易に、低温でかつ密着性良く形成することができるため、撥水性に優れた撥水性酸化シリコン皮膜を、低コストで、かつ耐熱温度の低い製品においても、品質を低下させることなく製造することができる。
さらに、母材上に有機塗料等を用いて描かれた文字、絵画等の上に、透光性に優れた撥水性酸化シリコン皮膜を低温で形成できるため、文字、絵画の変色、劣化等を生じさせることなく、撥水性酸化シリコン皮膜を形成できる。
【0097】
上記硬質撥水性酸化シリコン皮膜は、撥水性および耐摩耗性に極めて優れ、かつ機械的強度にも優れるため、撥水性、耐摩耗性の低い材料に用いることによってその性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図は、本実施例で使用した皮膜形成装置を示す概略図である。
【図2】この図は、実施例1で得られた撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角を示すグラフである。
【図3】この図は、実施例2で得られた撥水性酸化シリコン皮膜について、赤外線吸収分析法(IR)により赤外線の透過率を測定した結果を示す図である。
【図4】この図は、実施例2で得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角を示すグラフである。
【図5】この図は、実施例3で得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角を示すグラフである。
【図6】この図は、実施例4で得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角を示すグラフである。
【図7】この図は、実施例5で得られた4種類の撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角を示すグラフである。
【図8】この図は、実施例9の撥水性酸化シリコン皮膜の作製過程を模式的に示した図である。
【図9】この図は、実施例5および実施例9で得られた撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角をそれぞれ示すグラフである。
【図10】この図は、実施例9および比較例1で得られた撥水性酸化シリコン皮膜の硬度をそれぞれ示すグラフである。
【図11】この図は、実施例9で得られた撥水性酸化シリコン皮膜のひとつの深さ方向の組成変化を示す図である。
【図12】この図は、実施例9で得られた撥水性酸化シリコン皮膜のひとつの深さ方向の組成変化を示す図である。
【図13】この図は、実施例9で得られた撥水性酸化シリコン皮膜について、それらの可視光透過率の一例を示すグラフである。
【図14】この図は、実施例7、実施例10および実施例12で得られた撥水性酸化シリコン皮膜、もしくは硬質撥水性酸化シリコン皮膜の水滴との静的接触角をそれぞれ示すグラフである。
【符号の説明】
1:皮膜形成装置 2:反応容器 4:基板 6:堆積容器 8:マイクロ波電源 10:ロータリーポンプ 12:シリコン化合物供給源 14:フッ素化合物供給源 16:開口端部分 18:天井部分 20:基板ホルダー 22:導波管 24:キャビティー 26:スタブチューナー 27:プランジャー 28:低温プラズマ 29:アルゴンガス供給源 30:ニードルバルブ

Claims (7)

  1. シリコン化合物およびフッ素化合物の少なくとも一方は酸素を含み、かつ該シリコン化合物および該フッ素化合物の少なくとも一方は炭素を含む化合物をそれぞれ用い、該シリコン化合物を含むシリコン化合物含有ガスと、水素ガスを含むキャリアガスとともに該フッ素化合物を含むフッ素化合物含有ガスと、を調製し、それぞれを原料ガスとする原料ガス調製工程と、
    該原料ガスに含まれる該シリコン化合物と該フッ素化合物とを気相中で分解反応させることにより、シリコン含有分解反応物とフッ素含有分解反応物の少なくとも一方が酸素を含有し、かつ該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方が炭素を含有する形態で該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物を生成する分解反応物生成工程と、
    前記分解反応物生成工程で生成した該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物とを母材上に堆積させることにより、該シリコンが該シリコン含有分解反応物および該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方に含まれる該酸素と結合した酸化シリコンと、該フッ素が該シリコン含有分解反応物および該フッ素含有分解反応物の少なくとも一方に含まれる該炭素と結合した該フッ素および該炭素と、を含む皮膜を形成する皮膜形成工程と、
    からなることを特徴とする撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法。
  2. 前記分解反応物生成工程において、該シリコン化合物および該フッ素化合物の少なくとも一方は、低温プラズマを用いて気相中で分解反応させる請求項1に記載の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法。
  3. 該低温プラズマは、マイクロ波、高周波、低周波、直流、交流の少なくとも一種を用いた真空放電により発生させる請求項に記載の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法。
  4. 前記分解反応物生成工程において、該シリコン化合物含有ガスと該フッ素化合物含有ガスとを混合して該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物とを生成する請求項1に記載の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法。
  5. 前記分解反応物生成工程において、該シリコン含有分解反応物と該フッ素含有分解反応物との生成は、該シリコン化合物含有ガスと該フッ素化合物含有ガスとの全圧が10Pa以上の圧力下でおこなう請求項4に記載の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法。
  6. 前記皮膜形成工程において、該母材の少なくとも皮膜を形成する表面部分を50〜350℃の温度にする請求項1に記載の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法。
  7. 該母材は、ガラス材料、樹脂材料、金属材料、半導体材料、木材、繊維、建材の少なくとも一種からなる請求項1に記載の撥水性酸化シリコン皮膜の製造方法。
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