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JP3843589B2 - 高窒素ステンレス鋼の溶製方法 - Google Patents

高窒素ステンレス鋼の溶製方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高窒素ステンレス溶鋼の溶製方法に係わり、より詳しくは、溶鋼の減圧精錬処理(例えば、VOD法による)において、溶鋼の窒素濃度を低下させることなく、脱酸するというステンレス溶鋼の加窒及び脱酸を同時に行う技術である。
【0002】
【従来の技術】
近年、ステンレス鋼の分野においては、耐食性や強度等の向上、あるいは高価なNi源の低減の目的で、鋼中に積極的に窒素を含有させた鋼種が開発されている。
ところで、ステンレス鋼を溶製する精錬段階では、高価なCrの酸化損失を極力低減しつつ鋼中の炭素濃度を低減すること、及び非金属介在物を形成する鋼中の酸素濃度を低減することを目的として、減圧精錬を行うのが一般的である。
【0003】
この溶鋼中の酸素濃度に関しては、スラグの塩基度(CaO/SiO2 )を高くすると、スラグ−メタル反応によるSi−O平衡で決まる鋼中酸素濃度が、真空下(30〜100torr)でのC−O反応で決まる酸素濃度よりも低くなるので、溶鋼中の酸素濃度をより低下させることができる。しかしながら、スラグの塩基度が高くなると、スラグの滓化が悪化するために、CaF2 あるいはAl23 を添加しなければならず、取鍋耐火物の溶損量が増大したり、スラグ中のAl23 がSiで還元され、溶鋼中にAl23 介在物が生成し、Siキルド鋼であるにもかかわらず、後工程の連続鋳造時にAl23 介在物によるノズル詰まりや製品の欠陥を多発させる。そのため、高塩基度スラグを形成させるような脱酸処理は、難かしいものであった。
【0004】
ところで、減圧精錬法でも、特にVOD法は、ステンレス鋼の脱炭及び脱窒に関しては優れたものである。従って、それを前述したような高窒素ステンレス鋼の溶製に採用すると、窒素濃度が低下し過ぎてしまい、脱酸処理後に、窒素含有合金を添加して加窒を実施する必要があった。そのため、全体の精錬時間が延長してしまうという問題がある。また、この窒素濃度の低下を抑えるには、図3に示すVOD真空装置1内の真空度を下げ、窒素分圧を高くすることが考えられるが、真空度を低下するとCO分圧も上昇するので、Fe−Si合金の添加後に期待するCO反応による脱酸反応が停滞し、VOD処理後の溶鋼中の酸素濃度が増加してしまうという問題もあった。つまり、酸素濃度の低い高窒素ステンレス鋼を安定して溶製する適切な方法が存在しないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑み、VOD法のような減圧精錬装置を用いても、高窒素濃度で、且つ低酸素濃度の溶鋼を従来より安定して製造できる高窒素ステンレス溶鋼の溶製方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため、VOD装置を用いた真空下での加窒及び脱酸について鋭意研究を重ね、その成果を本発明として完成させた。
すなわち、本発明は、減圧精錬装置内の精錬容器に収容したステンレス溶鋼を、減圧下で脱炭した後、Si又はSi含有合金を添加して脱酸するステンレス鋼の溶製方法において、Si又はSi含有合金を添加後に、前記減圧精錬装置内を、真空度が30〜100torrになるよう減圧すると共に、前記保持容器の上方及び底部から該溶鋼へ不活性ガスを供給し、該上方又は該底部の少なくとも一方から供給される不活性ガスは、窒素ガス又は窒素ガスと窒素以外の不活性ガスとの混合ガスとして供給し、溶鋼の加窒及び脱酸を同時に行うことを特徴とする高窒素ステンレス鋼の溶製方法である。
【0007】
また、本発明は、前記窒素以外の不活性ガスをアルゴン・ガスとすることを特徴とする高窒素ステンレス鋼の溶製方法でもある。
本発明によれば、溶鋼中へ窒素ガス又は窒素と他の不活性ガスの混合ガスを吹き込むことで窒素濃度をあるレベルに維持したまま、脱酸できるようになるので、高窒素で且つ低酸素のステンレス溶鋼が製造できるようになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、発明に至る経緯も含め、本発明の実施の形態を説明する。
本発明が対象とする高窒素ステンレス鋼は、窒素を400ppm以上含有するステンレス鋼であり、フェライト系、オーステナイト系のいずれでも良い。
転炉等の精錬炉で所定炭素濃度にて出鋼された含クロム溶鋼2を、精錬容器としての取鍋3に移し、これを図3に示したVOD真空処理装置1に設置する。そして、減圧下にて、さらに目標炭素濃度まで脱炭した後、加窒及び脱酸が行われる。この脱炭処理は、多くの場合、上吹きランスから酸素又は酸素含有ガスを吹き付けて行われるが、脱炭量が少なくて良い場合には、不活性ガスのみの吹き付けか、あるいは上吹ガスの吹き付けを行うことなく、専ら減圧による所謂「C−O脱炭」によって行われることもある。
【0009】
発明者は、この減圧精錬処理の終了後に、Fe−Si添加して脱酸する際に、窒素ガスを吹き込む場合、吹き込まない場合(従来法)、あるいは単に高真空下に保持する場合について、溶鋼中の窒素及び酸素の濃度を調査した。
まず、図1に、減圧精錬処理終了後の溶鋼中の窒素濃度と酸素濃度を、上記各場合につき比較して示す。図1より明らかなように、窒素ガスを上吹きした場合及び低真空下に維持して窒素ガスの上吹きがない場合では、30〜40torrの低真空度下で前記還元処理を行うため、該処理後の溶鋼中窒素濃度は高く、目標窒素濃度範囲内を維持することができた。一方、窒素ガスを吹き込まない従来法では、還元処理を2〜3torrの高真空度下で行い、溶鋼の平衡の窒素濃度が低いので、目標窒素濃度よりもかなり低下してしまう。
【0010】
次に、図2に、前記脱炭処理が終了し、Fe−Si合金添加後の酸素濃度を、前記同様に3つの場合で比較して示す。図2によれば、窒素ガスを上吹きした場合と上吹しなかった従来法の場合は、同じような脱酸挙動を示しており、前記還元処理終了後の酸素濃度は、目標の50ppm以下を達成していた。一方、低真空度下で上吹きガス吹き付けが無い場合では、脱酸速度が低下し、還元処理後の酸素濃度が他の2つの場合に比較して高く、目標の50ppmよりも高くなっていた。
【0011】
そこで、発明者は、以上の調査結果に基づき、低真空度下(30〜100torr)で、窒素ガスや不活性ガスを吹込むことにより、鋼中の窒素濃度を高位に維持したまま、鋼中の酸素濃度を所定の目標濃度まで低下させることができると考え、その具体的な実施方法を本発明としたのである。
その実現にあたっては、まず、前述のVODのような減圧精錬装置において、減圧下での脱炭処理後に、SiまたはSi含有物質(好ましくは、Fe−Si)を添加し、前記減圧精錬装置の溶鋼容器の上方及び底部から溶鋼に不活性ガスを供給する。この不活性ガスの供給は、溶鋼の脱酸促進と、溶鋼中への窒素の添加の2つの役割を果たす。
【0012】
この溶鋼の脱酸促進は、溶鋼を撹拌し、添加されたSiが溶鋼に速やかに溶解し、脱酸反応によって生成した非金属介在物が浮上するのを促進すること、またスラグをも撹拌して、スラグの脱酸をも促進し、処理後の溶鋼にスラグから酸素が供給されて非金属酸化物を生成するのを防止する。この溶鋼の撹拌には、容器底部から溶鋼中に吹き込まれた不活性ガスが主に寄与する。撹拌を十分に行わせる観点から、底部からの吹込みガス流量は、2ノルマル・リットル/分/トン以上とするのが好ましい。また、Siによる脱酸のみでは、溶鋼中の溶解酸素は、十分に低下し切らないので、減圧によるC−O脱酸も促進する必要がある。後述するように、溶鋼中に窒素を添加する観点から、減圧装置内真空度は、目標酸素レベルまで到達できる程度に高真空とすることができない。
【0013】
そこで、本発明においては、不活性ガスを上吹することで、溶鋼浴面上のCO分圧を低下させることで、高真空処理に匹敵する前記「C−O脱酸」を可能とした。この「C−O脱酸」促進の観点から、上吹き不活性ガス流量は、多いほど好ましいが、あまり多くなると、溶鋼のスプラッシュが激しくなって、操業を阻害する恐れがあるので、0.2Nm3 /分・トン以下にとどめるのが好ましい。なお、この上吹き不活性ガスのガス種は、CO分圧を低減できるものであれば、特にガス種を問うものではない。最も安価で取り扱いが容易なガスとして窒素が好ましく使用できる。
【0014】
上述したように、本発明では、まず脱酸の観点から、不活性ガスを容器底部からと容器上方からの両方から供給することが必須である。
次に、溶鋼中への窒素の添加の観点からは、上述した容器底部からと容器上方からの不活性ガスのうち少なくとも一方に、窒素ガス又は窒素以外の不活性ガスを使用することによって達成する。窒素以外の不活性ガスとしては、価格面や取り扱いの容易さからアルゴンが好適である。
【0015】
溶鋼中への窒素の添加効率の観点からは、底部から溶鋼中に供給するガスに窒素ガス又は窒素ガスと窒素以外の不活性ガスを使用すると、ガスと溶鋼の反応界面積が大きく、且つガスと溶鋼との接触時間を長くすることができるので、有利である。
溶鋼中への窒素の添加は、本発明が減圧精錬装置においてなされる以上、減圧による気相中への脱窒と、吹き込まれた窒素ガスから溶鋼中への加窒とが競合の上に成り立つ。所定の処理時間内に十分な加窒を可能とするためには、減圧精錬装置内の真空度30〜100torrとすることが必要である。これより高真空(すなわち、より低い圧力)では、脱窒速度が勝って所定時間内に加窒することが困難になるためである。一方、上記より低真空(すなわちより高い圧力)では、上述したC−C脱酸が不利になり、溶鋼中の酸素濃度の低減が困難となるからである。
【0016】
なお、上吹きガスは、上吹きランス、あるいはパイプなどを介して溶鋼の浴面上に吹き付けるが、ガスの底吹きには、溶鋼保持容器(例えば取鍋)の底部にポーラス・プラグや、鋼製細管あるいはスリットを多数設けたガス吹き込み用羽口が利用できる。
また、本発明では、上記窒素あるいは不活性ガスの吹込みを、溶鋼の酸素濃度が50ppm以下まで継続するのが良い。その理由は、例えば、本発明方法によって、溶鋼中の窒素濃度が製品目標窒素濃度に満たなくても、窒素含有合金の添加によって不足分の調整が可能であるのに対し、酸素濃度が50ppmより高い場合には非金属介在物が多くなり、製品の欠陥を引き起こす可能性が高くなるからである。
【0017】
【実施例】
(実施例1)
転炉で粗脱炭を行った溶鋼160トンを取鍋3に出鋼し、その取鍋3をVOD真空装置1内に装入し、真空度40torrの下で溶鋼2に酸素を上吹きして、C:0.055重量%及びCr:18.2重量%の含クロム溶鋼2とした。しかる後、Fe−Si合金を950kgを添加し、装置1内の真空度を40torrにすると共に、上吹き窒素ガスを30Nm3 /分の流量でランス6の高さ1800mmで溶鋼面に吹き付け、20分間還元処理を行った。また、その際、底吹きガス5としては、アルゴン・ガス500Nリットル/分、窒素ガス500Nリットル/分の混合ガスも同時に使用した。
【0018】
その結果、C:0.040重量%、Cr18.3重量%、Si:0.35重量%、O:45ppm、N:520ppmのステンレス溶鋼を得ることができた。
(実施例2)
転炉で粗脱炭を行った溶鋼160tonを取鍋3に出鋼し、その取鍋3をVOD真空装置に装入し、真空度60torrの下で酸素吹錬を行い、C:0.06重量%、Cr:18.1重量%の含クロム溶鋼2を得た。しかる後、Fe−Si合金を1000kgを添加し、装置1内の真空度を35torrにすると共に、上吹きガスとして窒素ガス及びアルゴン・ガスをそれぞれ10Nm3 /分混合したものを、ランス6の高さ1800mmで溶鋼2面に吹き付け、25分間還元処理を行った。また、その際、底吹きガス5としては、実施例1と同様に、アルゴン・ガスを500Nリットル/分、窒素ガスを500Nリットル/分の混合ガスとした。
【0019】
その結果、C:0.048重量%、Cr:18.2重量%、Si:0.38重量%、O:47ppm、N:500ppmのステンレス溶鋼を得ることができた。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、VOD真空装置を用いて、高窒素濃度で、且つ低酸素濃度の溶鋼を従来より安定して製造できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】VOD減圧精錬装置内で溶鋼をFe−Si合金で還元処理した後の鋼中酸素濃度と窒素濃度との関係を示す図である。
【図2】図1と同じ還元処理中の脱酸挙動を示す図である。
【図3】VOD減圧精錬装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 VOD減圧精錬装置
2 含クロム溶鋼(溶鋼)
3 取鍋
4 ランス

Claims (2)

  1. 減圧精錬装置内の精錬容器に収容したステンレス溶鋼を、減圧下で脱炭した後、Si又はSi含有合金を添加して脱酸するステンレス鋼の溶製方法において、
    Si又はSi含有合金を添加後に、前記減圧精錬装置内を、真空度が30〜100torrになるよう減圧すると共に、前記保持容器の上方及び底部から該溶鋼へ不活性ガスを供給し、該上方又は該底部の少なくとも一方から供給される不活性ガスは、窒素ガス又は窒素ガスと窒素以外の不活性ガスとの混合ガスとして供給し、溶鋼の加窒及び脱酸を同時に行うことを特徴とする高窒素ステンレス鋼の溶製方法。
  2. 前記窒素以外の不活性ガスをアルゴン・ガスとすることを特徴とする請求項1記載の高窒素ステンレス鋼の溶製方法。
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