JP3766190B2 - 静電容量形3軸加速度センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、検出精度を高めうる静電容量形3軸加速度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
加速度センサは、サーボ形、圧電形、ピエゾ抵抗形、静電容量形などが知られており、近年では例えば地震などの縦揺れ、横揺れなど複数の方向の加速度を同時に検出するために、X−Y−Zの3軸方向でそれぞれ加速度を検出しうる3軸加速度センサが開発されつつある。
【0003】
静電容量形3軸加速度センサは、特開平4−148833号公報などで提案され、例えば図14(a)に示すように、固定板aと、重錘cを固着させた可撓板bとが向き合ってケース体dに固定され、前記固定板a、可撓板bの向き合う面に、固定電極E1と変位電極E2とが設けられている。
【0004】
前記固定板aは、例えば剛性が高く撓みを生じにくい材料からなり、前記可撓板bは、本例では可撓性を有し、力が加わると容易に撓みを生じる材料で構成されているものを示す。また、前記固定電極E1は、図15(a)に示すように平面視が円形をなすものであり、他方、変位電極E2は例えば図15(b)に示すように5分割した分離電極片、すなわち中央で円形をなす電極EZ1と、この電極EZ1の中心を原点としたときに可撓板bの平面方向に沿ったX軸方向正負に配された電極EX1、EX2と、Y軸方向正負に配された電極EY1、EY2とから構成される。
【0005】
このような加速度センサsに外部から加速度が与えられると、図14(b)に示すように、重錘cの重心にあたる作用点Pに力FXが作用して重錘cが変位することにより可撓板bが撓む。また固定電極E1と変位電極E2との間の電極間距離が変化して両電極間の静電容量値も変化する。この静電容量値の変化をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向それぞれ下記▲1▼〜▲3▼式の如く検出して加速度を検出しうる。
【0006】
なお静電容量値Cは、誘電率をε、電極の表面積をS、電極間距離をdとすると次の式で与えられる。
C=ε・S/d
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図14(b)には、静電容量型3軸加速度センサにX軸方向の加速度のみが作用した状態を示したが、通常、可撓板bには、剛性の指向性がない材料が選ばれるため、重錘cの重心を通る垂直軸が可撓板bの厚さの中心を通る可撓板bの原点OはZ軸方向には変位せず、該原点Oの回りにモーメントが生じるものとみなして良い。そして、重錘cは、可撓板bの剛性に見合った変位をなして釣り合う。
【0008】
ここで、電極EX1およびEX2の表面積をそれぞれS2、センサに重力加速度のみが作用する無負荷状態での電極eX1およびeX2と固定電極e1との間の初期の電極間距離をD0とし、力FXが作用することで可撓板bが撓み電極EX1およびEX2に生じる固定電極E1との電極間距離の変化量をDXとすると、X軸方向の加速度に対応する静電容量値CXは、前記▲1▼式から下記数1のように表しうる。
【数1】
【0009】
また初期の電極間距離D0に対する電極間距離の変化量DXの比(DX/D0)をdxで表すと、上記数1は下記数2のように表しうる。
【数2】
【0010】
ところが、このような静電容量形3軸加速度センサは、X軸方向の加速度とZ軸方向の加速度(本例では上向き)とが同時に負荷されるような加速度を受けた場合、力FXが作用することで電極EX1およびEX2に生じる電極間距離の変化量をDXとし、他方、力FZを受けたときの電極間距離の変化量をDZとし、(DZ/D0)をdzで表すと、X軸方向の静電容量値CXAは、力FZによりDZだけZ軸方向上向きに変位した変位電極E2が、さらに、X軸方向の力FXにより±DXだけ傾斜して変位したX軸方向の静電容量値CX1およびCX2の差で表すことができ、下記数3のように表しうる。
【数3】
【0011】
このように、上記数3では、数2と異なり、X軸方向の静電容量値に、Z軸方向の変化率dzの因子が含まれていることが判る。
【0012】
静電容量値と電極間距離の関係を図16に示している。図では、横軸に電極間距離dを、縦軸にX軸方向の静電容量値CXをとっている。電極間距離dが、無負荷状態の初期の設定値D0の場合、X軸方向の加速度により可撓板bの変位量が±DXであったとき、静電容量値CXは、ΔC0となる。これに対して、Z軸方向の加速度が同時に作用し、電極間距離dが初期の設定値D0よりDZ大きいとき又はDZだけ小さいときにX軸方向の加速度により可撓板bの変位量が±DXであると、それぞれ静電容量値は、ΔC+z、ΔC−zにばらつくことになる。
【0013】
このように、電極間の静電容量値は、電極間距離の影響を強く受けるため、静電容量形3軸加速度センサでは、上述のようにZ軸方向の加速度がX軸方向又はY軸方向といった水平軸方向の加速度に同時に加わると、その影響により、X軸方向(又はY軸方向)の検出加速度にバラツキが生じ、検出精度が悪化するという問題がある。
【0014】
このような問題を解決するために、例えば電気的に補正回路を組み込むことや、物理的に水平方向の感度を上げることなどが考えられるが、前者の場合には回路が複雑となり、また回路基板を組み込むためにセンサが大型化するという問題があり、また後者の方法では、基板サイズの大型化などの他、コストの面から見ても望ましいとは言えない。
【0015】
本発明者らは、静電容量形3軸加速度センサの機械的な構造を改良することにより水平方向の静電容量値からZ軸方向の加速度の影響を排除する方法について鋭意検討を重ねたところ、センサ本体にZ軸方向の加速度による変位によって、電極間距離が一方は増加しかつ他方は減少する2つの電極群を設けるとともに、これらの各電極群の静電容量の変化差をとることによって、水平方向の加速度に基づく静電容量からZ軸方向の加速度の影響を大幅に除去しうることを見出したのである。
【0016】
以上のように本発明は、電気的補正回路に頼ることなく、センサ出力を向上しつつも垂直方向の加速度が水平方向の加速度と同時に作用した場合であっても水平方向の加速度の検出精度を向上しうる静電容量形3軸加速度センサを提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、重錘と、この重錘が取付られかつこの重錘に作用する加速度による重錘の動きにより変位する変位部を有する可撓板とからなる重錘可撓部材、
この重錘可撓部材の一方の第1の変位面に向き合う第1の静止面を有する第1の固定部、
及びこの重錘可撓部材の他方の第2の変位面に向き合う第2の静止面を有する第2の固定部、
をそれぞれセンサ筐体に固定し、かつ
前記第1の変位面に設けられた第1の変位電極と、第1の静止面に設けられた第1の固定電極とからなる第1の電極群、
及び前記第2の変位面に設けられた第2の変位電極と、第2の静止面に設けられた第2の固定電極とからなる第2の電極群とを配したセンサ本体を具えるとともに、
第1の変位電極と、第1の固定電極の少なくとも一方、第2の変位電極と、第2の固定電極の少なくとも一方は、ともに4つ以上かつ同数しかも電気的に独立した分離電極片からなり、
しかも第1の電極群の第1の変位電極は、第2の電極群の第2の変位電極と、前記第1の電極群の第1の固定電極は、第2の電極群の第2の固定電極とそれぞれ同形とするとともに、
重錘の動きにより前記第1の電極群の第1の変位電極と第1の固定電極との間に生じる静電容量の変化、前記第2の電極群の第2の変位電極と、第2の固定電極との間に生じる静電容量の変化との差を出力することにより加速度を測定する演算部を具えたことを特徴とする静電容量形3軸加速度センサである。
【0018】
また請求項2記載の発明は、前記第1の変位面は、前記重錘が取り付かない側の可撓板の面であり、かつ第2の変位面が前記重錘の面であることを特徴とする請求項1記載の静電容量形3軸加速度センサである。
【0019】
また請求項3記載の発明は、前記第1の変位面は、前記重錘が取り付かない側の可撓板の面であり、かつ第2の変位面が前記重錘が取り付く側の可撓板の面であることを特徴とする請求項1記載の静電容量形3軸加速度センサである。
【0020】
また請求項4記載の発明は、前記分離電極片は、前記可撓板の面と直交しその中心を通る中心線回りの中央電極片と、前記中心線が可撓面と交わる原点を通り前記可撓板面と平行なX軸、Y軸側で中央電極片の外側かつ正負の位置に配される正、負の周辺X軸電極片と、正、負の周辺Y軸電極片との合計5つを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の静電容量形3軸加速度センサである。
【0021】
また請求項5記載の発明は、前記中央分離電極片はリング状をなすことを特徴とする請求項4記載の静電容量形3軸加速度センサである。
【0022】
また請求項6記載の発明は、前記分離電極片が形成されない変位面、又は静止面は、金属材からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の静電容量形3軸加速度センサである。
【0023】
また請求項7記載の発明は、第1の電極群の中央電極片による静電容量値をC11、正、負の周辺X軸電極片の静電容量値をC12、C14、正、負の周辺Y軸電極片の静電容量値をC13、C15、第2の電極群の中央電極片による静電容量値をC21、正、負の周辺X軸電極片の静電容量値をC22、C24、正、負の周辺Y軸電極片の静電容量値をC23、C25としたとき、各XYZ軸方向の加速度に対応する静電容量値をCX、CY、CZを次式により算出して、前記重錘に作用した加速度を検出することを特徴とする請求項4記載の静電容量形3軸加速度センサである。
CX=(C12−C14)−(C22−C24)
CY=(C13−C15)−(C23−C25)
CZ=(C11)−(C21)
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
本発明の静電容量形3軸加速度センサは、図1に示すように、重錘可撓部材2と、この重錘可撓部材2の一方の第1の変位面2aに向き合う第1の静止面3aを有する第1の固定部3と、前記重錘可撓部材2の他方の第2の変位面2bに向き合う第2の静止面4bを有する第2の固定部4とをそれぞれセンサ筐体7に固定している。
【0025】
前記重錘可撓部材2は、重錘5と、この重錘5が取付られかつこの重錘5に作用する加速度による重錘5の動きにより変位する変位部を有する可撓板6とから構成され、本例では重錘5は前記可撓板6の下面に取り付けされているものを示す。
【0026】
また本実施形態において、前記第1の変位面2aは、前記重錘5が取り付かない側の可撓板6の面であり、かつ第2の変位面2bが前記重錘5の面、本例では重錘5の下面であるものを例示している。なお本例では、前記第1、第2の固定部3、4、重錘5、可撓板6はいずれもガラス、樹脂、セラミックといった絶縁材料から構成されたものを例示している。
【0027】
また前記重錘可撓部材2の第1の変位面2aには、第1の変位電極ef1が設けられ、この第1の変位面2aに向き合う第1の静止面3aには、前記第1の変位電極ef1から距離を隔てて第1の固定電極e1が形成される。これにより、第1の変位電極ef1と第1の固定電極e1とが第1の電極群EUを構成しうる。
【0028】
同様に、前記第2の変位面2bには、第2の変位電極ef2が設けられ、この第2の変位面2bに向き合う第2の静止面4bには、前記第2の変位電極ef2から距離を隔てて第2の固定電極e2が形成されている。これにより、第2の変位電極ef2と第2の固定電極e2とが第2の電極群EDを構成しうる。
【0029】
このように、センサ本体1は、第1の電極群EUと第2の電極群EDとを具えている。また本発明では、前記第1の変位電極ef1と、第1の固定電極e1の少なくとも一方、第2の変位電極ef2と、第2の固定電極e2の少なくとも一方は、ともに4つ以上かつ同数しかも電気的に独立した分離電極片から構成されることを特徴の一つとしている。
【0030】
本実施形態では、前記第1の固定電極e1と、第2の固定電極e2とを図2(a)、(b)に示すように、ともに5つしかも電気的に独立した分離電極片から構成したものを例示している。これらの分離電極片は、図の如く前記可撓板6の面と直交しその中心を通る中心線回りの中央電極片eZ1、eZ2と、前記中心線が可撓板6の面と交わる原点を通り前記可撓板6の面と平行なX軸、Y軸側で中央電極片eZ1、eZ2の外側かつ正負の位置に配される正、負の周辺X軸電極片eX1、eX2、及びeX3、eX4と、正、負の周辺Y軸電極片eY1、eY2、及びeY3、eY4との5つをそれぞれ含むものを例示し、これらは互いに電気的に絶縁されて配置される。
【0031】
これにより、第1の電極群EU、第2の電極群EDは、それぞれ分離電極片と変位電極との対によりそれぞれ5組、合計10組の容量素子を形成しうる。なお第1、第2の変位電極ef1、ef2は、本例では図2(c)に示すように、一体型の円盤状にて形成されるものを示す。これらの各電極は、導電性の性質を持つ材料であれば種々のものを用いることができるが、これらは同一の材料で構成するのが望ましく、本例では同じ金属材料で構成される。
【0032】
また本発明では、前記第1の電極群EU、第2の電極群EDにおいて、前記可撓板6を挟んで対向する前記分離電極片は、それぞれ同一の形状で構成しているため、例えば第1の電極群EUのX軸方向に配された分離電極片eX1、eX2と、第2の電極群EDのX軸方向に配された分離電極片eX3、eX4とは、ともに表面積がS2で等しくなる。即ち第1の電極群EUの第1の変位電極ef1は、第2の電極群EDの第2の変位電極ef2と、前記第1の電極群EUの第1の固定電極e1は、第2の電極群EDの第2の固定電極e2とそれぞれ同形としいる。
【0033】
また、本実施形態では、センサに重力加速度のみが作用する無負荷状態において、前記第1の電極群EUの電極間距離D1は、第2の電極群EDの電極間距離D2と等しく設定したものを例示している。
【0034】
そして、このような静電容量型3軸加速度センサは、加速度による重錘5の動きにより前記第1の電極群EUの第1の変位電極ef1と第1の固定電極e1との間に生じる静電容量の変化と、前記第2の電極群EDの第2の変位電極ef2と、第2の固定電極e2との間に生じる静電容量の変化との差を出力することにより加速度を測定する演算部(図5〜7に示す)を具えている。
【0035】
このように、本例ではZ軸方向の加速度による変位によって、電極間距離が一方は増加しかつ他方は減少する2つの電極群、すなわち第1の電極群EU、第2の電極群EDを形成し、これらの各電極群の静電容量の差をとることによって、水平方向の加速度に基づく静電容量からZ軸方向の加速度の影響を大幅に除去しうるのである。すなわち、第1の電極群EUの静電容量値から、第2の電極群EDでの静電容量値を差し引くことにより、X軸方向及びY軸方向の加速度にZ軸方向の加速度が同時に作用した場合であっても、Z軸方向の加速度がX軸方向及びY軸方向の静電容量値に与える影響を小にすることができ、検出精度を大幅に高めることができる。
【0036】
例えば図2(a)、(b)に示すように、第1の電極群EUの中央電極片eZ1と変位電極ef1とによる静電容量値をC11、正、負の周辺X軸電極片eX1、eX2の静電容量値をC12、C14、正、負の周辺Y軸電極片eY1、eY2の静電容量値をC13、C15、第2電極群EDの中央電極片eZ2による静電容量値C21、正、負の周辺X軸電極片eX3、eX4の静電容量値をC22、C24、正、負の周辺Y軸電極片eY3、eY4の静電容量値をC23、C25としたとき、各XYZ軸方向の加速度に対応する静電容量値CX、CY、CZの演算は、次の▲4▼〜▲6▼式により行いうる。
CX=(C12−C14)−(C22−C24) … ▲4▼
CY=(C13−C15)−(C23−C25) … ▲5▼
CZ=(C11)−(C21) … ▲6▼
【0037】
ここで、本発明の静電容量形3軸加速度センサの検出精度について上記演算式を用いながら説明する。先ず、重錘5が加速度を受けこの重錘5の作用点Pに、X方向の力FX(図1に示す方向)のみが加わった場合、X軸上の正負に配された分離電極片eX1、eX2、eX3、eX4において、分離電極片eX1、eX4は変位電極ef1、ef2との電極間距離を減じ静電容量値C12、C24を増大させる一方、分離電極片eX2、eX3は変位電極ef1、ef2との間の電極間距離を増し、静電容量値C14、C22を減少させる。
【0038】
これらの静電容量を算出するに当たり、従来の静電容量形3軸加速度センサと比較するため、可撓板、電極、および重錘の形状、寸法、材質、重量を統一することにより両者の基本的諸元を揃え、また電極(例えば電極の平面の図心位置)に生じる電極間距離の変化量を±DXとすると、本発明のセンサのX軸方向の加速度に対応する静電容量値CXは、数4のように表される。なお分離電極片eX1、eX2、eX3、eX4の表面積をS2、誘電率をε、力FXによって生じる電極間距離の変位量を±DX、初期の電極間距離D0と前記変位量DXとの比(DX/D0)をdxとしている。
【数4】
【0039】
このように、X軸方向(又はY軸方向)の加速度のみが、重錘5に加えられた場合、数2で示した従来の静電容量形3軸加速度センサの静電容量値CXと比較すると、本発明のものは静電容量値(出力)が2倍となり、X軸方向(又はY軸方向)の検出感度が向上していることが判る。
【0040】
また、Z軸方向の加速度のみが重錘5に加えられた場合、中央電極片eZ1、eZ2の表面積をS1、中央電極片eZ1と変位電極ef1との間及び中央電極片eZ2と変位電極ef2との間にそれぞれ生じる電極間距離の変化量を±DZとし、初期の電極間距離D0との比(DZ/D0)をdzで表すと、本発明のセンサの静電容量値CZは、数5のようになる。
【数5】
【0041】
これに対して、従来のセンサでは、数6のようになる。
【数6】
【0042】
ここで、dzは通常最大で0.1程度で使用されるのが好ましく、この場合、本実施形態の静電容量形3軸加速度センサは、Z軸方向の静電容量値においても実質的に2倍の出力をうることができる。このように、X軸方向(又はY軸方向)あるいはZ軸方向の力が、それぞれ独立して加えられた場合、本発明の静電容量形3軸加速度センサは、従来のセンサに比べ出力がともに2倍となり、しかもZ軸方向の静電容量値については、バラツキも減少していることが判る。
【0043】
なお、Z軸方向の静電容量値の変化を検出するには、図3に示すように、中央電極片を独立して設けず、4分割した分離電極片eX1、eX2、eY1、eY2の静電容量値の総和の変化から算出することも可能である。しかし、本実施形態のように中央分離電極片eZ1を有する5分割とした場合には、検出の電気回路が単純化され、小型化に有利であり、また電極の原点に近いほど、他軸の影響を受け難いため、Z軸方向の加速度の検出精度をさらに向上しうる利点がある。
【0044】
次に、X軸方向の加速度とZ軸方向の加速度とが同時に重錘5に負荷された場合について考える。この場合図4に示すように、変位電極ef1、ef2がZ軸方向の力FZにより、上向きの変位量DZを生じさせていると同時に、X軸方向の力FXにより変位量±DXが生じているものと考えることができる。この場合のX軸方向の静電容量値CXBは数7に示すようになる。
【数7】
【0045】
ここで、数3に示した従来のセンサの静電容量値CXAは、本発明のセンサの静電容量値CXBとを比較するために分母の共通化を図ると、数8のように表すことができる。
【数8】
【0046】
静電容量形3軸加速度センサは、その構造上、作動範囲において通常、dx、dzの最大値を0.1程度で使用するのが好ましいため、dx、dzの最大値を0.1とすると、前記数7、8の式の分母{(1−dz)2 −dx2 }{(1+dz)2 −dx2 }は、0.96〜1.00の範囲をとり得る。また、各分子のうち(dz2 −dx2 )の項は、−0.01〜0.01の範囲を取りうる。
【0047】
また本発明の静電容量形3軸加速度センサと従来のセンサの静電容量値CXB、CXAを比較すると、従来のもの(数8)には、分子において「1」に「2dz」の因子を加えた形となっている。この「2dz」は、最大で0.2の値をとるため、最大で±20%のバラツキを与えるものとなる。
【0048】
これに対して、本発明の静電容量形3軸加速度センサは、静電容量値CXBが従来のものに比して2倍になっており、検出感度を向上しうるとともに、従来のセンサに比べ、X又はY軸方向といった水平方向の加速度にZ軸方向の加速度が同時に加わったような場合でも、従来のZ軸方向の加速度の影響(2dz)を排除してX軸方向(又はY軸方向)の静電容量値を取得することができるため、検出精度を大幅に向上しうる。
【0049】
次に演算部の回路構成の一例を図5〜7に示す。図5はX軸方向の加速度出力、図6はY軸方向の加速度出力、図7はZ軸方向の加速度出力を行うものである。例えば図5において、電極eX1、ef1間の静電容量C12、電極eX2、ef1間の静電容量C14、電極eX3、ef2間の静電容量C22、電極eX4、ef2間の静電容量C24は、それぞれCV変換器H1〜H4により電圧値V1〜V4に変換されて出力される。
【0050】
また、差動増幅器A1は、CV変換器H1、H2により変換された電圧値V1とV2との差の電圧V5を、また差動増幅器A2は、CV変換器H3、H4により変換された電圧値V3とV4との差の電圧V6をそれぞれ差動増幅器A3に出力する。差動増幅器A3は電圧V5とV6の差をとり、これをX軸方向の加速度に対応する電圧値V7として出力しうる。
【0051】
なおY軸方向もX軸方向の場合と同様、電極eY1、ef1間の静電容量C13、電極eY2、ef1間の静電容量C15、電極eY3、ef2間の静電容量C23、電極eY4、ef2間の静電容量C25は、それぞれCV変換器H5〜H8により電圧値V10〜V13に変換され、差動増幅器A4は、CV変換器H5、H6により変換された電圧値V10とV11との差の電圧V14を、また差動増幅器A5は、CV変換器H7、H8により変換された電圧値V12とV13との差の電圧V15をそれぞれ差動増幅器A6に出力する。また差動増幅器A6は電圧V14とV15の差をとり、これをY軸方向の加速度に対応した電圧値V16として出力する。
【0052】
またZ軸方向については、電極eZ1、ef1間の静電容量C11、電極eZ2、ef2間の静電容量C21をそれぞれCV変換器H9、H10により対応する電圧V17、V18に変換するとともに、差動増幅器A7により電圧V17、V18の差をとり、これをZ軸方向の加速度に対応した電圧値V19として出力しうる。
【0053】
そして、センサ本体の前記各電極に所定の配線を施して、上述のような演算動作を行う回路に接続することによって、重錘5に作用した加速度に対応する電圧値を、3次元の各軸方向成分ごとに精度良く取り出すことができる。なおこの演算回路は一例であり、たとえば、前記▲4▼〜▲6▼式を変形して、それに対応した演算回路を組むことも、勿論可能である。
【0054】
また前記無負荷状態において、第1の電極群EUの第1の固定電極e1と第1の変位電極ef1との電極間距離D1と、第2の電極群EDの第2の固定電極e2と第2の変位電極ef2との電極間距離D2とは、実質的に等しくすることが望ましい。
【0055】
図8(a)に示す曲線G1aは、前記電極間距離をD1=D2=D0とした場合の第1の電極群EUの相対出力を示している。同曲線G1bは、第2の電極群EDの相対出力であり、同曲線G1は、これらの相対出力の和であり、センサとしての相対出力を示している。図から明らかなとおり、曲線G1は、加速度センサの実用域であるdz=0近傍で、出力が非常に安定しており、最も適したものとなっている。
【0056】
また、曲線G2aは、前記電極間距離D1=D2=2D0とした場合の第1の電極群EUの相対出力を示している。同曲線G2bは、第2の電極群EDの相対出力であり、同曲線G2は、これらの相対出力の和であり、センサとしての相対出力を示している。この曲線G2では、出力が、広範囲に亘り安定するものの出力自体が小さくなる。
【0057】
なお図8(b)に示す曲線G3aは、前記電極間距離D1=D0、D2=2D0としたD1≠D2の場合の第1の電極群EUの相対出力を示し、同曲線G3bは、第2の電極群EDの相対出力であり、同曲線G3は、これらの相対出力の和であり、センサとしての相対出力を示している。図から明らかなとおり、曲線G3は、補償が小さくなり、出力の曲線が従来のものに近づくため好ましくない。
【0058】
また図8(b)に示す曲線G4aは、前記電極間距離D1=D0、D2=D0/2としたD1≠D2の場合の第1の電極群EUの相対出力を示し、同曲線G4bは、第2の電極群EDの相対出力であり、同曲線G4は、これらの相対出力の和であり、センサとしての相対出力を示している。図から明らかなとおり、曲線G4は、D2が小さいため、補償が大きすぎ、逆に精度を悪くしている。
【0059】
したがって、初期の電極間距離D1、D2は、ともに等しく設定するとともに、個々のセンサに応じて出力特性(曲線)が安定する値を採用するのが良い。
【0060】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態では、図9に示すように、前記第1の変位面2aは、前記重錘5が取り付かない側の可撓板6の面であり、かつ前記第2の変位面2bが前記重錘5が取り付く側の可撓板6の面であることを特徴としている。前記第2の電極群EDは、本例では中央部に重錘5が貫通するものを例示し、このため、第2の固定部4は、重錘5が通る透孔4cが形成されるとともに、前記中央電極片eZ1、eZ2が、図10に示すように前記重錘5の周囲を囲むリング状をなすものを採用している。
【0061】
この実施形態では、X軸方向の力が加わって重錘5が可撓板6の原点Oの回りに回転したときに生じる、第1、第2の電極群EU、EDの電極間距離の変化の微小な差異を減じることができ、かつ組立寸法精度や組立加工性を向上しうる点で好ましい。
【0062】
なお、本例では全ての電極を、図10に示すような同形の分離電極片にて構成しているが、第1の電極群EU、第2の電極群EDそれぞれについて、固定電極e1(e2)、又は変位電極ef1(ef2)のいずれか一方、に上述の様な分離電極片を具えていれば良い。また、その他の構成については、検出回路を含めて、図1に示す構造の装置と概略同様である。
【0063】
また図11、図12には、本発明の他の実施形態を示している。この例では、第1、第2の固定部3、4、重錘5、可撓板6およびセンサ筐体7が金属材料にて構成されている。また、可撓板6は、本例では、センサ筐体7から放射状にのびる複数本のアーム部材により弾性的に支持されたものを例示する。
【0064】
また前記アーム部材12は、図12に図11のA−A断面を示すように、例えば可撓板6よりも十分に弾性変形しやすいものとすることにより、可撓板6を変形させずアーム部材12のみが弾性変形することにより可撓板6を変位させることもできる。この場合、可撓板6の変位による電極間距離の変位が線形に変化し易くなり、検出精度の向上にさらに役立つ。またこのように放射状に配されたアーム部材12を設けることにより、可撓板6の変位をより指向性のないものとしうる結果、さらに検出精度の向上に効果がある。またこの例では、変位電極ef1、ef2は、いずれも可撓板6、重錘5自体を電極として用いることができ、構造の簡素化も役立つ。
【0065】
なお可撓板6と重錘5とは、導電性を有する固着方法、例えば、溶接等により接合するのが好ましい。また第1、第2の固定部3、4には、絶縁材10、11を介して分離電極片eX1などを配している。
【0066】
以上詳述したが、分離電極片は、重錘可撓部材2に設けても良い。さらに、可撓板6は好ましい可撓性を与えるために、環状又は放射状にスリット等の切り込みを入れたダイヤフラム状のものを使用することができる。
【0067】
またセンサが、大きな衝撃を受ける場合には、センサ本体の強度を向上させることが望ましく、各部材に金属を使用するのが好ましい。一方、絶縁物として、又加工性や単価などの理由で、樹脂やセラミックスなども使用しうる。これらには、熱膨張率が大きく異なるものがあり、センサが自動車のように使用温度がかなり広範囲にわたるところに使用される場合には、熱膨張の差が電極間距離dに与える影響は無視できない。そのため、部材としては、熱膨張率の小さなものが望ましく、また、本例のように熱膨張率の近似した材料で構成することによって、温度による誤差等を減じるのが好ましい。
【0068】
またセンサの検出精度を考慮すると、前述の変位率dx、dy、dzそれぞれを0.1程度以下に抑え込むことが望ましいため、そのように各種構成材料の弾性率、厚さ、支持方式、重錘の形状と質量などを設計することも好ましい。さらに前記分離電極面が形成されない第1ないし第2の変位面、又は第1ないし第2の静止面は、金属材料から構成することもできる。さらに、各電極群における電極の大きさは、重錘が変位したときでも十分に垂直方向で重なり合う大きさとするのが良い。
【0069】
【実施例】
本発明の静電容量形3軸加速度センサとして、最大1Gを測定しうる図11に示した構造のセンサ(実施例)を試作し、図14に示した従来構造のセンサ(従来例)と性能を比較した。
【0070】
図13は、実施例、従来例の各センサに、X軸方向の一定の加速度AXを与えつつ、同時に±1G以内のZ軸方向の加速度AZを負荷した時のX軸方向の相対出力CXを実測した結果を示している。測定にあたっては、両センサとも測定条件は同一とした。
【0071】
図13から明らかなように、従来例のセンサでは、Z軸方向の加速度に比例してX軸方向の加速度の出力のバラツキが大きくなっていることが判る(ただし、X軸方向の加速度AXの大きい範囲、とくに0.8〜1.0Gの範囲では、Z軸方向加速度AZが小さな値(0.5〜0G)しか負荷できなかったため、比較的小さなバラツキに止まっている)。また実施例のセンサは、従来例に比べて出力が約2倍となっており、検出感度が向上していること、及びZ軸方向の加速度が負荷された場合であっても、出力のバラツキが非常に小さく、大幅な検出精度の向上が確認でき、計算式を用いて検証したのとほぼ同様の結果が得られている。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の静電容量形3軸加速度センサによれば、3軸の各方向の加速度検出感度を向上しうる。また、X軸方向及びY軸方向といった水平方向の加速度に、垂直方向(Z軸方向)の加速度が加わったような場合でも水平方向の加速度を、負荷された垂直方向の加速度の影響を実質的に受けることなく、精度良く検出できる。このため、複雑な電気的な補正回路をセンサに組み込む必要がなくなり、センサを小型できかつ構造を簡素化した安価な静電容量形3軸加速度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すセンサ本体の断面図である。
【図2】(a)は第1の固定電極、(b)は第2の固定電極、(c)は第1、第2の変位電極を示す平面図である。
【図3】分離電極片の他の例を示す平面図である。
【図4】変位電極の変位を説明する線図である。
【図5】X軸方向の演算部の回路図である。
【図6】Y軸方向の演算部の回路図である。
【図7】Z軸方向の演算部の回路図である。
【図8】(a)、(b)は、電極間距離を種々変えたときのセンサ出力を説明するためのグラフである。
【図9】本発明の他の実施形態を示すセンサの断面図である。
【図10】その分離電極片を示す平面図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示すセンサの断面図である。
【図12】そのA−A断面図である。
【図13】本発明の性能を示すグラフである。
【図14】従来の静電容量形3軸加速度センサの断面図であり、(a)は無負荷状態、(b)は力FXが作用した状態をそれぞれ示す。
【図15】(a)は固定電極、(b)は変位電極を示す平面図である。
【図16】静電容量と電極間距離を示すグラフである。
【符号の説明】
1 センサ本体
2 重錘可撓部材
2a 第1の変位面
2b 第2の変位面
3a 第1の静止面
3 第1の固定部
4 第2の固定部
4b 第2の静止面
5 重錘
6 可撓板
7 センサ筐体
ef1 第1の変位電極
e1 第1の固定電極
EU 第1の電極群
ef2 第2の変位電極
e2 第2の固定電極
ED 第2の電極群
eX1〜eX4、eY1〜eY4、eZ1、eZ2 分離電極片
10X、10Y、10Z 演算部
Claims (7)
- 重錘と、この重錘が取付られかつこの重錘に作用する加速度による重錘の動きにより変位する変位部を有する可撓板とからなる重錘可撓部材、
この重錘可撓部材の一方の第1の変位面に向き合う第1の静止面を有する第1の固定部、
及びこの重錘可撓部材の他方の第2の変位面に向き合う第2の静止面を有する第2の固定部、
をそれぞれセンサ筐体に固定し、かつ
前記第1の変位面に設けられた第1の変位電極と、第1の静止面に設けられた第1の固定電極とからなる第1の電極群、
及び前記第2の変位面に設けられた第2の変位電極と、第2の静止面に設けられた第2の固定電極とからなる第2の電極群とを配したセンサ本体を具えるとともに、
第1の変位電極と、第1の固定電極の少なくとも一方、第2の変位電極と、第2の固定電極の少なくとも一方は、ともに4つ以上かつ同数しかも電気的に独立した分離電極片からなり、
しかも第1の電極群の第1の変位電極は、第2の電極群の第2の変位電極と、前記第1の電極群の第1の固定電極は、第2の電極群の第2の固定電極とそれぞれ同形とするとともに、
重錘の動きにより前記第1の電極群の第1の変位電極と第1の固定電極との間に生じる静電容量の変化、前記第2の電極群の第2の変位電極と、第2の固定電極との間に生じる静電容量の変化との差を出力することにより加速度を測定する演算部を具えたことを特徴とする静電容量形3軸加速度センサ。 - 前記第1の変位面は、前記重錘が取り付かない側の可撓板の面であり、かつ第2の変位面が前記重錘の面であることを特徴とする請求項1記載の静電容量形3軸加速度センサ。
- 前記第1の変位面は、前記重錘が取り付かない側の可撓板の面であり、かつ第2の変位面が前記重錘が取り付く側の可撓板の面であることを特徴とする請求項1記載の静電容量形3軸加速度センサ。
- 前記分離電極片は、前記可撓板の面と直交しその中心を通る中心線回りの中央電極片と、前記中心線が可撓面と交わる原点を通り前記可撓板面と平行なX軸、Y軸側で中央電極片の外側かつ正負の位置に配される正、負の周辺X軸電極片と、正、負の周辺Y軸電極片との合計5つを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の静電容量形3軸加速度センサ。
- 前記中央電極片はリング状をなすことを特徴とする請求項4記載の静電容量形3軸加速度センサ。
- 前記分離電極片が形成されない変位面、又は静止面は、金属材からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の静電容量形3軸加速度センサ。
- 前記第1の電極群の中央電極片による静電容量値をC11、正、負の周辺X軸電極片の静電容量値をC12、C14、正、負の周辺Y軸電極片の静電容量値をC13、C15、第2の電極群の中央電極片による静電容量値をC21、正、負の周辺X軸電極片の静電容量値をC22、C24、正、負の周辺Y軸電極片の静電容量値をC23、C25としたとき、各XYZ軸方向の加速度に対応する静電容量値をCX、CY、CZを次式により算出して、前記重錘に作用した加速度を検出することを特徴とする請求項4記載の静電容量形3軸加速度センサ。
CX=(C12−C14)−(C22−C24)
CY=(C13−C15)−(C23−C25)
CZ=(C11)−(C21)
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