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JP3741495B2 - 新規複合糖ペプチドおよびその製造法 - Google Patents

新規複合糖ペプチドおよびその製造法 Download PDF

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JP3741495B2
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  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規生理活性複合糖ペプチド、およびその製造法に関する。本発明は医薬に応用される。
【0002】
【従来の技術】
糖質および複合糖質は生物の細胞、体液等に存在し、細胞の基質認識や細胞−細胞間の認識等に深く関わっている。エリスロポエチンやティシュープラスミノーゲンアクチベーター等のタンパク質あるいはヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)等のペプチドホルモンには糖鎖を持つものが知られ、それら糖鎖は基質認識と共に生体内物質の吸収分解等の代謝の速度に関係している。これら糖タンパク質あるいは糖ペプチドでは糖鎖が通常N結合型糖鎖として、ペプチド鎖のアスパラギン(Asn)にN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を介して結合している。
【0003】
タンパク質あるいは生理活性ペプチドの糖鎖を別の糖鎖に換えたり、あるいは元々糖鎖のないタンパク質あるいは生理活性ペプチドに糖鎖を付与することにより、生理機能の強化や生理活性の改変に役立つことが期待される。
【0004】
HIVウィルス感染により発症する後天性免疫不全症即ちエイズ感染症は今や深刻な社会問題化しつつある。
【0005】
その活療法として、アジドチミジンやジデオキシイノシン(DDI)等の核酸系医薬が使われるが完治に至らず、また蛋白分解酵素阻害剤やワクチン等が開発されているがまだ実用化に至っていない。
【0006】
HIVウィルスの感染成立には外膜糖タンパク質のGP−120が関与し、そのタンパク質の中の部分ペプチドがHIVウィルスの細胞膜レセプター(CD4)への結合を阻害し、感染の阻止作用のあることが見い出された。即ち、C.B.パート(C. B. Pert)ら[プロシーディング オブ ナショナル アカデミーオブ サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci.)、第83巻、第9254〜9258頁(1986)]はH−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn−Tyr−Thr−OH(AlaはL−アラニン、SerはL−セリン、ThrはL−トレオニン、AsnはL−アスパラギンまたTyrはL−チロシンを示す)からなる「ペプチド−T」と称する8つのアミノ酸からなるペプチド(オクタペプチド)が抗HIV活性を示すことを報告した。
【0007】
次いで、ペプチド−Tの抗HIV活性にはH−Thr−Thr−Asn−Tyr−Thr−OHの5つのアミノ酸からなるペンタペプチドで有効なことがM.R.ラフ(M. R. Ruff)ら[フェブス レター(FEBS Letter)、第211巻、第17〜22頁(1987)]により示された。
【0008】
更に、生体内での安定性と薬効の向上を目指してN末端のAlaをD−体のアラニン(D−Ala)にまたC末端のカルボン酸をアミド(NH2)化したアナログ[D−Ala1]ペプチドTアミドがC.C.スミス(C. C. Smith)ら[ドラッグ デベロップメント リサーチ(Drug Develop. Res.)、第15巻、第371〜379頁(1988)]により合成され,AIDS治療薬としての臨床試験が行われている「T.E.ラムダーレ(T. E. Ramdale)ら[フェブス レター(FEBS Letters)、第333巻、第217〜222頁(1993)]」。
【0009】
生理活性ペプチドを医薬として用いる場合、体液中の分解酵素による分解等により、その有効性が著しく損なわれることが多い。ペプチド−Tも血液中で分解され易い。
【0010】
血液中での安定性を高める方法として糖鎖を付与することが有効と考えられる。L.アージ(L. Urge)ら[バイオケミカル バイオフィジカル リサーチ コミュニケーション(Biochem. Biophys. Res. Commun.)、第184巻、第1125〜1132頁(1992)]はペプチド−TのAsn残基に単糖(GlcNAc)を付与し、M.L.ポウェル(M. L. Powell)ら[ファーマスーティカルリサーチ(Pharmaceut. Res.)、第10巻、第1268〜1293頁(1993)]がヒト血清中での安定性を調べたが、単糖の安定性に対する効果は小さいかほとんど認められなかった。
【0011】
単糖でなく糖鎖を結合することにより安定性を改善することが期待される。しかし糖鎖を化学的に合成することは困難であり、エンドグリコシダーゼ等の酵素により天然由来の糖鎖ブロックを転移させる方法が考えられる。
【0012】
エンドグリコシダーゼを用いた糖鎖転移反応としては、竹川ら[特開平5−64594号(1993)]およびK.タケガワ(K. Takegawa)ら[ジャーナルオブ バイオロジカル ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第270巻、第3094〜3099頁(1995)]がアルスロバクター プロトホルミエ(Arthrobacter protophormiae)由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンド−A)による糖質への糖鎖転移反応を、また、K.ヤマモト(K. Yamamoto)ら[バイオケミカル バイオフィジカル リサーチ コミュニケーション(Biochem. Biophys. Res. Commun.)、第203巻、第244〜252頁(1994)]および栃倉ら[特開平7−59587号(1995)]はムコール ヒエマリス(Mucor hiemalis)由来のエンド−Mによる糖質への糖鎖転移反応を報告した。また、羽田ら[特願平7−203945号(1995)]はGlcNAc残基を有する合成基質への糖鎖転移反応を発明した。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
生理活性ペプチドは酵素による分解を受け易いために目的臓器に到達しなかったり、半減期が短くすぐに有効濃度以下になってしまうことが多く、医薬として用いる場合に大きな問題となる。ペプチド−Tの場合にも血液中で酵素分解を受け易く、壊変を受け難くすることが必要である。
【0014】
ペプチド−Tに糖鎖を付与した糖ペプチドにすることにより、安定化の目的を達することが期待できる。
【0015】
ペプチド−TのAsn残基にGlcNAcを結合した糖ペプチド(GlcNAc−Asn−ペプチド)を化学的に合成し、エンドグリコシダーゼによる糖鎖転移反応を用いる酵素法により、Asnに結合したGlcNAc残基に糖鎖を転移させて新しい複合糖ペプチドを合成できる。即ち、本発明の目的はこのような方法により合成された(化1)に示すペプチド−Tの糖鎖誘導体を提供するものである。
【化1】
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明は1)(化2)に示すGlcNAc残基を結合させたペプチド−T誘導体の合成と、2)(化2)に示すGlcNAc残基を有するペプチド−T誘導体への酵素エンドグリコシダーゼによる糖鎖の転移反応による(化1)に示す複合糖ペプチドの合成の2つの構成からなる。
【0017】
下記式(化2)
【化2】
(式中、R1 はAla−Ser−Thr−Thr−Thr、Thr−ThrあるいはD−Ala−Ser−Thr−Thr−Thrからなるペプチド残基を示し、Xは、H、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、第3ブチルオキシカルボニル(Boc)基、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基あるいはダンシル(DNS)基からなるN末端αアミノ基の保護基、またYはOHあるいはNH2である。)に示すGlcNAc残基を有するペプチド−T誘導体の合成は如何なる方法によってもよいが、例えばT.イナヅ(T. Inazu)ら[ペプチド ケミストリー 1993(Peptide Chemistry 1993 )、第101〜104頁(1994)]あるいはT.イナヅ(T. Inazu)ら[ペプチド ケミストリー 1995(Peptide Chemistry 1995 )、第61〜64頁(1996)]の報告した方法に準じて固相合成法により合成される。
【0018】
GlcNAc残基を有するオクタペプチド[H−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OH]の合成を例にとると、例えば9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基等によりN末端αアミノ基を保護したアスパラギン酸とGlcNAcのアジドからFmoc−Asn−GlcNAc誘導体を合成してFmoc−Asnの代わりに用い、Fmocストラテジーに従って縮合にジメチルホスフィン酸混合酸無水物法を用いるペプチドの固相合成を展開する。樹脂から切り出し、AsnにGlcNAc残基が結合したオクタペプチド[Fmoc−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OH]が合成される。予めピペラジンを用いる常法により保護基を外した後に切り出すとN末端が遊離のGlcNAc残基を有するオクタペプチドが得られる。ペプチド合成をアミノ酸5個つないだ段階で終えるとペンタペプチド例えば[Fmoc−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OH]が合成される。αアミノ基を第3ブチルオキシカルボニル(Boc)基、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)基あるいはベンジルオキシカルボニル(Z)基で保護したアミノ酸を用いる合成法に依った場合には各々に対応するN末端アミノ基を保護したペプチドが合成され、保護基を外すと遊離型のペプチドが得られる。
【0019】
GlcNAc残基を有し、D−体のアラニン(D−Ala)およびC末端アミノ酸(Thr)がアミドからなるオクタペプチド[H−D−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−NH2]の合成は、Alaの代わりにD−Alaを、またアミドペプチド用の樹脂を用いて先のオクタペプチドと同様に合成した。
【0020】
N末端アミノ酸のαアミノ基の保護基は糖鎖転移反応後に常法により外すか、あるいは予め保護基を外して遊離型にした後に糖鎖転移反応に供するが、通常後者の方法がとられる。
【0021】
本発明の第2の構成は、GlcNAc残基を有するペプチドへの糖鎖供与体からのエンドグリコシダーゼによる糖鎖の転移反応による付加である。
【0022】
本発明に用いるエンドグリコシダーゼとしては、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(EC3.2.1.96)であり、例えば、ムコ−ル ヒエマリス(Mucor hiemalis)由来のエンド−Mやアルスロバクター プロトホルミエ(Arthrobacter protophormie)由来のエンド−A等が用いられる。該酵素は下記式(式1):
R−GlcNAc−GlcNAc−Asn−(ペプチドまたはタンパク質)(式1)
(式中Rは複合糖鎖を示す)のアスパラギン(Asn)結合型糖鎖のアセチルキトビオース部分(GlcNAc−GlcNAc)の間を加水分解するが、この時に糖鎖受容体である(化2)に示すGlcNAc残基を有するペプチドを存在させると、受容体に糖鎖(R−GlcNAc)部分が転移し、(化1)に示す目的物質が合成される。
【0023】
(化2)に示す糖鎖受容体は、ペプチドの両末端が遊離の形(X=H、Y=OHあるいはNH2)あるいはペプチドのN末端αアミノ基が保護された型のいずれも糖鎖転移反応に供することが出来る。
【0024】
糖鎖供与体としては複合型糖鎖、高マンノース型複合型糖鎖あるいは混成型糖鎖を持つ糖質を用いることにより各々に対応する糖鎖を持った(化1)に示す目的物質を得ることが出来る。
【0025】
酵素反応系で重要な点は、反応を酵素律速条件下で行うことおよび糖鎖供与体と受容体の仕込濃度を著しく高めることである。与酵素量を制限しつつ両基質を高濃度に仕込むことにより、糖鎖転移反応が促進され副反応が抑えられて反応収率は飛躍的に向上する。
【0026】
本発明に用いる糖鎖供与体としては、シアル酸を含有する複合型糖鎖は、例えばヒトトランスフェリンや牛フェツイン等からプロナーゼ等のプロテアーゼ処理とセファデックスG−25によるゲルろ過を繰り返して調製される。シアリダーゼ処理等によりシアル酸を外せばアシアロ複合型糖鎖が調製される。高マンノース型糖鎖は例えば卵白アルブミン等から同様に処理した後にDowex50イオン交換樹脂により精製して調製される。酵素的あるいは化学的に修飾された糖鎖、あるいは化学合成された糖鎖も用いることができる。
【0027】
本発明の反応は、基質の糖鎖供与体、糖鎖受容体および酵素のエンドグリコシダーゼを緩衝溶液中で混合することにより行われる。糖鎖供与体の濃度を10mM以上、望ましくは15〜75mM、糖鎖受容体の濃度を2.5mM以上、望ましくは7.5〜35mMになるように加える。酵素量は500U/モル(供与体)以下、望ましくは80〜400U/モル(供与体)程度に制限し、例えば、エンド−Mの場合、2〜10mU/ml程度の量で用いる。緩衝液としては、pH5〜8程度、濃度25〜200mM、望ましくは50〜100mMの適当な緩衝液が用いられる。エンド−Mの場合、通常pH5.5〜6.5、濃度50〜100mMの酢酸あるいはリン酸緩衝液中で反応が行われる。
【0028】
反応温度は通常、室温〜50℃程度、好ましくは30〜40℃で行われ、反応時間は1〜24時間である。例えば、エンド−M酵素の場合、通常、37℃で1〜18時間程度反応が行われる。
【0029】
酵素反応液中の反応精製物の分析は通常、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行われる。例えば、C18の逆相系(ODS)カラムを用い、0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含む水−アセトニトリル系溶媒で展開し、DNS化誘導体の場合には蛍光吸収(励起波長320nm、吸収波長540nm)、Fmoc,NpysあるいはZ誘導体の場合には254nmの紫外吸収、また遊離型あるいはBoc誘導体の場合には214nmの紫外末端吸収により検出される。
【0030】
生成した複合糖ペプチドは公知の手段に従って反応終了液から容易に分離精製することが出来る。例えば、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィー、レクチンカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により反応終了液から反応生成物の複合糖ペプチドを分離し、更に濃縮、脱塩、凍結乾燥等を行えばよい。
【0031】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【実施例1】
複合糖鎖を有するオクタペプチドのDNS化誘導体の合成:
(1)GlcNAcを結合させたオクタペプチドのダンシル(DNS)化誘導体[DNS−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OH]の調製:Fmoc−Thr(But)−O−アルコキシベンジル型樹脂(Thr含量;0.45mmol/g)0.02gを固相ペプチド合成装置の反応容器に取り、次に示すスケジュールに従い、Fmoc−Tyr(But)−OH,Fmoc−Asn(GlcNAc)−OH,Fmoc−Thr−OH,Fmoc−Thr−OH,Fmoc−Thr−OH,Fmoc−Ser−OH,DNS−Ala−OHを順次反応させた。なお、各保護アミノ酸はそれぞれ2当量を使用し、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中N,N−ジイソプロピルエチルアミン存在下、塩化ジメチルホスフィノチオイルと反応させ、対応するジメチルチオホスフィン酸混合酸無水物の溶液として加えた。
【0033】
(2)固相合成スケジュール(DMF:2ml)は以下の通りであった:1)DMF 1分 3回、2)20%ピペリジン/DMF溶液 3分 2回、3)20%ピペリジン/DMF溶液 20分 1回、4)DMF 1分 6回、5)保護アミノ酸ジメチルチオホスフィン酸混合酸無水物及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン/DMF溶液 60分 1回、6)以上1)〜5)の工程を繰り返す。
【0034】
得られた保護オクタ糖ペプチド樹脂を減圧下乾燥させた後、トリフルオロ酢酸(TFA)、フェノール、水、チオアニソール、エタンジチオール(82.5:5:5:5:2.5)からなる混合溶液4mlを加え、30分攪拌した。樹脂を濾別し、トリフルオロ酢酸で洗浄後、濾液と洗液を減圧濃縮した。残渣にエーテル(30〜50ml)を加え、析出する白色沈澱を遠心分離した。この操作を繰り返し、粗糖ペプチド7.20mgを得た。得られた粗糖ペプチドを高速液体クロマトグラフィー[Inertsil C18、0.1%TFA/5%〜35%(30分)アセトニトリル水溶液]で分取した。得られた分画を凍結乾燥すると、目的とするDNS−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OHが3.22mg得られた。構造はMALDI−TOFMS([M−H]-1293)、NMRにより確認した。
【0035】
(2)糖鎖供与体の調製:ヒトトランスフェリン(生化学工業)をプロナーゼ処理、セファデックスG−25ゲルろ過を繰り返してAsn残基のみを有するシアロ糖ペプチド[TF−SGP,(NeuAc)2(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2−Asn (分子量2338)]を調製した。ヒトトランスフェリン由来シアロ糖ペプチド(TF−SGP)をシアリダーゼ処理してシアル酸を除いたアシアロ糖ペプチド[TF−ASGP、(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2−Asn (分子量1756)]を調製した。卵白アルブミンをプロナーゼ処理、セファデックスG−25ゲルろ過、更にDowex50イオン交換クロマトにより分離精製して、マンノース6個からなる高マンノース型糖ペプチド[M6GP;(Man)6(GlcNAc)2−Asn(分子量1511)]を調製した。
【0036】
(3)糖鎖転移反応:シアロ糖ペプチド(TF−SGP)、アシアロ糖ペプチド(TF−ASGP)あるいは高マンノース型糖ペプチド(M6GP)1μmol(終濃度25mM)とDNS−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OH 400nmol(同10mM)を0.08MのEDTA液を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶解し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16μlを加え、37℃で1時間反応させた。反応停止後反応液を蒸留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPLC[Inertsil ODS−2カラム(φ4.6x150mm)、0.1%TFA/5%〜30%(30分)アセトニトリル水溶液 0.5ml/分]で蛍光吸収により分析した。シアロ糖ペプチド(TF−SGP)、アシアロ糖ペプチド(TF−ASGP)あるいは高マンノース型糖ペプチド(M6GP)から糖鎖受容体オクタペプチドのDNS化誘導体への糖鎖転移反応生成物がHPLC分析の保持時間、各10.0分、11.8分および12.5分(糖鎖受容体オクタペプチドのDNS化誘導体18.9分)のピークとして検出され、その収率(対糖鎖受容体)は各9.9%、3.3%および2.0%であった。
【0037】
(4)反応生成物の単離と同定:糖鎖転移反応生成物に対応するをHPLC分析のピークを分取により単離し、質量分析にかけた。MALDI TOFMS分析で、m/z[M−H]-各3303、2716および2470に主ピークが認められ、各々、シアロ複合型糖鎖の転移したDNS−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn[(NeuAc)2(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 3297)、アシアロ複合型糖鎖の転移したDNS−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn[(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 2715)および高マンノース型糖鎖の転移したDNS−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn[(Man)6(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 2470)であることが確認された。
【0038】
【実施例2】
複合糖鎖を有するオクタペプチドのFmoc誘導体の合成:
(1)GlcNAcを結合させたオクタペプチドのFmoc誘導体[Fmoc−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OH]の調製:DNS−Ala−OHの代わりにFmoc−Ala−OHを用い、実施例1と同様にペプチド合成反応を行ったところ、目的とするFmoc−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OHが3.7mg得られた。構造はMALDI−TOFMS([M−H]-1282)、NMRにより確認した。
【0039】
(2)糖鎖転移反応:実施例1で調製したシアロ糖ペプチド(TF−SGP)を用い、Fmoc−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OHを糖鎖受容体として実施例1と同様に反応させた。反応停止後、反応生成物をHPLC[Inertsil ODS−2カラム、0.1%TFA/20%〜45%(30分)アセトニトリル水溶液 1ml/分]で紫外吸収(254nm)により分析した。転移反応生成物をHPLC分取により単離し、MALDI TOFMS質量分析の結果、m/z[M−H]-3287にシグナルが観測され、シアロ複合型糖鎖がFmoc−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OHに転移した化合物[Fmoc−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn[(NeuAc)2(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH](分子量3286)であることが確認された。N末端の保護基Fmocは常法によりピペリジン処理により外し、シアロ複合糖鎖を有する遊離のオクタペプチドを得た。
【0040】
【実施例3】
複合糖鎖を有するオクタペプチドの合成:
(1)GlcNAcを結合させたN末端が遊離のオクタペプチド[H−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OH]の調製:実施例2で合成したペプチドのN末端のFmoc保護基を予めピペリジン処理により外した後に樹脂から切り出して目的とするH−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OHを得た。構造はMALDI−TOFMS([M−H]-1061)、NMRにより確認した。
【0041】
(2)糖鎖転移反応:糖鎖供与体としてシアロ糖ペプチド(TF−SGP)、アシアロ糖ペプチド(TF−ASGP)あるいは高マンノース型糖ペプチド(M6GP)を用い、H−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OHを糖鎖受容体として実施例1と同様に反応させた。反応生成物をHPLC(Inertsil ODS−2カラム、0.1%TFA/12%アセトニトリル、1ml/分)で紫外末端吸収(214nm)により分析し各々に対応する糖鎖転移反応生成物のピークを検出した。
【0042】
(3)反応生成物の単離と同定:各糖鎖転移反応生成物に対応するをHPLC分析のピークを分取により単離し、MALDI TOFMS質量分析の結果、m/z[M−H]-各3065、2482および2236に主ピークが認められ、各々、シアロ複合型糖鎖の転移したH−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn[(NeuAc)2(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 3064)、アシアロ複合型糖鎖の転移したH−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn[(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 2482)および高マンノース型糖鎖の転移したH−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn[(Man)6(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 2237)であることが確認された。
【0043】
【実施例4】
複合糖鎖を有するペンタペプチドのFmoc誘導体の合成:
(1)GlcNAcを結合させたペンタペプチドのFmoc誘導体[Fmoc−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OH]の調製:実施例1と同様に、Fmoc−Tyr(But)−OH、Fmoc−Asn(GlcNAc)−OH、Fmoc−Thr−OH、Fmoc−Thr−OH、と反応させたところで、樹脂を取り出した。以下の樹脂からの切り出しも実施例1と同様に行い、目的とするFmoc−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OHが4.3mg得られた。構造はMALDI−TOFMS([M−H]-1027)、NMRにより確認した。
【0044】
(2)糖鎖転移反応:糖鎖供与体として実施例1で調製したシアロ糖ペプチド(TF−SGP)、アシアロ糖ペプチド(TF−ASGP)あるいは高マンノース型糖ペプチド(M6GP)を用い、Fmoc−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OHを糖鎖受容体として実施例1と同様の条件(但し、EDTAのみ3/5倍濃度)で反応させた。反応生成物をHPLC(実施例2と同一条件)で紫外吸収(254nm)により分析した。シアロ糖ペプチド(TF−SGP)、アシアロ糖ペプチド(TF−ASGP)あるいは高マンノース型糖ペプチド(M6GP)から糖鎖受容体ペンタペプチドのFmoc誘導体への糖鎖転移反応生成物がHPLC分析の保持時間、各18.9分、19.6分および20.0分(糖鎖受容体ペンタペプチドのFmoc誘導体23.8分)のピークとして検出され、その収率(対糖鎖受容体)は各4.3%、2.6%および1.6%であった。
【0045】
(3)反応生成物の単離と同定:糖鎖転移反応生成物に対応するをHPLC分析のピークを分取により単離し、質量分析にかけた。MALDI TOFMS分析で、m/z[M−H]-各3027、2443および2219に主ピークが認められ、各々、シアロ複合型糖鎖の転移したFmoc−Thr−Thr−Asn[(NeuAc)2(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 3027)、アシアロ複合型糖鎖の転移したFmoc−Thr−Thr−Asn[(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 2444)および高マンノース型糖鎖の転移したFmoc−Thr−Thr−Asn[(Man)6(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 2200)であることが確認された。
【0046】
【実施例5】
複合糖鎖を有するペンタペプチドの合成:
(1)GlcNAcを結合させたN末端が遊離のペンタペプチド[H−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OH]の調製:実施例4で合成したペプチドのN末端のFmoc保護基を予めピペリジン処理により外した後に樹脂から切り出して目的とするH−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OHを得た。構造はMALDI−TOFMS([M−H]-801)、NMRにより確認した。
【0047】
(2)糖鎖転移反応:糖鎖供与体としてシアロ糖ペプチド(TF−SGP)、アシアロ糖ペプチド(TF−ASGP)あるいは高マンノース型糖ペプチド(M6GP)を用い、H−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−OHを糖鎖受容体として実施例4と同様に反応させた。反応生成物をHPLC(実施例3と同一条件)で紫外末端吸収(214nm)により分析し各々に対応する糖鎖転移反応生成物のピークを検出した。
【0048】
(3)反応生成物の単離と同定:各糖鎖転移反応生成物に対応するをHPLC分析のピークを分取により単離し、MALDI TOFMS質量分析の結果、 m/z[M−H]-各2808、2224および1978に主ピークが認められ、各々、シアロ複合型糖鎖の転移したH−Thr−Thr−Asn[(NeuAc)2(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 2805)、アシアロ複合型糖鎖の転移したH−Thr−Thr−Asn[(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 2223)および高マンノース型糖鎖の転移したH−Thr−Thr−Asn[(Man)6(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−OH(分子量 1978)であることが確認された。
【0049】
【実施例6】
複合型糖鎖を有するオクタペプチドのNpys、ZあるいはBoc誘導体の合成:
(1)GlcNAc残基を有するオクタペプチドのNpys、ZあるいはBoc誘導体の合成:GlcNAc残基を有するオクタペプチドのNpys、Z誘導体は、Fmoc−Ala−OHの代わりにNpys−Ala−OHあるいはZ−Ala−OHを用いて、実施例1と同様の手法により合成した。Npys誘導体の場合、樹脂からの切り出しは10%フェノール含有TFA溶液に依った。Boc誘導体の場合には、Bocアミノ酸を用いる常法により合成した。
【0050】
(2)糖鎖転移反応:これらオクタペプチド誘導体を用い、糖鎖供与体としてシアロ糖ペプチドを実施例1と同様の条件で反応させたところそれぞれに対応するシアロ複合型糖鎖を有するオクタペプチドの生成を認めた。
【0051】
【実施例7】
複合糖鎖を有する[D−Ala1]ペプチドTアミド誘導体の合成:
(1)GlcNAcを結合させた[D−Ala1]ペプチドTアミド誘導体[H−D−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−NH2]の調製:Fmoc−Thr−NH−型樹脂(Thr含量;0.375mmol/g)267mgを固相ペプチド合成装置の反応容器に取り、Fmoc−Tyr(But)−OH,Fmoc−Asn(GlcNAc)−OH,Fmoc−Thr−OH,Fmoc−Thr−OH,Fmoc−Thr−OH,Fmoc−Ser−OH,Boc−D−Ala−OHを順次反応させた。なお、各保護アミノ酸はそれぞれ2当量を使用し、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中N,N−ジイソプロピルエチルアミン存在下、塩化ジメチルホスフィノチオイルと反応させ、対応するジメチルチオホスフィン酸混合酸無水物の溶液として加えた。アニソールとトリフルオロ酢酸(TFA)を加え、2時間反応させて樹脂からの切り出しとBoc基の脱保護を行い、樹脂を濾別し、濾液を減圧濃縮して、粗製糖ペプチド123mgを得た。得られた粗製糖ペプチドを高速液体クロマトグラフィー[Inertsil C18、0.1%TFA/5%〜35%(30分)アセトニトリル水溶液]で分取した。得られた分画を凍結乾燥して目的とするH−D−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−NH2を36.4mg得た。構造はMALDI−TOFMS([M+H]+1063.8、分子量1060.1)、NMRおよびアミノ酸組成分析により確認した。
【0052】
(2)糖鎖転移反応:糖鎖供与体としてシアロ糖ペプチド(TF−SGP)、アシアロ糖ペプチド(TF−ASGP)あるいは高マンノース型糖ペプチド(M6GP)を用い、H−D−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn(GlcNAc)−Tyr−Thr−NH2を糖鎖受容体として実施例1と同様に6時間反応させた。反応生成物をHPLC[Mightysil RP−18カラム、φ6.0x250mm(関東化学)、0.1%TFA/5%〜17%アセトニトリル水溶液(30分)、1.2ml/分]で紫外末端吸収(214nm)により分析し各々に対応する糖鎖転移反応生成物のピークを検出した。シアロ糖ペプチド(TF−SGP)、アシアロ糖ペプチド(TF−ASGP)あるいは高マンノース型糖ペプチド(M6GP)から糖鎖受容体[D−Ala1]ペプチドTアミド誘導体への糖鎖転移反応生成物がHPLC分析の保持時間、各16.6分、17.3分および17.6分(糖鎖受容体[D−Ala1]ペプチドTアミド誘導体20.0分)のピークとして検出され、その反応収率(対糖鎖受容体)は各17.7%、6.6%および4.6%であった。
【0053】
(3)反応生成物の単離と同定:各糖鎖転移反応生成物に対応するをHPLC分析のピークを分取により単離し、各々のMALDI TOFMS質量分析を行った。その結果、シアロ糖ペプチド(TF−SGP)からの転移生成物はm/z2793.5にシアル酸(NeuAc)の1個外れたもののNa体[M−NeuAc+Na]+に相当するピークが認められ、これをシアリダーゼ処理するとm/z2522.1にアシアロ体の[M+K]+に相当するピークが認められ、シアロ複合型糖鎖の転移したH−D−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn[(NeuAc)2(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−NH2(分子量 3062.9)であることが確認され、またアシアロ糖ペプチド(TF−ASGP)からの転移生成物はm/z2505.5に[M+Na]+に相当するピークが認められ、アシアロ複合型糖鎖の転移したH−D−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn[(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−NH2(分子量 2480.4)であることが確認された。また、高マンノース型糖鎖(M6GP)からの転移生成物はm/z2255.7に[M+Na]+に相当するピークが認められ、高マンノース型糖鎖の転移したH−D−Ala−Ser−Thr−Thr−Thr−Asn[(Man)6(GlcNAc)2]−Tyr−Thr−NH2(分子量 2236.1)であることが確認された。
【0054】
【発明の効果】
抗エイズ(抗HIV)活性ペプチドであるペプチドーTのAsn残基にGlcNAcを付与し、エンドグリコシダーゼによる糖鎖転移反応により合成した複合糖鎖を持つペプチドーTは血液中での酵素分解等に対して安定化や薬理作用の改善に寄与し、医薬として用いる場合に有効である。この手法は生理活性ペプチドの安定性や薬理作用の改善に利用される。

Claims (2)

  1. 下記式(化1)で示される新規複合糖ペプチド。
    Figure 0003741495
    (式中、R1 はAla−Ser−Thr−Thr−Thr、Thr−ThrあるいはD−Ala−Ser−Thr−Thr−Thrからなるペプチド残基を示し、Xは、H、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、第3ブチルオキシカルボニル(Boc)基、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基あるいはダンシル(DNS)基からなるN末端αアミノ基の保護基、またYはOHあるいはNH2である。R2 は、複合型糖鎖、高マンノース型糖鎖あるいは混成型糖鎖を示す。)
  2. (化1)の化合物のR2 で示される糖鎖が、(NeuAc)2(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)1 あるいは(Gal)2(GlcNAc)2(Man)3(GlcNAc)1 からなる複合型糖鎖、あるいは(Man)6(GlcNAc)1 からなる高マンノース型糖鎖である請求項1に記載の化合物。但し、ManはD−マンノース、GlcNAcはN−アセチル−D−グルコサミン、NeuAcはN−アセチルノイラミン酸、GalはD−ガラクトースを示す。
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