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JP3627941B2 - 冷媒圧縮機の製造方法およびそれに用いる潤滑油 - Google Patents

冷媒圧縮機の製造方法およびそれに用いる潤滑油 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1,1,1,2−テトラフルオロエタンなどのハイドロフルオロカーボン冷媒を用いる冷媒圧縮機の製造方法、および、冷媒圧縮機の組立て・その後の動作試験などのために用いられる潤滑油に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷媒圧縮機は、カーエアコン、冷蔵庫、空調機などの冷凍システムに用いられる。冷凍システムは、冷媒と冷凍機油などからなる作動流体が封入され、冷媒圧縮機、コンデンサー、エバポレータなどが直列に接続された系からなる。一般に、冷媒圧縮機は、作動流体を封入する以前にその正常な作動を確認するための動作試験を行っており、その際の潤滑性を満足するために潤滑油(以下、組立て油という。)を少量添加した状態で試験運転を行う。この試験の前に冷媒圧縮機内部の水分除去などのために100℃以上の温度で熱処理を行う。
【0003】
圧縮式冷凍機の冷媒としては、従来、クロロフルオロカーボンやハイドロクロロフルオロカーボンが用いられていた。近年、環境問題からこれらの冷媒の使用が制限されつつあり、その代替となる冷媒として、塩素を含有しないふっ化炭化水素であるハイドロフルオロカーボン冷媒(以下、HFC冷媒ともいう。)が採用されつつある。ハイドロフルオロカーボン冷媒には、従来用いられた鉱油系の冷凍機油は適合しない。そこで、冷凍機油として、合成油、特に、ポリオキシアルキレングリコール系化合物(以下、PAG系冷凍機油ともいう。)や多価アルコールエステル系化合物(以下、エステル系冷凍機油ともいう。)などが用いられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、PAG系冷凍機油、エステル系冷凍機油などからなる合成油を用いた場合の組立て油には、次のような問題点がある。
【0005】
これらの合成油は、残留する水分の影響を受けやすい。そのため、冷媒圧縮機の組立て後に充分な乾燥を行うことが必要となり、150℃以上のような比較的高温の熱処理を行う。しかし、この場合、冷媒圧縮機内部に組立て油に起因するデポジット(炭化物、重合物などの付着物)が生じ、冷凍システムのつまりなどが予想される。
【0006】
また、組立て油として、PAG系冷凍機油、エステル系冷凍機油などの利用は適切でない。組立て時・熱処理時に酸化し、また、水分を吸収するためである。他方、鉱油は、HFC冷媒と相溶性がないために、大量に注入した場合、作動流体注入時には排除することが必要となるため、少量の添加が望まれる。
【0007】
本発明の目的は、PAG系冷凍機油、エステル系冷凍機油などとハイドロフルオロカーボン冷媒の混合組成物を作動流体に用いる圧縮式冷凍機の組立てに適する組立て油を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による潤滑油は、5容量%留出温度が250℃以上であり、流動点が−35℃以下である鉱油基油を主成分とし、0.1〜1.0重量%の亜鉛ジチオホスフェートを含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明による冷媒圧縮機の製造方法は、冷媒圧縮機の組立て時に少量の潤滑油を添加し、その後、該冷媒圧縮機を熱処理する工程からなるハイドロフルオロカーボン冷媒を用いる冷媒圧縮機の製造方法において、前記潤滑油が、前記熱処理温度よりも100℃以上高い5容量%留出温度を有し、流動点が−35℃以下である鉱油基油を主成分とし、0.1〜1.0重量%の亜鉛ジチオホスフェートを含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、熱処理温度は、冷媒圧縮機内部に残存する水分を充分に少なくするために、通常100℃以上、好ましくは150℃以上が用いられる。通常、熱処理する工程の後に冷媒圧縮機の動作試験を行うが、動作試験を熱処理する工程以後に行ってもよいし、行わない場合もある。また、熱処理が乾燥以外を目的とする場合もある。
【0011】
組立て時の冷媒圧縮機への潤滑油(組立て油)の添加は、部品への塗布、組立て工程での添加などにより行うが、組立てが完了した後に添加してもよい。また、添加する組立て油の量は、動作時に封入される作動流体の5重量%以下、好ましく2重量%以下であり、これ以上の場合は組立て油が冷凍サイクルに内に滞留しし、コンデンサーなどでの伝熱効率を低下させるなどの問題を生じうる。
【0012】
本発明は、冷媒圧縮機と電動機を同一の密閉容器に納めた密閉型圧縮機の組立てにおいて、特に有効である。この場合、冷媒・潤滑油中で電動機が作動するため、潤滑油の不純物・劣化に対して敏感であるからである。
【0013】
本発明に用いる鉱油基油は、5容量%留出温度が250℃以上、または、熱処理温度よりも100℃以上高い5容量%留出温度を有するものである。5容量%留出温度がこれ以下では、熱処理する工程において鉱油基油の多くの部分が気化してしまうため、その後の潤滑性を保つことができず、また、防錆も困難となる。鉱油基油の他の蒸留性状として、5容量%留出温度と95容量%留出温度との差が、200℃以下、特に150℃以下であることが、蒸発分が少なく、かつ、重質分に起因するデポジットの生成が少ないことから好ましい。その動粘度は、40℃において10〜100cSt、好ましくは15〜46cStのものが用いられ、これ以上の高粘度では圧縮機内に行き渡らないし、これ以下の低粘度では潤滑性が低い。
【0014】
また、この鉱油基油は、流動点が−35℃以下であり、−45℃以下であることが好ましい。これにより、ワックス分が低く抑えられ、キャピラリーへのワックスのつまりなどを生じない。また、不純物として、硫黄分が0.2重量%以下、特に0.1重量%以下、また、硫黄分が20ppm以下、特に10ppm以下であることが安定性の点から好ましい。
【0015】
このような鉱油は、パラフィン系原油、ナフテン系原油から得られた留出油を常法にしたがい精製した後、脱ろう処理、深脱ろう処理を順次行うのことで製造できる。留出油は、原油を常圧蒸留して得られるもの、あるいは、原油を常圧蒸留した残渣油を減圧蒸留して得られるものである。留出油の精製方法としては、1段または2〜3段の水素化処理または溶剤精製、さらにその後のアルカリ蒸留、硫酸洗浄などが単独または組み合わせて用いられる。脱ろう処理としては溶剤脱ろう法などを用いて流動点−15℃程度までの処理が可能であり、その後の深脱ろう処理としては苛酷な条件下での溶剤脱ろう法または接触水添脱ろうなどを用いて流動点−35℃以下とすることができる。なお、流動点−35℃以下とすることのできるプロセスであれば、これらの工程に限定されるものではない。
【0016】
本発明に用いられる亜鉛ジチオホスフェートは、次の一般式化1の構造で表される化合物である。
【化1】
Figure 0003627941
ここで、R1、R2、R3、R4は、炭素数3〜12のアルキル基または炭素数3〜18のアリール基であり、同一であっても異なっていてもよい。特に、酸化防止効果が高いので、R1、R2、R3、R4は、アリール基であることが好ましい。このような化合物は、日本ルブリゾール(株)のLZシリーズ、オロナイトジャパン(株)のオロアシリーズなどとして一般に入手することができる。亜鉛ジチオホスフェートの添加量は0.1重量%〜1.0重量%、特には0.2重量%〜0.5重量%が好ましい。これ以下の添加では酸化防止・潤滑性の向上が充分でなく、これ以上の添加は熱安定性を低下させ、スラッジが生成することから好ましくない。
【0017】
ハイドロフルオロカーボン冷媒は、炭素数1〜2の炭化水素の水素をふっ素で置換したハイドロフルオロカーボンであり、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、ペンタフルオロエタン(R125)、ジフルオロメタン(R32)、1,1,1−トリフルオロエタン(R143a)、1,1−ジフルオロエタン(R152a)などの単体またはこれらの混合物が例示できる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明による組立て油、および、それを用いた冷媒圧縮機の組立てを実施例として詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0019】
本実施例の組立て油(以下、本組立て油という。)は、表1に示す性状を有する鉱油基油に、0.3重量%の亜鉛ジチオホスフェートを添加して調製した。亜鉛ジチオホスフェートとしては、オロナイトジャパン(株)のオロア260を用いた。また、鉱油基油は、パラフィン系原油からの留出油(150ニュートラル相当)を溶剤精製した後に水素化精製し、さらに水素化脱ろうしたものを用いた。なお、流動点はJIS K 2269により、動粘度・粘度指数はJIS K2283により、蒸留性状はガスクロマトグラフ蒸留(ASTM D−2887)により測定した。
【0020】
【表1】
Figure 0003627941
【0021】
実施例である本組立て油の酸化安定度の評価結果を表2に示す。併せて、比較例として亜鉛ジチオホスフェートの添加量を0.08重量%とし、他は実施例と同様に調製した比較油1、および、亜鉛ジチオホスフェートを添加せず、他は実施例と同様に調製した比較油2の評価結果も示す。酸化安定度の評価は、潤滑油酸化安定度試験(JIS K 2514)により165.5℃、24時間の条件で行った。この表から、本組立て油は、高い酸化安定性を持っていることがわかる。
【0022】
【表2】
Figure 0003627941
【0023】
次に、冷媒圧縮機内で冷凍機油と混合された場合の本組立て油の安定度の評価結果を表3に示す。併せて、比較例として亜鉛ジチオホスフェートの添加量を1.2重量%とし、他は実施例と同様に調製した比較油3の評価結果も示す。この安定度の評価は、エステル系冷凍機油((株)ジャパンエナジー製フレオールα22)に、本組立て油および比較油3をそれぞれ5重量%加えた試料のシールドチューブテスト(JIS K 2111)により行った。試験条件は、175℃、14日である。この表から、比較油3では、触媒の変色があり、冷媒圧縮機内で冷凍機油と混合された場合の安定性に問題があることがわかる。また、本組立て油は、このような場合でも安定であることがわかる。
【0024】
【表3】
Figure 0003627941
【0025】
次に、本組立て油を用いた密閉型冷媒圧縮機の組立てを説明する。密閉型冷媒圧縮機の断面構造を図1に示す。モータ(駆動用電動機)10および圧縮機構20の主要部となるフレーム1は、シリンダ2を内蔵する。シリンダ2に嵌合し、弁機構3とともに圧縮機構を構成するピストン4が設けられている。ピストン4は、コネクチングロッド5によりクランク軸6に連結され、往復動する。クランク軸6は、軸受部7で回転可能に支持され、他端にはモータのロータ11が設けられている。モータのロータ11は、その外周部のステータ12と駆動源となるモータ10を構成している。そして、これらのモータ10と圧縮機構20は、ケース30に納められ密閉される。
【0026】
この組立ては、まず、シリンダ2を含むフレーム1、ピストン4、コネクチングロッド5、クランク軸6などの部品を洗浄し、部品加工時の水分、油分を取り除く。そして、本組立て油を、摺動部分や密閉する部分などに塗布しながら組み立てる。組み立てた後、この冷媒圧縮機を150℃、5分間、大気中で乾燥させる。その後、通電し、冷媒圧縮機のモータ10の駆動および圧縮機構20の気密性などについての動作試験を行う。
【0027】
この動作試験時に焼き付きや摩耗を生じることはなく、短時間の運転を行うことができる。その後、冷媒圧縮機に150〜200gの1,1,1,2−テトラフルオロエタン冷媒と250〜300gのエステル系冷凍機油を封入して、冷凍システムを構成する。なお、本組立て油の塗布量は、2〜5ccであり、冷凍機油の2重量%以下としている。
【0028】
さらに、本組立て油の評価のために、乾燥工程の熱処理を160℃、5時間行った。その後、冷媒圧縮機を分解し、内部の部品の表面に組立て油によるデポジットを生じないことを確認した。
【0029】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による潤滑油は、ハイドロフルオロカーボン冷媒を用いる冷媒圧縮機の製造に用いるものであり、5容量%留出温度が250℃以上であり、流動点が−35℃以下である鉱油基油を主成分とし、0.1〜1.0重量%の亜鉛ジチオホスフェートを含むことを特徴とするものである。
【0030】
本発明によれば、冷媒圧縮機の製造時に比較的高温の熱処理温度を行っても組立て油に起因するデポジット(炭化物、重合物などの付着物)が生ずることなく、長時間放置しても錆などを生じることはなく、かつ、少量でも十分な潤滑性を得ることができる。したがって、冷凍機油としてPAG系冷凍機油、エステル系冷凍機油などとハイドロフルオロカーボン冷媒の混合組成物を作動流体に用いる圧縮式冷凍機の組立てに有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いた密閉型冷媒圧縮機の断面構造である。
【符号の説明】
1 フレーム
2 シリンダ
3 弁機構
4 ピストン
5 コネクチングロッド
6 クランク軸
7 軸受部
10 モータ
11 ロータ
12 ステータ
20 圧縮機構
30 ケース

Claims (2)

  1. 5容量%留出温度が250℃以上であり、流動点が−35℃以下である鉱油基油を主成分とし、0.1〜1.0重量%の亜鉛ジチオホスフェートを含むことを特徴とするハイドロフルオロカーボン冷媒を用いる冷媒圧縮機用組立て油
  2. 冷媒圧縮機の組立て時に少量の潤滑油を添加し、その後、該冷媒圧縮機を熱処理する工程からなるハイドロフルオロカーボン冷媒を用いる冷媒圧縮機の製造方法において、
    前記潤滑油が、前記熱処理温度よりも100℃以上高い5容量%留出温度を有し、流動点が−35℃以下である鉱油基油を主成分とし、0.1〜1.0重量%の亜鉛ジチオホスフェートを含むことを特徴とする冷媒圧縮機の製造方法。
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