JP3619200B2 - ダイカスト鋳造方法及びダイカスト鋳造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空部を有する筒状部を備えた鋳造品を製造する場合に、中空部の周壁に肉厚の変化があっても、軸線方向各部の内径寸法に変化のない真っ直ぐな中空部を形成することが可能なダイカスト鋳造方法及びダイカスト鋳造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミダイカスト鋳造などにおいて、鋳造品に孔(中空部)を有した筒状部を形成する場合、従来の鋳造技術では、孔を形成するための柱状中子に抜き勾配を設けていた。これは、溶融アルミが凝固する際の収縮による締め付け力の発生によって柱状中子が鋳造品の筒状部から抜けなくなることを防止するため、必ず必要なものとされていた。そして、柱状中子に抜き勾配が設けられたものでは、孔もテーパ状になるため、テーパのない、真っ直ぐな孔にするには、孔の内周を切削加工して軸線方向の全体について同一内径にする必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近、ダイカスト鋳造において、後加工を行わず、鋳放し状態のままで精密機械加工と同等或いはそれ以上の精度を確保し、鋳造後の切削や孔明けなどの機械加工工程を不要とする製造技術が求められている。
【0004】
この要求に対処するために、柱状中子に抜き勾配を設けず、この柱状中子を金属溶湯が凝固収縮を開始する前に鋳造品から抜去するようにする技術が開発された。これによれば、金属溶湯の凝固前に柱状中子を抜去するので、柱状中子に金属溶湯の凝固時の収縮力が作用せず、柱状中子を鋳造品から容易に抜去することができると共に、柱状中子によって形成される孔は抜き勾配のない、真っ直ぐなものになり、鋳放し状態のままでも高精度の孔を形成することができる、というものである。
【0005】
しかしながら、鋳造品に孔(中空部)を有した筒状部を形成する場合、その筒状部の周壁の肉厚は部分部分で異なることが多い。肉厚が厚い部分ではそれだけ金属溶湯の縮み代も大きくなるため、厚肉部分の孔の内周部が外側方向に引っ張られて広がる。従って、従来の抜き勾配を必要とする鋳造方法とは異なるにしても、抜き勾配のない太さ(外径)が一定の柱状中子を用いた場合、中空部の周壁の肉厚が部分部分で異なると、その影響を受けて内径寸法が変化し、真っ直ぐな高精度の孔を形成することが困難であった。
【0006】
例えば、図6に示すような鋳造品1は、板状の基体2に、大径孔部4と小径孔部5とからなる段付孔6を有した円錐台状の筒状部3を突設しているが、この鋳造品1の大径孔部4の周壁は根元側(基体2側)で厚肉となっているため、柱状中子のうち、大径孔部4を形成する部分の外径(太さ)を一定にすると、大径孔部4が図6に二点鎖線で示すように、厚肉な根元側に向かって漸次径大となる勾配のついた孔になってしまう。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、孔の周壁の肉厚が部分的に異なっても、実質的に真っ直ぐな中空部を形成することができるダイカスト鋳造方法及びダイカスト鋳造装置を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
従来のダイカスト鋳造において、鋳造品に中空部を形成するための柱状中子に抜き勾配を設ける理由は、金属溶湯の凝固時の収縮に起因する締付け力の発生により柱状中子が鋳造品から抜けなくなることを防止するためであった。これに対し、本発明者は、金属溶湯の凝固収縮前の半凝固状態、より具体的には鋳造品の表面部においては凝固状態であるが内部については未だ融体である時点で、鋳造品と柱状中子とを離脱させるようにすれば、収縮に起因する締付け力の発生がほとんどなく、中子の抜き勾配を零としても抜き出しが可能であることを確認し、特願平9―274482号として出願した。更に、本発明者はその後の研究により、鋳造品の筒状部の中空部を形成する場合、その周壁の肉厚が部分的に変化する場合、柱状中子を、中空部の軸方向と直交する方向の大きさ(以下、太さ)が厚肉部分において薄肉部分よりも小さくなるように形成すると、厚肉部分の内周部が厚肉部分の凝固に伴って外側に引っ張られて広がることにより、その厚肉部分の内側の大きさが薄肉部分のそれと同等になることを確認した。
【0009】
以上のことから、請求項1のダイカスト鋳造方法は、中空部を有し、その中空部の周壁の肉厚が当該中空部の軸線方向に沿って異なる筒状部を備えた鋳造品を成形するための方法であって、前記中空部を形成する柱状中子を、その中空部の軸線方向と直交する方向の大きさが、中空部の周壁の厚肉部分に対応する部分において薄肉部分に対応する部分よりも小となるように形成し、前記金型を型締めして前記柱状中子を前記鋳造品成形のためのキャビティ内へ突出させた状態で当該キャビティ内に金属溶湯を充填した後、少なくとも前記中空部の内周壁の前記金属溶湯が凝固し始めたときに、前記柱状中子を前記筒状部から抜去することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2のダイカスト鋳造装置は、中空部を有し、その中空部の周壁の肉厚が当該中空部の軸線方向に沿って異なる筒状部を備えた鋳造品を成形するための装置であって、前記鋳造品を鋳造するためのキャビティを形成する金型と、前記中空部を形成するために、前記金型にその型締め状態で前記キャビティ内に突出するように設けられ、前記中空部の軸線方向と直交する方向の大きさが、中空部の周壁の厚肉部分に対応する部分において肉薄部分に対応する部分よりも小となるように形成された柱状中子と、前記金型の型締め、型開きを行う型駆動機構と、型締めされた前記金型の前記キャビティ内に金属溶湯を射出する射出機構とを具備し、前記型駆動機構は、前記射出機構により前記キャビティ内に金属溶湯が充填された後、少なくともその金属溶湯が前記中空部の内周壁で凝固し始めたときに、前記柱状中子を前記筒状部から抜去するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3のダイカスト鋳造方法は、基体に中空部を有する筒状部を突出形成し、その中空部の周壁の肉厚が前記基体との接合部分において厚肉な鋳造品を成形するための方法において、前記中空部を形成する柱状中子を、その中空部の軸線方向と直交する方向の大きさが、当該中空部の周壁の前記基体との接合部分での厚肉部分に対応する部分において他の部分よりも小となるように形成し、前記金型を型締めして前記柱状中子を前記鋳造品成形のためのキャビティ内へ突出させた状態で当該キャビティ内に金属溶湯を充填した後、少なくとも前記中空部の内周壁で前記金属溶湯が凝固し始めたときに、前記柱状中子を前記筒状部から抜去することを特徴とするものである。
【0012】
請求項4のダイカスト鋳造装置は、基体に中空部を有する筒状部を突出形成し、その中空部の周壁の肉厚が前記基体との接合部分において厚肉な鋳造品を成形するための方法において、前記鋳造品を成形するためのキャビティを形成する金型と、前記中空部を形成するために、前記金型にその型締め状態で前記キャビティ内に突出するように設けられ、前記中空部の軸線方向と直交する方向の大きさが、当該中空部の周壁の厚肉部分に対応する部分において他の部分よりも小となるように形成した柱状中子と、前記金型の型締め、型開きを行う型駆動機構と、型締めされた前記金型の前記キャビティ内に金属溶湯を射出する射出機構とを具備し、前記型駆動機構は、前記金型を型締め状態で、前記射出機構により前記キャビティ内に金属溶湯が充填された後、少なくともその金属溶湯が前記中空部の内周壁で凝固し始めたときに、前記柱状中子を前記筒状部から抜去するように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
以上のようなダイカスト鋳造方法及び鋳造装置によれば、鋳造品を取出すにあたっては、金属溶湯の凝固収縮前の半凝固状態にて、柱状中子が鋳造品から抜去されるので、抜き勾配がなくとも、柱状中子を容易に抜去することができる。しかも、柱状中子の太さが筒状部の厚肉部分で小さく(細く)なっているので、その後に厚肉部分で未凝固の金属溶湯が凝縮して内周部を外側に引っ張られることにより、当該部分の中空部の大きさが他の部分とほぼ同じとなり、その結果、中空部は軸線方向と直交する方向の大きさが各部について同等となり、真っ直ぐな高精度の中空部となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、送風ファンのケーシングに用いられるブラケットの鋳造に適用した一実施例について、図1ないし図12を参照しながら説明する。
まず、図6ないし図8は、本実施例においてダイカスト鋳造される鋳造品たるブラケット1の構成を示している。このブラケット1は、例えばアルミニウム合金から構成され、ほぼ板状をなす基体2と、この基体2の中央部分に突設された円錐台状をなす筒状部3とを一体的に備えている。この筒状部3は、内部に、根元側(基体2側)の径大孔部4と先端側の径小孔部5とからなる中空部としての段付孔部6を有しており、この段付孔部6は両端が開口し、その軸線は基体2と直交している。
【0015】
上記ブラケット1を鋳造するためのダイカスト鋳造装置7の構成について、以下述べる。図4は、本実施例に係るダイカスト鋳造装置7の全体の外観を概略的に示しており、このダイカスト鋳造装置7は、ベース8上に、図で右端部に位置して固定盤9を設けると共に、左端部にサポート10を設け、これら固定盤9とサポート10との間に架設したガイドポスト11に可動盤12を固定盤9に対して接離方向(左右方向)に移動可能に設けている。
【0016】
そして、固定盤9に固定型13を取り付けると共に、可動盤12に可動型14を取り付け、これら固定型13と可動型14とで、ブラケット11を鋳造する金型15が構成されている。また、前記可動盤12(可動型14)は、シリンダ16やトグルリンク機構17等からなる型駆動機構18により移動され、もって型締め、型開きが行われるようになっている。なお、このダイカスト鋳造装置7には、前記金型15に離型剤を噴霧塗布するための図示しないスプレー装置も設けられている。
【0017】
ダイカスト鋳造装置7は、固定盤9に隣接して、金型15に金属溶湯を射出充填するための射出機構19を備えている。この射出機構19は、図5に示すように、前記固定型13の下端部の鋳込口20に先端が接続され、図示右方に延びる射出スリーブ21と、この射出スリーブ21内を摺動しながら前進、後退するプランジャ22と、このプランジャ22を可変速で往復動させる図示しない駆動装置を備えている。そして、図4に示すように、金属(アルミニウム合金)の溶湯をほぼ一定温度(例えば660℃)に保持する溶湯保持炉23を備えると共に、その溶湯保持炉23内の金属溶湯を、前記射出スリーブ21の給湯口21a(図4参照)から所定量ずつ内部に注ぎ込む自動給湯装置24を備えている。
【0018】
ここで、前記金型15部分の構成について、図1ないし図3を参照して詳述する。図3は型締め状態の金型15を縦断して示している。同図に示すように、前記固定型13は、矩形ブロック状をなすホルダ25の中央の矩形状の凹所内に型材26を嵌合固定して構成されている。一方、前記可動型14も、矩形ブロック状をなすホルダ27の中央の矩形状の凹所内に同様の型材28を嵌合固定して構成されている。
【0019】
そして、金型15の型締め状態においては、前記型材26と型材28との間に、ブラケット1の外形に対応したキャビティ29が形成されると共に、そのキャビティ29内に溶湯を導くための湯道30が上下方向に延びて形成されるようになっている。また、湯道30の先端部(上端部)にはゲート30aが形成され、このゲート30aからキャビティ29内に溶湯が射出される。この場合、キャビティ29は、ブラケット1の基体2の板厚方向が可動型14の移動方向となるように形成され、従って、ブラケット2の段付孔6の軸線方向が可動型14の型締め、型開きの移動方向と一致している。
【0020】
固定型13のホルダ25には、型材26の下部に位置して左右方向に貫通する円形の貫通孔が形成され、この貫通孔にほぼ円筒状の鋳込口ブッシュ31が嵌込まれている。そして、この鋳込口ブッシュ31の右端部が、図5に示す前述の鋳込口20に連なっている。
【0021】
一方、前記可動型14のホルダ27には、型材28の下部に位置して分流子32が設けられている。この分流子32は、金型15の型締め状態においては、先端部が、鋳込口ブッシュ31内に挿入され、もって鋳込口ブッシュ31の上部側の内周壁との間に、前記湯道30に繋がる細い溶湯案内溝33が形成されるようになっている。
【0022】
これにて、金型15の型締め状態において、前記射出機構19の射出スリーブ21内に金属溶湯が供給され、プランジャ22が左方へ向けて前進されることにより、射出スリーブ21内の溶湯が鋳込口20から鋳込口ブッシュ31の右半部の径大な中空部に押出され、さらに、溶湯案内溝33及び湯道30を順に通って、ゲート30aからキャビティ29内に射出されるようになっているのである。なお、その際、プランジャ20の先端部は、分流子32の先端部に僅かな隙間を存して近付く位置まで前進されるようになっており、鋳込成形時には、プランジャ20の先端部と分流子30の先端部との間において、金属溶湯が硬化したビスケットが形成される。
【0023】
固定型13には、型材26の温度調整用の流体が循環する循環路34が設けられている。また、詳しく図示はしないが、固定型13には、鋳造されたブラケット1を押出すための複数の押出ピン35a及びそれら押出ピン35aを駆動する機構等からなる押出装置35が設けられている。
【0024】
また、可動型14にも、型材28の温度調整用の流体が循環する循環路36が設けられており、さらに、分流子32の内部にも、冷却水循環路37が設けられている。なお、図示はしないが、前記循環路34及び36は、パイプやホース等を介して温度調節装置に接続されている。また、冷却水循環路37は、冷却水給送装置にパイプやホース等を介して接続され、分流子32の付近の極端な温度上昇を防いでいる。これら、循環路34及び36、冷却水循環路37により、両型材26及び28の温度が調整されてキャビティ29内に充填された金属溶湯の凝固、収縮が遅らされるようになっていると共に、分流子32部分の温度が調整されて前記ビスケット部分が、鋳造品と同等の時期あるいはやや遅れて半凝固状態とされるようになっている。
【0025】
また、可動型14にも、鋳造品を押出すための複数の押出ピン38a及びそれら押出ピン38aを駆動する機構等からなる押出装置38が設けられている。そして、後述するように、この押出装置38により、半凝固状態となった後の鋳造品(ブラケット1)が可動型14から脱出されるようになっており、以てこの押出装置38が脱出機構として機能するのである。この場合、押出ピン38aは、湯道30や溶湯案内溝33等で硬化した(半凝固状態となった後の)金属(いわゆるランナ残り)についてもそれをビスケット部分と共に押出すように設けられている。
【0026】
さて、前記固定型13の型材26には、図1及び図3にも示すように、ブラケット1の筒状部3の段付孔6を形成するための柱状中子39が嵌着されている。この柱状中子39のうち、キャビティ29内に突出する先端部分は段付状に形成され、根元側の径大部40で段付孔6の径大孔部4を形成し、先端側の径小部41で段付孔6の径小孔部5を形成するようになっている。そして、この柱状中子39は、型締め状態で、可動型14の型材28に嵌着されてブラケット1の筒状部3の先端面を形成するコアピン42に当接するようになっている。
【0027】
ところで、ブラケット1の筒状部3のうち、図6に示すように、先端側の径小孔部5の周壁の肉厚は、溝3aが形成されていることもあって、それ程厚くはない。しかし、径大孔部4の周壁は円錐台状をなす筒状部3の根元側であることから、根元側に向かってその肉厚が次第に厚くなっている。そして、この厚肉部分では、溶湯の凝固収縮が他よりも遅れることから、その内周部が引っ張られて内径が広がる傾向にある。
【0028】
このことを考慮して、図2に示すように、柱状中子39のうち、周壁が薄肉部分に対応する部分である径小孔部5形成用の径小部41については、その太さ寸法(径寸法)を軸線方向について、抜き勾配を有しない均一外径のものとしている。また、径大部40についても、周壁の肉厚が比較的薄い先端側ではその太さ寸法を、抜き勾配のない均一外径のものとしている。これに対し、周壁の厚肉部分に対応する径大部40の根元側では、その根元に向かって次第に径小となるテーパ状に形成している。この径大部40の根元側半分のテーパ部は、従来の抜き勾配とは逆向きの勾配となっており、以下、これのテーパを逆テーパ部40aと称する。
【0029】
なお、図3に示すように、金型15の型締め状態で、固定型13の型材26と可動型14の型材28との間には、キャビティ29内からオーバーフローした金属溶湯を逃がすための湯溜り43が形成されている。また、この湯溜り43は図示しないガス抜き通路に連なっており、減圧装置が駆動されることによって金属溶湯の供給時にキャビティ29内の空気(ガス)が外部に排出されるようになっている。
【0030】
次に、上記構成のダイカスト鋳造装置7を用いてブラケット1を鋳造する鋳造方法について述べる。
まず金型14の型開き状態で、スプレー装置が作動されて金型15の柱状中子39やコアピン42を含むキャビティ29、湯道30部分等に離型剤が噴霧塗布される。次に、型駆動機構18により可動型14が固定型13側に移動されて金型15の型締めが行われる。この型締めにより、図3に示すように、固定型13と可動型14とが接合されてキャビティ29、湯道30及び溶湯案内溝33等が形成されるようになる。この型締め状態では、固定型13側に設けられた柱状中子39の先端部分がキャビティ29内に突出し、可動型14側に設けられたコアピン42の先端に当接した状態となる。
【0031】
この後、減圧装置が作動されてキャビティ29内の空気(ガス)が吸引されて負圧状態となると共に、射出機構19により所定量の金属(アルミ)溶湯が射出スリーブ21から鋳込口20を通して金型15内に供給される。これにて、金属溶湯が、溶湯案内溝33、湯道30を順に通ってゲート30aからキャビティ29内に射出充填されるようになる。このとき、キャビティ29内は負圧状態とされているので、充填される金属溶湯の湯回りが良好となり、キャビティ29内に充填される溶湯内に混入される空気量も少なくすることができる。
【0032】
キャビティ29内への金属溶湯の充填が完了すると、キャビティ29内の金属溶湯の温度が下がり始めるのであるが、金型15の型締め状態を保ったまま、金属溶湯が半凝固状態となるのを待つ工程となる。この金属溶湯の半凝固状態とは、より具体的には、キャビティ27内の溶湯がその表面部においては凝固状態であるが内部については未だ融体である状態(ゲル状態)であり、凝固収縮が始まる前の状態をいう。また、ここでいう融体とは、その固さを感覚的に表現すると、餅のような状態、あるいはプリンや豆腐のような状態をいう。本実施例では、温度調整装置により、この半凝固状態が比較的長く続くようにしている。
【0033】
キャビティ27内の金属溶湯が半凝固状態となると、次に、型駆動機構18による金型15の型開きが行われると共に、固定型13側の押出装置35が駆動されるようになる。これにより、半凝固状態の鋳造品が、可動型14と一体的に固定型13から離型されるようになる。
【0034】
この離型により、柱状中子39がブラケット1の筒状部3の段付孔6内から相対的に抜き出される。このとき、柱状中子39の抜き勾配が零でも、更に言えば、径大部40の根元側に逆テーパ部40aが存在していても、溶湯金属の収縮に起因する柱状中子39に対する締付け力の発生がほとんどない状態で抜き出しが行われるので、柱状中子39をブラケット1の筒状部3からスムーズに抜き出すことができる。
【0035】
可動型14が固定型13から離型されると、続いて、可動型14の押出装置38が駆動され、鋳造品(ブラケット1)が可動型14から離型される。このとき、湯道28及び溶湯案内溝31にて凝固した金属や、前記ビスケットについても可動型14から取外され、鋳造品(ブラケット1)と分離される。そして、可動型14から離型されたブラケット1は、その後、全体が凝固しブラケット1として完成する。
【0036】
ところで、柱状中子39がブラケット1から抜き出される前(金属溶湯が半凝固状態にあるとき)は、柱状中子39の径大部40の根元部分が逆テーパ部40aとなっている関係上、段付孔6の径大孔部4の口元側は逆テーパ状になっているが、柱状中子39が抜き出された後に、筒状部3のうち、径大孔部4の根元部に対応する厚肉部分が最後に完全凝固することによって径大孔部4の口元部分の内周部が外側に引っ張られるようになる。これにより、径大孔部4の口元側の逆テーパ状部分も先端側と等径の真っ直ぐな孔となる。
【0037】
上記のようにして鋳造されたブラケット1では、筒状部3の段付孔6のうち、周壁の肉厚が比較的薄い径大孔部4の先端側を形成する柱状中子39の径大部40の先端側及び径小部5を形成する柱状中子39の径小部41については、抜き勾配を設けず、周壁の肉厚が厚い径大孔部4の根元側を形成する柱状中子39については、その根元側を逆テーパ状にして周壁の凝固収縮により内径が広げられて先端側と等径となるようにしたので、段付孔6を寸法精度良く形成でき、その後の寸法を出すための精密な切削加工等を不要にする。
【0038】
本発明者は、本発明の効果を確認するために、上記実施例の径大部40の根元側に逆テーパ部40aを設けた柱状中子39と、そのような逆テーパ部を設けない柱状中子とを用いて実際にブラケット1を鋳造し、筒状部3の段付孔6の径大孔部4の内径を測定するという内容の実験を行った。
【0039】
径大孔部4の内径は図12に示すように、26mm、その公差は+0.005mm、−0.025mmである。本発明の柱状中子は図9(a)に示すように、径大部の逆テーパ部の最小径が26.041mm、最大径は26.056mmで、根元の方が0.015mm小さくなるように形成した。一方、逆テーパ部を設けない柱状中子は図10(a)に示すように径大部は全体を26.056mmの等径のものに形成した。
【0040】
図9(b)及び図10(b)はそれぞれの柱状中子を用いて鋳造したブラケット1の筒状部3の径大孔部4の口元(図6の下端開口部)と奥(図6の上端部)の内径を測定した結果を示す。なお、図11は鋳造の諸条件を示す。
【0041】
図9(b)及び図10(b)から理解されるように、本発明では、径大孔部の口元と奥との内径は同一(試料1)或いは差があっても最大の試料2の0.008mmと極く小さく抑えることができているのに対し、逆テーパ部のないものでは、径大孔部の口元と奥との内径差は大きく(最大は試料1、2、5の0.025mm、最小は試料4の0.020mm)、本発明によるものの方が高い成形精度を発揮し、ストレートの孔に成形することができる。
【0042】
図13ないし図17は本発明の他の実施例を示す。この実施例の鋳造品は歯車変速装置(トランスミッション)に用いられる切換作動体44で、これは、図14及び図15に示すように、半円板状をなす基体45に両側に突出する筒状部46を設けた構造のものである。筒状部46は、中空部として両端に開口する貫通孔47を有している。貫通孔47は、軸方向全体に等径のものである。なお、筒状部46には、径方向に貫通する小孔48が形成されている。
【0043】
図13は切換作動体44を鋳造する金型49のうち、筒状部46を形成する部分を型締め状態で縦断して示すものである。同図において、固定型50の型材51に形成された凹部51aと可動型52の型材53に形成された凹部53aとによって、切換作動体44を鋳造するためのキャビティ54が構成されている。そして、可動型52には、貫通孔47を形成するための柱状中子55が型締め状態でキャビティ54内に突出するように取り付けられている。なお、筒状部46の小孔48を形成するための中子ピンは図示されていないが、57〜59はその中子ピンを通すための孔及び小凹部である。
【0044】
上記のような切換作動体44において、その筒状部46は軸線方向の途中部で基体45に接合しているため、貫通孔47の周壁の肉厚は、基体45との接合部分で厚くなっている。このため、基体45と接合する厚肉部分での凝固収縮が他の部分より遅れることから、柱状中子55の軸線方向各部の外径を一定寸法に設定したものでは、その厚肉部分の内周部が外周側に引っ張られる結果、当該部分での貫通孔47の内径が大きくなってしまう。
【0045】
このようなことを考慮して、本実施例では、柱状中子55を、図13に二点鎖線で誇張して示すように、筒状部46と基体45との接合部分に対応する部分が最小外径となるように、キャビティ54内に突出する部分について、根元側から及び先端側から当該最小外径部分に向かって次第に径小となるように形成している。このように柱状中子55を中くびれ形状に形成することにより、前述の一実施例と同様にして全体が等径の貫通孔47を形成することができる。
【0046】
図16は柱状中子55として、抜き勾配のない、軸方向各部において等径なストレートなものを使用して実際に切換作動体44を鋳造して筒状部46の貫通孔47の内径寸法を測定した結果を示すもので、図中、Gは基体45との接合部分における貫通孔47の内径寸法、E及びFは貫通孔47の両端の内径寸法である。なお、貫通孔47の内径は16mm、長さ60mm(図15のl)、筒状部46と基体45との接合部分は図15にxで示す寸法で28mmのものである。
【0047】
この図16から明らかなように、ストレート形状の柱状中子では、基体47との接合部分の厚肉部分において、貫通孔47の内径寸法が大きくなっており、且つばらつき程度も大きいことが分かる。
【0048】
一方、図17のgは本発明による中くびれ形状の柱状中子55を用いて実際に切換作動体44を鋳造し、基体との接合部分における貫通孔47の内径寸法を測定した結果を示す。同図にはストレート形状の柱状中子で形成した場合の貫通孔の同一箇所の内径寸法Gをも示すが、本発明では中央部分も両端部分の内径とほぼ同一内径に形成でき、精度の良い鋳造を行うことができることが理解される。
【0049】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施例に限定されるものではなく、以下のような変形或いは変更が可能である。
鋳造品はブラケット1や切換作動体44に限られず、中空部の周壁に肉厚の厚い部分が存在するものに適用できる。
中空部としては、両端が貫通している孔に限られず、先端側が閉鎖された空洞部や凹部等であっても良い。
中空部の軸線方向と直交する方向の断面形状としては、円形に限られず、楕円形、矩形等種々の形状が考えられる。
中空部を形成する柱状中子は可動型側に設ける場合に限られず、固定型側に設けるものであっても良い。また、柱状中子は可動型或いは固定型に対してスライド可能に設けるものであっても良く、この場合の柱状中子の抜き出し方向は可動型と固定型との型開き方向と異なる方向に定めても良い。
ダイカストに使用する金属はアルミに限らず、亜鉛等の他の軽合金であっても良い。
【0050】
【発明の効果】
以上の説明にて明らかなように、本発明のダイカスト鋳造方法及びダイカスト鋳造装置によれば、中空部の周壁に肉厚の変化があっても、中空部にその軸線方向と直交する方向の寸法をほぼ一定に精度良く形成することができ、この結果、鋳造後の面倒な機械加工を不要とし、ひいては製造コストの大幅な低減を図ることができるという優れた実用的効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、金型の型締め状態における要部の拡大縦断正面図
【図2】柱状中子の部分拡大断面図
【図3】型締め状態で示す金型の縦断面図
【図4】ダイカスト鋳造装置の全体の概略的正面図
【図5】射出機構部分の縦断正面図
【図6】ブラケットの要部の拡大縦断面図
【図7】ブラケットの正面図
【図8】ブラケットの縦断側面図
【図9】柱状中子の寸法とこれによって形成される径大孔部の測定寸法を示す図
【図10】比較のために製作した柱状中子についての図9相当図
【図11】ダイカスト条件を示す図
【図12】径大孔部の寸法を示す図
【図13】本発明の他の実施例を示す図1相当図
【図14】切換作動体の正面図
【図15】図14のI−I線に沿って切断して示す断面図
【図16】比較のために製作した柱状中子によって形成される貫通孔の測定寸法を示す図
【図17】本発明の柱状中子によって形成した貫通孔の測定寸法を示す図
【符号の説明】
図面中、1はブラケット(鋳造品)、2は基体、3は筒状部、6は段付孔部 (中空部)、7はダイカスト鋳造装置、13は固定型、14は可動型、15は金型、18は型駆動機構、19は射出機構、29はキャビティ、35は押出装置(脱出機構)、39は柱状中子、44は切換作動体(鋳造品)、45は基体、46は筒状部、47は貫通孔(中空部)、50は固定型、52は可動型、54はキャビティ、55は柱状中子を示す。
Claims (4)
- 中空部を有し、その中空部の周壁の肉厚が当該中空部の軸線方向に沿って異なる筒状部を備えた鋳造品を成形するための方法であって、
前記中空部を形成する柱状中子を、その中空部の軸線方向と直交する方向の大きさが、中空部の周壁の厚肉部分に対応する部分において薄肉部分に対応する部分よりも小となるように形成し、
前記金型を型締めして前記柱状中子を前記鋳造品成形のためのキャビティ内へ突出させた状態で当該キャビティ内に金属溶湯を充填した後、少なくとも前記中空部の内周壁の前記金属溶湯が凝固し始めたときに、前記柱状中子を前記筒状部から抜去することを特徴とするダイカスト鋳造方法。 - 中空部を有し、その中空部の周壁の肉厚が当該中空部の軸線方向に沿って異なる筒状部を備えた鋳造品を成形するための装置であって、
前記鋳造品を鋳造するためのキャビティを形成する金型と、
前記中空部を形成するために、前記金型にその型締め状態で前記キャビティ内に突出するように設けられ、前記中空部の軸線方向と直交する方向の大きさが、中空部の周壁の厚肉部分に対応する部分において肉薄部分に対応する部分よりも小となるように形成された柱状中子と、
前記金型の型締め、型開きを行う型駆動機構と、
型締めされた前記金型の前記キャビティ内に金属溶湯を射出する射出機構とを具備し、
前記型駆動機構は、前記射出機構により前記キャビティ内に金属溶湯が充填された後、少なくともその金属溶湯が前記中空部の内周壁で凝固し始めたときに、前記柱状中子を前記筒状部から抜去するように構成されていることを特徴とするダイカスト鋳造装置。 - 基体に中空部を有する筒状部を突出形成し、その中空部の周壁の肉厚が前記基体との接合部分において厚肉な鋳造品を成形するための方法において、
前記中空部を形成する柱状中子を、その中空部の軸線方向と直交する方向の大きさが、当該中空部の周壁の前記基体との接合部分での厚肉部分に対応する部分において他の部分よりも小となるように形成し、
前記金型を型締めして前記柱状中子を前記鋳造品成形のためのキャビティ内へ突出させた状態で当該キャビティ内に金属溶湯を充填した後、少なくとも前記中空部の内周壁で前記金属溶湯が凝固し始めたときに、前記柱状中子を前記筒状部から抜去することを特徴とするダイカスト鋳造方法。 - 基体に中空部を有する筒状部を突出形成し、その中空部の周壁の肉厚が前記基体との接合部分において厚肉な鋳造品を成形するための方法において、
前記鋳造品を成形するためのキャビティを形成する金型と、
前記中空部を形成するために、前記金型にその型締め状態で前記キャビティ内に突出するように設けられ、前記中空部の軸線方向と直交する方向の大きさが、当該中空部の周壁の厚肉部分に対応する部分において他の部分よりも小となるように形成した柱状中子と、
前記金型の型締め、型開きを行う型駆動機構と、
型締めされた前記金型の前記キャビティ内に金属溶湯を射出する射出機構とを具備し、
前記型駆動機構は、前記金型を型締め状態で、前記射出機構により前記キャビティ内に金属溶湯が充填された後、少なくともその金属溶湯が前記中空部の内周壁で凝固し始めたときに、前記柱状中子を前記筒状部から抜去するように構成されていることを特徴とするダイカスト鋳造装置。
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