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JP3679475B2 - ステンレス粗溶鋼の精錬方法 - Google Patents

ステンレス粗溶鋼の精錬方法 Download PDF

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JP3679475B2
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勝彦 加藤
敏隆 湯木
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス粗溶鋼の精錬方法に係り、更に詳しくは、前チャージで生成された脱炭スラグを精錬炉内に残滓したまま次チャージの脱炭精錬を開始し、脱炭スラグ中のクロム分を次チャージの溶銑中に還元するとともに、クロム分を還元して生成されたクロム回収済スラグを脱炭精錬中に排滓した後、引き続き同一精錬炉内で溶銑の脱炭精錬を継続するステンレス粗溶鋼の精錬方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ステンレス粗溶鋼の精錬方法では、LD転炉等の精錬炉内に溶銑(又は溶鉄という)を投入するとともに、精錬炉内にランス等を介して酸素(以下O2 という)を吹き込んで、溶銑中に含有される炭素(以下[C]M という)に下記(1)式に示す酸化反応を生じせしめ、脱炭している。
2[C]M +O2 →2CO ・・・・・・・・・・・(1)
【0003】
また、精錬時には、精錬炉内に投入された造滓剤等によってクロム分(通常クロム酸化物(以下(Cr2 3 S という))を含有する脱炭スラグが生成されている。そして、この脱炭スラグ中のクロム分と溶銑中の炭素に下記(2)式に示す還元反応を生じせしめ、溶銑中に還元させている。
(Cr2 3 S +3[C]M →2[Cr]M +3CO ・・(2)
なお、前記(2)式中[Cr]M は、溶銑中に還元されたクロムをいう。
【0004】
しかしながら、前記(2)式の還元反応によって脱炭スラグ中のクロム分を溶銑中に還元しているが、精錬終了時に溶銑中のCr濃度を11〜19wt%と高くするために、脱炭スラグ中のCr含有率もやはり11〜19wt%と高くなってしまい、溶銑中の炭素のみによる還元反応だけでは脱炭スラグ中のクロム分を全て還元することができず、この結果、高Cr含有率の脱炭スラグをそのまま廃棄するしかなかった。
【0005】
一方、精錬操業中、前記(1)式の脱炭反応や前記(2)式の還元反応等の炭素の燃焼反応等によって一酸化炭素ガス(以下COガスという)が生じることで、通常、脱炭スラグが発泡(又はフォーミング或いはスロッピングという)している。
【0006】
しかしながら、精錬操業中に脱炭スラグがフォーミングし過ぎると、この脱炭スラグが精錬炉外に溢れて精錬炉の周辺設備を溶損させる等、極めて作業性や生産性を阻害する一方、脱炭スラグの排滓(又は出滓という)時である精錬操業終了時に脱炭スラグがフォーミングしないと排滓作業が困難となる等、やはり極めて作業性や生産性を阻害するという問題点を有していた。
【0007】
このため、ステンレス粗溶鋼の精錬操業では、脱炭スラグ中のクロム分を回収したり、脱炭スラグのフォーミングを制御する何等かの方法が希求されていた。
【0008】
そこで、これらの問題点を解決するために、▲1▼特開昭63−195206号公報には、上方から酸化性ガスを吹込みつつ、炉底羽口を介して酸素あるいは不活性ガスを供給して溶鉄にクロム鉱石と炭材を添加して溶融還元する上底吹転炉精錬において、5〜50mmの直径を有する塊状炭材を上吹酸素ジェットの火点部以外の場所に添加すると共に、該塊状炭材を全酸素供給速度F(Nm3 /(T・Hr))に対して0.1F〜0.5F(kg/(T・Hr))の速度で添加するクロム酸化物の溶解還元方法が提案されている。
【0009】
また、▲2▼特開昭53−119210号公報には、製鋼炉にて溶製された13%以上のクロム含有量を有する含クロム鋼の残滓を冷却固化せしめ、転炉における他の含クロム鋼用チャージの吹錬時に前記の固体残滓を添加せしめる含クロム鋼滓よりのクロム回収利用方法や、▲3▼脱炭スラグの排滓前に珪素(以下Siという)を添加し、下記(3)式に示す還元反応を生じせしめる方法が提案されている。
2(Cr2 3 S +3Si→4[Cr]M +3(SiO2 S ・・(3)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、▲1▼の特開昭63−195206号公報に示されたクロム酸化物の溶解還元方法では、塊状炭材の添加速度を規定することによりクロム酸化物を高速で還元することはできるが、クロム分を還元した(又は回収した)スラグを排滓する際に、このスラグの厚みが薄いことに起因してスラグの排滓率にバラツキが生じ易く、この結果、スラグと共に溶銑が出銑される所謂メタルロスが発生し、歩留りが低下するという問題点を有していた。また、脱炭スラグのフォーミングを制御することができないという問題点を有していた。
【0011】
また、▲2▼の特開昭53−119210号公報に示された含クロム鋼滓よりのクロム回収利用方法では、製鋼炉にて溶製された13%以上のクロム含有鋼の残滓を冷却固化し、他の含クロム鋼用チャージの吹錬時に固体残滓を添加しているため、吹錬時に冷却固化された残滓を昇温する必要が生じるとともに、冷却固化された残滓上に高温の溶銑を投入しても溶銑温度が低下しやはり昇温作業が必要となり、このため、昇温還元時間を大幅に延長させ、精錬操業を迅速に行うことができず、極めて生産性を阻害するという問題点を有していた。また、脱炭スラグのフォーミングを制御することができないという問題点を有していた。
【0012】
さらに、▲3▼のSiを添加する方法では、このSiがCに比べ高価であることから製造原価が高騰するとともに、前記(3)式により生じた二酸化硅素((SiO2 S )による耐火物の溶損等を防止するために、生石灰等を投入してスラグの塩基度を高めること(又は高塩基度化という)が必要であるため、生石灰等の投入により生成されたスラグの量が増大するという問題点を有していた。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、前チャージの仕上げ精錬期終了時の高Cr含有率の脱炭スラグを精錬炉内に残滓させたまま次チャージの溶銑を投入し、前記溶銑と前記脱炭スラグのCr濃度差を利用して脱炭スラグ中のクロム分を高還元速度で回収するとともに、吹酸昇温還元期終了時の低Cr含有率のクロム回収済スラグを排滓させることで、従来廃棄等していた脱炭スラグ中のクロム分をステンレス鋼中に回収させることができ、さらに、吹酸昇温還元期に投入される炭材の脱炭スラグ又はクロム回収済スラグに対する重量比率を適宜選択することで、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ又はクロム回収済スラグのフォーミングを制御して異常フォーミング等を防止するとともに、効率的且つ安定的なクロム回収済スラグの排滓を行うことができるステンレス粗溶鋼の精錬方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う請求項1記載のステンレス粗溶鋼の精錬方法は、精錬炉内に前チャージの仕上げ精錬期で生成されクロム酸化物を含有する脱炭スラグを残留させたまま次チャージの溶銑を投入するとともに、前記精錬炉内に炭材を添加し且つ酸化性ガスを吹き込んで前記脱炭スラグ中のクロム酸化物を前記溶銑中に還元する吹酸昇温還元期と、前記吹酸昇温還元期でクロム酸化物を前記溶銑中に還元して得たクロム回収済スラグを排滓する中間排滓期と、前記中間排滓期で前記精錬炉内に残留された溶銑にフェロクロム合金を溶解しながら脱炭精錬する前記仕上げ精錬期とを備え、しかも、前記吹酸昇温還元期の前記炭材の含有率(V C )を前記脱炭スラグに対し重量比率で3wt%≦V C ≦6wt%とし、前記吹酸昇温還元期終了時の前記炭材の含有率(V C )を前記クロム回収済スラグに対し重量比率で0.5wt%≦V C ≦3wt%とする
【0016】
さらに、請求項記載のステンレス粗溶鋼の精錬方法は、請求項記載のステンレス粗溶鋼の精錬方法において、前記脱炭スラグ又は前記クロム回収済スラグの塩基度((CaO/SiO2S )を重量比率で1.2≦(CaO/SiO2S ≦4.5とし、及び/又は、前記脱炭スラグのAl23 の含有率((Al23S )を3wt%≦(Al23S ≦23wt%とする。
【0017】
なお、ステンレス粗溶鋼の精錬方法を適用する精錬炉としては、上底吹転炉、底吹転炉、上吹転炉等のLD(Linz Donawitz)転炉、AOD(Argon Oxigen Decarburization)転炉、電気炉等が適用可能である。
【0018】
吹酸昇温還元期とは、前チャージで生成されクロム酸化物を含有する脱炭スラグを残留させた精錬炉内に次チャージの溶銑を投入した後、酸化性ガスを吹き込むとともに炭材を投入して、少なくとも前記(2)式に示した還元反応を生じせしめ、脱炭スラグ中のクロム酸化物を溶銑中に還元して、クロムを除去したクロム回収済スラグを生成する期間をいう。
【0019】
また、中間排滓期(又はクロム回収済スラグ排滓期という)とは、吹酸昇温還元期でクロム酸化物を溶銑中に還元して得たクロム回収済スラグを排滓する期間をいう。さらに、仕上げ精錬期(又は脱炭期という)とは、中間排滓期で精錬炉内に残留され脱炭スラグ中のクロム分を回収した溶銑にフェロクロム合金等を添加し、必要に応じて酸化性ガスの吹き込みによる脱炭を行い、その他、温度の調整を行う期間をいう。
【0020】
なお、吹酸昇温還元期及び仕上げ精錬期では、効率良く脱炭反応させるために、各種方法で溶銑を攪拌するのが好ましい。例えば、底吹転炉や上底吹転炉では、これら精錬炉の底部から各種ガスを装入することで溶銑を攪拌することができる。また、フェロクロム合金は溶銑のCr含有率を調整するために使用されるものであり、このフェロクロム合金としては、Cr含有率が10wt%〜50wt%の一般クロム鉱石は勿論、高炭素フェロクロム、中炭素フェロクロム、低炭素フェロクロム等の貧鉱を富化処理したもの、或いは還元処理されたペレット等のクロム鉱石類等が使用されている。また、この他ステンレス鋼屑等を使用してもよい。
【0021】
また、脱炭スラグを残存した精錬炉内に溶銑を装入する際の溶銑温度(TP )としては、1200℃≦TP ≦1500℃の範囲とされるのが好ましい。溶銑温度が1200℃未満では溶銑温度が低過ぎて酸化還元反応を促進させるべく溶銑温度を上昇させねばならず、このため精錬時間が長くなる等精錬効率が低下する傾向が現れ、また、溶銑温度が1500℃を越えると高炉の出銑温度を高めねばならず、このため高炉を構成する耐火物が溶損し易くなる傾向が現れるので、いずれも好ましくない。
【0022】
また、酸化性ガスとしては、上底吹転炉又は上吹転炉で、受銑口からランスを介して吹き込まれる酸素等や、上底吹転炉でガス送入口から吹き込まれる酸素、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス、炭酸ガス、燃料ガス等の混合ガス等が挙げられる。また、吹酸昇温還元期にランスから吹き込まれる酸素の送酸速度(VP :(単位:Nm3 /min/T))としては、1.5≦VP ≦6の範囲とされるのが好ましい。吹酸昇温還元期の送酸速度が1.5Nm3 /min/T未満では酸素供給量が減少することに起因して溶銑中の炭素によるクロム酸化物の還元速度(以下クロム還元速度という)が小さくなり、このため精錬時間が長くなる等精錬効率が低下する傾向が現れ、また、吹酸昇温還元期の送酸速度が6Nm3 /min/Tを越えると溶銑や溶滓の温度が高くなり過ぎて耐火物が溶損する傾向が現れるので、いずれも好ましくない。
【0023】
また、炭材としては,粉状コークスや、この粉状コークスを各種バインダーで塊状に固結した塊状コークス、更に、前記粉状コークスと粒状鉄とを前記バインダーで塊状にした成形コークス、或いは粉状無煙炭を前記バインダーで塊状にした無煙炭ブリケット等が挙げられる。その他、脱炭スラグ中のクロム分を還元するために、アルミドロス等の還元材等を用いてもよい。また、特に、アルミドロスは昇温材の役目も兼ねており、極めて有用である。その他、脱炭スラグの組成の制御や、これによる脱炭スラグ中のクロム分の還元速度の向上に寄与することができる。
【0024】
また、吹酸昇温還元期の炭材の含有率(VC )としては、脱炭スラグに対し重量比率で3wt%≦VC ≦6wt%、好適には4wt%≦VC ≦5wt%の範囲とされるのが好ましい。吹酸昇温還元期の炭材の含有率が脱炭スラグに対し重量比率で4wt%未満では前記(1)及び(2)式に示した炭素の燃焼反応等で生成されたCOガスによって形成された気泡によって脱炭スラグの異常フォーミングが発生する傾向が現れ、特に3wt%未満ではその傾向が著しくなり、また、吹酸昇温還元期の炭材の含有率が脱炭スラグに対し重量比率で5wt%を越えると前記(1)及び(2)式に示した炭素の燃焼反応等で生成されたCOガス量が増加することで気泡が破壊される等して脱炭スラグ(又はクロム回収済スラグ)のフォーミング不足を招き、地金が飛散する所謂地金飛散ロス等により歩留りが低下する傾向が現れ、特に6wt%を越えるとその傾向が著しくなるので、いずれも好ましくない。また、吹酸昇温還元期の炭材の含有率を前記範囲とするために、精錬操業にあたって炭材は精錬炉内に予め投入されたり精錬炉内に連続的に投入等される。
【0025】
特に、吹酸昇温還元期終了時の炭材の含有率(VC )としては、クロム回収済スラグに対し重量比率で0.5wt%≦VC ≦3wt%、好適には1wt%≦VC ≦1.5wt%の範囲とされるのが好ましい。吹酸昇温還元期終了時の炭材の含有率がクロム回収済スラグに対し重量比率で1wt%未満では前記(1)及び(2)式に示した炭素の燃焼反応等で生成されたCOガスの合体集積不足のために、脱炭スラグの異常フォーミングが急速に発生し排滓前に脱炭スラグが精錬炉外に溢れて作業生や生産生を阻害する傾向が現れ、特に0.5wt%未満ではその傾向が著しくなり、また、吹酸昇温還元期終了時の炭材の含有率がクロム回収済スラグに対し重量比率で1.5wt%を越えるとクロム回収済スラグ(又は脱炭スラグ)の粘度が低下して、クロム回収済スラグ(又は脱炭スラグ)のスラグフォーミング不足によりスラグ厚みが不十分となってクロム回収済スラグと共に溶銑を排出する所謂地金ロスを招き、排滓率が低下する傾向が現れ、特に3wt%を越えるとその傾向が著しくなるので、いずれも好ましくない。
【0026】
また、吹酸昇温還元期や仕上げ精錬期の脱炭スラグ又は中間排滓期のクロム回収済スラグの、CaOとSiO2 の比で示される塩基度((CaO/SiO2 S )としては、重量比率で1.2≦(CaO/SiO2 S ≦4.5、好適には1.8≦(CaO/SiO2 S ≦3.5の範囲とされるのが好ましい。吹酸昇温還元期等の脱炭スラグ等の塩基度が1.8未満では脱炭スラグの塩基度が低過ぎて精錬炉を構成する耐火物の溶損が進行する傾向が現れ、特に1.2未満ではその傾向が著しくなり、また、吹酸昇温還元期等の脱炭スラグ等の塩基度が3.5を越えると脱炭スラグの量(以下スラグ量という)が増大し、この結果、脱炭スラグからのクロム回収率が低下したり、中間排滓期のクロム回収済スラグの排滓率が低下したり、或いは地金ロスの増加を招く傾向が現れ、特に4.5を越えるとその傾向が著しくなるので、いずれも好ましくない。
【0027】
また、吹酸昇温還元期の脱炭スラグのAl2 3 の含有率((Al2 3 S )としては、3wt%≦(Al2 3 S ≦23wt%、好適には8wt%≦(Al2 3 S ≦20wt%の範囲とされるのが好ましい。吹酸昇温還元期の脱炭スラグのAl2 3 の含有率が8wt%未満ではダイカルシウムシリケートの析出による脱炭スラグの液相率の低下に伴って、クロム還元速度が低下する傾向が現れ、特に3wt%未満ではその傾向が著しくなり、また、吹酸昇温還元期の脱炭スラグのAl2 3 の含有率が20wt%を越えると脱炭スラグの粘度が上昇することで脱炭スラグの異常フォーミングが発生し易くなるとともに、精錬炉を構成する耐火物の溶損も進行する傾向が現れ、特に23wt%を越えるとその傾向が著しくなるので、いずれも好ましくない。
【0028】
また、吹酸昇温還元期の脱炭スラグのMgOの含有率((MgO)S )としては、5wt%≦(MgO)S ≦15wt%の範囲とされるのが好ましい。吹酸昇温還元期の脱炭スラグのMgOの含有率が5wt%未満では精錬炉を構成する耐火物からMgOが溶出し易くなるために、耐火物の溶損が進行する傾向が現れ、また、吹酸昇温還元期の脱炭スラグのMgOの含有率が15wt%を越えると脱炭スラグ中のクロム酸化物とMgOが結合してスピネルを形成し易くなるために、クロム還元速度が低下するとともに、スラグ量の増大化によるクロム回収率の低下や中間排滓期のクロム回収済スラグの排滓率低下、更に地金ロスを招く傾向が現れるので、いずれも好ましくない。
【0029】
また、仕上げ精錬期のフェロクロム合金等の添加前の溶銑中の炭素含有率([C]M )としては、1.5wt%≦[C]M ≦4wt%の範囲とされるのが好ましい。仕上げ精錬期のフェロクロム合金等の添加前の溶銑中の炭素含有率が1.5wt%未満では吹酸昇温還元期でのクロム還元速度が低下する傾向が現れ、また、仕上げ精錬期のフェロクロム合金等の添加前の溶銑中の炭素含有率が4wt%を越えると仕上げ精錬期、特に仕上げ精錬末期での溶銑温度の上昇によって精錬炉を構成する耐火物の溶損が進行したり精錬制御性が悪化する傾向が現れるので、いずれも好ましくない。
【0030】
また、仕上げ精錬期の溶銑温度(TR )としては、1450℃≦TR ≦1600℃とされるのが好ましい。仕上げ精錬期の溶銑温度が1450℃未満では溶銑中の炭素の酸化ロスが増大する傾向が現れ、また、仕上げ精錬期の溶銑温度が1600℃を越えると精錬炉を構成する耐火物の溶損が著しくなる傾向が現れるので、いずれも好ましくない。
【0031】
【作用】
本発明者等は鋭意研究を進めた結果、通常、精錬操業中では脱炭スラグや溶銑中の種々含有成分の含有率(又は濃度)が変動し、特に吹酸昇温還元期終了時の脱炭スラグのCr含有率が3wt%と低い一方、仕上げ精錬期終了時の脱炭スラグCr含有率が11〜19wt%と高いことに注目することで、仕上げ精錬期終了時の高Cr含有率の脱炭スラグを精錬炉内に残滓させたまま精錬を開始すると溶銑と脱炭スラグのCr濃度差と炭材による還元を利用して容易に溶銑中にCrを還元させることができるとともに、吹酸昇温還元期と仕上げ精錬期との間に中間排滓期を設けて極めて低Cr含有率のクロム回収済スラグを排滓することで、Crを高効率で溶銑中に回収することができることを知見し得た。
【0032】
さらに、本発明者等は鋭意研究を進め、吹酸昇温還元期における脱炭スラグ中の炭材の重量比率と脱炭スラグのフォーミング高さの関係を調べた結果、図2に示すように、吹酸昇温還元期に精錬炉内に投入される炭材を脱炭スラグに対し適量存在させると前記(1)及び(2)式等の炭素の燃焼反応により発生したCOガスを合体集積することで、脱炭スラグの異常フォーミングを抑制しつつクロム酸化物の還元速度を高位に維持することができるとともに、吹酸昇温還元期終了時のクロム回収済スラグ中の炭材をクロム回収済スラグに対し適量存在させると中間排滓期に地金の流出を抑制しつつクロム回収済スラグの排滓を高位に安定化することができることを知見しえた。
【0033】
なお、図2中横軸は脱炭スラグ中の炭材の重量比率、図2中縦軸は脱炭スラグのフォーミング高さ(すなわちフォーミング時の脱炭スラグの高さ)、図2中破線aは精錬炉の容積から得られた脱炭スラグの高さ上限を示し、図2中破線bは中間排滓性から得られた脱炭スラグの高さ下限を示している。なお、脱炭スラグのフォーミング高さは、下記(4)式で求められる。すなわち、
L=h1 /(h2 −h3 ) ・・・・・・・・・・・(4)
但し、L:脱炭スラグのフォーミング高さ
1 :精錬炉中の脱炭スラグの高さ(m)
2 :精錬炉中の内底面から受銑口までの高さ(m)
3 :精錬炉中の溶銑又は溶鋼の高さ(m)
また、前記(4)式で得られた脱炭スラグの高さ下限は0.15、脱炭スラグの高さ上限は0.85とした。脱炭スラグの高さ下限が0.15未満では、脱炭スラグの排滓時に排滓作業が困難となる傾向が現れ、また、脱炭スラグの高さ上限が0.85を越えると脱炭スラグが精錬炉外に溢れて精錬炉の周辺設備を溶損させる傾向が現れるからである。
【0034】
以上のことから、請求項1、2記載のステンレス粗溶鋼の精錬方法においては、前チャージで生成されクロム酸化物を含有する脱炭スラグを精錬炉内に残留させたまま次チャージの溶銑を投入し、次いで、酸化性ガスを吹き込むとともに炭材を投入して脱炭スラグ中のクロム酸化物を還元した後、脱炭スラグ中のクロム酸化物を溶銑中に還元して得たクロム回収済スラグを排滓し、次いで、フェロクロム合金を溶解する等して溶銑の成分調整等を行った後、溶鋼を出鋼する。
このように溶銑を脱炭精錬することにより、吹酸昇温還元期では、精錬炉内に仕上げ精錬期の高Cr含有率の脱炭スラグを残滓させたまま溶銑を投入等して精錬操業を開始することで、溶銑と脱炭スラグのCr濃度差と炭材による還元を利用して脱炭スラグ中のクロム分を容易にかつ効率よく溶銑中に回収することができる。また、精錬炉内に残留された脱炭スラグが冷却固化等しないので、従来の如く残滓を一旦冷却固化した後、昇温する作業等を必要とせず、極めて迅速な精錬作業を行うことができる。
【0035】
特に、吹酸昇温還元期の炭材の含有率(VC )を脱炭スラグに対し重量比率で3wt%≦VC ≦6wt%としたことにより、精錬操業中前記(1)及び(2)式等の炭素の燃焼反応が主に脱炭スラグ中の炭材表面で発生することからCOガスの脱炭スラグから容易に離脱することができ、この結果、吹酸昇温還元期における脱炭スラグの異常フォーミングを抑制できる等、脱炭スラグ(又はクロム回収済スラグ)のフォーミングを制御することができる。さらに、脱炭スラグの異常フォーミングを抑制できるので、この異常フォーミングで脱炭スラグが精錬炉外に流出して脱炭スラグ中の未回収クロムのロスを防止することができる。
【0036】
また、吹酸昇温還元期の溶銑装入時、この溶銑中の炭素と精錬炉内に残滓された前チャージの脱炭スラグ中の酸素(以下[O]S という)とで下記(5)式に示す還元反応を生じるが、溶銑中の炭素含有率が3〜4wt%と高いこと、さらに脱炭スラグ中の酸素含有率が高いことに起因して、過剰な還元反応を起こす虞れがあるが、溶銑装入時又は溶銑装入前に炭材を前記範囲内で投入することや、脱炭スラグ中の(Al2 3 S 濃度調整用に例えば金属Al分を30wt%含むアルミドロス等のアルミナ源を投入することで、この過剰な還元反応を抑制することができるので、溶銑や脱炭スラグが急激に溢れ出す所謂突沸を防止することができる。
[C]M +[O]S →CO ・・・・・・・・・・・(5)
【0037】
また、吹酸昇温還元期終了時の炭材の含有率(VC )を脱炭スラグに対し重量比率で0.5wt%≦VC ≦3wt%としたことにより、中間排滓期において、クロム回収済スラグに適度なフォーミングを付与することができるので、この結果、クロム回収済スラグのスラグ厚さが薄いこと等に起因する地金の流出を抑制しつつ、クロム回収済スラグの排滓を高位に安定化することができる。
【0038】
特に、請求項記載のステンレス粗溶鋼の精錬方法においては、脱炭スラグ又はクロム回収済スラグの塩基度((CaO/SiO2S )を重量比率で1.2≦(CaO/SiO2S ≦4.5としたことにより、適度の塩基度を有することで精錬炉を構成する耐火物の溶損を防止できるとともに、スラグ量の増大化を抑制し、脱炭スラグからのクロム回収率の低下やクロム回収済スラグの排滓率の低下、更に地金ロスの増加を防止することができる。また、脱炭スラグのAl23 の含有率((Al23S )を3wt%≦(Al23S ≦23wt%としたことにより、適度の塩基度を有することで精錬炉を構成する耐火物の溶損を防止できるとともに、適度な液相率とクロム酸化物活量を付与することで、この脱炭スラグからのクロム還元速度を高位に安定化させることができる。さらに、脱炭スラグ又はクロム回収済スラグの塩基度を前記範囲内とし且つAl23 の含有率を前記範囲としたことにより、精錬炉を構成する耐火物の溶損を防止しつつ、クロム還元速度とクロム回収済スラグの排滓率を高位に安定化させることができる。
【0039】
【発明の効果】
請求項1、2記載のステンレス粗溶鋼の精錬方法においては、仕上げ精錬期終了時の高Cr含有率の脱炭スラグを精錬炉内に残滓させたまま溶銑を投入することで、溶銑と脱炭スラグ中のクロム分を高い還元速度で回収できるとともに、吹酸昇温還元期終了時の低Cr含有率のクロム回収済スラグを排滓させることで、脱炭スラグ中のクロム分を廃棄等することなくステンレス鋼中に回収させることができる。さらに、吹酸昇温還元期に投入される炭材の脱炭スラグ又はクロム回収済スラグに対する重量比率を適宜選択することで、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ又はクロム回収済スラグのフォーミングを制御して異常フォーミング等を防止することができるとともに、中間排滓期において地金の流出等なく高い排滓率でクロム回収済スラグを排滓することができる。従って、高価な還元材等を必要とせず、低コストで効率的且つ安定的な精錬操業を行うことができる。
【0040】
特に、吹酸昇温還元期の炭材の含有率(VC )を脱炭スラグに対し重量比率で3wt%≦VC ≦6wt%としたので、吹酸昇温還元期で発生したCOガスが容易に脱炭スラグから離脱することができ、脱炭スラグの異常フォーミング等を抑制する等、脱炭スラグ又はクロム回収済スラグのフォーミングを制御することができ、さらに、クロム酸化物の還元速度を高位に維持することができる。また、吹酸昇温還元期終了時の炭材の含有率(VC )を脱炭スラグに対し重量比率で0.5wt%≦VC ≦3wt%としたので、中間排滓期において、地金の流出を抑制しつつ効率的かつ安定的にクロム回収済スラグを排滓することができる。
【0041】
特に、請求項記載のステンレス粗溶鋼の精錬方法においては、脱炭スラグ又はクロム回収済スラグの塩基度((CaO/SiO2S )を重量比率で1.2≦(CaO/SiO2S ≦4.5とし、及び/又は、脱炭スラグのAl23 の含有率((Al23S )を3wt%≦(Al23S ≦23wt%としたので、脱炭スラグやクロム回収済スラグに適度の塩基度を有することで精錬炉を構成する耐火物の溶損するのを防止できるとともに、脱炭スラグ中のクロム酸化物の還元速度を高位に保つことができ、適度な粘度を付与してクロム回収済スラグの排滓率の低下や地金ロスの増加、さらに脱炭スラグの異常フォーミング等を防止することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1(A)〜(E)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係るステンレス粗溶鋼の精錬方法を適用した上底吹転炉の操業状態を示す説明図、図2は吹酸昇温還元期における脱炭スラグ中の炭材の含有率と脱炭スラグのフォーミング高さの関係を示す特性図である。詳述すると、図1(A)は本発明の一実施の形態に係るステンレス粗溶鋼の精錬方法を適用した上底吹転炉内に溶銑を投入する状態を示す説明図、図1(B)は同上底吹転炉の吹酸昇温還元期を示す説明図、図1(C)は同上底吹転炉の中間排滓期を示す説明図、図1(D)は同上底吹転炉の仕上げ精錬期を示す説明図、図1(E)は同上底吹転炉の出鋼期を示す説明図である。
【0043】
図1(A)〜(E)に示すように、上底吹転炉10は、耐火レンガ等を積み重ねて略対称形の略徳利状に形成されている。本発明の一実施の形態では、溶銑受鋼量175トンの上底吹転炉10を用いた。また、図示しないが、上底吹転炉10は、トラニオンリング方式又はトラニオンリングレス方式等を採用し、所定方向、すなわち図1(A)〜(E)中時計回り方向及び反時計回り方向に傾動自在(又は回動自在)に保持されている。また、上底吹転炉10には、後述する溶銑を投入するための受銑口10aが形成されている。また、上底吹転炉10の受銑口10aより下方の側壁部、すなわち図1(A)中上底吹転炉10の右側壁部には、この上底吹転炉10で脱炭精錬された溶鋼を出鋼するための出鋼口10bが形成されている。また、上底吹転炉10の底部には複数のガス送気口10cが形成され、さらに、このガス送気口10cには、ガス送気管10dが取り付けられている。また、上底吹転炉10の受銑口10aの近傍部には、取鍋11がこの上底吹転炉10に近接自在(又は横方向移動自在)に配置されている。また、上底吹転炉10の受銑口10aの上部には、酸素等の酸化性ガスを供給するためのランス12が昇降自在に配置されている。なお、図示しないが、ランス12に近接して溶銑(又は溶鋼)やスラグの成分測定や温度測定等を行うためのサブランスも配置されている。
【0044】
続いて、この上底吹転炉10を用いた本発明の一実施の形態に係るステンレス粗溶鋼の精錬方法について説明する。
まず、上底吹転炉10内に前チャージの仕上げ精錬期に生成された脱炭スラグ13を残存させたまま、還元材として金属Al分を30wt%含むアルミドロスを適量添加する。次いで、図1(A)に示すように、上底吹転炉10を取鍋11の方へ反時計回りに傾動させ、受銑口10aを介して取鍋11から上底吹転炉10内に次チャージ用の溶銑14を装入するとともに、石灰やホタル石等の造滓剤(又はフラックスという)を装入する。
【0045】
次に、粉状コークス等の炭材の含有率(VC )を脱炭スラグ13に対し重量比率で3wt%≦VC ≦6wt%の範囲になるように連続的に投入しながら添加するとともに、図1(B)に示すように、ランス12の先端部を受銑口10aを介して上底吹転炉10内まで下降させ、このランス12から酸素を供給する。このような上吹吹酸により、溶銑14及び脱炭スラグ13の昇温を行うとともに、前記(2)式に示した反応により脱炭スラグ13中のクロム酸化物を溶銑14中に還元し、溶銑14中にクロムを回収させる。なお、炭材の含有率を前記範囲内としたことで、前記(1)及び(2)式等の炭素の燃焼反応で生じたCOガスが集積されて脱炭スラグ13中に適度に気泡を生じることによって、脱炭スラグ13の異常フォーミング等を抑制して適度にフォーミングさせることができた。
【0046】
次に、脱炭スラグ13中のクロム酸化物が還元されて、Cr含有率が3wt%以下となったクロム回収済スラグ13aが生成されると、図1(C)に示すように、上底吹転炉10を、出鋼口10bとは反対方向に反時計回りに傾動して、クロム回収済スラグ13aの一部もしくは大部分を排滓する。なお、吹酸昇温還元期終了時の炭材の含有率(VC )をクロム回収済スラグ13aに対し重量比率で0.5wt%≦VC ≦3wt%以下とすることで、クロム回収済スラグ13aの粘度の低下等を防止して十分な厚さを持ってクロム回収済スラグ13aを形成できるので、クロム回収済スラグ13aが適度にフォーミングして地金の流出を抑制しつつクロム回収済スラグ13aを効率よく且つ安定的に排滓することができた。なお、溶銑14は、脱炭スラグ13中のクロムを回収したことで、Cr含有率が増加した溶鋼14aとなっている。
【0047】
次に、図1(D)に示すように、上底吹転炉10内に、受銑口10aを介してフェロクロム合金やフラックスを添加し、さらに前述したように、上吹吹酸を行い、脱炭精錬を行った。これにより、溶鋼14a上には、新たにスラグ13bが生成される。次に、所定組成で所定温度の溶鋼14bが生成されると、図1(E)に示すように、上底吹転炉10を、出鋼口10b側に時計回りに傾動して、この出鋼口10bから溶鋼14bを出鋼する。なお、脱炭スラグ13のCr含有率は11wt%〜19wt%とした。ここで、生成された脱炭スラグ13はそのまま上底吹転炉10内に残存させる。
【0048】
以上の操業動作を繰り返して、複数チャージでステンレス鋼が精錬される。なお、精錬操業中、脱炭スラグ13又はクロム回収済スラグ13aの塩基度((CaO/SiO2 S )を重量比率で1.2≦(CaO/SiO2 S ≦4.5の範囲内としたため、上底吹転炉10を構成する耐火物の溶損等がなく、さらにクロム回収済スラグ13aの粘性低下による排滓率の低下等を防止できた。さらに、脱炭スラグ13のAl2 3 の含有率((Al2 3 S )を3wt%≦(Al2 3 S ≦23wt%の範囲内としたため、上底吹転炉10を構成する耐火物の溶損等がなく、さらにクロム還元速度の促進と脱炭スラグ13の異常フォーミング等を防止できた。
【0049】
次に、本発明の一実施の形態に係るステンレス粗溶鋼の精錬方法の確認試験を行った。以下その結果について説明する。
(実験例1〜6)
まず、本発明の一実施の形態に係るステンレス粗溶鋼の精錬方法を用いてステンレス粗溶鋼の脱炭精錬を6チャージ行った(試験番号1〜6)。ここで、各チャージにおける吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材の重量比率、塩基度((CaO/SiO2 S )及びAl2 3 含有率は表1に示す通りとした。
【0050】
【表1】
Figure 0003679475
【0051】
また、各チャージにおける吹酸昇温還元期のCr還元速度(kg/min/T)及び脱炭スラグの異常フォーミングの有無、中間排滓期のクロム回収済スラグの排滓率(%) 及び地金ロス量(kg/T)、各チャージ毎の精錬終了後の耐火物溶損を調べた。その結果を表1に示した。なお、Cr還元速度とは吹酸昇温還元期における単位時間当りのCr還元量をいう。また、地金ロス量とは中間排滓期にクロム回収済スラグと共に排滓された溶銑(又は溶鋼)の重量をいう。
【0052】
また、排滓率は下記(6)式で求められる。すなわち、
排滓率(%) =Vsd/(Vsd+Vsr)・・・・・(6)
但し、Vsd:上底吹転炉から排滓されたクロム回収済スラグの重量
sr:上底吹転炉内に残存したクロム回収済スラグの重量
である。
【0053】
(実験例7〜11)
次に、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材の含有率、吹酸昇温還元期終了時の脱炭スラグ中の炭材の含有率、吹酸昇温還元期の脱炭スラグの塩基度及びAl23含有率をそれぞれ変更してステンレス粗溶鋼の脱炭精錬を5チャージ行った(試験番号7〜11)。具体的には、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材を重量比率で3wt%未満とし(試験番号7)、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材を重量比率で3wt%未満とすると共に、吹酸昇温還元期終了時の脱炭スラグ中の炭材を重量比率で3wt%を越えさせ(試験番号8)、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材を重量比率で3wt%未満とすると共に、吹酸昇温還元期の脱炭スラグの塩基度を1.2未満とし(試験番号9)、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材を重量比率で3wt%未満とすると共に、吹酸昇温還元期の脱炭スラグの塩基度を4.5を越えさせ(試験番号10)、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材を重量比率で3wt%未満とすると共に、吹酸昇温還元期終了時の炭材の重量比率を0.5%未満とし、更に吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中のAl2 3 含有率を23wt%を越えさせた(試験番号11)以外は、実験例1〜6と同様にして、吹酸昇温還元期のCr還元速度(kg/min/T)及び脱炭スラグの異常フォーミングの有無、中間排滓期のクロム回収済スラグの排滓率(%) 及び地金ロス量(kg/T)、各チャージ毎の精錬終了後の耐火物溶損を調べた。その結果を表1に示した。
【0054】
表1から明らかなように、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材を重量比率で3wt%未満とした場合(試験番号7)、炭素の燃焼反応により発生したCOガスの脱炭スラグからの離脱不足により、吹酸昇温還元期に脱炭スラグの異常フォーミングが発生していることがわかった。この結果、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材は重量比率で3wt%以上とするのが良好であることが確認された。
【0055】
また、表1から明らかなように、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材が重量比率で3wt%未満で、かつ、吹酸昇温還元期終了時のクロム回収済スラグ中の炭材が重量比率で3wt%を越えた場合(試験番号8)、炭材によるフォーミング抑制でクロム回収済スラグの中間排滓期のスラグ厚みが不十分なため、排滓率の低下及び地金ロスを招いていることがわかった。この結果、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材は重量比率で3wt%以上で、かつ、吹酸昇温還元期終了時のクロム回収済スラグ中の炭材は重量比率で3wt%未満とするのが良好であることが確認された。
【0056】
また、表1から明らかなように、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材が重量比率で3wt%未満で、かつ、吹酸昇温還元期の脱炭スラグの塩基度が1.2未満の場合(試験番号9)、低塩基度スラグによる耐火物溶損が進行していることがわかった。この結果、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材は重量比率で3wt%以上で、かつ、吹酸昇温還元期の脱炭スラグの塩基度は1.2以上とするのが良好であることが確認された。
【0057】
また、表1から明らかなように、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材が重量比率で3wt%未満で、かつ、吹酸昇温還元期の脱炭スラグの塩基度が4.5を越えた場合(試験番号10)、スラグ量の増大に起因して中間排滓期のクロム回収済スラグの排滓率の低下及び地金ロスの増加を招いていることがわかった。この結果、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材は重量比率で3wt%以上で、かつ、吹酸昇温還元期の脱炭スラグの塩基度は4.5以下とするのが良好であることが確認された。
【0058】
また、表1から明らかなように、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材が重量比率で3wt%未満で、かつ、吹酸昇温還元期終了時の炭材の重量比率を0.5%未満とし、更に吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中のAl2 3 の含有率が23wt%を越えた場合(試験番号11)、Al2 3 含有率の増加に伴う脱炭スラグの粘性の増加に起因した異常フォーミングが発生し、さらに耐火物の溶損も助長されていることがわかった。この結果、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中の炭材は重量比率で3wt%以上で、かつ、吹酸昇温還元期の脱炭スラグ中のAl2 3 の含有率が23wt%以下とするのが良好であることが確認された。
【0059】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)本発明の一実施の形態に係るステンレス粗溶鋼の精錬方法を適用した上底吹転炉内に溶銑を投入する状態を示す説明図である。
(B)同上底吹転炉の吹酸昇温還元期を示す説明図である。
(C)同上底吹転炉の中間排滓期を示す説明図である。
(D)同上底吹転炉の仕上げ精錬期を示す説明図である。
(E)同上底吹転炉の出鋼期を示す説明図である。
【図2】吹酸昇温還元期における脱炭スラグ中の炭材の重量比率と脱炭スラグのフォーミング高さの関係を示す特性図である。
【符号の説明】
10 上底吹転炉 10a 受銑口
10b 出鋼口 10c ガス送気口
10d ガス送気管 11 取鍋
12 ランス 13 脱炭スラグ
13a クロム回収済スラグ 13b スラグ
14 溶銑 14a 溶銑又は溶鋼
14b 溶鋼

Claims (2)

  1. 精錬炉内に前チャージの仕上げ精錬期で生成されクロム酸化物を含有する脱炭スラグを残留させたまま次チャージの溶銑を投入するとともに、前記精錬炉内に炭材を添加し且つ酸化性ガスを吹き込んで前記脱炭スラグ中のクロム酸化物を前記溶銑中に還元する吹酸昇温還元期と、前記吹酸昇温還元期でクロム酸化物を前記溶銑中に還元して得たクロム回収済スラグを排滓する中間排滓期と、前記中間排滓期で前記精錬炉内に残留された溶銑にフェロクロム合金を溶解しながら脱炭精錬する前記仕上げ精錬期とを備え
    しかも、前記吹酸昇温還元期の前記炭材の含有率(V C )を前記脱炭スラグに対し重量比率で3wt%≦V C ≦6wt%とし、前記吹酸昇温還元期終了時の前記炭材の含有率(V C )を前記クロム回収済スラグに対し重量比率で0.5wt%≦V C ≦3wt%とすることを特徴とするステンレス粗溶鋼の精錬方法。
  2. 前記脱炭スラグ又は前記クロム回収済スラグの塩基度((CaO/SiO2S )を重量比率で1.2≦(CaO/SiO2S ≦4.5とし、及び/又は、前記脱炭スラグのAl23 の含有率((Al23S )を3wt%≦(Al23S ≦23wt%とする請求項記載のステンレス粗溶鋼の精錬方法。
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