JP3666372B2 - 耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用鋼とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油井やガス井のケーシングやチュービングおよび掘削用のドリルパイプ等の用途に好適な耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用鋼とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶接管に比較して高信頼性が得られる継目無鋼管は、過酷な油井環境や高温環境で使用されることが多く、高強度化、靱性改善および耐硫化物応力割れ性(以下、耐SSC性と記す)の改善が常に要求されている。
【0003】
継目無鋼管は、一般に傾斜圧延方式により製造される。すなわち、ビレットを穿孔圧延機で穿孔して中空素管とし、プラグミルあるいはマンドレルミルで圧延し、再加熱後ストレッチレデューサーにより外径圧下と若干の肉厚圧下して製品寸法にして、通常焼入れ、焼戻し処理をおこない調質される。
【0004】
最近では、製造コストダウンが追求され、生産効率を上げるためにビレットは連続鋳造(以下、ラウンドCCと記す)ビレットの適用がなされている。しかしながら、ラウンドCCを適用する場合、タンディシュから鋳型に溶鋼を注ぐためのノズルは小径となるためノズル詰まりが発生しやすい。これを防止するためにCaが添加されるが、このCaが耐SSC性を低下させる起因になっていることがわかってきた。耐SSC性が低下する機構は、油井環境で使用中にCa系介在物が溶けて孔食が発生し、この孔食が応力集中源となってSSCの発生を加速するものと推定される。
【0005】
これまでの研究によって、耐SSC性を向上させる鋼の化学組成と熱処理条件については、かなりの知見が得られており、それらに基づいて耐SSC性に優れた鋼が、開発されてきた。例えば、マルテンサイト組織が80〜90%以上の鋼、高温焼戻し鋼、細粒組織の鋼、高降伏比鋼および粗大な炭化物を含まない鋼等である。しかし、これらの鋼をラウンドCC法により丸ビレットにして上記方法により継目無鋼管を製造する場合は、Ca系介在物によって耐SSC性が低下して使用に耐えなくなる場合が生じることがわかってきた。
【0006】
しかし、ラウンドCC時にCaを使用する場合に生じる耐SSC性の低下に対して有効な対策がないのが現状である。Caを使用しないのでは連続鋳造でのラウンドCCの適用、さらにその連々比率のアップという生産効率向上が達成できない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、生産効率のよいラウンドCCにより製造可能な耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用鋼とその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記の課題を解消するにあたり、ラウンドCC−継目無製管−オフラインあるいはインライン熱処理を適用した種々の化学組成と、90〜125ksi(620〜862MPa)の強度を有する油井用鋼管を製造し、それらの耐SSC性を調査して、耐SSC性とCa系介在物組成の相関を調べることにより下記の知見を得るに至った。特に、Ca系介在物の組成分析に、後述するように高度な分別定量法を適用した。
【0009】
a)Caを添加して鋼中にCaが5ppm以上残留すると、Ca系非金属介在物は、主として、CaとAlの複合酸化物(以下、Ca−Al−Oと記す)、CaOおよびCaSからなる。
【0010】
b)Ca系非金属介在物は、いずれも、NACE TM0177浴(NaCl+CH3COOH溶液)[以下、NACE浴と記す]のような酸溶液中では溶解して孔食となり、応力集中源となる。
【0011】
c)Ca−Al−Oは、CaO及びCaSに比べて大きい。そのおおよその大きさは、Ca−Al−Oが数十μm、CaO及びCaSは数μmである。
【0012】
d)Ca−Al−Oの相対比が高いほど、Ca系非金属介在物は大きい傾向を示す。
【0013】
e)Ca−Al−Oが50%未満と少ない鋼が、耐SSC性が良好である。
【0014】
f)特に、硬度との関係において以下の式を満足する鋼は、NACE TM0177 METHOD A(単軸引張試験)で、NACE浴中で規格最小降伏応力の85%の付加応力で破断を生じない。
【0015】
100−X≦120−(10/3)×HRC
ただし、21≦HRC≦30
g)脱酸が過剰となると、Al過多となって、Ca−Al−Oが生成されやすくなる。また、CaOが生成しにくくなる。
【0016】
h)一方、脱酸が不足すると、MnSが生成して耐SSC性が低下する。
【0017】
i)脱硫が過剰となると、Ca過多となって、Ca−Al−Oが生成されやすくなる。
【0018】
j)また、脱硫が不足すると、MnSが生成するとともに、多量のCaが必要とされ、Ca系介在物も増加するので、やはり、耐SSC性が低下する。
【0019】
k)適正な介在物組成は、Ca、Al、O、Sを以下の範囲とすることにより得られる。
【0020】
-0.005≦(Ca/40-S/32)×sol.Al×TotalO×1000000≦0.0042
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
【0021】
(1)質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜2.5%、P:0.025%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.001〜0.1%、Ca:0.0005〜0.005%を含有し、Ca系非金属介在物の組成が、CaSとCaOとの合計が50質量%以上であり、CaとAlの複合酸化物が50質量%未満であり、かつ鋼の硬さがHRCで21〜30の範囲内で、鋼の硬さおよびCaOとCaSの合計量X(質量%)が下記式(1)を満足している耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用鋼。
【0022】
100−X≦120−(10/3)×HRC ・・・(1)
(2)上記(1)の鋼の製造に際し、転炉出鋼後から、鋳造までの間に溶鋼にCaまたはCa含有物質を添加し、溶鋼中にCaを0.0005〜0.005質量%含有させるとともに、鋼中S、Al、CaおよびTotalO(酸素)が下記式(2)を満足するように制御する上記(1)の耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用鋼の製造方法。
【0023】
−0.005≦(Ca/40−S/32)×sol.Al×TotalO×1000000≦0.0042・・(2)
ここで、式中の元素記号は、その元素の含有量(質量%)を示す。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の油井用鋼の化学組成を規定した理由について説明する。なお、以下%表示は全て質量%とする。
【0025】
C:
Cは、鋼管の強度を確保するために必要な元素で、0.15%未満では焼入性が不足して、焼戻し温度を低下させ、必要とする性能を確保することが難しい。また、0.35%を超えると焼き割れが発生し、さらに靱性も劣化するのでめ0.15〜0.35%とする。望ましくは、0.2〜0.3%である。
【0026】
Si:
Siは、脱酸を目的に添加する。また、焼戻軟化抵抗をたかめて強度上昇にも寄与する。脱酸の目的では0.1%以上含有させる必要がある。また、1.5%を超えて含有させると、熱間加工性が著しく乏しくなるので上限を1.5%とした。望ましくは、0.1〜0.5%である。
【0027】
Mn:
Mnは、鋼の焼入性を増し、鋼管の強度確保に有効な元素である。0.1%未満では焼入性の不足によって強度、靱性ともに低下する。一方、2.5%を超えて含有させる場合は、偏析が増して靱性を低下させるため、上限2.5%とした。望ましくは、0.2〜1%である。
【0028】
P:
Pは、不純物として鋼中に不可避的に存在する。0.025%を超えると、粒界に偏析して靱性を低下させるので0.025%以下とする。低ければ低いほど望ましい。
【0029】
S:
Sは、MnまたはCaと結合し介在物を形成して熱間圧延で延伸する。その含有量が多いと靱性が低下するので、0.004%以下とする。低ければ低いほど望ましい。
【0030】
sol.Al:
Alは、脱酸のために必要な元素であり、sol.Alで0.001%以下の含有量では、脱酸不足によって鋼質が劣化し、靱性が低下する。しかし、0.1%を超えて含有させると、かえって靱性の低下を招くため好ましくない。従って0.001〜0.1%とする。ただし、Ca、S、その他の元素との兼ね合いで、過剰なAlは、Ca−Al−Oを生成しやすくする。望ましくは、0.01〜0.05%である。
【0031】
Ca:
Caは、連続鋳造におけるノズル詰まりを防止するために含有させる。その効果を得るには0.0005%以上含有させる必要がある。また、Ca量がこれ以下ではCa系非金属介在物に起因したSSCの問題がないことから、Caの下限は0.0005%となる。また、含有量が0.005%を超えると個の清浄性が低下して靱性劣化を招く。したがって、Ca含有量は、0.0005〜0.005%とした。望ましくは0.008〜0.004%である。また、Caは割れの起点となる延伸しやすいMnSの生成を防いで、Sを圧延によって伸びにくく、かつ微細なCaSとする効果もある。
【0032】
本発明の油井用鋼は、少なくとも上記の元素を含有しておればよいが、さらに、必要により以下の元素を含有させてもよい。
【0033】
Cr:
Crは、焼入性を高めるのに有用な元素であるが、他の元素により最低限の焼入性が確保される場合、含有させなくてもよい。しかし、より厚肉の鋼管を製造する場合に含有させると有利である。含有させる場合、Cr含有量を0.1%以上にすると焼入性、および焼戻軟化抵抗を高める効果がある。また、1.5%を超える量を含有させる場合、靱性が劣化する。よってCrを含有させる場合は0.1〜1.5%とする。望ましくは、0.2〜1.2%である。
【0034】
Mo:
Moは、厚肉の鋼管を製造する場合に、焼入性および焼戻軟化抵抗を高めることを目的として含有させるのが好ましい。また、耐サワー性能を向上させる効果もある。含有させる場合、0.1%未満では効果が現れないので、0.1%以上含有させるのが望ましい。また、1%を超えると靱性が悪化するため1%以下とするのがよい。望ましくは、0.2〜0.8%である。
【0035】
Nb:
Nbは、オフライン熱処理プロセスでは、再加熱時に結晶粒の成長をピンニング効果で抑制して、オーステナイト粒の細粒化に有効である。含有させる場合は、0.01%未満では効果が現れないので、0.01%以上含有させることが望ましい。望ましくは、0.015〜0.05%である。
【0036】
一方、最終圧延後Ar3点以上の温度に保持したまま焼入するインライン熱処理プロセスにおいては、そのような効果はないばかりか、もし、含有している場合は、焼入れ時にほとんどのNbCが析出せず、焼戻し時に析出するという、オフライン熱処理とは全く異なった析出挙動をするので、強度に大きく影響する。特に、継目無鋼管においては、工具と接触する表面層と肉厚中央部では温度差が必ず生じ、この温度差に起因してNbの固溶量が肉厚方向の位置により変化し、強度にバラツキを発生する。しがって、固溶Nbをほぼ0にすることが望まれるので、0.005%未満とするのがよく、望ましくは、0.003%以下である。
【0037】
V:
Vは、耐SSC性を高めるのに有効な元素である。Vは、含有させると二次析出強化により強度を高める効果があり、所定の強度を得る場合により高温で焼戻すことができ、これが耐SSC性の向上に寄与する。また、オーステナイト領域でのVCの溶解度が大きいため、インラインでの焼入れ時に全て固溶しており、強度バラツキの原因にはならない。含有量が、0.01%未満ではその効果がなく、0.3%を超えて含有させると靱性が大きく劣化する。よって含有させる場合は0.01〜0.3%とする。望ましくは、0.02〜0.2%である。
【0038】
Ti:
Tiは、含有させるとNとの結合力が強く、高温から安定なTiNを形成し、Nを固定する効果がある。0.005%未満ではその効果がない。一方、0.05%を超えて多量に含有させると、TiCが最終圧延温度域で析出し始めるため、Nbと同様に強度バラツキの原因となる。よって含有させる場合は、0.005〜0.05%とする。望ましくは、0.01〜0.03%である。
【0039】
W:
Wは、Moと同様、焼入性を改善し高強度を得ることができると共に、焼戻軟化抵抗を高めて耐SSC性を向上させる効果があり、必要により含有させる。含有量が1%を超えると効果が飽和するので、含有量の上限は1%とするのがよい。
【0040】
B:
Bは、含有させると著しく焼入性が向上するので、厚肉の鋼管を製造する際に含有させることにより、要求強度を確保できる。含有させる場合は、0.0030%以上にすると、粒界に炭窒化物が析出しやすくなり、靱性劣化の原因となるため、上限を0.003%とするのがよい。
【0041】
Mg:
Mgは、含有させると鋼中のSと反応して溶鋼中で硫酸化物を生成する。この硫酸化物は圧延加工後も球状であり、圧延方向に伸びることがない。このため、圧延直角方向の衝撃性質を向上させ、さらには水素誘起割れを抑制する作用もある。含有量が0.005%以上になると鋼中の介在物量が増え、清浄度が低下し、種々の性能が低下するため、0.005%以下とするのがよい。
【0042】
N:
Nは、不可避的に鋼中に存在する。NはAl、TiやNbと結合して窒化物を形成する。特に、AlNやTiNが多量に析出すると、靱性や耐SSC性、耐HIC性に悪影響を及ぼすため、0.008%以下とするのがよい。
【0043】
Zr:
Zrは、含有させるとTiと同様、鋼中の不純物であるNを窒化物として固定するので、Bの焼入性を十分確保できる。また、炭化物を形成し難いので、強度バラツキの原因とはならない。一方、含有量が0.1%を超えると、介在物が増加して靱性が低下するので、含有量の上限は0.1%とするのがよい。
【0044】
O:
Oは、不可避的に鋼中に存在する。Oは、AlやTiと結合して酸化物を形成する。特に、Al2O3が多量に析出すると、靱性に悪影響を及ぼすため、0.008%以下とするのが好ましい。また、Ca、S、Al、その他の元素との兼ね合いで、過剰なOは、Ca−Al−Oを生成しやすくするので、低ければ低いほど望ましい。
【0045】
以下、非金属介在物について説明する。
【0046】
Ca系非金属介在物の内、CaOとCaSの合計が50%以上:
Ca系非金属介在物は、比較的大型のCa−Al−O、比較的小型のCaO及びCaSからなり、CaOおよびCaSの和の相対比が高いほど、全体としてCa系非金属介在物は小さい傾向を示す。CaOおよびCaSの合計が50%以上、言い換えると、残部のCa−Al−Oが50%未満と少ないと、耐SSC性が改善される。
【0047】
連続鋳造で丸ビレットを鋳造する際、Caを溶鋼に添加していく課程で、介在物の組成はAl2O3 から、ます有害な大型のCa−Al−Oとなって、さらにCaが添加されていくとCa−Al−Oの複合介在物から単体のCaOが分離し、そのCaOが即座にSと反応してCaSとなる。すなわち、CaSが少ないと有害なMnSが残存して耐硫化物応力割れ性を劣化させる可能性がある。また、CaSが少ないと有害な大型のCa−Al−Oから、無害なCaOやCaSへの反応が進んでいないことを意味するので、結果として耐硫化物応力割れ性が劣る。したがって、CaSは10%を超える量とするのが好ましい。
【0048】
鋼の硬さとCaO+CaS量(X):
鋼の硬さは、21≦HRC≦30とし、鋼の硬さ(HRC)とCaO+CaS量Xが下記の式を満足させる必要がある。
【0049】
100−X≦120−(10/3)×HRC
ここで、XはCaO+CaS量(質量%)である。
【0050】
なお、HRC30を超える高強度油井管においては、上記の式で整理できない。それは、SSC感受性が極めて高くなるので、Ca系非金属介在物組成以外に、合金元素組成、組織および熱処理条件等々が密接に関係した結果であると考えられる。また、HRCが21未満では油井用鋼(油井管)として必要な達しないため、硬度は21以上にする必要がある。
【0051】
次に、製造方法について説明する。
【0052】
溶鋼へのCa添加方法:
Ca含有物質を添加する精錬段階および添加方法は限定しない。ただし、Ca含有物質はCa純分で0.01以上1.1kg/溶鋼トン以下が好ましい。0.01kg/溶鋼トン未満では、溶鋼中Ca濃度を高め、かつ介在物中CaO濃度を十分に高めることが困難である。1.1kg/溶鋼トンを超えて高くすると、Ca系非金属介在物の組成をCa−Al−Oとして50%未満にすることができず、Ca−Al−O濃度が過剰となりやすい。
【0053】
ノズル詰まりを防止するためには、転炉出鋼後から鋳造までの間にCa添加をおこなえばよい。Ca添加は、取鍋内溶鋼へCa含有物質へ添加する方法、連続鋳造時にタンディッシュ内溶鋼へCa含有物質を添加する方法、タンディッシュへCa含有物質を入れ置きする方法がある。
【0054】
-0.005≦(Ca/40-S/32)×sol.Al×TotalO×1000000≦0.0042:
鋼中のS、sol.AlおよびTotalOが、上式で0.0042を超えると、過剰なCaが残っている上に、AlおよびOが多く、Ca−Al−Oが著しく増加して耐SSC性が低下する。一方、上記の式で−0.005を下回るとMnSによって耐SSC性が低下するので、−0.005〜0.0042と定めた。望ましくは、0〜0.0036である。
【0055】
Ca系介在物の形態別定量法は、詳しくは鉄と鋼、vol.82(1996)、No.12、p.53に記載されている。
【0056】
無水メタノールを使用してAr雰囲気のグローブボックス中で作業するという水分対策を施せば、臭素−メタノール法により、Ca−Al−Oが定量的に抽出される。また、AA(アセチルアセトン)系電解法によりCa−Al−OとCaSが定量的に抽出される。すなわち、Ca−Al−Oは、臭素−メタノール抽出残さ中の金属成分を酸化物換算することにより、また、CaSは、AA系電解抽出残さとは臭素−メタノール抽出残さのCa分析値の差をCa as CaSとして求めることが出来る。
【0057】
CaOは抽出できないが、鋼中酸素は酸化物として存在し、酸化物はCa−Al−OとCaOであることを利用して、鋼中酸素量と臭素−メタノール抽出残さ中金属成分の酸化物換算酸素量との差を、O as CaOとして算出することが出来る。
【0058】
具体的な計算式は以下の通りである。
[Ca-Al-O]=[Ca(1)]×56.06/40.08+[Al]×101.96/53.96+[Mg]×40.31/24.31+[Zr]× 123.22/91.22
[CaS]=([Ca(2)]-[Ca(1)])×72.14/40.08
[CaO]=[TotalO]-([Ca(1)]×16.00/40.08+[Al]×48.00/53.96+[Mg]×16.00/24.31+ [Zr]×32.00/91.22}×56.08/16.00)
ここで、
[Ca(1) ]:グローブボックス中臭素−無水メタノール抽出残さ中Ca量
[Ca(2) ]:AA系電解抽出残さ中Ca量
[TotalO]:鋼中酸素量 とする。
【0059】
連続鋳造した鋼は、前述した通常マンネスマン方式により継目無鋼管にし、焼入れ、焼戻し処理により調質して使用する。
【0060】
熱処理について、以下に説明する。
【0061】
インラインで直接焼入れ、焼戻しする場合は、最終圧延温度が950℃未満の場合は、伸展粒組織となり、靱性や耐SSC性に異方性が生じ、その後の補熱でも解消されないので、また、1100℃を超える最終圧延温度では、結晶粒度が著しく粗大化して、その後の補熱によっても細粒とならないので、最終圧延温度は950℃〜1100℃とするのが好ましい。
【0062】
鋼管全体を均熱化して温度ムラを解消すると同時に細粒化によって、強度バラツキの解消と耐SSC性向上させるために、圧延後に補熱処理を施す場合、補熱温度が950℃を超えると、粗粒のままなので、靱性及び耐SSC性が芳しくない。また、Ar3点未満となると、初析フェライトが析出して完全マルテンサイト組織が得られない。そこで補熱温度はAr3点以上950℃以下とするのが好ましい。望ましくは920℃以下である。
【0063】
焼戻温度は、耐SSC性の観点からは、焼戻温度が高い方が望ましい。望ましくは、680℃以上である。しかし、Ac1点を超えると著しく軟化するので、Ac1点未満とする必要がある。
【0064】
つぎにオフラインで焼入れ、焼戻し処理する場合は、加熱温度が980℃を超えると、粗粒となって靱性及び耐SSC性が低下する。また、Ac3点未満では完全にオーステナイト化しないので、焼き入れたときに均一な組織が得られない。そこで加熱温度はAc3点以上980℃未満とするのがよく。望ましくは950℃以下である。
【0065】
焼戻温度は、耐SSC性の観点からは、焼戻温度が高い方が望ましい。望ましくは、680℃以上である。しかし、Ac1点を超えると著しく軟化するので、Ac1点未満とするのがよい。
【0066】
【実施例】
表1に示す化学組成の記号A1〜Fの鋼を溶製し、丸ビレットに連続鋳造した。各鋼はいずれも連続鋳造時に、順次タンディッシュ内にて、Caその他の成分を調整した。
【0067】
【表1】
その後、実ビレットからマンネスマン・マンドレルミル方式の製管法により、外径244.5mm、肉厚13.8mmの継目無鋼管を製造し、表2に示す温度で焼入れ、焼戻しの熱処理を施した。
【0068】
【表2】
次に、熱処理後の継目無鋼管から、平行部が6.35φ×25.4mmの引張試験片を各2本採取して、NACE TM0177 Method Aに従ってSSC試験を実施した。すなわち、1気圧の硫化水素が飽和した25℃の0.5%酢酸+5%食塩水中で、それぞれ規格最小降伏応力(SYS)の85%の応力を付加して、単軸引張試験を実施した。720hの試験期間内に破断しないものを耐SSC性良好とした(1つでも破断したものは不芳とした)。
【0069】
いずれの試験片も、SSC試験後にその試験片でHRC硬さ測定を実施した。硬さは3点測定の平均値である。
【0070】
これらの結果を表2に示す。代表的な耐SSC性の試験結果について以下に説明する。
【0071】
記号A1〜A3において、記号A3はSが高く、耐SSC性が不芳である。破面にはMnSが観察されたので、MnS起点のSSCと思われる。
【0072】
記号B1〜B4において、記号B2は、Ca介在物の溶け落ちた孔食を起点にSSCを発生した。Ca介在物組成と硬度との関係が請求範囲外である。記号B4は、RCC時ににCa過多により、Ca−Al−Oが多くCa系非金属介在物組成が外れた。焼戻温度を高くして硬度を低めに制御したが、それでもSSCを発生した。
【0073】
記号C1〜C3において、試番C3は、Ca介在物の溶け落ちた孔食を起点にSSCを発生した。RCC時に、Al過多により、Ca−Al−Oが多く生成してしまった。
【0074】
記号D1〜D3において、記号D3は、RCC時に、O過多により、Ca−Al−Oが多く生成してしまった。耐SSC性はやはり不芳であった。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用鋼が得られ、油井やガス井のケーシングやチュービング、掘削用のドリルパイプ等に用いて優れた効果を発揮する。さらに、製造方法においてラウンドCCを適用することができ、連々比率を上げて、製造コストを下げることができる
Claims (2)
- 質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜2.5%、P:0.025%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.001〜0.1%、Ca:0.0005〜0.005%を含有し、Ca系非金属介在物の組成が、CaSとCaOとの合計が50質量%以上であり、CaとAlの複合酸化物が50質量%未満であり、かつ鋼の硬さがHRCで21〜30の範囲内で、鋼の硬さおよびCaOとCaSの合計量X(質量%)が下記式(1)を満足していることを特徴とする耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用鋼。
100−X≦120−(10/3)×HRC ・・・(1) - 請求項1に記載の鋼の製造に際し、転炉出鋼後から、鋳造までの間に溶鋼にCaまたはCa含有物質を添加し、溶鋼中にCaを0.0005〜0.005質量%含有させるとともに、鋼中S、Al、CaおよびTotalO(酸素)が下記式(2)を満足するように制御することを特徴とする、請求項1に記載の耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用鋼の製造方法。
−0.005≦(Ca/40−S/32)×sol.Al×TotalO×1000000≦0.0042・・(2)
ここで、式中の元素記号は、その元素の含有量(質量%)を示す。
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