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JP3597761B2 - イオンビーム装置及び試料加工方法 - Google Patents

イオンビーム装置及び試料加工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はイオンビーム装置に関し、特に、試料の加工に用いるイオンビーム装置及び試料加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の集束イオンビームを用いるイオンビーム装置の代表的な例として、特許2765829号に記載されている集束イオンビーム加工装置がある。その装置の概要を図23に示す。イオン発生手段201から放出されたイオンは集束手段202及び照射手段203により試料206上に集束される。制限絞り204はビーム径を決めるものである。この装置では集束手段と照射手段のレンズ強度の組み合わせにより3つのモード、つまりA、B及びCモードを設定し、その時のそれぞれのレンズ電圧をレンズ制御手段208に記憶して使用する。ビーム偏向手段205により集束ビームA、B及びCの試料206上での照射位置ずれを補正する。本装置は、試料206の加工に使用する集束イオンビームのビーム径及びビーム電流を選択することは可能であるが、加工用イオンビームとしては像分解能が最大となるビーム集束状態の集束イオンビーム一本であった。
【0003】
また、集束イオンビームのビーム分布に着目した加工方法の代表的な例として、特開平2−61954号公報に記載されている加工方法がある。この方法は、ターゲットに焦点を合わせた集束イオンビームのビーム分布をナイフエッジ法により測定し、この測定データに従ってシミュレーションを行い、イオンのドーズ量を補正することで加工深さを安定させて加工の信頼性を向上させる加工方法である。加工速度はイオンビームのビーム分布に依存する。従って、静電レンズへの電圧設定のばらつきによるビーム分布の変動に起因する加工深さのばらつきに配慮し、加工深さを加工毎に同じになるようにして加工歩留まりを向上させている。
【0004】
成形イオンビームを用いたイオンビーム装置の代表的な例として、特開平9−186138号公報に記載されているイオンビーム加工装置がある。この装置の概要を図24に示す。引き出し電極302によりイオン発生手段301から放出されたイオンは、ビーム制限アパーチャ303によりビーム発散角を変えられる。成形イオンビーム313は集束点が投射レンズ307の中心付近に来るように集束手段304のレンズ強度を調整し、かつマスク306を試料309に投射するように照射手段307のレンズ強度を調整する。集束イオンビーム312は、イオンビームをビーム偏向手段305でマスク306上を走査し、かつビーム偏向手段308で試料309上を走査することで試料309上に投影したマスク306の像から、集束イオンビーム312の中間集束点がマスク306上に来るように集束手段304のレンズ強度を再調整することで得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の集束イオンビーム加工装置では、ビーム電流は最大で十数nAであったため、イオンビームの分布の裾広がりの影響は実用上問題とはならなかった。加工スループットを向上させるには、より大きな電流のイオンビームが必要であるが、加工用イオンビームの電流が大きくなるにつれてビーム分布の裾広がりが大きくなり、加工領域の断面エッジ部のだれが顕著になり高加工位置精度が実現できなくなるという問題がある。
【0006】
特開平2−61954号公報に記載されている加工方法では、ビーム分布の測定結果に基づいてビーム分布の変更、即ちレンズ電圧の変更は行わない。また、加工領域の断面エッジ部の形状を所望の加工に応じて最適化するビーム分布については明記されていない。従って、断面エッジ部をシャープに加工できるビーム分布が得られないため断面エッジ部の最適加工及び高加工位置精度の実現はできなかった。また、シミュレーションを用いるため計算時間が掛かり、応答の速い制御ができないという問題もあった。
【0007】
また、従来の成形イオンビームを用いたイオンビーム装置は、加工に成形イオンビームを用いることで集束イオンビームと同等、又はそれ以上の断面エッジシャープネスを持ちながら、大電流による高スループットを実現したが、観察用の集束イオンビームが絞れない、また観察用の集束イオンビームと加工用の成形イオンビームの位置ずれが生じる問題があった。観察用の集束イオンビームが絞れない、すなわちビーム切り替え時の集束ビーム径が大きくなる問題は、ビーム制限アパーチャの挿入でビーム発散角を変えることで回避した。また観察用の集束イオンビームと加工用の成形イオンビームとの位置ずれ問題は、集束イオンビームの集束点をステンシルマスク上にして、かつマスクの移動により集束イオンビームと加工用の成形イオンビームとの位置ずれを補正することで回避した。しかし、ビーム制限アパーチャの設定精度、つまりアパーチャがイオンビーム光学系の光軸上に来ているのかどうかの確認が困難であり、この設定精度に起因する観察用集束イオンビームと加工用成形イオンビームとの位置ずれ問題が残っていた。また、機械駆動部がビーム制限アパーチャとマスクの2箇所となることで上記両イオンビームの位置ずれが大きくなる問題が生じた。また、ビーム制限アパーチャとビーム偏向手段の2つの機構が装置構成要素として必要であった。
【0008】
このように、従来の集束イオンビームを用いたイオンビーム装置及びイオンビーム加工方法では、ビーム電流を大電流化してスループットを高くすると加工位置精度(断面エッジシャープネスも含める)が低下し、ビーム電流を減少させて加工位置精度を高くするとスループットが低下するという問題があった。また、従来の成形イオンビームを用いたイオンビーム装置でも、観察用の集束イオンビームと加工用の成形イオンビームの照射位置を高精度で一致させられないため、高スループットではあるが加工位置精度が低下する問題があった。また、装置構成要素が多いという問題もあった。
本発明の目的はこれらの問題を解決し、高スループットと高加工位置精度の両者を実現するイオンビーム装置及び試料加工方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、加工に用いるイオンビームを走査イオン顕微鏡(Scanning Ion Microscope:SIM)像の分解能(以後、像分解能と呼ぶ)が高いビーム集束状態のイオンビーム(以後、集束加工用イオンビームと呼ぶ)と加工領域の断面エッジ部がシャープに加工できるイオンビーム(以後、エッジ加工用イオンビームと呼ぶ)の二種類を用意し、これら二種類の加工用イオンビームを加工対象、ビーム電流に応じて使い分けることにより、高スループットと高加工位置精度を両立させる。
【0010】
本発明の対象となるイオンビーム装置には、(1)開口部の形状が円である制限アパーチャを具備し、エッジ加工用イオンビームは、最小錯乱円の位置が試料の表面にほぼ一致するビーム集束状態の集束イオンビームであるイオンビーム装置と、(2)開口部の形状が円を含む任意形状であるマスクを具備し、エッジ加工用イオンビームは、その断面がマスクの開口形状をした成形イオンビームであるイオンビーム装置とがある。次に、この2つの装置についてそれぞれ説明する。
【0011】
1.開口部の形状が円である制限アパーチャを具備するイオンビーム装置
図2に、本発明の一形態によるイオンビーム加工装置の概略構成図を示す。集束手段2によりイオン発生手段1からイオンを引き出し、集束して形成したイオンビームは制限絞り3により所望のビーム電流が選択され、照射手段5により試料ステージ8に載置された試料16に照射される。イオンビームをビーム偏向手段4により走査し、試料16から発生する二次粒子13を二次粒子検出手段6で検出し、その検出した信号を制御手段7でイオンビームの走査と同期させることで、表示装置28上に試料16の表面のSIM像を表示できる。試料16の加工は、制御手段7によりイオンビームを加工用イオンビームに切り替えて行う。
【0012】
ここで、加工による断面エッジ部のだれの最小化の観点からは、同じビーム電流の加工用イオンビームであってもビーム径(あるいはビーム半値幅)が増大してもビーム分布の裾広がりが小さいイオンビームを用いる方が望ましい。従って、加工用イオンビームとしては、制御手段7により集束手段2と照射手段5、あるいは照射手段5のみを制御して、像分解能が高いビーム集束状態の集束加工用イオンビーム11とビーム分布の裾広がりを抑えて加工試料の断面エッジ部をシャープに加工できるエッジ加工用イオンビーム12の二種類を用いる。この二種類の加工用イオンビームをビーム電流に応じて制御手段7により切り替えて使用する。
【0013】
ビーム分布の裾広がりの影響が実用上無視できなくなるビーム電流の値は光学系により変化し、例えば、前記した特許第2765829号に記載されている集束手段の静電レンズと照射手段の静電レンズによる2段レンズ構成の光学系では、この値は10〜20nAの間に存在する。イオンビーム加工において前記したビーム分布の裾広がりの影響が実用上無視できなくなるビーム電流値を特定値として予め制御手段7に記憶し、この特定値以上の大電流イオンビームに対してはエッジ加工用イオンビーム12を使用することでビーム分布の裾広がりを大きく抑えることができ、高加工位置精度を確保できる。また、エッジ加工用イオンビーム12の採用により、100nA程度までの大電流のイオンビームが使用可能となり、更なる高スループットを実現できる。
【0014】
図2に示すように、SIM像観察は主にビーム電流が100pA以下に制限された像分解能が最大となるビーム集束状態の観察用イオンビーム9を使用する。制限絞り3よりイオン発生手段1側のイオンビームに着目すると、加工用イオンビーム(集束加工用イオンビーム11及びエッジ加工用イオンビーム12)は集束手段2によりイオンビームを制限絞りの開口部へと集束しているが、観察用イオンビーム9は集束手段2でイオンビームを集束せずに発散状態のままである。従って、制限絞り3の開口部の面積が同一であっても、この開口部を通過するイオンビームは、集束加工用イオンビーム11よりも観察用イオンビームの方が遥かに少なくなる。適切な開口径を選択することで、100pA以下の観察用イオンビーム9が形成できる。
【0015】
図3に、加工用イオンビームが集束イオンビームである本発明のイオンビーム装置の概略構成図を示す。照射手段5は静電レンズで構成された対物レンズであり、集束加工用イオンビーム11とエッジ加工用イオンビーム12の切り替えは対物レンズのレンズ電圧を切り替えることで行う。イオンビームの切り替えをレンズ電圧の切り替えで行うのは、応答性の優れた制御を行うためである。制限絞り3には加工用イオンビームのビーム電流が前記した特定値(イオンビーム加工においてビーム分布の裾広がりの影響が実用上無視できなくなるビーム電流値)以上得られる開口面積を持った開口部14を少なくとも一つ以上具備している。
【0016】
図4を用いて、本発明のイオンビーム装置における加工用イオンビームについて説明する。図4は、集束イオンビームの試料表面18近傍でのビーム軌道を示す。集束加工用イオンビーム11とエッジ加工用イオンビーム12とでは、試料16の表面18でのビーム集束状態が異なる。集束イオンビームの光軸10を垂直に横切る面のうち、像分解能が最大となるガウス像面17と、ビーム径が最小となる最小錯乱円を形成する面15とに着目する。ここでの集束加工用イオンビーム11は図4(a)に示すように試料表面18とガウス像面17とがほぼ一致するイオンビームであり、エッジ加工用イオンビーム12は図4(b)に示すように試料表面18と最小錯乱円を形成する面15とがほぼ一致するイオンビームである。従来装置で使用されていた加工用イオンビームは、集束加工用イオンビーム11に相当する。
【0017】
ガウス像面17では、イオンビームの光軸10近傍はイオン電流密度が高いが、その周辺にはイオン電流密度の低い収差に起因するイオンビームの裾が広がっている。ビーム電流が少ない場合にはこの裾による悪影響は無視できたが、ビーム電流が増加するにつれ裾の影響が顕著になり、加工領域の断面エッジ部のだれとなって現れてくる。この裾の影響が最も少ないのが最小錯乱円を形成する面15であり、試料表面18と最小錯乱円を形成する面15とをほぼ一致させて加工すると、加工領域の断面エッジ部のだれを最小にすることが可能である。このビーム集束状態のイオンビームをエッジ加工用イオンビームとして採用することにより、加工領域の断面エッジ部のだれの問題に応える。この効果が顕著に現れてくるビーム電流の境界は、前記したように例えば10〜20nAの間に存在し、前記した特許第2765829号に記載されている集束手段の静電レンズと照射手段の静電レンズによる2段レンズ構成の光学系では、ビーム電流が15nA近傍である。
【0018】
このエッジ加工用イオンビーム12は、像分解能が最大となる対物レンズのレンズ電圧から電圧を少し下げる方向に補正することで形成できる。この電圧補正量は、イオンビーム光学系を構成する各要素の配置寸法と開口部14の大きさ、あるいはビーム電流、あるいはビーム開き角、あるいはビーム径との間にある関係から(例えば、関数として)求められる。具体的な関係は後で述べる。この関係を予め求めておき、制御手段7に記憶しておく。例えば、ビーム電流に着目すると、ビーム電流は図3に示すようにビーム電流計測手段23を具備することで容易に、かつリアルタイムで測定できる。この測定値を基に、制御手段7で予め記憶した関係から電圧補正量を算出し、対物レンズ5のレンズ電圧を補正してエッジ加工用イオンビーム12を容易に、かつリアルタイムで形成できる。
【0019】
試料表面のSIM像は、制御手段7を経由して表示手段28に表示する。従来のビーム電流が大きくないイオンビームでは、SIM像を観察した際の試料表面の損傷は無視できる程度であったため、加工領域の設定に利用するSIM像の取得に用いるイオンビームは、実加工のイオンビームと同一であった。従って、設定した加工領域と実際の加工との間には実用上無視できないずれは生じなかった。しかし、イオンビームの大電流化に伴い、大電流イオンビームでSIM像を観察した際の試料表面の損傷が実用上無視できなくなり、同一のイオンビームで加工領域の設定に利用するSIM像の取得と実加工を行うことができなくなった。結果として、設定した加工領域と実際の加工との間に実用上無視できないずれが生じた。また、エッジ加工用イオンビーム12はビーム分布の裾広がりを最小化した代わりに像分解能が劣化しているため、このエッジ加工用イオンビーム12でSIM像観察を行っても必要な像分解能が得られず、同一のエッジ加工用イオンビーム12で加工領域の設定に利用するSIM像の取得と実加工を行ったとしても位置合わせ精度が出ないという問題が生じた。
【0020】
SIM像を観察した際の試料表面の損傷問題及び像分解能の問題に対しては、加工領域の設定に利用するSIM像の観察をビーム電流が少なく、かつ像分解能の高い観察用イオンビーム9を用いれば解決できる。しかしながら、観察用イオンビーム9とエッジ加工用イオンビーム12とはレンズ電圧、制限絞り開口径等のビーム照射条件が大きく異なるため、試料上での照射位置ずれが生じる問題が残った。この問題は、以下のようにして解決する。同一のビーム電流を持つ加工用イオンビームに対して、集束加工用イオンビーム11とエッジ加工用イオンビーム12とでは照射手段5の対物レンズ電圧が僅かに異なるだけであるから、試料上での照射位置ずれは実用上無視できる。これを利用して、観察用イオンビーム9とエッジ加工用イオンビーム12との試料上での照射位置合わせには加工用イオンビームに像分解能の高い集束加工用イオンビーム11を使用する。
【0021】
図5を用いて、その位置合わせ補正の方法について説明する。予め、試料16上の任意の目標物を観察用イオンビーム9と集束加工用イオンビーム11とにより各々SIM像観察し、この目標物の各々のSIM像間にあるずれ量から観察用イオンビーム9と集束加工用イオンビーム11とのずれ補正量24を測定する。このずれ補正量24を予め制御手段7に記憶し、このずれ補正量24を基にイオンビームの照射位置を図5(a)から図5(b)のように観察用イオンビーム9と集束加工用イオンビーム11との試料上での照射位置が同一となるように制御手段7で補正する。これにより、観察用イオンビーム9と集束加工用イオンビーム11との試料上での照射位置を一致させれば、観察用イオンビーム9とエッジ加工用イオンビーム12との試料上での照射位置も一致する訳である。
【0022】
以上説明してきた、試料表面18と最小錯乱円を形成する面15とがほぼ一致するエッジ加工用イオンビーム12の形成は、像分解能が最大となる対物レンズのレンズ電圧から電圧を少し下げる方向に補正する代わりに、集束手段2(静電レンズで構成された集束レンズ)を用いて、像分解能が最大となる集束レンズのレンズ電圧から電圧を少し下げる方向に補正することでも形成できる。
【0023】
また、観察用イオンビーム9とエッジ加工用イオンビーム12との試料上での照射位置合わせも、同一のビーム電流を持つ加工用イオンビームに対して、集束加工用イオンビーム11とエッジ加工用イオンビーム12とでは集束手段2の集束レンズ電圧が僅かに異なるだけであるから、試料上での照射位置ずれは実用上無視できることを利用して、上記と同様に照射位置合わせができる。
【0024】
図6を用いて加工領域の設定を説明する。観察用イオンビーム9を用いて観察したSIM像101を画像メモリに保存する。このSIM像101を表示手段28であるCRT上に表示し、所望の加工領域102を設定する。保存したSIM像101と加工領域102とを重ねて表示する。加工したい領域は加工領域102であるが、エッジ加工用イオンビーム12は像分解能を犠牲にして断面エッジの加工を最適化しているためビーム径が通常の集束イオンビームよりも太く、このビーム径の大きさが加工位置精度の観点からは無視できない。加工領域をそのままエッジ加工用イオンビーム12で走査すると、エッジ加工用イオンビーム12のビーム半径の長さ104aだけ大きな領域を加工してしまい、加工位置が外側にずれる。
【0025】
この問題は、以下のようにして解決する。エッジ加工用イオンビーム12で加工する場合には、自動的に、設定された加工領域102に対してビーム半径の長さ104aに相当する量を差し引いた領域103をエッジ加工用イオンビーム12で走査するのである。手続としては、予めエッジ加工用イオンビーム12のビーム半径104aを測定して、その測定値を制御手段7に記憶しておく。加工に使用するイオンビームにエッジ加工用イオンビームが選択された場合には、この測定値を用いて設定された加工領域102に対してビーム半径104aに相当する量を差し引いたエッジ加工用イオンビーム12の走査領域103を設定し、エッジ加工用イオンビーム12を走査領域103で走査することで所望の高加工位置精度が達成できる。オペレータは、集束加工用イオンビーム11、あるいはエッジ加工用イオンビーム12に関わらず、CRT上に表示したSIM像に所望の加工領域102を設定するだけでよく、従来装置と同等の操作性を維持できる。
【0026】
このイオンビーム装置では、加工用のイオンビームに集束加工用イオンビーム11とエッジ加工用イオンビーム12との二種類を用いるため、混同する可能性がある。従って、表示手段28に図7に示すようなビームタイプを表すメッセージ41を表示して、今設定されているイオンビームが観察用イオンビームなのか加工用イオンビームなのか、もし加工用イオンビームであれば集束加工用イオンビーム11なのかエッジ加工用イオンビーム12なのかをオペレータに知らしめ、誤操作を防ぐ。
【0027】
2.開口部の形状が任意形状であるマスクを具備するイオンビーム装置
次に、装置構成は図2を用いて説明したイオンビーム装置とほぼ同じで、制限絞り3がマスク19に、エッジ加工用イオンビーム12がそのマスク19の開口形状を投射する成形イオンビームであるエッジ加工用イオンビーム21に入れ代わっている本発明のイオンビーム装置について説明する。装置の概略構成を図8(a)に示し、マスク19の一例の上面図を図8(b)に示す。
【0028】
集束手段2は静電レンズで構成された集束レンズであり、かつ照射手段5は静電レンズで構成された投射レンズである。集束加工用イオンビーム11は2本あり、小電流での加工に用いる集束加工用イオンビーム11a、及びエッジ加工用イオンビーム21の軸合わせに使用する軸合わせ集束加工用イオンビーム11bである。集束加工用イオンビーム11aとエッジ加工用イオンビーム21の切り替えは、集束レンズと投射レンズの両レンズ電圧を切り替えることで行う。また、軸合わせ集束加工用イオンビーム11bとエッジ加工用イオンビーム21の切り替えは、投射レンズのレンズ電圧を切り替えることで行う。マスク19は、加工用イオンビームの電流が収差に起因したイオンビームの裾の影響が顕著になる値以上となる開口面積を持った開口部20を少なくとも一つ具備している。
【0029】
小電流での加工に用いる集束加工用イオンビーム11aは、イオン発生手段1の像が試料面上に形成されるようにイオンビーム光学系の条件を制御することで得られる。エッジ加工用イオンビーム21は、マスク19の開口の像が試料面上に形成されるようにイオンビーム光学系の条件を制御することで得られる。
エッジ加工用イオンビーム21を形成するレンズ電圧は、イオンビーム光学系を構成する各要素の配置寸法から決まる。このレンズ電圧を予め求めておき、制御手段7に記憶しておく。エッジ加工用イオンビーム21の形成の際は、制御手段7で予め記憶したレンズ電圧を呼び出して、それを設定すればよい。また、軸合わせ集束加工用イオンビーム11bは、後述するように、エッジ加工用イオンビーム21を投射レンズのレンズ電圧を制御して試料表面に集束させることで得られる。
【0030】
SIM像は、制御手段7を経由して表示手段28に表示される。エッジ加工用イオンビーム21を加工領域の設定に用いるSIM像の取得に使用すると、二つの問題が発生した。その一つは、エッジ加工用イオンビーム21は大電流イオンビームであるため、SIM像を観察した際のビーム照射による試料表面の損傷が実用上無視できないことである。もう一つは、エッジ加工用イオンビーム21は成形イオンビームであるためビーム幅が大きく、SIM像観察を行っても必要な像分解能が得られず位置合わせ精度が出ないことである。これらの問題の解決策は、ビーム電流が少なく、かつ像分解能の高い観察用イオンビーム9を用いることである。しかし、観察用イオンビーム9とエッジ加工用イオンビーム21とではレンズ電圧、制限絞り開口径等のビーム照射条件が大きく異なるため、試料上での両ビームの照射位置がずれる。
【0031】
この問題は、以下のようにして解決する。エッジ加工用イオンビーム21は、その集束点42が図9(a)に示すように、投射レンズ5の中心面40と試料16との間にあるため、投射レンズ5のレンズ電圧を少し下げることで、ビーム集束点42を試料16に合せられる(図9(b))。このビームを、軸合わせ集束加工用イオンビーム11bにするのである。軸合わせ集束加工用イオンビーム11bとエッジ加工用イオンビーム21とでは投射レンズ電圧が僅かに異なるだけであり、試料上での両ビームの照射位置ずれは実用上無視できる。よって、観察用イオンビーム9とエッジ加工用イオンビーム21との試料上での照射位置合わせには、後者ビームの代わりに軸合わせ集束加工用イオンビーム11bを使用する。
【0032】
図10を用いて、その位置合わせ補正の方法を説明する。試料上の任意の目標物60を観察用イオンビーム9と軸合わせ集束加工用イオンビーム11bとにより各々SIM像観察した時の試料16の側面方向から見た目標物60と両ビームとの関係を図10(a)に示す。図10(c)及び(d)は、それぞれ観察用イオンビーム9と軸合わせ集束加工用イオンビーム11bにより観察したSIM像である。この目標物60の各々のSIM像上での位置座標の差から、両ビーム間のずれ補正量24を測定する。このずれ補正量24を予め制御手段7に記憶し、このずれ補正量24を基に図10(b)のように観察用イオンビーム9の照射位置に軸合わせ集束加工用イオンビーム11bの照射位置が同一となるように制御手段7で補正する。これにより、観察用イオンビーム9とエッジ加工用イオンビーム21との試料上での照射位置も一致するのである。
【0033】
図24に示した特開平9−186138号公報に記載の従来例では、集束イオンビーム312と成形イオンビーム313との間に試料への照射位置のずれが生じないように、集束イオンビーム312を以下のようにして形成している。照射手段307のレンズ強度は、成形ビーム313を形成するレンズ強度である。初めに、イオンビームのビーム径は、ビーム制限アパーチャ303により調整する。次に、イオンビームをマスク306上に走査して、マスク306が明瞭に観察できるように集束手段304のレンズ強度を調整し、マスク306上にイオンビームを集束させる。従って、制限アパーチャ303とビーム偏向手段305が必要であった。本発明のイオンビーム装置では、上記の説明から制限アパーチャ303とビーム偏向手段305は必要ない。従来装置例と比較してビーム偏向手段と可変アパーチャをなくすことができる。
【0034】
図11を用いて加工領域の設定手順を説明する。図11(a)は、矩形開口のマスクを投射するエッジ加工用イオンビーム21を走査して、所望の加工領域102を加工する場合の設定である。観察用イオンビーム9を用いて観察したSIM像101を画像メモリに保存する。このSIM像101を表示手段28であるCRT上に表示し、その上に所望の加工領域102をマウスなどで設定する。加工したい領域は加工領域102であるが、エッジ加工用イオンビーム21は試料16上にマスク19の開口部を投射レンズの縮小率で縮小した形状(投射開口107)のイオンビームを形成しているため、加工領域102をそのままエッジ加工用イオンビーム21で走査すると、加工領域102を超えて加工してしまい、加工位置が外側にずれる。
【0035】
この問題は、以下のようにして解決する。予めエッジ加工用イオンビーム21の投射開口107の縦辺の半分の長さ104b及び横辺の半分の長さ104cを計算、あるいは測定して、それらの値を制御手段7に記憶しておく。エッジ加工用イオンビーム21を選択した加工には、設定された加工領域102から投射開口107の縦辺及び横辺の半分の長さ104b及び104cを差し引いたエッジ加工用イオンビーム21の走査領域103を新たに設定し、この走査領域103を走査し加工する。オペレータは、集束加工用イオンビーム11aとエッジ加工用イオンビーム21とを区別することなく、CRT上のSIM像に所望の加工領域102を設定するだけでよく、従来装置と同等の操作性を維持できる。
【0036】
図11(b)は、投射開口107と同一の大きさの加工領域105を加工する場合の設定である(この場合、投射開口107が加工予定領域に相当する)。ここでは、矩形開口のマスクを投射すると仮定して図示してある。この場合は、エッジ加工用イオンビーム21の走査は行わず、このイオンビームを所望の投射点に投射することで加工領域105を加工する。
【0037】
表示手段28であるCRT上に、観察用イオンビーム9を用いて観察し、画像メモリに保存したSIM像101を表示して、その上にマウスなどで所望の投射点を設定する。投射点は、エッジ加工用イオンビーム21の光軸106とし、その光軸106を基準位置とした投射開口107の投射位置を計算、あるいは測定して、その値を制御手段7に記憶しておく。CRT上に表示したSIM像101上には光軸106と投射開口107とを影を付けて表示する。光軸106の位置を移動すると、その移動と同期して投射開口107の影も一緒に移動する。投射点、すなわち光軸106の位置の指定は、投射開口107と所望の加工領域105とが一致するように光軸106の位置をマウスなどでCRT上に表示したSIM像101上に指定する。投射開口107を可視化することで、加工領域105の設定操作を容易にした。
【0038】
また、エッジ加工用イオンビーム21を走査して加工するか、あるいは投射点に投射して加工するかを選択する選択手段510を設け、選択手段510で選択された加工タイプに合せて加工領域設定画面として図11(a)あるいは図11(b)の画面が表示手段28に表示されるようにした。
【0039】
このイオンビーム装置では、加工用のイオンビームとして集束加工用イオンビーム11a、軸合わせ集束加工用イオンビーム11b、エッジ加工用イオンビーム21の三種類を用いるため、混同する可能性がある。従って、表示手段28に図7に示すようなビームタイプを表すメッセージ41を表示して、今設定されているイオンビームが観察用イオンビームなのか加工用イオンビームなのか、もし加工用イオンビームであれば集束加工用イオンビーム11aなのか軸合わせ集束加工用イオンビーム11bなのか、あるいはエッジ加工用イオンビーム12なのかをオペレータに知らしめ、誤操作を防ぐ。
【0040】
本発明の一態様によるイオンビーム装置は、イオンを発生するイオン発生手段、イオン発生手段から発生したイオンを集束してイオンビームを形成する集束手段、イオンビームの電流を制限する開口部を持つ制限絞り、イオンビームを試料上で走査するためのビーム偏向手段、及びイオンビームを試料に照射する照射手段を含むイオンビーム光学系と、試料を載置する試料ステージと、イオンビームの照射によって試料から発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、イオンビーム光学系を制御する制御手段とを具備し、制御手段は、試料の走査イオン顕微鏡像を形成するための観察用イオンビームあるいは試料を加工するための加工用イオンビームが形成されるようにイオンビーム光学系を制御し、加工用イオンビームのビーム電流が所定の値より小さいときは像分解能が高いビーム集束状態の集束加工用イオンビームが形成され、加工用イオンビームのビーム電流が所定の値以上のときは加工試料の断面エッジ部がシャープに加工できるビーム集束状態のエッジ加工用イオンビームが形成されるようにイオンビーム光学系を制御することを特徴とする。
【0041】
観察用イオンビームは、試料を走査しても試料を損傷することがないように小さなビーム電流とされる。制御手段は、試料加工用イオンビームのビーム電流がイオンビーム光学系の収差に起因してイオンビームの裾の影響が顕著になる値以上の時はエッジ加工用イオンビームを形成するようにイオンビーム光学系を制御し、その値未満の時は集束加工用イオンビームを形成するようにイオンビーム光学系を制御するのがよい。
【0042】
集束手段及び照射手段は静電レンズで構成し、制御手段は、集束手段と照射手段の少なくとも一方の静電レンズのレンズ電圧の切り替えによって集束加工用イオンビームとエッジ加工用イオンビームとを切り替えるものとすることができる。
【0043】
制限絞りは、開口部の形状が円である制限アパーチャ、あるいは開口部の形状が円を含む任意形状であるマスクであり、加工用イオンビームの電流が所定の値以上得られる開口面積を持つ開口部を具備する。
制限絞りを開口部の形状が円である制限アパーチャとし、エッジ加工用イオンビームを当該イオンビームの最小錯乱円の位置が試料の表面にほぼ一致するイオンビームとすることができる。
【0044】
また、制限絞りを開口部の形状が円を含む任意形状であるマスク、エッジ加工用イオンビームを試料表面位置での光軸に垂直方向の断面形状がマスクの開口部の形状と相似形であるイオンビームとし、制御手段は、集束手段の静電レンズ及び照射手段の静電レンズのレンズ電圧を制御してエッジ加工用イオンビームを形成する機能と、エッジ加工用イオンビームの形成条件から照射手段の静電レンズのレンズ電圧を変えて像分解能の高い軸合わせ集束加工用イオンビームを形成する機能とを有するものとすることができる。
【0045】
制御手段は、試料の観察時及び加工領域の設定時には観察用イオンビームが形成され、試料加工時にはエッジ加工用イオンビームが形成されるようにイオンビーム光学系を制御するのが好ましい。
制御手段は、加工用イオンビームの特性値とイオンビーム光学系の制御値との間の関係を記憶する記憶手段を備えることができる。加工用イオンビームの特性値は加工用イオンビームのビーム電流、ビーム径、ビーム開き角のうちの少なくとも一つとすることができる。
【0046】
制御手段は、エッジ加工用イオンビームと観察用イオンビームの試料上での照射位置のずれをずれ補正量として記憶しており、そのずれ補正量を用いてエッジ加工用イオンビームと観察用イオンビームの試料上での照射位置が同一となるようにイオンビームの照射位置を補正する機能を有することが好ましい。
【0047】
また、観察用イオンビームを用いて観察した試料の観察像を保存する画像メモリと、画像メモリに保存した観察像を用いて試料の所望位置に加工領域を設定する手段と、設定した加工領域と保存した観察像とを重ねて表示する表示手段とを備えることができる。
【0048】
制限絞りが開口部の形状が円である制限アパーチャであり、エッジ加工用イオンビームが最小錯乱円の位置が試料表面にほぼ一致するイオンビームであるとき、設定された加工領域から予め求めておいたエッジ加工用イオンビームのビーム半径に相当する量を差し引いてエッジ加工用イオンビームの走査領域を設定する手段を具備するのが好ましい。
【0049】
また、試料に照射されているイオンビームが観察用イオンビームであるか加工用イオンビームであるかを表示する表示手段と、試料に照射されているイオンビームが加工用イオンビームである場合にそれが集束加工用イオンビームであるかエッジ加工用イオンビームであるかを表示する表示手段とを有することが好ましい。
【0050】
制限絞りが任意形状の開口を含むマスクであり、エッジ加工用イオンビームが成形イオンビームであるとき、観察用イオンビームを用いて観察した試料の観察像を保存する画像メモリと、エッジ加工用イオンビームの光軸の位置及びその光軸を基準位置としたエッジ加工用イオンビームの試料上への投射による加工予定領域を保存した観察像に重ねて表示する手段と、加工予定領域が所望の位置に来るようにエッジ加工用イオンビームの光軸の位置を指定することで加工領域を設定する手段を具備するのが好ましい。
【0051】
本発明の他の態様のイオンビーム装置は、前記特徴に加え、試料の一部を分離した摘出試料を摘出位置とは異なる位置に移し変える移送手段と、移送手段により移送された摘出試料を載置する摘出試料ステージとを具備する。制御手段は、摘出試料の形状を短冊状の薄片、直方体、三角柱、歯車の少なくとも一つを含む任意形状に加工する任意形状加工制御手段を具備する。
【0052】
試料上のイオンビーム照射領域にデポジション膜を形成する原料ガスを供給するデポジションガス源を有し、制御手段は、エッジ加工用イオンビームと同様のビーム集束状態であるエッジデポジション加工用イオンビームを形成するビーム調整手段を具備することができる。
【0053】
前記イオンビーム装置は、集束手段と制限絞りとの間にイオンビームを集束する上部中間集束手段を少なくとも一つ具備してもよい。制限絞りと照射手段との間にイオンビームを集束する下部中間集束手段を少なくとも一つ具備してよい。
【0054】
制御手段は、加工中に観察されるイオン顕微鏡像の輝度の変化を検出する輝度変化検出手段と、輝度の変化を検出した時点で加工を停止する終点検出手段を具備することもできる。
加工用イオンビームのビーム電流の大きさに応じて二次粒子検出手段の出力ゲインを調整する出力ゲイン調整手段を具備することが好ましい。この出力ゲイン調整手段を設けることによりSIM像の輝度飽和を防止することができる。
【0055】
また、少なくとも2つのイオンビーム光学系の光軸が1点で交差している複数のイオンビーム光学系を備えてもよい。その一例として、エッジ加工用イオンビームのみを形成するイオンビーム光学系と、観察用イオンビームと集束加工用イオンビームとを形成するイオンビーム光学系とを備えてもよい。
【0056】
本発明の一態様による試料加工方法は、イオン発生手段から発生したイオンをイオンビーム光学系を介して試料に照射して試料の加工を行う試料加工方法において、イオンビーム電流が所定値より小さなときはイオンビーム光学系をイオン発生手段の像が試料上にシャープに形成される条件にして加工を行い、イオンビーム電流が所定値以上のときはイオンビーム光学系をイオンビームの最小錯乱円の位置が試料表面にほぼ一致する条件にして加工を行うことを特徴とする。
【0057】
本発明の他の態様による試料加工方法は、イオン発生手段から発生したイオンを任意形状の開口を有するマスクを含むイオンビーム光学系を介して試料に照射して試料の加工を行う試料加工方法において、イオンビーム電流が所定値より小さなときはイオンビーム光学系をイオン発生手段の像が試料上にシャープに形成される条件にして加工を行い、イオンビーム電流が所定値以上のときはイオンビーム光学系をマスクの開口の像が試料上にシャープに形成される条件にして加工を行うことを特徴とする。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
〔実施の形態1〕
図1は、本発明によるイオンビーム装置の一例の概略図である。このイオンビーム装置は、ガリウム液体金属イオン源を使用するイオン発生手段1、バトラー型静電アインツェルレンズを使用する集束手段2及び照射手段5、開口径の異なる複数のアパーチャを持ち、その少なくとも一つが、ビーム電流がビーム分布の裾広がりの影響が実用上無視できなくなるビーム電流値以上得られる開口径14である可変アパーチャを使用する制限絞り3、2段型8極偏向器を使用するビーム偏向手段4、試料16を載置する試料ステージ8、二次粒子13が二次電子の場合にはシンチレータを、二次イオンの場合にはマイクロチャンネルプレート(MCPと略す)を使用する二次粒子検出器6、コンピュータを使用する制御手段7、CRTを使用する表示手段28を備える。イオンビームの種類は、ビーム電流の小さな観察用イオンビーム9、集束加工用イオンビーム11、そしてエッジ加工用イオンビーム12(試料16でのビーム集束状態が最小錯乱円近傍であるイオンビーム)である。可変アパーチャ3及び試料ステージ8には、コンピュータ制御のXYの二軸駆動機構及びXYZTRの5軸駆動機構もそれぞれ備えている。
【0059】
また、ビーム偏向手段4と照射手段5の間に、簡易ファラディーカップを使用するビーム電流計測手段23を設置した。通常、イオンビームはビーム電流計測手段23の底部にある開口部を通過し、試料16まで到達する。制御手段7のコンピュータからビーム電流の計測命令が出た場合には、イオンビームを底部開口部からビーム偏向手段4により偏向し(偏向したイオンビーム50)、ビーム電流計測手段内部にイオンビームを照射してビーム電流を計測する。図21に示すように、ビーム電流計測手段23は、内部深さ寸法52と上部開口径寸法51の比、即ち(内部深さ寸法52)/(上部開口径寸法51)が5以上となるように設計されている。これは、ビーム電流計測手段23に入射したイオンビームにより発生する二次粒子のビーム電流計測手段23の外部への放出確立を下げて、計測するビーム電流の精度を高めるためである。
【0060】
なお、ビーム電流は、ビーム電流計測手段23を具備しなくても試料ステージ8に電流計を接続して、試料16及び試料ステージ8に流れる吸収電流を計測することでも得られる。ただし、その場合、計測精度はビーム電流計測手段23を使用するよりも悪化してしまう。
【0061】
各種イオンビームの可変アパーチャ3の開口のXY位置と集束手段2と照射手段5のレンズ電圧の設定値とをコンピュータに入力、記憶させ、更に、可変アパーチャ駆動機構もコンピュータで制御することでイオンビームを切り替えた時の各パラメータ設定を自動的に行うことができる。イオンビームの調整は、従来装置と同様に必要なイオンビームに対して、オートフォーカス機能を使用する、あるいは直接オペレータがSIM像観察を行うことで、像分解能が最大となるようにレンズ強度を調整し、この時のレンズ電圧と可変アパーチャ3の開口のXY位置とをコンピュータに入力、記憶させる。ビーム電流が前記した特定値(イオンビーム加工においてビーム分布の裾広がりの影響が実用上無視できなくなるビーム電流値)以上の加工用イオンビームは、この記憶したレンズ電圧を利用して、自動的にエッジ加工用イオンビーム12に設定される。従って、イオンビームの設定も従来装置と同等の操作性を実現した。また、加工データ、試料ステージ8の座標、加工に使用するイオンビームの種類を予めコンピュータに入力、記憶しておくことで自動加工も行うことができる。
【0062】
これにより作業効率を向上すると共に、エッジ加工用イオンビームを採用したことで加工断面のエッジ部のシャープさを従来の数nA程度のイオンビームで加工した場合と同程度に維持したまま従来にない大電流(>15〜25nA)のイオンビーム加工を行ってスループットの向上を実現した。
【0063】
エッジ加工用イオンビーム12は、像分解能が最大となる対物レンズのレンズ電圧から最小錯乱円近傍が試料表面と一致するビーム集束状態となる補正量分だけレンズ電圧を下げることで形成できる。次に、この電圧補正量を求める方法について説明する。
【0064】
最初に、ビーム電流と光学系との間にある関係から電圧補正量を求める例について説明する。図12に示すように、図1のイオンビーム装置の光学系構成は寸法A1〜A4によって特徴付けられる。ここで、寸法A1はイオン発生手段1のチップから集束手段2のレンズ中心までの距離、寸法A2は集束手段2のレンズ中心から制限絞り3までの距離、寸法A3は制限絞り3から照射手段5のレンズ中心までの距離、寸法A4は照射手段5のレンズ中心から試料表面までの距離である。このような構成のイオンビーム光学系を用い、イオンビームの加速電圧が30kV、ビーム電流はイオンビーム加工においてビーム分布の裾広がりの影響が実用上無視できなくなる値(例えば15nA)以上、試料16の表面位置は高さ方向、すなわち光軸方向に変化しないという条件のとき、試料16に照射されているイオンビームのビーム集束状態を像分解能が最大となるビーム集束状態から最小錯乱円近傍が試料表面と一致するビーム集束状態に変更するために対物レンズのレンズ電圧に加えるべき電圧補正量は次の〔数1〕で与えられる。
【0065】
【数1】
Figure 0003597761
【0066】
ここで、ΔVは像分解能が最大となる対物レンズのレンズ電圧から、エッジ加工用イオンビーム12を形成するためのレンズ電圧への電圧補正量(単位:V)、Ibはイオンビームのビーム電流(単位nA)、係数B1,B2,B3は光学系の寸法A1,A2,A3,A4から決まる値である。電圧補正量の算出式は、光学系が決まれば一意に決められる。従って、使用する光学系に対応する算出式を予め求めておき、これをコンピュータに記憶しておくことで任意の光学系に対してエッジ加工用イオンビーム12を形成することができる。
【0067】
ここでは加工用イオンビームの特性値としてビーム電流Ibを用いたが、ビーム電流Ibは制限絞り3のアパーチャ開口径により決まり、またアパーチャ開口径が決まればビーム開き角も決まることから、〔数1〕の特性値としてビーム電流Ibの代わりにアパーチャ開口径あるいはビーム開き角を用いてもよい。
【0068】
また、集束加工用イオンビーム11とエッジ加工用イオンビーム12との切り替えは、図22に示すように、試料16の表面位置を高さ方向、すなわち光軸方向に移動させ、高さ位置をそれぞれガウス像面17及び最小錯乱円を形成する面15に設定することでも実行できる。ガウス像面17と最小錯乱円を形成する面15との高さ位置の差ΔZは、〔数1〕と同様に次の〔数2〕で与えられる。
【0069】
【数2】
Figure 0003597761
【0070】
ここで、係数C1,C2,C3は、図12に示す光学系構成の寸法A1,A2,A3,A4から決まる値である。〔数2〕においても、加工用イオンビームの特性値としてビーム電流Ibの代わりにアパーチャ開口径あるいはビーム開き角を用いることができる。
【0071】
〔実施の形態2〕
図13は、本発明によるイオンビーム装置の他の例を示す概略図である。このイオンビーム装置は、図13(a)に概略を示すように、制限絞り3の代わりにマスク19を用いた装置で、エッジ加工用イオンビームに成形イオンビーム(マスクの開口部の像を試料表面に形成するビーム)を使用するものである。図13(b)は、マスク19の一例を示す上面図である。装置構成は実施の形態1とほぼ同じである。マスク19は、例えば矩形の開口部20、長方形二つ穴の開口部501、円形開口部502等を含む任意形状の開口部を有し、その開口部の少なくとも一つはイオンビーム加工においてビーム分布の裾広がりの影響が実用上無視できなくなるビーム電流値(例えば15nA以上)が得られる面積の開口部となっている。
【0072】
図13(a)では、イオンビームは観察用イオンビーム9、集束加工用イオンビーム11a、及びエッジ加工用イオンビーム21(成形イオンビーム)のみ示してあり、軸合わせ集束加工用イオンビーム11bは省略してある。実施の形態1と同様に、成形イオンビームを含めた各種イオンビームの光学系パラメータをコンピュータに入力、記憶させ、更に、マスク駆動機構もコンピュータで制御することでイオンビームを切り替えた時の各パラメータ設定を自動的に行うことができる。ビーム電流が例えば15nA以上の加工用イオンビームは、この記憶したレンズ電圧を利用して、自動的にエッジ加工用イオンビーム21に設定される。従って、イオンビームの設定も従来装置と同等の操作性を実現した。加工データ、試料ステージ8の座標、加工に使用するイオンビームの種類を予めコンピュータに入力、記憶しておくことで自動加工も行うことができ、作業効率を向上すると共に、成形イオンビームとしてエッジ加工用イオンビームを採用したことで加工断面のエッジ部のシャープさを従来の数百pA程度のイオンビームで加工したときと同程度以下に維持したまま従来にない大電流(最大約150nAまで使用できることを確認)のイオンビームを使用して加工でき、スループットの向上を実現した。
【0073】
エッジ加工用イオンビームに成形イオンビームを使用するため、集束イオンビームを用いる場合と比較すると加工形状に対する自由度は落ちる。しかし、図13(a)に示す集束加工用イオンビーム11aとエッジ加工用イオンビーム21から分かるように、成形イオンビームは集束イオンビームよりも集束手段2によりマスク19上でイオンビームを集束しているため、マスク19と制限絞り3の開口部の面積が等しいと仮定すると、ビーム電流は成形イオンビームの方が多く得られる、すなわち加工速度が速いというメリットがある。
【0074】
また、加工領域の断面エッジ部のエッジシャープネスは、制限絞り3(マスク19も含む)の開口部の面積が大きくなるに従い劣化してゆくが、この開口部の面積の増大に対する劣化率は、試料16でのビーム集束状態が最小錯乱円近傍である集束イオンビームよりも成形イオンビームの方が小さい。従って、加工領域の断面エッジ部のエッジシャープネスを同一とした場合、成形イオンビームの方が大きな開口部を具備することができる。これは同じエッジシャープネスのエッジ加工用イオンビームにおいて、成形イオンビームの方がより大電流のイオンビームを得ることができ、より高速加工ができることを意味する。従って、所望の加工面積、加工形状、加工速度に合わせてエッジ加工用イオンビームに試料16でのビーム集束状態が最小錯乱円近傍であるイオンビームを用いた装置と成形イオンビームを用いた装置とを選択することで更に効率的な加工が行える。
【0075】
また、エッジ加工用イオンビームに試料16でのビーム集束状態が最小錯乱円近傍であるイオンビームと成形イオンビームとを両方具備する装置では、加工形状の自由度を失わないため、加工に合わせた加工用イオンビームの選択範囲が増し、更なる最適加工が実現できる。
【0076】
〔実施の形態3〕
図14の装置は、実施の形態1及び2と同じイオンビーム光学系70と71とを2本具備するイオンビーム装置の例である。2本のイオンビーム光学系70及び71は制御手段7で制御する。イオンビーム光学系の数は2本に限らず、3以上具備する構成でもよい。各々のイオンビーム光学系の光軸は、試料16上の一点で交差するように配置されている。
【0077】
複数のイオンビーム光学系を具備する利点として、以下のことが挙げられる。試料に対して傾斜軸方向にイオンビーム光学系を配置すると、試料ステージ8を傾斜させることなく傾斜加工を行えるため、試料ステージの傾斜軸を省くことができ、ステージ構成が簡単になる。また、2本のイオンビーム光学系を具備すると、同時に2箇所を加工できるため、スループットが向上する。また、傾斜方向から観察しながら断面を加工するその場観察加工が行えるため、加工の終点検出が容易となる。また、2本のイオンビーム光学系のうち、一つがエッジ加工用イオンビーム12専用の光学系で、残りの一つが観察用イオンビーム9と集束加工用イオンビーム11との専用の光学系という構成にすれば、加工用イオンビームの切り替えが不要となり、イオンビームの切り替えによるレンズ電圧の再現性、及び制限絞り3の位置再現性等に起因する加工位置精度の劣化を排除できる。複数本のイオンビーム光学系のうちの1本を電子ビーム光学系に換えた構成としてもよい。
【0078】
〔実施の形態4〕
例えば特許2774884号あるいは特開平11−258130号公報に記載のように、試料の一部を摘出試料として分離して、異なる試料等に接着する加工を行うイオンビーム装置の例を説明する。イオンビーム装置の構成は、図1あるいは図13に示した構成と同様である。
【0079】
このイオンビーム装置は、実施の形態1から3で説明した装置構成に、試料16の一部を分離した摘出試料32を試料ホルダに移し変える移送手段30と、試料16を載置する試料ステージ8及び移送手段30により移送された摘出試料32を載置する摘出試料ステージ31と、イオンビームの照射領域にデポジション膜を形成する原料ガスを供給するデポジションガス源34とを新たに具備する。試料16から摘出試料32を分離する作業に大電流化により高速加工を実現したエッジ加工用イオンビームを用いることで、従来よりも遥かに短時間で摘出試料を分離できる。結果として、スループットの大幅な向上を可能とした。
【0080】
また、前記従来技術の文献に記載されているように、摘出試料の表面保護、及び分離した摘出試料の異なる試料等への接着は、イオンビームの照射領域にデポジション膜を形成して行う。本実施の形態では、デポジション膜の形成専用のイオンビームとして、ビーム電流が1nA以下のエッジ加工用イオンビーム12(あるいは21)を使用する。
【0081】
図15を用いて、エッジデポジション加工用イオンビームを使用することによる効果を説明する。従来装置でのデポジション膜の形成には、SIM像の分解能が高いビーム集束状態の集束イオンビームが用いられていた。図15(a)に示すように、従来装置でのデポジション膜の形成は、デポジション膜を形成したい領域400に対してイオンビームを間隔403でディジタル的に走査するディジタル走査401により行っていた。このイオンビームでは、図4(a)で説明したようにイオンビームの光軸10近傍に収差に起因するイオンビームの裾が広がっている。図15(c)に示すように、このイオンビームの裾によりデポジション膜402の断面エッジ部が鈍ってしまう。また、イオンビームの裾の広がり具合のばらつきにより、若干指定領域よりも大きな領域までデポジション膜を形成してしまうこともまれに起こった。
【0082】
本発明の装置では、従来装置のイオンビームよりもイオンビームの裾の広がりが小さく、ビーム径が大きいエッジデポジション加工用イオンビームを採用している。このため、図15(b)に示すように、イオンビームを従来の間隔403よりも広い間隔404でディジタル走査401できる。従って、従来装置とイオンビームの照射時間は同じであるが、照射点数を減少でき、同じ面積にデポジション膜を形成する場合、本発明の装置の方が短時間でデポジション膜を形成できる。これより、スループットを向上できる。また、イオンビームの裾が小さいため、図15(d)に示すように、デポジション膜402の断面エッジ部がシャープなデポジション膜を形成することができ、イオンビームの裾によるデポジション膜の形成領域の増大も防ぐことができる。
【0083】
〔実施の形態5〕
また、実施の形態4の装置構成に加えて、制御手段7にイオンビームの試料16上への照射を点としてディジタル的に制御するディジタル走査により任意形状を加工できる任意形状加工制御手段を追加することで、摘出試料32は前記従来技術の文献に示されている形状に留まらず、図16(a)に示すようなマイクロマシニングに使用する歯車49等の任意形状に加工して分離し、所望の箇所に接続することが可能である。この場合も、エッジ加工用イオンビームを使用することで、従来装置よりもスループットを向上できた。
【0084】
図16(b)〜(f)に歯車49を作製する工程例を示す。試料16でのビーム集束状態が最小錯乱円近傍であるエッジ加工用イオンビームでは、図16(b)に示すように、歯車形成領域50に対してエッジ加工用イオンビームを歯車49が残るようにディジタル走査51する。一方、成形イオンビームであるエッジ加工用イオンビームでは、図16(c)に示す歯車外形の開口部53を具備するマスク52と、図16(d)に示す歯車切断用の開口部55bと軸部の開口部55aを具備するマスク54とを用意する。初めに、図16(e)に示すように歯車外形を一括で加工し、仕上げ図16(f)に示すように歯車軸穴加工と切断を一括で行う。
【0085】
また、デバイスの切断、不良箇所の切断分離除去、電気的又は機械的接続を含むデバイス移植等の作業に対しても、エッジ加工用イオンビームとエッジデポジション加工用イオンビームを使用することで従来装置よりもスループットを向上できる。
【0086】
〔実施の形態6〕
図17(a)に示すような多層膜試料33の所望の層520を含む薄片を摘出試料として、例えば特許2774884号あるいは特開平11−258130号公報に記載のように試料の一部を摘出試料として分離して、異なる試料等に接着する加工を行うイオンビーム装置について説明する。この場合、図17(b)に示す各層の組成に依存するSIM像の輝度信号111の変化を捉える輝度変化検出手段と、所望の回数だけ輝度が変化した時点で加工を停止する終点検出機能があると便利である。そこで、実施の形態4,5の装置構成に加えて、制御手段7に輝度変化検出手段と終点検出手段とを具備することで、以下の(a)〜(d)の工程の高スループット化、及び自動化を図った。
【0087】
(a)所望の層520を覆っている不要層を除去し、所望層表面を露出させる。
(b)所望の層520の表面を保護するために、所望層表面にデポジション膜を形成する。
(c)所望の層520から、所望の層を含む試料の一部を摘出試料として分離して、異なる試料等に接着する。
(d)異なる試料等に接着した摘出試料の所望位置に断面あるいは薄片を形成する。
【0088】
予め輝度信号111の閾値110と、その閾値の通過回数を制御手段7に記憶しておく。輝度の変化は、二次粒子検出手段で輝度信号111を検出し、制御手段7で輝度信号111が閾値110を通過するのをモニタするか、閾値の通過回数をモニタする。予め記憶しておいた条件を満たした場合、終点に到達したと判断して試料表面の除去加工を停止する。
【0089】
二次粒子検出手段6の出力ゲインは、ビーム電流により最適値が異なる。従来は、加工に使うイオンビーム電流の変動範囲は約一桁であったため、二次粒子検出手段6の出力ゲインをビーム電流毎に調整し直す必要はなかった。しかし、従来の出力ゲイン固定方式では、本発明のイオンビーム装置におけるビーム電流の変動範囲約二桁には対応できず、ビーム電流が大きい領域ではSIM像の輝度が飽和してしまう問題が生じた。この問題は、以下のようにして解決した。予め各ビーム電流の値に対する出力ゲインの最適値を求めておき、制御手段7に記憶しておく。イオンビームを切り替えた際には、そのビーム電流に合わせて二次粒子検出器6の出力ゲインを出力ゲイン調整手段でその最適値に切り換えることでSIM像の輝度飽和を防ぐ。
【0090】
〔実施の形態7〕
図18は、本発明によるイオンビーム装置の他の例を示す模式図である。このイオンビーム装置は、実施の形態1〜6で説明した装置構成に加えて、集束手段2と制限絞り3(あるいはマスク19)との間にバトラー型静電アインツェルレンズを使用した上部中間集束手段35を具備し、制限絞り3(あるいはマスク19)と照射手段5との間にバトラー型静電アインツェルレンズを使用した下部中間集束手段36を具備する。
【0091】
上部中間集束手段35を追加することで、制限絞り3に照射するイオンビームの電流密度を上げることができ、更に加工スループットを向上できる。この静電レンズの数は複数でもよい。下部中間集束手段36に静電レンズを追加することで、マスク19の開口部の縮小率を変化させることができる。成形イオンビームにおいては、縮小率を上げることで従来よりも大きな面積を持つ開口部を使用でき、イオンビームのビーム電流を上げることができる。このため、加工速度が上げて、スループットの更なる向上が可能となる。この静電レンズの数は複数でもよい。
また、上部中間集束手段35、あるいは上部中間集束手段35のいずれか一方のみ具備しても上記で説明した効果が各々得られる。
【0092】
〔実施の形態8〕
図19は、上記実施の形態で説明した本発明のイオンビーム装置を用いたイオンビーム加工の例を示している。試料16に断面50あるいは薄片51を加工している。この断面あるいは薄片面は、試料表面18に立てた垂線に対して垂直方向を90°として右回りに0°から180°の範囲53であるように加工する。この断面50あるいは薄片51は、摘出試料32に加工する場合もある。
【0093】
図20(a)は、本発明のイオンビーム装置を用いたイオンビーム加工の他の例を示している。本例は、例えば特開平5−52721号公報や特許2708547号に示されているようなデバイス試料54の配線55を切断及び接続したり、移植したりするイオンビーム加工の概略を示した加工例である。また、図20(b)のように、本発明のイオンビーム装置は不良箇所56を分離除去するイオンビーム加工にも使用できる。
【0094】
実施の形態4で説明した、試料の一部を摘出試料として分離して、異なる試料等に接着する加工において、試料の一部を摘出試料として分離する作業時間に着目し、複数のオペレータに対してストレスなく作業が続けられる最長の作業時間を調査した結果、平均約30分という結果が得られた。本発明のイオンビーム装置を用いることで、従来は60分以上かかっていた試料から摘出試料を分離する作業時間を30分以下に短縮することができ、オペレータの受けるストレスを軽減できた。
【0095】
【発明の効果】
本発明によれば、加工に用いる加工用イオンビームに像分解能が高いビーム集束状態の集束加工用イオンビームと加工領域の断面エッジ部がシャープに加工できるエッジ加工用イオンビームとの二種類を備え、大電流イオンビームに対してはエッジ加工用イオンビームを使用することによって、高スループットと高加工位置精度の両立ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料表面が最小錯乱円近傍となるビーム集束状態のエッジ加工用イオンビームを具備する本発明のイオンビーム装置の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明によるイオンビーム加工装置の一例を示す概略構成図。
【図3】加工用イオンビームが集束イオンビームである本発明のイオンビーム装置の一例を示す概略構成図。
【図4】集束イオンビームの試料表面近傍でのビーム軌道とガウス像面及び最小錯乱円の位置を示す説明図。
【図5】観察用イオンビームとエッジ加工用イオンビームとの軸合わせ説明図。
【図6】エッジ加工用イオンビームの加工領域設定の説明図。
【図7】イオンビームの種類を示す表示例の図。
【図8】加工用イオンビームが成形イオンビームである本発明のイオンビーム装置の一例を示す概略構成図。
【図9】エッジ加工用イオンビームと軸合わせ集束加工用イオンビームの説明図。
【図10】観察用イオンビームとエッジ加工用イオンビームとの軸合わせ説明図。
【図11】エッジ加工用イオンビームの加工領域設定の説明図。
【図12】イオンビーム装置の光学系構成要素間寸法の説明図。
【図13】成形イオンビームのエッジ加工用イオンビームを具備する本発明のイオンビーム装置の一例を示す概略構成図。
【図14】イオンビーム光学系を2本具備するイオンビーム装置の一例を示す概略図。
【図15】エッジデポジション加工用イオンビームによるデポジション膜の形成の説明図。
【図16】任意形状加工の一例を示す説明図。
【図17】終点検出の一例の説明図。
【図18】上部中間集束手段及び下部中間集束手段を具備する本発明のイオンビーム装置の一例を示す説明図。
【図19】本発明のイオンビーム装置を用いたイオンビーム加工の例を示す図。
【図20】本発明のイオンビーム装置を用いたイオンビーム加工の例を示す図。
【図21】ビーム電流計測手段の一例を示す図。
【図22】試料ステージの移動によるエッジ加工用イオンビームの形成説明図。
【図23】従来のイオンビームを用いたイオンビーム装置の概略図。
【図24】従来の成形イオンビームを用いたイオンビーム装置の概略図。
【符号の説明】
1…イオン発生手段、2…集束手段、3…制限絞り、4…ビーム偏向手段、5…照射手段、6…二次粒子検出手段、7…制御手段、8…試料ステージ、9…観察用イオンビーム、11…集束加工用イオンビーム、11a…集束加工用イオンビーム、11b…軸合わせ集束加工用イオンビーム、12…エッジ加工用イオンビーム、13…二次粒子、15…最小錯乱円を形成する面、16…試料、17…像分解能が最大となる面、19…マスク、20…開口部、21…エッジ加工用イオンビーム、23…ビーム電流計測手段、28…表示手段、30…移送手段、31…摘出試料ステージ、32…摘出試料、34…デポジションガス源、101…SIM像、102…加工領域、103…エッジ加工用イオンビームの走査領域

Claims (24)

  1. イオンを発生するイオン発生手段、前記イオン発生手段から発生したイオンを集束してイオンビームを形成する集束手段、前記イオンビームの電流を制限する開口部を持つ制限絞り、前記イオンビームを試料上で走査するためのビーム偏向手段、及び前記イオンビームを試料に照射する照射手段を含むイオンビーム光学系と、試料を載置する試料ステージと、前記イオンビームの照射によって試料から発生する二次粒子を検出する二次粒子検出手段と、前記イオンビーム光学系を制御する制御手段とを具備し、
    前記制御手段は、試料の走査イオン顕微鏡像を形成するための観察用イオンビームあるいは試料を加工するための加工用イオンビームが形成されるように前記イオンビーム光学系を制御し、加工用イオンビームのビーム電流が所定の値より小さいときは像分解能が高いビーム集束状態の集束加工用イオンビームが形成され、加工用イオンビームのビーム電流が所定の値以上のときは加工試料の断面エッジ部がシャープに加工できるビーム集束状態のエッジ加工用イオンビームが形成されるように前記イオンビーム光学系を制御することを特徴とするイオンビーム装置。
  2. 請求項1記載のイオンビーム装置において、前記集束手段及び前記照射手段は静電レンズで構成され、前記制御手段は、前記集束手段と前記照射手段の少なくとも一方の静電レンズのレンズ電圧の切り替えによって前記集束加工用イオンビームと前記エッジ加工用イオンビームとを切り替えることを特徴とするイオンビーム装置。
  3. 請求項1又は2記載のイオンビーム装置において、前記制限絞りは、開口部の形状が円である制限アパーチャ、あるいは開口部の形状が円を含む任意形状であるマスクであり、前記加工用イオンビームの電流が前記所定の値以上得られる開口面積を持つ開口部を具備することを特徴とするイオンビーム装置。
  4. 請求項1又は2記載のイオンビーム装置において、前記制限絞りは開口部の形状が円である制限アパーチャであり、前記エッジ加工用イオンビームは当該イオンビームの最小錯乱円の位置が前記試料の表面にほぼ一致するイオンビームであることを特徴とするイオンビーム装置。
  5. 請求項1又は2記載のイオンビーム装置において、前記制限絞りは開口部の形状が円を含む任意形状であるマスクであり、前記エッジ加工用イオンビームは試料表面位置での光軸に垂直方向の断面形状が前記マスクの開口部の形状と相似形であるイオンビームであり、前記制御手段は、前記集束手段の静電レンズ及び前記照射手段の静電レンズのレンズ電圧を制御して前記エッジ加工用イオンビームを形成する機能と、前記エッジ加工用イオンビームの形成条件から前記照射手段の静電レンズのレンズ電圧を変えて像分解能の高い軸合わせ集束加工用イオンビームを形成する機能とを有することを特徴とするイオンビーム装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、前記制御手段は、試料の観察時及び加工領域の設定時には前記観察用イオンビームが形成され、試料加工時には前記エッジ加工用イオンビームが形成されるように前記イオンビーム光学系を制御することを特徴とするイオンビーム装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、前記制御手段は、前記加工用イオンビームの特性値と前記イオンビーム光学系の制御値との間の関係を記憶する記憶手段を備えることを特徴とするイオンビーム装置。
  8. 請求項7記載のイオンビーム装置において、前記加工用イオンビームの特性値は前記加工用イオンビームのビーム電流、ビーム径、ビーム開き角のうちの少なくとも一つであることを特徴とするイオンビーム装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、前記制御手段は、前記エッジ加工用イオンビームと前記観察用イオンビームの試料上での照射位置のずれをずれ補正量として記憶しており、前記ずれ補正量を用いて前記エッジ加工用イオンビームと前記観察用イオンビームの試料上での照射位置が同一となるようにイオンビームの照射位置を補正する機能を有することを特徴とするイオンビーム装置。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、前記観察用イオンビームを用いて観察した試料の観察像を保存する画像メモリと、前記画像メモリに保存した観察像を用いて試料の所望位置に加工領域を設定する手段と、前記設定した加工領域と前記保存した観察像とを重ねて表示する表示手段とを備えることを特徴とするイオンビーム装置。
  11. 請求項4記載のイオンビーム装置において、設定された加工領域から予め求めておいた前記エッジ加工用イオンビームのビーム半径に相当する量を差し引いて前記エッジ加工用イオンビームの走査領域を設定する手段を具備することを特徴とするイオンビーム装置。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、試料に照射されているイオンビームが前記観察用イオンビームであるか前記加工用イオンビームであるかを表示する表示手段と、試料に照射されているイオンビームが前記加工用イオンビームである場合にそれが前記集束加工用イオンビームであるか前記エッジ加工用イオンビームであるかを表示する表示手段とを有することを特徴とするイオンビーム装置。
  13. 請求項5記載のイオンビーム装置において、前記観察用イオンビームを用いて観察した試料の観察像を保存する画像メモリと、前記エッジ加工用イオンビームの光軸の位置及びその光軸を基準位置とした前記エッジ加工用イオンビームの試料上への投射による加工予定領域を前記保存した観察像に重ねて表示する手段と、前記加工予定領域が所望の位置に来るように前記エッジ加工用イオンビームの光軸の位置を指定することで加工領域を設定する手段を具備することを特徴とするイオンビーム装置。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、試料の一部を分離した摘出試料を摘出位置とは異なる位置に移し変える移送手段と、前記移送手段により移送された前記摘出試料を載置する摘出試料ステージとを具備することを特徴とするイオンビーム装置。
  15. 請求項14記載のイオンビーム装置において、前記制御手段は、前記摘出試料の形状を短冊状の薄片、直方体、三角柱、歯車の少なくとも一つを含む任意形状に加工する任意形状加工制御手段を具備することを特徴とするイオンビーム装置。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、試料上の前記イオンビーム照射領域にデポジション膜を形成する原料ガスを供給するデポジションガス源を有し、前記制御手段は、前記エッジ加工用イオンビームと同様のビーム集束状態であるエッジデポジション加工用イオンビームを形成するビーム調整手段を具備することを特徴とするイオンビーム装置。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、前記集束手段と前記制限絞りとの間に前記イオンビームを集束する上部中間集束手段を少なくとも一つ具備することを特徴とするイオンビーム装置。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、前記制限絞りと前記照射手段との間に前記イオンビームを集束する下部中間集束手段を少なくとも一つ具備することを特徴とするイオンビーム装置。
  19. 請求項1〜18のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、前記制御手段は、加工中に観察されるイオン顕微鏡像の輝度の変化を検出する輝度変化検出手段と、前記輝度の変化を検出した時点で加工を停止する終点検出手段を具備することを特徴とするイオンビーム装置。
  20. 請求項1〜19のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、前記加工用イオンビームのビーム電流の大きさに応じて前記二次粒子検出手段の出力ゲインを調整する出力ゲイン調整手段を具備することを特徴とするイオンビーム装置。
  21. 請求項1〜20のいずれか1項記載のイオンビーム装置において、複数のイオンビーム光学系を備え、少なくとも2つのイオンビーム光学系の光軸が1点で交差していることを特徴とするイオンビーム装置。
  22. 請求項21記載のイオンビーム装置において、前記エッジ加工用イオンビームのみを形成するイオンビーム光学系と、前記観察用イオンビームと前記集束加工用イオンビームとを形成するイオンビーム光学系とを備えることを特徴とするイオンビーム装置。
  23. イオン発生手段から発生したイオンをイオンビーム光学系を介して試料に照射して試料の加工を行う試料加工方法において、イオンビーム電流が所定値より小さなときは前記イオンビーム光学系を前記イオン発生手段の像が試料上にシャープに形成される条件にして加工を行い、イオンビーム電流が前記所定値以上のときは前記イオンビーム光学系をイオンビームの最小錯乱円の位置が試料表面にほぼ一致する条件にして加工を行うことを特徴とする試料加工方法。
  24. イオン発生手段から発生したイオンを任意形状の開口を有するマスクを含むイオンビーム光学系を介して試料に照射して試料の加工を行う試料加工方法において、イオンビーム電流が所定値より小さなときは前記イオンビーム光学系を前記イオン発生手段の像が試料上にシャープに形成される条件にして加工を行い、イオンビーム電流が前記所定値以上のときは前記イオンビーム光学系を前記マスクの開口の像が試料上にシャープに形成される条件にして加工を行うことを特徴とする試料加工方法。
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