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JP3593500B2 - コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む核酸分子 - Google Patents

コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む核酸分子 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドおよびその誘導体をコードする核酸からなる核酸分子に関する。上記誘導体は配列番号:2に記載のコリスミ酸ムターゼの少なくとも10%のコリスミ酸ムターゼ活性を有する。本発明はさらに、核酸分子を含むベクター、核酸分子を含む宿主細胞、およびコリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドの製造方法に関する。本発明はさらに、コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチド、およびそれを特異的に認識する抗体に関する。また本発明は、核酸分子を使用した栄養要求性酵母株の作製方法、および異種遺伝子の組換え体発現方法におけるその用途に関する。
【0002】
単細胞の真核微生物である酵母は、容易に培養することが可能であり、遺伝子を操作しやすいという大きな利点をもつ。また、高等生物について知られているパターンに基づいて組換えタンパク質を処理および修飾することができる。酵母は現在知られている限り病原性物質を含まないことから、治療用タンパク質の作製にも適している。例えば異種遺伝子発現によって作製された最初のワクチンであるB型肝炎ワクチンは、詳細に研究されているパン酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で異種的に発現された(Lepeticら、1996)。
【0003】
サッカロミセス・セレビシエでは多種多様なタンパク質の作製が可能であるものの(GellissenおよびHollenberg、1997の総説を参照)、いくつかの制限事項がある。例えば異種タンパク質の最大量は、細胞内の総タンパク質量の約1〜5%に留まる(BuckholzおよびGleeson、1991)。
【0004】
シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)さらにはハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などの他の様々な酵母の特性が明らかにされており、発現系としての適切性に関してサッカロミセス・セレビシエとの比較が行われている(Mullerら、1998)。上記の酵母はいずれもサッカロミセス・セレビシエと比較して活性タンパク質の分泌が極めて盛んで、異種遺伝子の発現は個々の遺伝子の影響を受けるものの、ドナー生物種には無関係である。メチロトローフは当初から組換えタンパク質を産生する生物体として注目されていた。メチロトローフは、ハンセヌラ(Hansenula)、ピキア(Pichia)、カンジダ(Candida)およびトルロプシス(Torulopsis)の4つの属に分けられ、いずれもメタン、メチルアミン、ホルムアルデヒド、またはギ酸を炭素源およびエネルギー源として利用することができる。
【0005】
なかでも、サッカロマイセターレス(Saccharomycetaceae)目に属する酵母ハンセヌラ・ポリモルファ(Lodder、1970)は、メチロトローフ酵母の比較的小さな群に属する。ハンセヌラ・ポリモルファは好気性条件下でグルコースを発酵せず、クラブトリー効果が陰性で(Verduynら、1992)、また増殖に最適な温度が37℃であることから熱耐性酵母に分類される。したがってこの酵母はメチロトローフ属の例外である。メチロトローフ酵母の生息環境は有機物質を多く含む。
【0006】
現時点で酵母ハンセヌラ・ポリモルファの遺伝子でクローン化されて特性が解析されているものは数種に過ぎず(HansenおよびHollenberg、1996)、ゲンバンクにおけるハンセヌラ・ポリモルファのクローン化された遺伝子の数は30を超える。しかしながら、これらの遺伝子の何種が詳細に解析されているか、または、プラスミド選択のマーカー遺伝子としてどれほど適しているかについて発明者は不案内である。したがって、上記遺伝子群とサッカロミセス・セレビシエの相同遺伝子群との間の類似性は(そのような遺伝子群がある範囲内では)比較的限られていると示唆することができる(Dobsonら、1982)。メチロトローフの代謝上、鍵となる酵素は酵素メタノールオキシダーゼ(MOX)、ジヒドロキシアセトンシンターゼ(DAS)、およびギ酸デヒドロゲナーゼ(FMD)の各酵素であり、これらの酵素の発現を極めて強力なプロモーターで調節することができれば、異種遺伝子の発現に様々な有用な可能性が開かれる。これらの事項から、ハンセヌラ・ポリモルファは産業上重要な微生物の一つとなっている(Gellissenら、1994)。
【0007】
現在まで、ハンセヌラ・ポリモルファの栄養要求性株は2種のみが利用可能であり、その形質転換はそれぞれura3−またはleu2−欠損性の機能的相補性を元に選択することができる。栄養要求性株および栄養要求性を相補する能力がある核酸、からなる別の形質転換系を構築する試みは未だ成功していない。これは、相補性能力をもつ適切な遺伝子群が利用できていなかったためである。パン酵母サッカロミセス・セレビシエのアミノ酸または核酸の生合成経路にかかわる遺伝子群は数多く知られているにもかかわらず、パン酵母とメチロトローフ酵母の遺伝子間の差がときに大きなものであることが過去に報告されている。したがって、サッカロミセス・セレビシエの遺伝子がメチロトローフ酵母の栄養要求性を適切に補うということは一般的には言えず、メチロトローフ酵母の遺伝子群がサッカロミセス・セレビシエの栄養要求性の相補能力をもつことを予測することもできない。
【0008】
したがって本発明の基礎にある技術的問題は、適切な栄養要求性酵母株の形質転換における相補性の選択マーカーとしてはたらきうるハンセヌラ・ポリモルファ由来の新規遺伝子を提供することにある。また別の問題として、ベクターおよび上記遺伝子を含む宿主細胞の提供が挙げられる。さらに、遺伝子にコードされるポリペプチドおよび同ポリペプチドを特異的に認識する抗体の提供も挙げられる。また、適切な栄養要求性の株を提供することも挙げられる。
【0009】
上記の問題は、コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸またはその相補鎖からなる核酸分子を用いることで本発明により解決される。このような核酸は以下に挙げるものから選択される:
(a)配列番号:1に記載のDNA配列または、それに対応するRNA配列を有する核酸;
(b)(a)に記載の核酸の相補鎖にハイブリッドを形成する核酸;
(c)遺伝暗号を基に、(a)および(b)で定義されるDNA配列に対して縮重している核酸;
(d)コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドをコードし(a)〜(c)に記載の核酸およびその相補鎖の一つとハイブリッドを形成する核酸
(e)(a)〜(d)に記載の核酸の一つと少なくとも60%の相同性がある核酸;
(f)(a)〜(e)に記載の核酸の異型であって、その異型が(a)〜(e)に記載の核酸に対する付加、欠失、挿入、または逆位を有する核酸の異型;
(g)(a)〜(f)に記載の核酸の一つの核酸の断片;
(h)(a)〜(g)に記載の複数の核酸の組み合わせであって、
核酸またはその相補鎖にコードされるポリペプチドが、配列番号:2に記載のコリスミ酸ムターゼのコリスミ酸ムターゼ活性の少なくとも10%を有するポリペプチド。
【0010】
微生物および植物における芳香族アミノ酸の生合成は、エリスロース−4−リン酸およびホスホエノールピルビン酸からコリスミ酸に至るシキミ酸経路の7種の酵素による媒介反応から始まる(図1)。コリスミ酸は最初の分岐点の基質である。パン酵母サッカロミセス・セレビシエでは、この分岐点を出発点として一方で酵素アントラニル酸シンターゼ(E.C. 4.1.3.27)によりアントラニル酸が生成し、もう一方では酵素コリスミ酸ムターゼ(E.C. 5.4.99.5)によりプレフェン酸が生成する。最終的に別の中間産物を経て、プレフェン酸からチロシンとフェニルアラニンが生成する(Braus、1991)。パン酵母サッカロミセス・セレビシエでは、コリスミ酸ムターゼは第XVI染色体のARO7遺伝子にコードされている(Schmidheiniら、1989)。ARO7は0.95 kbのmRNAをコードし、771 bpのオープンリーディングフレームを含み、これは256アミノ酸からなるタンパク質をコードする。
【0011】
下記に、本出願との関連でどのように理解されるべきかを明らかにするために、各用語を詳しく説明する。
【0012】
本明細書で使用する「コリスミ酸ムターゼ」という用語は、完全なコリスミ酸ムターゼ、コリスミ酸ムターゼの断片、コリスミ酸ムターゼの変異体、およびそれらの融合タンパク質を含む。本発明では、配列番号:2に記載のコリスミ酸ムターゼの少なくとも10%のコリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドを対象とする。
【0013】
「コリスミ酸ムターゼ活性」とは、酵素コリスミ酸ムターゼ[E.C. 5.4.99.5]で触媒されるフェニルアラニンおよびチロシンの生合成の一部としてのコリスミ酸からプレフェン酸への触媒的変換を意味する。本発明のポリペプチドのコリスミ酸ムターゼ活性は例えば、産物プレフェリンから320 nmに吸光を示すフェニルピルビン酸への酸触媒変換を介して分光光度的な方法で測定される(Schmidheiniら、1989)。
【0014】
成長または増殖について「原栄養」微生物は、単純な栄養素(炭素および窒素)およびミネラルのみを必要とするが、それ自身で必要なすべてのアミノ酸を合成することができる。したがって「最小培地」で成長可能である。
【0015】
これに対し「栄養要求性」の微生物は、別の因子群、例えば対象となる因子については生合成経路を欠くために自身が合成できないアミノ酸を必要とする。本発明における栄養要求性は、好ましくはフェニルアラニン/チロシン要求性であり、これは例えば、本発明で調製された栄養要求性酵母株のコリスミ酸ムターゼ活性の低下または消失が原因である。
【0016】
「最小培地」は栄養素を含む溶液を意味し、原栄養微生物の増殖に必要な成分のみを含む。本発明における最小培地は、好ましくはフェニルアラニンおよび/またはチロシンを含まない培地であり、原栄養型の微生物と比較することで、微生物のフェニルアラニン/チロシン要求性型の選択が可能となる。
【0017】
「His」タグは、少なくとも6残基のヒスチジンアミノ酸の配列を意味する。これを適切にクローニングし、発現可能な配列と融合させることで、アミノ末端に少なくとも6個のヒスチジン残基を有する融合タンパク質を作ることができる。この融合タンパク質は、Ni2+カラムと錯体を形成させることで容易に精製することができる。
【0018】
「異種遺伝子」とは、それ自身の(同種の)プロモーターの制御下で発現するのではなく、または、それが由来する微生物で発現するのではなく、または、それ自身のプロモーターの制御下でもオリジナルの微生物内でも発現されない構造遺伝子のコード領域を意味するものとして理解される。
【0019】
「クローニング」は、当技術分野で周知であるあらゆるクローニング法を含むことを意図しており、本明細書において使用される可能性があるが、当業者にとって自明のツールであることから必ずしもすべてを詳細に説明しない。
【0020】
「適切な宿主細胞における組換え体の発現」とは、既知の発現システムに関して当技術分野で周知のあらゆる発現法を意味し、本明細書において使用される可能性のあるあらゆる方法を意味するものとして理解されるが、当業者にとって自明のツールであることから必ずしもすべてを詳細に説明しない。
【0021】
ハンセヌラ・ポリモルファを形質転換して、サッカロミセス・セレビシエのaro7Δ欠失株のフェニルアラニン/チロシン要求性を機能的に相補する能力をもつゲノムクローンを選択して配列を決定することで本発明者らは、本発明の核酸を同定することと、この核酸を有するメチロトローフ酵母の栄養要求性変異体を作製することに初めて成功した。これにより、さらに至急必要なメチロトローフ酵母の形質転換系が提供される。この形質転換系では、できるかぎり単純な培地を用いた形質転換酵母の標的選択が可能となる。
【0022】
本発明者らは、ハンセヌラ・ポリモルファの染色体DNAの制限酵素切断断片をシャトルベクターにクローニングすることで、ハンセヌラ・ポリモルファ由来のゲノムバンクを調製した。該シャトルベクターは酵母内でコピー数が多く、ハンセヌラの遺伝子群は、その内因性プロモーターの制御を受けてサッカロミセス・セレビシエで発現する。このゲノムバンクは、栄養要求性のサッカロミセス・セレビシエ株の相補に使用したが、ハンセヌラ・ポリモルファの内因性プロモーターが、サッカロミセス・セレビシエ内で活性であるか否かは不明である。
【0023】
予想に反して現在では、ハンセヌラ・ポリモルファ由来のコリスミ酸ムターゼ遺伝子が、サッカロミセス・セレビシエ内で転写・翻訳されること、および酵素活性を有することが判明している。
【0024】
複数の理由から、特にコリスミ酸ムターゼ遺伝子がサッカロミセス・セレビシエ内で発現することは予測されていなかった。
【0025】
したがって、ハンセヌラ・ポリモルファ由来のコリスミ酸ムターゼ遺伝子がイントロンを含むか否か、またサッカロミセス・セレビシエのスプライシング装置が、プレRNAの正確なプロセシング能力をもつか否かは不明であった。将来的にはハンセヌラ・ポリモルファに由来するコリスミ酸ムターゼ遺伝子にはイントロンがないことが示されると考えられる。
【0026】
さらに、その翻訳産物がサッカロミセス・セレビシエ内で正確に折りたたまれれ、また必要に応じて集合し、コリスミ酸からプレフェン酸への反応の触媒能力を有する十分な活性のあるコリスミ酸ムターゼを供与できるか否かを予測することはできていなかった。この予測ができないという点は、ハンセヌラ・ポリモルファに由来するLEU2ホモログであるHLEU2には、サッカロミセス・セレビシエにおいて対応する変異の相補能力がないという事実により支持される(Agaphonovら、1994)。
【0027】
さらに、芳香族アミノ酸であるチロシンおよびフェニルアラニンのハンセヌラ・ポリモルファにおける生合成が、酵素コリスミ酸ムターゼの作用によりコリスミ酸からプレフェン酸への変換にかかわるということは全く知られていなかった。芳香族アミノ酸の生合成にはかなり大きな差があることが実際に知られている。いくつかのシアノバクテリアでは、プレフェン酸はアミノ基転移により最初にアロゲン酸に変換される。この経路はまた植物でも認められ(JensenおよびStenmark、1975)、サッカロミセス・セレビシエおよび大腸菌(E. coli)で用いられるヒドロキシフェニルピルビン酸/フェニルピルビン酸経路と比べて自然界に広く分布している。
【0028】
本発明の核酸分子に含まれる核酸は、ゲノムDNA、cDNA、または合成DNAとすることができる。この場合、合成DNA配列は、ヌクレオシド間結合の修飾を含む配列を意味する配列としても理解できる。また核酸はRNA配列とすることができ、例えば、組換えベクターシステムによる発現に必要となる場合がある。(b)に記載の核酸は、例えば、微生物に由来するcDNAまたはゲノムDNAライブラリーのスクリーニングを行うために(a)に記載の配列の1つ、またはその断片もしくはその相補鎖に対応する検出用標識プローブを使用することで得られる。このようなバンクを作製する際に元となる微生物は、以下に挙げる属から選択される属に属することが好ましい:ピキア(Pichia)、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ(Candida)、トルロプシス(Torulopsis)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、およびヤロウィア(Yarrowia)。特に、このような微生物は以下に挙げる種から選択される種に属する:ハンセヌラ・ポリモルファ、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)。この場合、陽性のcDNAまたはゲノムDNAクローンの同定は標準的な方法で行われる。マニアティス(Maniatis)らのMolecular Cloning(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
【0029】
好ましい態様では(b)または(d)に記載のハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下で行われる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件では例えば、7% SDS、1% BSA、1 mM EDTA、250 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.2)中における65℃で一晩のインキュベーションと、それに続く2×SSC;0.1% SDS中における65℃での洗浄が挙げられる。
【0030】
好ましい態様では、核酸は(a)に記載の核酸配列に対して少なくとも60%の相同性があるものとして提供される。好ましくは、核酸は(a)に記載の核酸配列に対して少なくとも80%の相同性がある。特に好ましくは、核酸は(a)に記載の核酸配列に対して少なくとも90%または95%の相同性がある。
【0031】
本発明における「相同性」という表現は、DNAレベルにおける相同性を意味し、これは既知の方法、例えばコンピュータを用いた配列比較で決定することができる(Basic local alignment search tool、S. F. Altschulら、J. Mol. Biol. 215(1990)、403〜410)。
【0032】
「相同性」という表現は当業者に周知であり、配列間の一致率で決定される2つまたはそれ以上の核酸分子間の関連性の程度を意味する。「相同性率(percentage homology)」は、ギャップまたは他の配列特性を考慮した上での2つまたはそれ以上の配列における同一領域のパーセンテージとして得られる。
【0033】
相互に関連のある核酸分子の相同性は既知の方法で決定することができる。一般には、特別の必要条件を考慮したアルゴリズムを用いる特別のコンピュータープログラムが用いられる。
【0034】
相同性決定の好ましい方法では、最初に対象配列間の最大の一致率を求める。相同性決定に用いられるコンピュータープログラムには、GAP(Devereux, Jら、Nucleic Acids Research 12 (12):387(1984);Genetics Computer Group University of Wisconsin、マジソン、ウィスコンシン州)を含むGCGプログラムパッケージ、ならびにBLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul S.ら、J. Mol. Biol.、215:403〜410(1990))があるが、これらに限定されない。BLASTXプログラムはNational Centre for Biotechnology Information(NCBI)および他のソース(BLAST Handbook、Altschul S.ら、NCB NLM NIH メリーランド州ベセスダ20894;Altschul S.ら、J. Mol. Biol.、215:403〜410(1990))から入手することができる。既知のスミス−ウォーターマン(Smith−Waterman)アルゴリズムも相同性の決定に使用することができる。
【0035】
核酸配列の比較における好ましいパラメータの例を以下に挙げる:
アルゴリズム:ニードルマン(Needleman)およびヴァンシュ(Wunsch)、J. Mol. Biol. 48:443〜453(1970)
比較マトリックス(comparison matrix):マッチ= +10
ミスマッチ=0
ギャップペナルティ(gap penalty) 50
ギャップ長さペナルティ(gap length panalty):3
【0036】
GAPプログラムも上記パラメータによる使用に適している。上記のパラメータは、核酸配列比較用のデフォルトのパラメータである。
【0037】
アルゴリズムの別の例では、ギャップオープニングペナルティ(gap opening penalty)、ギャップ伸長ペナルティ(gap extension penalty)、および比較マトリックス(comparison matrix)(いずれもプログラムハンドブック、ウィスコンシンパッケージ第9版、1997年9月における命名)が使用される。それぞれの選択は、対象となる比較、さらには比較が配列ペア間で行われるか否か、どの時点でギャップ(GAP)もしくはベストフィット(Bsst Fit)を優先させるか、または、ある配列と大規模配列データベースとの比較であればどの時点でFASTAまたはBLASTを優先させるか、の各状況に依存する。
【0038】
前出のアルゴリズムで60%の一致率があることが判明した場合、本出願では60%の相同性があると記述する。これより大きい相同性についても同様に扱う。
【0039】
好ましい態様では、本発明で対象とする核酸は(a)〜(f)に記載された複数の核酸の組み合わせであり、当業者に周知である融合および必要に応じてクローニングにより得られる。このような組み合わせは例えば、免疫源性を有するコンストラクトを作製する際に極めて重要な場合がある。
【0040】
さらに好ましい態様では、本発明で対象とする核酸にコードされたポリペプチドは、配列番号:2に記載のコリスミ酸ムターゼのコリスミ酸ムターゼ活性を少なくとも50%有する。特に好ましくは、ポリペプチドは配列番号:2に記載のコリスミ酸ムターゼ活性の少なくとも75%を有する。この場合、前述の通りコリスミ酸ムターゼ活性はシュミデイニ(Schmidheini)ら、1989にしたがって測定される。
【0041】
別の態様では、核酸分子はその発現に適したプロモーターを含み、該核酸分子はプロモーターの制御下に置かれる。プロモーターの選択は、発現に使用される発現系、特に宿主生物の選択に依存する。本発明では、PGKプロモーターおよびG3PDHプロモーターなどの構成的プロモーターに加えて、GAL4、ADH2、および銅メタロチオネインのプロモーターなどの誘導性プロモーターが好ましい(Recombinant Gene Expression Protocols in Methods in Molecular Biology、第63巻、ツァン(R S Tuan)編、第III章;シェナ(Schena, M.)ら(1991)、Vectors for constitutive and inducible expression in yeast、Methods in Enzymol. 194、389〜398の調査による)。さらに、転写を上昇させる哺乳類のグルココルチコイド応答配列(GRE)の使用も本発明で考慮される(Schenaら、Science 241(1988)、965〜967)。
【0042】
また、メチロトローフ酵母、特にハンセヌラ・ポリモルファのメタノール代謝にかかわるプロモーターも好ましい。ハンセヌラ・ポリモルファのメタノール代謝酵素の遺伝子は、これまで調べられた酵母のなかでも、極めて強く発現・調節される遺伝子の一つである(Van der Kleiら、1991)。対応するタンパク質は、細胞の総タンパク質量の最大30%となる場合がある(Janowiczら、1985;Ledeboerら、1985)。メタノール代謝にかかわる遺伝子の発現は、一方ではメタノールで誘導され、他方ではグリセロールの存在により脱抑制される。このように、メタノール代謝にかかわる強いプロモーターも、メタノールを含まない培養条件下における異種遺伝子の発現に使用することができる。
【0043】
特に好ましいプロモーターは、ハンセヌラ・ポリモルファで調べられたメタノールオキシダーゼMOXのプロモーターであり、約1.5 kbと異常に大きく、これまで報告された酵母のプロモーターのなかで最も強力なプロモーターである。グルコースが存在するとMOXプロモーターは抑制されるが、このプロモーターの活性は、グリセロールまたはメタノールにより1000倍以上に上昇させることが可能である(Godeckeら、1994)。さらに特に好ましいプロモーターは、ジヒドロキシアセトンシンターゼDASのプロモーター(Ledeboerら、1985)およびFMDプロモーター(欧州特許第299108号)である。
【0044】
別の好ましい態様では、核酸分子はまた、発現したタンパク質を確実に輸送するための核酸配列をコードするシグナルペプチドを含む。この場合、シグナルペプチドがコードする核酸配列は、発現対象の異種遺伝子の5’端に直接結合させることが好ましい。多くの真核生物におけるタンパク質の分泌および修飾に関しては、ポリペプチドを分泌装置へ導くために、タンパク質配列のN末端にシグナル配列を融合させることが必要である。これを可能にするものとして例えば、サッカロミセス・オクシデンタリス(S. occidentalis)の遺伝子GAM1(Dohmenら、1990)およびミドリガニ(Carcinus maenas)のホルモン遺伝子(Weydemannら、1989)に由来する成分がある。これらを用いることでヒルジンを分泌させることに成功している(Weydemannら、1995)。
【0045】
別の好ましい態様では、本発明の核酸分子はベクターの少なくとも一部(特に制御領域)も含む。このようなベクターの例を以下に挙げる:λ誘導体などのバクテリオファージ、プラスミド、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、SV40ウイルス、およびレトロウイルス(好ましくはMoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス))。
【0046】
特に好ましいベクターは酵母の形質転換用ベクターであり、組み込み型酵母プラスミド(YIp)および染色体外プラスミドベクターはいずれも利用可能である。染色体外プラスミドベクターはさらにエピソーム性酵母プラスミド(YEp)、複製型酵母プラスミド(YRp)、および酵母セントロメアプラスミド(YCp)に分類される(上記のSingh, K.K.およびHeinemann, J.A.による「Recombinant Gene Expression Protocols」の第11章を参照)。さらに人工酵母染色体(YAC)も、本発明における発現ベクターとして使用される可能性がある。
【0047】
また特に好ましいベクターには、複製起点oriおよび抗生物質耐性カセットを含む酵母複製型プラスミドがある。このベクターは大腸菌において増殖および選択が可能である。さらにこのプラスミドは、例えばハンセヌラ・ポリモルファのHARS1などの、酵母細胞内で染色体に依存しない複製を担うARS配列、およびURA3やHLEU2などの代謝関連の酵母選択マーカーを含む(GellisenおよびHollenberg、1997)。
【0048】
これまでに多くの異種タンパク質がハンセヌラ・ポリモルファで作製されており(GellissenおよびHollenberg、1997)、一つの形質転換ベクター上に複数の発現カセットを配置することで様々な遺伝子を同時に発現させることも可能となっている(Gilbertら、1994)。
【0049】
また核酸分子には、HisタグをコードするDNA配列を追加的に含めることが好ましい。Hisタグがコンストラクトで発現することで、アミノ末端にHisタグを有した融合タンパク質が生成し、ニッケルカラム上にキレートを生成させることでタンパク質の精製が容易になる。
【0050】
本発明では、本発明の核酸分子を含み、かつ異種遺伝子の発現に適した宿主細胞が提供される。当技術分野では原核細胞および真核細胞の発現系が多く知られており、宿主細胞は例えば大腸菌や枯草菌(B. Subtilis)などの原核細胞のほか、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳類細胞(例えばCHO細胞、COS細胞、またはHeLa細胞、およびそれらの誘導細胞)などの真核細胞から選択される。当技術分野では例えばCHO細胞に匹敵するようにグリコシル化パターンを修飾したCHO産生系列が知られている。
【0051】
酵母は、以下の属に属することが好ましい: ピキア、ハンセヌラ、カンジダ、トルロプシス、サッカロミセス、シゾサッカロミセス、クリュイベロミセス、およびヤロウィア。また特に微生物は以下の種に属する:ハンセヌラ・ポリモルファ、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、クリュイベロミセス・ラクティス、およびヤロウィア・リポリティカ(上記のRecombinant Gene Expression Protocols in Methods in Molecular Biologyを参照)。
【0052】
本発明の別の目的に、コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドの作製方法がある。この目的のために、本発明で対象とする核酸分子は適切な宿主細胞で発現され、そのタンパク質は宿主細胞または培地から標準的な手法で分離される。
【0053】
DNA配列の発現に関する多くの方法が当業者に周知である。これについては上述のRecombinant Gene Expression Protocols in Methods in Molecular Biologyを参照されたい。発現は、構成的発現でも誘導的発現でもよく、IPTGおよびZn2+などの誘導物質は当業者に周知である。産生されるコリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドは、そのアミノ末端にHisタグを融合させることで、ニッケルカラム上でキレートを生成させることで精製される。コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィーおよび/またはゲル濾過クロマトグラフィーで精製することが好ましい。これらの手法の実施手順は当業者に周知である。
【0054】
さらに好ましい態様では、本発明で産生されるコリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドは修飾を受ける。この場合の修飾には、例えば架橋(例えばジシクロヘキシルカルボジイミドやPEG利用(pegylation)もしくは集合(自己集合化)など)によるモノマーを出発物質とする二量体、オリゴ体、およびポリマーの形成などがある。他の修飾には、側鎖の修飾、例えばポリペプチドのε−アミノ−リジン残基や、アミノ末端またはカルボキシ末端の修飾などがある。その他の修飾には、翻訳後の処理、例えばタンパク質のグリコシル化や部分的または全体にわたる脱グリコシル化が含まれる。
【0055】
好ましい態様では、原核生物またはグリコシル化能を欠損した真核生物における組換え体の発現で得られるポリペプチドはグリコシル化されない。また、本発明で考慮されるのはコリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドであって、グリコシル化能力をもつ真核細胞(酵母細胞、昆虫細胞、または、CHO細胞もしくはHeLa細胞などの哺乳類細胞)における組換え体の発現でグリコシル化されるものである。
【0056】
別の態様では、コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドは、本発明で対象とする一つまたは複数の核酸分子によりコードされたアミノ酸配列を含むように作製することができる。
【0057】
好ましくは、コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号:2に記載のアミノ酸配列またはその断片であって、配列番号:2のコリスミ酸ムターゼの少なくとも10%、好ましくは50%以上、また特に好ましくは75%以上のコリスミ酸ムターゼ活性を有するものを利用することができる。
【0058】
本発明の別の態様では、組換え体の作製方法またはそれを修正して得られるコリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドを提供する。
【0059】
さらに、コリスミ酸ムターゼ活性を有する非グリコシル化ポリペプチドおよびグリコシル化ポリペプチドであってグリコシル化能をもつ、またはグリコシル化能をもたない宿主細胞における発現で得られるポリペプチドが提供される。ポリペプチドの目的とする用途に応じて、特にハンセヌラ・ポリモルファなどのメチロトローフ酵母などの酵母のグリコシル化のパターン、またはCOS細胞もしくはHeLa細胞のグリコシル化のパターンが好ましい。
【0060】
本発明はさらに、コリスミ酸ムターゼ活性を有する本発明のポリペプチドと特異的に反応する抗体であって、実験動物を同ポリペプチドで免疫化して得られる抗体を提供する。ポリクローナル抗体は、例えばウサギ、マウス、またはラットを免疫化した後に抗血清を抽出することで得られる。モノクローナル抗体は、例えばマウスを免疫化して脾臓細胞を抽出および不死化し、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を産生するハイブリドーマをクローン化することにより標準的な手法で得られる。
【0061】
本発明の別の態様では、フェニルアラニンおよびチロシン要求性の酵母株を産生する方法を提供する。この方法では、対応する酵母株の内因性のコリスミ酸ムターゼ遺伝子を破壊し、変異体は配列番号:2に記載されるコリスミ酸ムターゼのコリスミ酸ムターゼ活性の10%未満を示す。
【0062】
本発明では、変異体を産生する方法として相同組換えを利用することができる。相同組換えによるコリスミ酸ムターゼ遺伝子の破壊は、この遺伝子の内因性の染色体コピーを不活性化されたコピーと置換することに基づく。破壊コンストラクトの調製では、この遺伝子のより大きな領域が破壊されたクローニングが、好ましくは5’領域および3’領域を含む効率のよい相同組換えに必要となる。クローン化された領域は少なくとも 2 kbの長さをカバーすることが好ましい。
【0063】
ハンセヌラ・ポリモルファ由来のゲノムDNAをBglIIで切断した後に、コリスミ酸ムターゼに特異的なプローブ(例えば配列番号:3)でサザンブロット解析を行ったところ、それぞれ3.2 kbと3.0 kbの2本のバンドが得られた。さらに調査したところ3.2 kbのBglII/BglII断片は配列番号:3に記載の690 bpに加えて5’側の隣接領域を含んでいた。3.0 kbのBglII断片は、配列番号:3に記載の960 bpに加えて3’側の隣接領域を含んでいる。3.2 kb断片と3.0 kb断片の、当業者に周知の標準手段による分離および標的融合(directed fusion)により6.2 kbの断片が得られる。この断片はコリスミ酸ムターゼ遺伝子と長い5’側および3’側の隣接領域を含む。
【0064】
本発明で破壊対象となる核酸は、好ましくは配列番号:1に記載の核酸またはそれと相同な核酸であり、特に好ましくは配列番号:3に記載の核酸またはそれに相同な核酸であり、特に6.2 kbのゲノムDNA断片を含む核酸、それに相同な核酸、またはその一部の核酸がクローニングされ、オリゴヌクレオチド交換による変異導入の対象となる。この場合、変異には対象となる遺伝子の発現を低下させたり、不活性な翻訳産物を産生したりする付加、欠失、逆位、または置換が含まれる。このような変異は好ましくは、少なくとも一つの領域またはその一部分で起こり、アミノ酸の位置(配列番号:2)として10〜20位、154〜167位、192〜196位、および240〜247位に対応する核酸上の位置から選択される。これらの領域は、コリスミ酸ムターゼの触媒中心を形成すると考えられている部分である。コリスミ酸ムターゼをコードする核酸は、より長いオリゴヌクレオチド中にクローニングすることで不活性化することが好ましい。
【0065】
内因性のコリスミ酸ムターゼ遺伝子は単コピーの遺伝子として存在することが好ましい。
【0066】
オリゴヌクレオチド交換に使用するオリゴヌクレオチドは、抗生物質耐性または代謝マーカーなどの少なくとも一つの選択マーカーを含むことが好ましい。本発明では当技術分野で周知のあらゆる選択可能マーカーが対象とされる。または、このコンストラクトは合成して調製することもできる。効率のよい相同組換えのためには、コンストラクトの長さは少なくとも2 kbである必要がある。
【0067】
クローン化されるオリゴヌクレオチドは、5’側および3’側の両側でコリスミ酸ムターゼに特異的な断片と接する。この配列は請求項1(a)〜(h)に記載の配列に対応しており、またはこれらに相補的であり、またオリジナルの染色体コピーとハイブリッドを形成可能である。
【0068】
破壊変異体を作製する際には、最初にこのコンストラクトを直鎖状にする。次に破壊変異体の作製に使用する原栄養酵母株を上記コンストラクトで形質転換する。このコンストラクトは選択マーカーを含むので、形質転換体を適切な選択圧の下で選択することができる。フェニルアラニン/チロシン要求性の形質転換体は、フェニルアラニン/チロシンを含まない培地上で増殖させることで同定される。
【0069】
好ましい態様では、この方法は以下の段階からなる:
a)相同組換えに適し、相同組換えに不適な核酸に隣接する請求項1(a)〜(h)に記載の核酸の少なくとも2つの断片を含むコンストラクトの調製;
b)完全な内因性コリスミ酸ムターゼ遺伝子を有する酵母株細胞の、上記コンストラクトによる形質転換;および
c)フェニルアラニンおよびチロシン要求性の形質転換体の同定。
【0070】
特に好ましくは、このコンストラクトは選択マーカー遺伝子も含む。さらに同コンストラクトは一つまたは複数の組換え部位(好ましくは選択マーカーの5’側および3’側に隣接し、内因性のコリスミ酸ムターゼ遺伝子が破壊された後に同コンストラクトから選択マーカーの除去を可能とする組換え部位)を含めることができる。
【0071】
組換え部位はloxPであることが好ましい。特に好ましい態様では、この方法はさらに段階b)を含む。この段階では、酵母細胞をCreリコンビナーゼの発現に適した核酸に接触させ、その結果としてloxP/Creリコンビナーゼ組換え系による選択マーカーの除去が可能となる。
【0072】
特に好ましい態様では、この酵母株はハンセヌラ・ポリモルファである。
【0073】
本発明の別の態様では、フェニルアラニンおよびチロシン要求性の酵母株が提供される。このような株は例えば本発明の方法で得られる。
【0074】
別の態様では、タンパク質の組換え体作製法は、以下の段階を含むように提供される:
a)本発明の栄養要求性酵母株の、発現に適した本発明の核酸と、適切なプロモーターの制御下における発現に適した異種遺伝子の組み合わせによる形質転換;
b)異種遺伝子の発現および本発明の核酸分子の発現に適した条件下における形質転換体の培養、および必要に応じて、異種遺伝子にコードされたタンパク質の分離。
【0075】
好ましい態様では、この方法はさらに、フェニルアラニンおよび/またはチロシンを含まない培地上における形質転換体を選択する段階を含む。
【0076】
本発明による組換え体の作製方法は、本発明の核酸分子および空間的に互いに分かれた異種遺伝子を用いて行うことができる。この場合、2つの要素は2つのベクター(バイナリベクターシステム)として提供することができ、また相互に独立に形質転換に利用できる。またはコリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする本発明の核酸分子および異種遺伝子を一つのベクター上に配置することができる。このような融合ベクターには、選択マーカー遺伝子および異種遺伝子が相互に共有結合で結合されているために、形質転換後にすべての原栄養性クローンが異種遺伝子も含み、その結果としてスクリーニングの手間を軽減させるという利点がある。
【0077】
本発明による、異種遺伝子の発現に好ましいプロモーターおよびベクターは、本発明の核酸分子の発現に関して上述したプロモーターおよびベクターに対応する。このベクターは、組換えタンパク質を培地中へ分泌させるためのシグナルペプチドをコードする核酸配列も選択的に含み、異種遺伝子の5’側と直接接している。またHisタグをコードする核酸配列を異種遺伝子の5’端への付加することで、組換え体の発現後にニッケルキレートカラム上における精製が可能となる点も有利である。
【0078】
本発明はさらに、上述の方法で得られる組換えタンパク質を提供する。
【0079】
本発明を、図面および実施例を用いて説明するつもりであるが、これらに限定されるものではない。記述および実施例を元に、当業者に受け入れられる他の態様も含まれる。
【0080】
材料および方法
1.材料
1.1 試薬
溶液、緩衝液、および培地を調製するための化学物質はMerck社(ダルムシュタット、ドイツ)、Boehringer Ingelheim Bioproducts社(ハイデルベルク、ドイツ)、Carl Roth GmbH & Co KG社(カルルスルーエ、ドイツ)、Gibco BRL社(Life Technologies GmbH、カルルスルーエ、ドイツ)、Fluka社(ノイウルム、ドイツ)、およびSigma−Aldrich Chemie GmbH社(シュタインハイム、ドイツ)から入手した。
【0081】
制限酵素、DNA修飾酵素、およびポリメラーゼはMBI Fermentas社(ビリニュス、リトアニア)から、RNase AはBoehringer Mannheim GmbH社(マンハイム、ドイツ)から購入した。DNAのサイズ標準としてMBI Fermentas社の「1 kb DNAラダー」(Gene Ruler Plus)を使用した。アガロースはRothから入手した。
【0082】
大腸菌からのプラスミドDNAの調製および、アガロースゲルからのDNAの抽出にはQiagen社(ヒルデン、ドイツ)のキットを使用した。
【0083】
合成オリゴヌクレオチドはNucleic Acid Products Supply Gottingen GmbH社(ゲッティンゲン、ドイツ)およびGibco BRL社(Life Technologies GmbH、カルルスルーエ、ドイツ)から購入した。
【0084】
配列決定はMWG−Biotech GmbH社(エーベルスベルク、ドイツ)に依頼した。
【0085】
1.2 株、プラスミド、およびオリゴヌクレオチド
クローニングには大腸菌DH5α株[F’、φ80dlacZΔM15、Δ(lacZY A−argF)、U169、deoR、recA1、endA1、hsdR17、(r 、m )、supE44、λ−、thi−1、gyrA96、relA1]を使用した(Woodcock、1989)。また、ハンセヌラ・ポリモルファRB11株(ura3)を使用した(Weydemannら、1995)。
【0086】
使用したサッカロミセス・セレビシエの株を表1に示した。
クローニングに必要なプラスミドおよびオリゴヌクレオチドを表2と表3に示した。
【0087】
【表1】使用したサッカロミセス・セレビシエ株
Figure 0003593500
【0088】
【表2】使用したプラスミド
Figure 0003593500
【0089】
【表3】使用したオリゴヌクレオチド
Figure 0003593500
【0090】
2.方法
2.1 微生物の培養
2.1.1 大腸菌
この細胞はルリア−ベルターニ培地(LB:1% トリプトン、0.5% 酵母エキストラクト、1% NaCl)で37℃で培養した。アンピシリン耐性マーカーをもつ株については、50 mg/lのアンピシリンを培地に添加した。
【0091】
2.1.2 ハンセヌラ・ポリモルファ
この細胞は「酵母エキストラクト・ペプトンデキストロース培地」(YEPD:2% ペプトン、1% 酵母エキストラクト、2% グルコース)または「酵母窒素基礎培地」(YNB:0.15% 酵母窒素源、0.5% (NHSO、0.1% ミオイノシトール(200 mM)、5% グルコース、に本株についてはウラシルを添加)で37℃で培養した。すべての培地は使用前に蒸気滅菌し、固体培地とするために2%の寒天を添加した。
【0092】
2.1.3 サッカロミセス・セレビシエ
この細胞は「酵母エキストラクト・ペプトンデキストロース培地」(YEPD:2% ペプトン、1% 酵母エキストラクト、2% グルコース)または「最小ビタミン培地」(MV:0.15% 酵母窒素源、0.52% 硫酸アンモニウム、2% グルコース、1% コハク酸、0.3% KOH)で30℃で培養した。L−アミノ酸やウラシルなどの添加物質はシェルマン(Sherman)ら(1986)の方法で添加し、抗生物質と同様に、滅菌濾過または蒸気滅菌した無菌培地に添加した。固体培地とするために2%の寒天を添加した。酵母細胞の増殖は600 nmにおける光学密度を測定して追跡した。
【0093】
2.2 核酸の分離
2.2.1 大腸菌からのQiagenによるプラスミドDNAの調製
培養した細菌を最初に遠心して沈澱させ、得られた沈澱を0.3 mlの緩衝液P1(製造業者による緩衝液の名称)に再懸濁した。次に0.3 mlの緩衝液P2を添加し、この混合液を5分間室温でインキュベートした。次の段階では、0.3 mlの冷却緩衝液P3を添加し、再び5分間氷中でインキュベートした。次いで同混合液を10分間遠心(12,000 rpm)し、あらかじめQBT緩衝液で平衡化しておいたQuiagen−tip 20カラムに上清を添加した。上清がカラムを通過した後に、これを1 mlのQC緩衝液で4回洗浄した。結合したDNAは0.8 mlのQF緩衝液で溶出した。溶出したDNAは0.7容のイソプロパノールを添加して遠心(30分、10,000 rpm)して沈澱させた。最後にこのDNAを1 mlの70%エタノールで洗浄し、乾燥後に水に溶解した。
【0094】
2.2.2 大腸菌からのプラスミドDNAの分離(BirnboimおよびDoly、1979)
大腸菌培養液を5 mlのLB−Amp中で37℃で一晩回転振盪機で培養した。1.5 mlの培養液をEppendorf反応容器に入れて遠心し、細胞を100 μlの溶液I(50 mM グルコース、10 mM EDTA、20 mM トリス塩酸、pH 8.4、4 mg/ml リゾチーム)に再懸濁した。室温における7分間のインキュベーション後に、200 μlの溶液II(0.2 mM NaOH、1% w/v SDS)を添加し、この混合液を軽く振盪して5分間氷中でインキュベートした。50 μlの溶液III(3 M 酢酸ナトリウム、pH 4.8)を添加し、混合液を再び軽く振盪してさらに7分間氷中でインキュベートした。細胞残渣を遠心して沈澱させて上清をTE緩衝液(10 mM トリス塩酸、1 mM EDTA、pH 8.0)をベースとしたCHCl飽和フェノール450 μlで抽出し、次に450 μlのCHClで抽出した。1 mlの冷エタノールを添加してプラスミドを沈澱させ、−20℃でインキュベートした。30分間4℃で遠心した後、沈澱を200 μlの70%エタノールで洗浄し、真空乾燥後に50 μlのTE緩衝液(25 μg/mlのRNase Aを含む)に溶解した。DNAを溶解させるために65℃で5分間加熱し、熱安定性RNase Aと20分間37℃でインキュベートしてRNAを分解した。プラスミドDNA溶液は−20℃で保存した。
【0095】
2.2.3 ハンセヌラ・ポリモルファからの染色体DNAの分離(HofmanおよびWinston、1987)
10 mlのYEPD培地に接種して約15分間37℃でインキュベートした。細胞を遠心して沈澱させて0.5 mlの滅菌水に再懸濁し、再び遠心して沈澱させた。上清を捨て、0.2 mlの溶解緩衝液(2% Triton X−100、1% SDS、100 mM NaCl、10 mM トリス、pH 8.0、1 mM EDTA)、0.2 mlのフェノール/MeCl/TE、および0.3 gのガラス球を添加した。細胞を破砕するために上記溶液を3〜4分間振盪した後に、細胞残渣を遠心して沈澱させた(5分間、13,000 rpm)。水相を新しい容器に移し、1 mlのエタノールを添加後してDNAを沈澱させ、再び遠心して沈澱させた。沈殿を0.4 mlのTE(10 mM トリス塩酸、1 mM EDTA、pH 8.0)に再懸濁し、3 μlのRNase A(10 mg/ml)を添加後に混合液を5分間37℃でインキュベートした。次に10 μlの4M 酢酸アンモニウムおよび1 mlのエタノールを添加して遠心してDNAを沈澱させ、上清を捨てて乾燥させた後に50 μlのTEに溶解した[原文のまま]。
【0096】
2.3 クローニング法
2.3.1 ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」;Saikiら、1985)
ポリメラーゼ連鎖反応は、熱に安定な酵素であるTaqポリメラーゼ(Fermentas)を用いてGeneAmp(商標)反応容器(Eppendorf)中で行った。通常5〜50 nmolのプライマーオリゴヌクレオチドと10〜100 ngの鋳型DNAを製造業者の指示通りに20〜50 μlの反応緩衝液に使用した。原則として以下の温度で30サイクルを行った: 94℃における30秒間の変性/一定反応温度における30秒間のハイブリダイゼーション/Taq−DNAポリメラーゼによる72℃における30秒〜3分間の合成。PCRサイクルは3分間の変性段階から開始し、5分間の最終合成段階で終了した。
【0097】
2.3.2 DNAの制限酵素による切断
制限酵素を用いた分析目的の反応では、約0.5 μgのDNAを1〜2ユニットの制限酵素と容量20 μlで2〜3時間37℃でインキュベートした。調製目的の量のDNAの制限酵素による切断では、相応の大用量の酵母と適量の酵素を使用した。反応緩衝液は製造業者の指示通りに使用した。
【0098】
2.3.3 アガロースゲル電気泳動
0.1容量のDNA用色素(25% w/v フィコール400、0.25% w/v ブロモフェノールブルー、0.25% w/v キシレンシアノール、200 mM EDTA、pH 8.0)を制限酵素混合液に添加し、TAE緩衝液(40 mM トリス酢酸、20 mM 酢酸ナトリウム、2 mM EDTA、pH 8.3)に浸した水平アガロースゲルに0.5 μg/mlの臭化エチジウムを加えて電気泳動でDNA断片を分離した。DNAのバンドはUVトランスイルミネーター(254 mm)で検出した。
【0099】
2.3.4 アガロースからのDNA断片の分離
アガロースゲルからDNA断片を分離するために、QIAquick Gel Extranction Kit Protocolのカラムおよび緩衝液を製造業者による使用上の指示にしたがって使用した。このためDNA断片を最初にゲルから切り出して秤量した。3倍量のQX1緩衝液を添加して10分間50℃でインキュベートした。ゲル断片を完全に溶解させた直後に1倍量のイソプロパノールを添加し、同混合液をQIAquickカラム上に重層して遠心した。カラムに結合したDNAを洗浄するために0.75 mlのPE緩衝液を添加して再遠心した。最後にDNAを50 μlの水で溶出した。
【0100】
2.3.5 DNA断片のライゲーション(Maniatisら、1989)
粘着末端または平滑末端の直鎖状DNA断片を総容量20 μlの反応混合液中で、ライゲーション緩衝液(20 mM トリス塩酸、10 mM MgCl、10 mM DTT、0.6 mM ATP、pH 7.6)および5ユニットのT4リガーゼを用いて一晩15℃または5時間室温でライゲーションした。DNA濃度は1〜10 μg/mlとし、ベクター/挿入DNAのモル比は1:5〜1:10とした。ライゲーション反応後に同DNAを精製することなく形質転換に用いた。
【0101】
2.4 形質転換の方法
2.4.1 大腸菌の形質転換(Inoueら、1990)
250 mlのSOB培養液(2% トリプトン、0.5% 酵母エキストラクト、10 mM NaCl、2.5 mM KCl、10 mM MgCl、10 mM MgSO)の細胞を指数増殖期で10分間4℃(1000×g)で遠心して沈澱させ、80 mlのTB緩衝液(10 mM PIPES、15 mM CaCl×HO、 250 mM KCl、pH 6.7、55 mM MnCl×HO)に再懸濁した。インキュベーション(氷上で10分)後、細胞を4℃で2,500 rpmで再遠心した。次に沈殿物を20 mlのTB緩衝液中に慎重に再懸濁して7% DMSOと慎重に十分混合した。10分間氷上でインキュベーションした後、コンピテント細胞を取り分け、液体窒素中で凍結ショックを加えて−70℃で保存した。200 μlのコンピテント細胞を1〜10 μgのDNAに添加して氷上で30分間インキュベートした。30秒間の42℃における熱ショックを加えた後、この混合液を氷上で凍らせ、800 μlのSOC培地(SOB、20 mM グルコースを含む)で処理して37℃で1時間振盪した。各容量(10〜900 μl)の細胞培養液を固体選択培地(LB完全培地の寒天プレートに50 μg/mlのアンピシリンを添加したもの)にプレーティングし、最終的にプレートを一晩37℃でインキュベートして形質転換細胞がコロニーを形成するのを待った。
【0102】
2.4.2 サッカロミセス・セレビシエの形質転換(Itoら、1983を改変)
0.5 mlの新鮮な酵母培養液の一晩増殖させたものを形質転換混合液として用いた。細胞を室温で遠心(5分間、3,500 rpm)して沈澱させ上清を除いた。次に形質転換用のDNAおよび50 μgのキャリアDNAを添加して混合した。最後に0.5 mlのPEG(40% PEG3350、0.1M 酢酸リチウム、10 mM トリス、pH 7.5、1 mM EDTA、0.1 M DTT)を添加し、形質転換混合液を振盪して少なくとも12時間室温でインキュベートした。20分間の熱ショック(42℃)を加えた後に、この細胞を慎重に遠心し、1 mlのYEPD中で1時間30℃でインキュベートした。次に細胞を机上遠心機で5秒間遠心し、上清を捨てた後に残りの液体に再懸濁して選択培地にプレーティングした。
【0103】
2.5 ハイブリダイゼーションの方法
2.5.1 サザンハイブリダイゼーション(Southern、1975)
サザンハイブリダイゼーションでは、約10 μgの染色体DNAをTE緩衝液(10 mM トリス塩酸、1 mM EDTA、pH 8.5)に溶解し、適切な制限酵素を用いて12時間かけて切断した。切断後のDNAは1% アガロースゲルで分離した。このアガロースゲルを最初に0.25 MのHClで、次に5 M NaOH/1.0 M NaClで、最後に1 M 酢酸アンモニウムで、計3回にわたって各20分間洗浄した。次に、分離したDNAを12時間の乾燥ブロッティングによりニトロセルロースメンブレンに転写した。次にメンブレンを2分間2×SSC(0.1M NaCl、10 mM 酢酸ナトリウム、pH 7.0)で洗浄して風乾し、最後に紫外光(254 nm)下で「架橋反応」を5分間行った。
【0104】
このメンブレンを50 mlのチャーチ(Church)緩衝液(7% SDS、1% BSA、1 mM EDTA、250 mM リン酸ナトリウム、pH 7.2)中で30分間65℃でプレハイブリダイゼーションを行った後、半分量のハイブリダイゼーション溶液を廃棄した。次に、放射性標識したDNAプローブを添加してハイブリダイゼーションを一晩65℃で行った。ハイブリダイゼーション後にメンブレンを2×SSC/1% SDSで30分間65℃で洗浄した後に、X線フィルムまたはリン光体イメージングプレートを感光させた。
【0105】
2.5.2 プローブDNAの調製
プローブDNAの調製には、Stratagene 社のPrime−It(Random Primer Labeling Kit)を製造業者の指示通りに使用した。必要となるDNAは事前にPCRで増幅しておいたものをプローブの調製に用いた。
【0106】
2.6 ハンセヌラ・ポリモルファ由来のコリスミ酸ムターゼの特性解析
2.6.1 粗抽出液の調製
各酵母株を個別に添加して酵母細胞をYNB培地で培養し、OD546が約4となった時点で集菌した。粗抽出物はクラドルフェール(Kradolfer)ら(1977)の方法を元にアミコンフレンチプレス(Amicon French Press)を用いて調製した。
【0107】
2.6.2 タンパク質量の決定
タンパク質溶液のタンパク質量は、BSAをタンパク質標準物質としてブラッドフォード(Bradford)(1976)の方法で決定した。
【0108】
2.6.3 酵素活性の測定
コリスミ酸ムターゼ活性の測定は、シュミデイニ(Schmidheini)ら(1989)による停止試験(stop tset)を一部改変して行った。すべての酵素試験および吸光度測定は30℃で行った。500 μlの反応混合液は50 mMのリン酸カリウム緩衝液、pH 7.6、2 mM EDTA、20 mM DTT、および10 μlの対象タンパク質分画を含むものとした。コリスミ酸からプレフェン酸へ変換させる反応は、コリスミ酸を最終濃度1 mMとなるように添加することで開始し、10分後に500 μlの1M HClを加えて停止した。これはOD320で測定されるプレフェン酸のフェニルピルビン酸への変換にも影響を及ぼす。
【0109】
4 mlの1 M NaOHを添加して中和することで反応を終了させた。OD320の測定をHOに対して行い、酵素を含まない同様の溶液をゼロ値として使用した。この測定はまた5 μMのL−トリプトファンの存在下でも行った。酵素を含まない側定値のゼロ値を吸光値から差し引いた。フェニルピルビン酸の分子吸光係数(30℃で13095 μl/(mol × cm))を用いて、変換率(産物のμmol/(分 × mgタンパク質))および比活性(変換/mgタンパク質)を算出した。
【0110】
結果
1.ハンセヌラ・ポリモルファに由来するゲノム遺伝子バンクの調製
ゲノム遺伝子バンクの調製では、ハンセヌラ・ポリモルファRB11に由来する染色体を分離し、これを制限酵素Sau3Aで部分的に切断した。同酵素の認識配列は4塩基からのみなるのでゲノム上に比較的頻繁に現れる。5時間の反応の間にアリコートを15分間隔で採取し、各反応はEDTAを添加することで終了させた。このようにして染色体DNAが確実に切断されて様々な大きさの断片とするようにした。切断後のDNAをアガロースゲルで分離し、1 kb〜10 kbの様々な大きさの分画に分け、それぞれゲルから抽出した。抽出後の断片の分画を、事前にBamHIで直鎖状にしておいたベクターpRS426(SikorskiおよびHieter、1989)にライゲーションした(図2)。
【0111】
このようにして得られたプラスミドライブラリーで大腸菌を形質転換し、bla遺伝子にコードされる抗生物質耐性をアンピシリン存在下で選択した。全体として約150,000個の形質転換体が得られた。これらをLB培地のプレートから洗い流し、グリセリンを添加した後に−20℃で保存した。
【0112】
2.ハンセヌラ・ポリモルファゲノムに由来する1.8 kbのDNA断片は、サッカロミセス・セレビシエのaro7Δ表現型を相補する。
ハンセヌラ・ポリモルファのゲノムバンクのプラスミドを大腸菌から分離し、サッカロミセス・セレビシエRH2185株(MATα(Δaro7::LEU2 suc2−δ9 ura3−52 leu2−3 leu2−112 his4−519)を形質転換して、ARO7遺伝子の欠失に起因するTyr/Phe要求性を相補した。形質転換後の酵母細胞を、ウラシル要求性について最初に選択するためにベクターpRS426(SC−Ura)のURA3遺伝子の存在下で選択した後に、最小培地(YNB+Trp+His)に移した。30℃における約5のインキュベーション段階後、ウラシル、トリプシン、およびフェニルアラニンの非存在下で増殖能力がある3個の形質転換酵母のコロニーが分離された。プラスミドを分離して再形質転換を行った後においてもRH2185上のARO7欠失の相補性が認められた。制限酵素を用いた解析により、約5 kbの付加的なDNA断片がベクターpRS426中に同定された。さらに同DNA断片の位置を決めるためにサブクローニングを行い、得られた断片を再びベクターpRS426にライゲーションした。このような様々なプラスミドで、ゲノムバンクのプラスミドに類似しているものについて、それがRH2185中のTyr/Phe要求性を相補する能力をもつか否かを調べた。その結果、上記能力を有する約1.8 kbのApaI/XbaI断片が得られた。この結果は形質転換を繰り返し行うことで確認した。形質転換後の酵母細胞内のハンセヌラ・ポリモルファ由来の上記1.8 kbのDNA断片(プラスミドpME1525上にある)では野生型に匹敵するような増殖がみられたが、形質転換後の酵母細胞内のハンセヌラ・ポリモルファ由来の5 kbの断片(プラスミドpME1524上にある)は極めて緩やかに増殖することが注目された(図3)。
【0113】
ハンセヌラ・ポリモルファから得られた相補性の1.8 kbの断片を確認するために、同断片をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行った。ハンセヌラ・ポリモルファ、アスペルギルス・ニードランス(A. nidulans)およびサッカロミセス・セレビシエ由来の染色体DNAを制限酵素EcoRVで切断してプローブでハイブリダイゼーションを行ったところ、ハンセヌラ・ポリモルファについて明瞭なシグナルが検出されたが、サッカロミセス・セレビシエについて得られたシグナルは弱く、アスペルギルス・ニードランスについてはシグナルは得られなかった。さらにサザンハイブリダイゼーションにより、同遺伝子がハンセヌラ・ポリモルファのゲノム上に1回のみ出現することが示された(図4)。
【0114】
ハンセヌラ・ポリモルファRB11に由来するこの1.8 kbのDNA断片の配列を完全に決定し、843 bpからなるオープンリーディングフレームを同定することができた(図5)。これはサッカロミセス・セレビシエ由来のARO7遺伝子と58%の一致率が認められた。したがってこの断片は、ARO7に相同な酵母ハンセヌラ・ポリモルファの遺伝子であると推定され、本明細書ではこれをHARO7と呼ぶことにする。
【0115】
3.様々な欠失コンストラクトの調製
ハンセヌラ・ポリモルファに由来する1.8 kbのDNA断片の配列を元に、プライマーOLSK34およびOLSK35を用いて様々なharo7Δ欠失コンストラクトを調製した。これらの様々な欠失コンストラクトでハンセヌラ・ポリモルファを形質転換し、同遺伝子が意図した遺伝子であることを確認し、ハンセヌラ・ポリモルファにコリスミ酸ムターゼのイソ酵素が存在しないことを確認した。
【0116】
ハンセヌラ・ポリモルファのHARO7を欠失させることで、同遺伝子が意図した遺伝子であることを最終的に証明することが可能で、この遺伝子に代わる別の遺伝子の存在を調べることができる。また同時にこのような欠失変異体を構築することで、新しい選択の可能性が開ける。haro7A欠失株の調製では3種の異なる破壊カセットを構築した。ハンセヌラ・ポリモルファのゲノムへの組み込みが必要なことから、相同組換えによりHARO7遺伝子の欠失に影響すると思われるHARO7遺伝子の隣接領域を上記3種のコンストラクトに対して用いた。3’端側の隣接領域はプライマーOLSK34およびT7を用いて増幅した後に制限酵素ApaIおよびBglIIで切断した。5’端側の隣接領域はプライマーOLSK35およびT3を用いて増幅した後に制限酵素XbaIおよびBglIIで切断した。これは、プライマーOLSK34とOLSK35がBglIIの切断部位を有するために可能である(図6)。
【0117】
両断片をApaI/XbaIで切断したベクターpBluescript KSIIにライゲーションした後に、同ベクターを再びBglIIで開環して様々な破壊カセットを導入した(図7)。
【0118】
hisG::URA3::hisG破壊カセット(Schneiderら、1996)をBglIIで切断して上述のベクターにライゲーションした。URA3マーカーを使用することで、同カセットがハンセヌラ・ポリモルファゲノムに組み込まれたか否かを確認することができる。相同的な統合すなわちHARO7の欠失が実際に起こっているか否かはフェニルアラニン/チロシン要求性の選択により、またサザンハイブリダイゼーションにより明らかにすることができる。hisG部分はURA3マーカーの最終的な除去に都合がよく、これは5−FOA(5−フルオロオロト酸)による対抗選択を行うことで確認することができる。これはURA3遺伝子産物が5−FOAの毒性転換を生じ、URA3マーカーのない細胞のみ生存できるようになるためである(Boekeら、1984)。
【0119】
loxP::kanMX::loxP破壊カセット(Guldenerら、1996)をBamHIで切断して上述のベクターにライゲーションした。kanMXマーカーを使用することで、同カセットがハンセヌラ・ポリモルファゲノムに組み込まれたか否かをカナマイシン耐性(G418)を選択することで確認することができる。kan遺伝子は繊維性真菌アシビア・ゴシピイ(Ashbya gossypii)の翻訳伸長因子(TEF)のプロモーターおよびターミネーターに隣接している(SteinerおよびPhilippsen、1994)。相同的な組み込みが実際に起こっているか否かは、フェニルアラニン/チロシン要求性の選択およびサザンハイブリダイゼーションによる選択で示すことができる。この系では、欠失が起こった後にゲノムからマーカーが再び除去される可能性がある。これはバクテリオファージP1のCre−loxP組換え系を介して起こる(Guldenerら、1996)。プラスミドpSH47(Austinら、1981)にはGAL1プロモーターが上流につながったCreリコンビナーゼ遺伝子、およびARS、CEN、およびURA3マーカーなどの要素が含まれる。ガラクトースによりリコンビナーゼの発現が誘導され、これが隣接するloxP領域の組換えによるゲノムからのマーカーの除去に影響を及ぼす。
【0120】
loxP::ODC1::loxP破壊カセットは、loxP::kanMX::loxP破壊カセット(Guldenerら、1996)に類似しているが、kanMX遺伝子がハンセヌラ・ポリモルファ由来のODC1遺伝子(=URA3)に置換されている点が異なる(M Hiller、私信)。この場合も、欠失が起こった後にゲノムからマーカーが再び除去される可能性がある。この場合のマーカーの除去は、5−フルオロオロト酸(5−FOA)培地上で選択することで確認することができる。これはODC1遺伝子産物が5−FOAの毒性変換を生じて、ODC1マーカーをもたない細胞が生存可能となるからである(Boekeら、1984)。
【0121】
hisG::URA3::hisG破壊カセットでハンセヌラ・ポリモルファRB11を形質転換したところ、チロシン/フェニルアラニン要求性およびウラシルの原栄養性を有する変異体が得られ、予測された表現型を有していた。
【0122】
4.栄養要求性酵母株を用いたタンパク質の組換えによる発現例とプラスミド選択における機能相補性
本発明の核酸分子を用いてハンセヌラ・ポリモルファにおける組換えタンパク質を発現させるために、適切な発現プラスミドを調製することができる。例えばRhein Biotech GmbH社のプラスミドpFPMT121は、このようなプラスミドの基礎として使用される。このプラスミドはRB11などのウラシル要求性株の形質転換後にハンセヌラ・ポリモルファにおける選択に用いられるサッカロミセス・セレビシエ由来のURA3遺伝子を有する(Weydemannら、1995)(odc1またはura3)。ハンセヌラ・ポリモルファ由来のFMDプロモーター(EP−B−O 299 108)とそれに続くMOXターミネーター配列(Godeckeら、1994)は発現モジュールとなる。
【0123】
制限酵素NdeIによる切断後、5 kbのDNA断片をpFPMT121から分離することができる。これはURA3をコードする配列をもたないプラスミドに対応する。このDNA断片の突出部をクレノウ処理で埋めた後に、pSK69(配列番号:3)の1.3 kbのEco72I/SspI断片にライゲーションすることができる。結果として得られるプラスミドには、選択マーカー遺伝子としてハンセヌラ・ポリモルファ由来の酵素コリスミ酸ムターゼをコードするコリスミ酸ムターゼ遺伝子(HARO7)が含まれる。この選択はチロシンおよびフェニルアラニンに関する原栄養性を対象とする。
【0124】
または、1.3 kbのEco72I/SspI断片を、SmaIで直鎖状にしたプラスミドpFPMT121にクローニングすることができる。この操作を行うことで、URA3およびHARO7の2つのマーカー遺伝子を含む発現プラスミドが得られる。
【0125】
異種タンパク質発現用の組換えDNA断片は、これらのプラスミドのFMDプロモーター領域のすぐ下流にある適切な制限酵素切断部位にクローニングすることができる。この場合、コードされるDNA配列をハンセヌラ・ポリモルファ内で確実に分泌させて発現産物のプロセシングが行われるためのDNA配列と融合することが好ましい。制御配列の一例として、サッカロミセス・セレビシエのMFα1遺伝子が挙げられる(Arnoldら、1998)。
【0126】
異種発現プラスミドに対する形質転換と、最小培地における増殖により選択される陽性形質転換体[原文のまま]。最小培地と完全培地で交互に増殖させることにより、多世代を経た後に、発現コンストラクトが有糸分裂を経て安定にゲノムに組み込まれたものを同定することができる。次に発現モジュールが宿主ゲノム上で極めて高いコピー数で存在する同株を発現用の株として使用することが好ましい。異種タンパク質の発現は、好ましくはグリセリンを唯一の炭素源とする培地に交換することでグルコース含有培地中での株の培養後にみられる。このような条件下では、異種タンパク質の強力な発現と関連するFMDプロモーターの脱抑制が生じる。最終的にこれは標準的なクロマトグラフィーによる方法で培養上清を精製することで純粋な状態で分離することができる。
【0127】
5.ハンセヌラ・ポリモルファ由来の1.8 kbの断片はコリスミ酸ムターゼ活性を有するタンパク質をコードする
この1.8 kbの断片が、コリスミ酸ムターゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含むか否かを確認するために、さまざまなプラスミドをもつ酵母株の細胞抽出物をフレンチプレスを用いて調製し、それぞれのコリスミ酸ムターゼ活性を測定した。酵素の比活性を測定するために、サッカロミセス・セレビシエRH2185(pRS426)、ハンセヌラ・ポリモルファRB11、サッカロミセス・セレビシエRH2185(pME1524)、およびサッカロミセス・セレビシエRH2185(pME1525)から細胞抽出物を調製した。ハンセヌラ・ポリモルファに由来する5 kbの断片(pME1524)さらには1.8 kbの断片(pME1525)がコリスミ酸ムターゼ活性を担う遺伝子をコードすることを示すことができた(表4)。
【0128】
【表4】様々な細胞抽出物のコリスミ酸ムターゼの比活性(U/mgタンパク質)
Figure 0003593500
この表は、各対象につき4回の活性測定値の平均値を示す。サッカロミセス・セレビシエRH2185 + pRS426、S.c. + pME1524、S.c + pME1525、およびハンセヌラ・ポリモルファRB11の細胞抽出物の値を測定した。各対象の測定は500 μMのトリプトファンの存在下または非存在下で行った。
【0129】
6.酵母ハンセヌラ・ポリモルファのHARO7遺伝子の同定
相補性を有する1.8 kbのDNA断片の配列を、T3プライマーおよびT7プライマーを用いて完全に決定した(図5)。
【0130】
酵素コリスミ酸ムターゼは、酵母ハンセヌラ・ポリモルファの843 bpからなる遺伝子にコードされておりHARO7と命名されている。この遺伝子はサッカロミセス・セレビシエのaro7Δ欠失株のフェニルアラニン/チロシン要求性を、ハンセヌラ・ポリモルファ由来のゲノム遺伝子バンクで相補することでクローン化された。したがって、ハンセヌラ・ポリモルファのプロモーターはサッカロミセス・セレビシエで機能する。イントロンは存在せず、280アミノ酸からなる32 kDAのタンパク質は同配列に由来すると考えられる。ハンセヌラ・ポリモルファ由来のコリスミ酸ムターゼのアミノ酸配列は、サッカロミセス・セレビシエの同配列と58%の一致率を示し、アスペルギルス・ニードランスの同配列と44%の一致率を示す。これらのアミノ酸配列を比較して認められた顕著な特徴は、ハンセヌラ・ポリモルファに由来する配列の23アミノ酸からなる末端が、サッカロミセス・セレビシエにもアスペルギルス・ニードランスにも存在せず、他の真核生物のコリスミ酸ムターゼのアミノ酸配列にも存在しないことである。
【0131】
参考文献
Figure 0003593500
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【図面の簡単な説明】
【図1】シキミ酸経路による芳香族アミノ酸の生合成を示す。
【図2】ベクターpRS426へのDNA断片のライゲーションを示す。このベクターを制限酵素BamHIで直鎖状にして、ハンセヌラ・ポリモルファのゲノムに由来するSau3A DNA断片を同切断部位にライゲーションした。このライゲーションはBamHIとSau3Aの切断部位が相互に互換性をもつために可能となる。
【図3】2種の相補的なDNA断片で形質転換した細胞の増殖比較を示す。増殖速度の差を強調するために、5 kb(pME1524)または1.8 kb(pME1524のpME1525サブクローン)のDNA断片で相補される細胞の成分を水で希釈し、各希釈段階の20 μlを最小培地にアプライした。異なる希釈段階の光学密度は各例で同じであるが、基本的に異なる増殖速度を示す必要があったことから、正確な増殖パラメーターは決定されなかった。
【図4】サッカロミセス・セレビシエのaro7Δ選択株のフェニルアラニン/チロシン要求性の相補能力を有するハンセヌラ・ポリモルファ由来の1.8 kbのDNA断片と、様々な真菌由来の染色体DNAとのハイブリダイゼーションのオートラジオグラフを示す。サッカロミセス・セレビシエ(1)、アスペルギルス・ニードランス(2)、およびハンセヌラ・ポリモルファ(3)に由来する染色体DNAを制限酵素EcoRVで切断し、ハンセヌラ・ポリモルファに由来する1.8 kbのゲノムDNA断片を用いて調製した、32Pで放射標識したDNAプローブとハイブリッドを形成させた。
【図5】サッカロミセス・セレビシエのaro7Δ選択株のフェニルアラニン/チロシン要求性の相補能力があるゲノムの1.8 kbの断片(配列番号:3)の配列を示す。5’領域および3’領域を小文字で示し、オープンリーディングフレーム(配列番号:1)、および由来する遺伝子産物の一次配列(配列番号:2)を大文字で示す。
【図6】HARO7−ORFの隣接領域の増幅を示す。HARO7遺伝子の隣接領域は、それぞれプライマーOLSK34/T7およびOLSK35/T3を用いて増幅した後に、それぞれApaI/BglIIおよびBglII/XbaIで切断した。
これは、プライマーOLSK34とOLSK35がBglII認識配列を含むために可能である。
【図7】様々な欠失コンストラクトの作製を示す。HARO7−ORFの隣接領域をApaI/XbaIで切断したベクターpBluescript KS IIに、それぞれApaI/BglII断片およびBglII/XbaI断片としてライゲーションした。ベクターpBluescript II KSはStratagene社(米国)から市販されている。同ベクターを再びBglIIで開環し、BamHIとBglIIでそれぞれ切断した破壊用カセットにした。
【配列表】
Figure 0003593500
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Claims (30)

  1. コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸またはその相補鎖を含む核酸分子であって、該核酸が以下の(a)〜(h)から選択される核酸分子:
    (a)配列番号:1記載のDNA配列、またはそれに対応するRNA配列を有する核酸;
    (b)(a)に記載の核酸の相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸;
    (c)遺伝暗号を基に、(a)および(b)で定義されるDNA配列に対して縮重している核酸;
    (d)コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする a )又は( c に記載の核酸およびその相補鎖の一つとストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸;
    (e)(a)に記載の核酸と少なくとも90%の相同性を有する核酸;
    (f) a に記載の核酸の異型であって、 a に記載の核酸に対する付加、欠失、挿入、または逆位を有する異型;
    (g)(a)〜(f)に記載の核酸の一つの核酸の断片;
    (h)(a)〜(g)に記載の複数の核酸の組み合わせであって、
    核酸またはその相補鎖にコードされるポリペプチドが、配列番号:2に記載のコリスミ酸ムターゼのコリスミ酸ムターゼ活性の少なくとも10%を有し、核酸分子がサッカロマイセス・セレビシエに由来するARO7遺伝子の核酸配列を含まないことを条件とするポリペプチド。
  2. デオキシリボ核酸分子であることを特徴とする、請求項1記載の核酸分子。
  3. (e)に記載の核酸が(a)に記載の核酸の一つと少なくとも95%の相同性を有することを特徴とする、請求項1記載の核酸分子。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸分子であって、該核酸にコードされるポリペプチドが、配列番号:2に記載のコリスミ酸ムターゼのコリスミ酸ムターゼ活性の少なくとも50%を有することを特徴とする核酸分子。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸分子であって、該核酸にコードされるポリペプチドが、配列番号:2に記載のコリスミ酸ムターゼのコリスミ酸ムターゼ活性の少なくとも75%を有することを特徴とする核酸分子。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸分子であって、発現制御に適したプロモーターをさらに含み、コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸が該プロモーターの制御下にある核酸分子。
  7. プロモーターが、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)に由来するMOXプロモーターまたはFMDプロモーターであることを特徴とする、請求項6記載の核酸分子。
  8. 発現および選択的には分泌に適した異種核酸配列をさらに含む、請求項6 または 7記載の核酸分子。
  9. 請求項6 8のいずれか一項に記載の核酸分子であって、該核酸分子がベクターの少なくとも一部を含み、該ベクターがバクテリオファージ、プラスミド、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、SV40ウイルス、およびレトロウイルスから選択される核酸分子。
  10. 請求項6 9のいずれか一項に記載の核酸分子であって、該核酸が、Hisタグをコードする核酸配列をさらに含み、該核酸分子が発現することでHisタグとの融合タンパク質の形成が導かれる核酸分子。
  11. 請求項6 10のいずれか一項に記載の核酸分子を含む天然には存在しない宿主細胞であって、該核酸分子の発現に適した原核細胞または真核細胞である宿主細胞。
  12. 原核細胞が大腸菌(E. coli)および枯草菌(Bacillus subtilis)から選択されることを特徴とする、請求項11記載の宿主細胞。
  13. 真核細胞がハンセヌラ・ポリモルファおよびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母細胞、昆虫細胞、ならびに哺乳類細胞(好ましくはCHO細胞、COS細胞、およびHeLa細胞)から選択されることを特徴とする、請求項11記載の天然には存在しない宿主細胞。
  14. コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドの製造方法であって、請求項1 9のいずれか一項に記載の核酸分子が適切な宿主細胞で発現し、そのタンパク質が必要に応じて単離される、ポリペプチドの製造方法。
  15. 製造されるコリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドが、天然のポリペプチドまたは化学的に修飾されたポリペプチドであることを特徴とする、請求項14記載の方法。
  16. 発現が請求項11 13のいずれか一項に記載の宿主細胞で行われることを特徴とする、請求項14 または 15記載の方法。
  17. フェニルアラニンおよびチロシン要求性の酵母株を製造する方法であって、対応する酵母株の請求項1に記載された内因性コリスミ酸ムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子の破壊を含み、その変異体が配列番号:2記載のコリスミ酸ムターゼのコリスミ酸ムターゼ活性を10%未満有する株を製造する方法。
  18. 以下の段階を含む、請求項17記載の方法:
    a)相同組換えに適さない核酸に隣接する、請求項1の(a)〜(h)に記載の、相同組換えに適した核酸の少なくとも2つの断片を含むコンストラクトの調製;
    b)該コンストラクトによる、完全な内因性コリスミ酸ムターゼ遺伝子を有する酵母株の細胞の形質転換、および
    c)フェニルアラニンおよびチロシン要求性形質転換体の同定。
  19. フェニルアラニン/チロシン非含有培地上における形質転換体の選択をさらに含むことを特徴とする、請求項18記載の方法。
  20. コンストラクトが選択マーカー遺伝子も含むことを特徴とする、請求項17 または 18記載の方法。
  21. 請求項18 20のいずれか一項に記載の方法であって、コンストラクトが一つまたは複数の組換え部位をさらに含むことを特徴とする方法。
  22. 組換え部位の一つがloxPであることを特徴とする、請求項21記載の方法。
  23. 段階b)における酵母株の細胞をさらに、Creリコンビナーゼの発現に適した核酸と接触させることを特徴とする、請求項22記載の方法。
  24. 請求項17 23のいずれか一項に記載の方法であって、酵母株がハンセヌラ・ポリモルファであることを特徴とする方法。
  25. フェニルアラニンおよびチロシン要求性の酵母株であって、請求項17 24のいずれか一項に記載の方法により得られる酵母株。
  26. ハンセヌラ・ポリモルファの原栄養酵母株の変異体であることを特徴とする、請求項25記載の栄養要求性酵母株。
  27. 以下の段階を含む、組換えによるタンパク質製造方法:
    a)請求項6 10のいずれか一項に記載の核酸分子の発現に適した核酸分子と、適切なプロモーターの制御下における発現に適した異種遺伝子を組み合わせた請求項25 または 26記載の栄養要求性酵母株の形質転換;および
    b)異種遺伝子および核酸分子の発現に適した条件下における形質転換体の培養、ならびに選択的には異種遺伝子によりコードされたタンパク質の単離。
  28. フェニルアラニンおよび/またはチロシンを含まない培地上における形質転換体の選択段階をさらに含むことを特徴とする、請求項27記載の方法。
  29. 核酸分子および異種遺伝子が互いに分かれていることを特徴とする、請求項27 または 28記載の方法。
  30. 核酸分子および異種遺伝子が一つのベクター上にあることを特徴とする、請求項27 または 28記載の方法。
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