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JP2019142813A - 細胞増殖抑制用医薬組成物 - Google Patents

細胞増殖抑制用医薬組成物 Download PDF

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JP2019142813A
JP2019142813A JP2018028733A JP2018028733A JP2019142813A JP 2019142813 A JP2019142813 A JP 2019142813A JP 2018028733 A JP2018028733 A JP 2018028733A JP 2018028733 A JP2018028733 A JP 2018028733A JP 2019142813 A JP2019142813 A JP 2019142813A
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周次 中西
Shuji Nakanishi
周次 中西
聖人 石川
Masahito Ishikawa
聖人 石川
惠嗣 永野
Keishi Nagano
惠嗣 永野
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Abstract

【課題】細胞増殖の抑制および癌の治療に用いるための医薬組成物を提供すること。【解決手段】細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含む組成物を哺乳動物に投与することにより、細胞の増殖を抑制することができる。したがって、このような酸化体分子は、抗癌剤として使用することが可能である。細胞親和性部分にはMPCを使用可能である。電子キャリア部分にはフェロセン誘導体を使用可能である。このようなポリマーの効果の少なくとも一部は、酸化体が細胞内の電子を引き抜き、細胞にアポトーシスを誘導することによると考えられる。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞の増殖を抑制するための医薬組成物に関する。より詳細には、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含む、細胞の増殖を抑制するための、あるいは不要な細胞を除去するための医薬組成物に関する。また、本発明は、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含有する医薬組成物を投与することを含む、癌の治療方法にも関する。
癌(悪性腫瘍、悪性新生物とも呼ばれる)は、遺伝子の変異によって異常な増殖を行うようになった細胞集団(腫瘍)が、周囲の組織に浸潤し、または身体の他の部分に転移することを特徴とする疾患群である。これらは、体の他の部分に広がらない良性腫瘍とは対照的なものであり、ヒトでは100種類以上の癌が知られている。癌の徴候・症状としては、しこりの形成、異常な出血、長期にわたる咳、原因不明の体重減少などがある。悪性腫瘍のほとんどは、治療を行わずに放置すると全身に転移し、患者を死に至らしめる。癌による年間の死亡者数は、世界的には800万人を超える。癌の治療手段としては、外科手術、放射線治療、化学療法等があるが、一般的に治癒率は高くない。そのうち、化学療法は重要な治療手段となっているが、副作用が大きい等の欠陥が存在する。そのため、高い抗癌活性を示しつつも、副作用が小さく、安定性に優れる抗癌薬の開発が求められている。
シスプラチンは、癌細胞に対して優れた抗癌活性を有することがよく知られている化合物である。また、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを初めとするある種のホスフィン遷移金属錯体も、シスプラチンに匹敵する抗癌作用を有する化合物であることが知られている。特開2007−308437(特許文献1)は、フェロセン骨格を有するホスフィン遷移金属錯体が、抗癌作用を有し、抗癌剤として利用できることを開示している。しかしながら、一般に化合物の抗癌活性と抗癌スペクトルは、化学構造に依存し、また、その効果には個人差もあることが知られており、化学構造が異なる種々の新規抗癌剤の開発が望まれている。
一方、本発明者らは、電気化学分野の研究を進める中で、電子伝達分子として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とビニルフェロセン(以下、VFまたはVFcとも言う)の共重合体であるポリ(MPC−co−VF)(PMF)を開発し、これにより、生細胞内の酸化還元状態、および生物時計が、電子伝達分子を用いた細胞外電子移動(EC−EET)によって制御され得ることを示した(非特許文献3および4)。また、本発明者らは、細胞外電極と細胞内の酸化還元活性分子との間での電子交換を実現させるための適切な酸化還元電位を有する電子伝達分子として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とオクタメチルビニルフェロセンとの共重合体(Me−PMF)を合成し、これにより生物時計に伴う体内の酸化還元状態の周期的変動を培地の開放電位へと伝達させ、こうした開放電位の電気化学的計測を介して、生物時計を検出することができることを示している(特許文献2)。
特開2007−308437 特開2015−188431
Nishio, K., et al., ChemPhysChem, 14, 2159-2163 (2013) Lu, Y., et al., Angew. Chem. Int. Ed., 53, 2208-2211 (2014)
本発明は、細胞増殖の抑制および癌の治療に用いるための医薬組成物を提供することを目的の一つとする。本発明の目的には、細胞増殖の抑制し、癌を治療するための方法を提供することも含まれる。
本発明者らは、細胞親和性部分(例えばMPC)と電子キャリア部分(例えば、酸化されたフェロセン誘導体)とを含む酸化体分子(例えば酸化体のPMF;以下、Ox−PMFとも言う)を哺乳動物細胞に投与することにより、細胞の増殖を抑制できることを見出した。このような効果の少なくとも一部は、酸化体分子(例えばOx−PMFなどの酸化体ポリマー)が細胞内の電子を引き抜き、細胞にアポトーシスを誘導することによると考えられる。したがって、このような酸化体分子は、細胞増殖抑制剤として使用することが可能であり、不要な細胞の除去や、抗癌剤として癌の治療などに用いられうる。また、酸化体分子は、電子を引き抜いた後には、還元体となり、殺細胞効果を失うと考えられる。本発明はこのような知見に基づくものであり、以下の態様を包含する:
[態様1]細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含む、細胞の増殖を抑制するための医薬組成物。
[態様2]不要な細胞の除去に用いるための、前記態様1に記載の医薬組成物。
[態様3]細胞にアポトーシスを誘導するための、請求項1または2に記載の医薬組成物。
[態様4]癌の治療に用いるための、前記態様1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様5]癌が、脳腫瘍、舌・上下顎癌、喉頭癌、甲状腺癌、食道癌、胃癌、大腸・直腸癌、肝細胞癌、胆のう癌、胆管癌、すい臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮体癌(子宮癌)、賢細胞癌、腎盂尿管癌、前立腺癌、膀胱癌、皮膚癌、骨運動器腫瘍、白血病、悪性リンパ腫、小児癌から成る群より選択される、前記態様4に記載の医薬組成物。
[態様6]細胞親和性部分が、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸ブチル(BMA)、MEA、MCA、BuA、MEMA、THFA、Me2A、Me3A、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体を含む、前記態様1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様7]電子キャリア部分が、フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、アントラキノン誘導体、TEMPO誘導体、ビオロゲン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン錯体、フェナジンメトサルフェート誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルーおよび2,6−ジクロロフェノールインドフェノール誘導体から選択される1種以上の酸化還元活性部分を含む、前記態様1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様8]電子キャリア部分が、フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、アントラキノン誘導体、TEMPO誘導体、ビオロゲン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン誘導体、PMS誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルー、およびDCPIPから選択される1種以上の酸化還元活性部分を側鎖に有する、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸ブチル(BMA)、MEA、MCA、BuA、MEMA、THFA、Me2A、Me3A、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体を含む、前記態様1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様9]電子キャリア部分が、下記式で表される単量体を含む、前記態様1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物:

(式中、
〜Rは、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択され;
Xは、H、C1−6アルキル基、ハロC1−6アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、qは、1〜6の整数である)からなる群から選択され;
Yは、単結合、−C(=O)NR−、−C(=O)O−、−O−、−NR−、−O(C=S)NR−、−NR(C=O)O−、−NR(C=S)O−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR、−NRSO−、−NRSO−、−NRSONR−、および−NRSONR−(ここで、Rは水素原子又はC1−6アルキル基である)からなる群から選択され;
Lは、単結合、式−(A)−(式中、Aは、独立して、−C(R10−、−CR10=CR10−、−C≡C−、又は−C(R10C(=O)O−(ここで、R10は水素原子又はC1−6アルキルである)、およびrは1〜20の整数である)を有する合成リンカー基である)。
[態様10]R〜Rが水素であり、Xが水素であり、Yが単結合であり、Lが単結合である、前記態様9記載の医薬組成物。
[態様11]細胞親和性部分が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンであり、電子キャリア部分がビニルフェロセンである、前記態様1〜10のいずれか一項記載の医薬組成物。
[態様12]酸化体分子が下記式で表される、前記態様1〜11のいずれか一項記載の医薬組成物:

(式中、
mは1〜5,000の整数であり、
nは1〜5,000の整数である)。
酸化還元状態に応じたPMFの色の変化を示した写真である。酸化体のPMFは濃い色をしているが(左側)、細胞から電子を引き抜いて還元体になると薄い色に変わる(右側)。写真は、細胞を含まない培地のみの場合であっても、12時間後には、ある程度のPMFの色の変化が生じることを示しているが、色の変化は細胞が存在する場合のほうが大きい。 PMFの色の変化を吸光度により測定した結果を示すグラフである。縦軸は吸光度、横軸は時間を表す。色の変化に伴い、吸光度が低下している。グラフは、細胞を含まない培地のみの場合であっても、ある程度の吸光度の低下(色の変化)が生じることを示しているが、吸光度の低下(色の変化)は細胞が存在する場合のほうが大きい。 PMFの1時間あたりの色の変化率を示したグラフである。色変化の速度を見ることで電子移動速度を評価できる。培地中には細胞のほかにも酸化体PMFポリマーを還元する電子源が存在することから、細胞が電子源であったかどうかを判断するために、細胞を含む条件下と、細胞を含まない条件下で、色変化の速度が評価された。細胞が存在する場合の方が、色変化の速度が速く、酸化体PMFポリマーが細胞によって還元されることが示されている。 酸化体および還元体のポリマー存在下における細胞増殖を細胞生存率アッセイにより評価した結果を示すグラフである。縦軸(Abs.)は吸光度、横軸(Time)は時間を表す。還元体ポリマーを加えたときには、細胞の増殖は影響を受けないのに対し、酸化体分子存在下では、その濃度に応じて増殖が抑制された。特に、2mMのフェロセン(Fc)濃度で酸化体PMFを添加した場合には、吸光度はほぼ一定に保たれている。 HeLa細胞に対する酸化体PMFの濃度依存的な殺細胞効果を示すグラフである。縦軸(Viability)は細胞生存率(全細胞中の生細胞の割合)、横軸(Ox-PMF concentration)は酸化体PMFの濃度を示している。2mM以上のフェロセン濃度では、細胞生存率は0となっており、細胞の除去が可能であることが示されている。 アネキシン染色によるアポトーシス解析の結果を示した図である。分析にはメルク社のMuse(登録商標) Cell Analyzerを使用した。酸化体PMFで細胞を処理した場合(左)には、還元体PMFの場合(右)に比べて、右下の区画(Early Apop.)の割合が高く、アポトーシスが誘導されていると解釈される。 図6と同様なアネキシン染色によるアポトーシス解析の結果を示した図である。分析にはメルク社のMuse(登録商標) Cell Analyzerを使用した。右下の区画(Early Apop.)の割合がコントロールに比べて多い場合、アポトーシスが起きていると解釈される。右上の区画(Late Apop./Dead)は死んでいる細胞を示しており、アポトーシスの後期、もしくはネクローシスを起こしている細胞である。右下の割合が低く、右上が高い場合はネクローシスによる細胞死であると解釈される。結果は、酸化体PMFによりアポトーシスが引き起こされることを示している。 親水部にMPCを有するPMFの構造、ならびにMPCと置換した他の成分(PTMAEF、PSPF、PSSF)の構造を示した図である。 親水部をMPCから他の成分(PTMAEF、PSSF、およびPSPF)に置き換えたポリマーによる細胞毒性を評価した結果を示すグラフである。縦軸は細胞生存率、横軸はフェロセン単位の濃度を表す。PTMAEF、PSSF、およびPSPFはいずれも、還元体(Red)であっても細胞毒性を示した。一方、PMFは酸化体(Ox−PMF)でのみ細胞毒性を示し、還元体(Red−PMF)は細胞毒性を示さない。 MPCポリマーのレドックス活性部位(フェロセン部位)と置き換える他のカチオン性構造(TMAEMA単位)を示した図である。このTMAEMA単位を含むMPCポリマーは、カチオン性であるが、レドックス不活性である。 MPCポリマーのレドックス活性部位(フェロセン部位)をカチオン性の他の構造(TMAEMA単位)に置き換えたポリマーによる細胞毒性を評価した結果を示すグラフである。縦軸は細胞生存率、横軸はTMAEMA単位の濃度(mM)を表す。この場合には、全く細胞毒性は示されなかった。
本発明者らは、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子(例えばOx−PMFなどの酸化体ポリマー)を哺乳動物細胞に投与することにより、細胞の増殖を抑制することができることを見出した。このような効果の少なくとも一部は、酸化体分子(例えばOx−PMFなどの酸化体ポリマー)が細胞内の電子を引き抜き、細胞にアポトーシスを誘導することによると考えられる。したがって、このような酸化体分子は、細胞増殖抑制剤として使用することが可能であり、不要な細胞の除去や、抗癌剤として癌の治療などに用いられうる。また、酸化体分子は、電子を引き抜いた後には、還元体となり、殺細胞効果を失うと考えられる。本発明は、このような知見に基づくものであり、以下に、本発明を詳細に説明する。
電子キャリア部分
上述のように、本発明者らは、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子(例えばOx−PMFなどの酸化体ポリマー)を哺乳動物細胞に投与することにより、細胞の増殖を抑制することができることを見出した。本発明に係る酸化体分子の実施態様において、電子キャリア部分は、レドックス活性を提供する。本発明に係る酸化体分子の実施態様において、電子キャリア部分は、例えば、フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、アントラキノン誘導体、TEMPO誘導体、ビオロゲン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン錯体、フェナジンメトサルフェート(「PMS」)誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルーおよび2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(「DCPIP」)誘導体などの酸化還元活性部分を含むことができる。本発明に係る酸化体分子の実施態様において、電子キャリア部分は、カチオン性のものであることができる。錯体形成の可能な金属イオンとしては、限定されないが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Al3+が挙げられる。特に好ましい金属イオンの例はFe3+である。なお、上記に列挙した誘導体が、本発明において機能し得るためには金属錯体であり得る。また、本発明によれば、上述したシクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導などを含む大環状化合物もまた、本発明において使用することができる。
本発明に係る酸化体分子の実施態様において、電子キャリア部分は、例えば、フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、アントラキノン誘導体、TEMPO誘導体、ビオロゲン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン誘導体、PMS誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルー、またはDCPIPなどの酸化還元活性部分を側鎖に有する、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸ブチル(BMA)、MEA、MCA、BuA、MEMA、THFA、Me2A、Me3A、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体を含むことができる。これらの単量体は、細胞親和性部分に相当する単量体と共重合して、本発明に係る酸化体分子または酸化体ポリマーが形成されることができる。なお、本発明に係る酸化体分子には、細胞親和性部分に相当する1つのモノマー単位と電子キャリア部分に相当する1つのモノマー単位のみが連結された分子も含まれる。このような構造の分子として、例えばMPC−SHが報告されている(Goda, et al., Chem. Commun., 2013, 49, 8683-8685)。
本発明に係る酸化体分子の好ましい態様の一つでは、電子キャリア部分にフェロセン誘導体が含まれている。フェロセン(ferrocene)は、化学式がFe(Cで表される鉄のシクロペンタジエニル錯体であり、鉄イオンにシクロペンタジエニルアニオンが上下2個配位結合している。フェロセンは極めて安定な酸化還元特性を示すことが知られている。フェロセンが酸化されると電子を放出して+1価のカチオンになり、還元されると電子を受け取って元の中性状態に戻る。
フェロセン誘導体には、限定されないが、フェロセン、アセチルフェロセン、ベンゾイルフェロセン、n−ブチルフェロセン、フェロセン モノカルボン酸、ブチリルフェロセン、シクロヘキシルフェロセン、シクロペンテニルフェロセン、ジメチルアミノメチル フェロセン、エチルフェロセン、ヘキサノイルフェロセン、ヘキシルフェロセン、オクタノイルフェロセン、ペンタノイルフェロセン、ペンチルフェロセン、プロピオニルフェロセン、プロピルフェロセン、1,1’−ジアセチル フェロセン、1,1’−ジブチル フェロセン、1,1’−ジブチリルフェロセン、1,1’−ジエチルフェロセン、1,1’−ジヘキサノイルフェロセン、1,1’−ジヘキシルフェロセン、1,1’−ジプロピルフェロセン、4−フェロセノイル酪酸、4−フェロセノイル酪酸エステル、3−フェロセノイルプロピオン酸、3−フェロセノイルプロピオン酸エステル、フェロセニル酢酸、フェロセニルアセトニトリル、4−フェロセニル酪酸、4−フェロセニル酪酸エステル、フェロセニルカルボキシアルデヒド、フェロエニルカルボン酸、フェロセニルエタノール、フェロセニルメタノール、5−フェロセニル吉草酸、5−フェロセニル吉草酸エステル、カトセン−(2,2ビス(エチルフェロセニル)プロパン、アミノフェロセン、ホルムアミドフェロセン、イソシアノフェロセン、イソチオシアナトフェロセン、およびジホスフィン−1;1’ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンが挙げられる。
本発明の一部の態様において、電子キャリア部分は、例えば、下記一般式で表される単量体であってもよい:

(式中、
〜Rは、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基またはフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択され;
Xは、H、C1−6アルキル基、ハロC1−6アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基またはフェニル−(CH−基(ここで、qは、1〜6の整数である)からなる群から選択され;
Yは、単結合、−C(=O)NR−、−C(=O)O−、−O−、−NR−、−O(C=S)NR−、−NR(C=O)O−、−NR(C=S)O−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR、−NRSO−、−NRSO−、−NRSONR−、および−NRSONR−(ここで、Rは水素原子またはC1−6アルキル基である)からなる群から選択され;
Lは、単結合、式−(A)−(式中、Aは、独立して、−C(R10−、−CR10=CR10−、−C≡C−、または−C(R10C(=O)O−(ここで、R10は水素原子またはC1−6アルキルである)、およびrは1〜20の整数である)を有する合成リンカー基である)。
本発明の好ましい態様の一つにおいては、R〜Rは水素であり、Xは水素であり、Yは単結合であり、そしてLは単結合である。
本発明の別の一つの態様においては、R〜Rはメチル基であり、Xはメチル基であり、Yは−C(=O)NH−であり、そしてLはメチレン基である。
電子キャリア部分に含まれうるシクラム誘導体としては、限定されないが、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(「シクラム」)、メチルシクラム、1,8−ビス(ピリジルメチル)シクラム、1,11−ビス(ピリジルメチル)シクラム、4−[1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−1−イル]−メチル安息香酸(「CPTA」)、およびジオキシシクラムが挙げられる。なお、上述の通り、本発明において機能し得るためには金属錯体であり得る。一態様では、シクラム誘導体として、上記の具体的な誘導体を基本骨格とし、さらに適切な置換基で置換された任意の誘導体を用いることができる。例えば、シクラム金属錯体を基本骨格とした場合、下記式:

で表される誘導体を使用することができる。ここで、上記式中、R〜Rは、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基またはフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基であってもよい。また、Mは、金属イオンを表し、限定されないが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Al3+であってもよい。好ましい金属イオンの例はFe3+である。
電子キャリア部分に含まれうるポルフィリン誘導体としては、化学的構造の一部分としてポリピロール環を含む分子であって、限定されないが、ポルフィリン、2,3−ジヒドロポルフィリン、2,3,7,8−テトラヒドロポルフィリン、5,10,15,20,22,24−ヘキサヒドロポルフィリン、5,10,15,20−テトラアザポルフィリンが挙げられる。なお、上述の通り、本発明において機能し得るためには金属錯体であり得る。一態様では、ポルフィリン誘導体として、上記の具体的な誘導体を基本骨格とし、さらに適切な置換基で置換された任意の誘導体を用いることができる。例えば、ポルフィリン金属錯体を基本骨格とした場合、下記式:

で表される誘導体を使用することができる。ここで、上記式中、R〜R12は、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基またはフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基であってもよい。また、Mは、金属イオンを表し、限定されないが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Al3+であってもよい。好ましい金属イオンの例はFe3+である。
電子キャリア部分に含まれうるピリジン誘導体は、本発明において機能し得るために金属錯体を形成し得るものであれば特に限定されない。例えば、ピリジン誘導体の金属錯体としては、下記式:


で表される構造を有するものが挙げられる。ここで、上記式中、R〜R16は、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基またはフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基であってもよい。また、Mは、金属イオンを表し、限定されないが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Al3+であってもよい。好ましい金属イオンの例はFe3+である。
電子キャリア部分に含まれうるサイクレン誘導体としては、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(「サイクレン」)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸(「DOTA」)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトライルテトラキスメチレンテトラキスホスホン酸が挙げられる。なお、上述の通り、本発明において機能し得るためには金属錯体であり得る。一態様では、サイクレン誘導体として、上記の具体的な誘導体を基本骨格とし、さらに適切な置換基で置換された任意の誘導体を用いることができる。例えば、サイクレン金属錯体を基本骨格とした場合、下記式:

で表される構造を有するものが挙げられる。ここで、上記式中、R〜R12は、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基またはフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基であってもよい。また、Mは、金属イオンを表し、限定されないが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Al3+であってもよい。好ましい金属イオンの例はFe3+である。
上記で具体的に定義した分子以外の誘導体および錯体については、一般的な定義に従うものとし、当業者であれば容易に理解し得るものである。
本発明の酸化体分子としては、上述した酸化還元活性部分(電子キャリア構造)を1種以上側鎖に有する重合体を用いることができる。酸化還元活性部分を導入するために使用される、官能基(ピリジル基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基等)を有する単量体としては、例えば、以下のものから選択される:
(1)親水性単量体、例えば、
− 少なくとも1つのカルボン酸またはスルホン酸官能性を含むエチレン性不飽和単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸ブチル(BMA)、MEA、MCA、BuA、MEMA、THFA、Me2A、Me3A、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、およびこれらの塩;
− 少なくとも1つの第3級アミン官能性を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、およびこれらの塩;
− 式CH=C(CH)−COOR(式中、Rは、メチル、エチル、プロピルまたはイソブチル基等の1〜4個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基を表し、該アルキル基は、ヒドロキシル基(例えば、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート)およびハロゲン原子(Cl、Br、IまたはF)(例えば、トリフルオロエチルメタクリレート)から選択される1以上の置換基で置換されている)のメタクリレート;
− 式CH=C(CH)−COOR(式中、Rは、O、NおよびSから選択される1以上のヘテロ原子が任意に介在する直鎖または分岐C−C12アルキル基を表し、該アルキル基は、ヒドロキシル基およびハロゲン原子(Cl、Br、IまたはF)から選択される1以上の置換基で置換されている)のメタクリレート;
− 式CH=CHCOOR(式中、Rは、ヒドロキシル基(例えば、2−ヒドロキシプロピルアクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレート)およびハロゲン原子(Cl、Br、IまたはF)から選択される1以上の置換基で置換されている直鎖または分岐C−C12アルキル基を表し、あるいは、Rは、例えばメトキシ−POE等の5〜30のオキシエチレン単位の繰り返しを有する(C−C12)アルキル−O−POE(ポリオキシエチレン)を表し、あるいは、Rは、5〜30のエチレンオキシド単位を含むポリオキシエチレン化基を表す)のアクリレート;
(2)1以上のケイ素原子を含むエチレン性不飽和単量体、例えば、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよびメタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、およびこれらの混合物。
一態様では、酸化還元活性部分(電子キャリア構造)を側鎖に有する重合体は、上記単量体の側鎖上の官能基と反応して結合し得る官能基(以下、「対応官能基」という)を有するように酸化還元活性部分を修飾し、その後、該単量体と重合させることによって得ることができる。ここで、対応官能基の例としては、単量体の側鎖上の官能基が酸性基(例えば、カルボキシル基、リン酸基)である場合には、酸化還元活性部分には、置換基として、塩基性基(例えば、第一級または第二級アミン、好ましくはエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基)が導入されていることが好ましい。なお、上記酸性基と塩基性基からアミド結合を形成させるために、縮合剤(例えば、エチル(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等)を用いてもよい。
他の態様では、酸化還元活性部分を側鎖に有する重合体は、上述した第3級アミン官能性を有するエチレン性不飽和単量体のうち4−ビニルピリジンまたは2−ビニルピリジンを側鎖に有する重合体を用いることができる。例えば、側鎖に4−ビニルピリジンを有する場合、該ピリジン環上の窒素原子が、酸化還元分子に配位した金属イオンに配位結合することによって、実質的に酸化還元活性部分を側鎖に有する重合体を合成することができる。
別の態様では、酸化還元活性部分を側鎖に有する重合体は、上述した単量体のうちの少なくとも2つ以上を構成単位として有する共重合体であってもよい。このような共重合体の例としては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとフェロセン誘導体との共重合体、アクリル酸と4−ビニルピリジンとの共重合体にさらに酸化還元分子が配位した共重合体などが挙げられる。
細胞親和性部分
上述のように、本発明に係る酸化体分子は、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む。細胞親和性部分が有しうる特徴の一つは、タンパク質の吸着に対する耐性である。細胞親和性部分は、好ましくは酸化体分子の親水性および疎水性を調節することができる。本発明の一部の態様において、細胞親和性部分は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸ブチル(BMA)、MEA、MCA、BuA、MEMA、THFA、Me2A、Me3A、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体を含むことができる。これらの単量体は、電子キャリア部分に相当する単量体と共重合して、本発明に係る酸化体分子または酸化体ポリマーが形成されることができる。なお、本発明に係る酸化体分子には、細胞親和性部分に相当する1つのモノマー単位と電子キャリア部分に相当する1つのモノマー単位のみが連結された分子も含まれる。このような構造の分子として、例えばMPC−SHが報告されている(Goda, et al., Chem. Commun., 2013, 49, 8683-8685)。また、例えば、細胞親和性部分として、MPCとBMAの両方を含めてもよい。例えば、Kaneko et al., Electrochemistry Communications 75 (2017) 17-20には、MPC、BMA、ビオロゲンの共重合体が開示されている。ここでBMAユニットは、分子の細胞膜透過性を高めるための疎水性ユニットとして使用されている。
本発明の好ましい態様の一つにおいては、細胞親和性部分は2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を含む。2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)モノマーは、細胞膜と同じ構造、重合可能な構造を併せ持ち、生体への親和性が極めて高い生体適合性素材である。2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)部分を含むリン脂質ポリマーは、タンパク質吸着に対する耐性が強いことから、高い生体適合性を有している。MPCは例えば、日油株式会社から購入することができる。MPCと電子キャリア部分とを含む酸化体分子は、細胞膜を透過する電子伝達オリゴマーとして働くことができる。よって、本発明の好ましい態様の一つにおいては、細胞親和性部分は、以下の式により表される単量体を含む。
共重合体
本発明の酸化体分子は、下記:
(i)フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、アントラキノン誘導体、TEMPO誘導体、ビオロゲン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン誘導体、PMS誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルー、またはDCPIPを側鎖に有する、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸ブチル(BMA)、MEA、MCA、BuA、MEMA、THFA、Me2A、Me3A、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体;および
(ii)アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸ブチル(BMA)、MEA、MCA、BuA、MEMA、THFA、Me2A、Me3A、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体
を重合してなる共重合体(酸化体ポリマー)であってもよい。本発明の酸化体分子は、好ましくは、親水性の部分と疎水性の部分とを含む、両親媒性の分子である。なお、上記(i)に示される側鎖に酸化還元活性部分を有する単量体の調製は、一般的なカップリング反応を用いて行ってもよい。例えば、主鎖としてアクリル酸を用いる場合、アクリル酸の側鎖であるカルボキシル基と、酸化還元活性部分中の置換基の1つであるC1−6アルキルアミノ基とを適切な縮合剤を用いて結合させることによって、酸化還元活性部分を側鎖に有する単量体を得ることができる。
本発明の酸化体分子として、上記(i)の単量体と(ii)の単量体を重合させて共重合体を製造する場合、製造方法は限定されず、一般的な重合法に従って所望の共重合体を得ることができる。したがって、所望の共重合体を目的とする場合、(ii)の単量体を重合化し、その後、側鎖に酸化還元活性部分を導入してもよい。
酸化還元活性部分の導入率(重合度)は、重合条件(単量体量、溶媒、重合温度、重合時間など)を適宜調整することによって変更することができる。本発明の共重合体は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などの公知の方法を用いて、重合温度0〜100℃にて、重合時間10分〜72時間の条件下で重合させるによって得ることができる。なお、得られる共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
一般的に、重合開始剤としては、特に限定されないが、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチルアミド二水和物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ターシャリブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリブチルペルオキシピバレート、ターシャリブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙られる。これらの重合開始剤を1種または2種以上を用いてもよい。また、重合開始剤の使用量は、全不飽和単量体に対して0.01から5重量%が好ましく使用される。共重合体の精製は、再沈殿法、透析法、限外濾過法などの一般的な精製法により行うことができる。なお、本発明の好ましい態様としての2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とビニルフェロセン(VF)との共重合体(PMF)の製造は、後述する実施例を参照されたい。また、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とオクタメチルビニルフェロセンとの共重合体(Me−PMF)の合成方法は、特開2015−188431に記載されている。
本発明の共重合体を溶液重合によって合成する場合、溶媒として、限定されないが、エタノール、テトラヒドロフラン、メタノール、エーテル、ベンゼン、DMSO、DMFなどを用いてもよい。
本発明に使用する共重合体の重合度は、特に限定されないが、20〜200,000でありうる。ここで、共重合体を他の素材にコーティングして使用する場合、共重合体を溶媒に溶解して用いることができ、この場合、共重合体溶液の粘度の関係から共重合体の重合度は100〜50,000であることがより好ましく挙げられる。
典型的な例として、本発明によれば、下記の一般式(I)で表される共重合体を用いることができる。
上記式(I)中、「n」および「m」は、それぞれ、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とビニルフェロセン誘導体の重合度を表す。上記式(I)の共重合体は、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。具体的には、mおよびnはそれぞれ、1〜10,000の整数を意味する。「m」は、好ましくは1〜5,000であり、より好ましくは1〜500であり、さらに好ましくは1〜10、例えば5または6である。一方、「n」は、好ましくは1〜5,000であり、より好ましくは1〜500であり、さらに好ましくは1〜10、例えば5または6である。m+nは10前後、例えば8〜12、具体的には10でありうる。mとnの比は、例えば5:5、4:6〜6:4、3:7〜7:3、2:8〜8:2の範囲でありうるが、限定はされない。mおよびnの値は、水溶性や酸化還元活性を考慮して、当業者であれば適宜選択することができる。上記式(I)のポリマーの分子量は、例えば3,000〜8,000、より具体的には6,000〜7,000とすることができる。
上記式(I)中、R〜Rは、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミン基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基またはフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基を表す。
上記式(I)中、Xは、H、C1−6アルキル基、ハロC1−6アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基またはフェニル−(CH−基(ここで、qは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基を表す。種々の置換基の定義については、上述した通りである。
上記式(I)中、Yは、単結合、−C(=O)NR−、−C(=O)O−、−O−、−NR−、−O(C=S)NR−、−NR(C=O)O−、−NR(C=S)O−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR、−NRSO−、−NRSO−、−NRSONR−、および−NRSONR−(ここで、Rは水素原子またはC1−6アルキル基である)からなる群から選択される基を表す。
上記式(I)中、Lは、単結合、式−(A)−(式中、Aは、独立して、−C(R10−、−CR10=CR10−、−C≡C−、または−C(R10C(=O)O−(ここで、R10は水素原子またはC1−6アルキルである)、およびrは1〜20の整数である)を有する合成リンカー基である。
本発明の典型的な一態様として、本発明により、上記式(I)において、R〜Rが水素であり、Xが水素であり、Yが単結合であり、そしてLが単結合である、下記式(II):

で表される酸化体分子(PMF)が提供される。上記式(II)の共重合体は、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。ここで、PMF中のMPC単位とビニルフェロセン(Fc)単位は、ほぼ等しい量が含まれるように合成することができ、そのモル比(n:m)は水溶性や酸化還元活性を考慮して約5:5を含む4:6〜6:4とすることができるが、この範囲に限定はされない。また、mおよびnはそれぞれ、上記式(I)について記載したのと同様な値をとることができ、例えば1〜5,000の値をとりうるが、この範囲に限定はされない。上記式(II)のポリマーの分子量は、例えば3,000〜8,000、より具体的には6,000〜7,000とすることができる。
上述した全ての式中の置換基における具体的な各置換基の定義は、以下の通りである。
本明細書で使用するとき、「C1−6アルキル基」とは、炭素数1〜6個の直鎖状または分枝状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基が挙げられる。好ましくは、メチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、より好ましくはメチル基である。
本明細書で使用するとき、「C1−6アルキルアミン基」とは、炭素数1〜4個の直鎖状または分枝状のアルキル基を意味し、例えば、 メチルアミン基、エチルアミン基、n−プロピルアミン基、イソプロピルアミン基、n−ブチルアミン基、イソブチルアミン基、sec−ブチルアミン基、tert−ブチルアミン基、ジメチルアミン基、トリメチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基、ジイソプロピルエチルアミン基が挙げられる。好ましくは、n−プロピルアミン基である。
本明細書で使用するとき、「ハロC1−6アルキル基」とは、同一もしくは異なった1個〜置換可能な最大数のハロゲン原子で置換されているC1−6アルキル基であり、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、モノブロモメチル基、モノヨードメチル基または2,2,2−トリフルオロエチル基等が挙げられる。
本明細書で使用するとき、「C1−6アルキルオキシ基」とは、上記C1−6アルキル基が酸素原子に結合した基を意味する。具体的には、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基が挙げられる。
本明細書で使用するとき、「ハロC1−6アルキルオキシ基」とは、同一であるかまたは異なっていてもよい1〜5個のハロゲン原子が前記C1−6アルキルオキシ基に結合した基を意味し、例えば、トリフルオロメチルオキシ基、2−フルオロエチルオキシ基、2−クロロエチルオキシ基、2−ブロモエチルオキシ基、3−フルオロプロピルオキシ基、3−クロロプロピルオキシ基、4−フルオロブチルオキシ基、4−クロロブチルオキシ基、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ基、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシ基、ペンタフルオロエチルオキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチルオキシ基である。好ましくは、トリフルオロメチルオキシ基、2−フルオロエチルオキシ基、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ基であり、より好ましくは、トリフルオロメチルオキシ基、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ基である。
本明細書で使用するとき、「C1−6アルキレン基」とは、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素基を意味する。具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、t−ブチレン基等が挙げられる。
なお、その他の置換基については、当業者が認識する一般的な定義に従うものとする。
酸化体
本発明に係る細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子(例えばPMF)は、酸化型の共重合体(ポリマー)ありうる。本発明の文脈において、酸化体分子とは、酸化された電子キャリア部分を含む分子をいう。酸化体分子または酸化体ポリマーは、例えば、電気化学的な処理により作製することができる。化学合成直後の状態で合成産物が酸化体となるか還元体となるかは、どのような電子キャリア部分(レドックスユニット)を用いるかに依存する。フェロセンを用いた際には生成物として還元体が得られるため、電気化学的に酸化してから使用することができる。他にも、例えば、FeCl(Fe3+)と共存させることによっても酸化体の合成産物を得ることができる。フェロセンにメチル基が8個付いた誘導体ポリマーの場合は、合成後に酸化体が得られる。これはメチル基が付くことで酸化還元電位が負にシフトし(熱力学的に酸化されやすくなり)空気中の酸素によって自然酸化されるためである。メチル基を含まない普通のフェロセンでも、熱力学的には空気中の酸素によって酸化されうるが、その速度が遅く、合成直後の状態では還元体として得られると考えられる。ただし、それでも時間の経過に伴い、電気化学的酸化を施さなくとも空気中酸素によって徐々に酸化されていくとは推察される。このような酸化体分子またはポリマー(例えばOx−PMFなどの酸化体ポリマー)は、細胞内の電子を引き抜くことができ、細胞にアポトーシスを誘導すると考えられる。本発明に係る酸化体分子またはポリマーは、細胞内の電子を引き抜くことで、細胞の代謝に影響を与え、代謝を活性化あるいは不活性化することができる。よって、本発明の態様の一部は、細胞内の代謝に影響を与えるための、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含む組成物にも関する。また、酸化体分子は、電子を引き抜いた後には、還元体となり、殺細胞効果を失うと考えられる。本発明の好ましい態様の一つにおいて用いられるPMFは、+0.5V vs.SHEという、多くの細胞内レドックス種の酸化還元電位よりも正に位置する高い酸化還元電位を有している。本発明に係る酸化体分子は、好適には+0.4より上、例えば+0.5またはそれ以上の酸化還元電位を有することができる。
細胞毒性の評価
本発明に係る細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含む組成物は、殺細胞性を示し、細胞の増殖を抑制することができる。このような細胞増殖抑制効果あるいは殺細胞効果はin vitroの細胞生存率アッセイ(Cell viability assay)により評価することができる。細胞生存率アッセイに用いることのできるキット製品は市販されており、例えば、同仁化学研究所のCell counting kit-8を購入して使用することができる。
本発明の態様の一部は、細胞においてアポトーシスを誘導するための、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子の使用に関する。また、本発明の態様の一部は、細胞においてアポトーシスを誘導するための、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含む組成物に関する。このようなアポトーシス誘導活性の評価は、in vitroのAnnexin Vアッセイにより行うことができる。Annexin Vアッセイに用いることのできるキット製品は市販されており、例えば、メルク社のMuse(登録商標) Annexin V and Dead Cell Assay Kitを購入して使用することができる。また、分析にはメルク社のMuse(登録商標) Cell Analyzerを使用することができる。
医薬組成物
本発明の一つの態様は、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含む、細胞の増殖を抑制するための医薬組成物に関する。また、本発明の一つの態様は、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含む、不要な細胞の除去に用いるための医薬組成物に関する。不要な細胞としては、例えば、悪性の腫瘍以外に、良性の腫瘍や、過剰に増殖した組織、老化した細胞(例えば、老化した皮膚)などが挙げられる。さらに、本発明の一つの態様は、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含む、癌の治療に用いるための医薬組成物に関する。治療対象となる癌は、固形癌または非固形癌であり、脳腫瘍、舌・上下顎癌、喉頭癌、甲状腺癌、食道癌、胃癌、大腸・直腸癌、肝細胞癌、胆のう癌、胆管癌、すい臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮体癌(子宮癌)、賢細胞癌、腎盂尿管癌、前立腺癌、膀胱癌、皮膚癌、骨運動器腫瘍、白血病、悪性リンパ腫、小児癌を含むが、これらに限定はされない。
本発明に係る医薬組成物は、公知の製薬法により製剤化することができる。例えば、本組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、散剤、顆粒剤、微粒剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、トローチ剤、舌下剤、解膠剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、コーティング剤、軟膏、硬膏剤、パップ剤、経皮剤、ローション剤、噴霧剤、吸入剤、エアロゾル剤、点眼剤、注射剤および坐剤の形態で、経口的にまたは非経口的に使用することができる。
これらの製剤の製剤化に関して、薬学的に許容可能な担体、具体的には滅菌水、生理食塩水、植物性油、溶媒、基剤、乳化剤、懸濁化剤、界面活性剤、pH調整剤、安定化剤、香味料、香料、賦形剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、鎮静剤、局所麻酔剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、増粘剤、矯味剤、溶解助剤、および他の添加剤を適切に組み込むことができる。pH調節剤および前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
本発明に係る医薬組成物の好ましい投与形態には特定の限定はなく、その例としては、経口投与または非経口投与、より具体的には、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、経皮投与、皮下投与、皮内投与、腫瘍内投与、気管/気管支投与、直腸投与、および筋肉内投与、ならびに輸血による投与が挙げられる。投与は、筋肉内注射投与、静脈内点滴投与、または埋め込み型持続皮下投与により行ってもよい。したがって、本発明の一つの態様は、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子(例えばOx−PMFなどの酸化体ポリマー)を有効成分とする、癌の治療に用いるための非経口投与用医薬組成物に関する。
組成物が投与または摂取される場合、投与量または摂取量は、被験体の年齢、体重、症状および健康状態、組成物の種類などに従って適切に選択することができる。本発明の特定の実施形態による組成物の摂取有効量は、例えば、組成物0.00001mg/kg/日〜10000mg/kg/日または0.001mg/kg/日〜100mg/kg/日であり得る。組成物は、単回投与しても、または毎日もしくは適当な時間間隔で(例えば1日、2日、3日、1週間、2週間、1ヶ月の間隔で)、複数回(例えば2〜20回など)投与してもよい。上記の組成物の1回の投与量は、例えば、0.5mg/kg以上、1.0mg/kg以上、2.0mg/kg以上、3.0mg/kg以上、4.0mg/kg以上、5mg/kg以上、10mg/kg以上、20mg/kg以上、30mg/kg以上、40mg/kg以上、50mg/kg以上、75mg/kg以上、100mg/kg以上、150mg/kg以上、200mg/kg以上、300mg/kg以上、400mg/kg以上、もしくは500mg/kg以上とすることができ、例えば、0.5〜500mg/kgの範囲に含まれる任意の量(例えば、5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、もしくは200mg/kg)を適宜選択することができる。
癌の治療方法および癌の治療に用いるための医薬の製造における使用
本発明の一態様は、癌の治療方法に関する。このような治療方法の一態様は、治療を必要とする対象に対して細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子(例えばOx−PMFなどの酸化体ポリマー)を投与する工程を含む。また、このような治療方法の一態様は、対象の腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導する工程を含む。対象は哺乳動物であり、ヒトであっても、非ヒト哺乳動物であってもよい。治療対象となる癌は、固形癌または非固形癌であり、脳腫瘍、舌・上下顎癌、喉頭癌、甲状腺癌、食道癌、胃癌、大腸・直腸癌、肝細胞癌、胆のう癌、胆管癌、すい臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮体癌(子宮癌)、賢細胞癌、腎盂尿管癌、前立腺癌、膀胱癌、皮膚癌、骨運動器腫瘍、白血病、悪性リンパ腫、小児癌を含むが、これらに限定はされない。本発明の一態様において、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子はPMFでありうる。投与経路は、上述のとおりであり、例えば、腫瘍内投与、経口投与、経腸投与、経静脈投与、経皮下投与、経筋肉内投与、経鼻投与、吸入投与、点眼投与、または経皮投与などにより行うことができるが、これらに限定はされない。投与頻度は、上述のとおりであり、例えば、毎日、週2回、週1回、または月1回とすることができるが、これらに限定はされない。
本発明の一態様は、癌の治療に用いるための医薬の製造における、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子(例えばOx−PMFなどの酸化体ポリマー)の使用に関する。本発明の一態様において、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子はPMFでありうる。製造する医薬の剤形は、上述のとおりであり、例えば、注射剤、錠剤、顆粒剤、噴霧剤、吸入剤、液剤、クリーム剤、または軟膏剤とすることができる。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
<例1:電子移動に伴うPMFの色の変化>
PMFの合成は、Nishio et al., ChemPhysChem 2013, 14, 2159-2163の記載に従って、以下のようにして行うことができる。MPCモノマーは市販されており、例えば、日油株式会社から購入することができる。開始剤としてα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いたフリーラジカル重合によりPMFを合成する。アルゴンで15分間パージした後、密閉した容器中で、MPC(1.77g、6mmol)、ビニルフェロセン(0.850g、4mmol)、およびAIBN(82.0mg、0.5mmol)をエタノール(10.0mL)に溶解する。重合のために、温度を60℃で48時間維持する。合成されたポリマーをジエチルエーテル/クロロホルム(90/10v/v)中で再沈殿させた後、濾過により回収する。1日の真空乾燥後、ポリマーを水に溶解し、再生セルロース膜(MWCO:3500)を通して7日間透析する。次いで、ポリマーを凍結乾燥させ、得られた粉末を使用に供する。このようにして、フリーラジカル重合を用いてMPCとVFの比がほぼ同等となるようにPMFを合成することができる。合成PMFの例としては、MPCが52mol%、VFが48mol%であり、重量平均分子量が6.6kDa、Mw/Mn比が1.7のPMFを挙げることができる。この例示的なPMFは、190mMのフェロセンに相当する100g/Lを超える濃度で水に可溶であり、52mol%の親水性MPC単位の存在が疎水性のビニルフェロセン単位を水に可溶化するのに十分であることを示している。電子の移動はビニルフェロセンの分子割合に応じて増加するが、この条件は、単にポリマー(PMF)の濃度を増加させることによっても達成することができる。
PMFポリマーは、その酸化還元状態に応じて色が異なる。したがって、酸化体分子が細胞から電子を引き抜いて還元体になると、PMFを含む培地の色が変わる。図1は、酸化体分子を含む細胞培養培地の色の変化(12時間後)を示している。HeLa細胞を含む培地のほうが、色の変化が大きい。
図2は、色の変化を吸光度により測定した結果を示している。細胞を含む培地のほうが、時間の経過に伴う吸光度の変化が大きいことがわかる。
また、色変化の速度を見ることで電子移動速度を評価できる。培地中には細胞のほかにも酸化体PMFポリマーを還元する電子源が存在することから、細胞が電子源であったかどうかを判断するために、細胞を含む条件下と、含まない条件下で、色変化の速度を評価した。図3に示される結果は、細胞がある場合の方が、色変化速度が速く、酸化体PMFポリマーが細胞により還元されることを示している。
<例2:細胞増殖抑制効果>
酸化体PMFポリマーは細胞から電子を引き抜く(受け取る)ことが出来るのに対し、還元体ポリマーはそれができない。ここでは、酸化体および還元体のポリマー存在下における細胞増殖を評価した。
3000個の細胞を96穴プレート上で24時間培養した。その後、酸化体または還元体のPMFを0〜2mMのフェロセン濃度で添加し、24〜96時間インキュベートした。その後、ハンクス液でリンスした後、細胞生存率アッセイ(Cell viability assay)を行った。細胞生存率アッセイには、Cell counting kit-8(同仁化学研究所)を使用した。
その結果、図4に示されるように、還元体ポリマーを加えたときには、増殖は影響を受けないのに対し、酸化体分子存在下では、その濃度に応じて細胞増殖が抑制された。特に、2mMのフェロセン濃度で酸化体PMFを添加した場合には、吸光度はほぼ一定に保たれている。
図5には、HeLa細胞に対する酸化体PMFの濃度依存的な殺細胞効果が示されている。縦軸(Viability)は細胞生存率(全細胞中の生細胞の割合)、横軸(Ox-PMF concentration)は酸化体PMFの濃度を示している。2mM以上のフェロセン濃度では、細胞生存率は0となっており、細胞の除去が可能であることが示されている。
<例3:アポトーシス解析>
酸化体PMFにより生じた細胞増殖の抑制は、酸化体分子による電子引抜により、細胞死が誘導されたことを示唆する。そこで、細胞死のメカニズムを解析した。
まず、35mmディッシュ中で1×10個または5×10個のMDA−MB細胞を24時間培養した。その後、2mMのフェロセン濃度で酸化体または還元体のPMFを添加し、48時間インキュベートした。その後、浮遊した細胞と付着した細胞を回収し、Annexin Vアッセイ(Annexin V assay)を行った。Annexin Vアッセイには、Muse(登録商標) Annexin V and Dead Cell Assay Kit(メルク)を使用した。
このようなアネキシン染色によるアポトーシス解析の結果が、図6および図7に示されている。分析にはメルク社のMuse(登録商標) Cell Analyzerを使用した。右下の区画(Early Apop.)の割合がコントロールより多い場合、アポトーシスが起きていると解釈される。右上の区画(Late Apop./Dead)は死んでいる細胞を示しており、アポトーシスの後期、もしくはネクローシスを起こしている細胞である。右下の割合が低く、右上が高い場合はネクローシスによる細胞死であると解釈される。図6および図7の結果は、酸化体PMFによりアポトーシスが引き起こされることを示している。
<例4:MPC以外の親水部の検討>
親水部にMPCを使ったポリマーに加えて、親水部をMPCから他の成分(PTMAEF、PSPF、PSSF)に変えたポリマーを合成した。各ポリマーの合成手順をPMFを含め、以下に示す。
Poly(MPC−co−VFc)(PMF)の合成
1)サンプル瓶中でエタノールとTHFの混合比が7:3の溶媒5mLに、MPCとVFcを合計濃度1.0Mとなるように溶解させ(MPCとVFcの仕込み比率の異なるサンプルを合成することができる。MPC:VFc比が7:3、6:4、5:5のものをそれぞれPMF73、PMF64、PMF55と表記する)、AIBN41.1mg(0.25mmol)を加えて溶解させた。
2)溶液を試験管に移し、ゴム栓とアルミキャップでふたをした後、15分間アルゴンガスでバブリングした。
3)反応溶液が入った試験管をオイルバスの中に入れ、60℃で48時間反応させた。
4)反応液を氷水で急冷した後、ジエチルエーテルとクロロホルムが9:1の混合液に滴下することで、再沈澱を行った。
5)沈澱ごと液を遠沈管に移し遠心機で遠心し、上澄み液を除き、一晩風乾させた。
6)沈澱に超純水を加えて生成物を溶解させ、0.2μmシリンジフィルターでろ過した。
7)分子量1000以下透過の透析袋にサンプル液を移し、5日間透析した。
8)2日間凍結乾燥し、サンプルを回収した。
9)フェロセン含有率(mol%)は、PMF73、PMF64、PMF55において、それぞれ、41.6%、45.1%、48.3%であった。
Poly(SSt−co−VFc)(PSSF)の合成
1)サンプル瓶にDMSOを5mL入れ、p−スチレンスルホン酸ナトリウム(p−NaSSt)0.5153g(2.5mmol)、VFc0.5307g(2.5mmol)、AIBN41.7mg(0.25mmol)を加えて溶解させた。
2)溶液を試験管に移し、ゴム栓とアルミキャップでふたをした後、15分間アルゴンガスでバブリングした。
3)反応溶液が入った試験管をオイルバスの中に入れ、60℃で48時間反応させた。
4)反応液を水で急冷した後、エタノールに滴下することで、再沈澱を行った。
5)沈澱ごと液を遠沈管に移し遠心機で遠心し、上澄み液を除き、一晩風乾させた。
6)沈澱に超純水を加えて生成物を溶解させ、0.2μmシリンジフィルターでろ過した。
7)分子量1000以下透過の透析袋にサンプル液を移し、5日間透析した。
8)2日間凍結乾燥し、サンプルを回収した。
9)フェロセン含有率(mol%)は54.4%であった。
Poly(SPMA−co−VFc)(PSPF)の合成
1)サンプル瓶にDMSOを5mL入れ、3−スルホプロピルメタクリラートカリウム塩(K−SPMA)0.6154g(2.5mmol)とVFc0.5295g(2.5mmol)、AIBN41.0mg(0.25mmol)を加えて溶解させた。
2)溶液を試験管に移し、ゴム栓とアルミキャップでふたをした後、15分間アルゴンガスでバブリングした。
3)反応溶液が入った試験管をオイルバスの中に入れ、60℃で48時間反応させた。
4)反応液を水で急冷した後、メタノールとTHFが1:1の混合液に滴下することで再沈澱を行った。
5)沈澱ごと液を遠沈管に移し遠心機で遠心し、上澄み液を除き、一晩風乾させた。
6)沈澱に超純水を加えて生成物を溶解させ、0.2μmシリンジフィルターでろ過した。
7)分子量1000以下透過の透析袋にサンプル液を移し、5日間透析した。
8)2日間凍結乾燥し、サンプルを回収した。
9)フェロセン含有率(mol%)は51.5%であった。
Poly(TMAEMA−co−VFc)(PTMAEF)の合成
1)サンプル瓶に[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(TMAEMA−Cl)の80%水溶液587μL(0.6615g,2.5mmol)を入れ、メタノールとTHFの混合比が4:5の溶媒を4.5mL加え、VFc0.5330g(2.5mmol)、AIBN41.1mg(0.25mmol)を加えて溶解させた。
2)溶液を試験管に移し、ゴム栓とアルミキャップでふたをした後、15分間アルゴンガスで、バブリングした。
3)反応溶液が入った試験管をオイルバスの中に入れ、60℃で48時間反応させた。
4)反応液を氷水で急冷した後、アセトンに滴下することで再沈澱を行った。
5)沈澱ごと液を遠沈管に移し遠心機で遠心し、上澄み液を除き、一晩風乾させた。
6)沈澱に超純水を加えて生成物を溶解させ、0.2μmシリンジフィルターでろ過した。
7)分子量1000以下透過の透析袋にサンプル液を移し、5日間透析した。
8)2日間凍結乾燥し、サンプルを回収した。
9)フェロセン含有率(mol%)は56.3%であった。
<例5:親水部をMPC以外のものに置換したポリマーの細胞毒性>
親水部をMPCから他の成分(PTMAEF、PSSF、およびPSPF)に変えたポリマーを用いて、細胞への影響を評価した。
図9は、ポリマー濃度に応じて細胞数の変化を見た結果を示している。PTMAEF、PSSF、およびPSPFはいずれも、還元体(Red)であっても細胞毒性を示した。一方、PMFは酸化体(Ox−PMF)でのみ細胞毒性を示し、還元体(Red)は細胞毒性を示さない。結果として、細胞に対して無毒なのはRed−PMFだけであることが分かる。PMFは親水部がMPCのポリマーである。MPCは細胞親和性に優れることが知られており、それにより無毒であったものと考えられる。MPC以外のポリマーは、それが酸化体であろうが、還元体であろうが細胞毒性を有していた。
<例6:カチオン性MPCポリマーの毒性>
MPCポリマーのレドックス活性部位(フェロセン(Fc)部分)をカチオン性の他の構造(TMAEMA単位)に置き換えて、図10に示されるような、レドックス不活性であるが、カチオン性である部分を含むMPCポリマーを作り、その細胞毒性を評価した。
図11に示されるように、この場合には、全く細胞毒性は示されなかった。以上の結果をまとめると、次のように考えられる。
1.酸化体MPCポリマーは、電子引き抜くことができ、殺細胞効果を示す。
2.還元体MPCポリマーは、電子を引き抜かず、MPCは細胞親和性がある(タンパク質吸着しない)ため、殺細胞効果を示さない。
3.非MPCポリマーは、酸化体・還元体によらず毒性を示す。これは、ポリマー本来の細胞毒性(タンパク質吸着する)に起因する殺細胞効果と思われる。
本明細書には、本発明の好ましい実施態様を示してあるが、そのような実施態様が単に例示の目的で提供されていることは、当業者には明らかであり、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変形、変更、置換を加えることが可能であろう。本明細書に記載されている発明の様々な代替的実施形態が、本発明を実施する際に使用されうることが理解されるべきである。また、本明細書中において参照している特許および特許出願書類を含む、全ての刊行物に記載の内容は、その引用によって、本明細書中に明記された内容と同様に取り込まれていると解釈すべきである。
本発明者らは、細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子(例えばOx−PMFなどの酸化体ポリマー)を哺乳動物細胞に投与することにより、細胞の増殖を抑制することができることを見出した。このような効果の少なくとも一部は、酸化体分子(例えばOx−PMFなどの酸化体ポリマー)が細胞内の電子を引き抜き、細胞にアポトーシスを誘導することによると考えられる。したがって、このような酸化体分子は、細胞増殖抑制剤として使用することが可能であり、不要な細胞の除去や、抗癌剤として癌の治療などに用いられうる。また、酸化体分子は、電子を引き抜いた後には、還元体となり、殺細胞効果を失うという、従来の抗癌剤とは異なる性質を有している点も特徴的である。

Claims (12)

  1. 細胞親和性部分と電子キャリア部分とを含む酸化体分子を含む、細胞の増殖を抑制するための医薬組成物。
  2. 不要な細胞の除去に用いるための、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 細胞にアポトーシスを誘導するための、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. 癌の治療に用いるための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  5. 癌が、脳腫瘍、舌・上下顎癌、喉頭癌、甲状腺癌、食道癌、胃癌、大腸・直腸癌、肝細胞癌、胆のう癌、胆管癌、すい臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮体癌(子宮癌)、賢細胞癌、腎盂尿管癌、前立腺癌、膀胱癌、皮膚癌、骨運動器腫瘍、白血病、悪性リンパ腫、小児癌から成る群より選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
  6. 細胞親和性部分が、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸ブチル(BMA)、MEA、MCA、BuA、MEMA、THFA、Me2A、Me3A、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  7. 電子キャリア部分が、フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、アントラキノン誘導体、TEMPO誘導体、ビオロゲン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン錯体、フェナジンメトサルフェート誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルーおよび2,6−ジクロロフェノールインドフェノール誘導体から選択される1種以上の酸化還元活性部分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  8. 電子キャリア部分が、フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、アントラキノン誘導体、TEMPO誘導体、ビオロゲン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン誘導体、PMS誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルー、およびDCPIPから選択される1種以上の酸化還元活性部分を側鎖に有する、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸ブチル(BMA)、MEA、MCA、BuA、MEMA、THFA、Me2A、Me3A、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  9. 電子キャリア部分が、下記式で表される単量体を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物:

    (式中、
    〜Rは、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基またはフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択され;
    Xは、H、C1−6アルキル基、ハロC1−6アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基および5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基またはフェニル−(CH−基(ここで、qは、1〜6の整数である)からなる群から選択され;
    Yは、単結合、−C(=O)NR−、−C(=O)O−、−O−、−NR−、−O(C=S)NR−、−NR(C=O)O−、−NR(C=S)O−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR、−NRSO−、−NRSO−、−NRSONR−、および−NRSONR−(ここで、Rは水素原子またはC1−6アルキル基である)からなる群から選択され;
    Lは、単結合、式−(A)−(式中、Aは、独立して、−C(R10−、−CR10=CR10−、−C≡C−、または−C(R10C(=O)O−(ここで、R10は水素原子またはC1−6アルキルである)、およびrは1〜20の整数である)を有する合成リンカー基である)。
  10. 〜Rが水素であり、Xが水素であり、Yが単結合であり、Lが単結合である、請求項9記載の医薬組成物。
  11. 細胞親和性部分が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンであり、電子キャリア部分がビニルフェロセンである、請求項1〜10のいずれか一項記載の医薬組成物。
  12. 酸化体分子が下記式で表される、請求項1〜11のいずれか一項記載の医薬組成物:

    (式中、
    mは1〜5,000の整数であり、
    nは1〜5,000の整数である)。
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