石油など化石燃料の枯渇が懸念されるようになって久しく、また、地球環境の温暖化対策のために、CO2の排出削減が全世界で解決すべき急務の課題となっている。これらの課題の解決を図るために、化石燃料を使用せず、また、CO2も排出しない発電の方法として、太陽光発電や風力発電など自然エネルギーを用いた発電の導入が世界中で急速に進行している。
これに伴って、2台以上の風力発電装置からなる風力発電装置群(ウィンドファーム)も増加している。風力発電装置の導入量が増加し、基幹電源としての役割を求められるにも伴って、ウィンドファーム全体での発電出力の向上が望まれてきている。しかしながら、ウィンドファームを設置するに際し、敷地面積等に制約があることから、風力発電装置相互の距離を十分に離して設置することはできず、風力発電装置相互間の距離がある程度近づいたものになることが多い。風力発電装置相互の距離が十分に離れている場合には、風上の風力発電装置を通過した後流の影響を考慮する必要はないが、風力発電装置相互間の距離がある程度近づいたものになる場合、風下の風力発電装置では風上の風力発電装置を通過した後流の影響を受けることになって発電出力が低下してしまう。
ここで、特許文献1には、複数の風力発電装置の風速比に基づいて風力発電装置の動作パラメータを、発電出力が最大となるように設定する手法が提案されている。
風力発電装置を通過した後流は、通過前よりも風速が減少すると共に、風力発電装置の回転するブレードの影響を受けた乱流成分を含んでいる。そして、風下の風力発電装置の発電出力を低下させると共に、風下の風力発電装置のブレード等に損傷を与える可能性がある。
上記、風下の風力発電装置の発電出力の低下について、先行技術文献には、複数の風量発電装置の風速比に基づいて風力発電装置の動作パラメータを、発電出力が最大となるように設定する手法が提案されている。しかしながら、先行技術文献の手法では、発電出力が最大となるように設定されることで、風下の風力発電装置のブレード等に損傷を与える乱流が増加し、損傷が加速してしまう懸念がある。また、風上の風力発電装置の動作パラメータの設定によっては、ピッチ角制御を頻繁に行うこと等により、風上の風力発電装置の損傷が増加してしまう懸念がある。
上記の点を鑑み、本発明では、ウィンドファームにおける発電出力を高めつつ、風力発電装置のブレード等の損傷低減に対応可能な制御装置若しくは制御方法、またはウィンドファームを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る制御装置は、複数の風力発電装置を制御する制御装置であって、計測した風況情報を用いて、前記複数の風力発電装置の発電電力の合計が、風上に位置する前記風力発電装置の発電電力が最大となる様に制御した場合と比較して大きくなると共に、風上もしくは風下に位置する前記風力発電装置のいずれかの損傷または風上もしくは風下に位置する前記風力発電装置の損傷の合計が、風上に位置する前記風力発電装置の発電電力が最大となる様に制御した場合と比較して小さくなる様に、前記複数の風力発電装置の回転速度指令値、トルク指令値、またはヨー角指令値を演算する演算部を備え、前記演算結果に基づいて各風力発電装置を制御することを特徴とする。
また、本発明に係るウィンドファームは、上記制御装置と、前記制御装置によって制御される複数の風力発電装置を備えることを特徴とする。
さらに、本発明に係る複数の風力発電装置の制御方法は、複数の風力発電装置の制御方法であって、風況情報を計測し、計測した風況情報を用いて、前記複数の風力発電装置の発電電力の合計が、風上に位置する前記風力発電装置の発電電力が最大となる様に制御した場合と比較して大きくなると共に、風上もしくは風下に位置する前記風力発電装置のいずれかの損傷または風上もしくは風下に位置する前記風力発電装置の損傷の合計が、風上に位置する前記風力発電装置の発電電力が最大となる様に制御した場合と比較して小さくなる様に、前記複数の風力発電装置の回転速度指令値、トルク指令値、またはヨー角指令値を演算し、前記演算結果に基づいて前記複数の風力発電装置を制御することを特徴とする。
本発明によれば、ウィンドファームにおける発電出力を高めつつ、風力発電装置のブレード等の損傷低減に対応可能になる。
以下、本発明を実施する上で好適な実施例について図面を用いて説明する。尚、下記はあくまでも実施の例であって、本発明の適用対象を下記具体的態様に限定することを意図する趣旨ではない。
図1は、本実施例における、風力発電装置10aを通過した後流30に含まれる乱流によって、風下の風力発電装置10bの発電出力が低下し、ブレード等に損傷を与えることを示すイメージ図である。各風力発電装置は、ロータが風を受けて回転し、またロータを回転可能に支持するナセルが風向き方向の変化に追従する。ナセルは、タワーに対して回転可能に支持されている。該図に示す如く、風上に設置された風力発電装置10aに流入した風が、風力発電装置10aを通過して後流となると、流入時の風速が減衰し、また風力発電装置10aの構造体やブレードの回転により、乱流成分を含む様になる。風下に設置された風力発電装置10bは風力発電装置10aを通過した後流を受けることになり、風上の風力発電装置10aを介さずにそのまま流入した場合よりも、発電電力が低下するとともに、前述の乱流成分によって、ブレード等の損傷度が高くなる。
図2は、本実施例における、ウィンドファーム100の構成の一例を示す図である。各風力発電装置10に、回転速度指令、トルク指令或いはヨー角指令を与える風力発電装置制御装置60を備え、風力発電装置制御装置60は相互に通信手段40によって接続される。情報収集・全体制御装置50は風力発電装置制御装置60と通信によって接続され、各風力発電装置10の回転速度指令値、トルク指令値、ヨー角指令値、風速計測値、風向計測値、発電電力、損傷度等の計測情報を収集すると共に、各風力発電装置制御装置60に対して、回転速度指令、トルク指令、ヨー角指令の制御方法等を送信する。
図3は、本実施例における、情報収集・全体制御装置50の構成の一例を示す図である。受信部503は、風力発電装置制御装置60から通信手段40を介して送られる各風力発電装置10の風速、風向計測値、発電電力、損傷度等の計測情報を受信する。演算部501は前記計測された情報に加えて、データベース502から風力発電装置10の特性情報、風力発電装置10の設置位置及び地形の情報、発電量、損傷度のシミュレーション結果等を読込み、演算部501は、前記読込んだ情報に基づいて風力発電装置10の回転速度指令値、トルク指令値、ヨー角指令値のいずれか、またはすべてを演算し、演算結果をデータベース502に保存するとともに、送信部504から各風力発電装置10に対して演算した指令値を送信する。各指令値としては、例えば回転速度の上限値、トルクの上限値、またはヨー角の範囲の値と言ったものが該当する。
図4は、本実施例における、風力発電装置10aの制御方法のうち、回転速度指令を用いた場合の動作の一例を示すグラフである。該図において、横軸は風力発電装置10aに流入する風速、縦軸は風力発電装置10aの回転速度N、トルクTr、発電電力P、ピッチ角度βをそれぞれ示している。従来の制御では、トルク以外では各々符号101で示す点線で示すように、風力発電装置10aは、風速VがV0のカットイン風速以上になると、回転速度NがN1で回転して、発電を開始する。風速V1以上になると可変速運転を開始し、風速V2以上なると、回転速度N2で一定となり、風速V3以上で定格出力となる。風速がV4に達すると、強風から機器を保護するために発電を停止(カットアウト)する。ピッチ角度βは、風速V2から風速V4までは、所定の回転速度、および発電電力を維持するために、最も発電電力が大きくなるファインピッチ角βfよりもフェザー側のピッチ角へと変化する。すなわち、回転速度はN101、発電電力はP101、ピッチ角度はβ101のようなカーブをそれぞれ描く。
図4において、本実施例にかかる風力発電装置の制御方法によれば、回転速度の上限値をN2よりも低い値N3と、さらに低い値N4の間に設定する(N102)。N3は風上の風力発電装置10aと風下の風力発電装置10bを合わせた合計の発電電力が最大となる回転速度を示し、N4は、風上の風力発電装置10aの損傷を小さくし、かつ従来の制御よりも、風力発電装置10aと10bの合計の発電電力が大きくなる回転速度を示している。これにより、発電電力の最大値はPmaxよりも低いPmax1となる。すなわち、回転速度はN102、発電電力はP102のような特性を描く。また、ピッチ角度βは回転速度がN3に達した風速から動作を始め、β102のようなカーブを描く。このような動作とすることによって、風力発電装置10aを通過する風速の減衰が小さくなるとともに、ブレードの回転速度が低くなることで、乱流成分が低減する。風力発電装置10aを通過する風速の減衰が小さくなることにより、風下の風力発電装置10bに流入する風速が増大し、風下の風力発電装置10bの発電電力が増加するとともに、風力発電装置10aを通過する風速に含まれる乱流成分が低減することで、前記乱流成分によるブレード等の損傷度が低下する。風力発電装置の発電電力は流入する風速の3乗に比例するため、風上の風力発電装置10aで減少した発電電力よりも、風下の風力発電装置10bに流入する風速が増大することによる、風力発電装置10bの発電電力の増加分を比較し、後者が大きくなるようなN3並びにN4を事前のシミュレーション等で求めておく。これにより、風力発電装置10aと風力発電装置10bの合計発電電力を従来よりも増加できる。
図5は、本実施例における、風力発電装置10aの制御方法のうち、トルク指令を用いた場合の動作の一例を示すグラフである。該図において、本実施例を適用した場合には、トルクの上限値を通常のTmaxよりも低いTmax1に設定する。これにより、発電電力の最大値はPmaxよりも低いPmax2となる。すなわち、トルクはT202、発電電力はP202のような特性を描く。このような動作とすることによって、実施例1の回転速度を設定する場合とは異なる乱流成分、および風下の風力発電装置10bの発電電力の増加量が得られる。乱流成分については、シミュレーション、または実測等により、前記回転速度を設定する場合と比較して、どの程度増加・減少するかを求め、その結果に応じて実施例1または2の制御を選択する。
図6は、本実施例における、風力発電装置10aの制御方法のうち、ヨー角指令を用いた場合の動作の一例を示すグラフである。該図において、本実施例を適用した場合には、ヨー角の指令値を、通常のYfとは異なるY1とY2の範囲内に設定する。そして、その範囲内において、風上と風下の風車の合計発電量が制御前と比較して増加するような風上風車の出力低減量が得られるヨー角指令値とする。尚、Yfは風向きと平行になる角度を指す。これにより、発電電力の最大値はPmaxよりも低いPmax3とPmax4の間となる。すなわち、発電電力はP302のような特性を描く。このような動作とすることによって、実施例1、実施例2とは異なる乱流成分、および風下の風力発電装置10bの発電電力の増加量が得られる。前記乱流成分については、シミュレーション,または実測等により、前記回転速度を設定する場合と比較して、どの程度増加・減少するかを求め、その結果に応じて実施例1、2または3の制御を選択する。なお、Y1側に設定するか、Y2側に設定するか、また何度の範囲にするかは、風力発電装置10aと風力発電装置10b以外の風力発電装置の配置や、風下の風力発電装置10bとの距離に基づいて決定する。例えば、Y1側の風下には他の風力発電装置が存在せず、Y2側の風下に他の風力発電装置が存在する場合、Y2側に設定することで、ヨー角の方位に後流を流すことで、他の風力発電装置の発電電力を向上する効果が期待できる。これは、風上の風力発電装置のヨー角を調節することで、後流の方向を変化させることが出来るためである。
実施例1〜3では風力発電装置の回転速度、トルクの上限値、またはヨー角の制御範囲について個々に制御する場合を説明したが、2つ以上の値を組合せて、各風力発電装置に指令を行っても良い。組み合わせて用いることで、単独で適用するよりも発電量の向上や損傷の低減効果を大きくし得る。
図7は、実施例1ないし3に記載の制御内容を、どのように運用するかを決定する手法の一例を示すフローチャートである。優先項目選択(401)では、ウィンドファームを運用するユーザが、発電量の増加を優先するか、損傷度の低減を優先するかを選択する。その選択結果と、予め格納したDBから読み込んだ風力発電装置の配置、地形情報を用いて、実施例1の回転数指令か、実施例2のトルク指令、または実施例3のヨー角指令を用いる制御手法のいずれが、優先項目選択(401)で選択された発電量の増加、または損傷度の低減に対して効果があるのかを、事前のシミュレーション結果等に基づいて判定し、適用する制御方法を決定する(402)。その後、風向・風速の計測値を読込み(403)、事前シミュレーションや実験等によりデータベースに格納された風向風速別の指令値から、風上の風力発電装置の回転数指令、トルク指令、ヨー角指令のいずれか、またはそれらの組合せを決定する(404)。
図8は、実施例1ないし4における、ウィンドファーム100の構成の一例を示す図である。各風力発電装置10に、回転速度指令、トルク指令或いはヨー角指令を与える風力発電装置制御装置60を備え、風力発電装置制御装置60は相互に通信手段40によって接続される。情報収集・全体制御装置50は風力発電装置制御装置60と通信によって接続され、各風力発電装置10の回転速度指令値、トルク指令値、ヨー角指令、風速、風向計測値、発電電力、損傷度等の計測情報を収集すると共に、各風力発電装置制御装置60に対して、回転速度指令、トルク指令、ヨー角指令の制御方法等を送信する。表示装置51は、情報収集・全体制御装置50で収集した情報の一部、あるいはすべてを表示する機能を有する。
図9は、実施例1ないし5における、各風力発電装置の発電電力の増加量と損傷度を示す表示装置51の画面の一例を示す図である。風力発電装置制御装置60は、表示装置51に対して各風力発電装置の発電電力の合計もしくはその増加量、或いは風力発電装置の損傷度の低減量、を表示装置51に出力する。各風力発電装置の発電電力と損傷度をそれぞれ表示するグラフがあり、本発明の制御を適用した場合と、適用しない場合を比較して示すことができる。ユーザはこのような表示を見ながら、発電電力優先か、損傷度低減優先かを選択することができる。
図10は、実施例1ないし6における、回転速度指令値とトルク指令値の比率を変化させた場合の、ウィンドファームの合計発電電力501と合計損傷度502の特性を示したグラフのイメージである。こうした特性をデータベースに事前に格納しておく。図中の点線が各実施例における制御を行わない場合、即ち風上に位置する前記風力発電装置の発電電力が最大となるように制御した場合に該当する。この場合を基準の100%とし、それに対して、比率を変化させた際に合計発電電力501や合計損傷度502がどのように変化するかを示している。適正な比率を選択することで、合計発電電力501は100%を超えつつ、合計損傷度502は100%も下回る領域を選択することができる。尚、合計損傷度502が最も低下される比率と、合計発電電力501が最大化される比率は一致していない。回転速度指令値とトルク指令値ウィンドファームの風力発電システムの配置、地形等の条件から事前にこのような特性を求めておくことで、実施例5に示したような発電電力優先か、損傷度低減優先の選択に対して、具体的な制御方法を決定できる。尚、本実施例では回転速度指令値とトルク指令値の比率を変化させた場合を例にして説明しているが、これに限定されるものでなく、回転速度指令値もしくはトルク指令値、またはヨー角指令値の中でいずれの値または組み合わせの比率を変化させて適用することも可能である。
図11は、実施例5における、ウィンドファーム100の構成の別の一例を示す図である。図6との違いは、情報収集・全体制御装置50で収集した情報の一部、あるいはすべての情報を記録する、制御ログ記録装置52を備えることを特徴とする。制御ログ記録装置52は、情報収集・全体制御装置50から各風力発電装置10に対して送信される指令値や、その指令値により前記風速の減衰量や乱流成分がどのように変化したかや、発電電力の増加量、風力発電装置の損傷度の変化についても記録する機能を有する。
実施例5または8において、風力発電装置制御装置60と情報収集・全体制御装置50を接続する通信手段40が、故障等によって切断された場合には、風力発電装置制御装置60は、通信手段40が切断される直前の制御方法を継続するか、または予め設定されていた制御方法に切り替わる。このとき、自端の風力発電装置10で計測した風速、風向に基づき、前記制御方法に従って、風力発電装置10に対して、回転速度、トルク、またはヨー角それぞれを指令する。通信手段40が回復するまでは、風力発電装置制御装置60は計測、送信した指令値等の情報を装置内に保存し、通信手段40の回復後に、前記保存した情報を情報収集・全体制御装置50に送信する。