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JP2018133318A - 電解質水溶液および発電装置 - Google Patents

電解質水溶液および発電装置 Download PDF

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友 星野
健太郎 植田
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Abstract

【課題】温度応答性電解質によるイオン濃度勾配の生成に際して、水素ガスの発生を抑制する手法を提供する。【解決手段】電解質水溶液は、温度応答性電解質と酸化還元反応種とを含有する。温度応答性電解質は、温度に応じてpKaが変化する電解質であり、酸化還元反応種は、ヒドロキノン誘導体である。発電装置100は、電解質水溶液を用いて発電を行う。発電装置100は、正極3と負極4と加熱機構6と冷却機構5とを有し、正極3および負極4は電解質水溶液に浸漬され、加熱機構6は、正極3と負極4のうち一方の近傍の電解質水溶液を加熱し、冷却機構5は、正極3と負極4のうち他方の近傍の電解質水溶液を冷却する。【選択図】図1

Description

本発明は、電解質水溶液、およびその電解質水溶液を用いた発電装置に関する。
温度勾配をイオン濃度勾配に変換して、再利用可能なエネルギーへの変換や酸性ガスの回収に利用するシステムが知られている。特許文献1のシステムでは、温度に応じてpKaが大きく変化する物質である温度応答性電解質が用いられる。そしてこの温度応答性電解質により、イオン濃度勾配を生じさせ、発電等が行われる。
国際公開第2013/027668号
特許文献1のシステムでは、以下の電気化学反応を利用して発電が行われる。
Figure 2018133318
そうすると、電気の取り出しに伴って可燃性の水素ガスが発生するため、発電装置に水素ガスへの引火を防止する構造・機能等が必要となる。また継続的な発電に際して、発生した水素ガスの反応液への溶解が律速段階となるため、反応速度を高めて発電効率を改善することも困難である。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度応答性電解質によるイオン濃度勾配の生成に際して、水素ガスの発生を抑制する手法を提供することにある。
上記目的を達成するための電解質水溶液の特徴構成は、温度に応じてpKaが変化する電解質である温度応答性電解質と、ヒドロキノン誘導体である酸化還元反応種とを含有する点にある。
発明者らは鋭意検討の末、温度応答性電解質と酸化還元反応種とを併用することで、水素ガスの発生を抑制できることに想到した。そして酸化還元反応種としてヒドロキノン誘導体を用いることで、発電が可能なことを実験で確認し、発明を完成したのである。
すなわち上記の特徴構成によれば、温度に応じてpKaが変化する電解質である温度応答性電解質と、ヒドロキノン誘導体である酸化還元反応種とを含有することにより、温度応答性電解質により生成されたプロトンは、酸化還元反応種によって消費されるから、水素ガスの発生を抑制することができる。またヒドロキノン誘導体が、酸化還元反応の前後で水溶性である点も、不要な沈殿の生成を抑制して反応速度および反応の継続性を高める点で有利である。
温度応答性電解質として、極性基と、疎水性基と、イオン化可能な官能基とを有する分子を用いることが可能である。また、酸化還元反応種としてヒドロキノンまたはメチルヒドロキノンを用いた電解質水溶液により、発電が可能であることが実験で確認されている。
上記目的を達成するための発電装置の特徴構成は、
上述の電解質水溶液を用いて発電を行う発電装置であって、正極と負極と加熱機構と冷却機構とを有し、前記正極および前記負極は前記電解質水溶液に浸漬され、
前記加熱機構は、前記正極と前記負極のうち一方の近傍の前記電解質水溶液を加熱し、
前記冷却機構は、前記正極と前記負極のうち他方の近傍の前記電解質水溶液を冷却する点にある。
上記の特徴構成によれば、加熱機構は、正極と負極のうち一方の近傍の電解質水溶液を加熱し、冷却機構は、正極と負極のうち他方の近傍の電解質水溶液を冷却するから、正極の近傍と負極の近傍との間でイオン濃度勾配を生じさせ、水素ガス発生を抑制した状態で発電を行うことができる。
加熱機構が、温度応答性電解質の相転移温度より高い温度に電解質水溶液を加熱し、冷却機構が、温度応答性電解質の相転移温度より低い温度に電解質水溶液を冷却すると、更に大きなイオン濃度勾配が発生し、発電装置の発電性能を向上でき好適である。
発電装置を次の様に構成することも可能である。すなわち、正極槽と負極槽と循環機構とを有し、前記電解質水溶液が前記正極槽および前記負極槽に収容され、前記正極が前記正極槽の前記電解質水溶液に接触し、前記負極が前記負極槽の前記電解質水溶液に接触し、前記加熱機構が前記正極槽と前記負極槽のうち一方の前記電解質水溶液を加熱し、前記冷却機構が前記正極槽と前記負極槽のうち他方の前記電解質水溶液を冷却し、前記循環機構が前記正極槽と前記負極槽との間で前記電解質水溶液を循環させる。そうすると、加熱機構および冷却機構により、正極槽と負極槽との間にイオン濃度勾配が生成し、正極と負極から電気を取り出すことができる。そして循環機構により電解質水溶液が循環して、このイオン濃度勾配が維持されるので、発電を継続的に行うことができる。
本発明に係る発電装置の別の特徴構成は、熱交換機構を有し、前記熱交換機構は、前記循環機構が前記正極槽に送る前記電解質水溶液と、前記循環機構が前記負極槽に送る前記電解質水溶液との間で熱交換を行う点にある。
上記の特徴構成によれば、加熱機構からの熱を有効利用して、発電装置のエネルギー効率を高めることができ好適である。
発電装置の概要を示す図 発電原理確認試験の試験装置の概要を示す図 発電原理確認試験の結果を示すグラフ 2槽電位差測定試験の試験装置の概要を示す図 2槽電位差測定試験の結果を示すグラフ
以下、電解質水溶液および発電装置について詳しく説明する。本実施形態に係る電解質水溶液は、温度応答性電解質と酸化還元反応種とを含有する。
<温度応答性電解質>
温度応答性電解質としては、温度の変化によりイオンの電離が変化するもの、すなわち温度に応じてpKaが変化する電解質であれば特に限定されないが、例えば、高分子体のものであることが好ましい。
より詳細に説明すると、温度応答性電解質としては、界面活性剤や、ポリNイソプロピルアクリルアミド、ポリペプチド(タンパク質やペプチド)の様な、分子内に極性基と疎水性基を両方有し、さらに、水溶液中でイオンを放出することができる(イオン化可能な)官能基を有するものが挙げられる。
イオン化可能な官能基としては、Hを放出する酸性基でも、正電荷となり得る塩基性基でもよく、本発明の適用目的に応じて、適宜、選択し得るものである。酸性基としては、例えば、硫酸基、カルボン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。塩基性基としては、例えば、アミノ基、イミダゾール基、ピリジル基等が挙げられる。
このような温度応答性電解質は、分子内に極性基と疎水性基を両方有する分子に、イオン化可能な官能基を共有結合で結合させて作製してもよい。また、イオン化可能な電離基を有するモノマー成分と極性基を有するモノマー成分と疎水性基を有するモノマー成分、あるいは、イオン化可能な電離基を有するモノマー成分と極性基及び疎水性基を有するモノマー成分を共重合することによって作製してもよい。
界面活性剤や、ポリNイソプロピルアクリルアミド、ポリペプチド(タンパク質やペプチド)の様な、分子内に極性基と疎水性基を両方有する分子は、低温においては水に良く溶解・分散するが、ある温度以上に加温すると疎水性相互作用により集合・収縮・凝集・ゲル化・沈殿する温度応答性を有する。
一方で、電解質の電離度(pKa)は、電解質が存在する環境(極性)や電解質間の距離に応じて可逆的に変化する。例えば、硫酸は、極性の高い水溶液中においては殆ど電離し、極性の高い硫酸アニオン(HSO やSO 2-等の陰イオン)の構造をとるが、有機溶媒を加えて媒体の極性を下げると電離度が低下し多くが極性の低い硫酸(HSO)の構造となる。また、多くのカルボン酸を一つの分子や高分子、材料上に密集させると近接するカルボキシラートアニオン間で静電反発が働きイオン(RCOO-等の陰イオン)がエネルギー的に不安定化されるため、電離度が下がり電荷を持たない硫酸(RCOOH)の割合が増える。
本実施形態に係る温度応答性電解質は、極性基と疎水性基の2つの性質を組み合わせ、さらにイオン化可能な官能基(電解質)を組み合わせることで、温度差を用いてイオン濃度勾配を発生させる。
このような温度応答性電解質は、高温域においては、分子が集合・収縮・凝集・ゲル化・沈殿し、これによりイオン周囲の環境が疎水性(低極性)になり、または、イオン間の距離が近づくことにより電解質がイオン化し難くなる。一方、低温域においては分子が分散・膨潤・溶解するために、周囲の極性が高くなり、又は、イオン間の距離が遠くなることにより電解質がイオン化しやすくなる。すなわち、硫酸やカルボン酸等の酸(負電荷となり得る官能基)を有する温度応答性電解質は低温においては低いpKa値を示すが、高温域においてはpKaの値が高くなる。一方、アミンの様な塩基(正電荷となり得る官能基)を有する温度応答性電解質は低温においては高いpKaを有するが高温域においてはpKaの値が低くなる。
実際に、カルボン酸を有するアクリル酸とNイソプロピルアクリルアミドを共重合体した温度応答性ナノ微粒子電解質を合成し、温度を変化させながら、pHを測定したところ温度を上昇させるとある温度を境に急激にpHが上昇する。この時、観察されたpH勾配は最大0.1K-1に達した。これはネルンストの式によると数十mVK-1に相当する。また、動的光散乱法によりこのナノ微粒子の粒径の温度依存を測定すると、pHが上昇し始める温度を境にナノ微粒子が相転移を起こし、急激に収縮し始めることがわかった。すなわち、この温度応答性電解質(カルボン酸を有するポリNイソプロピルアクリルアミド共重合体ナノ微粒子)は低温においては膨潤しているため多くのカルボン酸がイオン化しているが、温度上昇とともに収縮しカルボン酸のイオン化度が低下することが示された。この現象は、カルボン酸の様な酸性の温度応答性電解質だけでなく、アミン基やイミダゾール基の様な塩基性の温度応答性電解質を用いても観察される。
アクリル酸の替わりにイミダゾール基(1-H-Imidazole-4-N-acryloylethanamine)やアミン基(N-[3-(Dimethylamino)propyl]methacrylamide)(DMAPM)を有する塩基性モノマーをNイソプロピルアクリルアミドと共に共重合した温度応答性ナノ微粒子電解質を合成し、温度応答的なpH変化を観察すると、相転移点より低温においては比較的高いpHを示したが、温度を上昇させていくと相転移点付近で急激にpHが下がり始める。この時のpH勾配も最大約0.1K-1でありネルンストの式によると数十mV K-1に相当する。イミダゾールの代わりにアミン基を有するN-[3-(Dimethylamino)propyl]methacrylamideを共重合した温度応答性電解質においても高温域においてpkaが低下する。さらにN-[3-(Dimethylamino)propyl]methacrylamideを共重合した温度応答性ナノ微粒子電解質を各温度において塩酸を用いてpH滴定を行うと、相転移点前後で見かけの中和点が大きくシフトする。すなわち、ジメチルアミノ基の一部は相転移温度以下では塩基として作用するが、相転移温度以上にすると収縮した高分子鎖の内部に埋もれて塩基として作用しない。
これまで電解質のpHは一般的に温度を変化させると変化することが知られていたが、通常の電解質のpH変化は1℃あたり0.01K-1前後であった。本実施形態に係る温度応答性電解質を用いることにより既存の電解質では見られなかった顕著なpH変化を達成できる。
温度応答性電解質の多くは相転移点を有し、相転移温度前後で急激に集合・収縮・凝集・ゲル化・沈殿状態が変化する。そのため、該温度応答性電解質を含む水溶液等は、僅かな温度変化で急激にpHを変化させることが出来る。また、相転移温度は、該温度応答性電解質を含む溶液の極性・イオン強度や温度応答性電解質の濃度だけでなく、温度応答性電解質の親疎水性バランス、電解質密度により制御可能である。
さらに、変化させるpH領域や温度領域は、電解質の種類(強酸、弱酸、弱塩基、強塩基等)や密度、さらには集合・収縮・凝集・ゲル化・沈殿の度合いをコントロールすることで制御可能である。すなわち、分子設計や媒体の設計に応じて非常に低いpHから高いpHまで、目的の温度応答性をもって制御可能である。例えば、温度応答性電解質高分子(ナノ微粒子)の合成の際に、N,N'−メチレンビスアクリルアミドのような架橋性モノマー量(架橋性モノマーの共重合率)を調整することにより、温度変化による膨潤割合を調整することができる。また、温度応答性電解質高分子(ナノ微粒子)の合成の際に、N−t−ブチルアクリルアミドのような疎水性モノマー含有量(疎水性モノマーの共重合率)を調整することにより、相転移温度を調整することができる。
<酸化還元反応種>
本実施形態では、酸化還元反応種としてヒドロキノン誘導体が用いられる。本実施形態で用いられる酸化還元反応種は、電子授受による酸化還元の過程で酸化種および還元種がともに水溶液に可溶であり、かつ酸化還元反応の系の中に水素イオン(プロトン)が含まれる。また本実施形態の酸化還元反応種としては、pHに応じて酸化還元電位が変化するものが用いられる。
ヒドロキノン誘導体としては、例えばヒドロキノンや、その誘導体を用いることができる。以下、ヒドロキノンを例として説明する。ヒドロキノンは水溶液中では、一部が解離してベンゾキノンとなり、次式に示す平衡状態(酸解離平衡)を形成する。
Figure 2018133318
pHの低い環境下では、ベンゾキノンの還元反応が進行し、平衡が右へ移動して、プロトンと電子が消費される。一方、pHの高い環境下ではヒドロキノンの酸化反応が進行し、平衡が左へ移動して、プロトンと電子が放出される。
なお、ヒドロキノン誘導体としては次の化学式3または化学式4に示す化合物であって、酸解離平衡反応の前後の化合物が両方とも水溶性であるものを用いることができる。ここで、R2〜R6は水素基、アルキル基・アルケニル基・フェニル基等の炭化水素基、ヒロドキシ基、アルコキシ基、アミン基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアン基、チオール基を示している。
Figure 2018133318
Figure 2018133318
<発電装置>
次に図1を参照して、上述した電解質水溶液を用いた発電装置について説明する。本実施形態に係る発電装置100は、正極槽1、負極槽2、正極3、負極4、冷却機構5、加熱機構6、循環機構7および熱交換機構8を有して構成される。
正極槽1および負極槽2に、上述した電解質水溶液Sが収容される。正極3および負極4は、例えばカーボン製の電極である。正極3が、正極槽1の電解質水溶液Sに浸漬される。負極4が、負極槽2の電解質水溶液Sに浸漬される。
冷却機構5は、正極槽1に収容された電解質水溶液Sを冷却する。すなわち冷却機構5は、正極3の近傍の電解質水溶液Sを冷却する。例えば冷却機構5は、正極槽1の電解質水溶液と海水とを熱交換させる熱交換器である。
加熱機構6は、負極槽2に収容された電解質水溶液Sを加熱する。すなわち加熱機構6は、負極4の近傍の電解質水溶液Sを加熱する。例えば加熱機構6は、負極槽2の電解質水溶液と、工場や内燃機関、燃料電池等からの高温水とを熱交換させる熱交換器である。
循環機構7は、正極槽1と負極槽2との間で電解質水溶液Sを循環させる機構である。循環機構7は、第1流路7a、第1ポンプ7b、第2流路7cおよび第2ポンプ7dを有して構成される。第1流路7aおよび第2流路7cは、電解質水溶液Sが通流可能流路であって、正極槽1と負極槽2とを接続する流路である。第1ポンプ7bは、第1流路7aに設けられたポンプであって、正極槽1の電解質水溶液Sを負極槽2へ向けて送出する。第2ポンプ7dは、第2流路7cに設けられたポンプであって、負極槽2の電解質水溶液Sを正極槽1へ向けて送出する。
熱交換機構8は、循環機構7が正極槽1に送る電解質水溶液Sと、循環機構7が負極槽2に送る電解質水溶液Sとの間で熱交換を行う熱交換器である。具体的には熱交換機構8は、第1流路7aを通流する電解質水溶液Sと、第2流路7cを通流する電解質水溶液Sとの間で熱交換を行う。
<発電装置の動作>
以上述べた発電装置100の動作について説明する。以下の説明では、温度応答性電解質のイオン化可能な官能基が、硫酸やカルボン酸等の酸(負電荷となり得る官能基)である場合について説明する。
加熱機構6が負極槽2の電解質水溶液Sを加熱して、電解質水溶液Sの温度を高く、特に温度応答性電解質の相転移温度より高くする。そうすると、温度応答性電解質(分子)が集合・収縮・凝集・ゲル化・沈殿等する。これにより温度応答性電解質の官能基の周囲の環境が疎水性(低極性)になり、または、官能基間の距離が近づくことにより、官能基がイオン化し難くなる。つまり、温度応答性電解質のpKa値が高くなり、負極槽2の水素イオン(プロトン)の濃度が減少する。もって負極槽2の電解質水溶液SのpHが増加する。
そうすると、化2に示した酸化還元反応種(ヒドロキノン)の酸解離平衡は、化2の式で左へ移動する。つまりヒドロキノンの酸化反応が進行し、プロトンと電子が放出される。酸化還元反応種から放出された電子が、負極4から外部へ取り出される。
冷却機構5が正極槽1の電解質水溶液Sを冷却して、電解質水溶液Sの温度を(負極槽2の温度より)低く、特に温度応答性電解質の相転移温度より低くする。そうすると、温度応答性電解質(分子)が分散・膨潤・溶解等する。これにより温度応答性電解質の官能基の周囲の極性が高くなり、または、官能基間の距離が遠くなることにより、官能基がイオン化しやすくなる。つまり、温度応答性電解質のpKa値が低くなり、正極槽1の水素イオン(プロトン)の濃度が増加する。もって正極槽1の電解質水溶液SのpHが減少する。
そうすると、化2に示した酸化還元反応種(ヒドロキノン)の酸解離平衡は、化2の式で右へ移動する。つまり周囲のプロトンと、正極3から供給される電子を用いてベンゾキノンの還元反応が進行する。つまり、負極4からの電子が正極槽1にて消費される。
以上の反応により、正極槽1では分散・膨潤・溶解等した温度応答性電解質(分子)と、ヒドロキノンの濃度が上昇する。負極槽2では集合・収縮・凝集・ゲル化・沈殿等した温度応答性電解質(分子)と、ベンゾキノンの濃度が上昇する。循環機構7が、正極槽1と負極槽2との間で電解質水溶液Sを循環させることで、これら物質の濃度の均衡が保たれ、上述の反応が継続的に進行し、発電装置100による発電が継続的に行われる。
以上述べた通り、本実施形態に係る発電装置100は、上述の電解質水溶液を用いて発電を行う発電装置であって、正極3と負極4と加熱機構6と冷却機構5とを有し、正極3および負極4は電解質水溶液に浸漬される。加熱機構6は、負極4の近傍の電解質水溶液を、温度応答性電解質の相転移温度より高い温度に加熱する。冷却機構5は、正極3の近傍の電解質水溶液を、温度応答性電解質の相転移温度より低い温度に冷却する。
<発電装置の動作(他の形態)>
ここで、温度応答性電解質のイオン化可能な官能基が、アミンの様な塩基(正電荷となり得る官能基)である場合について説明する。この場合、温度応答性電解質は低温においては高いpKaを有するが高温域においてはpKaの値が低くなる。このような温度応答性電解質を発電装置100に用いる場合には、冷却機構5と加熱機構6の配置を入れ替える。すなわち、冷却機構5が負極槽2の電解質水溶液Sを冷却し、加熱機構6が正極槽1の電解質水溶液Sを加熱するよう、発電装置100を構成する。
冷却機構5が負極槽2の電解質水溶液Sを冷却して、電解質水溶液Sの温度を低く、特に温度応答性電解質の相転移温度より低くする。そうすると、温度応答性電解質(分子)が分散・膨潤・溶解等する。これにより温度応答性電解質の官能基の周囲の極性が高くなり、または、官能基間の距離が遠くなることにより、官能基がイオン化しやすくなる。つまり、温度応答性電解質のpKa値が高くなり、負極槽2の水素イオン(プロトン)の濃度が減少する。もって負極槽2の電解質水溶液SのpHが増加する。
そうすると、化2に示した酸化還元反応種(ヒドロキノン)の酸解離平衡は、化2の式で左へ移動する。つまりヒドロキノンの酸化反応が進行し、プロトンと電子が放出される。酸化還元反応種から放出された電子が、負極4から外部へ取り出される。
加熱機構6が正極槽1の電解質水溶液Sを加熱して、電解質水溶液Sの温度を(負極槽2の温度より)高く、特に温度応答性電解質の相転移温度より高くする。そうすると、温度応答性電解質(分子)が集合・収縮・凝集・ゲル化・沈殿等する。これにより温度応答性電解質の官能基の周囲の環境が疎水性(低極性)になり、または、官能基間の距離が近づくことにより、官能基がイオン化し難くなる。つまり、温度応答性電解質のpKa値が低くなり、正極槽1の水素イオン(プロトン)の濃度が増加する。もって正極槽1の電解質水溶液SのpHが減少する。
そうすると、化2に示した酸化還元反応種(ヒドロキノン)の酸解離平衡は、化2の式で右へ移動する。つまり周囲のプロトンと、正極3から供給される電子を用いてベンゾキノンの還元反応が進行する。つまり、負極4からの電子が正極槽1にて消費される。
以上の反応により、正極槽1では集合・収縮・凝集・ゲル化・沈殿等した温度応答性電解質(分子)と、ヒドロキノンの濃度が上昇する。負極槽2では分散・膨潤・溶解等した温度応答性電解質(分子)と、ベンゾキノンの濃度が上昇する。循環機構7が、正極槽1と負極槽2との間で電解質水溶液Sを循環させることで、これら物質の濃度の均衡が保たれ、上述の反応が継続的に進行し、発電装置100による発電が継続的に行われる。
以上述べた通り、この形態に係る発電装置100は、上述の電解質水溶液を用いて発電を行う発電装置であって、正極3と負極4と加熱機構6と冷却機構5とを有し、正極3および負極4は電解質水溶液に浸漬される。加熱機構6は、正極3の近傍の電解質水溶液を、温度応答性電解質の相転移温度より高い温度に加熱する。冷却機構5は、負極4の近傍の電解質水溶液を、温度応答性電解質の相転移温度より低い温度に冷却する。
<発電原理確認試験>
本実施形態に係る電解質水溶液によって発電が可能であることを確認するため、図2に示す試験器具にて発電原理確認試験を行った。
試験器具は、図2に示すように、水溶液槽11、低温側水槽12、高温側水槽13、低温側電極14、高温側電極15、低温熱源16、高温熱源17、電流計18を有して構成される。水溶液槽11に、試験用試料が満たされる。
低温側電極14および高温側電極15は、水溶液槽11内部の試験用試料と接触した状態とされる。低温側電極14および高温側電極15は、白金の薄板であって、厚さは0.1μmであり、試験用試料と接触する部位の大きさは25mm×25mmである。低温側電極14と高温側電極15との間隔は6.4mmである。低温側電極14と高温側電極15との間に、電流計18が接続される。
低温側水槽12は、低温側電極14と接触しており、低温熱源16から温度を制御した湯水が供給される。高温側水槽13は、高温側電極15と接触しており、高温熱源17から温度を制御した湯水が供給される。そうすると水溶液槽11では、低温側電極14の近傍の試験用試料は冷却され、高温側電極15の近傍の試験用試料は加熱されて、水溶液槽11の試験用試料の内部で温度差(温度傾斜)が生じる。
以上のように構成した試験器具にて、低温熱源16および高温熱源17の温度を制御して水溶液槽11の試験用試料に温度差を発生させ、電流計18に流れる電流の大きさを測定した。電流を測定した温度差は、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃および50℃の6つである。
<試験用試料>
以下の表に示す水溶液を調整して試験用試料とし、上述の試験器具にて試験を行った。
Figure 2018133318
ここで温度応答性電解質としては、カルボン酸を有するアクリル酸とNイソプロピルアクリルアミドを共重合体した温度応答性ナノ微粒子電解質を用いた。詳しくは、N−イソプロリルアクリルアミドを68mol%、アクリル酸を10mol%、疎水性の強いN−t−ブチルアクリルアミドを20mol%、架橋剤のN,N'−メチレンビスアクリルアミドを2mol%共重合したナノ微粒子である。当該微粒子は以下の様にして作成した。
30mLの超純水にN−イソプロリルアクリルアミドを120mg、N−t−ブチルアクリルアミドを38.4mg、アクリル酸を11μL、N,N'−メチレンビスアクリルアミドを4.6mg、ドデシル硫酸ナトリウムを17.4mg溶解し、100mLのナスフラスコに入れてセプタムで密栓し、油浴で70℃に昇温した状態で、マグネティックスターラーで均一になるまで攪拌した。均一になったらセプタムにニードルを二本差し、一本の先を液面の下に、もう一本の先を液面の上に配置し、液面の下に配置したニードルに外部から窒素をゆっくりバブリングして30分脱気した。5.88mgの4,4’-Azobis(4cyano-valeic acid)を0.6mlのジメチルスルホキシドに溶解したものをニードルで溶液に添加し、窒素をつないだニードル以外を全て取り外し、窒素雰囲気下70℃で3時間反応を行った。セプタムを開封することで反応を停止させ10,000 Da MWCOの透析チューブに反応溶液を入れ大量の水を繰り返し取り替えながら三日間透析を行って、界面活性剤や未反応のモノマーを取り除いた。
なおキンヒドロンは、p−ベンゾキノンとp−ヒドロキノンの混合物である。
発電原理確認試験の結果を図3のグラフに示す。比較例1および2では、電極間温度差が増加しても、電流は増加しなかった。これに対し、実施例1では、電極間温度差の増加に応じて電流が大きく増加した。比較例3では電極間温度差50℃での電流は0.5μA/cm2に留まった。これに対し実施例1では、電極間温度差が50℃で2.7μA/cm2となり、比較例3の5倍以上の電流が得られた。以上の結果から温度応答性電解質とヒドロキノンを含有する電解質水溶液により発電が可能であることが確認された。
<2槽電位差測定試験>
本実施形態に係る発電装置100のように、2つの槽を用いる構成で発電が可能であることを確認するため、図4に示す試験器具にて2槽電位差測定試験を行った。
試験器具は、図4に示すように、低温側槽21、高温側槽22、低温浴23、高温浴24、低温側電極25、高温側電極26、塩橋27を有して構成される。低温側槽21および高温側槽22に、試験用試料が収容される。そして低温側槽21の試験用試料と、高温側槽22の試験用試料とが、塩橋27により電気的に連結される。
低温側電極25および高温側電極26は、試験用試料に浸漬された状態とされる。低温側電極25および高温側電極26は、ガラス状カーボン電極を用いた。低温側電極25と高温側電極26との間に、電圧計28が接続される。
低温側槽21は、低温浴23の湯水に浸漬された状態とされる。低温浴23には、図示しない低温熱源から温度を制御した湯水が供給される。高温側槽22は、高温浴24の湯水に浸漬された状態とされる。高温浴24には、図示しない高温熱源から温度を制御した湯水が供給される。以上の構成により、低温側槽21の試験用試料が冷却され、高温側槽22の試験用試料が加熱され、低温側槽21の試験用試料と高温側槽22の試験用試料との間に温度差が生じる。
以上のように構成した試験器具にて、低温側槽21の試験用試料と高温側槽22の試験用試料との間に温度差を発生させ、低温側電極25と高温側電極26との間に生じる電圧の大きさを電圧計28で測定した。電圧は、温度差を0℃から50℃まで変化させて測定した。
<試験用試料>
以下の表に示す水溶液を調整して試験用試料とし、上述の試験器具にて試験を行った。
Figure 2018133318
なお温度応答性電解質は、上述した発電原理確認試験と同じ微粒子を用いた。
2槽電位差測定試験の結果を図5のグラフに示す。実施例2、実施例3、比較例4いずれも、容器間温度差の増加に伴って電位差が上昇しているが、実施例2および3は、比較例4に比べて電位差の上昇が大きい。この試験により、温度応答性電解質を単独で発電に用いる場合(比較例4)よりも、温度応答性電解質と酸化還元反応種(ヒドロキノン誘導体)とを併用する場合(実施例2および3)の方が、大きな電位差を生成できることが確認された。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、温度に応じてpH変化を生じさせる温度応答性電解質と、酸化還元反応種とを、電解質水溶液に含有させる場合について説明した。温度応答性電解質に替えて、その他の刺激、例えば光によりpH変化を生じさせる物質を用いて、電解質水溶液および発電装置を構成することも可能である。
光によりpH変化を生じさせる物質としては、例えばメタクリル酸共重合体とアゾ色素の複合溶液などがあり、文献「高分子カルボン酸−アゾ色素コンプレックス系の光による可逆的pH変化」(高分子論文集、Vol.37, No.4, pp.293-298(Apr.,1980))にて報告されている。また、文献「A photoinduced pH jump applied to drug release from cucurbit[7]uril」(Chem. Commun., 2011, 47,8793-8795)でも、光照射でpH変化するホスト−ゲスト分子が示されている。このような光応答性物質と酸化還元反応種を含有する水溶液を用いて、発電装置を構成することが可能である。
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
100 :発電装置
1 :正極槽
2 :負極槽
3 :正極
4 :負極
5 :冷却機構
6 :加熱機構
7 :循環機構
7a :第1流路
7b :第1ポンプ
7c :第2流路
7d :第2ポンプ
8 :熱交換機構
11 :水溶液槽
12 :低温側水槽
13 :高温側水槽
14 :低温側電極
15 :高温側電極
16 :低温熱源
17 :高温熱源
18 :電流計
21 :低温側槽
22 :高温側槽
23 :低温浴
24 :高温浴
25 :低温側電極
26 :高温側電極
27 :塩橋
28 :電圧計
S :電解質水溶液

Claims (8)

  1. 温度に応じてpKaが変化する電解質である温度応答性電解質と、ヒドロキノン誘導体である酸化還元反応種とを含有する電解質水溶液。
  2. 前記温度応答性電解質は、極性基と、疎水性基と、イオン化可能な官能基とを有する分子である請求項1に記載の電解質水溶液。
  3. 前記酸化還元反応種がヒドロキノンである請求項1または2に記載の電解質水溶液。
  4. 前記酸化還元反応種がメチルヒドロキノンである請求項1または2に記載の電解質水溶液。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の電解質水溶液を用いて発電を行う発電装置であって、正極と負極と加熱機構と冷却機構とを有し、前記正極および前記負極は前記電解質水溶液に浸漬され、
    前記加熱機構は、前記正極と前記負極のうち一方の近傍の前記電解質水溶液を加熱し、
    前記冷却機構は、前記正極と前記負極のうち他方の近傍の前記電解質水溶液を冷却する、発電装置。
  6. 前記加熱機構は、前記温度応答性電解質の相転移温度より高い温度に前記電解質水溶液を加熱し、
    前記冷却機構は、前記温度応答性電解質の相転移温度より低い温度に前記電解質水溶液を冷却する請求項5に記載の発電装置。
  7. 正極槽と負極槽と循環機構とを有し、前記電解質水溶液が前記正極槽および前記負極槽に収容され、前記正極が前記正極槽の前記電解質水溶液に接触し、前記負極が前記負極槽の前記電解質水溶液に接触し、前記加熱機構が前記正極槽と前記負極槽のうち一方の前記電解質水溶液を加熱し、前記冷却機構が前記正極槽と前記負極槽のうち他方の前記電解質水溶液を冷却し、前記循環機構が前記正極槽と前記負極槽との間で前記電解質水溶液を循環させる請求項5または6に記載の発電装置。
  8. 熱交換機構を有し、前記熱交換機構は、前記循環機構が前記正極槽に送る前記電解質水溶液と、前記循環機構が前記負極槽に送る前記電解質水溶液との間で熱交換を行う請求項7に記載の発電装置。
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