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JP2018131479A - 摩擦材組成物、該摩擦材組成物を用いた摩擦材および摩擦部材 - Google Patents

摩擦材組成物、該摩擦材組成物を用いた摩擦材および摩擦部材 Download PDF

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Abstract

【課題】環境負荷の高い銅を用いることなく、低負荷低温制動時および通常制動域おいて摩擦係数が安定であり、高速高温制動時の耐摩耗性が高い摩擦材組成物、摩擦材および摩擦部材を提供する。【解決手段】結合材、有機充填材、無機充填材、および繊維基材を含有する摩擦材組成物であり、前記摩擦材組成物として、銅を含まない、または摩擦材組成物全体に対する銅の含有量が0.5質量%以下であり、無機充填材として非針状のチタン酸塩を摩擦材組成物全体に対し25〜30質量%含み、無機充填材として平均粒子径が0.4〜0.6μmで最大粒子径が1.1μmの珪酸ジルコニウムを摩擦材組成物全体に対し3〜6質量%含有する摩擦材組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、自動車等の制動に用いられるディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材に適した摩擦材組成物、該摩擦材組成物を用いた摩擦材および摩擦部材に関するものであり、特に、アスベストを含有しない摩擦材組成物、いわゆるノンアスベスト摩擦材に関するものである。
自動車等には、制動のためにディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材が使用されている。ディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材は、相手材となるディスクロータ、ブレーキドラム等と摩擦することによって制動の役割を果たす。そのため摩擦材には、使用条件に応じた適切な摩擦係数(効き特性)が求められるだけでなく、ブレーキ鳴きが発生しにくいこと(鳴き特性)、摩擦材の寿命が長いこと(耐摩耗性)等が要求される。
摩擦材は繊維基材としてスチール繊維を30〜60質量%含有するセミメタリック材と、スチール繊維を30質量%未満含有するロースチール材と、スチール繊維を含有しないNAО(Non-Asbestos Organic)材に大別される。ただし、スチール繊維を微量に含有する摩擦材もNAО材に分類されることもある。
NAО材はスチール繊維を含有しない、あるいはスチール繊維の含有率が極めて低いため、セミメタリック材やロースチール材と比較して、相手材であるディスクロータへの攻撃性が低いという特徴がある。このような利点から、現在、日本や米国では効き、鳴き、耐摩耗性のバランスに優れるNAО材が主流となっている。また、欧州では高速制動時の摩擦係数保持の観点でロースチール材が用いられることが多かったが、近年は市場の高級志向化に応えるべく、タイヤのホイール汚れやブレーキ鳴きが発生しにくいNAО材が用いられることも増えてきている。
現在、NAO材の主流は、粉末や繊維の状態の銅を含有するものが一般的となっている。銅は後述の通り、従来のNAO材に必須といえる重要な素材であったが、銅や銅合金を含有する摩擦材は、制動時に発生する摩耗粉中に銅を含むため、河川や湖を汚染するという可能性が示唆されている。その結果、米国のカリフォルニア州、ワシントン州等では2021年以降は銅を5質量%以上、2023年以降は銅を0.5質量%以上含有する摩擦材の販売および新車への組み付けを禁止する法案が可決され、これに対応するため銅を含有しない、あるいは銅の含有量が少ないNAO材の開発が急務となっている。
銅の代表的な機能の1つ目として、熱伝導率の付与が挙げられる。銅は熱伝導率が高いため、制動時に発生した熱を摩擦界面から拡散させることで、過度の温度上昇による摩耗を抑制する。
銅の代表的な機能の2つ目として、高温制動時における摩擦界面の保護が挙げられる。銅は延性、展性の高い金属であるため、制動によって摩擦材表面に延びて被膜を形成する。その結果、高速高温制動時に摩擦材の摩耗を低減すると共に、安定した摩擦係数の発現が可能となる。また、銅の延展膜が研削材を保持しやすくなるので、低速低温時においても摩擦係数を発現可能となる。
従って、銅を含有しない、あるいは銅の含有量が少ないNAO材を開発するためには、上記のような熱伝導率の向上、界面保護、研削材保持の観点で銅代替技術が必要となる。
このような動きの中、銅を含有しない、あるいは銅の含有量が少ない摩擦材に関していくつかの特許(特許文献1,2等)が提案されている。
特開2015−205959号公報 特開2015−059125号公報
しかし近年、上記の銅代替とは別の観点で重要な課題が発生している。それは、回生ブレーキに代表される制御ブレーキへの適合性である。従来の油圧ブレーキでは、ドライバーがブレーキペダルからの入力を微調整することで、車両の制動力を適時調整してきた。しかし制御ブレーキでは、制動の一部をシステム側が担うため、摩擦材が発現する摩擦係数が極端に変動してしまうと、制御に不具合が生じてしまう。例えば、摩擦係数が極端に低下してしまうと、制動距離が長くなり過ぎて最悪の場合事故の原因となり得る。従って、制御ブレーキの精度を高めるためには、摩擦材が発現する摩擦係数がいかなる時も安定していることが極めて重要である。
摩擦係数が変動する代表例として、銅を含有しない摩擦材組成物における低温低負荷制動時の摩擦係数低下が挙げられる。銅を含有しない摩擦材組成物では、低温低負荷制動時においてディスクロータ表面に移着膜を形成し難く、研削材保持の効果を発現し難い。その結果、研削作用によるディスクロータへの攻撃性およびディスクロータ由来の鉄成分とディスクロータの間に生じるせん断抗力が低下するので、通常時に比べて摩擦係数が低下傾向である。その場合、上記の様に制動距離が長くなり、ブレーキ力低下してしまうなどの不具合が生じ、ドライバーの快適性は損なわれてしまう。
このような観点から考えると、特許文献1、2は、銅の高い熱伝導率性や高温潤滑性に着目した、高速高温制動時の摩擦特性の補完のみを課題とするものであり、低温低負荷制動時の摩擦係数の安定性やその他の摩擦特性については考慮されていない。
例えば特許文献1では、銅の代わりに平均粒子径が0.5〜20μmでモース硬度が5〜8の無機摩擦調整材(a)を摩擦材組成物全量に対し8〜15体積%と、マイクロポーラス構造を有する多孔質の無機摩擦調整材(b)を摩擦材組成物全量に対し1〜3体積%と、炭素質系潤滑材(c)を5〜10体積%とを含み、かつ、(a)、(b)、(c)の含有量が、1.0≦((a)+(b))/(c)≦2.5の比率を満たすことで、高温制動時の摩擦係数の安定化および耐摩耗性の向上が提案されているが、潤滑剤を多く含有してあるため、低温低負荷制動時の摩擦特性も合わせてバランス良く改善することは困難である。
また特許文献2では、アルミニウムを主成分とする合金繊維を1〜10重量%含有し、平均粒子径が1〜20μmでモース硬度が4.5以上の硬質無機粒子を5〜20重量%含有することで、通常制動域から高速制動域の摩擦係数の安定化および耐摩耗性の向上が提案されているが、特許文献1と同様に、低温低負荷制動時の摩擦係数の安定性を両立することは難しい。
そこで本発明では、摩擦材組成物中に銅を含まない、あるいは銅を含む場合であっても銅の含有量が0.5質量%以下とし、環境有害性および人体有害性が低い組成としても、低温低負荷制動時および通常制動域の摩擦係数が安定し、かつ高速高温制動時に耐摩耗性が高い摩擦材とすることができる摩擦材組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、銅の摩擦界面の保護効果はチタン酸塩で補完すると共に、特定の硬度、および粒子径を有する研削材を特定比率で含有させることで、耐摩耗性等への弊害が少なく高速高温制動時の摩擦係数を保持可能となることを見出した。この知見による本発明の摩擦材組成物は、結合材、有機充填材、無機充填材、および繊維基材を含有する摩擦材組成物であり、前記摩擦材組成物として、銅を含まない、または摩擦材組成物全体に対する銅の含有量が0.5質量%以下であり、無機充填材として非針状のチタン酸塩を摩擦材組成物全体に対し25〜30質量%含み、無機充填材として平均粒子径が0.4〜0.6μmで最大粒子径が1.1μmの珪酸ジルコニウムを摩擦材組成物全体に対し3〜6質量%含有する摩擦材組成物である。
本発明の摩擦材組成物は、平均粒子径が20〜200μmのγアルミナを摩擦材組成物全体に対し0.5〜2.0質量%含有することが好ましく、無機充填材としてチタン酸塩を含有するとともに、二種類のチタン酸塩を併せて含有することが好ましい。また、本発明の摩擦材組成物は、メジアン径が2〜10μmの黒鉛を摩擦材組成物全体に対し4〜6質量%含有することが好ましく、亜鉛以外の金属または合金を含有しないことが好ましい。
また、本発明の摩擦材は、上記の摩擦材組成物を成形してなるものであり、本発明の摩擦部材は、上記の摩擦材組成物を成形してなる摩擦材と裏金とを一体化してなるものである。
本発明によれば、自動車用ディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦材に用いた際に、環境有害性、および人体有害性が低い組成としつつ、高温制動時の耐摩耗性が高いと共に、通常制動域だけでなく低速低温制動時においても摩擦係数を保持することが可能、つまり制動条件や環境の変化に対して摩擦係数および耐摩耗性が安定な摩擦材を与える摩擦材組成物を提供することを目的とする。また、該摩擦材組成物を用いた摩擦材および摩擦部材を提供することができる。また、本発明によれば、上記特性を有する摩擦材および摩擦部材を提供することができる。
以下、本発明の摩擦材組成物、これを用いた摩擦材および摩擦部材について詳述する。なお、本発明の摩擦材組成物は、アスベストを含有しない摩擦材組成物、いわゆるノンアスベスト摩擦材組成物である。
[摩擦材組成物]
本実施形態の摩擦材組成物は、銅を含まない、または銅を含む場合であっても摩擦材組成物全体に対する銅の含有率が0.5質量%以下と極微量である。このため、本発明の摩擦材組成物による摩擦材および摩擦部材は、環境有害性および人体有害性が低いものとなる。なお、上記の「銅」は、繊維状や粉末状等の銅、銅合金および銅化合物に含まれる銅元素であり、「銅の含有量」は、全摩擦材組成物中における含有率を示す。なお、環境有害性および人体有害性の観点から銅を含まないものが好ましい。
[無機充填材(珪酸ジルコニウム)]
本発明の摩擦材組成物は無機充填材を含有する。無機充填材は、摩擦材の摩擦係数の調整や耐熱性の向上を目的に摩擦調整材として含まれるものであり、成分、粒子径、硬さ、形状等の様々な素材特性を選定することで、摩擦特性を調整する成分である。相手材であるディスクロータの硬度は、一般的にはモース硬度4.5程度の鋳鉄であるため、モース硬度が5以上の無機充填材は、研削材として作用し、摩擦係数を上昇させる効果を有する。本発明の摩擦材組成物において、研削材として作用する無機充填材としてモース硬度が5以上である珪酸ジルコニウムを使用することを必須とする。
珪酸ジルコニウムはモース硬度が6〜7.5と高く、研削による摩擦係数の発現に効果的である。ただし、過度に添加量を多くする、または過度に粒子径の大きい粒子を使用すると摩擦材の耐摩耗性が顕著に悪化してしまうだけでなく、ディスクロータへの攻撃性が過剰に高まってしまう。
本発明者らはこれらの点につき鋭意検討の結果、珪酸ジルコニウムを特定の粒子径かつ比率で含有させることで、高速高温制動時の耐摩耗性を担保するとともに、低速低温時の摩擦係数を安定化させることを見出した。この知見より、珪酸ジルコニウムの平均粒子径は0.4〜0.6μmとし、最大粒子径は1.1μmとするとともに、摩擦材組成物に対する含有量を3〜6質量%の範囲とする。珪酸ジルコニウムの平均粒子径と最大粒子径、および摩擦材組成物における含有量を上記範囲とすることで、低速低温制動時の摩擦係数の低下を抑制しつつ、高温制動時における摩擦材の耐摩耗性悪化を抑制できる。
[無機充填材(γアルミナ)]
本発明の摩擦材組成物においては、研削材として作用する無機充填材として、上記の珪酸ジルコニウムとともにγアルミナを併用することが好ましい。珪酸ジルコニウムとともにγアルミナを併用すると、摩耗粉が堆積した層もしくは摩擦材由来の有機成分の移着膜を貫通することで、低速低温制動時の摩擦係数を安定化できる。この場合、上記と同様の理由から、モース硬度約6であるγアルミナの総量は0.5〜2質量%であることが好ましく、平均粒子径は20〜200μmであることが好ましい。γアルミナは、一種を単独で使用してもよく、平均粒子径が異なる二種のγアルミナを組み合わせて使用してもよい。
なお、平均粒子径および最大粒子径はレーザー回折粒度分布測定などの方法を用いて測定することができる。例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置、商品名:LA・920(株式会社堀場製作所製)で測定することができる。また、JIS B 4130等に代表されるふるい分級によって測定することもできる。
[無機充填材(チタン酸塩)]
本発明の摩擦材組成物において、無機充填材としてチタン酸塩を含有することを必須とする。また、人体有害性の観点から、針状ではないチタン酸塩、すなわち非針状のチタン酸塩を含有することを必須とする。なお、非針状のチタン酸塩は、具体的には多角形、円、楕円等の形状を呈する板状チタン酸塩、および不定形状のチタン酸塩を意味する。チタン酸塩はモース硬度が約4と低く、融点が1000℃以上と比較的高いため、高速高温制動時に摩擦界面に介在することで摩擦材の摩耗増大を低減することができる。本発明の摩擦材組成物において、チタン酸塩の含有量は25〜30質量%とする。上記範囲よりも含有量が少ないと高速高温制動時の摩擦係数保持の効果は得られないが、上記範囲よりも含有量が多いと低速低温時の摩擦係数が極端に低下してしまう。
上記チタン酸塩としては、二種類のチタン酸塩を組み合わせて使用することが好ましい。二種類のチタン酸塩を組み合わせて使用することで、摩擦係数の安定性と耐摩耗性の両立を高い水準で達成可能となる。なお、チタン酸塩としては、6−チタン酸カリウム、8−チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム、チタン酸ナトリウムのいずれを使用してもよい。
[無機充填材(黒鉛)]
また、本発明の摩擦材組成物では黒鉛を含有することが好ましい。黒鉛を添加することで摩擦材に熱伝導率を付与できるが、過度な添加の弊害として摩擦係数が低下してしまうので、黒鉛を含有する場合は、黒鉛のメジアン径は2〜10μmであることが好ましい。上記範囲のメジアン径とすることで黒鉛が摩擦材中に均一に分散し、制動時に発生する熱が摩擦界面から拡散し易くなり、高速高温制動時の耐摩耗性悪化を抑制する。また、黒鉛を含有する場合は、黒鉛の含有量は4〜6質量%であることが好ましい。上記範囲とすることで、摩擦材への熱伝導率の付与と摩擦係数の保持を両立可能となる。
[無機充填材(金属粉)]
また、一般の摩擦材組成物には、無機充填材として金属粉を配合することがあるが、金属粉末の添加は相手材であるディスクロータへの攻撃性が顕著に高まる虞があるため、本発明の摩擦材組成物としては、亜鉛を除く金属または合金を含まないものとすることが好ましい。なお、亜鉛は軟質であり相手材であるディスクロータへの攻撃性が高まる虞がないこと、および鉄よりもイオン化傾向が大きいため、鉄よりも酸化し易く、亜鉛粉を含有することで、ディスクロータ、あるいはディスクロータの摩耗粉が摩擦界面で錆び難くなることから、添加することが好ましい。亜鉛粉を添加する場合、亜鉛粉の含有量は摩擦材組成物に対し2〜4質量%であることが好ましい。なお、上述のように銅および銅合金の粉末は摩擦材組成物中の銅量が0.5質量%以下であれば許容されるが、含有しないことが好ましい。
[その他の無機充填材]
その他の無機充填材としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、三硫化アンチモン、チタン酸マグネシウム、チタン酸ナトリウム、硫化錫、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化ビスマス、硫化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、コークス、αアルミナ、マイカ、酸化鉄、バーミキュライト、硫酸カルシウム、ムライト、クロマイト、酸化チタン、シリカ等を用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
無機充填材の総含有量は、摩擦材用組成物において70〜80質量%とすることで、耐熱性の悪化を避けることができる。
[結合材]
本発明の摩擦材組成物は、結合材を含有する。結合材は、摩擦材組成物に含まれる有機充填材および繊維基材等を一体化して、強度を与えるものである。本実施形態の摩擦材組成物に含まれる結合材としては、シリコーン含有フェノール樹脂を用いることが好ましい。上記シリコーン含有フェノール樹脂としては、シリコーンオイル、またはシリコーンゴムを分散させたフェノール樹脂を用いることが好ましく、摩擦界面の撥水性を高めることができる。ただし、本実施形態の摩擦材組成物では、上記のシリコーン含有フェノール樹脂を単独で使用することは必須ではなく、例えばアクリルゴム含有フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂等の各種フェノール樹脂1種類以上をシリコーン含有フェノール樹脂と組み合わせて使用することができる。
本発明の摩擦材組成物における、結合材の含有量は、5〜10質量%であることが好ましい。特に、結合材の含有量を8〜10質量%の範囲とすることで、摩擦材の強度低下をより抑制でき、また、摩擦材の気孔率が減少し、弾性率が高くなることによる鳴き等の音振性能悪化を抑制できる。
[有機充填材(カシューダスト)]
本発明の摩擦材組成物は、有機充填材としてカシューダストを含有する。特に、未変性のカシューダストを含有ことが好ましい。有機充填材は、摩擦材の音振性能や耐摩耗性等を向上させるための摩擦調整材として含まれるものである。カシューダストは、カシューナッツシェルオイルを重合、硬化させたものを粉砕して得られる、通常、摩擦材に用いられるものであればよい。カシューダストの含有量は、5〜7質量%であることが好ましい。カシューダストの含有量を5〜7質量%とすることで、摩擦材の低弾性化による鳴き等の音振性能が改善することができる。
[その他の有機充填材]
本発明の摩擦材組成物においては、上記のカシューダストの他に、有機充填材としてゴム成分を用いてもよい。ゴム成分としては、例えば、タイヤゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)等が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、カシューダストとゴム成分とを併用する場合には、カシューダストをゴム成分で被覆したものを用いてもよいが、別個に用いてもよい。
有機充填材の総含有量は、摩擦材用組成物において15〜20質量%とすることで、摩擦材の低弾性化による鳴き等の音振性能が改善し、また耐熱性の悪化、熱履歴による強度低下を避けることができる。
[繊維基材]
本発明の摩擦材組成物は繊維基材を含有する。繊維基材は摩擦材において補強作用を示すものである。繊維基材としては、有機繊維、無機繊維、金属繊維等が挙げられる。
本発明の摩擦材組成物は有機繊維としてアラミド繊維、アクリル繊維、セルロース繊維等を用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。この中でも、耐熱性、補強効果、適度な空隙付与の観点から、アラミド繊維を用いることが好ましい。
無機繊維としては、ウォラストナイト、セラミック繊維、生分解性セラミック繊維、鉱物繊維、炭素繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維等を用いることができ、1種または2種類以上を組み合わせて用いることができるが、人体への有害性の観点から、チタン酸カリウム繊維等を含有しないことが好ましい。
なお、ここでいう鉱物繊維とは、スラグウール等の高炉スラグ、バサルトファイバー等の玄武岩、その他の天然岩石等を主成分として溶融紡糸した人造無機繊維であり、Al元素を含む天然鉱物であることがより好ましい。具体的には、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等が含まれるもの、またはこれら化合物が1種または2種以上含有されるものを鉱物繊維として用いることができ、これらのうちAl元素を含むものがより好ましい。
本発明で用いられる鉱物繊維は、人体有害性の観点で生体溶解性であることが好ましい。ここでいう生体溶解性の鉱物繊維とは、人体内に取り込まれた場合でも短時間で一部分解され体外に排出される特徴を有する鉱物繊維である。具体的には、化学組成がアルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物総量(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムの酸化物の総量)が18質量%以上で、かつ呼吸による短期バイオ永続試験で、20μm以上の繊維の質量半減期が40日以内または腹膜内試験で過度の発癌性の証拠がないかまたは長期呼吸試験で関連の病原性や腫瘍発生がないことを満たす繊維を示す(EU指令97/69/ECのNota Q(発癌性適用除外))。このような生体分解性鉱物繊維としては、SiO−Al−CaO−MgO−FeO−NaO系繊維等が挙げられ、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等を任意の組み合わせで含有した繊維が挙げられる。市販品としてはLAPINUS FIBERS B.V.製のRoxulシリーズ(「Roxul」は、登録商標。)等が挙げられる。「Roxul」には、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等が含まれる。
本発明の摩擦材組成物においては、金属繊維を用いると相手材であるディスクロータへの攻撃性が顕著に高まるので、金属繊維は含有しないものとする。なお、銅または銅合金の繊維を用いる場合は、摩擦材組成物中に銅量として0.5質量%以下とする。
繊維基材の総含有量は、摩擦材組成物中に6〜8質量%含有することが好ましい。摩擦係数の著しい低下等の弊害を与えることなく、適度な補強効果を摩擦材に付与する効果がある。
[その他の成分]
また、本発明の摩擦材組成物は、前記の材料以外に、必要に応じてその他の材料を配合することができる。
[摩擦材および摩擦部材]
本発明の摩擦材組成物は、自動車等のディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材としてまたは本実施形態の摩擦材組成物を目的形状に成形、加工、貼り付け等の工程を施すことによりクラッチフェーシング、電磁ブレーキ、保持ブレーキ等の摩擦材としても使用することができる。
本発明の摩擦材組成物は、摩擦面となる摩擦部材そのものとして用いて摩擦材を得ることができる。それを用いた摩擦材としては、例えば、下記の構成などが挙げられる。
(1)摩擦部材のみの構成
(2)裏金と、該裏金の上に形成させ、摩擦面となる本発明の摩擦材組成物からなる摩擦部材とを有する構成
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦部材との間に、裏金の接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層、裏金と摩擦部材の接着を目的とした接着層をさらに介在させた構成、等が挙げられる。
上記裏金は、摩擦部材の機械的強度の向上のために、通常、摩擦部材として用いるものであり、材質としては、金属または繊維強化プラスチック等を用いることができ、例えば、鉄、ステンレス、無機繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックが挙げられる。プライマー層および接着層としては、通常、ブレーキシュー等の摩擦部材に用いられるものであればよい。
本発明の摩擦材組成物は、一般に使用されている方法を用いて摩擦材を製造することができ、本発明の摩擦材組成物を加熱加圧成形して製造することができる。詳細には、例えば、本実施形態の摩擦材組成物をレーディゲミキサー(「レーディゲ」は、登録商標。)、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー(「アイリッヒ」は、登録商標。)等の混合機を用いて均一に混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度140〜150℃、成形圧力30〜45MPa、成形時間3〜6分間の条件で成形し、得られた成形物を180〜210℃で3〜4時間熱処理することにより本実施形態の摩擦材を得ることができる。なお、必要に応じて塗装、スコーチ処理、研磨処理等を行ってもよい。
本発明の摩擦材組成物は、摩擦係数の安定性や高温での耐摩耗性等に優れるため、ディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦部材の「上張り材」として有用であり、さらに摩擦部材の「下張り材」として成形して用いることもできる。なお、「上張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材であり、「下張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材と裏金との間に介在する、摩擦材と裏金との接着部付近の剪断強度向上を目的とした層のことである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は何らこれらに限定されるものではない。
[ディスクブレーキパッドの作製]
表1および2に示す配合比率にしたがって材料を配合し、実施例1〜7および比較例1〜7の摩擦材組成物を得た。
この摩擦材組成物をレーディゲミキサー(株式会社マツボー製、商品名:レーディゲミキサーM20)で混合し、この混合物を成形プレス(王子機械工業株式会社製)で予備成形し、得られた予備成形物を成形温度145℃、成形圧力45MPa、成形時間4分間の条件で成形プレス(三起精工株式会社製)を用いて、日立オートモティブシステムズ株式会社製の裏金(鉄製)とともに加熱加圧成形し、得られた成形品を200℃で4時間熱処理し、ロータリー研磨機を用いて研磨し、500℃のスコーチ処理を行って、ディスクブレーキパッド(摩擦材の厚さ9.5mm、摩擦材投影面積52cm)を得た。
なお、実施例および比較例において使用した各種材料は次のとおりである。
[結合材]
・樹脂A(シリコーン含有フェノール樹脂):三井化学株式会社製 RS2210MB
[有機充填材]
・カシューダスト :東北化工株式会社製 FF1056
・ゴム成分(タイヤゴム粉):株式会社カークエスト製 粉末TPA
[無機充填材]
・チタン酸塩A:チタン酸カリウム
・チタン酸塩B:チタン酸リチウムカリウム
・硫酸バリウム
・黒鉛:TIMCAL社製 KS15(メジアン径8μm)
・三硫化アンチモン
・水酸化カルシウム
・酸化ジルコニウム
・珪酸ジルコニウムA:株式会社キンセイマテック製 A−PAX UF (平均粒子径0.4〜0.6μm、最大粒子径1.1μm)
・珪酸ジルコニウムB:第一稀元素化学工業株式会社製 MZ1000B(平均粒子径1.0μm)
・αアルミナ:昭和電工株式会社製
・γアルミナA:水澤化学工業株式会社製(平均粒子径20μm)
・γアルミナB:水澤化学工業株式会社製(平均粒子径200μm)
[繊維基材]
・アラミド繊維(有機繊維)
・鉱物繊維(無機繊維)
[金属粉]
・亜鉛粉:東邦亜鉛株式会社製
前記の方法で作製した実施例1〜7および比較例1〜7のディスクブレーキパッドを、ブレーキダイナモ試験機(新日本特機株式会社製)を用いて各種性能の評価を行った。実験には、一般的なピンスライド式のコレット型キャリパーおよび株式会社キリウ製ベンチレーテッドディスクローター(FC250(ねずみ鋳鉄))を用い、50kgmの慣性モーメントで評価を行った。
[低速低温制動域の摩擦係数安定性の評価]
試験環境は25℃、湿度30%の条件で実施し、40km/h、0.15Gの制動を1500回実施し、制動回数500回目の摩擦係数から制動回数1500回目の摩擦係数の変化率を「低速低温制動域での摩擦係数安定性」とした。低速低温制動域での摩擦係数安定性について、変化率±5%以内を優秀として「◎」、±10%を良好として「○」、10%以上もしくは−10%以下を不適として「×」を表1および表2にそれぞれ記載した。
[通常制動域における摩擦係数の評価]
試験環境は25℃、湿度30%の条件で実施し、JASO C406に準拠し、第二効力試験における200km/h、0.6G制動における摩擦係数を評価した。通常制動時の摩擦係数の評価について、0.38以上、0.41未満を優秀として「◎」、0.35以上、0.38未満を良好として「○」、0.35未満を不適して「×」を表1および表2にそれぞれ記載した。
[高速高温制動域での耐摩耗性の評価]
試験はJASO C427に準拠し、制動前ブレーキ温度が400℃におけるディスクパッドの摩耗量をそれぞれ計測し、高速高温制動域での耐摩耗性として評価した。ここで、摩耗量の評価について、0.8mm未満を優秀として「◎」、0.8〜1.2mmを良好として「○」、1.2mm以上を不適として「×」を表1および表2にそれぞれ記載した。
Figure 2018131479
Figure 2018131479
実施例1〜7は、銅を含有する比較例7と同水準の低速低温制動時の摩擦係数安定性を示すと共に、比較例7に対して通常制動時の摩擦係数および高速高温制動時の耐摩耗性が良好である。また、実施例1〜7は、平均粒子径0.4〜0.6μm、最大粒子径1.1μmの珪酸ジルコニウムを含有しない比較例1〜7に対して、低速低温制動時の摩擦係数安定性が優れることは明らかである。さらに、γアルミナの含有量を調整したことで、比較例1および7に対して、高温高速制動時の耐摩耗性が良好であることが明らかである。
本発明の摩擦材組成物は従来品と比較して、環境負荷の高い銅を用いなくとも、低速低温制動時、および通常制動域において安定した摩擦係数を発現し、高速高温制動時の耐摩耗性が高いため、一般的な乗用車向けには勿論、回生ブレーキ等の制御ブレーキ搭載の乗用車用ブレーキパッドなどの摩擦材および摩擦部材に好適である。

Claims (7)

  1. 結合材、有機充填材、無機充填材、および繊維基材を含有する摩擦材組成物であり、
    前記摩擦材組成物として、銅を含まない、または摩擦材組成物全体に対する銅の含有量が0.5質量%以下であり、
    無機充填材として非針状のチタン酸塩を摩擦材組成物全体に対し25〜30質量%含み、
    無機充填材として平均粒子径が0.4〜0.6μmで最大粒子径が1.1μmの珪酸ジルコニウムを摩擦材組成物全体に対し3〜6質量%含有する摩擦材組成物。
  2. 平均粒子径が20〜200μmのγアルミナを摩擦材組成物全体に対し0.5〜2.0質量%含有する請求項1に記載の摩擦材組成物。
  3. 無機充填材としてチタン酸塩を含有するとともに、二種類のチタン酸塩を併せて含有する請求項1または2に記載の摩擦材組成物
  4. 無機充填材として、メジアン径が2〜10μmの黒鉛を摩擦材組成物全体に対し4〜6質量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦材組成物。
  5. 亜鉛を除く金属または合金を含有しない請求項1〜4のいずれかに記載の摩擦材組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の摩擦材組成物を成形してなる摩擦材。
  7. 請求項6に記載の摩擦材と裏金とを一体化してなる摩擦部材。
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