JP2018131351A - 大気中co2を回収して炭素を分離する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】地球温暖化の原因と言われている大気中CO2を工業的に簡便に回収し、かつ、分解する方法を提供する。又、有害性の無い一般的な化学物質一種類のみを使用し、かつ、この化学物質の再利用も目指す。【解決手段】アルカリ珪酸化物を用意する工程、前記アルカリ珪酸化物に、H2Oの存在下で大気中のCO2を吸収させる工程、前記CO2およびH2Oを吸収したアルカリ珪酸化物を、非酸化性雰囲気中で、700℃以上1600℃以下に加熱し、炭素を分離する工程を含むことを特徴とする、大気中CO2を回収して炭素を分離する方法。【選択図】なし
Description
本発明は、大気中のCO2を回収して炭素を分離する方法に関するものである。
近年、大気中のCO2は増加の一途を辿っており、これが地球温暖化の一因であると言われているが、簡便な方法で大気中のCO2を回収し、かつ、Cへ分解する方法は確立されていなかった。例えば、単一の化学物質を用いて大気中CO2の吸収と分解の両方を簡便に行い、CO2をCへ分解できる方法は無かった。
このように、大気中CO2の回収と分解を同一の化学物質で行おうとする試みはほとんど無いが、先に本発明者ら先願である特許文献1及び2には、アルカリ珪酸化物を用いて、炭酸化物から炭素を分離する方法が示されている。大気中CO2の分解についても触れられている。
特許文献1には、アルカリ元素の炭酸化物および/またはアルカリ土類元素の炭酸化合物を、水ガラス又はアルカリ珪酸化物と混合して、非酸化性雰囲気中で、700℃以上1600℃以下に加熱して炭酸化物からの炭素を分離する、遊離炭素の製造方法が記載されている。
特許文献2には、水ガラスと、アルカリ元素の炭酸化物および/またはアルカリ土類元素の炭酸化物を混合した混合物をシリカアルミナ系セラミックス焼結体の表面に塗布し、非酸化性雰囲気中で、700℃以上1600℃以下に加熱して、炭酸化物から炭素を分離して膜状遊離炭素を製造する方法が記載されている。
特許文献1、特許文献2に記載の遊離炭素の製造方法は、炭素源として、アルカリ元素の炭酸化物および/またはアルカリ土類元素の酸化物が必要であった。
しかしながら、CaOやNa2Oに代表されるアルカリ土類及びアルカリ金属の酸化物は強アルカリ化合物である。又、Na2Oに代表されるアルカリ金属の酸化物は非常に不安定であり、装置を構成する各種材質とも反応し易い。これらの強アルカリ性の酸化物を用いることなく、大気中CO2の回収とCへ分解を行うことが出来れば非常に好ましい。又、当然のことながら、使用する化学物質が少ない方が、経済的にも有利である。
しかしながら、CaOやNa2Oに代表されるアルカリ土類及びアルカリ金属の酸化物は強アルカリ化合物である。又、Na2Oに代表されるアルカリ金属の酸化物は非常に不安定であり、装置を構成する各種材質とも反応し易い。これらの強アルカリ性の酸化物を用いることなく、大気中CO2の回収とCへ分解を行うことが出来れば非常に好ましい。又、当然のことながら、使用する化学物質が少ない方が、経済的にも有利である。
さらに、Na2OにCO2を吸収させた場合には、特許文献1の明細書中の段落0025に記載されているように、「炭酸化物から二酸化炭素が放出され、残りの部分がアルカリ珪酸化物と化合物を生成する反応が本発明の反応と同時に進行する…」とある。すなわち、Na2O使用の場合、反応回数を重ねると、Na2O比率が大きくなる方向にNa2O・nSiO2の組成が徐々にずれていき、いずれNa2O・nSiO2を再利用できなくなる、と言う問題があった。
特許文献2においても、反応メカニズムは特許文献1と同じであるので、やはり、Na2O使用の場合、反応回数を重ねると、Na2O比率が大きくなる方向にNa2O・nSiO2の組成が徐々にずれていき、いずれNa2O・nSiO2を再利用できなくなる、と言う問題があった。
特許文献2においても、反応メカニズムは特許文献1と同じであるので、やはり、Na2O使用の場合、反応回数を重ねると、Na2O比率が大きくなる方向にNa2O・nSiO2の組成が徐々にずれていき、いずれNa2O・nSiO2を再利用できなくなる、と言う問題があった。
特許文献3には、導電性マイエナイト化合物にCO2を吸着させ、それを加熱しCOに還元する方法が開示されている。
特許文献4には、ジルコニウム含有酸化セリウムとCO2を、加熱下で接触させ化学量論反応によってCOへ還元する方法が開示されている。しかし、特許文献3、特許文献4記載の製造方法では、CO2を分解し得られる生成物はCOである。炭素自体を得るには、更に還元工程が必要となる。もちろん、COは各種合成反応の原料として有用ではあるが、生成物がCであればより直接的に熱エネルギー源として利用できるので、より好ましいと言える。
特許文献4には、ジルコニウム含有酸化セリウムとCO2を、加熱下で接触させ化学量論反応によってCOへ還元する方法が開示されている。しかし、特許文献3、特許文献4記載の製造方法では、CO2を分解し得られる生成物はCOである。炭素自体を得るには、更に還元工程が必要となる。もちろん、COは各種合成反応の原料として有用ではあるが、生成物がCであればより直接的に熱エネルギー源として利用できるので、より好ましいと言える。
本発明は、上記実情に鑑み、炭酸化物源としてCaOの様な強アルカリ化合物を使用することなく、又、Na2Oの様な強アルカリ性で不安定な化合物を使用することなく、有害な性質を有しない、入手可能な単一の化学物質を用いて、大気中CO2の回収し、炭素を分離する方法を提供することを目的とする。又、この一般的な一つの化学物質を大気中CO2の回収とCへの分解のために、何度でも再利用可能とすることを目的とする。
本発明者らは、水ガラス又はアルカリ珪酸化物と炭酸化物を混合し、非酸化性雰囲気中で、700℃以上1600℃以下に加熱して炭酸化物からの炭素を分離する技術を見出し、既に、特許文献1において報告している。そこで、本発明者らは、この技術の研究過程において、上記課題を解決する方法についても鋭意検討した。
その結果、アルカリ珪酸化物それ自体が、CO2を吸収できることを知得し、大気中CO2とH2Oを室温にて吸収させた後、非酸化性雰囲気中で、700℃以上1600℃以下に加熱することにより、吸収されたCO2から遊離炭素を効率良く製造する技術を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨は次の通りである。
(1) アルカリ珪酸化物を用意する工程、
前記アルカリ珪酸化物に、H2Oの存在下で大気中のCO2を吸収させる工程、
前記CO2およびH2Oを吸収したアルカリ珪酸化物を、非酸化性雰囲気中で、700℃以上1600℃以下に加熱し、炭素を分離する工程
を含むことを特徴とする、大気中CO2を回収して炭素を分離する方法。
(2)前記アルカリ珪酸化物が、珪酸ナトリウムであることを特徴とする(1)に記載の方法。
(3)前記炭素を分離した後のアルカリ珪酸化物を、前記アルカリ珪酸化物を用意する工程において、再使用することを特徴とする(1)に記載の方法。
(1) アルカリ珪酸化物を用意する工程、
前記アルカリ珪酸化物に、H2Oの存在下で大気中のCO2を吸収させる工程、
前記CO2およびH2Oを吸収したアルカリ珪酸化物を、非酸化性雰囲気中で、700℃以上1600℃以下に加熱し、炭素を分離する工程
を含むことを特徴とする、大気中CO2を回収して炭素を分離する方法。
(2)前記アルカリ珪酸化物が、珪酸ナトリウムであることを特徴とする(1)に記載の方法。
(3)前記炭素を分離した後のアルカリ珪酸化物を、前記アルカリ珪酸化物を用意する工程において、再使用することを特徴とする(1)に記載の方法。
本発明により、簡便な方法で大気中のCO2を回収し、かつ、Cへ分解することができる。通常の工業材料または燃料の炭素源として使用することができる炭素を、大気中のCO2から効率良く製造することが可能となり、大気中CO2の回収と有効利用の両方が可能となる。又、炭酸化物源として、強アルカリ化合物もしくは不安定な反応性に富む化合物を使用することなしに、直接CO2から炭素を生成することができる。
さらに、本発明の方法では、炭素を分離した後のアルカリ珪酸化物を、大気中CO2の回収とCへの分解のために、何度でも再利用することができる。
さらに、本発明の方法では、炭素を分離した後のアルカリ珪酸化物を、大気中CO2の回収とCへの分解のために、何度でも再利用することができる。
以下、本発明の大気中CO2を回収して炭素を分離する方法について、以下順次説明する。
まず、アルカリ珪酸化物を用意する工程において使用するアルカリ珪酸化物について説明する。
まず、アルカリ珪酸化物を用意する工程において使用するアルカリ珪酸化物について説明する。
出発物質として用いるアルカリ珪酸化物としては、例えば珪酸ナトリウムが代表的な化合物であり、Na2O・nSiO2の分子式で記載される。ここで、係数nはNa2Oに対するSiO2の比を表し、連続的に変化することができる。本発明において、特にnが限定されるわけではない。一般的には、n=0.3〜4程度のものが多いが、本発明において、特にnが限定されるわけではない。Na2O・nSiO2で表される化合物は無水物の珪酸ナトリウムであるが、この他に、配位水又は結晶水を有する固体状のNa2O・nSiO2・mH2Oで表される珪酸ナトリウムも用いることができる。尚、これらアルカリ珪酸化物、例として上げている珪酸ナトリウムは全て固体であり、珪酸ナトリウムの高粘性水溶液である水ガラスとは区別され、CO2吸収特性等の化学的性質も異なる。又、水ガラスの製法としては、固体状の珪酸ナトリウムと水を混合し、オートクレーブ等を使用し10気圧近くに加圧し、さらに100℃以上へ加熱することにより製造する方法が一般的であり、大気圧下、特に室温下で、珪酸ナトリウムと水を混合しただけで容易に水ガラスが得られるわけでもない。
本発明で用いることができる、Na2O・nSiO2は、炭酸化物源となることができるとして特許文献1、特許文献2に記載されているNa2Oとは全く異なる性質を有する。アルカリ珪酸化物すなわちNa2O・nSiO2のn=2であるNa2O・2SiO2を例として挙げると、本来これはNa2Si2O5と記載されることが多く、非常に安定な化合物であり一般に市販されている。これに対し、Na2Oは非常に不安定な化合物であり、工業製品としてはもちろん、試薬としてもほとんど市販されていない。又、わずかに市販されているNa2Oも純度が低く、せいぜい90%程度の純度である。この様に、Na2Oは特別に合成する等のことがなければほとんど眼にすることはないが、Na2O・nSiO2は一般的に入手可能な安定な化合物であり、工業製品として多く流通している。
本発明では、アルカリ珪酸化物に大気中のCO2とH2Oを吸収させた後、加熱することによりCO2を炭素へ転化するので、アルカリ珪酸化物の気体吸収性が優れる方が好ましい。このため、アルカリ珪酸化物の形状については、塊状のものより粉末状又は粒状のものが好ましい。個々の粒径が0.1μm〜数mmであるのが好ましく、さらに好ましくは1μm〜1mmである。これは、粒径を小さくしすぎると粉砕の過程でアルカリ珪酸化物に不純物が混入することが懸念されるので、粉砕したとしても1μm程度までとする方が好ましい。ただ、本発明において、アルカリ珪酸化物の粒径・形状は特に限定されるわけではない。
アルカリ珪酸化物へCO2とH2Oを吸収させる方法としては、例えば上述したような粉末状又は粒状のアルカリ珪酸化物を室温で、一定時間放置すれば良い。この場合、大気中CO2とH2Oの吸収量を、各々を独立で測定することは難しいが、CO2とH2Oの合計の吸収量をアルカリ珪酸化物の質量増加から測定することができる。
本発明において、アルカリ珪酸化物へのCO2とH2Oの合計の吸収量は特に限定されるわけではないが、例えば、CO2とH2Oを合わせて、アルカリ珪酸化物の0.01〜70質量%吸収させることができる。好ましくは、CO2とH2Oを合わせて、アルカリ珪酸化物の1〜50質量%吸収させれば良い。これは、1質量%より少なければCO2回収・分解効率が工業的観点から低く、50質量%より多い場合は、一般的な気象条件、例えば、気温5〜35℃、湿度20〜80%程度では、吸収させるのに長時間を要することが多く工業的に非効率だからである。
上述した量の大気中CO2とH2Oをアルカリ珪酸化物へ吸収させる時間は、周囲の条件、アルカリ珪酸化物の粒径等に依存し、一概には規定できない。一般的には、半日程度から数日のことが多いが、あくまでも目安であり、アルカリ珪酸化物の質量増加率を測定しつつ、適切な吸収量となったところで、次の工程である加熱へ移行する。
また、例えば、珪酸ナトリウムへCO2とH2Oを吸収させる方法としては、上述した自然吸収以外に、水を配置した近傍の大気中に放置する方法、水中をバブリングさせた大気を流通させている容器内に放置する方法等、強制的に吸収させる方法がある。
前者の場合は、例えば、上部開放の容器内に、水を入れた上部開放の小容器と、アルカリ珪酸化物を入れた小容器を同時に配置することで、アルカリ珪酸化物周りの湿度を一般大気より高湿度に保つことができ、効率的に大気中CO2とH2Oをアルカリ珪酸化物に吸収させることができる。
後者の場合は、ガスの出入り口を有する密閉容器内へ、タンクに溜めた水の中を室温でバブリングさせた大気を送り込み流通させ、この密閉容器内にアルカリ珪酸化物を放置し、大気中CO2とH2Oを吸収させればよい。この場合、大気を水中にバブリングさせた結果、導入した大気は飽和蒸気圧に近い量の水蒸気を含有していると考えられる。
前者の場合は、例えば、上部開放の容器内に、水を入れた上部開放の小容器と、アルカリ珪酸化物を入れた小容器を同時に配置することで、アルカリ珪酸化物周りの湿度を一般大気より高湿度に保つことができ、効率的に大気中CO2とH2Oをアルカリ珪酸化物に吸収させることができる。
後者の場合は、ガスの出入り口を有する密閉容器内へ、タンクに溜めた水の中を室温でバブリングさせた大気を送り込み流通させ、この密閉容器内にアルカリ珪酸化物を放置し、大気中CO2とH2Oを吸収させればよい。この場合、大気を水中にバブリングさせた結果、導入した大気は飽和蒸気圧に近い量の水蒸気を含有していると考えられる。
また、珪酸ナトリウムへCO2とH2Oを吸収させる別法として、大気中にH2Oを強制導入して、H2Oの量をコントロールした大気を用いることができる。この方法で、強制導入するH2Oの量は、珪酸ナトリウムに接触させる大気中、飽和蒸気圧に近いことが好ましい。
無水珪酸ナトリウムがCO2を吸収することは、一般的に知られていない。このメカニズムは不明であるが、珪酸ナトリウムがCO2とH2Oを一緒に吸収することによる、いわゆる潮解状態となっていると考えられる。この際の生成物は厳密には判明していない。ただ、無水の珪酸ナトリウムの粒状物をCO2と水蒸気の存在下に放置後、赤外分光法により赤外スペクトルを得ると、粒子表面にNa2CO3・10H2Oの生成が認められた。このことから、珪酸ナトリウムの表面には、大気中のCO2とH2OからNa2CO3の水和物が生成していると考えられる。
CO2とH2Oを珪酸ナトリウムに吸収させた場合、Na2CO3・10H2Oが生成することを考えると、大気中CO2濃度は大凡500ppmであるので、大気中の水蒸気としてのH2O含有量はこの10倍以上、すなわち0.5%以上であることが好ましい。この濃度であれば、大気中CO2を効率良く珪酸ナトリウムに吸収させることが可能と考えられる。
CO2とH2Oを珪酸ナトリウムに吸収させた場合、Na2CO3・10H2Oが生成することを考えると、大気中CO2濃度は大凡500ppmであるので、大気中の水蒸気としてのH2O含有量はこの10倍以上、すなわち0.5%以上であることが好ましい。この濃度であれば、大気中CO2を効率良く珪酸ナトリウムに吸収させることが可能と考えられる。
次に、加熱工程について説明する。
加熱方法としては各種加熱炉、加熱装置が使用可能である。また、様々な高温プロセスから排出される排熱も、温度が適合すれば使用可能であり、排熱利用の加熱装置も使用できる。また、太陽光を集光する加熱装置も使用可能である。太陽光を集光する加熱装置については、一般に、温度制御が大雑把であるので使用し難いが、本発明においては、反応の温度ウインドーが広いので使用可能であり、この点は本発明の特長である。
加熱方法としては各種加熱炉、加熱装置が使用可能である。また、様々な高温プロセスから排出される排熱も、温度が適合すれば使用可能であり、排熱利用の加熱装置も使用できる。また、太陽光を集光する加熱装置も使用可能である。太陽光を集光する加熱装置については、一般に、温度制御が大雑把であるので使用し難いが、本発明においては、反応の温度ウインドーが広いので使用可能であり、この点は本発明の特長である。
例えば、これら加熱装置に、大気中のCO2とH2Oを吸収させたアルカリ珪酸化物を入れたルツボを装入し、非酸化性雰囲気中で加熱することができる。ルツボ材質としては、特に限定されるものではないが、加熱温度に対し耐熱性のあるものが選択されるものが良い。例えば、シリカアルミナ、アルミナ、石英等の材質のルツボが使用可能である。
加熱の際の雰囲気として、非酸化性雰囲気が選択される。それは、生成した炭素の酸化を防止するためであり、例えば、アルゴン雰囲気等の不活性ガスの雰囲気、また窒素雰囲気を非酸化性雰囲気として選択できる。使用する非酸化性ガスの純度としては、一般的なガスボンベの純度、例えば、99.99%で十分である。この程度の純度があれば、加熱装置としての一般的な反応装置において、生成した炭素が酸化することを実質的に無視することができる。非酸化性ガスの流量としては特に制約は無く、経済的な観点から少量でよい。加熱による反応容器内圧力の上昇・破損を防ぐ目的で、ガスフロー系にて本発明を実施する場合は、排気管から非酸化性ガスが逆流しない流量であればよい。この流量として、例えば、数10mL〜数10L/分、好ましくは、100mL〜2L/分の流量を挙げることができる。
加熱温度は、700℃以上1600℃以下が良く、さらに好ましくは、850℃以上1300℃以下である。実施例から分かるように、本発明により炭素を生成させるためには、700℃以上が必要である。さらに、700℃以上で850℃程度以下の加熱では、上記CO2を吸収したアルカリ珪酸化物は加熱により溶融状態とはならない場合が多く、生成した炭素は固形物として広く分布することが多い。850℃程度以上に加熱すると、上記アルカリ珪酸化物は加熱により溶融状態となる場合が多く、生成した炭素は、ルツボ壁面や溶融物上面に集まり易く、炭素の回収に好都合である。
また、加熱温度が1600℃より高くなると、炭素は少ししか認められなくなるので、加熱温度は1600℃以下が良い。この理由は、1600℃より高温では、一旦生成した炭素がアルカリ珪酸化物により酸化されるために減少するのではないかと推測しているが、詳細は不明である。さらに、一般的なルツボの耐熱性を考慮すると、1300℃以下がより好ましい。
加熱時の昇温速度は、特に制約が無く、例えば、通常の加熱炉の昇温速度である1〜40℃/分を選択でき、好ましくは、10〜20℃/分を選択できる。最高温度到達後の保持時間も、特に制約は無い。経済的な観点から短時間の保持時間を選択してよく、例えば、1〜180分、好ましくは、10〜60分で十分である。冷却速度も、特に制約は無く、最高温度到達後の保持時間終了後、直ちに加熱を終了し、装置の自然冷却に任せてよく、もし、装置の構造上から冷却速度に制限があるならば、それに従ってよい。
これらの製造方法によって、生成した炭素は、温度が低下してから、装置内に炭素が偏析していれば破砕して分離し、炭素が固形物に広く分布していれば、熱水もしくはフッ化水素酸で固形物を溶解し、残った炭素を分離すればよい。
以上のようにして得られた炭素は、その後、燃料等の通常の炭素源として使用することができる。
以上のようにして得られた炭素は、その後、燃料等の通常の炭素源として使用することができる。
本発明の方法により炭素が生成する反応メカニズムについてほとんど分かっていないが、以下のメカニズムが推測される。
アルカリ珪酸化物は最大量の酸素原子を有しており還元物質としては作用できない。従って、反応の進行に還元物質は関与しておらず、アルカリ珪酸化物は触媒として作用すると考えられる。さらに前述したように、アルカリ珪酸化物がCO2とH2Oを吸収すると、アルカリ珪酸化物の表面には、例えば、大気中のCO2とH2OからNa2CO3の水和物が生成すると考えられる。このことから、加熱中の推測されるメカニズムとしては、生成したNa2CO3の水和物の酸素原子が珪酸ナトリウム中を拡散し、その結果炭素が取り残されるというものである。このメカニズムでは酸素原子が酸素分子として溶融状態のアルカリ珪酸化物から離脱せねばならないが、今のところ、この現象が確認できているわけではなく、推定である。
アルカリ珪酸化物は最大量の酸素原子を有しており還元物質としては作用できない。従って、反応の進行に還元物質は関与しておらず、アルカリ珪酸化物は触媒として作用すると考えられる。さらに前述したように、アルカリ珪酸化物がCO2とH2Oを吸収すると、アルカリ珪酸化物の表面には、例えば、大気中のCO2とH2OからNa2CO3の水和物が生成すると考えられる。このことから、加熱中の推測されるメカニズムとしては、生成したNa2CO3の水和物の酸素原子が珪酸ナトリウム中を拡散し、その結果炭素が取り残されるというものである。このメカニズムでは酸素原子が酸素分子として溶融状態のアルカリ珪酸化物から離脱せねばならないが、今のところ、この現象が確認できているわけではなく、推定である。
ただ、このメカニズムから推測すると、700℃以下ではアルカリ珪酸化物中の酸素拡散速度が十分でなく、従って、本発明では700℃以上が必要と考えられる。また、1600℃より高温では一度生成した炭素がアルカリ珪酸化物により酸化されると推測される点は、上述したとおりである。
本発明による吸収CO2からの炭素生成効率は、後述する本発明例1に記載しているように50%程度である。炭素生成効率が100%より低い理由としては、アルカリ珪酸化物加熱時に、吸収されたCO2が炭素となることなく再びCO2として放出されるため、吸収CO2からの炭素生成効率が100%に達しないと考えられる。炭素を分離した後のアルカリ珪酸化物、例えば珪酸ナトリウムは、出発原料の珪酸ナトリウムとして、再使用することができる。
本発明者らが先に開示した特許文献1、2と、本発明の違いを、反応式にて説明する。
特許文献1、特許文献2では、Na2O使用の場合、次の反応式となる。
(1)予め、別の装置にて、Na2OにCO2を吸収させNa2CO3を生成させる。
Na2O+CO2→Na2CO3
(2)生成したNa2CO3とNa2O・nSiO2を混合する。混合比をx:yとする。
(3)混合物を加熱し、Na2CO3を分解すると、以下の反応が進行すると推定される。
x・Na2CO3+y(Na2O・nSiO2)
→x・Na2O+x・C+x・O2+y(Na2O・nSiO2)
→x・C+x・O2+(x+y)Na2O・nSiO2
(1)予め、別の装置にて、Na2OにCO2を吸収させNa2CO3を生成させる。
Na2O+CO2→Na2CO3
(2)生成したNa2CO3とNa2O・nSiO2を混合する。混合比をx:yとする。
(3)混合物を加熱し、Na2CO3を分解すると、以下の反応が進行すると推定される。
x・Na2CO3+y(Na2O・nSiO2)
→x・Na2O+x・C+x・O2+y(Na2O・nSiO2)
→x・C+x・O2+(x+y)Na2O・nSiO2
上記の(3)から分かるように、Na2O使用の場合、反応回数を重ねると、生成するNa2O・nSiO2の組成が、Na2O比率が大きくなる方向に徐々にずれていき、いずれNa2O・nSiO2を再利用できなくなる。
上記に対し、本発明の反応式は次のごとくとなる。
(1)Na2O・nSiO2にCO2とH2Oを吸収させる。
これにより、Na2O・nSiO2の表面にNa2CO3の10水和物が生成すると推測される。
(CO2のNa2O・nSiO2に対する吸収比率をx:yとする。x<y。)
x(CO2+10H2O)+y(Na2O・nSiO2)
→x(Na2CO3・10H2O)+(y−x)Na2O・ynSiO2
(2)その後、この表面にNa2CO3の10水和物が生成したNa2O・nSiO2を加熱すると、以下の反応がおきる。
x(Na2CO3・10H2O)+(y−x)Na2O・ynSiO2
→x・Na2O+x・C+x・O2+10x・H2O+(y−x)Na2O・ynSiO2
→x・C+x・O2+10x・H2O+y(Na2O・nSiO2)
このように、x(Na2CO3・10H2O)は、y(Na2O・nSiO2)由来の物なので、結果としてNa2O・nSiO2の組成に変化は無い。
(1)Na2O・nSiO2にCO2とH2Oを吸収させる。
これにより、Na2O・nSiO2の表面にNa2CO3の10水和物が生成すると推測される。
(CO2のNa2O・nSiO2に対する吸収比率をx:yとする。x<y。)
x(CO2+10H2O)+y(Na2O・nSiO2)
→x(Na2CO3・10H2O)+(y−x)Na2O・ynSiO2
(2)その後、この表面にNa2CO3の10水和物が生成したNa2O・nSiO2を加熱すると、以下の反応がおきる。
x(Na2CO3・10H2O)+(y−x)Na2O・ynSiO2
→x・Na2O+x・C+x・O2+10x・H2O+(y−x)Na2O・ynSiO2
→x・C+x・O2+10x・H2O+y(Na2O・nSiO2)
このように、x(Na2CO3・10H2O)は、y(Na2O・nSiO2)由来の物なので、結果としてNa2O・nSiO2の組成に変化は無い。
すなわち、本発明では、反応回数を重ねても、Na2O・nSiO2の組成に変化は無く、何回でもNa2O・nSiO2を再利用できる。
(実施例1:発明例)
市販の水酸化ナトリウム(粒状の特級試薬)とケイ砂(SiO2)(200〜300メッシュ)を、Na2O:SiO2比が2:1となり、水酸化ナトリウムとケイ砂が反応しNa2O・0.5SiO2が生成した場合に約20gとなる量を各々秤量し、上部内径約36mm深さ約36mmのニッケルルツボに装入した。これを内径約41mm深さ約115mmの石英ルツボへ入れた。石英ルツボにアルミナ製の蓋をし、Ar雰囲気の加熱炉で1200℃まで10℃/分で昇温し、30分間保持後、室温まで自然冷却した。冷却後、ニッケルルツボの中にはほぼ無色透明の均一なガラス状物質が生成していた。この生成物の質量減少を測定すると、水酸化ナトリウムが完全に脱水しケイ砂と反応しNa2O・0.5SiO2が生成した場合の質量減少と一致し、Na2O・0.5SiO2が生成したことが判明した。
市販の水酸化ナトリウム(粒状の特級試薬)とケイ砂(SiO2)(200〜300メッシュ)を、Na2O:SiO2比が2:1となり、水酸化ナトリウムとケイ砂が反応しNa2O・0.5SiO2が生成した場合に約20gとなる量を各々秤量し、上部内径約36mm深さ約36mmのニッケルルツボに装入した。これを内径約41mm深さ約115mmの石英ルツボへ入れた。石英ルツボにアルミナ製の蓋をし、Ar雰囲気の加熱炉で1200℃まで10℃/分で昇温し、30分間保持後、室温まで自然冷却した。冷却後、ニッケルルツボの中にはほぼ無色透明の均一なガラス状物質が生成していた。この生成物の質量減少を測定すると、水酸化ナトリウムが完全に脱水しケイ砂と反応しNa2O・0.5SiO2が生成した場合の質量減少と一致し、Na2O・0.5SiO2が生成したことが判明した。
ニッケルルツボにはテーパーが付いているが、ニッケルルツボを伏せて底を軽く叩くと生成したガラス状のNa2O・0.5SiO2を取り出すことができた。Na2O・0.5SiO2のニッケルルツボとの接触部分は、所々わずかに薄い黄色を帯びていたので、この部分をステンレス製のスクレーパーで削り落とし無色のNa2O・0.5SiO2塊を得た。この塊をアルミナ乳鉢にて1mm以下へ粉砕し、その内の約5gをシリカアルミナルツボへ装入した。
上記シリカアルミナルツボを加熱炉へ入れ、乾燥空気を2L/分で流しながら、10℃/分で昇温し700℃で12時間保持後室温まで自然冷却した。この酸化処理により、Na2O・0.5SiO2粉中の有機物および炭素を完全除去した。又、Na2O・0.5SiO2粉は完全に無水物となったと考えられる。冷却後、加熱炉からシリカアルミナルツボを取り出し、直ちに秤量し、大気中に放置した。
上記Na2O・0.5SiO2粉を入れたシリカアルミナルツボを大気中に約30時間放置したところ、700℃酸化処理直後のNa2O・0.5SiO2粉の質量に対し約15%の質量増加があった。このシリカアルミナルツボを、Ar雰囲気の加熱炉で10℃/分で800℃、1000℃、1200℃、1500℃の温度までそれぞれ昇温し、30分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナルツボの内壁が黒く変色し、黒色物が析出していた。以上の実験条件及び結果を表1に示す。
ルツボ壁を大まかに砕き熱水で洗浄したところ、粉状の黒色物が分離し熱水表面に浮上したので、これを濾過分離し、さらに加熱した純水で洗浄、その後乾燥した。表1の全実験(No.1〜4)について、乾燥した粉状の黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、ほぼ100%の炭素であった。さらに、表1のNo.4の黒色析出物について、XPS(X線光電子分光法)による分析を行ったところ、グラファイト型カーボンであった。
実験系の中に炭素源は大気中CO2しかないので、大気中CO2が珪酸ナトリウムに吸収され、加熱により炭素が生成したことが判明した。又、生成した炭素は、ほぼ100%純度の炭素であったので、燃料等の炭素源として使用することができる。Na2O・0.5SiO2によって大気中CO2とH2Oが吸収された結果Na2CO2・10H2Oが生成したと仮定すると、つまり、CO2とH2Oの吸収量のモル比が1:10であったと仮定すると、回収された炭素は吸収CO2の約50%に相当する量であった。
又、ナトリウム化合物は、初めにNa2O・0.5SiO2を合成した際にしか使用していないので、熱水に溶解したナトリウム珪酸化物の組成はNa2O・0.5SiO2のまま変化が無く、濾液を乾燥させNa2O・0.5SiO2を回収すると、このNa2O・0.5SiO2を大気中CO2の回収分解に再度利用することができた。
この様に、本発明においては、アルカリ珪酸化物を何度でも再利用することができる。
この様に、本発明においては、アルカリ珪酸化物を何度でも再利用することができる。
(比較例1)
比較例1は、Ar雰囲気炉の昇温温度を変更したことを除いて、本実施例1と同様の実験を行った。比較例1では、実験終了後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表2に示す。
比較例1は、Ar雰囲気炉の昇温温度を変更したことを除いて、本実施例1と同様の実験を行った。比較例1では、実験終了後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表2に示す。
(実施例2:発明例)
実施例2は、Na2O:SiO2比が1:2となるように水酸化ナトリウムとケイ砂を秤量し装入した点、700℃酸化処理後の大気中放置時間を約60時間とした点以外は、本発明例1と同様の実験を行った。尚、大気中放置により、700℃酸化処理後のNa2O・2SiO2粉の質量に対し約10%の質量増加があった。実験条件及び結果を表3に示す。
実施例2は、Na2O:SiO2比が1:2となるように水酸化ナトリウムとケイ砂を秤量し装入した点、700℃酸化処理後の大気中放置時間を約60時間とした点以外は、本発明例1と同様の実験を行った。尚、大気中放置により、700℃酸化処理後のNa2O・2SiO2粉の質量に対し約10%の質量増加があった。実験条件及び結果を表3に示す。
表3の全実験(No.7〜10)について、乾燥した粉状の黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、ほぼ100%の炭素であった。さらに、表3のNo.10の黒色析出物について、XPS(X線光電子分光法)による分析を行ったところ、グラファイト型カーボンであった。
実験系の中に炭素源は大気中CO2しかないので、大気中CO2が珪酸ナトリウムに吸収され、加熱により炭素が生成したことが判明した。また、生成した炭素は、ほぼ100%純度の炭素であったので、燃料等の炭素源として使用することができる。
実験系の中に炭素源は大気中CO2しかないので、大気中CO2が珪酸ナトリウムに吸収され、加熱により炭素が生成したことが判明した。また、生成した炭素は、ほぼ100%純度の炭素であったので、燃料等の炭素源として使用することができる。
又、ナトリウム化合物は、初めにNa2O・2SiO2を合成した際にしか使用していないので、熱水に溶解したナトリウム珪酸化物の組成はNa2O・2SiO2のまま変化が無く、濾液を乾燥させNa2O・2SiO2を回収すると、このNa2O・2SiO2を大気中CO2の回収分解に再度利用することができた。
この様に、本発明においては、アルカリ珪酸化物を何度でも再利用することができる。
この様に、本発明においては、アルカリ珪酸化物を何度でも再利用することができる。
(比較例2)
比較例2は、Ar雰囲気炉の昇温温度を変更したことを除いて、本実施例2と同様の実験を行った。比較例2では、実験終了後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表4に示す。
比較例2は、Ar雰囲気炉の昇温温度を変更したことを除いて、本実施例2と同様の実験を行った。比較例2では、実験終了後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表4に示す。
(実施例3:発明例)
本発明例3は、700℃で12時間加熱および自然冷却までは実施例1と同様に進め、実施例1のNa2O・0.5SiO2粉の無水物入りのシリカアルミナルツボを大気中に放置するところから操作を変更し、これ以降は次の操作を行った。ガスの出入り口を有する密閉容器内にこのシリカアルミナルツボを入れ、この密閉容器へ、タンクに溜めた水の中を、室温(20℃)でバブリングさせた大気を2L/分で送り込み流通させ、シリカアルミナルツボ内のNa2O・0・5SiO2粉に、CO2とH2Oを吸収させた。尚、大気を水中にバブリングさせた結果、導入した大気は飽和蒸気圧に近い水蒸気量3vol%程度のH2Oが含有していたと考えられる。
本発明例3は、700℃で12時間加熱および自然冷却までは実施例1と同様に進め、実施例1のNa2O・0.5SiO2粉の無水物入りのシリカアルミナルツボを大気中に放置するところから操作を変更し、これ以降は次の操作を行った。ガスの出入り口を有する密閉容器内にこのシリカアルミナルツボを入れ、この密閉容器へ、タンクに溜めた水の中を、室温(20℃)でバブリングさせた大気を2L/分で送り込み流通させ、シリカアルミナルツボ内のNa2O・0・5SiO2粉に、CO2とH2Oを吸収させた。尚、大気を水中にバブリングさせた結果、導入した大気は飽和蒸気圧に近い水蒸気量3vol%程度のH2Oが含有していたと考えられる。
約10時間経過後にシリカアルミナルツボを秤量したところ、700℃酸化処理後の2Na2O・SiO2粉の質量に対し約20%の質量増加があった。これ以降は、また、実施例1と同様の操作で、実験を進めた。実験条件及び結果を表5に示す。
ルツボ壁を大まかに砕き熱水で洗浄したところ、粉状の黒色物が分離し熱水表面に浮上したので、これを濾過分離し、さらに加熱した純水で洗浄、その後乾燥した。表5の全実験(No.13〜16)について、乾燥した粉状の黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、ほぼ100%の炭素であった。さらに、表5のNo.16の黒色析出物について、XPS(X線光電子分光法)による分析を行ったところ、グラファイト型カーボンであった。
実験系の中に炭素源は大気中CO2しかないので、大気中CO2が珪酸ナトリウムに吸収され、加熱により炭素が生成したことが判明した。又、生成した炭素は、ほぼ100%純度の炭素であったので、燃料等の炭素源として使用することができる。又、CO2とH2Oが吸収された結果Na2CO2・10H2Oが生成したと仮定すると、つまり、CO2とH2Oの吸収量のモル比が1:10であったと仮定すると、回収された炭素は吸収CO2の約60%に相当する量であった。
又、ナトリウム化合物は、初めにNa2O・0.5SiO2を合成した際にしか使用していないので、熱水に溶解したナトリウム珪酸化物の組成はNa2O・0.5SiO2のまま変化が無く、濾液を乾燥させNa2O・0.5SiO2を回収すると、このNa2O・0.5SiO2を大気中CO2の回収分解に再度利用することができた。
この様に、本発明においては、アルカリ珪酸化物を何度でも再利用することができる。
この様に、本発明においては、アルカリ珪酸化物を何度でも再利用することができる。
(比較例3)
比較例3は、密閉容器へ、吸湿剤を使用して乾燥させた大気を導入したこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。乾燥大気導入により、700℃酸化処理直後のNa2O・0.5SiO2粉の質量に対し約3%の質量増加があった。実験条件及び結果を表6に示す。
比較例3は、密閉容器へ、吸湿剤を使用して乾燥させた大気を導入したこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。乾燥大気導入により、700℃酸化処理直後のNa2O・0.5SiO2粉の質量に対し約3%の質量増加があった。実験条件及び結果を表6に示す。
表6の全実験(No.17〜20)について、乾燥した粉状の黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、ほぼ100%の炭素であった。さらに、表6のNo.20の黒色析出物について、XPS(X線光電子分光法)による分析を行ったところ、グラファイト型カーボンであった。
実験系の中に炭素源は大気中CO2しかないので、大気中CO2が珪酸ナトリウムに吸収され、加熱により炭素が生成したことが判明した。また、製造された炭素は、ほぼ100%純度の炭素であったので、燃料等の炭素源として使用することができる。
又、回収された炭素は量が少なく定量できず、吸収CO2の何%に相当する量であるかは測定できなかった。
実験系の中に炭素源は大気中CO2しかないので、大気中CO2が珪酸ナトリウムに吸収され、加熱により炭素が生成したことが判明した。また、製造された炭素は、ほぼ100%純度の炭素であったので、燃料等の炭素源として使用することができる。
又、回収された炭素は量が少なく定量できず、吸収CO2の何%に相当する量であるかは測定できなかった。
実施例3と、実施例1および比較例3とを比較すると、実施例3では積極的に大気にH2Oを導入した結果、表7にまとめたような利点があった。
すなわち、実施例3では、CO2とH2Oの吸収時間が実施例1および比較例3の1/3と非常に短いにもかかわらずCO2とH2Oの吸収量が多く、かつ、この吸収CO2からの炭素回収率も優れていた。
実施例3は実施例1に対し、吸収量は約1.33倍(=20/15)、炭素回収率で約1.2倍(=60/50)であり、この結果、吸収時間1/3にもかかわらず炭素回収量は約1.6倍(=1.33×1.2)となった。
また、乾燥大気を使用した比較例3では炭素回収量が非常に少なく、本発明例3の方が遙かに優位な結果となった。
すなわち、実施例3では、CO2とH2Oの吸収時間が実施例1および比較例3の1/3と非常に短いにもかかわらずCO2とH2Oの吸収量が多く、かつ、この吸収CO2からの炭素回収率も優れていた。
実施例3は実施例1に対し、吸収量は約1.33倍(=20/15)、炭素回収率で約1.2倍(=60/50)であり、この結果、吸収時間1/3にもかかわらず炭素回収量は約1.6倍(=1.33×1.2)となった。
また、乾燥大気を使用した比較例3では炭素回収量が非常に少なく、本発明例3の方が遙かに優位な結果となった。
Claims (3)
- アルカリ珪酸化物を用意する工程、
前記アルカリ珪酸化物に、H2Oの存在下で大気中のCO2を吸収させる工程、
前記CO2およびH2Oを吸収したアルカリ珪酸化物を、非酸化性雰囲気中で、700℃以上1600℃以下に加熱し、炭素を分離する工程
を含むことを特徴とする、大気中CO2を回収して炭素を分離する方法。 - 前記アルカリ珪酸化物が、珪酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記炭素を分離した後のアルカリ珪酸化物を、前記珪酸ナトリウムを用意する工程において、再使用する、請求項1に記載の方法。
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