JP2018192534A - 熱流方向性制御構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】固体中の熱伝導における熱流の方向性を制御する構造を提供する。【解決手段】固体に、最小間隔がフォノンの平均自由行程より短い所定範囲の間隔の熱流流路が形成されるように複数の空間または固体に比して熱伝導率の低い材料による複数の部材を形成する。熱流流路は、最小間隔がフォノンの平均自由行程より短い所定範囲の間隔となるから、最小間隔の部分ではフォノンどうしの衝突の前に構造に衝突する。このため、フォノンは、熱流流路に沿った方向に進むことになる。この結果、構造により固体中の熱伝導における熱流の方向性を制御することができる。【選択図】図1
Description
本発明は、熱流方向性制御構造に関し、詳しくは、固体中の熱伝達における熱流の方向性を制御する熱流方向性制御構造に関する。
この種の技術における文献には、ナノスケールでの熱伝導は、マクロスケールでの古典的な拡散現象とは異なり、拡散現象と熱伝導を担うフォノンの弾道的な輸送とによる準弾道フォノン熱伝導となることが示されている(例えば、非特許文献1参照)。この文献では、フォノンの平均自由行程が系の代表的長さと同程度より長くなる系では、熱伝導は準弾道フォノン熱伝導となり、サイズ効果を反映した熱特性が観測されることを記している。
「フォノニック結晶によるフォノン輸送制御と熱電材料への応用」,野村政宏,日本金属学会誌 79,555−561 (2015)
フォノンは、固体の材質や温度にもよるが、百ナノメートルから数百ナノメートルに亘って直線で移動することができるため、古典的な拡散現象とは異なり、エネルギーの消散なしにナノスケールの熱輸送が起こる。しかし、フォノンの方向性は混沌としているため、その指向性の制御が課題となる。
本発明の熱流制御構造は、固体中の熱伝導における熱流の方向性を制御する構造を提供することを主目的とする。
本発明の熱流方向性制御構造は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の熱流方向性制御構造は、
固体中の熱伝達における熱流の方向性を制御する熱流方向性制御構造であって、
前記固体に、最小間隔がフォノンの平均自由行程より短い所定範囲の間隔で直線上に見通せる熱流流路が形成されるように複数の空間または前記固体に比して熱伝導率の低い材料による複数の部材が形成されている、
ことを特徴とする。
固体中の熱伝達における熱流の方向性を制御する熱流方向性制御構造であって、
前記固体に、最小間隔がフォノンの平均自由行程より短い所定範囲の間隔で直線上に見通せる熱流流路が形成されるように複数の空間または前記固体に比して熱伝導率の低い材料による複数の部材が形成されている、
ことを特徴とする。
この本発明の熱流方向性制御構造は、固体に複数の空間または固体に比して熱伝導率の低い材料による複数の部材を形成することにより、最小間隔がフォノンの平均自由行程より短い所定範囲の間隔の熱流流路を形成する。熱流流路は、最小間隔がフォノンの平均自由行程より短い所定範囲の間隔となるから、最小間隔の部分ではフォノンどうしの衝突の前に構造に衝突する。このため、フォノンは、熱流流路に沿った方向に進むことになる。この結果、構造により固体中の熱伝導における熱流の方向性を制御することができる。ここで、「固体」としてはシリコンの板材を用いる場合には、「所定範囲の間隔」として50nm〜70nmの間隔を用いることができる。なお、「フォノン」は、振動を量子化した粒子を意味しており、「平均自由行程」は、他のフォノンと衝突するまでの平均移動距離を意味している。「複数の部材」は、固体に比して熱伝導率の低い材料による部材を複数の空間に充填するものも含まれる。
こうした本発明の熱流方向性制御構造において、前記熱流流路は、前記複数の空間または前記複数の部材により前記固体中に前記所定範囲の間隔で直線上に見通せる流路として形成されている、ものとしてもよい。こうすれば、直線状に集熱したり散熱したりすることができる。
また、本発明の熱流方向性制御構造において、前記熱流流路は、前記複数の空間または前記複数の部材により前記固体中に一端が最小間隔であり、他端に向けて間隔が大きくなるように形成されている、ものとしてもよい。こうすれば、一端側への集熱や他端側への散熱をより広範囲に行なうことができる。
本発明の熱流方向性制御構造において、前記固体における所定ポイントから前記熱流流路が放射状に複数形成されるように前記複数の空間または前記複数の部材が形成されている、ものとしてもよい。こうすれば、所定ポイントに効果的に集熱したり、所定ポイントから効果的に散熱したりすることができる。
本発明の熱流方向性制御構造において、前記固体における第1ポイントから第2ポイントの方向には前記熱流流路が形成されるように、且つ、前記第1ポイントから前記第2ポイントの方向とは異なる方向には前記熱流流路が形成されないように前記複数の空間または前記複数の部材が形成されている、ものとしてもよい。こうすれば、主として、第1ポイントに第2ポイントの方向から集熱したり、第1ポイントから第2ポイントの方向に散熱したりすることができる。
本発明の熱流方向性制御構造において、前記固体における第1ポイントから第2ポイントの方向には前記熱流流路が形成されないように、且つ、前記第1ポイントから前記第2ポイントの方向とは異なる方向には前記熱流流路が形成されるように前記複数の空間または前記複数の部材が形成されている、ものとしてもよい。こうすれば、第1ポイントに第2ポイントの方向とは異なる方向から集熱したり、第1ポイントから第2ポイントの方向とは異なる方向に散熱したりすることができる。こうすれば、主として、第1ポイントに第2ポイントの方向とは異なる方向から集熱したり、第1ポイントから第2ポイントの方向とは異なる方向に散熱したりすることができる。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態としての熱流方向性制御構造を適用した集熱構造20の構成の概略を示す説明図であり、図2は、図1の集熱構造20のA−A断面の構成を示す断面図であり、図3は、図1の集熱構造20のB−B断面の構成を示す断面図である。
集熱構造20は、シリコンフォノニックナノ構造として構成されており、図1〜図3に示すように、シリコン基板22と、二酸化ケイ素により形成された橋脚部24と、厚さが145nmのフォノニック構造部26と、を有する。フォノニック構造部26には、図1に示すように、ポイントPを中心として放射状に外周ほど直径が大きくなり直線上に整列するように複数の円孔C1〜C5が形成されている。同じ径をなす隣接する円孔(例えば円孔C3,C3)の最小間隔Wは、シリコンにおけるフォノンの室温における平均自由行程(100nm程度)より短い50nm〜70nmの範囲内の所定値(実施形態では60nm)となるように円孔C1〜C5が形成されており、外周側からポイントPに向けて直線上に見通せる幅Wの熱流流路F1〜F5が形成されている。以下、特に明示しない範囲で複数の円孔C1〜C5については複数の円孔Cnと略し、複数の熱流流路F1〜F5については複数の熱流流路Fnと略す。
こうして構成された実施形態の集熱構造20は、フォノンが複数の熱流流路Fnを通ってポイントPに集中するように放射状に複数の円孔Cnを配置することにより、熱に対してレンズのように作用し、複数の円孔C5の外周側からポイントPに集熱することができる。この作用および原理について以下に説明する。
上述したように、固体中の熱伝導は、熱の運び手であるフォノンが移動する現象で、フォノンどうしが互いに衝突して輸送特性が決まる拡散現象になると考えられている。しかし、フォノンの平均自由行程程度やそれより小さな構造になると、フォノンどうしが衝突する前に構造に衝突するため、構造で熱伝導を制御できるようになると考えられる。フォノンが直線的に移動する構造を形成することにより、熱流に指向性を持たせることが可能となる。実施形態の集熱構造20の構造は、こうした現象に基づいて構成されている。
フォノンが直線的に移動する現象については、図4および図5を用いて説明することができる。図4は、幅Wの複数の熱流流路Fnが上下方向に形成されるように複数の円孔Cnを整列配置したシリコンフォノニックナノ構造と、このシリコンフォノニックナノ構造に図中下方から熱を流したときのその上端における位置とエネルギとの関係を示す説明図である。図5は、複数の熱流流路Fnが形成されないように複数の円孔Cnを千鳥状に配置したシリコンフォノニックナノ構造と、このシリコンフォノニックナノ構造に図中下方から熱流(Heat flow)を作用させたときのその上端における位置とエネルギとの関係を示す説明図である。図5に示すように、複数の熱流流路Fnが形成されないように複数の円孔Cnを千鳥状に配置したときには、円孔Cnの間でエネルギのピークは示さないが、図4に示すように、複数の熱流流路Fnが上下方向に形成されるように複数の円孔Cnを整列配置すると、複数の熱流流路Fnの中心でエネルギの大きなピークを示すようになる。これにより、フォノンが複数の熱流流路Fnを直線的に移動することが解る。
また、フォノンが室温以下の温度範囲で直線的に移動する現象を無視できない程度に顕著なことについては、図6ないし図8を用いて説明することができる。図6は、幅Wの複数の熱流流路Fnが左右方向に形成されるように複数の円孔Cnを整列配置し、複数の熱流流路Fnが右端まで直線的に見通せるように複数のスリットSnを形成したシリコンフォノニックナノ構造(結合構造)の概略を示す説明図である。図7は、幅Wの複数の熱流流路Fnが左右方向に形成されるように複数の円孔Cnを整列配置し、複数の熱流流路Fnの直線上に複数のスリットSnを形成したシリコンフォノニックナノ構造(非結合構造)の概略を示す説明図である。図8は、結合構造に左側から右側に向けて熱を流した際における右端のスリットSnからの放熱による熱散逸時間をτCoupledとし、非結合構造に左側から右側に向けて熱を流した際における右端のスリットSnからの放熱による熱散逸時間をτUncoupledとしたときの結合構造の熱散逸時間τCoupledに対する非結合構造の熱散逸時間τUncoupledと結合構造の熱散逸時間τCoupledとの差分の比率と温度との関係とを示すグラフである。図8に示すように、結合構造では、熱散逸時間τCoupledは、非結合構造の熱散逸時間τUncoupledに対して室温以下の温度範囲で7%〜15%程度短くなる。これにより、室温以下の温度範囲でフォノンが直線的に移動することが無視できない程度に顕著であり、構造により熱流の方向性をある程度制御することが可能であることが解る。
図9は、実施形態の集熱構造20における熱流流路Fnの幅Wと焦点(ポイントP)を原点(y=0)とし、左右方向の距離とエネルギとの関係を示すグラフであり、図10は、実施形態の集熱構造20における熱流流路Fnの幅Wと焦点(ポイントP)のエネルギとの関係を示すグラフである。図9および図10から解るように、シリコンにより構成された実施形態の集熱構造20における熱流流路Fnの幅Wは、50nm未満では狭すぎて伝熱が十分ではなく、70nmを超えると広すぎて焦点(ポイントP)における集熱がぼやけてしまう。これらのことから、シリコンにおける熱流流路Fnの幅Wは50nm〜70nmが好ましく60nmが更に好ましいことが解る。シリコンにおける室温以下のフォノンの平均自由行程は、百ナノメートル〜数百ナノメートルであるから、シリコンにおける熱流流路Fnの幅Wが50nm〜70nmであることは、フォノンの平均自由行程より短い所定範囲となる。言い換えれば、シリコンにおいて熱流流路Fnの幅Wを50nm〜70nmとすることにより、構造により熱流の方向性を制御することができる。
以上説明した実施形態の集熱構造20では、フォノンの平均自由行程より短い50nm〜70nmの範囲内の幅Wの複数の熱流流路Fnを複数の円孔nにより形成することにより、熱伝導を熱流流路に沿った方向に制御することができる。この結果、構造により固体中の熱伝導における熱流の方向性を制御することができる。しかも、外周側からポイントPに向けて幅Wで直線上に見通せる複数の熱流流路FnをポイントPから放射線状に形成することにより、熱に対してレンズのように作用し、複数の円孔C5の外周側からポイントPに集熱することができる。
実施形態の集熱構造20では、複数の円孔C5の外周側の熱を複数の熱流流路Fnを用いてポイントPに集熱するものとしたが、ポイントPの熱を複数の熱流流路Fnを用いて複数の円孔C5の外周側に散熱するものとしてもよい。
実施形態の集熱構造20では、複数の円孔Cnによりフォノンの平均自由行程より短い50nm〜70nmの範囲内の幅Wで直線上に見通せる複数の熱流流路Fnを形成するものとしたが、図11の変形例の集熱構造120に例示するように、複数の熱流流路Fnを内周側から外周側に広くなるように形成してもよい。
実施形態の集熱構造20では、複数の円孔Cnによりフォノンの平均自由行程より短い50nm〜70nmの範囲内の幅Wで直線上に見通せる複数の熱流流路FnをポイントPから放射線状に形成するものとしたが、図12の変形例の集熱構造220に例示するように、ポイントPから放射線状に熱流流路F1〜F4は形成されるが、図1の熱流流路F5に相当する熱流流路が形成されないようにするものとしてもよい。この場合、例えば、楕円孔D11〜D15,D21〜D25によりポイントPからポイントPset1の方向が見通せないようにすればよい。こうすれば、主として、ポイントPにポイントPset1の方向とは異なる方向から集熱したり、ポイントPからポイントPsetの方向とは異なる方向に散熱することができる。
実施形態の集熱構造20では、複数の円孔Cnによりフォノンの平均自由行程より短い50nm〜70nmの範囲内の幅Wで直線上に見通せる複数の熱流流路FnをポイントPから放射線状に形成するものとしたが、図13の変形例の集熱構造320に例示するように、ポイントPからポイントPset2に向かう熱流流路F1だけが形成され、図1の熱流流路F2〜F5に相当する熱流流路が形成されないようにするものとしてもよい。この場合、例えば、楕円孔E1〜E5により図1の熱流流路F2に相当する熱流流路が形成されないようにし、その左側に、複数の円孔CnをポイントPに対して千鳥状に配置すればよい。こうすれば、主として、ポイントPにポイントPset2の方向から集熱したり、ポイントPからポイントPset2の方向に散熱することができる。
実施形態や変形例の集熱構造20,120,220,320では、複数の円孔Cnや楕円孔Dn,Enにより複数の熱流流路Fnなどを形成するものとしたが、円孔や楕円孔以外の形状の孔により熱流流路を形成するものとしてもよい。また、複数の円孔Cnや楕円孔Dn,Enに代えてシリコンに比して熱伝導率が低い材料による部材を円孔や楕円孔に充填するものとしても構わない。
実施形態や変形例の集熱構造20,120,220,320では、暑さが145nmのシリコンの板材に複数の円孔Cnや楕円孔Dn,Enにより複数の熱流流路Fnなどを形成するものとしたが、シリコン以外の材料の板材に複数の円孔Cnや楕円孔Dn,Enにより複数の熱流流路Fnなどを形成するものとしたり、固体の内部に空洞な球体や楕球体などの複数の空間を形成することにより3次元的に複数の熱流流路を形成するものとしてもよい。この場合、複数の空間に代えて固体に比して熱伝導率が低い材料による部材を複数の空間に充填するものとしてもよい。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、熱流方向性制御構造の製造産業などに利用可能である。
20,120,220,320 集熱構造、22 シリコン基板、24 橋脚部、26 フォノニック構造部、C1〜C5,Cn 円孔、D11〜D15,D21〜D22,E1〜E5 楕円孔、F1〜F5,Fn 熱流流路。
Claims (7)
- 固体中の熱伝達における熱流の方向性を制御する熱流方向性制御構造であって、
前記固体に、最小間隔がフォノンの平均自由行程より短い所定範囲の間隔の熱流流路が形成されるように複数の空間または前記固体に比して熱伝導率の低い材料による複数の部材が形成されている、
ことを特徴とする熱流方向性制御構造。 - 請求項1記載の熱流方向性制御構造であって、
前記熱流流路は、前記複数の空間または前記複数の部材により前記固体中に前記所定範囲の間隔で直線上に見通せる流路として形成されている、
熱流方向性制御構造。 - 請求項1記載の熱流方向性制御構造であって、
前記熱流流路は、前記複数の空間または前記複数の部材により前記固体中に一端が最小間隔であり、他端に向けて間隔が大きくなるように形成されている、
熱流方向性制御構造。 - 請求項1ないし3のうちのいずれか1つの請求項に記載の熱流方向性制御構造であって、
前記固体における所定ポイントから前記熱流流路が放射状に複数形成されるように前記複数の空間または前記複数の部材が形成されている、
熱流方向性制御構造。 - 請求項1ないし3のうちのいずれか1つの請求項に記載の熱流方向性制御構造であって、
前記固体における第1ポイントから第2ポイントの方向には前記熱流流路が形成されるように、且つ、前記第1ポイントから前記第2ポイントの方向とは異なる方向には前記熱流流路が形成されないように前記複数の空間または前記複数の部材が形成されている、
熱流方向性制御構造。 - 請求項1ないし3のうちのいずれか1つの請求項に記載の熱流方向性制御構造であって、
前記固体における第1ポイントから第2ポイントの方向には前記熱流流路が形成されないように、且つ、前記第1ポイントから前記第2ポイントの方向とは異なる方向には前記熱流流路が形成されるように前記複数の空間または前記複数の部材が形成されている、
熱流方向性制御構造。 - 請求項1ないし6のうちのいずれか1つの請求項に記載の熱流方向性制御構造であって、
前記固体は、シリコンの板材であり、
前記所定範囲の間隔は、50nm〜70nmの間隔である、
熱流方向性制御構造。
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