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JP2018178296A - タンパク質溶解用溶媒、タンパク質溶液、タンパク質繊維の製造方法、及び目的タンパク質の精製方法 - Google Patents

タンパク質溶解用溶媒、タンパク質溶液、タンパク質繊維の製造方法、及び目的タンパク質の精製方法 Download PDF

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JP2018178296A JP2017077344A JP2017077344A JP2018178296A JP 2018178296 A JP2018178296 A JP 2018178296A JP 2017077344 A JP2017077344 A JP 2017077344A JP 2017077344 A JP2017077344 A JP 2017077344A JP 2018178296 A JP2018178296 A JP 2018178296A
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祐哉 佐藤
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Abstract

【課題】コストをより低減することができるタンパク質溶解用溶媒の提供。【解決手段】ジメチルスルホキシド及び塩化カルシウムを含み、塩化カルシウムの濃度が、0.001mol/L以上0.5mol/L以下である、タンパク質溶解用溶媒。【選択図】なし

Description

本発明は、タンパク質溶解用溶媒、タンパク質溶液、タンパク質繊維の製造方法、及び目的タンパク質の精製方法に関する。
ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性溶媒は、クモ糸タンパク質及びシルクタンパク質等のタンパク質の溶媒として使用されている。また、これら極性溶媒に、溶解促進剤として無機塩を添加することが知られている(例えば、特許文献1〜3)。
特許第5427322号公報 特許第5584932号公報 国際公開第2016/163337号
DMSOに無機塩(例えば、塩化リチウム)を添加した溶媒は、タンパク質を溶解させる溶媒として極めて優れている。一方、工業的な利用という観点からは、コストをより低減できる溶媒が求められている。
本発明は、コストをより低減できるタンパク質溶解用溶媒の提供を目的とする。
本発明者らは、DMSOに無機塩として塩化カルシウムを添加した溶媒は、塩化カルシウム濃度が低くてもタンパク質の溶解性に優れることを見出した。当該溶媒は、塩化カルシウム濃度が低いため、原料費の低減が可能になると共に、タンパク質から無機塩を除去する工程において、洗浄回数を大幅に減らすことが可能になることから、コストをより低減することができる。本発明は、この新規な知見に基づくものである。
本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[1]
ジメチルスルホキシド及び塩化カルシウムを含み、
上記塩化カルシウムの濃度が、0.001mol/L以上0.5mol/L以下である、タンパク質溶解用溶媒。
[2]
上記塩化カルシウムの濃度が、0.025mol/L以上0.5mol/L以下である、[1]に記載のタンパク質溶解用溶媒。
[3]
上記塩化カルシウムの濃度が、0.025mol/L以上0.1mol/L以下である、[1]又は[2]に記載のタンパク質溶解用溶媒。
[4]
温度が、20℃以上100℃以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のタンパク質溶解用溶媒。
[5]
温度が、50℃以上70℃以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のタンパク質溶解用溶媒。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載のタンパク質溶解用溶媒にタンパク質が溶解している、タンパク質溶液。
[7]
ドープ液である、[6]に記載のタンパク質溶液。
[8]
上記タンパク質が、構造タンパク質である、[6]又は[7]に記載のタンパク質溶液。
[9]
上記構造タンパク質が、クモ糸タンパク質である、[8]に記載のタンパク質溶液。
[10]
[6]〜[9]のいずれかに記載のタンパク質溶液をドープ液とし、
上記ドープ液を凝固液に押し出し、未延伸糸を得る工程を含む、タンパク質繊維の製造方法。
[11]
上記未延伸糸を延伸する工程を更に含む、[10]に記載のタンパク質繊維の製造方法。
[12]
目的タンパク質を発現している宿主細胞を、[1]〜[5]のいずれかに記載のタンパク質溶解用溶媒に溶解させる工程を含む、目的タンパク質の精製方法。
[13]
上記目的タンパク質が、構造タンパク質である、[12]に記載の目的タンパク質の精製方法。
[14]
上記構造タンパク質が、クモ糸タンパク質である、[13]に記載の目的タンパク質の精製方法。
本発明によれば、コストをより低減することができるタンパク質溶解用溶媒の提供が可能となる。本発明のタンパク質溶解用溶媒は、塩化カルシウム濃度が低くてもタンパク質の溶解性に優れるため、無機塩(塩化カルシウム)の使用量を大幅に低減することができる。これにより、原料費の低減が可能になると共に、タンパク質から無機塩を除去する工程において、洗浄回数を大幅に減らすことが可能になることから、コストをより低減することができる。また、無機塩(塩化カルシウム)の使用量が少なくて済むことから、製造設備等の劣化を抑制することもできる。
更に、本発明によれば、塩化カルシウム濃度を所定の範囲(0.025mol/L以上0.5mol/L以下)に調整することで、タンパク質溶液のゲル化を抑制することもできる。
タンパク質繊維の製造装置の一例を示す説明図である。 タンパク質繊維の製造装置の一例を示す説明図である。図2(A)は、未延伸糸製造装置−1段目延伸装置を示し、図2(B)は2段目延伸装置を示す。 タンパク質繊維の製造装置の他の例を示す説明図である。 タンパク質繊維の製造装置の他の例を示す説明図である。図4(A)は、未延伸糸製造装置を示し、図4(B)は、乾熱延伸装置を示す。 実施例におけるSDS(Sodium dodecyl sulfate)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)の結果を示す図である。 実施例におけるSDS−PAGEの結果を示す図である。 実施例における改変フィブロイン抽出液のゲル化試験の結果を示す図である。 実施例における各温度及び反応時間条件下での改変フィブロインの粉末回収率を示す図である。 実施例におけるSDS−PAGEの結果を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
〔1.タンパク質溶解用溶媒〕
本実施形態に係るタンパク質溶解用溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び所定濃度の塩化カルシウム(CaCl)を含む。
塩化カルシウムの濃度は、0.001mol/L以上0.5mol/L以下であってよい。本実施形態に係るタンパク質溶解用溶媒は、塩化カルシウム濃度が低くても、タンパク質の溶解性に優れているため、原料費の低減が可能になると共に、タンパク質から無機塩を除去する工程において、洗浄回数を減らすことが可能になることから、コストをより低減することができる。
本実施形態に係るタンパク質溶解用溶媒は、塩化カルシウム濃度が低くてもタンパク質の溶解性に優れていることから、塩化カルシウム濃度を更に低減することもできる。すなわち、塩化カルシウムの濃度は、0.25mol/L以下であってもよく、0.1mol/L以下であってもよく、0.09mol/L以下であってもよく、0.08mol/L以下であってもよく、0.07mol/L以下であってもよく、0.06mol/L以下であってもよい。塩化カルシウム濃度をこのように低減した範囲内に調整することにより、上述したコスト低減の効果をより一層顕著に発揮することができる。塩化カルシウム濃度の下限は、0.001mol/L以上であれば、充分に優れたタンパク質の溶解性を示すことができる。塩化カルシウム濃度の下限は、タンパク質の溶解性に加えて、タンパク質溶液のゲル化を抑制する観点から、0.025mol/L以上であることが好ましい。
本実施形態に係るタンパク質溶解用溶媒は、更にアルコール及び/又は水を含んでもよい。タンパク質溶解用溶媒を100質量%としたとき、DMSOと塩化カルシウムの割合が22質量%以上100質量%以下であり、残余はアルコールを含んでもよい。アルコールとしては、炭素数1〜6の低級アルコールが好ましく、メタノール、エタノール及び2−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上のアルコールがより好ましい。また、タンパク質溶解用溶媒を100質量%としたとき、DMSOと塩化カルシウムの割合が10質量%以上100質量%以下であり、残余は水を含んでもよい。残余は、水とアルコールを混合してもよい。
本実施形態に係るタンパク質溶解用溶媒の温度は、20℃以上100℃以下であることが好ましい。タンパク質溶解用溶媒の温度が20℃以上であると、タンパク質の溶解性がより一層優れたものとなる。同様の観点から、タンパク質溶解用溶媒の温度は、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが更に好ましく、50℃以上であることが更により好ましい。また、タンパク質溶解用溶媒の温度が100℃以下であると、溶解させたタンパク質の分解をより一層抑制することができる。同様の観点から、タンパク質溶解用溶媒の温度は、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることが更に好ましく、70℃以下であることが更により好ましい。
〔2.タンパク質溶液〕
本実施形態に係るタンパク質溶液は、上述したタンパク質溶解用溶媒にタンパク質が溶解しているものである。なお、本実施形態に係るタンパク質溶液は、不可避的な含有成分、例えば、タンパク質に含まれている夾雑物等を含むものであってもよい。
<目的タンパク質>
溶解させるタンパク質(以下、「目的タンパク質」ということもある。)としては、工業規模での製造が好ましい任意のタンパク質を挙げることができる。目的タンパク質としては、例えば、工業用に利用できるタンパク質、医療用に利用できるタンパク質、構造タンパク質等を挙げることができる。工業用又は医療用に利用できるタンパク質の具体例としては、酵素、制御タンパク質、受容体、ペプチドホルモン、サイトカイン、膜又は輸送タンパク質、予防接種に使用する抗原、ワクチン、抗原結合タンパク質、免疫刺激タンパク質、アレルゲン、完全長抗体又は抗体フラグメント若しくは誘導体を挙げることができる。構造タンパク質の具体例としては、クモ糸タンパク質、シルクタンパク質、コラ−ゲン、レシリン、及びエラスチン、並びにこれら由来のタンパク質等を挙げることができる。
フィブロイン様タンパク質であるクモ糸タンパク質及びシルクタンパク質、並びにこれら由来のタンパク質として、例えば、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質が挙げられる。ここで、式1中、(A)モチーフは、アラニン残基を主とするアミノ酸配列を示し、nは2〜20、好ましくは4〜20、より好ましくは8〜20、更に好ましくは10〜20、更により好ましくは4〜16、更によりまた好ましくは8〜16、特に好ましくは10〜16の整数であってよい。また、(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は40%以上であればよく、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが更により好ましく、100%(アラニン残基のみで構成されることを意味する。)であってもよい。REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは2〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。クモ糸タンパク質及びシルクタンパク質、並びにこれら由来のタンパク質の具体的としては、配列番号1(PRT410)、配列番号2(PRT587)で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。
クモ糸タンパク質の一種である横糸タンパク質、及びこれに由来するタンパク質としては、例えば、式2:[REP2]で表されるドメイン配列を含むタンパク質を挙げることができる。ここで、式2中、REP2はGly−Pro−Gly−Gly−Xから構成されるアミノ酸配列を示し、Xはアラニン(Ala)、セリン(Ser)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群から選ばれる一つのアミノ酸を示す。oは8〜300の整数を示す。横糸タンパク質、及びこれに由来するタンパク質の具体的としては、配列番号3(Recombinant spider silk protein Flag_92_short2)で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号3で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したアメリカジョロウグモの鞭毛状絹タンパク質の部分的な配列(NCBIアクセッション番号:AAF36090、GI:7106224)のリピート部分及びモチーフに該当するN末端から1220残基目から1659残基目までのアミノ酸配列(PR1配列と記す。)と、NCBIデータベースから入手したアメリカジョロウグモの鞭毛状絹タンパク質の部分配列(NCBIアクセッション番号:AAC38847、GI:2833649)のC末端から816残基目から907残基目までのC末端アミノ酸配列を結合し、結合した配列のN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
コラーゲン、及びこれに由来するタンパク質として、例えば、式3:[REP3]で表されるドメイン配列を含むタンパク質を挙げることができる。ここで、式3中、pは5〜300の整数を示す。REP3は、Gly一X一Yから構成されるアミノ酸配列を示し、X及びYはGly以外の任意のアミノ酸残基を示す。複数存在するREP3は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。コラーゲン、及びこれに由来するタンパク質の具体的としては、配列番号4(Collagen−type4−Kai)で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号4で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したヒトのコラーゲンタイプ4の部分的な配列(NCBIのGenBankのアクセッション番号:CAA56335.1、GI:3702452)のリピート部分及びモチーフに該当する301残基目から540残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
レシリン、及びこれに由来するタンパク質として、例えば、式4:[REP4]で表されるドメイン配列を含むタンパク質を挙げることができる。ここで、式4中、qは4〜300の整数を示す。REP4はSer一J一J一Tyr一Gly一U−Proから構成されるアミノ酸配列を示す。Jは任意のアミノ酸残基を示し、特にAsp、Ser及びThrからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。Uは任意のアミノ酸残基を示し、特にPro、Ala、Thr及びSerからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。複数存在するREP4は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。レシリン、及びこれに由来するタンパク質の具体的としては、配列番号5(Resilin−Kai)で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号5で示されるアミノ酸配列は、レシリン(NCBIのGenBankのアクセッション番号NP 611157、Gl:24654243)のアミノ酸配列において、87残基目のThrをSerに置換し、かつ95残基目のAsnをAspに置換した配列の19残基目から321残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
エラスチン、及びこれに由来するタンパク質として、例えば、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395(ヒト)、I47076(ヒツジ)、NP786966(ウシ)等のアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。エラスチン、及びこれに由来するタンパク質の具体的としては、配列番号6(elastin short)で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号6で示されるアミノ酸配列は、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395のアミノ酸配列の121残基目から390残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
目的タンパク質としては、溶解性がより優れるという観点から、クモ糸タンパク質及びシルクタンパク質、並びにこれら由来のタンパク質等のフィブロイン様タンパク質が好ましく、クモ糸タンパク質、及びこれに由来するタンパク質がより好ましい。
目的タンパク質は、例えば、遺伝子工学的手法を用いた一般的な方法により取得できる。具体的には、例えば、目的タンパク質(例えば、組換えクモ糸タンパク質)は、組換えの対象となる天然型クモ糸タンパク質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換した宿主を用いて製造することができる。遺伝子の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、天然型クモ糸タンパク質をコードする遺伝子をクモ由来の細胞からポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等で増幅してクローニングする方法、及び化学的に合成する方法が挙げられる。遺伝子の化学的な合成方法としては、特に制限されないが、例えば、NCBIのウェブデータベース等より入手した天然型クモ糸タンパク質のアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)等で自動合成したオリゴヌクレオチドをPCR等で連結して合成する方法が挙げられる。目的タンパク質には、タンパク質の精製及び確認を容易にするため、アミノ酸配列のN末端に開始コドン及びHis10タグからなるアミノ酸配列を付加してもよい。発現ベクターとしては、DNA配列からタンパク質を発現し得るプラスミド、ファージ又はウイルス等の発現ベクターを用いることができる。プラスミド型発現ベクターとしては、宿主細胞内で目的の遺伝子が発現し、かつそれ自体が増幅することのできるものであればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、宿主として大腸菌Rosetta(DE3)を用いる場合は、pET22b(+)プラスミドベクター、pColdプラスミドベクター等を用いることができる。プラスミド型発現ベクターとしては、タンパク質の生産性に優れるという観点から、pET22b(+)プラスミドベクターを用いることが好ましい。宿主としては、例えば、動物細胞、植物細胞、微生物等を用いることができる。
<タンパク質溶液の調製方法>
本実施形態に係るタンパク質溶液は、本発明に係るタンパク質溶解用溶媒に目的タンパク質を溶解させることで得ることができる。目的タンパク質を溶解させる方法は、特に制限されないが、例えば、目的タンパク質を発現している宿主、又は目的タンパク質そのものにタンパク質溶解用溶媒を加える方法が挙げられる。当該方法は、必要に応じて、不溶物を分離することを含んでもよい。不溶物の分離は、沈降物(凝集物)を分離できればよく、特に限定されない。不溶物の分離は、取扱いの簡便性から、濾過による分離及び/又は遠心分離により行うことが好ましい。濾過による分離は、例えば、ろ紙、ろ過膜等を用いて行うことができる。遠心分離の条件は、特に限定されない。例えば、室温(20±5℃)、8000×g〜15000×gで5〜20分間行うことができる。不溶物の分離は2回以上行ってもよい。
<ドープ液>
本実施形態に係るタンパク質溶液は、例えば、ドープ液として用いることができる。本実施形態に係るドープ液は、湿式紡糸に好適に用いることができ、またキャストフィルム液等として有用である。本実施形態に係るドープ液は、例えば、タンパク質溶液の粘度を、紡糸できる粘度に調整して製造される。ドープ液の粘度は、例えば、100〜10,000cP(センチポイズ)である。ドープ液の粘度の調整は、例えば、溶液中のタンパク質の濃度を調整することで行うことができる。ドープ液の粘度は、例えば、京都電子工業社製の商品名“EMS粘度計”を使用して測定することができる。
〔3.タンパク質繊維の製造方法〕
本実施形態に係るタンパク質繊維の製造方法は、本発明に係るタンパク質溶液をドープ液とし、当該ドープ液を凝固液に押し出し、未延伸糸を得る工程(以下、「紡糸工程」ともいう。)を含む。本実施形態に係る製造方法は、未延伸糸を延伸する工程(以下、「延伸工程」ともいう。)を更に含むものであってもよい。
<紡糸工程>
本実施形態に係る製造方法は、湿式紡糸を採用するものである。紡糸工程により、ドープ液から目的タンパク質を溶解させた溶媒を除去する(脱溶媒又は凝固ともいう。)と共に繊維形成して未延伸糸を得る。
ドープ液中の目的タンパク質の濃度は、ドープ液全量を基準として、3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。目的タンパク質の溶解性を良好に保つ観点から、ドープ液中の目的タンパク質の濃度は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
凝固液は、脱溶媒できるものであれば特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、並びにアセトンを使用することができる。凝固液には、適宜水を加えてもよい。凝固液の温度は、例えば、5〜30℃である。凝固液の温度がこの範囲であれば、より安定に紡糸することができる。
紡糸工程では、例えば、ドープ液を紡糸口金(口金)から脱溶媒槽の凝固液に押し出すことにより、未延伸糸が得られる。ドープ液を、直径0.1〜0.6mmのノズルを有するシリンジポンプから押し出す場合、押し出し速度は、例えば、1ホール当たり0.2〜6.0ml/時間であってよく、1.4〜4.0ml/時間であってもよい。押し出し速度がこの範囲であれば、より安定に紡糸することができる。
脱溶媒槽(凝固液槽)の長さは、例えば、200〜500mmであってよい。脱溶媒槽からの未延伸糸の引き取り速度は、例えば、1〜14m/分であってよく、1〜3m/分であってもよい。脱溶媒槽での滞留時間は、例えば、0.01〜0.15分であってよい。脱溶媒又は凝固に関する各条件がこれらの範囲であれば、脱溶媒又は凝固をより効率よく行うことができる。また、未延伸糸に対し、凝固液中で延伸(前延伸)を行ってもよいが、凝固液(例えば、低級アルコール)の蒸発し易さを考慮すれば、凝固液は低温に維持し、未延伸糸の状態で引き取るのが好ましい。
<延伸工程>
未延伸糸の延伸は、一段延伸で行ってもよいし、2段以上の多段延伸で行ってもよい。目的タンパク質が、天然クモ糸タンパク質に由来するタンパク質等の分子が配向し難いタンパク質である場合、多段延伸を行うにより、分子を多段で配向させることができ、トータル延伸倍率も高くすることができるため、結果としてタフネスの高い繊維を得ることができる。
図1及び図2は、タンパク質繊維の製造装置の一例を示す説明図である。図1に示す製造装置は、紡糸工程と延伸工程(2段延伸)を連続して行う紡糸延伸装置である。紡糸延伸装置10は、押し出し装置1と、未延伸糸製造装置2と、湿熱延伸装置3と、乾熱延伸装置4を備える。ドープ液6は、貯槽7に貯蔵され、ギアポンプ8により口金9から押し出される。ラボスケールにおいては、ドープ液をシリンダーに充填し、シリンジポンプを用いてノズルから押し出してもよい。押し出されたドープ液6は、エアギャップ19を介して、又はエアギャップ19を介さずに直接、凝固液槽20の凝固液11内に供給される。凝固液11内でドープ液6から溶媒が除去され、未延伸糸が形成される。次いで、未延伸糸は、延伸浴槽21内の温水12内に供給され、1段目延伸が行われる。延伸倍率は、供給ニップローラ13と引き取りニップローラ14との速度比によって決まる。1段目延伸を経た延伸糸は、次いで乾熱延伸装置17に供給され、糸道22内で2段目延伸が行われる。2段目延伸を経た延伸糸は、巻き取られて巻糸体5となる。2段目延伸における延伸倍率は供給ニップローラ15と引き取りニップローラ16との速度比によって決まる。18a〜18fは糸ガイドである。
図2に示す製造装置は、紡糸工程と延伸工程(2段延伸)を行う紡糸延伸装置である。図2(A)は、未延伸糸製造装置30及び1段目延伸装置40を示し、図2(B)は、2段目延伸装置50を示す。それぞれの装置ごとに糸を巻き取るか又は巻き取らずに容器に溜めてもよい。未延伸糸製造装置30においては、押し出し装置(マイクロシリンジ)31内にドープ液32を入れておき、シリンジポンプを用いて矢印P方向に移動させ、ノズル33からドープ液32を押し出し、凝固液槽34内の凝固液35にドープ液32を供給し、未延伸糸36とする。続いて、1段目延伸装置40においては、未延伸糸36を延伸浴槽37内の温水38内に供給し、1段目延伸し、1段目延伸糸の巻糸体39とする。延伸倍率は供給ニップローラ41と引き取りニップローラ42との速度比によって決まる。次いで巻糸体39から1段目延伸糸を引き出し、乾熱延伸装置43に供給し、糸道47内で2段目延伸する。延伸倍率は供給ニップローラ45と引き取りニップローラ46との速度比によって決まる。次いで延伸糸を巻糸体44に巻き取る。
図3及び図4は、タンパク質繊維の製造装置の他の例を示す説明図である。図3に示す製造装置は、紡糸工程と延伸工程(1段延伸)を連続して行う紡糸延伸装置である。紡糸延伸装置60は、押し出し装置61と、未延伸糸製造装置62と、乾熱延伸装置63を備える。ドープ液66は、貯槽67に貯蔵され、ギアポンプ68により口金69から押し出される。ラボスケールにおいては、紡糸液をシリンダーに充填し、シリンジポンプを用いてノズルから押し出してもよい。押し出されたドープ液66は、エアギャップ73を介して、又はエアギャップ73を介さずに直接、凝固液槽72の凝固液71内に供給される。凝固液71内でドープ液66から溶媒が除去され、未延伸糸が形成される。次いで、未延伸糸は、乾熱延伸装置77に供給され、糸道78内で延伸が行われる。延伸を経た延伸糸は、巻き取られ巻糸体64となる。延伸倍率は供給ニップローラ75と引き取りニップローラ76との速度比によって決まる。74a〜74fは糸ガイドである。
図4に示す製造装置は、紡糸工程と延伸工程(1段延伸)を行う紡糸延伸装置である。図4(A)は、未延伸糸製造装置80を示し、図4(B)は、乾熱延伸装置90を示す。それぞれの装置ごとに糸を巻き取るか又は巻き取らずに容器に溜めてもよい。未延伸糸製造装置80においては、押し出し装置(マイクロシリンジ)81内にドープ液82を入れておき、シリンジポンプを用いて矢印P方向に移動させ、ノズル83からドープ液82を押し出し、凝固液槽84内の凝固液85に供給し、未延伸糸の巻糸体86とする。次に、乾熱延伸装置90においては、巻糸体86から未延伸糸を引き出し、乾熱延伸装置89に供給し、糸道91内で延伸する。延伸倍率は供給ニップローラ87と引き取りニップローラ88との速度比によって決まる。次いで延伸糸を巻糸体92に巻き取る。これにより延伸糸を得る。
〔4.目的タンパク質の精製方法〕
本実施形態に係る目的タンパク質の精製方法は、目的タンパク質を発現している宿主細胞を、本発明に係るタンパク質溶解用溶媒に溶解させる工程(以下、「溶解工程」ともいう。)を含む。
目的タンパク質を発現する宿主細胞は、例えば、目的タンパク質を生来発現する宿主細胞を目的タンパク質の発現量を指標にスクリーニングする方法、目的タンパク質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換して、目的タンパク質(組換えタンパク質)を発現する宿主細胞(例えば、組換え微生物)を得る方法により得ることができる。目的タンパク質を発現する宿主細胞を常法により培養することで、当該宿主細胞に目的タンパク質を発現させることができる。
目的タンパク質を発現した宿主細胞から当該目的タンパク質を溶解するために添加する本発明に係るタンパク質溶解用溶媒の添加量は特に制限されるものではないが、目的タンパク質の溶解性を高める観点から、例えば、宿主細胞の重量(g)に対するタンパク質溶解用溶媒の体積(mL)の比(体積(mL)/重量(g))として、5倍以上であることが好ましく、7倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることが更に好ましい。タンパク質溶解用溶媒を添加する際の宿主細胞は、乾燥した状態でもよく、湿った状態でもよい。
溶解工程を実施する際の温度は、特に限定されないが、例えば、20℃以上100℃以下であってよい。当該温度は、目的タンパク質の溶解性をより高める観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましい。また、当該温度は、目的タンパク質の分解をより抑制するという観点から、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることが更に好ましく、70℃以下であることが更により好ましい。溶解工程を実施する時間は、特に限定されないが、例えば、10〜300分間であってよく、30〜180分間であることが好ましい。
本実施形態に係る目的タンパク質の精製方法は、溶解工程で得られた宿主細胞の溶解物から不溶物を分離する工程(以下、「分離工程」ともいう。)を更に備えていてもよい。不溶物の分離は、沈降物(凝集物)を分離できればよく、特に限定されない。不溶物の分離は、取扱いの簡便性から、濾過による分離及び/又は遠心分離により行うことが好ましい。濾過による分離は、例えば、ろ紙、ろ過膜等を用いて行うことができる。遠心分離の条件は、特に限定されない。例えば、室温(20±5℃)、8000×g〜15000×gで5〜20分間行うことができる。不溶物の分離は2回以上行ってもよい。
本実施形態に係る目的タンパク質の精製方法は、溶解工程で得られた宿主細胞の溶解物、又は分離工程で不溶物を分離した溶液に希釈用溶媒を添加する工程を更に備えていてもよい。希釈用溶媒としては、例えば、溶解工程で使用したタンパク質溶解用溶媒、DMSO等が挙げられる。
本実施形態に係る精製方法により得られた目的タンパク質が溶解されたタンパク質溶液は、例えば、目的タンパク質の精製に用いてもよいし、そのままドープ液として用いてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔(1)目的タンパク質発現株の作製、及び目的タンパク質の発現〕
目的タンパク質として、ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(「PRT587」ともいう。)を設計した。配列番号2で示されるアミノ酸配列は、ネフィラ・クラビペス由来のフィブロインのアミノ酸配列に対して、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施したアミノ酸配列を有し、さらにN末端にタグ配列及びヒンジ配列を付加したものである。
次に、PRT587をコードする核酸を合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト及び終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。当該核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。
得られたpET−22b(+)発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。当該形質転換大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液を、アンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表1)にOD600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコ培養を行い(約15時間)、シード培養液を得た。
当該シード培養液を500mlの生産培地(表2)を添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにした。
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1ml/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにし、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、目的タンパク質(改変フィブロイン)を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。回収した菌体を20mM Tris−HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を乾燥して、目的タンパク質を発現する大腸菌の乾燥菌体を所定量得た。なお、IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的タンパク質サイズのバンドの出現により、目的タンパク質の発現を確認した。
〔(2)目的タンパク質の精製−タンパク質溶解用溶液の検討〕
上記のようにして得られた、目的タンパク質(改変フィブロイン)を発現している組換え大腸菌の乾燥菌体を10g計りとり、溶媒を添加した。溶媒として、DMSO(100mL)、0.5M 塩化リチウム(LiCl)を含むDMSO(100mL)、0.001M、0.005M、0.01M、0.025M、0.05M、0.075M、0.1M又は0.15M 塩化カルシウム(CaCl)を含むDMSO(各100mL)を使用した。溶媒の添加後、60℃で1時間撹拌しながら熱溶解させた。熱溶解終了後、撹拌しながら100mLのRO水を添加し、この状態で5分間程撹拌した後、ボトルろ過フィルターに反応溶液を流し込み、真空ポンプで減圧ろ過することで、夾雑物と目的タンパク質溶液(改変フィブロイン抽出液)を分離した。ろ過開始2〜3時間後、ろ液の抽出が完了したことを確認した。
改変フィブロイン抽出液からSDS−PAGE解析用のサンプルとゲル化確認用のサンプルを分取した後、改変フィブロイン抽出液を1.5倍量のエタノール中に添加し、10分間静置した。静置後、改変フィブロイン抽出液−エタノールの溶液を撹拌(200rpm)し、貧溶媒による改変フィブロインの析出を確認した。改変フィブロインの析出を確認後、更に1時間50分静置して析出を進めた。析出終了後、沈殿物を遠心分離(11,000g、30分間、20℃)で回収し、上清を取り除いた後、上清と等量のRO水を添加した。RO水添加後、沈殿物を分散機で分散させて沈殿物を洗浄した。洗浄後、溶液の導電率を測定し、溶液の導電率が100μs/cm以下になるまで遠心分離と洗浄を繰り返した。洗浄終了後、ろ過物を凍結乾燥し、改変フィブロインの粉末を回収した。表3に改変フィブロイン粉末の回収量を示した。
〔(3)SDS−PAGEによる解析〕
得られた改変フィブロイン粉末、改変フィブロイン抽出液、及びろ過残渣について、SDS−PAGEによる解析を行った。
<タンパク質の定量(BCA法)>
改変フィブロイン粉末、改変フィブロイン抽出液、及びろ過残渣に対してDMSOを添加した後、1500rpmで攪拌しながら、85℃で30分間反応させることで各サンプルを溶解させた。溶解後、適宜希釈し、BCA Reagent Aを必要量混合し、エッペンチューブに分取した。分取したエッペンチューブにBCA Reagent Bを添加し、37℃で30分間静置して反応させた。反応終了後、各サンプルの吸光強度の測定を行った。
<SDS−PAGE>
改変フィブロイン粉末(Purified sample)、改変フィブロイン抽出液(Extraction solution)、及びろ過残渣(Residual dross)について、BCA法による測定から得られた結果を基に、タンパク質濃度が10mg/mLになるようにSDS−PAGE用サンプルを調製した。Mini−PROTEAN(登録商標) Tetra SystemにMini−PROTEAN(登録商標) TGX(登録商標) Gelsをセットし、調製した各SDS−PAGE用サンプルをロードし、電気泳動を行った。電気泳動終了後、Gel DOC(登録商標) EZ Imagerで解析を行った。結果を図5及び図6に示す。
図5の左の写真及び図6の左の写真は、電気泳動後、全てのタンパク質を染色可能なOriole(商標)蛍光ゲルステイン(Bio−Rad社製)で染色したもの、図5の右の写真及び図6の右の写真は、電気泳動後、PRT410のHisタグ領域に反応するInVision(商標)Hisタグ付きゲル内染色試薬(Thermo Fisher Scientific社製)で染色したものである。理論分子量が105.7kDaのPRT587は、100kDa〜150kDaの分子量マーカの間にバンドとして検出された。
〔(4)ゲル化の確認〕
改変フィブロイン抽出液を室温で1週間静置した後、当該抽出液のゲル化の有無を確認した。結果の一例を図7に示す。タンパク質溶解用溶媒として、CaClを0.025M以上含むDMSOを使用した場合、ゲル化は確認されなかった(CaClを0.05M、0.075M、0.1M又は0.15M含むDMSOは図示せず。)。
〔(5)目的タンパク質の精製−温度及び時間の検討〕
タンパク質溶解用溶媒として0.025MのCaClを含むDMSOを使用した。まず、上記(1)で得られた目的タンパク質(改変フィブロイン)を発現している組換え大腸菌の乾燥菌体を10g計りとり、タンパク質溶解用溶媒を100mL添加したものを必要数用意した。各温度条件(50℃、60℃、70℃又は80℃)、及び各反応時間条件(各温度条件に対し、0.5時間、1時間、2時間又は6時間)のもと、撹拌しながら熱溶解させた。熱溶解終了後、撹拌しながら100mLのRO水を添加し、この状態で5分程撹拌した後、ボトルろ過フィルターに反応溶液を流し込み、真空ポンプで減圧ろ過することで、夾雑物と目的タンパク質溶液(改変フィブロイン抽出液)を分離した。ろ過開始2〜3時間後、ろ液の抽出が完了したことを確認した。
改変フィブロイン抽出液からSDS−PAGE解析用のサンプルを分取した後、改変フィブロイン抽出液を1.5倍量のエタノール中に添加し、10分間静置した。静置後、改変フィブロイン抽出液−エタノールの溶液を撹拌(200rpm)し、貧溶媒による改変フィブロインの析出を確認した。改変フィブロインの析出を確認後、更に1時間50分静置して析出を進めた。析出終了後、沈殿物を遠心分離(11,000g、30分間、20℃)で回収し、上清を取り除いた後、上清と等量のRO水を添加した。RO水添加後、沈殿物を分散機で分散させて沈殿物を洗浄した。洗浄後、溶液の導電率を測定し、溶液の導電率が100μs/cm以下になるまで遠心分離と洗浄を繰り返した。洗浄終了後、ろ過物を凍結乾燥し、改変フィブロインの粉末を回収した。SDS−PAGEによる解析は、上記(3)と同様に行った。結果を図8及び図9、並びに表4に示す。
図8及び表4は、各条件下における改変フィブロインの粉末回収率(%)を示すものである。粉末回収率は、各条件下で得られた改変フィブロイン粉末の回収量から、80℃で6時間反応させる条件下での回収量を100%として算出したものである。
図9は、電気泳動後、全てのタンパク質を染色可能なOriole(商標)蛍光ゲルステイン(Bio−Rad社製)で染色したものである。
〔(6)洗浄回数の比較〕
タンパク質溶解用溶媒として、0.5MのLiClを含むDMSO、及び0.025MのCaClを含むDMSOを使用した。まず、上記(1)で得られた目的タンパク質(改変フィブロイン)を発現している組換え大腸菌の乾燥菌体を10g計りとり、タンパク質溶解用溶媒を各100mL添加した。添加後、60℃で1時間、撹拌しながら熱溶解させた。熱溶解終了後、撹拌しながら100mLのRO水を添加し、この状態で5分程撹拌した後、ボトルろ過フィルターに対して反応溶液を流し込み、真空ポンプによって減圧ろ過することで、夾雑物と目的タンパク質溶液(改変フィブロイン抽出液)分離した。ろ過開始2〜3時間後、ろ液の抽出が完了したことを確認した。
改変フィブロイン抽出液を1.5倍量のエタノール中に添加し、10分間静置した。静置後、改変フィブロイン抽出液−エタノールの溶液を撹拌(200rpm)し、貧溶媒による改変フィブロインの析出を確認した。改変フィブロインの析出を確認後、更に1時間50分静置して析出を進めた。析出終了後、沈殿物を遠心分離(11,000g、30分間、20℃)で回収し、上清を取り除いた後、沈殿物の約10倍量のRO水を添加した。RO水添加後、沈殿物を分散機で分散させて沈殿物を洗浄した。洗浄後、溶液の導電率を測定した。この操作を4回繰り返した。結果を表5に示す。
タンパク質溶解用溶媒として0.025MのCaClを含むDMSOを使用した場合は、0.5MのLiClを含むDMSOを使用した場合と比較して、少ない洗浄回数で導電率を低下させること(無機塩を除去すること)ができた。
1,31,61,81…押し出し装置、2,30,62,80…未延伸糸製造装置、3,40…湿熱延伸装置(1段目延伸装置)、4,50,63,90…乾熱延伸装置(2段目延伸装置)、5,39,44,64,86,92…巻糸体、6,32,66,82…ドープ液、7,67…貯槽、8,68…ギアポンプ、9,69,83…口金、10,60…紡糸延伸装置、11,35,71,85…凝固液、36…未延伸糸、12,38…温水、13,15,41,45,75,87…供給ニップローラ、14,16,42,46,76,88…引き取りニップローラ、17,43,77,89…乾熱延伸装置、18a〜18f,74a〜74f…糸ガイド、19,73…エアギャップ、20,34,72,84…凝固液槽、21,37…延伸浴槽、22,47,78,91…糸道。

Claims (14)

  1. ジメチルスルホキシド及び塩化カルシウムを含み、
    前記塩化カルシウムの濃度が、0.001mol/L以上0.5mol/L以下である、タンパク質溶解用溶媒。
  2. 前記塩化カルシウムの濃度が、0.025mol/L以上0.5mol/L以下である、請求項1に記載のタンパク質溶解用溶媒。
  3. 前記塩化カルシウムの濃度が、0.025mol/L以上0.1mol/L以下である、請求項1又は2に記載のタンパク質溶解用溶媒。
  4. 温度が、20℃以上100℃以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質溶解用溶媒。
  5. 温度が、50℃以上70℃以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタンパク質溶解用溶媒。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンパク質溶解用溶媒にタンパク質が溶解されている、タンパク質溶液。
  7. ドープ液である、請求項6に記載のタンパク質溶液。
  8. 前記タンパク質が、構造タンパク質である、請求項6又は7に記載のタンパク質溶液。
  9. 前記構造タンパク質が、クモ糸タンパク質である、請求項8に記載のタンパク質溶液。
  10. 請求項6〜9のいずれか一項に記載のタンパク質溶液をドープ液とし、
    前記ドープ液を凝固液に押し出し、未延伸糸を得る工程を含む、タンパク質繊維の製造方法。
  11. 前記未延伸糸を延伸する工程を更に含む、請求項10に記載のタンパク質繊維の製造方法。
  12. 組換えタンパク質を発現している宿主細胞を、請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンパク質溶解用溶媒に溶解させる工程を含む、組換えタンパク質の精製方法。
  13. 前記組換えタンパク質が、構造タンパク質である、請求項12に記載の組換えタンパク質の精製方法。
  14. 前記構造タンパク質が、クモ糸タンパク質である、請求項13に記載の組換えタンパク質の精製方法。
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